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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】乗用芝刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/64 20060101AFI20250415BHJP
   A01D 43/06 20060101ALI20250415BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
A01D34/64 C
A01D43/06
A01B63/10 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021204590
(22)【出願日】2021-12-16
(65)【公開番号】P2023089840
(43)【公開日】2023-06-28
【審査請求日】2024-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綱島 太郎
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-043831(JP,A)
【文献】特開2020-076243(JP,A)
【文献】特開平07-087821(JP,A)
【文献】特開2012-095556(JP,A)
【文献】特開2012-249537(JP,A)
【文献】米国特許第04523788(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00 - 34/90
A01D 43/06 - 43/077
A01B 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、
前記走行車体の下方に配設され、芝草を刈り取るモア装置と、
前記モア装置で刈り取られた芝草を収容するコレクタと、
前記モア装置を昇降駆動するモア昇降シリンダと、
前記モア昇降シリンダを制御するモア昇降バルブと、
前記コレクタを昇降駆動するコレクタ昇降シリンダと、
前記コレクタ昇降シリンダを制御するコレクタ昇降バルブと、
前記コレクタをダンプ駆動するダンプシリンダと、
前記ダンプシリンダを制御するダンプバルブと、
前記モア昇降バルブに接続され、前記モア装置を昇降させる場合に傾倒するモア操作連結部と、
前記コレクタ昇降バルブおよび前記ダンプバルブに接続され、前記コレクタを昇降またはダンプさせる場合に傾倒するとともに、前記コレクタを昇降させる場合の傾倒方向および該コレクタをダンプさせる場合の傾倒方向が異なる方向であるコレクタ操作連結部と、
前記モア操作連結部に対して連結するモア操作状態および前記コレクタ操作連結部に対して連結するコレクタ操作状態を切り替えて、前記モア装置または前記コレクタを駆動する場合に操作されるジョイスティックレバーと
を備える
ことを特徴とする乗用芝刈機。
【請求項2】
前記モア操作連結部、前記コレクタ操作連結部および前記ジョイスティックレバーを有するジョイスティック装置
を備え、
前記ジョイスティック装置は、
前記ジョイスティックレバーに設けられ、該ジョイスティックレバーを上下方向へ摺動させる摺動部と、
前記ジョイスティックレバーを上方へ付勢する弾性部材と、
前記モア操作連結部および前記コレクタ操作連結部に対して嵌合可能であり、前記モア装置および前記コレクタのいずれかへ操作対象を切り替えるための操作対象切替部と
を有し、
前記モア操作状態では、前記操作対象切替部が前記モア操作連結部と嵌合することで前記ジョイスティックレバーの操作に連動して前記モア操作連結部が傾倒し、
前記コレクタ操作状態では、前記操作対象切替部が前記コレクタ操作連結部と嵌合することで前記ジョイスティックレバーの操作に連動して前記コレクタ操作連結部が傾倒する
ことを特徴とする請求項1に記載の乗用芝刈機。
【請求項3】
前記モア操作連結部は、
前記ジョイスティックレバーのユニバーサルジョイントの回動支点の高さと略一致する高さのモア操作回動軸が左右方向に挿通され、前記モア操作状態では、前記モア操作回動軸まわりに回動し、
前記操作対象切替部は、
前記モア操作状態では、前記コレクタ操作連結部との嵌合が解除されて前記ジョイスティックレバーの操作を前記コレクタ操作連結部へ伝達しない
ことを特徴とする請求項2に記載の乗用芝刈機。
【請求項4】
前記ジョイスティック装置は、
前記モア操作状態において前記コレクタ操作連結部を規制するように該コレクタ操作連結部を支持するコレクタ操作連結部ステー
を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の乗用芝刈機。
【請求項5】
前記モア操作連結部は、
前後方向へ傾倒するとともに左右方向への傾倒が規制され、
前記ジョイスティック装置は、
前記ジョイスティックレバーの下方への押し下げ操作をロックするとともに該ジョイスティックレバーの前後方向への傾倒操作をロックするロック機構
を有する
ことを特徴とする請求項3または4に記載の乗用芝刈機。
【請求項6】
前記コレクタ操作連結部は、
前記コレクタ操作状態では、前後方向および左右方向へ操作可能なジョイスティックレバーの操作に連動して前記コレクタ昇降バルブおよび前記ダンプバルブを動作可能とし、
前記操作対象切替部は、
前記コレクタ操作状態では、前記モア操作連結部との嵌合が解除されて前記ジョイスティックレバーの操作を前記モア操作連結部へ伝達しない
ことを特徴とする請求項2~5のいずれか一つに記載の乗用芝刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車体に設けられ、モア装置で刈り取られた芝草など(以下、芝草という)を収容するコレクタを備え、コレクタを昇降・ダンプしてコレクタ内に溜まった芝草を排出する乗用芝刈機において、コレクタの昇降操作およびダンプ操作をスイッチで行うものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような乗用芝刈機において、モア装置が走行車体の中央部の下方に配設され、モア装置(ミッドモアともいう)のモアデッキを昇降させるためのシリンダを操作するスイッチを備えるものが知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-94773号公報
【文献】特開2004-65114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来の乗用芝刈機では、コレクタの昇降操作およびダンプ操作をスイッチで行うため、たとえば、押しボタン式の場合、スイッチの押し間違いなどの操作ミスが発生しやすいことがあった。また、モア装置(のモアデッキ)の昇降操作もスイッチで行うとなると、スイッチの種類や数が増えるため、操作がさらに煩雑になってしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、コレクタの昇降、ダンプおよびモア装置の昇降の各操作を容易に行うことができ、操作ミスを抑制することができる乗用芝刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る乗用芝刈機(1)は、走行車体(2)と、前記走行車体(2)の下方に配設され、芝草を刈り取るモア装置(3)と、前記モア装置(3)で刈り取られた芝草を収容するコレクタ(4)と、前記モア装置(3)を昇降駆動するモア昇降シリンダ(51)と、前記モア昇降シリンダ(51)を制御するモア昇降バルブ(62)と、前記コレクタ(4)を昇降駆動するコレクタ昇降シリンダ(52)と、前記コレクタ昇降シリンダ(52)を制御するコレクタ昇降バルブ(63)と、前記コレクタ(4)をダンプ駆動するダンプシリンダ(53)と、前記ダンプシリンダ(53)を制御するダンプバルブ(64)と、前記モア昇降バルブ(62)に接続され、前記モア装置(3)を昇降させる場合に傾倒するモア操作連結部(72)と、前記コレクタ昇降バルブ(63)および前記ダンプバルブ(64)に接続され、前記コレクタ(4)を昇降またはダンプさせる場合に傾倒するとともに、前記コレクタ(4)を昇降させる場合の傾倒方向および該コレクタ(4)をダンプさせる場合の傾倒方向が異なる方向であるコレクタ操作連結部(73)と、前記モア操作連結部(72)に対して連結するモア操作状態および前記コレクタ操作連結部(73)に対して連結するコレクタ操作状態を切り替えて、前記モア装置(3)または前記コレクタ(4)を駆動する場合に操作されるジョイスティックレバー(71)とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
実施形態に係る乗用芝刈機によれば、コレクタの昇降、ダンプおよびモア装置の昇降の各操作を容易に行うことができ、操作ミスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る乗用芝刈機を示す概略斜視図である。
図2図2は、バルブ駆動の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、ジョイスティック装置を示す斜視図(その1)である。
図4図4は、ジョイスティック装置を示す斜視図(その2)である。
図5図5は、ジョイスティックレバーにおけるユニバーサルジョイントの周辺を示す斜視図である。
図6図6は、操作対象切替部による操作対象切り替え動作の説明図である。
図7図7は、コレクタ操作連結部ステーを示す斜視図(その1)である。
図8図8は、コレクタ操作連結部ステーを示す斜視図(その2)である。
図9図9は、コレクタ操作連結部ステーを示す斜視図(その3)である。
図10図10は、ロック機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本願の開示する乗用芝刈機の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
<乗用芝刈機の概要>
まず、図1を参照して実施形態に係る乗用芝刈機1の概要について説明する。図1は、実施形態に係る乗用芝刈機1を示す概略斜視図である。
【0012】
また、図1を含む各図には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している。以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0013】
また、以下では、乗用芝刈機1を指して「機体」という場合がある。
【0014】
図1に示すように、乗用芝刈機1は、走行車体2と、モア装置(以下、モアという)3、モア昇降機構(図示せず)と、集草容器であるコレクタ4と、モア昇降シリンダ51(図2参照)と、コレクタ昇降シリンダ52(図2参照)と、ダンプシリンダ53(図2参照)と、バルブユニット6と、ジョイスティック装置7とを備える。
【0015】
走行車体2は、車体フレーム21と、左右一対の前輪22と、左右一対の後輪23と、操縦部24とを備える。車体フレーム21は、その前部にエンジンが載置される。車体フレーム21は、エンジンの下方において、フロントアクスルケースを介して前輪22を支持する。
【0016】
また、車体フレーム21は、その中央部に、走行変速装置としてHST(Hydro Static Transmission)を収容するミッションケースを支持し、後方へと延設されたチェーンケースを介して後輪23を支持する。
【0017】
このように、乗用芝刈機1では、エンジンの回転動力を、HSTを介して適宜変速し、ミッションケースおよびチェーンケースに収容された伝動機構を介して左右の後輪23へ伝達するとともに、ミッションケースの前部から動力を取り出して、取り出した動力を左右の前輪22へ伝達する。
【0018】
操縦部24は、操縦席、フロアステップおよびステアリングホイール(いずれも、図示せず)などを備える。操縦席は、機体の操縦者(作業者ともいう)が座るための座席である。また、操縦席の側方(たとえば、右方)には、バルブユニット6や、後述するジョイスティックレバー71を含むジョイスティック装置7などが配設される。
【0019】
フロアステップは、操縦席の前方に配設され、その前部に、ステアリングホイールを支持するステアリングコラム(図示せず)が立設される。ステアリングコラムの左右には、アクセルペダルやブレーキペダルなどの各種操作ペダル241が配設される。ステアリングホイールは、ステアリングコラムの上部に配設される。なお、ステアリングコラムには、ステアリングホイールの他、操作パネル、各種操作レバー、各種操作スイッチなどが配設される。
【0020】
また、操縦部24の後方には、機体転倒時などにおいて操縦者の安全を確保するために、機体正面視でアーチ状の安全フレーム(図示せず)が配設される。
【0021】
モア3は、走行車体2の中央部の下方に配設される。このように、乗用芝刈機1は、機体の中央部にモア3を備えた、いわゆるミッドモア型乗用芝刈機である。なお、乗用芝刈機1は、たとえば、機体の前部にモア3を備えた、いわゆるフロントモア型乗用芝刈機であってもよい。
【0022】
モア3は、モアデッキ、モータおよび刈刃(いずれも、図示せず)を備える。このように、乗用芝刈機1では、刈刃で刈り取られた芝草を、ダクトおよびシュータ(いずれも、図示せず)を介して、後述するコレクタ4へと搬送する。
【0023】
モア昇降機構は、モア3のモアデッキを昇降駆動する油圧シリンダであるモア昇降シリンダ51(図2参照)と、リフトアーム(図示せず)とを備える。モア昇降機構は、モア昇降シリンダ51からの動力をリフトアームへと伝達して、リフトアームを昇降駆動する。モア昇降機構は、リフトアームを駆動することで、モア3のモアデッキを昇降する。
【0024】
コレクタ4は、走行車体2の後部に搭載され、モア3で刈り取られた芝草を収容する。コレクタ4は、たとえば、直方体の箱状であり、その前後、左右の側面および上面が、通気穴を有するプレート部材で構成される。コレクタ4の前面には、シュータと連通された、芝草の取入口が形成される。
【0025】
また、コレクタ4は、たとえば、コレクタ4の後面および上面が一体となって構成された蓋部(図示せず)を備える。蓋部は、コレクタ4のダンプと連動して、コレクタ4の本体から離れて、コレクタ4の後部を広く開放するように構成される。
【0026】
また、安全フレームの上部には、後方へと延伸しているリンクアームが、上下に並んで回動可能に支持される。リンクアーム(図示せず)は、その先端部同士が上下方向のダンプ用フレーム(図示せず)と接続されて左右一対の4辺リンク機構が構成される。
【0027】
コレクタ昇降シリンダ52(図2参照)は、コレクタ4を昇降駆動する油圧シリンダであり、下側のリンクアームと安全フレームの下端部との間に配設される。ダンプシリンダ53(図2参照)は、コレクタ4をダンプ駆動する油圧シリンダであり、コレクタ4とダンプ用フレームとの間に配設される。なお、コレクタ4は、ダンプ用フレームに設けられた左右方向の回動軸(図示せず)に回動可能に取り付けられる。
【0028】
このように、乗用芝刈機1では、コレクタ昇降シリンダ52のロッドを伸長させると、リンクアームが上方へと回動してコレクタ4を上昇させ、コレクタ昇降シリンダ52のロッドを短縮させると、リンクアームが下方へと回動してコレクタ4を下降させる。
【0029】
また、乗用芝刈機1では、ダンプシリンダ53のロッドを伸長させると、コレクタ4が回動軸を中心に略水平状態から後方へと回動してダンプ状態となり、ダンプシリンダ53のロッドを短縮させると、コレクタ4がダンプ状態から略水平状態へと復帰する。
【0030】
なお、乗用芝刈機1では、たとえば、上記した4辺リンク機構を構成する下側のリンクアームの基部に、コレクタ4の昇降位置を検出するポテンショメータなどの昇降位置センサが配設され、昇降位置センサから、たとえば、操縦部24の近傍に配設される制御装置(図示せず)へとコレクタ4の昇降位置情報を出力するように構成されてもよい。
【0031】
バルブユニット6は、たとえば、車体フレーム21上における右側部に配設される。バルブユニット6は、バルブユニットケース61と、モア昇降バルブ62と、コレクタ昇降バルブ63と、ダンプバルブ64とを備える。
【0032】
バルブユニットケース61は、その内部に、モア昇降バルブ62、コレクタ昇降バルブ63およびダンプバルブ64を収容している。モア昇降バルブ62は、モア3のモアデッキを昇降するためにモア昇降シリンダ51を駆動制御する。コレクタ昇降バルブ63は、コレクタ4を昇降するためにコレクタ昇降シリンダ52を駆動制御する。ダンプバルブ64は、コレクタ4をダンプするためにダンプシリンダ53を駆動制御する。
【0033】
ジョイスティック装置7は、バルブユニット6の近傍(たとえば、バルブユニット6の直上)に配設される。ジョイスティック装置7は、操作レバーであるジョイスティックレバー71を備える。ジョイスティック装置7は、ジョイスティックレバー71の前後方向および左右方向への傾倒によって、モア昇降バルブ62、コレクタ昇降バルブ63およびダンプバルブ64の駆動を可能とする。なお、ジョイスティック装置7の構成については、図3以降を用いて後述する。
【0034】
<バルブ駆動の構成例>
次に、図2を参照して、モア昇降バルブ62、コレクタ昇降バルブ63およびダンプバルブ64を含むバルブ駆動の構成例について説明する。図2は、バルブ駆動の構成例を示すブロック図である。
【0035】
図2に示すように、ジョイスティック装置7のジョイスティックレバー71は、バルブユニット6のモア昇降バルブ62、コレクタ昇降バルブ63およびダンプバルブ64のそれぞれにリンク機構723,733a,733b(いずれも、図3参照)を介して接続される。
【0036】
後述するモア操作状態では、ジョイスティックレバー71を、たとえば、前後方向へ傾倒させることで、モア昇降バルブ駆動部724(図3参照)を介してモア昇降バルブ62を機械的に駆動して、モア昇降シリンダ51を駆動する。この場合、ジョイスティックレバー71を、たとえば、前方へ傾倒させると、モア3(図1参照)のモアデッキが上昇し、たとえば、後方へ傾倒させると、モアデッキが下降する。
【0037】
なお、ジョイスティックレバー71が操作される場合、ジョイスティックレバー71の操作量に応じて、モアデッキの昇降速度が可変する。すなわち、ジョイスティックレバー71を前後のいずれかへと大きく操作するほど、モアデッキの昇降速度が高速となり、ジョイスティックレバー71を小さく操作するほど、モアデッキの昇降速度が低速となる。
【0038】
後述するコレクタ操作状態では、ジョイスティックレバー71を、たとえば、前後方向へ傾倒させることで、コレクタ昇降バルブ駆動部734a(図3参照)を介してコレクタ昇降バルブ63を機械的に駆動して、コレクタ昇降シリンダ52を駆動する。この場合、ジョイスティックレバー71を、たとえば、前方へ傾倒させると、コレクタ4(図1参照)が上昇し、後方へ傾倒させると、コレクタ4が下降する。
【0039】
また、後述するコレクタ操作状態では、ジョイスティックレバー71を、たとえば、左右方向へ傾倒させることで、ダンプバルブ駆動部734b(図3参照)を介してダンプバルブ64を機械的に駆動して、ダンプシリンダ53を駆動する。この場合、ジョイスティックレバー71を、たとえば、左方へ傾倒させると、コレクタ4がダンプし、たとえば、右方へ傾倒させると、コレクタ4がダンプ状態から元の状態へと復帰する。
【0040】
このように、ジョイスティックレバー71は、コレクタ4を昇降させる場合の傾倒方向と、コレクタ4をダンプさせる場合の傾倒方向とが異なる方向である。
【0041】
なお、ジョイスティックレバー71が操作される場合、ジョイスティックレバー71の操作量に応じて、コレクタ4の昇降速度およびダンプ(または、ダンプからの復帰)速度が可変する。すなわち、ジョイスティックレバー71を前後左右のいずれかへと大きく操作するほど、コレクタ4の昇降速度およびダンプ(または、ダンプからの復帰)速度が高速となり、ジョイスティックレバー71を小さく操作するほど、コレクタ4の昇降速度およびダンプ(または、ダンプからの復帰)速度が低速となる。
【0042】
<ジョイスティック装置>
次に、図3~10を参照してジョイスティック装置7について説明する。図3および4は、ジョイスティック装置7を示す斜視図である。なお、図3には、モア操作状態のジョイスティック装置7を示し、図4には、コレクタ操作状態のジョイスティック装置7を示している。図5は、ジョイスティックレバー71におけるユニバーサルジョイント712の周辺を示す斜視図である。
【0043】
図3~5に示すように、ジョイスティック装置7は、上記したジョイスティックレバー71と、摺動部713と、弾性部材714と、モア操作連結部72と、コレクタ操作連結部73と、操作対象切替部74と、コレクタ操作連結部ステー75と、ロック機構76とを備える。
【0044】
ジョイスティックレバー71は、上記したように、モア3(図1参照)のモアデッキの昇降、コレクタ4(図1参照)の昇降およびダンプを行う場合に、たとえば、機体の操縦者によって操作される操作レバーである。ジョイスティックレバー71は、後述するように、前後方向および左右方向に傾倒可能であるとともに、上下方向に摺動可能である。
【0045】
ジョイスティックレバー71は、レバー部711と、ユニバーサルジョイント712(図5参照)とを備える。レバー部711は、ロッド状の部材であり、その上端部には、グリップ(図示せず)が設けられる。なお、グリップは、操縦者がレバー部711(ジョイスティックレバー71)を操作する場合に手で握る部分となる。
【0046】
レバー部711は、後述するリンク機構723,733a,733bを介して、モア昇降バルブ駆動部724、コレクタ昇降バルブ駆動部734aおよびダンプバルブ駆動部734bに接続される。
【0047】
なお、モア昇降バルブ駆動部724は、バルブユニット6のバルブユニットケース61に収容されたモア昇降バルブ62に接続され、モア昇降バルブ62を駆動する。コレクタ昇降バルブ駆動部734aは、バルブユニットケース61に収容されたコレクタ昇降バルブ63に接続され、コレクタ昇降バルブ63を駆動する。ダンプバルブ駆動部734bは、バルブユニットケース61に収容されたダンプバルブ64に接続され、ダンプバルブ64を駆動する。
【0048】
ユニバーサルジョイント712は、ジョイスティックレバー71の可動部であり、たとえば、レバー部711の直立状態から、回動支点Oを中心として同一平面(たとえば、略水平面となるX-Y平面)内における360°傾倒を可能とする。なお、レバー部711(ジョイスティックレバー71)は、実際には後述するモア操作連結部72およびコレクタ操作連結部73によって傾倒方向が規制されており、前後方向および左右方向へ傾倒可能となる。
【0049】
摺動部713は、パイプ状の部材であり、レバー部711が挿通される。摺動部713は、レバー部711の外周部に配設される。摺動部713は、レバー部711に対して、このレバー部711の軸方向へ力(たとえば、操縦者による押し下げ力Fや後述する弾性部材714の付勢力)が付与されることで、レバー部711を上下方向へ摺動させる。なお、レバー部711の摺動に伴い、ユニバーサルジョイント712も上下方向に沿って移動する。
【0050】
弾性部材714は、たとえば、圧縮コイルばねであり、摺動部713の内部に配設される。弾性部材714は、ジョイスティックレバー71を上方へ付勢している。このため、ジョイスティックレバー71へ押し下げ力Fを付与する場合、操縦者は、弾性部材714の付勢力に抗しながらジョイスティックレバー71を下方へ押し下げる。
【0051】
モア操作連結部72は、バルブユニットケース61に収容されたモア昇降バルブ62に接続され、モア3(図1参照)のモアデッキを昇降させる場合に傾倒する部品である。モア操作連結部72は、本体部721と、回動部722と、リンク機構723と、モア昇降バルブ駆動部724とを備える。本体部721は、正面視(または、背面視)においてコ字状となるように屈曲された板状の部材である。本体部721は、後述する操作対象切替部74と嵌合する嵌合部721aを有する。嵌合部721aは、本体部721の上面に形成された孔部である。
【0052】
回動部722は、本体部721の左右の両側部に設けられる。回動部722は、モア操作回動軸725に対して左右方向に挿通され、本体部721を、モア操作回動軸725まわりに回動可能とすることで、前後方向へ回動(傾倒)可能とする。
【0053】
リンク機構723は、一端部が本体部721の一方の側板(たとえば、右側板)に連結され、他端部がモア昇降バルブ駆動部724に連結される。リンク機構723は、本体部721の前後方向への傾倒による駆動力をモア昇降バルブ駆動部724へ伝達する。
【0054】
コレクタ操作連結部73は、バルブユニットケース61に収容されたコレクタ昇降バルブ63およびダンプバルブ64に接続され、コレクタ4(図1参照)を昇降させる場合またはコレクタ4をダンプさせる場合に傾倒する部品である。コレクタ操作連結部73は、本体部731と、ステー部732a,732bと、リンク機構733a,733bと、コレクタ昇降バルブ駆動部734aと、ダンプバルブ駆動部734bとを備える。
【0055】
本体部731は、円筒状の部材であり、後述する操作対象切替部74と嵌合する嵌合部731aを有する。嵌合部731aは、本体部731の内部(円筒の内部)である。
【0056】
ステー部732a,732bは、たとえば、板状の部材であり、本体部731の外周面に設けられる。ステー部732a,732bは、90°の位相差を有する。すなわち、ステー部732a,732bは、平面視で互いに90°ずれるように配設される。
【0057】
リンク機構733aは、一端部がステー部732aに連結され、他端部がコレクタ昇降バルブ駆動部734aに連結される。リンク機構733aは、本体部731の前後方向への傾倒による駆動力をコレクタ昇降バルブ駆動部734aへ伝達する。リンク機構733bは、一端部がステー部732bに連結され、他端部がダンプバルブ駆動部734bに連結される。リンク機構733bは、本体部731の左右方向への傾倒による駆動力をダンプバルブ駆動部734bへ伝達する。
【0058】
すなわち、コレクタ操作連結部73は、コレクタ4を昇降させる場合には前後方向へ傾倒し、コレクタ4をダンプさせる場合には左右方向へ傾倒する。このように、コレクタ操作連結部73は、コレクタ4を昇降させる場合の傾倒方向とコレクタ4をダンプさせる場合の傾倒方向とが異なる方向である。
【0059】
操作対象切替部74は、円柱状の部材であり、ジョイスティックレバー71のレバー部711に設けられる。操作対象切替部74は、モア操作連結部72の本体部721とコレクタ操作連結部73の本体部731との間に配設される。操作対象切替部74は、第1嵌入部741と、第2嵌入部742とを備える。
【0060】
第1嵌入部741は、モア操作連結部72の嵌合部721aと嵌合可能な径を有する円柱状の部材である。第2嵌入部742は、第1嵌入部741の下方に設けられ、コレクタ操作連結部73の嵌合部731aと嵌合可能な径を有するとともに、第1嵌入部よりも大径な円柱状の部材である。なお、第1嵌入部741および第2嵌入部742は、同軸で設けられるとともに、一体形成される。また、第1嵌入部741の上端縁部には、嵌合部721aへ円滑に嵌入するためにテーパ加工が施されている。
【0061】
図3に示すように、操作対象切替部74は、第1嵌入部741がモア操作連結部72の嵌合部721aと嵌合することで、モア操作連結部72の駆動操作を可能とする。図4に示すように、操作対象切替部74は、第2嵌入部742がコレクタ操作連結部73の嵌合部731aと嵌合することで、コレクタ操作連結部73の駆動操作を可能とする。このように、操作対象切替部74は、モア3とコレクタ4とのいずれかへ操作対象を切り替える。
【0062】
図3に示すように、操作対象切替部74の第1嵌入部741がモア操作連結部72の嵌合部721aと嵌合され、モア操作連結部72の駆動操作が可能な状態(モア操作状態)では、ジョイスティックレバー71の前後方向への操作に連動してモア操作連結部72が傾倒可能となる。
【0063】
図4に示すように、操作対象切替部74の第2嵌入部742がコレクタ操作連結部73の嵌合部731aと嵌合され、コレクタ操作連結部73の駆動操作が可能な状態(コレクタ操作状態)では、ジョイスティックレバー71の前後方向および左右方向の操作に連動してコレクタ操作連結部73が傾倒可能となる。
【0064】
図6は、操作対象切替部74による操作対象切り替え動作の説明図である。なお、図6には、ジョイスティック装置7を後方から見た場合の模式的な断面図(背断面図)を示している。また、図6において、図中の右側には、モア操作状態を示し、図中の左側には、コレクタ操作状態を示している。
【0065】
図6(図中の右側)に示すように、操作対象切替部74は、レバー部711が操縦者によって押し下げられない場合、弾性部材714(図3参照)によって上方へと付勢され、モア操作状態となる。操作対象切替部74は、モア操作状態では、第1嵌入部741がモア操作連結部72の嵌合部721aと嵌合され、モア操作連結部72の前後方向への傾倒を可能とする。
【0066】
また、操作対象切替部74は、モア操作状態では、コレクタ操作連結部73との嵌合が解除されているため、レバー部711の操作をコレクタ操作連結部73へ伝達しない。
【0067】
操作対象切替部74は、モア操作状態では、レバー部711の前後方向への傾倒操作に連動してモア操作連結部72の前後方向への傾倒を可能とする。モア操作連結部72が前後方向へ傾倒することで、モア昇降バルブ62を駆動してモア昇降シリンダ51(図2参照)が駆動し、モア3(図1参照)のモアデッキが昇降する。
【0068】
図6(図中の左側)に示すように、操作対象切替部74は、レバー部711が操縦者によって所定の押し下げ力Fで押し下げられると、コレクタ操作状態となる。操作対象切替部74は、コレクタ操作状態では、第2嵌入部742がコレクタ操作連結部73の嵌合部731aと嵌合され、コレクタ操作連結部73の前後方向および左右方向への傾倒を可能とする。なお、この場合、レバー部711とモア操作連結部72の嵌合部721aとの間に隙間(遊び)があることで、レバー部711の傾倒が可能となる。
【0069】
また、操作対象切替部74は、コレクタ操作状態では、モア操作連結部72との嵌合が解除されているため、レバー部711の操作をモア操作連結部72へ伝達しない。
【0070】
操作対象切替部74は、コレクタ操作状態では、レバー部711の前後方向への傾倒操作に連動してコレクタ操作連結部73の前後方向への傾倒を可能とする。コレクタ操作連結部73が前後方向へ傾倒することで、コレクタ昇降バルブ63を駆動してコレクタ昇降シリンダ52(図2参照)が駆動し、コレクタ4(図1参照)が昇降する。
【0071】
また、操作対象切替部74は、コレクタ操作状態では、レバー部711の左右方向への傾倒操作に連動してコレクタ操作連結部73の左右方向への傾倒を可能とする。コレクタ操作連結部73が左右方向へ傾倒することで、ダンプバルブ64を駆動してダンプシリンダ53(図2参照)が駆動し、コレクタ4が昇降する。
【0072】
このような構成によれば、ジョイスティックレバー71は、モア操作連結部72に対して連結するモア操作状態とコレクタ操作連結部73に対して連結するコレクタ操作状態とを切り替え可能であり、ジョイスティックレバー71の操作(傾倒)方向によってコレクタ4の昇降操作、ダンプ操作およびモア3の昇降操作を区別することができるため、コレクタ4の昇降、ダンプおよびモア3の昇降を1つのジョイスティックレバー71で操作することが可能となる。これにより、コレクタ4の昇降操作、ダンプ操作およびモア3のモアデッキの昇降操作を容易に行うことができ、操作ミスを抑制することができる。
【0073】
また、モア操作状態では、操作対象切替部74がモア操作連結部72と嵌合して、ジョイスティックレバー71の操作によるモア操作連結部72の傾倒が可能となり、コレクタ操作状態では、操作対象切替部74がコレクタ操作連結部73と嵌合して、ジョイスティックレバー71の操作によるコレクタ操作連結部73の傾倒が可能となるため、コレクタ4の昇降、ダンプおよびモア3の昇降に対する1つのジョイスティックレバー71による操作が可能となる。これにより、コレクタ4の昇降操作、ダンプ操作およびモア3のモアデッキの昇降操作を容易に行うことができ、操作ミスを抑制することができる。
【0074】
また、モア操作状態では、ジョイスティックレバー71の操作がコレクタ操作連結部73へ伝達されないため、操作対象切替部74による操作対象の切り替えが可能となる。また、モア3のモアデッキの誤動作を抑制することができる。また、コレクタ操作状態では、ジョイスティックレバー71の操作がモア操作連結部72へ伝達されないため、コレクタ4の誤動作を抑制することができる。
【0075】
図3~5に戻り、図3および5に示すように、コレクタ操作連結部ステー75は、レバー部711の所定位置に配設される。コレクタ操作連結部ステー75は、円筒状の部材であり、モア操作状態では、コレクタ操作連結部ステー75の内部(円筒の内部)にコレクタ操作連結部73の本体部731が嵌入される。コレクタ操作連結部ステー75は、モア操作状態では、コレクタ操作連結部73の本体部731を下方から支持する。このように、コレクタ操作連結部ステー75は、モア操作状態において、コレクタ操作連結部73の位置を安定させるとともに、コレクタ操作連結部73を規制する。なお、コレクタ操作連結部ステー75については、図7~9を用いて後述する。
【0076】
図3および4に示すように、ロック機構76は、操縦者によるレバー部711(ジョイスティックレバー71)の下方への押し下げ操作をロックする。また、ロック機構76は、操縦者によるレバー部711(ジョイスティックレバー71)の前後方向への傾倒操作をロックする。なお、ロック機構76については、図10を用いて後述する。
【0077】
<コレクタ操作連結部ステー>
図7~9は、コレクタ操作連結部ステー75を示す斜視図である。なお、図7~9はいずれも、ジョイスティック装置7を後方から見た場合の斜視図であり、図7および8には、モア操作状態を示し、図9には、コレクタ操作状態を示している。
【0078】
図7および8に示すように、コレクタ操作連結部ステー75は、モア操作連結部72の嵌合部721aに対して操作対象切替部74の第1嵌入部741が嵌入されたモア操作状態では、コレクタ操作連結部ステー75の内部(円筒の内部)にコレクタ操作連結部73の本体部731が嵌入される。このため、コレクタ操作連結部73の本体部731は、モア操作状態では、コレクタ操作連結部ステー75によって下方から支持される。なお、ジョイスティックレバー71のレバー部711は、モア操作状態では、上下方向へ摺動可能となるものの、左右方向を含む略水平面内の傾倒が規制される。
【0079】
一方、図9に示すように、コレクタ操作連結部ステー75は、コレクタ操作連結部73の嵌合部731aに対して操作対象切替部74の第2嵌入部742が嵌入されたモア操作状態では、レバー部711の下方への移動に連動して、コレクタ操作連結部73の嵌合部731aから逃げるように下方へ後退する。このため、コレクタ操作連結部73は、コレクタ操作状態では、前後方向および左右方向へ傾倒可能である。
【0080】
このような構成によれば、操作対象切替部74のコレクタ操作連結部73との嵌合が解除されてコレクタ操作連結部73がフリー状態となっても、コレクタ操作連結部73の位置を所定位置に保持することができる。これにより、モア3(のモアデッキ)の操作時にコレクタ4が動作(誤動作)することがなくなるため、コレクタ4の誤動作を抑制することができる。
【0081】
<ロック機構>
図10は、ロック機構76を示す斜視図である。なお、図10には、ジョイスティック装置7を前方から見た場合を示している。
【0082】
図10に示すように、ロック機構76は、ジョイスティック装置7の前面に配設される。ロック機構76は、操作レバー761と、ロックピン763と、レバーガイド部764と、ピンガイド部765とを備える。操作レバー761は、ジョイスティック装置7の前面を形成する基部77上に固定された回動部762を回動中心として、前後方向へと回動可能に構成される。なお、操作レバー761は、その上端部にグリップ761aを備える。
【0083】
ロックピン763は、操作レバー761の下端部に設けられる。ロックピン763は、操作レバー761に近い側となる基端部763a側が操作レバー761に対して直交する方向(左右方向)へと延在し、中途部763bが基端部763aと直交する方向へと延在し、操作レバー761から遠い側となる先端部763c側が基端部763a側と平行に延在している。ロックピン763の先端部763cは、レバー部711に形成され、レバー部711を、このレバー部711の軸方向と直交する方向(左右方向)に貫通している挿通孔711aに挿通可能である。
【0084】
レバーガイド部764は、ガイド溝(第1ガイド溝764a、第2ガイド溝764b)が形成された板状の部材である。レバーガイド部764は、基部77の上端部に設けられる。レバーガイド部764は、ガイド溝(第1ガイド溝764a、第2ガイド溝764b)に操作レバー761を挿通させた状態で、この操作レバー761の下端部の近傍に配置される。
【0085】
第1ガイド溝764aは、操作レバー761に対して直交する方向(左右方向)へと延在している。第1ガイド溝764aは、この第1ガイド溝764aに沿って操作レバー761が移動することで、ロックピン763を左右方向へとスライド移動させる。
【0086】
第2ガイド溝764bは、第1ガイド溝764aに対して、第1ガイド溝764aの延在方向と直交する方向(前後方向)に連通している。また、第2ガイド溝764bは、第1ガイド溝764aと平行に延在している。また、第2ガイド溝764bは、第1ガイド溝764aよりも延在方向に短い。第2ガイド溝764bは、操作レバー761が溝内に嵌ることで、ロックピン763を保持する。
【0087】
ピンガイド部765は、第1ガイド765aと、第2ガイド765bとを備える。第1ガイド765aは、基部77上に固定され、ロックピン763の基端部763a側の回転および左右方向へのスライド移動をガイドする。第2ガイド765bは、モア操作連結部72の本体部721上に固定され、ロックピン763の先端部763c側の左右方向へのスライド移動をガイドする。
【0088】
ロック機構76は、モア操作状態を保持しつつ各操作をロックする。すなわち、ロック機構76では、ロックピン763の先端部763cをレバー部711の挿通孔711aに左右方向(右方)から挿通させることで、レバー部711の押し下げ操作をロックするとともに、レバー部711の前後方向への傾倒操作をロックする。なお、ロック機構76では、操作レバー761が第2ガイド溝764bに保持されることで、操作レバー761の回動およびスライド移動を規制する。
【0089】
このような構成によれば、ロック機構76によって、ジョイスティックレバー71の下方への押し下げ操作と前後方向への傾倒操作とがロックされる。すなわち、ロック機構76によって、コレクタ4の昇降およびダンプ操作がロックされる。この場合、モア操作連結部72の前後方向への傾倒が規制されているため、モア3(図1参照)のモアデッキの昇降操作がロックされる。これにより、ジョイスティックレバー71による、コレクタ4の昇降操作、ダンプ操作およびモア3(のモアデッキ)の昇降操作がロック可能となり、操作ミスを抑制することができる。
【0090】
上述してきた実施形態により、以下の乗用芝刈機1が実現される。
【0091】
(1)走行車体2と、走行車体2の下方に配設され、芝草を刈り取るモア装置(モア)3と、モア装置3で刈り取られた芝草を収容するコレクタ4と、モア装置3を昇降駆動するモア昇降シリンダ51と、モア昇降シリンダ51を制御するモア昇降バルブ62と、コレクタ4を昇降駆動するコレクタ昇降シリンダ52と、コレクタ昇降シリンダ52を制御するコレクタ昇降バルブ63と、コレクタ4をダンプ駆動するダンプシリンダ53と、ダンプシリンダ53を制御するダンプバルブ64と、モア昇降バルブ62に接続され、モア装置3を昇降させる場合に傾倒するモア操作連結部72と、コレクタ昇降バルブ63およびダンプバルブ64に接続され、コレクタ4を昇降またはダンプさせる場合に傾倒するとともに、コレクタ4を昇降させる場合の傾倒方向およびコレクタ4をダンプさせる場合の傾倒方向が異なる方向であるコレクタ操作連結部73と、モア操作連結部72に対して連結するモア操作状態およびコレクタ操作連結部73に対して連結するコレクタ操作状態を切り替えて、モア装置3またはコレクタ4を駆動する場合に操作されるジョイスティックレバー71とを備える、乗用芝刈機1。
【0092】
このような乗用芝刈機1によれば、操作レバーであるジョイスティックレバー71の操作(傾倒)方向によってコレクタ4の昇降操作、ダンプ操作およびモア装置3の昇降操作を区別することができるため、コレクタ4の昇降、ダンプおよびモア装置3の昇降を1つのジョイスティックレバー71で操作することが可能となる。これにより、コレクタ4の昇降操作、ダンプ操作およびモア装置3(のモアデッキ)の昇降操作を容易に行うことができ、操作ミスを抑制することができる。
【0093】
(2)上記(1)において、モア操作連結部72、コレクタ操作連結部73およびジョイスティックレバー71を有するジョイスティック装置7を備え、ジョイスティック装置7は、ジョイスティックレバー71に設けられ、ジョイスティックレバー71を上下方向へ摺動させる摺動部713と、ジョイスティックレバー71を上方へ付勢する弾性部材714と、モア操作連結部72およびコレクタ操作連結部73に対して嵌合可能であり、モア装置3およびコレクタ4のいずれかへ操作対象を切り替えるための操作対象切替部74とを有し、モア操作状態では、操作対象切替部74がモア操作連結部72と嵌合することでジョイスティックレバー71の操作に連動してモア操作連結部72が傾倒し、コレクタ操作状態では、操作対象切替部74がコレクタ操作連結部73と嵌合することでジョイスティックレバー71の操作に連動してコレクタ操作連結部73が傾倒する、乗用芝刈機1。
【0094】
このような乗用芝刈機1によれば、上記(1)の効果に加えて、モア操作状態では、操作対象切替部74がモア操作連結部72と嵌合して、ジョイスティックレバー71の操作によるモア操作連結部72の傾倒が可能となり、コレクタ操作状態では、操作対象切替部74がコレクタ操作連結部73と嵌合して、ジョイスティックレバー71の操作によるコレクタ操作連結部73の傾倒が可能となるため、コレクタ4の昇降、ダンプおよびモア装置3の昇降に対する1つのジョイスティックレバー71による操作が可能となる。これにより、コレクタ4の昇降操作、ダンプ操作およびモア装置3(のモアデッキ)の昇降操作を容易に行うことができ、操作ミスを抑制することができる。
【0095】
(3)上記(2)において、モア操作連結部72は、ジョイスティックレバー71のユニバーサルジョイント712の回動支点Oの高さと略一致する高さのモア操作回動軸725が左右方向に挿通され、モア操作状態では、モア操作回動軸725まわりに回動し、操作対象切替部74は、モア操作状態では、コレクタ操作連結部73との嵌合が解除されてジョイスティックレバー71の操作をコレクタ操作連結部73へ伝達しない、乗用芝刈機1。
【0096】
このような乗用芝刈機1によれば、上記(2)の効果に加えて、モア操作状態では、ジョイスティックレバー71の操作がコレクタ操作連結部73へ伝達されないため、すなわち、ジョイスティックレバー71の操作が、モア操作連結部72には伝達され、コレクタ操作連結部73には伝達されないため、操作対象切替部74による操作対象の切り替えが可能となる。また、モア装置3(のモアデッキ)の誤動作を抑制することができる。
【0097】
(4)上記(3)において、ジョイスティック装置7は、モア操作状態においてコレクタ操作連結部73を規制するようにコレクタ操作連結部73を支持するコレクタ操作連結部ステー75を有する、乗用芝刈機1。
【0098】
このような乗用芝刈機1によれば、上記(3)の効果に加えて、操作対象切替部74のコレクタ操作連結部73との嵌合が解除されてコレクタ操作連結部73がフリー状態となっても、コレクタ操作連結部73を所定位置に保持することができる。これにより、モア装置3(のモアデッキ)の操作時にコレクタ4が動作(誤動作)することがなくなるため、コレクタ4の誤動作を抑制することができる。
【0099】
(5)上記(3)または(4)において、モア操作連結部72は、前後方向へ傾倒するとともに左右方向への傾倒が規制され、ジョイスティック装置7は、ジョイスティックレバー71の下方への押し下げ操作をロックするとともにジョイスティックレバー71の前後方向への傾倒操作をロックするロック機構76を有する、乗用芝刈機1。
【0100】
このような乗用芝刈機1によれば、上記(3)または(4)の効果に加えて、ロック機構76によって、ジョイスティックレバー71の下方への押し下げ操作と前後方向への傾倒操作とがロックされる。すなわち、ロック機構76によって、コレクタ4の昇降およびダンプ操作がロックされる。この場合、モア操作連結部72の前後方向への傾倒が規制されているため、モア装置3(のモアデッキ)の昇降操作がロックされる。これにより、ジョイスティックレバー71による、コレクタ4の昇降操作、ダンプ操作およびモア装置3(のモアデッキ)の昇降操作がロック可能となり、操作ミスを抑制することができる。
【0101】
(6)上記(2)~(5)のいずれかにおいて、コレクタ操作連結部73は、コレクタ操作状態では、前後方向および左右方向へ操作可能なジョイスティックレバー71の操作に連動してコレクタ昇降バルブ63およびダンプバルブ64を動作可能とし、操作対象切替部74は、コレクタ操作状態では、モア操作連結部72との嵌合が解除されてジョイスティックレバー71の操作をモア操作連結部72へ伝達しない、乗用芝刈機1。
【0102】
このような乗用芝刈機1によれば、上記(2)~(5)のいずれかの効果に加えて、コレクタ操作状態では、ジョイスティックレバー71の操作がモア操作連結部72へ伝達されないため、すなわち、ジョイスティックレバー71の操作が、コレクタ操作連結部73には伝達され、モア操作連結部72には伝達されないため、コレクタ4の誤動作を抑制することができる。
【0103】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 乗用芝刈機
2 走行車体
3 モア装置(モア)
4 コレクタ
7 ジョイスティック装置
51 モア昇降シリンダ
52 コレクタ昇降シリンダ
53 ダンプシリンダ
62 モア昇降バルブ
63 コレクタ昇降バルブ
64 ダンプバルブ
71 ジョイスティックレバー
72 モア操作連結部
73 コレクタ操作連結部
74 操作対象切替部
75 コレクタ操作連結部ステー
76 ロック機構
712 ユニバーサルジョイント
713 摺動部
714 弾性部材
725 モア操作回動軸
回動支点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10