(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】画像形成装置の制御方法、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20250415BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2021102275
(22)【出願日】2021-06-21
【審査請求日】2024-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】黒川 悠一朗
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-000873(JP,A)
【文献】特開2007-237402(JP,A)
【文献】特開2015-166143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
2/165-2/20
2/21 -2/215
19/00-19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動され、シートを搬送する無端の搬送ベルトと、前記搬送ベルトによって搬送される前記シートに対してインクを吐出することにより前記シートに画像を形成するインクジェット記録装置と、前記搬送ベルトに連動して回転する回転体と、前記回転体が予め定められた単位角度だけ回転するごとにパルスを出力するロータリーエンコーダーと、を備える画像形成装置の制御方法であって、
プロセッサーが、前記ロータリーエンコーダーの回転位相ごとに、前記ロータリーエンコーダーから出力される前記パルスの時間間隔であるパルス間隔を計時することと、
前記プロセッサーが、前記パルス間隔が計時されるごとに、前記パルス間隔または前記パルス間隔の移動平均値である計時値を前記回転位相に対応付けて記憶装置に累積して記録することと、
前記プロセッサーが、前記回転位相ごとの予め定められた複数サイクル数分の前記計時値の代表値である参照値を導出することと、
前記プロセッサーが、新たな前記計時値が得られるごとに、新たな前記計時値と、新たな前記計時値との間で共通の前記回転位相に対応する前記参照値と、の差に応じて前記インクジェット記録装置のインク吐出の時間間隔の補正値を導出することと、
前記プロセッサーが、前記インクジェット記録装置の前記インク吐出の時間間隔を前記補正値に応じて補正することと、を含む、画像形成装置の制御方法。
【請求項2】
前記プロセッサーは、前記パルス間隔の指数移動平均値を前記計時値として導出する、請求項1に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項3】
前記プロセッサーは、前記回転位相ごとの前記複数サイクル数分の前記計時値の平均値を前記参照値として導出する、請求項1または請求項2に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項4】
前記プロセッサーは、新たな前記計時値との間で共通の前記回転位相に対応し、かつ、新たな前記計時値に基づいて新たな前記参照値が導出される前に導出された前記参照値を用いて、前記補正値を導出する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項5】
回転駆動され、シートを搬送する無端の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトによって搬送されるシートに対してインクを吐出することにより前記シートに画像を形成するインクジェット記録装置と、
前記搬送ベルトに連動して回転する回転体と、
前記回転体が予め定められた単位角度だけ回転するごとにパルスを出力するロータリーエンコーダーと、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置の制御方法を実現するプロセッサーと、を備える画像形成装置。
【請求項6】
前記搬送ベルトを回転可能に支持する複数の支持ローラーを備え、
前記複数の支持ローラーは、モーターによって回転駆動される駆動ローラーと、前記搬送ベルトの回転に従動して回転する従動ローラーと、を含み、
前記回転体は前記従動ローラーである、請求項5に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送する搬送ベルトを備える画像形成装置の制御方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置は、搬送されるシートに対してインクを吐出することにより前記シートに画像を形成するインクジェット記録装置を備える。前記画像形成装置は、前記シートを搬送する搬送ベルトを備える場合がある。前記搬送ベルトは、複数の支持ローラーによって回転可能に支持される。
【0003】
前記搬送ベルトの回転速度は、各種の変動要因によって変動する。例えば、前記変動要因は、駆動モーターの回転ムラ、または、前記シートが前記搬送ベルトに到達したときに前記搬送ベルトが前記シートから受ける負荷などを含む。
【0004】
前記搬送ベルトの回転速度の変動は、前記シートの搬送速度の変動となって現れる。前記シートの搬送速度が変動する場合に、前記インクジェット記録装置が予め定められた基準間隔でインクを吐出すると、画像の乱れが生じる。
【0005】
そこで、前記画像形成装置が、前記支持ローラーに取り付けられたロータリーエンコーダーを備える場合がある(例えば、特許文献1参照)。この場合、前記ロータリーエンコーダーにより出力されるパルスの時間間隔であるパルス間隔が計時される。さらに、前記インクジェット記録装置のインク吐出の時間間隔は、前記パルス間隔と前記基準間隔との差に応じて補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記搬送ベルトを支持する前記複数の支持ローラーは、駆動ローラーおよび従動ローラーを含む。前記駆動ローラーは、前記駆動モーターによって回転駆動される。前記従動ローラーは、前記搬送ベルトの回転に従動して回転する。
【0008】
前記従動ローラーは、前記搬送ベルトに連動して回転する回転体の一例である。前記従動ローラーの回転速度の変動要因は、前記搬送ベルトへの負荷、前記駆動モーターおよび前記駆動ローラーに関する要因を含む。さらに、前記従動ローラーの回転速度の変動要因は、前記従動ローラーに関する要因も含む。
【0009】
例えば、前記従動ローラーに関する変動要因は、前記従動ローラーの回転軸の偏心の状態、または、前記従動ローラーの振動などを含む。
【0010】
しかしながら、前記従動ローラーに関する変動要因は、前記搬送ベルトの回転速度に影響しない。即ち、前記従動ローラーに関する変動要因は、前記シートの搬送速度に影響しない。
【0011】
また、前記ロータリーエンコーダーが、前記従動ローラーに取り付けられる場合がある。この場合、前記ロータリーエンコーダーの前記パルス間隔が、前記シートの搬送速度に関係しない原因によって変動するおそれがある。そのため、前記インクジェット記録装置のインク吐出の時間間隔が、誤って補正されるおそれがある。
【0012】
本発明の目的は、ロータリーエンコーダーが、搬送ベルトに連動して回転する回転体に取り付けられる場合に、前記ロータリーエンコーダーのパルス間隔に応じてインクジェット記録装置のインク吐出の時間間隔を正しく補正することができる画像形成装置の制御方法および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一の局面に係る画像形成装置の制御方法は、搬送ベルトと、インクジェット記録装置と、回転体と、ロータリーエンコーダーと、を備える画像形成装置を制御する方法である。前記搬送ベルトは、回転駆動され、シートを搬送する無端のベルトである。前記インクジェット記録装置は、前記搬送ベルトによって搬送される前記シートに対してインクを吐出することにより前記シートに画像を形成する。前記回転体は、前記搬送ベルトに連動して回転する。前記ロータリーエンコーダーは、前記回転体が予め定められた単位角度だけ回転するごとにパルスを出力する。前記制御方法は、プロセッサーが、前記ロータリーエンコーダーの回転位相ごとに、前記ロータリーエンコーダーから出力される前記パルスの時間間隔であるパルス間隔を計時することを含む。さらに前記制御方法は、前記プロセッサーが、前記パルス間隔が計時されるごとに、前記パルス間隔または前記パルス間隔の移動平均値である計時値を前記回転位相に対応付けて記憶装置に累積して記録することを含む。さらに前記制御方法は、前記プロセッサーが、前記回転位相ごとの予め定められた複数サイクル数分の前記計時値の代表値である参照値を導出することを含む。さらに前記制御方法は、前記プロセッサーが、新たな前記計時値が得られるごとに、新たな前記計時値と、新たな前記計時値との間で共通の前記回転位相に対応する前記参照値と、の差に応じて前記インクジェット記録装置の前記インク吐出の時間間隔の補正値を導出することを含む。さらに前記制御方法は、前記プロセッサーが、前記インクジェット記録装置のインク吐出の時間間隔を前記補正値に応じて補正することを含む。
【0014】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、前記搬送ベルトと、前記インクジェット記録装置と、前記回転体と、前記ロータリーエンコーダーと、を備える。さらに前記画像形成装置は、前記制御方法を実現するプロセッサーを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロータリーエンコーダーが、搬送ベルトに連動して回転する回転体に取り付けられる場合に、前記ロータリーエンコーダーのパルス間隔に応じてインクジェット記録装置のインク吐出の時間間隔を正しく補正することができる画像形成装置の制御方法および画像形成装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る画像形成装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る画像形成装置におけるロータリーエンコーダーの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る画像形成装置における補正前処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態に係る画像形成装置における計時データおよび参照データの構成の一例を表す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る画像形成装置における間隔補正制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
[画像形成装置10の構成]
実施形態に係る画像形成装置10は、シート9に画像を形成するプリント処理を実行する。
【0019】
図1に示されるように、画像形成装置10は、本体1、シート収容部2、シート搬送装置3、インクジェット記録装置4、ヒーター5および制御装置8を備える。
【0020】
本体1は筐体である。シート収容部2、シート搬送装置3、インクジェット記録装置4、ヒーター5および制御装置8は、本体1内に収容されている。
【0021】
シート収容部2は、複数枚のシート9を収容可能である。シート搬送装置3は、シート収容部2内のシート9を本体1内の搬送路30へ送り出し、さらに、シート9を搬送路30に沿って搬送する。
【0022】
シート搬送装置3は、シート供給装置31と、複数組の搬送ローラー対32と、第1ベルト搬送装置33と、第2ベルト搬送装置34とを備える。
【0023】
シート供給装置31は、シート収容部2内のシート9を1枚ずつ搬送路30へ送り出す。複数組の搬送ローラー対32は、シート供給装置31により送り出されたシート9を搬送路30に沿って搬送し、さらに画像が形成されたシート9を搬送路30の排出口30aから排出する。
【0024】
なお、不図示の連結ユニットが、本体1に連結されている。前記連結ユニットは、搬送路30の排出口30aから排出される画像形成後のシート9を受け入れ蓄積する。
【0025】
第1ベルト搬送装置33は、搬送路30におけるプリント位置に配置されている。第1ベルト搬送装置33は、前記プリント位置において、複数組の搬送ローラー対32の一部からシート9の搬送を引き継ぐ。
【0026】
さらに、第1ベルト搬送装置33は、搬送路30における乾燥位置へシート9を搬送する。前記乾燥位置は、搬送路30における前記プリント位置に対し後段の位置である。
【0027】
第1ベルト搬送装置33は、無端の搬送ベルト331と、複数の支持ローラー332,333と、駆動モーター334とを備える。複数の支持ローラー332,333は、搬送ベルト331を回転可能に支持する。
【0028】
搬送ベルト331は、駆動モーター334によって回転駆動される。搬送ベルト331は、シート9をその上面に載置した状態でシート9を搬送する。
【0029】
第2ベルト搬送装置34は、第1ベルト搬送装置33からシート9の搬送を引き継ぐ。さらに、第2ベルト搬送装置34は、シート9を搬送路30における前記乾燥位置からさらに後段へ搬送する。
【0030】
インクジェット記録装置4は、第1ベルト搬送装置33の搬送ベルト331によって搬送されるシート9に対してインクを吐出することにより、シート9に画像を形成する。
【0031】
ヒーター5は、第2ベルト搬送装置34によって搬送されるシート9上のインクを加熱する。これにより、ヒーター5は、シート9上のインクを乾燥させる。
【0032】
制御装置8は、各種のデータ処理および画像形成装置10の制御を実行する。
【0033】
図2に示されるように、制御装置8は、CPU(Central Processing Unit)81およびCPU81の周辺機器を備える。前記周辺機器は、RAM(Random Access Memory)82、二次記憶装置83および信号インターフェイス84などを含む。
【0034】
二次記憶装置83は、コンピューター読み取り可能な不揮発性の記憶装置である。二次記憶装置83は、前記コンピュータープログラムおよび各種のデータの記憶および更新が可能である。例えば、フラッシュメモリーまたはハードディスクドライブの一方または両方が、二次記憶装置83として採用される。
【0035】
信号インターフェイス84は、各種のセンサーが出力する信号をデジタルデータへ変換し、変換後のデジタルデータをCPU81へ伝送する。さらに、信号インターフェイス84は、CPU81が出力する制御指令を制御信号へ変換し、前記制御信号を制御対象の機器へ伝送する。
【0036】
さらに、制御装置8は、通信装置85も備える。通信装置85は、ホスト装置などの他の情報処理装置と通信可能である。前記ホスト装置は、画像形成装置10にプリントジョブを送信する。CPU81は、通信装置85を通じて前記情報処理装置と通信する。
【0037】
CPU81は、コンピュータープログラムを実行することにより、各種のデータ処理および制御を実行するプロセッサーである。RAM82は、コンピューター読み取り可能な揮発性の記憶装置である。RAM82は、CPU81が実行する前記コンピュータープログラムおよびCPU81が各種の処理を実行する過程で出力および参照するデータを一次記憶する。
【0038】
CPU81は、前記コンピュータープログラムを実行することにより実現される複数の処理モジュールを含む。前記複数の処理モジュールは、主処理部8a、搬送制御部8bおよびプリント制御部8cなどを含む。
【0039】
主処理部8aは、不図示の操作装置に対する操作、または、他装置からのデータの受信に応じて各種の処理を開始させる制御を実行する。さらに、主処理部8aは、不図示の表示装置の制御なども実行する。
【0040】
搬送制御部8bは、シート搬送装置3を制御する。これにより、搬送制御部8bは、シート収容部2からのシート9の送り出し、および、シート9の搬送を制御する。プリント制御部8cは、シート搬送装置3によるシート9の搬送に同期して、インクジェット記録装置4に前記プリント処理を実行させる。
【0041】
第1ベルト搬送装置33において、搬送ベルト331の回転速度は、各種の変動要因によって変動する。例えば、前記変動要因は、駆動モーター334の回転ムラ、または、シート9が搬送ベルト331に到達したときに搬送ベルト331がシート9から受ける負荷などを含む。
【0042】
搬送ベルト331の回転速度の変動は、シート9の搬送速度の変動となって現れる。シート9の搬送速度が変動する場合に、インクジェット記録装置4が予め定められた基準間隔でインクを吐出すると、画像の乱れが生じる。
【0043】
そこで、画像形成装置10は、複数の支持ローラー332,333のうちの1つに取り付けられたロータリーエンコーダー6を備える。ロータリーエンコーダー6により出力されるパルスの時間間隔であるパルス間隔が計時される。インクジェット記録装置4のインク吐出の時間間隔は、前記パルス間隔に基づいて補正される。
【0044】
ところで、搬送ベルト331を支持する複数の支持ローラー332,333は、駆動ローラー332および従動ローラー333を含む。駆動ローラー332は、駆動モーター334によって回転駆動される。
【0045】
駆動ローラー332が、搬送ベルト331を回転させる。即ち、駆動モーター334は、駆動ローラー332を介して搬送ベルト331を回転駆動する。従動ローラー333は、搬送ベルト331の回転に従動して回転する。
【0046】
従動ローラー333は、搬送ベルト331に連動して回転する回転体の一例である。従動ローラー333の回転速度の変動要因は、搬送ベルト331への負荷、駆動モーター334および駆動ローラー332に関する変動要因を含む。さらに、従動ローラー333の回転速度の変動要因は、前記従動ローラーに関する変動要因も含む。
【0047】
例えば、従動ローラー333に関する変動要因は、従動ローラー333の回転軸333aの偏心の状態、または、従動ローラー333の振動などを含む。
【0048】
しかしながら、従動ローラー333に関する変動要因は、搬送ベルト331の回転速度に影響しない。即ち、従動ローラー333に関する変動要因は、シート9の搬送速度に影響しない。
【0049】
また、ロータリーエンコーダー6が、従動ローラー333に取り付けられる場合がある。本実施形態においても、ロータリーエンコーダー6は、従動ローラー333の回転軸333aに取り付けられている(
図3参照)。
【0050】
図3に示されるように、ロータリーエンコーダー6は、パルス板61および検出センサー62を備える。パルス板61は、従動ローラー333の回転軸333aに連結されている。これにより、パルス板61は、従動ローラー333の回転軸333aと一体に構成されている。
【0051】
パルス板61には、その周方向に沿って一定のピッチで並ぶ複数のマーク61aが形成されている。マーク61a各々は、パルス板61の表面に形成された細線、または、スリットなどである。
【0052】
検出センサー62は、予め定められた位置においてマーク61a各々を検出する。例えば、検出センサー62は、フォトセンサー、または、静電容量センサーなどである。検出センサー62は、マーク61aを検出するごとにパルスを出力する。
【0053】
マーク61a各々の位置は、ロータリーエンコーダー6の回転位相に対応している。なお、ロータリーエンコーダー6の前記回転位相は、従動ローラー333の回転位相であるともいえる。
【0054】
パルス板61および従動ローラー333が予め定められた単位角度だけ回転するごとに、複数のマーク61aのいずれかが検出センサー62によって検出される。マーク61aの数が(N+1)個である場合、前記単位角度は180/N(度)である。
【0055】
従って、ロータリーエンコーダー6は、従動ローラー333が予め定められた前記単位位相分だけ回転するごとにパルスを出力する。
【0056】
ロータリーエンコーダー6が従動ローラー333に取り付けられる場合、ロータリーエンコーダー6の前記パルス間隔が、シート9の搬送速度に関係しない原因によって変動するおそれがある。そのため、インクジェット記録装置4のインク吐出の時間間隔が、誤って補正されるおそれがある。
【0057】
インクジェット記録装置4のインク吐出の時間間隔が誤って補正されると、画像の乱れが生じる。
【0058】
CPU81における前記複数の処理モジュールは、前処理部8dをさらに含む(
図2参照)。前処理部8dは、後述する補正前処理を実行する。前記補正前処理が実行されることにより、後述する参照値V2が導出される(
図4参照)。
【0059】
さらに、プリント制御部8cは、参照値V2を用いて、インクジェット記録装置4のインク吐出の時間間隔を補正する(
図4参照)。これにより、ロータリーエンコーダー6のパルス間隔に応じてインクジェット記録装置4のインク吐出の時間間隔を正しく補正することが可能である。
【0060】
[補正前処理]
以下、
図4に示されるフローチャートを参照しつつ、前記補正前処理の手順の一例について説明する。
【0061】
前処理部8dは、駆動モーター334が動作するときに前記補正前処理を実行する。以下の説明において、S101,S102,…は、前記補正前処理における複数の工程の識別符号を表す。
【0062】
前処理部8dは、前記補正前処理において、まず、工程S101の処理を実行する。以下の説明において、ロータリーエンコーダー6から出力される前記パルスの時間間隔のことをパルス間隔IP1と称する。
【0063】
<工程S101>
工程S101において、前処理部8dは、ロータリーエンコーダー6から1つの前記パルスが出力されてから次の前記パルスが出力されるまでの間に、パルス間隔IP1を計時する。その後、前処理部8dは処理を工程S102へ移行させる。
【0064】
<工程S102>
工程S102において、前処理部8dは、位相番号iを更新し、処理を工程S103へ移行させる。
【0065】
位相番号iは、ロータリーエンコーダー6の回転位相を識別する番号である。例えば、前記単位角度が180/N(度)である場合、位相番号iは、1~Nのいずれかである。位相番号iは、従動ローラー333の回転位相を識別する番号であるともいえる。
【0066】
元の位相番号iが1~(N-1)のいずれかである場合、前処理部8dは、元の位相番号iに1を加算することにより、位相番号iを更新する。元の位相番号iがNである場合、前処理部8dは、位相番号iを1に更新する。
【0067】
従って、従動ローラー333が1回転するごとに、位相番号iは1に更新される。
【0068】
<工程S103>
工程S103において、前処理部8dは、更新された位相番号iが1であるか否かを判定する。
【0069】
前処理部8dは、更新された位相番号iが1であると判定する場合に処理を工程S104へ移行させる。一方、前処理部8dは、更新された位相番号iが1であると判定する場合に処理を工程S105へ移行させる。
【0070】
<工程S104>
工程S104において、前処理部8dは、サイクル番号jを更新し、処理を工程S105へ移行させる。
【0071】
サイクル番号jは、従動ローラー333が1回転するごとに、1~Mの範囲内で更新される番号である。Mは、予め定められた複数のサイクル数である。例えば、Mは20以上、50未満の整数である。Mは、従動ローラー333の予め定められた複数の回転回数であるともいえる。
【0072】
元のサイクル番号jが1~(M-1)のいずれかである場合、前処理部8dは、元のサイクル番号jに1を加算することにより、サイクル番号jを更新する。元のサイクル番号jがMである場合、前処理部8dは、サイクル番号jを1に更新する。
【0073】
<工程S105>
工程S105において、前処理部8dは、計時値V1を二次記憶装置83に記録する。計時値V1は、工程S101で計時されたパルス間隔IP1またはパルス間隔IP1の移動平均値である。その後、前処理部8dは、処理を工程S106へ移行させる。
【0074】
本実施形態において、前処理部8dは、工程S101で計時されたパルス間隔IP1の指数移動平均値を計時値V1として導出する。さらに、前処理部8dは、導出された計時値V1を二次記憶装置83に記録する。指数移動平均値は移動平均値の一例である。
【0075】
計時値V1がパルス間隔IP1の移動平均値である場合、前記パルスに生じる電気的なノイズに起因する計時値V1の過剰な変化が抑制される。また、パルス間隔IP1の指数移動平均値を導出する処理が採用されることにより、パルス間隔IP1を一次記憶するためのメモリ容量を低減することができる。なお、計時値V1がパルス間隔IP1の加重移動平均値であってもよい。
【0076】
図5に示されるように、前処理部8dは、工程S105の処理により、位相番号iごとに、少なくとも直近の予め定められたサイクル数M分の計時値V1を二次記憶装置83に累積して記録する。
【0077】
従って、少なくともN×M個分の計時値V1を記録可能なデータ領域が、計時データD1の記憶領域として二次記憶装置83に確保されている(
図5参照)。
【0078】
以下の説明において、位相番号iおよびサイクル番号jの組み合わせに対応する計時値V1は、V1(i,j)と表記される。
【0079】
工程S105において、前処理部8dは、計時値V1(i,j)を二次記憶装置83における計時データD1の記憶領域に記録する。
【0080】
<工程S106>
工程S106において、前処理部8dは、位相番号iに対応する参照値V2(i)を導出する。
【0081】
参照値V2(i)は、予め定められたサイクル数M分の位相番号iの計時値V1(i,1)~V1(i,M)の代表値である。
【0082】
前処理部8dは、導出された参照値V2(i)を位相番号iに対応付けて二次記憶装置83に記録する(
図5参照)。これにより、ロータリーエンコーダー6の前記回転位相ごとの参照値V2を含む参照データD2が二次記憶装置83に記録される(
図5参照)。
【0083】
本実施形態において、前処理部8dは、予め定められたサイクル数M分の位相番号iの計時値V1(i,1)~V1(i,M)の平均値を参照値V2(i)として導出する。
【0084】
なお、前処理部8dは、M個の計時値V1(i,1)~V1(i,M)の中央値またはモード値などを参照値V2(i)として導出してもよい。
【0085】
また、前処理部8dは、M個の計時値V1(i,1)~V1(i,M)のうち予め定められた除外条件を満たす一部が除外された残りの一部の平均値を参照値V2(i)として導出してもよい。
【0086】
例えば、前記除外条件は、第1除外条件および第2除外条件を含む。前記第1除外条件は、M個の計時値V1(i,1)~V1(i,M)のうち、最大のものから数えて予め定められた個数分の値である、という条件である。前記第2除外条件は、M個の計時値V1(i,1)~V1(i,M)のうち、最小のものから数えて予め定められた個数分の値である、という条件である。
【0087】
前処理部8dは、参照値V2(i)を導出し、さらに参照値V2(i)を二次記憶装置83に記録した後、処理を工程S101へ移行させる。これにより、ロータリーエンコーダー6により前記パルスが出力されるごとに、工程S101~S106の処理が実行される。
【0088】
以上に示されるように、前処理部8dは、ロータリーエンコーダー6の前記回転位相ごとに、パルス間隔IP1を計時する(
図4の工程S101参照)。前述したように、位相番号iは、前記回転位相を識別する番号である。
【0089】
さらに、前処理部8dは、パルス間隔IP1が計時されるごとに、計時されたパルス間隔IP1に対応する計時値V1を前記回転位相に対応付けて二次記憶装置83に累積して記録する(
図4の工程S105および
図5参照)。
【0090】
さらに、前処理部8dは、前記回転位相ごとの参照値V2(i)を導出する(
図4の工程S106参照)。前述したように、参照値V2(i)は、予め定められたサイクル数M分の計時値V1(i,1)~V1(i,M)の代表値である。
【0091】
[間隔補正制御]
プリント制御部8cは、インクジェット記録装置4に前記プリント処理を実行させるときに、間隔補正制御を実行する(
図6参照)。
【0092】
以下、ロータリーエンコーダー6から前記パルスが出力されるごとに得られる新たな計時値V1(i,j)のことを新計時値VI1と称する。また、新計時値VI1との間で共通の前記回転位相に対応する参照値V2(i)のことを対応参照値VI2と称する((1)式を参照)。
【0093】
【0094】
プリント制御部8cは、前記間隔補正制御において、
図6に示される工程S201の処理および工程S202の処理を実行する。
【0095】
プリント制御部8cは、インクジェット記録装置4にインクの吐出を実行させるごとに、工程S201および工程S202の処理を実行する。これにより、インクジェット記録装置4が次のインク吐出を実行するまでの時間が調節される。
【0096】
<工程S201>
プリント制御部8cは、工程S201において、新計時値VI1と対応参照値VI2との差に応じて補正値V3を導出する。プリント制御部8cは、新計時値VI1が得られるごとに、新たな補正値V3を導出する。
【0097】
補正値V3は、インクジェット記録装置4のインク吐出の時間間隔を補正するための値である。
【0098】
例えば、プリント制御部8cは、新計時値VI1および対応参照値VI2を以下の(2)式に適用することにより補正値V3を導出する。(2)式において、基準値VS1は、予め定められた値である。基準値VS1は、パルス間隔IP1の標準の値である。
【0099】
【0100】
<工程S202>
プリント制御部8cは、さらに工程S202において、インクジェット記録装置4のインク吐出の時間間隔を補正値V3に応じて補正する。
【0101】
例えば、プリント制御部8cは、インク吐出の時間間隔が以下の(3)式により導出される修正間隔T1となるようにインクジェット記録装置4を制御する。
【0102】
【0103】
(3)式において、標準間隔TS1は、第1ベルト搬送装置33の搬送ベルト331が予め定められた標準速度で回転するときに対応するインク吐出の時間間隔である。
【0104】
前処理部8dによる前記補正前処理、および、プリント制御部8cによる前記間隔補正制御は、画像形成装置10の制御方法を実現する処理の一例である。
【0105】
前述したように、従動ローラー333の回転速度の変動要因は、従動ローラー333に関する変動要因を含む。従動ローラー333に関する変動要因は、従動ローラー333の回転軸333aの偏心の状態、または、従動ローラー333の振動などを含む。
【0106】
そして、従動ローラー333に起因する従動ローラー333の回転速度の変動は、従動ローラー333において周期的に発生する。即ち、従動ローラー333に起因する従動ローラー333の回転速度の変動は、従動ローラー333の前記回転位相それぞれにおいて繰り返し現れる。
【0107】
一方、従動ローラー333に起因しない従動ローラー333の回転速度の変動は、従動ローラー333の前記回転位相それぞれにおいて低い頻度で現れるにすぎない。そのため、従動ローラー333に起因しない従動ローラー333の回転速度の変動は、前記回転位相ごとのM個の計時値V1(i,1)~V1(i,M)のごく一部にしか反映されない。
【0108】
本実施形態において、前記回転位相ごとの参照値V2(i)は、前記回転位相ごとの予め定められたサイクル数M分の計時値V1(i,1)~V1(i,M)の平均値などである。
【0109】
従って、参照値V2(i)は、主に従動ローラー333に起因する従動ローラー333の回転速度の変動を表す。参照値V2(i)が表す回転速度の変動は、搬送ベルト331の回転速度にほとんど影響しない。
【0110】
一方、前記回転位相ごとに得られる新たな計時値V1(i,j)は、従動ローラー333に起因する従動ローラー333の回転速度の変動と、搬送ベルト331の回転速度に影響するその他の変動との両方が反映されている。
【0111】
本実施形態において、補正値V3は、新たな計時値V1(i,j)とその計時値V1(i,j)に対応する参照値V2(i)との差に基づく値である((2)式を参照)。
【0112】
従って、補正値V3は、主に搬送ベルト331の回転速度に影響する変動のみが反映された値である。本実施形態において、インク吐出の時間間隔は、そのような補正値V3を用いて補正される((3)式を参照)。
【0113】
本実施形態が採用されることにより、ロータリーエンコーダー6のパルス間隔IP1に応じてインクジェット記録装置4のインク吐出の時間間隔が正しく補正される。
【0114】
また、本実施形態において、プリント制御部8cは、標準間隔TS1に近い周期で前記間隔補正制御を実行する。一方、前処理部8dは、基準値VS1が表す周期に近い周期で参照値V2を導出する。ここで、参照値V2は、前記間隔補正制御の周期と同期して導出されるとは限らない。
【0115】
従って、プリント制御部8cは、新たな計時値V1(i,j)が生じた後に、新たな計時値V1(i,j)に対応する参照値V2(i)が導出される前に、インク吐出の時間間隔の補正を行う場合がある。この場合、プリント制御部8cは、新たな計時値V1(i,j)と直近の参照値V2(i)との差に応じて補正値V3を導出する。
【0116】
直近の参照値V2(i)は、新たな計時値V1(i,j)との間で共通の前記回転位相に対応している。即ち、直近の参照値V2(i)は、新たな計時値V1(i,j)との間で共通の位相番号iに対応している。
【0117】
さらに、直近の参照値V2(i)は、新新たな計時値V1(i,j)に基づいて新たな参照値V2(i)が導出される1回前に導出されている。
【0118】
参照値V2(i)は、従動ローラー333が1回転するごとに大きく変化する値ではない。従って、新たな計時値V1(i,j)に対応する参照値V2(i)よりも前に導出された参照値V2(i)が補正値V3の導出に用いられても特に支障は生じない。
【符号の説明】
【0119】
3 :シート搬送装置
4 :インクジェット記録装置
6 :ロータリーエンコーダー
8 :制御装置
10 :画像形成装置
32 :搬送ローラー対
33 :第1ベルト搬送装置
34 :第2ベルト搬送装置
81 :CPU(プロセッサー)
331 :搬送ベルト
332 :駆動ローラー
333 :従動ローラー(回転体)
333a :回転軸
334 :駆動モーター