IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-積層体及びそれを用いた包装体 図1
  • 特許-積層体及びそれを用いた包装体 図2
  • 特許-積層体及びそれを用いた包装体 図3
  • 特許-積層体及びそれを用いた包装体 図4
  • 特許-積層体及びそれを用いた包装体 図5
  • 特許-積層体及びそれを用いた包装体 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】積層体及びそれを用いた包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20250415BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20250415BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20250415BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/18 Z
B65D65/02 E
B65D65/40 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020161977
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054775
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】福武 瞳
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】永井 暁
(72)【発明者】
【氏名】若林 寛之
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-047842(JP,A)
【文献】特開2015-120249(JP,A)
【文献】特開2005-186492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる積層体であって、
前記シーラント層は、一方の外層(A)と、他方の外層(B)と、これらの中間に介在する中間層とを有し、
前記外層(A)は基材層側に形成され、前記外層(B)は内容物と接する側に形成されており、
前記外層(A)および外層(B)は、ポリプロピレン樹脂(C)からなり、
前記中間層は、ポリプロピレン樹脂(C)および結晶核剤(D)を含む樹脂組成物からなり、
当該積層体の全体の厚さに対する前記中間層の厚さの比率が10~30%であり、
前記結晶核剤(D)の含有量が、前記中間層におけるポリプロピレン樹脂(C)と結晶核剤(D)の総量を基準として、0.1~10.0質量%である、積層体。
【請求項2】
前記中間層の膜厚が5~15μmである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
ポリプロピレン樹脂(C)がランダムポリプロピレン樹脂及びブロックポリプロピレン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の積層体を用いて形成された包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上にシーラント樹脂としてポリプロピレンを積層した積層体であって、シーラント層と基材との接着性に優れ、内面への油脂成分の浸透を抑制し、耐レトルト性、耐破袋性にも優れる積層体、及びそれを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料、薬品などの包装材において、シーラントフィルムが広く用いられている。前記シーラントフィルムは、包装材の最内層に配置され、ヒートシールされることによって包装体を密閉することができる。このようなシーラントフィルムとして、高いシール強度を示すポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂や、アイオノマー、EMMAなどのコポリマー樹脂が用いられているが、スナック菓子やパン、麺類等の食用油を使用した商品やレトルト食品等に適用される包装材料のシーラントフィルムとしては、耐熱性、耐油性により優れるポリプロピレン樹脂が用いられている。
【0003】
積層体を包装材料として使用する場合、包装材料には食品等の様々な内容物が充填される。特に内容物として油性食品等を充填してレトルト処理をすると、レトルト直後から経時にわたって、シーラントフィルムに油分が吸収されて、接着層が膨潤し、接着強度の低下によるデラミネーションを発生させる欠点があった。このデラミネーションは、内・外部からの衝撃による破袋の原因となるため、油性食品等の内容物の包装材内面への浸透を抑制することが求められている。
【0004】
これらの要求に対して、例えば特許文献1には、多塩基酸成分と多価アルコール成分を共重合成分とし、ポリエステルポリオールをイソホロンジイソシアネートで鎖延長した構造を有するポリエステルポリウレタンと、ポリイソシアネート化合物を含有する接着剤組成物を用いることにより、ラミネート強度が向上する積層フィルムが得られることが開示されている。
【0005】
しかしながら、上記の接着剤の改良により、ラミネート強度は向上するが、包装材内面への油性食品等の内容物の浸透を十分に抑制することはできず、落下時や大きな力がかかったときの耐破袋性という点では十分ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-37508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、耐熱性、ヒートシール性、および耐破袋性に優れ、油性食品等の内容物の浸透を十分に抑制することができる積層体、及びそれを用いて形成された包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の本発明は、少なくとも、基材層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる積層体であって、
前記シーラント層は、一方の外層(A)と、他方の外層(B)と、これらの中間に介在する中間層とを有し、
前記外層(A)は基材層側に形成され、前記外層(B)は内容物と接する側に形成され
ており、
前記外層(A)および外層(B)は、ポリプロピレン樹脂(C)からなり、
前記中間層は、ポリプロピレン樹脂(C)および結晶核剤(D)を含む樹脂組成物からなることを特徴とする積層体である。
【0009】
ポリプロピレン樹脂(C)と結晶核剤(D)を含む樹脂組成物からなる層を、シーラントフィルムの外層(A)と外層(B)の間に中間層として形成することで、ポリプロピレン樹脂(C)の結晶化度を高め、レトルト時の油脂の浸透を中間層で抑制することができ、接着剤の膨潤によるラミネート強度の低下を防ぐことが可能になる。この中間層が内容物と接する外層(B)側に形成される場合、結晶化度の上昇によりシール強度の低下に繋がり、また、接着剤層を介して基材層に接する外層(A)側に形成される場合は、接着剤層への油脂の浸透を抑制できず、ラミネート強度の低下に繋がるため好ましくない。したがって、ポリプロピレン樹脂(C)と結晶核剤(D)を含む樹脂組成物からなる層は、シーラントフィルムの外層(A)と外層(B)の間に中間層として形成されることが望ましい。
【0010】
また、請求項2に記載の本発明は、前記結晶核剤(D)の含有量が、0.1~10.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載の積層体である。前記結晶核剤(D)の含有量が0.1質量%未満では、結晶化度が上がらず、油脂の透過を抑制する効果が小さい。そのため、ラミネート強度の低下を招き、包装袋の破袋のし易さにつながる。また、含有量が10.0質量%より多いと、シーラント層の外層と中間層の結晶化度に差がでるため添加量過多によってもラミネート強度が低下し、破袋のし易さにつながるので好ましくない。
【0011】
また、請求項3に記載の本発明は、前記中間層の膜厚が5~15μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体である。中間層の膜厚が5μm未満の場合、レトルト時に油脂の浸透を防ぐ効果が薄まり、ラミネート強度の低下につながり、また、膜厚が15μmより厚い場合、結晶化度の上昇によりシーラント層の外層と中間層の結晶化度に差がでるためラミネート強度が低下し好ましくない。
【0012】
また、請求項4に記載の本発明は、前記中間層の比率が10~30%を占める請求項1~3に記載の積層体である。10%未満の場合、中間層が薄く油脂が浸透しやすくなってしまいラミネート強度の低下に繋がる。また、30%より高い場合、結晶化度の上昇によりシーラント層の外層と中間層の結晶化度に差がでるためラミネート強度の低下に繋がる。
【0013】
また、請求項5に記載の本発明は、請求項1~4に記載の積層体を用いて形成された包装体である。かかる包装体によれば、上記本発明の積層体を用いて形成されているため、包装体内面への油脂成分の浸透を十分に抑制することができる。
【0014】
また、上記包装体は、加熱処理を施す用途に用いられた場合であっても、加熱処理後も包装体内面への油脂成分の浸透を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐熱性、ヒートシール性、および耐破袋性に優れ、油性食品等の内容物の浸透を十分に抑制することができる積層体、及びそれを用いて形成された包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る積層体の概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るシーラントフィルムの概略断面図である。
図3】従来のシーラントフィルムへの油脂の浸透を模式的に説明する図である。
図4】本発明のシーラントフィルムへの油脂の浸透を模式的に説明する図である。
図5】本発明の実施例1で作製した積層体の概略断面図である。
図6】本発明の実施例で作製したパウチの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<積層体>
図1は、本実施形態に係る積層体1の概略断面図であり、図2は本実施形態に係るシーラントフィルム12の概略断面図である。図1を見てわかるように、積層体1は、基材層10、接着剤層11、シーラントフィルム12と、をこの順に積層したものを基本の構成とし、シーラントフィルム12が内容物と接する最内層に配置された構造を有するものである。そしてシーラントフィルム同士を対向させ、ヒートシールして内容物を収容できる包装体を形成することができる。
【0019】
<基材層>
基材層10は、積層体の支持体として機能する層である。材料としては、プラスチックを主とするフィルムが用いられ、包装体とした際の内容物の種類や充填後の加熱処理の有無など使用条件によって適宜選択される。基材層10の材料としては、一例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどが使用されるが、特に限定されるものではなく、上記材料のうちの1つの材料からなる単層でもよいし、これら単層を積層することによって上記材料のうちの複数の材料が組み合わされた層であってもよい。本実施形態において、基材層10は、ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
【0020】
<シーラントフィルム>
図2を見てわかるように、シーラントフィルム12は中間層15と、その両側(外層(A)13と、外層(B)14)にポリプロピレン樹脂(C)を配した多層構成とすることができる。内容物と接する外層(B)14は、加熱によりヒートシール性を発現することができる層であってもよい。シーラントフィルムは、外層(A)13、中間層15、外層(B)14の3層の樹脂を使用し、3層共押し出し製膜化法により製造することができる。
【0021】
中間層15の膜厚は、5~15μmであることが好ましく、中間層15の膜厚が5μm未満の場合、レトルト時に油脂の浸透を防ぐ効果が薄まり、ラミネート強度の低下につながる。また、膜厚が15μmより厚い場合、結晶化度の上昇によりシーラント層の外層と中間層の結晶化度に差がでるためラミネート強度の低下がみられ好ましくない。
【0022】
また、中間層15の比率は、10~30%であることが好ましく、10%未満の場合、中間層15が薄く油脂が浸透しやすくなってしまい、ラミネート強度の低下に繋がる。また、30%より高い場合、結晶化度の上昇によりシーラント層の外層と中間層の結晶化度に差がでるためラミネート強度の低下に繋がる。
【0023】
中間層15は、下記成分を含む中間層形成用樹脂組成物を用いて形成することができる。以下、中間層形成用樹脂組成物について説明する。
【0024】
<中間層形成用樹脂組成物>
本発明の一実施形態に係る中間層形成用樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂(C)と結
晶核剤(D)を含有し、ポリプロピレン樹脂(C)は、ランダムポリプロピレン樹脂とブロックポリプロピレン樹脂とを適切な配合比率にして使用する。
【0025】
このような中間層形成用樹脂組成物を用いることで、シーラントフィルムをレトルト食品包装材のような湯煎等の加熱処理が施される包装材用途に好適に用いることができ、袋状の包装材が湯煎等の加熱処理によって破袋することを防止し易くなる。
【0026】
ポリプロピレン樹脂(C)は、以下のランダムポリプロピレン樹脂とブロックポリプロピレン樹脂とを組み合わせて用いることができる。
C1:ランダムポリプロピレン(プライムポリマー製:F744NP)。
C2:ランダムポリプロピレン(プライムポリマー製:F-300SP)。
C3:ブロックポリプロピレン(日本ポリプロ製:ノバテックBC5FA)。
C4:ブロックポリプロピレン(日本ポリプロ製:ノバテックBC3HF)。
本実施例および比較例では、C1:C3=1:1に配合して使用した。
【0027】
また、本発明の中間層形成用樹脂組成物は、結晶核剤(D)を含むことが好ましい。本発明において結晶核剤とは樹脂中の結晶成分の量や配向を制御して、剛性、透明性、耐薬品性などの機能改善のために用いられる添加剤である。結晶核剤(D)は特に限定されず、当該分野で通常使用されるものを使用してよいが、以下に示すリン酸エステル系核剤、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤等の有機系核剤から選択されることが好ましい。D1:ノニトール系結晶核剤(大日精化工:クリアマスターPP-RM-SKZ R8020)。
D2:ノニトール系結晶核剤(ミリケン製:ミラードNX8500)。
D3:ソルビトール系結晶核剤(大日精化工製:クリアマスターPP-RMH200)。D4:リン酸エステルアルミニウム塩(アデカ製;アデカスタブNA21)。
本実施例および比較例においては、D1を使用した。
【0028】
中間層15は、上記中間層形成用樹脂組成物を製膜することで形成することができる。製膜条件の具体例としては、ライン速度、製膜温度、冷却温度、冷却方法などが挙げられる。これらの条件を変えて、結晶化度を制御することができる。
【0029】
基材層10とシーラントフィルム12との貼り合わせ方法としては、以下のような、接着剤によるラミネート方法が挙げられるが、それらに限定されない。
【0030】
<接着剤>
接着剤11は、シーラントフィルム12と基材層10とを接着するものである。接着剤11としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。上述した各種ポリオールは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
以上のような、本発明に係る積層体によれば、油性食品等の内容物の浸透を十分に抑制することができる。図3は、従来のシーラントフィルムへの油脂の浸透を模式的に示した図であり、それと比較して図4は、本発明に係るシーラントフィルムの場合である。図4を見てわかるように、中間層15を、シーラントフィルムの外層(A)と外層(B)の間に中間層として形成することで、レトルト時の油脂の浸透を中間層で抑制することができる。
【0032】
<包装体>
本実施形態に係る包装体は、上述した積層体を用いて形成されたものであることによっ
て、包装体として油性食品等の内容物の包装体内面への付着や浸透を抑制することができる。また、80℃以上の加熱処理を施す用途に用いられるものであってもよい。具体的には、レトルト食品包装材のような湯煎等の加熱処理が施される包装体用途に用いられるものであってもよい。本実施形態に係る包装体によれば、このような用途に用いられた場合であっても、加熱処理後も包装体内面への油性食品等の内容物の付着や浸透を抑制できる。
【実施例
【0033】
以下、実施例及び比較例に基づいてサンプルを作製し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]
<中間層形成用樹脂組成物の作製>
ポリプロピレン樹脂(C)成分として、ランダムポリプロピレン樹脂(プライムポリマー製:F744NP)とブロックポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ製:ノバテックBC5FA)、および、結晶核剤(D)成分として、ノニトール系結晶核剤(大日精化工:クリアマスターPP-RM-SKZ R8020)とを混合し、中間層形成用樹脂組成物を調製した。ここで、各成分の含有量は、ポリプロピレン樹脂(C)成分中のランダムポリプロピレンとブロックポリプロピレンとの質量比が1:1となり、且つ、ポリプロピレン樹脂(C)成分及び結晶核剤(D)成分の総量を基準として、結晶核剤(D)成分が0.05質量%、残部がポリプロピレン樹脂(C)成分となるように調整した。
【0035】
<積層体の作製>
3層共押出し機を用いて、中間層形成用樹脂組成物を押出し製膜し、15μmの中間層を含む、75μmのシーラントフィルムを得た。ここで、両側の外層(A)および外層(B)は同一膜厚とする。得られたシーラントフィルムと、基材である厚さ38μmのPETフィルムとを、2液硬化型のポリウレタン系接着剤(三井化学株式会社製)を用いてハンドラミネートし、積層体(図5)を得た。
乾燥条件およびラミネート条件は、下記参照。
乾燥条件:温度70℃、時間1min
ラミネート条件:
ラミネート圧力:0.4MPa
フィルム送り速度:1m/min
温度:60℃
ラミネート後、50℃で4日間放置するエージング処理を行った。
【0036】
[実施例2~5]
中間層形成用樹脂組成物における結晶核剤(D)成分が、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、中間層形成用樹脂組成物、シーラントフィルム及び積層体を作製した。
[実施例6~7]
シーラントフィルムの中間層の厚さを表1に示すように変更したこと以外は実施例3と同様にして、中間層形成用樹脂組成物、シーラントフィルム及び積層体を作製した。
[実施例8~9]
シーラントフィルムの厚さ及び中間層の厚さを表1に示すように変更したこと以外は実施例4と同様にして、中間層形成用樹脂組成物、シーラントフィルム及び積層体を作製した。
[比較例1]
中間層形成用樹脂組成物に結晶核剤(D)成分を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、中間層形成用樹脂組成物、シーラントフィルム及び積層体を作製した。
[比較例2]
実施例3の中間層を、シーラントフィルムの外層(A)(基材層側)に添加したこと以外は実施例1と同様にして、中間層形成用樹脂組成物、シーラントフィルム及び積層体を作製した。
[比較例3]
実施例3の中間層を、シーラントフィルムの外層(B)(内容物側)に添加したこと以外は実施例1と同様にして、中間層形成用樹脂組成物、シーラントフィルム及び積層体を作製した。
【0037】
[油膨潤量の測定]
実施例及び比較例で得られた積層体について、油膨潤量の評価を行った。まず、積層体を縦150mm×横138mmにカットしたサンプルを2枚用意した。2枚のサンプルを、それぞれのシーラントフィルムが内側となるように重ね、縦方向端部の1辺と横方向両端部の2辺とを、ヒートシーラーで8mm幅にわたって熱封緘してシール部を形成し、縦方向端部の一辺が開口しているパウチを作製し(図6を参照)、作製したパウチの重量(W)を測定した。次に、パウチの開口部から食用油(日清オイリオ(株)製 サラダ油)を100g注液し、その後、開口部をヒートシーラーで8mm幅にわたって熱封緘してシール部を形成し、パウチを密閉した。密閉したパウチを121℃30分の加熱加圧殺菌処理(レトルト処理)を行った。レトルト処理後、注液した食用油を排出し、洗剤で洗浄、乾燥後パウチの総重量(W)を測定した。レトルト処理後のパウチの重量(W)と、食用油を注液する前のパウチの重量(W)とから、下記式により油膨潤量(g/cm)を求めた。
油膨潤量(g/cm)=(W-W)/{13.4×12.2×(t×10-4)×2}。
【0038】
[ラミネート強度の測定]
上記のパウチについて、レトルト前後のパウチの基材層(PET)とシーラントフィルム間の引張特性(ラミネート強度)をJIS K7127に準じ測定した。この時のラミネート強度の測定条件および評価基準は、下記参照。
<測定条件>
サンプル幅15mm。
剥離角度:90°(T型剥離)
剥離速度300mm/min
測定装置:RTC-1250 テンシロン万能試験機 (オリエンテック)。
<評価基準>
レトルト後、長手方向(MD)及び幅方向(TD)の平均値で、
〇4.0 (N/15mm)以上
△3.5 (N/15mm)以上、4.0(N/15mm)未満
×3.5 (N/15mm)未満。
【0039】
[シール強度の測定]
上記のパウチについて、レトルト前後のシール部の引張特性(シール強度)をJIS Z1707に準じ測定した。この時のシール強度の測定条件および評価基準は、下記参照。
<測定条件>
サンプル幅15mm。
剥離角度:90°(T型剥離)
剥離速度300mm/min
測定装置:RTC-1250 テンシロン万能試験機 (オリエンテック)。
<評価基準>
レトルト後、長手方向(MD)及び幅方向(TD)の平均値で、
〇 35.0(N/15mm)以上
× 35.0(N/15mm)未満。
【0040】
[落袋試験]
耐破袋性を測定する方法は各種あるが、機械に頼らない簡便な方法としては、落袋試験がよく利用される。完全に密封できる袋を作り、一定量の水を封入して、一定の高さから落下させ、破袋の有無を調べる試験である。上記のパウチについて、レトルト処理後(121℃、30min)、落袋試験を行った。
この時の落袋試験条件および評価基準は、下記参照。
<落袋試験条件>
落下高さ:100cm
落下回数:10回
試行回数(n数):5
<評価基準>
〇 n5全て破袋せず
× n5中、a個が破袋(→a/5と表記)。
【0041】
油膨潤量の測定、ラミネート強度の測定、シール強度の測定、落袋試験の結果をまとめて表1に示す。
【0042】
【表1】
表1に示した実施例1~9の結果から、
結晶核剤(D)の含有量が、0.1~10.0質量%でラミネート性およびシール性は良好となり、範囲外の0.05%や20%では、不十分であった。
また、中間層の膜厚が5~15μmのとき、ラミネート強度およびシール強度は良好で、範囲外の5μm未満や、15μmより厚いとラミネート強度が低下する。
また、中間層の比率が10~30%のとき、ラミネート強度およびシール強度は良好で、範囲外の10%より低いときや、30%より高いときラミネート強度が低下する。
また、比較例1~3から、
シーラント層の中間層は、基材層側の外層(A)に含まれるとラミネート強度が低下し、内容物側の外層(B)に含まれるとシール強度が低下することがわかった。したがって中間層は、中間に介在することが、ラミネート強度およびシール強度のどちらも保持し、しかもシーラント層の中間で油脂の浸透を抑制できるので、適切な配置と言える。また、ラミネート強度およびシール強度のどちらかが不十分であると、レトルト処理後の耐破袋性は不十分であった。
【符号の説明】
【0043】
1・・・・・・・積層体
10・・・・・・基材層
11・・・・・・接着剤層
12・・・・・・シーラント層
13・・・・・・シーラント層の外層(A)(基材層側)
14・・・・・・シーラント層の外層(B)(内容物側)
15・・・・・・中間層
20・・・・・・積層体を用いて形成したパウチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6