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特許7666306電子制御装置、制御プログラム、及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】電子制御装置、制御プログラム、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 8/18 20090101AFI20250415BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20250415BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20250415BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20250415BHJP
   H04W 88/18 20090101ALI20250415BHJP
【FI】
H04W8/18
H04W4/40
H04W48/16 135
H04W88/06
H04W88/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021189658
(22)【出願日】2021-11-22
(65)【公開番号】P2023076309
(43)【公開日】2023-06-01
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】230120499
【弁護士】
【氏名又は名称】藤江 和典
(74)【代理人】
【識別番号】100201385
【弁理士】
【氏名又は名称】中安 桂子
(72)【発明者】
【氏名】眞方山 貴也
【審査官】本橋 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-088777(JP,A)
【文献】特開2018-078411(JP,A)
【文献】特開2012-160815(JP,A)
【文献】特開2021-180345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信を行う権能を示す第1の識別情報が記憶領域に記憶された第1の無線通信部、及び、無線通信を行う権能を示す第2の識別情報が記憶領域に記憶された第2の無線通信部、を制御する電子制御装置(100)であって、
前記第1の識別情報には、前記第1の識別情報を用いて送受信したデータ量を示す第1の通信量が紐付けられ、前記第2の識別情報には、前記第2の識別情報を用いて送受信したデータ量を示す第2の通信量が紐付けられており、
前記第1の通信量に基づいて、前記第1の無線通信部の前記記憶領域に記憶された前記第1の識別情報を書き換えるか否かを判定する書換要否判定部(105)と、
前記書換要否判定部が前記第1の識別情報を書き換えると判定した場合に、前記第1の通信量よりも少ない前記第2の通信量に紐付けられた前記第2の識別情報を探索する書換候補探索部(106)と、
前記第1の無線通信部に対し、前記第1の識別情報を前記第2の識別情報に書き換えることを指示する書換指示部(107)と、
を備える、電子制御装置。
【請求項2】
前記書換要否判定部は、前記第1の通信量が所定の閾値以上の場合に、前記第1の識別情報を書き換えると判定する、
請求項1記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記第1の識別情報にはさらに、前記第1の識別情報を用いて送受信可能なデータ量の上限を示す第1の通信容量が紐付けられており、
前記書換要否判定部は、前記第1の通信量に加えて、前記第1の通信容量に基づいて、前記第1の識別情報を書き換えるか否かを判定する、
請求項1記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記書換要否判定部は、前記第1の通信量に加えて、前記第1の無線通信部が前記第1の識別情報を用いて送受信する予定のデータ量を示す予定通信量に基づいて、前記第1の識別情報を書き換えるか否かを判定する、
請求項1記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記書換候補探索部は、前記第1の識別情報及び前記第2の識別情報とは異なる識別情報を用いて送受信したデータ量を示す他の通信量よりも少ない前記第2の通信量に紐づけられた前記第2の識別情報を探索する、
請求項1記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記第1の識別情報にはさらに、前記第1の識別情報を用いて送受信可能なデータ量の上限を示す第1の通信容量が紐付けられており、
前記書換要否判定部は、前記第1の通信容量と前記第1の通信量との差分が小さいほど高い頻度で前記第1の識別情報を書き換えるか否かを判定する、
請求項1記載の電子制御装置。
【請求項7】
当該電子制御装置は、サーバ装置に設けられており、
前記第1の無線通信部は、第1の移動体に搭載され、
前記第2の無線通信部は、第2の移動体に搭載される、
請求項1~6記載の電子制御装置。
【請求項8】
前記書換指示部は、前記書換要否判定部が前記第1の識別情報を書き換えると判定した後、且つ、前記第1の無線通信部が起動を開始又は起動を終了したときに、前記第1の識別情報を前記第2の識別情報に書き換えることを指示する、
請求項7記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記書換指示部は、前記第1の無線通信部に対して前記第1の識別情報を書き換えることを指示したタイミングとは異なるタイミングで、前記第2の無線通信部に対し、前記第2の識別情報を前記第1の識別情報に書き換えることを指示する、
請求項8記載の電子制御装置。
【請求項10】
当該電子制御装置及び前記第1の無線通信部は、第1の移動体に搭載され、
前記第2の無線通信部は、第2の移動体に搭載される、
請求項1~6記載の電子制御装置。
【請求項11】
当該電子制御装置はさらに、
前記書換要否判定部が前記第1の識別情報を書き換えると判定した場合に、前記第2の無線通信部に対し、前記第2の識別情報及び前記第2の通信量を要求する書換情報要求部(109)を備える、
請求項10記載の電子制御装置。
【請求項12】
無線通信を行う権能を示す第1の識別情報が記憶領域に記憶された第1の無線通信部、及び、無線通信を行う権能を示す第2の識別情報が記憶領域に記憶された第2の無線通信部、を制御する電子制御装置で実行可能な無線通信部の制御プログラムであって、
前記第1の識別情報には、前記第1の識別情報を用いて送受信したデータ量を示す第1の通信量が紐付けられ、前記第2の識別情報には、前記第2の識別情報を用いて送受信したデータ量を示す第2の通信量が紐付けられており、
前記第1の通信量に基づいて、前記第1の無線通信部の前記記憶領域に記憶された前記第1の識別情報を書き換えるか否かを判定し、
記第1の識別情報を書き換えると判定した場合に、前記第1の通信量よりも少ない前記第2の通信量に紐付けられた前記第2の識別情報を探索し、
前記第1の無線通信部に対し、前記第1の識別情報を前記第2の識別情報に書き換えることを指示する、
制御プログラム。
【請求項13】
無線通信を行う権能を示す第1の識別情報が記憶領域に記憶された第1の無線通信部、及び、無線通信を行う権能を示す第2の識別情報が記憶領域に記憶された第2の無線通信部、を制御する電子制御装置で実行する無線通信部の制御方法であって、
前記第1の識別情報には、前記第1の識別情報を用いて送受信したデータ量を示す第1の通信量が紐付けられ、前記第2の識別情報には、前記第2の識別情報を用いて送受信したデータ量を示す第2の通信量が紐付けられており、
前記第1の通信量に基づいて、前記第1の無線通信部の前記記憶領域に記憶された前記第1の識別情報を書き換えるか否かを判定し、
記第1の識別情報を書き換えると判定した場合に、前記第1の通信量よりも少ない前記第2の通信量に紐付けられた前記第2の識別情報を探索し、
前記第1の無線通信部に対し、前記第1の識別情報を前記第2の識別情報に書き換えることを指示する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置を制御する電子制御装置、並びに当該電子制御装置によって実行される制御プログラム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車にインターネット通信機能を付加したコネクテッドカーの開発が加速している。自動車の走行を、通信ネットワークを介して遠隔から管理及び制御する技術の開発も進んでおり、自動車における通信機能の重要性は高まりつつある。
【0003】
自動車の通信方式として、3G、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(Long Term Evolution Advanced)、5Gといったセルラー通信を用いることが考えられる。このようなセルラー通信では、通信事業者との契約により、日、週、月といった単位時間当たりに送受信することができるデータの上限としての通信容量が設定されていることがある。そして、設定された通信容量を超えてデータの送受信を行った場合、通信ができなくなる、あるいは通信速度が制限されることがある。
【0004】
自動車、特に、通信ネットワークを介して遠隔から監視や制御されることが想定される自動運転の自動車では、自動車と、自動車を管理するサーバ装置との間でタイムラグのない通信を行うことが必要とされる。そのため、通信容量を超えることによって通信ができなくなる、又は、通信速度が制限されることは望ましくない。通信事業者との契約内容を変更する、又は、追加の契約をすることで通信容量を増加することも想定されるが、タクシーやバスといった多数の自動車を運用する事業者では、複数の自動車について契約内容を変更するとコストが著しく増加するという問題がある。
【0005】
自動車が送受信するデータ量には、複数の自動車の間で偏りが生じることが想定される。例えば、自動車の走行中に発生するイベントの発生回数やイベントの対応方法によって、送受信するデータ量は異なる。特に、画像データの送受信を必要とする対応の場合には、より多くのデータ量を消費することとなる。送受信するデータ量に偏りがある複数の自動車の中で、送受信したデータ量が少なく、通信容量に余裕がある自動車がある場合、このような自動車の通信容量の一部を、通信容量を超過した自動車に移管することができれば、複数の自動車間で通信容量を共有して、通信ができなくなる、あるいは通信速度が制限されることを回避することができる。
【0006】
例えば、特許文献1には、複数の通信端末における通信容量を管理する通信容量管理装置が開示されている。特許文献1の通信容量管理装置では、あるユーザが契約する無線通信回線に付与された通信容量を、他のユーザが契約する無線通信回線に移管するとともに、それぞれの通信回線における通信容量の残容量を管理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-052068
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、本発明者は、詳細な検討によって以下の課題を見出した。
移動体に搭載される無線通信装置では、無線通信装置が送受信するデータ量は移動体の移動状況に応じて変化する。そのため、一の無線通信装置では送受信したデータ量が著しく多い一方、他の無線通信装置では送受信したデータ量が著しく少ないというように、無線通信装置によって、送受信するデータ量に偏りが発生する可能性がある。特に、特定の経路を移動するような無線通信装置においては、過去に送受信したデータ量が多い無線通信装置では、将来的に送受信するデータ量も多くなる可能性が高くなる。そのため、他の無線通信装置から通信容量の一部が移管されても、すぐに通信容量を超過する、あるいは、通信容量の移管処理が定期的に必要となるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、複数の無線通信装置において送受信したデータ量に偏りがある場合に、各無線通信装置が設定された通信容量を超えることなく無線通信を行うことができるように無線通信装置を制御可能な電子制御装置等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様による電子制御装置は、無線通信を行う権能を示す第1の識別情報が記憶領域に記憶された第1の無線通信部、及び、無線通信を行う権能を示す第2の識別情報が記憶領域に記憶された第2の無線通信部、を制御する電子制御装置(100)であって、前記第1の識別情報には、前記第1の識別情報を用いて送受信したデータ量を示す第1の通信量が紐付けられ、前記第2の識別情報には、前記第2の識別情報を用いて送受信したデータ量を示す第2の通信量が紐付けられており、前記第1の通信量に基づいて、前記第1の無線通信部の前記記憶領域に記憶された前記第1の識別情報を書き換えるか否かを判定する書換要否判定部(105)と、前記書換要否判定部が前記第1の識別情報を書き換えると判定した場合に、前記第1の通信量よりも少ない前記第2の通信量に紐付けられた前記第2の識別情報を探索する書換候補探索部(106)と、前記第1の無線通信部に対し、前記第1の識別情報を前記第2の識別情報に書き換えることを指示する書換指示部(107)と、を備える。
【0011】
なお、特許請求の範囲、及び本項に記載した発明の構成要件に付した括弧内の番号は、本発明と後述の実施形態との対応関係を示すものであり、本発明を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0012】
上述のような構成により、本開示の電子制御装置等は、無線通信装置が通信容量を超えて通信を行うことを防ぐように、複数の無線通信装置を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1の電子制御装置と無線通信装置の配置を説明する図
図2】実施形態1の電子制御装置の構成例を示すブロック図
図3】実施形態1の通信回線情報保存部に保存されている通信回線情報を説明する図
図4】実施形態1の予定通信量を説明する図
図5】実施形態1による識別情報の書き換えを説明する図
図6】実施形態1による識別情報の書き換えを説明する図
図7】実施形態1による識別情報の書き換えを説明する図
図8】実施形態1の電子制御装置の動作を説明する図
図9】実施形態1の電子制御装置及び無線通信装置の動作を説明する図
図10】実施形態1の変形例1における、識別情報の書き換えを指示するタイミングを説明する図
図11】実施形態1の変形例1における、識別情報の書き換えを指示するタイミングを説明する図
図12】実施形態1の変形例1における、識別情報の書き換えを指示するタイミングを説明する図
図13】実施形態1の変形例1における、識別情報の書き換えを指示するタイミングを説明する図
図14】実施形態2の電子制御装置と無線通信装置の配置を説明する図
図15】実施形態2の電子制御装置の構成例を示すブロック図
図16】実施形態2の電子制御装置の動作を説明する図
図17】実施形態2の電子制御装置及び無線通信装置の動作を説明する図
図18】実施形態2の電子制御装置及び無線通信装置の動作を説明する図
図19】その他の発明を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
なお、本発明とは、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された発明を意味するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。また、少なくともかぎ括弧内の語句は、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された語句を意味し、同じく以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
特許請求の範囲の従属項に記載の構成及び方法は、特許請求の範囲の独立項に記載の発明において任意の構成及び方法である。従属項に記載の構成及び方法に対応する実施形態の構成及び方法、並びに特許請求の範囲に記載がなく実施形態のみに記載の構成及び方法は、本発明において任意の構成及び方法である。特許請求の範囲の記載が実施形態の記載よりも広い場合における実施形態に記載の構成及び方法も、本発明の構成及び方法の例示であるという意味で、本発明において任意の構成及び方法である。いずれの場合も、特許請求の範囲の独立項に記載することで、本発明の必須の構成及び方法となる。
【0017】
実施形態に記載した効果は、本発明の例示としての実施形態の構成を有する場合の効果であり、必ずしも本発明が有する効果ではない。
【0018】
複数の実施形態がある場合、各実施形態に開示の構成は各実施形態のみで閉じるものではなく、実施形態をまたいで組み合わせることが可能である。例えば一の実施形態に開示の構成を、他の実施形態に組み合わせてもよい。また、複数の実施形態それぞれに開示の構成を集めて組み合わせてもよい。
【0019】
発明が解決しようとする課題に記載した課題は公知の課題ではなく、本発明者が独自に知見したものであり、本発明の構成及び方法と共に発明の進歩性を肯定する事実である。
【0020】
1.実施形態1
(1)電子制御装置100と無線通信装置Wの配置
図1は、本実施形態の電子制御装置100及び無線通信装置Wの配置を説明する図である。図1に示すように、電子制御装置100は車両V(V1~Vn)の外部に設置されたサーバ装置に設けられており、「移動体」である車両に「搭載」された無線通信装置W(W1~Wn)と通信を行う。電子制御装置100は、各車両に搭載された無線通信装置を制御する装置である。
【0021】
ここで、「移動体」とは、移動可能な物体をいい、移動速度は任意である。また移動体が停止している場合も当然含む。例えば、自動車、自動二輪車、自転車、歩行者、船舶、航空機、及びこれらに搭載される物を含み、またこれらに限らない。
「搭載」される、とは、移動体に直接固定されている場合の他、移動体に固定されていないが移動体と共に移動する場合も含む。例えば、移動体に乗った人が所持している場合、移動体に載置された積荷に搭載されている場合、が挙げられる。
【0022】
無線通信装置W(W1~Wn)を搭載する車両V1~Vnは、同一の事業者が管理する車両を想定している。例えば、車両V1~Vnはタクシーやバスといった事業用車両である。当然のことながら、車両V1~Vnを管理する事業者は複数あってもよい。
【0023】
無線通信装置Wは複数の通信モジュールを備えており、少なくとも2つの通信回線を使用して通信することができる装置であることが望ましい。図1は、無線通信装置W(W1~Wn)が2つの通信モジュールを備え、一方の通信モジュールが通信回線Aを、他方の通信モジュールが通信回線Bを使用して通信を行う装置である例を説明している。この例では、通信回線A、Bはいずれも、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、HSPA(High Speed Packet Access)、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(Long Term Evolution Advanced)、4G、5G、6G、又は、LPWA(Low Power Wide Area)といったセルラー通信であり、それぞれ基地局を介して通信を行う。以下に説明する実施形態においても、無線通信装置Wが2つの通信モジュールを備える例を説明している。
【0024】
しかしながら、無線通信装置Wは、例えば、IEEE802.11(Wi-Fi(登録商標))やIEEE802.16(WiMAX(登録商標))、Bluetooth(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)、ZigBee(登録商標)、又はDSRC(Dedicated Short Range Communication)等の無線通信を用いて通信を行ってもよい。あるいは、無線通信装置Wは、一の通信回線として無線通信を行い、他方の通信回線として、LAN(Local Area Network)やインターネット、固定電話回線などの有線通信を用いて通信を行ってもよい。また、無線通信装置Wは、3以上の通信回線を使用して通信を行うものであってもよい。
【0025】
無線通信装置Wは、その記憶領域に識別情報を記憶する。識別情報は、無線通信を行う「権能」を示す情報であり、例えば、契約した通信事業者から提供されるユーザID、パスワード、識別子である。無線通信装置Wは、セルラー通信を行う際に識別情報を基地局に送信する。基地局によって識別情報が認証された場合、無線通信装置Wは基地局を介して無線通信を行うことが可能となる。無線通信装置Wは使用する通信回線毎に識別情報を有している。すなわち、通信回線A、Bを使用する無線通信装置Wは、通信回線A、Bそれぞれの識別情報を記憶領域に記憶している。図1の例では、無線通信装置W1は、通信回線Aを使用した無線通信を行う権能を示す識別情報(AA-1)と、通信回線Bを使用した無線通信を行う権能を示す識別情報(BB-1)とを記憶している。無線通信装置W2~Wnも同様に、使用する通信回線毎に識別情報を記憶している。
【0026】
ここで「権能」とは、無線通信を行う資格があることを示すものであり、例えば、通信事業者から付与されるIDやパスワードの他、通信機器に付与されるIDやパスワードなどが含まれる。
【0027】
なお、以下に説明する各実施形態では、無線通信装置Wが車両に搭載された車載装置である場合を例に挙げて説明している。しかしながら、無線通信装置Wは車載装置に限定されるものではない。例えば、無線通信装置Wは、事業者が労働者に配布して使用させる無線通信端末であってもよい。
【0028】
(2)電子制御装置100の構成
図2は、電子制御装置100の構成例を示す図である。電子制御装置100は、通信回線情報保存部101、通信回線情報取得部102、書換制御部103、通信部104を備える。書換制御部103は、書換要否判定部105及び書換候補探索部106を実現する。また、通信部104は、書換指示部107及び完了通知受信部108を含む。
【0029】
電子制御装置100は、汎用のCPU(Central Processing Unit)、RAM等の揮発性メモリ、ROM、フラッシュメモリ、又はハードディスク等の不揮発性メモリ、各種インターフェース、及びこれらを接続する内部バスで構成することができる。そして、これらのハードウェア上でソフトウェアを実行することにより、図2に記載の各機能ブロックの機能を発揮させるように構成することができる。実施形態2の図15で示される電子制御装置100においても同様である。もちろん、電子制御装置100を、LSI等の専用のハードウェアで実現してもよい。
【0030】
なお、電子制御装置100は、本実施形態では半完成品としての電子制御装置(ECU(Electric Control Unit)、以下ECUと略する。)の形態を想定しているが、これに限らない。例えば、部品の形態としては、半導体回路や半導体モジュール、完成品の形態としては、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、携帯電話、ナビゲーションシステムが挙げられる。なお、電子制御装置100は、単一のECUの他、複数のECUで構成されてもよい。以上は、他の実施形態の電子制御装置100においても同様である。
【0031】
通信回線情報保存部101は、電子制御装置100が管理する無線通信装置Wそれぞれについて、使用している通信回線、無線通信装置Wの記憶領域に保存されている識別情報、並びに識別情報に「紐付け」られた通信量及び通信容量、といった通信回線情報を保存する。
【0032】
ここで、「紐付け」られる、とは、2つの情報が互いに分離不可能に関連付けられていることをいう。
【0033】
図3は、通信回線情報保存部101に保存されている情報の一例を示している。図3は通信回線Aに関連する通信回線情報のみを示しているが、通信回線情報保存部101は、無線通信装置W1~Wnが使用する通信回線A以外の通信回線に関連する通信回線情報を保存していてもよい。なお、図3に示す通信回線情報は一例であり、通信回線情報保存部101は、通信回線情報としてさらに他の情報を保存してもよい。
【0034】
図3によれば、無線通信装置W1は、通信回線Aを使用して無線通信を行う装置であって、記憶領域には識別情報AA-1が記憶されている。識別情報AA-1には、識別情報AA-1を用いて送受信したデータ量を示す通信量として、7.2GBの値が紐付けられている。識別情報AA-1にはさらに、識別情報AA-1を用いて所定の期間内に送受信可能なデータ量の上限を示す通信容量として、10GBの値が紐付けられている。本実施形態では、通信量は月の初日(1日)から送受信したデータ量の累計を示しており、通信容量は1カ月当たりに送受信可能なデータ量の上限を示している。なお、図3では、全ての通信容量が等しい(10GB)場合を例に挙げて説明しているが、通信容量は契約内容によって変わるものであり、当然のことながら、それぞれ異なる通信容量が設定されていてもよい。
【0035】
通信回線情報取得部102は、通信回線情報保存部101から、通信回線情報として、識別情報と、識別情報に紐付けられた通信量とを取得する。後述する書換要否判定部105が識別情報の書換要否の判定に通信容量を使用する場合には、通信回線情報取得部102はさらに通信容量を取得してもよい。
【0036】
書換制御部103は、書換要否判定部105及び書換候補探索部106を実現する。
書換要否判定部105は、通信回線情報取得部102が取得した通信量(「第1の通信量」に相当)に基づいて、無線通信装置W1(「第1の無線通信部」に相当)の記憶領域に記憶された識別情報(「第1の識別情報」に相当)を書き換えるか否かを判定する。
【0037】
例えば、書換要否判定部105は、識別情報(AA-1)に紐付けられた通信量が「所定」の閾値「以上」の場合に、無線通信装置W1の記憶領域に記憶された識別情報(AA-1)を書き換えると判定する。図3の場合、通信量は7.2GBであり、この通信量が閾値以上である場合には識別情報を書き換えると判定する。なお、所定の閾値は、通信容量よりも低い値に設定されることが望ましいが、所定の閾値として通信容量の値を設定してもよい。さらに、所定の閾値は常に一定の値でなくともよく、経時的に変化する値であってもよい。例えば、月の前半では閾値は低く設定され、月の後半では閾値が高く設定される。
【0038】
ここで、「所定の」とは、常に一定の場合の他、条件に応じて一意に定まる場合も含む。
「以上」とは、比較対象と同じ値を含む場合及び含まない場合の両方が含まれる。
【0039】
別の例として、書換要否判定部105は、通信量に加えて、通信容量に基づいて、無線通信装置W1の記憶領域に記憶された識別情報(AA-1)を書き換えるか否かを判定してもよい。例えば、書換要否判定部105は、通信量と通信容量との差分、すなわち、当月に送受信することが可能なデータ量の残量を示す通信残量が所定の閾値以下の場合に、識別情報を書き換えると判定する。図3の場合、無線通信装置W1の記憶領域に記憶された識別情報に紐付けられた通信残量は2.8GBであり、この通信残量が閾値以下である場合には識別情報を書き換えると判定する。
【0040】
さらに別の例として、書換要否判定部105は、通信量に加えて、無線通信装置W1が識別情報(AA-1)を用いて将来送受信する予定のデータ量を示す予定通信量に基づいて、無線通信装置W1の記憶領域に記憶された識別情報(AA-1)を書き換えるか否かを判定してもよい。例えば、書換要否判定部105は、通信量と予定通信量との合計が所定の閾値以上の場合に、識別情報を書き換えると判定する。
【0041】
予定通信量は例えば、図4に示すようなテーブルを用いて予測することができる。図4は、無線通信装置Wを搭載する車両VがルートX~Zを走行する場合に、無線通信装置Wが通信回線A及びBを用いて送受信するデータ量の予測値をそれぞれ示している。図4によれば、通信回線A及びBを使用する無線通信装置W1を搭載する車両V1がルートXを走行した場合、通信回線Aを用いて送受信するデータ量の予測値は0.6GBであり、通信回線Bを用いて送受信するデータ量の予測値は0.4GBである。したがって、無線通信装置W1を搭載する車両V1がルートXを走行することを予定している場合、無線通信装置W1が識別情報(AA-1)を用いて送受信する予定のデータ量は0.6GBであると予測することができる。
【0042】
そこで、書換要否判定部105は、識別情報(AA-1)を用いて送受信したデータ量を示す通信量(7.2GB)と、無線通信装置W1が識別情報(AA-1)を用いて送受信する予定のデータ量を示す予定通信量(0.6GB)の合計が所定の閾値以上の場合に、識別情報を書き換えると判定する。
【0043】
なお、図4のテーブルにおける予定通信量の値は、過去に車両が走行したときに実際に送受信したデータ量の平均値や統計値、ビッグデータによる解析等を用いて求めることができる。また、図4は、予定通信量として特定の数値を示しているが、予定通信量の誤差範囲や標準偏差を設けてもよい。
【0044】
書換候補探索部106は、書換要否判定部105が識別情報(AA-1)を書き換えると判定した場合に、書換候補となる識別情報を探索する。ここで、書換候補となる識別情報は、識別情報(AA-1)に紐付けられた通信量(7.2GB)よりも少ない通信量(「第2の通信量」に相当)に紐付けられた識別情報(「第2の識別情報」に相当)である。
【0045】
例えば、書換候補探索部106は、通信回線情報取得部102が取得した通信量のうち、最も少ない通信量に紐付けられた識別情報を書換候補として探索する。図3によれば、無線通信装置W2(「第2の無線通信部」に相当)の記憶領域に記憶された識別情報(AA-2)を用いて送受信したデータ量を示す通信量(1.8GB)は、他の識別情報を用いて送受信したデータ量を示す他の通信量よりも少ない。そこで、書換候補探索部106は、通信量(1.8GB)に紐付けられた識別情報(AA-2)を書換候補として探索する。
【0046】
別の例として、書換候補探索部106は、通信量に加えて、通信容量に基づいて、書換候補となる識別情報を探索してもよい。例えば、書換候補探索部106は、通信量と通信容量との差分、すなわち、当月に送受信することが可能なデータ量の残量を示す通信残量が最も多い通信量に紐付けられた識別情報を書換候補として探索する。
【0047】
なお、書換候補探索部106は、所定の条件を満たす識別情報を抽出し、抽出した識別情報の中から書換候補となる識別情報を探索してもよい。例えば、特定の期間内に識別情報の書き換えが行われていないこと、紐付けられた通信量が書換候補となる基準の通信量以下であること、又は、通信容量と通信量との差分である通信残量が書換候補となる基準の通信残量以上であること、等を所定の条件として識別情報を抽出する。所定の条件を満たす識別情報が存在しない場合、書換候補探索部106は書換候補となる識別情報がないものと判定してもよい。所定の条件を満たす識別情報が存在しない場合には、後述する識別情報の書換処理は行わない。
【0048】
書換指示部107は、無線通信装置W1に対し、識別情報(AA-1)を、書換候補探索部106が探索した識別情報(AA-2)に書き換えることを指示する。書換指示部107は、識別情報(AA-2)と共に、識別情報の書き換えを指示する信号を送信してもよく、あるいは、識別情報のみを送信することを以って識別情報の書き換えを指示してもよい。書換指示部107はさらに、無線通信装置W2に対し、識別情報(AA-2)を識別情報(AA-1)に書き換えることを指示する。
【0049】
書換指示部107はさらに、後述する完了通知受信部108が、識別情報の書き換えを指示した無線通信装置W1、W2から識別情報の書き換えが完了したことを示す完了通知を受信した場合に、書き換え後の識別情報を用いた通信の開始を指示してもよい。
【0050】
完了通知受信部108は、書換指示部107が識別情報の書き換えを指示した無線通信装置W1、W2から、識別情報の書き換えが完了したことを示す完了通知を受信する。
【0051】
図5図7を参照して、無線通信装置Wの記憶領域に記憶された識別情報の書き換えを説明する。図5は、無線通信装置W1~Wnの記憶領域に記憶された識別情報(AA-1~AA-n)と、それぞれの識別情報に紐付けられた通信量を示している。
【0052】
図5(a)は識別情報の書き換え前を示している。無線通信装置W1に記憶された識別情報AA-1に紐付けられた通信量は所定の閾値以上となっている。そこで、書換要否判定部105は、無線通信装置W1の記憶領域に記憶された識別情報を書き換えると判定する。書換候補探索部106は、無線通信装置W1への書換候補となる識別情報として、最も少ない通信量に紐付けられた識別情報AA-2を探索する。
【0053】
図5(b)は識別情報の書き換え後を示している。無線通信装置W1に記憶された識別報がAA-1からAA-2に書き換えられており、無線通信装置W2に記憶された識別情報がAA-2からAA-1に書き換えられている。また、それぞれの識別情報には通信量が紐付けられているため、無線通信装置W1及びW2の通信量が変化している。
【0054】
図6は、図5における無線通信装置W1及びW2に記憶された識別情報と、それぞれの識別情報に紐付けられた通信量の変化を説明する図である。左側は識別情報の書き換え前を、右側は識別情報の書き換え後をそれぞれ示している。
【0055】
左側に示す図には、無線通信装置W1が識別情報AA-1を用いて、無線通信装置W2がAA-2を用いて1日から15日までに送受信したデータ量を示す通信量が実線で図示されている。無線通信装置W1の通信量は多く、無線通信装置W1が識別情報AA-1を用いて通信を継続すれば、月末までに通信容量を超過し、ひいては通信回線Aを用いた通信が制限されるおそれがある。一方、無線通信装置W2の通信量は少なく、無線通信装置W2が識別情報AA-2を用いて通信を継続した場合、月末までに通信容量を使いきることはなく、通信容量が余る可能性がある。
【0056】
右側に示す図には、1日から15日までに送受信したデータ量を示す通信量が実線で、16日以降の通信量が破線で、それぞれ図示されている。無線通信装置W1、W2における1日から15日までの通信量は、識別番号の書き換えに伴って変化している。図6の左側に示す図によれば、無線通信装置W1では、月末までの通信量が通信容量を超過していない。また、無線通信装置W2では、月末までの通信量が通信容量に近い値となっており、通信容量が多く余ることはない。
【0057】
図7は、書換要否判定部105が、通信量に加えて、予定通信量に基づいて識別情報を書き換えるか否かを判定する場合を例示している。図7(a)は識別情報の書き換え前を示している。図7(a)に示すように、無線通信装置W1が識別情報AA-1を用いて通信を行った場合、通信量及び予定通信量の合計は通信容量以上となる。そこで、書換要否判定部105は、無線通信装置W1の記憶領域に記憶された識別情報AA-1を書き換えると判定する。一方、書換候補探索部106は、無線通信装置W1への書換候補となる識別情報として、最も少ない通信量に紐付けられた識別情報AA-2を探索する。
【0058】
図7(b)は識別情報の書き換え後を示している。無線通信装置W1に記憶された識別情報がAA-1からAA-2に書き換えられており、無線通信装置W2に記憶された識別情報がAA-2からAA-1に書き換えられている。図5と同様、それぞれの識別情報には通信量が紐付けられているため、無線通信装置W1及びW2の通信量も変化している。識別情報の書き換え後、無線通信装置W1の通信量及び予定通信量の合計は通信容量以上とならない。
【0059】
以上、本実施形態の電子制御装置100の構成、及び無線通信装置の記憶領域に記憶された識別情報の書き換えに係る処理を説明した。当然のことながら、電子制御装置100は、他の無線通信装置W2~Wnの記憶領域に記憶された識別情報に対しても同様の処理を行う。書換要否判定部105は、所定の周期で無線通信装置W(W1~Wn)の記憶領域に記憶されたそれぞれの識別情報を書き換えるか否かを判定することが望ましい。所定の周期は、例えば、1日1回又は数時間に1回である。
【0060】
なお、書換要否を判定する周期は常に一定である必要はなく、通信容量と通信量との「差分」に応じて周期を変化させてもよい。この場合、通信容量と通信量との差分が小さいほど高い頻度で、すなわち短い周期で判定を行うことが望ましい。通信容量と通信量との差分が小さいほど、通信量が通信容量を超過する可能性が高い状態であるといえる。そこで、通信容量と通信量との差分が小さいほど判定を行う周期を短くすることで、通信量が通信容量を超過する前に書換処理を行うようにする。例えば、通信容量と通信量との差分が3GB未満の場合には1日に1回、3GB以上5GB未満の場合には2日に1回、5GB以上の場合には3日1回、というように、判定を行う周期を変化させる。
【0061】
ここで「差分」とは、減算が含まれていれば足り、単純差(y-x)のみならず、二乗差(y-x)、差の平方根((y-x)1/2)、重みづけ差(by-ax:a、bは定数)なども含む。
【0062】
書換要否判定部105は、それぞれの識別情報について異なる周期で書き換えるか否かを判定してもよいが、全ての識別情報について同じタイミングで書き換えるか否かを判定してもよい。この場合、通信容量と通信量との差分が最も小さくなる識別情報の周期に合わせて、他の識別情報についても書換要否を判定してもよい。
【0063】
なお、書換要否判定部105は、所定の周期に代えて、あるいは、所定の周期に加えて、特定のタイミングで識別情報を書き換えるか否かを判定してもよい。例えば、書換要否判定部105は、無線通信装置W(W1~Wn)が起動又は停止するタイミング、及び/又は、無線通信装置W(W1~Wn)が送信又は受信した通信量、その合計値、又は通信容量と通信量との差分が所定の値となったタイミングで、識別情報を書き換えるか否かを判定する。さらに、このようなタイミングで判定を行う場合にも、通信容量と通信量との差分に応じて、判定を行う頻度を変化させてもよい。
【0064】
例えば、書換要否判定部105は、通信容量と通信量との差分が3GB未満の場合には実施せず、3GB以上5GB未満の場合には無線通信装置Wの起動時に判定を行い、5GB以上の場合には起動時及び終了時に判定を行う。別の例では、書換要否判定部105は、通信容量と通信量との差分が3GB未満の場合には、送受信した通信量が1GB増加するごとに1回、3GB以上5GB未満の場合には送受信した通信量が500MB増加するごとに1回、5GB以上の場合には送受信した通信量が200MB増加するごとに1回、判定を行う。さらに別の例では、書換要否判定部105は、通信容量と通信量との差分が3GB未満の場合には送受信した通信量が1GB増加するごとに1回、3GB以上5GB未満の場合には起動時に加えて、送受信した通信量が500MB増加するごとに1回、5GB以上の場合には起動時と終了時に加えて、送受信した通信量が200MB増加するごとに1回、判定を行う。このように、通信容量と通信量との差分が小さいほど、判定を行う頻度を高くする。
【0065】
(3)電子制御装置の動作
図8図9を参照して、電子制御装置100の動作を説明する。図8は電子制御装置100の動作を示しており、図9は、電子制御装置100に関連する無線通信装置W1の動作を示している。図8図9に示す符号はそれぞれ対応しており、同じ符号は同じ処理を示している。図9は無線通信装置W1の動作のみを記載しているが、無線通信装置W2も無線通信装置W1と同様の動作を行うものである。
【0066】
なお、図8図9に示す電子制御装置100の動作は、電子制御装置100で実行される方法を示すだけでなく、電子制御装置100で実行可能なプログラムの処理手順を示すものである。そして、これらの処理は、図8図9で示した順序には限定されない。すなわち、あるステップでその前段のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。実施形態2の図16図18についても同様である。
【0067】
通信回線情報取得部102は、通信回線情報保存部101から、電子制御装置100が管理している無線通信装置W(W1~Wn)の通信回線情報を取得する(図8:S101)。
書換要否判定部105は、S101で取得した通信回線情報である通信量に基づいて、無線通信装置W1の記憶領域に記憶された識別情報を書き換えるか否かを判定する(図8:S102)。
S102において識別情報を書き換えると判定した場合(図8:S102:Y)、書換候補探索部106は書換候補となる識別情報を探索する(図8:S103)。本実施形態では、書換候補として、無線通信装置W2の識別情報(AA-2)を探索する。
S103において識別情報を探索した結果、書換候補となる識別情報が存在する場合(図8:S104:Y)、書換指示部107は、無線通信装置W1に対して、識別情報(AA-1)を、S103で探索した識別情報(AA-2)に書き換えることを指示する(図8:S105)。書換指示部107はさらに、無線通信装置W2に対して、識別情報(AA-2)を識別情報(AA-1)に書き換えることを指示する(図8:S105)。ここで、書換指示部107は、識別情報の書き換えを行う通信回線Aとは異なる通信回線Bを用いて、識別情報の書き換えを指示する。
【0068】
無線通信装置W1では、通信回線Bを使用して無線通信を行う通信モジュールBが識別情報の書換指示を受信する(図9:S105)。なお、識別情報の書換指示に通信モジュールAを用いてもよい。
識別情報の書換指示を受信すると、通信モジュールBはCPUに対し、識別情報の書換指示を通知する(図9:S201)。
S201において識別情報の書換指示が通知されると、CPUは、書き換えが指示された識別情報を用いて通信を行う通信モジュールAに対して、当該識別情報を用いた通信の停止を指示する(図9:S203)。
通信モジュールAは、S203において通信を停止すると、CPUに対して通信を停止したことを通知する(図9:S204)。
通信の停止が通知されると、CPUは、通信モジュールAに対して、識別情報の書き換えを指示する(図9:S205)。
通信モジュールAは、識別情報の書き換えを行う(図9:S206)。
S206において識別情報の書き換えが完了すると、通信モジュールAはCPUに対して、書換完了を通知する(図9:S207)。そして、通信モジュールAから書換完了が通知されると、CPUは通信モジュールBを介して、電子制御装置100に書換完了を通知する(図8図9:S106)。
【0069】
電子制御装置100の完了通知受信部108が、識別情報の書き換えを指示した無線通信装置W1、W2から書換完了通知を受信(図8図9:S106)すると、書換指示部107は、書き換え後の識別情報を用いた通信の開始を指示する(図8図9:S107)。このとき、無線通信装置W1の通信モジュールAは通信を停止しているため、書換指示部107は、通信回線Bを用いて通信の開始指示を送信する。
【0070】
通信の開始指示を受信すると、通信モジュールBはCPUに対し、通信の開始指示を通知する(図9:S208)。
S208において通信の開始指示が通知されると、CPUは通信モジュールAに対し、書換後の識別情報を用いた通信開始を指示する(図9:S209)。
そして、通信モジュールAは、書き換え後の識別情報(AA-2)を用いた通信を開始する(図9:S210)。
【0071】
(4)変形例1
上述した実施形態では、識別情報の書換要否を判定し、書換候補の探索を行った後に直ちに、2つの無線通信装置に対して識別情報の書き換えを指示する例を挙げて説明した。しかしながら、識別情報の書換指示はそれぞれ、書換候補の探索を行った後の任意のタイミングで行ってもよい。本変形例では、書換指示部107が、無線通信装置Wが搭載された車両の運行状況に応じて、識別情報の書き換えを指示する構成を説明する。
【0072】
無線通信装置Wが、電子制御装置100から識別情報の書換指示を受信する、あるいは、識別情報の書換処理を行うためには、無線通信装置Wが起動している必要がある。ところが、無線通信装置Wを搭載する車両Vが動作(例えば、走行)している間に書換処理を行う場合、書換処理を実行している間、識別情報を書き換えている通信回線を用いた無線通信を行うことができなくなる。また、車両Vが動作していない間(例えば、車両Vの駐車中)は車両Vの電源が入っておらず、ひいては、車両Vに搭載された無線通信装置Wが起動していないため、識別情報の書換指示を受信する、あるいは、書換処理を行うことはできない。そこで、書換指示部107は、車両Vの運行状況に応じて識別情報の書き換えを指示する。
【0073】
図10図13を参照して、識別情報の書き換えを指示するタイミングの例を説明する。
図10は、無線通信装置W1を搭載した車両V1、及び無線通信装置W2を搭載した車両V2の運行スケジュールを簡略的に示している。図10によれば、15日、16日ともに、車両V1は8時~16時まで運行し、車両V2は10時~19時まで運行しており、それ以外の時間は車両V1、V2、ひいては無線通信装置W1、W2は起動していない。例えば、サーバ装置に設けられた電子制御装置100が、15日の22時に書換要否を判定する場合、無線通信装置W1、W2はいずれも起動していないため、識別情報の書換処理を行うことはできない。図10の下段に示すように、書換要否を判定した翌日(16日)に車両V1、V2が起動した後に識別情報の書換処理を行うとすると、車両V1を起動した直後、車両V1の無線通信装置W1、車両V2の無線通信装置V2の2つに、識別情報AA-2が同時に記憶されている状況が発生してしまう。
【0074】
そこで、一例として、無線通信装置100は図11に示すようなスケジュールで識別情報の書き換えを指示する。具体的には、電子制御装置100は、車両V2の無線通信装置W2に対して、16日に車両V2の運行が終了したとき、すなわち、無線通信装置W2が起動を終了したときに識別情報の書き換えを指示する。一方、車両V1の無線通信装置W1に対しては、17日に車両V1の運行を開始するとき、すなわち、無線通信装置W1が起動を開始したときに識別情報の書き換えを指示する。これにより、1つの識別情報が2つの無線通信装置の記憶領域に同時に記憶されている状況を防ぐことができる。
【0075】
図12は、車両V1、V2の運行スケジュールが図10図11とは異なる例を示している。図12では、16日に、車両V1は7時~19時まで運行し、車両V2は8時~16時まで運行している。この例では、電子制御装置100は、車両V2の無線通信装置W2に対して、16日に車両V2の運行が終了したときに、記憶領域に記憶されている識別情報AA-2の削除を指示する。しかしながら、この時点では、新たな識別情報への切替指示は行わない。ここで切替処理を行った場合、17日に車両V2が起動した直後に、車両V1の無線通信装置W1、車両V2の無線通信装置V2の2つに、識別情報AA-1が同時に記憶されている状況が発生するからである。一方、電子制御装置100は、車両V1の無線通信装置W1に対して、16日に車両V1の運行が終了したとき、すなわち、無線通信装置W1が起動を終了したときに識別情報の書き換えを指示する。そして、電子制御装置100は、車両V2の無線通信装置W2に対して、17日に車両V1の運行を開始するとき、すなわち、無線通信装置W2が起動を開始したときに識別情報の書き換えを指示する。
【0076】
図13は、車両V1、V2の運行開始及び終了のタイミングの関係に応じて、電子制御装置100が識別情報の書換指示を行うタイミングを示している。図13に示すとおり、車両V1及び車両V2が運行を開始するタイミングが同時の場合、又は、車両V1及び車両V2が運行を終了するタイミングが同時の場合、同時に運行を開始又は終了するタイミングで識別情報の書き換えを指示する。これに対し、車両V1及び車両V2が運行を開始及び終了するタイミングが同時ではない場合には、図11図13に示すタイミングで識別情報の書き換えを指示することで、1つの識別情報が2つの無線通信装置の記憶領域に同時に記憶されている状況を防ぐことができる。
【0077】
(5)変形例2
本実施形態では、識別情報の書き換えが必要と判定された識別情報と、書換候補として探索された識別情報とを書き換えて、実質的に識別情報を交換する例を説明したが、必ずしも識別情報は交換するものでなくともよい。例えば、無線通信装置W1に記憶されていた識別情報AA-1を書換候補の識別情報AA-2に書き換え、無線通信装置W2に記憶されていた識別情報AA-2を識別情報AA-3に書き換え、無線通信装置W3に記憶されていた識別情報AA-3を識別情報AA-1に書き換えてもよい。
【0078】
(6)変形例3
本実施形態では、図1に示したとおり、サーバ装置に設けられた電子制御装置100が、車両に搭載された複数の無線通信装置W(W1~Wn)に対して識別情報の書き換えを指示する例を説明した。しかしながら、本実施形態の電子制御装置100が車両に搭載され、電子制御装置100が搭載された車両とは異なる車両に搭載された複数の無線通信装置(W1~Wn)に対して識別情報の書き換えを指示するように構成されてもよい。
【0079】
(7)小括
本実施形態によれば、無線通信装置が無線通信に用いる識別情報を、他の無線通信装置が用いる識別情報と書き換えることにより、識別情報に紐付けられた通信量を、他の無線通信装置と交換することが可能となる。これにより、無線通信装置毎に送受信したデータ量に偏りがある場合であっても、それぞれの無線通信装置は通信容量を超えることなく無線通信を行うことが可能となる。
【0080】
3.実施形態2
実施形態1では、電子制御装置100がサーバ装置である例を説明した。本実施形態では、電子制御装置100が、無線通信装置Wとともに車両に搭載される構成を、実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0081】
(1)電子制御装置100と無線通信装置Wの配置
図14は、本実施形態の電子制御装置100及び無線通信装置Wの配置を説明する図である。図14に示すように、電子制御装置100は、無線通信装置Wと共に、「移動体」である車両に「搭載」されている。電子制御装置100は、同じ車両に搭載された無線通信装置、及び、他の車両に搭載され、書換候補として探索された識別情報を用いて無線通信を行う無線通信装置、を制御する。
【0082】
以下に示す実施形態では、電子制御装置100が、無線通信装置W1と共に、車両V1(「第1の移動体」に相当)に搭載されている例を説明する。
【0083】
(2)電子制御装置100の構成
図15は、本実施形態の電子制御装置100の構成例を示す図である。図2に示す各構成に加えて、書換情報要求部109を備える。
【0084】
本実施形態の通信回線情報保存部101は、実施形態1とは異なり、電子制御装置100と同じ車両に搭載された無線通信装置W1の通信回線情報のみを保存する。すなわち、通信回線情報保存部101は、無線通信装置W1が使用する識別情報と、当該識別情報に紐付けられた通信量及び通信容量を保存する。
【0085】
書換要否判定部105は、無線通信装置W1(「第1の無線通信部」に相当)の記憶領域に記憶された識別情報を書き換えるか否かを判定する。書換要否判定部105が識別情報を書き換えるか否かを判定する方法は、実施形態1と同じである。
【0086】
ここで、本実施形態では、書換要否判定部105が識別情報を書き換えると判定した場合、書換情報要求部109は、他の車両に搭載された無線通信装置W2~Wnに対して書換情報を要求する。書換情報要求部109はさらに、無線通信装置W2~Wnから送信された書換情報を受信する。書換情報は、書換候補探索部106が書換候補の探索に使用する情報である。具体的には、書換情報要求部109は、無線通信装置W2~Wnに対して、記憶領域に記憶されている識別情報と、当該識別情報に紐付けられた通信量とを書換情報として要求する。実施形態1と同様に、書換候補探索部106が、通信量に加えて通信容量に基づいて書換候補を探索する場合には、識別情報及び通信量に加えて、識別情報に紐付けられた通信容量を書換情報として要求してもよい。
【0087】
電子制御装置100から書換情報が要求された無線通信装置W2~Wnは、書換情報を電子制御装置100に送信する。ここで、無線通信装置W2~Wnは、書換情報を要求された場合に、各無線通信装置の通信量に基づいて、各無線通信装置の記憶領域に記憶された識別情報の書き換え可否を判定してもよい。この場合、無線通信装置W2~Wnが、識別情報の書き換えが不可であると判定した場合、書換情報要求部109からの要求に対して、識別情報の書換不可を示す情報を書換情報として送信する。あるいは、書換情報要求部109からの要求に対して応答をしなくともよい。一方、無線通信装置が識別情報の書き換えが可能であると判定した場合、無線通信装置は書換情報要求部109からの要求に対して、識別情報及び通信量を書換情報として送信する。
【0088】
書換候補探索部106は、書換情報要求部109で受信した書換情報に基づいて、書換候補となる識別情報を探索する。書換候補探索部106が書換候補となる識別情報を探索する方法は、実施形態1と同じである。
【0089】
書換指示部107は、書換候補探索部106が探索した識別情報を記憶している無線通信装置(「第2の無線通信部」に相当)に対して、識別情報の書き換えを指示する。実施形態1と同様、本実施形態においても、書換候補探索部106が、無線通信装置W2の記憶領域に記憶された識別情報を書換候補として探索した場合を以下に説明する。本実施形態の書換指示部107はさらに、当該電子制御装置100と同じ車両V1に搭載された無線通信装置W1に対して、識別情報の書き換えを指示する。
【0090】
なお、本実施形態では、無線通信装置W2が識別情報の書換指示を受信した場合は必ず識別情報を書き換えることを前提として説明している。しかしながら、無線通信装置W2は、電子制御装置100から識別情報の書換指示を受信した後に識別情報の書換処理を行わないと判断してもよい。例えば、書き換えを指示された識別情報に紐付けられた通信量が多く、ひいては、通信残量が少ない場合、無線通信装置W2は識別情報の書換処理は行わないと判断する。この場合、無線通信装置W2は、電子制御装置100に対し、書換指示を拒否することを示す信号を送信する。
【0091】
(3)電子制御装置の動作
図16図18を参照して、本実施形態の電子制御装置100の動作を説明する。実施形態1の図8図9と同じ符号は同じ処理を示しており、詳細な説明は省略する。
【0092】
図16では、S102において識別情報を書き換えると判定した場合(図16:S102:Y)、他の無線通信装置に対して書換情報を要求する(図16図17:S110)。ここで、書換情報要求部109は、識別情報の書き換えを行う通信回線Aとは異なる通信回線Bを用いて、書換情報を要求する。
【0093】
無線通信装置W2では、通信回線Bを使用して無線通信を行う通信モジュールBが識別情報の書換情報要求を受信する(図17:S110)。
書換情報要求を受信すると、通信モジュールBはCPUに対し、書換情報要求を通知する(図17:S301)。
S301において書換情報要求が通知されると、CPUは、通信モジュールAが通信回線Aを用いた無線通信に使用している識別情報、及び当該識別情報に紐付けられた通信量を書換情報として、通信モジュールBを介して電子制御装置100に送信する(図17:S302、S303)。
【0094】
電子制御装置100の書換候補探索部106は、受信した書換情報に基づいて、書換候補を探索する(図16図17:S103)。
【0095】
図18は、図16のS103において、無線通信装置W2の識別情報を書換候補として探索した場合の処理を示している。
書換指示部107は、無線通信装置W2に対して、識別情報(AA-2)を識別情報(AA-1)に書き換えることを指示する(図16図18:S111)。図18において、電子制御装置100が無線通信装置W2に対して識別情報の書き換えを指示した後のS201~S207処理は、実施形態1と同様である。
【0096】
本実施形態の書換指示部107はさらに、電子制御装置100と同じ車両に搭載された無線通信装置W1の通信モジュールAに対し、識別情報(AA-1)を用いた通信の停止を指示する(図16図18:S112)。
S112において通信の停止指示を受けた通信モジュールAは、識別情報(AA-1)を用いた通信を停止する(図18:S401)。
【0097】
S106において、無線通信装置W2から書換完了が通知(図16図18:S106)されると、書換指示部107は、通信モジュールAに対し、識別情報の書き換えを指示する(S113)。
そして、通信モジュールAは、識別情報(AA-1)から識別情報(AA-2)に書き換えを行う(図18:S402)。
【0098】
なお、実施形態1と同様、本実施形態でも、無線通信装置が2つのセルラー通信を用いる例を説明した。しかしながら、本実施形態では、車両に搭載された無線通信装置同士の通信として、基地局を経由しない車車間通信を利用してもよい。
【0099】
(4)小括
本実施形態によれば、車両に搭載された電子制御装置100が、同じ車両に搭載された無線通信装置の記憶領域に記憶された識別情報の書換要否を判定し、識別情報の書換指示を行う。これにより、電子制御装置100と同じ車両に搭載された無線通信装置は、通信容量を超えることなく無線通信を行うことが可能となる。
【0100】
4.その他の発明
上述した実施形態1、2では、通信量に基づいて識別情報の書換要否を判定し、必要に応じて識別情報を書き換えることで、無線通信装置が通信容量を超えて通信を行うことを防ぐ構成を説明した。別の方法として、識別情報の書き換えを行わず、通信量に応じて、無線通信装置を搭載している車両が走行する経路を選択する、あるいは、走行する車両を選択してもよい。
【0101】
例えば、通信回線A及び通信回線Bを使用可能な車両が、通信回線Aの通信環境が良好なルートXを走行する場合、当該車両に搭載された無線通信装置では、通信回線Aを用いて送受信したデータ量は、通信回線Bを用いて送受信したデータ量よりも多くなる可能性が高い。一方、通信回線A及び通信回線Bを使用可能な車両が、通信回線Bの通信環境が良好なルートYを走行する場合、当該車両に搭載された無線通信装置では、通信回線Bを用いて送受信したデータ量が、通信回線Aを用いて送受信したデータ量よりも多くなる可能性が高い。
【0102】
そこで、サーバ装置に設けられた無線通信装置は、通信量に応じて、それぞれのルートを走行する車両を選択する。上述したとおり、車両がルートXを走行する場合、通信回線Aを用いて送受信するデータ量は多くなる。そこで、ルートXを走行する車両として、通信回線Aにおける通信残量が多い無線通信装置を搭載する車両を選択する。一方、車両がルートYを走行する場合、通信回線Bを用いて送受信するデータ量が多くなる。そこで、ルートYを走行する車両として、通信回線Bにおける通信残量が多い無線通信装置を搭載する車両を選択する。
【0103】
例えば、無線通信装置が図3に示す通信回線情報を有している場合を想定する。図3に示す通信回線情報によれば、無線通信装置W2の通信回線Aの通信残量が最も多い。そこで、無線通信装置W2を搭載している車両を、ルートXを走行する車両として選択する。同様の方法を用いて、通信回線Bの通信残量が最も多い無線通信装置を搭載している車両を、ルートYを走行する車両として選択する。
【0104】
別の例として、複数の車両の中から走行する1台の車両を選択する場合、各無線通信装置が使用可能な全ての通信回線の通信残量に基づいて、走行する車両を選択してもよい。
【0105】
図19aは、無線通信装置W1が1日から15日までに送受信したデータ量を示す通信量を示している。実線は通信回線Aにおける通信量を、破線は通信回線Bにおける通信量をそれぞれ示している。ここで、電子制御装置は、無線通信装置W1における通信回線Aの通信残量、及び通信回線Bの通信残量をそれぞれ算出し、算出した通信残量のうち小さい通信残量の値を評価値として求めてもよい。例えば、図19aの例では、通信回線Aの通信残量の値を評価値として求める。電子制御装置はさらに、当該電子制御装置が管理する全ての無線通信装置について、同様に評価値を求める。
【0106】
図19bは、無線通信装置W1が1日から15日までに送受信したデータ量を示す通信量に加えて、無線通信装置W1が送受信する予定のデータ量を示す予定通信量を示している。なお、予定通信量は、上述した実施形態1と同様の方法を用いて算出してもよい。例えば、電子制御装置は、通信回線A、Bそれぞれについて、通信容量と、通信量及び予定通信量の和との差分である予定通信残量を算出し、算出した予定通信残量のうち小さい予定通信残量の値を評価値として求める。図19bの例では、通信回線Bの予定通信残量の値を評価値として求める。電子制御装置はさらに、当該電子制御装置が管理する全ての無線通信装置について、同様に評価値を求める。
【0107】
電子制御装置が全ての無線通信装置の評価値を求めると、これらの評価値のうち最大となる評価値に対応する無線通信装置を搭載する車両を、次に走行する車両として選択する。複数の無線通信装置のうち、少ない通信残量が最大となるものを選択することで、車両が走行しても通信容量を超える可能性を低減することができる。
【0108】
5.総括
以上、本発明の各実施形態における電子制御装置等の特徴について説明した。
【0109】
各実施形態で使用した用語は例示であるので、同義の用語、あるいは同義の機能を含む用語に置き換えてもよい。
【0110】
実施形態の説明に用いたブロック図は、装置の構成を機能毎に分類及び整理したものである。それぞれの機能を示すブロックは、ハードウェア又はソフトウェアの任意の組み合わせで実現される。また、機能を示したものであることから、かかるブロック図は方法の発明、及び当該方法を実現するプログラムの発明の開示としても把握できるものである。
【0111】
各実施形態に記載した処理、フロー、及び方法として把握できる機能ブロック、については、一のステップでその前段の他のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0112】
各実施形態、及び特許請求の範囲で使用する、第1、第2、乃至、第N(Nは整数)、の用語は、同種の2以上の構成や方法を区別するために使用しており、順序や優劣を限定するものではない。
【0113】
各実施形態は、移動体に搭載される無線通信装置を制御する装置を前提としているが、本発明は、特許請求の範囲で特に限定する場合を除き、任意の無線通信装置を制御する装置も含むものである。
【0114】
また、本発明の電子制御装置の形態の例として、以下のものが挙げられる。
部品の形態として、PLD、半導体素子、電子回路、モジュール、マイクロコンピュータが挙げられる。
半完成品の形態として、電子制御装置(ECU(Electric Control Unit))、システムボードが挙げられる。
完成品の形態として、携帯電話、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション、サーバが挙げられる。
その他、通信機能を有するデバイス等を含み、例えばビデオカメラ、スチルカメラ、カーナビゲーションシステムが挙げられる。
【0115】
また、電子制御装置に、アンテナや通信用インターフェースなど、必要な機能を追加してもよい。
【0116】
加えて、本発明は、各実施形態で説明した構成及び機能を有する専用のハードウェアで実現できるだけでなく、メモリやハードディスク等の記録媒体に記録した本発明を実現するためのプログラム、及びこれを実行可能な専用又は汎用CPU及びメモリ等を有する汎用のハードウェアとの組み合わせとしても実現できる。
【0117】
専用や汎用のハードウェアの非遷移的実体的記録媒体(例えば、外部記憶装置(ハードディスク、USBメモリ、CD/BD等)、又は内部記憶装置(RAM、ROM等))に格納されるプログラムは、記録媒体を介して、あるいは記録媒体を介さずにサーバから通信回線を経由して、専用又は汎用のハードウェアに提供することもできる。これにより、プログラムのアップグレードを通じて常に最新の機能を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の電子制御装置は、主として自動車に搭載される無線通信装置を制御する装置を対象としているが、任意の無線通信装置を制御する装置としてもよい。
【符号の説明】
【0119】
100 電子制御装置、105 書換要否判定部、106 書換候補探索部、107 書換指示部、109 書換情報要求部
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