(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 30/66 20250101AFI20250414BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20250414BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20250414BHJP
【FI】
H10D30/66 103Q
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2024573189
(86)(22)【出願日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2024017779
【審査請求日】2024-12-11
(32)【優先日】2023-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2023-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】安田 英司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 禎志
(72)【発明者】
【氏名】山本 興輝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-247309(JP,A)
【文献】特許第7253674(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/156215(WO,A1)
【文献】特開2020-047674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 30/66
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェイスダウン実装が可能なチップサイズパッケージ型の半導体装置であって、
裏面側に半導体基板を有し、前記半導体装置の平面視において、互いに重複しない第1の領域、第2の領域、第3の領域、のそれぞれ分散して配置されない3つの領域に分けられた半導体層と、
前記半導体層の前記第1の領域に、その全体が形成された第1の縦型MOSトランジスタと、
前記半導体層の前記第2の領域に、その全体が形成された第2の縦型MOSトランジスタと、
前記半導体層の前記第3の領域に、その全体が形成された第3の縦型MOSトランジスタと、
前記半導体層の裏面側に接触して形成された金属層と、を備え、
前記半導体基板は、前記第1の縦型MOSトランジスタと前記第2の縦型MOSトランジスタと前記第3の縦型MOSトランジスタの共通ドレイン領域であり、
前記平面視において、前記第1の領域に内包される位置に、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のソースパッドと第1のゲートパッドおよび前記第1のゲートパッドと接続する第1のゲート配線が形成され、
前記平面視において、前記第2の領域に内包される位置に、前記第2の縦型MOSトランジスタの第2のソースパッドと第2のゲートパッドおよび前記第2のゲートパッドと接続する第2のゲート配線が形成され、
前記平面視において、前記第3の領域に内包される位置に、前記第3の縦型MOSトランジスタの第3のソースパッドおよび第3のゲート配線が形成され、
前記第1のゲート配線と前記第3のゲート配線とは、電気的に、前記第1のゲート配線から前記第3のゲート配線に向かう方向を順方向とする第1のダイオードを介して直列に接続され、
前記第2のゲート配線と前記第3のゲート配線とは、電気的に、前記第2のゲート配線から前記第3のゲート配線に向かう方向を順方向とする第2のダイオードを介して直列に接続された
半導体装置。
【請求項2】
前記第1のダイオードは、前記第1のダイオードの一方の端部が前記第1の領域にあり、前記第1のダイオードの他方の端部が前記第3の領域にあるように形成され、
前記第2のダイオードは、前記第2のダイオードの一方の端部が前記第2の領域にあり、前記第2のダイオードの他方の端部が前記第3の領域にあるように形成された
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1のゲート配線と前記第3のゲート配線とは、さらに、第1の抵抗素子を介して直列に接続され、
前記第1のダイオードと前記第1の抵抗素子とは、前記第1のゲート配線と前記第3のゲート配線との間で並列に接続され、
前記第2のゲート配線と前記第3のゲート配線とは、さらに、第2の抵抗素子を介して直列に接続され、
前記第2のダイオードと前記第2の抵抗素子とは、前記第2のゲート配線と前記第3のゲート配線との間で並列に接続された
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の抵抗素子は、前記第1の抵抗素子の一方の端部が前記第1の領域にあり、前記第1の抵抗素子の他方の端部が前記第3の領域にあるように形成され、
前記第2の抵抗素子は、前記第2の抵抗素子の一方の端部が前記第2の領域にあり、前記第2の抵抗素子の他方の端部が前記第3の領域にあるように形成された
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記平面視において、前記第1の領域と前記第3の領域とは隣接し、前記第2の領域と前記第3の領域とは隣接する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記平面視において、前記第1の領域の面積は前記第3の領域の面積よりも大きく、
前記第3の領域の面積は前記第2の領域の面積よりも大きい
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記平面視において、前記第1の領域に内包される位置に、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のソース電極が形成され、
前記平面視において、前記第3の領域に内包される位置に、前記第3の縦型MOSトランジスタの第3のソース電極が形成され、
前記平面視において、前記第1のソース電極の面積は前記第3のソース電極の面積
と同等である
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記平面視において、前記第1の領域の外周の少なくとも一部には第1のEQR(EQui potential Ring)が形成され、
前記平面視において、前記第3の領域の外周の少なくとも一部には第3のEQRが形成され、
前記平面視において、前記第1の領域と前記第3の領域とが対向する部分において、前記第1のEQRと前記第3のEQRとは共通化され、
前記平面視で、前記第1のダイオードは、前記第1のEQRと前記第3のEQRとが共通化されていない部分に設置されている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記平面視において、前記第1のゲートパッドは、前記第3の領域と近接する位置に設置され、
前記平面視において、前記第2のゲートパッドは、前記第3の領域と近接する位置に設置された
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記平面視において、前記第1の領域に内包される位置に、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のソース電極と第1のゲート電極とが形成され、
前記平面視において、前記第1のソース電極と前記第1のゲート電極との間には、第1のツエナーダイオードが形成され、
前記第1のダイオードと前記第1のツエナーダイオードとに含まれる、同じ導電型の領域における、当該同じ導電型の不純物は同じ濃度である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記平面視において、前記第1の領域に内包される位置に、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のソース電極と第1のゲート電極とが形成され、
前記平面視において、前記第1のゲート電極と前記第1のゲート配線との間には、第1のゲート抵抗素子が形成され、
前記第1の抵抗素子と前記第1のゲート抵抗素子とに含まれる、同じ導電型の領域における、当該同じ導電型の不純物は同じ濃度である
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記平面視において、前記第3の領域に内包される位置に、前記第3のゲート配線と接続するゲート電極およびゲートパッドが形成されない
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記半導体装置の製品データシートに記載の静電耐性保証値をESDt[V]とし、
前記平面視での前記第2の領域の面積をa2[mm
2]とすると、
a2>(ESDt-93)/990の関係が成り立つ
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記平面視において、前記第2の領域に内包される位置に、前記第2の縦型MOSトランジスタの第2のソース電極と第2のゲート電極とが形成され、
前記第2のソース電極と前記第2のゲート電極との間を電気的に接続する経路は存在せず、
前記第2のゲート電極と前記第2のゲート配線とは、抵抗体を介することなく接続されている
請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記平面視において、前記第1の領域に内包される位置に、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のソース電極と第1のゲート電極とが形成され、
前記第1のソース電極と前記第1のゲート電極との間を電気的に接続する経路は存在せず、
前記第1のゲート電極と前記第1のゲート配線とは、抵抗体を介することなく接続されている
請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記平面視において、前記第1の領域に内包される位置に、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のソース電極と第1のゲート電極とが形成され、
前記第1のソース電極と前記第1のゲート電極との間を電気的に接続する経路は存在せず、
前記第1のゲート電極と前記第1のゲート配線とは、抵抗体を介することなく接続されており、
前記平面視において、前記第2の領域に内包される位置に、前記第2の縦型MOSトランジスタの第2のソース電極と第2のゲート電極とが形成され、
前記第2のソース電極と前記第2のゲート電極とは、第2のツエナーダイオードを介して接続されており、
前記第2のゲート電極と前記第2のゲート配線とは、間に第2のゲート抵抗素子を介して直列に接続されている
請求項6に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関し、特には、チップサイズパッケージ型の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
仕様の電流値が異なる2系統を、1系統に取りまとめる電気回路で縦型MOSトランジスタが用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
縦型MOSトランジスタを用いた回路の小型化が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る半導体装置は、フェイスダウン実装が可能なチップサイズパッケージ型の半導体装置であって、裏面側に半導体基板を有し、前記半導体装置の平面視において、互いに重複しない第1の領域、第2の領域、第3の領域、のそれぞれ分散して配置されない3つの領域に分けられた半導体層と、前記半導体層の前記第1の領域に、その全体が形成された第1の縦型MOSトランジスタと、前記半導体層の前記第2の領域に、その全体が形成された第2の縦型MOSトランジスタと、前記半導体層の前記第3の領域に、その全体が形成された第3の縦型MOSトランジスタと、前記半導体層の裏面側に接触して形成された金属層と、を備え、前記半導体基板は、前記第1の縦型MOSトランジスタと前記第2の縦型MOSトランジスタと前記第3の縦型MOSトランジスタの共通ドレイン領域であり、前記平面視において、前記第1の領域に内包される位置に、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のソースパッドと第1のゲートパッドおよび前記第1のゲートパッドと接続する第1のゲート配線が形成され、前記平面視において、前記第2の領域に内包される位置に、前記第2の縦型MOSトランジスタの第2のソースパッドと第2のゲートパッドおよび前記第2のゲートパッドと接続する第2のゲート配線が形成され、前記平面視において、前記第3の領域に内包される位置に、前記第3の縦型MOSトランジスタの第3のソースパッドおよび第3のゲート配線が形成され、前記第1のゲート配線と前記第3のゲート配線とは、電気的に、前記第1のゲート配線から前記第3のゲート配線に向かう方向を順方向とする第1のダイオードを介して直列に接続され、前記第2のゲート配線と前記第3のゲート配線とは、電気的に、前記第2のゲート配線から前記第3のゲート配線に向かう方向を順方向とする第2のダイオードを介して直列に接続された半導体装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上記トリプル構成の縦型MOSトランジスタを、例えば仕様の電流値が異なる2つの導通経路を1つに合流させる回路に用いることで、従来に比べて回路が必要とする面積を削減することができる。
【0007】
したがって、上記構成の半導体装置によると、縦型MOSトランジスタ用いた回路の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る半導体装置の構造の一例を示す断面模式図である。
【
図2A】
図2Aは、実施の形態に係る半導体装置の構造の一例を示す平面模式図である。
【
図2B】
図2Bは、実施の形態に係る半導体装置の構造の一例を示す平面模式図である。
【
図3A】
図3Aは、実施の形態に係る半導体装置の構造の一部について、一例を示す平面模式図である。
【
図3B】
図3Bは、実施の形態に係る半導体装置の構造の一部について、一例を示す断面模式図である。
【
図3C】
図3Cは、実施の形態に係る半導体装置の構造の一部について、一例を示す断面模式図である。
【
図4A】
図4Aは、実施の形態に係る半導体装置の構造の一部について、一例を示す平面模式図である。
【
図4B】
図4Bは、実施の形態に係る半導体装置の構造の一部について、一例を示す断面模式図である。
【
図4C】
図4Cは、実施の形態に係る半導体装置の構造の一部について、一例を示す断面模式図である。
【
図5A】
図5Aは、実施の形態に係る第1のトランジスタの略単位構成の平面模式図である。
【
図5B】
図5Bは、実施の形態に係る第1のトランジスタの略単位構成の斜視模式図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る半導体装置の使用例を示す回路図である。
【
図7】
図7は、比較例に係る半導体装置の使用例を示す回路図である。
【
図8A】
図8Aは、比較例に係るトランジスタの構造の一例を示す平面模式図である。
【
図8B】
図8Bは、比較例に係るトランジスタの構造の一例を示す平面模式図である。
【
図9A】
図9Aは、比較例に係るトランジスタの構造の一例を示す平面模式図である。
【
図9B】
図9Bは、比較例に係るトランジスタの構造の一例を示す平面模式図である。
【
図10A】
図10Aは、実施の形態に係る半導体装置の構造の変形例を示す平面模式図である。
【
図10B】
図10Bは、実施の形態に係る半導体装置の構造の変形例を示す平面模式図である。
【
図11】
図11は、トランジスタの平面視での面積とESD耐性との関係をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。
【0010】
本開示において、「AとBとが電気的に接続される」とは、AとBとが配線を介して直接的に接続される場合と、AとBとが配線を介さず直接的に接続される場合と、AとBとが抵抗成分(抵抗素子、抵抗配線)を介して間接的に接続される場合と、を含む。
【0011】
(実施の形態)
[1.半導体装置の構造]
以下、実施の形態に係る半導体装置の構造について説明する。実施の形態に係る半導体装置は、半導体基板に2つの縦型MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタを形成したデュアル構成の、フェイスダウン実装が可能なチップサイズパッケージ(Chip Size Package:CSP)型の半導体デバイスである。上記2つの縦型MOSトランジスタは、パワートランジスタであり、いわゆる、トレンチMOS型FET(Field Effect Transistor)である。
【0012】
図1は、実施の形態に係る半導体装置1の構造の一例を示す断面模式図である。
図2A、
図2Bは実施の形態に係る半導体装置1の構造の一例を示す平面模式図である。
図2A、
図2Bにおいて半導体装置1の大きさや形状は一例である。またパッド、電極の大きさや形状および配置も一例である。
【0013】
なお
図2Bは、半導体層40の表面側に第1のソース電極11の部分13、第1のゲート電極19、第1のゲート配線118、第2のソース電極21の部分23、第2のゲート電極29、第2のゲート配線128、そして第3のソース電極31の部分33、第3のゲート配線138、が形成された直後の様子を示したものである。この時点では見えないはずのパッドは点線で示している。それぞれの構成要素については後述する。
【0014】
図1は、
図2AのI-Iに沿って半導体装置1を切断したときの切断面である。
【0015】
図1に示すように、半導体装置1は、半導体基板42と、金属層41と、半導体基板42上に形成された低濃度不純物層43と、を有する。本開示では半導体基板42と低濃度不純物層43とを合わせて半導体層40と称する。
【0016】
半導体基板42は、半導体層40の裏面側に配置され、第1の濃度の不純物を含む第1導電型のシリコンからなる。半導体層40は、半導体基板42に接触して形成された、第1の濃度よりも低い第2の濃度の不純物を含む、第1導電型の低濃度不純物層43を有する。低濃度不純物層43は、例えば、エピタキシャル成長により半導体基板42上に形成される。
【0017】
図1および
図2Aに示すように、半導体装置1は、半導体層40の第1の領域A1内にその全体が形成された第1の縦型MOSトランジスタ10(以下、「トランジスタ10」とも称する)と、半導体層40の第2の領域A2内にその全体が形成された第2の縦型MOSトランジスタ20(以下、「トランジスタ20」とも称する)と、半導体層40の第3の領域A3内にその全体が形成された第3の縦型MOSトランジスタ30(以下、「トランジスタ30」とも称する)と、を有する。
【0018】
第1の領域A1内にその全体が形成されたトランジスタ10とは、平面視で、トランジスタ10を構成する要素のすべてが第1の領域A1の内部に含まれていて、第1の領域A1ではない領域には含まれないことを意味する。同様に、第2の領域A2内にその全体が形成されたトランジスタ20とは、平面視で、トランジスタ20を構成する要素のすべてが第2の領域A2の内部に含まれていて、第2の領域A2ではない領域には含まれないことを意味する。同様に、第3の領域A3内にその全体が形成されたトランジスタ30とは、平面視で、トランジスタ30を構成する要素のすべてが第3の領域A3の内部に含まれていて、第3の領域A3ではない領域には含まれないことを意味する。
【0019】
図2Aに示すように、平面視において半導体層40の表面側は、互いに重複せず、それぞれ分散して配置されない、第1の領域A1、第2の領域A2、第3の領域A3に分けられる。ここで、第1の領域A1と第2の領域A2と第3の領域A3とがそれぞれ分散して配置されないとは、第1の領域A1と第2の領域A2と第3の領域A3とがそれぞれ飛び地を伴わないことを意味する。
図2Aでは第1の領域A1、第2の領域A2、第3の領域A3をそれぞれ区分する仮想的な境界線90を点線で示している。分かりやすさのために、境界線90を示す点線は半導体層40の外部まで延長して示しているが、実際の境界線90は平面視で、半導体層40の外周において終端する(
図2A、
図2Bにおいては便宜的に、境界線90の終端をそれぞれP1、P2、P3、P4として示している)。境界線90については後述する。
【0020】
なお、
図2Aにおいて、第1の領域A1、第2の領域A2、第3の領域A3を示す破線は分かりやすさのため半導体層40の外周および境界線90とは厳密に一致させず、若干の余白を置いて内側に示しているが、実質的に第1の領域A1の外周と第2の領域A2の外周と第3の領域A3の外周とは、半導体層40の外周および境界線90と一致するものである。実施形態に係る半導体装置1は、平面視で、第1の領域A1でも第2の領域A2でも第3の領域A3でもない領域は存在しない。
【0021】
金属層41は、半導体層40の裏面側に接触して形成され、限定されない一例として、銀(Ag)もしくは銅(Cu)で構成されてもよい。なお、金属層41には、金属材料の製造工程において不純物として混入する金属以外の元素が微量に含まれていてもよい。
【0022】
図1に示すように、低濃度不純物層43の第1の領域A1には、第1導電型と異なる第2導電型の第1のボディ領域18が形成されている。第1のボディ領域18には、第1導電型の第1のソース領域14が形成されている。
【0023】
また第1の領域A1には、半導体層40の上面から第1のソース領域14および第1のボディ領域18を貫通して低濃度不純物層43の一部までの深さに形成された複数の第1のゲートトレンチ17が形成されており、さらに第1のゲート導体15が、第1のゲートトレンチ17の内部で第1のゲート絶縁膜16上に形成されている。第1のゲート導体15は、半導体層40の内部に埋め込まれた埋め込みゲート電極である。第1のゲート導体15は、第1のゲート配線118を介して第1のゲート電極19と電気的に接続される(
図2B参照)。
【0024】
第1のソース電極11は部分12と部分13とからなり、部分12は、部分13を介して第1のソース領域14および第1のボディ領域18に接続されている。
【0025】
第1のソース電極11の部分12は、フェイスダウン実装におけるリフロー時にはんだと接合される層であり、限定されない一例として、ニッケル、チタン、タングステン、パラジウムのうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。部分12の表面には、金などのめっきが施されてもよい。
【0026】
第1のソース電極11の部分13は、部分12と半導体層40とを接続する層であり、限定されない一例として、アルミニウム、銅、金、銀のうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。
【0027】
第1のゲート電極19は、第1のソース電極11と同時に形成される場合があり、第1のソース電極11と同じ構成、および/または、同じ材料で形成されてもよい。
【0028】
第1のゲート配線118は、
図2Bに示すように、平面視で、第1のソース電極11の部分13と第1のゲート電極19とを取り囲むように設置される。第1のゲート配線118は、第1のゲート電極19と、第1のゲート抵抗素子117を介して直列に接続されている。
図3Bに第1のゲート抵抗素子117を含む断面模式図を示す。
図3Bは、
図3AのII-IIに沿って半導体装置1を切断したときの切断面であり、
図3Aは
図2Bにおいて破線で囲まれた領域A11を拡大して示した平面模式図である。
【0029】
図2Bに示すように、平面視で、第1のソース電極11の部分13と、第1のゲート電極19との間には第1のツエナーダイオード115が設置される。
図3Cに第1のツエナーダイオード115を含む断面模式図を示す。
図3Cは、
図3AのIII-IIIに沿って半導体装置1を切断したときの切断面である。第1のゲート電極19と第1のソース電極11の部分13とは、第1のツエナーダイオード115を介して電気的に接続される。
【0030】
ゲート抵抗素子およびツエナーダイオードは、共に、ゲート電極に過剰な電圧が印加された際に、トランジスタが破壊されることを防止する、保護機能を期待して設置される。すなわちESD(Electro Static Discharge)耐性を高めるために設置される素子である。第1のゲート抵抗素子117および第1のツエナーダイオード115は、共に、例えばポリシリコンに不純物が注入されて形成されていてもよい。不純物の種類、注入量、注入する位置をそれぞれ制御することで、第1のゲート抵抗素子117の抵抗率や、第1のツエナーダイオード115におけるPNジャンクションの位置、個数および電気的な方向を制御することができる。
【0031】
第1のツエナーダイオード115は、例えば
図3Cに示すように、第1導電型の不純物が注入されて第1導電型になる箇所と、第2導電型の不純物が注入されて第2導電型になる箇所とが交互に形成されてもよい。
図3Cに示す例では、第1のゲート電極19と第1のソース電極11の部分13との間には、第1のツエナーダイオード115によって、双方向に2つのPNジャンクションが形成されている。
【0032】
平面視において、第1の領域A1の外周には、半導体基板42と電気的に接続される第1のEQR(EQui potential Ring)116が設置されてもよい。第1のEQR116はトランジスタ10に対して、外部と第1のボディ領域18との間にリーク電流が流れるのを止める機能を期待して設置される。第1のEQR116は限定されない一例として、アルミニウム、銅、金、銀のうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。
【0033】
なお、実施の形態に係る半導体装置1には、ゲート抵抗素子、ツエナーダイオード、およびEQRは必ずしも設置される必要はない。
【0034】
低濃度不純物層43の第2の領域A2には、第2導電型の第2のボディ領域28が形成されている。第2のボディ領域28には、第1導電型の第2のソース領域24が形成されている。
【0035】
また第2の領域A2には、半導体層40の上面から第2のソース領域24および第2のボディ領域28を貫通して低濃度不純物層43の一部までの深さに形成された複数の第2のゲートトレンチ27が形成されており、さらに第2のゲート導体25が、第2のゲートトレンチ27の内部で第2のゲート絶縁膜26上に形成されている。第2のゲート導体25は、半導体層40の内部に埋め込まれた埋め込みゲート電極である。第2のゲート導体25は、第2のゲート配線128を介して第2のゲート電極29と電気的に接続される(
図2B参照)。
【0036】
第2のソース電極21は部分22と部分23とからなり、部分22は、部分23を介して第2のソース領域24および第2のボディ領域28に接続されている。
【0037】
第2のソース電極21の部分22は、フェイスダウン実装におけるリフロー時にはんだと接合される層であり、限定されない一例として、ニッケル、チタン、タングステン、パラジウムのうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。部分22の表面には、金などのめっきが施されてもよい。
【0038】
第2のソース電極21の部分23は、部分22と半導体層40とを接続する層であり、限定されない一例として、アルミニウム、銅、金、銀のうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。
【0039】
第2のゲート電極29は、第2のソース電極21と同時に形成される場合があり、第2のソース電極21と同じ構成、および/または、同じ材料で形成されてもよい。
【0040】
第2のゲート配線128は、
図2Bに示すように、平面視で、第2のソース電極21の部分23と第2のゲート電極29とを取り囲むように設置される。第2のゲート配線128は、第2のゲート電極29と、第2のゲート抵抗素子127を介して直列に接続されている。
【0041】
図2Bに示すように、平面視で、第2のソース電極21の部分23と、第2のゲート電極29との間には第2のツエナーダイオード125が設置される。第2のゲート電極29と第2のソース電極21の部分23とは、第2のツエナーダイオード125を介して電気的に接続される。
【0042】
第2のゲート抵抗素子127および第2のツエナーダイオード125は、共に、例えばポリシリコンに不純物が注入されて形成されていてもよい。不純物の種類、注入量、注入する位置をそれぞれ制御することで、第2のゲート抵抗素子127の抵抗率や、第2のツエナーダイオード125におけるPNジャンクションの位置、個数および電気的な方向を制御することができる。
【0043】
第2のツエナーダイオード125は、例えば
図3Cに示した、第1のツエナーダイオード115と同様の構造であってもよい。
【0044】
平面視において、第2の領域A2の外周には、半導体基板42と電気的に接続される第2のEQR126が設置されてもよい。第2のEQR126はトランジスタ20に対して、外部と第2のボディ領域28との間にリーク電流が流れるのを止める機能を期待して設置される。第2のEQR126は限定されない一例として、アルミニウム、銅、金、銀のうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。
【0045】
低濃度不純物層43の第3の領域A3には、第2導電型の第3のボディ領域38が形成されている。第3のボディ領域38には、第1導電型の第3のソース領域34が形成されている。また第3の領域A3には、半導体層40の上面から第3のソース領域34および第3のボディ領域38を貫通して低濃度不純物層43の一部までの深さに形成された複数の第3のゲートトレンチ37が形成されており、さらに第3のゲート導体35が、第3のゲートトレンチ37の内部で第3のゲート絶縁膜36上に形成されている。第3のゲート導体35は、半導体層40の内部に埋め込まれた埋め込みゲート電極である。第3のゲート導体35は、第3のゲート配線138と電気的に接続される(
図2B参照)。
【0046】
第3のソース電極31は部分32と部分33とからなり、部分32は、部分33を介して第3のソース領域34および第3のボディ領域38に接続されている。
【0047】
第3のソース電極31の部分32は、フェイスダウン実装におけるリフロー時にはんだと接合される層であり、限定されない一例として、ニッケル、チタン、タングステン、パラジウムのうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。部分32の表面には、金などのめっきが施されてもよい。
【0048】
第3のソース電極31の部分33は、部分32と半導体層40とを接続する層であり、限定されない一例として、アルミニウム、銅、金、銀のうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。
【0049】
平面視において、第3の領域A3の外周には、半導体基板42と電気的に接続される第3のEQR136が設置されてもよい。第3のEQR136はトランジスタ30に対して、外部と第3のボディ領域38との間にリーク電流が流れるのを止める機能を期待して設置される。第3のEQR136は限定されない一例として、アルミニウム、銅、金、銀のうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。
【0050】
第3のゲート配線138は、
図2Bに示すように、平面視で、第3のソース電極31の部分33を取り囲むように設置されるが、本開示において、第3の領域A3に内包される位置に、第3のゲート配線138と接続するゲート電極およびゲートパッドが存在しない。なお、第1の領域A1あるいは第2の領域A2には設置され得る、ゲート抵抗素子およびツエナーダイオードも形成されない。
【0051】
第3のゲート配線138は、第1のダイオード113を介して第1のゲート配線118と直列に接続される。第1のダイオード113は、電気的に、第1のゲート配線118から第3のゲート配線138へ向かう方向が順方向となるように形成される。
図4Bに第1のダイオード113を含む断面模式図を示す。
図4Bは、
図4AのIV-IVに沿って半導体装置1を切断したときの切断面であり、
図4Aは
図2Bにおいて破線で囲まれた領域A12を拡大して示した平面模式図である。
【0052】
第3のゲート配線138は、第1の抵抗素子114を介して第1のゲート配線118と直列に接続される。したがって第1のダイオード113と第1の抵抗素子114とは、第1のゲート配線118と第3のゲート配線138との間で並列に接続された関係にある。
図4Cに第1の抵抗素子114を含む断面模式図を示す。
図4Cは、
図4AのV-Vに沿って半導体装置1を切断したときの切断面である。
【0053】
第1の抵抗素子114および第1のダイオード113は、共に、例えばポリシリコンに不純物が注入されて形成されていてもよい。不純物の種類、注入量、注入する位置をそれぞれ制御することで、第1の抵抗素子114の抵抗率や、第1のダイオード113におけるPNジャンクションの位置、個数および電気的な方向を制御することができる。
【0054】
第1のダイオード113は、例えば
図4Bに示すように、第1導電型の不純物が注入されて第1導電型になる箇所と、第2導電型の不純物が注入されて第2導電型になる箇所とが1個所ずつ形成されてもよい。
図4Bに示す例では、電気的には第1のゲート配線118から第3のゲート配線138へ向かう方向に順方向となるPNジャンクションが1個所だけ形成されている。
【0055】
第3のゲート配線138は、第2のダイオード123を介して第2のゲート配線128と直列に接続される。第2のダイオード123は、電気的に、第2のゲート配線128から第3のゲート配線138へ向かう方向が順方向となるように形成される。また第3のゲート配線138は、第2の抵抗素子124を介して第2のゲート配線128と直列に接続される。したがって第2のダイオード123と第2の抵抗素子124とは、第2のゲート配線128と第3のゲート配線138との間で並列に接続された関係にある。
【0056】
第2の抵抗素子124および第2のダイオード123は、共に、例えばポリシリコンに不純物が注入されて形成されていてもよい。不純物の種類、注入量、注入する位置をそれぞれ制御することで、第2の抵抗素子124の抵抗率や、第2のダイオード123におけるPNジャンクションの位置、個数および電気的な方向を制御することができる。
【0057】
第2のダイオード123は、例えば
図4Bに示した、第1のダイオード113と同様の構造であって、電気的には第2のゲート配線128から第3のゲート配線138へ向かう方向に順方向となるPNジャンクションが1個所だけ形成されている。
【0058】
図1に示すように、第1のボディ領域18および第1のソース領域14は開口を有する層間絶縁層44で覆われ、層間絶縁層44の開口を通して第1のソース領域14に接続される第1のソース電極11の部分13が設けられている。層間絶縁層44および第1のソース電極11の部分13は開口を有するパッシベーション層45で覆われ、パッシベーション層45の開口を通して第1のソース電極11の部分13に接続される部分12が設けられている。
【0059】
同様に、第2のボディ領域28および第2のソース領域24は開口を有する層間絶縁層44で覆われ、層間絶縁層44の開口を通して第2のソース領域24に接続される第2のソース電極21の部分23が設けられている。層間絶縁層44および第2のソース電極21の部分23は開口を有するパッシベーション層45で覆われ、パッシベーション層45の開口を通して第2のソース電極21の部分23に接続される部分22が設けられている。
【0060】
同様に、第3のボディ領域38および第3のソース領域34は開口を有する層間絶縁層44で覆われ、層間絶縁層44の開口を通して第3のソース領域34に接続される第3のソース電極31の部分33が設けられている。層間絶縁層44および第3のソース電極31の部分33は開口を有するパッシベーション層45で覆われ、パッシベーション層45の開口を通して第3のソース電極31の部分33に接続される部分32が設けられている。
【0061】
したがって、第1のソースパッド111、第2のソースパッド121、第3のソースパッド131は、
図2Bからも分かるように、それぞれ、第1のソース電極11、第2のソース電極21、第3のソース電極31が半導体装置1の表面に部分的に露出した領域、すなわち端子の部分を指す。同様に、第1のゲートパッド119および第2のゲートパッド129は、それぞれ、第1のゲート電極19および第2のゲート電極29が半導体装置1の表面に部分的に露出した領域、すなわち端子の部分を指す。
【0062】
第1のソースパッド111、第2のソースパッド121、第3のソースパッド131の数は、それぞれ必ずしも
図2Aに例示された数に限定されない。また第1のソースパッド111、第2のソースパッド121、第3のソースパッド131の形状は、それぞれ
図2Aに例示された楕円形状に限定される必要はなく、例えば矩形状や円形状であってもよい。また第1のソースパッド111、第2のソースパッド121、第3のソースパッド131の配置は、それぞれ
図2Aに例示された配置に限定されない。
【0063】
第1のゲートパッド119および第2のゲートパッド129の数は、それぞれ必ずしも
図2Aに例示された数に限定されず、2以上の複数であってもよい。また第1のゲートパッド119および第2のゲートパッド129の形状は、それぞれ
図2Aに例示された円形状に限定される必要はなく、例えば矩形状や楕円形状であってもよい。
【0064】
トランジスタ10、トランジスタ20、トランジスタ30の上記の構成により、半導体基板42と、低濃度不純物層43のうち半導体基板42の直上近傍の範囲は、トランジスタ10の第1のドレイン領域、トランジスタ20の第2のドレイン領域、トランジスタ30の第3のドレイン領域とが共通化された、共通ドレイン領域である。
【0065】
金属層41はトランジスタ10の第1のドレイン電極、トランジスタ20の第2のドレイン電極、トランジスタ30の第3のドレイン電極が共通化された、共通ドレイン電極である。
【0066】
なお本開示では、平面視における形状の中心を次にように定義する。
図2Aにおける第1のゲートパッド119のように円形状のものはその中心のことをいう。第1の領域A1のように矩形状のものは、その対角線の交点のことをいう。第1のソースパッド111のように長円形状のものは、その長手方向に伸びる、線対称の対称軸と、その幅方向に伸びる、線対称の対象軸との交点のことをいう。
【0067】
さて
図2Aに示すように、第1の領域A1と第2の領域A2とは、第3の領域A3を挟んで配置される。本開示おいて、第1の領域A1と第2の領域A2が、第3の領域A3を挟むとは、第1の領域A1と第3の領域A3とが間に他の領域を挟まずに隣接し、さらに第2の領域A2と第3の領域A3とが間に他の領域を挟まずに隣接するということである。したがって半導体層40の平面視において、第3の領域A3は、第1の領域A1および第2の領域A2に、共に隣接する。
【0068】
平面視である領域とある領域が、隣接する、とは、対向する、という意味と同じであり、互いの間にある境界線90において、互いの外周が一致するということである。以降、境界線90の長さのことを対向長ということがある。
【0069】
図2Bに示すように、第1の領域A1と第3の領域A3との境界線90は、第1のソース電極11の部分13と、第3のソース電極31の部分33との間隔の中央位置をたどる仮想線と捉えてよい。また境界線90が有限の幅となるが当該間隔そのものと捉えてもよい。当該間隔の場合であっても、肉眼あるいは低倍率での外観では線として認識することができる。第1の領域A1と第3の領域A3との境界線90は、
図2A、
図2Bに示す例においては、P1からP2までの点線である。
【0070】
また平面視で、第1の領域A1の外周に第1のEQR116が設置され、第3の領域A3の外周に第3のEQR136が設置される場合、第1の領域A1の外周と第3の領域A3の外周とが一致するところでは、第1のEQR116と第3のEQR136とが共通化されて1つになっていてもよい。このとき共通化されたEQRが設置されるところを、平面視で、第1の領域A1と第3の領域A3との境界線90と捉えてもよい。
【0071】
いずれにせよ、
図2Bに示すように、実施の形態に係る半導体装置1では、第1のダイオード113は、平面視で第1の領域A1と第3の領域A3との境界線90をまたいで設置されている。すなわち平面視で、第1のダイオード113の端部のうち一方は第1の領域A1にあり、他方は第3の領域A3にあるように設置されている。
【0072】
図2Bに示すように、実施の形態に係る半導体装置1では、第1の抵抗素子114は、平面視で第1の領域A1と第3の領域A3との境界線90をまたいで設置されている。すなわち平面視で、第1の抵抗素子114の端部のうち一方は第1の領域A1にあり、他方は第3の領域A3にあるように設置されている。
【0073】
第2の領域A2と第3の領域A3との境界線90は、第2のソース電極21の部分23と、第3のソース電極31の部分33との間隔の中央位置をたどる仮想線と捉えてよい。また有限の幅となるが当該間隔そのものと捉えてもよい。第2の領域A2と第3の領域A3との境界線90は、
図2A、
図2Bに示す例においては、P3から、P5を経由したP4までの点線である。
【0074】
また平面視で、第2の領域A2の外周に第2のEQR126が設置され、第3の領域A3の外周に第3のEQR136が設置される場合、第2の領域A2の外周と第3の領域A3の外周とが一致するところでは、第2のEQR126と第3のEQR136とが共通化されて1つになっていてもよい。このとき共通化されたEQRが設置されるところを、平面視で、第2の領域A2と第3の領域A3との境界線90と捉えてもよい。
【0075】
いずれにせよ、
図2Bに示すように、実施の形態に係る半導体装置1では、第2のダイオード123は、平面視で第2の領域A2と第3の領域A3との境界線90をまたいで設置されている。すなわち平面視で、第2のダイオード123の端部のうち一方は第2の領域A2にあり、他方は第3の領域A3にあるように設置されている。
【0076】
図2Bに示すように、実施の形態に係る半導体装置1では、第2の抵抗素子124は、平面視で第2の領域A2と第3の領域A3との境界線90をまたいで設置されている。すなわち平面視で、第2の抵抗素子124の端部のうち一方は第1の領域A1にあり、他方は第3の領域A3にあるように設置されている。
【0077】
ところで
図2A、
図2Bには示していないが、第1の領域A1と第2の領域A2とが隣接する場合も考えられる(
図10A、
図10Bに示す変形例を参照)。第1の領域A1と第2の領域A2との境界線は、第1のソース電極11の部分13と、第2のソース電極21の部分23との間隔の中央位置をたどる仮想線と捉えてよい。また有限の幅となるが当該間隔そのものと捉えてもよい。
【0078】
また平面視で、第1の領域A1の外周に第1のEQR116が設置され、第2の領域A2の外周に第2のEQR126が設置される場合、第1の領域A1の外周と第2の領域A2の外周とが一致するところでは、第1のEQR116と第2のEQR126とが共通化されて1つになっていてもよい。このとき共通化されたEQRが設置されるところを、平面視で、第1の領域A1と第2の領域A2との境界線と捉えてもよい。
【0079】
実施の形態に係る半導体装置1では、
図2A、
図2Bに示すように、第1の領域A1の平面視での面積a1は、第3の領域A3の平面視での面積a3よりも大きい(a1>a3)。さらに第3の領域A3の平面視での面積a3は、第2の領域A2の平面視での面積a2よりも大きい(a3>a2)。したがって第1の領域A1と第2の領域A2と第3の領域A3とには、平面視での面積でa1>a3>a2の関係がある。
【0080】
一方、
図2Bに示す例では、第1の領域A1に形成される第1のソース電極11の部分13の平面視での面積と、第3の領域A3に形成される第3のソース電極31の部分33の平面視での面積とは略同等である。上記説明したように、第1の領域A1の平面視での面積a1は、第3の領域A3の平面視での面積a3よりも大きい(a1>a3)が、第1の領域A1には第1のゲート電極19が形成されるため、その分だけ第1のソース電極11の部分13の平面視での面積が減少するためである。
【0081】
図5Aおよび
図5Bは、それぞれ、実施の形態に係る半導体装置1のX方向およびY方向に繰り返し形成される、トランジスタ10、トランジスタ20、トランジスタ30の略単位構成の、平面模式図および斜視模式図である。
図5Aおよび
図5Bでは、分かりやすさのために半導体基板42と金属層41、さらにパッシベーション層45と第1のソース電極11、第2のソース電極21、第3のソース電極31、層間絶縁層44は図示していない。
【0082】
なおY方向とは、半導体層40の表面と平行し、第1のゲートトレンチ17が延在する方向である。またX方向とは、半導体層40の表面と平行し、Y方向に直交する方向のことをいう。Z方向とは、X方向にもY方向にも共に直交し、半導体装置の高さ方向を示す方向のことをいう。
【0083】
図5Aおよび
図5Bに示すように、トランジスタ10には、第1のボディ領域18と第1のソース電極11とを電気的に接続する第1の接続部18aが備わる。第1の接続部18aは、第1のボディ領域18のうち、第1のソース領域14が形成されていない領域であり、第1のボディ領域18と同じ第2導電型である。第1のソース領域14と第1の接続部18aとは、Y方向に沿って交互に、かつ周期的に繰り返し配置される。トランジスタ20およびトランジスタ30についても同様である。
【0084】
本開示に係る半導体装置1では、第1導電型をN型、第2導電型をP型として、第1のソース領域14、第2のソース領域24、第3のソース領域34、半導体基板42、および、低濃度不純物層43はN型半導体であり、かつ、第1のボディ領域18、第1の接続部18a、第2のボディ領域28、第2の接続部28a、第3のボディ領域38、第3の接続部38aはP型半導体であるとする。
【0085】
[2.半導体装置の動作]
実施の形態に係る半導体装置1では、電流は、第1の領域A1の第1のソースパッド111または第2の領域A2の第2のソースパッド121のどちらか一方を流入口として、共通ドレイン領域および裏面ドレイン電極41を経由し、第3の領域A3の第3のソースパッド131を流出口として流れることを想定する。すなわち実施の形態では、第1のソースパッド111から第2のソースパッド121への経路、または、その逆の経路で導通する駆動を想定しない。
【0086】
半導体装置1において、第1の領域A1の第1のソースパッド111を流入口とし、第3の領域A3の第3のソースパッド131を流出口として電流が流れる導通経路を、第1の導通経路とよぶ。第2の領域A2の第2のソースパッド121を流入口とし、第3の領域A3の第3のソースパッド131を流出口として電流が流れる導通経路を、第2の導通経路とよぶ。
【0087】
第1の導通経路では、以下のように電流が流れる。まず半導体装置1において、第1のソース電極11に高電圧および第3のソース電極31に低電圧を印加し、第1のソース電極11を基準として第1のゲート電極19(第1のゲート導体15)にしきい値以上で、十分な大きさの電圧を印加(ON制御)する。すると第1のボディ領域18中の第1のゲート絶縁膜16の近傍に導通チャネルが形成される。
【0088】
さらに第1のゲート電極19に印加された電圧は、第1のゲート配線118と第1のダイオード113、および第3のゲート配線138を介して、第3のゲート導体35まで伝達する。この電圧がしきい値以上(ON制御)であれば、第3のボディ領域38中の第3のゲート絶縁膜36の近傍に導通チャネルが形成される。このとき、第1のソース電極11-第1のソース領域14-第1のボディ領域18に形成された導通チャネル-低濃度不純物層43-半導体基板42-金属層41-半導体基板42-低濃度不純物層43-第3のボディ領域38に形成された導通チャネル-第3のソース領域34-第3のソース電極31という経路で電流が流れて、半導体装置1が導通状態となる。
【0089】
上記の経路が第1の導通経路である。実施の形態に係る半導体装置1は、トランジスタ10をON制御すると、自ずとトランジスタ30もON制御される構造である。
【0090】
第1の導通経路を導通させる際には、トランジスタ20における第2のボディ領域28と低濃度不純物層43との接触面にあるPN接合をボディダイオードとして機能させていることに留意すべきである。これがあるために第1のソースパッド111から第2のソースパッド121へ導通することがない。半導体装置1において第1の導通経路を使用する場合には、トランジスタ20の、第2のゲート電極29(第2のゲート導体25)には、しきい値以上の電圧を印加しないこと(OFF制御)が望ましい。
【0091】
なお、第1のダイオード113には一定の電圧降下がある。第1の導通経路を導通させるために第1のゲート電極19に印加する電圧は、トランジスタ30のしきい値よりも、第1のダイオード113の電圧降下の分だけ大きくなるように調節する必要がある。
【0092】
ところで第3のゲート配線138には、第2のダイオード123を介して第2のゲート配線128も接続するが、第2のダイオード123は、電気的に、第3のゲート配線138から第2のゲート配線128へ向かう方向が逆方向となるように形成される。このため、第1のゲート電極19に印加された電圧は、第2のゲート配線128(第2のゲート導体25)には伝達されない。
【0093】
また第3のゲート配線138には、第2の抵抗素子124を介して第2のゲート配線128も接続するが、第2の抵抗素子124の抵抗値は、第3のゲート配線138からの電圧が十分に低減される大きさに調節される。このため、第1のゲート電極19に印加された電圧は、第2のゲート配線128(第2のゲート導体25)には、少なくともしきい値以上の大きさでは伝達されない。
【0094】
第2の導通経路では、以下のように電流が流れる。まず半導体装置1において、第2のソース電極21に高電圧および第3のソース電極31に低電圧を印加し、第2のソース電極21を基準として第2のゲート電極29(第2のゲート導体25)にしきい値以上で、十分な大きさの電圧を印加(ON制御)する。すると第2のボディ領域28中の第2のゲート絶縁膜26の近傍に導通チャネルを形成される。
【0095】
さらに第2のゲート電極29に印加された電圧は、第2のゲート配線128と第2のダイオード123、および第3のゲート配線138を介して、第3のゲート導体35まで伝達する。この電圧がしきい値以上(ON制御)であれば、第3のボディ領域38中の第3のゲート絶縁膜36の近傍に導通チャネルが形成される。このとき第2のソース電極21-第2のソース領域24-第2のボディ領域28に形成された導通チャネル-低濃度不純物層43-半導体基板42-金属層41-半導体基板42-低濃度不純物層43-第3のボディ領域38に形成された導通チャネル-第3のソース領域34-第3のソース電極31という経路で電流が流れて、半導体装置1が導通状態となる。
【0096】
上記の経路が第2の導通経路である。実施の形態に係る半導体装置1は、トランジスタ20をON制御すると、自ずとトランジスタ30もON制御される構造である。
【0097】
第2の導通経路を導通させる際には、トランジスタ10における第1のボディ領域18と低濃度不純物層43との接触面にあるPN接合をボディダイオードとして機能させていることに留意すべきである。これがあるために第2のソースパッド121から第1のソースパッド111へ導通することがない。半導体装置1において第2の導通経路を使用する場合には、トランジスタ10の、第1のゲート電極19(第1のゲート導体15)には、しきい値以上の電圧を印加しないこと(OFF制御)が望ましい。
【0098】
なお、第2のダイオード123には一定の電圧降下がある。第2の導通経路を導通させるために第2のゲート電極29に印加する電圧は、トランジスタ30のしきい値よりも、第2のダイオード123の電圧降下の分だけ大きくなるように調節する必要がある。
【0099】
ところで第3のゲート配線138には、第1のダイオード113を介して第1のゲート配線118も接続するが、第1のダイオード113は、電気的に、第3のゲート配線138から第1のゲート配線118へ向かう方向が逆方向となるように形成される。このため、第2のゲート電極29に印加された電圧は、第1のゲート配線118(第1のゲート導体15)には伝達されない。
【0100】
また第3のゲート配線138には、第1の抵抗素子114を介して第1のゲート配線118も接続するが、第1の抵抗素子114の抵抗値は、第3のゲート配線138からの電圧が十分に低減される大きさに調節される。このため、第2のゲート電極29に印加された電圧は、第1のゲート配線118(第1のゲート導体15)には、少なくともしきい値以上の大きさでは伝達されない。
【0101】
ここまで説明したように、第1のダイオード113は、第1のゲートパッド119に印加された電圧が第3のゲート配線138に伝達されるまでに不要な降下がなるべく起こらないよう、PNジャンクションが1個所だけ備わる構造であることが望ましい。また第1の抵抗素子114は、第1のゲートパッド119に印加された電圧が第2のゲート配線128に伝達されるまでにしきい値以下の電圧に降下するよう、十分な大きさの抵抗値であることが求められる。
【0102】
同様に、第2のダイオード123は、第2のゲートパッド129に印加された電圧が第3のゲート配線138に伝達されるまでに不要な降下がなるべく起こらないよう、PNジャンクションが1個所だけ備わる構造であることが望ましい。また第2の抵抗素子124は、第2のゲートパッド129に印加された電圧が第1のゲート配線118に伝達されるまでにしきい値以下の電圧に降下するよう、十分な大きさの抵抗値であることが求められる。
【0103】
なお、第1の導通経路においても第2の導通経路においても、半導体装置1内部を水平方向に流れる電流は、そのほとんどは抵抗率の低い金属層41を経由するが、一部には半導体基板42を流れることもある。
【0104】
[3.半導体装置の使用例]
図6は、それぞれ脱着が可能な第1の電源51と第2の電源52とから、実施の形態に係る半導体装置1を経由して負荷6へ電流を流す給電回路の一部を示した回路図である。ここでは負荷6の電位を基準として、第1の電源51の電位が、第2の電源52の電位よりも高電位であるとする。
【0105】
実施の形態に係る半導体装置1は、高電位である第1の電源51からの給電と、それよりは低い電位である第2の電源52からの給電との2系統を合流し、低電位である下流の負荷6へ向けて1系統にまとめる機能を果たすように設置される。
【0106】
高電位である第1の電源51からの給電によって流れる電流の最大値をI1[A]とし、第1の電源51の電位よりは低電位である第2の電源52からの給電によって流れる電流の最大値をI2[A]とする。I1、I2は実施の形態に係る半導体装置1の製品データシートに記載される、それぞれ第1の導通経路および第2の導通経路における仕様最大電流値であると捉えて差し支えない。
【0107】
第1の電源51と第2の電源52の電位の関係から、I1>I2の関係がある。相対的に大きい電流I1が導通する、第1の電源51側は、半導体装置1において平面視での面積が大きいトランジスタ10の、第1のソースパッド111に接続されており、相対的に小さい電流I2が導通する、第2の電源52側は、半導体装置1において平面視での面積が小さいトランジスタ20の、第2のソースパッド121に接続されている。
【0108】
なお、半導体装置1と第2の電源52との間には、スイッチング素子8(例えば、シングル型の縦型MOSトランジスタ)が接続されている。スイッチング素子8および半導体装置1には制御IC4が接続されており、制御IC4によってスイッチング素子8、トランジスタ10およびトランジスタ20のON/OFFがそれぞれ個別に制御される。
【0109】
はじめに第1の電源51だけが接続され、第2の電源52が接続されない状態(
図6において第2の電源52が存在しない状態)について説明する。このとき、制御IC4によってトランジスタ10がON制御され、かつトランジスタ20がOFF制御される。トランジスタ10がON制御されるので、自ずとトランジスタ30もON制御される。すると半導体装置1内の第1の導通経路を経て、第1の電源51から負荷6への給電がおこなわれる。
【0110】
第1の導通経路とは半導体装置1の内部の導通経路であり、先に説明したようにトランジスタ10の第1のソースパッド111を流入口とし、トランジスタ30の第3のソースパッド131を流出口として電流が流れる導通経路である。第1の導通経路を導通する際にはトランジスタ20はOFF制御される。トランジスタ20がOFF制御されているために、第1の電源51からの給電によって流れる電流が、第2の電源52の側へ向かうことを防止できる。
【0111】
次に第2の電源52だけが接続され、第1の電源51が接続されない状態(
図6において第1の電源51が存在しない状態)について説明する。このとき、制御IC4によってトランジスタ20がON制御され、かつトランジスタ10がOFF制御される。トランジスタ20がON制御されるので、自ずとトランジスタ30もON制御される。すると半導体装置1内の第2の導通経路を経て、第2の電源52から負荷6への給電がおこなわれる。
【0112】
第2の導通経路とは半導体装置1の内部の導通経路であり、先に説明したようにトランジスタ20の第2のソースパッド121を流入口とし、トランジスタ30の第3のソースパッド131を流出口として電流が流れる導通経路である。第2の導通経路を導通する際にはトランジスタ10はOFF制御される。トランジスタ10がOFF制御されているために、第2の電源52からの給電によって流れる電流が、第1の電源51の側へ向かうことを防止できる。
【0113】
第1の電源51と第2の電源52とが同時に接続される場合(
図6の状態)では、制御IC4によって、まずスイッチング素子8がOFF制御され、第1の電源51からの給電だけがおこなわれる状態を構成する。これは第1の電源51の方が高電位であり、給電に優位であるためである。さらにトランジスタ10がON制御され、トランジスタ20がOFF制御されることで、トランジスタ30もON制御され、第1の電源51から第1の導通経路を経由した、負荷6への給電がおこなわれる。
【0114】
[4.半導体装置の効果]
図6に示した給電回路で、実施の形態に係る半導体装置1を使用しない場合の比較例を
図7に示した。以下、比較例との対比で、実施の形態に係る半導体装置1を使用する場合の効果を説明する。
【0115】
図7に示す比較例においては、実施の形態に係る半導体装置1の代わりに、例えば、
図8A、
図8Bに構造の一例を平面模式図で示したシングル構成の縦型MOSトランジスタ10B(以下、トランジスタ10Bという)と、
図9A、
図9Bに構造の一例を平面模式図で示したシングル構成の縦型MOSトランジスタ20B(以下、トランジスタ20Bという)と、をそれぞれ使用する。さらに負荷6の直前には、
図8A、
図8Bに構造の一例を平面模式図で示したシングル構成の縦型MOSトランジスタ30B(以下、トランジスタ30Bという)が接続される。
【0116】
トランジスタ10B、トランジスタ20B、トランジスタ30Bで、実施の形態に係る半導体装置1が有するのと同様の構成要素については、対応する構成要素の符号にBを追加して示している。
【0117】
トランジスタ10Bは、平面視で2つのソースパッド111Bと1つのゲートパッド119Bの他に、1つのドレインパッド151Bを有している。トランジスタ10Bのドレインパッド151Bは表面ドレイン電極と接続し、例えば、トランジスタ10Bのソースパッド111Bから流入した電流の流出口となる。
【0118】
トランジスタ20Bは、平面視で2つのソースパッド121Bと1つのゲートパッド129Bの他に、1つのドレインパッド152Bを有している。トランジスタ20Bのドレインパッド152Bは表面ドレイン電極と接続し、例えば、トランジスタ20Bのソースパッド121Bから流入した電流の流出口となる。
【0119】
トランジスタ30Bは、平面視で2つのソースパッド131Bと1つのゲートパッド139Bの他に、1つのドレインパッド153Bを有している。トランジスタ30Bのドレインパッド153Bは表面ドレイン電極と接続し、例えば、トランジスタ30Bのソースパッド131Bへ流出する電流の流入口となる。
【0120】
図8B、
図9Bでは、本実施の形態に係る半導体装置1の平面模式図(
図2B)で示したのと同じように、半導体層40の表面側に、ソース電極の部分13B(23B、33B)、ゲート電極19B(29B、39B)、ゲート配線118B(128B、138B)、そしてドレインパッド151B(152B、153B)が接続する表面ドレイン電極が形成された直後の様子を示したものである。
図8B、
図9Bでは分かりやすさのため、この時点では見えないはずのパッドを点線で示している。
【0121】
トランジスタ10Bのソース電極の部分13Bの平面視での面積と、実施の形態に係る半導体装置1に備わるトランジスタ10が有する第1のソース電極11の部分13の平面視での面積とは同じである。またトランジスタ30Bのソース電極の部分33Bの平面視での面積と、実施の形態に係る半導体装置1に備わるトランジスタ30が有する第3のソース電極31の部分33の平面視での面積とは同じである。したがって、
図7において第1の電源51からトランジスタ10Bとトランジスタ30Bを経て負荷6へ流れる経路の導通抵抗は、
図6における実施の形態に係る半導体装置1の第1の導通経路の導通抵抗と同等であると捉えて差し支えない。
【0122】
またトランジスタ20Bのソース電極の部分23Bの平面視での面積と、実施の形態に係る半導体装置1に備わるトランジスタ20が有する第2のソース電極21の部分23の平面視での面積とは同じである。したがって、
図7において第2の電源52からトランジスタ20Bとトランジスタ30Bを経て負荷6へ流れる経路の導通抵抗は、
図6における実施の形態に係る半導体装置1の第2の導通経路の導通抵抗と同等であると捉えて差し支えない。
【0123】
図7に示す給電回路において、第1の電源51のみが接続される(
図7で第2の電源52が存在しない)場合、制御IC4により、トランジスタ20BはOFF制御されて、第1の電源51からの給電によって流れる電流が、第2の電源52の側へ向かうことを防ぐ。さらにトランジスタ10Bのゲートパッド119Bにはしきい値以上の電圧が印加されてON制御され、さらにトランジスタ30Bのゲートパッド139Bにもしきい値以上の電圧が印加されてON制御される。
【0124】
したがって第1の電源51からの給電によって流れる電流は、トランジスタ10Bのソースパッド111Bから流入し、ドレインパッド151Bから流出し、その後、トランジスタ30Bのドレインパッド153Bから流入し、ソースパッド131Bから流出する。
図8A、
図8Bに示すように、トランジスタ10Bの平面視での面積(ソ―ス電極の部分13Bの面積)が相対的に大きいのは、第1の電源51からの給電によって流れる電流が相対的に大きいためである。
【0125】
図7に示す給電回路において、第2の電源52のみが接続される(
図7で第1の電源51が存在しない)場合、制御IC4により、トランジスタ10BはOFF制御されて、第2の電源52からの給電によって流れる電流が、第1の電源51の側へ向かうことを防ぐ。さらにトランジスタ20Bのゲートパッド129Bにはしきい値以上の電圧が印加されてON制御され、さらにトランジスタ30Bのゲートパッド139Bにもしきい値以上の電圧が印加されてON制御される。
【0126】
したがって第2の電源52からの給電によって流れる電流は、トランジスタ20Bのソースパッド121Bから流入し、ドレインパッド152Bから流出し、その後、トランジスタ30Bのドレインパッド153Bから流入し、ソースパッド131Bから流出する。
図9A、
図9Bに示すように、トランジスタ20Bの平面視での面積(ソ―ス電極の部分23Bの面積)が相対的に小さいのは、第2の電源52からの給電によって流れる電流が相対的に小さいためである。
【0127】
以上のように、
図7に示す比較例に係る給電回路では、トランジスタ10Bおよびトランジスタ30Bは、
図6の給電回路における、実施の形態に係る半導体装置1に備わるトランジスタ10よびトランジスタ30と同じ機能を果たす。同様に、
図7に示す比較例に係る給電回路では、トランジスタ20Bおよびトランジスタ30Bは、
図6の給電回路における、実施の形態に係る半導体装置1に備わるトランジスタ20およびトランジスタ30と同じ機能を果たす。
【0128】
しかしながら
図7に示す、比較例に係る給電回路を搭載する回路基板では、トランジスタ10Bとトランジスタ20Bおよびトランジスタ30Bのそれぞれの面積と、それぞれの間に設けねばならない一定の設置マージンとを確保する必要がある。またトランジスタ10B、トランジスタ20B、トランジスタ30Bは、平面視でそれぞれにドレインパッド(151B、152B、153B)を有するため、一定の面積を必要とする構造である。
【0129】
一方で、
図6に示す給電回路を搭載する回路基板では、実施の形態に係る半導体装置1を利用することで、比較例に係るトランジスタ10B、トランジスタ20B、トランジスタ30Bを1つに統合することができる。これによって、比較例に係る給電回路を搭載する回路基板では必要であったトランジスタ10B、トランジスタ20B、トランジスタ30Bのそれぞれの間に設けねばならない一定の設置マージンを不要とすることができる。
【0130】
また実施の形態に係る半導体装置1では、比較例におけるトランジスタ10B、トランジスタ20B、トランジスタ30Bがそれぞれに有するドレインパッド(151B、152B、153B)を削除することができる。さらにいえば、実施の形態に係る半導体装置1では、第3のトランジスタ30にはゲートパッドも存在しないため、
図7に示す比較例におけるトランジスタ30B(
図8B)には形成されているゲートパッド139Bをも不要にすることができる。
【0131】
以上のように、実施の形態に係る半導体装置1を使用すれば、回路基板に必要な面積を大幅に縮小することができる。
図6に示す給電回路を搭載する回路基板では、比較例に比べて、基板自体を縮小することも可能となり、また、生じた余剰部分に別の部品を搭載することも可能となる。
【0132】
したがって実施の形態に係る半導体層1は、フェイスダウン実装が可能なチップサイズパッケージ型の半導体装置1であって、裏面側に半導体基板42を有し、半導体装置1の平面視において、互いに重複しない第1の領域A1、第2の領域A2、第3の領域A3、のそれぞれ分散して配置されない3つの領域に分けられた半導体層40と、半導体層40の第1の領域A1に、その全体が形成された第1の縦型MOSトランジスタ10と、半導体層40の第2の領域A2に、その全体が形成された第2の縦型MOSトランジスタ20と、半導体層40の第3の領域A3に、その全体が形成された第3の縦型MOSトランジスタ30と、半導体層40の裏面側に接触して形成された金属層41と、を備え、半導体基板42は、第1の縦型MOSトランジスタ10と第2の縦型MOSトランジスタ20と第3の縦型MOSトランジスタ30の共通ドレイン領域であり、平面視において、第1の領域A1に内包される位置に、第1の縦型MOSトランジスタ10の第1のソースパッド111と第1のゲートパッド119および第1のゲートパッド119と接続する第1のゲート配線118が形成され、平面視において、第2の領域A2に内包される位置に、第2の縦型MOSトランジスタ20の第2のソースパッド121と第2のゲートパッド129および第2のゲートパッド129と接続する第2のゲート配線128が形成され、平面視において、第3の領域A3に内包される位置に、第3の縦型MOSトランジスタ30の第3のソースパッド131および第3のゲート配線138が形成され、第1のゲート配線118と第3のゲート配線138とは、電気的に、第1のゲート配線118から第3のゲート配線138に向かう方向を順方向とする第1のダイオード113を介して直列に接続され、第2のゲート配線128と第3のゲート配線138とは、電気的に、第2のゲート配線128から第3のゲート配線138に向かう方向を順方向とする第2のダイオード123を介して直列に接続された半導体装置1であることを特徴とする。
【0133】
実施の形態に係る半導体装置1は、第1のダイオード113が備わることで、トランジスタ10をON制御すると自ずとトランジスタ30もON制御される構造であり、第1の導通経路が導通する。このとき第3のゲート配線138から見て、電気的に第2のダイオード123が逆方向に形成されることで、トランジスタ20はON制御されることがない。
【0134】
同様に、第2のダイオード123が備わることで、トランジスタ20をON制御すると自ずとトランジスタ30もON制御される構造であり、第2の導通経路が導通する。このとき第3のゲート配線138から見て、電気的に第1のダイオード113が逆方向に形成されることで、トランジスタ10はON制御されることがない。
【0135】
第1のダイオード113は一方の端部が第1のゲート配線118と接続し、他方の端部が第3のゲート配線138と接続する。同様に、第2のダイオード123は一方の端部が第2のゲート配線128と接続し、他方の端部が第3のゲート配線138と接続する。
【0136】
したがって実施の形態に係る半導体装置1では、平面視において、第1のダイオード113は、第1のダイオード113の一方の端部が第1の領域A1にあり、第1のダイオード113の他方の端部が第3の領域A3にあるように形成され、平面視において、第2のダイオード123は、第2のダイオード123の一方の端部が第2の領域A2にあり、第2のダイオード123の他方の端部が第3の領域A3にあるように形成されることを特徴とする。
【0137】
上記のように第1のダイオード113および第2のダイオード123が形成されると、第1の導通経路あるいは第2の導通経路の導通面積が不要に削減されることを防ぐ効果も得られる。
【0138】
図2Bに示すように、第1のダイオード113は典型的に、平面視で第1の領域A1と第3の領域A3との境界線90(P1からP2までの点線)をまたいで設置される。第1の領域A1に第1のEQR116が、第3の領域A3に第3のEQR136が、それぞれ設置される場合は、平面視で、第1のEQR116と第3のEQR136とが共通化されるところが第1の領域A1と第3の領域A3との境界線90となるが、第1のダイオード113を設置するためには共通化されたEQRを一部で分断せねばならないことがある。
【0139】
したがって実施の形態に係る半導体装置1では、平面視において、第1の領域A1の外周の少なくとも一部には第1のEQR116が形成され、平面視において、第3の領域A3の外周の少なくとも一部には第3のEQR136が形成され、平面視で、第1の領域A1と第3の領域A3とが対向する部分において、第1のEQR116と第3のEQR136とは共通化されており、平面視において、第1のダイオード113は、第1のEQRと第3のEQRとが共通化されていない部分に設置されていてもよい。すなわち平面視で、第1のダイオード113は、第1の領域A1と第3の領域A3との境界線90となる、共通化されたEQRが途切れる箇所に設置されていてもよい。
【0140】
ところで
図6に示す給電回路において、第1のゲートパッド119へも、第2のゲートパッド129へも、共に電圧印加がない場合がある。このとき半導体装置1について、直前の使用状態によっては、第1のゲート配線118および第3のゲート配線138、あるいは第2のゲート配線128および第3のゲート配線138に電位が残ることがある。
【0141】
第1の抵抗素子114を介して第1のゲート配線118と第3のゲート配線138が接続されていると、第1の抵抗素子114の抵抗値が高くとも、第1のゲート配線118および第3のゲート配線138の残電位を、第1のゲートパッド119へ逃がす経路が形成されるので都合がよい。同様に第2の抵抗素子124を介して第2のゲート配線128と第3のゲート配線138が接続されていると、第2の抵抗素子124の抵抗値が高くとも、第2のゲート配線128および第3のゲート配線138の残電位を、第2のゲートパッド129へ逃がす経路が形成されるので都合がよい。
【0142】
したがって実施の形態に係る半導体装置1では、第1のゲート配線118と第3のゲート配線138とは、第1の抵抗素子114を介して直列に接続され、第1のダイオード113と第1の抵抗素子114とは、第1のゲート配線118と第3のゲート配線138との間で並列に接続され、第2のゲート配線128と第3のゲート配線138とは、第2の抵抗素子124を介して直列に接続され、第2のダイオード123と第2の抵抗素子124とは、第2のゲート配線128と第3のゲート配線138との間で並列に接続されていてもよい。
【0143】
第1の抵抗素子114は一方の端部が第1のゲート配線118と接続し、他方の端部が第3のゲート配線138と接続する。同様に、第2の抵抗素子124は一方の端部が第2のゲート配線128と接続し、他方の端部が第3のゲート配線138と接続する。
【0144】
したがって実施の形態に係る半導体装置1では、平面視において、第1の抵抗素子114は、第1の抵抗素子114の一方の端部が第1の領域A1にあり、第1の抵抗素子114の他方の端部が第3の領域A3にあるように形成され、平面視において、第2の抵抗素子124は、第2の抵抗素子124の一方の端部が第2の領域A2にあり、第2の抵抗素子124の他方の端部が第3の領域A3にあるように形成されることが望ましい。
【0145】
上記のように第1の抵抗素子114および第2の抵抗素子124が形成されると、第1の導通経路あるいは第2の導通経路の導通面積が不要に削減されることを防ぐ効果も得られる。
【0146】
実施の形態に係る半導体装置1において、第1の導通経路は、第1の領域A1の第1のソースパッド111を流入口とし、第3の領域A3の第3のソースパッド131を流出口とする。このため第1の領域A1と第3の領域A3とは平面視で隣接していると、第1の導通経路は短縮されて導通抵抗を低減できるので都合がよい。同様に、第2の導通経路は、第2の領域A2の第2のソースパッド121を流入口とし、第3の領域A3の第3のソースパッド131を流出口とする。このため第2の領域A2と第3の領域A3とは平面視で隣接していると、第2の導通経路は短縮されて導通抵抗を低減できるので都合がよい。
【0147】
したがって、平面視において第1の領域A1および第2の領域A2は、第3の領域A3を挟んで配置され、第3の領域A3は、第1の領域A1および第2の領域A2に隣接していることが望ましい。
【0148】
実施の形態に係る半導体装置1では、第1の導通経路の導通抵抗を低くすることを重視する。このため
図2Aまたは
図2Bに示すように、平面視において、第1の領域A1と第3の領域A3との対向長(P1からP2までの点線の長さ)は、第2の領域A2と第3の領域A3との対向長(P3からP5を経てP4までの点線の長さ)よりも長くなるように配置されることが好ましい。半導体装置1の平面視での配置を上記のようにすると第1の導通経路で最も電流密度が高まるところを拡大できる(対向長を長くする)ので、導通抵抗を低めることができる。
【0149】
実施の形態に係る半導体装置1では、相対的に大きい電流を導通させる第1の導通経路において、流入口と流出口の平面視での面積が同程度であることが望ましい。流入口もしくは流出口のいずれか一方が相対的に小さいと、そこがボトルネックとなって導通抵抗が高まるからである。
【0150】
したがって実施の形態に係る半導体装置1では、平面視において、第1の領域A1に内包される位置に、第1の縦型MOSトランジスタ10の第1のソース電極が形成され、平面視において、第3の領域A3に内包される位置に、第3の縦型MOSトランジスタ30の第3のソース電極が形成され、平面視において、第1のソース電極の面積は、第3のソース電極の面積と略同等であることが望ましい。ここでいう第1のソース電極および第3のソース電極とは、第1のソース電極11および第3のソース電極31のうち、半導体層40と直接に接触する、部分13および部分33のことである。
【0151】
また実施の形態に係る半導体装置1では、平面視で第3の領域A3にはゲートパッドおよびゲート電極が存在しないため、第1のソース電極11の部分13と第3のソース電極31の部分33の平面視での面積が同じであっても、第3の領域A3の面積a3を第1の領域A1の面積a1と比べて縮小することができる。
【0152】
なお、第2の導通経路は仕様の電流が小さいため、これを加味して導通の面積を小さくすることができる。このとき流出口(第3のソース電極31の部分33)の平面視での面積が流入口(第2のソース電極21の部分23)の面積よりも大きいことは問題にならない。
【0153】
したがって実施の形態に係る半導体装置1では、平面視において、第1の領域A1の面積a1は第3の領域A3の面積a3よりも大きく、第3の領域A3の面積a3は第2の領域A2の面積a2よりも大きいことが望ましい。なお第1の領域A1の平面視での面積a1と第3の領域A3の平面視での面積a3との差は、およそ第1のゲートパッド119の1個分程度である。
【0154】
図10A、
図10Bに、実施の形態に係る半導体装置1の構造の変形例を示す平面模式図を示す。
図10Bは
図2Bと同様で、半導体層40の表面側に第1のソース電極11の部分13、第1のゲート電極19、第1のゲート配線118、第2のソース電極21の部分23、第2のゲート電極29、第2のゲート配線128、そして第3のソース電極31の部分33、第3のゲート配線138、が形成された直後の様子を示したものである。この時点では見えないはずのパッドは点線で示している。
【0155】
図10A、
図10Bに示す変形例では、
図2A、
図2Bと比べると、第3の領域A3が第1の領域A1と第2の領域A2とに挟まれて配置されておらず、第1の領域A1と第2の領域A2とが隣接する個所がある。また平面視において、第1のゲートパッド119が第1の領域A1において、第3の領域A3と近接する位置に設置されている。
【0156】
第1のゲートパッド119が第1の領域A1において、第3の領域A3と近接する位置に設置されるとは、第1の領域A1において、第1のゲートパッド119と、第1のゲートパッド119と最近接する第3の領域A3との間に、第1のソースパッド111が一部でも挟まれて配置されないことをいう。
【0157】
このような配置であると、第1のゲートパッド119と第3のゲート配線138との接続距離を短くすることができる。したがって第1のゲートパッド119に印加された電圧を、素早く第3のゲート配線138へ伝達することができるので、半導体装置1の応答速度を向上させることができる。この効果は、平面視における、第2のゲートパッド129と第3の領域A3との配置についても同様である。
【0158】
したがって、平面視において、第1のゲートパッド119は、第3の領域A3と近接する位置に設置され、平面視において、第2のゲートパッド129は、第3の領域A3と近接する位置に設置されてもよい。
【0159】
ところで、
図2Bおよび
図10Bのいずれに示す例においても、半導体装置1に第1のツエナーダイオード115および/または第2のツエナーダイオード125が形成される場合は、第1のダイオード113および/または第2のダイオード123も同時に形成することが望ましい。同時に形成することで、半導体装置1の製造を容易にすることができる。
【0160】
そもそも第1のツエナーダイオード115および/または第2のツエナーダイオード125と、第1のダイオード113および/または第2のダイオード123とは、共にダイオードであり、PNジャンクションの形成位置や個数、あるいは電気的なPNジャンクションの方向を適切に制御するだけで、それぞれの機能を果たすことができる。第1のツエナーダイオード115および/または第2のツエナーダイオード125と、第1のダイオード113および/または第2のダイオード123とは、
図2Bに示すように、半導体装置1の平面視で、面内の設置位置が異なるだけである。このため、応じて不純物の注入位置を面内で変えるだけで、同時に形成することが可能である。
【0161】
このとき、平面視で、第1のダイオード113と第1のツエナーダイオード115とに備わる、同じ導電型を示す領域同士を比べると、当該導電型の不純物の濃度は、それぞれに同じとなる。不純物の濃度が同じというのは、ある領域とある領域とを、深さ方向で対比したときの、当該不純物の濃度プロファイルが概ね一致するということである。
【0162】
したがって、平面視において、第1の領域A1に内包される位置に、第1の縦型MOSトランジスタ10の第1のソース電極11(の部分13)と第1のゲート電極19とが形成され、平面視において、第1のソース電極11(の部分13)と第1のゲート電極19との間には、第1のツエナーダイオード115が形成され、第1のダイオード113と第1のツエナーダイオード115とに含まれる、同じ導電型の領域における、同じ導電型の不純物は同じ濃度であってよい。
【0163】
同様に、半導体装置1に第1のゲート抵抗素子117および/または第2のゲート抵抗素子127が形成される場合は、第1の抵抗素子114および/または第2の抵抗素子124も同時に形成することが望ましい。同時に形成することで、半導体装置1の製造を容易にすることができる。
【0164】
したがって、平面視において第1の領域A1には、第1の縦型MOSトランジスタ10の第1のゲート電極19が形成され、平面視で、第1のゲート電極19と第1のゲート配線118との間には、第1のゲート抵抗素子117が形成され、第1の抵抗素子114と第1のゲート抵抗素子117とに含まれる、同じ導電型の領域における、当該同じ導電型の不純物は同じ濃度であってよい。
【0165】
[5.追加の考察]
実施の形態に係る半導体装置1を使用した
図6に示す例に戻る。ON状態におけるトランジスタでは、一般的にトランジスタの平面視での面積が大きいと総ゲート幅が増大するため、導通抵抗が低くなる。つまりトランジスタの平面視での面積と導通抵抗とは概ね逆比例の関係にある。
【0166】
半導体装置1において、第1の導通経路を成すトランジスタ10の平面視での面積a1は、第2の導通経路を成すトランジスタ20の平面視での面積a2よりも大きい。このため第1の導通経路の方が導通抵抗が低く、相対的に大きい電流を流すことに適する経路となっている。
【0167】
第1の導通経路の導通抵抗R1[Ω]は、第1の電源51からの給電によって流れる電流の最大値I1[A]を加味して定めればよい。同様に、第2の導通経路の導通抵抗R2[Ω]は、第2の電源52からの給電によって流れる電流の最大値I2[A]を加味して定めればよい。したがって実施の形態に係る半導体装置1では、第1の導通経路と第2の導通経路とにそれぞれ適した導通抵抗が実現するように、トランジスタ10とトランジスタ20のそれぞれの面積を決めることが望ましい。
【0168】
しかし上記のように求めた、各トランジスタの平面視での面積が過度に小さいと、ESD耐性が低下するおそれがある。これは、トランジスタにおいて平面視での面積が小さいと、ゲート電極に印加された過剰な電圧やサージ電流が、そのトランジスタのセル(ゲート導体)では十分な分散に至らないことに起因している。
【0169】
半導体装置1のESD保証値(静電耐性保証値)を以降、ESDt[V]と表すと、実施の形態に係る半導体装置1では、最も面積の小さいトランジスタ20で、ESDt以上の耐性を実現することが求められる。
図6で示したような給電回路で用いる場合、典型的に半導体装置1で求められるESDtは1000[V]~2000[V]程度である。
【0170】
所望のESDtを実現する目的で、トランジスタ20でいえば、第2のツエナーダイオード125または/および第2のゲート抵抗素子127を設置することを説明した。しかし第2のツエナーダイオード125を設置することは、
図6におけるトランジスタ20の部分に示すように、第2のゲートパッド129(第2のゲート電極29)と第2のソースパッド121(第2のソース電極21の部分23)とを接続する経路を設けることになるので、ゲート-ソース間のリーク電流を生じさせてしまう副作用がある。
【0171】
図11に、本発明者らが実験で確認した、トランジスタの平面視での面積a[mm
2]と、ゲートパッドに印加したときにそのトランジスタが破壊されないことが確認できた最大の電圧値ESDt[V]との関係を示す。横軸はaであり、縦軸はESDtである。なおトランジスタの平面視での面積aとは、実施の形態に係る半導体装置1の例でいえば、それぞれ第1の領域A1の平面視での面積a1や、第2の領域A2の平面視での面積a2のことである。すなわち導通に寄与しない領域も含めたものである。
【0172】
丸のマーカでプロットしたデータは、ツエナーダイオードも、ゲート抵抗素子も、共に設置されないトランジスタを用いておこなったものである。三角のマーカでプロットしたデータは、ツエナーダイオードだけが設置され、ゲート抵抗素子は設置されないトランジスタを用いておこなったものである。ひし形のマーカでプロットしたデータは、ツエナーダイオードも、ゲート抵抗素子も、共に設置されたトランジスタを用いておこなったものである。
【0173】
図11より、ゲート抵抗素子が設置されない場合、トランジスタの面積aを大きくするほどESDtが高まる傾向があることが分かる。またトランジスタの面積aを拡大せずとも、ツエナーダイオードを設置することでESDtが向上することも分かる。ツエナーダイオードに加えてゲート抵抗素子を設置すると、トランジスタの面積に依らず、ほぼ一定のESDtが得られる。
【0174】
実施の形態に係る半導体装置1のESD保証値を、例えば2000[V]としたい場合、最も平面視での面積が小さいトランジスタ20について2000[V]が保証できればよい。
図11によれば、トランジスタ20の平面視での面積a2が、約2.0[mm
2]を下回るのであれば、第2のツエナーダイオード125や第2のゲート抵抗素子127を設置することが望ましいといえる。一方、第2のツエナーダイオード125の設置によって、ゲート-ソース間にリーク電流が増加することを回避したい場合は、第2のツエナーダイオード125は設置しない方がよい。必要なESD保証値が2000[V]であるならば、トランジスタ20の平面視での面積a2が約2.0[mm
2]以上あればよいことになる。
【0175】
したがって、
図11の丸のマーカのデータによれば、半導体装置1の製品データシートに記載の静電耐性保証値をESDt[V]とし、平面視での第2の領域A2の面積をa2[mm
2]とすると、a2>(ESDt-93)/990の関係が成り立てばよい。
【0176】
さらにこのとき、平面視において第2の領域A2に内包される位置に、第2の縦型MOSトランジスタ20の第2のソース電極21の部分23と第2のゲート電極29とが形成され、第2のソース電極21の部分23と第2のゲート電極29との間を電気的に接続する経路は存在せず、第2のゲート電極29と第2のゲート配線128とは、抵抗体を介することなく接続されていてもよい。
【0177】
上記のような構造にすることで、トランジスタ20おいて、ゲート-ソース間にリーク電流が増加することを回避しつつ、半導体装置1に所望のESD保証値(ESDt[V])を得ることができる。
【0178】
このとき、半導体装置1において平面視での面積がさらに大きいトランジスタ10では、既に十分なESDtを実現できているはずである。したがって、平面視において第1の領域A1に内包される位置に、第1の縦型MOSトランジスタ10の第1のソース電極11の部分13と第1のゲート電極19とが形成され、第1のソース電極11の部分13と第1のゲート電極19との間を電気的に接続する経路は存在せず、第1のゲート電極19と第1のゲート配線118とは、抵抗体を介することなく接続されていてもよい。
【0179】
このような構造であると、トランジスタ10おいて、ゲート-ソース間のリーク電流が不要に増加することを回避することができる。
【0180】
なお、平面視での第2の領域A2の面積a2について、a2<(ESDt-93)/990の関係であっても、第2のツエナーダイオード125や第2のゲート抵抗素子127を設置することで所望のESD保証値を実現できることがある。
【0181】
したがって、平面視において第1の領域A1に内包される位置に、第1の縦型MOSトランジスタ10の第1のソース電極11の部分13と第1のゲート電極19とが形成され、第1のソース電極11の部分13と第1のゲート電極19との間を電気的に接続する経路は存在せず、第1のゲート電極19と第1のゲート配線118とは、抵抗体を介することなく接続されており、平面視において第2の領域A2に内包される位置に、第2の縦型MOSトランジスタ20の第2のソース電極21の部分23と第2のゲート電極29とが形成され、第2のソース電極21の部分23と第2のゲート電極29とは、第2のツエナーダイオード125を介して接続されており、第2のゲート電極29と第2のゲート配線128とは、間に第2のゲート抵抗素子127を介して直列に接続されていてもよい。
【0182】
上記のような構造にすることで、トランジスタ10おいて、不要にゲート-ソース間のリーク電流が増加することを回避しつつ、半導体装置1の所望のESD保証値(ESDt[V])を得ることができる。
【0183】
以上、開示の一態様に係る半導体装置について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本開示は実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形をこれら実施の形態に施したものや、異なる実施の形態および変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本願発明に係る縦型MOSトランジスタを備える半導体装置は、電流経路の導通状態を制御する装置として広く利用できる。
【符号の説明】
【0185】
1 半導体装置
4 制御IC
6 負荷
8 スイッチング素子
10 トランジスタ(第1の縦型MOSトランジスタ)
10B、20B、30B トランジスタ(シングル構成の縦型MOSトランジスタ)
11 第1のソース電極
12、13、13B、22、23、23B、32、33、33B 部分
14 第1のソース領域
15 第1のゲート導体
16 第1のゲート絶縁膜
17 第1のゲートトレンチ
18 第1のボディ領域
18a 第1の接続部
19 第1のゲート電極
19B、29B、39B ゲート電極
20 トランジスタ(第2の縦型MOSトランジスタ)
21 第2のソース電極
24 第2のソース領域
25 第2のゲート導体
26 第2のゲート絶縁膜
27 第2のゲートトレンチ
28 第2のボディ領域
28a 第2の接続部
29 第2のゲート電極
30 トランジスタ(第3の縦型MOSトランジスタ)
31 第3のソース電極
34 第3のソース領域
35 第3のゲート導体
36 第3のゲート絶縁膜
37 第3のゲートトレンチ
38 第3のボディ領域
38a 第3の接続部
40 半導体層
41 金属層(裏面ドレイン電極)
42 半導体基板
43 低濃度不純物層
44 層間絶縁層
45 パッシベーション層
90 境界線
111 第1のソースパッド
111B、121B、131B ソースパッド
113 第1のダイオード
114 第1の抵抗素子
115 第1のツエナーダイオード
116 第1のEQR
117 第1のゲート抵抗素子
118 第1のゲート配線
118B、128B、138B ゲート配線
119 第1のゲートパッド
119B、129B、139B ゲートパッド
121 第2のソースパッド
123 第2のダイオード
124 第2の抵抗素子
125 第2のツエナーダイオード
126 第2のEQR
127 第2のゲート抵抗素子
128 第2のゲート配線
129 第2のゲートパッド
131 第3のソースパッド
136 第3のEQR
138 第3のゲート配線
151B、152B、153B ドレインパッド
A1 第1の領域
A2 第2の領域
A3 第3の領域
【要約】
半導体装置(1)は、平面視において互いに重複しない第1の領域(A1)と第2の領域(A2)と第3の領域(A3)との3つの領域に分けられた半導体層(40)と、第1の領域(A1)に形成された第1の縦型MOSトランジスタ(10)と、第2の領域(A2)に形成された第2の縦型MOSトランジスタ(20)と、第3の領域(A3)に形成された第3の縦型MOSトランジスタ(30)と、を備え、第1の縦型MOSトランジスタ(10)の第1のゲート配線(118)と第3の縦型MOSトランジスタ(30)の第3のゲート配線(138)とは、この順を順方向とする第1のダイオード(113)を介して電気的に直列接続され、第2の縦型MOSトランジスタ(20)の第2のゲート配線(128)と第3のゲート配線(138)とは、この順を順方向とする第2のダイオード(123)を介して電気的に直列接続されている。