(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】フラーレンの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/154 20170101AFI20250415BHJP
【FI】
C01B32/154
(21)【出願番号】P 2020208956
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005979
【氏名又は名称】三菱商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】飯野 匡
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-170695(JP,A)
【文献】特開2005-060196(JP,A)
【文献】特開2003-160317(JP,A)
【文献】特開2003-192318(JP,A)
【文献】特開2003-221216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を含む原料ガスの不完全燃焼によりフラーレンを生成するフラーレンの製造装置であって、
反応炉と、
前記炭化水素を含む原料ガスを前記反応炉内に噴射する第1の噴射部を備えるバーナと、
前記反応炉の外部に配置され、不活性ガスを1000~2500℃に加熱する加熱部、及び加熱された前記不活性ガスを前記反応炉内に噴射する第2の噴射部
とを備える不活性ガス導入部と、を有
し、
前記反応炉内における前記第1の噴射部の先端面は、第1の噴射口を有し、
前記反応炉内における前記第2の噴射部の先端面は、第2の噴射口を有するフラーレンの製造装置。
【請求項2】
前記第1の噴射部と前記第2の噴射部との何れか一方を囲むように何れか他方が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項3】
前記第1の噴射部の少なく一部と前記第2の噴射部の少なく一部とが同心円状に交互に並んで配置されていることを特徴とする請求項1に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項4】
前記第1の噴射部は、前記反応炉の一端側から他端側に向けて前記原料ガスを噴射し、
前記第2の噴射部は、前記反応炉の一端側と他端側との間の周囲から前記不活性ガスを噴射することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項5】
前記反応炉内を吸引しながら、前記反応炉内を減圧状態とする減圧機構を備えることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項6】
前記第2の噴射部は、加熱された前記不活性ガスを、流量15~25NL/minで前記反応炉内に噴射する請求項1~5の何れか一項に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項7】
不活性ガスを1000~2500℃に加熱する加熱工程と、
炭化水素を含む原料ガス及び酸素含有ガスを反応炉内に噴射し、前記炭化水素を含む原料ガスの不完全燃焼によりフラーレンを反応炉内で生成する生成工程と、
前記生成工程と同時に、加熱された前記不活性ガスを前記反応炉内に噴射する噴射工程と、を有するフラーレンの製造方法。
【請求項8】
前記反応炉内を吸引しながら、前記反応炉内を減圧状態とすることを特徴とする請求
項7に記載のフラーレンの製造方法。
【請求項9】
前記反応炉内の圧力を1~30kPaとすることを特徴とする請求項8に記載のフラーレンの製造方法。
【請求項10】
前記噴射工程において、加熱された前記不活性ガスを、流量15~25NL/minで前記反応炉内に噴射する請求項7~9の何れか一項に記載のフラーレンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレンの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラーレンの製造方法として、反応炉内で炭化水素を含む原料ガス(以下、「原料ガス」ともいう)を不完全燃焼させることによって、フラーレンを生成する燃焼法が知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。この燃焼法では、原料ガスの不完全燃焼により生成される煤状物の中に含まれるフラーレンを大量且つ安価に製造することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-160316号公報
【文献】特開2003-171106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の燃焼法では、煤状物の中に含まれるフラーレンの収率が高くないため、このフラーレンの収率を高めて、フラーレンの製造コストを更に低減することが望まれている。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、フラーレンの収率を向上させることを可能としたフラーレンの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の手段を提供する。
(1)炭化水素を含む原料ガスの不完全燃焼によりフラーレンを生成するフラーレンの製造装置であって、反応炉と、前記炭化水素を含む原料ガスを前記反応炉内に噴射する第1の噴射部を備えるバーナと、不活性ガスを前記反応炉内に噴射する第2の噴射部と加熱部とを備える不活性ガス導入部と、を有するフラーレンの製造装置。
(2)前記第1の噴射部と前記第2の噴射部との何れか一方を囲むように何れか他方が配置されていることを特徴とする前項(1)に記載のフラーレンの製造装置。
(3)前記第1の噴射部の少なく一部と前記第2の噴射部の少なく一部とが同心円状に交互に並んで配置されていることを特徴とする前項(1)に記載のフラーレンの製造装置。
(4)前記第1の噴射部は、前記反応炉の一端側から他端側に向けて前記原料ガスを噴射し、前記第2の噴射部は、前記反応炉の一端側と他端側との間の周囲から前記不活性ガスを噴射することを特徴とすることを特徴とする前項(1)に記載のフラーレンの製造装置。
(5)前記反応炉内を吸引しながら、前記反応炉内を減圧状態とする減圧機構を備えることを特徴とする前項(1)~(4)の何れか一項に記載のフラーレンの製造装置。
(6)不活性ガスを加熱する加熱工程と、炭化水素を含む原料ガスの不完全燃焼によりフラーレンを反応炉内で生成する生成工程と、前記生成工程と同時に、加熱された前記不活性ガスを前記反応炉内に噴射する噴射工程と、を有するフラーレンの製造方法。
(7)前記加熱工程において、前記加熱された不活性ガスの温度は1000~2500℃であることを特徴とする前項(6)に記載のフラーレンの製造方法。
(8)前記反応炉内を吸引しながら、前記反応炉内を減圧状態とすることを特徴とする前項(6)又は(7)に記載のフラーレンの製造方法。
(9)前記反応炉内の圧力を1~30kPaとすることを特徴とする前項(8)に記載のフラーレンの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、フラーレンの収率を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフラーレンの製造装置の一例を示す構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るバーナ9A及び不活性ガス導入部10Aを備える反応炉の構成を示す断面図である。
【
図3】
図2に示すバーナ9A及び不活性ガス導入部10Aの噴射部の先端面の構成を例示した平面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るバーナ9B及び不活性ガス導入部10Bを備える反応炉の構成を示す断面図である。
【
図5】
図4に示すバーナ9B及び不活性ガス導入部10Bの噴射部の先端面の構成を示す平面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係るバーナ9C及び不活性ガス導入部10Cを備える反応炉の構成を示す断面図である。
【
図7】
図6に示すバーナ9C及び不活性ガス導入部10Cの噴射部の先端面の構成を例示した平面図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態に係るバーナ9D及び不活性ガス導入部10Dを備える反応炉の構成を示す断面図である。
【
図9】
図8に示す不活性ガス導入部10Dが備える第2の噴射部25d及び第2の噴射口22aの形状及び配置を例示する縦断面図である。
【
図10】
図8に示す不活性ガス導入部10Dが備える第2の噴射部25dの第2の噴射口22aの配置を例示する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用したフラーレン製造装置について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を模式的に示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0010】
(フラーレンの製造装置)
先ず、本発明の一実施形態として、例えば
図1に示すフラーレンの製造装置1について説明する。
なお、
図1は、フラーレンの製造装置1の一例を示す構成図である。
【0011】
本実施形態のフラーレンの製造装置1は、
図1に示すように、炭化水素を含む原料ガスの不完全燃焼によりフラーレンを含む煤状物を生成する反応炉2と、反応炉2内で生成された煤状物を回収する回収機構3と、回収機構3を通過したガスを冷却する冷却機構4と、冷却機構4で冷却されたガスを吸引しながら、反応炉2内を減圧状態とする減圧機構5とを備えている。
【0012】
また、このフラーレンの製造装置1は、反応炉2と回収機構3との間を接続する第1の配管6と、回収機構3と冷却機構4との間を接続する第2の配管7と、冷却機構4と減圧機構5との間を接続する第3の配管8とを有している。
【0013】
反応炉2は、円筒状の周壁部2aと、周壁部2aの上端(一端)側を閉塞する上壁部2bと、周壁部2aの下端(他端)側を閉塞する下壁部2cとを有して、鉛直方向に起立した状態で配置されている。
【0014】
なお、反応炉2の材質については、例えば、ジルコニア(ZrO2)やタングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、アルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)などの耐熱材料が挙げられる。また、その外側及び内側の少なく一部には、例えばアルミナ質の耐火煉瓦やアルミナ質の不定形耐火材等の断熱材がライニングされていてもよい。
【0015】
なお、反応炉2の配置については、上述した鉛直方向に配置することが、煤状物の滞留の影響が少ないことから好ましい。また、反応炉2の配置方向が鉛直方向である場合、原料ガスは上方から供給することが好ましい。一方、反応炉2については、例えば、水平方向や斜め方向に傾けた状態で配置することも可能である。
【0016】
第1の配管6は、反応炉2の底壁部2cに設けられた排ガスを排出する排出口30d(以下、「排ガス排出口30d」ともいう)と接続されている。一方、反応炉2の上壁部2b側には、バーナ9と不活性ガス導入部10が設けられている。反応炉2では、バーナ9から噴射された原料ガスと酸素含有ガスとを不完全燃焼させることによりフラーレンを含む煤状物を生成する。
【0017】
また、不活性ガス導入部10から反応炉2内に噴射された加熱された不活性ガスにより反応炉2内を加熱する。原料ガスの不完全燃焼により生成した煤状物や一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気等を含む排ガスと不活性ガスが第1の配管6を通過して回収機構3に到達する。
【0018】
回収機構3は、フィルタ11が収容された捕集器12と、捕集器12の上端(一端)側に電磁弁13を介して接続されたタンク14と、捕集器12の下端(他端)側に設けられた排出弁15とを有している。
【0019】
第1の配管6は、捕集器12の上部側の側面に接続されている。第2の配管7は、捕集器12の上部に接続されている。フィルタ11には、例えば、焼結金属フィルタが用いられている。電磁弁13は、第2の配管7から分岐して接続されている。タンク14には、例えば、窒素ガス(N2)やアルゴンガス(Ar)などの高圧の不活性ガスが貯留されている。
【0020】
回収機構3では、第1の配管6から供給される排ガスの中に含まれる煤状物をフィルタ11により捕集した後、電磁弁13を定期的に開放することで、タンク14から捕集器12に向けて不活性ガスを噴射する。これにより、フィルタ11に付着された煤状物が脱落する。その後、排出弁15を開放することで、捕集器12内に溜まった煤状物を回収することが可能となっている。
【0021】
冷却機構4は、通常の熱交換器と同一又は近似した構造を有し、その一端(上端)側が第2の配管7と接続され、その他端(下端)側が第3の配管8と接続されている。
【0022】
冷却機構4では、回収機構3を通過したガスが冷却される。また、冷却機構4では、ガス中の未反応の炭化水素や、水蒸気を液化させ、下部側に設けられたドレーン16から排出することが可能となっている。
【0023】
なお、このような冷却機構4とは別に、第1の配管6を通過する排ガスや不活性ガスが高温であることから、この第1の配管6が冷却される構成としてもよい。
【0024】
減圧機構5は、真空ポンプからなり、第3の配管8を通して冷却機構4で冷却されたガスを吸引する。これにより、反応炉2との間で負圧を発生させながら、反応炉2内で生成された煤状物を第1の配管6を通して回収機構3側へと排出することが可能である。
【0025】
原料ガスに含まれる炭化水素としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の炭素数6~15の芳香族炭化水素、クレオソート油、カルボン酸油等の石炭系炭化水素、アセチレン系不飽和炭化水素、エチレン系炭化水素、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族飽和炭化水素等が挙げられる。また、これらの炭化水素を2種以上混合して用いてもよい。原料ガスには、上述した炭化水素の中でも、芳香族炭化水素を含むことが好ましい。なお、原料ガスは、必要に応じて、窒素やアルゴンなどの不活性ガスで希釈されていてもよい。
【0026】
また、酸素含有ガスは、酸素を含むガスであり、例えば、酸素や空気などが挙げられる。酸素含有ガスは、原料ガスとは別に反応炉2に供給してもよく、若しくは、予め原料ガスと混合してから反応炉2に供給してもよい。
【0027】
一方、不活性ガスとしては、原料ガスと、酸素ガス、及び原料ガスの不完全燃焼による生成した排ガスと反応しないガスであれば、特に制限しない。例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。これらの不活性ガスを2種以上混合して用いてもよい。
【0028】
生成されるフラーレンについては、例えば、C60フラーレン(C60)、C70フラーレン(C70)、C76、C78、C84、C90、C96等の高次フラーレンが挙げられる。
【0029】
(フラーレンの製造方法)
次に、上記フラーレンの製造装置1を用いたフラーレンの製造方法について説明する。
本実施形態のフラーレンの製造方法は、不活性ガスを加熱する加熱工程と、炭化水素を含む原料ガスの不完全燃焼によりフラーレンを反応炉2内で生成する生成工程と、生成工程と同時に、加熱された不活性ガスを前記反応炉内に噴射する噴射工程とを含み、加熱された不活性ガスにより、反応炉2内を加熱する。
【0030】
本実施形態のフラーレンの製造方法では、原料ガスを不完全燃焼させて生成した燃焼炎の温度は、500℃~1500℃である。一方、加熱工程で加熱された不活性ガスの温度は好ましく1000℃~2500℃であり、より好ましくは1100℃~2200℃である。これにより、反応炉2内の温度(雰囲気)を高温に保つことが可能である。
【0031】
そして、この高温の反応炉2内で、上述した原料ガスを不完全燃焼させることにより煤状物を生成する。これにより、生成された煤状物の中に含まれるフラーレンの収率を向上させることが可能である。
【0032】
また、反応炉2内の圧力は、1~30kPaとすることが好ましく、より好ましくは1~10kPaである。反応炉2内の圧力は、この範囲内であれば、減圧機構5の過負荷及び火炎が逆火を起こすことを防ぐことができる。
【0033】
(第1の実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態に係るフラーレンの製造装置1について説明する。
本発明の第1の実施形態に係るフラーレンの製造装置1は、
図2に示すバーナ9(以下、「バーナ9A」として区別する)及び不活性ガス導入部10(以下、「不活性ガス導入部10A」として区別する)を備えている。
【0034】
なお、
図2は、バーナ9A及び不活性ガス導入部10Aを備える反応炉2の構成を示す断面図である。反応炉2は鉛直方向に配置される。
図3(A),(B)は、後述する第1の噴射部23cと第2の噴射部25aとの先端面の構成を例示した平面図である。
【0035】
バーナ9Aは、反応炉2の上壁部2bを貫通した状態で取り付けられた有天円筒状のバーナホルダ23と、バーナホルダ23の内側には、上側から順に設けられている予混合室23aと、蓄圧室23bと、第1の噴射部23cとを有している。また、バーナホルダ23の上部には、原料ガス導入する配管24aと、酸素含有ガスを導入する配管24bとが接続されている。
【0036】
予混合室23aは、配管24aから導入された原料ガスと、配管24bから導入された酸素含有ガスと、を所定の割合で混合する。蓄圧室23bは、予混合室23aで混合された原料ガスと酸素含有ガスを所定の圧力で蓄圧する。第1の噴射部23cは、その先端面において、複数の第1の噴射口21aを有し、蓄圧室23bで蓄圧された原料ガスと酸素含有ガスを第1の噴射口21aから下方(排ガス排出口30dに向かう方向)に向けて噴射する。第1の噴射部23cは、多孔質のセラミック焼結体や金属粉末の焼結体で構成されていてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、バーナホルダ23の内側に、予混合室23aと、蓄圧室23bと、第1の噴射部23cとが設けられた構成となっているが、予混合室23aを省略した構成としてもよい。さらに、必要に応じて、予混合室23a及び蓄圧室23bをバーナホルダ23の外部に設けた構成としてもよい。
【0038】
不活性ガス導入部10Aは、第2の噴射部25aと、反応炉2の外部に配置される加熱部26と、第2の噴射部25aと加熱部26との間を接続する接続配管27とを有している。
【0039】
第2の噴射部25aは、例えば、一定の厚みを有する筒であり、先端面において、不活性ガスを噴射する第2の噴射口22aが設けられている。また、第2の噴射部25aの内部には、第2の噴射口22aと接続配管27とを接続する通路が設けられている。第2の噴射部25aは、第1の噴射部23cの周囲を囲むように配置されている。
【0040】
第2の噴射口22aの形状及び数については、特に限定していないが、一例として、
図3(A)に示すように、円形状である。
図3(A)において、第2の噴射部25aの先端面がリンク状であり、複数の第2の噴射口22aが第2の噴射部25aの先端面に均等に配置されている。
【0041】
また、
図3(B)に示すように、リング状の第2の噴射部25aの先端面にリンク状の第2の噴射口22aが配置されていてもよい。
【0042】
なお、第1の噴射部23cの先端面と、第2の噴射部25aの先端面は、鉛直方向において、同様な高さ位置を有してもよく、異なる高さ位置を有してもよいが、同様な高さ位置を有するのが好ましい。
【0043】
加熱部26には、不活性ガスを導入する配管28が接続されている。加熱部26は、配管28から導入された不活性ガスを加熱する。加熱部26は、設定加熱温度まで昇温できる加熱設備であれば、特に限定しない。例えば、黒鉛や、タングステンやモリブデン等からなる管と、その外側に配置されるアルミナ質の不定形耐火材からなる断熱材と、誘導加熱コイルと、を有するものが挙げられる。また、加熱部26内の温度を測定するために、耐高温熱電対が設けられている。なお、加熱された不活性ガスの温度は、加熱部26の設定加熱温度である。
【0044】
接続配管27は、反応炉2の周壁部2aにおける上部を貫通した状態で、加熱部26で加熱された不活性ガスを第2の噴射部25aに供給する。接続配管27は、反応炉2の上壁部2bを貫通して、加熱された不活性ガスを第2の噴射部25aに供給してもよい。第2の噴射部25aは、接続配管27を介して供給された加熱された不活性ガスを第2の噴射口22aから下方(排ガス排出口30dに向かう方向)に向けて噴射する。
【0045】
反応炉2内に断熱部材30が配置され、断熱部材30は、反応炉2の内側の周壁部2aに沿って配置された円筒状の周壁30aと、反応炉2の内側の底壁部2cに沿って配置された底壁30bと、周壁30aの上部を閉塞する天壁30cとを有している。
【0046】
バーナホルダ23及び第2の噴射部25aは、天壁30cを貫通した状態で、第1の噴射口21a及び第2の噴射口22aを断熱部材30の内側に臨ませている。また、底壁30bには、第1の配管6と連通される排ガス排出口30dが設けられている。なお、断熱部材30の材質には、例えば、アルミナ質の耐火煉瓦やアルミナ質の不定形耐火材などが挙げられる。
【0047】
また、反応炉2の第1の配管6が接続される位置の近傍には、原料ガスを着火するための着火機構31が設けられている。
【0048】
以上のような構成を有する本実施形態のバーナ9A及び不活性ガス導入部10Aは、上述した第1の噴射口21aから原料ガスと酸素含有ガスとを噴射しながら、この原料ガスを不完全燃焼させて反応炉2内でフラーレンを含む煤状物を生成すると同時に、上述した第2の噴射口22aから加熱された不活性ガスを反応炉2内へ噴射し、反応炉2内を加熱する。
【0049】
これにより、本実施形態のバーナ9A及び不活性ガス導入部10Aを備えるフラーレンの製造装置1では、反応炉2内を高温に保つことができ、生成された煤状物の中に含まれるフラーレンの収率を向上させることが可能である。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るフラーレンの製造装置1について説明する。
本発明の第2の実施形態に係るフラーレンの製造装置1は、
図4及び
図5に示すバーナ9(以下、「バーナ9B」として区別する)及び不活性ガス導入部10(以下、「不活性ガス導入部10B」として区別する)を備えている。
【0051】
なお、
図4は、バーナ9B及び不活性ガス導入部10Bを備える反応炉2の構成を示す断面図である。反応炉2は、鉛直方向に配置される。
図5は、バーナ9Bの第1の噴射部23cと不活性ガス導入部10Bの後述する第2の噴射部25bの先端面の構成を示す平面図である。また、以下の説明では、上記バーナ9A及び不活性ガス導入部10Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0052】
本実施形態において、
図4に示すように、不活性ガス導入部10Bが管状の第2の噴射部25bを有している。第2の噴射部25bは、バーナホルダ23の内側中央に設置され、予混合室23aと、蓄圧室23bと、第1の噴射部23cとを鉛直方向に貫通している。これにより、第2の噴射部25bは、第1の噴射部23cにより囲まれる。また、
図5に示すように、第2の噴射部25bの先端面に、第2の噴射口22aが設けられていて、第1の噴射部23cの第1の噴射口21aにより囲まれている。なお、第2の噴射部25bは、加熱部26に直接接続している。
【0053】
バーナ9Bは、予混合室23aと、蓄圧室23bと、第1の噴射部23cとが第2の噴射部25bにより鉛直方向に貫通されている以外は、上記バーナ9Aと同様な構造を有している。
【0054】
また、第1の噴射部23cの先端面と、第2の噴射部25bの先端面は、鉛直方向において、同様な高さ位置を有してもよく、異なる高さ位置を有してもよいが、同様な高さ位置を有するのが好ましい。
【0055】
以上のような構成を有する本実施形態のバーナ9B及び不活性ガス導入部10Bは、上述した第1の噴射口21aから原料ガスと酸素含有ガスとを噴射しながら、この原料ガスを不完全燃焼させて反応炉2内でフラーレンを含む煤状物を生成すると同時に、上述した第2の噴射口22aから加熱された不活性ガスを反応炉2内へ噴射し、反応炉2内を加熱する。
【0056】
これにより、本実施形態のバーナ9B及び不活性ガス導入部10Bを備えるフラーレンの製造装置1では、反応炉2内を高温に保つことができ、生成された煤状物の中に含まれるフラーレンの収率を向上させることが可能である。
【0057】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るフラーレンの製造装置1について説明する。
本発明の第3の実施形態に係るフラーレンの製造装置1は、
図6及び
図7に示すバーナ9(以下、「バーナ9C」として区別する)及び不活性ガス導入部10(以下、「不活性ガス導入部10C」として区別する)を備えている。
【0058】
なお、
図6は、バーナ9C及び不活性ガス導入部10Cを備える反応炉2の構成を示す断面図である。反応炉2は、鉛直方向に配置される。
図7(A),(B)は、バーナ9Cの第1の噴射部23cと不活性ガス導入部10Bの後述する第2の噴射部25cの先端面の構成を例示した平面図である。また、以下の説明では、上記バーナ9A及び不活性ガス導入部10Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0059】
本実施形態において、不活性ガス導入部10Cは、
図6に示すように、バーナホルダ23内に設けられる第2の噴射部25cを有している。第2の噴射部25cは、接続配管27から分岐した複数のノズル部34を有している。ノズル部34は、蓄圧室23bと、第1の噴射部23cとを鉛直方向に貫通した状態で配置されている。これにより、第2の噴射部25cが第1の噴射部23cにより囲まれている。また、接続配管27は、バーナホルダ23の上側中央部を貫通した状態で、第2の噴射部25cと加熱部26との間を接続している。
【0060】
具体的に、ノズル部34は、例えば、管状であってもよく、一定の厚みを有する筒状であってもよい。ノズル部34の先端面に、第2の噴射口22aが配置されている。また、ノズル部34が筒状である場合、ノズル部34内部には、接続配管27と第2の噴射口22aとを接続する通路が設けられている。第2の噴射部25cは、管状のノズル部34(以下、「ノズル部34a」という)と、筒状のノズル部34(以下、「ノズル部34b」という)との一方のみを備えていてもよく、両方を備えていてもよい。
【0061】
例えば、
図7(A)に示す不活性ガス導入部10Cの第2の噴射部25cは、ノズル部34aを複数備えている。第1の噴射部23cと第2の噴射部25cとの先端面において、各ノズル部34aは、円形状に開口した第2の噴射口22aを有している。これにより、第2の噴射部25c(第2の噴射口22a)が第1の噴射部23c(第1の噴射口21a)により囲まれている。
【0062】
一方、
図7(B)に示す不活性ガス導入部10Cの第2の噴射部25cは、中心部にノズル部34aが一つ配置され、ノズル部34aを中心にノズル部34bが複数配置されている。第1の噴射部23cと第2の噴射部25cとの先端面において、ノズル部34aは、円形状に開口した第2の噴射口22aを有し、ノズル部34bがリング状に開口した第2の噴射口22aを有している。
【0063】
そして、ノズル部34a(第2の噴射口22a)は、第1の噴射部23c(第1の噴射口21a)により囲まれ、ノズル部34bと第1の噴射部23cの一部とが同心円状に交互に並んで配置されている。
【0064】
バーナ9Cは、予混合室23aと、蓄圧室23bと、第1の噴射部23cとが接続配管27とノズル部34とにより鉛直方向に貫通されている以外は、上記バーナ9Aと同様な構造を有している。
【0065】
また、第1の噴射部23cの先端面と、第2の噴射部25c(ノズル部34a、ノズル部34b)の先端面は、鉛直方向において、同様な高さ位置を有してもよく、異なる高さ位置を有してもよいが、同様な高さ位置を有するのが好ましい。
【0066】
以上のような構成を有する本実施形態のバーナ9C及び不活性ガス導入部10Cでは、上述した第1の噴射口21aから原料ガスと酸素含有ガスとを噴射しながら、この原料ガスを不完全燃焼させて反応炉2内でフラーレンを含む煤状物を生成すると同時に、上述した第2の噴射口22aから加熱された不活性ガスを反応炉2内へ噴射し、反応炉2内を加熱する。
【0067】
これにより、本実施形態のバーナ9C及び不活性ガス導入部10Cを備えるフラーレンの製造装置1では、反応炉2内を高温に保つことができ、生成された煤状物の中に含まれるフラーレンの収率を向上させることが可能である。
【0068】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係るフラーレンの製造装置1について説明する。
本発明の第4の実施形態に係るフラーレンの製造装置1は、
図8及び
図9に示すバーナ9(以下、「バーナ9D」として区別する)及び不活性ガス導入部10(以下、「不活性ガス導入部10D」として区別する)を備えている。
【0069】
なお、
図8は、バーナ9D及び不活性ガス導入部10Dを備える反応炉2の構成を示す断面図である。反応炉2は、鉛直方向に配置される。
図9は、不活性ガス導入部10Dが備える第2の噴射部25d及び第2の噴射口22aの形状及び配置を例示する縦断面図である。
図10は、不活性ガス導入部10Dが備える第2の噴射部25dの第2の噴射口22aの配置を例示する横断面図である。また、以下の説明では、上記バーナ9A及び不活性ガス導入部10Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0070】
本実施形態のバーナ9Dは、上記バーナ9Aと同じ構成を有している。
【0071】
不活性ガス導入部10Dは、
図8に示しているような第2の噴射部25dを有している。第2の噴射部25dは、バーナホルダ23の周囲を囲む位置から下方に延在する円筒形状を有している。
【0072】
第2の噴射部25dの内周面には、複数の第2の噴射口22aが並んで設けられている。また、第2の噴射部25dの内部には、接続配管27と第2の噴射口22aとを接続する通路が設けられている。これにより、第2の噴射部25dは、第2の噴射口22aから反応炉2内に加熱された不活性ガスを噴射することができる。
【0073】
第2の噴射部25dの内周面における第2の噴射口22aは、第2の噴射部25dの軸線方向において、
図9(A),(B),(C)に示すような形状及び配置を有してもよい。例えば、
図9(A)に示す複数の第2の噴射口22aは、第2の噴射部25dの軸線方向において、それぞれ軸線方向にスリット状に開口されて、第2の噴射部25dの周方向に並んで配置されている。
【0074】
一方、
図9(B)に示す複数の第2の噴射口22aは、それぞれ円形状に開口されて、第2の噴射部25dの周方向及び軸線方向に並んで配置されている。
【0075】
一方、
図9(C)に示す複数の第2の噴射口22aは、それぞれ第2の噴射部25dの周方向にスリット状に開口されて、第2の噴射部25dの軸線方向に並んで配置されている。
【0076】
また、第2の噴射部25dは、その周方向において、
図9(A),(B)に示すような複数の第2の噴射口22aを有する場合に、複数の第2の噴射口22aは、
図10に示すように形成されていてもよい。例えば、
図10(A)に示す複数の第2の噴射口22aは、第2の噴射部25dの内周面の互いに同じ方向に斜めに開口している突起部33により形成されている。これにより、各第2の噴射口22aから噴射される不活性ガスの渦状の流れを形成することが可能である。
【0077】
一方、
図10(B)に示す複数の第2の噴射口22aは、第2の噴射部25dの周方向において、互いに反応炉2の中心方向に向かって開口している。これにより、各第2の噴射口22aから噴射される不活性ガスを反応炉2の中心に向かって噴射することが可能である。
【0078】
以上のような構成を有する本実施形態のバーナ9D及び不活性ガス導入部10Dでは、上述した第1の噴射口21aから原料ガスを噴射しながら、この原料ガスを不完全燃焼させて反応炉2内でフラーレンを含む煤状物を生成すると同時に、上述した第2の噴射口22aから加熱された不活性ガスを反応炉2内へ噴射し、反応炉2内を加熱する。
【0079】
これにより、本実施形態のバーナ9D及び不活性ガス導入部10Dを備えるフラーレンの製造装置1では、反応炉2内を高温に保つことができ、生成された煤状物の中に含まれるフラーレンの収率を向上させることが可能である。
【0080】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0082】
[フラーレンの収率の算出]
実施例1~7及び比較例1では、C60及びC70の収率の合計をフラーレンの収率として算出した。
また、「JIS Z 8981」に準拠して、回収した煤状物に含まれるC60及びC70の含有率を、以下のように測定した。
【0083】
具体的には、回収した煤状物0.05gに対して、15gの1,2,3,5-テトラメチルベンゼン(TMB)を添加した後、15分間超音波処理し、懸濁液を得た。得られた懸濁液を孔径0.5μmメンブランフイルターで濾過した後、高速液体クロマトグラフ(HPLC)で濾液(試料液)を分析してC60及びC70を定量し、煤状物に含まれるC60及びC70の含有率[質量%]を算出した。
【0084】
ここで、煤状物に含まれるC60及びC70の含有率を算出する際には、事前に複数の既知濃度のC60及びC70のTMB溶液により作成した検量線を用いた。
【0085】
HPLCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Infinity1260(Agilent製)
試料液の注入量:5μL
溶離液:トルエン(47体積%)/メタノール(53体積%)混合溶媒
溶離液の流速:1ml/分
カラム:YMC-Pack ODS-AM 100*4.6mmID S-3μm,12nm
測定温度:40℃
検出器:UV 325nm(JIS)
【0086】
次に、煤状物に含まれるフラーレンの含有率(C60及びC70の含有率の合計)から、式{(煤状物の回収量[g])/(原料ガスの消費量[g])}×(フラーレンの含有率[質量%])により、フラーレン収率[質量%]を算出した。
【0087】
(実施例1)
図2に示す反応炉2を有するフラーレンの製造装置1を用いて、フラーレンを製造した。第2の噴射部25aの先端部は、
図3(A)に示す構造を有している。
【0088】
ここで、反応炉2は、鉛直方向に配置されるアルミナ製の円筒で、高さは1000mm、内径は200mmである。反応炉2の壁2bを貫通するように、バーナ9Aが設けられている。第1の噴射部23cは、直径が100mmの円板状の多孔質のセラミックス焼結体で構成されており、このセラミックス焼結体に直径0.5mm~1.0mm程度の孔(第1の噴出口21a)が、1cm2当たりに60~80個形成されている。
【0089】
不活性ガス導入部10Aの第2の噴射部25aは、ジルコニア製で内径が160mm円筒である。第2の噴射部25aの先端面には、直径10mmの第2の噴出口22aが40個均等に配置されている。
【0090】
不活性ガス導入部10Aの加熱部26は、黒鉛管を有する誘導加熱装置である。不活性ガスが黒鉛管を通過することにより加熱される。また、加熱部26の設定加熱温度は1700℃であった。鉛直方向において、第2の噴射部25aの先端面は、第1の噴射部23cの先端面と同様な高さ位置を有する。
【0091】
原料ガスとして、トルエンを使用し、酸素含有ガスとして、純酸素ガス(純度99.9体積%)を使用した。ここで、トルエンを、一旦配管24aに設置された気化装置で加熱してガス状とした後に、バーナ9Aに供給した。酸素含有ガスは配管24bに経由して、バーナ9Aに供給した。トルエンガスの流量を20g/minとし、純酸素の流量を13NL/minとした。
【0092】
不活性ガスとして、窒素ガス(純度99.9体積%)を使用した。窒素ガスの流量を15NL/minとした。
【0093】
また、フラーレンを生成させる際に、反応炉2の内部の圧力を5.33kPaとした。
【0094】
上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、生成した煤状物を回収機構3から回収した。[フラーレンの収率の算出]に記載した方法で、フラーレンの含有率を測定して、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は2.5%であった。
【0095】
(実施例2)
加熱部26の設定加熱温度を1000℃とした以外は、実施例1と同様にフラーレンを生成した。
【0096】
上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、実施例1と同様に生成した煤状物を回収機構3から回収して、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は1.8%であった。
【0097】
(実施例3)
窒素ガスの流量を25NL/minとした以外は、実施例1と同様にフラーレンを生成した。
【0098】
上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、実施例1と同様に生成した煤状物を回収機構3から回収して、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は2.8%であった。
【0099】
(実施例4)
図4に示す反応炉2を有するフラーレンの製造装置1を用いて、フラーレンを製造した。
【0100】
不活性ガス導入部10Bの第2の噴射部25bは、ジルコニア製の管である。第2の噴射部25bの先端部には、直径20mmの円形状な第2の噴出口22aが設けられている。鉛直方向において、第2の噴射部25bの先端面は、第1の噴射部23cの先端面と同様な高さ位置を有する。
【0101】
加熱部26の設定加熱温度を1200℃とし、加熱された窒素ガスが第2の噴射部25bの第2の噴出口22aから反応炉2内に噴射した以外は、実施例1と同様にフラーレンを生成した。
【0102】
上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、実施例1と同様に生成した煤状物を回収機構3から回収して、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は1.5%であった。
【0103】
(実施例5)
加熱部26の設定加熱温度を1500℃とした以外は、実施例4と同様にフラーレンを生成した。
【0104】
上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、実施例1と同様に生成した煤状物を回収機構3から回収して、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は1.8%であった。
【0105】
(実施例6)
図6に示す反応炉2を有するフラーレンの製造装置1を用いて、フラーレンを製造した。
【0106】
第2の噴射部25cの先端部は、
図7(A)のような構造を有している。不活性ガス導入部10Cの第2の噴射部25cのノズル34aは、ジルコニア製である。ノズル34aの先端部には、直径8mmの円形状の第2の噴出口22aが配置されている。また、第2の噴射部25cのノズル34aが16個であり、互いに均等な距離で配置されている。
鉛直方向において、第2の噴射部25cの先端面は、第1の噴射部23cの先端面と同様な高さ位置を有する。
【0107】
加熱部26の設定加熱温度を1600℃とし、加熱された窒素ガスが第2の噴射部25cの第2の噴出口22aから反応炉2内に噴射した以外は実施例1と同様にフラーレンを生成した。
【0108】
上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、実施例1と同様に生成した煤状物を回収機構3から回収して、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は2.0%であった。
【0109】
(実施例7)
図8に示す反応炉2を有するフラーレンの製造装置1を用いて、フラーレンを製造した。
【0110】
不活性ガス導入部10Dは、
図9(A)に示す第2の噴出口22aを有している。また、第2の噴出口22aは、
図10(B)のように開口している。不活性ガス導入部10Dの第2の噴射部25dは、ジルコニア製の円筒であり、円筒の内径は160mm、高さは400mmである。第2の噴射部25dの内周面には、幅が8mm、高さが45mmのスリット状の第2の噴出口22aが16個であり、互いに均等な距離で配置されている。鉛直方向において、スリット状の第2の噴出口22aの上側は、バーナ9Dの先端面と同じ高さである。
【0111】
加熱部26の設定加熱温度を1600℃とし、加熱された窒素ガスが第2の噴射部25dの第2の噴出口22aから反応炉2内に噴射した。前記以外は実施例1と同様にフラーレンを生成した。
【0112】
上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、実施例1と同様に生成した煤状物を回収機構3から回収して、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は2.1%であった。
【0113】
(比較例1)
不活性ガス導入部10Aを有しないフラーレンの製造装置1を用いてフラーレンを製造した以外は実施例1と同様にフラーレンを生成した。
【0114】
上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、実施例1と同様に生成した煤状物を回収機構3から回収して、フラーレンの収率を算出した。その結果、フラーレンの収率は0.6%であった。
【0115】
以上のことから、実施例1~7は、比較例1と比べて、フラーレンの収率が向上していることがわかる。すなわち、加熱された不活性ガスにより反応炉2内を高温に保つことで、フラーレンの収率を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0116】
1…フラーレンの製造装置 2…反応炉 3…回収機構 4…冷却機構 5…減圧機構(真空ポンプ) 6…第1の配管 7…第2の配管 8…第3の配管 9,9A~9D…バーナ 10,10A~10D…不活性ガス導入部 11…フィルタ 12…捕集器 13…電磁弁 14…タンク 15…排出弁 16…ドレーン 21a…第1の噴出口 22a…第2の噴出口 23…バーナホルダ 23a…予混合室 23b…蓄圧室 23c…第1の噴射部 24a…配管 24b…配管 25a~25d…第2の噴射部 26…加熱部 27…接続配管 28…配管 30…断熱部材 31…着火機構 34,34a,34b…ノズル部