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特許7666085グラフ情報算出装置、グラフ情報算出方法、及びグラフ情報算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】グラフ情報算出装置、グラフ情報算出方法、及びグラフ情報算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20250415BHJP
【FI】
G06N20/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021063869
(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公開番号】P2022159592
(43)【公開日】2022-10-18
【審査請求日】2024-03-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元~2年度、総務省研究開発委託「革新的AIネットワーク統合基盤技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴志
【審査官】真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-068000(JP,A)
【文献】国際公開第2019/173401(WO,A1)
【文献】特許第7371439(JP,B2)
【文献】特許第7581704(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 20/00
G06N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフを入力として受け取り、前記グラフを構成する頂点の近傍構造を算出し、算出された近傍構造を構成する頂点を要素に持つ第1の集合を算出する近傍情報算出部と、
前記グラフを入力として受け取り、前記グラフを構成する頂点を端点に持つ頂点の列であってグラフ内で辺によって隣接する頂点同士が隣り合うパスを算出し、算出されたパスを構成する頂点を要素に持つ第2の集合を算出するパス情報算出部と、
前記第1の集合及び前記第2の集合を入力として受け取り、前記第1の集合及び前記第2の集合をベクトルに変換するベクトル演算部と、
を備える、グラフ情報算出装置。
【請求項2】
前記ベクトル演算部は、
前記第1の集合の要素及び前記第2の集合の要素に備わるベクトルに対して演算を施すことにより、前記第1の集合及び前記第2の集合をベクトルに変換する、
請求項1に記載のグラフ情報算出装置。
【請求項3】
前記ベクトル演算部は、
前記第2の集合の要素数を、前記第1の集合の要素である頂点に備わるベクトルに掛け合わせる演算を施すことにより、前記第1の集合及び前記第2の集合をベクトルに変換する、
請求項2に記載のグラフ情報算出装置。
【請求項4】
前記ベクトル演算部は、
前記第2の集合の要素数の逆数を、前記第1の集合の要素である頂点に備わるベクトルに掛け合わせる演算を施すことにより、前記第1の集合及び前記第2の集合をベクトルに変換する、
請求項2に記載のグラフ情報算出装置。
【請求項5】
前記パス情報算出部は、
算出されたパスを構成する辺をさらに要素に持つ前記第2の集合を算出する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のグラフ情報算出装置。
【請求項6】
グラフ情報算出装置が行うグラフ情報算出方法であって、
グラフを入力として受け取るステップと、
前記グラフを構成する頂点の近傍構造を算出し、算出された近傍構造を構成する頂点を要素に持つ第1の集合を算出するステップと、
前記グラフを構成する頂点を端点に持つ頂点の列であってグラフ内で辺によって隣接する頂点同士が隣り合うパスを算出し、算出されたパスを構成する頂点を要素に持つ第2の集合を算出するステップと、
前記第1の集合及び前記第2の集合をベクトルに変換するステップと、
を含む、グラフ情報算出方法。
【請求項7】
コンピュータに、
グラフを入力として受け取る手順と、
前記グラフを構成する頂点の近傍構造を算出し、算出された近傍構造を構成する頂点を要素に持つ第1の集合を算出する手順と、
前記グラフを構成する頂点を端点に持つ頂点の列であってグラフ内で辺によって隣接する頂点同士が隣り合うパスを算出し、算出されたパスを構成する頂点を要素に持つ第2の集合を算出する手順と、
前記第1の集合及び前記第2の集合をベクトルに変換する手順と、
を実行させるためのグラフ情報算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グラフ情報算出装置、グラフ情報算出方法、及びグラフ情報算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
分子化合物、ICT(Information and Communication Technology)システム、及びソーシャルネットワークなどの情報は、グラフで表現されることがある。また、このようなグラフで表現される情報に対する回帰や分類などのタスクを行う際、その前処理として、グラフからベクトルなどで表現される特徴量を抽出する特徴量抽出処理が行われることがある。この特徴量抽出処理には、ある構造を持つグラフとは異なる構造を持つグラフからは、当該ある構造を持つグラフから抽出した特徴量とは異なる特徴量が抽出されることが求められる、したがって、この特徴量抽出処理の精度が、その後の回帰や分類などのタスクの成否を左右する。
【0003】
なお、以下では、グラフは、各頂点及び各辺にベクトルが備わっているものを表すこととし、頂点及び辺に備わるベクトルのことを属性ベクトルと呼ぶ。また、属性ベクトルの各成分は実数値とする。
【0004】
グラフの特徴量抽出処理に用いられる代表的な技術の一つに、グラフニューラルネットワーク(GNN:Graph Neural Network)モデルがある。このGNNモデルの一処理単位は、2つの処理から構成されている。1つの処理は、頂点集約処理と呼ばれる、グラフ内の各頂点で行われる処理である。以下、頂点集約処理が行われる頂点のことを基点と呼ぶ。頂点集約処理では、各基点で、その基点と辺で繋がる頂点を収集し、収集された頂点の属性ベクトルの集合に対して演算を施す。この演算は、例えば、属性ベクトルの平均や総和、属性ベクトルの各成分の最大値又は最小値を算出する操作などで実現される。もう一方の処理は、変換処理と呼ばれる処理であり、先の頂点集約処理で得られる属性ベクトルを、一度、次元の異なり得るベクトルへ変換し、変換されたベクトルをグラフ上の頂点の属性ベクトルとして置換する処理である。
【0005】
GNNモデルは、入力されたグラフに対して、頂点集約処理と変換処理とを一処理単位とする処理を反復することによって、グラフ上の各頂点の属性ベクトルを更新し、更新された全ての頂点の属性ベクトルを単一のベクトルへ変換して、変換されて得られるベクトルを、入力されたグラフの特徴量として出力する。
【0006】
GNNモデルは、例えば、非特許文献1及び非特許文献2で提案されている。
非特許文献1では、半教師学習にGNNモデルを利用することによって、グラフの頂点やグラフ自身を分類する手法が提案されている。また、非特許文献1では、GNNモデルの頂点集約処理の方法として、グラフの隣接行列を利用する方法が提案されている。
【0007】
非特許文献2では、様々なGNNモデルの形態が系統的に整理されている。非特許文献2におけるGN(Graph Network)ブロックが、上述したGNNモデルの一処理単位を表しており、その中の変換処理は線形変換や多層パーセプトロンモデルで実現される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】T. N. Kipf and M. Welling, “Semi-supervised classification with graph convolutional networks”, At ICLR 2017.
【文献】Peter W. Battaglia et al., “Relational inductive biases, deep learning, and graph networks”, arXiv:1806.01261v3, 17 Oct 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1,2で提案されるGNNモデルは、頂点集約処理と変換処理とを規定回数反復することによって、グラフを構成する頂点の属性ベクトルを更新する。このとき、グラフの各頂点に対する頂点集約処理で収集される頂点は、反復回数がNであるとき、頂点集約処理の対象である基点からNホップ以下の領域に位置する全ての頂点である。
【0010】
しかし、非特許文献1,2で提案されるGNNモデルでは、複数のグラフそれぞれに対して、頂点集約処理と変換処理とを行って頂点の属性ベクトルを更新すると、グラフを構成する全ての頂点の属性ベクトルの集合がグラフ同士で一致し、GNNモデルから出力される特徴量が一致することがある。これは、頂点集約処理で収集される、Nホップ以下の領域に位置する頂点の集合が、グラフ間で一致することに起因する。
【0011】
図1は、本開示の課題を説明する図である。図1は、トポロジの異なる2つのグラフであって、N=1の場合に、頂点集約処理で収集される頂点の集合がグラフ間で一致する2つのグラフを表している。図1では、破線で示す角丸矩形11,12によってそれぞれ囲まれた図が、それぞれ1つのグラフを表している。各グラフ11,12内の円形、三角形、四角形、及び六角形は、全てグラフの頂点を表しており、頂点間の線分は辺を表している。また、各頂点に割り当てられている文字x,y,z,wはそれぞれ属性ベクトルを表しており、文字が異なれば、異なる属性ベクトルであることを表している。
【0012】
ここで、グラフ11,12における頂点集約処理の対象が、それぞれ頂点111,121であるとする。このとき、頂点111に対する頂点集約処理で収集される頂点は、頂点112,113,114であり、頂点112,113,114のそれぞれの属性ベクトルはw,z,wである。一方、頂点121に対する頂点集約処理で収集される頂点は、頂点122,123,124であり頂点122,123,124のそれぞれの属性ベクトルはw,z,wである。したがって、図1に示す2つのグラフはトポロジが異なるにも関わらず、頂点111,121のそれぞれについて、頂点集約処理で収集される頂点の属性ベクトルの集合は一致する。
【0013】
ここでは、グラフ11,12のそれぞれから1つずつ頂点を選択し、選択された頂点のそれぞれに対する頂点集約処理の過程で収集される属性ベクトルの集合が一致することを確認したが、他の頂点に対しても同様のことが言える。つまり、グラフ11とグラフ12のそれぞれの頂点集合の間の一対一写像において、一対一写像で写り合う頂点それぞれの、頂点集約処理で収集される属性ベクトルの集合が一致するようなものが存在する。
【0014】
したがって、図1で例示したグラフ11及びグラフ12が、それぞれGNNモデルの入力として与えられた場合、GNNモデルは、同一の特徴量を出力してしまうという課題がある。
【0015】
なお、図1では、N=1の場合に、2つのグラフのそれぞれから抽出される特徴量が一致することを例示したが、N=2の場合には、2つのグラフのそれぞれから抽出される特徴量が異なり得る。そのため、頂点集約処理と変換処理の反復回数を増やすことによって、上述した課題が解決されると考えられる。
【0016】
しかし、この反復回数は、GNNモデルの学習や推論を行う際には固定されている値である。そのため、GNNモデルから出力される特徴量の捕捉に必要な反復回数は、グラフに応じて異なることがあり、その場合、上述したような、頂点集約処理で利用される頂点に備わる属性ベクトルの集合が一致する問題が起こり得る。そのため、上述した課題に対する解決方法として、反復回数を増やす方法は適当ではない。
【0017】
そこで本開示の目的は、上述した課題を解決し、異なるグラフから、より細分化された特徴量を抽出することが可能なグラフ情報算出装置、グラフ情報算出方法、及びグラフ情報算出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
一態様によるグラフ情報算出装置は、
グラフを入力として受け取り、前記グラフを構成する頂点の近傍構造を算出し、算出された近傍構造を構成する頂点を要素に持つ第1の集合を算出する近傍情報算出部と、
前記グラフを入力として受け取り、前記グラフを構成する頂点を端点に持つパスを算出し、算出されたパスを構成する頂点を要素に持つ第2の集合を算出するパス情報算出部と、
前記第1の集合及び前記第2の集合を入力として受け取り、前記第1の集合及び前記第2の集合をベクトルに変換するベクトル演算部と、
を備える。
【0019】
一態様によるグラフ情報算出方法は、
グラフ情報算出装置が行うグラフ情報算出方法であって、
グラフを入力として受け取るステップと、
前記グラフを構成する頂点の近傍構造を算出し、算出された近傍構造を構成する頂点を要素に持つ第1の集合を算出するステップと、
前記グラフを構成する頂点を端点に持つパスを算出し、算出されたパスを構成する頂点を要素に持つ第2の集合を算出するステップと、
前記第1の集合及び前記第2の集合をベクトルに変換するステップと、
を含む。
【0020】
一態様によるグラフ情報算出プログラムは、
コンピュータに、
グラフを入力として受け取る手順と、
前記グラフを構成する頂点の近傍構造を算出し、算出された近傍構造を構成する頂点を要素に持つ第1の集合を算出する手順と、
前記グラフを構成する頂点を端点に持つパスを算出し、算出されたパスを構成する頂点を要素に持つ第2の集合を算出する手順と、
前記第1の集合及び前記第2の集合をベクトルに変換する手順と、
を実行させる。
【発明の効果】
【0021】
上述の態様によれば、異なるグラフから、より細分化された特徴量を抽出することが可能なグラフ情報算出装置、グラフ情報算出方法、及びグラフ情報算出プログラムを提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の課題を説明する図である。
図2】実施の形態に係るグラフ情報算出装置の構成例を示すブロック図である。
図3】実施の形態に係る近傍情報算出部による処理の例を模式的に説明する図である。
図4】実施の形態に係るパス情報算出部による処理の例を模式的に説明する図である。
図5】実施の形態に係るベクトル演算部による処理の例を模式的に説明する図である。
図6】実施の形態に係るグラフ情報算出装置による処理経過の例を説明するフローチャートである。
図7】実施の形態の効果を説明する図である。
図8】実施の形態に係るグラフ情報算出装置を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0024】
<実施の形態の構成>
まず、本実施の形態に係るグラフ情報算出装置の構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係るグラフ情報算出装置2の構成例を示すブロック図である。図2に示されるにように、本実施の形態に係るグラフ情報算出装置2は、近傍情報算出部21、パス情報算出部22、及びベクトル演算部23を備えている。
【0025】
近傍情報算出部21は、グラフを入力として受け取り、入力されたグラフを構成する頂点の近傍構造を算出し、その近傍構造を構成する頂点を要素に持つ集合(第1の集合)である頂点集合を算出する。近傍情報算出部21が算出する近傍構造は、上記グラフを構成する頂点集合及び辺集合の部分集合であり、上記部分集合に属する頂点及び辺は、特定の条件の充足可否により決定される。
【0026】
パス情報算出部22は、グラフを入力として受け取り、入力されたグラフを構成する頂点を端点に持つパスを算出し、そのパスを構成する頂点を要素に持つ集合(第2の集合)を算出する。なお、パス情報算出部22が算出する集合は、パスを構成する辺をさらに要素に持つ集合であってもよい。ここで、グラフを構成する“頂点”は“ノード”、“線分(辺)”は“エッジ”とも言い得る(以下、本願において同様)。
【0027】
ベクトル演算部23は、近傍情報算出部21により算出された頂点集合とパス情報算出部22により算出された集合とを入力として受け取り、入力された2つの集合をベクトルに変換し、変換されたベクトルを出力する。
【0028】
<実施の形態の動作>
以下、近傍情報算出部21、パス情報算出部22、及びベクトル演算部23の動作について、より詳細に説明する。
【0029】
近傍情報算出部21は、グラフを入力として受け取り、入力されたグラフを構成する各頂点について、その頂点の近傍構造を算出し、その近傍構造を構成する頂点を要素に持つ頂点集合を算出する。
【0030】
図3は、近傍情報算出部21による処理の例を模式的に説明する図である。図3では、入力されたグラフは図1におけるグラフ11とし、近傍情報算出部21の処理対象を頂点vとしている。また、破線で示す矩形31は、頂点vの近傍構造を表し、破線で示す矩形32は、近傍構造31を構成する頂点を要素に持つ頂点集合を表している。
【0031】
図3に示されるように、近傍情報算出部21は、入力として図1のグラフ11を受け取り、頂点vと辺で隣接する頂点によって構成される近傍構造31を算出する。その後、近傍情報算出部21は、近傍構造31を構成する頂点であって、頂点vに辺で隣接する頂点を要素に持つ頂点集合32を算出する。
【0032】
なお、近傍構造31は、各頂点に対して一意に定まるグラフの部分構造であればよく、例えば、頂点からNホップ以下の領域に位置する頂点から構成される部分構造でもよい。又は、近傍構造31は、グラフの頂点の種類ごとに、予め部分構造を近傍構造として定めておいてもよい。
また、頂点集合32は、近傍情報算出部21の処理が行われる基点(図1の例では、頂点v)を含んでいてもよい。
【0033】
パス情報算出部22は、グラフを入力として受け取り、入力されたグラフを構成する各頂点について、その頂点を端点に持つパスとそのパスのパス情報とを算出する。ここで、パスとは、グラフ内の頂点の列で、列内で隣り合う頂点はグラフ内で辺によって隣接しているものを表すこととする。また、パス情報とは、パスを構成する頂点を要素に持つ集合を表すこととする。
【0034】
図4は、パス情報算出部22による処理の例を模式的に説明する図である。図4では、入力されたグラフは図1におけるグラフ11とし、パス情報算出部22の処理対象を頂点vとしている。
【0035】
図4に示されるように、パス情報算出部22は、頂点vを端点に持つパス41を算出する。その後、パス情報算出部22は、算出されたパス41から、パス41を構成する頂点を要素に持つ集合42を表すパス情報を算出する。
【0036】
なお、パス情報算出部22は、1つの頂点について、複数のパスを算出し、複数のパスの頂点を要素に持つ集合を表すパス情報を算出してもよい。また、パスは、パスの定義を満たす列であればよく、パスの種類は限定しない。また、パスは、最短経路やランダムウォークで算出されたパスなどでもよい。
また、集合42は、パス41を構成する辺をさらに要素に持つ集合でもよいし、パス情報そのものでもよい。
【0037】
ベクトル演算部23は、グラフを構成する各頂点について、近傍情報算出部21により算出された、その頂点の頂点集合と、パス情報算出部22により算出された、その頂点の集合と、を入力として受け取り、これら2つの集合の要素に備わるベクトルに対して演算を施すことにより、これら2つの集合をベクトルに変換する。
【0038】
図5は、ベクトル演算部23による処理の例を模式的に説明する図である。図5では、ベクトル演算部23の処理対象を頂点v(図3及び図4参照)としている。また、破線の矩形32は、頂点vについて、近傍情報算出部21により算出された頂点集合を表し、破線の矩形42は、頂点vについて、パス情報算出部22により算出された集合を表している。
【0039】
図5に示されるように、ベクトル演算部23は、頂点集合32及び集合42を構成する要素に備わるベクトルに対して演算を施す。この演算により、ベクトル演算部23は、頂点集合32及び集合42をベクトル51に変換し、変換されたベクトル51を出力する。
【0040】
なお、この演算は、ベクトルの集合をベクトルに変換する演算であればよい。また、この変換は、例えば、線形変換、マルチパーセプトロンモデルによる変換などでよい。
【0041】
また、ベクトル演算部23は、頂点集合32及び集合42を部分集合に分割し、それぞれの部分集合で異なる演算を行い、それぞれの演算結果を出力してもよい。例えば、ベクトル演算部23は、集合42の要素数又はその逆数を、頂点集合32の各頂点に備わるベクトルに掛け合わせる演算を行い、その後に、変換を行ってもよい。
【0042】
なお、近傍情報算出部21、パス情報算出部22、及びベクトル演算部23は、例えば、グラフ情報算出プログラムに従って動作するコンピュータのCPU(Central Processing Unit )によって実現される。この場合、CPUは、コンピュータのプログラム記憶装置等のプログラム記録媒体からグラフ情報算出プログラムを読み込み、そのグラフ情報算出プログラムに従って、近傍情報算出部21、パス情報算出部22、及びベクトル演算部23として動作すればよい。
【0043】
次に、本実施の形態に係るグラフ情報算出装置2による処理経過について説明する。
図6は、本実施の形態に係るグラフ情報算出装置2による処理経過の例を説明するフローチャートである。なお、以下の説明では、既に説明した事項については、適宜、説明を省略する。
【0044】
図6に示されるように、まず、近傍情報算出部21及びパス情報算出部22にグラフが入力される。(ステップS1)。
次に、近傍情報算出部21は、ステップS1で入力されたグラフを構成する頂点の近傍構造を算出し、その近傍構造を構成する頂点を要素に持つ頂点集合を算出する(ステップS2)。
次に、パス情報算出部22は、ステップS1で入力されたグラフを構成する頂点を端点に持つパスを算出し、そのパスを構成する頂点を要素に持つ集合を算出する(ステップS3)。
【0045】
次に、ベクトル演算部23は、ステップS2で算出された頂点集合及びステップS3で算出された集合を入力として受け取る。そして、ベクトル演算部23は、これら2つの集合の要素に備わるベクトルに対して演算を施すことにより、これら2つの集合をベクトルに変換する(ステップS4)。
その後、ベクトル演算部23は、ステップS4で変換されて得られたベクトルを出力する(ステップS5)。
【0046】
<実施の形態の効果>
上述したように、本実施の形態に係るグラフ情報算出装置2によれば、パス情報算出部22を設けたことにより、ベクトル演算部23への入力情報を増大させることができるようになる。これにより、入力されたグラフから、より細分化された特徴量を抽出することが可能となる。
【0047】
以下、本実施の形態の効果について、より詳細に説明する。
図7は、本実施の形態の効果を説明する図である。図7は、近傍情報算出部21及びパス情報算出部22により算出された集合が、2つのグラフで異なることを示している。
図7では、実線の矩形71,72でそれぞれ囲まれた図が、それぞれ1つのグラフを表している。また、グラフ71,72は、それぞれ図1におけるグラフ11,12と同一である。
【0048】
また、グラフ71において、711は、近傍情報算出部21により算出された近傍構造を表し、713は、近傍構造711から算出された頂点集合を表している。一方、グラフ72において、721は、近傍情報算出部21により算出された近傍構造を表し、723は、近傍構造721から算出された頂点集合を表している。ここで、グラフ71についての頂点集合713と、グラフ72についての頂点集合723と、は集合として一致している。
【0049】
また、グラフ71において、712は、パス情報算出部22により算出されたパスを表し、714は、パス712を構成する頂点の集合を表している。一方、グラフ72において、722は、パス情報算出部22により算出されたパスを表し、724は、パス722を構成する頂点の集合を表している。ここで、グラフ71についての集合714と、グラフ72についての集合724と、は集合として異なっている。
【0050】
また、頂点集合713と集合714とを合併した合併集合は、入力されたグラフ71から、近傍情報算出部21及びパス情報算出部22により算出された頂点集合である。また、頂点集合723と集合724とを合併した合併集合は、入力されたグラフ72から、近傍情報算出部21及びパス情報算出部22により算出された頂点集合である。ここで、グラフ71についての合併集合と、グラフ72についての合併集合と、は集合として異なっている。
【0051】
以上の通り、本実施の形態に係るグラフ情報算出装置2によれば、パス情報算出部22を設けたことにより、近傍情報算出部21のみでは区別が不可能であった頂点同士を区別することが可能となる。そのため、ベクトル演算部23への入力情報を、頂点同士を区別可能な形で増大させ、その結果、グラフから抽出する特徴量に差を生むことができるようになる。これにより、入力されたグラフから、より細分化された特徴量を抽出することが可能となる。
【0052】
<実施の形態に係るグラフ情報算出装置のハードウェア構成>
次に、本実施の形態に係るグラフ情報算出装置2を実現するコンピュータの構成について説明する。
図8は、本実施の形態に係るグラフ情報算出装置2を実現するコンピュータ800のハードウェア構成例を示すブロック図である。図8に示されるように、コンピュータ800は、CPU801と、主記憶装置802と、補助記憶装置803と、インタフェース804と、入力デバイス805と、を備えている。
【0053】
本実施の形態に係るグラフ情報算出装置2は、コンピュータ800に実装される。グラフ情報算出装置2の動作は、グラフ情報算出プログラムの形式で補助記憶装置803に記憶されている。CPU801は、そのグラフ情報算出プログラムを補助記憶装置803から読み出して主記憶装置802に展開し、そのグラフ情報算出プログラムに従って、上記の実施の形態で説明した処理を実行する。
【0054】
補助記憶装置803は、非一時的な有形の媒体の例である。非一時的な有形の媒体の他の例として、インタフェース804を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory )、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory )、半導体メモリ等が挙げられる。また、グラフ情報算出プログラムが通信回線によってコンピュータ800に配信される場合、配信を受けたコンピュータ800が、そのグラフ情報算出プログラムを主記憶装置802に展開し、上記の処理を実行してもよい。
【0055】
また、本実施の形態に係るグラフ情報算出装置2の各構成要素の一部又は全部は、汎用又は専用の回路(circuitry)、プロセッサや、これらの組み合わせによって実現されてもよい。また、これらの回路等は、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。また、各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0056】
また、本実施の形態に係るグラフ情報算出装置2の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントアンドサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。
【0057】
以上の説明により、本開示の産業上利用可能性は明らかであるが、本開示は、例えば、以下を行う場合に適用可能である。
・創薬業において分子化合物を表現するグラフから特徴量を抽出する場合
・ソーシャルネットワークを表現するグラフや、IT(Internet Technology)/通信NW(Network)システムを表現するグラフから特徴量を抽出する場合
【0058】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0059】
2 グラフ情報算出装置
21 近傍情報算出部
22 パス情報算出部
23 ベクトル演算部
800 コンピュータ
801 CPU
802 主記憶装置
803 補助記憶装置
804 インタフェース
805 入力デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8