(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】駆動回路に適用される学習率を低減したテーブル学習方法及びこの方法を用いた駆動回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20250415BHJP
H03F 3/217 20060101ALI20250415BHJP
H03F 1/30 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
H02M3/155 P
H03F3/217
H03F1/30 220
(21)【出願番号】P 2023139378
(22)【出願日】2023-08-29
【審査請求日】2023-08-29
(32)【優先日】2022-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2023-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2023-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2023-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521287935
【氏名又は名称】エクスメムス ラブズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジェム ユエ リヤーン
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 宏吉
(72)【発明者】
【氏名】張 傑堯
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-213258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0287459(US,A1)
【文献】特開2011-172349(JP,A)
【文献】特開2019-106744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00 - 3/44
H03F 1/00 - 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動回路内のコントローラに適用される方法であって、前記駆動回路は、負荷
に対する動作を実行するように構成された駆動サブ回路を含み、当該方法は、
学習期間中に、少なくとも第1のレートでテーブルに対してテーブル学習動作を実行するステップと、
前記学習期間の後に、前記第1のレートよりも低い第2のレートで前記テーブルに対して前記テーブル学習動作を実行するステップと、を含み、
前記テーブルは前記コントローラ内のメモリに格納され、
前記テーブル学習動作を実行するステップは、
第1の
動作サイクルに対応する前記負荷から第1のフィードバック信号を受信するステップと、
該第1のフィードバック信号に従って前記テーブルから制御コードを取得するステップと、
該制御コードに従って制御信号を生成するステップであって、前記駆動サブ回路は、第2の
動作サイクル中に前記制御信号に従って前記負荷に対する動作を実行する、ステップと、
前記第2の
動作サイクルに対応する前記負荷から第2のフィードバック信号を受信するステップと、
前記第1のフィードバック信号及び前記第2のフィードバック信号に従って前記制御コードを更新し、該更新した制御コードを前記メモリ内のテーブルに保存し直すステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記第1のレートよりも低い前記第2のレートで前記テーブル学習動作を実行するステップは、
第
3の動作サイクルで前記テーブル学習動作を実行するステップと、
前記第
3の動作サイクルに続く複数のスキップされる動作サイクルに亘って前記テーブル学習動作をスキップするステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のスキップされる動作サイクルの数は、ある期間に亘って一定である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のスキップされる動作サイクルの数は、ランダムに生成されるか、又は乱数を含むリストから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
テーブルエラーが減少すると、前記複数のスキップされる動作サイクルの数を増やすステップ、又は
前記テーブルエラーが増加すると、前記複数のスキップされる動作サイクルの数を減らすステップ、を含み、
前記テーブルエラーは、前記第1のフィードバック信号及び前記第2のフィードバック信号に従って決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のスキップされる動作サイクルの数は、所定のリストから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のフィードバック信号は、前記負荷に結合されたアナログ/デジタルコンバータによって捕捉され、該アナログ/デジタルコンバータは、アナログ/デジタル変換レートで動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のレートは、アナログ/デジタル変換レートである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記制御信号はパルス幅変調(PWM)信号であり、
前記制御コードは、前記PWM信号のパルス幅を決定するパルス幅制御コード(PWCC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記動作は、充電動作又は放電動作であり、
前記負荷は容量性負荷である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記テーブルが安定しているかどうかを判定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
駆動回路であって、当該駆動回路は、
負荷に結合された駆動サブ回路と、
テーブルが格納されるメモリを含むコントローラと、を有しており、
該コントローラは、前記駆動サブ回路を制御し、
学習期間中に、少なくとも第1のレートで前記テーブルに対してテーブル学習動作を実行すること、及び
前記学習期間の後に、前記第1のレートよりも低い第2のレートで前記テーブルに対して前記テーブル学習動作を実行すること、を行うように構成され、
前記テーブル学習動作を実行することは、
第1の
動作サイクルに対応する前記負荷から第1のフィードバック信号を受信すること、
該第1のフィードバック信号に従って前記テーブルから制御コードを取得すること、
該制御コードに従って制御信号を生成することであって、前記駆動サブ回路は第2の
動作サイクル中に前記制御信号に従って
前記負荷に対して動作を実行する、こと、
前記第2の
動作サイクルに対応する前記負荷から第2のフィードバック信号を受信すること、及び
前記第1のフィードバック信号及び前記第2のフィードバック信号に従って前記制御コードを更新し、該更新した制御コードを前記メモリ内のテーブルに保存し直すこと、を含む、
駆動回路。
【請求項13】
前記コントローラは、
第
3の動作サイクルで前記テーブル学習動作を実行すること、及び
前記第
3の動作サイクルに続く複数のスキップされる動作サイクルに亘って前記テーブル学習動作をスキップすること、を実行するように構成される、請求項12に記載の駆動回路。
【請求項14】
前記複数のスキップされる動作サイクルの数は、ある期間に亘って一定である、請求項13に記載の駆動回路。
【請求項15】
前記複数のスキップされる動作サイクルの数は、ランダムに生成されるか、又は乱数を含むリストから選択される、請求項13に記載の駆動回路。
【請求項16】
前記コントローラは、
テーブルエラーが減少すると、前記複数のスキップされる動作サイクルの数を増やす、又は
前記テーブルエラーが増加すると、前記複数のスキップされる動作サイクルの数を減らす、ことを実行するように構成され、
前記テーブルエラーは、前記第1のフィードバック信号及び前記第2のフィードバック信号に従って決定される、請求項13に記載の駆動回路。
【請求項17】
前記複数のスキップされる動作サイクルの数は、所定のリストから選択される、請求項16に記載の駆動回路。
【請求項18】
前記負荷に結合されたアナログ/デジタルコンバータを含み、
前記第1のフィードバック信号は前記アナログ/デジタルコンバータによって捕捉され、
該アナログ/デジタルコンバータは、アナログ/デジタル変換レートで動作する、請求項12に記載の駆動回路。
【請求項19】
前記第1のレートは、アナログ/デジタル変換レートである、請求項18に記載の駆動回路。
【請求項20】
前記制御信号はパルス幅変調(PWM)信号であり、
前記制御コードは、前記PWM信号のパルス幅を決定するパルス幅制御コード(PWCC)である、請求項12に記載の駆動回路。
【請求項21】
前記コントローラはPWMコントローラであり、
該PWMコントローラは、
パルス幅制御コード(PWCC)をアナログ電圧に変換するように構成されたデジタル/アナログコンバータ(DAC)と、
のこぎり波信号又はのこぎり波状信号を生成するように構成された波形発生器と、
前記のこぎり波信号又は前記のこぎり波状信号と前記アナログ電圧とを比較し、比較結果を前記PWCCに対応するパルス幅を有するPWM信号として生成するように構成された比較器と、を含む、請求項12に記載の駆動回路。
【請求項22】
前記駆動サブ回路は、
インダクタと、
電圧源と前記インダクタの第1の端子との間に結合された第1のスイッチと、
前記インダクタの前記第1の端子に結合された第2のスイッチと、
前記負荷と前記インダクタの第2の端子との間に結合された第3のスイッチと、
前記インダクタの
前記第2の端子に結合された第4のスイッチと、を含み、
前記動作は、充電動作又は放電動作であり、
前記充電動作中に、前記駆動サブ回路は前記負荷に向けて流れる第1の電流を形成し、
前記放電動作中に、前記駆動サブ回路は前記負荷から流れる第2の電流を形成する、請求項12に記載の駆動回路。
【請求項23】
前記駆動回路は入力信号を受信し、
前記コントローラは、前記負荷の出力が前記入力信号に実質的に比例するように前記駆動サブ回路を制御する、請求項12に記載の駆動回路。
【請求項24】
前記駆動回路は、可聴帯域内の元のオーディオ信号に従って生成された入力信号を受信し、
前記負荷はスピーカ負荷である、請求項12に記載の駆動回路。
【請求項25】
前記コントローラは、前記テーブルが安定しているかどうかを判定することを実行するように構成される、請求項12に記載の駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路に適用される方法に関し、より具体的には、低電力で多様な動作条件に対応できる駆動回路に適用される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、圧電作動(piezoelectric-actuated)スピーカ(圧電(piezo:ピエゾ)スピーカ)が登場した。薄膜圧電アクチュエータの容量性により、これらの圧電スピーカはアンプに高い容量性負荷を与える。クラス-AB、-D、-G、-Hアンプ等の従来の駆動回路は全て、負荷(非常に細いワイヤで作製されたコイル)が殆ど抵抗性であり僅かに誘導性であると仮定して進化しており、これらのアンプは、圧電スピーカ等の容量性の高い負荷を駆動するため適切ではなく/そのために設計されていない。
【0003】
容量性圧電スピーカを駆動するために、エネルギー再利用能力を有するDC-DCコンバータを含む駆動回路が開発されている。DC-DCを含む駆動回路の性能は、パルス幅変調(PWM)信号を(ゲート制御信号として)正確なパルス幅で供給することに依存している。従って、特に回路パラメータがデバイス毎に異なり、バッテリ電圧レベル等の回路動作条件が変動する場合に、正確なパルス幅でPWM信号をどの様に生成するかは、この分野の重要な目標である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6,984,967号
【文献】米国特許第7,391,190号
【文献】米国特許第7,609,040号
【文献】米国特許第7,923,980号
【文献】米国特許第8,975,826号
【文献】米国特許第8,976,543号
【文献】米国特許第6,348,779号
【文献】米国特許第6,215,286号
【文献】米国特許第6,191,567号
【文献】米国特許第6,166,527号
【文献】米国特許第6,088,243号
【文献】米国特許出願公開第2022/0209647号
【文献】米国特許出願公開第2022/0021305号
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の目的は、上記の問題を解決するために、エネルギー再利用アンプの動作中にパルス幅変調(PWM)信号を生成するために使用されるパルス幅制御コード(PWCC)を適応的に調整することができるテーブル(table:表)学習方法を提供することである。
【0006】
本発明の一実施形態は、駆動回路内のコントローラに適用される方法を開示し、駆動回路は、負荷を駆動するように構成された駆動サブ回路を含む。この方法は、学習期間中に、少なくとも第1のレートでテーブルに対してテーブル学習動作を実行するステップと;学習期間の後に、第1のレートよりも低い第2のレートでテーブルに対するテーブル学習動作を実行するステップと、を含み、テーブルはコントローラ内のメモリに格納される。テーブル学習動作は、第1のサイクルに対応する負荷から第1のフィードバック信号を受信するステップと;第1のフィードバック信号に従ってテーブルから制御コードを取得するステップと;制御コードに従って制御信号を生成するステップであって、駆動サブ回路は、第2のサイクル中に制御信号に従って負荷に対して動作を実行する、ステップと;第2のサイクルに対応する負荷から第2のフィードバック信号を受信するステップと;第1のフィードバック信号及び第2のフィードバック信号に従って制御コードを更新し、更新した制御コードをメモリ内のテーブルに保存し直すステップと;を含む。
【0007】
本発明の別の実施形態は、駆動回路を開示する。駆動回路は、負荷に結合された駆動サブ回路と、テーブルが格納されるメモリを含むコントローラとを含む。コントローラは、駆動サブ回路を制御し、学習期間中に、少なくとも第1のレートでテーブルに対してテーブル学習動作を実行すること;学習期間の後に、第1のレートよりも低い第2のレートでテーブルに対してテーブル学習動作を実行すること;を実行するように構成される。テーブル学習動作は、第1のサイクルに対応する負荷から第1のフィードバック信号を受信すること;第1のフィードバック信号に従ってテーブルから制御コードを取得すること;制御コードに従って制御信号を生成することであって、駆動サブ回路は第2のサイクル中に制御信号に従って負荷に対する動作を実行する、こと;第2のサイクルに対応する負荷から第2のフィードバック信号を受信すること;及び第1のフィードバック信号及び第2のフィードバック信号に従って制御コードを更新し、更新した制御コードをメモリ内のテーブルに保存し直すこと;を含む。
【0008】
本発明のこれら及び他の目的は、様々な図及び図面に示される好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読めば、当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による駆動回路の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による容量性負荷を含む双方向回路の例示的な実施態様の概略図である。
【
図3】PWMコントローラの詳細な実施態様の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるプロセスのフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態によるPWCCを記録する例示的なLUTを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るテーブル学習プロセスのフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態による詳細なテーブル学習プロセスのフローチャートである。
【
図8】テーブル学習プロセスの前後に双方向回路によって生成された出力電圧波形のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態によるプロセスのフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態によるプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
米国特許第11,290,015号、第11,133,784号、及び第11,336,182号は、容量性負荷、特に圧電スピーカの容量性スピーカ負荷を駆動するためのDC-DCコンバータを含むエネルギー再利用アンプを開示している。DC-DCコンバータは、通常、パルス幅変調(PWM)信号によって制御される。米国特許第11,271,480号は、PWM信号に関連するパルス幅情報を事前に計算し、この情報をパルス幅制御コード(PWCC)としてアドレス可能なテーブルメモリに保存する方法を開示している。
【0011】
制御コードの計算は、圧電スピーカの可変特性、DC-DCコンバータのオフセット、バッテリ電圧レベルの変動、及び関連する駆動回路の製造ミスマッチを含む様々な要因によって影響を受ける可能性がある。例えば、DC-DCコンバータで使用されるインダクタのインダクタンスには、通常、許容誤差があり、そのため、DC-DCコンバータの充電/放電動作が一定しないという結果になる。圧電スピーカの誘電率/静電容量は、印加電圧に対して変化する。さらに、全ての圧電スピーカの供給電圧に対する誘電率曲線は正確に同一ではない可能性があり、及び/又はエネルギー再利用アンプの回路要素及びその駆動回路は、通常、製造上のミスマッチ(mismatch:不一致)がある。これらの誤差及びミスマッチにより、制御コードによって生成される電圧の増分(increments)及び減分(decrements)が、充電(放電)動作で不正確になる。圧電スピーカに対して実行される充電(放電)動作の不正確さは、出力信号の歪み及び誤差を増加させ/もたらし、音質を低下させる可能性がある。
【0012】
本発明は、(少なくとも)テーブル学習方法を提供し、これは、パルス幅制御コードを適応的に調整することができ、様々なパラメータを含むデバイスに適応することができる。テーブル学習について詳しく説明する前に、まずテーブル学習アルゴリズムを実現する駆動回路について紹介する。
【0013】
本発明において、「~に結合される」という用語は、直接的又は間接的な接続を指す場合がある。「コンポーネントAがコンポーネントBに結合される」とは、コンポーネントAがコンポーネントBに直接接続されること、又はコンポーネントAが何らかのコンポーネントCを介してコンポーネントBに接続されることを示す場合がある。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による駆動回路10の概略図である。駆動回路10は、パルス幅変調(PWM)コントローラ110及び双方向回路120を含む。双方向回路120は、電圧源(又はバッテリ等の電源と呼ばれる)11と容量性負荷CLとの間に結合され、容量性負荷CLを駆動するように構成される。一実施形態において、容量性負荷CLは、駆動回路10によって駆動される際に音を発生する圧電作動スピーカ(以下、圧電スピーカと略す)を含むことができる。双方向回路120は、電圧源11から電源電圧V
DDを受け取り、容量性負荷CLに電流を供給する、又は容量性負荷CLから電流を排出することができる。電圧V
TOGは、双方向回路120の出力端子における電圧を表す。一実施形態では、駆動回路10は、エネルギー再利用アンプであり得、双方向回路120は、エネルギー再利用可能なDC-DCコンバータであり得る。エネルギー再利用能力を有する駆動回路として利用されるDC-DCコンバータの詳細は、米国特許第11,271,480号及び第11,336,182号に教示されており、簡潔にするためにここでは説明しない。
【0015】
一実施形態では、ここでの負荷CLは、容量性スピーカ負荷、例えば圧電作動スピーカであり得る。駆動回路10は、可聴帯域(例えば、16.5Hz~22KHzの間)内の元(original)のオーディオ信号に従って生成される入力信号INを受け取ることができる。駆動回路は、入力信号INに従って容量性スピーカ負荷を駆動し、それによって容量性スピーカ負荷の出力は、入力信号INに実質的に比例する。本願において、信号aが信号bに実質的に比例することは、||a(t)-c・b(t)||2<=εが満たされることを指すことがあり、ここで、||s(t)||2は任意の信号s(t)のエネルギーを表し得、a(t)及びb(t)はそれぞれ信号a及び信号bの時変関数を表し、cは、正又は負のいずれかであり得る定数を表し、εは正の小さな数を表し、例えば10-1、10-2、10-3等であり得る。
【0016】
双方向回路120は、インダクタL1及び4つのスイッチT1~T4を含む。スイッチT1は、インダクタL1の第1の端子と電圧源11との間に結合される。スイッチT2は、インダクタL1の第1の端子と接地端子との間に結合される。スイッチT3は、インダクタL1の第2の端子と容量性負荷CLとの間に結合される。スイッチT4は、インダクタL1の第2の端子と接地端子との間に結合される。双方向回路120は、PWMコントローラ110からPWM信号SP1~SP4を受信することによって動作することができ、スイッチT1~T4は、PWM信号SP1~SP4によってそれぞれ制御される。
【0017】
PWMコントローラ110は、充電段階又は放電段階で動作するように双方向回路120を制御することができる。充電動作において、双方向回路120は、充電電流を供給して容量性負荷CLを充電することができる。充電段階は、磁束流入(InFlux)段階(すなわち、磁束増加段階)及び磁束流出(DeFlux)段階(すなわち、磁束減少段階)を含む。充電動作のInFlux段階では、スイッチT1及びT4がオンになり、スイッチT2及びT3がオフになり、電圧源11からインダクタL1を通って流れるInFlux電流は、インダクタL1に蓄えられた磁気エネルギーを用いて磁場を形成し得る。InFlux段階に続く充電動作のDeFlux段階では、スイッチT2及びT3がオンになり、スイッチT1及びT4がオフになり、インダクタL1に蓄えられた磁気エネルギーが電気エネルギーに変換されて、これを、容量性負荷CLに向けて流れる電流を介して、容量性負荷CLに出力する。
【0018】
放電動作において、双方向回路120は、容量性負荷CLから放電電流を形成する/排出することができ、放電電流によって運ばれるエネルギーは、電圧源11に移動され、電圧源11のバッテリ又はコンデンサによって/これを介して再利用することができる。放電段階は、InFlux段階及びDeFlux段階を含むこともできる。放電動作のInFlux段階では、スイッチT2及びT3がオンになり、スイッチT1及びT4がオフになり、容量性負荷CLからインダクタL1を介して流れる放電電流は、インダクタL1に蓄えられた磁気エネルギーを用いて磁束を形成することができる。InFlux段階に続く放電動作のDeFlux段階では、スイッチT1及びT4がオンになり、スイッチT2及びT3がオフになり、インダクタL1に蓄えられた磁気エネルギーが電気エネルギーに変換されて、これを、電圧源11に向けて流れる電流を介して、電圧源11に出力して、電圧源11で再利用される。
【0019】
上記の段落におけるInFlux電流経路及びDeFlux電流経路は、説明を目的としたものであることに留意されたい。当業者は、実際の状況に基づいて修正又は変更を加えることができる。例えば、放電動作のInFlux段階では、スイッチT2及びT4がオフの間に、スイッチT1及びT3が同時にオンにされ得、InFlux電流は、負荷CLから電圧源に直接流れ得、これは、特に、負荷電圧VTOGが電源電圧VDDよりも遥かに高い場合に印加できる。この場合に、インダクタL1を通って流れるInFlux電流と、インダクタL1で消費される対応する電力が減少する。
【0020】
PWMコントローラ110は、PWM信号SP1~SP4のパルス幅を決定するために、容量性負荷CLからフィードバック信号FBを受け取り、入力信号INも受け取ることができる。容量性負荷CLが圧電スピーカを含む、ハイファイ(high-fidelity)アンプ等の音響用途では、PWMコントローラ110は、PWM信号SP1~SP4を、スイッチT1~T4のゲート制御信号として出力し、双方向回路120の充電/放電動作を制御して、フィードバック信号FBと入力信号INとの間の差を最小化することができる。従って、フィードバック信号FBと入力信号INとの間の差に基づいて、PWMコントローラ110は、容量性負荷CLを充電するか放電するかどうかを決定することができ、また、フィードバック信号FBと入力信号INとの間の差を連続的に最小化するように、双方向回路120の各動作サイクルにおいて双方向回路120によって提供される、充電/放電中に移動される電荷の量を決定することができる。動作サイクルの期間内に、双方向回路120によって、充電又は放電動作が少なくとも1回達成される。双方向回路120の詳細な実施態様及び動作は、米国特許第11,336,182号に開示されるので、ここでは簡潔にするために省略する。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態による、容量性負荷CLを含む双方向回路120の例示的な実施態様の概略図である。この実施形態では、圧電スピーカは、容量性負荷CLがコンデンサC
PZTによって表される薄膜アクチュエータ(例えば、ジルコン酸チタン酸鉛、PZTと略される材料)によって作動される。双方向回路120はシングルエンド(single-ended)出力を有する一方、圧電スピーカPZTは第1の端子(例えば、上部電極)及び第2の端子(例えば、下部電極)を有する。
図2に示される実施形態では、双方向回路120は、Single-Ended-to-Differential(シングルエンド-差動)コンバータ200及びバイアス電圧発生器202を介して圧電スピーカのPZTアクチュエータに結合される。
【0022】
Single-Ended-to-Differentialコンバータ200は、双方向回路120によって出力される電圧VTOGに基づいて、差動電圧VoP及びVoNを出力するように構成される。DC-DCコンバータの特性の下で、双方向回路120によって出力される電圧VTOGは、ユニポーラ(unipolar:単極)であり、正と見なすことができる(電源電圧VDDが正の場合に)。換言すれば、電圧VTOGは、充電段階で上昇し、放電段階で下降し得る。
【0023】
Single-Ended-to-Differentialコンバータ200は、スイッチング/トグル機構を提供して電圧スイング範囲を拡張し、PZTとして示される圧電スピーカを駆動する。詳細には、Single-Ended-to-Differentialコンバータ200は、2つのスイッチSW1及びSW2を含む。スイッチSW1は、圧電スピーカPZTの第1の端子を双方向回路120の出力端子又はノードNDに選択的に結合するように構成される。スイッチSW2は、圧電スピーカPZTの第2の端子を双方向回路120の出力端子又はノードNDに選択的に結合するように構成される。
【0024】
第1の期間TT1では、スイッチSW1はノードP1に接続され、スイッチSW2はノードP2に接続される。こうして、圧電スピーカPZTの端子VTOPは双方向回路120の出力端子に結合され、圧電スピーカPZTの端子VBOTはノードNDに結合される。このような状況では、VoPからVoNを差し引いた差動電圧は、双方向回路120によって出力される電圧VTOGと同じになる。第2の期間TT2では、スイッチSW1はノードN1に接続され、スイッチSW2はノードN2に接続される。こうして、圧電スピーカPZTの端子VTOPはノードNDに結合され、圧電スピーカPZTの端子VBOTは双方向回路120の出力端子に結合される。このような状況では、差動電圧VTOP-VBOT=VoP-VoNは、双方向回路120によって出力される-VTOGに等しくなる。
【0025】
換言すれば、スイッチSW1及びSW2は、第1の制御信号によって制御され得、それによって、スイッチSW1及びSW2は、同時にノードP1及びP2にそれぞれ切り替えられ、及び/又はスイッチSW1及びSW2は、同時にノードN1及びN2にそれぞれ切り替えられる。
【0026】
現在利用可能な薄膜PZT材料の殆どは、ユニポーラ動作のみをサポートしている。そのようなユニポーラ薄膜PZTを圧電スピーカ用のアクチュエータとして利用するために、バイアス電圧発生器202が、Single-Ended-to-Differentialコンバータ200と圧電スピーカとの間にオプションで結合されて、バイアス電圧VBIASを供給することができ、ここで、VBIAS≒max(VoN-VoP)であるため(maxは最大関数を示す)、VTOP=VoP+VBIAS=>VoN=VBOTが保証され、ユニポーラ要件が満たされる。
【0027】
一実施形態では、圧電スピーカは、圧電スピーカPZTにかかる駆動電圧VPZTによってPZTアクチュエータが駆動されるときに、動く膜を含む。つまり、駆動電圧VPZTは、圧電スピーカPZTの第1の端子(上部電極)の電圧VTOPと、圧電スピーカのPZTアクチュエータの第2の端子(下部電極)の電圧VBOTとの間の差を指す。この駆動電圧VPZTにより膜を変形させて変位を発生させ、この変位によって空気を移動/圧縮して音を発生させる。圧電スピーカの膜の位置は、印加したVPZTによって制御される。膜が水平に配置される場合に、駆動電圧VPZTが増加すると膜は徐々に上向きに曲がり、駆動電圧VPZTが減少すると膜は徐々に下向きに曲がる。換言すれば、膜の垂直変位は、駆動電圧VPZTによって制御され得、膜は、駆動電圧VPZTを変化させることによって中間位置にあるように制御され得る。
【0028】
例示的な実施形態では、双方向回路120によって出力される電圧V
TOGは、0Vと+15Vとの間でスイングすることができるので、差動電圧VoP-VoNは、+15Vと-15Vとの間(すなわち、
図2に示され、述べたように、第1の期間TT1において0Vと+15Vとの間、第2の期間TT2において0Vと-15Vとの間)でスイングすることができる。このような状況では、バイアス電圧V
BIASを15Vに等しくなるように設計することができ、その結果、圧電スピーカPZTの駆動電圧V
PZTは0Vと30Vとの間でスイングすることができ、これにより、圧電スピーカPZTが、ユニポーラである駆動電圧V
PZTを受け取ることができることが保証される。駆動電圧V
PZTと、Single-Ended-to-Differentialコンバータ200によって出力される電圧VoP及びVoNとの間の関係は、次のように表すことができる。
V
PZT=V
TOP-V
BOT=(VoP+V
BIAS)-VoN
【0029】
図2に示されるように、Single-Ended-to-Differentialコンバータ200は、電圧シフト回路204をさらに含むことができる。電圧シフト回路204は、接地端子又はシフト電圧V
MVを提供する電圧源に選択的に結合されるスイッチSW3を含む。通常の動作では、スイッチSW3は接地端子に結合され得る。しかしながら、電圧V
TOGが接地電圧に近い場合に、放電電流がインダクタL1を介して/インダクタL1に流れにくくなり、従って双方向回路120の効率/効果が低下する。この問題を解決するために、電圧V
TOGが接地電圧に近い場合に、スイッチSW3は、シフト電圧V
MVを受け取るように切り替えられ、電圧V
TOGをより高いレベルに/より高いレベルに向けて結合する。これにより、インダクタL1の磁束増加能力が増大し、InFlux動作が促進され、放電をより効率的/効果的に実行することが可能になる。一実施形態では、シフト電圧V
MVは、V
DD、双方向回路120に供給されるソース電圧に等しくなり得、つまりV
MV=V
DDとなり得る。しかしながら、シフト電圧V
MVは、他の適切な値を有してもよく、そのV
DDに限定されない。
【0030】
換言すれば、電圧シフト回路204又はスイッチSW3は、第2の制御信号によって制御され得、第2の制御信号は、入力信号IN又はフィードバック信号FBに従って生成される。電圧シフト回路204又はスイッチSW3は、入力信号IN又はフィードバック信号FBの大きさが特定の閾値より小さい場合に、シフト電圧VMVをノードNDに選択的に印加することができる。
【0031】
図2と共に
図1を参照すると、PWMコントローラ110は、圧電スピーカPZT等の容量性負荷CLからフィードバック信号FBを受信する。フィードバック信号FBは、圧電スピーカPZTに印加される駆動電圧V
PZTを適切に反映/表す必要があり、それによって、PWMコントローラ110は、フィードバック信号FB及び入力信号INの関係に基づいて、圧電スピーカPZTに対して充電又は放電を実行するかどうかを決定できる。一実施形態では、フィードバック信号FBは、次のように表すことができる。
FB=ADC{VoP-VoN}
【0032】
換言すれば、PWMコントローラ110は、
図2に示されるADCによって示されるように、差動電圧VoP-VoNが、アナログ-デジタルコンバータを介してデジタル形式に変換された後に、フィードバック信号FBを受信することができる。
【0033】
上述したように、PWMコントローラ110は、双方向回路120を制御するためにPWM信号SP1~SP4を出力することができ、PWM信号SP1~SP4のパルス幅は、入力信号IN及びフィードバック信号FBに基づいて決定される。一実施形態では、PWMコントローラ110は、PWM信号SP1~SP4を生成するために使用されるパルス幅制御コード(PWCC)を検索(retrieve:取得)及び/又は更新することができる。PWCCは、入力信号INとフィードバック信号FBとの間の関係に従って事前に計算又は調整/再計算又は調整してもよく、これらの更新したPWCCは、将来の参照のためにメモリ内のPWCCルックアップテーブルに格納してもよい。
【0034】
具体的には、入力信号INとフィードバック信号FBとの間の関係に基づいて、CPZTに充電又はCPZTから放電される電荷の量と、双方向回路120がPWMパルス幅を制御するために必要な対応する制御コード、すなわちPWCCとが、そのような充電/放電動作を実行するために調整又は再計算され得、PWCCルックアップテーブル内の対応するエントリがそれに応じて更新され得る。後続の動作サイクル中に、PWMコントローラ110は、受信した入力信号IN及びフィードバック信号FBに従ってPWCCルックアップテーブルからこのように調整又は再計算したPWCCをフェッチし、この取得したPWCCを使用してPWM信号SP1~SP4のパルス幅を制御することができる。
【0035】
図3は、PWMコントローラ110の一実施形態の概略図である。PWMコントローラ110は、制御回路302、メモリ304、デジタル-アナログコンバータ(DAC)306、のこぎり波(sawtooth)信号発生器(又は波形発生器)308、及び比較器310を含む。この実施形態では、PWCCは、メモリ304内に1つ又は複数のルックアップテーブル(LUT)として格納される。例えば、メモリ304は、充電テーブル/LUT304_1及び放電テーブル/LUT304_2を含み得る。充電LUT304_1は、充電動作のためのPWM信号SP1~SP4を生成するために使用されるPWCCを格納するように構成される。放電LUT304_2は、放電動作のためのPWM信号SP1~SP4を生成するために使用されるPWCCを格納するように構成される。
【0036】
制御回路302は、入力信号IN及びフィードバック信号FBに従って、双方向回路120が充電動作又は放電動作のいずれで動作すべきかを決定する。例えば、Δ=IN-FBとすると、Δ>Δminの場合に、充電動作が開始されてVPZTが増加し、Δ<-Δminの場合に、放電動作が開始されて、VPZTが減少し、ここで、Δminは閾値であり、典型的に小さな正の値であり、パフォーマンス要件に従ってシステム設計者によって決定される。これにより、制御回路302は、IN、FBを使用して、LUT304_1又はLUT304_2からPWCCを検索(取得)するかどうかを決定することができる。さらに、充放電動作のサイクルの最後に得られるVPZTを目標値に対して調べることによって、例えば、|Δ|>Δminであるかどうかをチェックすることによって、制御回路302は、本発明で述べるテーブル学習プロセスによって、LUTに格納したPWCCを更新する追加のステップを実行することができる。
【0037】
図1のPWMコントローラ110は、
図3のメモリ304に格納した適切なLUTからPWCCを検索(取得)することによって、PWM信号SP1~SP4の生成を制御し、
図3は、PWCCに対応するPWM信号がコントローラ320によってどのように生成されるかの詳細を示す。メモリ304に格納されるPWCCは、デジタルコードの形式である。各パルスのパルス幅(時間)に加えて、PWCCのこのデジタルコードには、生成するPWMパルスの数等のデータが含まれ得る。一般に、PWCCは、PWMパルスの生成及び使用に関する任意の情報を参照でき、本発明で開示する実施形態によって限定されない。これらのPWCCを使用して、DAC306への異なる入力(デジタル)値を生成して異なる出力(アナログ)電圧レベルV
Aを生成し、SP1~SP4のパルス幅を制御する。電圧レベルV
Aを、のこぎり波信号発生器308によって生成されたのこぎり波信号S
saw(又は平坦な先端を有するのこぎり波状の信号)と比較することによって、比較器310は、パルス幅(時間)がV
Aの電圧レベルによって決定されるパルスを生成する。すなわち、SP1~SP4等の生成したPWM信号のパルス幅は、対応するPWCCから導出した入力値に従って生成されたDAC306の出力電圧レベルV
Aによって決定される。
【0038】
一実施形態では、DAC306変換は、そのデジタル入力値とそのアナログ出力電圧レベルVAとの間に単調な関係を有することができ、これは、PWM信号のパルス幅(時間)と、PWCCデジタルコードに含まれるデジタルパルス幅情報との関係が単調であることを意味する。一実施形態では、より長い/より広い(時間的に)パルス幅を有するパルスを生成するために、より大きなPWCCデジタルコードが使用され、より短い(時間的に)パルス幅を有するパルスを生成するために、より小さい/より狭いPWCCデジタルコードが使用される。つまり、PWCCが大きいほど、パルス幅が長く/広くなる。この実施形態では、入力信号INとフィードバック信号FBとの間の差が大きいほど(すなわち、|Δ|が大きいほど)、充電/放電動作中にCPZTに追加又はこれから除去する必要がある電荷の量が多くなり、PWM信号のパルス幅を長く/広くし、PWCCを大きくする必要がある。逆に、入力信号INとフィードバック信号FBとの間の差が小さいほど(つまり、|Δ|が小さいほど)、充電/放電動作中にCPZTに追加又はこれから除去する必要がある電荷の量は少なくなり、PWM信号のパルス幅を短く/狭くし、PWCCを小さくする必要がある。
【0039】
別の実施形態では、PWCCの値は、生成されるPWMパルスの長さ/幅に反比例する場合がある。つまり、大きいPWCCを使用して短い/狭いパルスを生成し、小さいPWCCを使用して長い/広いパルスを生成する。このような状況では、入力信号INとフィードバック信号FBとの間の差が大きいほど、PWCCは小さくなる。逆に、入力信号INとフィードバック信号FBとの間の差が小さいほど、PWCCは大きくなる。この動作も、パルス幅及びPWCC値の関係が単調であれば実行可能である。
【0040】
DAC306及び関連するPWMコントローラ110の詳細な実施態様及び動作は、米国出願第17/380,027号に開示されるので、簡潔にするためにここでは省略する。
【0041】
PWCCの計算は複雑になる可能性があり、こうして、PWMコントローラ110によってリアルタイムで実行するには費用がかかる可能性があることに留意されたい。例えば、V
PZTの変化を生じさせるためには、適切な量の電荷が、
図2に等価静電容量C
PZT及びその端子V
TOP及びV
BOTとして示される、圧電アクチュエータの2つの端子を介して追加され、又はこれから除去する必要がある。ただし、印加電圧V
PZTが変化すると静電容量C
PZTの値が変化する。従って、
図2に示される印加電圧V
PZTの連続スイングに亘って、静電容量C
PZTも連続的に変化し、それによって、1mVの増加/減少等、V
PZTの一定の単位変化を生成するようにC
PZTに追加/これから除去される電荷の量が、V
PZT自体の電圧レベルに依存する。別の例は、
図1及び
図2にV
DDとして示されるバッテリ電圧であり、V
DDは、充電動作中のInFlux PWMパルス幅と、放電動作中のDeFlux PWMパルス幅に影響を与える。V
DDがバッテリから供給される場合に、そのV
DDは動作に伴って徐々に低下し、このV
DDの変化により、上記の2種類のPWMのパルス幅も動作に伴ってドリフトする。
【0042】
上述のいずれの状況においても、LUTを使用して、充電/放電動作の現在のサイクルから得られた結果によってPWCC内に含まれる情報を適応的に更新することが望ましく、双方向回路120の将来の動作サイクルは、アンプ10の動的に変化する動作条件の最新の状態に基づくことができる。LUTに格納したPWCCのそのような適応更新は、バッテリ供給電圧の変化等の変動に対処するだけでなく、部品毎の公差等の理由(例えば、インダクタの公差が典型的に±10%であり、動作温度又は湿度等によるパラメータのドリフトがある)による不正確に計算した工場出荷時のデフォルトPWCCにも対処する。
【0043】
上記の目的を達成するために、すなわち、LUT内のPWCCを適応的に更新することによって、VPZTの精度を改善するか、又は|Δ|を最小化するために、本発明はテーブル学習の方法を提供し、この方法では、PWMコントローラ110が、フィードバック信号FBを監視して、容量性負荷CL(例えば、圧電スピーカPZTのCPZT)に印加される電圧がその意図した値に到達するかどうかを決定することができ、それによりPWCCを調整/更新し、更新したPWCC値をメモリ304に格納するかどうかを決定することができる。
【0044】
図4は、本発明の一実施形態によるプロセス40のフローチャートである。プロセス40は、双方向回路を制御して容量性負荷を駆動するためのPWMコントローラで実施することができ、PWMコントローラが、双方向回路を制御して容量性負荷に対して充電又は放電動作を実行することを目的としており、それによって、(フィードバック信号FBで表すことができる)容量性負荷C
PZTの2つの端子の間の電圧が、入力信号INに近づく。
図4に示されるように、プロセス40は以下のステップを含む。
【0045】
ステップ402:負荷から第1のフィードバック信号FB1を受信し、入力信号INを受信する。
【0046】
ステップ404:第1のフィードバック信号FB1及び入力信号INに従ってPWCCを取得する。
【0047】
ステップ406:PWCCに従って、複数のPWM信号SP1~SP4を生成する。
【0048】
ステップ408:複数のPWM信号SP1~SP4を双方向回路120に出力する。
【0049】
ステップ410:複数のPWM信号SP1~SP4が出力された後に、負荷から第2のフィードバック信号FB2を受信する。
【0050】
ステップ412:第1のフィードバック信号FB1及び第2のフィードバック信号FB2に従って、PWCCを調整するかどうかを決定する。
【0051】
ステップ402において、PWMコントローラ110は、以前の動作サイクル(第1のサイクルとも呼ばれる)の終了時に容量性負荷の負荷電圧を反映するフィードバック信号FB1を受信し、現在の動作サイクルに対応する入力信号INを受信する。
【0052】
以前の動作サイクルに対応するフィードバック信号FB1及び現在の動作サイクルに対応する入力信号INに従って、PWMコントローラ110は、入力信号INとフィードバック信号FB1との間の差に従って、現在の動作サイクル(第2のサイクルとも呼ばれる)中に充電又は放電動作を実行するかどうかを決定することができ、充電テーブル304_1又は放電テーブル304_2のいずれかからメモリ読み出し動作を実行することをさらに決定する。
【0053】
PWMコントローラ110が充電又は放電動作を実行することを決定する詳細は限定されない。一実施形態では、PWMコントローラは、入力信号INがフィードバック信号FB1より大きい場合(例えば、IN-FB1>ε1、ε1>0)に、双方向回路120が充電動作を実行するように決定し、入力信号INがフィードバック信号FB1より小さい場合(例えば、IN-FB1<-ε2、ε2>0)に、双方向回路120が放電動作を実行するように決定することができる。ε1及びε2は同じでも異なっていてもよい。充電動作及び放電動作を実行することを決定することに加えて、一実施形態では、-ε2<IN-FB1<ε1の場合に、PWMコントローラは、現在の動作サイクル中に、充電も放電も実行しないと決定することができ、つまり、-ε2<IN-FB1<ε1の場合に、サイクルのモードは「アイドル」になり得る。
【0054】
続いて、ステップ404において、PWMコントローラ110は、フィードバック信号FB1及び入力信号INに従ってPWCCを取得することができる。PWMコントローラは、どちらの動作を実行するかに基づいて、メモリ304に格納した充電テーブル304_1又は放電テーブル304_2のいずれかからPWCCをフェッチする。
【0055】
本発明のLUT、すなわち充電テーブル304_1又は放電テーブル304_2は、2次元(2D)アレイの形態であってもよく、又は2次元(2D)アレイを含んでもよい。
図5は、本発明の一実施形態による例示的なLUTの一部を示す。簡潔にするために、LUTの最初の7列及び29~36行のみが
図5に示される。
【0056】
特定の列に格納したPWCCは、双方向回路120を制御するPWM信号を生成して、異なる動作点の下で容量性負荷CLに対して特定の意図した電圧変化を生成するためのものである。
図5に示されるLUTが充電テーブルを表すと想定すると、n番目の列に格納したPWCCは、PWM信号を生成して充電動作を実行し、容量性負荷に対してn×ΔV
Uの増分(インクリメント)を達成するように構成され、ここでΔV
Uは、0.73mV等の電圧変化の単位であり得る。つまり、1列目のPWCCは、充電動作を実行し且つ負荷CLに対して1×ΔV
Uの増分を達成するためのPWM信号を生成するためのものであり、2列目のPWCCは、負荷CLに対して2×ΔV
Uの増分を達成するためのPWM信号を生成するためのものであり、以下同様である。同様に、
図5に示されるLUTが放電テーブルを表すと想定すると、n列目に格納したPWCCは、放電動作を実行し且つ負荷CLのn×ΔV
Uの減分(デクリメント)を達成するためのPWM信号を生成するように構成される。ΔV
Uの決定については、後で詳しく説明する。
【0057】
同じ列に格納したPWCCは、様々な動作点に対処するために、様々なPWMパルス幅のコレクションとして表示することができる。動作点は、InFlux動作中(電気エネルギーをインダクタL1の磁気エネルギーに変換するため)、及びDeFlux動作中(インダクタL1の磁気エネルギーを電気エネルギーに再び変換するため)に、L1の両端に印加される電圧、特定のVPZT電圧レベルでのCPZTの値、現在のサイクルの動作中のVDD、VTOG、VMVの電圧レベル等の要因によって規定され得る。それは、双方向回路120の動作を制御して、負荷CLの両端に一貫して同じ意図した電圧変化を生成するために、PWM信号S1~S4のパルス幅を動作点毎に最適化する必要があるような要因/変動によるものである。
【0058】
要するに、LUTは、
図5に示されるように、2Dアレイの形態であり得る。LUTの1つの次元(例えば、LUTの列)には、異なる動作点の下で負荷CLの両端に一貫した電圧変化を達成するために、異なる動作点の様々な要因に応じて変化するようなPWCCが含まれる。LUTの他の次元(例えば、LUTの1つの特定の行)には、1つの特定の動作点の下で、負荷CLの両端に異なる大きさの電圧変化を生成するようなPWCCが含まれており、ここで、電圧変化の大きさは、n×ΔV
U等の整数倍の単位サイズとなり得る。
【0059】
静電容量CPZTが印加電圧VPZTに対して変化するため、印加電圧VPZTはフィードバック信号によって表されるか、又は入力信号によって近似することができるため、LUTの1つの列(特許請求の範囲に記載の2Dアレイの第1の次元に沿った第1のサブアレイとして理解される)に格納したPWCCは、異なるレベルの負荷電圧VPZTに対応するか、又は異なるレベルの入力信号INに対応する。同様に、LUTの1つの行(特許請求の範囲に記載の2Dアレイの第2の次元に沿った第2のサブアレイとして理解される)に格納したPWCCは、特定のレベルの入力信号IN又は特定のレベルの負荷電圧又はフィードバック信号FBに対応する。
【0060】
この実施形態に関して、LUTの各エントリは、インデックスn1及びn2を有する2Dアドレス(n1、n2)を参照することによってフェッチされ得る。インデックスn1は、入力信号IN(又はフィードバック信号FB/FB1)の現在のレベルを示すことができる。インデックスn2は、現在/次の動作サイクルで到達すると予想される電圧変化を示すことができ、この電圧変化は、入力信号INとフィードバック信号FBとの差分値に対応する。
【0061】
予想する/意図した電圧変化/差は、ΔVの整数倍として量子化でき、つまり、ΔVは、充電又は放電動作のステップサイズと見なすことができることを意味する(ここで、ΔV及びΔV
Uは、本願では交換可能に使用される)。すなわち、一実施形態では、充電又は放電動作によって生じる容量性負荷での意図した電圧差は、ステップサイズΔVの整数倍である。ΔVの値は、任意の適切な方法で決定することができる。一実施形態では、負荷電圧V
PZTをNビットデジタル信号に表すシナリオの下で、ΔVは次のように計算され得る。
【数1】
【0062】
ここで、V
ppは、容量性負荷のピーク間電圧又は負荷電圧の電圧範囲を表す。例示的な実施形態では、ピーク間電圧V
ppが30Vに等しく、V
PZTが8ビットシステムとして表される場合に、デルタ電圧ΔVは、以下に等しくなり得る。
【数2】
【0063】
一実施形態において、インデックスn2は、最初に、入力信号INとフィードバック信号FB1との間の差を計算し、その後、以前に計算した差に従って、有益な整数をインデックスn2として取得/抽出することによって取得され得る。
【0064】
一実施形態では、入力信号INとフィードバック信号FB1との差分(値)は、数学的に次のように表すことができる。
Diff
k=abs(IN
k)-abs(FB
k-1) (式2)
ここで、Diff
kは動作サイクルkに対応する差分値であり、abs( )は絶対値又はその大きさを出力する絶対値取得演算であり、インデックスk及びk-1は、現在の動作サイクル及び以前の動作サイクルをそれぞれ参照する時間的なサイクルインデックスである。ここで、FB
k-1は、上述の以前の動作サイクルに対応するFB1を表す。式2において、絶対値演算の存在は、容量性負荷CL/C
PZTにどれだけの電荷が蓄えられたか(負荷電圧V
PZTの極性に関係なく)を適切に評価するためのものであり、それによって、充電又は放電動作を実行するかどうかの決定を適切に行うことができる。式1の絶対値演算はIN
k及びFB
k-1の極性によってもたらされる影響を見ることができ、ここで、IN
k及びFB
k-1の極性の影響は、
図2に示されるSingle-Ended-to-Differentialコンバータ200のトグルスイッチSW1及びSW2を介して追加される。一実施形態では、入力信号IN/IN
kとフィードバック信号FB1/FB
k-1との両方がデジタルであるため、差分Diff/Diff
kもデジタルである。
【0065】
差分値Diff
kを計算した後に、一実施形態では、インデックスn2をさらに計算することができ、これは次のように数学的に表わすことができる。
【数3】
【0066】
図3aにおいて、B_diffは、差分値DiffがB_diff-bitのデジタル信号であると仮定して、差分値Diff/Diff
kのビット数を指す。さらに、ΔV又はSTP
2として示される、LUTの第2の次元の中のステップサイズは、ΔV=V
pp/2
B2=STP
2として表すことができ、ここで、B2は、LUTによって提供される充電/放電分解能に関連している。換言すれば、インデックスn2は、差分値Diff/Diff
kの大きさ(つまり、絶対値)の最上位B2ビットを取得することによって得られる。例示的な実施形態では、差分値Diff/Diff
kは24ビット信号(B_diff=24)であり、LUTは、ΔVをΔV=STP
2=V
pp/2
12として採用することにより、12ビット分解能(B2=12)を達成することができる。こうして、インデックスn2は、abs(Diff)の最上位12ビット(12=B_diff-B2)を取得することによって計算できる。ここで、表記ΔV及びSTP
2は交換可能に使用され、表記N及びB2も交換可能に使用される。
【0067】
別の実施形態では、インデックスn2の別の式は、次のように表すことができる。
【数4】
ここで、round関数は数値を最も近い整数に丸める。
【0068】
例示的に、
図5は、インデックスn1及びn2のいくつかの値に対応するPWCCを記録するLUTの抜粋を示し、ここで、インデックスn1は行インデックスであり、インデックスn2は列インデックスである。入力信号INとフィードバック信号FBとの差分値に従って、PWMコントローラ110は、インデックスn2を決定し、選択した列からPWCCを取得するために、この動作サイクルにおいて達成すべきデルタ電圧ΔVの数、例えば、1×ΔV、2×ΔV・・・7×ΔVを決定することができる。
【0069】
なお、差分Diff/Diffkに応じてインデックスn2として有益な整数を取得/抽出する詳細な演算操作は限定されないことに留意されたい。n2とDiffkとの間の関係が式3a及び式3bで表せる限り、本発明の要件が満たされ、それは本発明の範囲内にあるものとする。
【0070】
一方、インデックスn1は、入力信号IN又はフィードバック信号FBの現在のレベルを示すことができる。こうして、受信した入力信号IN又はフィードバック信号FBに従って、PWMコントローラ110は、インデックスn1を決定し、選択した行からPWCCをフェッチすることができる。上述したように、フィードバック信号FBは、圧電スピーカPZTの電圧VPZTに相当する、Single-Ended-to-Differentialコンバータ200の差動電圧VoP-VoNから生成してもよい。好ましい実施形態では、入力信号INは、エネルギー再利用システムの安定性を向上させることができるインデックスn1を決定するために適用される。フィードバック信号FBは、最終的に入力信号INに近づくことができることに留意されたい。こうして、入力信号INを適用してインデックスn1を決定することも、同等の結果を達成することができる。
【0071】
一実施形態では、インデックスn1は、次のように表すことができる。
【数5】
ここで、フロア(floor)関数は数値の整数部分を取り、B_inは、入力信号INのビット数を指し(つまり、入力信号INはB_in-bitデジタル信号である)、B1は、入力信号INを表すために使用されるレベルの数に関連している。一実施形態において、LUTは2
B1行を含むことができ、入力信号INの全範囲はステップ値で分割されて2
B1レベルを有することができる。従って、インデックスn1は、入力信号INの最上位B1ビットを取得/抽出することによって得られる。例示的な実施形態では、入力信号INは24ビット信号であり、インデックスn1は、入力信号INの64レベルを規定する6ビット値である。こうして、インデックスn1は、入力信号INの最上位6ビットを取得することによって得ることができる。その結果、インデックスn1は、フィードバック信号FBが入力信号INに近づくにつれてフィードバック信号FBのレベルを決定するように、入力信号INのレベルを反映することができる。
【0072】
値2
(B1-1)+1は、オプションでインデックスn1の計算に含まれることに留意されたい。入力信号INが常に正であるバイアスがすでにかけられている実施形態では、値2
(B1-1)+1は必要なく、インデックスn1は次のように表すことができる。
【数6】
【0073】
インデックスn1の別の式は、次のように表すことができる。
【数7】
ここで、インデックスn1の電圧ステップサイズであるSTP
1は、V
pp/2
B1に等しくなる。いくつかの実施形態では、上記の式で使用されるフロア関数は、ラウンド関数に置き換えてもよいが、これに限定されない。
【0074】
同様に、入力信号INに従ってインデックスn1として有益な整数を取得/抽出する詳細な演算操作は限定されない。n1とINとの間の関係が式4a,式4bのいずれかで表せる限り、本発明の要件は満たされ、それは本発明の範囲内にあるものとする。
【0075】
フィードバック信号FB1及び入力信号INに従って得られるインデックスn1及びn2に基づいて、PWMコントローラは、それに応じてPWCCをフェッチすることができる。
【0076】
ステップ406及びステップ408において、PWMコントローラは、フェッチしたPWCCに従ってPWM信号SP1~SP4を生成し、生成したPWM信号SP1~SP4を双方向回路120に出力する。
【0077】
次に、双方向回路120は、ステップ408で生成したPWM信号SP1~SP4に従って、充電動作又は放電動作を実行することになる。
【0078】
ステップ410において、PWM信号SP1~SP4による充電動作又は放電動作が完了した後に(又は現在の動作サイクルの終わりに)、PWMコントローラ110は、フィードバック信号FB2をさらに受信することができ、これは、現在の動作サイクルに対応している。
【0079】
一実施形態では、フィードバック信号FB1/FBk-1は、以前の動作サイクル(例えば、動作サイクルk-1)の終わりにおける負荷電圧VPZT(VBIASに関係なく)を表すことができる。現在の動作サイクルの間に、双方向回路は、フィードバック信号FB1に従って得られるPWCCに基づいて充電又は放電動作を実行し、負荷電圧VPZTに対する電圧変化を生成する。現在の動作サイクル(例えば、動作サイクルk)の終わりに、負荷電圧VPZTは、フィードバック信号FB2/FBkとして(VBIASに関係なく)観察され得る。
【0080】
ステップ402~410の詳細について、米国特許第11,271,480号をさらに参照することができ、簡潔にするためにここでは説明しない。
【0081】
ステップ412において、PWMコントローラ110は、フィードバック信号FB1及びFB2に従ってPWCCを調整するかどうか、又はどのように調整するかを決定することができる。フィードバック信号FB2を受信した後に、コントローラ110は、実際の電圧差をさらに決定することができる。実際の電圧差が意図した電圧差と等しくないか、又は大幅にずれている場合には、フィードバック信号FB1及びFB2に従ってPWCCを調整する必要がある場合がある。PWCCが更新されると、更新したPWCCは、ステップ404で元のPWCCをフェッチしたメモリ内のLUTのアドレス(n1、n2)に書き戻される(すなわち、保存される)。
【0082】
図6は、本発明の一実施形態によるテーブル学習プロセス60のフローチャートである。テーブル学習プロセス60は、110等のPWMコントローラで実施することができ、ステップ412の詳細と見なすことができる。
図6に示されるように、テーブル学習プロセス60は、以下のステップを含む。
【0083】
ステップ600:意図した電圧差dVintendを取得する。
【0084】
ステップ602:実際の電圧差dVactualを計算する。
【0085】
ステップ604:意図した電圧差dVintendと実際の電圧差dVactualとの間のミスマッチ(mismatch:不一致)MMを計算する。
【0086】
ステップ606:ミスマッチMMに従ってPWCCを調整するかどうか、又はどのように調整するかを決定する。
【0087】
ステップ608:PWCCを増加させる。
【0088】
ステップ610:PWCCを減少させる。
【0089】
ステップ600において、PWMコントローラ110は、インデックスn2を取得することにより、意図した電圧差dVintendを取得することができる。意図した電圧差dVintendは、現在の動作サイクル中にPWCCを使用した充電又は放電動作によって生成されると予想される負荷電圧VPZTに対する意図した電圧変化である。
【0090】
一実施形態において、意図した電圧差dVintendは、充電動作を実行するときに、n2×ΔVとして得られ、放電動作を実行するときに、(-1)×n2×ΔVとして得られ得る。意図した電圧差dVintendは、ステップ404で取得したPWCCに従って、現在の動作サイクル中に充電又は放電動作を介して達成されることが予想される目標電圧変化と見なすことができる。
【0091】
現在の動作サイクルのフィードバック信号FB2を受信した後に、ステップ602において、PWMコントローラ110は、現在の動作サイクルのフィードバック信号FB2と以前の動作のフィードバック信号FB1との間の差として実際の電圧差dVactual、例えばdVactual=FB2-FB1を計算することができる。実際の電圧差dVactualは、現在の動作サイクル中にPWCCを使用した充電又は放電動作によって実際に生成される負荷電圧VPZTに対する実際の電圧変化を反映する。
【0092】
意図した電圧差dVintendと実際の電圧差dVactualを比較することによって、PWCCが正確であるかどうか、又はPWCCがどれ位正確かを決定することができる。ステップ604において、PWMコントローラ110は、意図した電圧差dVintendと実際の電圧差dVactualとの間のミスマッチMMを計算することができる。一実施形態では、PWMコントローラは、ミスマッチMMを次のように計算することができる。
MM=dVactual-dVintend
ここで、本実施形態では、ミスマッチMMは、実際の電圧差dVactualから意図した電圧差dVintendを差し引いたものに等しい。
【0093】
ステップ606において、PWMコントローラ110は、それにより、ミスマッチMMに従ってPWCCを調整するかどうか、又はPWCCをどのように調整するかを決定する。ミスマッチMMが、双方向回路によって実行される充電又は放電動作が不十分であることを示す場合に、PWMコントローラは、PWCCを増加させ(ステップ608)、増加したPWCCをメモリ304に格納し直すことができる。これに対して、ミスマッチMMが、双方向回路によって実行される充電又は放電動作が過剰であることを示す場合に、PWMコントローラ110は、PWCCを減少させ(ステップ610)、減少したPWCCをメモリ304に格納し直すことができる。それ以外の場合に、ミスマッチMMが、双方向回路によって実行される充電又は放電動作が不十分でも過剰でもないことを示す場合に、PWMコントローラは、PWCCを調整/更新しないと決定することができる。
【0094】
ステップ606におけるミスマッチMMに従って充電又は放電動作が不十分であるか又は過剰であるかを決定する詳細は限定されない。例えば、dVintend>0且つdVactual>0を意味する充電動作が実行されると仮定すると、PWMコントローラ110は、MM<0又はMM<-TH2(TH2>0の場合)の場合に、充電動作が不十分であると決定することができ、MM>0又はMM>TH1(TH1>0の場合)の場合に、充電動作が過剰であると決定することができる。ここで、dVintend及びdVactualは、それぞれ、充電動作/環境の下での意図した電圧増分及び実際の電圧増分として解釈され得る(電圧増分は、電圧の増分量を表す)。
【0095】
一方、dVintend<0且つdVactual<0を意味する放電動作が実行されると仮定すると、PWMコントローラ110は、MM>0又はMM>TH3(TH3>0の場合)の場合に、放電動作が不十分であると決定することができ、MM<0又はMM<-TH4(TH4>0の場合)の場合に、充電動作が過剰であると決定する。放電を行うと、dVintend/dVactualはそれ自体が負になるため、放電動作の下での電圧減分(電圧減分は電圧の減分量/低下量を表す)は、(-1)×dVintend及び(-1)×dVactualで表すことができる。こうして、(-1)×dVintend及び(-1)×dVactualは、それぞれ、放電動作/環境下での意図した電圧減分及び実際の電圧減分と解釈することができる。
【0096】
なお、充電(放電)動作が不十分か又は過剰かを決定するための閾値、例えばTH1~TH4は、実際の状況に応じて選択することができ、特定の値に限定されない。
【0097】
上記の駆動動作に伴うテーブル学習動作は、フィードバック制御機構と見なすことができ、
図7に示されるように、詳細なテーブル学習プロセス70としてさらに詳しく説明することができる(
図7の下付き文字kは動作サイクルインデックスを表す)。詳細なテーブル学習プロセス70には、次のステップが含まれる。
【0098】
ステップ700:入力信号INk及びフィードバック信号FBk-1を受信する。
【0099】
ステップ702:LUTのインデックスn1及びn2を求める。
【0100】
ステップ704:入力信号INk及びフィードバック信号FBk-1の差分値Diffkを計算する。差分値Diffが0より大きい場合に、次にステップ710に進む。差分値Diffが0より小さい場合に、次にステップ720に進む。
【0101】
ステップ710:アドレス(n1,n2)に従って充電テーブル304_1からPWCCをフェッチする。
【0102】
ステップ711:PWCCに従ってPWM信号を取得する。
【0103】
ステップ712:充電動作を実行し、フィードバック信号FBkを受信する。
【0104】
ステップ713:実際の電圧差dVactual及び意図した電圧差dVintendを取得する。
【0105】
ステップ714:実際の電圧差dVactualと意図した電圧差dVintendとの間のミスマッチMMを計算する。
【0106】
ステップ715:ミスマッチMMを閾値TH1及び-TH2と比較する。ミスマッチMMが閾値-TH2より小さい場合に、次にステップ716に進む。ミスマッチMMが閾値TH1より大きい場合に、次にステップ717に進む。
【0107】
ステップ716:PWCCを1だけ増やす。
【0108】
ステップ717:PWCCを1だけ減らす。
【0109】
ステップ720:アドレス(n1,n2)に従って、放電テーブル304_2からPWCCをフェッチする。
【0110】
ステップ721:PWCCに従ってPWM信号を取得する。
【0111】
ステップ722:放電動作を実行し、フィードバック信号FBkを受信する。
【0112】
ステップ723:実際の電圧差dVactual及び意図した電圧差dVintendを取得する。
【0113】
ステップ724:実際の電圧差dVactualと意図した電圧差dVintendとの間のミスマッチMMを計算する。
【0114】
ステップ725:ミスマッチMMを閾値TH3及び-TH4と比較する。ミスマッチMMが閾値TH3より大きい場合に、次にステップ726に進む。ミスマッチMMが閾値-TH4より小さい場合に、次にステップ727に進む。
【0115】
ステップ726:PWCCを1だけ増やす。
【0116】
ステップ727:PWCCを1だけ減らす。
【0117】
ステップ750:次の動作サイクルに入り、ステップ700に戻る。
【0118】
詳細テーブル学習プロセス70によれば、PWMコントローラ110は、差分値Diffが正の値であるか又は負の値であるかに応じて充電を行うか又は放電を行うかを決定し、それに応じて充電テーブル304_1又は放電テーブル304_2内にPWCCをフェッチすることができる。テーブル学習動作において、PWCCは、充電又は放電動作下での閾値との比較に従って増加又は減少され得る。例えば、充電段階では、実際の電圧差dVactual及び意図した電圧差dVintendは正の値であり得る。こうして、ミスマッチMMが大きいほど充電が過剰であることを示し、ミスマッチMMが小さいほど充電が不十分であることを示す。ミスマッチMMは、閾値TH1及び-TH2と比較される。従って、ミスマッチMMが、負の値又は0であり得る閾値-TH2より小さい場合に、充電が不十分であると決定され、PWCCを1だけ増やす必要がある。ミスマッチMMが、正の値又は0であり得る閾値TH1よりも大きい場合に、充電が過剰であると決定され、PWCCを1だけ減少させる必要がある。TH1及びTH2の値は、同じであっても異なっていてもよい。
【0119】
一方、放電段階では、実際の電圧差dVactual及び意図した電圧差dVintendは、負の値であり得る。こうして、ミスマッチMMが大きいほど放電が不十分であることを示し、ミスマッチMMが小さいほど放電が過剰であることを示す。ミスマッチMMは、閾値TH3及び-TH4と比較される。従って、ミスマッチMMが、正の値又は0であり得る閾値TH3より大きい場合に、放電が不十分であると決定され、PWCCを1だけ増やす必要がある。ミスマッチMMが、負の値又は0であり得る閾値-TH4より小さい場合に、放電が過剰であると決定され、PWCCを1だけ減らす必要がある。TH3及びTH4の値は、同じであっても異なっていてもよい。
【0120】
換言すれば、ステップ716は、実際の電圧増分が意図した電圧増分より小さい場合にPWCCが増やされることを表す。ステップ717は、実際の電圧増分が意図した電圧増分よりも大きい場合にPWCCが減らされることを表す。ステップ726は、実際の電圧減分が意図した電圧減分よりも小さい場合にPWCCが増やされることを表す。ステップ727は、実際の電圧減分が意図した電圧減分よりも大きい場合にPWCCが減らされることを表す。
【0121】
また、本実施形態では、PWCCは、動作サイクル毎に1だけ増加又は減少するが、これに限定されるものではない。別の実施形態では、PWCCは、ミスマッチMMの値に基づいて決定されるレベル等によって、任意の適切な方法で調整(増加又は減少)され得る。例えば、ミスマッチMMが対応する閾値よりも遥かに大きいか、又は遥かに小さい場合に、PWCCは1を超えて調整され得る。PWCCがメモリからフェッチされ、更新され、メモリに書き戻される限り、本発明の要件は満たされ、それは本発明の範囲内にあるものとする。
【0122】
また、詳細テーブル学習プロセス70に示したPWCC更新動作は、動作サイクル毎に行ってもよい。当業者は、本発明がそれに限定されないことを理解すべきである。例えば、一実施形態では、テーブル学習動作は、例えば、3又は5動作サイクル毎に1回実行される等、任意の一定又は可変頻度で実行してもよい。別の実施形態では、テーブル学習機能は、特定の期間に有効化され、その後無効化され得、有効化時間が事前に決定され得る。
【0123】
詳細テーブル学習プロセス70のいくつかのステップは交換可能であることにも留意されたい。例えば、ステップ702でインデックスn1及びn2を求める動作と、ステップ704で差分値Diffを計算する動作とを入れ替えてもよい。すなわち、差分値Diffは、LUTのインデックスn1及びn2を求める前に計算してもよく、又はこれらの2つのステップを同時に実行してもよい。これは、詳細テーブル学習プロセス70によって達成される効果に影響を与えない。
【0124】
別の観点では、
図5のように2Dアレイとして配置されたPWCCは、機能例を示す。当業者は、それに応じて修正及び変更を行うことができる。例えば、元々2Dアレイとして配置されたPWCCは、長い1次元アレイとして積み重ねられ(又は並べ替えさえされ)、メモリ内のLUTに格納され得、これも本発明の範囲内にあるものとする。
【0125】
図8は、テーブル学習動作前後の双方向回路120によって生成された出力電圧波形のシミュレーション結果であり、差分電圧VoP、VoNと、それらの減算VoP-VoNを示している。
図8に示されるシミュレーションでは、入力信号INは正弦波形のシングルトーン信号である。
図8の左側に示されるように、テーブル学習動作を実行する前に(又はテーブル学習なしで)、波形は、非常に歪んで粗くて不規則であり、それによって音響信号はかなりの歪みを含む可能性がある。これに対し、テーブル学習動作を行った後に、
図8の右側に示されるように、波形は滑らかな正弦波信号になる。これは、テーブル学習動作を適用することによって音質が大幅に改善されることを意味する。
【0126】
さらに、(米国特許第11,271,480号に開示された回路トポロジーを用いた)PWMコントローラ内のDACにはいくつかの欠陥があり、これは実際にはDACの単調性を壊す。テーブル学習動作は、これらの不完全性も解消できる可能性がある。
【0127】
本発明で提供するテーブル学習方法は、適切な方法で実施することができる。上記の実施形態では、テーブル学習動作は、駆動回路10のPWMコントローラ110で実施され、より具体的には、PWMコントローラ110の制御回路302で実施され、制御回路302は集積回路(IC)として実現してもよい。従って、テーブル学習動作は、制御回路302に含まれる特定用途向け集積回路(ASIC)として実装してもよい。そのような状況では、テーブル学習を実現するための計算は、ICの比較器、加算器、及び/又は減算器を用いて実装することができる。代替的又は追加的に、テーブル学習方法は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラユニット等の処理回路で実装されるソフトウェアアルゴリズムを含むことができ、ここでPWMコントローラ110の制御回路302は、処理回路の構成要素と見なすことができる。
【0128】
なお、上記実施形態において、制御回路302は、テーブル学習動作を実行する回路であってもよい。一実施形態では、制御回路302はデジタル回路であってもよく、制御回路302によって処理される入力信号IN及びフィードバック信号FBはデジタル信号である。
【0129】
米国特許出願第18/048,852号及び第18/177,765号は、観測可能又は観測不能の様々な動作条件に対してPWCC、パルス幅制御コードを適応させることができるテーブル学習アルゴリズムを開示した。動作条件は、バッテリ電圧(時間の経過とともに弱くなる可能性がある)、電気部品のパラメータ変動/ドリフト(静電容量、インダクタンス、抵抗等)があり得る。オーディオアンプ内で実現されるテーブル学習アルゴリズムにより、THD(全高調波歪み)が低減され、音質が大幅に向上することが示される。
【0130】
前述したように、メモリ書き込み及びADC読み出しを伴うテーブル学習動作は、動作サイクル毎に実行することができる。本明細書における動作サイクルは、ADCレート/周波数の逆数であるADCサイクルと呼ばれることがあり、ADCサイクル/レート/周波数については、米国特許出願第18/051,015号でさらに詳しく説明されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。以下の説明において、又はテーブル学習頻度を下げるという文脈において、テーブル学習動作は、プロセス70のステップ700からステップ750の前に、少なくとも1つのADC読み出し及び1つのメモリ書き込みを含む、1回の反復を指す場合がある。
【0131】
しかしながら、テーブルが安定した後に、テーブル/PWCCをそれほど頻繁に更新する必要はない。これは、ADC周波数に比べて、バッテリ電圧と回路パラメータのドリフトとがゆっくりと変化するためである。
【0132】
本願において、テーブルが安定/収束しているとは、一定期間テーブルエントリを更新する必要がないことを意味する。例えば、ミスマッチMMが-TH2<MM<TH1の範囲内、又は-TH4<MM<TH3の範囲内にある場合に、テーブルエントリを更新する必要はない。さらに、テーブルが安定しているということは、テーブルエントリが長期間に亘って狭い範囲内に留まるということも意味する。例えば、テーブル学習動作でPWCC=PWCC+1が実行され、次にPWCC=PWCC-1が実行され、次にPWCC=PWCC+1が実行され、次にPWCC=PWCC-1が実行され、以下同様に実行される。この場合、テーブルは安定/収束していると見なすこともできる。
【0133】
この点に関して、テーブル学習頻度を下げることによって消費電力を低減することができ、これは、L ADCサイクル内でL回のテーブル/PWCC更新を実行する代わりに、L ADCサイクルのうちm回のテーブル/PWCC更新のみを実行することを意味し、ここでm<Lである。m回のテーブル/PWCC更新は、実際の要件に応じて、L ADCサイクルに亘って均一又は不均一に分散してもよい。そうすることにより、L ADCサイクル内の少なくとも(L-m)回のメモリ書き込み動作が省かれる。さらに、(DC-DC)動作がADCの結果に依存しないシステムの場合に、(L-m)回のADCがさらに回避される。
【0134】
例えば、learn-1-skip-k方式を採用してもよく、これは、1つの動作サイクルで1つのテーブル学習動作を実行した後に、次の/連続するk動作サイクルではテーブル学習動作がスキップされ得ることを意味する。ここで(以下の説明又はテーブル学習頻度を下げるという文脈での意味)、kは、テーブル学習動作が実行されるテーブル学習動作サイクルの次の/連続し得るスキップされる動作サイクルの数を指す。
【0135】
一実施形態では、スキップされる動作サイクルの数kは、ある一定の値であってもよく、又はある期間に亘って一定であってもよい。例えば、学習期間(例えば、5分)中はk=0、学習期間後はk=Kであり、Kは15、60等の定数であるが、これに限定されない。学習期間は、テーブル学習動作が頻繁に実行される、例えば動作サイクル毎に実行されるか、又はADCレートのレートで実行される時間間隔を指してもよい。学習期間は、テーブルが安定した状態に収束していない時間間隔を指す場合がある。
【0136】
一実施形態では、スキップされる動作サイクルの数kは、好ましくはテーブルが安定した後に、適応的に決定され得る。例えば、テーブルエラーが減少する場合にはkを増やすことができ、及び/又はテーブルエラーが増加する場合にはkを減らすことができる。所定のk、例えば{7、17、35、60}のリストを予め用意しておいてもよい。テーブルエラーが減少又は増加する場合に、リストからより大きい又はより小さいkを選択することができるが、これに限定されない。テーブルエラーとは、テーブル(の一部のエントリ)を更新するかどうかの指標を指す。例えば、テーブルエラーが十分に大きい場合に、テーブル(の一部のエントリ)を更新するものとする。一例として、駆動回路10(双方向回路120又は双方向回路120を構成する駆動回路がX級増幅器と呼ばれ得る)の文脈では、テーブルエラーは、|dVintend-dVactual|又はその統計を指す場合があり、ここで、dVintend/dVactualは、PWCCが意図した/実際に達成した電圧差である。一実施形態では、好ましくはテーブルが安定化した後に、kは(擬似)乱数であってもよい。
【0137】
一実施形態では、kは、テーブル学習イベントの頻度に関連する潜在的なノイズを分解するために、(擬似)乱数、又は(擬似)乱数を含むリスト、例えば{12、19、35、68}から選択される(擬似)乱数であってもよいが、これに限定されない。
【0138】
これは、learn-1-skip-k方式の利用に限定されない。例えば、システムは、学習期間の間に非学習期間又は(テーブル学習)スキップ期間が交錯するシナリオで動作することができる。Llrnとして示される学習期間の長さは、同じであってもよい(又は、同じでなくてもよい)。Lskipとして示される非学習期間又はスキップ期間の長さは、例えばテーブルエラーに従って決定/適応され得る。スキップ期間の長さは、テーブルエラーの減少/増加に応じて増加/減少し得る。
【0139】
6%、50%、75%としてスキッピングデューティのシナリオがシミュレーションされ、スキッピングデューティは(Lskip/(Lskip+Llrn))として表すことができ、ここで、Lskip/Llrnは、スキッピング/学習期間を示す。結果は、6%、50%、75%としてのスキップデューティに対するTHD及びアイドルノイズ性能(のrms)が略同じであることを示す。これは、テーブル学習動作をさらにスキップしても、(THD及びアイドルノイズ)性能に殆ど害がないことを意味する。
【0140】
別の実験/シミュレーションは、2つのケースのVPZT(駆動回路出力)のスペクトルを比較する。第1のケースは、テーブルが安定した後の、広範な学習中(ADCサイクル毎にテーブル学習動作を実行する)である。第2のケースは、テーブルが安定した後に、全く学習が行われていない(つまり、テーブルの更新又はメモリの書き込みがない)状態である。スペクトルを計算するためのVPZTのデータは、テーブルが安定した後に、一定期間、例えば0.3秒(256,000サンプルに相当)で収集され、結果は、第1のケースでは、入力信号レベルが-25dBFSである(FSはフルスケールを表す)場合に、69.56dBのSNDR(信号対雑音比)を達成できることを示す一方、第2のケースでは、入力信号レベルが-25dBFSである場合に、69.44dBのSNDRを達成できる。これは、SNDR又はTHDの性能に大きな影響を与えることなく、消費電力を下げるためにk/Lskipを拡大/延長できることを意味する。
【0141】
テーブル学習頻度を下げる動作は、プロセス90として要約することができる。プロセス90は、コントローラによって実行することができる。
図9に示されるように、プロセス90は以下のステップを含む。
【0142】
ステップ902:学習期間中に、少なくとも第1のレートでテーブルに対してテーブル学習動作を実行する。
【0143】
ステップ904:学習期間の後に、第1のレートよりも低い第2のレートでテーブルに対してテーブル学習動作を実行する。
【0144】
一実施形態において、プロセス90におけるテーブルは、充電テーブル304_1又は放電テーブル304_2を参照することができるが、これらに限定されない。一実施形態では、第1のレートは、ADCレートを参照/対応することができるが、これに限定されない。一実施形態では、学習期間は、テーブルが安定/収束しておらず、テーブル学習動作が広範囲に(例えば、少なくとも第1のレートで)実行される期間を指すことができるが、これに限定されない。第1のレートは、(学習期間中に)テーブル学習動作が実行される最小レートと見なすことができる。一実施形態では、コントローラはテーブルが安定しているかどうかを判定し、テーブルが安定しているかどうかの結果に応じて学習期間を決定することができるが、これに限定されない。一実施形態では、プロセス90を実行するコントローラはPWMコントローラであってもよいが、これに限定されない。
【0145】
テーブルが安定/収束した後に、(消費電力を削減するために)テーブル学習動作の実行頻度が低ければ、本発明の要件は満たされ、これは本発明の範囲内にある。
【0146】
ステップ902のテーブル学習動作は、以下のステップ(
図10のプロセスA0として示される)を含んでもよい。
【0147】
ステップA02:第1のサイクルに対応する負荷から第1のフィードバック信号を受信する。
【0148】
ステップA04:第1のフィードバック信号に従ってテーブルから制御コードを取得する。
【0149】
ステップA06:制御コードに従って制御信号を生成し、駆動サブ回路は第2のサイクル中に制御信号に従って負荷に対して動作を実行する。
【0150】
ステップA08:第2のサイクルに対応する負荷から第2のフィードバック信号を受信する。
【0151】
ステップA10:第1のフィードバック信号及び第2のフィードバック信号に従って制御コードを更新し、更新した制御コードをメモリ内のテーブルに保存し直す。
【0152】
プロセスA0の一実施形態では、制御コードはPWCCを参照/対応することができるが、これに限定されるものではない。ステップA06の一実施形態では、制御信号はPWM信号を参照することができるが、これに限定されない。ステップA06の一実施形態では、駆動サブ回路は双方向回路と呼ばれ得るが、これに限定されない。ステップA06の一実施形態では、動作は、充電動作又は放電動作と呼ばれ得るが、これらに限定されない。
【0153】
プロセス90及びA0は、米国特許第18/177,765号に開示されたフィードバック制御方式にも適用することができ、これも本発明の範囲内であることに留意されたい。
【0154】
要約すると、電力消費、特にテーブル学習のメモリ書き込み動作で消費される電力を節約するために、テーブル学習速度を低減することができる。
【0155】
当業者であれば、本発明の教示を維持しながら、装置及び方法の多くの修正及び変更を行うことができることが容易に分かるであろう。従って、上記の開示は、添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定されるものとして解釈すべきである。