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特許7665847照明システム、照明装置の制御方法、照明制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】照明システム、照明装置の制御方法、照明制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/13 20200101AFI20250414BHJP
   H05B 47/19 20200101ALI20250414BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20250414BHJP
【FI】
H05B47/13
H05B47/19
H05B45/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024122252
(22)【出願日】2024-07-29
【審査請求日】2024-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】岩元 和之
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/195281(WO,A1)
【文献】特開2017-143444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
H05B 45/00-45/59
H05B 47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射方向、または、焦点距離の少なくともいずれか一方を含む照射状態を調整して照射領域に照射する照明装置と、
前記照明装置の前記照射状態を制御する制御装置と、
複数の検出領域それぞれの人の有無を検出するセンサと、
を備え、
前記センサは、前記複数の検出領域にそれぞれ対応した複数のMEMS素子により構成される赤外線センサであり温度変化により複数の前記検出領域それぞれの人の有無を検出し、
前記制御装置は、
前記センサの検出結果と複数の前記検出領域のうち人が存在する領域である有人領域をあらかじめ学習させた位置検出モデルとに基づいて、前記位置検出モデルに応じた前記照射状態を特定した照射状態データを特定し、
前記照射状態データに基づき、前記照射領域への前記照射状態の制御を行い、
前記有人領域は、前記照射領域と異なる領域を含み、
前記有人領域には、前記検出領域の複数が含まれていて、
前記位置検出モデルは、
照明空間における同じ位置に前記人が存在しているものの、それぞれの前記有人領域に含まれる前記検出領域の一部が異なる複数の学習用データを用いて算出され、
前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域のそれぞれに対する前記温度変化の重みを表す情報を前記複数の学習用データの前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域それぞれに対する前記温度変化に基づいて算出し、前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域と前記温度変化の重みを表す情報とを対応付けることにより生成される、
照明システム。
【請求項2】
前記位置検出モデルは、
前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域のそれぞれに対する前記温度変化の重みを表す情報を前記複数の学習用データの前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域それぞれに対する前記温度変化の平均値に基づいて算出し、前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域と前記温度変化の重みを表す情報とを対応付けることにより生成される、
請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
前記照射状態には、配光角、明るさ、及び、光色のいずれかが含まれる、
請求項1または2に記載の照明システム。
【請求項4】
制御装置が、照射方向、または、焦点距離の少なくともいずれか一方を含む照射状態を調整して照射領域に照射する照明装置の前記照射状態を制御する方法であり、
前記制御装置は、
複数の検出領域にそれぞれ対応した複数のMEMS素子により構成される赤外線センサであり温度変化により複数の前記検出領域それぞれの人の有無を検出するセンサの複数の検出領域それぞれの人の有無の検出結果と複数の前記検出領域のうち人が存在する領域である有人領域をあらかじめ学習させた位置検出モデルとに基づいて、前記位置検出モデルに応じた前記照射状態を特定した照射状態データを特定し、
前記照射状態データに基づき、前記照射領域への前記照射状態の制御を行い、
前記有人領域は、前記照射領域と異なる領域を含み、
前記有人領域には、前記検出領域の複数が含まれていて、
前記位置検出モデルは、
照明空間における同じ位置に人が存在しているものの、それぞれの前記有人領域に含まれる前記検出領域の一部が異なる複数の学習用データを用いて算出され、
前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域のそれぞれに対する前記温度変化の重みを表す情報を前記複数の学習用データの前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域それぞれに対する前記温度変化に基づいて算出し、前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域と前記温度変化の重みを表す情報とを対応付けることにより生成される、
照明装置の制御方法。
【請求項5】
照射方向、または、焦点距離の少なくともいずれか一方を含む照射状態を調整して照射領域に照射する照明装置を制御する制御装置であり、
前記制御装置は、
複数の検出領域にそれぞれ対応した複数のMEMS素子により構成される赤外線センサであり温度変化により複数の前記検出領域それぞれの人の有無を検出するセンサの複数の検出領域それぞれの人の有無の検出結果と複数の前記検出領域のうち人が存在する領域である有人領域をあらかじめ学習させた位置検出モデルとに基づいて、前記位置検出モデルに応じた前記照射状態を特定した照射状態データを特定し、
前記照射状態データに基づき、前記照射領域への前記照射状態の制御を行い、
前記有人領域は、前記照射領域と異なる領域を含み、
前記有人領域には、前記検出領域の複数が含まれていて、
前記制御装置は、
前記位置検出モデルは、
照明空間における同じ位置に人が存在しているものの、それぞれの前記有人領域に含まれる前記検出領域の一部が異なる複数の学習用データを用いて算出され、
前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域のそれぞれに対する前記温度変化の重みを表す情報を前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域それぞれに対する前記温度変化に基づいて算出し、前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域と前記温度変化の重みを表す情報とを対応付けることにより生成される、
照明制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明システム、照明装置の制御方法、照明制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、照明空間の人の有無を検出して照明装置の照射方向、光量などを制御する技術が知られている(例えば、特許文献1から3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-61080号公報
【文献】特開2012-28015号公報
【文献】特開2021-184346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、照明空間の人の有無を検出して照明装置の照射方向、光量などを制御する技術において、人の位置の検出精度を高めることによって、より状況に合わせた制御を行うことが求められていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を一例とするものであり、人の位置の検出精度を高めることによって、より状況に合わせた照明装置の制御を行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る照明システムは、照射方向、または、焦点距離の少なくともいずれか一方を含む照射状態を調整して照射領域に照射する照明装置と、前記照明装置の前記照射状態を制御する制御装置と、複数の検出領域それぞれの人の有無を検出するセンサと、を備え、前記制御装置は、前記センサの検出結果と複数の前記検出領域のうち人が存在する領域である有人領域をあらかじめ学習させた位置検出モデルとに基づいて、前記位置検出モデルに応じた前記照射状態を特定した照射状態データを特定し、前記照射状態データに基づき、前記照射領域への前記照射状態の制御を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る照明システムによれば、人の位置の検出精度を高めることによって、より状況に合わせた照明装置の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る照明システムの構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図2】実施の形態に係る照明システムが備える照明装置を示す斜視図である。
図3】実施の形態に係る照明システムが設置されている照明空間の一例を示す模式図である。
図4】実施の形態に係る照明システムが設置されている照明空間における位置検出モデルと照射状態データにより実現される照射状態の一例を示す模式図である。
図5】実施の形態に係る制御装置による位置検出モデルの生成処理の一例を示す模式図である。
図6】実施の形態に係る制御装置による位置検出モデルの生成処理の別の一例を示す模式図である。
図7】実施の形態に係る制御装置が行う位置検出モデルの重み付け処理の一例を示す模式図である。
図8】実施の形態に係る制御装置が実行する照明制御方法の一例を示すフローチャートである。
図9】実施の形態に係る制御装置が実行する位置検出モデルの生成処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号が括弧を付して記載されている。
【0010】
[1] 照射方向、または、焦点距離の少なくともいずれか一方を含む照射状態を調整して照射領域に照射する照明装置(1)と、前記照明装置の前記照射状態を制御する制御装置(500)と、複数の検出領域それぞれの人の有無を検出するセンサ(102)と、を備え、前記制御装置は、前記センサの検出結果と複数の前記検出領域のうち人が存在する領域である有人領域をあらかじめ学習させた位置検出モデルとに基づいて、前記位置検出モデルに応じた前記照射状態を特定した照射状態データを特定し、前記照射状態データに基づき、前記照射領域への前記照射状態の制御を行う、照明システム(10)。
【0011】
[2] 前記有人領域は、前記照射領域と異なる領域を含む、[1]に記載の照明システム。
【0012】
[3] 前記センサは、温度変化により複数の前記検出領域それぞれの人の有無を検出し、前記有人領域には、前記検出領域の複数が含まれていて、前記制御装置は、前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域のそれぞれに対する温度変化の重みを表す情報を算出し、前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域と前記温度変化の重みを表す情報とを対応付けて前記位置検出モデルを生成する、[1]または[2]に記載の照明システム。
【0013】
[4] 前記制御装置は、前記有人領域に含まれる複数の前記検出領域それぞれに対する温度変化の平均値を算出し、前記温度変化の重みを表す情報は、前記平均値に基づいて算出する、[1]から[3]に記載の照明システム。
【0014】
[5] 前記照射状態には、配光角、明るさ、及び、光色のいずれかが含まれる、[1]から[4]に記載の照明システム。
【0015】
[6] 制御装置(500)が、照射方向、または、焦点距離の少なくともいずれか一方を含む照射状態を調整して照射領域に照射する照明装置(1)の前記照射状態を制御する方法であり、前記制御装置は、センサの複数の検出領域それぞれの人の有無の検出結果と複数の前記検出領域のうち人が存在する領域である有人領域をあらかじめ学習させた位置検出モデルとに基づいて、前記位置検出モデルに応じた前記照射状態を特定した照射状態データを特定し、前記照射状態データに基づき、前記照射領域への前記照射状態の制御を行う、照明装置の制御方法。
【0016】
[7] 照射方向、または、焦点距離の少なくともいずれか一方を含む照射状態を調整して照射領域に照射する照明装置(1)を制御する制御装置(500)であり、前記制御装置は、センサの複数の検出領域それぞれの人の有無の検出結果と複数の前記検出領域のうち人が存在する領域である有人領域をあらかじめ学習させた位置検出モデルとに基づいて、前記位置検出モデルに応じた前記照射状態を特定した照射状態データを特定し、前記照射状態データに基づき、前記照射領域への前記照射状態の制御を行う、照明制御装置。
【0017】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態に係る照明システム、照明装置の制御方法、及び、照明制御装置について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る照明システム10の構成を概略的に示す機能ブロック図である。図2は、照明システム10が備える照明装置1を示す斜視図である。図3は、照明システム10が設置されている照明空間200の一例を示す模式図である。図4は、照明システムが設置されている照明空間200における位置検出モデルA1,A2と照射状態データにより実現される照射状態I1,I2の一例を示す模式図である。
【0019】
図1に示すように、照明システム10は、照明装置1、照明制御装置(以下「制御装置500」という。)、及び、センサ装置100を備える。照明システム10は、図3図4に示すような店舗や展示場の照明空間200などに設置される。照明システム10では、照明空間200における展示物や家具などの照射対象物O1,O2に光を照射するための照明装置1の照射対象物への照射角度、焦点距離、配光角、光色(色温度を含む)、明るさなどの照明装置1の照射状態を、制御装置500が、センサ装置100から取得した情報とあらかじめ生成された情報とに基づいて制御する。端末300は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、PC(Personal Computer)などの、MCUと通信機能等を備えた機器である。端末300は、通信機能により、制御装置500や照明装置1と通信可能である。また、端末300は、通信機能により、センサ装置100と通信可能である。なお、端末300は、リモコン装置のように、所定のボタン操作と出力信号とが対応付けられた通信機能を有する電子機器であってもよい。
【0020】
図1及び図2に示すように、照明装置1は、本体部2と、制御回路5とを有する。本体部2は、筐体21と、レンズ22と、ベース部23と、アーム24と、を有する。
【0021】
筐体21は、いずれも不図示の例えばLED(Light Emitting Device)により構成される光源、リフレクターなどを含む照明装置1の構成要素が収容され、開口部にレンズ22が保持される。光源は、例えば、LEDの点灯状態を制御して光色(色温度を含む)と明るさの少なくともいずれか一方を制御することができる。筐体21には、フォーカスモータMfが収容される。フォーカスモータMfは、レンズ22の位置を移動させることによって本体部2からの焦点距離と配光角の少なくともいずれか一方(矢印F)を調整可能にする。
【0022】
ベース部23は、例えば、照明空間200の天井や壁に接続される。ベース部23は、下側に固定されたアーム24を保持する。ベース部23は、パンモータMpと、制御回路5とが格納されている。ベース部23は、パンモータMpによって左右に回転可能に構成される。パンモータMpの回転により、本体部2からの光の照射角度Lを左右にパン(矢印P)することができる。
【0023】
アーム24は、筐体21をベース部23に保持する。アーム24には、アーム24に取り付けられた筐体21を上下方向に回動可能にするチルトモータMtが設けられている。チルトモータMtの回転により、筐体21からの光の照射角度Lを上下にチルト(矢印T)することができる。
【0024】
制御回路5は、不図示のMCU(Micro Control Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)などの演算用のメモリとにより実現されるマイクロコンピュータなどのコンピュータによりに実現される。MCUは、プログラムの演算処理を実行することにより、以下に説明する制御回路5としての各種機能を実現する演算装置である。メモリは、MCUで演算処理されるプログラムが格納される揮発性のメモリである。制御回路5は、不図示の記憶部に格納されている機能プログラムをメモリに格納する。記憶部に格納されている機能プログラムとは、本実施の形態における制御回路5の各種機能を実現するためのプログラムである。メモリには、機能プログラムのうち、実現する機能に応じたプログラムが逐次格納され、MCUによって逐次実行される。プログラムは、機能に応じた関数や固定値などによって構成されている。プログラムが実行される際には、関数のみならず固定値であるデータも必要となる。
【0025】
制御回路5は、以上説明したハードウェア構成とプログラムとにより、以下に説明する通信機能と、モータ制御機能と、光源制御機能とを実現する。制御回路5は、通信機能として、制御装置500から送信された照明装置1の制御情報を受信する機能を実現する。また、制御回路5は、モータ制御機能として、制御装置500から受信した照明装置1の制御情報に応じて、上述したパンモータMp、チルトモータMt、フォーカスモータMfの回転量や回転方向をそれぞれ可変に制御し、照明装置1の焦点距離、照射方向、及び、配光角を制御する。さらに、制御回路5は、制御装置500から受信した照明装置1の制御情報に応じて、上述した光源(LED)の点灯状態を制御して光色(色温度を含む)と明るさの少なくともいずれか一方を制御する。
【0026】
図1に示すように、センサ装置100は、通信部101とセンサ102とを有する。通信部101は、センサ102が検出した情報を例えば無線通信により制御装置500に送信する。センサ102は、例えば、検出領域D(図3参照)における温度変化を検出する複数のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子により構成される赤外線センサである。センサ102は、人や物などが発する熱(赤外線)を、複数の検出領域ごとに検出することにより、検出領域それぞれの人の有無を検出することができる。
【0027】
制御装置500は、不図示のMCU(Micro Control Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)などの演算用のメモリと、プログラムや処理データを記憶する記憶部とにより実現されるマイクロコンピュータなどのコンピュータの一例である。MCUは、プログラムの演算処理を実行することにより、以下に説明する制御装置500としての各種機能を実現する演算装置である。メモリは、MCUで演算処理されるプログラムが格納される揮発性のメモリである。制御装置500は、不図示の記憶部に格納されている機能プログラムをメモリに格納する。記憶部に格納されている機能プログラムとは、本実施の形態における制御装置500の各種機能を実現するためのプログラムである。メモリには、機能プログラムのうち、実現する機能に応じたプログラムが逐次格納され、MCUによって逐次実行される。プログラムは、機能に応じた関数や固定値などによって構成されている。プログラムが実行される際には、関数のみならず固定値であるデータも必要となる。
【0028】
記憶部は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの不揮発性メモリにより実現される。記憶部は、各種機能を実現するための機能プログラムを格納する。また、記憶部は、制御装置500により用いられる各種処理データ、例えば、後述する位置検出モデルや照射状態データのデータ、照明装置1の制御情報などを格納する。
【0029】
制御装置500は、以上説明したハードウェア構成とプログラムとにより、通信部501、制御部502、操作・表示部503、などの機能ブロックを構成する。
【0030】
通信部501は、制御装置500が備える上述した構成と不図示の通信インタフェースなどにより、例えば、無線または有線通信により外部機器、すなわち、照明装置1、及び、センサ装置100と通信することができる。また、通信部501は、スマートフォンなどの端末300とも通信可能である。
【0031】
操作・表示部503は、ユーザが制御装置500を介して照明装置1を操作するための入力インタフェースと、ユーザが制御装置500及び照明装置1の制御状態を知覚するための出力インタフェースである。
【0032】
操作・表示部503における操作部を実現するハードウェア構成としては、例えば、各種のタッチパネルやキーボード、テンキー、ボタン等を例示することができる。例えば、ユーザが操作・表示部503を操作することにより、制御装置500を介して照明装置1の制御状態を設定することができる。なお、操作部を実現するハードウェア構成は、上述した例に限定されず、ユーザが制御装置500を操作するための入力を受け付けることができる機能を有していればよい。操作部は、例えば、通信部501を介した各種通信インタフェースのコマンドによる操作を受け付けるものであってもよく、また、音声によるコマンド入力で操作を受け付けるものであってもよい。
【0033】
操作・表示部503における表示部を実現するハードウェア構成としては、ユーザが制御装置500及び照明装置1の制御状態を知覚するための機能部、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機ELを備えた表示装置である。
【0034】
なお、操作・表示部503は、例えば、タッチパネルである場合は、操作部としての機能と表示部としての機能とが一体で実現されている。なお、操作・表示部503は、操作部または表示部としての一部の機能を有しないものであってもよい。また、制御装置500は、制御装置500に操作・表示部503を有するものに限定されず、制御装置500に操作・表示部503を有しないものであって、例えば、端末300が上述した操作・表示部503としての機能を実現するものであってもよい。
【0035】
制御部502は、MCU及びメモリが協働して、記憶部に記憶されているプログラムを実行することにより、以下に述べる処理を行う制御装置500による照明装置1の制御方法を実現する。
【0036】
図3に示すように、照明システム10において、センサ102による検出単位に応じて照明空間200を区分した所定の大きさ(面積)の領域(検出領域D)それぞれについて、センサ102の検出結果に基づいて複数の検出領域Dのうち人が存在する領域(有人領域)を特定するモデルとしてあらかじめ学習させたものを、位置検出モデルAとする。
【0037】
図4において、位置検出モデルA1及び位置検出モデルA2は、照明空間200における異なる位置に存在する人P1及び人P2が存在する有人領域M1,M2を特定する。
【0038】
図4に示すように、制御装置500の制御部502は、位置検出モデルA1,A2に応じた照明装置1の照射状態を特定した照射状態データに基づき、照射領域にある照射対象物O1,O2への照射状態I1,I2の制御を行う。制御部502が制御する照明装置1の照射状態を提供する照射領域は、例えば、照明空間200において人P1,P2が存在する有人領域とは異なる領域である。
【0039】
図4において、照射状態I1は、例えば、照明装置1から照射対象物O1を照射する照射状態である。また、照射状態I2は、例えば、照明装置1から照射対象物O2を照射する照射状態である。図4において、照射状態I1,I2は、主に照射角度などを制御している例を示しているが、照射状態データにより制御される照射状態は、上述したものに限定されない。また、制御部502が制御する照明装置1の照射領域は、照明空間200において人P1,P2が存在する有人領域M1,M2を含む領域であってもよい。
【0040】
図5は、制御装置500による位置検出モデルA11の生成処理の一例を示す模式図である。図6は、制御装置500による位置検出モデルA12の生成処理の別の一例を示す模式図である。
【0041】
図5に示す学習用データ200L_11~14と、図6に示す学習用データ200L_21~24とは、照明空間200の異なる位置に人が存在している場合に生じる温度変化を示すデータである。図5に示す位置検出データ200M1と図6に示す位置検出データ200M2は、学習用データ200L_11~14と学習用データ200L_21~24とに基づいて、照明空間200における位置検出モデルA11と位置検出モデルA12とが特定されていることを示すデータである。
【0042】
学習用データ200L_11~14は、照明空間200の同じ位置に人が存在している場合に生じる温度変化を、複数回にわたり測定したデータである。同様に、学習用データ200L_21~24も、照明空間200の同じ位置に人が存在している場合に生じる温度変化を、複数回にわたり測定したデータである。学習用データ200L_11~14,200L_21~24の有人領域M11~M14,M21~M24では、図3に示した照明空間200における複数の検出領域Dの範囲内に人が存在することで他の検出領域Dと比較して温度変化が生じている。つまり、学習用データ200L_11~14,200L_21~24の有人領域M11~M14,M21~M24は、センサ102が検出した検出領域Dの温度変化により、照明空間200における人の有無及び人の位置が示されている。Δtは、温度変化の高低(Hi-Lo)を示している。以下、主に図5に示す位置検出モデルA11の生成処理について説明する。
【0043】
学習用データ200L_11~14において、照明空間200の同じ位置に人が存在しているものの、それぞれの有人領域M11~M14に含まれる検出領域Dの一部が異なっている。また、学習用データ200L_11~14において、それぞれの有人領域M11~M14に含まれる検出領域Dに生じている温度変化の値も異なっている。
【0044】
制御装置500において、制御部502は、学習用データ200L_11~14における有人領域M11~M14に含まれる検出領域Dのそれぞれに対する温度変化の重みを表す情報を算出する。
【0045】
図7は、制御装置500が行う位置検出モデルの重み付け処理の一例を示す模式図である。
【0046】
図7に示すように、温度変化の重みを表す情報は、例えば、制御部502が、学習用データ200L_31~34におけるそれぞれの有人領域M31~M34に含まれる個々の検出領域Dのそれぞれに対する温度変化Δtの平均値を算出し、その中で最も平均値が高い検出領域DHが特定された位置検出データ200M3を生成することができる。位置検出データ200M3における最も平均値が高い検出領域DHは、位置検出データ200M1,200M2における位置検出モデルA11,A12に相当する。つまり、制御部502は、学習用データ200L_31~34に含まれる個々の検出領域Dのそれぞれに対する温度変化Δtの平均値を算出し、その中で最も平均値が高い検出領域DHを位置検出モデルとすることができる。
【0047】
図5に示すように、制御装置500において、制御部502は、有人領域M11~M14に含まれる複数の検出領域Dと温度変化の重みを表す情報とを対応付けて位置検出モデルA11を生成する。位置検出モデルA11は、例えば、上記平均値が最も高い検出領域DHを含む所定の範囲内にある検出領域Dが含まれるように生成される。
【0048】
制御部502は、以上説明した位置検出モデルA11を生成する処理と同様に、位置検出モデルA12についても、図6に示す学習用データ200L_21~24の有人領域M21~M24に基づいて生成することができる。位置検出モデルの数は、対応付けた照射状態データの数に応じて任意に設定することができる。
【0049】
制御部502は、生成した位置検出モデルA11,A12に対して、照明装置1の照射状態を特定した照射状態データの対応付け処理を行う。照射状態データは、例えば、ユーザが操作・表示部503から照射状態を特定する情報の入力を行うことで、制御部502の記憶部に格納される。照射状態データは、位置検出モデルA11,A12の数に応じて、任意の数を格納することができる。制御部502では、照射状態データと位置検出モデルA11,A12とを、例えば、データテーブルのように対応付けて記憶部に格納する。また、照射状態データは、時間帯に応じて、任意の数を格納することができる。制御部502では、照射状態データと位置検出モデルA11,A12、並びに照射状態データを実行する時間帯とを、例えば、データテーブルのように対応付けて記憶部に格納する。
【0050】
制御部502は、位置検出モデルA11,A12に対応付けられた照射状態データに基づき、図4に示したように照射領域への照射状態I1,I2の制御を行う。また、制御部502は、時間帯に応じて、位置検出モデルA11,A12と照射状態データの対応付けを変更して照射領域への照射状態I1,I2の制御を行ってもよい。
【0051】
図8は、制御装置500が実行する照明制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0052】
図8に示すように、照明システム10において、制御装置500及び照明装置1の電源が投入されると、制御装置500の制御部502は、センサ装置100のセンサ102から温度変化の検出結果が出力されたか否か、つまり、人が存在することを検出したか否かを判定する(ステップS101)。センサ102が人を検出しない場合(S101:NO)、制御部502は、S101の処理を繰り返す。
【0053】
センサ102が人を検出した場合(S101:YES)、制御部502は、センサ102から取得した照明空間200の複数の検出領域Dにおける温度変化の検出結果に応じて、複数の検出領域Dのうち人P1,P2が存在する領域である有人領域M1,M2をあらかじめ学習させた位置検出モデルを特定する(ステップS102)。
【0054】
制御部502は、記憶部に格納されている情報に基づいて、S102により特定された位置検出モデルに対応付けられている照射状態データを特定する(ステップS103)。制御部502は、S103により特定された照射状態データに基づき、照射領域への照射状態の制御を行う(ステップS104)。
【0055】
図9は、実施の形態に係る照明制御装置が実行する位置検出モデルの生成処理の一例を示すフローチャートである。
【0056】
図9に示すように、照明システム10において、制御装置500及び照明装置1の電源が投入され、制御装置500の制御部502が位置検出モデルの生成処理を開始した場合、センサ装置100のセンサ102から温度変化の検出結果を取得する(ステップS201)。なお、例えば、端末300からトリガー信号がセンサ装置100に送信され、センサ装置100がそのトリガー信号を受信したことを契機に位置検出モデルの生成処理が開始される。
【0057】
制御部502は、センサ102から取得したデータから、学習用データ200L_11~14それぞれの有人領域M11~M14に含まれる検出領域Dに生じている温度変化の値を特定する(ステップS202)。
【0058】
制御部502は、センサ102から温度変化の値が特定された学習用データ200L_11~14が所定の回数分取得することができたか否かを判定する(ステップS203)。所定の回数に到達していない場合(S203:NO)、制御部502は、S201とS202の処理を繰り返す。
【0059】
所定の回数に到達した場合(S203:YES)、制御部502は、学習用データ200L_11~14におけるそれぞれの有人領域M31~M34に含まれる個々の検出領域Dのそれぞれに対する温度変化Δtの平均値を算出し、その中で最も平均値が高い検出領域DHを特定する(ステップS204)。
【0060】
制御部502は、有人領域M11~M14に含まれる複数の検出領域Dと温度変化の重みを表す情報とを対応付けて位置検出モデルA11を生成する(ステップS205)。
【0061】
3.実施の形態の作用効果
以上のように構成されている照明システム10は、照射方向、または、焦点距離の少なくともいずれか一方を含む照射状態を調整して照射領域に照射する照明装置1と、照明装置1の照射状態を制御する制御装置500と、複数の検出領域Dそれぞれの人P1,P2の有無を検出するセンサ102と、を備える。照明システム10において、制御装置500は、センサ102の検出結果と複数の検出領域Dのうち人P1,P2が存在する領域である有人領域M1,M2をあらかじめ学習させた位置検出モデルA1,A2とに基づいて、位置検出モデルA1,A2に応じた照射状態I1,I2を特定した照射状態データを特定し、照射状態データに基づき、照射領域への照射状態I1,I2の制御を行う。
【0062】
以上のように構成されている照明システム10によれば、照明空間の人の有無を検出して照明装置の照射方向、光量などを制御する技術において、位置検出モデルA1,A2をあらかじめ学習させることによって、センサ102による人P1,P2の検出結果に差異が生じたとしても、人の位置の検出精度を高めることができ、より状況に合わせた制御を行うことができる。
【0063】
従って、照明システム10によれば、人の位置の検出精度を高めることによって、より状況に合わせた照明装置の制御を行うことができる。
【0064】
有人領域M1,M2は、照射領域と異なる領域を含んでもよい。このようにすることで、例えば、店舗や展示場などの照明空間200における展示物や家具などの照射対象物O1,O2に照射する照明装置1において、例えば、照射対象物O1,O2を見る人P1,P2の位置によって、照射対象物O1,O2への照射角度、焦点距離、配光角、光色(色温度を含む)、明るさなどの照射状態を変えることができる。つまり、照明システム10によれば、人P1,P2の有無や位置の違いによって照射対象物に対するアイキャッチ効果や光の演出効果を期待することができる。
【0065】
照明システム10において、センサ102は、例えば、温度変化により複数の検出領域Dそれぞれの人P1,P2の有無を検出する。有人領域M1,M2には、検出領域Dの複数が含まれていてもよく、制御装置500は、有人領域M1,M2に含まれる複数の検出領域Dのそれぞれに対する温度変化の重みを表す情報を算出し、有人領域に含まれる複数の検出領域と温度変化の重みを表す情報とを対応付けて位置検出モデルを生成してもよい。
【0066】
制御装置500は、有人領域に含まれる複数の検出領域それぞれに対する温度変化の平均値を算出し、温度変化の重みを表す情報は、平均値に基づいて算出してもよい。
【0067】
以上のように構成されている照明システム10によれば、照明空間の人の有無を検出して照明装置の照射方向、光量などを制御する技術において、位置検出モデルA1,A2をあらかじめ学習させる際に、複数回取得した有人領域における温度変化の情報を用いることによって、センサ102による人P1,P2の検出結果に差異が生じたとしても、人の位置の検出精度をさらに高めることができ、より状況に合わせた制御を行うことができる。
【0068】
従って、照明システム10によれば、人の位置の検出精度を高めることによって、より状況に合わせた照明装置の制御を行うことができる。
【0069】
照射状態には、配光角、明るさ、及び、光色のいずれかが含まれてもよい。
【0070】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0071】
例えば、センサ102は赤外線を受光して電気信号に変える赤外線センサである場合、主に、赤外線の熱によって変化する電気的性質を検知する熱型センサと、光エネルギーによる電気現象を検知する量子型センサとが知られているが、動作原理は特に限定されない。
【0072】
また、例えば、センサ102は、赤外線センサに限定されず、例えば、超音波センサ、マイクロ波センサ、画像認識センサ等であってもよい。
【0073】
また、温度変化の重みを表す情報は、例えば、有人領域に含まれる個々の検出領域の温度変化の累積値が、所定の閾値を上回るか否かに基づいて算出するものであってもよい。また、温度変化の重みを表す情報は、例えば、上記累積値を高い順に算出してもよい。また、温度変化の重みを表す情報は、例えば、個々の検出領域が有人領域に含まれた回数を考慮してもよい。
【0074】
制御装置500は、有人領域に含まれる複数の検出領域と温度変化の重みを表す情報とを対応付けて位置検出モデルを生成する際に、位置検出モデルが、例えば、上記累積値が所定の閾値を上回った検出領域D、あるいは、上記累積値が最も高い検出領域を中心とした所定の範囲内の複数の検出領域を含むように生成されてもよい。
【0075】
照明システム10は、制御装置500を独立して備えないシステムであってもよい。制御装置500は照明装置1に組み込まれていてもよく、センサ装置100に組み込まれていてもよい。例えば、照明装置1に制御装置500が組み込まれた場合、照明装置1の記憶部に位置検出モデルおよび照射状態データが格納され、センサ102が検出した情報を無線通信により受信して、照射領域への照射状態の制御を行ってもよい。また、例えば、センサ装置100に制御装置500が組み込まれた場合、センサ装置100の記憶部に位置検出モデルおよび照射状態データが格納され、センサ102が検出した情報を無線通信により照明装置1に送信して、照射領域への照射状態の制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…照明装置、2…本体部、5…制御回路、10…照明システム、21…筐体、22…レンズ、23…ベース部、24…アーム、100…センサ装置、101…通信部、102…センサ、200…照明空間、200L_11~14,200L_21~24,200L_31~34:学習用データ、200M1,200M2,200M3:位置検出データ、300…端末、500…制御装置、501…通信部、502…制御部、503…操作・表示部、A,A1,A11,A12,A2…位置検出モデル、D,DH…検出領域、F…フォーカス、I1,I2…照射状態、L…照射角度、M1,M11,M12,M13,M14,M2,M21,M22,M23,M24,M31,M32,M33,M34…有人領域、Mf…フォーカスモータ、Mp…パンモータ、Mt…チルトモータ、O1,O2…照射対象物、P…パン、P1,P2…人、T…チルト、Δt…温度変化
【要約】
【課題】人の位置の検出精度を高めることによって、より状況に合わせた照明装置の制御を行う。
【解決手段】照明システム10は、照射方向、または、焦点距離の少なくともいずれか一方を含む照射状態を調整して照射領域に照射する照明装置1と、照明装置の照射状態を制御する制御装置500と、複数の検出領域それぞれの人の有無を検出するセンサ102と、を備え、制御装置は、センサの検出結果と複数の検出領域のうち人が存在する領域である有人領域をあらかじめ学習させた位置検出モデルとに基づいて、位置検出モデルに応じた照射状態を特定した照射状態データを特定し、照射状態データに基づき、照射領域への照射状態の制御を行う。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9