(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】積層シート
(51)【国際特許分類】
B32B 7/025 20190101AFI20250415BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20250415BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
B32B7/025
H05K9/00 M
H05K9/00 W
G02B5/28
(21)【出願番号】P 2020127089
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠山 秀旦
(72)【発明者】
【氏名】松居 久登
(72)【発明者】
【氏名】合田 亘
【審査官】橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-165620(JP,A)
【文献】特開2000-244167(JP,A)
【文献】国際公開第2011/001983(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/016522(WO,A1)
【文献】特開平10-106821(JP,A)
【文献】特表2017-510993(JP,A)
【文献】特開2002-076683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H05K 9/00
G02B 5/20-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A層とB層とを交互に5層以上積層したユニットを含み、前記A層と前記B層の少なくとも一方が、3d遷移元素を1質量%以上100質量%以下含む粒子(粒子X)を0.5体積%以上90体積%以下含有し、かつ、前記B層が前記A層よりも前記粒子Xを多く含み、中間に位置する任意の層(α層)における長手方向の比誘電率をMDE(α)、前記α層に隣接する層における長手方向の比誘電率をMDE(α-1)及びMDE(α+1)、前記α層における幅方向の比誘電率をTDE(α)、前記α層に隣接する層における幅方向の比誘電率をTDE(α-1)及びTDE(α+1)としたときに、MDE(α)<MDE(α-1)かつMDE(α)<MDE(α+1)である箇所、TDE(α)<TDE(α-1)かつTDE(α)<TDE(α+1)である箇所のうち、いずれか一方が存在
し、積層シートの比透磁率が一軸異方性を有することを特徴とする積層シート。
【請求項2】
A層とB層とを交互に5層以上積層したユニットを含み、前記A層と前記B層の少なくとも一方が、3d遷移元素を1質量%以上100質量%以下含む粒子(粒子X)を0.5体積%以上90体積%以下含有し、かつ、前記B層が前記A層よりも前記粒子Xを多く含み、中間に位置する任意の層(α層)における長手方向の比誘電率をMDE(α)、前記α層に隣接する層における長手方向の比誘電率をMDE(α-1)及びMDE(α+1)、前記α層における幅方向の比誘電率をTDE(α)、前記α層に隣接する層における幅方向の比誘電率をTDE(α-1)及びTDE(α+1)としたときに、MDE(α)<MDE(α-1)かつMDE(α)<MDE(α+1)である箇所、TDE(α)<TDE(α-1)かつTDE(α)<TDE(α+1)である箇所のうち、いずれか一方が存在し、前記粒子Xの長径と短径の比が1.5以上であることを特徴とする積層シート。
【請求項3】
1MHz~100GHzの周波数帯に少なくとも1つの反射減衰量ピークを有し、該周波数帯において最もピークトップの反射減衰量が大きい反射減衰量ピークを反射減衰量ピーク1としたときに、前記反射減衰量ピーク1の反射減衰量が5dB以上150dB以下であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記反射減衰量ピーク1での長手方向の比透磁率に前記B層における前記粒子Xの濃度(体積%)を乗じた値、及び前記反射減衰量ピーク1での幅方向の比透磁率に前記B層における前記粒子Xの濃度(体積%)を乗じた値が、共に0.5以上1000以下であることを特徴とする、請求項
3に記載の積層シート。
【請求項5】
前記反射減衰量ピーク1での長手方向の比誘電率の実数部及び虚数部をそれぞれMDε’、MDε’’とし、前記反射減衰量ピーク1での幅方向の比誘電率の実数部及び虚数部をそれぞれTDε’、TDε’’としたときに、MDε’/MDε’’及びTDε’/TDε’’が共に1以上1000以下であることを特徴とする、請求項
3又は
4に記載の積層シート。
【請求項6】
前記粒子Xを含む層のうち、少なくとも1つの層の厚みが1nm以上30μm以下であることを特徴とする、請求項1から
5のいずれかに記載の積層シート。
【請求項7】
前記B層の厚みが、少なくとも一方の表層からシート中央の層に至るまでに連続的に増加することを特徴とする、請求項1から
6のいずれかに記載の積層シート。
【請求項8】
C、Ag、Auから選ばれる少なくとも1つの元素を10質量%以上100質量%以下含み、かつ3d遷移元素の含有量が1質量%未満である粒子を粒子Yとしたときに、前記A層と前記B層の少なくとも一方が、前記粒子Yを0.5体積%以上90体積%以下含有することを特徴とする、請求項1から
7のいずれかに記載の積層シート
。
【請求項9】
積層シートの体積抵抗をΩとしたときに、10を底とするΩの対数が2以上16以下であることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の積層シート。
【請求項10】
前記粒子Xの平均粒子径が0.01μm以上10μm以下であることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の積層シート。
【請求項11】
前記粒子Xの長径と短径の比が1.5以上であることを特徴とする、請求項
1に記載の積層シート。
【請求項12】
前記粒子Xを前記長径に垂直かつ前記短径を含む面で切断したときの断面を、面積が最小となる長方形で取り囲んだ際に、該長方形の短辺の長さと長辺の長さの比が0.5以上1.0以下であることを特徴とする、請求項
2~11
のいずれかに記載の積層シート。
【請求項13】
少なくとも一方の表面に、厚みが1μm以上10mm以下の粘着層を有することを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の積層シート。
【請求項14】
電気製品、通信機器、交通機関のいずれかに、請求項1から13のいずれかに記載の積層シートを搭載してなる、電磁波関連製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド性に優れる積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
通信技術の進歩に伴い、携帯電話や無線通信などで主に使用される数百MHz~数GHz帯域のメートル波、4G・5Gなどのモバイル通信、無線LAN(Wi-fi)通信などで主に使用される数GHz~数十GHz帯域のセンチ波、自動車衝突防止レーダーなどで主に使用される数十GHz~数百GHz帯域のミリ波に代表される、種々の周波数帯域の電磁波が使用され、大気中を飛び交っている。情報の容量や伝達する距離・用途に合わせて適した周波数帯域の電磁波が選択されるが、類似する周波数帯域の電磁波が様々な装置・用途で使用されるため、装置誤作動や通信障害、情報漏洩、また、電磁波に敏感な人体への影響を防ぐ目的で、電磁波を遮蔽する電磁波シールド材料のニーズが高まっている。特に、近年では、高速・大容量通信を実現するために、GHz周波数帯域の電磁波を利用する通信技術開発が加速しており、当該周波数帯域の電磁波を遮蔽できる電磁波シールド材料が求められている。
【0003】
電磁波とは、電界と磁界の2成分から構成される波であり、これは互いに振動しながら空間を伝播する。電磁波を遮蔽する電磁波シールド材料は、材料表面/内部で電磁波を反射、あるいは、材料内部で電磁波を吸収することで電磁波エネルギーを損失・減衰する材料であり、反射と吸収を組み合わせることでより効果を高めることができる。例えば、電磁波の表面反射は、空気界面と電磁波シールド材料界面の電気抵抗値(インピーダンス)が異なることで効果を高めることができ、一般的に金属(例えば銅)など非常に抵抗値が低い材料を基材表面に塗布、積層することで広範囲の周波数帯域にわたる電磁波シールド性を実現できる(特許文献1)。
【0004】
一方、吸収による電磁波シールドは、基材内に導電性材料および/または磁性材料を含有させ、内部に進入した電磁波を誘導電流として吸収することで電磁波エネルギーを損失させるものであり、カーボン材料やフェライト、鉄をはじめとする各種3d遷移元素を含む金属材料等をゴムなどの誘電体ポリマーに含有させることで吸収性能を発現している(特許文献2~4)。また、インピーダンスの異なる層を重ね合わせることで、電磁波シールド材内部で電磁波を多重反射させ、反射した電磁波同士の干渉や内部の電磁波吸収材料による相殺・損失を発生させることもできる(特許文献5)。
【0005】
特に、吸収による電磁波シールド性は、誘電性(絶縁性)を示す基材と内部に含まれる導電性材料の処方(種類、組合せ、含有量)や基材厚みなどで変化するが、導電性材料の基材内での配列状態も重要な要素である。例えば、導電性を向上するために一定方向に導電性材料を配列させて横並びに重ね合わさった態様をとることで、シールド材料全体の効果を高めることができるマクスウェル-ワグナー効果と呼ばれる知見もある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2011-502285号公報
【文献】特開2012-94764号公報
【文献】特開2000-243615号公報
【文献】特開2004-39703号公報
【文献】特開2018-56492号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Z.M.Dang,Prog.Matter.Sci.,2012,57,660-723
【文献】吉田栄吉、日本応用磁気学会誌、2002,vol.26,893
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のような反射を利用した電磁波シールド材料では、金属スパッタリングや真空蒸着、導電性材料や磁性材料を含有するペーストをコーティングする技術などが用いられるが、これらの技術によりコーティングした層の剥落による電子機器・通信機器の短絡が生じることの他、耐久性の観点で課題が生じる場合がある。一方、特許文献2、3のような吸収を利用した電磁波シールド材料は使用形態から2種類に分けられ、その効果の評価も2通りに分けられる。一つは
図1に示すように、電磁波シールド材料を単体で用いる方法であり、入射電磁波1を電磁波シールド材料3がどれだけ遮蔽できるか、言い換えると電磁波シールド材料3が減らす透過電磁波2の量(透過減衰量)によって効果を評価する(式(1))。もう一つは
図2に示すように、電磁波を反射できる材料(電磁波反射層)に電磁波シールド材料を張り付けて用いる方法である。より具体的には、電磁波シールド材料3に電磁波反射層4を貼り合わせたものに入射電磁波1を照射したときの反射電磁波5と、電磁波反射層4のみに入射電磁波1を照射したときの反射電磁波5とを比較して、電磁波シールド材料3が減らす反射電磁波5の量(反射減衰量)を求めて効果を評価する(式(2))。しかしながら、これらの多くの技術は主に1GHz以下の低周波の電磁波しか吸収することができない。これは磁性体の特性である高周波での透磁率の低下によるものである(Sneakの限界)。
【0009】
【0010】
【0011】
なお、式(1)中、Tは透過減衰量を、Eiは入射電磁波の電界強度を、Etは透過電磁波の電界強度を表す。式(2)中、Aは反射減衰量を、Er1は電磁波シールド材料がある場合に反射してくる電磁波の電界強度を、Er2は電磁波シールド材料がない場合に反射してくる電磁波の電界強度を表す。
【0012】
そのため、1GHz以上での高周波帯域の電磁波を吸収するためには電磁波シールド材料を分厚くする、磁性体を配向させる(特許文献4)、特殊な結晶構造の磁性体を用いる(特許文献5)ことが必要であった。しかしながら、電磁波シールド材料の厚みを大きくする場合、電磁波シールド材料のコシが強くなるため、ケーブルへの巻き付けや複雑な凹凸形状を有する筐体に沿って電磁波シールド材料を組み合わせるなど成形性が求められる用途への適用は困難となる。
【0013】
また、磁性体を配向させて電磁波吸収性能を高める方法には、扁平状の磁性体をシート成型時の剪断流で配向させる方法があるが、吸収性能を高めるために電磁波シールド材料を厚くすると磁性体が十分に配向せず吸収性能が低下する。すなわち、磁性体の配向性と電磁波シールド材の厚みは所謂トレードオフの関係となっており、当該方法ではこれらを両立させて吸収性能を高めるのは困難であった。
【0014】
他には、特殊な結晶構造の磁性体(イプシロン酸化鉄など)を用いることで高周波数帯の吸収性能を高める手法もあるが、このような磁性体自体が非常に高価であり広い用途に適用することは困難であった。さらに、電磁波シールド材料の成形性や生産効率を考慮すると、熱可塑性樹脂を用いたプレス加工品よりも熱可塑性樹脂を用いた溶融押出による連続シート化が好ましいが、磁性体を高濃度に含有させて単膜シートを成形する場合、押出時の樹脂の溶融粘度変化(チキソトロピー性)が強くなり、シート状に押出成形する際に吐出むらが起こり均一な厚みのシート化が困難となる、電磁波シールド材料が脆くなり割れやすくなる、などの問題点もあった。
【0015】
本発明は、これらの課題を解決し、電磁波シールド性、成型性、及び製膜性に優れた積層シートを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成からなる。すなわち、A層とB層とを交互に5層以上積層したユニットを含み、前記A層と前記B層の少なくとも一方が、3d遷移元素を1質量%以上100質量%以下含む粒子(粒子X)を0.5体積%以上90体積%以下含有し、かつ、前記B層が前記A層よりも前記粒子Xを多く含むことを特徴とする積層シートである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、粒子Xの含有量が異なる層が交互に積層した構成とすることで、粒子Xを高度に配列・分散させて高い電磁波シールド性(透過減衰量)を実現することができ、かつ成型性や製膜性にも優れた積層シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】透過減衰量の測定方法を示した模式図である。
【
図2】反射減衰量の測定方法を示した模式図である。
【
図3】積層シートの反射減衰量ピークを測定して得られたピークのうち、最もピークトップの減衰量が大きい反射減衰量ピークの半値幅、電磁波減衰量を示す模式図である。
【
図4】
図1とは別の態様の積層シートの反射減衰量ピークを測定して得られたピークのうち、最もピークトップの減衰量が大きい反射減衰量ピークの半値幅、電磁波減衰量を示す模式図である。
【
図5】
図1、2とは別の態様の積層シートの反射減衰量ピークを測定して得られたピークのうち、最もピークトップの減衰量が大きい反射減衰量ピークの半値幅、電磁波減衰量を示す模式図である。
【
図6】
図1~3とは別の態様の積層シートの反射減衰量ピークを測定して得られたピークのうち、最もピークトップの減衰量が大きい反射減衰量ピークの半値幅、電磁波減衰量を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の積層シートについて詳細に説明する。本発明の積層シートは、A層とB層とを交互に5層以上積層したユニットを含み、前記A層と前記B層の少なくとも一方が、3d遷移元素を1質量%以上100質量%以下含む粒子(粒子X)を0.5体積%以上90体積%以下含有し、かつ、前記B層が前記A層よりも前記粒子Xを多く含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の積層シートは、3d遷移元素を1質量%以上100質量%以下含む粒子(粒子X)を含むことが必要である。粒子Xとは、粒子を構成する全元素を100質量%としたときに、その1質量%以上100質量%以下を3d遷移元素が占める粒子をいう。3d遷移元素としては、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛が挙げられる。中でも粒子Xは、強磁性を示しやすい鉄、コバルト、ニッケルを含むことが好ましく、特に鉄を含むことが好ましい。
【0021】
粒子Xとしては、上記3d遷移元素自体の他、これらのいずれかを含んだ金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属酸化窒化物、金属水酸化物、金属酸化ホウ化物、有機金属錯体、および合金などを使用することもできる。中でも、高周波帯での性能維持の観点から有機金属錯体が好ましく、例えば、カルボニル鉄、ヘキサシアノ鉄、ホスフィン鉄、アミノ鉄、およびその誘導体などを好適に用いることができる。粒子Xは1種類の3d遷移元素のみを含有しても、複数種の3d遷移元素を含有してもよい。なお、複数種の3d遷移元素を含有する場合においては、粒子を構成する全元素を100質量%としたときに、3d遷移元素の合計量が1質量%以上100質量%以下であれば、当該粒子が粒子Xに該当するものとする。
【0022】
本発明の積層シートは、A層とB層の少なくとも一方が、粒子Xを0.5体積%以上90体積%以下含有し、かつ、B層がA層よりも粒子Xを多く含むことが重要である。ここで「粒子Xを0.5体積%以上90体積%以下含む」とは、層を構成する全成分を100体積%としたときに、上記粒子Xの要件を充足する粒子を0.5体積%以上90体積%以下含むことをいう。また、「B層がA層よりも粒子Xを多く含む」とは、B層を構成する全成分を100体積%として算出したB層における粒子Xの含有量(体積%)が、A層を構成する全成分を100体積%として算出したA層における粒子Xの含有量(体積%)よりも大きいことをいう。
【0023】
「A層とB層の少なくとも一方が、粒子Xを0.5体積%以上90体積%以下含有し、かつ、B層がA層よりも粒子Xを多く含む」態様としては、以下の3つの態様が挙げられる。1つ目の態様は、A層の粒子X量が0体積%以上0.5体積%未満であり、B層の粒子X量が0.5体積%以上90体積%以下である態様である。2つ目の態様は、A層の粒子X量及びB層の粒子X量が共に0.5体積%以上90体積%以下であり、かつ体積換算でA層の粒子X量よりもB層の粒子X量が多い態様である。3つ目の態様は、A層の粒子X量が0.5体積%以上90体積%以下であり、B層の粒子X量が90体積%を超える態様である。このような態様とすることにより、A層若しくはB層が十分な量の粒子Xを含み、かつ両者の磁気的性質(透過減衰量)が異なることとなるため、層界面での電磁波反射を実現することができる。中でも、粒子Xが過剰であることに起因する積層乱れや、製膜性や加工性の低下を抑える観点から、好ましいのは1つ目の態様と2つ目の態様である。
【0024】
A層及びB層における粒子Xの含有量が共に90質量%を超えると、積層が乱れる他、製膜安定性・加工性が損なわれる場合がある。また、A層とB層の粒子Xの含有量差も小さくなるため、両者の磁気的性質も同程度のものとなりやすく、電磁波シールド性も劣るものとなる。反対に、A層及びB層における粒子Xの含有量が共に0.5体積%よりも少ないと、粒子Xの不足により電磁波シールド性が十分に得られないことがある。積層シートの電磁波シールド性と製膜安定性・加工性を両立させる観点から、B層における粒子Xの含有量は、層を構成する全成分を100体積%としたときに、2体積%以上50体積%以下が好ましく、より好ましくは3体積%以上30体積%以下であり、さらに好ましくは5体積%以上20体積%以下である。
【0025】
本発明の積層シートにおいては、A層とB層の両方に粒子Xを含有させる場合、積層シートに電磁波シールド性を持たせるには、A層中の3d遷移元素量(体積%)とB層中の3d遷移元素量(体積%)が等しくないことが求められる。A層中の3d遷移元素量(体積%)とB層中の3d遷移元素量(体積%)が等しいと、A層とB層で磁気的性質が大きく異なる樹脂を使用しない限りA層とB層の磁気的性質が等しくなりやすいため、層界面での電磁波の反射を得ることができず、積層シートの電磁波シールド性(透過減衰量)が低下するためである。各層の3d遷移元素量は、例えば、粒子Xの量や粒子Xに占める3d遷移元素量を調整することにより、調節することができる。
【0026】
各層に含まれる粒子が粒子Xに該当するか否かを評価する方法としては、例えば、各層を剥離した後に粒子以外の成分を溶解させるのに適切な溶剤にて粒子を抽出し、その組成を公知の元素分析法などで評価する方法や、積層シートの断面を走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)又は透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(TEM-EDX)を用いて解析する方法等が挙げられる。
【0027】
本発明の積層シートは、A層とB層とを交互に5層以上積層したユニットを含むことが重要である。ここで「A層とB層とを交互に5層以上積層したユニット」とは、A層とB層が交互に連続して、合計で5層以上存在する構成をいう。すなわち、A(BA)nあるいはB(AB)n(nは2以上の自然数)の規則的な配列に従って樹脂が積層された状態を指す。A層とB層とを交互に5層以上積層したユニット(以下、単に「A層とB層の交互積層ユニット」ということがある。)を有する積層シートは、A層とB層以外の層の有無にかかわらず全て「A層とB層とを交互に5層以上積層したユニットを含む」に該当するものとする。本発明の積層シートはA層とB層の交互積層ユニットを有する限り、最表層がA層、B層、A層とB層以外の層のいずれであってもよく、両側の最表層が同じ層であっても互いに異なる層であってもよいが、内層の粒子Xの抵抗を受けることにより電磁波シールド性を高める本発明の積層シートのコンセプトを実現する観点から、A層が両側の最表層であることが好ましい。また、積層シートが有するA層とB層の交互積層ユニットの個数は1つであっても複数であってもよい。
【0028】
A層とB層の交互積層ユニットを有する積層シートを得る手段としては、後述のとおり、互いに組成の異なる層を段階的に圧着させて積層する方法や、積層装置を介して一挙に積層する方法などを用いることができる。また、A層とB層の交互積層ユニット上には、別の電磁波反射層や電磁波吸収層など、当該交互積層ユニットとは異なる機能層を形成してもよい。A層とB層の交互積層ユニットを複数有する態様とする場合は、複数の当該積層ユニットを、粘着層を介して、あるいは熱圧着で直接重ね合わせることができる。また、A層とB層の交互積層ユニットを複数有する態様とする場合、異なる周波数帯域に反射減衰量ピークのピークトップを有する交互積層ユニット同士を重ね合わせて使用し、所望の複数の周波数帯域を同時にシールドする材料としてもよい。
【0029】
本発明の積層シートはA層とB層の交互積層ユニットを有することにより、積層シート全体の厚みを抑えつつ、特定の周波数帯域をターゲットとした電磁波シールド性を向上させることができる。通常、特定の周波数帯域をターゲットとして電磁波シールド性を向上させるには、シート全体の比透磁率を向上させる必要がある。そして従来の単膜シートでは、Sneakの限界による高周波帯域での透磁率低下のために磁性体(粒子X)を高濃度で添加することや、シートの厚みを大きくすることが必要である。それに対し、A層とB層の交互積層ユニットを有する場合は、各層内に粒子Xを密に閉じ込めることができるとともに粒子Xを配向させることで高周波帯でも高い透磁率を維持することができる。特に扁平の粒子Xを用いた場合に、配向の効果が顕著に得られる。また、A層とB層の透磁率を異なる値とすることにより、層界面でのインピーダンス不整合による電磁波の反射が起きるため、電磁波シールド性(透過減衰量)を向上させることができる。
【0030】
積層シートの電磁波シールド性を向上させるためには、比透磁率に加えて比誘電率を調整することも好ましく、比誘電率を調整する方法としては導電性材料(粒子Y)を含有させる方法を用いることができる。その場合にも、粒子Yの含有量が異なるA層とB層を交互積層ユニットとすることで、比誘電率の異なる層界面での誘電分極が生じてシート内部に電流が通りやすくなり、電磁波シールド性が向上する。また、各層内に粒子Yを密に閉じ込めることができることにより層内の導電性が高まることに加え、内部に添加した粒子Yの抵抗による損失を受けやすく、従来品と比べてより高い電磁波シールド性が実現できる。その結果、シートの厚みが薄くても電磁波シールド性(反射減衰量、透過減衰量)に優れた積層シートを得ることができる。
【0031】
積層シート内に含まれるA層とB層の交互積層ユニットにおける積層数は、高い比透磁率、比誘電率を示す層と低い比透磁率、比誘電率を示す層の層界面が多いほど電磁波シールド性が得られやすいため、好ましくは合計13層以上であり、より好ましくは合計31層以上、さらに好ましくは合計101層以上である。積層数の上限は、製造コストと製膜性、電磁波遮蔽性能の観点から、1001層とすることが好ましい。A層とB層との積層ユニットの積層数を1001層以下とすることで、微細スリットを有するフィードブロック等の装置大型化による製造コスト増加が抑えられる。また同時に、粒子X、粒子Yの分散状態や形状、サイズによっては、積層数が増えて個々の層の厚みが薄くなることで問題となるチキソトロピー性の発現による層厚みの乱れが軽減され、電磁波シールド性やシールドする電磁波周波数帯の急峻性を維持することもできる。
【0032】
本発明の積層シートは、1MHz~100GHzの周波数帯に少なくとも1つの反射減衰量ピークを有することが好ましく、1GHz~100GHzの周波数帯に少なくとも1つの反射減衰量ピークを有することがより好ましい。1MHz~100GHzの周波数帯に少なくとも1つの反射減衰量ピークを有するか否かは、具体的には以下の手順により評価することができる。先ず、同軸導波管法や自由空間法を利用し、背面にアルミニウムなどで作製された金属反射板を組み合わせた積層シートに対して電磁波を照射し、金属板で反射させて積層シート内を往復した電磁波の強度を計測して各周波数帯における反射減衰量を算出する。次いで、1MHz~100GHzの周波数帯域において、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットした反射減衰スペクトルを描き、その中に反射減衰量ピークが存在するか否かを確認する。なお、測定方法の詳細は「(2)透過減衰量、反射減衰量」の項に示す。
【0033】
本発明の積層シートにおいては、1MHz~100GHzの周波数帯において最もピークトップの反射減衰量が大きい反射減衰量ピークを反射減衰量ピーク1としたときに、反射減衰量ピーク1の反射減衰量が5dB以上150dB以下であることが好ましい。ここでピークトップとは、通常、反射減衰スペクトルの接線の傾きが、正から負、あるいは負から正に反転する位置を指す。反射減衰量ピークの電波減衰量とは、ベースラインと比較したときのピークトップにおける反射減衰量をいう。反射減衰量ピーク1は、1MHz~100GHzの周波数帯において、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としたチャート図より決定することができる。上記範囲内に反射減衰量ピークを有する積層シートとすることにより、積層シートは、高周波通信対応機器やミリ波レーダーなど様々な製品への適用が可能となる。
【0034】
以下、積層シートの反射減衰量ピークを測定して得られたピークのうち、最もピークトップの減衰量が大きい反射減衰量ピークの半値幅、電磁波減衰量を示す模式図である
図3~6を用いてピークトップにおける反射減衰量ピーク反射減衰量について説明する。なお、
図3~6において、符号6はベースライン、符号7は反射減衰量ピーク1、符号8は反射減衰量ピーク1のピークトップ、符号9はピークトップにおける反射減衰量I、符号10は反射減衰量ピーク1の半値幅Rを示す。
【0035】
反射減衰量ピーク1における反射減衰量Iは、
図3に示すように単一ピークトップを有する場合は、当該ピークのベースラインを基準とし、ピークトップに位置する周波数に対してピークトップとベースラインとの反射量の差で表すことができる。
図4のようにベースラインが傾斜している場合も存在するが、このような場合には、反射減衰スペクトルの傾きからベースラインの傾きを引いた値が、正から負、あるいは、負から正に反転する位置をピークトップとする。
図5のようにベースラインの反射減衰量が高いピークであっても、特異的なピークトップを有する場合には、ベースラインと当該ピークのピークトップの反射減衰量の差をピークトップにおける反射減衰量とすることができる。ショルダーピークを含む複数のピークトップを有する
図6のようなスペクトルが得られた場合には、複数のピークトップのうち最も高いピークのピークトップの周波数に対して、ピークトップに相当する反射減衰量と、複数のピークトップを含むピーク全体のベースラインの反射減衰量との差で表すこととする。
【0036】
反射減衰量ピークの電波減衰量反射減衰量ピーク1の反射減衰量は、5dB以上の数値を示すことが好ましい。当該反射減衰量が5dB未満であるとは、電磁波の透過率が30%より高いこと、すなわち電磁波シールド性が不足していることを意味する。十分な電磁波シールド性を実現する観点から、本発明の積層シートにおける最も反射減衰量が大きい反射減衰量ピークの反射減衰量は、15dB以上であることが好ましく、より好ましくは20dB以上、さらに好ましくは30dB以上である。一方、最もピークトップの減衰量が大きい反射減衰量ピークの反射減衰量が30dB程度であることは、ピーク前後の周波数帯域の電磁波シールド性と比較して、入射した電磁波の99.9%がシールドされていることを指し、非常に高い電磁波シールド性を有していることを意味する。積層シートの電磁波シールド性の観点から、最もピークトップの減衰量が大きい反射減衰量ピークの反射減衰量の上限は特に限られるものではないが、実現可能性の観点から150dB、より好ましくは100dBである。
【0037】
なお、ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰量ピークの減衰量が5dB以上150dB以下である周波数帯域幅は、急峻かつ高い電磁波シールド性と、厚みむらによる周波数帯域の変動の影響低減の観点から、1GHz以上20GHz以下の幅であることが好ましい。この帯域幅が狭いことにより、目的とする帯域の電磁波を急峻にカットすることが可能となる。一方、この帯域幅が広いことにより、積層シートの厚みむらによってカットする周波数帯域の変動が生じても、目的とする周波数のカット性への影響を低減できる。上記観点から、具体的には、反射減衰量ピーク1の反射減衰量が5dB以上である周波数帯域幅は、より好ましくは3.0GHz以上20.0GHz以下であり、さらに好ましくは5.0GHz以上20.0GHz以下である。
【0038】
本発明の積層シートは、上述したように粒子Xを用い、厚みと含有量を制御することで高い反射減衰量を得ることを目的とするが、その設計方法について詳細に説明する。粒子Xを添加した樹脂は、粒子Xの添加量と分散状態によって特定の比誘電率、および比透磁率を示す。
【0039】
反射減衰量ピーク1の周波数は主にB層又は/かつA層の厚みを変化させることで簡便に調整可能であるが、該周波数での反射減衰量は比誘電率と比透磁率の値に影響を受ける。より具体的には、先ずB層の厚みを厚く(薄く)することで、A層の厚みを変化させるよりも効果的に反射減衰量ピークを示す周波数を低く(高く)できる場合が多い。これはB層の方が粒子Xを多く含有することで、透磁率がA層よりも高い場合が多いためである。ただし、どちらか一方の層のみを極端に厚く、または薄くした場合には層乱れによる電磁波シールド性の低下を招く場合があるため、好ましくはA層とB層の厚みを同時に調整する方がよい。
【0040】
比誘電率を高めるためには導電性材料(粒子Y 詳細は後述)を添加することが好ましい。粒子Yは比透磁率にさほど影響を与えないため、これを加えることで比誘電率を独立して制御可能であり、比誘電率の調整が容易になる。そのため、薄膜化と電磁波シールド性向上の両立が容易となるため好ましい。また、粒子Yを添加した層を積層押出して成形することにより、粒子Yの分散性も向上するため、比誘電率の向上が得られる場合もある。
【0041】
比透磁率を高める方法としては、粒子Xを添加する、その量を増やす方法が挙げられる。ただし、粒子Xを添加した場合には比誘電率も増加する(設計値からずれる)場合があるため、先に粒子Xで比透磁率を高めておいて、後から粒子Yにて比誘電率を調整することが好ましい。特に扁平な形状を有する粒子Xを用いる場合、粒子Xを添加した層を積層押出して成形することにより粒子Xの分散性が向上し、粒子がシート面方向に配向するため、非透磁率の向上が得られる場合もある。
【0042】
粒子Xの組成及び/又は含有量を調整することで、比透磁率を変化させることが可能であるが、それに伴い比誘電率も変化してしまうため最適な含有量の探索が困難であった。発明者らは鋭意検討を行った結果、反射減衰量ピーク1での長手方向の比透磁率にB層における粒子Xの濃度(体積%)を乗じた値、及び反射減衰量ピーク1での幅方向の比透磁率にB層における粒子Xの濃度(体積%)を乗じた値を、共に0.5以上1000以下とすれば、比誘電率を大きく変化させずに比透磁率を調整できることを見出した。長手方向(MD)とは製造工程内でフィルムが走行する方向(フィルムロールとした場合はフィルムの巻方向)をいい、幅方向(TD)とは長手方向にフィルム面内で直交する方向をいう。なお、以下、反射減衰量ピーク1での長手方向の比透磁率にB層における粒子Xの濃度(体積%)を乗じた値、及び反射減衰量ピーク1での幅方向の比透磁率にB層における粒子Xの濃度(体積%)を乗じた値をそれぞれMD体積透磁率、TD体積透磁率ということがある。また、MD体積透磁率とTD体積透磁率の両方を総称して両方向の体積透磁率ということがある。
【0043】
両方向の体積透磁率を0.5以上とすることで粒子Xによる十分な反射減衰量を実現でき、両方向の体積透磁率を1000以下とすることで粒子X同士の接触による比誘電率の変化による誤差が抑えられ、積層シートの設計が容易になる。上記観点から両方向の体積透磁率は、より好ましくは5以上800以下である。
【0044】
本発明の積層シートは、反射減衰量ピーク1での長手方向の比誘電率の実数部及び虚数部をそれぞれMDε’、MDε’’とし、反射減衰量ピーク1での幅方向の比誘電率の実数部及び虚数部をそれぞれTDε’、TDε’’としたときに、MDε’/MDε’’及びTDε’/TDε’’が共に1以上1000以下であることが好ましい。粒子Xの添加量によっても比誘電率は変化するが、導電性材料をA層または/かつB層に添加することや、粒子Xや樹脂の種類や組成を変えることでもMDε’/MDε’’、TDε’/TDε’’を調整することができる。各ε’は界面での電磁波の反射に主に影響を与え、各ε’’は層内部での電磁波の位相ズレと減衰に影響を与える。積層シートの電磁波シールド性の観点からは、MDε’/MDε’’及びTDε’/TDε’’が共に1以上であることが好ましい。また、高ε’域では適用できる周波数が低周波側にシフトするため、高周波の電磁波をシールド可能な厚み設計とするには極端に薄膜する必要があり、積層乱れによる電磁波シールド性のバラつきの制御が困難になる。そのためMDε’/MDε’’及びTDε’/TDε’’が共に1000以下であることが好ましい。積層シートの電磁波シールド性と積層乱れの軽減を両立する観点から、MDε’/MDε’’及びTDε’/TDε’’がは、より好ましくは共に1.5以上100以下である。
【0045】
本発明の積層シートは積層による粒子Xの位置規制により、各粒子Xが面方向に配向していることが電磁波シールド性向上の観点から好ましい。そのため、粒子Xを含む層のうち、少なくとも1つの層の厚みが1nm以上30μm以下であることが好ましく、粒子Xを含む全層の厚みが1nm以上30μm以下であることがより好ましい。粒子Xを含む層の厚みが1nm以上であることにより、粒子Xが層を突き破ることによる積層乱れが軽減され、電磁波シールド性を高く保つことができる。一方、粒子Xを含む層の厚みが30μm以下であることにより、層中での粒子Xの位置や向きの変動が抑えられ、位置規制の効果が十分に発揮される。なお、各層の厚みは断面を切り出したサンプル画像を用いて、顕微鏡の測長機能によって測定することができる。
【0046】
粒子Xを含む層の厚みは、含有されている粒子Xの平均径(粒子が高次構造として存在している場合はその高次構造体全体の平均径)の、1.1倍以上10倍以下が好ましい。各層の厚みを該範囲内とすることで効果的に粒子を配向させることができる。なお、ここで粒子Xの平均径とは、JIS Z8819-2(2001年)に記載の個数基準算術平均長さ径を意味する。より具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡等を用いて一次粒子または高次構造を観察し、外接円の直径を粒子径とし、その個数基準平均値から求めた値を指す。積層フィルムの場合には、表面や断面を観察することにより数平均粒子径を求めることができる。
【0047】
本発明の積層シートは、電磁波の表面反射を抑えて反射減衰量を高める観点から、比誘電率または/かつ透磁率が表層から内層にかけて漸増していくことが好ましい。このような態様を実現する手段の一つとして、B層の厚みが、少なくとも一方の表層からシート中央の層に至るまでに連続的に増加することが挙げられる。ここで、「B層の厚みが、表層からシート中央の層に至るまでに連続的に増加する」とは、表層からシート中央の層に至るまでの区間で、B層の厚みが少なくとも1段階以上増加し、かつ同区間でB層の厚みが減少に転じないことをいう。表層に電磁波を強く反射する層がある場合は、電磁波が積層シートの内層まで到達せず、内層の粒子Xの抵抗を受けることにより電磁波シールド性を高める本発明の積層シートのコンセプトに基づく電磁波シールド性が得られない場合がある。そのため、例えばA層が表層である場合に、表層に近いほどB層の厚みを薄くすることで、表層の比透磁率・比誘電率を下げ、層界面における比透磁率/比誘電率差を低下させ、表層に近い部分での反射を抑えて反射減衰量を向上させることができる。なお、このような態様の積層構成とする手段としては、例えば、B層の厚みが表層から中央に向けて連続的に増加する用にスリット幅を調整したフィードブロックを使用する方法が挙げられる。
【0048】
本発明の積層シートは、電磁波シールド性(透過減衰量)を高める観点から、ε’の低い層を内部に持つことも好ましい。つまり、中間に位置する任意の層(α層)における長手方向の比誘電率をMDE(α)、α層に隣接する層における長手方向の比誘電率をMDE(α-1)及びMDE(α+1)、α層における幅方向の比誘電率をTDE(α)、α層に隣接する層における幅方向の比誘電率をTDE(α-1)及びTDE(α+1)としたときに、MDE(α)<MDE(α-1)かつMDE(α)<MDE(α+1)である箇所、TDE(α)<TDE(α-1)かつTDE(α)<TDE(α+1)である箇所のうち、いずれか一方が存在することが好ましく、両方が存在することがより好ましい。
【0049】
ここで「中間に位置する任意の層(α層)」とは、両方の最外層及びこれに隣接する層以外の層から選択した任意の層をいう。具体例を挙げて説明すると、例えば層構成がA層/B層/A層/B層/A層である2種5層構成の積層シートにおいては中央のA層が「中間に位置する任意の層(α層)」となる。また、層構成がA層/B層/A層/B層・・・/A層である2種101層構成の積層シートにおいては3層目~99層目のA層若しくはB層が「中間に位置する任意の層(α層)」となり得る。
【0050】
また、「MDE(α)<MDE(α-1)かつMDE(α)<MDE(α+1)である箇所、TDE(α)<TDE(α-1)かつTDE(α)<TDE(α+1)である箇所のうち、いずれか一方が存在する」とは、α層となり得る全ての層からα層を選定し、MDE(α)、MDE(α-1)、MDE(α+1)、TDE(α)、TDE(α-1)、TDE(α+1)を求めたときに、これらの値が「MDE(α)<MDE(α-1)かつMDE(α)<MDE(α+1)」と「TDE(α)<TDE(α-1)かつTDE(α)<TDE(α+1)」の少なくとも一方を満たすことをいう。具体例を挙げて説明すると、例えば層構成がA層/B層/A層/B層/A層である2種5層構成の積層シートにおいては、中央のA層をα層としたときに上記要件を満たすことをいう。また、層構成がA層/B層/A層/B層・・・/A層である2種101層構成の積層シートにおいては3層目~99層目のA層若しくはB層のいずれかをα層としたときに、少なくとも一つ上記要件を満たす層αが存在することをいう。このような態様とする方法としては、例えばα層とその両側の層で、粒子Xの量の差を付ける方法等が挙げられる。
【0051】
MDE(α)<MDE(α-1)かつMDE(α)<MDE(α+1)である箇所、TDE(α)<TDE(α-1)かつTDE(α)<TDE(α+1)である箇所のうち、いずれか一方が存在することを満たす箇所が存在することは、隣接する両側の層よりも少なくとも長手方向、幅方向のいずれかのε’の値が小さい箇所が存在することを意味する。上述したように積層シートの表層に近い部分での電磁波の反射を抑える方が積層シートの反射減衰量を高める観点からは好ましいが、透過減衰量を向上させる観点では各層界面での電磁波反射を最大化することが好ましい。そのため、特に内層では隣接する層同士のε’が大きく異なることが好ましく、かつε’が隣接する両側の層よりも小さくなる層が存在していることが好ましい。
【0052】
本発明の積層シートは、その積層シートの比透磁率が一軸異方性を示していることが、偏波吸収特性を示す観点から好ましい。ここで「比透磁率が一軸異方性を示す」とは、ネットワークアナライザを用いた自由空間法や矩形導波管法など直線偏波によって積層シートの比透磁率を測定した場合に、任意の方向の比透磁率と、該方向と直交する方向の比透磁率が異なる値を示すことをいう。また、偏波とは
図7に示すように、進行方向に垂直な面内での電界や磁界(正確には電界ベクトルや磁界ベクトル)が時間的・空間的に規則的な振動をしながら進行する電磁波をいう。なお、
図7における符号11は電界ベクトルの振動方向(一部のみ表示)、符号12は電磁波の進行方向、符号13は投影面、符号14は振動する電界ベクトルの尖端が描く軌跡を表す(符号13,14は後述する
図8~10において同じ。)。偏波を空間上に描いた任意の面上に当てたときの振動する電界ベクトルの尖端が描く軌跡は以下に述べるように様々である。
【0053】
偏波は、電界ベクトルの振動の尖端が描く軌跡を、電磁波の進行方向に垂直な面に投影した時の動きによって直線偏波(直交偏波、平行偏波
図8)、円偏波(右円偏波、左円偏波
図9)、楕円偏波(
図10)に分けられる。積層シートの比透磁率の一軸異方性を達成する方法は特に制限されないが、例えば針状や楕円状、繊維状の粒子を溶融押出時の剪断力や延伸により配向させる方法がある。特に粘度の低い樹脂に粒子を混錬し、粘度の高い樹脂と積層することにより、高粘度樹脂から受ける剪断力によって粒子の配向が促されるため、このような態様とすることが好ましい。
【0054】
比透磁率が一軸異方性を示す積層シートとすることで、特に直線偏波について電界ベクトルの振動方向が比透磁率の高い方向と一致したときにのみ高い電磁波シールド性を示すことが可能になる。このような特性を備える積層シートは、レーダーや通信機器など偏波を用いて対象を検出したり、通信を行ったりする機器の電磁波シールド用途に好ましく用いることができる。
【0055】
本発明の積層シートでは電磁波シールド性を高める観点から、比誘電率を調整することが重要であることは前述したとおりである。比誘電率を変化させる方法としては、特に限定されないが例えば高い比誘電率を示す樹脂を用いることや、絶縁性の高い樹脂に後述する粒子Yを含有させることによって達成される。粒子Yは導電性に優れるため、積層シート中で導電性材料として機能する。
【0056】
粒子Yとは、C、Ag、Auから選ばれる少なくとも1つの元素を10質量%以上100質量%以下含み、かつ3d遷移元素の含有量が1質量%未満である粒子をいう。粒子Yの3d遷移元素の含有量が1質量%以上であると、積層シートの設計のために比透磁率と比誘電率を独立して調整することが難しくなることがある。より具体的には、積層シートの電磁波シールド設計は式(3)、式(4)によって行うため、比透磁率と比誘電率が独立して調整できない場合、所望の周波数帯域の電磁波をシールドするための設計が困難になることや、電磁波シールド性のバラつきが大きくなることがある。本発明の積層シートにおいては、A層とB層の少なくとも一方が、粒子Yを0.5体積%以上90体積%以下含むことが好ましい。A層とB層の少なくとも一方が粒子Yを0.5体積%以上含むことにより、電磁波シールド性に影響を与えるほどに比誘電率を向上させることが容易になる。A層とB層の少なくとも一方が粒子Yを90体積%以下含むことにより、積層シートの成形が困難になるのを軽減することができる。
【0057】
【0058】
【0059】
なお、式(3)中、Aは反射減衰量を、Zはインピーダンスを示す。式(4)中、Zはインピーダンスを、μは透磁率を、εは誘電率を、iは虚数単位を、fは周波数を、dは層の厚みを示す。
【0060】
粒子Yの例としては金、銀などの導電性の金属やその化合物、及び有機カーボン等が挙げられる。特に1次粒子のサイズが小さく溶融押出にも好適な有機カーボンが好ましい。有機カーボンとしては、例えば、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック(球状カーボン)、単層ナノチューブ、多層ナノチューブ、カップ積み上げ型ナノチューブなどの円筒状カーボンであるカーボンナノチューブ、黒鉛、グラファイト、グラフェンなどの扁平状カーボン、その他、球状グラファイト、円筒状グラファイト、カーボンマイクロコイル、フラーレン、炭素繊維(長繊維、短繊維)などを使用できる。中でも、積層構造による面方向への導電性材料の配向・分散の効果を利用し、導電性材料が含有した層の導電性を向上するためには、一次構造(線状のストラクチャー)が発達しやすい導電性のカーボンブラックを使用することが好ましい。また、層方向への導電性パスをより強く形成するためには、任意な方向へストラクチャーが発達するカーボンブラックに加えて、構造が均一でアスペクト比の高いカーボンナノチューブや扁平状カーボンなどを併用してなることも好ましい。ストラクチャーの発達しやすい有機カーボンと構造の決まった有機カーボンを併用することで、両導電性材料の比率を振り分けて積層シートのシールドする周波数帯域を簡便に変化させることができる。
【0061】
本発明の積層シートは、電磁波シールド性を高める観点から、積層シートの体積抵抗をΩとしたときに、10を底とするΩの対数(logΩ)が2以上16以下であることが好ましい。体積抵抗は積層シートの電磁波シールド性に影響を与えており、特にlogΩが大きくなるほど電磁波が積層シート内に入射しやすく、積層シート内部の層も電磁波シールド性の向上に効果的に寄与することとなる。一方で、logΩが16を超えると、ほぼ完全に電磁波が積層シートを透過してしまうため、電磁波シールド効果自体が不十分となることがある。上記観点から、logΩが3以上15以下であることがより好ましく、さらに好ましくは4以上14以下である。
【0062】
logΩを2以上16以下又は上記の好ましい範囲とする方法は、例えば導電性材料(粒子Y)を添加・増量する(logΩ増加)、導電性コーティングを行う(logΩ増加)、絶縁性の高い樹脂と積層する(logΩ低下)などが挙げられる。特に粒子Yの添加量の調整と絶縁性の高い樹脂の積層によって調整する方法が簡便さの観点から好ましい。
【0063】
本発明の積層シートにおいては、電磁波シールド性のムラの軽減と薄膜化を両立する観点から、粒子Xの平均粒子径が0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。粒子Xの平均粒子径が0.01μm以上であることにより、凝集が抑えられるために粒子Xが均一に分散しやすくなり、電磁波シールド性のバラつきが軽減される。一方、粒子Xの平均粒子径が10μm以下であることにより、各層の厚みを過度に大きくしなくても積層乱れの発生を抑えることができるため、薄膜化の実現が容易となり、結果として積層シートの成型性も向上する。また、粒子Xの平均粒子径が10μm以下であることにより、延伸や成形の工程における粒子Xによるボイド形成も抑えられるため、ボイドによる比透磁率および比誘電率低下も抑えることができる。さらに後述するように、高周波帯域での比透磁率を高めるためにも粒子Xの平均粒子径は10μm以下であることが好ましい。
【0064】
なお、ここで平均粒子径とは、JIS Z8819-2(2001年)に記載の個数基準算術平均長さ径を意味する。より具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡等を用いて一次粒子または高次構造を観察し、外接円の直径を粒子径とし、その個数基準平均値から求めた値を指す。なお、積層シート中の粒子については、表面、または断面を観察することによって測定することができる。
【0065】
本発明の積層シートにおいては、前述した比透磁率の一軸異方性を容易に達成する観点から、粒子Xの長径と短径の比が1.5以上であることが好ましい。また、同様の観点から、上記要件を満たした上で、粒子Xを長径に垂直かつ短径を含む面で切断したときの断面を、面積が最小となる長方形で取り囲んだ際に、該長方形の短辺と長辺の比が0.5以上1以下であることも好ましい。粒子Xの長径と短径の比が1.5以上であることは、粒子の形状が細長い形状であることを意味する。また、さらに粒子Xを長径に垂直かつ短径を含む面で切断したときの断面を、面積が最小となる長方形で取り囲んだ際に、該長方形の短辺と長辺の比が0.5以上1以下であることは、粒子が扁平状であることを意味する。これらの2つの要件を満たす粒子Xの形状としては、細長くかつ扁平な形状、例えば、楕円盤または楕円柱等が挙げられる。
【0066】
このような粒子Xを用いることで、前述した比透磁率の一軸異方性を達成しやすく、積層構造と組み合わせることで好適な配向状態(粒子の位置規制)を容易に達成できる上、高周波帯域での電磁波シールド性も向上する。一般的に、磁性材料は高周波数帯域では渦電流が発生するため、ある一定以上の周波数帯域では比透磁率が低下するが(Sneakの限界)、粒子Xを平均粒径10μm以下である扁平状のものとすると、渦電流の発生が抑えられ高周波帯域でも高い比透磁率を保つことが可能になる(非特許文献2)。
【0067】
本発明の積層シートは所望の電磁波シールド性を得るために、同じ積層シート同士、または、異なる厚み、組成を有する積層シート同士を接着シート、粘着シート、両面テープなどを介して貼り合せることもできる。厚みの上限は特に限定されないが、取り扱いやすさの観点及び最終的に得られる積層シートの薄膜化の観点からは100μmが好ましい。
【0068】
本発明の積層シートは、少なくとも一方の表面に厚み1μm以上10mm以下の粘着層を有することも好ましい。このような態様とすることにより、電磁波のセンサ等の被照射体に貼り付けることが容易となり、被照射体にノイズに当たる周波数帯域の電磁波が到達するのを抑えることができる。結果、本発明の積層シートが電磁波シールド体として機能することで、ノイズに当たる周波数帯域の電磁波による誤作動等の悪影響を排除することができる。このとき、粘着層の厚みが1μm以上であることにより、被照射体に積層シートを貼り付けるのが容易となる。また、反射減衰量が求められる用途の場合には、反射減衰量ピークの周波数を調整する観点から粘着層の厚みも積層シートの設計の段階で考慮に入れて設計することも好ましい。その際には貼付け面の多少の凹凸を粘着層で吸収できるように、粘着層の厚みを1μm以上とすることが好ましい。粘着層の厚みが10mm以下であることにより、積層シートの厚み増加に伴う成型性の悪化等を抑えることができる。
【0069】
続いて、本発明の電磁波関連製品について具体的に説明する。本発明の電磁波関連製品は、電気製品、通信機器、交通機関のいずれかに、本発明の積層シートを搭載してなる。本発明の好ましい態様として、4G/5G通信、無線LAN、衝突防止(ITS)レーダー、などで利用される電磁波による虚像防止、コンピュータ、携帯電話、無線機、測定機器、医療機器、車両バンパーなどの筐体の内部に備わる電子機器・半導体・回路からの不要な電磁波の輻射低減、外部や隣接する機器からの輻射による装置誤作動の防止などの目的で、前述の積層シート、または、前述の電磁波遮蔽体を有する電気製品、通信機器を挙げることができる。その他、GHz帯域の周波数を利用する電気製品もしくは通信機器であれば、上記に限らず本発明の積層シートを搭載して使用することができる。
【0070】
さらに、本発明の好ましい態様として、本発明の積層シートを有する車両や航空機、船舶などの移動手段、ビル、トンネルやガードレール、高速道路、橋梁、鉄塔などの構造物の壁面、電信、電話などの通信施設などの交通機関も挙げることができる。本発明の積層シートを適用する方法としては、接着剤などを介して直接、もしくは他のシート、遮蔽板、パネルなどを介して、床、天井、壁、窓、柱などの構造物に貼り付けるなどの方法を用いることができる。その他、外部からの電磁波ジャミング・ノイズによる影響を防ぐためのシールドルームの壁材や窓材としても用いることもできる。
【0071】
以下、本発明の積層シートの製造方法について、具体例を挙げて説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
【0072】
先ず、ゴムや熱可塑性エラストマーなどを基材のベースポリマーとして利用する場合の積層シートを例に挙げて説明する。最初に、ベースポリマーに所望の粒子Xを所定量配合し、ニーダーやバンバリーミキサー、ミルミキサー、ロールミル、ジェットミル、ボールミルなどの公知の装置で混錬し含有させることで、粒子含有ベースポリマー混合物を得る。ベースポリマー単体、もしくは、作成した粒子含有ベースポリマーを、それぞれバッチプレスによる圧延や溶融押出により、所望の厚みのシートへ成形する。その後、作成したA層に当たるシート、これよりも粒子Xを多く含むB層に当たるシートを、交互に合計5層以上重ね合わせ、プレスまたはラミネートすることにより積層シートを得る。このときの融着温度は、使用する樹脂の種類にもよるが、150℃~400℃が好ましく、250~380℃がより好ましい。
【0073】
次に、本発明において好ましい樹脂である可撓性を示す熱可塑性樹脂を使用する場合の積層シートであって、B層のみが粒子Xを含み、A層及びB層が共に粒子Yを含まないものの製造方法を例に挙げて説明する。最初に、ペレットの状態で準備された熱可塑性樹脂並びに所定量の粒子Xを二軸押出機で混錬してガット状に押出し、これを水槽内で冷却してチップカッターでカットすることで粒子X含有のマスターペレットを形成する。このとき、粒子Xは樹脂と共にドライブレンドした上でホッパーより計量フィードしてもよく、押出機の任意の位置からサイドフィーダを用いて溶融した樹脂中にサイドフィードしてもよい。フィード方法については、前記に限られるものではなく、使用する粒子の比重や形状に併せて適宜選択することができる。
【0074】
その後、A層及びB層を構成する熱可塑性樹脂組成物を熱風中あるいは真空下で乾燥した後に別々の押出機に供給し、押出機において熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱溶融する。その後、ギヤポンプなどで押出量を均一化して熱可塑性樹脂組成物を吐出し、フィルターなどで異物や変性した熱可塑性樹脂などを除去する。
【0075】
続いて、これらの熱可塑性樹脂組成物を所望の積層数の積層が可能な多層積層装置で積層させ、ダイにて目的の形状に成形し、シート状に吐出させる。ダイから吐出されたシート状物は、キャスティングドラム等の冷却体上に押出され、冷却固化されることでキャストシートとなる。この際、キャストシート自体が導電性を示すことから、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出しキャスティングドラムなどの冷却体に密着させ急冷固化させる方法、もしくは、ニップロールにて冷却体に密着させて急冷固化させる方法を用いることが好ましい。
【0076】
多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロック、スタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の多層積層体を効率よく得るためには、微細スリットを有するフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため熱劣化による異物発生量が少なく、積層数が極端に多い場合でも高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。さらにこの装置には、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため任意の層厚みを達成することが容易となることや、積層工程中に樹脂流の効果で粒子を積層シート面方向に配向させることが容易となること等の利点もある。
【0077】
スリットタイプのフィードブロックを用いて積層シートを作製する場合、各層の厚みおよびその分布は、スリットの長さや幅を変化させて圧力バランスを整えることで調整可能となる。スリットの長さとは、スリット板内でA層とB層を交互に流すための流路を形成する櫛歯部の長さのことである。また、フィードブロックで積層体を形成した後、スタティックミキサーを介して積層数が倍増するように重ね合わせて積層数を増やす方法も好適に利用できる。
【0078】
得られたキャストシートは、必要に応じて長手方向および幅方向に二軸延伸することができる。二軸延伸を行う場合は、逐次に二軸延伸しても、同時に二軸延伸してもよい。また、さらに必要に応じて長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
【0079】
先ず、先に長手方向に延伸して幅方向に延伸する逐次二軸延伸について説明する。ここで、長手方向への延伸とは、シートに長手方向の分子配向を与えるための一軸延伸を指し、通常は、ロールの周速差により施される。この延伸は、1段階で行ってもよく、複数のロール対を使用して多段階に行ってもよい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、1.1~7.0倍が好ましく、1.5~4.0倍が特に好ましい。また、延伸温度としてはシートを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+100℃の範囲内かつ樹脂の融点以下に設定することが好ましい。このようにして得られた一軸延伸積層シートは、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、上部に積層する膜との密着性を向上するためのプライマー層を形成することもできる。インラインコーティングの工程において、プライマー層は片面に塗布してもよく、両面に同時あるいは片面ずつ順に塗布してもよい。
【0080】
幅方向の延伸とは、シートに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常はテンターを用いて、シートの両端をクリップで把持しながら搬送して行う。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、1.1~7.0倍が好ましく、1.5~5.0倍が特に好ましい。また、延伸温度としてはシートを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。こうして二軸延伸された積層シートは、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、低配向角およびシートの熱寸法安定性を付与するために熱処理から徐冷する際に、長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理などを併用してもよい。
【0081】
続いて、同時二軸延伸の場合について説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストシートに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。インラインコーティングの工程において、コート層はシートの片面に塗布してもよく、両面に同時あるいは片面ずつ順に塗布してもよい。
【0082】
次に、キャストシートを同時二軸テンターへ導き、シートの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機(テンター)としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式のもの等があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式のものが好ましい。延伸の倍率は樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として2.0~50倍が好ましく、特に4.0~20倍がより好ましい。延伸速度は同じ速度でもよく、異なる速度で長手方向と幅方向に延伸してもよい。また、延伸温度としては交互積層ユニットを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。
【0083】
こうして同時二軸延伸されたシートは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷する際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行ってもよい。熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することもできる。
【0084】
さらに、本発明の積層シートの最表面には、電磁波透過性を高める、または、電磁波反射を起こすなどの目的で、誘電率の異なる層を積層することができる。この時、適した導電性/磁性を示す材料を含有させたコーティング層を塗布してもよく、粘着シートなどを介して異なる樹脂層/メッシュ層などを積層してもよい。また、シート金属被覆技術として使用される、スパッタリング(平面または回転マグネトロンスパッタリングなど)、蒸発(電子ビーム蒸発など)、化学蒸着、有機金属化学蒸着、プラズマ強化/支援/活性化化学蒸着、イオンスパッタリング等で樹脂/金属層を必要な機能に合わせて適宜積層することもできる。
【0085】
さらに本発明の積層シートは、広い周波数帯域を遮蔽できる電磁波反射層を組み合わせて、一部の特定の周波数のみをより強く遮蔽するような積層シートとすることもできる。一方で、積層シート最表面に、表面での電磁波の反射をより低くするための低い複素誘電率を示す新たな層を設け、電磁波吸収の効果をより高めた積層シートとすることもできる。また、後者に加え、積層シートの高い複素誘電率を示す層が、表面からシート内部につれて、層厚みが連続的に減少していく層厚み分布を示すことも好ましい。高い複素誘電率を示す層に添加する電磁波抑制材料の濃度が一定となる積層シートであるため、高い複素誘電率を示す層の厚みを表層から内層につれて連続的に薄くすることで、内層ほど電磁波抑制材料が密に連結する状態となり、複素誘電率が漸増する態様をとる。これにより、電磁波を不用意に反射することなく、積層シート内部に取り込むことができるため、電磁波吸収の効果を高めることが可能となる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例に沿って本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。各特性は、以下の手法により測定した。
【0087】
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
【0088】
(1)層厚み、積層数、積層構造
積層シートの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。より具体的には、透過型電子顕微鏡H-7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件で積層シートの断面を観察して断面写真を撮影し、積層数、積層構成を特定し、かつ顕微鏡の測長機能により各層厚みを測定した。なお、場合によっては、コントラストを高く得るために、RuO4やOsO4などを使用した染色技術を用いるものとし、拡大倍率は1万倍とした。
【0089】
(2)透過減衰量、反射減衰量
測定周波数帯域に併せて、下記のとおり測定ユニットを変更して測定を実施した。
【0090】
(2-1)1GHz~40GHz周波数帯域
アジレント・テクノロジー(株)製のベクトルネットワークアナライザ(E8361A)を用い、積層シートの減衰量を計測した。0.5GHz~18GHzの周波数帯域は外径φ7mm、内径φ3.04mmのドーナツ状である同軸導波管を、18~26.5GHzの周波数帯域は4.32mm×10.67mmの長方形である矩形導波管を、26.5~40GHzの周波数帯域は内部形状が3.56mm×7.11mmの長方形である矩形導波管を、それぞれ用いて測定した。導波管内の電界方向と積層シートのMD方向を平行に設置した場合をMD方向の減衰量、TD方向を平行に設置した場合をTD方向の減衰量とした。測定間隔は、各周波数帯域に対して200点測定できるように設定し測定した。透過減衰量測定では、入射した電磁波に対して透過した電磁波の強度比を表すS21のSパラメータ値の最大値を透過減衰量とした。反射減衰量を測定する場合には、試料である積層シートの背面に、3mmのアルミニウム金属板を設置し、積層シートによる電磁波吸収がない状態では入射した電磁波が全反射する状態とした。入射した電磁波に対して反射した電磁波の強度比を表すS11のSパラメータ値を用いて反射減衰量ピークを解析した。
【0091】
(2-2)40~110GHz周波数帯域(反射減衰量)
150mm角の積層シートに対し、背面にアルミニウム金属板を貼り合せ、測定サンプルを作成した。キーコム社製のレンズアンテナ方式斜入射タイプの電磁波吸収体(電磁波吸収材料)・反射減衰量測定装置LAF-26.5Bを用いて、JIS R 1679(2007年)に準拠し、斜入射15°で電磁波を照射し、33~50GHz(WR-22)、50~75GHz(WR-15)、75~110GHz(WR-10)の各周波数帯域に対して反射減衰量を測定した。電界方向と積層シートのMD方向を平行に設置した場合をMD方向の減衰量、TD方向を平行に設置した場合をTD方向の減衰量とした。なお、当該測定方法では33~40GHzの値も測定されるが、33GHz以上40GHz未満の周波数帯域における反射減衰量は、(2-1)における測定データを用いた。
【0092】
(2-3)40~110GHz周波数帯域(透過減衰量)
積層シートを150mm角の正方形にカットし、キーコム社製のレンズアンテナ方式斜入射タイプの電磁波吸収体(電磁波吸収材料)・反射減衰量測定装置LAF-26.5を180°でセットし、アンテナ間に積層シートを電磁波の進行方向に対して垂直に置いた場合のS21のSパラメータ値を用いて透過減衰量を解析した。電界方向と積層シートのMD方向を平行に設置した場合をMD方向の減衰量、TD方向を平行に設置した場合をTD方向の減衰量とした。
【0093】
(3)比誘電率(ε)、比透磁率(μ)
透過減衰量の測定時にS21のSパラメータ値と併せてS11のSパラメータ値を取得した。該Sパラメータ値からキーサイトテクノロジー社の解析ソフト(N1500A)を用いて、Nicolson-Rossモデルにて比誘電率と比透磁率を算出した。電界ベクトルの振動方向とサンプルのMD方向を平行にした状態で測定した比誘電率をMDε’、MDε’’として、比透磁率をMDμ’、MDμ’’とした。同様にして電界ベクトルの振動方向とサンプルのTD方向を平行にした状態で測定した比誘電率をTDε’、TDε’’として、比透磁率をTDμ’、TDμ’’とした。
【0094】
(4)反射減衰量ムラ
長手方向に30cm間隔で5カ所の反射減衰量を測定し、測定結果の標準偏差を測定結果の平均値で割った値を反射減衰量ムラとして以下のとおり判定した。
〇:減衰量ムラが0以上0.1未満
△:減衰量ムラが0.1以上0.3未満
×:減衰量ムラが0.3以上。
【0095】
(5)体積抵抗
微小抵抗率計(ADVANTEST社R8340)と試験装置(ADVANTEST社R12702A)を用いて、JIS C 2139-3-1(2018年)に準じて測定を行った。印可電圧は1~100Vの間で抵抗値に合わせて調節した。
【0096】
(6)成形性
250mm角に切断した積層シートを真空成型機にて90度に加熱し、成形テストを行った。成形金型は高さ1.5cm、幅12cm、奥行き7cmの箱型を用いた。成形品の善し悪しは、目視観察により以下のとおり判定した。
◎:全く残留空気がなく、良好に成形できた。
○:角に少し空気が残っているが、辺は追従できており、大きなしわがなく箱形の成形品が得られた。
△:箱の形となったものの角に空気が残っており、辺が追従できていない、もしくは大きなしわが入った。
×:成形テスト後に箱の形にならなかった。もしくは、破れが発生した。
【0097】
(各実施例及び各比較例に用いた成分)
<樹脂>
・ポリエチレンテレフタレート樹脂:融点254℃、粘度IVが0.63を示すポリエチレンテレフタレート樹脂
<粒子X>
・カルボニル鉄粒子:Fe含有量97%、比重1.49g/mL、平均粒径(D50)3.5μmのカルボニル鉄粒子
・ε酸化鉄粒子:平均粒径0.1μm、Fe:Ga:O(モル比)=1.98:0.02:3.00のε酸化鉄粒子
・球状センダスト粒子:平均粒径0.1μm、アスペクト比1.0の球状センダスト粒子
・扁平センダスト粒子:平均粒径0.1μm、アスペクト比2.0の扁平センダスト粒子
<粒子Y>
・ケッチェンブラック粒子A:DBP吸油量350mL/100g、嵩密度100g/Lのケッチェンブラック粒子
・ケッチェンブラック粒子B:DBP吸油量500mL/100g、嵩密度150g/Lのケッチェンブラック粒子。
【0098】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート樹脂80質量部に対して、カルボニル鉄粒子を20質量部混合し、二軸混錬押出機を用いてマスターペレットAを作製した。A層を構成する樹脂としてポリエチレンテレフタレート樹脂を、B層を構成する樹脂組成物として上記マスターペレットAを用いた。準備したポリエチレンテレフタレート樹脂及びマスターペレットAをそれぞれ、ペレット状で2台の二軸押出機へ投入し、両者とも280℃で溶融させて混練・押出し、61個のスリットを有するフィードブロックにて合流、スタティックミキサーを1段介して、各層の厚みが均等となるように、最外層をA層とする厚さ方向に交互に61層積層された厚さ1mmの積層シートとした。各項目の評価結果を表1に示す。なお、厚さ方向とは、シート面に垂直な方向をいう。
【0099】
(実施例2~5、11~13、比較例4)
各層の組成及び積層シートの厚みを表1のとおりに調整した以外は、実施例1と同様にして積層シートを得た。各項目の評価結果を表1に示す。なお、積層シートの厚みは押出時のペレット供給量により調整した。以下、比較例3を除き同様である。
【0100】
(実施例6)
ポリエチレンテレフタレート樹脂97質量部に対して、ケッチェンブラック粒子Aを3質量部混合し、二軸混錬押出機を用いてマスターペレットBを作成した。A層を構成する樹脂組成物としてマスターペレットBを用いたこと、積層シートの厚みを表1のとおりに調整したこと以外は実施例1と同様に積層シートを得た。各項目の評価結果を表1に示す。
【0101】
(実施例7)
ポリエチレンテレフタレート樹脂98質量部に対して、ケッチェンブラック粒子Bを2重量部混合し、二軸混錬押出機を用いてマスターペレットCを作成した。A層を構成する樹脂組成物としてマスターペレットCを用いたこと、積層シートの厚みを表1のとおりに調整したこと以外は実施例1と同様に積層シートを得た。各項目の評価結果を表1に示す。
【0102】
(実施例8)
B層の厚みが表層から中央に向けて連続的に増加し、中央から反対側の表層にかけて層厚みが連続的に減少する層厚み分布を示すフィードブロックを用いたこと、積層シートの厚みを表1のとおりに調整したこと以外は実施例3と同様に積層シートを得た。各項目の評価結果を表1に示す。
【0103】
(実施例9)
B層の原料組成を表1のとおりとした以外は実施例1と同様にして厚さ0.5mmの積層シートを得た後、これを85℃にてMD方向に2.5倍に延伸して厚さ0.2mmの積層シートを得た。各項目の評価結果を表1に示す。
【0104】
(実施例10)
原料組成を表1に記載のとおりとした以外は、実施例6と同様にして積層シートを得た。各項目の評価結果を表1に示す。
【0105】
(比較例1)
フィードブロックを2層構成として、スタティックミキサーにて3層積層とする以外は実施例1と同様にして積層シートを得た。各項目の評価結果を表1に示す。
【0106】
(比較例2)
カルボニル鉄粒子を添加せずB層をポリエチレンテレフタレートのみとする以外は実施例1と同様にして積層シートを得た。各項目の評価結果を表1に示す。
【0107】
(比較例3)
ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、カルボニル鉄粒子を2質量部、4質量部、8質量部、16質量部、32質量部、64質量部をそれぞれ添加したマスターペレット(順にマスターペレットD~Iとした。)を作成し、それぞれ280℃にて厚み20μmとなるようにプレスしてシートD~Iとした。プレスシートD、E、F、G、H、I、D、E、F、G、H、Iの順に12枚重ね合わせてさらに180℃の温度にてプレスして積層シートを得た。各項目の評価結果を表1に示す。
【0108】
【0109】
比較例3はプレス成形のため長手方向、幅方向が存在しない。そのため、シート面と平行な任意の一方向、これにシート面内で直交する方向をそれぞれ長手方向、幅方向とみなした。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の積層シートは、3d遷移元素量の異なる2種類の層(A層、B層)を積層することで、従来の単膜あるいは低積層数のシートでは達成困難であった、易成形かつ薄膜でありながら高い電磁波シールド性を達成することができるものである。好ましい態様として、特定の周波数の電磁波のみを急峻に強くシールドすることができるため、類似した周波数帯域の電磁波を使用する装置への誤作動防止や、高周波数の電磁波による大容量情報通信での情報漏洩などを防ぐことができる。具体的には、GHz周波数帯域の電磁波を使用する通信技術を用いる電子機器、通信機器、あるいはそれらを搭載した移動手段として用いる車両、あるいは、交通制御用のあらゆるインフラを含む交通機関へ好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1:入射電磁波
2:透過電磁波
3:電磁波シールド材料
4:電磁波反射層
5:反射電磁波
6:ベースライン
7:反射減衰量ピーク1
8:反射減衰量ピーク1のピークトップ
9:ピークトップにおける反射減衰量I
10:反射減衰量ピーク1の半値幅R
11:電界ベクトルの振動方向
12:電磁波の進行方向
13:投影面
14:振動する電界ベクトルの尖端が描く軌跡