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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】皮膚外用剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20250414BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20250414BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20250414BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20250414BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20250414BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20250414BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20250414BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/25
A61K8/81
A61K8/92
A61K8/31
A61Q19/10
A61Q1/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023556886
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 CN2022080429
(87)【国際公開番号】W WO2022194059
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】202110292923.9
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ランラン
(72)【発明者】
【氏名】スン、ユイリン
(72)【発明者】
【氏名】西島 義人
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/058180(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/071539(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/072456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)表面に開孔を有する多孔質粒子であって、一次粒子として存在する前記多孔質粒子が、すべての粒子の全質量に対して90%以上であり、前記一次粒子の平均粒径が0.5~20μmであり、前記表面における開孔の平均細孔径が7.5~50nmである、固体粒子と、
b)少なくとも1つのワックスと、
c)少なくとも1つの炭素鎖系油と、
d)少なくとも1つの界面活性剤と、を含む皮膚外用剤組成物であって、
前記組成物は任意に水を含んでもよく、前記水の含有量は前記組成物の全質量に対して5%以下であることを特徴とする皮膚外用剤組成物。
【請求項2】
前記成分a)の固体粒子の表面における開孔の平均細孔径は7.5~15nmであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分a)の固体粒子は、シリカ、表面改質シリカ及び有機ポリマー系粒子から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記成分a)の固体粒子は、吸油率が300%以下、及び/又は比表面積が80~400m/gであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
水を実質的に含まないことを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記成分b)のワックスは、天然の植物性ワックス及び合成ワックスから選択される1つ以上であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の全質量に対して、成分a)の含有量は0.1~10%であり、成分b)の含有量は1~30%であり、成分c)の含有量は50~95%であり、成分d)の含有量は3~30%であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物を含むことを特徴とする洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料の分野に該当し、具体的に、皮膚洗浄用の化粧料又はメイク落とし用の組成物に関する。特に、本発明は、水をほとんど又は実質的に含まない固体洗浄剤組成物である。
【背景技術】
【0002】
従来、老化した角質層、油性分泌物、汚れ、化粧品などを人間の皮膚から洗浄・除去できるものとして、皮膚洗浄用の組成物が知られている。
【0003】
このような組成物は、一般に、液体、半固体(例えば、ゲル)などの含水組成物として存在し得る。従来のパーソナルクリーニングケア組成物としては、メイク落とし、洗顔料、シェービング剤などが挙げられる。また、一般に1つ以上の成分(例えば、香料、防腐剤、界面活性剤など)を含有することができる。近年、洗顔料(メイク落としを含む。)は、多くの市場で顔用スキンケア用品の中で最も高い浸透率を有するサブカテゴリーとなっている。このような組成物は、洗浄作用に加えて、使用中に皮膚から水分を奪ってしまい、皮膚が乾燥しすぎたり荒れたりして使用感が満足できない場合がある。
【0004】
一方、水をほとんど又は実質的に含まない固体として存在する組成物もあり、このような組成物は、人間の皮膚に使用される時、外力によって皮膚上に広がり、洗浄効果を発揮することができる。例えば、一般に「軟固体」と呼ばれる洗浄剤は、使用者に柔らかくてさっぱりした感触を与えることができる。
【0005】
特許文献1には、疎水性エアロゲル粒子、60℃以上の融点を有する少なくとも1つのワックスと、少なくとも1つの炭化水素系油と、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤とを含む固体無水組成物が記載されている。その組成物は、メイク落とし力、洗浄力、肌改善効果が向上したものであり、携帯しやすく、良好なメイク落とし効果を維持できる。また、必要な機器に対応するために必要な硬度を有する。
【0006】
特許文献2には、a)エステル末端ポリ(エステル-アミド)及びその混合物からなる群より選択される少なくとも1つの疎水性ポリマーと、b)少なくとも1つの炭化水素系油と、c)少なくとも1つの非イオン性界面活性剤とを含む固体無水組成物が記載されている。その組成物は、ケラチン物質のクレンジング及び/又はメイク落としに使用される。
【0007】
これまで、無水固体洗浄剤組成物の洗浄力、使用感、メイク落とし力及び洗い流し性についてはある程度の研究は行われてきたが、このような固体組成物は、常温で固体の成分(例えば、ワックス等)と、常温で液体の成分(例えば、液状油成分等)を含むため、製造、輸送、保管、さらには使用において相分離による安定性の問題がある。この点についてはまだ十分な認識や報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】CN106852117A
【文献】CN110062619A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のとおり、固体洗浄剤組成物の洗浄力、使用感又は洗い流し性については従来技術において検討されてきたが、本発明者らは、長期にわたってさらに検討した結果、上記の使用特性を満たすために固体組成物に用いられた種々の常温で固体の成分及び油分の存在により、安定性問題が生じ得ることが分かった。
【0010】
例えば、固体組成物は、製造、輸送、保管、さらには使用中に、振動(例えば、普通の安定した形態とは異なる状態で立つなど)、温度変化などの外部影響を受ける可能性があり、固体成分(固体のワックス状成分を含む。)と油分などの液体成分が相分離し、外観、使用感、さらには洗浄力の低下を引き起こすことがある。特に、このような現象は、固体組成物に大きな温度差が与えられた時間が経過した後に特に顕著になる。
【0011】
したがって、本発明は、水をほとんど又は実質的に含まない固体洗浄剤組成物であって、良好なクレンジング性、快適な使用感及び洗い流し性を有するとともに、安定性も向上し、外部の機械的力や温度変化の影響による相分離を防止できる皮膚外用剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の発明を実施することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0013】
[1]まず、本発明は、
a)表面に開孔を有する多孔質粒子であって、一次粒子の平均粒径が0.5~20μmである固体粒子と、
b)少なくとも1つのワックスと、
c)少なくとも1つの炭素鎖系油と、
d)少なくとも1つの界面活性剤と、を含む皮膚外用剤組成物であって、
前記組成物は任意に水を含んでもよく、前記水の含有量は前記組成物の全質量に対して5%以下である、皮膚外用剤組成物を提供する。
[2]
前記成分a)の固体粒子の表面における開孔の平均細孔径は7.5~50nmである[1]に記載の組成物。
[3]
前記成分a)の固体粒子は、シリカ、表面改質シリカ及び有機ポリマー系粒子から選択される1つ以上である[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]
前記成分a)の固体粒子は、吸油率が300%以下、及び/又は比表面積が80~400m/gである[1]~[3]のいずれか1項に記載の組成物。
[5]
水を実質的に含まない[1]~[4]のいずれか1項に記載の組成物。
[6]
前記成分b)のワックスは、天然の植物性ワックス及び合成ワックスから選択される1つ以上である[1]~[5]のいずれか1項に記載の組成物。
[7]
前記組成物の全質量に対して、成分a)の含有量は0.1~10%であり、成分b)の含有量は1~30%であり、成分c)の含有量は50~95%であり、成分d)の含有量は3~30%である[1]~[6]のいずれか1項に記載の組成物。
[8]
[1]~[7]のいずれか1項に記載の組成物を含む洗浄剤。
【発明の効果】
【0014】
上記発明を実施することにより、本発明は以下の効果を奏することができる。
1)本発明による皮膚外用剤組成物は、良好な皮膚洗浄力及び優れた使用感を有するとともに、満足できる洗い流し性を有する。
2)本発明による皮膚外用剤組成物は、外部の機械的力や温度変化による均一性悪化の問題を防止でき、経時的な安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施例における安定性試験の温度管理チャートである。
図2図2は、本発明の実施例の評価試験時における試験サンプルの置き方(縦置き・横置き)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成について詳細に説明する。発明の構成に関する以下の説明は、本発明の代表的な実施形態、具体例に基づくものであるが、本発明はこれらの実施形態、具体例に限定されるものではない。また、以下の説明をしておく。
【0017】
本明細書において、「数値A~数値B」で表される数値範囲は、終点の数値A及びBを含む範囲を意味する。
【0018】
本明細書において、「以上」又は「以下」で表される数値範囲は、その数字を含む数値範囲を意味する。
【0019】
本明細書において、「てもよい」とは、その処理を実施する場合と、実施しない場合との両方を含むことを意味する。
【0020】
本明細書において、「任意に」又は「任意の」とは、その物質、成分、工程、適用条件などの要素の使用又は非使用を意味する。
【0021】
本明細書において、「粉末」と「粒子」は同じ物理的意味を有する。「固体粉末粒子」と「固体粒子」も同じ物理的意味を有する。
【0022】
本明細書において、「室温」とは、「25℃」の室内周囲温度を意味する。
【0023】
本明細書において、単位名はすべて国際標準単位名であり、特に断りのない限り、「%」は重量又は質量百分率を意味する。
【0024】
本明細書において、「樹脂」と「ゴム」は異なる意味であり、両者は「弾性」の有無によって区別される。通常、前者は明らかな弾性を有せず、後者は明らかな弾性を有する。
【0025】
本発明において、「固体」組成物は、25℃での組成物の形態を表す表現である。「固体」とは、25℃、大気圧(760mmHg)で測定された硬度が30Nm-1以上のものを意味する。具体的な試験方法としては、特許文献又は先行技術に記載の方法を用いることができる。
【0026】
本明細書において、「水を実質的に含まない」とは、本発明のいくつかの実施形態において、成分を混合するときに水は添加せず、つまり、組成物中に存在し得る水は、原材料中に不可避的に含まれる微量の水分のみに由来するものであることを意味する。
【0027】
本明細書において、「いくつかの/好ましい実施形態」、「別の(好ましい)実施形態」、「実施形態」などとは、その実施形態に関連して説明される特定の要素(例えば、特徴、構造、性質及び/又は特性)が、本明細書に記載の少なくとも1つの実施形態に含まれ、他の実施形態において存在してもしなくてもよいことを意味する。なお、これらの要素は、様々な実施形態において任意の適切な形態で組み合わせることができる。
【0028】
本発明は皮膚外用剤組成物に関するものである。いくつかの実施形態において、水をほとんど又は実質的に含まない皮膚洗浄用組成物である。
【0029】
本発明の皮膚外用剤組成物は主として、表面に開孔を有する多孔質粉末である固体粒子(以下、「固体粉末粒子」ともいう。)、必要なワックス成分、油性成分及び界面活性剤を含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記組成物の全質量に対して、前記水の含有量は5%以下である。
【0030】
(固体粉末粒子)
本発明の皮膚外用剤組成物は、固体粉末粒子を含む。本発明の固体粉末粒子は、表面に開孔を有する多孔質固体粒子又は多孔質固体粉末である。
【0031】
本発明において、上記の多孔質固体粒子又は多孔質固体粉末は、上記皮膚外用剤組成物において、主に一次粒子として存在する。いくつかの実施形態において、一次粒子として存在する固体粒子又は粉末は、すべての粒子又は粉末の全質量に対して90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。
【0032】
本発明でいう「一次粒子」とは、単一の粒子の状態で存在する粒子を指し、存在状態として「二次粒子」と区別される。「二次粒子」は、粒子サイズが非常に小さい固体粒子が高い表面エネルギーにより複数個集合して形成される凝集粒子を意味し、例えば、エアロゲルのような物質が挙げられる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の一次粒子は0.5~20μm、好ましくは3~18μm、さらに好ましくは4~15μmの平均一次粒径(D50)を有する。一次粒子の平均粒径が小さすぎると、一次粒子が凝集して二次粒子が形成され、本発明の組成物の安定性が低下する傾向にある。一方、一次粒子の平均粒径が大きすぎると、本発明の皮膚外用剤組成物の使用感に悪影響を与え、例えば、過度のザラザラ感や過度の摩擦感を生じる場合がある。
【0034】
本発明の多孔質固体粒子又は粉末は、表面に開孔構造を有するシリカ粒子、表面改質シリカ粒子又は有機ポリマー系粒子又はこれらの混合物から選択することができる。本発明の多孔質固体粒子又は粉末は、使用感、物質の熱膨張収縮耐性及び安全性の観点から、表面に開孔構造を有するシリカ粒子であることが好ましい。また、いくつかの実施形態において、本発明の多孔質固体粒子又は粉末は疎水性の粒子又は粉末であってもよい。
【0035】
さらに、表面改質シリカは、樹脂やゴムによって表面が改質されたシリカ粒子であってもよく、例えば、シリコーン樹脂やシリコーンゴムなどが挙げられる。有機ポリマー系粒子は、架橋又は非架橋の有機ポリマー粒子から選択することができ、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン粉末)、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸の共重合体樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、シリコーン樹脂、シリコーンゴムなどからなる粒子、又はこれらのうちの2つ以上の物質からなる複合(例えば、コアシェル)粒子が挙げられる。
【0036】
本発明の多孔質固体粒子又は粉末は、表面に開孔構造を有する。前記「開孔」とは、粒子又は粉末の表面に外部に連通するように存在する孔を指す。
【0037】
いくつかの実施形態において、これら開孔の平均細孔径は7.5nm以上、又は8nm以上、又は10nm以上、又は12nm以上である。前記開孔の平均細孔径の上限については、いくつかの実施形態において、前記開孔の平均細孔径は50nm以下、又は30nm以下、又は20nm以下である。さらに、本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記開孔の平均細孔径は好ましくは7.5~15nmである。
【0038】
本発明における表面の開孔の平均細孔径は公知の方法により測定することができる。通常、液体窒素温度で窒素吸着法によりガス吸着分析試験の標準測定を行うことができ、得られたデータをバレット・ジョイナー・ハレンダ法(BJH法と略称)によって処理することで、最終的な測定値が得られる。
【0039】
本発明における多孔質固体粒子の比表面積は、いくつかの実施形態において、400m/g以下、好ましくは80~400m/g又は100~400m/gであり、さらに好ましくは200~350m/gである。本発明の比表面積は、Journal of the American Chemical Society(第60巻、第309頁、1938年2月)及び国際規格ISO 5794/1(付録D)に記載のBET(Brunauer-Emmett-Teller)窒素吸着法により求めることができる。BET比表面積は、試験対象粒子の総比表面積に対応する。
【0040】
また、本発明における多孔質固体粒子の吸油量は特に限定されないが、比表面積及び粒子径に関係する。ただし、本発明の皮膚外用剤組成物の安定性の観点から、本発明の多孔質固体粒子は、300%以下、好ましくは50~250%又は100~250%の吸油量を有する。吸油量の測定については、公知の技術、例えば、湿点法、又は規格NF T 30-022に記載の粉末の吸油量測定方法により測定することができる。
【0041】
本発明において、上記構成を有する多孔質固体粒子又は固体粉末は、本発明の皮膚外用剤組成物に配合する他の成分と混合することにより、相分離による安定性低下の問題を防ぐ上で役立つと考えられる。
【0042】
本発明の検討の結果、上記効果は、以下のメカニズムにより生じるものと推測される。本発明の皮膚外用剤組成物において、常温で固体の成分として主にワックス成分を用いて、油性成分、固体粒子及び界面活性剤等と混合する。混合中に油性成分が固体粒子の表面における開孔に侵入し、すなわち、表面の開孔構造が、入ってくる油性成分を定着する効果を発揮する。その結果、得られた皮膚外用剤組成物は、外部からの機械的力による刺激(輸送時や使用時の振動など)や温度変化の刺激(保存条件や地域差・季節差による温度変化など)を受けたとしても、油性成分が皮膚外用剤組成物の固相から分離して析出することがなく、本発明の皮膚外用剤組成物全体の安定性が向上するとともに、本来の使用感及び洗浄力が維持される。また、この定着効果は、多孔質固体粒子の含有量が10%以下である場合にも良好に現れる。
【0043】
(ワックス成分)
本発明の皮膚外用剤組成物はワックス成分を含む。
【0044】
本発明において、上記ワックス成分とは、室温で固体である脂質化合物成分をいう。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、上記ワックス成分は30℃以上の融点、好ましくは50℃以上の融点、より好ましくは60℃以上の融点、さらに好ましくは65℃以上の融点を有する。本発明の融点は、規格ISO 11357-3(1999)に記載の熱分析(DSC)で観察される最大吸熱ピークの温度により求めることができる。具体的には、上記ワックス成分の融点は、例えば、TA Instrumentsにより商品名「MDSC 2920」で市販されている熱量計などの示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
【0046】
本発明の皮膚外用剤組成物に用いられるワックス成分は、天然の動物性・植物性ワックスや合成ワックスから選択することができる。具体的には、室温で固体である動物、植物、鉱物又は合成に由来するワックス、及びこれらの混合物から選択することができ、好ましくは、天然の植物性ワックス及び合成ワックスのうちの1つ以上である。
【0047】
本発明に用いられるワックス成分の具体例としては、炭化水素系のワックスを挙げることができ、例えば、蜜蝋、ラノリンワックス、インセクトワックス(Chinese insect wax)、米ぬかワックス、カルナバワックス、キャンデリラワックス、オウリキュリーワックス(ouricury wax)、エスパルトグラスワックス(esparto grass wax)、ベリーワックス(berry wax)、セラックワックス、和蝋、スマッハワックス(sumach wax)、モンタンワックス、オレンジワックス、レモンワックス、微結晶ワックス、オゾケライト、ポリエチレンワックス、ポリメチレンワックス、12-ヒドロキシステアリン酸、トリヒドロキシステアリン酸グリセリル、フィッシャー・トロプシュ合成によって得られるワックス及びワックス状コポリマー、これらのエステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。直鎖状又は分岐鎖状のC8~C32脂肪鎖を含む動物油又は植物油の接触水素化によって得られるワックスを含んでもよい。これらのワックスのうち、Desert Whale社製のトランス異性化部分水素化ホホバ油などの異性化ホホバ油、硬化ヒマワリ油、硬化ヒマシ油、硬化ヤシ油、硬化ラノリン油、及び、Heterene社により商品名「Hest」で市販されているビス(1,1,1-トリメチロールプロパン)テトラステアレートが特に挙げられる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態において、セチルアルコールでエステル化されたヒマシ油の水素化によって得られるワックス(例えば、Sophim社製の商品名Phytowax ricin)、(ヒドロキシステアロキシ)ステアリン酸C20~C40アルキル(例えば、Koster Keunen社製の商品名Kester Wax K82、Hydroxypolyester K82及びKester Wax K80)、直鎖ヒドロキシル化C18~C24脂肪酸(例えば、Thai Kawaken社製の商品名12-Hydroxystearic Acid Premium Grade 12H-Pという12-ヒドロキシステアリン酸)を使用することができる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明による皮膚外用剤組成物は、60℃以上の融点を有する少なくとも1つのワックス成分を含む。かかるワックスは、カルナバワックス、オゾケライト、微結晶ワックス、12-ヒドロキシステアリン酸、ポリエチレンワックス(例えば、New Phase Technologies社製の商品名Performalene 500L Polyethylene又はPerformalene 400L Polyethyleneなど、又はHoneywell社製のAsensa SC 211)、ポリメチレンワックス(例えば、Cirebelle社製の製品名Cirebelle 108)、蜜蝋、キャンデリラワックス、ヒドロキシオクタコシルヒドロキシステアレート、硬化ヒマシ油、硬化ホホバ油、米ぬかワックス、ポリグリセリン化蜜蝋、ステアリン酸オクタコシル、セレシンワックス(ceresin wax)、(ヒドロキシステアロキシ)ステアリン酸C20~C40アルキルワックス、12-ヒドロキシステアリン酸、ポリビニルアルコールワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、セチルアルコールでエステル化されたヒマシ油の水素化によって得られるワックス、オウリキュリーワックス、モンタンワックス、INCI名でトリヒドロキシステアリン(Trihydroxystearin)というトリヒドロキシステアリン酸グリセリル(例えば、Elementis社製の商品名Thixcin R)、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0050】
本発明の別の実施形態において、本発明による皮膚外用剤組成物は、65℃以上の融点を有する少なくとも1つのワックスを含む。かかるワックスは、カルナバワックス、オゾケライト、微結晶ワックス、12-ヒドロキシステアリン酸、ポリメチレンワックス(例えば、Cirebelle社製の製品名Cirebelle 108)、キャンデリラワックス、ヒドロキシオクタコシルヒドロキシステアレート、硬化ヒマシ油、硬化ホホバ油、米ぬかワックス、ポリグリセリン化蜜蝋、ステアリン酸オクタコシル、セレシンワックス、(ヒドロキシステアロキシ)ステアリン酸C20~C40アルキルワックス、ポリビニルアルコールワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、セチルアルコールでエステル化されたヒマシ油の水素化によって得られるワックス、オウリキュリーワックス、モンタンワックス、INCI名でトリヒドロキシステアリンというトリヒドロキシステアリン酸グリセリル(例えば、Elementis社製の商品名Thixcin R)、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0051】
上記のワックス成分は1つ以上使用することができる。例えば、同じ融点もしくは近い融点を有する複数のワックス成分を組み合わせて使用してもよく、異なる融点の複数のワックス成分を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
本発明のより好ましい実施形態において、本発明による組成物は、カルナバワックス、オゾケライト、微結晶ワックス、ポリメチレンワックス、12-ヒドロキシステアリン酸、キャンデリラワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、硬化ホホバ油及びトリヒドロキシステアリン酸グリセリル、並びにこれらの混合物から選択される少なくとも1つの融点65℃以上のワックス成分を含む。
【0053】
(炭素鎖系油)
本発明において、前記皮膚外用剤組成物は、少なくとも1つの炭素鎖系油を含む油分を含む。
【0054】
本発明における「炭素鎖系」とは、油の分子骨格構造が主に炭素-炭素結合により形成されることを意味し、骨格構造が主鎖構造及び/又は分岐鎖構造を含むことで、シリコン鎖系油と区別される。
【0055】
本発明の炭素鎖系油は、通常、室温及び1気圧で液状の油であり、揮発性油であっても不揮発性油であってもよいが、好ましくは不揮発性液状油を用いる。本明細書における「不揮発性液状油」とは、常温(25℃)・常圧(1気圧)で揮発性を示さず(例えば、常圧での沸点が約200℃以上の油分が含まれる)、常温・常圧で流動性を有する、固形でない液状の油分を意味する。
【0056】
本発明の炭素鎖系油は、石油化学工業由来の液状油であってもよく、動植物由来の液状油であってもよく、具体的には、炭化水素油、植物油、鉱油、エステル油、エーテル油等から選択することができる。
【0057】
具体例としては、亜麻仁油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、卵黄油、肝油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸エステル、トリイソパルミチン酸グリセリル等の液状油脂;オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリル等のオクタン酸エステル、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、(2-エチルヘキサン酸)セチル等のイソオクタン酸エステル、ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル、パルミチン酸オクチル等のパルミチン酸エステル、ステアリン酸イソセチル等のステアリン酸エステル、イソステアリン酸イソプロピル等のイソステアリン酸エステル、イソパルミチン酸オクチル等のイソパルミチン酸エステル、オレイン酸イソデシル等のオレイン酸エステル、アジピン酸ジイソプロピル等のアジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエチル等のセバシン酸ジエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油;炭素数8~30の直鎖/分岐炭化水素油又はポリオレフィン油、例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、水素化ポリイソブチレン、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油;直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セテアリルアルコールなど)及び分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリルエーテル(バチロール)、2-デシルテトラデシルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール)等を含む高級脂肪アルコール;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール油脂肪酸、イソステアリン酸、リノール酸(linolic acid)、リノール酸(linoleic acid)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等の高級脂肪酸;ポリオキシブチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等の炭素数10~40のエーテル型又はポリアルキレン型の高分子ポリエーテル油が挙げられる。
【0058】
上記の炭素鎖系油は、1種類又は2種類以上の混合物を使用することができる。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、使用感及び安定性の観点から、上記の炭素鎖系油の中でも極性油を使用することが好ましい。また、いくつかの実施形態において、炭素鎖系油のうち極性油の含有量は80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0059】
また、本発明の効果に影響を与えないことを前提として、揮発性又は不揮発性のシリコーン油等のシリコン鎖系油も本発明の油分に使用することができる。
【0060】
揮発性シリコーン油には、従来から化粧料等に使用されている常温で揮発性を有するシリコーン油、例えば、揮発性の直鎖状シリコーン油(揮発性ジメチコン)及び揮発性の環状シリコーン油(揮発性シクロメチコン)が含まれる。揮発性ジメチコンとしては、デカメチルテトラシロキサン等の低粘度ジメチルポリシロキサンを用いることができ、市販品としては、KF-96L-1.5cs、KF-96L-2cs(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。揮発性シクロメチコンとしては、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)等が挙げられる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の皮膚外用剤組成物における上記炭素鎖系油の含有量は、油分の全質量に対して、80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0062】
(界面活性剤)
本発明の皮膚外用剤組成物は界面活性剤を含む。界面活性剤の種類は特に制限されず、当分野で一般に用いられるアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤のうちの1つ以上を使用することができる。
【0063】
本発明に用いられるアニオン性界面活性剤の例としては、脂肪酸石鹸(例えば、ラウリン酸ナトリウム及びパルミチン酸ナトリウム);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸カリウム);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POEラウリルスルフェートトリエタノールアミン及びPOEラウリル硫酸ナトリウム);N-アシルサルコシン酸(例えば、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム及びラウロイルメチルタウリンナトリウム);リン酸エステル塩(例えば、POEオレイルエーテルリン酸ナトリウム及びPOEステアリルエーテルリン酸ナトリウム);スルホコハク酸塩(例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ナトリウムモノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホスクシネート及びナトリウムラウリルポリプロピレングリコールスルホスクシネート);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン及び直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸);高級脂肪酸エステル硫酸塩(例えば、水添ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム);N-アシルグルタミン酸塩(例えば、N-ラウロイルグルタミン酸一ナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム及びN-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム);硫酸化油(例えば、ロート油);POEアルキルエーテルカルボン酸;POEアルキルアリールエーテルカルボキシレート;α-オレフィンスルホネート;高級脂肪酸エステルスルホネート;sec-アルコールスルフェート;高級脂肪酸アルキルアミドスルフェート;ナトリウムラウロイルモノエタノールアミンスクシネート;ジトリエタノールアミンN-パルミトイルアスパルテート;及びカゼイン酸ナトリウムが挙げられる。
【0064】
本発明に用いられるカチオン性界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド及びラウリルトリメチルアンモニウムクロリドム);アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム);ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド ジアルキルジメチルアンモニウム塩;ポリ(N,N’-ジメチル-3-メチレンピペリジニウム)クロリド;アルキル第四級アンモニウム塩;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;アルキルイソキノリニウム塩;ジアルキルモルホリン塩;POEアルキルアミン;アルキルアミン塩;ポリアミン脂肪酸誘導体;アミルアルコール脂肪酸誘導体;塩化ベンザルコニウム;及び塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0065】
本発明に用いられる両性界面活性剤の例としては、イミダゾリン型両性界面活性剤(例えば、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム塩及び2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキシド-1-カルボキシエチルイルオキシ2ナトリウム塩);及びベタイン型界面活性剤(例えば、2-ヘプタデシル-n-カルボキシメチル-n-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン及びスルホベタイン)が挙げられる。
【0066】
本発明に用いられる非イオン性界面活性剤の例としては、親水性非イオン性界面活性剤及び親油性界面活性剤が挙げられる。
【0067】
上記の親水性界面活性剤の例としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル[例えば、ヘキサグリセリルモノラウレート(HLB14.5)、ヘキサグリセリルモノミリステート(HLB11)、ヘキサグリセリルモノステアレート(HLB9.0)、ヘキサグリセリルモノオレエート(HLB9.0)、デカグリセリルモノラウレート(HLB15.5)、デカグリセリルモノミリステート(HLB14.0)、デカグリセリルモノステアレート(HLB12.0)、デカグリセリルモノイソステアレート(HLB12.0)、デカグリセリルモノオレエート(HLB12.0)、デカグリセリルジステアレート(HLB9.5)及びデカグリセリルジイソステアレート(HLB10.0)];ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレン(「POE」)(5)グリセリルモノステアレート(HLB9.5)、POE(15)グリセリルモノステアレート(HLB13.5)、POE(5)グリセロールモノオレート(HLB9.5)及びPOE(15)グリセリルモノオレエート(HLB14.5)];ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル[例えば、POE(20)ソルビタンモノステアレート(HLB16.9)、POE(20)ソルビタンモノパルミテート(HLB15.6)、POE(20)ソルビタンモノステアレート(HLB14.9)、POE(6)ソルビタンモノステアレート(HLB9.5)、POE(20)ソルビタントリステアレート(HLB10.5)、POE(20)ソルビタンモノイソステアレート(HLB15.0)、POE(20)ソルビタンモノオレエート(HLB15.0)、POE(6)ソルビタンモノオレエート(HLB10.0)及びPOE(20)ソルビタントリオレエート(HLB11.0)];ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル[例えば、POE(6)ソルビットモノラウレート(HLB15.5)、POE(60)ソルビットテトラステアレート(HLB13.0)、POE(30)ソルビットテトラオレエート(HLB11.5)、POE(40)ソルビットテトラオレエート(HLB12.5)及びPOE(60)ソルビットテトラオレエート(HLB14.0));ポリオキシエチレンラノリン/ラノリンアルコール/ミツロウ誘導体[例えば、POE(10)ラノリン(HLB12.0)、POE(20)ラノリン(HLB13.0)、POE(30)ラノリン(HLB15.0)、POE(5)ラノリンアルコール(HLB12.5)、POE(10)ラノリンアルコール(HLB15.5)、POE(20)ラノリンアルコール(HLB16.0)、POE(40)ラノリンアルコール(HLB17.0)及びPOE(20)ソルビットミツロウ(HLB9.5)];ポリオキシエチレンヒマシ油/水添ヒマシ油[例えば、POE(20)ヒマシ油(HLB10.5)、POE(40)ヒマシ油(HLB12.5)、POE(50)ヒマシ油(HLB14.0)、POE(60)ヒマシ油(HLB14.0)、POE(20)水添ヒマシ油(HLB10.5)、POE(30)水添ヒマシ油(HLB11.0)、POE(40)水添ヒマシ油(HLB13.5)、POE(60)水添ヒマシ油(HLB14.0)、POE(80)水添ヒマシ油(HLB16.5)及びPOE(100)水添ヒマシ油(HLB16.5)];ポリオキシエチレンステロール/水添ステロール[例えば、POE(5)フィトステロール(HLB9.5)、POE(10)フィトステロール(HLB12.5)、POE(20)フィトステロール(HLB15.5)、POE(30)フィトステロール(HLB18.0)、POE(25)フィトスタロール(HLB14.5)及びPOE(30)コレスタノール(HLB17.0)];ポリオキシエチレンアルキルエーテル[例えば、POE(2)ラウリルエーテル(HLB9.5)、POE(4.2)ラウリルエーテル(HLB11.5)、POE(9)ラウリルエーテル(HLB14.5)、POE(5.5)セチルエーテル(HLB10.5)、POE(7)セチルエーテル(HLB11.5)、POE(10)セチルエーテル(HLB13.5)、POE(15)セチルエーテル(HLB15.5)、POE(20)セチルエーテル(HLB17.0)、POE(23)セチルエーテル(HLB18.0)、POE(4)ステアリルエーテル(HLB9.0)、POE(20)ステアリルエーテル(HLB18.0)、POE(7)オレイルエーテル(HLB10.5)、POE(10)オレイルエーテル(HLB14.5)、POE(15)オレイルエーテル(HLB16.0)、POE(20)オレイルエーテル(HLB17.0)、POE(50)オレイルエーテル(HLB18.0)、POE(10)ベヘニルエーテル(HLB10.0)、POE(20)ベヘニルエーテル(HLB16.5)、POE(30)ベヘニルエーテル(HLB18.0)、POE(2)(C12-15)アルキルエーテル(HLB9.0)、POE(4)(C12-15)アルキルエーテル(HLB10.5)、POE(10)(C12-15)アルキルエーテル(HLB15.5)、POE(5)2級アルキルエーテル(HLB10.5)、POE(7)2級アルキルエーテル(HLB12.0)、POE(9)アルキルエーテル(HLB13.5)及びPOE(12)アルキルエーテル(HLB14.5)];ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル[例えば、POE(1)ポリオキシプロピレン(「POP」)(4)セチルエーテル(HLB9.5)、POE(10)POP(4)セチルエーテル(HLB10.5)、POE(20)POP(8)セチルエーテル(HLB12.5)、POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル(HLB11.0)及びPOE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテル(HLB12.0)];ポリエチレングリコール脂肪酸エステル[例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)(10)(HLB12.5)、PEG(10)モノステアレート(HLB11.0)、PEG(25)モノステアレート(HLB15.0)、PEG(40)モノステアレート(HLB17.5)、PEG(45)モノステアレート(HLB18.0)、PEG(55)モノステアレート(HLB18.0)、PEG(10)モノオレエート(HLB11.0)、PEGジステアレート(HLB16.5)及びPEGジイソステアレート(HLB9.5)];及び(トリ)ポリオキシエチレングリセリルイソステアレート[例えば、PEG(8)グリセリルイソステアレート(HLB10.0)、PEG(10)グリセリルイソステアレート(HLB10.0)、PEG(15)グリセリルイソステアレート(HLB12.0)、PEG(20)グリセリルイソステアレート(HLB13.0)、PEG(25)グリセリルイソステアレート(HLB14.0)、PEG(30)グリセリルイソステアレート(HLB15.0)、PEG(40)グリセリルイソステアレート(HLB15.0)、PEG(50)グリセリルイソステアレート(HLB16.0)及びPEG(60)グリセリルイソステアレート(HLB16.0)]が挙げられる。
【0068】
親油性界面活性剤の例としては、POE(2)ステアリルエーテル(HLB4.0)、自己乳化プロピレングリコールモノステアレート(HLB4.0)、ミリスチン酸グリセリル(HLB3.5)、モノステアリン酸グリセリル(HLB4.0)、自己乳化モノステアリン酸グリセリル(HLB4.0)、モノイソステアリン酸グリセリル(HLB4.0)、モノオレイン酸グリセリル(HLB2.5)、トリステアリン酸ヘキサグリセリル(HLB2.5)、ペンタステアリン酸デカグリセリル(HLB3.5)、ペンタイソソステアリン酸デカグリセリル(HLB3.5)、ペンタオレイン酸デカグリセリル(HLB3.5)、モノステアリン酸ソルビタン(HLB4.7)、トリステアリン酸ソルビタン(HLB2.1)、モノイソステアリン酸ソルビタン(HLB5.0)、セスキイソステアリン酸ソルビタン(HLB4.5)、モノオレイン酸ソルビタン(HLB4.3)、POE(6)ソルビットヘキサステアレート(HLB3.0)、POE(3)ヒマシ油(HLB3.0)、PEG(2)モノステアレート(HLB4.0)、エチレングリコールモノステアレート(HLB3.5)及びPEG(2)ステアレート(HLB4.5)が挙げられる。
【0069】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、使用感及び安定性の観点から、HLB値が4.5~20、好ましくは5~15である1つ以上の非イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0070】
(皮膚外用剤組成物)
本発明の皮膚外用剤組成物は、上記の各成分を均一に混合することにより得られる。混合方法は特に限定されない。各成分を同時に混合してもよく、任意のいくつかの成分を混合してから、他の成分と混合してもよい。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、上記固体粉末粒子と少なくとも一部の炭素鎖系油とを混合してから、さらに他の成分と混合することで、本発明の皮膚外用剤組成物を得る。
【0071】
また、混合の温度については、いくつかの実施形態において、30~70℃の範囲で混合することができる。
【0072】
本発明における固体粉末粒子の配合量は、前記皮膚外用剤組成物の全質量に対して、0.1~10%とすることができ、好ましくは0.3~8%、さらに好ましくは0.5~5%とする。
【0073】
本発明におけるワックスの配合量は、前記皮膚外用剤組成物の全質量に対して、1~30%とすることができ、好ましくは2~20%、さらに好ましくは3~15%、更好ましくは3~10%とする。
【0074】
本発明における炭素鎖系油の配合量は、前記皮膚外用剤組成物の全質量に対して、50~95%とすることができ、好ましくは55~90%、さらに好ましくは60~85%とする。
【0075】
本発明の界面活性剤の配合量は、前記皮膚外用剤組成物の全質量に対して、3~30%とすることができ、好ましくは5~28%、さらに好ましくは10~25%とする。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の皮膚外用剤組成物中の水分含有量(組成物の全質量に対して)は5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の皮膚外用剤組成物は水を実質的に含まないか、又は、本発明の組成物の混合時に水を加えず、本発明の組成物中の水分は各成分に不可避的に含まれた残留水分のみに由来するものである。
【0077】
さらに、本発明のいくつかの実施形態において、成分a)~d)の合計配合量は、前記皮膚外用剤組成物の全質量に対して、85%以上とすることができ、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上とする。
【0078】
本発明の皮膚外用剤組成物の硬度は、特に限定されないが、いくつかの実施形態において、本発明の皮膚外用剤組成物は40N/m以上の硬度、好ましくは50~300N/mの硬度を有する。また、本発明の皮膚外用剤組成物は、定形を有しても有しなくてもよい。人体や皮膚に直接使用してもよく、他のキャリアに担持させて、あるいは他のキャリアを介して人体や皮膚に使用してもよい。
【0079】
また、本発明の組成物には、上記成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料組成物への使用に適する種々の補助成分を配合することができる。このような補助成分としては、防腐剤、酸化防止剤、錯化剤、pH調整剤(酸性又は塩基性)、香料、その他の充填剤、殺菌剤、臭気吸収剤、着色剤(顔料や染料)、フィルム形成ポリマー、増粘剤及び/又はゲル化剤、活性成分(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム;マデカッソシドなどの植物抽出物)などが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、本発明の皮膚外用剤組成物は、自己成形性及び自己支持性を有する固体であるため、メッシュ状、フィラメント状、布状などの(水不溶性)人工・天然ポリマーベースの支持体を含む必要はない。
【0080】
さらに、本発明の皮膚外用剤組成物は、必要に応じて、クリーム、バーム、定形の固形又はゲル状の化粧料等の様々な化粧料とすることができる。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の皮膚外用剤組成物は、人体や皮膚の洗浄用製品の製造に使用することができ、より好ましくは、メイク落としなどの用途に使用される洗浄剤の製造に使用することができる。
【実施例
【0081】
以下に具体的な実施例を示して本発明を説明する。
【0082】
<原料>
本発明の原料の名称及び製造元は下記の表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
下記の表2は、表1に示す固体粒子の物性データである。
【0085】
【表2】
【0086】
<製造方法>
[材料の調製]
素材A:ワックスを一部の炭化水素系油に入れ、90±2℃に加熱して完全に溶融させる。
素材B:固体粒子と残りの油分を混合し、粒子が十分に分散するまで激しく撹拌した後、素材Aを加え、温度を85±2℃にして、他の原料を順番に加え、混合後にろ過して排出し、そして保管する。
【0087】
[材料の充填]
材料をケトルに入れ、82±2℃に加熱し、材料が十分に溶融してから充填を行う。充填終了後、半製品を冷却することで、円柱状の冷却品を得、箱に詰めて室温で保管する。
【0088】
<試験方法>
[使用感の評価]
下記の実施例及び比較例で得られた固体物を用いて(顔の)皮膚を洗浄し、水で洗い流した後、ベタツキ感の有無を試験した(20人の平均データ)。
【0089】
[安定性の評価]
試験品を横にしてオーブンに入れ、オーブンの温度を5~45℃に設定し、1日2サイクルとし、5℃、45℃を2時間ずつ保持した。図1に示す温度制御曲線のように、合計14日間、28サイクルの温度変化処理を行い、試験品の表面に油が滲み出たかを観察した。
円柱体を横にして(直立ではなく、図2を参照)、温度変化処理を実施することにより、輸送、保管中に発生し得る異常な保管状態での温度変化をシミュレートして、系の安定性を評価した。
【0090】
<実施例1~3、比較例1、2>
表1に示す各成分を上記の方法により組成物とし、試験を行った。
【0091】
【表3】
【0092】
なお、具体例を示して本発明を説明したが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0093】
以上に本開示の各実施例を説明したが、上記の説明は、網羅的なものではなく、例示的なものであり、本明細書の各実施例に限定されない。本明細書の各実施例の範囲及び趣旨を逸脱しない限り、様々な変形・変更を行えることは当業者には明らかである。本明細書で使用される用語は、各実施例の原理、実際の適用及び市場における技術の改良を最もよく説明するために、または、他の当業者が本明細書に開示される各実施例を理解できるように選択される。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の皮膚外用剤組成物は工業的に製造・利用可能である。
図1
図2