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特許7665854金属帯板の板形状検出装置、及び圧延機、並びに検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】金属帯板の板形状検出装置、及び圧延機、並びに検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/04 20060101AFI20250414BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20250414BHJP
   B21B 38/02 20060101ALI20250414BHJP
【FI】
G01B11/04 H
B21C51/00 L
B21B38/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024208488
(22)【出願日】2024-11-29
【審査請求日】2024-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314017543
【氏名又は名称】Primetals Technologies Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】望月 智俊
(72)【発明者】
【氏名】金森 信弥
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特許第7130350(JP,B1)
【文献】特許第7578215(JP,B1)
【文献】特開2009-288072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
B21B 37/00
B21B 38/00
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延設備において、ルーパーで持ち上げられた金属帯板の表面に反射光領域と呼ばれる照明光が反射している板幅方向に横断する帯状の領域が確認できる範囲を含む画像を撮影するように設置したカメラと、
前記カメラが撮影する前記画像に基づき、前記金属帯板の板形状を検出する画像処理部と、を備える圧延された金属帯板の板形状検出装置であって、
前記画像処理部は、
取得した画像順に1,2,3,・・・,k,・・・と番号付けを行い、
(k)番目の画像において、前記反射光領域を板幅方向にj分割した各々の分割区域(i)(i=1~j)の(i)区域内で、ピクセル座標の圧延方向について、前記反射光領域の上流側境界線を構成する画素位置の中で最も上流の位置Pumin(k)i、前記反射光領域の上流側境界線を構成する画素位置の中で最も下流の位置Pumax(k)i、前記反射光領域の下流側境界線を構成する画素位置の中で最も上流の位置Pdmin(k)i、及び前記反射光領域の下流側境界線を構成する画素位置の中で最も下流の位置Pdmax(k)iを求め、
取得した2個以上である画像番号(k-F+1)から画像番号(k)までのF個の前記画像の各々について、Pumin(k―F+1)iからPumin(k)iまでのF個のデータの中から最も上流側の位置を示しているデータを第1位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPure_min(k)iと再設定し、
Pumax(k―F+1)iからPumax(k)iまでのF個のデータの中から最も下流側の位置を示しているデータを第2位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPure_max(k)iと再設定し、
Pdmin(k―F+1)iからPdmin(k)iまでのF個のデータの中から最も上流側の位置を示しているデータを第3位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPdre_min(k)iと再設定し、
Pdmax(k―F+1)iからPdmax(k)iまでのF個のデータの中から最も下流側の位置を示しているデータを第4位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPdre_max(k)iと再設定し、
前記圧延方向の位置データの差[Pure_max(k)i―Pure_min(k)i]と[Pdre_max(k)i―Pdre_min(k)i]の平均値を前記分割区域(i)ごとに算出し、前記平均値を(k)番目の画像の前記反射光領域の前記上流側の境界線位置と前記下流側の境界線位置の最大変動振幅に対応した情報A(k)iとし、前記情報A(k)iの値を前記分割区域(i)の板幅方向の中央の位置に対応させ、
板幅方向位置を示す値を変数(x)としたときに、前記画像内の前記反射光領域の板幅範囲内の板幅方向の位置を-1≦x≦1の範囲に規格化して、個の前記情報A(k)iの値を(k)番目の画像から得られた板幅方向の圧延板伸び分布に対応した指標として、板幅方向位置の表記を(x)に改め、A(k)i=E(xi)とする、xの0次、1次、2次、及び4次の項のみからなる
E(x)= C’+C’×x+C’×(2x-1)+C’×(8x-8x+1) (但し、-1≦x≦1) とのチェビシェフ多項式に当てはめて、j個のxの値(xi)をもったE(xi)から、
前記チェビシェフ多項式の係数(C’、C’、C’、C’)を求め、その1次の項の係数(C’)を(k)番目の画像の板幅方向の1次成分の圧延板伸び分布の検出結果信号として発信する
ここで、xiは、反射光領域を板幅方向にj分割した分割区域(i)の板幅方向の中央位置を(x)表記で示したものである
なお、F、i、j、kは整数である
金属帯板の板形状検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金属帯板の板形状検出装置において、
前記画像処理部は、2次の項の係数(C2’)又は4次の項の係数(C4’)のうちいずれか1つ以上の前記係数を板幅方向の2次成分又は4次成分の圧延板伸び分布の検出結果信号として更に発信する
金属帯板の板形状検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の金属帯板の板形状検出装置と、
制御装置と、を備えた圧延機において、
前記制御装置は、前記検出結果信号に基づいて、圧延機のレベリング量、ベンディング力、または、ペアクロス角度に関するいずれか一つ以上の操作信号を発信する
圧延機。
【請求項4】
圧延設備において、ルーパーで持ち上げられた金属帯板の表面に反射光領域と呼ばれる板幅方向に横断する帯状の照明光が反射している領域が確認できる範囲を含む画像をカメラにより撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップで撮影される前記画像に基づき、前記金属帯板の板形状を検出する画像処理ステップと、を有する圧延された金属帯板の板形状検出方法であって、
前記画像処理ステップでは、
取得した画像順に1,2,3,・・・,k,・・・と番号付けを行い、
(k)番目の画像において、前記反射光領域を板幅方向にj分割した各々の分割区域(i)(i=1~j)の(i)区域内で、ピクセル座標の圧延方向について、前記反射光領域の上流側境界線を構成する画素位置の中で最も上流の位置Pumin(k)i、前記反射光領域の上流側境界線を構成する画素位置の中で最も下流の位置Pumax(k)i、前記反射光領域の下流側境界線を構成する画素位置の中で最も上流の位置Pdmin(k)i、及び前記反射光領域の下流側境界線を構成する画素位置の中で最も下流の位置Pdmax(k)iを求め、
取得した2個以上である画像番号(k-F+1)から画像番号(k)までのF個の前記画像の各々について、Pumin(k―F+1)iからPumin(k)iまでのF個のデータの中から最も上流側の位置を示しているデータを第1位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPure_min(k)iと再設定し、
Pumax(k―F+1)iからPumax(k)iまでのF個のデータの中から最も下流側の位置を示しているデータを第2位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPure_max(k)iと再設定し、
Pdmin(k―F+1)iからPdmin(k)iまでのF個のデータの中から最も上流側の位置を示しているデータを第3位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPdre_min(k)iと再設定し、
Pdmax(k―F+1)iからPdmax(k)iまでのF個のデータの中から最も下流側の位置を示しているデータを第4位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPdre_max(k)iと再設定し、
前記圧延方向の位置データの差[Pure_max(k)i―Pure_min(k)i]と[Pdre_max(k)i―Pdre_min(k)i]の平均値を前記分割区域(i)ごとに算出し、前記平均値を(k)番目の画像の前記反射光領域の前記上流側の境界線位置と前記下流側の境界線位置の最大変動振幅に対応した情報A(k)iとし、前記情報A(k)iの値を前記分割区域(i)の板幅方向の中央の位置に対応させ、
板幅方向位置を示す値を変数(x)としたときに、前記画像内の前記反射光領域の板幅範囲内の板幅方向の位置を-1≦x≦1の範囲に規格化して、個の前記情報A(k)iの値を(k)番目の画像から得られた板幅方向の圧延板伸び分布に対応した指標として、板幅方向位置の表記を(x)に改め、A(k)i=E(xi)とする、xの0次、1次、2次、及び4次の項のみからなる
E(x)= C’+C’×x+C’×(2x-1)+C’×(8x-8x+1) 但し、-1≦x≦1 とのチェビシェフ多項式に当てはめて、j個のxの値(xi)をもったE(xi)から、
前記チェビシェフ多項式の係数(C’、C’、C’、C’)を求め、その1次の項の係数(C’)を(k)番目の画像の板幅方向の1次成分の圧延板伸び分布の検出結果信号として発信する
ここで、xiは、反射光領域を板幅方向にj分割した分割区域(i)の板幅方向の中央位置を(x)表記で示したものである
なお、F、i、j、kは整数である
金属帯板の板形状検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯板の板形状検出装置、及び圧延機、並びに検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状のような特殊な光源を用いることなく金属帯板の板表面形状の不良を容易に判断することが可能な不良判断装置及び不良判断方法として、特許文献1には、被圧延鋼板の幅方向に回転軸が延びて設置され、被圧延鋼板を上方に持ち上げるロールと、ロールにより上方側に持ち上げられた被圧延鋼板の持ち上げられた領域を含む画像を撮影するカメラと、カメラが撮影した画像に基づき、金属帯板の板表面形状の不良を判断する制御装置と、を備える、ことが記載されている。
【0003】
わずかな外乱や突然に生じた小さな障害物に対する影響を従来に比べてより受けにくい金属帯板の板形状判断装置、及び圧延機、並びに判断方法として、特許文献2には、圧延された金属帯板の板幅方向に横断する帯状の反射光が映る領域を含む画像を撮影するように設置したカメラと、カメラが撮影する画像に基づき、金属帯板の板形状を判断する画像処理計算機と、を備え、画像処理計算機は、画像内の領域を金属帯板の板幅方向に複数に分割し、分割した各々の区域における、領域に関係する大きさを現す指標情報に基づいて、圧延方向の板伸びの板幅方向における分布に対応した情報を信号として発信する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6808888号
【文献】特許7130350号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧延機により圧延された金属帯板の板形状の良否、例えば板伸びの有無について、金属帯板の板幅方向に長い線状または棒状の反射光に基づいて検出する技術は従来から多数知られている。
【0006】
その検出手法は、一部に伸びが生じて板形状に変化が生じたときには、線状または棒状であった反射光の形状が整った形ではなくなり、その一部が移動あるいは変位することに基づいている。
【0007】
しかし、線状または棒状の照明では、板表面に映る板幅方向各位置における圧延方向の反射光領域が狭いため、例えば、小さな障害物等によりわずかな外乱が生じた場合の影響を顕著に受け、誤検出を生じやすい、との課題がある。
【0008】
本発明者らは、特許文献1に開示されている、一般的な照明により、圧延ラインの圧延機スタンド間に設置されている張力制御用ルーパーで持ち上げられた金属帯板の湾曲部近傍の板表面に映る帯状の反射光領域の変化を利用して検出すると、外乱の影響を小さくできることを見出し、帯状の反射光領域の特徴をより活かす技術として、特許文献2に開示されている技術を着想した。
【0009】
特許文献2に記載の技術では、圧延ラインの圧延機スタンド間に設置されている張力制御用ルーパーで持ち上げられた金属帯板の湾曲部近傍の板表面に映る帯状の反射光領域の圧延方向長さや面積などの板幅方向分布をチェビシェフ多項式に当てはめて、チェビシェフ多項式の係数を求め、板幅方向の板伸び分布についての判定を行っている。
【0010】
実際の圧延では、ルーパー部において、金属帯板が振動している場合があり、圧延されている金属帯板の板表面に映る反射光領域の位置や圧延方向長さ、面積などは常に変動しており、反射光領域が安定して同じ位置に留まってはいない、といった現象が観察される。
【0011】
上述の特許文献2に記載の技術について本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、このような反射光領域の変動に特許文献2に記載の技術では対応できていないケースが生じることが明らかとなった。
【0012】
本発明は、金属帯板に振動が生じている場合にも板伸び分布の変化を高い精度で評価することができる金属帯板の板形状検出装置、及び圧延機、並びに検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、圧延設備において、ルーパーで持ち上げられた金属帯板の表面に反射光領域と呼ばれる照明光が反射している板幅方向に横断する帯状の領域が確認できる範囲を含む画像を撮影するように設置したカメラと、前記カメラが撮影する前記画像に基づき、前記金属帯板の板形状を検出する画像処理部と、を備える圧延された金属帯板の板形状検出装置であって、前記画像処理部は、取得した画像順に1,2,3,・・・,k,・・・と番号付けを行い、(k)番目の画像において、前記反射光領域を板幅方向にj分割した各々の分割区域(i)(i=1~j)の(i)区域内で、ピクセル座標の圧延方向について、前記反射光領域の上流側境界線を構成する画素位置の中で最も上流の位置Pumin(k)i、前記反射光領域の上流側境界線を構成する画素位置の中で最も下流の位置Pumax(k)i、前記反射光領域の下流側境界線を構成する画素位置の中で最も上流の位置Pdmin(k)i、及び前記反射光領域の下流側境界線を構成する画素位置の中で最も下流の位置Pdmax(k)iを求め、取得した2個以上である画像番号(k-F+1)から画像番号(k)までのF個の前記画像の各々について、Pumin(k―F+1)iからPumin(k)iまでのF個のデータの中から最も上流側の位置を示しているデータを第1位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPure_min(k)iと再設定し、Pumax(k―F+1)iからPumax(k)iまでのF個のデータの中から最も下流側の位置を示しているデータを第2位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPure_max(k)iと再設定し、Pdmin(k―F+1)iからPdmin(k)iまでのF個のデータの中から最も上流側の位置を示しているデータを第3位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPdre_min(k)iと再設定し、Pdmax(k―F+1)iからPdmax(k)iまでのF個のデータの中から最も下流側の位置を示しているデータを第4位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPdre_max(k)iと再設定し、前記圧延方向の位置データの差[Pure_max(k)i―Pure_min(k)i]と[Pdre_max(k)i―Pdre_min(k)i]の平均値を前記分割区域(i)ごとに算出し、前記平均値を(k)番目の画像の前記反射光領域の前記上流側の境界線位置と前記下流側の境界線位置の最大変動振幅に対応した情報A(k)iとし、前記情報A(k)iの値を前記分割区域(i)の板幅方向の中央の位置に対応させ、板幅方向位置を示す値を変数(x)としたときに、前記画像内の前記反射光領域の板幅範囲内の板幅方向の位置を-1≦x≦1の範囲に規格化して、個の前記情報A(k)iの値を(k)番目の画像から得られた板幅方向の圧延板伸び分布に対応した指標として、板幅方向位置の表記を(x)に改め、A(k)i=E(xi)とする、xの0次、1次、2次、及び4次の項のみからなるE(x)= C’+C’×x+C’×(2x-1)+C’×(8x-8x+1) (但し、-1≦x≦1) とのチェビシェフ多項式に当てはめて、j個のxの値(xi)をもったE(xi)から、前記チェビシェフ多項式の係数(C’、C’、C’、C’)を求め、その1次の項の係数(C’)を(k)番目の画像の板幅方向の1次成分の圧延板伸び分布の検出結果信号として発信する。ここで、xiは、反射光領域を板幅方向にj分割した分割区域(i)の板幅方向の中央位置を(x)表記で示したものである。なお、F、i、j、kは整数である。


【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金属帯板に振動が生じている場合にも圧延における板伸び分布の変化を高い精度で評価することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例の金属帯板の板形状検出装置を備えた圧延設備の概要の一例を示す図。
図2】圧延設備における操業の際のスタンド間のルーパー部での金属帯板表面に照明の反射光が板幅方向に概ね矩形の帯状に映っている様子の一例を示す図。
図3】圧延設備における操業の際のスタンド間のルーパー部での金属帯板表面に照明の反射光が板幅方向に不定形の帯状に映っている様子の一例を示す図。
図4】レベリング量(Gd―Gw)の定義を示す(Gd=Gw)の場合の図。
図5】レベリング量(Gd―Gw)の定義を示す(Gd>Gw)の場合の図。
図6】従来技術により得られた「指標A」を用いてチェビシェフ係数1次成分(C1’)とレベリング量との関係の一例を示す図
図7】本発明により得られた「指標B」を用いてチェビシェフ係数1次成分(C’)とレベリング量との関係の一例を示す図。
図8】実施例の金属帯板の板形状検出装置において(k)番目の画像から反射光領域の上流側の境界線と下流側の境界線の変動を考慮した反射光領域の圧延方向の最大変動振幅の平均値「A(k)i」の求め方の一例を示す図。
図9】実施例の金属帯板の板形状検出装置における板幅方向を均等に分割する方法の一例を示す図。
図10】実施例の金属帯板の板形状検出装置における板幅方向を不均等に分割する方法の一例を示す図。
図11】実施例の金属帯板の板形状検出装置における板形状の検出フローチャートの一部。
図12】実施例の金属帯板の板形状検出装置における板形状の検出フローチャートの一部。
図13】実施例の金属帯板の板形状検出装置におけるチェビシェフ多項式のxの0次成分、1次成分、2次成分、4次成分を示したモニタの表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の金属帯板の板形状検出装置、及び圧延機、並びに検出方法の実施例について図1乃至図13を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0017】
最初に、金属帯板の板形状検出装置を含めた圧延設備の全体構成について図1乃至図3を用いて説明する。図1は本実施例の金属帯板の板形状検出装置とそれを備えた圧延設備の構成を示す概略図、図2及び図3は圧延設備における操業の際のスタンド間のルーパー部での金属帯板表面に照明の反射光が帯状に映っている様子の一例を示す図である。
【0018】
図1に示す金属帯板1を圧延する圧延設備100は、F1スタンド10、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50、カメラ61,62,63,64、張力制御用のルーパー71,72,73,74、画像処理計算機80、データベース81、制御装置82、モニタ85等を備えている。
【0019】
これらのF1スタンド10、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50、カメラ61,62,63,64、画像処理計算機80、データベース81、制御装置82、及びモニタ85は、通信線90により接続されている。
【0020】
このうち、カメラ61,62,63,64、ルーパー71,72,73,74、画像処理計算機80、及びデータベース81により、本発明の金属帯板1の板形状検出装置が構成される。
【0021】
なお、圧延設備100については、図1に示すような5つの圧延スタンドが設置されている形態に限られず、最低2スタンド以上であればよい。
【0022】
F1スタンド10や、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50の各々は、上ワークロール及び下ワークロール、これら上ワークロール及び下ワークロールにそれぞれ接触することで支持する上バックアップロール、下バックアップロール、上バックアップロールの上部に設けられた圧下シリンダ11,21,31,41,51、荷重検出器12,22,32,42,52を備えている。なお、各ワークロールと各バックアップロールとの間に、更に中間ロールを設けた6段の構成とすることができる。
【0023】
ルーパー71はF1スタンド10とF2スタンド20との間に設置されている張力制御用のロールである。このルーパー71は、走行する金属帯板1がロール上に載るように、その回転軸が金属帯板1の幅方向に延びて配置されており、金属帯板1を上方に持ち上げて保持するようにして設置されている。なお、ルーパー71は、例えば、ばね等で上方に付勢するものや、油圧シリンダ、またはモータ駆動等で持ち上げるもの等が考えられる。
【0024】
同様に、張力制御用のルーパー72がF2スタンド20とF3スタンド30との間に、張力制御用のルーパー73がF3スタンド30とF4スタンド40との間に、張力制御用のルーパー74がF4スタンド40とF5スタンド50との間に、それぞれ設置されている。
【0025】
カメラ61は、圧延されルーパー71で持ち上げられ湾曲した金属帯板1の表面に反射光領域2と呼ばれる板幅方向に横断する帯状の照明光が反射して見える領域が確認できる範囲を含む金属帯板1の表面の画像を撮影するように設置されている。好適には、金属帯板1を上面視した際に、金属帯板1の板幅方向の外側に設置されていることができる。カメラ61が撮影した画像のデータは、通信線90を介して画像処理計算機80に送信される。
【0026】
また、カメラ62は圧延されルーパー72で持ち上げられた金属帯板1の表面に反射光領域2と呼ばれる板幅方向に横断する帯状の照明光が反射して見える領域が確認できる範囲を含む金属帯板1の表面の画像を撮影する位置に、カメラ63は圧延されルーパー73で持ち上げられた金属帯板1の表面に反射光領域2と呼ばれる板幅方向に横断する帯状の照明光が反射して見える領域が確認できる範囲を含む金属帯板1の表面の画像を撮影する位置に、カメラ64は圧延されルーパー74で持ち上げられた金属帯板1の表面に反射光領域2と呼ばれる板幅方向に横断する帯状の照明光が反射して見える領域が確認できる範囲を含む金属帯板1の表面の画像を撮影する位置に、それぞれ設置されている。カメラ62,63,64により撮影された画像のデータは、通信線90を介して画像処理計算機80に送信される。
【0027】
カメラ62,63,64も、カメラ61と同様に、好適には、金属帯板1を上面視した際に、金属帯板1の板幅方向の外側に設置されている。
【0028】
これらカメラ61,62,63,64により、圧延された金属帯板1の板幅方向に横断する帯状の反射光が映る領域を含む画像をカメラ61,62,63,64により撮影する撮影ステップが実行される。
【0029】
カメラ61,62,63,64が主に撮影する、ロールにより上方側に持ち上げられた金属帯板1の持ち上げられた撮影領域を照らす照明を更に設けることができる。この照明は、圧延設備100が設置されている圧延工場の天井などに適宜配置される一般的な照明でよく、本発明では特段新たな照明設備は不要であるが、専用の照明を設けても良い。
【0030】
画像処理計算機80は、カメラ61,62,63,64が撮影する画像に基づき、金属帯板1の板形状を検出するための各種処理(画像処理ステップ含む)を実行する装置であり、好適には、この画像処理計算機80が画像処理ステップの実行主体となる。
【0031】
例えば、図2あるいは図3に示すような圧延されるとともに、ルーパー71,72,73,74で持ち上げられた金属帯板1の湾曲した近傍である、持ち上げられた領域を含む画像を画像処理にて、画像に映る金属帯板1の表面の反射光の輝度が特定の輝度の値よりも大きい箇所の上流側・下流側の境界を含む範囲を反射光領域2として特定する。
【0032】
ここで、金属帯板1の板幅方向に横断する帯状の反射光の見える反射光領域2は、金属帯板1の板幅方向の各位置における圧延方向(帯板長手方向)の板伸び分布が均一であれば、金属帯板1の表面は平坦で、板形状は良好であり、板幅方向で急峻度が同程度で小さいことから、図2に示すように、板幅方向の各位置における反射光領域2の圧延方向長さの分布差が小さい。このため、照明による反射光領域2の境界線は上流側境界線2Aと下流側境界線2Bとの間隔は板幅方向で概ね均一で略平行になり、反射光領域2を板幅方向に複数の区域に均等分割した場合の各区域の面積値、圧延方向の平均長さ等のパラメータは、全ての区域において、概ね均一となる。
【0033】
これに対し、板幅方向の位置によって、圧延方向の伸びに相違(例.端延び、中延び)がある場合、金属帯板は平坦ではなく、板形状は不良であり、板幅方向で急峻度が異なることによって、反射光の板表面に映る領域が異なり、図3に示すように照明による反射光領域2の境界線は上流側境界線2A、下流側境界線2Bのいずれか一方、あるいはいずれもが波打ち、反射光領域2の上流側境界線2Aと下流側境界線2Bの間隔は板幅方向で不均一となる。このため、反射光領域2を板幅方向に複数の区域に均等分割した場合の各区域の面積値、圧延方向の平均長さ等のパラメータは、それぞれの区域において、不均一となる。
【0034】
ここで、上述の特許文献1では、ルーパー71,72,73,74で持ち上げられた金属帯板1の湾曲部近傍の金属帯板1の表面に映る反射光領域2の圧延方向長さや面積などの板幅方向分布を圧延による板伸び分布の指標として、下記(1)式のチェビシェフ多項式を使ってカーブフィッティングを行っている。
【0035】
E(x)= C’+C’×x+C’×(2x-1)+C’×(8x-8x+1) (但し、-1≦x≦1) ・・・ (1)
チェビシェフ多項式では、例えば、圧延による板幅方向の板伸び分布の指標として、ルーパー71,72,73,74での金属帯板1の表面の反射光領域2の圧延方向長さとして、E(x)は、ルーパー71,72,73,74での金属帯板1の表面の反射光領域2の圧延方向長さを示すとともに、圧延による板伸びに対応した大きさを表していると想定している。なお、C’、C’、C’、C’は、それぞれ、板幅方向の板伸び分布に対応した大きさを表していると想定しているチェビシェフ多項式をxの0次成分、1次成分、2次成分、4次成分の各成分に成分分離をした時のそれぞれの係数の値を示す。xは、板幅方向の規格化された位置を示しており、例えば、x=-1が駆動側(DS)の板幅端部位置を表し、x=1が作業側(WS)の板幅端部位置を表す。つまり、この場合、チェビシェフ多項式のxの1次成分の係数(C’)が正の値であれば、作業側(WS)の板伸びが大きいということを示している。また、xの2次成分の係数(C’)が正の値であれば、板幅端部の伸びが板幅中央部に比べて大きいということを示している。また、xの4次成分の係数(C’)が負の値であれば、板幅方向におけるクウォーター伸びが大きいということを示している。
【0036】
以下、レベリング量の定義を示す。
【0037】
レベリング量は、図4及び図5に示すように、駆動側(DS:Drive Side)の圧下シリンダの位置における上下ワークロール軸心間距離Gdから、作業側(WS:Work Side)の圧下シリンダの位置における上下ワークロール軸心間距離Gwを引いた値(Gd-Gw)と定義する。
【0038】
レベリング量を変更する場合、板幅中央位置での板厚は変更しないものとする。したがって、図5に示すように、レベリング量が図4に示す状態に比べて増加した場合、駆動側(DS)の板厚は厚くなり、作業側(WS)の板厚は薄くなり、作業側(WS)の板伸びが大きくなる。本手法により得られるチェビシェフ係数の1次成分の値(C’)は、正の値の場合、作業側(WS)の板伸びが大きく、負の値の場合、駆動側(DS)の板伸びが大きいことを示している。
【0039】
反射光領域2を特定の数で板幅方向に分割して、例えば、各分割区域において板幅方向の板伸び分布の指標とした反射光領域2の圧延方向長さを分割区域内で平均化処理し、この平均化処理した値を改めて板幅方向の板伸び分布に対応した大きさを表していると想定しているチェビシェフ多項式E(x)と設定する。ここで求めたE(x)を「指標A」とし、このチェビシェフ係数は従来技術によって得られたものとする。
【0040】
実際の熱間圧延の圧延中に、圧延機のレベリング量を意図的に変化させて、明らかに、チェビシェフ多項式の係数である1次成分(C’)は変化するであろうと考えられる状況において、従来技術での指標抽出方法により得られた指標Aを適用したチェビシェフ係数1次成分(C’)とレベリング量の関係を図6に示す。
【0041】
この図6に示すように、レベリング量の変化と指標Aによって得られたチェビシェフ係数1次成分(C’)は、ほとんどレベリング量の変化との相関関係が見られないことが確認できる。
【0042】
したがって、この反射光領域2の各分割区域での圧延方向の長さを平均化して指標Aとした抽出方法では、実際の板形状変化を計測することが出来ないケースが存在することが推測されたため、本発明者らは、指標の選定方法に改善の余地があるのではないかと考えた。
【0043】
ルーパー71,72,73,74の位置においては、金属帯板1の振動が観察されており、この圧延されている金属帯板の板表面に映る反射光領域2の位置や圧延方向長さ、面積などの変動データを平均化処理することで、得られるチェビシェフ係数は平滑化されてしまい、レベリング量の変化と指標Aを適用したチェビシェフ係数1次成分(C’)との相関関係が明確には得られなくなるものと推測した。
【0044】
つまり、金属帯板1の振動は圧延による板伸びから影響を受けており、この影響を抽出することによって、圧延による板伸び分布をチェビシェフ係数に反映させることができるのではないかと考え、鋭意検討の結果、次のような新たな指標の抽出方法を考案した。本発明で得たこの新たな指標を「指標B」とする。
【0045】
先と同様に、実際の熱間圧延の圧延中に、圧延機のレベリング量を意図的に変化させて、明らかに、チェビシェフ多項式の係数である1次成分(C’)は変化するであろうと考えられる状況において、本実施例により得られたチェビシェフ係数1次成分(C’)とレベリング量との関係を図7に示す。
【0046】
この図7に示すように、レベリング量の変化と上述の本実施例の処理によって得られたチェビシェフ係数1次成分(C’)の変化は、ある程度の相関関係が見られることが確認できる。すなわち、指標Bの抽出方法では、圧延による板伸びの影響を抽出することができたものと考える。
【0047】
したがって、圧延ラインの圧延機スタンド間に設置されているルーパー71,72,73,74で持ち上げられた金属帯板1の湾曲部近傍の金属帯板1の表面に映る反射光領域2の圧延方向最大長さの板幅方向分布をチェビシェフ多項式に当てはめて、板幅方向の圧延による板伸び分布についての判定を行う際には、本実施例の処理により得られる指標Bを採用することが良いことが判る。指標Bの抽出方法について、以降説明する。
【0048】
本実施例における画像処理計算機80では、取得した画像の各々について、取得した画像を用い、次の2つの解析処理を行う。
【0049】
画像処理計算機80が行う1つ目の解析処理は、取得した画像順に1,2,3,・・・,k,・・・と番号付けを行い、(k)番目の画像において、反射光領域2を板幅方向にj分割した各々の分割区域(i)(i=1~j)の区域内で、反射光領域2の上流側境界線2Aを構成する画素が圧延方向の位置の中で最も上流にある画素の圧延方向位置Pumin(k)iを求め、反射光領域2の上流側境界線2Aを構成する画素が圧延方向の位置の中で最も下流にある画素の圧延方向位置Pumax(k)iを求め、反射光領域2の下流側境界線2Bを構成する画素が圧延方向の位置の中で最も上流にある画素の圧延方向位置Pdmin(k)iを求め、及び反射光領域2の下流側境界線2Bを構成する画素が圧延方向の位置の中で最も下流にある画素の圧延方向位置Pdmax(k)iを求める。このデータは、データベース81に保存される。
【0050】
画像処理計算機80が行う2つ目の解析処理は、データベース81に保存された画像番号(k-F+1)から画像番号(k)までのF個の画像の各々について、Pumin(k―F+1)iからPumin(k)iまでのF個のデータの中から分割区域(i)の区域内で、圧延方向において最も上流の位置となる第1位置データを抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPure_min(k)iとし、また、Pumax(k―F+1)iからPumax(k)iまでのF個のデータの中から分割区域(i)の区域内で、圧延方向において最も下流の位置となる第2位置データを抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPure_max(k)iとし、また、Pdmin(k―F+1)iからPdmin(k)iまでのF個のデータの中から分割区域(i)の区域内で、圧延方向において最も上流の位置となる第3位置データを抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPdre_min(k)iとし、また、Pdmax(k―F+1)iからPdmax(k)iまでのF個のデータの中から分割区域(i)の区域内で、圧延方向において最も下流の位置となる第4位置データを抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPdre_max(k)iとし、これらは、データベース81に保存される。
【0051】
更に、画像処理計算機80は、(k)番目の画像における上流側境界線2Aの圧延方向の位置データの差[Pure_max(k)i―Pure_min(k)i]を分割区域(i)ごとに算出し、得られたj個の[Pure_max(k)i―Pure_min(k)i]の値を(k)番目の画像の上流側境界線2Aの最大変動振幅「Au(k)i」として求めるとともに、(k)番目の画像における下流側境界線2Bの圧延方向の位置データの差[Pdre_max(k)i―Pdre_min(k)i]を分割区域(i)ごとに算出し、得られたj個の[Pure_max(k)i―Pure_min(k)i]の値を(k)番目の画像の下流側境界線2Bの最大変動振幅「Ad(k)i」として求める。その後に、この上流側境界線2Aと下流側境界線2Bの圧延方向の最大変動振幅「Au(k)i」と「Ad(k)i」との平均値を分割区域(i)ご算出してA(k)iと表し、A(k)iを(k)番目の画像の指標B(反射光領域2の上流側境界線2Aと下流側境界線2Bの分割区域(i)における平均の最大変動振幅)とし、A(k)iの値を分割区域(i)の板幅方向の中央の位置に対応させ、板幅方向位置を示す値を変数(x)としたときに、板幅範囲内の板幅方向の位置を-1≦x≦1の範囲に規格化された位置xに対応させたA(k)iを(k)番目の画像のE(xi)とする。なお、xiは、分割区域(i)の板幅方向の中央位置を(x)表記で示したものである。
【0052】
図8は、平均化した最大変動振幅「A(k)i」を求める前の(k)番目の画像における反射光領域2の上流側と下流側の境界線の圧延方向最大変動振幅「Au(k)i」と「Ad(k)i」を示したイメージ図であり、これら2つの値を平均化したものがA(k)i(A(k)i=[Au(k)i+Ad(k)i]/2)となる。
【0053】
画像処理計算機80は、(k)番目の画像の各分割区域(i)の板幅方向中央位置xiとE(xi)(E(xi)=A(k)i)の値を各分割区域(i)ごとに(1)式のチェビシェフ多項式に当てはめて、最小二乗法を用いてその近似曲線の方程式から、チェビシェフ多項式の係数(C’、C’、C’、C’)を求め、1次係数(C’)を板幅方向の1次成分の圧延板伸び分布の検出結果信号として発信する。
【0054】
なお、好適には、画像処理計算機80は、1次係数(C’)に加えて、2次係数(C’)又は4次係数(C’)のうちいずれか1つ以上の係数を板幅方向の2次成分又は4次成分の圧延板伸び分布の検出結果信号として更に発信することができる。
【0055】
データベース81は、圧延設備100を稼働させる際に用いられる各種パラメータなどが記録されている記録媒体としても機能する。
【0056】
本実施例では、このデータベース81は、k≧Fで、k、Fは整数としたときに、(k-F+1)番目の画像から(k)番目の画像の取得までに連続して取得したF個の画像の各々、且つ、金属帯板の表面に映る反射光領域2を板幅方向にj個に分割した区域(i)の各々について、圧延方向における第1位置データPure_min(k)i、第2位置データPure_max(k)i、第3位置データPdre_min(k)i、及び第4位置データPdre_max(k)i(各々、i=1~j)を保存するものとできる。
【0057】
ここで、反射光領域2の分割方法について、板幅方向にj分割した各分割区域(i)(i=1~j)は、図9に示すようにj個に均等分割しても良く、図10に示すようにj個それぞれを任意の幅に不等分割しても良い。
【0058】
図1に戻り、制御装置82は、圧延設備100内の各機器の動作を制御する装置であり、本実施例では、画像処理計算機80での金属帯板1の板形状の検出に応じた各種制御を実行する装置である。
【0059】
これら画像処理計算機80やデータベース81、制御装置82は、後述する液晶ディスプレイ等のモニタ85や入力機器、記憶装置、CPU、メモリなどを有するコンピュータで構成されるものとすることができ、これらを1台のコンピュータで構成されるものとしてもよく、また、それぞれ別のコンピュータで構成されるものとしてもよく、特に限定されない。
【0060】
画像処理計算機80や制御装置82による各機器の動作の制御は、記憶装置に記録された各種プログラムに基づき実行される。なお、画像処理計算機80や制御装置82で実行される動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていてもよい。
【0061】
モニタ85は、ディスプレイなどの表示機器や警報機などの音響機器であり、例えば画像処理計算機80が板形状に問題が発生していると検出したときに、その対処作業についてオペレータに対して伝えるための装置であることから、このようなモニタ85としては、ディスプレイが用いられることが多い。
【0062】
ここで、上述の画像処理計算機80は表示信号部を含んでおり、モニタ85に表示する内容に関する信号を制御装置82やモニタ85に送信する。
【0063】
オペレータは、操業中、モニタ85の表示画面や各スタンド自体、各スタンド間を目視することで板形状の状態を確認することができる。
【0064】
なお、オペレータに板形状の問題発生を伝えるとともに板形状の問題を改善する操作を制御装置82により自動で行う形態に限られず、モニタ85に表示するのみの形態や、モニタ85への表示を省略して板形状の問題を改善する操作を制御装置82により自動で行うのみの形態とすることができる。
【0065】
次いで、本発明における圧延される金属帯板1の板形状検出装置、及び検出方法の流れについて図11及び図12を用いて説明する。図11及び図12に本発明の指標の算出方法をフローチャートにて示す。
【0066】
図11に示すように、圧延の開始前あるいは圧延中において、画像処理計算機80では、反射光領域2の境界線の最大変動振幅の判定画像数F(例えば、F=20)を設定する(ステップS201)とともに、画像番号kを設定する(ステップS202)ここで、画像番号の初期値は、k=1とする。
【0067】
その後、画像処理計算機80は、カメラ61,62,63,64により撮影されたルーパー71,72,73,74で持ち上げられた金属帯板1の湾曲部近傍の金属帯板1の表面画像(画像番号k)を取得する(ステップS203)。ここでは、取得した画像には、取得した順に1,2,3,・・・,k,・・・のように番号付けを行う。
【0068】
次いで、画像処理計算機80は、カメラ61,62,63,64により撮影された画像(画像番号k)を画像処理して、金属帯板1の湾曲部近傍の金属帯板1の表面の反射光領域2を抽出する(ステップS204)。
【0069】
例えば、画像処理計算機80では、カメラ61,62,63,64が撮影する画像のうち、選択した圧延表面画像範囲に映っているピクセル(画素)の全てに対して二値化処理を実行して、明るさ度合の適正な閾値を求めることにより、金属帯板の表面上に映し出された反射光領域2の上流側と下流側の板幅方向に見られる上流側境界線2A及び下流側境界線2Bを構成しているピクセル座標を求め、反射光領域2を特定する。その詳細は公知の方法とすることができる。
【0070】
次いで、画像処理計算機80は、カメラ61,62,63,64により撮影された画像(k)から抽出された反射光領域2を板幅方向にj分割(例えばj=7)する(ステップS205)。
【0071】
次いで、画像処理計算機80は、カメラ61,62,63,64により撮影された画像(画像番号k)から抽出された反射光領域2の各分割区域(i)(i=1~j)の範囲内で、反射光領域2の上流側境界線2Aを構成する画素の位置の中で最も上流の圧延方向位置の画素を選定し、その圧延方向画素位置を「Pumin(k)i」とし、反射光領域2の上流側境界線2Aを構成する画素の位置の中で最も下流の圧延方向位置の画素を選定し、その圧延方向画素位置を「Pumax(k)i」とし、それらの位置を好適にはデータベース81に保存する(ステップS206)とともに、反射光領域2の各分割区域(i)(i=1~j)の範囲内で、反射光領域2の下流側境界線2Bを構成する画素の位置の中で最も上流の圧延方向位置の画素を選定し、その圧延方向画素位置を「Pdmin(k)i」とし、反射光領域2の下流側境界線2Bの画素位置の中で最も下流の圧延方向位置の画素を選定し、その圧延方向画素位置を「Pdmax(k)i」とし、それらの位置を好適にはデータベース81に保存する(ステップS207)。これらステップS206,S207は順不同であり、並行して処理しても良いし、ステップS207をステップS206に先んじて処理してもよい。
【0072】
更に、画像処理計算機80は、画像番号k<Fであるか否かを判定する(ステップS208)。画像番号k<Fであると判定されたときは処理をステップS209に進めて、画像番号kの更新(k=k+1)を行い(ステップS209)、処理をステップS203に進めて、所定個数の画像の処理が行われるのを待つ。これに対し、ステップS208において画像番号k≧Fであると判定されたときはステップS210へ処理を進める。
【0073】
次いで、画像処理計算機80は、反射光領域2の各分割区域(i)について、上記のステップS206で保存した「Pumin(k)i」及び「Pumax(k)i」を画像番号(k-F+1)から画像番号(k)までの画像数Fの画像の中で比較して、最も上流位置を示す画素位置を再抽出して「Pure_min(k)i」として好適にはデータベース81に保存する(ステップS210)とともに、最も下流位置を示す画素位置を再抽出して「Pure_max(k)i」として好適にはデータベース81に保存する(ステップS211)。
【0074】
同様に、図12に示すように、画像処理計算機80は、上記のステップS207で保存した「Pdmin(k)i」及び「Pdmax(k)i」を画像番号(k-F+1)から画像番号(k)までの画像数Fの画像の中で比較して、最も上流位置を示す画素位置を再抽出し「Pdre_min(k)i」として好適にはデータベース81に保存する(ステップS212)とともに、最も下流位置を示す画素位置を再抽出し「Pdre_max(k)i」として好適にはデータベース81に保存する(ステップS213)。
【0075】
ここでは、画像中のピクセル座標の圧延方向位置が上流側から下流側に行くにつれて増加するものとしているため、分割区域(i)において、上流側境界線位置の中での最も上流位置の表記を「Pure_min(k)i」、上流側境界線位置の中での最も下流位置の表記を「Pure_max(k)i」、下流側境界線位置の中での最も上流位置の表記を「Pdre_min(k)i」、下流側境界線位置の中での最も下流位置の表記を「Pdre_max(k)i」と記述している。
【0076】
具体的には、下記の表1(第1位置データ(Pure_min(k)i)と第2位置データ(Pure_max(k)i)の再設定例)及び表2(第3位置データ(Pdre_min(k)i)と第4位置データ(Pdre_max(k)i)の再設定例)において画像数fとした場合、(k-f+1)番目の画像から連続した(k)番目の画像までを対象とし、反射光領域2をj個の区域に分割した場合の各画像における上流側データと下流側データを保存しているデータベース81を示しており、各区域においてf個の画像の中から更に第1位置データ及び第2位置データを再設定して第2位置データから第1位置データを引いてAu(k)i=[Pure_max(k)i]―[Pure_min(k)i]とするとともに、第3位置データ及び第4位置データを再設定して第4位置データから第3位置データを引いてAd(k)i=[Pdre_max(k)i]―[Pdre_min(k)i]とすることを示している。さらに、本発明では、Au(k)iとAd(k)iの平均値A(k)i(A(k)i=[Au(k)i+Ad(k)i]/2)をk番目の画像についての指標Bとする。なお、Pure_min(k)i等の表内の表示は例を示したものである。表1の太文字のPuminは、(k-f+1)番目の画像から(k)番目の画像までのf個の画像のPuminの中で最も上流位置のデータを表し、太文字のPumaxは、(k-f+1)番目の画像から(k)番目の画像までのf個の画像のPumaxの中で最も下流位置のデータを表し、表2の太文字のPdminは、(k-f+1)番目の画像から(k)番目の画像までのf個の画像のPdminの中で最も上流位置のデータを表し、太文字のPdmaxは、(k-f+1)番目の画像から(k)番目の画像までのf個の画像のPdmaxの中で最も下流位置のデータを表す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
例えば、表1のように、反射光領域2を板幅方向にj個の区域に分割した内の分割区域i=1の第1区域で反射光領域2の上流側境界線2Aを構成する画素の位置の中で最も上流の圧延方向の画素を選定し、その圧延方向位置をk番目の画像ではPumin(k)1としているが、評価対象画像としたf個の画像において、(k-f+1)番目の画像ではPumin(1)1、(k-f+2)番目の画像ではPumin(2)1、(k-f+3)番目の画像ではPumin(3)1、・・・、k番目の画像ではPumin(f)1と表記を改めたときに、これらf個の画像のPumin(1/・・・/f)1の中で最も上流の位置が(k-f+1)番目の画像でのPumin(1)1であったときは、この最も上流の圧延方向位置であるPumin(1)1を画像番号kの時の最上流を示した圧延方向位置として「Pure_min(k)1」と再設定して保存する。
【0080】
また同様に、分割区域i=1の第1区域で反射光領域2の上流側境界線2Aを構成する画素の位置の中で最も下流の圧延方向の画素を選定し、その圧延方向位置をk番目の画像ではPumax(k)1としているが、評価対象画像としたf個の画像において、(k-f+1)番目の画像ではPumax(1)1、(k-f+2)番目の画像ではPumax(2)1、(k-f+3)番目の画像ではPumax(3)1・・・、k番目の画像ではPumax(f)1と表記を改めたときに、これらf個の画像のPumax(1/・・・/f)1の中で最も下流の位置が(k-f+3)番目の画像でのPumax(3)1であったときは、この最も下流の圧延方向位置であるPumax(3)1を画像番号kの時の最下流を示した圧延方向位置として「Pure_max(k)1」と再設定して保存する。
【0081】
同様に、分割区域i=2の第2区域で反射光領域2の上流側境界線2Aを構成する画素の位置の中で最も上流の圧延方向の画素を選定し、その圧延方向位置をk番目の画像ではPumin(k)2としているが、評価対象画像としたf個の画像において、(k-f+1)番目の画像ではPumin(1)2、(k-f+2)番目の画像ではPumin(2)2、(k-f+3)番目の画像ではPumin(3)2、・・・、k番目の画像ではPumin(f)2と表記を改めたときに、これらf個の画像のPumin(1/・・・/f)2の中で最も上流の位置が(k-f+1)番目の画像でのPumin(1)2であったときは、この最も上流の位置であるPumin(1)2を画像番号kの時の最上流を示した圧延方向位置として「Pure_min(k)2」と再設定して保存するとともに、反射光領域2の上流側境界線2Aを構成する画素の位置の中で最も下流の圧延方向の画素の位置Pumax(1/・・・/f)2の中で最も下流の位置が、(k-f+2)番目の画像でのPumax(2)2であったときは、この最も下流の位置であるPumax(2)2を画像番号kの時の最下流を示した圧延方向位置として「Pure_max(k)2」と再設定して保存する。
【0082】
また表2のように、反射光領域2を板幅方向にj個の区域に分割した内の分割区域i=1の第1区域で反射光領域2の下流側境界線2Bを構成する画素の位置の中で最も上流の圧延方向の画素を選定し、その圧延方向位置をk番目の画像ではPdmin(k)1としているが、評価対象画像としたf個の画像において、(k-f+1)番目の画像ではPdmin(1)1、(k-f+2)番目の画像ではPdmin(2)1、(k-f+3)番目の画像ではPdmin(3)1、・・・、k番目の画像ではPdmin(f)1と表記を改めたときに、これらf個の画像のPdmin(1/・・・/f)1の中で最も上流の位置が(k)番目の画像でのPdmin(f)1であったときは、この最も上流の圧延方向位置であるPdmin(f)1を画像番号kの時の最上流を示した圧延方向位置として「Pdre_min(k)1」と再設定して保存する。
【0083】
同様に、分割区域i=1の第1区域で反射光領域2の下流側境界線2Bを構成する画素の位置の中で最も下流の圧延方向の画素を選定し、その圧延方向位置をk番目の画像ではPdmax(k)1としているが、評価対象画像としたf個の画像において、(k-f+1)番目の画像ではPdmax(1)1、(k-f+2)番目の画像ではPdmax(2)1、(k-f+3)番目の画像ではPdmax(3)1・・・、k番目の画像ではPdmax(f)1と表記を改めたときに、これらf個の画像のPdmax(1/・・・/f)1の中で最も下流の位置が(k-f+2)番目の画像でのPdmax(2)1であったときは、この最も下流の圧延方向位置であるPdmax(2)1を画像番号kの時の最下流を示した圧延方向位置として「Pdre_max(k)1」と再設定して保存する。
【0084】
同様に、分割区域i=2の第2区域で反射光領域2の下流側境界線2Bを構成する画素の位置の中で最も上流の圧延方向の画素を選定し、その圧延方向位置をk番目の画像ではPdmin(k)2としているが、評価対象画像としたf個の画像において、(k-f+1)番目の画像ではPdmin(1)2、(k-f+2)番目の画像ではPdmin(2)2、(k-f+3)番目の画像ではPdmin(3)2、・・・、k番目の画像ではPdmin(f)2と表記を改めたときに、これらf個の画像のPdmin(1/・・・/f)2の中で最も上流の位置が(k-f+3)番目の画像でのPdmin(3)2であったときは、この最も上流の位置であるPdmin(3)2を画像番号kの時の最上流を示した圧延方向位置として「Pdre_min(k)2」と再設定して保存するとともに、反射光領域2の下流側境界線2Bを構成する画素の位置の中で最も下流の圧延方向の画素の位置Pdmax(1/・・・/f)2の中で最も下流の位置が、(k-f+3)番目の画像でのPdmax(3)2であったときは、この最も下流の位置であるPdmax(3)2を画像番号kの時の最下流を示した圧延方向位置として「Pdre_max(k)2」と再設定して保存する。
【0085】
これらの「Pure_min(k)i」、「Pure_max(k)i」、「Pdre_min(k)i」、及び「Pdre_max(k)i」の再設定を分割区域i=1から分割区域i=jまで行う。
【0086】
次いで、画像処理計算機80は、上記のステップS210及びステップS211で得られた、カメラ画像(k)の時点で、反射光領域2の上流側の境界線2Aの位置の中から再抽出された分割区域(i)における最も上流の画素位置「Pure_min(k)i」と最も下流の画素位置「Pure_max(k)i」との差([Pure_max(k)i]-[Pure_min(k)i])を算出し、上流側の境界線2Aの位置の最大変動振幅「Au(k)i」として好適にはデータベース81に保存する(ステップS214)。
【0087】
同様に、画像処理計算機80は、上記のステップS212及びステップS213で得られた、カメラ画像(k)の時点で、反射光領域2の下流側の境界線2Bの位置の中から再抽出された分割区域(i)における最も上流の画素位置「Pdre_min(k)i」と最も下流の画素位置「Pdre_max(k)i」の差([Pdre_max(k)i]-[Pdre_min(k)i])を算出し、下流側の境界線2Bの位置の最大変動振幅「Ad(k)i」として好適にはデータベース81に保存する(ステップS215)。
【0088】
次いで、画像処理計算機80は、上記のステップS214及びステップS216で得られた、カメラ画像(k)の時点で得られた各分割区域(i)での反射光領域2の上流側境界線2Aの最大変動振幅「Au(k)i」と下流側境界線2Bの最大変動振幅「Ad(k)i」の平均値「A(k)i=[Au(k)i+Ad(k)i]/2」を算出する(ステップS216)。
【0089】
次いで、画像処理計算機80は、反射光領域2を板幅方向に分割した時の各分割区域(i)での上流側と下流側の2つの境界線(2A,2B)の最大変動振幅の平均値「A(k)i」を各分割区域(i)での板幅方向中央位置に対応させ、各分割区域(i)の板幅方向中央位置を(x)で表記し直して、ステップS216で得られた、カメラ画像(k)の時点で得られた各分割区域(i)での反射光領域2の上流側と下流側の2つの境界線(2A,2B)の最大変動振幅の平均値「A(k)i」を分割区域(i)の板幅方向中央位置を(xi)に対応させ、E(xi)=A(k)iとして(x)で表記したE(xi)を(1)式のチェビシェフ多項式にカーブフィッティングし、得られたその近似式からチェビシェフ係数(C’、C’、C’、C’)を算出する(ステップS217)。
【0090】
次いで、画像処理計算機80は、(k)番目の画像における板伸び分布の検出結果信号として、ステップS217で求めたチェビシェフ係数(C’、C’、C’)を、例えば制御装置82やモニタ85に対して発信する(ステップS218)。
【0091】
その後、画像処理計算機80は圧延が継続しているか否かを判定して(ステップS219)、継続していると判定されたときは処理を図11のステップS209に戻して板形状検出処理を継続する。これに対して圧延が完了したと判定されたときは処理を終了する。
【0092】
なお、本実施例では、チェビシェフ多項式に3次成分を採用しないものとする。これは、圧延機の圧延制御機構が3次成分の板伸び修正に対応するようになっていないためであり、3次成分の演算処理や対応手段を省くことで、分離された1次成分、2次成分、4次成分の圧延板形状の状況判断や板伸び修正がより容易にできる。
【0093】
画像処理計算機80は、(1)式のチェビシェフ多項式を用いて求めた板幅方向の多項式近似結果に基づいて、レベリング・ベンディング力・ペアクロス角度などを修正する制御指令信号を制御装置82に対して出力することができる。更には、替わって、あるいは加えて、モニタ85に対してレベリング・ベンディング力・ペアクロス角度などを修正するために必要なガイダンス表示を行うための表示指令信号を出力することでオペレータに、レベリング・ベンディング力・ペアクロス角度などの修正情報を伝えることができる。
【0094】
好適には、画像処理計算機80は、上述の(1)式のチェビシェフ多項式E(x)における各次数項ベクトル(C’、C’、C’、C’)の関数の0次成分[C’]、1次成分[C’×x]、2次成分[C’×(2x-1)]、4次成分[C’×(8x-8x+1)]の各成分項のグラフを表示するようモニタ85に信号を発信することができる。モニタ85に表示される画面は、例えば図13に示すような画面となる。
【0095】
図13はモニタ85の表示画面の一例を示す図である。図13では、板幅内の板幅方向位置(-1≦x≦1)で、チェビシェフ多項式の0次、1次、2次、4次の各成分の分布表示の例を示している。オペレータは、この図13に示すモニタ85の表示画面を確認して、例えばレベリング・ベンディング力・ペアクロス角度(ペアクロス圧延機の場合)などを修正する操作を行うことができる。
【0096】
(1)式のチェビシェフ多項式係数のうち、1次成分の係数(C’)は片伸びの指標を示しているので、該当のカメラ64の上流側の駆動側(DS)と作業側(WS)の圧下シリンダ41、及び/あるいは下流側の駆動側(DS)と作業側(WS)の圧下シリンダ51のレベリングを操作して、1次成分を正常化(目標の範囲内に)させるように制御装置82に対して操作指令信号を出力する。
【0097】
(1)式のチェビシェフ多項式係数のうち2次成分の係数(C’)は耳伸びまたは中伸びの指標を示している。そこで、次のいずれか一つ以上の操作をする。該当のカメラ64の上流側圧延機であるF4スタンド40、及び/あるいは下流側圧延機であるF5スタンド50のワークロール/中間ロールのベンディング装置を操作するよう、ペアクロス圧延機の場合はペアクロス角度を操作するよう、ワークロールシフト/中間ロールシフト圧延機の場合は圧延中にシフトを行うことが困難なことから予め中伸び/耳伸びを予測してワークロール/中間ロールをシフト操作するように制御装置82に対して操作指令信号を出力することで、2次成分を正常化(目標の範囲内に)させる。
【0098】
(1)式のチェビシェフ多項式係数のうち4次成分の係数(C’)はクォーター伸びの指標を示している。そこで、クォーター伸びを修正するために、次のいずれか一つ以上の操作をする。該当のカメラ64の上流側圧延機であるF4スタンド40、及び/あるいは下流側圧延機であるF5スタンド50のワークロールのベンディング装置のベンディング操作を行い、更に、ペアクロスミルの場合は、ベンディング操作とともに、又は、単独でペアクロス角度を操作する。6段の中間ロールシフト圧延機の場合は、予めクォーター伸びを予測して、適正な位置に中間ロールをシフト操作する。ベンディング操作及びペアクロス角度操作を行うように制御装置82に対して操作指令信号を出力することで、クォーター伸びを示す4次成分を正常化(目標板形状なるように目標の範囲内に)させる。なお、クォーター伸びは、ロール長さに対してロール径が小さい程、ベンディング操作によってロール幅端部の領域でロールが曲がり易くなるため、クォーター伸びが生じ易くなるが、上記操作により、正常化できる。
【0099】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0100】
上述した本実施例の圧延設備での金属帯板1の板形状検出装置では、画像処理計算機80は、取得した画像順に1,2,3,・・・,k,・・・と番号付けを行い、(k)番目の画像において、反射光領域2を板幅方向にj分割した各々の分割区域(i)(i=1~j)の(i)区域内で、ピクセル座標の圧延方向について、反射光領域2の上流側の境界線2Aを構成する画素位置の中で最も上流の位置Pumin(k)i、反射光領域2の上流側の境界線2Aを構成する画素位置の中で最も下流の位置Pumax(k)i、反射光領域2の下流側の境界線2Bを構成する画素位置の中で最も上流の位置Pdmin(k)i、及び反射光領域2の下流側の境界線2Bを構成する画素位置の中で最も下流の位置Pdmax(k)iを求め、取得した2個以上である画像番号(k-F+1)から画像番号(k)までのF個の画像の各々について、Pumin(k―F+1)iからPumin(k)iまでのF個のデータの中から最も上流側の位置を示しているデータを第1位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPure_min(k)iと再設定し、Pumax(k―F+1)iからPumax(k)iまでのF個のデータの中から最も下流側の位置を示しているデータを第2位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPure_max(k)iと再設定し、Pdmin(k―F+1)iからPdmin(k)iまでのF個のデータの中から最も上流側の位置を示しているデータを第3位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPdre_min(k)iと再設定し、Pdmax(k―F+1)iからPdmax(k)iまでのF個のデータの中から最も下流側の位置を示しているデータを第4位置データとして抽出し、それを(k)番目の画像のデータとしてPdre_max(k)iと再設定し、圧延方向の位置データの差[Pure_max(k)i―Pure_min(k)i]と[Pdre_max(k)i―Pdre_min(k)i]の平均値を分割区域(i)ごとに算出し、この値を(k)番目の画像の反射光領域2の上流側境界線2Aの位置と下流側境界線2Bの位置の平均最大変動振幅に対応した情報A(k)iとし、分割区域(i)の板幅方向の中央の位置に対応させ、板幅方向位置を示す値を変数(x)としたときに、画像内の反射光領域2の板幅範囲内の板幅方向の位置を-1≦x≦1の範囲に規格化して、反射光領域2の上流側と下流側の境界線の平均最大振幅A(k)i=([Pure_max(k)i―Pure_min(k)i]+[Pdre_max(k)i―Pdre_min(k)i])/2の値を(k)番目の画像から得られた板幅方向の圧延板伸び分布に対応した指標として利用し、板幅方向位置の表記を(x)に改め、A(k)i=E(xi)とする、xの0次、1次、2次、及び4次の項のみからなる(1)式のE(x)= C’+C’×x+C’×(2x-1)+C’×(8x-8x+1) (但し、-1≦x≦1) とのチェビシェフ多項式に当てはめて、j個のxの値(xi)をもったE(xi)から、カーブフィッティング(曲線近似)により、チェビシェフ多項式の係数(C’、C’、C’、C’)を求め、その1次の項の係数(C’)を(k)番目の画像の板幅方向の1次成分の圧延板伸び分布の検出結果信号として発信する。ここで、xiは、反射光領域2を板幅方向にj分割した分割区域(i)の板幅方向の中央位置を(x)表記で示したものである。なお、例えば、規格化した板幅方向位置(x)の-1≦x≦1において、例えば、x=-1は、駆動側板幅端部位置を示し、x=0は、板幅中央位置を示し、x=1は、作業側板幅端部位置を示す。また、F、i、j、kは整数である。
【0101】
これによって、上述の特許文献1では対応できなかった板伸び分布の変化を高い精度で評価することができる。
【0102】
また、画像処理計算機80は、1次係数(C’)、2次係数(C’)又は4次係数(C’)のうちいずれか1つ以上の係数を板幅方向の1次成分、2次成分又は4次成分の圧延板伸び分布の検出結果信号として更に発信するため、より多くの板形状の変化に対応できるようになる。
【0103】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0104】
1…金属帯板
2…反射光領域
2A…反射光領域の上流側境界線
2B…反射光領域の下流側境界線
10…F1スタンド
11,21,31,41,51…圧下シリンダ
12,22,32,42,52…荷重検出器
20…F2スタンド
30…F3スタンド
40…F4スタンド
50…F5スタンド
61,62,63,64…カメラ
71,72,73,74…ルーパー
80…画像処理計算機(画像処理部)
81…データベース
82…制御装置
85…モニタ
90…通信線
100…圧延設備
【要約】
【課題】金属帯板に振動が生じている場合にも板伸び分布の変化を高い精度で評価する。
【解決手段】取得画像において、反射光領域を板幅方向にj分割した各々の分割区域で、反射光領域の上流側の境界線位置の最上流位置及び最下流位置と下流側の境界線位置の最上流位置及び最下流位置を求め、取得した画像の各々について、最上流側の境界線位置の変動幅と最下流側の境界線位置の変動幅との差を分割区域ごとに算出し、(k)番目の画像の反射光領域の最大変動振幅に対応した情報とし、分割区域iの板幅方向の中央の位置に対応させ、板幅方向位置を示す値を変数xとしたときに、画像内の領域の板幅範囲内の板幅方向の位置を-1≦x≦1の範囲に規格化して、情報の値を(k)番目の画像から得られた板幅方向の圧延板伸び分布に対応した指標として、チェビシェフ多項式に当てはめてその係数を求め、1次の項の係数C’を(k)番目の画像の板幅方向の1次成分の圧延板伸び分布の検出結果信号として発信する。
【選択図】 図12
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13