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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】半導体装置および樹脂製構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20250415BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20250415BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021108511
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006103
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】江草 洋
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-075459(JP,A)
【文献】特開2014-138080(JP,A)
【文献】特開平09-234757(JP,A)
【文献】特開2012-028552(JP,A)
【文献】特開2017-011152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板を取り囲む樹脂製構造体と、
前記基板上に搭載される半導体チップと、を備え、
前記樹脂製構造体は、板状であって、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられた平板部を複数含み、
各前記平板部は、前記貫通孔の側壁面から前記平板部の厚さに相当する長さ以内に配置される部分を有するウェルド部を含み、
前記基板の厚さ方向に見て、前記ウェルド部のうちの少なくとも一つは、法線より内側の180度以内の範囲にあり、
前記法線は、複数の前記貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、前記貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線であり、かつ、
前記法線は、前記貫通孔の中心を通り、
前記法線よりも内側の180度以内の範囲に前記ウェルド部を有する前記平板部には、前記法線よりも外側の180度以内の範囲にウェルド部がない、半導体装置。
【請求項2】
複数の前記平板部の2つ以上は、前記ウェルド部を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
全ての前記平板部は、前記ウェルド部を含む、請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
基板と、
前記基板を取り囲む樹脂製構造体と、
前記基板上に搭載される半導体チップと、を備え、
前記樹脂製構造体は、板状であって、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられた平板部を複数含み、
前記平板部のうちの少なくとも一つは、ゲート痕を含み、
前記基板の厚さ方向に見て、前記ゲート痕の少なくとも一部は、法線より外側の180度以内の範囲にあり、
前記法線は、複数の前記貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、前記貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線であり、かつ、
前記法線は、前記貫通孔の中心を通る、半導体装置。
【請求項5】
複数の前記平板部の2つ以上は、前記ゲート痕を含む、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
全ての前記平板部は、前記ゲート痕を含む、請求項4または請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記樹脂製構造体は、熱可塑性樹脂から構成されている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記樹脂製構造体は、前記貫通孔に取り付けられる金属製の筒状部をさらに含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記筒状部の外周面の少なくとも一部には、凹凸形状が形成されている、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記筒状部は、前記貫通孔から突出している突出領域を含む、請求項8または請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
板状であって、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられた平板部を複数含み、
各前記平板部は、前記貫通孔の側壁面から前記平板部の厚さに相当する長さ以内に配置される部分を有するウェルド部を含み、
前記平板部の厚さ方向に見て、前記ウェルド部のうちの少なくとも一つは、法線より内側の180度以内の範囲にあり、
前記法線は、複数の前記貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、前記貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線であり、かつ、
前記法線は、前記貫通孔の中心を通り、
前記法線よりも内側の180度以内の範囲に前記ウェルド部を有する前記平板部には、前記法線よりも外側の180度以内の範囲にウェルド部がない、樹脂製構造体。
【請求項12】
板状であって、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられた平板部を複数含み、
前記平板部のうちの少なくとも一つは、ゲート痕を含み、
前記平板部の厚さ方向に見て、前記ゲート痕の少なくとも一部は、法線より外側の180度以内の範囲にあり、
前記法線は、複数の前記貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、前記貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線であり、かつ、
前記法線は、前記貫通孔の中心を通る、樹脂製構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置および樹脂製構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒状のカラーが嵌合される取り付け孔を備える樹脂成形体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によると、成形時に樹脂の合流により取り付け孔の周縁部に形成されるウェルド部が、周縁部のうちの接触突出部が形成された対応領域に設けられることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-15382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置には、取り付け用の貫通孔が設けられた樹脂製構造体が備えられる場合がある。半導体装置は、樹脂製構造体に設けられた貫通孔を利用して、ボルトにより所定の箇所に締結され、固定される。特許文献1に開示の樹脂成形体によると、接触突出部が形成された対応領域にウェルド部が設けられ、この対応領域においてカラーと成形体とが接触する構成である。
【0005】
しかし、このような構成では、貫通孔において、カラーと接触する領域と接触しない領域とが生じることになる。そして、非接触領域を設けることにより接触領域が小さくなり、接触領域における面圧が大きくなってしまう。そうすると、接触領域に設けられるウェルド部において、カラーの全域で応力を受ける場合と比較して、ウェルド部には大きな応力がかかることになり、結果として破断が生ずるおそれがある。また、接触領域が小さくなることから、貫通孔の貫通方向における強度が低下し、ボルトを締結する時や貫通方向に応力が加わった場合に、貫通孔に嵌合されたカラーがずれてしまうおそれがある。このような状態では、半導体装置の取り付けが不十分となり、信頼性の低下を招くことになる。さらに、このような複雑な形状の樹脂成形体を射出成型で製造するには難易度が高く、生産性が悪化してしまう。
【0006】
そこで、生産性および信頼性の向上を図ることができる半導体装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従った半導体装置は、基板と、基板を取り囲む樹脂製構造体と、基板上に搭載される半導体チップと、を備える。樹脂製構造体は、板状であって、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられた平板部を複数含む。各平板部は、貫通孔の側壁面から平板部の厚さに相当する長さ以内に配置される部分を有するウェルド部を含む。基板の厚さ方向に見て、ウェルド部のうちの少なくとも一つは、法線より内側の180度以内の範囲にある。法線は、複数の貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線であり、かつ、法線は、貫通孔の中心を通る。
【発明の効果】
【0008】
上記半導体装置によれば、生産性および信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1における半導体装置の概略斜視図である。
図2図2は、図1に示す半導体装置をベース板の厚さ方向に見た場合の概略平面図である。
図3図3は、図2中の領域IIIで示す部分の拡大平面図である。
図4図4は、図1に示す半導体装置に含まれる樹脂製構造体を示す概略側面図である。
図5図5は、実施の形態2における半導体装置に含まれる樹脂製構造体の一部を示す概略平面図である。
図6図6は、実施の形態3における半導体装置に含まれる樹脂製構造体の一部を示す概略平面図である。
図7図7は、実施の形態4における半導体装置に含まれる筒状部を模式的に示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示に係る半導体装置は、基板と、基板を取り囲む樹脂製構造体と、基板上に搭載される半導体チップと、を備える。樹脂製構造体は、板状であって、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられた平板部を複数含む。各平板部は、貫通孔の側壁面から平板部の厚さに相当する長さ以内に配置される部分を有するウェルド部を含む。基板の厚さ方向に見て、ウェルド部のうちの少なくとも一つは、法線より内側の180度以内の範囲にある。法線は、複数の貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線であり、かつ、法線は、貫通孔の中心を通る。
【0011】
半導体装置において、貫通孔は、ボルトで固定されるため、上記した樹脂製構造体を含む半導体装置には、温度サイクル時などにおいて貫通孔の周囲に非常に高い応力が、基板の中央から外周側、すなわち、樹脂製構造体の中央から外周側に向かって発生する。本開示の半導体装置によると、ウェルド部のうちの少なくとも一つが、上記したように、法線より内側の180度以内の範囲にある。法線は、複数の貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線であり、かつ、法線は、貫通孔の中心を通る。このように構成することにより、上記したように基板の厚さ方向に見て基板の中央から外周側に向かって応力が加えられた場合に、平板部において、ウェルド部が配置された領域と異なる領域で加えられた応力を受けることができる。ウェルド部が配置された領域と異なる領域における強度は、ウェルド部が配置された領域における強度と比較して高いため、高い強度の領域で応力を受けることができる。そうすると、破断のおそれを低減することができる。また、上記樹脂製構造体は比較的単純な形状であり、複雑な形状ではないため、生産性が良好である。したがって、このような半導体装置は、生産性および信頼性の向上を図ることができる。
【0012】
上記半導体装置において、複数の平板部の2つ以上は、ウェルド部を含んでもよい。このようにすることにより、破断のおそれをより低減することができ、より信頼性の向上を図ることができる。
【0013】
上記半導体装置において、全ての平板部は、ウェルド部を含んでもよい。このようにすることにより、さらに破断のおそれを低減することができ、さらに信頼性の向上を図ることができる。
【0014】
また、本開示の半導体装置は、基板と、基板を取り囲む樹脂製構造体と、基板上に搭載される半導体チップと、を備える。樹脂製構造体は、板状であって、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられた平板部を複数含む。平板部のうちの少なくとも一つは、ゲート痕を含む。基板の厚さ方向に見て、ゲート痕の少なくとも一部は、法線より外側の180度以内の範囲にある。法線は、複数の貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線であり、かつ、法線は、貫通孔の中心を通る。
【0015】
このような半導体装置によると、ゲート痕の少なくとも一部は、法線より外側の180度以内の範囲にある。法線は、複数の貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線であり、かつ、法線は、貫通孔の中心を通る。このようにすることにより、貫通孔の周りを流れた樹脂が合流して形成されるウェルド部を、上記法線より内側の180度以内の範囲に配置することが容易となる。したがって、このような半導体装置は、生産性および信頼性の向上を図ることができる。ここで、ゲートについては、サイドゲートあるいはサブマリンゲートで注型され、注型後にゲートは切断され、ゲート痕として残る。ゲート痕は、射出成型金型のスプルーとランナーを通って樹脂製構造体に注型する位置を示すものであり、ゲート痕の大きさや形状にはよらない。
【0016】
上記半導体装置において、複数の平板部の2つ以上は、ゲート痕を含んでもよい。このようにすることにより、破断のおそれをより低減することができ、より信頼性の向上を図ることができる。
【0017】
上記半導体装置において、全ての平板部は、ゲート痕を含んでもよい。このようにすることにより、さらに破断のおそれを低減することができ、さらに信頼性の向上を図ることができる。
【0018】
上記半導体装置において、樹脂製構造体は、熱可塑性樹脂から構成されていてもよい。このようにすることにより、射出成型等により効率的に製造することができる。
【0019】
上記半導体装置において、樹脂製構造体は、貫通孔に取り付けられる金属製の筒状部をさらに含んでもよい。このようにすることにより、貫通孔を利用して半導体装置を固定する際の強固な固定を実現することができる。したがって、より信頼性の向上を図ることができる。
【0020】
上記半導体装置において、筒状部の外周面の少なくとも一部には、凹凸形状が形成されていてもよい。このようにすることにより、外周面の凹凸形状が貫通孔の側壁面との摩擦により引っ掛かり、筒状部が貫通孔から抜け出るおそれを大きく低減することができる。したがって、より信頼性の向上を図ることができる。
【0021】
上記半導体装置において、筒状部は、貫通孔から突出している突出領域を含んでもよい。このようにすることにより、筒状部は、貫通孔から突出しているため、挿入されるボルトは、座屈強度の高い金属製の筒状部で確実に受けることができ、ボルトによる締結力の向上を図ることができる。したがって、より信頼性の向上を図ることができる。
【0022】
本開示の樹脂製構造体は、板状であって、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられた平板部を複数含む。各平板部は、貫通孔の側壁面から平板部の厚さに相当する長さ以内に配置される部分を有するウェルド部を含む。平板部の厚さ方向に見て、法線より内側の180度以内の範囲にある。法線は、複数の貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線であり、かつ、法線は、貫通孔の中心を通る。
【0023】
このような樹脂製構造体は、ウェルド部のうちの少なくとも一つが、上記したように、法線より内側の180度以内の範囲にある。法線は、複数の貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線であり、かつ、法線は、貫通孔の中心を通る。このように構成することにより、平板部の厚さ方向に見て樹脂製構造体の中央から外周側に向かって応力が加えられた場合に、平板部において、ウェルド部が配置された領域と異なる領域で加えられた応力を受けることができる。ウェルド部が配置された領域と異なる領域における強度は、ウェルド部が配置された領域における強度と比較して高いため、高い強度の領域で応力を受けることができる。そうすると、破断のおそれを低減することができる。また、上記樹脂製構造体は比較的単純な形状であり、複雑な形状ではないため、生産性が良好である。したがって、このような樹脂製構造体は、生産性および信頼性の向上を図ることができる。
【0024】
また、本開示の樹脂製構造体は、板状であって、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられた平板部を複数含む。平板部のうちの少なくとも一つは、ゲート痕を含む。平板部の厚さ方向に見て、ゲート痕の少なくとも一部は、法線より外側の180度以内の範囲にある。法線は、複数の貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線であり、かつ、法線は、貫通孔の中心を通る。
【0025】
このような樹脂製構造体は、法線より外側の180度以内の範囲にある。法線は、複数の貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線であり、かつ、法線は、貫通孔の中心を通る。このようにすることにより、貫通孔の周りを流れた樹脂が合流して形成されるウェルド部を、貫通孔の中心を通り、隣り合う複数の貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と貫通孔の中心とを結ぶ直線の法線より内側の180度以内の範囲に配置することが容易となる。したがって、このような樹脂製構造体は、生産性および信頼性の向上を図ることができる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の半導体装置の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0027】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1における半導体装置の構成について説明する。図1は、実施の形態1における半導体装置の概略斜視図である。図2は、図1に示す半導体装置をベース板の厚さ方向に見た場合の概略平面図である。図3は、図2中の領域IIIで示す部分の拡大平面図である。図4は、図1に示す半導体装置に含まれる樹脂製構造体を示す概略側面図である。図1図3において、後述するゲート痕の図示を省略し、図4において、樹脂製構造体を簡略化して図示している。
【0028】
図1図2図3および図4を参照して、実施の形態1における半導体装置11aは、ベース板12と、ベース板12上に配置される樹脂製構造体20aと、ベース板12上に配置される基板17a,17bと、板状の端子(バスバー)19a,19b,19c,19dと、コンデンサ18a,18bと、半導体チップ21a,21b,21c,21d,21e,21f,22a,22b,22c,22d,22e,22fと、プレスフィットピン26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hと、を備える。ベース板12および樹脂製構造体20aによって、半導体装置11aに備えられるケースが構成される。ベース板12および樹脂製構造体20aによって構成されるケース内の空間30には、図示しない樹脂が充填される。樹脂の種類としては、たとえばエポキシ樹脂やシリコーンゲル、ウレタン樹脂が選択される。
【0029】
ベース板12は、金属製である。ベース板12は、たとえば銅製である。ベース板12の表面には、ニッケル等のめっき処理が施されてもよい。ベース板12の外形形状は、厚さ方向に見て、X方向に延びる辺を長辺とし、Y方向に延びる辺を短辺とした矩形状である。基板17a,17bはそれぞれ、ベース板12の厚さ方向の一方に位置する第1の面12a上に図示しないはんだ等によって接合される。ベース板12の厚さ方向の他方に位置する裏面12bには、たとえば、放熱を効率的に行う放熱フィン(図示しない)等が取り付けられる場合がある。ベース板12の厚さ方向および基板17a,17bの厚さ方向は、Z方向である。
【0030】
ベース板12は、ベース板12の厚さ方向に貫通する4つの第1貫通孔12c,12d,12e,12fを有する。第1貫通孔12c,12d,12e,12fはそれぞれ、矩形状のベース板12の四隅に近い部分に設けられている。第1貫通孔12c,12d,12e,12fを構成する第1側壁面12g,12h,12i,12jはそれぞれ、Z方向に沿って延びるストレート形状である。すなわち、第1貫通孔12c,12d,12e,12fはそれぞれ、ベース板12の四つの角部に近い領域をZ方向に真っ直ぐに貫通するように形成されている。第1貫通孔12c,12d,12e,12fは、後述する第2貫通孔32a,32b,32c,32dおよび第3貫通孔42a,42b,42c,42dを有する筒状部41a,41b,41c,41dと共に、例えば第3貫通孔42a,42b,42c,42dに図示しないボルトの胴部を収容するようにして、半導体装置11aを所定の設置個所に取り付ける際に有効に利用される。
【0031】
基板17aは、絶縁性を有する絶縁板14aと、導電性を有する回路パターン16aと、を有する。回路パターン16aは、絶縁板14aの上に配置される。基板17aは、絶縁板14aの上に回路パターン16aを積層した構成である。回路パターン16aは、複数の回路板から構成される。本実施形態においては、回路パターン16aは、第1回路板15aと、第2回路板15bと、第3回路板15cと、第4回路板15dと、第5回路板15eと、第6回路板15fと、を含む。本実施形態においては、回路パターン16aは、銅配線である。基板17aと同様に、基板17bは、絶縁性を有する絶縁板14bと、銅配線である回路パターン16bと、を有する。回路パターン16bは、第7回路板15gと、第8回路板15hと、第9回路板15iと、第10回路板15jと、第11回路板15kと、を含む。
【0032】
コンデンサ18aは、一方の電極と、他方の電極とを含む。一方の電極が、第5回路板15eと接合され、他方の電極が、第6回路板15fと接合される。コンデンサ18bも同様に、一方の電極および他方の電極を含み、一方の電極が第10回路板15jと接合され、他方の電極が第11回路板15kと接合される。
【0033】
半導体チップ21a,21b,21c,22a,22b,22cは、第1回路板15a上に配置される。半導体チップ21d,21e,21f,22d,22e,22fは、第7回路板15g上に配置される。半導体チップ21a,21b,21c,21d,21e,21f,22a,22b,22c,22d,22e,22fは、ワイドバンドギャップ半導体チップである。ワイドバンドギャップ半導体チップとは、バンドギャップがシリコンよりも大きい材質から構成される半導体層を動作層として有する半導体チップをいう。ワイドバンドギャップ半導体チップは、たとえば、炭化ケイ素、窒化ガリウムまたは酸化ガリウムから構成される半導体層を動作層として有する。このようなワイドバンドギャップ半導体チップは、絶縁破壊電圧が高く、ドリフト層の抵抗を小さくできることからオン抵抗を小さくすることができる。半導体チップ21a,21b,21c,21d,21e,21fは、例えばショットキーバリアダイオード(SBD)である。半導体チップ22a,22b,22c,22d,22e,22fは、例えば金属-酸化物-半導体電界効果型トランジスタ(MOSFET)である。
【0034】
樹脂製構造体20aは、ベース板12の第1の面12aから立ち上がり、ベース板12の厚さ方向に見て、基板17a,17bの外周を取り囲むようにベース板12に取り付けられる。樹脂製構造体20aは、第1の面12aと対向する第2の面13eを含む。樹脂製構造体20aは、たとえば接着剤によりベース板12に固定される。すなわち、ベース板12の第1の面12aと樹脂製構造体20aの第2の面13eとが接着される。
【0035】
樹脂製構造体20aは、第1壁部13aと、第2壁部13bと、第3壁部13cと、第4壁部13dと、を含む。第1壁部13aと第2壁部13bとは、ベース板12の厚さ方向に見てベース板12の短辺に対応する方向(Y方向)において対向して配置される。第3壁部13cと第4壁部13dとは、ベース板12の厚さ方向に見てベース板12の長辺に対応する方向(X方向)において対向して配置される。樹脂製構造体20aに含まれる第1壁部13a、第2壁部13b、第3壁部13cおよび第4壁部13dはそれぞれ、第1の面12aに交差する方向に立ち上がる。具体的には、第1壁部13a、第2壁部13b、第3壁部13cおよび第4壁部13dはそれぞれ、第1の面12aに対して垂直に立ち上がる。樹脂製構造体20aは、第1壁部13aの内壁面27aと、内壁面27aに対向する第3壁部13cの内壁面27bと、内壁面27aおよび内壁面27bと連なる第2壁部13bの内壁面27cと、内壁面27aおよび内壁面27bと連なり、内壁面27cと対向する第4壁部13dの内壁面27dと、を含む。
【0036】
樹脂製構造体20aは、熱可塑性樹脂から構成される。樹脂製構造体20aの材質としては、絶縁性および強度が高い材質が用いられ、具体的には例えばPPS(Polyphenylenesulfide)樹脂が採用される。このような樹脂は、成形性が良好であり、絶縁性、耐湿性、耐熱性が優れており、強度も高い。なお、樹脂製構造体20aの材質として他にPBT(Poly Butylene Terephtalate)樹脂を用いてもよい。樹脂製構造体20aの具体的な構成については、後に詳述する。
【0037】
端子(バスバー)19a,19b,19c,19dはそれぞれ、板状であって、金属製である。端子19a,19b,19c,19dはそれぞれ、樹脂製構造体20aに取り付けられている。具体的には、端子19a,19bは、第3壁部13cに取り付けられている。端子19c,19dは、第4壁部13dに取り付けられている。本実施形態においては、端子19a,19b,19c,19dは、インサート成型により、樹脂製構造体20aに取り付けられている。端子19a,19b,19c,19dは、それぞれ屈曲した帯状の形状を有する。本実施形態においては、端子19a,19b,19c,19dは、それぞれ例えば、帯状の銅板を折り曲げて形成される。半導体装置11aは、端子19a,19b,19c,19dによって外部との電気的な接続を確保する。
【0038】
端子19aと第1回路板15aとは、超音波接合により直接接合されている。端子19bと第2回路板15bとは、超音波接合により直接接合されている。端子19cと第7回路板15gとは、超音波接合により直接接合されている。端子19dと第7回路板15gとは、超音波接合により直接接合されている。なお、端子19aと第1回路板15aとの接合、端子19bと第2回路板15bとの接合、端子19cと第7回路板15gとの接合、端子19dと第7回路板15gとの接合についてはそれぞれ、はんだ等の接合材により接合されていてもよい。
【0039】
半導体チップ21aと半導体チップ22aとは、ワイヤ24aで接続されている。半導体チップ21bと半導体チップ22bとは、ワイヤ24bで接続されている。半導体チップ21cと半導体チップ22cとは、ワイヤ24cで接続されている。半導体チップ21dと半導体チップ22dとは、ワイヤ24dで接続されている。半導体チップ21eと半導体チップ22eとは、ワイヤ24eで接続されている。半導体チップ21fと半導体チップ22fとは、ワイヤ24fで接続されている。半導体チップ22aと第4回路板15dとは、ワイヤ25aで接続されている。半導体チップ22bと第4回路板15dとは、ワイヤ25bで接続されている。半導体チップ22cと第4回路板15dとは、ワイヤ25cで接続されている。半導体チップ22dと第8回路板15hとは、ワイヤ25dで接続されている。半導体チップ22eと第8回路板15hとは、ワイヤ25eで接続されている。半導体チップ22fと第8回路板15hとは、ワイヤ25fで接続されている。
【0040】
第2回路板15bと第8回路板15hとは、ワイヤ29aで接続されている。第4回路板15dと第7回路板15gとは、ワイヤ29bで接続されている。半導体チップ22a,22b,22cと第3回路板15cとは、それぞれワイヤで接続されており、半導体チップ22d,22e,22fと第9回路板15iとは、それぞれワイヤで接続されている。ワイヤとして、アルミニウム太線を採用してもよいし、リボンワイヤを採用してもよい。
【0041】
プレスフィットピン26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hは、外部との電気的な接続を確保するために設けられている。プレスフィットピン26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hはそれぞれ、導電性であって、棒状である。プレスフィットピン26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hはそれぞれ、回路パターン16a,16bから立ち上がるように回路パターン16a,16bに取り付けられている。具体的には、プレスフィットピン26aの一方の端部は、第3回路板15cに接合されている。プレスフィットピン26bの一方の端部は、第4回路板15dに接合されている。プレスフィットピン26cの一方の端部は、第5回路板15eに接合されている。プレスフィットピン26dの一方の端部は、第6回路板15fに接合されている。プレスフィットピン26eの一方の端部は、第9回路板15iに接合されている。プレスフィットピン26fの一方の端部は、第8回路板15hに接合されている。プレスフィットピン26gの一方の端部は、第10回路板15jに接合されている。プレスフィットピン26hの一方の端部は、第11回路板15kに接合されている。回路パターン16aに接合されるプレスフィットピン26a,26b,26c,26dはそれぞれ、X方向に間隔をあけて配置される。回路パターン16bに接合されるプレスフィットピン26e,26f,26g,26hはそれぞれ、X方向に間隔をあけて配置される。なお、プレスフィットピン26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hのそれぞれの他方の端部はそれぞれ自由端であり、フリーな状態となっている。プレスフィットピン26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hの延びる方向は、Z方向である。
【0042】
次に、樹脂製構造体20aの具体的な構成について説明する。樹脂製構造体20aは、第1の平板部31aと、第2の平板部31bと、第3の平板部31cと、第4の平板部31dと、を含む。第1の平板部31aおよび第2の平板部31bは、第3壁部13cと連なって設けられている。第1の平板部31aは、第3壁部13cの外側、すなわち、X方向において空間30が位置する側と逆側であって第1壁部13aと連なって設けられている。第2の平板部31bは、第3壁部13cの外側、すなわち、X方向において空間30が位置する側と逆側であって第2壁部13bと連なって設けられている。第3の平板部31cおよび第4の平板部31dは、第4壁部13dと連なって設けられている。第3の平板部31cは、第4壁部13dの外側、すなわち、X方向において空間30が位置する側と逆側であって第2壁部13bと連なって設けられている。第4の平板部31dは、第4壁部13dの外側、すなわち、X方向において空間30が位置する側と逆側であって第1壁部13aと連なって設けられている。樹脂製構造体20aは、ベース板12の厚さ方向において、第2の面13eと反対側に位置する表面13fを含む。表面13fは、第1の平板部31a、第2の平板部31b、第3の平板部31cおよび第4の平板部31dに設けられている。
【0043】
樹脂製構造体20aは、ベース板12の厚さ方向に貫通する4つの第2貫通孔32a,32b,32c,32dを有する。第2貫通孔32a,32b,32c,32dはそれぞれ、第1の平板部31a、第2の平板部31b、第3の平板部31cおよび第4の平板部31dに設けられている。第2貫通孔32a,32b,32c,32dを構成する第2側壁面33a,33b,33c,33dはそれぞれ、Z方向に沿って延びるストレート形状である。第2貫通孔32a,32b,32c,32dはそれぞれ、第1の平板部31a、第2の平板部31b、第3の平板部31cおよび第4の平板部31dをZ方向に真っ直ぐに貫通するように形成されている。第2貫通孔32a,32b,32c,32dは、樹脂製構造体20aが第1の面12a上に配置された状態で、第1貫通孔12c,12d,12e,12fの位置と一致するように配置される。
【0044】
樹脂製構造体20aは、ベース板12の厚さ方向に貫通する第3貫通孔42a,42b,42c,42dを有する4つの金属製の筒状部41a,41b,41c,41dを含む。第3貫通孔42a,42b,42c,42dはそれぞれ、筒状部41a,41b,41c,41dに設けられている。第3貫通孔42a,42b,42c,42dを構成する第3側壁面43a,43b,43c,43dはそれぞれ、Z方向に沿って延びるストレート形状である。4つの筒状部41a,41b,41c,41dはそれぞれ、中空円筒状である。4つの筒状部41a,41b,41c,41dはそれぞれ、第2貫通孔32a,32b,32c,32dに取り付けられる。第3貫通孔42a,42b,42c,42dはそれぞれ、第2貫通孔32a,32b,32c,32dに取り付けられた際に、Z方向に真っ直ぐに貫通するように形成されている。筒状部41a,41b,41c,41dはそれぞれ、カラーとも呼ばれる部材である。
【0045】
樹脂製構造体20aに含まれる各平板部31a,31b,31c,31dは、第2貫通孔32a,32b,32c,32dの第2側壁面33a,33b,33c,33dから平板部1a,31b,31c,31dの厚さに相当する長さ以内に配置される部分を有するウェルド部44a,44b,44c,44dを含む。図2および図3において、ウェルド部44a,44b,44c,44dを太い破線で示す。本実施形態においては、ウェルド部44a,44b,44c,44dはそれぞれ、第2側壁面33a,33b,33c,33dに至っている。すなわち、ウェルド部44a,44b,44c,44dは、第2側壁面33a,33b,33c,33dの一部から延びている。ここで、ウェルドは、溶融した樹脂が合流するところに生ずる筋状の現象であり、この現象が生じている部分が、ウェルド部44a,44b,44c,44dである。筒状部41a,41b,41c,41dは、円筒状であるため、必ず第2貫通孔32a,32b,32c,32dの周囲にはウェルド部44a,44b,44c,44dができる。すなわち、平板部31a,31b,31c,31dは、第2貫通孔32a,32b,32c,32dの第2側壁面33a,33b,33c,33dから平板部31a,31b,31c,31dの厚さに相当する長さ以内に配置される部分を有するウェルド部44a,44b,44c,44dを含む。本実施形態においては、ウェルド部44a,44b,44c,44dの全てが平板部31a,31b,31c,31dに含まれることとしたが、これに限らず、ウェルド部44a,44b,44c,44dの全域が平板部31a,31b,31c,31d内に収まらず、その一部が、例えば第1壁部13a、第2壁部13b、第3壁部13c、第4壁部13dに至っていてもよい。
【0046】
平板部31a,31b,31c,31dの厚さ方向である基板17a,17bの厚さ方向に見て、ウェルド部44a,44b,44c,44dは、法線38a,38b,38c,38dより内側の180度以内の範囲にある。法線38a,38b,38c,38dは、複数の第2貫通孔32a,32b,32c,32dの中心34a,34b,34c,34dを結んで形成される図形35aの重心37aと、第2貫通孔32a,32b,32c,32dの中心34a,34b,34c,34dとを結ぶ直線36a,36bの法線38a,38b,38c,38dであり、かつ、法線38a,38b,38c,38dは、第2貫通孔32a,32b,32c,32dの中心34a,34b,34c,34dを通る。具体的には、基板17a,17bの厚さ方向に見て、ウェルド部44a,44b,44c,44dは、上記法線38a,38b,38c,38dよりも重心37a側の領域39a,39b,39c,39dに配置される。本実施形態においては、隣り合う第2貫通孔32a,32b,32c,32dの中心34a,34b,34c,34d同士を結んで図形35aが形成されている。なお、180度の角度については、図3中の角度θで図示している。また、第2貫通孔32a,32b,32c,32dの中心34a,34b,34c,34dを通り、複数の第2貫通孔32a,32b,32c,32dの中心34a,34b,34c,34dを結んで形成される図形35aの重心37aと、第2貫通孔32a,32b,32c,32dの中心34a,34b,34c,34dとを結ぶ直線36a,36bの法線38a,38b,38c,38dを第1の直線とすると、基板17a,17bの厚さ方向に見て、ウェルド部44a,44b,44c,44dは、第1の直線より内側の180度以内の範囲にある。本実施形態においては、図形35aは、長方形である。また、直線36a,36bは、長方形の図形35aの対角線となっている。そして、重心37aは、直線36aと直線36bとの交点となっている。図2図3および図4において図形35aを一点鎖線で示し、対角線である直線36a,36bを二点鎖線で示し、法線38a,38b,38c,38dを破線で示す。
【0047】
また、平板部31a,31b,31c,31dは、ゲート痕52a,52b,52c,52dを含む。基板17a,17bの厚さ方向に見て、ゲート痕52a,52b,52c,52dは、上記法線38a,38b,38c,38dより外側の180度以内の範囲にある。具体的には、基板17a,17bの厚さ方向に見て、平板部31a,31b,31c,31dは、上記法線38a,38b,38c,38dよりも重心37a側と反対側の領域40a,40b,40c,40dに配置されるゲート痕52a,52b,52c,52dを含む(特に図4参照)。また、第2貫通孔32a,32b,32c,32dの中心34a,34b,34c,34dを通り、複数の第2貫通孔32a,32b,32c,32dの中心34a,34b,34c,34dを結んで形成される図形35aの重心37aと、第2貫通孔32a,32b,32c,32dの中心34a,34b,34c,34dとを結ぶ直線36a,36bの法線38a,38b,38c,38dを第1の直線とすると、基板17a,17bの厚さ方向に見て、ゲート痕52a,52b,52c,52dは、第1の直線より外側の180度以内の範囲にある。
【0048】
次に、このような構成の樹脂製構造体20aの製造方法の一例について、簡単に説明する。最終的な樹脂製構造体20aの形状、すなわち、インサートにより端子19a,19b,19c,19dが取り付けられ、第1壁部13a、第2壁部13b、第3壁部13cおよび第4壁部13dを含み、平板部31a,31b,31c,31dを含むよう金型を準備する。そして、射出成型を行う。ここで、溶融した樹脂の金型への注入については、図2中の矢印51a,51b,51c,51dの4か所から樹脂を注入する。すなわち、領域40a,40b,40c,40d側から樹脂を注入する。
【0049】
図3を参照して、第2貫通孔32bが位置する領域には金型が配置されているため、注入された樹脂は、矢印F1、F2に沿って第2貫通孔32bが位置する領域を回り込むようにして流れる。そして、ウェルド部44bにおいて合流する。このようにして、樹脂製構造体20aを製造する。この樹脂製構造体20aを用いて、半導体装置11aを製造する。
【0050】
このような半導体装置11aによると、ウェルド部44a,44b,44c,44dが、上記したように、法線38a,38b,38c,38dより内側の180度以内の範囲にある。法線38a,38b,38c,38dは、第2貫通孔32a,32b,32c,32dの中心34a,34b,34c,34dを結んで形成される図形35aの重心37aと、第2貫通孔32a,32b,32c,32dの中心34a,34b,34c,34dとを結ぶ直線36a,36bの法線38a,38b,38c,38dであり、かつ、法線38a,38b,38c,38dは、第2貫通孔32a,32b,32c,32dの中心34a,34b,34c,34dを通る。本実施形態においては、例えば温度を繰り返し上下させる温度サイクルを行った場合に、対角線である直線36a,36bの半導体装置11aにおける外側に向かって応力がかかる。上記したように基板17a,17bの厚さ方向に見て基板17a,17bの中央から外周側に向かって応力が加えられた場合に、平板部31a,31b,31c,31dにおいて、ウェルド部44a,44b,44c,44dが配置された領域39a,39b,39c,39dと異なる領域40a,40b,40c,40dで加えられた応力を受けることができる。ウェルド部44a,44b,44c,44dが配置された領域39a,39b,39c,39dと異なる領域40a,40b,40c,40dにおける強度は、ウェルド部44a,44b,44c,44dが配置された領域39a,39b,39c,39dにおける強度と比較して高いため、高い強度の領域で応力を受けることができる。そうすると、破断のおそれを低減することができる。また、上記樹脂製構造体20aは比較的単純な形状であり、複雑な形状ではないため、生産性が良好である。したがって、このような半導体装置11aは、生産性および信頼性の向上を図ることができる。
【0051】
なお、上記した製造方法によると、保圧を加えながら射出成型を行った際に、第2貫通孔32a,32b,32c,32dの周辺における平板部31a,31b,31c,31d内のボイドの発生を抑制することができる。また、射出成型の金型内を流れる溶融樹脂がゲートから遠くなるほど溶融樹脂の温度は下がり、強度は低下する。上記製造方法によると、平板部31a,31b,31c,31dの近傍にゲートがあるため、溶融樹脂の温度は常に高い状態で平板部31a,31b,31c,31dを成形することができる。したがって、より破断のおそれを低減することができる。
【0052】
また、基板17a,17bの厚さ方向に見て、ゲート痕52a,52b,52c,52dは、上記法線38a,38b,38c,38dより外側の180度以内の範囲にある。このような樹脂製構造体20aを含む半導体装置11aによると、第2貫通孔32a,32b,32c,32dの周りを流れた樹脂が合流して形成されるウェルド部44a,44b,44c,44dを、上記法線38a,38b,38c,38dより内側の180度以内の範囲に配置することが容易となる。したがって、このような半導体装置11aは、生産性および信頼性の向上を図ることができる。
【0053】
(実施の形態2)
次に、他の実施の形態である実施の形態2について説明する。図5は、実施の形態2における半導体装置に含まれる樹脂製構造体の一部を示す概略平面図である。実施の形態2の半導体装置に含まれる樹脂製構造体は、第2貫通孔の数が2つである点において、実施の形態1の場合と異なっている。
【0054】
図5を参照して、半導体装置に含まれる樹脂製構造体20bは、板状であって、厚さ方向に貫通する第2貫通孔32a,32bが設けられた平板部31a,31bを2つ含む。各平板部31a,31bは、第2貫通孔32a,32bの第2側壁面33a,33bから平板部31a,31bの厚さに相当する長さ以内に配置される部分を有するウェルド部44a,44bを含む。平板部31a,31bの厚さ方向である基板17a,17bの厚さ方向に見て、ウェルド部44a,44bは、法線38a,38bより内側の180度以内の範囲にある。法線38a,38bは、第2貫通孔32a,32bの中心34a,34bを結んで形成される図形35aの重心37aと、第2貫通孔32a,32bの中心34a,34bとを結ぶ直線36aの法線38a,38bであり、かつ、法線38a,38bは、第2貫通孔32a,32bの中心34a,34bを通る。具体的には、基板17a,17bの厚さ方向に見て、ウェルド部44a,44bは、上記法線38a,38bよりも重心37a側の領域39a,39bに配置される。本実施形態においては、図形35aは、直線36aによって表れる。また、本実施形態においては、重心37aは、中心34aと中心34bとを結ぶ線分の中点となっている。
【0055】
また、基板17a,17bの厚さ方向に見て、ゲート痕52a,52bは、上記法線38a,38bより外側の180度以内の範囲にある。具体的には、基板17a,17bの厚さ方向に見て、平板部31a,31bは、上記法線38a,38bよりも重心37a側と反対側の領域40a,40bに配置されるゲート痕52a,52bを含む。
【0056】
このような樹脂製構造体20bおよびこのような樹脂製構造体20bを含む半導体装置においても、生産性および信頼性の向上を図ることができる。
【0057】
(実施の形態3)
次に、さらに他の実施の形態である実施の形態3について説明する。図6は、実施の形態3における半導体装置に含まれる樹脂製構造体の一部を示す概略平面図である。実施の形態3の半導体装置に含まれる樹脂製構造体は、第2貫通孔の数が3つである点において、実施の形態1の場合と異なっている。
【0058】
図6を参照して、半導体装置に含まれる樹脂製構造体20cは、板状であって、厚さ方向に貫通する第2貫通孔32a,32b,32cが設けられた平板部31a,31b,31cを3つ含む。各平板部31a,31b,31cは、第2貫通孔32a,32b,32cの第2側壁面33a,33b,33cから平板部31a,31b,31cの厚さに相当する長さ以内に配置される部分を有するウェルド部44a,44b,44cを含む。基板の厚さ方向に見て、ウェルド部44a,44b,44cは、法線38a,38b,38cより内側の180度以内の範囲にある。法線38a,38b,38cは、第2貫通孔32a,32b,32cの中心34a,34b,34cを結んで形成される図形35aの重心37aと、第2貫通孔32a,32b,32cの中心34a,34b,34cとを結ぶ直線36a,36b,36cの法線38a,38b,38cであり、かつ、法線38a,38b,38cは、第2貫通孔32a,32b,32cの中心34a,34b,34cを通る。具体的には、基板17a,17bの厚さ方向に見て、ウェルド部44a,44b,44cは、上記法線38a,38b,38cよりも重心37a側の領域39a,39b,39cに配置される。本実施形態においては、図形35aは、三角形によって表れる。
【0059】
また、基板17a,17bの厚さ方向に見て、ゲート痕52a,52b,52cは、上記法線38a,38b,38cより外側の180度以内の範囲にある。具体的には、基板17a,17bの厚さ方向に見て、平板部31a,31b,31cは、上記法線38a,38b,38cよりも重心37a側と反対側の領域40a,40b,40cに配置されるゲート痕52a,52b,52cを含む。
【0060】
このような樹脂製構造体20cおよびこのような樹脂製構造体20cを含む半導体装置においても、生産性および信頼性の向上を図ることができる。
【0061】
(実施の形態4)
次に、さらに他の実施の形態である実施の形態4について説明する。図7は、実施の形態4における半導体装置に含まれる筒状部を模式的に示す概略側面図である。実施の形態4の半導体装置は、筒状部の形状が異なる点において、実施の形態1の場合と異なっている。
【0062】
図7を参照して、半導体装置に備えられる樹脂製構造体に含まれる筒状部61aの外周面62aは、一方の端部側に位置する第1領域63aと、他方の端部側に位置する第2領域64aと、第1領域63aと第2領域64aとの間に位置する第3領域65aと、を含む。筒状部61aの長さ、すなわち、Z方向の長さは、平板部31a,31b,31c,31dの厚さよりも長い。筒状部61aは、第2貫通孔32a,32b,32c,32d内に配置した際に、第1領域63aが突出する。すなわち、筒状部61aは、第2貫通孔32a,32b,32c,32dから突出している突出領域を含む。また、第3領域65aには、凹凸形状が形成されている。本実施形態においては、第3領域65aに微小の凹凸形状が形成されている。第3領域65aには、ローレット加工が施されている。
【0063】
このようにすることにより、外周面62aの凹凸形状が第2貫通孔32a,32b,32c,32dの第2側壁面33a,33b,33c,33dとの摩擦により引っ掛かり、筒状部が貫通孔から抜け出るおそれを大きく低減することができる。したがって、より信頼性の向上を図ることができる。
【0064】
また、このようにすることにより、筒状部61aは、第2貫通孔32a,32b,32c,32dから突出しているため、挿入されるボルトは、座屈強度の高い金属製の筒状部61aで確実に受けることができ、ボルトによる締結力の向上を図ることができる。したがって、より信頼性の向上を図ることができる。
【0065】
(他の実施の形態)
なお、上記の実施の形態においては、ウェルド部は、第2貫通孔の側壁面に至る構成としたが、これに限らず、ウェルド部は、第2貫通孔の側壁面に至らず、第2貫通孔の第2側壁面から平板部の厚さに相当する長さ以内に配置される部分を有することとしてもよい。
【0066】
また、上記の実施の形態においては、全ての平板部が、上記ウェルド部を含むこととしたが、これに限らず、少なくとも複数の平板部のうちの一つが、上記ウェルド部を含むこととしてもよい。また、複数の平板部の2つ以上は、ウェルド部を含んでもよい。このようにすることにより、破断のおそれをより低減することができ、より信頼性の向上を図ることができる。
【0067】
なお、上記の実施の形態においては、全ての平板部が、上記ゲート痕を含むこととしたが、これに限らず、少なくとも複数の平板部のうちの一つが、上記ゲート痕を含むこととしてもよい。また、複数の平板部の2つ以上は、ゲート痕を含んでもよい。このようにすることにより、破断のおそれをより低減することができ、より信頼性の向上を図ることができる。
【0068】
なお、上記の実施の形態においては、基板の厚さ方向に見て、ウェルド部のうちの少なくとも一つは、法線より内側の180度以内の範囲にあることとしたが、これに限らず、ウェルド部の少なくとも一つは、貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、前記貫通孔の中心とを結ぶ直線を中心として、法線より内側の120度以内の範囲にあることとしてもよく、さらに、法線より内側の90度以内の範囲にあることとしてもよい。すなわち、実施の形態1に示す場合(図3)において、角度θは、直線36bを中心として、120度以内の範囲、さらには90度以内の範囲にあることとしてもよい。このようにすることにより、平板部において、ウェルド部が配置された領域と異なる領域で加えられた応力をより確実に受けることができる。したがって、破断のおそれをさらに低減することができる。
【0069】
また、上記の実施の形態においては、基板の厚さ方向に見て、ゲート痕のうちの少なくとも一つは、法線より外側の180度以内の範囲にあることとしたが、これに限らず、ウェルド部の少なくとも一つは、貫通孔の中心を結んで形成される図形の重心と、前記貫通孔の中心とを結ぶ直線を中心として、法線より外側の120度以内の範囲にあることとしてもよく、さらに、法線より外側の90度以内の範囲にあることとしてもよい。このようにすることにより、貫通孔の周りを流れた樹脂が合流して形成されるウェルド部を、上記法線より内側の180度以内の範囲に配置することがより容易となる。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示の半導体装置および樹脂製構造体は、生産性および信頼性の向上が求められる場合に特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0072】
11a 半導体装置
12 ベース板
12a 第1の面
12b 裏面
12c,12d,12e,12f 第1貫通孔
12g,12h,12i,12j 第1側壁面
13a 第1壁部
13b 第2壁部
13c 第3壁部
13d 第4壁部
13e 第2の面
13f 表面
14a,14b 絶縁板
15a 第1回路板
15b 第2回路板
15c 第3回路板
15d 第4回路板
15e 第5回路板
15f 第6回路板
15g 第7回路板
15h 第8回路板
15i 第9回路板
15j 第10回路板
15k 第11回路板
16a,16b 回路パターン
17a,17b 基板
18a,18b コンデンサ
19a,19b,19c,19d 端子
20a,20b,20c 樹脂製構造体
21a,21b,21c,21d,21e,21f,22a,22b,22c,22d,22e,22f 半導体チップ
24a,24b,24c,24d,24e,24f,25a,25b,25c,25d,25e,25f,29a,29b ワイヤ
26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26h プレスフィットピン
27a,27b,27c,27d 内壁面
31a,31b,31c,31d 平板部
32a,32b,32c,32d 第2貫通孔
33a,33b,33c,33d 第2側壁面
34a,34b,34c,34d 中心
35a 図形
36a,36b,36c 直線
37a 重心
38a,38b,38c,38d 法線
39a,39b,39c,39d,40a,40b,40c,40d 領域
41a,41b,41c,41d,61a 筒状部
42a,42b,42c,42d 第3貫通孔
43a,43b,43c,43d 第3側壁面
44a,44b,44c,44d ウェルド部
51a,51b,51c,51d,F1、F2 矢印
52a,52b,52c,52d ゲート痕
62a 外周面
63a 第1領域
64a 第2領域
65a 第3領域
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7