(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】ネットワーク機器、及びネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 13/36 20060101AFI20250415BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
G06F13/36 310E
H04L12/28 400
(21)【出願番号】P 2021009871
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】池上 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 孝史
【審査官】松平 英
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-187309(JP,A)
【文献】特開2000-151755(JP,A)
【文献】特開2000-040039(JP,A)
【文献】特開2011-010190(JP,A)
【文献】特開2020-141282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/00
3/18
13/00-13/14
13/20-13/42
H04L12/00-12/28
12/44-12/66
45/00-49/9057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ装置と、前記マスタ装置により制御される複数のスレーブ装置が接続されるネットワークシステムに用いられるスレーブ装置であるネットワーク機器であって、
上流側の他機との間で通信を行う第1の通信部と、
下流側の他機との間で通信を行う少なくとも1つの第2の通信部と、
当該ネットワーク機器の各部を制御する制御部と、を備え、
前記第2の通信部は、他機からの信号が到達しているか否かと、更に、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われているか否か、を検出できる通信状態検出部を有し、
前記制御部は、
前記通信状態検出部が、他機からの信号が到達していないこと、または、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われていることを検出した
時点で即座に、当該第2の通信部による通信の遮断をさせる、ネットワーク機器。
【請求項2】
前記第2の通信部を複数備え、
更に複数の前記第2の通信部の間の接続を切り替える切替回路を備え、
前記制御部は、
前記切替回路を制御して、複数の前記第2の通信部の少なくとも一部にそれぞれ接続された他機をデージーチェーン接続させるとともに、
前記第2の通信部による前記遮断をさせる場合には、当該第2の通信部を除いて他機をデージーチェーン接続させるように切替えさせる、請求項1に記載のネットワーク機器。
【請求項3】
マスタ装置と、前記マスタ装置により制御される複数のスレーブ装置が接続されるネットワークシステムに用いられるスレーブ装置であるネットワーク機器であって、
上流側の他機との間で通信を行う第1の通信部と、
当該ネットワーク機器の各部を制御する制御部と、を備え、
更に、下流側の他機との間で通信を行う第2の通信部を複数備え、
前記第1の通信部に複数の前記第2の通信部がループ状に接続されており、
前記第2の通信部は、
他機からの信号が到達しているか否かと、更に、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われているか否か、を検出できる通信状態検出部と、当該他機をネットワークから離脱させる切替部と、を備え、
前記制御部は、
前記通信状態検出部が、他機からの信号が到達していないこと、または、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われていることを検出した
時点で即座に、前記切替部により、当該他機をネットワークから離脱させる、ネットワーク機器。
【請求項4】
前記通信状態検出部は、他機からの信号の振幅の値に基づいて、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われているか否かを検出する、請求項1~3のいずれか1項に記載のネットワーク機器。
【請求項5】
前記通信状態検出部は、他機からの信号のパルス幅の値に基づいて、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われているか否かを検出する、請求項1~3のいずれか1項に記載のネットワーク機器。
【請求項6】
前記通信状態検出部は、他機との間での通信における符号則エラーの値に基づいて、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われているか否かを検出する、請求項1~3のいずれか1項に記載のネットワーク機器。
【請求項7】
マスタ装置と、前記マスタ装置により制御される複数のスレーブ装置が接続されるネットワークシステムであって、
請求項1から6のいずれか1項に記載のネットワーク機器が、前記スレーブ装置として接続されている、ネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ネットワーク機器、及びこれを用いたネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ファクトリーオートメーション(Factory Automation:FA)の分野においては、作業の工程を分担する様々な種類の装置の制御が行われる。工場施設等一定の領域において作業に用いられる各種のコントローラ、リモートI/O、および製造装置を連携して動作させるために、これらの装置を接続する、フィールドネットワークとも呼ばれる産業用ネットワークが構築されている。
【0003】
一般的な産業用ネットワークでは、各種のスレーブ装置と、マスタ装置などから構成されるマスタスレーブ方式が採用される。スレーブ装置は、工場内に設置される設備の制御あるいはデータ収集を行う装置である。マスタ装置は、これらのスレーブ装置を集中管理する、例えば(PLC:Programmable Logic Controller)と呼ばれる装置である。
【0004】
従来のネットワークシステムには、マスタ装置に対して、複数のスレーブ装置をデージーチェーン接続させる技術が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術では、ネットワークが稼動中に当該ネットワークから、通信ケーブルの取り外しによりスレーブ装置を離脱させる場合に、ネットワークの通信が途絶するという問題点を生じることがあった。
【0007】
本開示は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、ネットワークが稼動中に当該ネットワークから、通信ケーブルの取り外しによりスレーブ装置を離脱させる場合に、ネットワークの通信が途絶するのを防ぐことができるネットワーク機器、及びネットワークシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、上述の課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0009】
本開示の一側面に係るネットワーク機器は、マスタ装置と、前記マスタ装置により制御される複数のスレーブ装置が接続されるネットワークシステムに用いられるスレーブ装置であるネットワーク機器であって、上流側の他機との間で通信を行う第1の通信部と、下流側の他機との間で通信を行う少なくとも1つの第2の通信部と、当該ネットワーク機器の各部を制御する制御部と、を備え、前記第2の通信部は、他機からの信号が到達しているか否かと、更に、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われているか否か、を検出できる通信状態検出部を有し、前記制御部は、前記通信状態検出部が、他機からの信号が到達していないこと、または、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われていることを検出した場合に、当該第2の通信部による通信の遮断をさせる構成を備えている。
【0010】
上記構成によれば、ネットワークが稼動中に当該ネットワークから、通信ケーブルの取り外しによりスレーブ装置を離脱させる場合でも、ネットワークの通信が途絶するのを防ぐことができる。
【0011】
上記一側面に係るネットワーク機器において、前記第2の通信部を複数備え、更に複数の前記第2の通信部の間の接続を切り替える切替回路を備え、前記制御部は、前記切替回路を制御して、複数の前記第2の通信部の少なくとも一部にそれぞれ接続された他機をデージーチェーン接続させるとともに、前記第2の通信部による前記遮断をさせる場合には、当該第2の通信部を除いて他機をデージーチェーン接続させるように切替えさせる構成を備えていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、ネットワークが稼動中に当該ネットワークから、通信ケーブルの取り外しによりスレーブ装置を離脱させる場合でも、ネットワークの通信が途絶するのを防ぎつつ、複数のスレーブ装置をデージーチェーン接続させることができる。
【0013】
また、本開示の別の一側面に係るネットワーク機器は、マスタ装置と、前記マスタ装置により制御される複数のスレーブ装置が接続されるネットワークシステムに用いられるスレーブ装置であるネットワーク機器であって、上流側の他機との間で通信を行う第1の通信部と、当該ネットワーク機器の各部を制御する制御部と、を備え、更に、下流側の他機との間で通信を行う第2の通信部を複数備え、前記第1の通信部に複数の前記第2の通信部がループ状に接続されており、前記第2の通信部は、他機からの信号が到達しているか否かと、更に、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われているか否か、を検出できる通信状態検出部と、当該他機をネットワークから離脱させる切替部と、を備え、前記制御部は、前記通信状態検出部が、他機からの信号が到達していないこと、または、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われていることを検出した場合に、前記切替部により、当該他機をネットワークから離脱させる構成を備えている。
【0014】
上記構成によれば、ネットワークが稼動中に当該ネットワークから、通信ケーブルの取り外しによりスレーブ装置を離脱させる場合でも、第2の通信部のそれぞれが、ネットワークの通信が途絶するのを防ぎつつ、複数のスレーブ装置をデージーチェーン接続させることができる。
【0015】
上記一側面に係るネットワーク機器において、前記通信状態検出部は、他機からの信号の振幅の値に基づいて、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われているか否かを検出する構成を備えていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、上記複数の信号線のうち一部のみが接続された状態での高精度な検出を確実に行うことができる。
【0017】
上記一側面に係るネットワーク機器において、前記通信状態検出部は、他機からの信号のパルス幅の値に基づいて、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われているか否かを検出する構成を備えていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、上記複数の信号線のうち一部のみが接続された状態での高精度な検出を確実に行うことができる。
【0019】
上記一側面に係るネットワーク機器において、前記通信状態検出部は、他機との間での通信における符号則エラーの値に基づいて、当該他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われているか否かを検出する構成を備えていてもよい。
【0020】
上記構成によれば、上記複数の信号線のうち一部のみが接続された状態での高精度な検出を確実に行うことができる。
【0021】
また、本開示の一側面に係るネットワークシステムは、マスタ装置と、前記マスタ装置により制御される複数のスレーブ装置が接続されるネットワークシステムであって、上記いずれかのネットワーク機器が、前記スレーブ装置として接続されている構成を備えている。
【0022】
上記構成によれば、ネットワークが稼動中に当該ネットワークから、通信ケーブルの取り外しによりスレーブ装置を離脱させる場合でも、ネットワークの通信が途絶するのを防ぐことができるネットワークシステムを構成することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、ネットワークが稼動中に当該ネットワークから、通信ケーブルの取り外しによりスレーブ装置を離脱させる場合でも、ネットワークの通信が途絶するのを防ぐことができるネットワーク機器、及びネットワークシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の実施形態1に係るネットワークシステムの構成例を説明する説明図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係るネットワーク機器(スレーブ装置)を示す概略構成図である。
【
図3】上記ネットワーク機器において、ネットワーク稼働中にスレーブ装置側で通信ケーブルを引き抜いた場合での各部の状態を説明する図である。
【
図4】比較例において、ネットワーク稼働中にスレーブ装置側で通信ケーブルを引き抜いた場合での問題点を説明する図である。
【
図5】上記比較例において、上記問題点が発生したときの各部の状態を説明する説明図である。
【
図6】本開示の実施形態2に係るネットワーク機器において、ネットワーク稼働中にスレーブ装置側で通信ケーブルを引き抜いた場合での各部の状態を説明する図である。
【
図7】本開示の実施形態4に係るネットワークシステムの構成例を説明する説明図である。
【
図8】本開示の実施形態4に係るネットワーク機器(スレーブ装置)を示す概略構成図である。
【
図9】本開示の実施形態5に係るネットワーク機器(スレーブ装置)を示す概略構成図である。
【
図10】
図9に示したネットワーク機器において、ネットワーク稼働中にスレーブ装置側で通信ケーブルを引き抜いた場合での動作例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施形態1〕
§1 適用例
まず、
図1及び
図2を用いて、本開示が適用される場面の一例について説明する。
図1は、本開示の実施形態に係るネットワークシステムの構成例を説明する説明図である。
図2は、本開示の実施形態に係るネットワーク機器(スレーブ装置)を示す概略構成図である。
【0026】
なお、以下の説明では、本実施形態のネットワークシステム100において、複数のスレーブ装置として、例えば、4つのスレーブ装置2A、2B、2C、2Dを接続した場合を例示して説明する。また、スレーブ装置2A~2Dのいずれかのスレーブ装置が、本実施形態のネットワーク機器を構成する場合には、ネットワーク機器2Nともいう。
【0027】
本実施形態のネットワークシステム100は、マスタ装置1と、当該マスタ装置1に制御される複数のスレーブ装置2A~2Dが接続されるネットワークシステムである。また、本実施形態のネットワーク機器2Nは、ネットワークシステム100に対して、1つの上記スレーブ装置として接続される。
【0028】
また、本実施形態のネットワークシステム100では、ネットワーク機器2Nとして、スレーブ装置2Aに適用した場合を例示して説明する。このスレーブ装置2Aは、
図1に示されるように、複数、例えば、3つのスレーブ装置2B、2C、2Dが接続される分岐スレーブ装置を構成している。
【0029】
また、本実施形態のネットワーク機器2Nは、ネットワークシステム100での上流側の他機との間で通信を行う第1の通信部21と、ネットワークシステム100での下流側の他機との間で通信を行う少なくとも1つの第2の通信部22A、22B、22Cと、複数の第2の通信部22A~22Cの間の接続を切り替える切替回路24と、当該ネットワーク機器2Nの各部を制御する制御部25と、を備える。
【0030】
第2の通信部22A、22B、22Cは、それぞれ通信状態検出部23A、23B、23Cを有する。通信状態検出部23A~23Cは、他機からの信号が到達しているか否かを検出できる。また、通信状態検出部23A~23Cは、他機の通信ケーブル用コネクタが片側接触状態で当該他機との間で通信が行われているか否かを検出できる。
【0031】
切替回路24は、第1の通信部21に接続されたポートP0、及び第2の通信部22A、22B、22Cにそれぞれ接続されたポートP1、P2、P3を有する。
【0032】
制御部25は、通信状態検出部23A~23Cの検出結果に基づいて、切替回路24のポートP1~P3を制御することにより、第2の通信部22A~22Cの通信状態(リンク)を変更する。つまり、制御部25は、ポートP1~P3をオープンとすることにより、第2の通信部22A~22Cによる通信を許容する。一方、制御部25は、ポートP1~P3をクローズとすることにより、第2の通信部22A~22Cによる通信の遮断をさせる。
【0033】
よって本実施形態によれば、例えば、通信状態検出部23Aが片側接触状態を検知し、その場合にスレーブ装置2Bをネットワークから離脱させる。そのため、ネットワーク稼動中に通信ケーブルをスレーブ装置2Aから引き抜くことにより、スレーブ装置2Bを離脱させる場合でも、ネットワークの通信が途絶するのを防ぐことができるネットワーク機器2N及びこれを用いたネットワークシステム100を構成することができる。
【0034】
§2 構成例
<ネットワークシステム>
図1の例では、本実施形態のネットワークシステム100は、マスタ装置1と、マスタ装置1に接続される複数のスレーブ装置2A~2Dとを備える。
【0035】
また、本実施形態のネットワークシステム100では、例えば、Ether CAT(Ethernet for Control Automation Technology:登録商標)規格のネットワークシステムが用いられている。
【0036】
また、本実施形態のネットワークシステム100では、例えば、通信ケーブルを使用して、マスタ装置1、及びスレーブ装置2A~2Dが
図1に例示するように接続されており、通信ケーブルを介在させて通信を行うようになっている。
【0037】
マスタ装置1は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)を含んでいる。また、マスタ装置1は、情報処理装置3から設定される所定のプログラムに従って、動作することにより、複数の各スレーブ装置2A~2Dの制御を行うように構成されている。
【0038】
<ネットワーク機器>
図2の例では、本実施形態のネットワーク機器2Nは、第1の通信部21、3つの第2の通信部22A、22B、22C、切替回路24、及び制御部25を備える。また、本実施形態のネットワーク機器2Nでは、通信状態検出部23A、23B、23Cがそれぞれ第2の通信部22A、22B、22Cに設けられている。
【0039】
また、本実施形態のネットワーク機器2Nは、上記分岐スレーブ装置を構成しており、マスタ装置1に対して、第2の通信部22A、22B、22Cにそれぞれ接続されたスレーブ装置2B、2C、2Dをデージーチェーン接続している。
【0040】
第1の通信部21は、通信装置5を介在させてマスタ装置1と通信ケーブルによって接続されることで、当該マスタ装置1との間で信号を送受信する機能ブロックである。
【0041】
また、第2の通信部22A、22B、22Cは、それぞれスレーブ装置2B、2C、2Dと通信ケーブルによって接続されることで、当該スレーブ装置2B、2C、2Dとの間で信号を送受信する機能ブロックである。
【0042】
通信状態検出部23A~23Cは、それぞれ第2の通信部22A~22Cが受信した信号の振幅の値を検出する機能ブロックである。通信状態検出部23A~23Cは、検出した振幅の値が予め設定された第1の閾値以上である場合に、それぞれ第2の通信部22A~22Cにスレーブ装置2B~2Dからの信号が正常に到達しているとして、切替回路24を介在させて制御部25に対し、第2の通信部22A~22Cによる通信が正常状態である旨の信号を通知する。
【0043】
また、通信状態検出部23A~23Cは、検出した振幅の値が予め設定された第1の閾値未満である場合に、それぞれスレーブ装置2B~2Dとの間での通信において、当該スレーブ装置2B~2Dの通信ケーブル用コネクタが片側接触状態で行われているとして、切替回路24を介在させて制御部25に対し、第2の通信部22A~22Cによる通信が異常状態である旨の信号を通知する。
【0044】
尚、ここでいう通信ケーブル用コネクタでの片側接触状態とは、当該通信ケーブル用コネクタが接触対象の通信ケーブルのコネクタに対して不完全な接触状態となる状態をいう。より具体的には、片側接触状態とは、例えば、当該通信ケーブル用コネクタに設けられた一対の接触ピンのうち、一方の接触ピンが通信ケーブルのコネクタのピンにほぼ完全に接触し、他方の接触ピンが接触していない状態をいう。
【0045】
また、この片側接触状態では、相手側のスレーブ装置と当該第2の通信部との間で大きくインピーダンス不整合を生じている状態となるものの、信号は伝達可能である。
【0046】
また、本実施形態のネットワークシステム100では、種々のメーカーのスレーブ装置を挿抜することが可能であるが、本開示の発明者等は、このような多種のスレーブ装置に接続された通信ケーブルのコネクタの形状などによっては、そのコネクタを引き抜く場合に、上記のような片側接触状態を生じることがあることを見出した。
【0047】
また、通信状態検出部23A~23Cは、検出した振幅の値が“0”の値である場合に、それぞれ第2の通信部22A~22Cにスレーブ装置2B~2Dからの信号が到達していないとして、切替回路24を介在させて制御部25に対し、第2の通信部22A~22Cによる通信が遮断状態である旨の信号を通知する。
【0048】
切替回路24は、制御部25からの指示の信号に基づいて、ポートP0、P1、P2、P3の動作状態をオープンまたはクローズとして、対応する第1の通信部21または第2の通信部22A~22Cとのリンクの状態をそれぞれオンまたはオフとする。
【0049】
また、切替回路24は、制御部25からの指示の信号に基づいて、例えば、
図2に矢印D1、D2、D3、D4にて示すように、マスタ装置1に対し、スレーブ装置2B、2C、2Dを順次接続したデージーチェーン接続をさせている。
【0050】
また、切替回路24は、制御部25からの指示の信号に基づいて、例えば、第2の通信部22Aによる通信の遮断をさせる場合には、当該第2の通信部22Aを除いて他機のスレーブ装置2C、2Dをデージーチェーン接続させるように切替える。
【0051】
これにより、本実施形態のネットワーク機器2Nでは、例えば、ネットワーク稼動中に通信ケーブルをスレーブ装置2Aから引き抜くことにより、スレーブ装置2Bを離脱させる場合でも、当該ネットワーク機器2Nがスレーブ装置2C、2Dへの切替動作を適切に行って、他のスレーブ装置2C、2Dとの間の通信(つまり、ネットワークの通信)が途絶するのを防ぐことができる(詳細は後述)。
【0052】
制御部25は、情報処理の実行によって各構成要素の制御を行う機能ブロックである。また、制御部25は、通信状態検出部23A~23Cから第2の通信部22A~22Cによる通信が異常状態である旨の信号が通知された場合、当該第2の通信部22A~22Cによる通信の遮断をさせるように切替回路24を制御する。すなわち、制御部25は、切替回路24に対して、対応するポートP1~P3の状態をクローズとさせて、対応する第2の通信部22A~22Cとのリンクの状態をオフにする。
【0053】
尚、上記の切替回路24の機能と、制御部25の機能は、一体のIC(Integrated Circuit)チップとして実現されていてもよい。
【0054】
§3 動作例
<切替動作>
図3も参照して、本実施形態のネットワーク機器2Nの動作例について具体的に説明する。
図3は、上記ネットワーク機器において、ネットワーク稼働中にスレーブ装置側で通信ケーブルを引き抜いた場合での各部の状態を説明する図である。
【0055】
尚、以下の説明では、
図2において、例えば、ネットワーク稼働中にスレーブ装置2B側でその通信ケーブルを引き抜いて当該スレーブ装置2Bを離脱させる場合での切替動作について説明する。また、以下の説明では、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタが片側接触状態で引き抜かれる場合を例示して説明する。
【0056】
図3の時点T1までは、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタの引き抜き動作が行われておらず、本実施形態のネットワーク機器2Nでは、第2の通信部22Aに対して、スレーブ装置2Bが正常に接続されている。つまり、時点T1までは、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタは、第2の通信部22Aに正常に接触している。
【0057】
また、通信状態検出部23Aは、第2の通信部22Aで受信した信号の振幅の値として、上記第1の閾値以上の値である、値A0を検出しており、制御部25に対して、第2の通信部22Aによる通信が正常状態である旨の信号を通知する。
【0058】
この結果、制御部25は、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタでの通信状態が正常通信であると判別して、第2の通信部22Aのリンクの状態をオンとし、更にポートP1の状態をオープンとするように切替回路24の制御を行う。
【0059】
そして、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタの引き抜き動作が時点T1から開始されて時点T2で終了するまでは、本実施形態のネットワーク機器2Nでは、上記片側接触状態が発生して、第2の通信部22Aに対して、スレーブ装置2Bが正常に接続されなくなる。
【0060】
すなわち、時点T1から時点T2までの期間THでは、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタは片側接触状態となって第2の通信部22Aとの間でインピーダンス不整合を生じて、当該コネクタは、第2の通信部22Aに対して、正常に接触していない。
【0061】
また、通信状態検出部23Aは、時点T1で、第2の通信部22Aで受信した信号の振幅の値として、上記第1の閾値未満の値である、値A1を検出しており、制御部25に対して、第2の通信部22Aによる通信が異常状態である旨の信号を通知する。
【0062】
この結果、制御部25は、時点T1で、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタでの通信状態が正常通信でないと判別して、第2の通信部22Aのリンクの状態をオフとし、更にポートP1の状態をクローズとするように切替回路24の制御を行う。これにより、第2の通信部22Aによる通信が遮断されて、スレーブ装置2Bは、ネットワークシステム100から電気的に切り離される。
【0063】
更に、制御部25は、時点T1で、切替回路24を制御して、第2の通信部22Aによる通信の遮断をさせたので、制御部25は、時点T1で、当該第2の通信部22Aを除いてスレーブ装置2C(他機)をデージーチェーン接続させるように切替えさせる。
【0064】
つまり、制御部25は、
図2において、ポートP0とポートP1とを接続させて、第1の通信部21が受信したマスタ装置1からの信号を第2の通信部22Bを通じてスレーブ装置2Cに送信するように、切替回路24を制御する。
【0065】
その後、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタの引き抜き動作が時点T2で終了した後は、本実施形態のネットワーク機器2Nでは、第2の通信部22Aに対して、スレーブ装置2Bが完全に乖離される。つまり、時点T2以降では、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタは、第2の通信部22Aから完全に離間している。
【0066】
また、通信状態検出部23Aの検出結果は、“0”の値を示し、上記コネクタとの通信が通信不可、つまり、スレーブ装置2Bからの信号が到達していないとして、制御部25に対して、第2の通信部22Aによる通信が遮断状態である旨の信号を通知する。この結果、制御部25は、切替回路24に対して、第2の通信部22Aに関する制御の指示を行わない。
【0067】
ここで、期間THでは、
図3に示すように、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタの片側接触状態に起因して、当該コネクタと第2の通信部22Aとの間において、不正通信が行われる。しかしながら、本実施形態のネットワーク機器2Nでは、通信状態検出部23が異常を検出した時点T1で、第2の通信部22Aのリンクの状態をオフとし、更にポートP1の状態をクローズとしているので、この不正通信の影響を受けることなく、スレーブ装置2Cへの切替動作を行うことができる。
【0068】
また、上記のような不正通信は、上記コネクタを脱着することに要する時間よりも、ネットワークシステム100での信号の通信間隔期間(つまり、ネットワークでの通信フレームの送出周期)が短いために、発生する。言い換えれば、本実施形態では、上記片側接触状態を検出した時点で即座に該当するスレーブ装置2Bを電気的に接続または非接続とするので、通信フレームの送出周期に関わらず、スレーブ装置2Bの切替動作を適切に行うことができる。
【0069】
詳細にいえば、例えば、2つのスレーブ装置2A、2Bの間の通信として、有効なフレームと無意味なフレーム(アイドルフレーム)が流れている。そして、有効なフレームが流れているときに、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタの引き抜き動作によって片側接触状態となると、その有効なフレームは壊れて不正なフレームとなる。このような不正なフレームが2回以上連続で発生すると、スレーブ装置2A、2Bの間は通信途絶となる。
【0070】
これに対して、本実施形態では、上記のように、片側接触状態を検出した時点で即座に該当するスレーブ装置2Bが接続されたポートP1の状態をクローズとしている。この結果、本実施形態では、次の有効なフレームが壊れた不正フレームとなるのを防ぐことができ、当該次の有効なフレームをスレーブ装置2Cに送出してスレーブ装置2Cへの切替動作を適切に行うことができる。
【0071】
以下、
図4及び
図5を参照して、不適切な切替動作について具体的に説明する。
図4は、比較例において、ネットワーク稼働中にスレーブ装置側で通信ケーブルを引き抜いた場合での問題点を説明する図である。
図5は、上記比較例において、上記問題点が発生したときの各部の状態を説明する説明図である。
【0072】
比較例のネットワーク機器では、第2の通信部122A~122Cにおいて、片側接触状態を検知する機能が無い他は、実施形態1に係るネットワーク機器2Nと同様である。
【0073】
具体的にいえば、
図4に示すように、比較例は、マスタ装置11と、分岐スレーブ装置S1と、スレーブ装置12A、12B、12Cを備える。分岐スレーブ装置S1は、第1の通信部121と、3つの第2の通信部122A、122B、122Cと、ポートP10、P11、P12、P13を有する切替回路124を備える。
【0074】
第1の通信部121には、例えば、マスタ装置11が接続され、第2の通信部122A、122B、122Cには、例えば、他のスレーブ装置12A、12B、12Cがそれぞれ接続されている。
【0075】
ここで、比較例において、例えば、ネットワーク稼動中に通信ケーブルを分岐スレーブ装置S1から引き抜くことにより、スレーブ装置12Aを離脱させる場合、当該スレーブ装置12Aの通信ケーブル用コネクタが片側接触状態となる。この結果、比較例では、
図4に実線の矢印D11にて示すように、マスタ装置11からの信号が、スレーブ装置12Aまでは到達する。
【0076】
しかしながら、比較例では、
図4に点線の矢印D12、D13、D14にて示すように、マスタ装置11からの信号が、スレーブ装置12Aと第2の通信部122Aとの間の片側接触状態の箇所で、不正通信、すなわち通信内容に多数のエラーが含まれている信号の通信が行われる。
【0077】
この結果、比較例では、マスタ装置11からの信号は、スレーブ装置12B、12Cに正常に送達されずに、これらのスレーブ装置12B、12Cのデージーチェーン接続がダウンして、比較例のネットワークでは、通信の途絶が発生する。
【0078】
具体的にいえば、比較例では、本実施形態と異なり、片側接触状態を検出する通信状態検出部23A~23Cを備えていないので、
図3に例示した本実施形態の場合と異なり、時点T1で、上記不正通信が発生しても、第2の通信部122Aのリンクの状態がオフとされず、またポートP11の状態もクローズにされない。
【0079】
このため、比較例では、マスタ装置11からの信号が片側接触状態(断線箇所)のスレーブ装置12Aに向けて送信され続けて、当該信号がスレーブ装置12B、12Cに到達せずに、ネットワークで通信の途絶が発生する。すなわち、比較例では、デージーチェーン接続を実行することが不可能となる。
【0080】
これに対して、本実施形態のネットワーク機器2N及びネットワークシステム100では、
図3に示したように、制御部25は、上記片側接触状態が発生した時点T1で、第2の通信部22Aによる通信の遮断をさせる。この結果、本実施形態のネットワーク機器2N及びネットワークシステム100では、オンラインでスレーブ装置2Bを脱着した場合でも、他のスレーブ装置2C、2Dとの間の通信が途絶するのを防ぐことができる。
【0081】
また、比較例での上記のような問題点は、本開示の発明者等が、実際のネットワークシステムにおいて、ネットワーク稼動中に通信ケーブルをスレーブ装置から引き抜くことにより、他のスレーブ装置を離脱させた場合に生じたことを知見したものである。そして、本開示の発明者等は、本実施形態のネットワーク機器2N及びネットワークシステム100を用いることにより、ネットワークが稼動中に当該ネットワークから、通信ケーブルの取り外しによりスレーブ装置を離脱させる場合でも、ネットワークの通信が途絶するのを防ぐことができることを見出した。
【0082】
また、本実施形態では、通信状態検出部23Aは、スレーブ装置2B(他機)からの信号の振幅の値に基づいて、通信が上記片側接触状態で行われているか否かを検出するので、当該片側接触状態の高精度な検出を確実に行うことができる。
【0083】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0084】
本実施形態と上記実施形態との主な相違点は、通信状態検出部23A~23Cがスレーブ装置2B~2Dからの信号のパルス幅の値に基づいて、通信が上記片側接触状態で行われているか否かを検出する点である。つまり、本実施形態の通信状態検出部23A~23Cは、片側接触状態のときに、信号の波形が正常時よりも小さくなるために検知されるパルス幅が小さくなることを検出することにより、当該片側接触状態を検出するようになっている。
【0085】
すなわち、本実施形態では、通信状態検出部23A~23Cは、それぞれ第2の通信部22A~22Cが受信した信号のパルス幅の値を検出する機能ブロックである。通信状態検出部23A~23Cは、検出したパルス幅の値が予め設定された第2の閾値以上である場合に、それぞれ第2の通信部22A~22Cにスレーブ装置B~2Dからの信号が到達しているとして、切替回路24を介在させて制御部25に対し、第2の通信部22A~22Cによる通信が正常状態である旨の信号を通知する。
【0086】
また、通信状態検出部23A~23Cは、検出したパルス幅の値が予め設定された第2の閾値未満である場合に、それぞれスレーブ装置2B~2Dとの間での通信において、当該スレーブ装置2B~2Dの通信ケーブル用コネクタが片側接触状態で行われているとして、切替回路24を介在させて制御部25に対し、第2の通信部22A~22Cによる通信が異常状態である旨の信号を通知する。
【0087】
また、通信状態検出部23A~23Cは、検出したパルス幅の値が“0”の値である場合に、それぞれ第2の通信部22A~22Cにスレーブ装置2B~2Dからの信号が到達していないとして、切替回路24を介在させて制御部25に対し、第2の通信部22A~22Cによる通信が遮断状態である旨の信号を通知する。
【0088】
以下、
図6を参照して、本実施形態のネットワーク機器2Nの動作例について具体的に説明する。
図6は、本開示の実施形態2に係るネットワーク機器において、ネットワーク稼働中にスレーブ装置側で通信ケーブルを引き抜いた場合での各部の状態を説明する図である。尚、以下の説明では、実子形態1において、
図3を用いて説明した場合と同様に、例えば、スレーブ装置2Bをオンラインで引き抜いた場合での切替動作について説明する。
【0089】
図6の時点T1までは、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタの引き抜き動作が行われておらず、本実施形態のネットワーク機器2Nでは、第2の通信部22Aに対して、スレーブ装置2Bが正常に接続されている。
【0090】
つまり、時点T1までは、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタは、第2の通信部22Aに正常に接触している。また、通信状態検出部23Aは、第2の通信部22Aで受信した信号のパルス幅の値として、上記第2の閾値以上の値である、値P0を検出しており、制御部25に対して、第2の通信部22Aによる通信が正常状態である旨の信号を通知する。
【0091】
この結果、制御部25は、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタでの通信状態が正常通信であると判別して、第2の通信部22Aのリンクの状態をオンとし、更にポートP1の状態をオープンとするように切替回路24の制御を行う。
【0092】
そして、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタの引き抜き動作が時点T1から開始されて時点T2で終了するまでは、本実施形態のネットワーク機器2Nでは、上記片側接触状態が発生して、第2の通信部22Aに対して、スレーブ装置2Bが正常に接続されなくなる。
【0093】
すなわち、時点T1から時点T2までの期間THでは、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタは片側接触状態となって第2の通信部22Aとの間でインピーダンス不整合を生じて、当該コネクタは、第2の通信部22Aに対して、正常に接触していない。
【0094】
また、通信状態検出部23Aは、時点T1で、第2の通信部22Aで受信した信号の振幅の値として、上記第2の閾値未満の値である、値P1を検出しており、制御部25に対して、第2の通信部22Aによる通信が異常状態である旨の信号を通知する。
【0095】
この結果、制御部25は、時点T1で、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタでの通信状態が正常通信でないと判別して、第2の通信部22Aのリンクの状態をオフとし、更にポートP1の状態をクローズとするように切替回路24の制御を行う。
【0096】
これにより、第2の通信部22Aによる通信が遮断されて、スレーブ装置2Bは、ネットワークシステム100から電気的に切り離される。
【0097】
更に、制御部25は、時点T1で、切替回路24を制御して、第2の通信部22Aによる通信の遮断をさせたので、制御部25は、時点T1で、当該第2の通信部22Aを除いてスレーブ装置2C(他機)をデージーチェーン接続させるように切替えさせる。
【0098】
つまり、制御部25は、
図2において、ポートP0とポートP1とを接続させて、第1の通信部21が受信したマスタ装置1からの信号を第2の通信部22Bを通じてスレーブ装置2Cに送信するように、切替回路24を制御する。
【0099】
その後、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタの引き抜き動作が時点T2で終了した後は、本実施形態のネットワーク機器2Nでは、第2の通信部22Aに対して、スレーブ装置2Bが完全に乖離される。
【0100】
つまり、時点T2以降では、スレーブ装置2Bの通信ケーブル用コネクタは、第2の通信部22Aから完全に離間している。また、通信状態検出部23Aの検出結果は、“0”の値を示し、上記コネクタとの通信が通信不可、つまり、スレーブ装置2Bからの信号が到達していないとして、制御部25に対して、第2の通信部22Aによる通信が遮断状態である旨の信号を通知する。この結果、制御部25は、切替回路24に対して、第2の通信部22Aに関する制御の指示を行わない。
【0101】
以上のように、本実施形態では、上記実施形態1と同様な効果を奏する。
【0102】
また、本実施形態では、通信状態検出部23は、スレーブ装置2B(他機)からの信号のパルス幅の値に基づいて、通信が上記片側接触状態で行われているか否かを検出するので、上記片側接触状態の高精度な検出を確実に行うことができる。
【0103】
〔実施形態3〕
本実施形態と上記実施形態との主な相違点は、通信状態検出部23A~23Cがスレーブ装置2B~2Dとの間での通信における符号則エラーの値に基づいて、通信が上記片側接触状態で行われているか否かを検出する点である。
【0104】
すなわち、本実施形態では、通信状態検出部23A~23Cは、それぞれ第2の通信部22A~22Cがスレーブ装置2B~2Dとの間での通信における符号則エラーの値を検出する機能ブロックである。具体的には、通信状態検出部23A~23Cは、それぞれ第2の通信部22A~22Cが受信した信号において、符号則チェックを実施して、その信号の送信が正しくなされたか否かについて判別する。
【0105】
通信状態検出部23A~23Cは、それぞれ符号則チェックの結果が正常であれば、切替回路24を介在させて制御部25に対して、第2の通信部22A~22Cによる通信が正常状態である旨の信号を通知する。
【0106】
また、通信状態検出部23A~23Cは、それぞれ符号則チェックの結果が異常であれば、それぞれスレーブ装置2B~2Dの通信ケーブル用コネクタが片側接触状態で行われているとして、切替回路24を介在させて制御部25に対し、第2の通信部22A~22Cによる通信が異常状態である旨の信号を通知する。
【0107】
また、通信状態検出部23A~23Cは、それぞれ符号則チェックを実行することができなければ、第2の通信部22A~22Cにスレーブ装置2B~2Dからの信号が到達していないとして、切替回路24を介在させて制御部25に対し、第2の通信部22A~22Dによる通信が遮断状態である旨の信号を通知する。
【0108】
以上のように、本実施形態では、上記実施形態1と同様な効果を奏する。
【0109】
符号則チェックの方式としては、例えば、ETHERNET(登録商標)の標準的符号化規格(4B5B符号化(復号化))に基づいて行うことができる。
【0110】
また、本実施形態では、通信状態検出部23は、他機との間での通信における符号則エラーの値に基づいて、当該通信が前記片側接触状態で行われているか否かを検出するので、上記片側接触状態の高精度な検出を確実に行うことができる。
【0111】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、
図7及び
図8を用いて以下に説明する。
図7は、本開示の実施形態4に係るネットワークシステムの構成例を説明する説明図である。
図8は、本開示の実施形態4に係るネットワーク機器(スレーブ装置)を示す概略構成図である。
【0112】
本実施形態と上記実施形態との主な相違点は、デージーチェーン接続されたスレーブ装置に、ネットワーク機器2Nを適用した点である。
【0113】
図7に示すように、本実施形態のネットワークシステム100では、複数のスレーブ装置として、例えば、4つのスレーブ装置2E、2F、2G、2Hをデージーチェーン接続した場合を例示して説明する。また、スレーブ装置2E~2Hのいずれかのスレーブ装置が、本実施形態のネットワーク機器を構成する場合には、ネットワーク機器2Nともいう。尚、以下の説明では、ネットワーク機器2Nとして、スレーブ装置2Gに適用した場合を例示して説明する。
【0114】
図7に示すように、本実施形態のネットワーク機器2Nは、第1の通信部21と、第2の通信部22Aと、切替回路24と、制御部25を備える。第1の通信部21は、上流側のスレーブ装置2Fとの間で通信を行う。また、第2の通信部22Aは、下流側のスレーブ装置2Hとの間で通信を行う。
【0115】
また、本実施形態のネットワーク機器2Nでは、第2の通信部22Aが1つのみ設けられている。また、この第2の通信部22Aが有する通信状態検出部23Aは、上記実施形態1から3のいずれかの通信状態検出部23が用いられている。
【0116】
切替回路24は、ポートP0、P1を備える。これらのポートP0、P1には、それぞれ第1の通信部21、第2の通信部22Aが接続されている。また、これらのポートP0、P1では、
図7に矢印D5、D6にて示すように、信号を送達するようになっている。
【0117】
本実施形態では、通信状態検出部23Aが第2の通信部22Aによる通信の異常状態を検出した場合、すなわち、スレーブ装置2Hの通信ケーブル用コネクタの片側接触状態を検出した場合は、その検出した時点で第2の通信部22Aとのリンクの状態をオフとして、当該第2の通信部22Aによる通信の遮断をさせる。また、制御部25は、ポートP1の状態をクローズとして、第2の通信部22Aのリンクの状態をオフとする。
【0118】
この結果、ポートP0のみが、オンの状態とされるので、スレーブ装置2Fからの信号は、第1の通信部21及びポートP0を介して、スレーブ装置2Fに送達される。また、これにより、本実施形態では、マスタ装置1とスレーブ装置2E~2Gでのデージーチェーン接続は維持される。
【0119】
以上のように、本実施形態では、上記実施形態1と同様な効果を奏する。
【0120】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、
図9を用いて以下に説明する。
図9は、本開示の実施形態5に係るネットワーク機器(スレーブ装置)を示す概略構成図である。
【0121】
本実施形態と上記実施形態1との主な相違点は、第2の通信部に、当該第2の通信部において、通信状態検出部が、他機からの信号が到達していないこと、または、他機との間の通信が片側接触状態で行われていることを検出した場合に、制御部からの指示に従って、当該他機をネットワークから離脱させる切替部を設けた点である。
【0122】
図9に示すように、本実施形態のネットワーク機器2Nでは、第1の通信部21に複数の第2の通信部22A~22Cがループ状に接続されている。また、第2の通信部22A~22Cのそれぞれに、通信状態検出部23A~23Cと、切替部24A~24Cとが設けられている。
【0123】
通信状態検出部23A~23Cは、それぞれスレーブ装置2B~2Dとの間での通信において、当該スレーブ装置2B~2Dからの信号が到達していないこと、または、当該スレーブ装置2B~2Dの通信ケーブル用コネクタが片側接触状態で行われていることを検出した場合に、その検出したことを制御部25に通知する。
【0124】
切替部24A~24Cは、通信状態検出部23A~23Cがそれぞれスレーブ装置2B~2Dとの間での通信において、当該スレーブ装置2B~2Dからの信号が到達していないこと、または、当該スレーブ装置2B~2Dの通信ケーブル用コネクタが片側接触状態で行われていることを検出した場合に、制御部25からの指示に従って、当該スレーブ装置2B~2Dをネットワークから離脱させる。
【0125】
<切替動作>
図10も参照して、本実施形態のネットワーク機器2Nの動作例について具体的に説明する。
図10は、
図9に示したネットワーク機器において、ネットワーク稼働中にスレーブ装置側で通信ケーブルを引き抜いた場合での動作例を説明するための図である。
【0126】
尚、以下の説明では、
図9において、例えば、ネットワーク稼働中にスレーブ装置2C側でその通信ケーブルを引き抜いて当該スレーブ装置2Cを離脱させる場合での切替動作について説明する。また、以下の説明では、スレーブ装置2Cの通信ケーブル用コネクタが片側接触状態で引き抜かれる場合を例示して説明する。
【0127】
図10に示すように、第2の通信部22Bにおいて、通信状態検出部23Bがスレーブ装置2Cとの間での通信において、上記片側通信状態を検出すると、通信状態検出部23Bは、制御部25に片側通信状態を検出したことを通知する。そして、制御部25は、切替部24Bに指示を通知する。その後、切替部24Bは、制御部25の指示に従って、当該第2の通信部22Bによるスレーブ装置2Cとの間の通信の遮断をさせる。これにより、
図10に点線の矢印にて示すように、第2の通信部22Bとスレーブ装置2Cとの間での通信は行われなくなり、切替部24Bは、当該スレーブ装置2Cをネットワークから離脱させる。
【0128】
更に、切替部24Bは、
図10に矢印D6にて示すように、第2の通信部22Bが第2の通信部22Aと第2の通信部22Cとの間に介在するように通信経路を切り替える。この結果、ネットワーク機器2Nでは、
図10に矢印D1、D5、D6、D7、D8にて示すように、マスタ装置1に対し、スレーブ装置2C以外のスレーブ装置2B、2Dを順次接続したデージーチェーン接続をさせる。
【0129】
これにより、本実施形態のネットワーク機器2Nでは、例えば、ネットワーク稼動中に通信ケーブルをスレーブ装置2Aから引き抜くことにより、ネットワークからスレーブ装置2Cを離脱させる場合でも、当該ネットワーク機器2Nがスレーブ装置2B、2Dへの切替動作を適切に行って、他のスレーブ装置2B、2Dとの間の通信(つまり、ネットワークの通信)が途絶するのを防ぐことができる。
【0130】
以上のように、本実施形態では、上記実施形態1と同様な効果を奏する。
【0131】
また、本実施形態では、第2の通信部22A~22Cのそれぞれに、切替部24A~24Cを設けているので、実施形態1と異なり、ネットワーク機器2Nにおいて、切替回路24との設置を省略することができる。この結果、本実施形態では、ネットワーク機器2Nの部品点数を削減することができるとともに、第2の通信部22A~22Cのそれぞれを、例えば、1つの通信チップを用いて構成することも可能となる。
【0132】
〔ソフトウェアによる実現例〕
ネットワーク機器2Nの機能ブロック(特に、制御部25)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0133】
後者の場合、制御部25は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本開示の目的が達成される。
【0134】
上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを更に備えていてもよい。
【0135】
また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0136】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【0137】
また、上記の説明では、ネットワークが稼動中に当該ネットワークから、通信ケーブルの取り外しによりスレーブ装置を離脱させる場合でも、ネットワークの通信が途絶するのを防ぐことができる構成について説明したが、本開示はこれに限定されない。具体的には、本開示は、ネットワークが稼動中に当該ネットワークに対し、通信ケーブルの取り付けによりスレーブ装置を装着させる場合でも、デージーチェーン接続の通信ダウンなどのネットワークの通信が途絶するのを防ぐことができる。更に、本開示は、上述の通信ケーブルの挿抜以外の場合、例えば、通信ケーブルに一部断線が生じた場合でも、ネットワークの通信が途絶するのを防ぐことができる。
【0138】
また、上記の説明では、通信状態検出部23A~23Cは、他機の通信ケーブル用コネクタが片側接触状態で当該他機との間で通信が行われているか否かを検出する場合について説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、通信状態検出部23A~23Cが、他機からの通信を行うための複数の信号線のうち一部のみが接続された状態で、当該他機からの通信が行われている否かを検出する構成でもよい。具体的には、通信状態検出部23A~23Cは、例えば、4本の信号線のうち、他機の挿抜動作の際に、1本の信号線のみが接続された状態で、当該他機との通信が行われているか否かを検出することもできる。
【符号の説明】
【0139】
1 マスタ装置
2A~2H スレーブ装置
2N ネットワーク機器
21 第1の通信部
22A~22C 第2の通信部
23A~23C 通信状態検出部
24 切替回路
24A~24C 切替部
25 制御部
100 ネットワークシステム