IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-冷凍サイクル装置 図1
  • 特許-冷凍サイクル装置 図2
  • 特許-冷凍サイクル装置 図3
  • 特許-冷凍サイクル装置 図4
  • 特許-冷凍サイクル装置 図5
  • 特許-冷凍サイクル装置 図6
  • 特許-冷凍サイクル装置 図7
  • 特許-冷凍サイクル装置 図8
  • 特許-冷凍サイクル装置 図9
  • 特許-冷凍サイクル装置 図10
  • 特許-冷凍サイクル装置 図11
  • 特許-冷凍サイクル装置 図12
  • 特許-冷凍サイクル装置 図13
  • 特許-冷凍サイクル装置 図14
  • 特許-冷凍サイクル装置 図15
  • 特許-冷凍サイクル装置 図16
  • 特許-冷凍サイクル装置 図17
  • 特許-冷凍サイクル装置 図18
  • 特許-冷凍サイクル装置 図19
  • 特許-冷凍サイクル装置 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 5/02 20060101AFI20250415BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
F25B5/02 530Z
F25B1/00 399Y
F25B1/00 304H
F25B1/00 331Z
F25B1/00 304W
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022044794
(22)【出願日】2022-03-21
(65)【公開番号】P2023138890
(43)【公開日】2023-10-03
【審査請求日】2024-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 順基
(72)【発明者】
【氏名】岡村 徹
(72)【発明者】
【氏名】牧本 直也
(72)【発明者】
【氏名】河野 紘明
(72)【発明者】
【氏名】武藤 騎士
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吉毅
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044353(WO,A1)
【文献】特開2021-105457(JP,A)
【文献】特開平06-199127(JP,A)
【文献】特開2021-133796(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0061471(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00 ~ 49/04
B60H 1/00 ~ 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクル装置であって、
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(12)と、
前記放熱器を通過した冷媒を減圧させる第1減圧部(15)と、
前記第1減圧部で減圧された冷媒を、空調対象空間へ送風する送風空気と熱交換させて蒸発させる第1蒸発器(16、16A)と、
前記放熱器の下流側において前記第1減圧部と並列となるように配置され、前記放熱器を通過した冷媒を減圧させる第2減圧部(18)と、
前記第2減圧部で減圧された冷媒を、発熱機器(63)または外部空間の少なくとも一方から吸熱する吸熱媒体と熱交換させて蒸発させる第2蒸発器(19)と、を備え、
前記圧縮機における冷媒の吸入側には、前記第1蒸発器を通過した冷媒と前記第2蒸発器を通過した冷媒とを合流させる冷媒合流部(20)が設けられ、
前記第1減圧部は、前記第1蒸発器と前記冷媒合流部との間を流れる冷媒の過熱度に相関性を有する第1物理量に基づいて、前記第1蒸発器と前記冷媒合流部との間の冷媒の過熱度を第1目標過熱度となるように調整し、
前記第2減圧部は、前記冷媒合流部と前記圧縮機との間を流れる冷媒の過熱度に相関性を有する第2物理量に基づいて、前記冷媒合流部と前記圧縮機との間の冷媒の過熱度を第2目標過熱度となるように調整
前記第2目標過熱度は、過熱度を有するガス冷媒が前記圧縮機に吸入されるように、正の値に設定される、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記第1減圧部および前記第2減圧部の少なくとも一方の上流を流れる冷媒が通過する高圧流路部(211)と、前記第1蒸発器および前記第2蒸発器の少なくとも一方の下流を流れる冷媒が通過する低圧流路部(212)と、を有し、前記高圧流路部を通過する冷媒と前記低圧流路部を通過する冷媒とを熱交換させる内部熱交換器(21)を備え、
前記第1蒸発器と前記冷媒合流部との間には、前記第1物理量を検知する第1物理量検知部(103)が配置され、
前記冷媒合流部と前記圧縮機との間には、前記第2物理量を検知する第2物理量検知部(102)が配置され、
前記低圧流路部は、前記第1物理量検知部および前記第2蒸発器の一方から前記第2物理量検知部までの間の冷媒経路に配置される、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記低圧流路部は、前記第1物理量検知部から前記第2物理量検知部までの間の冷媒経路に配置される、請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記第1物理量検知部は、前記第1蒸発器の冷媒出口の直後に配置されている、請求項2または3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記第1蒸発器の下流側に配置されて、前記第1蒸発器における冷媒の蒸発圧力を調整する圧力調整部(17)を備え、
前記圧力調整部は、前記第1物理量の検知箇所の下流側に配置されている、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記第1蒸発器の下流側に配置されて、前記第1蒸発器における冷媒の蒸発圧力を調整する圧力調整部(17)を備え、
前記低圧流路部は、前記第1蒸発器の下流側に設けられ、
前記圧力調整部は、前記第1物理量検知部から前記低圧流路部までの間の冷媒経路に配置されている、請求項3または4に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記放熱器の下流側において前記第1減圧部と並列となるように配置され、前記放熱器を通過した冷媒を減圧させる第3減圧部(22)と、
前記第3減圧部で減圧された冷媒を、前記空調対象空間とは異なる他の空間を冷却する冷却媒体と熱交換させて蒸発させる第3蒸発器(23)と、を備え、
前記第3蒸発器は、前記第3減圧部と前記冷媒合流部との間に配置され、
前記第3減圧部は、前記第3蒸発器と前記冷媒合流部との間の冷媒の過熱度に相関性のある第3物理量に基づいて、前記第3蒸発器と前記冷媒合流部との間の冷媒の過熱度を第3目標過熱度に近づくように調整する、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記第1減圧部、前記第2減圧部、前記第3減圧部の少なくとも1つの上流を流れる冷媒が通過する高圧流路部(211)と、前記第1蒸発器、前記第2蒸発器、前記第3蒸発器の少なくとも1つの下流を流れる冷媒が通過する低圧流路部(212)とを有し、前記高圧流路部を流れる冷媒と前記低圧流路部を流れる冷媒とを熱交換させる内部熱交換器(21)を備え、
前記第1蒸発器と前記冷媒合流部との間には、前記第1物理量を検知する第1物理量検知部(103A)が配置され、
前記冷媒合流部と前記圧縮機との間には、前記第2物理量を検知する第2物理量検知部(102)が配置され、
前記第3蒸発器と前記冷媒合流部との間には、前記第3物理量を検知する第3物理量検知部(104)が配置され、
前記低圧流路部は、前記第1物理量検知部、前記第2蒸発器、前記第3物理量検知部の1つから前記第2物理量検知部までの間の冷媒経路に配置される、請求項7に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記第1物理量検知部は、前記第1蒸発器の冷媒出口の直後に配置され、
前記第3物理量検知部は、前記第3蒸発器の冷媒出口の直後に配置されている、請求項8に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記第3蒸発器は、前記第1蒸発器よりも前記圧縮機に対して離れた位置に配置されており、
前記第1蒸発器および前記第2蒸発器の一方の蒸発器にて冷媒の吸熱作用を発揮させつつ、前記第1蒸発器、前記第2蒸発器、前記第3蒸発器のうち、前記一方の蒸発器を除く他の蒸発器にて冷媒の吸熱作用を発揮させないシングル吸熱モードに切り替えるモード切替部(100a)を備え、
前記低圧流路部は、前記第1物理量検知部から前記第2物理量検知部までの間の冷媒経路または前記第2蒸発器から前記第2物理量検知部までの間の冷媒経路に配置されている、請求項8または9に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項11】
前記第1蒸発器および前記第3蒸発器のうち少なくとも一方の下流側に配置されて、前記第1蒸発器および前記第3蒸発器のうち少なくとも一方における冷媒の蒸発圧力を調整する圧力調整部(17)を備え、
前記圧力調整部は、前記第1物理量検知部および前記第3物理量検知部のうち少なくとも一方の下流側に配置されている、請求項8ないし10のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項12】
前記圧力調整部は、前記第1物理量検知部および前記第3物理量検知部の少なくとも一方から前記低圧流路部までの間の冷媒経路に配置されている、請求項11に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機、放熱器、減圧部、単一の蒸発器、内部熱交換器を備える冷凍サイクル装置において、内部熱交換器を介して圧縮機に吸入される冷媒の過熱度が所定の目標過熱度となるように減圧部を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-3828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、冷凍サイクル装置によって、車室内等の空調対象空間の空調および車載バッテリ等のような発熱機器の温度調整を実施することを検討している。
【0005】
ところが、特許文献1のように、単一の蒸発器で温度調整した低温側熱媒体によって、空調対象空間および発熱機器それぞれを適温に調整することは難しい。すなわち、空調対象空間の空調性能の確保と発熱機器の保護とを両立させることが難しい。
【0006】
また、特許文献1の如く、減圧部によって圧縮機に吸入される冷媒の過熱度を制御する場合、減圧部によって空調用の蒸発器を流れる冷媒の圧力や流量調整ができないので、空調対象空間の空調性能が不充分になってしまう。このため、空調対象空間の空調性能の確保と圧縮機の保護とを両立させることが難しい。
【0007】
本開示は、空調対象空間の空調性能の確保または向上を図りつつ、圧縮機および発熱機器を含む機器を適切に保護可能な冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
冷凍サイクル装置であって、
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(12)と、
放熱器を通過した冷媒を減圧させる第1減圧部(15)と、
第1減圧部で減圧された冷媒を、空調対象空間へ送風する送風空気と熱交換させて蒸発させる第1蒸発器(16、16A)と、
放熱器の下流側において第1減圧部と並列となるように配置され、放熱器を通過した冷媒を減圧させる第2減圧部(18)と、
第2減圧部で減圧された冷媒を、発熱機器(63)または外部空間の少なくとも一方から吸熱する吸熱媒体と熱交換させて蒸発させる第2蒸発器(19)と、を備え、
圧縮機における冷媒の吸入側には、第1蒸発器を通過した冷媒と第2蒸発器を通過した冷媒とを合流させる冷媒合流部(20)が設けられ、
第1減圧部は、第1蒸発器と冷媒合流部との間を流れる冷媒の過熱度に相関性を有する第1物理量に基づいて、第1蒸発器と冷媒合流部との間の冷媒の過熱度を第1目標過熱度となるように調整し、
第2減圧部は、冷媒合流部と圧縮機との間を流れる冷媒の過熱度に相関性を有する第2物理量に基づいて、冷媒合流部と圧縮機との間の冷媒の過熱度を第2目標過熱度となるように調整
前記第2目標過熱度は、過熱度を有するガス冷媒が前記圧縮機に吸入されるように、正の値に設定される。
【0009】
このように、空調対象空間を冷却するための第1蒸発器および発熱機器等から吸熱する第2蒸発器を備えていれば、空調対象空間および発熱機器を適温に調整し易くなる。特に、第1減圧部によって第1蒸発器の冷媒出口側における冷媒の過熱度を調整する構成となっているので、第1蒸発器における冷媒と送風空気との熱交換を高効率に実施することができる。加えて、第2減圧部によって圧縮機の冷媒吸入側における冷媒の過熱度を調整する構成となっているので、圧縮機の冷媒吐出側における冷媒の温度を抑えたり、オイル戻り性の悪化を抑制したりすることができる。
【0010】
したがって、本開示の冷凍サイクル装置によれば、空調対象空間の空調性能の確保または向上を図りつつ、圧縮機および発熱機器を適切に保護することが可能となる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図2】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の冷凍サイクルのサイクル構成を説明するための説明図である。
図3】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の制御部が実行する圧縮機の保護処理の流れを示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図5】第2実施形態に係る冷凍サイクル装置の冷凍サイクルのサイクル構成を説明するための説明図である。
図6】第2実施形態の第1変形例に係る冷凍サイクル装置の冷凍サイクルのサイクル構成を説明するための説明図である。
図7】第2実施形態の第2変形例に係る冷凍サイクル装置の冷凍サイクルのサイクル構成を説明するための説明図である。
図8】第3実施形態に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図9】第3実施形態に係る冷凍サイクル装置の冷凍サイクルのサイクル構成を説明するための説明図である。
図10】圧縮機、第1空調用蒸発器、第2空調用蒸発器の配置を説明するための説明図である。
図11】各吸熱モード時における各減圧弁の状態を説明するための説明図である。
図12】第3実施形態の第1変形例に係る冷凍サイクル装置の冷凍サイクルのサイクル構成を説明するための説明図である。
図13】第3実施形態の第2変形例に係る冷凍サイクル装置の冷凍サイクルのサイクル構成を説明するための説明図である。
図14】第4実施形態に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図15】第4実施形態に係る冷凍サイクル装置の冷凍サイクルのサイクル構成を説明するための説明図である。
図16】第4実施形態の第1変形例に係る冷凍サイクル装置の冷凍サイクルのサイクル構成を説明するための説明図である。
図17】第4実施形態の第2変形例に係る冷凍サイクル装置の冷凍サイクルのサイクル構成を説明するための説明図である。
図18】第4実施形態の第3変形例に係る冷凍サイクル装置の冷凍サイクルのサイクル構成を説明するための説明図である。
図19】第4実施形態の第4変形例に係る冷凍サイクル装置の冷凍サイクルのサイクル構成を説明するための説明図である。
図20】第4実施形態の第5変形例に係る冷凍サイクル装置の冷凍サイクルのサイクル構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0014】
(第1実施形態)
本実施形態について、図1図3を参照して説明する。本実施形態では、本開示の冷凍サイクル装置1を、車両用の空調システムに適用した例について説明する。冷凍サイクル装置1は、例えば、走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車に搭載される。電気自動車は、車両の停車時に外部電源から供給された電力を車両に搭載された大容量の電池BTに充電可能になっている。電池BTは、充放電可能な二次電池である。電池BTは、例えば、エネルギ密度が高く、軽量でコンパクトなリチウムイオン電池で構成されている。
【0015】
図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10、高温側回路50、低温側回路60、制御部100を備える。冷凍サイクル装置1は、車室内を空調対象空間として空調するとともに、電池BTを含む発熱機器63の温度調整を実施する。
【0016】
冷凍サイクル10は、圧縮機11、凝縮器12、受液部13、冷媒分岐部14、第1減圧弁15、空調用蒸発器16、蒸発圧力調整弁17、第2減圧弁18、機器用蒸発器19、冷媒合流部20を有している。
【0017】
冷凍サイクル10は、冷媒として、HFO-1234yf等の地球温暖化係数の低いものが採用されている。冷媒には、圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が含まれている。冷凍機油は、例えば、PAGオイル等の液相の冷媒に相溶性を有するものが採用されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともに冷凍サイクル10のサイクル内を循環する。
【0018】
圧縮機11は、冷媒を圧縮して吐出する機器である。圧縮機11は、電池BTから供給される電力によって駆動させる電動圧縮機で構成されている。圧縮機11は、制御部100から出力される制御信号によって動作が制御される。
【0019】
圧縮機11の冷媒吐出側には、凝縮器12が接続されている。凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高温高圧の冷媒(以下、高圧冷媒とも呼ぶ)と高温側回路50を流れる高温側熱媒体とを熱交換させて、高圧冷媒の熱を高温側熱媒体に放熱させる放熱器である。高圧冷媒は、凝縮器12を通過する際に、高温側熱媒体に放熱して凝縮する。
【0020】
高温側熱媒体は、高温側回路50を流れる流体である。高温側熱媒体は、高温側回路50を流れる際に相変化しない液相流体である。高温側熱媒体は、例えば、エチレングリコールを含む液体または不凍液体が採用されている。
【0021】
ここで、高温側回路50は、高温側熱媒体を外部に放熱させたり、高温側熱媒体を用いて車室内を暖房したりするための回路である。高温側回路50には、高温側ポンプ51、高温側ラジエータ52、電気ヒータ53、ヒータコア54、第1流路切替弁55、高温側リザーブタンク56が設けられている。
【0022】
高温側ポンプ51は、高温側熱媒体を吸入して凝縮器12側に向けて送り出すことで、高温側熱媒体を高温側回路50内で循環させる。高温側ポンプ51は、電池BTから供給される電力によって駆動させる電動ポンプである。高温側ポンプ51は、高温側回路50を流れる高温側熱媒体の流量を調整する調整手段としても機能する。
【0023】
高温側ラジエータ52は、凝縮器12で加熱された高温側熱媒体と車室外の外気と熱交換させることで、高温側熱媒体を放熱させる。高温側ラジエータ52は、例えば、車両の進行方向の前方側に配置されており、車両の走行時には走行風が流入する。
【0024】
電気ヒータ53は、高温側回路50において高温側ラジエータ52と並列になるように配置されている。電気ヒータ53は、高温側熱媒体を加熱する。電気ヒータ53は、高温側熱媒体を凝縮器12で十分に加熱できない状況等に、高温側熱媒体を加熱する補助熱源である。電気ヒータ53は、制御部100から出力される制御信号によって通電状態が制御される。
【0025】
ヒータコア54は、電気ヒータ53と直列になるように配置されている。ヒータコア54は、空調ユニット40のケーシング41の内側に配置されている。ヒータコア54は、凝縮器12で加熱された高温側熱媒体と車室内へ送風する送風空気と熱交換させることで、所望の温度の空調風を生成する。
【0026】
第1流路切替弁55は、高温側熱媒体の流路を切り替える流路切替部として機能する。第1流路切替弁55は、高温側回路50において高温側熱媒体の流路を高温側ラジエータ52側の流路とヒータコア54側の流路に分岐させる分岐部に設けられている。第1流路切替弁55は、電磁弁で構成され、制御部100から出力される制御信号によって動作が制御される。なお、高温側回路50には、第1流路切替弁55の代わりに、高温側ラジエータ52へ流す高温側熱媒体の流量とヒータコア54へ流す高温側熱媒体の流量とを調整可能な流量調整弁が配置されていてもよい。
【0027】
高温側リザーブタンク56は、余剰となる高温側熱媒体を貯めておくタンクである。高温側リザーブタンク56は、高温側ポンプ51における高温側熱媒体の入口側に配置されている。
【0028】
凝縮器12の冷媒出口側には、受液部13が接続されている。受液部13は、冷凍サイクル10内の余剰冷媒を貯めるものである。受液部13は、凝縮器12から流出した冷媒の気液を分離し、分離した液相冷媒を下流に流出させる。受液部13は、冷媒の出入口が上方に設けられたレシーバタンク、冷媒の出入口が下方に設けられたモジュレータタンクのいずれで構成されていてもよい。
【0029】
受液部13の冷媒出口側には、冷媒の流路を2つに分岐させる冷媒分岐部14が設けられている。冷媒分岐部14は、1つの冷媒入口、2つの冷媒出口を有する三方弁で構成されている。冷媒分岐部14の一方の冷媒出口側に第1減圧弁15が接続され、他方の冷媒出口側に第2減圧弁18が接続されている。
【0030】
第1減圧弁15は、凝縮器12を通過した冷媒を減圧させる第1減圧部である。具体的には、第1減圧弁15は、凝縮器12を通過して受液部13に貯留された液相冷媒を減圧させる。第1減圧弁15は、制御部100から出力される制御信号によって、その作動が制御される電気式の可変絞りであり、弁体と電動アクチュエータとを有している。第1減圧弁15は、冷媒の流れを実質的に停止させることが可能な全閉機能付きの可変絞りとして構成されている。第1減圧弁15の作動については後述する。
【0031】
第1減圧弁15の冷媒出口側には、空調用蒸発器16が接続されている。空調用蒸発器16は、ヒータコア54とともに、空調ユニット40のケーシング41の内側に配置されている。空調用蒸発器16は、第1減圧弁15で減圧された冷媒を車室内へ送風する送風空気と熱交換させることで蒸発させるものである。空調用蒸発器16では、冷媒が車室内へ送風する空気から吸熱して蒸発することによって空気が冷却される。空調用蒸発器16を通過した空気は、ヒータコア54を通過した後、空調風として車室内へ供給される。本実施形態では、空調用蒸発器16が“第1蒸発器”に対応している。
【0032】
空調用蒸発器16の冷媒出口側には、蒸発圧力調整弁17が接続されている。蒸発圧力調整弁17は、空調用蒸発器16における冷媒の蒸発圧力を予め定めた基準圧力以上に維持する圧力調整部である。蒸発圧力調整弁17は、例えば、空調用蒸発器16の温度が空調用蒸発器16の着霜が抑制される温度(例えば、1℃)となるように空調用蒸発器16における冷媒の蒸発圧力を調整する構成になっている。蒸発圧力調整弁17は、ベローズ等を用いた機械式の駆動機構によって弁体を駆動するように構成されていてもよいし、電動モータによって弁体を駆動するように構成されていてもよい。
【0033】
第2減圧弁18は、凝縮器12を通過した冷媒を減圧させる第2減圧部である。具体的には、第2減圧弁18は、凝縮器12を通過して受液部13に貯留された液相冷媒を減圧させる。第2減圧弁18は、第1減圧弁15と並列に並ぶように配置される。第2減圧弁18は、制御部100から出力される制御信号によって、その作動が制御される電気式の可変絞りであり、弁体と電動アクチュエータとを有している。第2減圧弁18は、冷媒の流れを実質的に停止させることが可能な全閉機能付きの可変絞りとして構成されている。第2減圧弁18の作動については後述する。
【0034】
第2減圧弁18の冷媒出口側には、機器用蒸発器19が接続されている。機器用蒸発器19は、第2減圧弁18で減圧された冷媒を、発熱機器63または外部空間である車室外の外気の少なくとも一方から吸熱する低温側熱媒体と熱交換させて蒸発させるチラーである。本実施形態では、車室外が“外部空間”に対応し、低温側熱媒体が発熱機器63または外部空間の少なくとも一方から吸熱する“吸熱媒体”に対応している。また、本実施形態では、機器用蒸発器19が“第2蒸発器”に対応している。
【0035】
低温側熱媒体は、低温側回路60を流れる流体である。低温側熱媒体は、低温側回路60を流れる際に相変化しない液相流体である。低温側熱媒体は、例えば、エチレングリコールを含む液体または不凍液体が採用されている。低温側熱媒体は、電気絶縁性を有するオイルが採用されていてもよい。
【0036】
低温側回路60は、低温側熱媒体を用いて発熱機器63の温度を調整したり、低温側熱媒体を用いて外部空間から吸熱したりするための回路である。低温側回路60は、低温側ポンプ61、低温側ラジエータ62、温調対象となる発熱機器63、第2流路切替弁64、低温側リザーブタンク65が設けられている。
【0037】
低温側ポンプ61は、低温側熱媒体を吸入して機器用蒸発器19に向けて送り出すことで、低温側熱媒体を低温側回路60内で循環させる。低温側ポンプ61は、電池BTから供給される電力によって駆動させる電動ポンプである。低温側ポンプ61は、低温側回路60を流れる低温側熱媒体の流量を調整する調整手段としても機能する。
【0038】
低温側ラジエータ62は、機器用蒸発器19を通過後の低温側熱媒体と車室外の外気と熱交換させることで、外気から吸熱する。低温側ラジエータ62は、例えば、高温側ラジエータ52とともに、車両の進行方向の前方側に配置されている。高温側ラジエータ52および低温側ラジエータ62は、外気の流れ方向において、この順に直列に並ぶように配置されている。高温側ラジエータ52および低温側ラジエータ62は、図示しない共通の伝熱フィンによって互いに熱移動可能に接続されている。
【0039】
発熱機器63は、低温側回路60において低温側ラジエータ62と並列になるように配置されている。発熱機器63は、バッテリである電池BTを含む車載機器である。発熱機器63は、低温側熱媒体との熱交換可能に配置される。発熱機器63は、低温側熱媒体に放熱することで適温に維持される。換言すれば、低温側回路60は、低温側熱媒体を介して発熱機器63から吸熱する。なお、発熱機器63を構成する車載機器は、上述したものと異なっていてもよい。
【0040】
第2流路切替弁64は、低温側熱媒体の流路を切り替える流路切替部として機能する。第2流路切替弁64は、低温側回路60において低温側熱媒体の流路を低温側ラジエータ62側の流路と発熱機器63側の流路に分岐させる分岐部に設けられている。第2流路切替弁64は、電磁弁で構成され、制御部100から出力される制御信号によって動作が制御される。なお、低温側回路60には、第2流路切替弁64の代わりに、低温側ラジエータ62へ流す低温側熱媒体の流量と発熱機器63へ流す低温側熱媒体の流量とを調整可能な流量調整弁が配置されていてもよい。
【0041】
低温側リザーブタンク65は、余剰となる低温側熱媒体を貯めておくタンクである。低温側リザーブタンク65は、低温側ラジエータ62の流路と発熱機器63側の流路との合流部から低温側ポンプ61の入口に至る流路に配置されている。
【0042】
機器用蒸発器19の冷媒出口側には、冷媒合流部20が設けられている。冷媒合流部20は、機器用蒸発器19を通過した冷媒と空調用蒸発器16を通過した冷媒を合流させる三方弁である。具体的には、冷媒合流部20は、機器用蒸発器19を通過した冷媒と空調用蒸発器16の下流にある蒸発圧力調整弁17を通過した冷媒を合流させる。冷媒合流部20の冷媒出口側は、圧縮機11の冷媒吸入口に接続されている。
【0043】
このように構成される冷凍サイクル装置1は、各種構成機器を制御するための制御部100を備える。制御部100は、プロセッサ、メモリを含むマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御部100は、メモリに記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。なお、制御部100のメモリは、非遷移的実体的記憶媒体で構成される。
【0044】
制御部100の入力側には、図示しない各種操作スイッチが接続され、各種操作スイッチの操作信号が入力される。各種操作スイッチは、エアコンスイッチ、室温調整スイッチ等である。エアコンスイッチは、空調ユニット40にて空気の冷却を行うか否かを設定するスイッチである。室温調整スイッチは、車室内の設定温度を設定するスイッチである。
【0045】
また、制御部100の入力側には、空調制御用のセンサ群および機器温調用のセンサ群が接続されている。空調制御用のセンサ群には、圧縮機11の冷媒吐出側に設けられた吐出側センサ101、圧縮機11の冷媒吸入側に設けられた吸入側センサ102、空調用蒸発器16の冷媒出口側に設けられた蒸発器側センサ103が含まれている。
【0046】
吐出側センサ101は、圧縮機11から吐出された冷媒の圧力および温度を検出する圧力温度センサである。吐出側センサ101は、圧力の検知部および温度の検知部が一体に構成されていてもよいし、別個に構成されていてもよい。吐出側センサ101は、主に圧縮機11を保護するために設けられている。吐出側センサ101は、冷凍サイクル10における圧縮機11の冷媒吐出口または当該冷媒吐出口から凝縮器12の冷媒入口までの冷媒経路に配置されている。
【0047】
吸入側センサ102は、圧縮機11に吸入される冷媒の圧力および温度を検出する圧力温度センサである。吸入側センサ102は、圧力の検知部および温度の検知部が一体に構成されていてもよいし、別個に構成されていてもよい。吸入側センサ102は、圧縮機11に吸入される冷媒の過熱度を検出するために設けられている。吸入側センサ102は、冷凍サイクル10における冷媒合流部20から圧縮機11の冷媒吸入口までの冷媒経路に配置されている。本実施形態では、圧縮機11に吸入される冷媒の圧力および温度が、冷媒合流部20と圧縮機11との間を流れる冷媒の過熱度に相関性を有する“第2物理量”に対応している。また、本実施形態では、吸入側センサ102が、“第2物理量検知部”に対応している。
【0048】
蒸発器側センサ103は、空調用蒸発器16を通過した冷媒の圧力および温度を検出する圧力温度センサである。蒸発器側センサ103は、圧力の検知部および温度の検知部が一体に構成されていてもよいし、別個に構成されていてもよい。蒸発器側センサ103は、空調用蒸発器16を通過した冷媒の過熱度を検出するために設けられている。蒸発器側センサ103は、冷凍サイクル10における空調用蒸発器16から冷媒合流部20までの冷媒経路に配置されている。本実施形態では、空調用蒸発器16を通過した冷媒の圧力および温度が、空調用蒸発器16と冷媒合流部20との間を流れる冷媒の過熱度に相関性を有する“第1物理量”に対応している。また、本実施形態では、蒸発器側センサ103が“第1物理量検知部”に対応している。
【0049】
ここで、本実施形態の冷凍サイクル10には、空調用蒸発器16から冷媒合流部20までの冷媒経路に蒸発圧力調整弁17が配置されており、蒸発圧力調整弁17の前後で冷媒の圧力が変化する。これにも関わらず、蒸発器側センサ103が蒸発圧力調整弁17の下流に配置されていると、空調用蒸発器16の冷媒出口における過熱度の検知精度が低下してしまう。このような事態を避けるべく、本実施形態の蒸発器側センサ103は、冷凍サイクル10における空調用蒸発器16から蒸発圧力調整弁17までの冷媒経路に配置されている。また、蒸発器側センサ103は、熱害の影響を極力抑えるべく、空調用蒸発器16の冷媒出口の直後に配置されている。なお、空調用蒸発器16の冷媒出口の直後とは、空調用蒸発器16の下流側において空調用蒸発器16の冷媒出口における冷媒の状態と実質的に同じ状態となる部位である。例えば、空調用蒸発器16の冷媒出口の直後は、空調用蒸発器16から蒸発圧力調整弁17までの冷媒経路のうち、空調用蒸発器16と蒸発圧力調整弁17との間の中間地点よりも上流にある部位と解釈することができる。
【0050】
制御部100の出力側には、圧縮機11、第1減圧弁15、第2減圧弁18、高温側ポンプ51、電気ヒータ53、第1流路切替弁55、低温側ポンプ61、第2流路切替弁64等が接続されている。制御部100は、空調制御用のセンサ群および機器温調用のセンサ群のセンサ出力、各種操作スイッチの操作信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動を制御する。
【0051】
制御部100は、設定温度、外気温、内気温、日射量等に基づいて車室内へ送風する送風空気を算出し、車室内へ送風する送風空気の温度が目標吹出温度に近づくように圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する。また、制御部100は、各蒸発器16、19に冷媒を流すシーンにおいて、冷凍サイクル10における低圧冷媒が所望の過熱度を有するように、第1減圧弁15の作動および第2減圧弁18の作動を制御する。
【0052】
例えば、圧縮機11への液バックを回避するために、過熱度を有するガス冷媒が圧縮機11に吸入されるように、吸入側センサ102のセンサ出力に基づいて、第1減圧弁15および第2減圧弁18それぞれの動作を制御することが考えられる。
【0053】
しかし、各減圧弁15、18によって圧縮機11に吸入される冷媒の過熱度を制御する場合、各減圧弁15、18による空調用蒸発器16を流れる冷媒の圧力調整や流量調整が制限されることで、空調対象空間の空調性能が不充分になってしまう。
【0054】
これらを考慮し、冷凍サイクル装置1は、図2に示すように、空調用蒸発器16を通過した冷媒の過熱度を第1減圧弁15によって調整し、圧縮機11に吸入される冷媒の過熱度を第2減圧弁18によって調整するように構成されている。
【0055】
具体的には、制御部100は、蒸発器側センサ103のセンサ出力に基づいて、空調用蒸発器16と冷媒合流部20との間の冷媒の過熱度を求め、当該過熱度が第1目標過熱度に近づくように第1減圧弁15を作動させる。このようにして第1減圧弁15は、空調用蒸発器16と冷媒合流部20との間を流れる冷媒の過熱度に相関性を有する第1物理量に基づいて、空調用蒸発器16と冷媒合流部20との間の冷媒の過熱度を第1目標過熱度となるように調整する。
【0056】
また、制御部100は、吸入側センサ102のセンサ出力に基づいて、冷媒合流部20と圧縮機11の間の冷媒の過熱度を求め、当該過熱度が第2目標過熱度に近づくように第2減圧弁18を作動させる。このようにして第2減圧弁18は、冷媒合流部20と圧縮機11の間を流れる冷媒の過熱度に相関性を有する第2物理量に基づいて、冷媒合流部20と圧縮機11との間の冷媒の過熱度を第2目標過熱度となるように調整する。
【0057】
本実施形態の制御部100は、空調制御用のセンサ群および機器温調用のセンサ群のセンサ出力、各種操作スイッチの操作信号等に基づいて、冷凍サイクル装置1の運転モードを切り替える。制御部100は、例えば、空調ユニット40から車室内に送風する空調風の目標吹出温度を算出し、当該目標吹出温度等に基づいて、冷凍サイクル装置1の運転モードを、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モードのいずれかに切り替える。以下、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モードそれぞれの作動の一例について説明する。
【0058】
[冷房モード]
冷房モードを実行する条件が成立すると、制御部100は、目標吹出温度、各種センサ群のセンサ出力等に基づいて、制御部100に接続された各種機器へ出力する制御信号を決定する。
【0059】
制御部100は、例えば、圧縮機11を駆動させるとともに、第1減圧弁15を絞り状態に制御し、第2減圧弁18を全閉状態に制御する。制御部100は、第1減圧弁15へ出力する制御信号について、空調用蒸発器16の冷媒出口側の過熱度が所定の第1目標過熱度になるように決定する。また、制御部100は、高温側ポンプ51を駆動させるとともに、高温側ラジエータ52に高温側熱媒体が流れるように第1流路切替弁55を制御する。
【0060】
冷房モード時の冷凍サイクル10は、圧縮機11から吐出された冷媒が、凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入した冷媒は、高温側回路50を流れる高温側熱媒体に放熱する。これにより、凝縮器12を流れる冷媒が冷却されて凝縮する。また、高温側熱媒体は、高温側ラジエータ52を通過する際に外気に放熱する。
【0061】
凝縮器12を通過した冷媒は、受液部13で気液が分離されて、サイクル内の余剰となる液相冷媒が受液部13の内側に貯留される。受液部13に貯留された液相冷媒は、第1減圧弁15で減圧される。第1減圧弁15で減圧された冷媒は、空調用蒸発器16に流入し、車室内へ送風される送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される送風空気が所望の温度となるまで冷却される。そして、空調用蒸発器16を通過した冷媒は、圧縮機11の吸入側へ流れて、再び圧縮機11で圧縮される。
【0062】
以上の如く、冷房モードでは、空調用蒸発器16にて冷媒を車室内へ送風する送風空気と熱交換させることで、車室内へ送風する送風空気を冷却する。これにより、車室内の冷房が実現される。
【0063】
[冷房モード時の機器冷却]
ここで、例えば、冷房モード時に、発熱機器63を冷却する条件が成立すると、制御部100は、第2減圧弁18を絞り状態に制御する。制御部100は、第2減圧弁18へ出力する制御信号について、圧縮機11に吸入される冷媒の過熱度が所定の第1目標過熱度になるように決定する。また、制御部100は、低温側ポンプ61を駆動させるとともに、低温側ラジエータ62に低温側熱媒体が流れるように第2流路切替弁64を制御する。
【0064】
これらの制御が実施されると、受液部13に貯留された液相冷媒の一部が第2減圧弁18に流入して減圧される。第2減圧弁18にて減圧された冷媒は、機器用蒸発器19にて、低温側熱媒体から吸熱して蒸発する。これにより、低温側回路60を流れる低温側熱媒体が冷却される。そして、機器用蒸発器19で冷却された低温側熱媒体が低温側回路60を循環する際に、発熱機器63と熱交換することで、発熱機器63が冷却される。なお、車室内の空調が実施されていない場合に発熱機器63を冷却する条件が成立すると、制御部100は、第1減圧弁15を全閉状態に制御し、第2減圧弁18を絞り状態に制御することになる。
【0065】
[暖房モード]
暖房モードを実行する条件が成立すると、制御部100は、目標吹出温度、各種センサ群のセンサ出力等に基づいて、制御部100に接続された各種機器へ出力する制御信号を決定する。
【0066】
制御部100は、例えば、圧縮機11を駆動させるとともに、第1減圧弁15を全閉状態に制御し、第2減圧弁18を絞り状態に制御する。制御部100は、第2減圧弁18へ出力する制御信号について、圧縮機11に吸入される冷媒の過熱度が所定の第2目標過熱度になるように決定する。また、制御部100は、高温側ポンプ51を駆動させるとともに、ヒータコア54に高温側熱媒体が流れるように第1流路切替弁55を制御する。さらに、制御部100は、低温側ポンプ61を駆動させるとともに、低温側ラジエータ62に低温側熱媒体が流れるように第2流路切替弁64を制御する。
【0067】
暖房モード時の冷凍サイクル10は、圧縮機11から吐出された冷媒が、凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入した冷媒は、高温側回路50を流れる高温側熱媒体に放熱する。これにより、凝縮器12を流れる冷媒が冷却されて凝縮する。また、高温側熱媒体は、ヒータコア54にて車室内へ送風する送風空気に放熱する。これにより、車室内へ送風する送風空気が加熱される。
【0068】
凝縮器12を通過した冷媒は、受液部13で気液が分離されて、サイクル内の余剰となる液相冷媒が受液部13の内側に貯留される。受液部13に貯留された液相冷媒は、第2減圧弁18で減圧される。第2減圧弁18で減圧された冷媒は、機器用蒸発器19に流入し、機器用蒸発器19にて低温側熱媒体から吸熱して蒸発する。そして、機器用蒸発器19を通過した冷媒は、圧縮機11の吸入側へ流れて、再び圧縮機11で圧縮される。
【0069】
ここで、機器用蒸発器19を通過した低温側熱媒体は、低温側ラジエータ62を通過する際に外気から吸熱する。このため、機器用蒸発器19を流れる冷媒は、低温側熱媒体を介して外気から吸熱することになる。
【0070】
以上の如く、暖房モードでは、圧縮機11から吐出された冷媒を凝縮器12で高温側熱媒体に放熱させるとともに、高温側回路50の高温側熱媒体をヒータコア54にて車室内へ送風する空気に放熱させ、車室内へ送風する送風空気を加熱する。これにより、車室内の暖房が実現される。
【0071】
ここで、暖房モード時には、低温側ラジエータ62を流れる低温側熱媒体が外気から吸熱するので、低温側ラジエータ62に着霜が生じることがある。低温側ラジエータ62に着霜が生ずると、低温側熱媒体と外気との熱交換が制限されてしまう。
【0072】
これに対して、本実施形態の低温側ラジエータ62は、共通の伝熱フィンによって高温側ラジエータ52に熱移動可能に接続されている。このため、例えば、暖房モードを実行した後の停車時に、高温側回路50の高温側熱媒体に残った熱を利用して低温側ラジエータ62の除霜を行うことができる。
【0073】
[暖房モード時の機器冷却]
また、暖房モード時に、発熱機器63を冷却する条件が成立すると、制御部100は、発熱機器63側に低温側熱媒体が流れるように第2流路切替弁64を制御する。なお、制御部100は、発熱機器63および低温側ラジエータ62の双方に低温側熱媒体が流れるように第2流路切替弁64を制御するようになっていてもよい。
【0074】
この場合、第2減圧弁18で減圧された冷媒は、機器用蒸発器19に流入し、機器用蒸発器19にて低温側熱媒体から吸熱して蒸発する。これにより、低温側回路60を流れる低温側熱媒体が冷却される。機器用蒸発器19で冷却された低温側熱媒体が低温側回路60を循環する際に、発熱機器63と熱交換することで、発熱機器63が冷却される。なお、機器用蒸発器19を流れる冷媒は、低温側熱媒体を介して発熱機器63から吸熱することになる。
【0075】
[除湿暖房モード]
除湿暖房モードを実行する条件が成立すると、制御部100は、目標吹出温度、各種センサ群のセンサ出力等に基づいて、制御部100に接続された各種機器へ出力する制御信号を決定する。
【0076】
制御部100は、例えば、圧縮機11を駆動させるとともに、第1減圧弁15を絞り状態に制御し、第2減圧弁18を全閉状態に制御する。制御部100は、空調用蒸発器16の冷媒出口側の過熱度が所定の第1目標過熱度になるように決定する。また、制御部100は、高温側ポンプ51を駆動させるとともに、ヒータコア54に高温側熱媒体が流れるように第1流路切替弁55を制御する。
【0077】
除湿暖房モード時の冷凍サイクル10は、圧縮機11から吐出された冷媒が、凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入した冷媒は、高温側回路50を流れる高温側熱媒体に放熱する。これにより、凝縮器12を流れる冷媒が冷却されて凝縮する。また、高温側熱媒体は、ヒータコア54にて車室内へ送風する送風空気に放熱する。これにより、車室内へ送風する送風空気が加熱される。
【0078】
凝縮器12を通過した冷媒は、受液部13で気液が分離されて、サイクル内の余剰となる液相冷媒が受液部13の内側に貯留される。受液部13に貯留された液相冷媒は、第2減圧弁18で減圧される。第1減圧弁15で減圧された冷媒は、空調用蒸発器16に流入し、ヒータコア54で加熱される前の空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される送風空気が除湿される。そして、空調用蒸発器16を通過した冷媒は、圧縮機11の吸入側へ流れて、再び圧縮機11で圧縮される。
【0079】
以上の如く、除湿暖房モードでは、圧縮機11から吐出された冷媒を凝縮器12で高温側熱媒体に放熱させるとともに、高温側回路50の高温側熱媒体をヒータコア54にて車室内へ送風する空気に放熱させる。加えて、除湿暖房モードでは、第1減圧弁15で減圧された冷媒を空調用蒸発器16にて車室内へ送風される送風空気と熱交換させて蒸発させる。これにより、空調用蒸発器16にて除湿した空気をヒータコア54で加熱して車室内へ吹き出すことができる。
【0080】
[除湿暖房モード時の機器冷却]
ここで、例えば、除湿暖房モード時に、発熱機器63を冷却する条件が成立すると、制御部100は、第2減圧弁18を絞り状態に制御する。制御部100は、第2減圧弁18へ出力する制御信号について、圧縮機11に吸入される冷媒の過熱度が所定の第2目標過熱度になるように決定する。また、制御部100は、低温側ポンプ61を駆動させるとともに、低温側ラジエータ62に低温側熱媒体が流れるように第2流路切替弁64を制御する。
【0081】
これらの制御が実施されると、受液部13に貯留された液相冷媒の一部が第2減圧弁18に流入して減圧される。第2減圧弁18にて減圧された冷媒は、機器用蒸発器19にて、低温側熱媒体から吸熱して蒸発する。これにより、低温側回路60を流れる低温側熱媒体が冷却される。そして、機器用蒸発器19で冷却された低温側熱媒体が低温側回路60を循環する際に、発熱機器63と熱交換することで、発熱機器63が冷却される。
【0082】
ここで、本実施形態の制御部100は、車室内の空調時や発熱機器63の温調時に、圧縮機11を保護するための保護処理を実行する。この保護処理については、図3を参照しつつ説明する。図3に示す制御ルーチンは、車室内の空調時や発熱機器63の温調時に、周期的または不定期に制御部100によって実行される。
【0083】
図3に示すように、制御部100は、ステップS10にて、制御部100の入力側に接続された各種センサおよび各種スイッチが発する各種信号を読み込む。具体的には、制御部100は、吐出側センサ101のセンサ出力を含む各種信号を読み込む。
【0084】
続いて、制御部100は、ステップS20にて、冷凍サイクル10の高圧冷媒が高温高圧状態であるか否かを判定する。制御部100は、例えば、吐出側センサ101で検出された高圧冷媒の圧力を第1基準圧力と比較するとともに、吐出側センサ101で検出された高圧冷媒の温度を第1基準温度と比較する。そして、制御部100は、高圧冷媒の圧力が第1基準圧力以上、または、高圧冷媒の温度が第1基準温度以上となる場合に高圧冷媒が高温高圧状態であると判定する。この第1基準圧力および第1基準温度は、例えば、圧縮機11の耐圧性および耐熱性を考慮して設定されるものであって、予めメモリに記憶されている。なお、ステップS20の判定処理は、他の方法によって高圧冷媒が高温高圧状態であるか否かを判定するようになっていてもよい。例えば、圧縮機11の回転数および圧縮機11に吸入される冷媒の温度等に基づいて高圧冷媒の温度等を推定し、この推定結果に基づいて、高圧冷媒が高温高圧状態であるか否かを判定するようになっていてもよい。
【0085】
冷凍サイクル10の高圧冷媒が高温高圧状態でない場合、制御部100は、保護処理を抜ける。一方、高圧冷媒が高温高圧状態である場合、制御部100は、ステップS30に移行し、高圧冷媒の圧力または温度が異常状態であるか否かを判定する。
【0086】
制御部100は、例えば、吐出側センサ101で検出された高圧冷媒の圧力を第1基準圧力よりも大きい第2基準圧力と比較するとともに、吐出側センサ101で検出された高圧冷媒の温度を第1基準温度よりも大きい第2基準温度と比較する。そして、制御部100は、高圧冷媒の圧力が第2基準圧力以上、または、高圧冷媒の温度が第2基準温度以上となる場合に高圧冷媒の圧力または温度が異常状態であると判定する。この第2基準圧力および第2基準温度は、予めメモリに記憶されている。なお、ステップS30の判定処理は、他の方法によって高圧冷媒の圧力または温度が異常状態であるか否かを判定するようになっていてもよい。
【0087】
高圧冷媒の圧力および温度が異常状態でない場合、制御部100は、ステップS40に移行し、圧縮機11の回転数を制限して、保護処理を抜ける。制御部100は、例えば、圧縮機11の回転数の上限値を小さくすることで、圧縮機11の回転数を制限する。なお、ステップS40の処理は、他の方法によって圧縮機11の回転を制限するようになっていてよい。また、ステップS40の処理は、圧縮機11に吸入される冷媒の温度が低下するように、第2減圧弁18によって制御する圧縮機11に吸入される冷媒の過熱度の第2目標過熱度を小さくするようになっていてもよい。
【0088】
一方、高圧冷媒の圧力または温度が異常状態である場合、制御部100は、ステップS50に移行し、圧縮機11を停止させて、保護処理を抜ける。この場合、制御部100は、警告灯、音声等によってユーザ等に向けて圧縮機11の異常を報知するようになっていることが望ましい。
【0089】
以上説明した冷凍サイクル装置1は、空調対象空間である車室内を冷却するための空調用蒸発器16および発熱機器63等から吸熱する機器用蒸発器19を備える。これによれば、空調対象空間および発熱機器63を適温に調整し易くなる。
【0090】
特に、第1減圧弁15によって空調用蒸発器16の冷媒出口側における冷媒の過熱度を調整する構成となっているので、空調用蒸発器16における冷媒と送風空気との熱交換を高効率に実施することができる。
【0091】
加えて、第2減圧弁18によって圧縮機11の冷媒吸入側における冷媒の過熱度を調整する構成となっているので、圧縮機11の冷媒吐出側における冷媒の温度を抑えたり、オイル戻り性の悪化を抑制したりすることができる。
【0092】
したがって、本実施形態の冷凍サイクル装置1によれば、空調対象空間の空調性能の確保または向上を図りつつ、圧縮機11および発熱機器63を適切に保護することが可能となる。
【0093】
また、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、以下の特徴を有する。
【0094】
(1)冷凍サイクル装置1は、空調用蒸発器16の下流側に配置されて、空調用蒸発器16における冷媒の蒸発圧力を調整する蒸発圧力調整弁17を備える。そして、蒸発圧力調整弁17は、第1物理量の検知箇所の下流側に配置されている。具体的には、蒸発圧力調整弁17は、蒸発器側センサ103と冷媒合流部20との間に配置されている。
【0095】
これによれば、蒸発圧力調整弁17によって空調用蒸発器16における冷媒の蒸発圧力を所望の圧力に調整することで、空調用蒸発器16の外表面における結露水の凍結を抑制可能となる。また、蒸発圧力調整弁17は、蒸発器側センサ103の下流側に配置されているので、蒸発圧力調整弁17が、第1減圧弁15による空調用蒸発器16の冷媒出口側における冷媒の過熱度の調整に影響しない。したがって、空調対象空間に対する空調性能の確保または向上を図ることができる。
【0096】
(2)蒸発器側センサ103は、空調用蒸発器16の冷媒出口の直後に配置されている。これによると、蒸発器側センサ103によって空調用蒸発器16から流出した直後の冷媒の過熱度に相関性のある第1物理量を検知可能となる。これにより、空調用蒸発器16の冷媒出口側における冷媒の過熱度を適切に調整し、空調対象空間に対する空調性能の確保または向上を図ることができる。
【0097】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図4図5を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0098】
図4図5に示すように、冷凍サイクル10には、サイクル内を流れる高圧冷媒と低圧冷媒とを熱交換させる内部熱交換器21が設けられている。内部熱交換器21は、高圧冷媒が通過する高圧流路部211および低圧冷媒が通過する低圧流路部212を有する。
【0099】
高圧流路部211は、第1減圧弁15および第2減圧弁18の少なくとも一方の上流を流れる高圧冷媒が通過する。具体的には、受液部13から第1減圧弁15および第2減圧弁18の少なくとも一方までの冷媒経路に配置されている。この冷媒経路は、受液部13から冷媒分岐部14までの経路、冷媒分岐部14から第1減圧弁15までの経路、冷媒分岐部14から第2減圧弁18までの経路を含んでいる。
【0100】
本実施形態の高圧流路部211は、受液部13と冷媒分岐部14との間に配置されている。このため、高圧流路部211を通過した冷媒は、第1減圧弁15および第2減圧弁18の双方に流れる。
【0101】
低圧流路部212は、空調用蒸発器16および機器用蒸発器19の少なくとも一方の下流を流れる低圧冷媒が通過する。低圧流路部212は、蒸発器側センサ103および機器用蒸発器19の一方から吸入側センサ102までの間の冷媒経路に配置されている。この冷媒経路は、蒸発器側センサ103から冷媒合流部20までの経路、機器用蒸発器19から冷媒合流部20までの経路、冷媒合流部20から吸入側センサ102までの経路を含んでいる。
【0102】
本実施形態の低圧流路部212は、冷媒合流部20と吸入側センサ102との間に配置されている。このため、低圧流路部212には、空調用蒸発器16を通過した冷媒および機器用蒸発器19を通過した冷媒が流入する。
【0103】
また、蒸発圧力調整弁17は、蒸発器側センサ103から低圧流路部212までの間の冷媒経路に配置されている。この冷媒経路は、蒸発器側センサ103から冷媒合流部20までの経路および冷媒合流部20から低圧流路部212までの経路を含んでいる。本実施形態の蒸発圧力調整弁17は、蒸発器側センサ103と冷媒合流部20との間に配置されている。
【0104】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の冷凍サイクル装置1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0105】
また、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、以下の特徴を備える。
【0106】
(1)冷凍サイクル装置1は、内部熱交換器21の高圧流路部211が受液部13の下流に配置されているので、内部熱交換器21にて受液部13を通過した高圧の液相冷媒を過冷却することができる。また、冷凍サイクル装置1は、高圧流路部211が受液部13と冷媒分岐部14との間に配置されている。これによると、第1減圧弁15および第2減圧弁18に流入する冷媒のエンタルピが低下することで、空調用蒸発器16および機器用蒸発器19の双方の吸熱能力を向上させることができる。
【0107】
(2)冷凍サイクル装置1は、低圧流路部212が冷媒合流部20と吸入側センサ102との間に配置されている。また、内部熱交換器21を追加しても、空調用蒸発器16の冷媒出口側における冷媒の過熱度を適切に調整しつつ、圧縮機11の冷媒吸入側における冷媒の過熱度を適切に調整することができる。
【0108】
特に、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、車室内の冷房を実施する場合だけでなく、車室内の暖房および発熱機器63の温度調整を実施する場合でも、内部熱交換器21の高圧流路部211および低圧流路部212の双方を冷媒が通過する。これによると、第1減圧弁15および第2減圧弁18に流入する冷媒のエンタルピを低下させて空調用蒸発器16、機器用蒸発器19の吸熱能力を向上させることができる。また、内部熱交換器21には、冷凍サイクル10を流れる冷媒の全量が通過するので、冷媒を充分に過冷却することができる。
【0109】
(3)また、蒸発圧力調整弁17は、蒸発器側センサ103と冷媒合流部20との間に配置されている。これによれば、内部熱交換器21を追加しても、蒸発圧力調整弁17によって空調用蒸発器16における冷媒の蒸発圧力を所望の圧力に調整して、空調用蒸発器16の外表面における結露水の凍結を抑制可能となる。
【0110】
(第2実施形態の第1変形例)
第2実施形態では、低圧流路部212が冷媒合流部20と吸入側センサ102との間に配置されているものを例示したが、低圧流路部212の配置は、これに限定されない。低圧流路部212は、例えば、図6に示すように、機器用蒸発器19と冷媒合流部20との間に配置されていてもよい。これによると、車室内の暖房または発熱機器63の冷却を実施する運転モードとなる際に、冷凍サイクル10を流れる低圧冷媒が内部熱交換器21を流れることになるので、機器用蒸発器19の吸熱能力を向上させることができる。一方、車室内の冷房または除湿暖房を実施する運転モードとなる際には、冷凍サイクル10を流れる低圧冷媒が内部熱交換器21に流れなくなるので、低圧冷媒の圧力損失を抑えることができる。
【0111】
(第2実施形態の第2変形例)
低圧流路部212は、例えば、図7に示すように、蒸発器側センサ103と冷媒合流部20との間に配置されていてもよい。この場合、蒸発圧力調整弁17は、蒸発器側センサ103と低圧流路部212との間に配置することになる。これによると、車室内の冷房または除湿暖房を実施する運転モードとなる際に、冷凍サイクル10を流れる低圧冷媒が内部熱交換器21を流れることになるので、空調用蒸発器16の吸熱能力を向上させることができる。一方、車室内の暖房または発熱機器63の冷却を実施する運転モードとなる際には、冷凍サイクル10を流れる低圧冷媒が内部熱交換器21に流れなくなるので、低圧冷媒の圧力損失を抑えることができる。
【0112】
(第2実施形態の第3変形例)
第2実施形態では、高圧流路部211が受液部13から冷媒分岐部14までの間に配置されているものを例示したが、高圧流路部211の配置は、これに限定されない。高圧流路部211は、例えば、冷媒分岐部14から第1減圧弁15までの冷媒経路に配置されていてもよい。この場合、空調用蒸発器16における冷媒の吸熱能力の向上を図ることができる。また、高圧流路部211は、例えば、冷媒分岐部14から第2減圧弁18までの冷媒経路に配置されていてもよい。この場合、機器用蒸発器19における冷媒の吸熱能力の向上を図ることができる。
【0113】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図8図11を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0114】
図8図9に示すように、冷凍サイクル装置1は、受液部13の冷媒出口側に、冷媒分岐部14が設けられている。冷媒分岐部14は、第1分岐部14Aおよび第2分岐部14Bを有する。
【0115】
第1分岐部14Aは、1つの冷媒入口、2つの冷媒出口を有する三方弁で構成されている。第1分岐部14Aは、冷媒入口側に受液部13の冷媒出口が接続されている。第1分岐部14Aの一方の冷媒出口側に第2分岐部14Bが接続され、他方の冷媒出口側に第2減圧弁18が接続されている。
【0116】
第2分岐部14Bは、1つの冷媒入口、2つの冷媒出口を有する三方弁で構成されている。第2分岐部14Bの一方の冷媒出口側に第1減圧弁15が接続され、他方の冷媒出口側に第3減圧弁22が接続されている。
【0117】
第1減圧弁15の冷媒出口側には、第1空調用蒸発器16Aが接続されている。第1空調用蒸発器16Aは、第1ヒータコア54Aとともに、フロント空調ユニット40Aのケーシング41Aの内側に配置されている。第1ヒータコア54Aは、第1実施形態のヒータコア54に対応している。また、第1空調用蒸発器16Aは、第1実施形態の空調用蒸発器16に対応している。
【0118】
第1空調用蒸発器16Aは、第1減圧弁15で減圧された冷媒を車室内の前席空間へ送風する送風空気と熱交換させることで蒸発させるものである。第1空調用蒸発器16Aでは、冷媒が車室内の前席空間へ送風する送風空気から吸熱して蒸発することによって空気が冷却される。第1空調用蒸発器16Aの冷媒出口側には、蒸発圧力調整弁17が接続されている。
【0119】
第1空調用蒸発器16Aを通過した空気は、第1ヒータコア54Aを通過した後、空調風として車室内の前席空間へ供給される。本実施形態では、第1空調用蒸発器16Aが“第1蒸発器”に対応している。また、本実施形態では、車室内の前席空間が“空調対象空間”に対応している。
【0120】
第3減圧弁22は、凝縮器12の下流側において、第1減圧弁15に並列となるように接続されている。第3減圧弁22は、凝縮器12を通過して受液部13に貯留された液相冷媒を減圧させる第3減圧部である。第3減圧弁22は、制御部100から出力される制御信号によって、その作動が制御される電気式の可変絞りであり、弁体と電動アクチュエータとを有している。第3減圧弁22は、冷媒の流れを実質的に停止させることが可能な全閉機能付きの可変絞りとして構成されている。
【0121】
第3減圧弁22の冷媒出口側には、第2空調用蒸発器23が接続されている。第2空調用蒸発器23は、第2ヒータコア57とともに、リア空調ユニット40Bのケーシング41Bの内側に配置されている。第2空調用蒸発器23は、第3減圧弁22で減圧された冷媒を車室内の後席空間へ送風する送風空気と熱交換させることで蒸発させるものである。第2空調用蒸発器23では、冷媒が車室内の後席空間へ送風する送風空気から吸熱して蒸発することによって空気が冷却される。
【0122】
第2空調用蒸発器23を通過した空気は、第2ヒータコア57を通過した後、空調風として車室内の後席空間へ供給される。本実施形態では、第2空調用蒸発器23が“第3蒸発器”に対応している。また、本実施形態では、車室内の後席空間が“空調対象空間とは異なる他の空間”に対応している。さらに、本実施形態では、車室内の後席空間へ送風する送風空気が“冷却媒体”に対応している。なお、第2空調用蒸発器23は、第1空調用蒸発器16を通過した空気が供給される空間と同じ空間を冷却するように構成されていてもよい。
【0123】
図10に示すように、車両には、車室内の前方側に第1空調用蒸発器16Aが配置され、車室内の後方側に第2空調用蒸発器23が配置されている。そして、第2空調用蒸発器23は、第1空調用蒸発器16Aよりも圧縮機11に対して離れた位置に配置されている。これにより、第2空調用蒸発器23の下流側は、第1空調用蒸発器16Aの下流側に比べて、熱害の影響を受け易くなっている。
【0124】
第2空調用蒸発器23は、第3減圧弁22と冷媒合流部20との間に配置されている。冷媒合流部20は、第1合流部20Aおよび第2合流部20Bを有する。第2合流部20Bは、第2空調用蒸発器23の冷媒出口側に接続されている。第2合流部20Bは、2つの冷媒入口、1つの冷媒出口を有する三方弁で構成されている。第2合流部20Bの一方の冷媒入口側に第2空調用蒸発器23が接続され、他方の冷媒入口側に蒸発圧力調整弁17が接続されている。第2合流部20Bの冷媒出口側には、第1合流部20Aが接続されている。
【0125】
第1合流部20Aは、2つの冷媒入口、1つの冷媒出口を有する三方弁で構成されている。第1合流部20Aの一方の冷媒入口側に第2合流部20Bが接続され、他方の冷媒入口側に機器用蒸発器19が接続されている。第1合流部20Aの冷媒出口側には、圧縮機11の冷媒吸入口が接続されている。
【0126】
ここで、高温側回路50には、ヒータコア54の代わりに、第1ヒータコア54Aおよび第2ヒータコア57が設けられている。また、高温側回路50には、第3流路切替弁58が設けられている。
【0127】
第1ヒータコア54Aおよび第2ヒータコア57は、高温側回路50における電気ヒータ53の下流に並列に接続されている。第1ヒータコア54Aは、フロント空調ユニット40Aのケーシング41Aの内側に配置されている。第1ヒータコア54Aは、凝縮器12で加熱された高温側熱媒体と車室内の前席空間へ送風する送風空気と熱交換させることで、所望の温度の空調風を生成する。第2ヒータコア57は、リア空調ユニット40Bのケーシング41Bの内側に配置されている。第2ヒータコア57は、凝縮器12で加熱された高温側熱媒体と車室内の後席空間へ送風する送風空気と熱交換させることで、所望の温度の空調風を生成する。
【0128】
第3流路切替弁58は、第1流路切替弁55と同様に、高温側熱媒体の流路を切り替える流路切替部として機能する。第3流路切替弁58は、高温側回路50において高温側熱媒体の流路を第1ヒータコア54A側の流路と第2ヒータコア57側の流路に分岐させる分岐部に設けられている。第3流路切替弁58は、電磁弁で構成され、制御部100から出力される制御信号によって動作が制御される。
【0129】
制御部100には、第1空調用蒸発器16Aの冷媒出口側に設けられた第1蒸発器側センサ103Aが含まれ、第2空調用蒸発器23の冷媒出口側に設けられた第2蒸発器側センサ104が含まれている。第1蒸発器側センサ103Aは、第1実施形態で説明した蒸発器側センサ103に対応している。
【0130】
第2蒸発器側センサ104は、第2空調用蒸発器23を通過した冷媒の圧力および温度を検出する圧力温度センサである。第2蒸発器側センサ104は、圧力の検知部および温度の検知部が一体に構成されていてもよいし、別個に構成されていてもよい。第2蒸発器側センサ104は、第2空調用蒸発器23を通過した冷媒の過熱度を検出するために設けられている。第2蒸発器側センサ104は、冷凍サイクル10における第2空調用蒸発器23から第2合流部20Bまでの冷媒経路に配置されている。本実施形態では、第2空調用蒸発器23を通過した冷媒の圧力および温度が、第2空調用蒸発器23と第2合流部20Bとの間を流れる冷媒の過熱度に相関性を有する“第3物理量”に対応している。また、本実施形態では、第2蒸発器側センサ104が“第3物理量検知部”に対応している。
【0131】
ここで、第2蒸発器側センサ104は、熱害の影響を極力抑えるべく、第2空調用蒸発器23の冷媒出口の直後に配置されている。なお、第2空調用蒸発器23の冷媒出口の直後とは、第2空調用蒸発器23の下流側において第2空調用蒸発器23の冷媒出口における冷媒の状態と実質的に同じ状態となる部位である。例えば、第2空調用蒸発器23の冷媒出口の直後は、第2空調用蒸発器23から第2合流部20Bまでの冷媒経路のうち、第2空調用蒸発器23と第2合流部20Bとの間の中間地点よりも上流にある部位と解釈することができる。
【0132】
制御部100は、第2蒸発器側センサ104のセンサ出力に基づいて、第2空調用蒸発器23の冷媒出口側における冷媒の過熱度が第3目標過熱度に近づくように第3減圧弁22を作動させる。第3減圧弁22は、第2空調用蒸発器23と第2合流部20Bとの間を流れる冷媒の過熱度に相関性を有する第3物理量に基づいて、第2空調用蒸発器23と第2合流部20Bとの間の冷媒の過熱度を第3目標過熱度となるように調整する。
【0133】
また、制御部100は、冷凍サイクル10における吸熱モードをマルチ吸熱モードとシングル吸熱モードとを切替可能に構成されている。本実施形態の制御部100には、マルチ吸熱モードとシングル吸熱モードとを切り替えるモード切替部100aが含まれている。
【0134】
マルチ吸熱モードは、例えば、第1空調用蒸発器16A、第2空調用蒸発器23、機器用蒸発器19それぞれにて冷媒の吸熱作用を発揮させる吸熱モードである。例えば、図11に示すように、制御部100は、マルチ吸熱モード時に、第1減圧弁15、第2減圧弁18、および第3減圧弁22それぞれを絞り状態に制御する。
【0135】
具体的には、制御部100は、第1蒸発器側センサ103Aのセンサ出力に基づいて、第1空調用蒸発器16Aと蒸発圧力調整弁17との間の冷媒の過熱度を求め、当該過熱度が第1目標過熱度に近づくように第1減圧弁15を作動させる。また、制御部100は、吸入側センサ102のセンサ出力に基づいて、第1合流部20Aと圧縮機11との間の冷媒の過熱度を求め、当該過熱度が第2目標過熱度に近づくように第2減圧弁18を作動させる。さらに、制御部100は、第2蒸発器側センサ104のセンサ出力に基づいて、第2空調用蒸発器23と第2合流部20Bとの間の冷媒の過熱度を求め、当該過熱度が第3目標過熱度に近づくように第3減圧弁22を作動させる。これらにより、第1空調用蒸発器16A、第2空調用蒸発器23、および第2空調用蒸発器23それぞれが冷媒の吸熱作用を発揮する状態となる。
【0136】
シングル吸熱モードは、例えば、第1空調用蒸発器16Aおよび機器用蒸発器19の一方の蒸発器にて冷媒の吸熱作用を発揮させる吸熱モードである。このシングル吸熱モードは、第1空調用蒸発器16Aおよび機器用蒸発器19の他方の蒸発器および第2空調用蒸発器23にて冷媒の吸熱作用を発揮させない。シングル吸熱モードは、第1空調用蒸発器16Aにて冷媒の吸熱作用を発揮させる第1シングル吸熱モードおよび機器用蒸発器19にて冷媒の吸熱作用を発揮させる第2シングル吸熱モードを有する。なお、シングル吸熱モードには、第2空調用蒸発器23にて冷媒の吸熱作用を発揮させるような吸熱モードが含まれていない。
【0137】
制御部100は、第1シングル吸熱モード時に、第1減圧弁15を絞り状態に制御し、第2減圧弁18および第3減圧弁22それぞれを全閉状態に制御する。具体的には、制御部100は、第1蒸発器側センサ103Aのセンサ出力に基づいて、第1空調用蒸発器16Aと蒸発圧力調整弁17との間の冷媒の過熱度を求め、当該過熱度が第1目標過熱度に近づくように第1減圧弁15を作動させる。これにより、第1空調用蒸発器16Aが冷媒の吸熱作用を発揮する状態となる。
【0138】
また、制御部100は、第2シングル吸熱モード時に、第2減圧弁18を絞り状態に制御し、第1減圧弁15および第3減圧弁22それぞれを全閉状態に制御する。具体的には、制御部100は、吸入側センサ102のセンサ出力に基づいて、第1合流部20Aと圧縮機11との間の冷媒の過熱度を求め、当該過熱度が第2目標過熱度に近づくように第2減圧弁18を作動させる。これにより、機器用蒸発器19が冷媒の吸熱作用を発揮する状態となる。
【0139】
ここで、本実施形態では、吸熱モードとして、マルチ吸熱モードおよびシングル吸熱モードを説明したが、これに限定されない。吸熱モードは、例えば、第1空調用蒸発器16A、第2空調用蒸発器23、機器用蒸発器19のうち、第1空調用蒸発器16Aおよび機器用蒸発器19にて冷媒の吸熱作用を発揮させる吸熱モードが含まれていてもよい。
【0140】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の冷凍サイクル装置1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0141】
また、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、以下の特徴を備える。
【0142】
(1)冷凍サイクル装置1は、凝縮器12の下流側において第1減圧弁15と並列となるように配置された第3減圧弁22と、第3減圧弁22で減圧された冷媒を、車室内の後席空間へ送風する送風空気と熱交換させて蒸発させる第2空調用蒸発器23と、を備える。第2空調用蒸発器23は、第3減圧弁22と冷媒合流部20との間に配置されている。第3減圧弁22は、第2空調用蒸発器23と冷媒合流部20との間の冷媒の過熱度に相関性のある第3物理量に基づいて、第2空調用蒸発器23と冷媒合流部20との間の冷媒の過熱度を第3目標過熱度に近づくように調整する。
【0143】
このように、第3減圧弁22によって第2空調用蒸発器23の冷媒出口側における冷媒の過熱度を調整する構成とすれば、第2空調用蒸発器23における冷媒と車室内の後席空間への送風空気との熱交換を高効率に実施することができる。このため、車室内の前席空間に加えて車室内の後席空間の空調性能の確保または向上を図ることができる。
【0144】
(2)第1物理量検知部である第1蒸発器側センサ103Aは、第1空調用蒸発器16Aの冷媒出口の直後に配置されている。同様に、第3物理量検知部である第2蒸発器側センサ104は、第2空調用蒸発器23の冷媒出口の直後に配置されている。
【0145】
これによれば、第1空調用蒸発器16Aの冷媒出口側における冷媒の過熱度および第2空調用蒸発器23の冷媒出口側における冷媒の過熱度それぞれを適切に調整して、車室内の前席空間に加えて車室内の後席空間の空調性能の確保または向上を図ることができる。
【0146】
(第3実施形態の第1変形例)
第3実施形態の冷凍サイクル装置1は、第1空調用蒸発器16Aと第2合流部20Bとの間に蒸発圧力調整弁17が配置されているが、これに限定されない。例えば、図12に示すように、冷凍サイクル装置1は、第2空調用蒸発器23と第2合流部20Bとの間に蒸発圧力調整弁17が配置されていてもよい。この場合、蒸発圧力調整弁17は、第2蒸発器側センサ104と第2合流部20Bとの間に配置すればよい。なお、冷凍サイクル装置1は、第1空調用蒸発器16Aおよび第2空調用蒸発器23それぞれの下流に蒸発圧力調整弁17が配置されていてもよい。
【0147】
(第3実施形態の第2変形例)
また、例えば、図13に示すように、冷凍サイクル装置1は、第1空調用蒸発器16Aおよび第2空調用蒸発器23の双方の下流となる第2合流部20Bと第1合流部20Aとの間に配置されていてもよい。これによると、蒸発圧力調整弁17によって第1空調用蒸発器16Aおよび第2空調用蒸発器23の双方における冷媒の蒸発圧力を所望の圧力に調整することで、各空調用蒸発器16A、23の外表面における結露水の凍結を抑制可能となる。
【0148】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図14図15を参照して説明する。本実施形態では、第3実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0149】
図14図15に示すように、冷凍サイクル10には、サイクル内を流れる高圧冷媒と低圧冷媒とを熱交換させる内部熱交換器21が設けられている。内部熱交換器21は、高圧冷媒が通過する高圧流路部211と、低圧冷媒が通過する低圧流路部212を有する。
【0150】
高圧流路部211は、第1減圧弁15、第2減圧弁18、第3減圧弁22の少なくとも1つの上流を流れる高圧冷媒が通過する。具体的には、高圧流路部211は、受液部13から第1減圧弁15、第2減圧弁18、第3減圧弁22の少なくとも1つまでの冷媒経路に配置されている。この冷媒経路は、受液部13から各分岐部14A、14Bまでの経路、第1分岐部14Aから第1減圧弁15までの経路、第2分岐部14Bから第2減圧弁18までの経路、第2分岐部14Bから第3減圧弁22までの経路を含んでいる。
【0151】
本実施形態の高圧流路部211は、受液部13と第1分岐部14Aとの間に配置されている。このため、高圧流路部211を通過した冷媒は、第1減圧弁15、第2減圧弁18、第3減圧弁22それぞれに流れる。
【0152】
低圧流路部212は、第1空調用蒸発器16A、機器用蒸発器19、第2空調用蒸発器23の少なくとも1つの下流を流れる低圧冷媒が通過する。低圧流路部212は、第1蒸発器側センサ103A、第2蒸発器側センサ104、機器用蒸発器19の1つから吸入側センサ102までの間の冷媒経路に配置されている。この冷媒経路は、各蒸発器側センサ103A、104から第1合流部20Aまでの経路、機器用蒸発器19から第1合流部20Aまでの経路、第1合流部20Aから吸入側センサ102までの経路を含んでいる。
【0153】
ここで、第2空調用蒸発器23は、圧縮機11に対して離れた位置に配置されている。このため、熱害の影響によって、第2空調用蒸発器23の冷媒出口側の過熱度が大きくなり易い。そして、第2空調用蒸発器23と第2合流部20Bとの間に低圧流路部212が配置されていると、圧縮機11に吸入される冷媒の過熱度が過大となってしまう。第2空調用蒸発器23の冷媒出口側の過熱度が過大となることは、圧縮機11が高温になり易くなる要因となるので、好ましくない。
【0154】
このような理由もあり、低圧流路部212は、第2空調用蒸発器23から第2合流部20Bまでの冷媒経路を避けて配置することが望ましい。すなわち、低圧流路部212は、第1物理量検知部である第1蒸発器側センサ103Aから第2物理量検知部である吸入側センサ102までの間の冷媒経路または機器用蒸発器19から吸入側センサ102までの間の冷媒経路に配置されていることが望ましい。
【0155】
これらを加味して、本実施形態の低圧流路部212は、冷媒合流部20と吸入側センサ102との間に配置されている。このため、低圧流路部212には、第1空調用蒸発器16Aを通過した冷媒、機器用蒸発器19を通過した冷媒、第2空調用蒸発器23を通過した冷媒が流入する。
【0156】
また、蒸発圧力調整弁17は、第1蒸発器側センサ103Aおよび第2蒸発器側センサ104の少なくとも一方から低圧流路部212までの間の冷媒経路に配置されている。この冷媒経路は、第1蒸発器側センサ103Aから冷媒合流部20までの経路、第2蒸発器側センサ104から冷媒合流部20までの経路、冷媒合流部20から低圧流路部212までの経路を含んでいる。本実施形態の蒸発圧力調整弁17は、第1蒸発器側センサ103Aと第2合流部20Bとの間に配置されている。
【0157】
その他については、第3実施形態と同様である。本実施形態の冷凍サイクル装置1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0158】
また、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0159】
(1)冷凍サイクル装置1は、高圧流路部211が受液部13と第1分岐部14Aとの間に配置されている。これによると、第1減圧弁15、第2減圧弁18、第3減圧弁22に流入する冷媒のエンタルピが低下することで、第1空調用蒸発器16A、機器用蒸発器19、第2空調用蒸発器23の吸熱能力を向上させることができる。
【0160】
(2)冷凍サイクル装置1は、低圧流路部212が冷媒合流部20と吸入側センサ102との間に配置されている。これによると、内部熱交換器21を追加しても、各空調用蒸発器16A、23の冷媒出口側における冷媒の過熱度を適切に調整しつつ、圧縮機11の冷媒吸入側における冷媒の過熱度を適切に調整することができる。
【0161】
特に、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、マルチ吸熱モードだけでなく、シングル吸熱モードにおいても、内部熱交換器21の高圧流路部211および低圧流路部212の双方を冷媒が通過する。これによると、第1空調用蒸発器16A、機器用蒸発器19、第2空調用蒸発器23の吸熱能力を向上させることができる。
【0162】
(3)また、冷凍サイクル装置1は、低圧流路部212が、第2空調用蒸発器23から第2合流部20Bまでの冷媒経路を避けて配置されている。すなわち、低圧流路部212は、第1物理量検知部である第1蒸発器側センサ103Aから第2物理量検知部である吸入側センサ102までの間の冷媒経路または機器用蒸発器19から吸入側センサ102までの間の冷媒経路に配置されている。このため、第2空調用蒸発器23の冷媒出口側の過熱度が過大となることを抑制することができる。この結果、車室内の後席空間の快適性を確保することが可能になる。
【0163】
(5)蒸発圧力調整弁17は、第1蒸発器側センサ103Aと冷媒合流部20との間に配置されている。これによれば、内部熱交換器21を追加しても、蒸発圧力調整弁17によって第1空調用蒸発器16Aにおける冷媒の蒸発圧力を所望の圧力に調整して、第1空調用蒸発器16Aの外表面における結露水の凍結を抑制可能となる。
【0164】
(第4実施形態の第1変形例)
第4実施形態の冷凍サイクル装置1は、低圧流路部212が冷媒合流部20と吸入側センサ102との間に配置されているものを例示したが、これに限定されない。冷凍サイクル装置1は、例えば、図16に示すように、低圧流路部212が機器用蒸発器19と冷媒合流部20との間に配置されていてもよい。この場合、機器用蒸発器19の吸熱能力を向上させることができる。
【0165】
(第4実施形態の第2変形例)
また、冷凍サイクル装置1は、例えば、図17に示すように、低圧流路部212が第1蒸発器側センサ103Aと冷媒合流部20との間に配置されていてもよい。この場合、第1空調用蒸発器16Aの吸熱能力を向上させることができる。なお、蒸発圧力調整弁17は、第1蒸発器側センサ103Aと低圧流路部212との間に配置される。
【0166】
(第4実施形態の第3変形例)
第4実施形態の冷凍サイクル装置1は、第1蒸発器側センサ103Aと第2合流部20Bとの間に蒸発圧力調整弁17が配置されているが、これに限定されない。例えば、図18に示すように、冷凍サイクル装置1は、第2蒸発器側センサ104と第2合流部20Bとの間に蒸発圧力調整弁17が配置されていてもよい。この場合、蒸発圧力調整弁17によって第2空調用蒸発器23における冷媒の蒸発圧力を所望の圧力に調整することで、第2空調用蒸発器23の外表面における結露水の凍結を抑制可能となる。
【0167】
(第4実施形態の第4変形例)
例えば、図19に示すように、冷凍サイクル装置1は、第1蒸発器側センサ103Aおよび第2蒸発器側センサ104それぞれの下流に蒸発圧力調整弁17が配置されていてもよい。この場合、蒸発圧力調整弁17によって第1空調用蒸発器16Aおよび第2空調用蒸発器23の双方における冷媒の蒸発圧力を所望の圧力に調整することで、各空調用蒸発器16A、23の外表面における結露水の凍結を抑制可能となる。
【0168】
(第4実施形態の第5変形例)
また、例えば、図20に示すように、冷凍サイクル装置1は、第1空調用蒸発器16Aおよび第2空調用蒸発器23の双方の下流となる第2合流部20Bと第1合流部20Aとの間に配置されていてもよい。この場合、蒸発圧力調整弁17によって第1空調用蒸発器16Aおよび第2空調用蒸発器23の双方における冷媒の蒸発圧力を所望の圧力に調整することで、各空調用蒸発器16A、23の外表面における結露水の凍結を抑制可能となる。
【0169】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0170】
上述の実施形態では、冷凍サイクル10について具体的な構成を挙げて説明したが冷凍サイクル10は、上述したものと異なる構成になっていてもよい。上述の実施形態の冷凍サイクル10は、受液部13、蒸発圧力調整弁17を備えているが、これらは必須ではなく、省略されていてもよい。
【0171】
上述の実施形態の如く、蒸発器側センサ103は、空調用蒸発器16の冷媒出口の直後に配置されていることが望ましいが、これに限定されず、空調用蒸発器16の冷媒出口からある程度離れた位置に配置されていてもよい。このことは、第1蒸発器側センサ103Aおよび第2蒸発器側センサ104についても同様である。
【0172】
上述の第3、第4実施形態の冷凍サイクル装置1は、第2空調用蒸発器23にて車室内の後席空間を冷却する構成になっているが、これに限らず、例えば、冷蔵庫や冷凍庫等の庫内を冷却する構成になっていてもよい。
【0173】
上述の実施形態では、高温側回路50について具体的な構成を挙げて説明したが高温側回路50は、上述したものと異なる構成になっていてもよい。例えば、高温側熱媒体の熱を発熱機器63の加熱に利用可能に構成されていてもよい。
【0174】
上述の実施形態では、低温側回路60について具体的な構成を挙げて説明したが低温側回路60は、上述したものと異なる構成になっていてもよい。
【0175】
上述の実施形態の各減圧弁15、18、22は、電気式の可変絞りで構成されているが、これに限定されない。各減圧弁15、18、22は、例えば、冷媒の過熱度を検知するための感温部を含む機械式の膨張弁で構成されていてもよい。この場合、各減圧弁15、18、22の感温部が、各物理量検知部に対応することになる。
【0176】
上述の実施形態の冷凍サイクル10は、凝縮器12の下流に受液部13が設けられたレシーバサイクルとして構成されているが、これに限定されない。冷凍サイクル10は、受液部13が設けられていないサイクル構成になっていてもよい。
【0177】
上述の実施形態では、冷凍サイクル装置1を車両の空調装置に適用したものを例示したが、冷凍サイクル装置1は、移動体用の空調装置に限らず、例えば、据え置き型の空調装置または可搬型の空調装置等にも適用可能である。
【0178】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0179】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0180】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0181】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0182】
1 冷凍サイクル装置
11 圧縮機
12 凝縮器(放熱器)
15 第1減圧弁(第1減圧部)
16 空調用蒸発器(第1蒸発器)
18 第2減圧弁(第2減圧部)
19 機器用蒸発器(第2蒸発器)
20 冷媒合流部
63 発熱機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20