(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
G02F 1/29 20060101AFI20250415BHJP
H04B 10/112 20130101ALI20250415BHJP
H01Q 3/36 20060101ALI20250415BHJP
G06N 3/02 20060101ALI20250415BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20250415BHJP
【FI】
G02F1/29
H04B10/112
H01Q3/36
G06N3/02
G06N20/00 130
(21)【出願番号】P 2021192555
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2024-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 勇
(72)【発明者】
【氏名】中井 真琴
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113630197(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0004151(US,A1)
【文献】特表2016-512408(JP,A)
【文献】特許第6908907(JP,B1)
【文献】特開2018-163554(JP,A)
【文献】特開2015-215518(JP,A)
【文献】DUDCZYK et al.,Applying the neural networks to formation of radiation pattern of microstrip antenna,2008 International Radar Symposium,IEEE,2008年05月21日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00- 1/125
G02F 1/21- 7/00
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
H01Q 3/00- 3/46
H01Q 21/00-25/04
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波により信号を放射する複数の放射素子と、
各前記放射素子に入力する信号の位相を変化させる位相シフタと、
前記位相シフタを制御するためのパラメータを決定する位相シフタ制御器と、
を備え、
前記位相シフタ制御器は、複数の前記放射素子により放射されるビームの目標の形状である目標ビーム形状を示す信号が入力データに含まれ、複数の前記放射素子により前記目標ビーム形状が形成される設定値が出力データに含まれるよう予め学習された設定値生成部を含
み、
前記設定値生成部は、
複数の前記放射素子により形成されたビーム形状を示す信号を前記入力データの少なくとも一部とし、
前記入力データとなる前記ビーム形状が形成された場合の複数の前記設定値を教師データの少なくとも一部とし、
前記入力データと前記教師データとの組の集合である学習用データセットを用いて、前記出力データと前記教師データとの少なくとも一部の誤差に基づいて、又は前記出力データと前記教師データとが一致するように、予め学習されており、
前記入力データに含まれる前記ビーム形状を示す信号は、前記教師データに含まれる複数の設定値がランダムに生成された場合のビーム形状を示す信号である、制御システム。
【請求項2】
前記入力データに含まれる前記ビーム形状を示す信号は、前記教師データに含まれる複数の設定値が限定された範囲でランダムに生成された場合のビーム形状を示す信号である、請求項
1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記放射素子は、前記電磁波として光を空間に放射する光放射素子であり、
前記設定値生成部は、複数の前記光放射素子により前記目標ビーム形状として目標光ビーム形状が形成される設定値が出力に含まれるよう予め学習されている、請求項1
または請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記ビームの形状に影響を与える場所の温度、前記光の光源の波長、前記光源の発光強度、前記光の偏光方向の少なくともいずれかが前記入力データに含まれる、請求項
3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記ビームの形状に影響を与える場所の温度は、前記光の光源の温度、前記光放射素子に関係する温度、前記光の位相をシフトする位相シフタに関係する温度、前記光放射素子が存在する環境の温度の少なくともいずれかである、請求項
4に記載の制御システム。
【請求項6】
前記設定値は、前記位相シフタに印加する電圧の値である、請求項1に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光入力線から光信号を入力し、内部で結合した光信号を出力する光結合器がある。非特許文献1には、Mチャンネルの光入力線を第1段の光結合器で1チャンネルの光出力線に結合し、1チャンネルの光出力線を光分配器で3チャンネルの光出力線に分岐し、分岐後の2チャンネルの光出力線を第2段の光結合器で1チャンネルの光出力線に結合し、結合後の光出力強度をフォトダイオードで観測することで、入力される光信号の位相関係を推定する技術が開示されている。各光入力線に入力される光信号の位相が全て揃っている場合、フォトダイオードの出力は極大となることが知られている。これにより、予めフォトダイオードの出力の極大値を調べておくことで、現在の各入力信号の位相関係が完全に同相であるか否かを判断できる。そして、位相関係が完全に同相であるか否かに基づき、位相関係を補正(制御)するためのパラメータを推定することができる。
【0003】
Mチャンネルの光入力線がそれぞれ異なる位相シフタと光放射素子(OPA(Optical Phased Array)アンテナ素子)とに接続され、それぞれの位相シフタで光放射素子に入力される光の位相を制御することで、光放射素子アレイ(OPAアンテナ)から放射されるビームを制御できるシステムはOPAと呼ばれる。OPAから放射されるビームは、各光入力線へ入力される信号の位相によって形状が決まる。位相を決定するための制御電圧は、OPAから放射されるビームの形状(ビームフォーム)をカメラで観測し、所望のビームフォームになるように作業者が手作業で設定していた。この設定作業を所望のビームフォームの数だけ行い、使用時には所望のビームフォームに対応する制御電圧の設定値を位相制御器に与えていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Tin Komljenovic and Paolo Pintus, “On-chip calibration and control of optical phased arrays”, Optics Express, Vol.26, No.3, 3199, 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、OPAのように複数の放射素子アレイからの信号の放射によりビームフォームが形成される場合、位相を決定するための制御電圧の設定作業は作業者の経験則に依る部分が大きく、また時間も要する。さらに放射素子アレイの制御電圧の設定作業は、所望のビームフォームの数が増加するに連れて労力も増加する。さらに、設定されていない制御電圧に対応するビームフォームは基本的には生成できず、設定作業時の環境温度やレーザーダイオードの発光波長と異なっている場合も、同じ制御電圧でも放射素子アレイから同じビームフォームを生成することはできない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、放射素子アレイに対する位相の制御電圧の設定作業の労力を従来から大幅に低減した制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の制御システムは、電磁波により信号を放射する複数の放射素子と、各前記放射素子に入力する信号の位相を変化させる位相シフタと、前記位相シフタを制御するためのパラメータを決定する位相シフタ制御器と、を備え、前記位相シフタ制御器は、複数の前記放射素子により放射されるビームの目標の形状である目標ビーム形状を示す信号が入力データに含まれ、複数の前記放射素子により前記目標ビーム形状が形成される設定値が出力データに含まれるよう予め学習された設定値生成部を含む。
【0008】
本発明の請求項2の制御システムは、請求項1の制御システムであって、前記設定値生成部は、複数の前記放射素子により形成されたビーム形状を示す信号を前記入力データの少なくとも一部とし、前記入力データとなる前記ビーム形状が形成された場合の複数の前記設定値を教師データの少なくとも一部とし、前記入力データと前記教師データとの組の集合である学習用データセットを用いて、前記出力データと前記教師データとの少なくとも一部の誤差に基づいて、又は前記出力データと前記教師データとが一致するように、予め学習されている。
【0009】
本発明の請求項3の制御システムは、請求項2の制御システムであって、前記入力データに含まれる前記ビーム形状を示す信号は、前記教師データに含まれる複数の設定値がランダムに生成された場合のビーム形状を示す信号である。
【0010】
本発明の請求項4の制御システムは、請求項3の制御システムであって、前記入力データに含まれる前記ビーム形状を示す信号は、前記教師データに含まれる複数の設定値が限定された範囲でランダムに生成された場合のビーム形状を示す信号である。
【0011】
本発明の請求項5の制御システムは、請求項1~4のいずれかの制御システムであって、前記放射素子は、前記電磁波として光を空間に放射する光放射素子であり、前記設定値生成部は、複数の前記光放射素子により前記目標ビーム形状として目標光ビーム形状が形成される設定値が出力に含まれるよう予め学習されている。
【0012】
本発明の請求項6の制御システムは、請求項5の制御システムであって、前記ビームの形状に影響を与える場所の温度、前記光の光源の波長、前記光源の発光強度、前記光の偏光方向の少なくともいずれかが前記入力データに含まれる。
【0013】
本発明の請求項7の制御システムは、請求項6の制御システムであって、前記ビームの形状に影響を与える場所の温度は、前記光の光源の温度、前記光放射素子に関係する温度、前記光の位相をシフトする位相シフタに関係する温度、前記光放射素子が存在する環境の温度の少なくともいずれかである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、放射素子アレイに対する位相の制御電圧の設定作業の労力を従来から大幅に低減した制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来の制御電圧の設定方法を説明する図である。
【
図2】本実施形態に係る光ビーム制御システムの構成例を示す図である。
【
図3】設定値生成部を学習させるための学習用データセットの作製例を説明する図である。
【
図4】学習用データセットを用いた設定値生成部の学習手法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について詳細に説明する前に、本発明の実施形態に至った経緯を説明する。
【0017】
図1は、従来の制御電圧の設定方法を説明する図である。OPAのような複数の放射素子アレイから放射されるビームの形状は、各放射素子アレイに入力される信号の位相によって決まる。
図1では放射素子アレイとしてOPAアンテナを図示している。OPAアンテナには、位相シフタ(Phase Shifter;PS)によってそれぞれ位相が変更された、レーザーダイオード(LD)からの光が入力される。
【0018】
準備段階では、位相シフタによる位相のシフト量を決定するためのPS制御電圧は、放射素子アレイから放射されるビームのビームフォーム(FFP;Far Field Pattern)をカメラ等の観測装置で観測し、所望のビームフォームになるように作業者が手作業でテーブルに設定していた。この設定作業を所望のビームフォームの数だけ行っていた。そして使用段階では、所望のビームフォームに対応する制御電圧の設定値をテーブルから読み出して、位相シフタに与えていた。
【0019】
しかし、OPAアンテナのように複数の放射素子アレイからの信号の放射によりビームフォームが形成される場合、制御電圧の設定作業は作業者の経験則に依る部分が大きく、また時間も要する。放射素子の数の増加により、設定作業の労力は増加する。さらに放射素子アレイの制御電圧の設定作業は、所望のビームフォームの数が増加するに連れて労力がさらに増加する。
【0020】
さらに、設定されていない制御電圧に対応するビームフォームは基本的には生成することが困難であり、設定作業時の環境温度やレーザーダイオードの発光波長又は発光強度と異なっている場合も、同じ制御電圧でも放射素子アレイから同じビームフォームを生成することはできない。またレーザーダイオードの発光波長又は発光強度も温度によって異なるため、同じ制御電圧でも温度が異なれば放射素子アレイから同じビームフォームを生成することはできない。すなわち、従来の設定手法は、温度又は発光波長、発光強度などが変動することに対してロバストではない。
【0021】
テーブルを作成する時点で、FFPと制御電圧との関係がある程度把握できたところで、FFPと制御電圧との近似式を求めることも可能ではある。しかし、FFPの形状は多様であり、環境温度及び発光波長の変動も網羅的に補償できる近似式を立てることは事実上困難である。
【0022】
そこで本件発明者は、上述の点に鑑み、放射素子アレイに対する位相の制御電圧の設定作業の労力を従来から大幅に低減できる技術について鋭意検討を行った。その結果、本件発明者は、以下で説明するように、放射素子アレイに対する位相の制御電圧の設定作業の労力を従来から大幅に低減できる技術を考案するに至った。
【0023】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0024】
図2は、本実施形態に係る光ビーム制御システムの構成例を示す図である。
図2に示した光ビーム制御システム1は、本発明の制御システムの一例である。光ビーム制御システム1は、レーザーダイオード10、位相シフタ20、アンテナ素子30、及び位相シフタ制御器40を備える。
【0025】
レーザーダイオード10は所定の強度及び周波数の光(以下光信号と称する)を出力する。レーザーダイオード10から出力される光信号は、複数に分配され、位相シフタ20に入力される。位相シフタは、位相制御器、位相変調器、Phase Modulator、フェーズシフタ、Phase Shifter等とも呼ばれ得る。
【0026】
位相シフタ20は、レーザーダイオード10から出力される光信号の位相を所定量変更する。
図2の例では、レーザーダイオード10から出力される光信号はM本に分配される。位相シフタ20のそれぞれから出力される光信号の位相はφ
1~φ
Mであり、光信号はそれぞれアンテナ素子30に入力される。
【0027】
アンテナ素子30は、本発明の放射素子の一例である。複数のアンテナ素子30が並べられたものが放射素子アレイとなる。アンテナ素子30は、入力される光信号の位相関係に基づいて、アンテナ素子30から放射されて形成されるビームの方向(方位、角度)と形状とを変更することができる。すなわち、アンテナ素子30は光スキャナとして機能する。これは、光フェーズドアレイ又はオプティカルフェーズドアレイ(OPA)式の光スキャナと呼ばれるものである。
【0028】
位相シフタ制御器40は、位相シフタ20を制御するためのパラメータを決定する。位相シフタ20を制御するためのパラメータは、位相シフタ20の位相の変更量に対応した制御電圧である。位相シフタ20はM個あるため、位相シフタ制御器40が決定するパラメータもM個存在する。位相シフタ20を制御するためのパラメータは、制御電圧以外にも、例えば電流、電力があり得る。また、パラメータは位相シフタ20の仕様に依るため、位相を変更できるパラメータであれば、電圧、電流、電力に限定されず、どのようなものであってもよい。
【0029】
位相シフタ制御器40は、アンテナ素子30が放射するビームの目標の形状である目標ビーム形状を示す信号が入力データに含まれ、複数のアンテナ素子30により目標ビーム形状が形成される設定値が出力データに含まれるよう予め学習された設定値生成部41を備える。なお、
図2の中の目標ビーム形状はピークが1つのビームであるが、ピークが2つ以上あるビーム形状が目標ビーム形状であってもよい。ピークが2つ以上あるビーム形状が目標ビーム形状である場合、ピークの高さは全て同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
設定値生成部41は、任意の学習手法を用いて、例えばDNN(Deep Neural Network;深層ニューラルネットワーク)を用いて予め学習されている。なお、設定値生成部41は、広義の機械学習技術、例えばサポートベクタマシン(SVM)技術などを用いてもよい。設定値生成部41の入力データには、目標ビーム形状に加え、温度計50で測定された温度、レーザーダイオード10の発光波長、レーザーダイオード10の発光強度の情報が含まれうる。温度計50で測定される温度は、アンテナ素子30そのものの温度でもよく、アンテナ素子30の周辺の温度でもよく、アンテナ素子30が設けられた基板の所定の位置の温度でもよい。また、温度計50で測定される温度は、位相シフタ20の温度であってもよい。さらに、温度計50で測定される温度はアンテナ素子30又は位相シフタ20に関係する温度に限られず、OPAを構成するその他の要素部品の温度であってもよく、OPAが搭載されたチップ又は基板の温度、OPAが存在する環境の温度などの
図2に示した光ビーム制御システムの全体的な温度であってもよい。つまり、位相シフタ20のパラメータと、ビーム形状との関係に影響するあらゆる温度が、温度計50で測定される温度の対象となる。設定値生成部41に入力される温度の情報は、上述したもののいずれか1つでもよく、複数でもよい。
【0031】
設定値生成部41を学習させるための教師データの作成例を示す。本実施形態では、教師データを学習用データセットとも称する。
図3は、設定値生成部41を学習させるための学習用データセットの作製例を説明する図である。
図3では、位相シフタ20及びアンテナ素子30がM個ある場合の例が示されている。なお、学習用データセットの作製は、光ビーム制御システム1に含まれない情報処理装置などによって行われ得る。
【0032】
位相シフタ制御器40は、M個のランダムなパラメータ(電圧)を作成し、位相シフタ20にそれぞれ電圧VPS_1、VPS_2、・・・、VPS_Mを印加する。電圧VPS_1、VPS_2、・・・、VPS_Mをまとめて電圧VPS_mとする。ここでは、位相シフタ制御器40は、M個のランダムなパラメータを、位相シフタ20の定格の範囲内で生成できるものであればよい。そして、位相シフタ20に電圧VPS_mが印加された場合にアンテナ素子30から放出されるビームの形状(FFP)をカメラで観測する。
【0033】
位相シフタ制御器40が生成するパラメータはランダムなものであるため、アンテナ素子30から放出されるビームの形状は整ったものではなく、おおよそ予想できないような崩れた形状となる可能性が極めて高い。そして、位相シフタ20に印加された電圧VPS_mと、アンテナ素子30から放出されるビームの形状(FFP)とをセットにしたものを1つの学習用データセットとする。この作業をN回繰り返すと、N個の学習用データセットが得られる。Nの数は、例えば数千~数万程度、またはそれ以上でありうる。
【0034】
学習用データセットの生成時に、温度計50が測定した温度T及びレーザーダイオード10の発光波長λ並びに発光強度Dを変化させてもよい。温度T及びレーザーダイオード10の発光波長λ並びに発光強度DをN回変化させることで、N個のデータセット{VPS_m、λ、T、D、FFP}nが得られる。なお、データセットはVPS_m、λ、T、D、FFPの全てで無くてもよく、VPS_m、λ、T、D、FFPの少なくともいずれかであってもよい。また、データセットの温度Tは2種類以上であってもよい。
【0035】
続いて、生成した学習用データセットを用いた設定値生成部41の学習手法を説明する。
図4は、学習用データセットを用いた設定値生成部41の学習手法を説明する図である。
【0036】
ある学習用データセットの内、λn、Tn、Dn、FFPnを設定値生成部41に入力し、設定値生成部41から位相シフタ20に設定すべき電圧値VPS_mの予測値VPS_m
’を出力させる。この予測値VPS_m
’と、当該学習用データセットにおける電圧値VPS_mとの誤差が小さくなるように設定値生成部41を学習させる。この誤差が十分小さくなるまで(例えば、誤差が所定の閾値以下となるまで)、または、又は予測値VPS_m
’と、電圧値VPS_mとが一致するように、学習用データセットを用いて設定値生成部41を学習させる。
【0037】
本実施形態に係る設定値生成部41は、このようにランダムに生成されたパラメータによるビームの形状を用いて学習されることで、出力したいビームの多様な形状に対応することができる。特定の整ったビームの形状、例えば特定の範囲だけ飛び出しているようなビームの形状ばかりを用いて設定値生成部41を学習させると、特定の整ったビームの形状にしか対応できなくなる。また、特定の整ったビームの形状とするためのパラメータを見出すための、作業者による試行錯誤も必要となり、学習のための大量のデータセットの用意が困難となる。
【0038】
これに対して本実施形態では、ランダムに生成したパラメータを用いて生成したデータセットを用いて設定値生成部41を学習させるので、特定の整ったビームの形状を用いた学習と比較してより多くの形状に対応させることが可能となる。
【0039】
なお、設定値生成部41を学習させるための学習用データセットを作製する際に、過去の設定作業時における経験的にはあり得ないパラメータは除外し、取りうる範囲においてランダムに生成されたパラメータのみを用いて学習用データセットを作製してもよい。また、整った形状のビームが放射されると過去の設定作業時において経験的に分かっているパラメータを、学習用データセットの作製時に適宜組み込んでもよい。
【0040】
図2に示した制御システム1では、光フェーズドアレイ又はOPA式の光スキャナとして機能するアンテナ素子30からのビームの形状を決定するために設定値生成部41を学習させていたが、本発明は係る例に限定されるものではない。本発明の実施形態に係る制御システム1に用いた技術は、光又は電波の帯域を含んだ電磁波を放射するフェーズドアレイ式スキャナに応用することが可能である。
【0041】
例えば、電波を照射するアンテナ素子によるビームフォームの制御にも、本発明の実施形態に係る制御システム1に用いた技術が適用できる。アンテナ素子が電波を照射する場合は、受信アンテナアレイを用いてビームフォームを検出することで、上述した説明と同様に学習用データセットを作製できる。
【0042】
以上説明したように本発明の実施形態に係る制御システム1は、複数のアンテナ素子30により放射されるビームの目標の形状である目標ビーム形状を示す信号が入力データに含まれ、複数のアンテナ素子30により目標ビーム形状が形成される設定値が出力データに含まれるよう、設定値生成部41を学習させている。
【0043】
すなわち、本発明の実施形態に係る制御システム1は、準備段階において、作業者の手作業に位相シフタ20の設定作業は必要ではなく、DNN等を用いて設定値生成部41を学習させている。従って、本発明の実施形態によれば、放射素子アレイに対する位相の制御電圧の設定作業の労力を、従来から大幅に低減した制御システム1が提供される。
【0044】
また、本実施形態に係る制御システム1は、DNN等を用いて設定値生成部41を学習させていることで、温度又は光源の波長もしくは強度などに変動があった場合であってもロバストな位相シフタ制御器40を実現することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 制御システム
10 レーザーダイオード
20 位相シフタ
30 アンテナ素子
40 位相シフタ制御器
41 設定値生成部
50 温度計