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特許7666144流体測定システム、流体測定システムの補正方法及び流体測定システムの荷重センサの設置方法
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  • 特許-流体測定システム、流体測定システムの補正方法及び流体測定システムの荷重センサの設置方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】流体測定システム、流体測定システムの補正方法及び流体測定システムの荷重センサの設置方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/708 20220101AFI20250415BHJP
   G01F 1/74 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
G01F1/708
G01F1/74
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021095601
(22)【出願日】2021-06-08
(65)【公開番号】P2022187561
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2024-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】神保 直道
(72)【発明者】
【氏名】千住 亘
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-126120(JP,A)
【文献】特開2000-230851(JP,A)
【文献】特開2022-090489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/704-1/716
G01F 1/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に離隔して設置される第1荷重センサ及び第2荷重センサと、
前記第1荷重センサと前記第2荷重センサからの出力に基づいて、前記配管を流れる流体の流速を算出する測定制御部と、
を備え、
前記測定制御部は、前記第1荷重センサが設置された位置の周辺において前記配管に荷重がかけられた場合に、前記第1荷重センサの出力が最大となる第1位置と、前記第2荷重センサが設置された位置の周辺において前記配管に荷重がかけられた場合に、前記第2荷重センサの出力が最大となる第2位置との間の距離に基づいて、前記流速を算出する、
流体測定システム。
【請求項2】
前記測定制御部は、基準となる測定物を一定の速度で移動しながら、前記測定物により前記配管に荷重をかけたときの前記第1荷重センサの出力が最大となる前記第1位置と、前記第2荷重センサの出力が最大となる前記第2位置との間に基づいて、前記距離を算出する、
請求項1に記載の流体測定システム。
【請求項3】
前記測定制御部は、前記第1荷重センサの出力が最大となってから、前記第2荷重センサの出力が最大となるまでの時間差である通過時間に基づいて、前記距離を算出する、
請求項2に記載の流体測定システム。
【請求項4】
前記測定制御部は、前記通過時間と前記一定の速度との積に基づいて、前記距離を算出する、
請求項3に記載の流体測定システム。
【請求項5】
配管に離隔して設置される第1荷重センサ及び第2荷重センサと、
前記第1荷重センサと前記第2荷重センサからの出力に基づいて、前記配管を流れる流体の流速を算出する測定制御部と、
基準となる測定物と、
前記測定物を一定の速度で移動する駆動部と、
を備え、
前記測定制御部は、前記駆動部が前記測定物を移動する際に、前記測定物により前記配管に荷重をかけたときの前記第1荷重センサの出力が最大となる第1位置と、前記第2荷重センサの出力が最大となる第2位置との間の距離に基づいて、前記流速を算出する、
流体測定システム。
【請求項6】
前記測定物は、前記配管の上部を移動する、
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の流体測定システム。
【請求項7】
前記測定物は、前記配管の内部を移動する、
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の流体測定システム。
【請求項8】
配管に離隔して設置される第1荷重センサ及び第2荷重センサと、
前記第1荷重センサと前記第2荷重センサからの出力に基づいて、前記配管を流れる流体の流速を算出する測定制御部と、
を備える流体測定システムの補正方法であって、
前記測定制御部が、前記第1荷重センサが設置された位置の周辺において前記配管に荷重がかけられた場合に、前記第1荷重センサの出力が最大となる第1位置と、前記第2荷重センサが設置された位置の周辺において前記配管に荷重がかけられた場合に、前記第2荷重センサの出力が最大となる第2位置との間の距離を算出する工程と、
前記測定制御部が、前記距離に基づいて前記流速を算出する工程と、
を含む、
流体測定システムの補正方法。
【請求項9】
配管に離隔して設置される第1荷重センサ及び第2荷重センサと、
前記第1荷重センサと前記第2荷重センサからの出力に基づいて、前記配管を流れる流体の流速を算出する測定制御部と、
基準となる測定物と、
前記測定物を一定の速度で移動する駆動部と、
を備える流体測定システムの補正方法であって、
前記測定制御部が、前記駆動部が前記測定物を移動する際に、前記測定物により前記配管に荷重をかけたときの前記第1荷重センサの出力が最大となる第1位置と、前記第2荷重センサの出力が最大となる第2位置との間の距離を算出する工程と、
前記測定制御部が、前記距離に基づいて、前記流速を算出する工程と、
を含む、
流体測定システムの補正方法。
【請求項10】
配管に離隔して設置される第1荷重センサ及び第2荷重センサと、
前記第1荷重センサと前記第2荷重センサからの出力に基づいて、前記配管を流れる流体の流速を算出する測定制御部と、
を備える流体測定システムの荷重センサの設置方法であって、
前記第1荷重センサが設置された位置の周辺において前記配管に荷重がかけられた場合に、前記第1荷重センサの出力が最大となる第1位置と、前記第2荷重センサが設置された位置の周辺において前記配管に荷重がかけられた場合に、前記第2荷重センサの出力が最大となる第2位置とを算出する工程と、
前記第1位置に前記第1荷重センサを再度設置する工程と、
前記第2位置に前記第2荷重センサを再度設置する工程と、
を含む、
流体測定システムの荷重センサの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体測定システム、流体測定システムの補正方法及び流体測定システムの荷重センサの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パイプ内の二相混合物の相組成比を計算する方法が開示されている。特許文献1には、パイプの上下流に配置したロードセルを用いて、2か所でのロードセルの測定パターンを比較することによって、二相混合物の流速を計算することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0322063号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロードセル(荷重センサ)を用いた相関流量計では、ロードセル(荷重センサ)を配管に設置する際の設置条件によって、流速測定の測定精度が変化する場合がある。
【0005】
本開示は、測定流体の流速を高精度に測定可能な流体測定システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、配管に離隔して設置される第1荷重センサ及び第2荷重センサと、前記第1荷重センサと前記第2荷重センサからの出力に基づいて、前記配管を流れる流体の流速を算出する測定制御部と、を備え、前記測定制御部は、前記第1荷重センサが設置された位置の周辺において前記配管に荷重がかけられた場合に、前記第1荷重センサの出力が最大となる第1位置と、前記第2荷重センサが設置された位置の周辺において前記配管に荷重がかけられた場合に、前記第2荷重センサの出力が最大となる第2位置との間の距離に基づいて、前記流速を算出する流体測定システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の流体測定システムによれば、測定流体の流速を高精度に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る流体測定システムの使用時の全体構成を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る流体測定システムの校正時の全体構成を示す図である。
図3図3は、本実施形態に係る流体測定システムの校正時の荷重センサの出力を示す図である。
図4図4は、本実施形態に係る流体測定システムの補正について説明する図である。
図5図5は、本実施形態に係る流体測定システムの処理について説明するフローチャートである。
図6図6は、本実施形態に係る流体測定システムの補正結果について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の又は対応する機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重畳した説明を省略する場合がある。また、理解を容易にするために、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。
【0010】
≪流体測定システム1≫
図1は、本実施形態に係る流体測定システム1の使用時の全体構成を示す図である。流体測定システム1は、配管P内を流れる流体の流速を測定するシステムである。流体測定システム1は、例えば、液体と気体が混合した二相流体の流速を求める。測定する二相流体としては、例えば、地熱発電における温水と蒸気の混合流体である。また、流体測定システム1は、求めた流速から流路の断面積をかけて流量を求めてもよい。なお、矢印Flowは、流体の流れる向きを示す。
【0011】
流体測定システム1は、第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12と、測定制御部20と、を備える。流体測定システム1は、配管Pに取り付けられた第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12を用いて、配管P内を流れる流体の流速を測定する。
【0012】
配管Pは、例えば、地面Gから離隔して、配管サポートPS1及び配管サポートPS4のそれぞれに固定される。
【0013】
第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12は、配管Pにかかる荷重を測定する荷重センサである。荷重センサは、例えば、ロードセルである。
【0014】
本実施形態に係る流体測定システム1は、配管Pと、配管Pを支える配管サポートPS2との間に、第1荷重センサ11を設置する。そして、第1荷重センサ11は、配管Pの第1荷重センサ11付近の流体の重量を含んだ荷重を測定する。
【0015】
本実施形態に係る流体測定システム1は、配管Pと、配管Pを支える配管サポートPS3との間に、第2荷重センサ12を設置する。そして、第2荷重センサ12は、配管Pの第2荷重センサ12付近の流体の重量を含んだ荷重を測定する。
【0016】
第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれは、実時間で荷重の測定を行う。そして、第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれは、時系列に測定した荷重をそれぞれ測定制御部20に実時間で出力する。
【0017】
第2荷重センサ12は、第1荷重センサ11の配管Pの下流に、配管Pに沿って所定の距離(設置距離L)を離して設けられる。したがって、第1荷重センサ11で測定された流体は、流体が第1荷重センサ11から第2荷重センサ12まで移動する時間遅れて、第2荷重センサ12で測定される。したがって、第1荷重センサ11での測定結果と第2荷重センサ12での測定結果を比較すると、第2荷重センサ12での測定結果は、第1荷重センサ11での測定結果から遅れて測定される。
【0018】
例えば、配管Pの内部を流れる流体が二相流体である場合には、配管Pの場所によって、二相流体の例えば液体と気体の混合比が異なる。液体と気体の混合比が異なると、配管の場所によって内部の流体の重量が異なる。したがって、配管Pの異なる位置で、配管Pからかかる荷重を測定することにより、流体測定システム1は、第1荷重センサ11と第2荷重センサ12との間を流体が移動する時間を算出する。そして、流体測定システム1は、流体の速度を求める。
【0019】
流体測定システム1は、第1荷重センサ11の測定結果に対して、第2荷重センサ12の測定結果が遅れるその時間差を求める。すなわち、流体測定システム1が求めた時間差は、配管Pの内部を流体が第1荷重センサ11から第2荷重センサ12まで移動する時間を表す。したがって、流体測定システム1は、第1荷重センサ11と第2荷重センサ12との間の配管Pに沿う距離である設置距離Lを、当該算出した時間差で割ることにより、流体の流速を算出する。後述するように、設置距離Lを補正することにより、高精度の測定が可能になる。
【0020】
なお、設置距離Lは、第1荷重センサ11の測定結果に対する第2荷重センサ12の測定結果の時間差が大きくなるように、長くすることが好ましい。ただし、設置距離Lが長くなると、第1荷重センサ11の測定結果と第2荷重センサ12の測定結果との相関が小さくなり、時間差の測定が困難になる。したがって、設置距離Lは、第1荷重センサ11の測定結果に対する第2荷重センサ12の測定結果の時間差が測定可能な範囲内で、長くすることが好ましい。
【0021】
測定制御部20は、第1荷重センサ11からの第1測定結果及び第2荷重センサ12からの第2測定結果を時系列データとして取得する。そして、測定制御部20は、取得した第1測定結果及び第2測定結果を処理して、配管Pの内部を流れる流体の速度を算出する。
【0022】
測定制御部20は、例えば、第1測定結果及び第2測定結果として、時間に対する荷重の波形を取得する。そして、当該波形を比較することにより、第1荷重センサ11で検出されてから第2荷重センサ12で検出するまでの時間差を算出する。例えば、測定制御部20は、時間差を算出する際に、相互相関法や動的時間伸縮法を用いる。
【0023】
次に、本実施形態に係る流体測定システム1の校正時について説明する。図2は、本実施形態に係る流体測定システム1の校正時の全体構成を示す図である。
【0024】
流体測定システム1の校正を行う場合には、流体測定システム1は、配管Pに局所的に荷重を加えるおもり31と、おもり31を配管Pの配管方向に移動させる牽引装置32と、おもり31と牽引装置32とを接続する連結部33と、を更に備える。
【0025】
おもり31は、配管Pの上部に載置される。おもり31は、おもり31の重量により、矢印FLの方向に、配管Pに荷重をかける。なお、本実施形態に係る流体測定システム1では、配管Pの上部をおもり31が移動するようにしているが、配管Pの内部、すなわち、流体が流れる経路、をおもり31が移動するようにしてもよい。
【0026】
おもり31は、連結部33により、牽引装置32に連結される。連結部33は、例えば、ケーブル、ワイヤ等である。
【0027】
牽引装置32は、連結部33を牽引しておもり31を矢印Awの方向に一定速度(基準速度Vm(メートル/秒))で移動させる。牽引装置32は、例えば、モータと、モータの回転に応じて回転し、連結部33を巻き取る滑車と、を備える。牽引装置32は、連結部33を巻き取ることにより、おもり31を一定速度(基準速度Vm)で移動させる。
【0028】
図3は、本実施形態に係る流体測定システム1の校正時の荷重センサの出力を示す図である。図3は、第1荷重センサ11の上流側からおもり31を移動させて、第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれの出力を記録した結果である。おもり31は、第1荷重センサ11から第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12の上側を通過して、第2荷重センサ12の下流側まで移動する。
【0029】
図3のグラフの横軸は、おもり31が第1荷重センサ11の上流側にある所定の点を通過してからの所定の時刻、縦軸は第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれの出力である。図3のグラフの線Laは第1荷重センサ11の出力、線Lbは第2荷重センサ12の出力、である。
【0030】
なお、上流側とは、配管Pを流れる流体の上流側を表す。例えば、図1の紙面の左側である。なお、配管Pを流れる流体の方向が変わる場合は、例えば、流体測定システム1において、設定等により上流と仮定する側である。
【0031】
図3に示すように、おもり31を、第1荷重センサ11の上流側から、第2荷重センサ12の下流側まで移動させると、最初に、第1荷重センサ11の出力が徐々に大きくなって、最大となり、その後、徐々に小さくなる。また、第2荷重センサ12の出力は、第1荷重センサ11の出力に遅れて、徐々に大きくなって、最大となり、その後、徐々に小さくなる。
【0032】
第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれの出力が最大となる時刻は、おもり31が第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれの直上にある時刻であると想定される。一方、配管Pの設置状態によっては、配管Pの変形モードにより、第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれの出力が最大となる時刻が、おもり31が第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれの直上にある時刻からずれる場合がある。
【0033】
図4は、本実施形態に係る流体測定システム1の校正時の荷重センサの出力を模式的に示す図である。図4は、第1荷重センサ11の上流側からおもり31を移動させて、第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれの出力を模式的に示す図である。
【0034】
図4のグラフの横軸は、おもり31が第1荷重センサ11の上流側にある所定の点を通過してからの所定の時刻、縦軸は第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれの出力である。図4のグラフの線Lasは理想的な第1荷重センサ11の出力、線Lbsは理想的な第2荷重センサ12の出力、を表す。図4のグラフの線Lamは実際の第1荷重センサ11の出力を模擬した出力、線Lbmは実際の第2荷重センサ12の出力を模擬した出力、を表す。
【0035】
理想的には、第1荷重センサ11の出力は、おもり31が第1荷重センサ11の直上に位置する時に出力が最大となる。また、理想的には、第2荷重センサ12の出力は、おもり31が第2荷重センサ12の直上に位置する時に出力が最大となる。
【0036】
第1荷重センサ11の出力(線Las)が最大となる時刻と、第2荷重センサ12の出力(線Lbs)が最大となる時刻との時間差である通過時間T1(秒)は、下記の式1で表される。なお、第1荷重センサ11と第2荷重センサ12との間の設置距離L(メートル)とする。
【0037】
T1= L/Vm ・・・(式1)
【0038】
しかしながら、配管及び荷重センサの設置条件によっては、第1荷重センサ11の出力が最大となる時刻が、おもり31が第1荷重センサ11の直上に位置する時からずれる場合がある。例えば、図4では、第1荷重センサ11の出力(線Lam)は、理想的に最大となる時刻に対して早い時刻に最大となる。また、第2荷重センサ12の出力(線Lbm)は、理想的に最大となる時刻に対して遅い時刻に最大となる。
【0039】
したがって、第1荷重センサ11の出力(線Lam)が最大となる時刻と、第2荷重センサ12の出力(線Lbm)が最大となる時刻との時間差である通過時間T2は、通過時間T1と異なる。通過時間T1と通過時間T2が異なる場合は、流体測定システム1で測定した流速の結果に誤差が生じる。
【0040】
そこで、本実施形態に係る流体測定システム1では、配管Pに沿って荷重をかけたときの、第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれの出力が最大となる時間の差を用いて、流速の演算を補正する。
【0041】
図5は、本実施形態に係る流体測定システム1の処理、すなわち、流体測定システム1の補正方法について説明するフローチャートである。図5は、流体測定システム1の測定制御部20が行う処理を示す。
【0042】
(ステップS10)
最初に、測定制御部20は、基準となる測定物でセンサ間の通過時間を測定する。本実施形態に係る流体測定システム1では、基準となる測定物は、おもり31である。また、牽引装置32は、基準となる測定物を移動させる駆動部の一例である。
【0043】
図2に示すように、作業者は、配管Pの上に、おもり31と牽引装置32を設置する。設置する際には、おもり31は第1荷重センサ11の上流側に第1荷重センサ11から一定の距離離して設置する。そして、牽引装置32は、第2荷重センサ12の下流側に一定の距離離して設置する。おもり31及び牽引装置32をそれぞれ第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12から一定の距離離して設置することにより、第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12付近を通過するときに、おもり31が一定の速度(基準速度Vm)になるようにできる。
【0044】
そして、測定制御部20は、牽引装置32によりおもり31を一定の速度(基準速度Vm)で牽引させる。測定制御部20は、第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれの出力を実時間で記録する。測定制御部20は、第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれの出力を、おもり31が第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12を通過して一定の距離進むまで記録する。
【0045】
おもり31は、移動しながら第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれが設置された位置の周辺において、配管Pに荷重をかける。おもり31が配管Pに荷重をかけることにより、第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれの出力は変化する。
【0046】
理想的には、第1荷重センサ11の直上におもり31があるときに、第1荷重センサ11の出力が最大となる。一方、配管の設置条件等により、第1荷重センサ11の出力が最大となる位置が、第1荷重センサ11の直上の位置と異なる場合がある。おもり31により配管Pに荷重をかけたときに、第1荷重センサ11の出力が最大となる位置を第1位置という。
【0047】
また、理想的には、第2荷重センサ12の直上におもり31があるときに、第2荷重センサ12の出力が最大となる。一方、配管の設置条件等により、第2荷重センサ12の出力が最大となる位置が、第2荷重センサ12の直上の位置と異なる場合がある。おもり31により配管Pに荷重をかけたときに、第2荷重センサ12の出力が最大となる位置を第2位置という。
【0048】
測定制御部20は、測定した第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれの出力から、第1荷重センサ11の出力が最大になってから及び第2荷重センサ12の出力が最大となるまでのおもり31の通過時間T2を算出する。すなわち、測定制御部20は、第1荷重センサ11の出力が最大となる第1位置から第2荷重センサ12の出力が最大となる第2位置までの間をおもり31が移動する時間に基づいて、通過時間T2を算出する。
【0049】
上記の処理により、測定制御部20は、基準となる測定物であるおもり31で第1荷重センサ11と第2荷重センサ12との間を通過する通過時間T2を測定する。
【0050】
(ステップS20)
次に、測定制御部20は、測定した通過時間と、実際の設置距離から算出される通過時間との差の絶対値は基準値以上かどうか判定する。測定制御部20は、例えば、設定画面等により入力された第1荷重センサ11と第2荷重センサ12との間の距離を示す設置距離Lから、第1荷重センサ11と第2荷重センサ12との間を通過する通過時間T1を算出する。具体的には、前述の式1により通過時間T1を算出する。
【0051】
そして、測定制御部20は、測定した通過時間T2と、実際の設置距離から算出される通過時間T1との差の絶対値が所定の基準値以上かどうか判断する。測定した通過時間T2と、実際の設置距離から算出される通過時間T1との差の絶対値が所定の基準値以上の場合(ステップS20のYes)は、測定制御部20は、流体測定システム1で発生する誤差が大きいと判断する。したがって、測定制御部20は、ステップS30に進んで補正処理を行う。
【0052】
一方、測定した通過時間T2と、実際の設置距離から算出される通過時間T1との差の絶対値が所定の基準値より小さいの場合(ステップS20のNo)は、測定制御部20は、流体測定システム1で発生する誤差が小さいと判断する。したがって、測定制御部20は、補正処理を行わずに、通常の流量測定を行う。
【0053】
(ステップS30)
次に、測定制御部20は、測定した通過時間からセンサ間距離の設定値を計算する。測定部は、通過時間T2(秒)から下記の式2により、センサ間距離の設定値Lc(メートル)を求める。
【0054】
Lc = Vm×T2 ・・・ (式2)
【0055】
なお、センサ間距離の設定値Lcは、第1荷重センサ11の出力が最大となる第1位置と第2荷重センサ12の出力が最大となる第2位置との間の距離に相当する。
【0056】
(ステップS40)
次に、測定制御部20は、計算したセンサ間距離の設定値Lcを用いて流速の測定を行う。具体的には、測定制御部20で測定した第1荷重センサ11と第2荷重センサ12との間の出力の時間差をΔT(秒)とすると、算出した測定流速Vc(メートル/秒)は式3で表される。
【0057】
Vc = Lc/ΔT ・・・ (式3)
【0058】
補正を行った結果について説明する。図6は、本実施形態に係る流体測定システム1の補正結果について説明する図である。図6は、設定速度でおもり31を移動させて、流体測定システム1で測定した結果を示す。なお、測定は、複数のセンサ間距離について行った。黒丸の点D1は、流体測定システム1において、補正を行いながら速度を測定した結果である。白丸の点Dzは、流体測定システム1において、補正を行わずに速度を測定した結果である。なお、図6のグラフ内の直線は、設定速度と測定速度が等しいことを表し、点線は誤差±10%の範囲を示す。
【0059】
図6より、流体測定システム1において、補正を行うこと(点D1)により、略10%の誤差で速度を測定できた。一方、補正を行わなかった場合(点Dz)は、条件によって、30%程度誤差が生じる場合があった。
【0060】
<作用・効果>
本実施形態に係る流体測定システム1は、基準となる測定物を移動させて第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12により測定を行う。そして、流体測定システム1は、移動する測定部により第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12の出力が最大となる位置を用いることにより、速度計測の誤差を低減できる。具体的には、第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12の出力が最大となるそれぞれ位置の距離をセンサの設置距離として補正することにより、流速の誤差を低減できる。
【0061】
<変形例>
なお、本実施形態に係る流体測定システム1は、センサ間距離の設定値Lcを用いて補正を行ったが、補正の方法は設定値Lcに限らない。例えば、第1荷重センサ11の出力が最大となる第1位置に、第1荷重センサ11を移動して、第2荷重センサ12の出力が最大となる第2位置に、第2荷重センサ12を移動して、再度、第1荷重センサ11及び第2荷重センサ12のそれぞれを設置してもよい。
【0062】
すなわち、流体測定システム1の第1荷重センサ及び第2荷重センサ(荷重センサ)の設置方法として、最初に、第1荷重センサの出力が最大となる第1位置と、第2荷重センサの出力が最大となる第2位置とを算出する工程を行う。そして、第1位置に第1荷重センサ11を再度設置する工程と、第2位置に第2荷重センサ12を再度設置する工程と、を行う。
【0063】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 流体測定システム
11 第1荷重センサ
12 第2荷重センサ
20 測定制御部
31 おもり
32 牽引装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6