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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】多重反射器具および多重反射セル
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/03 20060101AFI20250415BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20250415BHJP
   G02B 17/06 20060101ALI20250415BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALN20250415BHJP
【FI】
G01N21/03 B
G02B5/00 Z
G02B17/06
G01N21/3504
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021022509
(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公開番号】P2022124718
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000232689
【氏名又は名称】日本分光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004484
【氏名又は名称】弁理士法人岩橋国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】勝俣 友裕
(72)【発明者】
【氏名】中川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】小勝負 純
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-155848(JP,A)
【文献】特開2005-147962(JP,A)
【文献】特開2001-188037(JP,A)
【文献】特開2013-029324(JP,A)
【文献】特開2011-215287(JP,A)
【文献】特開平10-190979(JP,A)
【文献】特開昭52-117175(JP,A)
【文献】特表2002-543380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0212216(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105445195(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-G01N21/61
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の入射角(φ)のレーザー光をジグザクに多重反射させる一対の平行平面鏡と、
前記平行平面鏡間の一端まで進行した多重反射光を折り返すための直角な2つの反射面を有する一端側の直角二面鏡と、
前記一端側の直角二面鏡から前記平行平面鏡間の他端まで進行した多重反射光を再び折り返すための直角な2つの反射面を有する他端側の直角二面鏡と、
を備え、前記平行平面鏡間に存在する測定対象ガスを測定するための多重反射器具であって
前記平行平面鏡を構成する平行な2つの鏡面がx-y-z軸座標系のz-x面に平行に配置されている場合、前記一端とはx軸方向における一端であり、前記他端とはx軸方向における他端であり、前記直角二面鏡を構成する前記2つの反射面はx-y面に垂直であり、前記入射角(φ)のレーザー光は、前記x-y面と所定の角(φz)で交差することを特徴とするガス測定用の多重反射器具。
【請求項2】
請求項1記載のガス測定用の多重反射器具において、
前記直角二面鏡は、互いに直角な第1および第2反射面を有し、
前記平行平面鏡間の多重反射光の光路を前記x-y面に投影した場合に、
前記第1反射面に入射する前記レーザー光の光路、および、前記第1反射面を反射した後前記第2反射面を反射して返されてくる前記レーザー光の光路の間隔(dx)は、前記平行平面鏡間の前記多重反射光の半ピッチの長さであることを特徴とするガス測定用の多重反射器具。
【請求項3】
請求項1または2記載のガス測定用の多重反射器具において、
前記鏡面へ前記レーザー光を導く入射用の光学素子と、
前記入射角(φ)の角度変更のために、前記光学素子の位置及び向きを変化させる入射用の駆動装置と、を備えることを特徴とするガス測定用の多重反射器具。
【請求項4】
請求項1または2記載のガス測定用の多重反射器具において、
前記鏡面へ前記レーザー光を導く入射用の光学素子と、
前記入射角(φ)の角度変更のために、前記入射用の光学素子に対して前記平行平面鏡および前記直角二面鏡の位置及び向きを一体として変化させる平行平面鏡用の駆動装置と、を備えることを特徴とするガス測定用の多重反射器具。
【請求項5】
請求項3または4記載のガス測定用の多重反射器具において、前記駆動装置は、前記入射角(φ)を前記x-y面へ投影した角(φx)が0~25°の範囲で変化するように、当該入射角(φ)を変化させることを特徴とするガス測定用の多重反射器具。
【請求項6】
請求項3から5のいずれかに記載のガス測定用の多重反射器具において、
前記駆動装置は、前記一端側および前記他端側の直角二面鏡間の多重反射光の往復回数がN回(Nは1以上の整数)増減するように、レーザー光の入射方向と前記x-y面との成す角(φz)を変化させることを特徴とするガス測定用の多重反射器具。
【請求項7】
請求項3から6のいずれかに記載のガス測定用の多重反射器具において、
前記駆動装置は、前記一端側の直角二面鏡から前記他端側の直角二面鏡までの前記平行平面鏡間におけるレーザー光の往復回数がM回(Mは1以上の整数)増減するように、前記入射角(φ)を前記x-y面へ投影した角(φx)を変化させることを特徴とするガス測定用の多重反射器具。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のガス測定用の多重反射器具と、
測定対象ガスを出し入れ可能に構成されたセル本体と、を備え、
前記セル本体が前記多重反射器具を内蔵している構成、
前記セル本体が前記多重反射器具の前記平行平面鏡の間に配置されている構成、および、
前記セル本体の一部が前記多重反射器具によって形成されている構成のうちのいずれかの構成を有し、前記平行平面鏡間に測定対象ガスが存在するように構成されていることを特徴とするガス測定用の多重反射セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のミラー面間でレーザー光を多重反射させて、そのミラー面間にあるガス等の測定対象物質を光学分析するために用いられる多重反射器具に関し、特に、これがセル内に内蔵された多重反射セルに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス分析の一例として、高純度ガスに含まれる数ppm以下の不純物ガスの濃度をその吸光度に基づいて測定することが挙げられる。このようなガス分析では、同じ容積のセルであっても、より長い光路を確保できる多重反射型(マルチパス式)のセルが適しており、代表的なものとして、セル内に一対の凹状球面鏡を配置したヘリオット型がある。
【0003】
一方、最近の赤外吸光法によるガス分析では、従来の高輝度セラミック光源やハロゲンランプ等と比べて非常に高出力で、指向性(小さな発散角)にも優れている量子カスケードレーザーを光源に採用する場合が見られる(例えば、特許文献1の段落0044,特許文献2の段落0002,0021など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2001-509595号公報
【文献】WO2015/033582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1(段落0016、図1))のガスセルは、従来のヘリオット型であり、特許文献2(段落0022、図3)においても従来のヘリオット型が用いられ、ガスセルの構造が量子カスケードレーザーの長所を十分に生かしているとは言えなかった。
【0006】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高出力で指向性のよいレーザー光に適した多重反射器具および多重反射型セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明にかかるガス測定用の多重反射器具は、所定の入射角(φ)のレーザー光をジグザクに多重反射させる一対の平行平面鏡と、
平行平面鏡間の一端まで進行した多重反射光を折り返すための直角な2つの反射面を有する一端側の直角二面鏡と、
一端側の直角二面鏡から平行平面鏡間の他端まで進行した多重反射光を再び折り返すための直角な2つの反射面を有する他端側の直角二面鏡と、
を備え、前記平行平面鏡間に存在する測定対象ガスを測定するための多重反射器具であることを特徴とする。
ここで、平行平面鏡を構成する平行な2つの鏡面がx-y-z軸座標系のz-x面に平行に配置されている場合、前記一端とはx軸方向における一端であり、前記他端とはx軸方向における他端であり、直角二面鏡を構成する2つの反射面は、x-y面に垂直であり、また、入射角(φ)のレーザー光は、x-y面と所定の角(φz)で交差する。
【0008】
本書にて平面鏡など「鏡」が付く構成は、少なくとも一部に平らな鏡面が形成された光学部材を指し、例えば表面に反射コーティングを有するプリズム等が含まれる。
【0009】
上記の多重反射器具の構成をz軸方向から見た図(例えば、図1(A))を用いて説明すると、レーザー光は、平行平面鏡間を所定の入射角φxで多重反射しながらその一端に向けて進行する。「φx」は、レーザー光の入射角φをx-y面へ投影した角を示す。鏡面には反射スポットが一定のピッチPxで形成される。平行平面鏡間の一端まで進行した多重反射光は、一端側の直角二面鏡の第1反射面を反射し、続けて、その反射光は第1反射面に直角な第2反射面を反射する。そうすると、z軸方向から見た図での第1反射面への入射光と第2反射面からの反射光は平行になる。一端側の直角二面鏡で折り返された多重反射光は、再び平行平面鏡間を多重反射して他端に向けて進行する。折り返しの前後で、平行平面鏡の鏡面へのレーザー光の入射角φxは変わらないので、他端に向けて進行する多重反射光によって鏡面に形成される反射スポットのピッチPxも変わらない。しかし、第1反射面への入射光と第2反射面からの反射光とは、z軸方向から見た場合に間隔dxだけ平行にシフトした関係(x軸の正方向にシフトする場合とx軸の負方向にシフトする場合とがある。図1(A)では正方向にシフトしている。)になり、一端側の直角二面鏡で折り返しの前後で、鏡面上の反射スポットの位置がシフトした分だけずれる。なお、多重反射光が他端側の直角二面鏡で折り返される際も、一端側と同様になる。
【0010】
また、上記の多重反射器具において入射角φのレーザー光は、x-y面に平行ではなく、x-y面と角φz(例えば図2の立体図)で交差している。そのため、多重反射器具をy軸方向から見た図(例えば図1(B))では、平行平面鏡の鏡面上の反射スポットの配列は、x軸に平行にならず、x軸と角θ(上り角または下り角)を成す傾斜方向になる。一端側の直角二面鏡によって折り返された後の反射スポットの配列も、x軸と角θを成す傾斜方向になる。
【0011】
レーザー光のビームの干渉に関しては、鏡面上の反射スポット同士が重なるとビームの干渉(ビームが強め合ったり、打ち消し合ったりすること)が生じるので、多重反射器具の鏡面間の測定対象物を測定する場合は、このようなビームの干渉を出来る限り避けることが好ましい。
【0012】
以上のことから、一対の平行平面鏡およびその両端の直角二面鏡を備えた本発明の多重反射器具を用いれば、所定の入射角φで入射するレーザー光によって鏡面上に形成される多数の反射スポットを、互いに重なり合わないようにして、かつ、密な状態にすることができる。そのため、鏡面間の限られた容積に長い光路を効率よく形成することができ、しかも、ビームの干渉による測定光への影響を小さく抑えることができる。
【0013】
また、本発明の多重反射器具において、直角二面鏡は、互いに直角な第1および第2反射面を有し、平行平面鏡間の多重反射光の光路をx-y面に投影した場合に、第1反射面に入射するレーザー光の光路、および、第1反射面を反射した後第2反射面を反射して返されてくるレーザー光の光路の間隔(dx)は、平行平面鏡間の多重反射光の半ピッチの長さであることが好ましい。
【0014】
ここにいう「1ピッチ」とは、レーザー光が平行平面鏡間を1往復した際に、その多重反射光の進行方向へのレーザー光の移動距離を指す。言い換えると、平行平面鏡間での多重反射に伴って一方の鏡面上に形成される反射スポットの間隔に等しい。本発明では、上述のレーザー光の光路の間隔(dx)を、多重反射するレーザー光の半ピッチの長さにすることで、もっとも効果的に、鏡面上の反射スポットを密な状態にして、かつ、反射スポットを互いに重なり合わないようにすることができる。
【0015】
また、本発明の多重反射器具は、鏡面へレーザー光を導く入射用の光学素子と、入射角(φ)の角度変更のために、光学素子の位置及び向きを変化させる入射用の駆動装置と、を備えることが好ましい。あるいは、本発明の多重反射器具は、鏡面へレーザー光を導く入射用の光学素子と、入射角(φ)の角度変更のために、入射用の光学素子に対して平行平面鏡および直角二面鏡の位置及び向きを一体として変化させる平行平面鏡用の駆動装置と、を備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、平行平面鏡へのレーザー光の入射角φを変化させると、多重反射光のピッチが増減する。従って、平面鏡面間を多重反射するレーザー光の光路長の調整が可能になる。
【0017】
駆動装置は、入射角(φ)をx-y面へ投影した角(φx)が0~25°の範囲で変化するように、当該入射角(φ)を変化させることが好ましい。
【0018】
本書では、入射角φをx-y面へ投影した角φxを「方位角」とも呼ぶ。例えば、平行平面鏡および直角二面鏡が一体的に構成され、平行平面鏡に垂直入射(φx=0°)するレーザー光が直角二面鏡の第1反射面に対して45°入射する場合を基準にする。レーザー光の入射角(φx)を0°から「0°+x」(x>0°)まで大きくすると、第1反射面への入射角(または、第2反射面からの反射角)は「45°+x」になり、レーザー光の進行方向に対する第1反射面(または、第2反射面)の開口が小さくなってしまう。反射面の開口が小さくなると、レーザー光の一部が反射されなくなって直角二面鏡の反射性能が不十分になる場合がある。
【0019】
そこで、本発明の構成では、垂直入射(φx=0°)時の第1反射面(または、第2反射面)の開口の大きさを100%として、その開口の大きさが50%以上確保されるように、入射角φxの上限が25°程度に設定される。この結果、駆動装置によって入射角φを変化させても、直角二面鏡の反射性能は十分に維持される。
【0020】
駆動装置は、一端側および他端側の直角二面鏡間の多重反射光の往復回数がN回(Nは1以上の整数)増減するように、レーザー光の入射方向とx-y面との成す角(φz)を変化させることが好ましい。
【0021】
本書では、レーザー光の入射方向がx-y面と成す角φzを「仰角」とも呼ぶ。本発明の構成によれば、直角二面鏡間の多重反射光の往復回数が増減するように、この仰角φzが変更されるので、平行平面鏡間の光路長をその1往復分の光路ずつ細かく調整することができる。
【0022】
また、駆動装置は、一端側の直角二面鏡から他端側の直角二面鏡までの平行平面鏡間におけるレーザー光の往復回数がM回(Mは1以上の整数)増減するように、入射角(φ)をx-y面へ投影した角(φx)を変化させることが好ましい。
【0023】
本発明の構成によれば、平行平面鏡間のレーザー光の往復回数が増減するように、入射角φをx-y面へ投影した角φx(方位角)が変更されるので、平行平面鏡間の光路長をその1往復分の光路ずつ細かく調整することができる。
【0024】
本発明にかかるガス測定用の多重反射セルは、上述の多重反射器具と、測定対象ガスを出し入れ可能に構成されたセル本体と、を備え、
セル本体が多重反射器具を内蔵している構成、
セル本体が多重反射器具の平行平面鏡の間に配置されている構成、および、
セル本体の一部が多重反射器具によって形成されている構成のうちのいずれかの構成を有し、平行平面鏡間に測定対象ガスが存在するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上の構成を備えれば、高出力で指向性のよいレーザー光に適した多重反射器具および多重反射型セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(A)は、一実施形態の多重反射器具の鏡面間に生じる多重反射光の光路をz軸方向から見た図であり、(B)は、前記多重反射器具をy軸方向から見た図である。
図2】前記鏡面へのレーザー光の入射角φを説明するための立体視図である。
図3】前記多重反射器具に生じる多重反射光の進み方を説明するための図である。
図4】前記多重反射器具の直角二面鏡の加工精度が要求される範囲を説明する図。
図5】前記多重反射器具を内蔵するガスセルの入射角を調整する機構の図である。
図6】前記入射角を調整する別の機構の図である。
図7】前記入射角の大きさに応じて、前記直角二面鏡の開口の大きさが変化することを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に図面を参照して本発明に係る多重反射器具およびこれを備えた多重反射セルの実施の形態について説明する。
【0028】
図1(A),(B)に本実施形態の多重反射器具1を示す。多重反射器具1は、一対の平行平面鏡2,3と、平行平面鏡2の一端に設けられた直角二面鏡4と、平行平面鏡3の他端に設けられた直角二面鏡5と、を備えている。平行平面鏡2,3の鏡面21,31は、例えば正方形であり、平行に向かい合って配置されている。説明上、鏡面21,31は、x-y-z軸座標系のz-x面に対して平行とする。図1(A)は、多重反射器具1をz軸方向から見た図であり、図1(B)は、多重反射器具1をy軸方向から見た図である。ここでは、一対の平行平面鏡2,3で挟まれた空間について、そのx軸の正方向の端を「一端」と呼び、x軸の負方向の端を「他端」と呼ぶ。
【0029】
直角二面鏡4は、鏡面21の端辺に沿って配置された第1反射面41と、この第1反射面41に直角な同形状の第2反射面42とを有する。直角を成す2つの反射面41,42の交線はz軸に平行である。つまり、反射面41,42はx-y面に垂直である。
【0030】
同様に、直角二面鏡5も、鏡面31の端辺に沿って配置された第1反射面51と、この第1反射面51に直角な同形状の第2反射面52を有する。直角を成す2つの反射面51,52の交線はz軸に平行である。つまり、反射面51,52はx-y面に垂直である。
【0031】
直角二面鏡4,5には、ルーフトップミラー、ルーフプリズムミラー、直角プリズムミラー(直角構成面に反射コーティング)など市販の光学素子を用いることができる。また、平行平面鏡2,3と直角二面鏡4,5を一体に形成してもよい。
【0032】
図1(B)に示すように、直角二面鏡5の第2反射面52のz軸の負方向の端には、外部からのレーザー光の入射孔53が形成され、この入射孔53から進入したレーザー光が平行平面鏡2,3間をジグザクに多重反射しながら一端側へ進行する。以降、入射53の位置をx-y-z軸座標系の原点Oとして説明する。
【0033】
入射孔53から進入したレーザー光は、鏡面21,31を入射角φで交互に反射する。鏡面21,31が平行であり、指向性の高いレーザー光を用いることにより、入射角φが一定に維持され、鏡面21,31での反射スポットの形状も一定に維持される。図1(A)の角φxは、入射角φをx-y面に投影した角であり、x-y面を水平面とした場合の「方位角」に相当する。
【0034】
レーザー光が鏡面21,31を反射するポイントには、そのビーム径に応じた円形の反射スポットが形成される。鏡面21,31に対するレーザー光の入射角φに方位角の成分(角φx)があるため、これらの反射スポットは一定のピッチPxで形成される。
【0035】
図1(A)の例では、鏡面21,31間を7往復した後、レーザー光は直角二面鏡4の第1反射面41に進む。図1(B)の鏡面3上にピッチPxで並んだ多数の小円は、反射スポットを示す。黒塗りの小円は、入射孔53から第1反射面41まで多重反射光が進行した際に形成される7箇所の反射スポットである。なお、ピッチPxは、反射スポットのピッチPのx軸方向の成分である。
【0036】
また、レーザー光の入射角φは仰角の成分(角φz)を有するため、図1(B)の黒塗りの小円の配列方向は、x軸に対して上り角θの方向になる。図2の立体視図に、入射角φと上り角θの関係を示す。角φxは、入射角φをx-y面に投影した角であるのに対し、角φzは、入射孔53(原点O)から進入する入射光がx-y面と成す角に等しい。
【0037】
図1(A)のように、一端側の第1反射面41に入射したレーザー光は、第1反射面41と第2反射面42を順に反射する。第1反射面41と第2反射面42が互いに直角であるから、レーザー光の光路をx-y平面に投影した図において、第1反射面41への入射角に関わらず、第1反射面41への入射光と第2反射面42からの反射光とが平行になる。ただし、レーザー光の入射角φには仰角の成分(φz)があるため、レーザー光の光路をy-z平面に投影した図では、第1反射面41への入射光と第2反射面42からの反射光とが仰角の成分の2倍の角(2φz)を成している。
【0038】
このようにして直角二面鏡4は、一端まで進行した多重反射光を他端に向けて折り返すとともに、折り返された多重反射光は、同様にx軸に対して上り角θの方向へ進行する。
【0039】
直角二面鏡4で折り返された多重反射光の反射スポットは、図1(B)のように、黒塗りの小円で示した反射スポットに対して、丁度ピッチPxの半分だけずれた位置に形成される。図1(A)では、第1反射面41への入射光と、第2反射面42からの反射光との間隔をdで示す。図1(B)に示すように、第1反射面41への入射光に関する鏡面31上の反射スポットSP1と第2反射面42からの反射光に関する鏡面31上の反射スポットSP2との間隔のx軸方向の成分dxは、多重反射光の半ピッチ(Px/2)に等しい。
【0040】
直角二面鏡4によってx軸方向に半ピッチずれた状態で他端側へ進行する多重反射光は、鏡面21,31間を7往復した後、他端側の直角二面鏡5によって再び折り返される。直角二面鏡4,5は、互いに回転対称に設けられており、他端側においても一端側と同様に多重反射光が折り返される。
【0041】
つまり、第1反射面51への入射光に関する鏡面21上の反射スポットと、第2反射面52からの反射光に関する鏡面21上の反射スポットとの間隔のx軸方向の成分がdxと同じであり、多重反射光の半ピッチ(Px/2)に等しい。そして、他端側で折り返された多重反射光は、入射孔53から進入したレーザー光の多重反射の光路に対して、z軸方向に1ピッチ(Pz)だけずれた位置から同様の光路を形成しつつ一端側に進行する。
【0042】
このようにして多重反射光は、直角二面鏡4,5間を複数回往復して、z軸方向へジグザクに進行していく。本実施形態では直角二面鏡4の2つの反射面41,42が、その交線(z軸方向)に沿って長く、直角二面鏡5の反射面51,52も同様に長い。そのため、多重反射光が直角二面鏡4,5間を複数回往復する際に、直角二面鏡4,5上での折り返しポイントが、その交線に沿って所定のピッチ(Pz)ずつ移動していく。そのz軸方向のピッチPzは一定に維持される。図1(B)の例では、直角二面鏡4,5間を13往復した後、レーザー光は、直角二面鏡5の第1反射面51のz軸の正方向の端に形成された出射孔54を通って外部に出る。なお、入射孔53および出射孔54は、レーザー光を透過できればよく、光学分析装置に搭載されるレーザーの波数域(例えば、QCL光源の場合は中赤外から遠赤外帯域の発振が想定される。)に応じて適宜選択された、ZnS(硫化亜鉛)、ZnSe(セレン化亜鉛)、Si(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)、ダイヤモンドなどの赤外透過窓材やガラス等によって形成される。
【0043】
図3は、効果の説明を容易化するために本実施形態の多重反射器具1の構成を簡略して示した図である。図3(A)は多重反射器具1をz軸方向から見た概略図であり、入射角φをx-y平面に投影した角をφxで示す。図3(B)は多重反射器具1をy軸方向から見た概略図であり、鏡面21,31間の多重反射光の上り角をθで示す。他端から一端へ進行する多重反射光を実線とし、一端から他端へ進行する多重反射光を破線とした。
【0044】
図3(A),(B)で明らかなように、他端側の第2反射面52上の折り返しポイント(原点O)から一端側の第2反射面42上の折り返しポイントまでのx軸方向の長さ(Lx)は、直角二面鏡4,5での光路のシフト量(dxと同じ)の整数倍であることが、レーザー光が効率よく出射孔54から外部に出るための条件になる。
【0045】
次に、図3(C)は多重反射器具1をx軸方向から見た概略図である。多重反射光が他端側の直角二面鏡5から一端側の直角二面鏡4まで進行する間におけるz軸方向の移動量をdz(ピッチPzの半分)で示す。この図で明らかなように、レーザー光の入射孔53の位置(原点O)から出射孔54の位置までのz軸方向の長さ(Lz)は、z軸方向の移動量(dz)の整数倍であることが、レーザー光が効率よく出射孔54から外部に出るための条件になる。
【0046】
直角二面鏡4,5の配置は、図3の配置に限られず、同じ鏡面(2又は3)の両端に直角二面鏡4,5を配置することでもよい。また、レーザー光の入射孔53、出射孔54の位置は、図3に示す位置に限られず、鏡面21,31のいずれかの反射スポットの位置や、直角二面鏡4,5の折り返しポイントの位置であってもよい。また、図3のレーザー光の進行方向を逆にしてもよい。
【0047】
図4を用いて、直角二面鏡4の加工精度が要求される範囲を説明する。本実施形態では、直角二面鏡4のそれぞれの反射面41,42の全面をレーザー光の反射に用いるわけではない。よって、反射面41,42が直角に交わる交線(接合部)の付近については、高い加工精度は要求されない。図4のように、交線の付近は丸みがあってもよいし、溝などが残っていても構わない。このように直角二面鏡4の不完全性が許容されることから、擬似的なルーフトップ形状の金属鏡なども利用することができる。
【0048】
図5図7を用いてレーザー光の入射角φの調整機構について説明する。
【0049】
まず、図5図6に、多重反射器具1を内蔵する多重反射型のガスセル(多重反射セル)10を示す。このガスセル10は、測定対象のガスを出し入れ可能に構成されたセル本体9を有し、セル本体9に多重反射器具1が収容されている。セル本体9にはガス送入管91とガス排出管92がそれぞれ接続され、これらの接続部以外は気密構造である。セル本体9の材質については、レーザー光が通過する部分が少なくとも透光性であればよく、特に限定されない。
【0050】
図5、6では、多重反射器具1へレーザー光を入射するための光学素子6が、ガスセル10の外部に配置されている。光学素子6には、例えば、偏光特性の維持のために、90°反射を想定した2枚の平面鏡の組合せによるアライメント機構などを採用できる。光学素子6の構成はこれに限られるものでなく、他の構成の光学素子も採用できる。この入射用の光学素子6を介して、例えば、高出力、高指向性に優れたQCL(量子カスケードレーザー)等の光源11からのレーザー光が多重反射器具1の入射孔53に導入される。QCLは、従来の高輝度セラミック光源やハロゲンランプ等と比べて非常に高出力が得られ、指紋領域(1850~890cm-1)での狭帯域(半値幅が非常に狭い)赤外レーザーの掃引が可能で、かつ指向性(発散角が小さい)にも優れている。ただし、光源11としては、QCLに限られず、その他の高出力、高指向性の各種レーザーを採用してもよい。
【0051】
図5、6の例では、ガス入管91が多重反射器具1の一端側に測定対象ガスを送り込み、ガス排出管92が多重反射器具1の他端側から測定対象ガスを排出するように構成されているが、ガス入管91及びガス排出管92の接続位置については特に限定されるものではない。また、図5、6の例は、セル本体9と多重反射器具1とを組み合わせた構成であるが、ガスセル10としては、多重反射器具1をセル本体9の一部にして両者を一体に構成したものでもよい。
【0052】
図5には、第1の入射角調整器として、光学素子の駆動装置7が設けられている。例えば光学素子6が角度可変ミラーを有するときのその角度調整装置がこの駆動装置7に該当する。駆動装置7は、例えば回転傾斜ステージであり、レーザー光の入射角φを変化させるために入射用光学素子6の姿勢を変化させる。また、駆動装置7は、上記の回転軸の他に、光学素子6の位置を少なくとも1つの駆動軸に沿って移動するための駆動機構を持っていてもよい。なお、光学素子6が例えば、上述した2枚の平面鏡のアライメント機構である場合は、その駆動部分がこの駆動装置7に相当する。
【0053】
図6には、第2の入射角調整器として、ガスセルの駆動装置8が設けられている。この駆動装置8は、レーザー光の入射角φを変化させるためにガスセル10の位置および姿勢を変化させる装置である。例えば、光学素子6の姿勢や位置を変化させることに制限がある場合に、このガスセルの駆動装置8が役立つ。
【0054】
駆動装置7,8の少なくとも一方は、入射角φをx-y面へ投影した角φxが0~25°の範囲で変化するように、入射角φを変化させる。駆動装置7,8のどちらかを利用しても、両方を利用してもよい。これらの駆動装置7,8は、レーザー光を入射孔53に入射させるための位置合わせにも利用できる。
【0055】
駆動装置7,8は、一端側および他端側の直角二面鏡4,5間の多重反射光の往復回数がN回(Nは1以上の整数)増減するように、入射角φを変化させるように構成されている。本実施形態では、z軸方向に長い2枚の反射面41,42を有する直角二面鏡4および同様の構成の直角二面鏡5を用いているので、入射角φを調整するだけで、直角二面鏡4,5間の多重反射光の往復回数を簡単に増減させることができる。
【0056】
また、駆動装置7,8は、一端側の直角二面鏡4から他端側の直角二面鏡5までの間において、鏡面21,31間をレーザー光が往復する回数がM回(Mは1以上の整数)増減するように、入射角φを変化させるように構成してもよい。この場合は、往復回数に応じて、ピッチPxが変化するため、直角二面鏡4の第1および第2反射面41,42の位置関係、及び、直角二面鏡5の第1および第2反射面51,52の位置関係それぞれ変化させるとよい。
【0057】
本実施形態の多重反射器具1を試料ガスの吸光度測定用のセルとして用いれば、必要な測定対象ガスの容量を少なくすることが容易になる。または、測定対象ガスを通過する光の光路長を長くすることも容易になり、測定感度の向上を図りやすい。或いはこれらの効果を同時に得ることもできる。
【0058】
同じ濃度の測定対象ガスをより小さい容積のセルで分析することができるので、ガスをセルへ送入する/セルから排出する時間が短くなり、例えば、測定対象ガスに含まれる低濃度成分の時間変化を測定したい場合に、短い時間ピッチの変化を測定することが可能になる。
【0059】
従来の球面鏡を用いたセルと比較すると、平面鏡2,3を用いることで、光学的な設計の自由度が向上する。例えば、一対の球面鏡の配置など(一方の曲率半径の中心が反対側の球面上になるように設計すること等)の設計上の制約がなくなる。光学的な構造が単純化されて製造時間・コストが下がるとともに、ミラーの向き等の調整も容易になる。また、構造が複雑でないため、メンテナンスも容易になる。
【0060】
本実施形態の多重反射器具1によれば、所定の入射角φで入射するレーザー光によって鏡面21,31上に形成される多数の反射スポットを、互いに重なり合わないようにして、かつ、密な状態にすることができる。そのため、鏡面21,31間の限られた容積に長い光路を効率よく形成することができ、しかも、ビームの干渉による測定光への影響を小さく抑えることができる。
【0061】
本実施形態において、光源にQCLおよび他の高出力レーザーを用いることのメリットは、まず、これらのレーザーの出力が、鏡面(平行平面鏡2,3および直角二面鏡4,5)での多重反射に伴う表面反射損失を十分にカバーできる程度に大きいことである。
【0062】
従来の赤外吸光度を計測する装置(例えば、FTIR)には、TGS検出器が標準的な検出器として搭載される場合が多い。また、より微弱な光を検出することが可能なMCT検出器をオプション的に搭載する場合がある。TGS検出器は、MCT検出器よりも感度および応答性が低いが、液体窒素冷却が不要であることや、測定帯域が比較的広いこと、および安価であることなどのメリットがあり、測定値の縦軸安定性や長時間測定などの面で有用である。しかし、従来の赤外光源は出力が十分に高くなく、100回程度の多重反射によって出力(透過光量)が不足してしまうので、TGS検出器が使えず、MCT検出器を使わざるを得なかった。これに対して本実施形態では、高出力の赤外光レーザーを用いることで、このような検出器の選択の制限がなくなり、TGS検出器のような標準的な検出器を用いた測定が可能になる。このことは、例えば、平行平面鏡2,3の間に試料ガス用のガスセルを配置する場合にも当て嵌り、赤外光レーザーがガスセルでの表面反射損失を繰り返し受けても、透過光量の不足が生じず、標準的な検出器の使用が可能になる。
【0063】
本実施形態において、光源にQCLおよび他の高出力レーザーを用いることの2点目のメリットは、赤外光レーザーのスペクトル幅が狭いため、測定対象物質の吸収ピークが環境下にあるガス(例えばCOやHO)の吸収帯に近くても、測定対象物質の吸収ピークを選択的に取り出すことができることである。
【0064】
また、本実施形態では、特に、直角二面鏡4への入射光および反射光の間隔(図1(B)のdxで示す間隔)が、鏡面21,31間を多重反射するレーザー光の半ピッチ(Px/2)の長さに等しくなるようにすれば、もっとも効果的に、鏡面21,31上の反射スポットを密な状態にして、かつ、反射スポットを互いに重なり合わないようにすることができる。
【0065】
また、本実施形態の多重反射器具1の駆動装置7,8によって方位角φxを0~25°の範囲で変化させることで、鏡面21,31間のレーザー光の光路長を容易に調整することができる。ここで、図7に示すように、垂直入射(φx=0°)時の第1反射面41(または、第2反射面42)の開口の大きさを100%とする場合に、方位角φxの上限を25°にすることで、その開口の大きさを50%以上確保することができる。従って、方位角φxを変化させても、直角二面鏡4(または直角二面鏡5)の反射性能を十分に維持することができる。
【0066】
ここで、図7を用いて直角二面鏡4の特徴を説明する。図7のように、ミラー開口の範囲内であれば、入射光に対する反射面41の角度が変化した場合であっても、反射面42からの反射光は角度変化前と同じ経路(x-y平面に投影した経路が同じになる。)を通って戻ってくる。ただし、直角二面鏡4の中心線から入射光までの長さが変化しないことが条件である。つまり、反射面41の角度に関わらず、反射前後における平行移動量が一定になる。本実施形態では、このような特性のある直角二面鏡4,5を採用したことで、多重反射器具1の組立て調整作業が容易になった。
【0067】
図5図6の駆動装置7,8を使って角φxを調整することで、鏡面21,31間を往復するレーザー光の光路長をその1往復分の光路ずつ細かく調整することができる。また、駆動装置7,8は、角φzを調整することもでき、両端の直角二面鏡4,5間を往復する多重反射光の光路長をその1往復分の光路ずつ細かく調整することができる。
【0068】
例えば、本実施形態の多重反射器具1を有するガスセル10を使って、試料ガス中の特定成分の吸収スペクトルを測定する場合について説明する。試料ガスが高い吸光度の成分と低い吸光度の成分とを含んでいる場合に、もし、高吸光度成分の検出がサチレーション(飽和)してしまっても、本実施形態の光路長の自動切換機構を使って短光路化することで、適切な光路長の条件でその高吸光度成分の測定を続けることができる。つまり、光路長の自動切換機構により、試料ガスの再封入を実施する手間を省けて、異なる測定系でのデータ取得をスムーズに実行することができる。
【0069】
例えば、図1(A),(B)の鏡面21,31の形状が1辺50mmの正方形であり、鏡面21,31の間隔が50mmである場合、両端の直角二面鏡4,5間を一往復する間に、レーザー光は鏡面21,31間を約15往復する。その光路長は、
100mm×15往復=1.5m
になる。更に、多重反射光は、両端の直角二面鏡4,5間を13往復するので、全体の光路長は、
1.5m×13往復=19.5m
になる。このような多重反射器具1を用いたガスセル10は、1辺80mm以下の箱状(約512mlの容積)に作成することができる。これは従来型のガスセルの1/4以下の容量になり、ガスセルを小型化することができる。小型化されたガスセルであれば、使用できる試料の量に制限がある場合などに好適である。
【0070】
本実施形態のガスセルの一例として、一対の平行平面鏡2,3の間に、赤外透過性の窓板からなるセル室を配置したものでもよい。試料ガスは平面鏡2,3間のセル室に封入される。或いは、上述したように、セル本体9の表面の一部を多重反射器具1の一対の平行平面鏡2,3で形成したものでもよい。
【0071】
また、一対の平行平面鏡2,3として、赤外透過性の窓板の裏面に反射膜を形成したものを採用してもよい。これらのガスセルの構成であれば、試料ガスで平面鏡2,3の鏡面が直接汚れずに済む(鏡面の汚損防止)。代わりに、赤外透過性の窓板の表面が試料ガスで汚れることになるが、拭き取りや交換をすればよいのでメンテナンスが容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係るレーザー光を多重反射させる手法は、セル内のガスの吸光度測定に限られず、オープンな雰囲気のガスの吸光度測定にも好適である。また、吸光度測定に限られず、ラマン分光法においてガスを励起してラマン散乱光を取り出す際や、蛍光法においてガスを励起して蛍光を取り出す際にも、気体のラマン散乱光や蛍光は非常に微弱であることから、本発明に係る手法が好適である。
【符号の説明】
【0073】
1 多重反射器具
2,3 一対の平行平面鏡
4 一端側の直角二面鏡
5 他端側の直角二面鏡
6 入射用の光学素子
7 光学素子の駆動装置
8 ガスセルの駆動装置
9 セル本体
10 ガスセル(多重反射セル)
11 光源
21 第1鏡面
31 第2鏡面
41,51 第1反射面
42,52 第2反射面
53 入射孔
54 出射孔
91 ガス送入管
92 ガス排出管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7