(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】耐火被覆手段付き鉄骨階段、階段室構造
(51)【国際特許分類】
E04F 11/02 20060101AFI20250414BHJP
E04F 11/025 20060101ALI20250414BHJP
【FI】
E04F11/02 100
E04F11/025
(21)【出願番号】P 2024111351
(22)【出願日】2024-07-10
【審査請求日】2024-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390010065
【氏名又は名称】株式会社横森製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】石黒 清一
(72)【発明者】
【氏名】中村 政宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 亨
(72)【発明者】
【氏名】井上 武信
(72)【発明者】
【氏名】井上 恵
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅之
【審査官】眞壁 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-097570(JP,A)
【文献】特開2005-220604(JP,A)
【文献】特開2009-062718(JP,A)
【文献】特開2009-250005(JP,A)
【文献】特開平09-053311(JP,A)
【文献】特開平06-264607(JP,A)
【文献】特開2008-069524(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0172165(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00 - 11/18
E04B 1/94
A62C 2/00 - 3/00
A62B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
「階段状の踏板」または「階段状の踏板と踊り場部分」とを鋼製のささら桁の内側面で挟んで構成した鉄骨階段に、
予め耐火被覆手段を形成してなり、以下のように構成したことを特徴とする耐火被覆手段付き鉄骨階段。
(1) 前記耐火被覆手段は、前記鉄骨階段の下面を塞ぐことができる耐火天井板の上面と前記鉄骨階段の下面との間に耐火被覆材料を配置して構成された。
(2) 前記耐火被覆手段の前記ささら桁側の外側面が、前記ささら桁の外面より平面視で外方に突出された。
【請求項2】
「階段状の踏板」または「階段状の踏板と踊り場部分」とを鋼製のささら桁の内側面で挟んで構成した鉄骨階段に、耐火被覆手段を形成してなり、以下のように構成したことを特徴とする耐火被覆手段付き鉄骨階段。
(1) 前記耐火被覆手段は、前記鉄骨階段の下面を塞ぐことができる耐火天井板の上面と前記鉄骨階段の下面との間に耐火被覆材料を配置して構成された。
(2) 前記耐火被覆手段の前記ささら桁側の外側面が、前記ささら桁の外面より平面視で外方に突出された。
(3) 前記耐火被覆手段は、前記鉄骨階段の下面を塞ぎかつ平面視で両ささら桁の下面に沿った形状の耐火被覆材料枠の下面に、平面視で前記耐火被覆材料枠の外側面に沿った形状の耐火天井板を固定し、かつ前記耐火被覆材料枠内に耐火ロックウールを充填して構成された。
(4) 前記耐火被覆手段の前記耐火被覆材料枠が、前記ささら桁の下面に固定された。
【請求項3】
「階段状の踏板」または「階段状の踏板と踊り場部分」とを鋼製のささら桁の内側面で挟んで構成した鉄骨階段に、耐火被覆手段を形成してなり、以下のように構成したことを特徴とする耐火被覆手段付き鉄骨階段。
(1) 前記耐火被覆手段は、前記鉄骨階段の下面を塞ぐことができる耐火天井板の上面と前記鉄骨階段の下面との間に耐火被覆材料を配置して構成された。
(2) 前記耐火被覆手段の前記ささら桁側の外側面が、前記ささら桁の外面より平面視で外方に突出された。
(3) 前記耐火被覆手段の上面側であって、両ささら桁の外面に、弾力性のある難燃性ガスケットが固定された。
(4) 前記難燃性ガスケットの外周面が、前記耐火被覆手段の外側面より平面視で外方に突出された。
【請求項4】
所定の耐火構造で階段室壁により区画され、所定の耐火構造で階段室床を備えた上下階にわたる階段室内で、階段歩行方向の一側で上方に位置する階段室床と、他側で下方に位置する階段室床間に、耐火被覆手段付き鉄骨階段が架設された階段室の構造であって、以下のように構成される階段室構造。
(1) 前記耐火被覆手段は、前記鉄骨階段の下面を塞ぐことができる耐火天井板の上面と前記鉄骨階段の下面との間に耐火被覆材料を配置して構成された。
(2) 前記耐火被覆手段の外側面が、前記
鉄骨階段のささら桁の外面より平面視で外方に突出され、前記耐火被覆手段の外側面が前記階段室壁の壁面に当接され、あるいは前記階段室壁の壁面の近傍の位置に配置された。
(3) 前記耐火被覆手段の上面側であって、前記両ささら桁の外面と前記階段室壁の壁面との間に弾力性のある難燃性ガスケットが密着され、前記難燃性ガスケットが前記両ささら桁の外面で階段歩行方向の全長にわたり配置された。
【請求項5】
以下のように構成したことを特徴とする
請求項4に記載の階段室構造。
(1) 前記階段室壁内の略中央で、階段歩行方向に中央階段室壁を配置して、前記中央階段室壁を境に垂直方向で、第一区画と第二区画との2つに区分し、前記第一区画内に第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段が、前記第二区画内に第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段とがそれぞれ架設され、同一階でクロス状に前記第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段と前記第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段とが配置された。
(2) 前記第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段及び前記第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段において、前記耐火被覆手段の外側面が、前記各ささら桁の外面より平面視で外方に突出され、前記各耐火被覆手段の外側面が前記階段室壁の壁面及び前記中央階段室壁の壁面に当接され、あるいは前記階段室壁の壁面の近傍の位置に配置された。
(3) 前記第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段及び前記第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段において、前記第一区画内及び前記第二区画内で、前記各耐火被覆手段の上面側であって、前記ささら桁の外面と前記中央階段室壁の壁面との間、および前記ささら桁の外面と前記階段室壁の壁面との間に、弾力性のある難燃性ガスケットが密着され、前記難燃性ガスケットが前記各ささら桁の外面で階段歩行方向の全長にわたり配置された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火被覆手段付き鉄骨階段、およびこの鉄骨階段を使用した階段室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物、とりわけ高層の建築物では、耐火構造の壁で囲まれた階段室内に設置した階段を、火災時などに避難階段として使用する。建築基準法では、階段室における壁、柱、梁、床については、防火区画として1時間耐火の規定があるが、階段そのものに関しては具体的な規定がない。(建築基準法施行令 第112条 防火区画)。また、一般に、工事現場で型枠や鉄筋を組みコンクリートを打設して形成する鉄筋コンクリ―ト製の階段もあるが、それよりは踏板を板状の鋼製のささら桁で挟み形成される鉄骨階段を工場で製造して、工事現場で躯体(梁など)に取り付ける場合が多い。現場作業が少なく、精度も高く軽量な鉄骨階段がより有効なためである。しかし、鉄筋コンクリート製の階段に比べ、鉄骨階段の耐火性能は十分とは言えない。そのため、鉄骨階段を防火区画に採用する場合、鉄骨階段の裏面を壁または床に見立ててALC板(軽量気泡コンクリート建材)や耐火ボード(石膏ボード)を取り付けて区画対応とする工法が一般的である。しかしこの工法では、鉄骨階段を躯体に取り付けた後に、現場で鉄骨階段の裏面にこれらの部材を取り付ける作業が発生するため現場作業が増えてしまう、かつ上を向いた作業となるため、作業性が非常に悪く取り付け時に当部材が落下するなどの安全性の問題があった。また、階段室内に設置した鉄骨階段を作業階段として使用する状況下において、当部材の取り付け作業中は階段を通行止めとせざるを得ず、上下階への作業動線が遮断されるため安全通路の確保や作業効率に悪影響を及ぼしていた。
また、工場で、予め鉄骨階段にALC板や耐火ボードを固定し、その状態で工場から工事現場に搬入する試みもなされているが、工場での鉄骨階段製作時、現場への搬送中、現場での取り付け揚重時に鉄骨階段に捻れが発生し当部材が破損してしまうため現実的ではなかった。とりわけ、人の移動量を倍に高めるように、X(エックス)階段と称する進行方向を逆にした2系列の階段を並列して、階段室内に設置する場合には(特許文献1)、顕著な問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-93742号公報
【文献】特開平4-309650号公報
【文献】特開2023-97570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
踊り場と階段部分(踏板)に現場でコンクリートを打設して耐火構造とする提案もなされていたが(特許文献2)、鉄骨階段全体の耐火構造を実現できていなかった。とりわけ、鋼製のささら桁の下面の耐火処理が難しかった。また、木造建築では、階段室内に設置される木造階段の下面に、現場施工で耐火被覆手段を形成して耐火処理を施す提案が多々あるが(例えば、特許文献3)、予め工場で階段に耐火処理を施す提案はなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、鉄骨階段の下面を塞ぐ耐火天井板を備えた前記耐火被覆手段を配置し、前記耐火被覆手段の外側面をささら桁の外面より平面視で外方に突出させて耐火被覆手段付きの鉄骨階段を構成し、あるいはこの耐火被覆手段付きの鉄骨階段を使用して弾力性のある難燃性ガスケットを適用して階段室構造を構成したので前記問題点を解決した。
【0006】
即ちこの耐火被覆手段付き鉄骨階段についての発明のうち、請求項1に記載の発明は、「階段状の踏板」または「階段状の踏板と踊り場部分」とを鋼製のささら桁の内側面で挟んで構成した鉄骨階段に、予め耐火被覆手段を形成してなり、以下のように構成したことを特徴とする耐火被覆手段付き鉄骨階段である。
(1) 前記耐火被覆手段は、前記鉄骨階段の下面を塞ぐことができる耐火天井板の上面と前記鉄骨階段の下面との間に耐火被覆材料を配置して構成された。
(2) 前記耐火被覆手段の前記ささら桁側の外側面が、前記ささら桁の外面より平面視で外方に突出された。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、「階段状の踏板」または「階段状の踏板と踊り場部分」とを鋼製のささら桁の内側面で挟んで構成した鉄骨階段に、耐火被覆手段を形成してなり、以下のように構成したことを特徴とする耐火被覆手段付き鉄骨階段である。
(1) 前記耐火被覆手段は、前記鉄骨階段の下面を塞ぐことができる耐火天井板の上面と前記鉄骨階段の下面との間に耐火被覆材料を配置して構成された。
(2) 前記耐火被覆手段の前記ささら桁側の外側面が、前記ささら桁の外面より平面視で外方に突出された。
(3) 前記耐火被覆手段は、前記鉄骨階段の下面を塞ぎかつ平面視で両ささら桁の下面に沿った形状の耐火被覆材料枠の下面に、平面視で前記耐火被覆材料枠の外側面に沿った形状の耐火天井板を固定し、かつ前記耐火被覆材料枠内に耐火ロックウールを充填して構成された。
(4) 前記耐火被覆手段の前記耐火被覆材料枠が、前記ささら桁の下面に固定された。
【0008】
また、前記請求項3に記載の発明は、「階段状の踏板」または「階段状の踏板と踊り場部分」とを鋼製のささら桁の内側面で挟んで構成した鉄骨階段に、耐火被覆手段を形成してなり、以下のように構成したことを特徴とする耐火被覆手段付き鉄骨階段。
(1) 前記耐火被覆手段は、前記鉄骨階段の下面を塞ぐことができる耐火天井板の上面と前記鉄骨階段の下面との間に耐火被覆材料を配置して構成された。
(2) 前記耐火被覆手段の前記ささら桁側の外側面が、前記ささら桁の外面より平面視で外方に突出された。
(3) 前記耐火被覆手段の上面側であって、両ささら桁の外面に、弾力性のある難燃性ガスケットが固定された。
(4) 前記難燃性ガスケットの外周面が、前記耐火被覆手段の外側面より平面視で外方に突出された。
【0009】
また、階段室構造についての発明のうち、請求項4に記載の発明は、所定の耐火構造で階段室壁により区画され、所定の耐火構造で階段室床を備えた上下階にわたる階段室内で、階段歩行方向の一側で上方に位置する階段室床と、他側で下方に位置する階段室床間に、耐火被覆手段付き鉄骨階段が架設された階段室の構造であって、以下のように構成される階段室構造である。
(1) 前記耐火被覆手段は、前記鉄骨階段の下面を塞ぐことができる耐火天井板の上面と前記鉄骨階段の下面との間に耐火被覆材料を配置して構成された。
(2) 前記耐火被覆手段の外側面が、前記鉄骨階段のささら桁の外面より平面視で外方に突出され、前記耐火被覆手段の外側面が前記階段室壁の壁面に当接され、あるいは前記階段室壁の壁面の近傍の位置に配置された。
(3) 前記耐火被覆手段の上面側であって、前記両ささら桁の外面と前記階段室壁の壁面との間に弾力性のある難燃性ガスケットが密着され、前記難燃性ガスケットが前記両ささら桁の外面で階段歩行方向の全長にわたり配置された。
【0010】
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項4に構成した発明において、以下のように構成したことを特徴とする階段室構造である。
(1) 前記階段室壁内の略中央で、階段歩行方向に中央階段室壁を配置して、前記中央階段室壁を境に垂直方向で、第一区画と第二区画との2つに区分し、前記第一区画内に第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段が、前記第二区画内に第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段とがそれぞれ架設され、同一階でクロス状に前記第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段と前記第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段とが配置された。
(2) 前記第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段及び前記第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段において、前記耐火被覆手段の外側面が、前記各ささら桁の外面より平面視で外方に突出され、前記各耐火被覆手段の外側面が前記階段室壁の壁面及び前記中央階段室壁の壁面に当接され、あるいは前記階段室壁の壁面の近傍の位置に配置された。
(3) 前記第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段及び前記第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段において、前記第一区画内及び前記第二区画内で、前記各耐火被覆手段の上面側であって、前記ささら桁の外面と前記中央階段室壁の壁面との間、および前記ささら桁の外面と前記階段室壁の壁面との間に、弾力性のある難燃性ガスケットが密着され、前記難燃性ガスケットが前記各ささら桁の外面で階段歩行方向の全長にわたり配置された。
【0011】
前記耐火被覆手段付き鉄骨階段を階段室に適用する場合、上記のように、階段室内では、階段室壁の壁面と鉄骨階段のささら桁の外側面との間にわずかな「隙間」が残ることが多い。耐火の観点では、火災時にこの隙間から鉄骨階段を挟んで上下方向に炎や煙が移動をするおそれがあり、上記課題に併せて、これを防止する手段も講じる必要がある。この観点からみると、耐火被覆手段付き鉄骨階段に関する発明は、以下のような手段で対応している。
請求項1に記載の耐火被覆手段付き鉄骨階段では、前記耐火被覆手段(耐火被覆手段を構成するいずれかの部材、すなわち耐火天井板および/または耐火被覆材料)の外側面が、ささら桁の外面より平面視(水平方向)で外方に突出されるように構成した。よって、耐火被覆手段の外側面を階段室壁の壁面に当接させることができ、前記「隙間」を塞ぐことができる。
また、請求項2に記載の耐火被覆手段付き鉄骨階段の発明では、前記耐火被覆手段を構成する部材のうち、耐火被覆材料枠および/または耐火天井板および/または耐火被覆材料の外側面を階段室壁の壁面に当接させることができ、同様に前記「隙間」を塞ぐことができる。
また、請求項3に記載の耐火被覆手段付き鉄骨階段の発明では、難燃性ガスケットの外周面が、耐火被覆手段の外側面より平面視(水平方向)で外方に突出されたので、耐火被覆手段付き鉄骨階段の内、少なくともささら桁側の面では、難燃性ガスケットの外周面を階段室壁の壁面に当接させることができ、前記「隙間」をより好適に塞ぐことができる。また、耐火被覆手段付き鉄骨階段の内、ささら桁側の以外の面に難燃性ガスケットを設けなかった場合でも、請求項1と同様に、耐火被覆手段のいずれかの部材の外側面を階段室壁の壁面に当接させることができ、前記「隙間」を塞ぐことができる。
また、鉄骨階段の平面視(略水平方向)で全周にわたり弾力性のある難燃性ガスケットが固定され、難燃性ガスケットの外周面が耐火被覆手段の外側面よりも外方に突出されることにより、耐火被覆手段付き鉄骨階段の全周にわたり、難燃性ガスケットの外周面を階段室壁の壁面に当接させることができ、前記「隙間」をより好適に塞ぐことができる。
【0012】
なお、前記における階段室床は、通常の鉄骨階段の上下両端部を架設支持できる構造の部材を表し、床を支持する鉄骨梁なども含む。
【発明の効果】
【0013】
この耐火被覆手段付き鉄骨階段の発明によれば、予め鉄骨階段に耐火被覆手段を固定できるので、工場で耐火被覆手段付き鉄骨階段を製造して、現場に搬入できる。よって、現場の階段室内で、鉄骨階段を取り付けた後に施工する耐火被覆の作業を大幅に軽減できる。また、耐火被覆手段として耐火天井板を設けてあるので、耐火被覆手段付き鉄骨階段を工場から現場に搬入する際に耐火被覆手段が破損されることを軽減できる。さらに耐火被覆手段を耐火被覆材料枠により形成した場合にはさらに耐火被覆手段の破損と現場での耐火被覆作業の軽減ができる。
また、鉄骨階段の下面を塞ぐことができる耐火天井板を設けて耐火被覆手段を形成し、さらに耐火被覆手段の外側面をささら桁の外面より平面視で外方に突出されるように構成させたので、耐火被覆手段付き鉄骨階段を階段室に適用した場合、階段室内に鉄骨階段を納めた状態で、階段室壁の壁面に耐火被覆手段の外側面を当接させることができる。よって、階段室内で耐火被覆手段付き鉄骨階段を挟んだ上下で火災の炎や煙を遮断、あるいは大幅に軽減できる。
【0014】
また、階段室構造の発明において、階段室内に、耐火被覆手段付き鉄骨階段を架設し、耐火被覆手段は、鉄骨階段の下面を塞ぐことができる耐火天井板と耐火被覆材料を設け、さらに、耐火被覆手段の外側面が、前記ささら桁の外面より平面視で外方に突出され、両ささら桁の外面と前記階段室壁の壁面との間に弾力性のある難燃性ガスケットを密着させたので、階段室壁の壁面と耐火被覆手段付き鉄骨階段との間の隙間を極めて小さくでき、火災時に、耐火被覆手段付き鉄骨階段を挟んで上下に炎や煙が移動することを大幅に軽減できる。さらに、ささら桁の外面または/および耐火被覆手段の上面に弾力性を備えた難燃性ガスケットを固定し、弾力性を備えた難燃性ガスケットの外面を耐火被覆手段の外周縁よりも外方に突出させたので、耐火被覆手段付き鉄骨階段を挟んで垂直方向に炎や煙が移動することを防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)はこの発明の耐火被覆手段付き鉄骨階段の正面図、(b)は耐火被覆手段付き鉄骨階段の底面図、(c)は階段室壁に耐火被覆手段付き鉄骨階段を入れたA-A断面図、を表す。
【
図2】(a)は
図1(b)のB-B断面図、(b)は使用する耐火被覆手段の平面図、(c)はC-C断面図、を表す。
【
図3】はこの発明の耐火被覆手段付き鉄骨階段と階段室壁の関係を表す拡大立断面図で、(a)は階段室壁に耐火被覆手段付き鉄骨階段を取り付ける前、(b)は階段室壁に耐火被覆手段付き鉄骨階段を取り付けた後の構造を表す。
【
図4】は、この発明の耐火被覆手段付き鉄骨階段及び階段室をX階段に適用した水平断面図を表す。
【
図5】は、
図4のD-D断面図で、中央階段室壁を透過させた状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面に基づいてこの発明の実施形態を説明する。
【0017】
1.鉄骨階段1の構成
【0018】
(1)この発明の実施形態で使用する鉄骨階段1は、通常の鉄骨階段と同様のものとする。所定階段幅で形成した板状の鋼製の蹴込み板3と底付き枠状の踏板4とから階段部分6を構成する(
図2(a))。所定段数の階段部分6の上端に板状の鋼製の上部踊り場8を連結し、所定段数の階段部分6の下端に板状の鋼製の下部踊り場11を連結する。上部踊り場8と下部踊り場11とで、踊り場部分13を構成する。以上のように構成した階段部分6と踊り場部分13を、左右から鋼製のささら桁16、16の内面17、17で挟むように、階段部分6及び踊り場部分13をささら桁16、16に固定する。このささら桁16と階段部分6または踊り場部分13との固定は溶接、ボルトナットなど従来から行われている任意の方法による。底付き枠状の踏板4、底付き枠状の上部踊り場8、下部踊り場11にモルタル21(セメント系材料)を充填して、鉄骨階段1を構成する。なお、モルタル21(セメント系材料)の充填は、工事現場で鉄骨階段1(耐火被覆手段付き鉄骨階段32)を設置後に行うこともできる。ここで、ささら桁16において、ささら桁16の内面17(階段部分6、踊り場部分13を配置した側)の他側を外面(階段室壁側)17aとする。また、ここで、両ささら桁16、16を結ぶ方向を階段幅方向とする。
【0019】
(2)鉄骨階段1の下面の形状、すなわち、両ささら桁16の下面18(下縁)を共に塞ぎ覆うことができる鋼製の耐火被覆材料枠24を形成する。耐火被覆材料枠24は、ささら桁16の下面(下縁)18および階段部分6および踊り場部分13の下面の全体を覆う大きさ、位置に配置される。なお、耐火被覆材料枠24が両ささら桁16の下面18(下縁)を共に塞ぎ覆うことができる形状であれば、必ず、階段部分6の下面および踊り場部分13の下面も覆うことになる。耐火被覆材料枠24は、ささら桁16の下面(下縁)18に沿った形状の2つの第一部材25a、25aと、両第一部材25a、25aを両端部で、それぞれ連結した第二部材25b、25b(階段幅方向)とで形成され、必要に応じて補強のために、第一部材25aの中間部で、両第一部材25a、25aを連結する第三部材25c(階段幅方向)を任意の位置に任意の本数だけ追加することもできる(
図2(b))。また、耐火被覆材料枠24の下面に所定の耐火性能を有する耐火天井板23の上面23aを配置して、耐火天井板23の上面23aを第一部材25a、第二部材25bに溶接により固定する。したがって、耐火天井板23の平面視で水平方向の外周形状も第一部材25aと同様な形状となる。よって、平面視で水平方向の耐火天井板23の外周は、固定した状態の第一部材25aおよび第二部材25bの外周と略同一に形成される。耐火天井板23としては、例えば厚さ2mm程度の鋼製の板材を用いることができるが、設置場所で要求される耐火性能を有すれば、その材質や厚さは任意である。ここでは、耐火性能、加工の容易さ、耐火被覆材料枠24との溶接固定のし易さから前記の鋼製とした。
なお、ここで、第一部材25a、第二部材25bとして、リップ付き溝形鋼(C字型の断面形状の溝形鋼)の溝を、形成される耐火被覆材料枠24の内側に向けて配置したものを使用し、第三部材25cとして山形鋼(L字型の断面形状のアングル材)を使用したが、耐火被覆材料枠24を構成でき、設置場所で要求される耐火性能を有すれば、その材質や厚さは任意であり、どのような形状の部材を使用するかも任意である。
なお、ここで耐火被覆材料枠24を鋼製とすることが望ましく、アルミ製などではなく鋼製としたのは、鋼製であるささら桁16への固定のし易さ、加工のし易さ、耐火耐熱性能などを考慮した理由からである。また、リップ付き溝形鋼や山形鋼を使用して上記形状とした理由は、枠状に組み立てが容易であり、かつ後述のように、枠状に組み立てた後に耐火ロックウール27を設置(詰め込み)し易いためである。
【0020】
(3)耐火被覆手段付きの鉄骨階段32の製作方法には、複数のバリエーションがあるが、ここでは先に耐火被覆手段29を構成した上で、それを鉄骨階段1に固定して合体させる製作方法(合体タイプ)について説明する。第一部材25a、25aと第二部材25b、25bとで耐火被覆材料枠24を形成し、その下面に耐火天井板23を固定する。その上で、耐火天井板23の上面23aに、耐火ロックウール(耐火被覆材料)27を敷き詰める。耐火ロックウール27としては、ニチアス株式会社製の「マキベエ(登録商標)」(密度60~120kg/m
3)を厚さ65mmで配置したが、特にこれに限定されない。ただし、予めロール状に形成された耐火被覆材料は、敷き詰めが容易であり好ましい。第一部材25a、第二部材25bは、溝形鋼で、溝(開口)を内側に向けて配置されているので、耐火ロックウール27の四周縁は第一部材25a、第二部材25bの中に収容され、耐火ロックウール27がばらけることなく整然と配置される。耐火ロックウール27の上面側から、溶接ピンなどを打ち、耐火ロックウール27を下面にある耐火天井板23に固定する。ここで、耐火天井板23と耐火被覆材料枠24とは固定されているので、耐火被覆材料枠24内に敷き詰め充填された耐火ロックウール27は耐火被覆材料枠24内に保持される。この際、耐火ロックウール27は押さえた部分でなるべく圧縮が生じないように元の耐火ロックウールの形状を保つように耐火天井板23に固定するのが好ましい。
このようにして、耐火天井板23を固定した耐火被覆材料枠24に耐火ロックウール27を詰め、耐火被覆手段29を構成する(
図2(b)(c)、
図1(c))。
【0021】
(4)なお、耐火被覆材料は、所定の耐火性能を発揮できれば耐火ロックウールに限定されず、耐火シート、耐火塗料などを用いることもできる(図示していない)。例えば、耐火シート、耐火塗料を使用する場合には、耐火天井板23の上面23a(必要に応じてさらに下面23bにも)耐火シートを貼り、あるいは耐火塗料を塗布する。耐火耐熱性能を考慮すれば、耐火天井板23の上面23aへの適用が望ましく、この場合には、耐火天井板23の上面23aで、耐火シートまたは耐火塗料がささら桁16の下面(下縁)18の全体が当接する範囲に至っていることが必要である。
また、耐火シート、耐火塗料を使用する場合には、耐火被覆材料枠24は省略することもでき、この場合、耐火天井板23の端部を上方に折り曲げ、ささら桁の16の外面に溶接で固定する(図示していない)。
【0022】
(5)予め構成した耐火被覆手段29の上面29b(すなわち、耐火被覆材料枠24の上面であり、耐火天井板23が配置される側の反対側)をささら桁16、16の下面(下縁)18に固定する。
【0023】
(6)さらに、ささら桁16の外面17aで、耐火被覆手段29の直上に、弾力性のある環状(中空)の難燃性ガスケット30を配置する。難燃性ガスケット30はささら桁16の外面17aに固定し、または耐火被覆手段29の上面29bに固定し、あるいはその両方に固定する。
なお、耐火被覆手段付きの鉄骨階段32を階段室40に設置した際、階段室壁43の内面43aとささら桁16の外面17aと耐火被覆手段29とに接した状態で難燃性ガスケット30がささら桁16または耐火被覆手段29に対して移動しないように配置されれば(
図2(b)(c))、難燃性ガスケット30をささら桁16の外面17aに固定しない場合もある。また、難燃性ガスケット30は、建築用のガスケットで、弾力性を備えた耐火材料であれば材質や断面形状は任意である。
【0024】
(7)以上のようにして、耐火被覆手段付きの鉄骨階段32を構成する(
図1(a)(b)、
図2(a))。ここで、耐火被覆手段29の外側面29a(第一部材25aの側面)は、平面視で、ささら桁16の外面17aよりも外方に突出している(
図1(a)(b)(c)、
図3(a))。また、難燃性ガスケット30の外周面(最外端)30aは、平面視で、耐火被覆手段29の外側面29aよりも外方に突出している(
図1(a)(b)、
図3(a))。
【0025】
(8)また、前記耐火被覆手段付きの鉄骨階段32の製作方法として、合体タイプについて説明したが、鉄骨階段1の下面に、耐火被覆手段29の各部材(耐火被覆材料枠24の各部材、耐火ロックウール27、耐火天井板23など)を順に固定して、耐火被覆手段29を構成する製作方法(組立タイプ)もある。
この方法では、組み立ての手順は任意であるが、例えば、鉄骨階段1の下面、すなわち、ささら桁16の下面(下縁)18に、耐火被覆材料枠24の第一部材25a、第二部材25b、第三部材25cを固定しながら、各部材25a、25b、25cの相互も固定して、耐火被覆材料枠24を構成する。そして、鉄骨階段1(ささら桁16)の下面に固定をした耐火被覆材料枠24内に耐火ロックウール27を詰め、耐火被覆材料枠24内にロックウール27を保持させる。続いて、耐火天井板23の上面23aを耐火被覆材料枠24の各部材25a、25b、25cに固定する。
【0026】
(9)両製作方法の違いは、以下のような、長所、短所を生じている。
前記の合体タイプでは、鉄骨階段1と耐火被覆手段29を、別々に先に組み立てて溜め置きできるので、組立作業を単純化できる。また、耐火被覆手段29の内、特に耐火被覆材料枠24(第一部材25a、第二部材25b、第三部材25c)の組立作業が容易であり、全体として、耐火被覆手段付きの鉄骨階段32の製作時間を短縮できる。しかし、一方で、鉄骨階段1と耐火被覆手段29はそれぞれ製作上の多少の製作誤差があるため、鉄骨階段1と耐火被覆手段29の製作誤差の発生状況によっては、両者を合体した際に各々の製作誤差が拡大してしまい、その矯正に多くの時間を要する場合がある。
また、組立タイプでは、鉄骨階段1に寸法切された耐火被覆材料枠24の各部材25a、25b、25cを個別に取り付けていくため、多少の製作誤差があっても鉄骨階段1を定規として都度微調整しながら耐火被覆材料枠24を構成させることができる。そのため完成品である耐火被覆手段付きの鉄骨階段32の製作精度を高くすることができる。しかし、組立タイプでは、各部材を微調整しつつ取り付けながら耐火被覆手段付きの鉄骨階段32を製作することとなるため、合体タイプよりも製作に時間を要する。
両製作方法とも一長一短があるが、製作誤差の矯正の工程に多くの作業が生じると予想され、現状では組立タイプが適切な場合もあると思われる。
【0027】
2.階段室構造
【0028】
(1)階段室40を形成した建築物で、基準階床(階段室床)46とその下階床(階段室床)48の間に耐火被覆手段付きの鉄骨階段32を架設し固定する(
図1(a))、
図2(a))。なお、ここで基準階床46は一般的な任意の階を表し、地上階、2階や地下階などをも採用できる。
この際、耐火被覆手段29の外側面29aはささら桁16の外面17aよりも外方に突出しているので、階段室壁43の内面43aに耐火被覆手段29の外側面29aが当接あるいは極めて近接して(極めてわずかな隙間が生じる場合もある)配置される。また、この際、難燃性ガスケット30の外周面(最外端)30aは、耐火被覆手段29の外側面29aよりも外方に突出し、かつ難燃性ガスケット30が弾力性を有する材料を採用しているため、難燃性ガスケット30はささら桁17の外面17aと階段室壁43の壁内面43aとの間に挟まれ、押しつぶされ変形をするので、ささら桁17の外面17aと階段室壁43の壁内面43aとの間の隙間を密閉できる(
図1(c)、
図3(b))。したがって、仮に耐火被覆手段付きの鉄骨階段32の耐火被覆手段29(耐火被覆材料枠24)の外側面と階段室壁43の壁内面43aとの間に隙間が生じていた場合でも、難燃性ガスケット30が、この隙間を吸収して階段室壁43の壁内面43aに密着できる。
【0029】
(2) また、基準階床46とその下階床48側においても、同様に、耐火被覆手段29の階段歩行方向38の先端29dが、耐火被覆手段付き鉄骨階段32の鉄骨階段1の先端(いわゆる巾木部分。外側面)1aよりも外方に突出しているので、耐火被覆手段29の先端29dが基準階床46(または下階床48)に当接あるいは極めて近接して(極めてわずかな隙間が生じる場合もある)配置される。また、この際、難燃性ガスケット30の外周面(最外端)30aは、耐火被覆手段29の外側面29aよりも外方に突出し、かつ難燃性ガスケット30が弾力性を有する材料を採用しているので、難燃性ガスケット30は基準階床46(または下階床48)との間に挟まれ、押しつぶされ変形をするので、鉄骨階段1の先端1aと基準階床46(または下階床48)との間の隙間を密閉できる(図示していない)。
【0030】
(3) このようにして、階段室40内で、耐火被覆手段付き鉄骨階段32の全周で、難燃性のガスケットの外周面が階段室の壁面と密着して、あるいは難燃性のガスケットの外周面が基準階床46またはその下階床48と密着した状態で配置される。
【0031】
(4)また、耐火被覆手段付きの鉄骨階段32を歩行する際に、上方に位置する耐火被覆手段付きの鉄骨階段32の下面が見えるが、耐火被覆手段付きの鉄骨階段32の下面、すなわち耐火被覆手段29の下面29c、に耐火天井板23が配置されているので耐火天井板23の下面23bのみが露出し、耐火ロックウール27などが見えず、外観を損なわれることがない。さらに、耐火天井板23の下面23bは平面であるので、その平面を利用して耐火被覆手段付きの鉄骨階段32の使用場所に応じた各種案内サイン(例えば上方階の階数の表示等)を表示し、あるいは表示用のディスプレイを設置することもできる(図示していない)。
【0032】
(5)また、このような構成とすれば実験によれば、耐火被覆手段付きの鉄骨階段32の直下(耐火天井板23の直下)をガスバーナーなどで1時間(60分間)燃焼させて急激に温度上昇させ、最終温度940℃程度で加熱した場合であっても、耐火被覆手段付きの鉄骨階段32の上方まで炎や煙が回らず、耐火被覆手段付きの鉄骨階段32を1時間耐火階段として十分に使用できることが確認できた。
したがって、耐火天井板23の厚さ、耐火被覆材料枠24の各部材25a、25b、25cの構成(特に第三部材25cの本数)や厚さ、ロックウール27の厚さや量などを調整すれば、1時間耐火はもとより90分耐火や120分耐火の各性能を発揮させることも可能である。
【0033】
3.X階段用の階段室の構成
【0034】
(1)前記通常の階段室40と同様に、X階段用の階段室40も、階段室壁43(階段室壁43A、43B)に囲まれている。ここでは、階段室40内で、階段室壁43A、43Bの間で階段室壁43A、43Bと平行に(階段歩行方向38と平行に)中央階段室壁45が設けられている。階段室40は中央階段室壁45を境に垂直方向に、第一区画A、第二区画Bの2系列の区画に区分されている(
図4)。また、中央階段室壁45において、第一区画A側に面する壁面を壁内面45aとし、第二区画B側に面する壁面を壁内面45bとする。
【0035】
(2)基準階床(階段室床)46の一側46aで、第一区画A内で上階床(階段室床)49の他側49bに向かう上りの第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段32Aが架設され、第二区画B内で下階床(階段室床)48の他側48bに向かう下りの第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段32Bが架設される(
図5、
図6)。同様に、基準階床46の他側46bでも第一区画A内で下階床48の他側48aに向かう下がりの第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段32Aが架設され、第二区画B内で上階床49の他側49aに向かう上りの第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段32Bが架設される(
図5、
図6)。
したがって、この実施形態では、同一階で、第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段32Aと第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段32Bとがクロス状に配置される。
【0036】
(3)この場合、第一区画Aにおいて、各第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段32Aで、耐火被覆手段29の外側面29aは、ささら桁16の外面17aよりも外方に突出しているので、段室壁43Aで、第一の耐火被覆手段付きの鉄骨階段32Aの耐火被覆手段29の耐火被覆材料枠24の外面25aが、段室壁43Aの壁内面43Aaに当接あるいは近接し、難燃性ガスケット30が段室壁43Aの壁内面43Aaに密着される。また、中央階段室壁45でも、第一の耐火被覆手段付きの鉄骨階段32Aの耐火被覆手段29の耐火被覆材料枠24の外面25aが、段室壁45の壁内面45aに当接あるいは近接し、難燃性ガスケット30が段室壁45の壁内面45aに密着される。
同様に、第二区画Bにおいて、各第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段32Bで、耐火被覆手段29の外側面29aは、ささら桁16の外面17aよりも外方に突出しているので、段室壁43Bで、第二の耐火被覆手段付きの鉄骨階段32Bの耐火被覆手段29の耐火被覆材料枠24の外面25aが、段室壁43Bの壁内面43Baに当接あるいは近接し、難燃性ガスケット30が段室壁43Bの壁内面43Baに密着される。また、中央階段室壁45でも、第二の耐火被覆手段付きの鉄骨階段32Bの耐火被覆手段29の耐火被覆材料枠24の外面25aが、段室壁45の壁内面45bに当接あるいは近接し、難燃性ガスケット30が段室壁45の壁内面45bに密着される。
また、基準階床46(46a、46b)など床側においても、前記通常の階段室40と同様に、各耐火被覆手段付き鉄骨階段32A、32Bで耐火被覆材料枠24の先端25d、さらには難燃性ガスケット30により、各耐火被覆手段付き鉄骨階段32A、32Bも基準階床46(46a、46b)などに密着される(図示していない)。
【0037】
(4)したがって、X階段の場合であっても、耐火被覆手段付きの鉄骨階段32(第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段32A、第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段32B)を1時間耐火階段として十分に使用できると考えられる。
したがって、火災時に、階段室のいずれかの階において、第一区画A,第二区画Bのいずれかの区画で煙が充満している場合であっても、他方の区画の階段を使って安全に避難することができる。
【0038】
(5)さらに、X階段では、第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段32A(第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段32B)の踏板4(階段部分6)で、上方に位置する第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段32A(第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段32B)の下面(すなわち、耐火被覆手段29の下面29c、耐火天井板23の下面)との垂直方向の距離が、通常の階段室に配置される鉄骨階段の場合より短くなるため(
図5)、踏板4(階段部分6)を歩行する人は、第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段32A(第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段32B)の下面が、頭上の近くに認識される。この場合も、歩行する人は、通常のX階段では鉄骨階段の階段部分6の下面が近くで目視されるが、この実施形態の場合、上方に位置する第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段32A(第二の耐火被覆手段付き鉄骨階段32B)の下面には、耐火天井板23の下面が位置するので、耐火天井板23の平坦な面のみが目視されるので、前記通常の階段室40の場合より、外観を損なわないという耐火天井板23の効果が発揮される。
【0039】
4.他の実施形態
【0040】
(1) 前記実施形態において、耐火被覆材料枠24を、第一部材25a、第二部材25b、第三部材25cにより構成するものとしたが、枠状に構成できれば、他の構成とすることもできる(図示していない)。さらに、耐火天井板23、耐火ロックウール27を鉄骨階段1の下面(ささら桁16の下面)に固定できれば、耐火被覆材料枠24を省略して、耐火被覆手段29を構成することもできる(図示していない)。
【0041】
(2) 前記実施形態において、各耐火被覆手段付き鉄骨階段32、32A、32Bに使用する鉄骨階段1の階段歩行方向38の両先端1a、1a(いわゆる巾木部分。外側面。
図1(a)、
図2(a))を、各床(基準床46、下階床48、下階床49)に密着して固定できれば、当該先端1aより耐火被覆手段29の端縁29d(すなわち、第二部材25bの外面。
図1(a)(b)))を階段歩行方向38で突出させないこともできる。さらに、この場合、鉄骨階段1の階段歩行方向38の両先端1a、1a側の面(いわゆる巾木部分。すなわち、耐火被覆手段29の端縁29d側の面、第二部材25bの外面側の面)において、難燃性ガスケット30を省略することもできる。
すなわち、この場合には、ささら桁16側でのみ、ささら桁1の外面17aから耐火被覆手段29の先端29aが突出され、または、ささら桁16側でのみ、難燃性ガスケット30の外面30aがささら桁1の外面から突出される。
【0042】
(3) また、前記実施形態において、より弾力性を確保するために難燃性ガスケットを環状(中空)としたが、中実の棒状とすることもできる(図示していない)。また、同様に、断面の外殻形状は、円形を想定しているが、四角形など他の形状とすることもできる(図示していない)。
【符号の説明】
【0043】
1 鉄骨階段
1a 鉄骨階段の先端(巾木部分。外側面)
3 蹴込み板(蹴上部分)
4 踏板(段板部分)
6 階段部分
8 上部踊り場(踊り場部分)
11 下部踊り場(踊り場部分)
13 踊り場部分
16 ささら桁
17 ささら桁の内面
17a ささら桁の外面
18 ささら桁の下面(下縁)
21 モルタル(セメント系材料)
23 耐火天井板
23a 耐火天井板の上面
23b 耐火天井板の下面
24 耐火被覆材料枠
25a 第一部材(耐火被覆材料枠)
25b 第二部材(耐火被覆材料枠)
25c 第三部材(耐火被覆材料枠)
25d 耐火被覆材料枠の先端
27 耐火ロックウール(耐火被覆材料)
29 耐火被覆手段
29a 耐火被覆手段の外側面
29b 耐火被覆手段の上面
29c 耐火被覆手段の下面
29d 耐火被覆手段の先端
30 難燃性ガスケット
30a 難燃性ガスケットの外周面
32 耐火被覆手段付きの鉄骨階段
32A 第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段
32B 第一の耐火被覆手段付き鉄骨階段
38 階段歩行方向
40 階段室
43、43A、43B 階段室壁
43a、43Aa、43Ba 階段室壁の内面
45 中央階段室壁
45a、45b 中央階段室壁の壁面
46 基準階床(階段室床)
46a 基準階床の一側
46b 基準階床の他側
48 下階床(階段室床)
48a 下階床の一側
48b 下階床の他側
49 上階床(階段室床)
49a 上階床の一側
49b 上階床の他側床
A 第一区画
B 第二区画
【要約】
【課題】工場で耐火被覆手段付きの鉄骨階段を製造して破損なく現場搬入できるので、現場での耐火被覆作業を軽減できる。
【解決手段】踏板4を含む階段部分6に上部踊り場8および下部踊り場11を配置し、鋼製のささら桁16で挟んで鉄骨階段1とする。鉄骨階段1の下面に沿って形成した耐火被覆枠24に耐火ロックウール27を詰め、耐火被覆枠24を、鉄骨階段1の下面に固定する。さらに、耐火被覆枠24の下面に沿った耐火天井板23を形成し、耐火天井板23の上面を耐火被覆枠24の下面に固定する。次に耐火被覆枠24の上方で、鉄骨階段1の外周(特にささら桁16の外面17a)に難燃性ガスケット30を配置して、耐火被膜手段付きの鉄骨階段32とする)。階段室40に耐火被膜手段付きの鉄骨階段32を設置すれば、階段室壁43の内面43aに難燃性ガスケット30が密着して隙間を生じさせない。
【選択図】
図1