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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10D 84/80 20250101AFI20250415BHJP
   H10D 8/50 20250101ALI20250415BHJP
   H10D 12/00 20250101ALI20250415BHJP
   H10D 30/01 20250101ALI20250415BHJP
   H10D 30/66 20250101ALI20250415BHJP
   H10D 84/83 20250101ALI20250415BHJP
   H10D 89/00 20250101ALI20250415BHJP
【FI】
H10D84/80 203G
H10D8/50 C
H10D8/50 F
H10D8/50 J
H10D12/00 103Q
H10D12/00 103S
H10D30/01 301H
H10D30/66 101L
H10D30/66 101T
H10D30/66 102G
H10D30/66 103Q
H10D30/66 201A
H10D84/80 101A
H10D84/80 203D
H10D84/83 E
H10D84/83 101C
H10D89/00 101A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021066695
(22)【出願日】2021-04-09
(65)【公開番号】P2022161688
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪内 源宜
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/036015(WO,A1)
【文献】特開2020-155582(JP,A)
【文献】特開平05-291913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 84/80
H10D 12/00
H10D 30/66
H10D 30/01
H10D 8/50
H10D 84/83
H10D 89/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタ部とダイオード部とを有する半導体基板を備え、
前記トランジスタ部及び前記ダイオード部の双方が、
前記半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、
前記半導体基板において、前記ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域と、
を有し、
前記半導体基板において、前記ベース領域の下方に、前記トランジスタ部の少なくとも一部から前記ダイオード部にわたって、ライフタイムキラーを含むライフタイム制御領域が設けられ、
前記トランジスタ部は、
前記半導体基板の上面視で、前記ダイオード部から離間する主領域と、
前記半導体基板の上面視で、前記主領域と前記ダイオード部との間に位置し、前記ライフタイム制御領域と重なる境界領域と、
前記半導体基板の上面から前記ベース領域を貫通して前記ドリフト領域まで設けられた複数のゲートトレンチ部と
を有し、
前記複数のゲートトレンチ部は、
前記主領域に設けられた第1ゲートトレンチ部と、
前記境界領域に設けられた第2ゲートトレンチ部と
を含み、
前記第1ゲートトレンチ部の信号伝送タイミングは、前記第2ゲートトレンチ部の信号伝送タイミングと異なる
半導体装置であって、
前記主領域に設けられた前記第1ゲートトレンチ部と電気的に接続する第1ゲートパッドと、
前記境界領域に設けられた前記第2ゲートトレンチ部と電気的に接続する第2ゲートパッドと
を備える
半導体装置。
【請求項2】
前記第1ゲートトレンチ部のゲート容量成分は、前記第2ゲートトレンチ部のゲート容量成分と異なる
請求項に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜は前記第1ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜より厚い
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜は、前記第1ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜より比誘電率の低い材料で形成されている
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
トランジスタ部とダイオード部とを有する半導体基板を備え、
前記トランジスタ部及び前記ダイオード部の双方が、
前記半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、
前記半導体基板において、前記ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域と、
を有し、
前記半導体基板において、前記ベース領域の下方に、前記トランジスタ部の少なくとも一部から前記ダイオード部にわたって、ライフタイムキラーを含むライフタイム制御領域が設けられ、
前記トランジスタ部は、
前記半導体基板の上面視で、前記ダイオード部から離間する主領域と、
前記半導体基板の上面視で、前記主領域と前記ダイオード部との間に位置し、前記ライフタイム制御領域と重なる境界領域と、
前記半導体基板の上面から前記ベース領域を貫通して前記ドリフト領域まで設けられた複数のゲートトレンチ部と
を有し、
前記複数のゲートトレンチ部は、
前記主領域に設けられた第1ゲートトレンチ部と、
前記境界領域に設けられた第2ゲートトレンチ部と
を含み、
前記第2ゲートトレンチ部のゲート容量成分は、前記第1ゲートトレンチ部のゲート容量成分よりも大きい
半導体装置。
【請求項6】
前記第1ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜の厚さは、前記第2ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜の厚さと異なる
請求項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜は前記第2ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜より厚い
請求項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜は、前記第2ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜と異なる材料で形成されている
請求項からの何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜は、前記第2ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜より比誘電率の低い材料で形成される
請求項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等のトランジスタ部と、ダイオード部とを同一基板に形成した半導体装置において、ヘリウムイオン等の粒子線を半導体基板の所定深さ位置に照射し、ライフタイムキラーを含むライフタイム制御領域を設ける技術が知られている。(例えば、特許文献1)。
特許文献1 特開2015-185742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ライフタイム制御領域が設けられたトランジスタ部では、チャネルが形成される部分に界面準位が生じることにより閾値電圧が低下することがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体装置を提供する。半導体装置は、トランジスタ部とダイオード部とを有する半導体基板を備え、トランジスタ部及びダイオード部の双方が、半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、半導体基板において、ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域と、を有し、半導体基板において、ベース領域の下方に、トランジスタ部の少なくとも一部からダイオード部にわたって、ライフタイムキラーを含むライフタイム制御領域が設けられ、トランジスタ部は、半導体基板の上面視で、ダイオード部から離間する主領域と、半導体基板の上面視で、主領域とダイオード部との間に位置し、ライフタイム制御領域と重なる境界領域と、半導体基板の上面からベース領域を貫通してドリフト領域まで設けられた複数のゲートトレンチ部とを有し、複数のゲートトレンチ部は、主領域に設けられた第1ゲートトレンチ部と、境界領域に設けられた第2ゲートトレンチ部とを含み、第1ゲートトレンチ部の信号伝送タイミングは、第2ゲートトレンチ部の信号伝送タイミングと異なる。
【0005】
半導体装置は、第1ゲートトレンチ部と電気的に接続する第1ゲートパッドと、第2ゲートトレンチ部と電気的に接続する第2ゲートパッドとを備えてよい。
【0006】
第1ゲートトレンチ部のゲート容量成分は、第2ゲートトレンチ部のゲート容量成分と異なってよい。
【0007】
第1ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜の厚さは、第2ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜の厚さと異なってよい。
【0008】
第2ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜は第1ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜より厚くてよい。
【0009】
第1ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜は第2ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜より厚くてよい。
【0010】
第1ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜は、第2ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜と異なる材料で形成されていてよい。
【0011】
第2ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜は、第1ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜より比誘電率の低い材料で形成されていてよい。
【0012】
第1ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜は、第2ゲートトレンチ部のゲート絶縁膜より比誘電率の低い材料で形成されていてよい。
【0013】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の上面の一例を示す図である。
図2図1における領域Aの拡大図である。
図3図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。
図4A図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。
図4B図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。
図4C図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。
図4D図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。
図5A図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。
図5B図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。
図6A図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。
図6B図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層又はその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向又は半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0017】
本明細書では、X軸、Y軸及びZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸及びZ軸に平行な方向を意味する。
【0018】
本明細書では、半導体基板の上面及び下面に平行な直交軸をX軸及びY軸とする。また、半導体基板の上面及び下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸及びY軸を含めて、半導体基板の上面及び下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0019】
本明細書において「同一」又は「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0020】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型又はN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナー又はP型のアクセプタの何れかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナー又はアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体又はP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0021】
本明細書においては、ドーピング濃度とは、熱平衡状態におけるドナーの濃度又はアクセプタの濃度を意味する。本明細書においては、ネット・ドーピング濃度とは、ドナー濃度を正イオンの濃度とし、アクセプタ濃度を負イオンの濃度として、電荷の極性を含めて足し合わせた正味の濃度を意味する。一例として、ドナー濃度をN、アクセプタ濃度をNとすると、任意の位置における正味のネット・ドーピング濃度はN-Nとなる。
【0022】
ドナーは、半導体に電子を供給する機能を有している。アクセプタは、半導体から電子を受け取る機能を有している。ドナー及びアクセプタは、不純物自体には限定されない。例えば、半導体中に存在する空孔(V)、酸素(O)及び水素(H)が結合したVOH欠陥は、電子を供給するドナーとして機能する。
【0023】
本明細書においてP+型又はN+型と記載した場合、P型又はN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型又はN-型と記載した場合、P型又はN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型又はN++型と記載した場合には、P+型又はN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。
【0024】
本明細書において化学濃度とは、電気的な活性化の状態によらずに測定される不純物の濃度を指す。化学濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)により計測できる。上述したネット・ドーピング濃度は、電圧-容量測定法(CV法)により測定できる。また、拡がり抵抗測定法(SR法)により計測されるキャリア濃度を、ネット・ドーピング濃度としてよい。CV法又はSR法により計測されるキャリア濃度は、熱平衡状態における値としてよい。また、N型の領域においては、ドナー濃度がアクセプタ濃度よりも十分大きいので、当該領域におけるキャリア濃度を、ドナー濃度としてもよい。同様に、P型の領域においては、当該領域におけるキャリア濃度を、アクセプタ濃度としてもよい。
【0025】
また、ドナー、アクセプタ又はネット・ドーピングの濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該領域におけるドナー、アクセプタ又はネット・ドーピングの濃度としてよい。ドナー、アクセプタ又はネット・ドーピングの濃度がほぼ均一な場合等においては、当該領域におけるドナー、アクセプタ又はネット・ドーピングの濃度の平均値をドナー、アクセプタ又はネット・ドーピングの濃度としてよい。
【0026】
SR法により計測されるキャリア濃度が、ドナー又はアクセプタの濃度より低くてもよい。拡がり抵抗を測定する際に電流が流れる範囲において、半導体基板のキャリア移動度が結晶状態の値よりも低い場合がある。キャリア移動度の低下は、格子欠陥等による結晶構造の乱れ(ディスオーダー)により、キャリアが散乱されることで生じる。
【0027】
CV法又はSR法により計測されるキャリア濃度から算出したドナー又はアクセプタの濃度は、ドナー又はアクセプタを示す元素の化学濃度よりも低くてよい。一例として、シリコンの半導体においてドナーとなるリン又はヒ素のドナー濃度、あるいはアクセプタとなるボロン(ホウ素)のアクセプタ濃度は、これらの化学濃度の99%程度である。一方、シリコンの半導体においてドナーとなる水素のドナー濃度は、水素の化学濃度の0.1%から10%程度である。
【0028】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の上面の一例を示す図である。図1においては、各部材を半導体基板10の上面に投影した位置を示している。図1においては、半導体装置100の一部の部材だけを示しており、一部の部材は省略している。
【0029】
半導体装置100は、半導体基板10を備えている。半導体基板10は、上面視において端辺102を有する。本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板10の上面側から見ることを意味している。本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺102を有する。図1においては、X軸及びY軸は、何れかの端辺102と平行である。またZ軸は、半導体基板10の上面と垂直である。
【0030】
半導体基板10には活性領域160が設けられている。活性領域160は、半導体装置100が動作した場合に半導体基板10の上面と下面との間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。活性領域160の上方にはエミッタ電極が設けられているが、図1では省略している。
【0031】
活性領域160には、IGBT等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70と、還流ダイオード(FWD)等のダイオード素子を含むダイオード部80の少なくとも一方が設けられている。図1の例では、トランジスタ部70及びダイオード部80は、半導体基板10の上面における所定の配列方向(本例ではX軸方向)に沿って、交互に配置されている。他の例では、活性領域160には、トランジスタ部70及びダイオード部80の一方だけが設けられていてもよい。
【0032】
図1においては、トランジスタ部70が配置される領域には記号「I」を付し、ダイオード部80が配置される領域には記号「F」を付している。本明細書では、上面視において配列方向と垂直な方向を延伸方向(図1ではY軸方向)と称する場合がある。トランジスタ部70及びダイオード部80は、それぞれ延伸方向に長手を有してよい。つまり、トランジスタ部70のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。同様に、ダイオード部80のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。トランジスタ部70及びダイオード部80の延伸方向と、後述する各トレンチ部の長手方向とは同一であってよい。
【0033】
ダイオード部80は、半導体基板10の下面と接する領域に、N+型のカソード領域を有する。本明細書では、カソード領域が設けられた領域を、ダイオード部80と称する。つまりダイオード部80は、上面視においてカソード領域と重なる領域である。半導体基板10の下面には、カソード領域以外の領域には、P+型のコレクタ領域が設けられてよい。本明細書では、ダイオード部80を、後述するゲートランナーまでY軸方向に延長した延長領域81も、ダイオード部80に含める場合がある。延長領域81の下面には、コレクタ領域が設けられている。
【0034】
トランジスタ部70は、半導体基板10の下面と接する領域に、P+型のコレクタ領域を有する。また、トランジスタ部70は、半導体基板10の上面側に、N型のエミッタ領域、P型のベース領域、ゲート導電部及びゲート絶縁膜を有するゲート構造が周期的に配置されている。
【0035】
半導体装置100は、半導体基板10の上方に、エミッタ電極パッド(エミッタ電極52)の他に1つ以上のパッドを有してよい。一例として、図1に示す半導体装置100は2つのゲートパッドG1及びG2を有するが、これは例示に過ぎない。半導体装置100は、1つあるいは3つ以上のゲートパッドを有してもよい。また、半導体装置100は、温度検出ダイオードのアノードパッド及びカソードパッド、電流検出パッド等のパッドを有してもよい。エミッタ電極パッド以外の各パッドは、端辺102の近傍に配置されている。端辺102の近傍とは、上面視における端辺102と、エミッタ電極パッドとの間の領域を指す。半導体装置100の実装時において、各パッドは、ワイヤ等の配線を介して外部の回路に接続されてよい。
【0036】
ゲートパッドには、ゲート電位が印加される。ゲートパッドG1及びG2は、活性領域160のゲートトレンチ部の導電部と電気的に接続される。半導体装置100は、ゲートパッドG1及びG2とゲートトレンチ部とを接続するゲートランナーを備える。
【0037】
第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132は、上面視において活性領域160と半導体基板10の端辺102との間に配置されている。本例の第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132は、上面視において活性領域160を囲んでいる。上面視において内側のゲートランナー(図1では第2ゲートランナー132)に囲まれた領域を活性領域160としてもよい。
【0038】
図1に示すように、半導体装置100が2つのゲートパッド(ゲートパッドG1及びG2)と2つのゲートランナー(第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132)とを有する場合、第1ゲートランナー131はゲートパッドG1と接続し、第2ゲートランナー132はゲートパッドG2と接続する。第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132は、半導体基板10の上方に配置されている。本例の第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132は、ポリシリコンやアルミシリコン合金等のアルミニウムを主成分とする金属から形成されてよい。
【0039】
本例の半導体装置100は、活性領域160と端辺102との間に、エッジ終端構造部90を備える。本例のエッジ終端構造部90は、第1ゲートランナー131と端辺102との間に配置されている。エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部90は、複数のガードリングを有してよい。ガードリングは、半導体基板10の上面と接するP型の領域である。複数のガードリングを設けることで、活性領域160の上面側における空乏層を外側に伸ばすことができ、半導体装置100の耐圧を向上できる。エッジ終端構造部90は、活性領域160を囲んで環状に設けられたフィールドプレート及びリサーフのうちの少なくとも一つを更に備えていてもよい。
【0040】
また、半導体装置100は、ポリシリコン等で形成されたPN接合ダイオードである不図示の温度センス部や、活性領域160に設けられたトランジスタ部と同様な動作をする不図示の電流検出部を備えてもよい。
【0041】
図2は、図1における領域Aの拡大図である。領域Aは、トランジスタ部70及びダイオード部80を含む。
【0042】
本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面側に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14及びコンタクト領域15を備える。ゲートトレンチ部40及びダミートレンチ部30は、それぞれがトレンチ部の一例である。また、本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面の上方に設けられたエミッタ電極52を備える。エミッタ電極52、第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132は、互いに分離して設けられる。
【0043】
エミッタ電極52、第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132と、半導体基板10の上面との間には層間絶縁膜が設けられるが、図2では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール49、54及び56が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。図2においては、それぞれのコンタクトホールに斜線のハッチングを付している。
【0044】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14及びコンタクト領域15の上方に設けられる。エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15及びベース領域14と接触する。また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通ってダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52は、Y軸方向におけるダミートレンチ部30の先端において、ダミートレンチ部30のダミー導電部と接続されてよい。
【0045】
第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132は、コンタクトホール49を通って、第1ゲート引き出し導電部47及び第2ゲート引き出し導電部48と接触する。第1ゲート引き出し導電部47及び第2ゲート引き出し導電部48は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成される。第1ゲート引き出し導電部47及び第2ゲート引き出し導電部48は、半導体基板の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。
【0046】
第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。本例の第1ゲート引き出し導電部47及び第2ゲート引き出し導電部48は、コンタクトホール49の下方から、ゲートトレンチ部40の先端部まで設けられる。第1ゲート引き出し導電部47及び第2ゲート引き出し導電部48と半導体基板10の上面との間には、酸化膜等の絶縁膜が設けられる。ゲートトレンチ部40の先端部において、ゲート導電部は半導体基板の上面に露出している。ゲートトレンチ部40は、ゲート導電部の当該露出した部分にて、第1ゲート引き出し導電部47及び第2ゲート引き出し導電部48と接触する。第1ゲート引き出し導電部47及び第2ゲート引き出し導電部48はゲート導電部の堆積時に同時に形成してよい。
【0047】
エミッタ電極52は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域は、アルミニウム又はアルミニウム-シリコン合金で形成される。各電極は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。また、各電極は、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを有してもよい。
【0048】
ウェル領域11は、第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132と重なって設けられている。ウェル領域11は、第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132と重ならない範囲にも、所定の幅で延伸して設けられている。本例のウェル領域11は、コンタクトホール54のY軸方向の端から、第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132側に離れて設けられている。ウェル領域11は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のベース領域14はP-型であり、ウェル領域11はP+型である。また、ウェル領域11は、半導体基板10の上面から、ベース領域14の下端よりも深い位置まで形成されている。
【0049】
トランジスタ部70及びダイオード部80のそれぞれは、配列方向に複数配列されたトレンチ部を有する。本例のトランジスタ部70には、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが交互に設けられている。本例のダイオード部80には、複数のダミートレンチ部30が、配列方向に沿って設けられている。本例のダイオード部80には、ゲートトレンチ部40が設けられていない。
【0050】
本例のゲートトレンチ部40は、配列方向と垂直な延伸方向に沿って延伸する2つの直線部分39(延伸方向に沿って直線状であるトレンチの部分)と、2つの直線部分39を接続する先端部41を有してよい。図2における延伸方向はY軸方向である。
【0051】
先端部41の少なくとも一部は、上面視において曲線状に設けられることが好ましい。2つの直線部分39のY軸方向における端部同士を先端部41が接続することで、直線部分39の端部における電界集中を緩和できる。
【0052】
トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30はゲートトレンチ部40のそれぞれの直線部分39の間に設けられる。それぞれの直線部分39の間には、1本のダミートレンチ部30が設けられてよく、複数本のダミートレンチ部30が設けられていてもよい。ダミートレンチ部30は、延伸方向に延伸する直線形状を有してよく、ゲートトレンチ部40と同様に、直線部分29と先端部31とを有していてもよい。図2に示した半導体装置100は、先端部31を有さない直線形状のダミートレンチ部30と、先端部31を有するダミートレンチ部30の両方を含んでいる。
【0053】
ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40及びダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40及びダミートレンチ部30のY軸方向の端部は、上面視においてウェル領域11に設けられる。つまり、各トレンチ部のY軸方向の端部において、各トレンチ部の深さ方向の底部は、ウェル領域11に覆われている。これにより、各トレンチ部の当該底部における電界集中を緩和できる。
【0054】
配列方向において各トレンチ部の間には、メサ部が設けられている。メサ部は、半導体基板10において、トレンチ部に挟まれた領域を指す。一例としてメサ部の上端は半導体基板10の上面である。メサ部の下端の深さ位置は、トレンチ部の下端の深さ位置と同一である。本例のメサ部は、X軸方向において隣接するトレンチ部に挟まれ、半導体基板10の上面においてトレンチに沿って延伸方向(Y軸方向)に延伸して設けられている。本例では、トランジスタ部70にはメサ部60が設けられ、ダイオード部80にはメサ部61が設けられている。本明細書において単にメサ部と称した場合、メサ部60及びメサ部61のそれぞれを指している。
【0055】
それぞれのメサ部には、ベース領域14が設けられる。それぞれのメサ部には、上面視においてベース領域14に挟まれた領域に、第1導電型のエミッタ領域12及び第2導電型のコンタクト領域15の少なくとも一方が設けられてよい。本例のエミッタ領域12はN+型であり、コンタクト領域15はP+型である。エミッタ領域12及びコンタクト領域15は、深さ方向において、ベース領域14と半導体基板10の上面との間に設けられてよい。
【0056】
トランジスタ部70のメサ部60は、半導体基板10の上面に露出したエミッタ領域12を有する。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40に接して設けられている。ゲートトレンチ部40に接するメサ部60には、半導体基板10の上面に露出したコンタクト領域15が設けられていてよい。
【0057】
メサ部60におけるコンタクト領域15及びエミッタ領域12のそれぞれは、X軸方向における一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで設けられる。一例として、メサ部60のコンタクト領域15及びエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿って交互に配置されている。
【0058】
他の例においては、メサ部60のコンタクト領域15及びエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿ってストライプ状に設けられていてもよい。例えばトレンチ部に接する領域にエミッタ領域12が設けられ、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が設けられる。
【0059】
ダイオード部80のメサ部61には、エミッタ領域12が設けられていない。メサ部61の上面には、ベース領域14及びコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてベース領域14に挟まれた領域には、それぞれのベース領域14に接してコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてコンタクト領域15に挟まれた領域には、ベース領域14が設けられてよい。ベース領域14は、コンタクト領域15に挟まれた領域全体に配置されてよい。
【0060】
それぞれのメサ部の上方には、コンタクトホール54が設けられている。コンタクトホール54は、ベース領域14に挟まれた領域に配置されている。本例のコンタクトホール54は、コンタクト領域15、ベース領域14及びエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。コンタクトホール54は、メサ部60の配列方向(X軸方向)における中央に配置されてよい。
【0061】
ダイオード部80において、半導体基板10の下面と隣接する領域には、N+型のカソード領域82が設けられる。半導体基板10の下面において、カソード領域82が設けられていない領域には、P+型のコレクタ領域22が設けられてよい。図2においては、カソード領域82及びコレクタ領域22の境界を点線で示している。
【0062】
カソード領域82は、Y軸方向においてウェル領域11から離れて配置されている。これにより、比較的にドーピング濃度が高く、且つ、深い位置まで形成されているP型の領域(ウェル領域11)と、カソード領域82との距離を確保して、耐圧を向上できる。本例のカソード領域82のY軸方向における端部は、コンタクトホール54のY軸方向における端部よりも、ウェル領域11から離れて配置されている。他の例では、カソード領域82のY軸方向における端部は、ウェル領域11とコンタクトホール54との間に配置されていてもよい。
【0063】
なお、図1及び図2に示すゲートランナーは、2つのゲートランナー、すなわち第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132を有するが、これは例示に過ぎない。図1及び図2では、第1ゲートランナー131の内側に第2ゲートランナー132を設けているが、第2ゲートランナー132の内側に第1ゲートランナー131を設けてもよい。また、2つのゲートランナーが端辺102と平行に配置されているが、これは例示に過ぎない。2つのゲートランナーを、深さ方向(Z軸方向)において上下に配置してもよい。
【0064】
また、図2では、2つのゲートランナーが、延伸方向(Y軸方向)に対向する端辺102の両方の内側でとゲートトレンチ部と接続されているが、これは例示に過ぎない。2つのゲートランナーとゲートトレンチ部との接続を、それぞれ、対向する端辺102の一方の内側でのみ行うようにして、2つのゲートランナーが並走しないように配置されていてもよい。
【0065】
また、図1では、ゲートパッドG2及び第2ゲートランナー132の接続配線が第1ゲートランナー131と交差しているように描かれているが、これに限られない。一方のゲートランナー(例えば第1ゲートランナー131)が他方のゲートパッド(例えばゲートパッドG2)の外側を延伸し、他方のゲートランナー(例えば第2ゲートランナー132)と交差部を持たないように配置されていてもよい。
【0066】

図3は、図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。a-a'断面は、エミッタ領域12、ベース領域14、並びにゲートトレンチ部40及びダミートレンチ部30を通るXZ面である。本例の半導体装置100は、a-a'断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52及びコレクタ電極24を有する。
【0067】
層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面21に設けられている。層間絶縁膜38は、ボロン又はリン等の不純物が添加されたシリケートガラス等の絶縁膜である。層間絶縁膜38は上面21に接していてよく、層間絶縁膜38と上面21との間に酸化膜等の他の膜が設けられていてもよい。層間絶縁膜38には、図2において説明したコンタクトホール54が設けられている。
【0068】
エミッタ電極52は、半導体基板10の上面21及び層間絶縁膜38の上面に設けられる。エミッタ電極52は、層間絶縁膜38に設けられたコンタクトホール54を通って、上面21と電気的に接触する。コンタクトホール54の内部には、バリアメタルを介してタングステン(W)等のコンタクトプラグが設けられてよい。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52及びコレクタ電極24は、金属を含む材料で形成される。
【0069】
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。
【0070】
半導体基板10は、第1導電型のドリフト領域18を備える。本例のドリフト領域18は、N-型である。ドリフト領域18は、半導体基板10において他のドーピング領域が設けられずに残存した領域であってよい。
【0071】
ドリフト領域18の上方には、Z軸方向に一つ以上の蓄積領域16が設けられてよい。蓄積領域16は、ドリフト領域18と同じドーパントが、ドリフト領域18よりも高濃度に蓄積した領域である。蓄積領域16のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。蓄積領域16を設けることで、キャリアの注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減できる。
【0072】
トランジスタ部70において、ベース領域14の上方には、上面21に接してエミッタ領域12が設けられる。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40と接して設けられる。エミッタ領域12のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。エミッタ領域12のドーパントは、一例としてヒ素(As)、リン(P)、アンチモン(Sb)等である。
【0073】
ダイオード部80のメサ部61において、ベース領域14の上方には、上面21に接してコンタクト領域15が設けられる。コンタクト領域15は、ダミートレンチ部30に接して設けられてよい。
【0074】
ドリフト領域18の下方には、第1導電型のバッファ領域20が設けられてよい。本例のバッファ領域20は、N型である。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、コレクタ領域22及びカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0075】
ダイオード部80において、バッファ領域20の下方にはカソード領域82が設けられる。カソード領域82は、トランジスタ部70のコレクタ領域22と同じ深さに設けられてよい。ダイオード部80は、トランジスタ部70がターンオフする時に、逆方向に導通する還流電流を流す還流ダイオード(FWD)として機能してよい。
【0076】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下方にはコレクタ領域22が設けられる。コレクタ領域22は、下面23においてカソード領域82と接して設けられていてよい。
【0077】
半導体基板10には、ゲートトレンチ部40及びダミートレンチ部30が設けられる。ゲートトレンチ部40及びダミートレンチ部30は、上面21からベース領域14及び蓄積領域16を貫通して、ドリフト領域18に到達するように設けられる。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0078】
ゲートトレンチ部40は、上面21に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42及びゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化又は窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。ゲート導電部44の上面は、上面21と同じXY平面内にあってよい。ゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、不純物がドープされたポリシリコン等の半導体で形成される。
【0079】
ゲート導電部44は、深さ方向においてベース領域14よりも長く設けられてよい。ゲートトレンチ部40は、上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に、電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0080】
ダミートレンチ部30は、XZ断面においてゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、上面21に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32及びダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁の半導体を酸化又は窒化して形成してよい。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部においてダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー導電部34の上面は、上面21と同じXY平面内にあってよい。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。
【0081】
本例のゲートトレンチ部40及びダミートレンチ部30は、上面21において層間絶縁膜38により覆われている。なお、ダミートレンチ部30及びゲートトレンチ部40の底部は、下側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
【0082】
半導体基板10において、ドリフト領域18には、ライフタイムキラーを含むライフタイム制御領域85が、局所的に設けられている。ライフタイム制御領域85は、ダイオード部80の導通時に発生するベース領域14からカソード領域82への正孔電流を抑制し、逆回復損失を低減するために形成される。またダイオード部80の導通時には、トランジスタ部70においてもベース領域14から近接するカソード領域82への正孔電流が流れるため、ライフタイム制御領域85を形成することが好ましい。
【0083】
ライフタイム制御領域85は、上面21又は下面23から粒子線を照射することにより形成されてよい。一例として、トランジスタ部70の粒子線を照射しない領域をマスクで遮蔽し、トランジスタ部70及びダイオード部80に粒子線を照射する。粒子線は、マスクで遮蔽された領域には照射されない。
【0084】
図3において、ライフタイムキラーの濃度分布のZ軸方向におけるピーク位置が「×」の記号で示される。本例のライフタイム制御領域85のZ軸方向におけるピーク位置は、ウェル領域11の下面のZ軸方向における位置と等しくてもよく、ウェル領域11の下面のZ軸方向における位置よりも下方に設けられてもよい。また、ライフタイム制御領域85は、Z軸方向にライフタイムキラーの濃度分布のピークを複数持つように形成されていてもよい。
【0085】
ライフタイムキラーは、一例として所定の深さ位置に注入されたヘリウムである。ヘリウムを注入することで、半導体基板10に結晶欠陥を形成できる。ライフタイムキラーは、所定の深さ位置に注入されたプロトン又は電子線であってもよい。電子線又はプロトンを注入することによっても、半導体基板10に結晶欠陥を形成できる。
【0086】
本例のライフタイム制御領域85は、図3に示す通り、X軸方向においてダイオード部80に最も近いゲートトレンチ部40の下方からダイオード部80にわたって、連続的に設けられている。ライフタイム制御領域85は、X軸方向においてダイオード部80からトランジスタ部70の少なくとも一部にわたって、連続的に設けられている。ライフタイム制御領域85のX軸負側の端部Kは、ダイオード部80に最も近いゲートトレンチ部40の下方に配置されてよい。
【0087】
本例のトランジスタ部70は、上面視で、ダイオード部80から離間する主領域71と、主領域71とダイオード部80との間に位置する境界領域72とを有する。主領域71は、トランジスタ部70の粒子線を照射しない領域であり、境界領域72は、トランジスタ部70の粒子線を照射する領域であり、ライフタイム制御領域85と重なる。
【0088】
照射される粒子線は、例えば、上面21から粒子線を照射する場合、境界領域72におけるベース領域14及びゲートトレンチ部40を通過する。このため、ベース領域14においてチャネルが形成される領域の界面準位が変化しうる。このため、境界領域72における閾値電圧が低下し得る。
【0089】
また、下面23から粒子線を照射した場合は、照射のばらつきによって、照射される粒子線が境界領域72におけるベース領域14及びゲートトレンチ部40にまで到達することがある。このため、ベース領域14においてチャネルが形成される領域の界面準位が変化し、境界領域72における閾値電圧が低下し得る。
【0090】
このため、境界領域72では、主領域71と比較して、ゲートトレンチ部40のオンのタイミングが早まる一方で、オフのタイミングが遅くなり、導通のタイミングにずれが生じ得る。
【0091】
本例のゲートトレンチ部40は、主領域71に設けられた第1ゲートトレンチ部45と、境界領域72に設けられた第2ゲートトレンチ部46とを含む。第1ゲートトレンチ部45は第1ゲートランナー131と電気的に接続し、第1ゲートランナー131を介してゲートパッドG1と電気的に接続する。ゲートパッドG1は、駆動回路510-1と電気的に接続される。駆動回路510-1は、ゲートパッドG1及び第1ゲートランナー131を介して、第1ゲートトレンチ部45に駆動信号を伝送する。なお本明細書において、ゲートトレンチ部内のゲート導電部と接続することを、単にゲートトレンチ部と電気的に接続すると称することがある。
【0092】
また、第2ゲートトレンチ部46は第2ゲートランナー132と電気的に接続し、第2ゲートランナー132を介してゲートパッドG2と電気的に接続する。第2ゲートトレンチ部46は、境界領域72に設けられ、粒子線が照射されたゲートトレンチ部40を示す。ゲートパッドG2は、駆動回路510-2と電気的に接続される。駆動回路510-2は、ゲートパッドG2及び第2ゲートランナー132を介して、第2ゲートトレンチ部46に駆動信号を伝送する。
【0093】
上述したように、ライフタイム制御領域85を形成することにより、粒子線が照射された境界領域72の第2ゲートトレンチ部46の閾値電圧が低下し、第1ゲートトレンチ部45と第2ゲートトレンチ部46との間で、導通のタイミングにずれが生じ得る。
【0094】
本例では、第1ゲートランナー131及び第2ゲートランナー132が、それぞれ異なるゲートパッドG1及びゲートパッドG2に接続する。ゲートパッドG1は駆動回路510-1に接続し、ゲートパッドG2は駆動回路510-2と接続される。それぞれのゲートパッドG1及びG2が別々の駆動回路510-1及び510-2に接続されることで、第1ゲートトレンチ部45及び第2ゲートトレンチ部46の信号伝送タイミングを異ならせ、第1ゲートトレンチ部45及び第2ゲートトレンチ部46における導通のタイミングを合わせることができる。
【0095】
あるいは、後述するように、ゲートパッドG1及びゲートパッドG2は、抵抗を介して一つの駆動回路510に並列接続されても良い。抵抗は、半導体装置100をパッケージした外部端子までの間で接続されてもよい。また、パッケージでは2つの外部端子とそれぞれ接続され電力変換装置に実装時にそれぞれの外部端子を異なる抵抗を介して駆動回路510と接続されてもよい。
【0096】
図4Aは、図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。図4Aに示すように、ゲートパッドG1は、抵抗601を介してゲートパッドG2と電気的に接続される。ゲートパッドG2は、駆動回路510に接続される。この場合には、ゲートパッドG2からの第2ゲートトレンチ部46への信号の伝送が、ゲートパッドG1を介しての第1ゲートトレンチ部45への信号の伝送よりも速くなり、オフのタイミングを合わせることができる。
【0097】
図4Bは、図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。図4Bに示すように、ゲートパッドG2は、抵抗602を介してゲートパッドG1と電気的に接続される。ゲートパッドG1は、駆動回路510と接続される。この場合には、ゲートパッドG2からの第2ゲートトレンチ部46への信号の伝送が、ゲートパッドG1を介しての第1ゲートトレンチ部45への信号の伝送よりも遅くなり、オンのタイミングを合わせることができる。
【0098】
図4Cは、図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。図4Cに示すように、ゲートパッドG1は抵抗601に接続され、ゲートパッドG2は抵抗602に接続される。ゲートパッドG1及びゲートパッドG2は、抵抗601および抵抗602を介して駆動回路510に接続される。ここで、抵抗601の抵抗値をR601、抵抗602の抵抗値をR602とする。
【0099】
抵抗値がR601>R602の場合は、ゲートパッドG2からの第2ゲートトレンチ部46への信号の伝送が、ゲートパッドG1を介しての第1ゲートトレンチ部45への信号の伝送よりも速くなり、オフのタイミングを合わせることができる。
【0100】
また、抵抗値がR602>R601の場合は、ゲートパッドG2からの第2ゲートトレンチ部46への信号の伝送がゲートパッドG1を介しての第1ゲートトレンチ部45への信号の伝送よりも遅くなり、オンのタイミングを合わせることができる。
【0101】
図4Dは、図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。図4Dに示すように、ゲートパッドG1及びG2と駆動回路510との間を、整流素子及び抵抗611、抵抗612、抵抗621、抵抗622を介して接続する。抵抗611、抵抗612、抵抗621、抵抗622はそれぞれ整流素子のアノード側に接続され、抵抗及び整流素子は一対となっている。整流素子は、ゲートパッドG1およびゲートパッドG2に逆並列に接続される。ゲートパッドG1およびゲートパッドG2は、整流素子および抵抗を介して駆動回路510に接続される。
【0102】
ここで、抵抗611の抵抗値をR611、抵抗612の抵抗値をR612とする。また、抵抗621の抵抗値をR621、抵抗622の抵抗値をR622とする。それぞれの抵抗値は、R611<R612、R621>R622である。
【0103】
抵抗611及び抵抗612の抵抗値が抵抗612及び抵抗621の抵抗値より大きい場合は、ゲートパッドG2から第2ゲートトレンチ部46への信号の伝送が、ゲートパッドG1を介しての第1ゲートトレンチ部45への信号の伝送よりも速くなり、オフのタイミングを合わせることができる。
【0104】
また、抵抗611及び抵抗612の抵抗値が抵抗612及び抵抗621の抵抗値より小さい場合は、ゲートパッドG2からの第2ゲートトレンチ部46への信号の伝送が、ゲートパッドG1を介しての第1ゲートトレンチ部45への信号の伝送よりも遅くなり、オンのタイミングを合わせることができる。本例は、抵抗値によって、オン、オフのタイミングを合わせることができる。なお、抵抗611および抵抗622は設けなくてもよい。
【0105】
図5Aは、図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。図5Aは、第1ゲートトレンチ部45のゲート容量成分が第2ゲートトレンチ部46のゲート容量成分より大きな場合を示す。
【0106】
図5Bは、図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。図5Bは、第1ゲートトレンチ部45のゲート容量成分が第2ゲートトレンチ部46のゲート容量成分より小さい場合を示す。
【0107】
図5A及び図5Bは、半導体装置100が1つのゲートパッドを備え、第1ゲートトレンチ部45及び第2ゲートトレンチ部46のオンまたはオフのタイミングを合わせる構成例である。
【0108】
図5A及び図5Bに示す本例の半導体装置100は、1つのゲートパッドGを有する。第1ゲートトレンチ部45と第2ゲートトレンチ部46とは、同じゲートランナーでゲートパッドGを介して電気的に接続されてもよく、異なるゲートランナーを介してゲートパッドGと電気的に接続されてもよい。
【0109】
本例において、第1ゲートトレンチ部45のゲート容量成分は、第2ゲートトレンチ部46のゲート容量成分と異なる。ここで、ゲート容量成分とは、本明細書において、ゲートトレンチ部までのゲート信号の伝送経路における全ての容量成分を合算したもの指す。例えば、ゲートトレンチ部のゲート容量成分は、ゲート導電部の容量成分のみならず、ゲートパッド、ゲートランナー、及びこれらと電気的に接続する全ての部材における容量成分を合算したものである。
【0110】
図5Aに示す第1ゲートトレンチ部45のゲート容量成分が第2ゲートトレンチ部46のゲート容量成分より大きい場合、ゲートパッドGから第2ゲートトレンチ部46への信号の伝送が第1ゲートトレンチ部45への信号の伝送よりも速くなり、オフのタイミングを合わせることができる。
【0111】
一方、図5Bに示す第1ゲートトレンチ部45のゲート容量成分が第2ゲートトレンチ部46のゲート容量成分より小さい場合、ゲートパッドGから第2ゲートトレンチ部46への信号の伝送が第1ゲートトレンチ部45への信号の伝送よりも遅くなり、オンのタイミングを合わせることができる。
【0112】
図5Aの例では、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42bは、第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42aより比誘電率の低い材料で形成されてよい。例えば、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42bはSiOで形成され、第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42aは、HfO、HfSiO、HfSiON、HfAlO, TiO、 Ta、HfSiO、ZrO、ZrSiO、La、 Siなどの、SiOより比誘電率の高い材料で形成されてよい。
【0113】
或いは、例えば、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42bは、SiOF、SiOC、有機ポリマー、空洞を含む形態などの、SiOより比誘電率の低い材料で形成され、第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42aはSiOで形成されてよい。
【0114】
これにより、第2ゲートトレンチ部46のゲート容量成分は第1ゲートトレンチ部45のゲート容量成分より小さくなり、第2ゲートトレンチ部46の応答が早くなる。すなわち、第2ゲートトレンチ部46のオフのタイミングが早くなり、閾値電圧の低下によって遅れた時間が相殺されるので、第1ゲートトレンチ部45及び第2ゲートトレンチ部46のオフのタイミングを合わせることができる。
【0115】
一方、図5Bの例では、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42bは、第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42aより比誘電率の高い材料で形成されてもよい。例えば、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42bは、HfO、HfSiO、HfSiON、HfAlO, TiO、 Ta、HfSiO、ZrO、ZrSiO、La、 Siなどの、SiOより比誘電率の高い材料で形成され、第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42aはSiOで形成されてよい。
【0116】
或いは、例えば、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42bはSiOで形成され、第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42aは、SiOF、SiOC、有機ポリマー、空洞を含む形態などの、SiOより比誘電率の低い材料で形成されてよい。
【0117】
これにより、第2ゲートトレンチ部46のゲート容量成分は第1ゲートトレンチ部45のゲート容量成分より大きくなり、第2ゲートトレンチ部46の応答が遅くなる。すなわち、第2ゲートトレンチ部46のオンのタイミングが遅くなり、閾値電圧の低下によって早められた時間が相殺されるので、第1ゲートトレンチ部45及び第2ゲートトレンチ部46のオンのタイミングを合わせることができる。
【0118】
なお、材料の異なるゲート絶縁膜42を形成するために、半導体基板10に複数のゲートトレンチを形成した後、例えば、境界領域72の上方をマスクで覆った状態で、境界領域72以外の領域においてゲートトレンチの内壁に所望の材料で成膜し、エッチングにより膜厚を調整する。マスクの除去後、境界領域72においても所望の材料を用いて同様のプロセスで成膜する。このようにゲート絶縁膜42を形成した後、ゲート絶縁膜42の内側にゲート導電部44を堆積する。
【0119】
図6A及び図6Bは、図2におけるa-a'断面及びその電気的接続の一例を示す図である。ここで、図5A及び図5Bと共通する内容については説明を省略する。
【0120】
本例では、第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42の厚さは、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42の厚さと異なる。ここで、ゲート絶縁膜42の厚さとは、ゲート絶縁膜42のX軸方向厚さ、すなわちゲート導電部44の側壁とゲートトレンチ内壁との間の距離であってよく、ゲート絶縁膜42のZ軸方向厚さ、すなわちゲート導電部44の底部とトレンチ底部との間の距離であってよく、あるいはその両方であってもよい。
【0121】
図6Aの例では、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42は第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42より厚い。図6Aにおいて、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42のX軸方向厚さW2及びZ軸方向厚さD2は、それぞれ、第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42のX軸方向厚さW1及びZ軸方向厚さD1より大きい(W2>W1かつD2>D1)。
【0122】
ただし、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42の厚さは、第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42と比較して、X軸方向においてのみ大きくてもよく(W2>W1)、あるいはZ軸方向においてのみ大きくてもよい(D2>D1)。
【0123】
ゲート絶縁膜の膜厚が大きくなると容量は低下し、膜厚が小さくなると容量は増加する。従って、第2ゲートトレンチ部46のゲート容量成分は第1ゲートトレンチ部45のゲート容量成分より小さくなり、第2ゲートトレンチ部46の応答が早くなる。すなわち、第2ゲートトレンチ部46のオフのタイミングが早くなり、閾値電圧の低下によって遅れた時間が相殺されるので、第1ゲートトレンチ部45及び第2ゲートトレンチ部46のオフのタイミングを合わせることができる。
【0124】
一方、図6Bの例では、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42は第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42より薄い。図6Bにおいて、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42のX軸方向厚さW2及びZ軸方向厚さD2は、それぞれ、第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42のX軸方向厚さW1及びZ軸方向厚さD1より小さい(W2<W1かつD2<D1)。
【0125】
ただし、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42の厚さは、第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42と比較して、X軸方向においてのみ小さくてもよく(W2<W1)、あるいはZ軸方向においてのみ小さくてもよい(D2<D1)。
【0126】
上述したように、ゲート絶縁膜の膜厚が大きくなると容量は低下し、膜厚が小さくなると容量は増加する。従って、第2ゲートトレンチ部46のゲート容量成分は第1ゲートトレンチ部45のゲート容量成分より大きくなり、第2ゲートトレンチ部46の応答が遅くなる。すなわち、第2ゲートトレンチ部46のオンのタイミングが遅くなり、閾値電圧の低下によって早められた時間が相殺されるので、第1ゲートトレンチ部45及び第2ゲートトレンチ部46のオンのタイミングを合わせることができる。
【0127】
なお、膜厚の異なるゲート絶縁膜42を形成するために、ゲートトレンチの寸法を共通として、ゲート導電部44の寸法を変えてもよい。この場合、半導体基板10に複数のゲートトレンチを同じ寸法で形成し、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化又は窒化して一定の膜厚で成膜した後、エッチングにより所望の膜厚に調整する。このようにゲート絶縁膜42を形成した後、ゲート絶縁膜42の内側にゲート導電部44を堆積する。
【0128】
あるいは、膜厚の異なるゲート絶縁膜42を形成するために、ゲート導電部44の寸法を共通として、ゲートトレンチの寸法を変えてもよい。例えば、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42のX軸方向厚さW2を第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42のX軸方向厚さW1より大きくする場合、第2ゲートトレンチ部46には、X軸方向に(W2-W1)×2だけ第1ゲートトレンチ部45より大きいゲートトレンチを形成する。その後の成膜プロセス以降は、上述したプロセスと同じである。
【0129】
また、ダミートレンチ部30のダミー絶縁膜32の厚さは、第1ゲートトレンチ部45のゲート絶縁膜42の厚さと同じであってよい。あるいは、境界領域72に設けられたダミートレンチ部30のダミー絶縁膜32の厚さは、第2ゲートトレンチ部46のゲート絶縁膜42の厚さと同じであってもよい。
【0130】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0131】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0132】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、29・・・直線部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・先端部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・直線部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・先端部、42,42a,42b・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、45・・・第1ゲートトレンチ部、46・・・第2ゲートトレンチ部、47・・・第1ゲート引き出し導電部、48・・・第2ゲート引き出し導電部、49・・・コンタクトホール、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、56・・・コンタクトホール、60・・・メサ部、61・・・メサ部、70・・・トランジスタ部、71・・・主領域、72・・・境界領域、80・・・ダイオード部、81・・・延長領域、82・・・カソード領域、85・・・ライフタイム制御領域、90・・・エッジ終端構造部、100・・・半導体装置、102・・・端辺、131・・・第1ゲートランナー、132・・・第2ゲートランナー、160・・・活性領域、510・・・駆動回路、510-1・・・駆動回路、510-2・・・駆動回路、601・・・抵抗、602・・・抵抗、611・・・抵抗、612・・・抵抗、621・・・抵抗、622・・・抵抗
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B