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特許7666507イミド-アミド酸共重合体及びその製造方法、ワニス、並びにポリイミドフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】イミド-アミド酸共重合体及びその製造方法、ワニス、並びにポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/14 20060101AFI20250415BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20250415BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
C08G73/14
C08J5/18 CFG
G02F1/1333 500
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022515433
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2021015573
(87)【国際公開番号】W WO2021210641
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2020073647
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大東 葵
(72)【発明者】
【氏名】石井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】三田寺 淳
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6444522(JP,B1)
【文献】特開2015-135464(JP,A)
【文献】特開平07-157560(JP,A)
【文献】特開2006-016592(JP,A)
【文献】特開2002-201271(JP,A)
【文献】国際公開第2020/138360(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/14
C08J 5/18
G02F 1/1333
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される、イミド部分(IM)とアミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)とからなる繰り返し単位を含む、イミド-アミド酸共重合体。
【化1】

(式(1)中、
1は炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、
2はX1とは異なる炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、
1は下記式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つで表される基であり、
2は下記一般式(5)で表される基であり、
s、t及びuは正の整数である。)
【化2】

(式(3)中、Z1は、単結合、又は-O-で表される基を示す。
式(4)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。)
【化3】

(式(5)中、Z2、Z3はそれぞれ独立して、-COO-で表される基、又は-OCO-で表される基を示す。R1、R2、R3はそれぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基を表す。h、i、j、kは0~4の整数である。)
【請求項2】
前記sが1~50であり、かつ前記tが1~50である、請求項1に記載のイミド-アミド酸共重合体。
【請求項3】
前記uが5~200である、請求項1又は2に記載のイミド-アミド酸共重合体。
【請求項4】
前記X1が、下記式(6)で表される基である、請求項1~3のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化4】
【請求項5】
前記X2が、下記式(7)で表される基である、請求項1~4のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化5】
【請求項6】
前記イミド部分(IM)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X1A及びジアミンに由来する構成単位Y1Bを有し、
前記アミド酸部分(AM1)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X2A、ジアミンに由来する構成単位Y1Bを有し、
前記アミド酸部分(AM2)がテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X2A、ジアミンに由来する構成単位Y2Bを有し、
構成単位X1Aが、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を含み、
構成単位X2Aが、構成単位X1Aとは異なる芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を含み、
構成単位Y1Bが、ジアミン(b1)に由来する構成単位(B1)を含み、構成単位(B1)が、下記式(b11)で表される化合物に由来する構成単位(B11)、下記一般式(b12)で表される化合物に由来する構成単位(B12)及び下記一般式(b13)で表される化合物に由来する構成単位(B13)からなる群より選ばれる少なくともいずれか一つを含み、
構成単位Y2Bが下記一般式(b2)で表される化合物に由来する構成単位(B2)を含む、請求項1~5のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化6】

(式(b12)中、Z1は、単結合、又は-O-で表される基を示す。
式(b13)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。
式(b2)中、Z2、Z3はそれぞれ独立して、-COO-で表される基、又は-OCO-で表される基を示す。R1、R2、R3はそれぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基を表す。h、i、j、kは0~4の整数である。)
【請求項7】
構成単位X2Aが、芳香族テトラカルボン酸二無水物(a2)に由来する構成単位(A2)を含み、
構成単位(A2)が、下記式(a21)で表される化合物に由来する構成単位(A21)、下記式(a22)で表される化合物に由来する構成単位(A22)、下記式(a23)で表される化合物に由来する構成単位(A23)、下記式(a24)で表される化合物に由来する構成単位(A24)、及び下記式(a25)で表される化合物に由来する構成単位(A25)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項6に記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化7】
【請求項8】
更に下記一般式(b3)で表される化合物に由来する構成単位(B3)を含む、請求項6又は7に記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化8】

(式(b3)中、Z4及びZ5はそれぞれ独立に2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基を示し、R4及びR5はそれぞれ独立に1価の芳香族基又は1価の脂肪族基を示し、R6及びR7はそれぞれ独立に1価の脂肪族基を示し、R8及びR9は、それぞれ独立に1価の脂肪族基又は1価の芳香族基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mとnとの和は2~1000の整数を示す。但し、R4及びR5の少なくとも一方は1価の芳香族基を示す。)
【請求項9】
前記R4及びR5が、フェニル基であり、R6及びR7が、メチル基である、請求項8に記載のイミド-アミド酸共重合体。
【請求項10】
イミド-アミド酸共重合体中のポリオルガノシロキサン単位の含有量が1~20質量%である、請求項8又は9に記載のイミド-アミド酸共重合体。
【請求項11】
構成単位X1Aが下記式(a1)で表される化合物に由来する構成単位(A1)を含む、請求項6~10のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化9】
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つに記載の共重合体が有機溶媒に溶解してなる、ワニス。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1つに記載の共重合体中のアミド酸部位をイミド化してなるポリイミド樹脂を含む、ポリイミドフィルム。
【請求項14】
前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)が100,000~300,000である、請求項13に記載のポリイミドフィルム。
【請求項15】
下記工程1及び工程2を有する、イミド-アミド酸共重合体の製造方法。
工程1:イミド部分(IM)を構成するテトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とを反応させ、イミドオリゴマーを得る工程
工程2:工程1で得られたイミドオリゴマーと、アミド酸部分(AM2)を構成するテトラカルボン酸成分およびジアミン成分を反応させ、下記式(1)で表される、イミド部分(IM)とアミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)とからなる繰り返し単位を含む、イミド-アミド酸共重合体を得る工程
【化10】

(式(1)中、
1は炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、
2はX1とは異なる炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、
1は下記式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つで表される基であり、
2は下記一般式(5)で表される基であり、
s、t及びuは正の整数である。)
【化11】

(式(3)中、Z1は、単結合、又は-O-で表される基を示す。
式(4)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。)
【化12】

(式(5)中、Z2、Z3はそれぞれ独立して、-COO-で表される基、又は-OCO-で表される基を示す。R1、R2、R3はそれぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基を表す。h、i、j、kは0~4の整数である。)
【請求項16】
工程1で得られるイミドオリゴマーが分子鎖の主鎖の両末端にアミノ基を有する、請求項15に記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
【請求項17】
工程1において、テトラカルボン酸成分に対するジアミン成分のモル比(ジアミン/テトラカルボン酸)が、1.01~2である、請求項15又は16に記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
【請求項18】
工程2終了後に、ポリオルガノシロキサン単位を含有するジアミンを反応させる、請求項15~17のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミド樹脂の前駆体であるイミド-アミド酸共重合体及びその製造方法、共重合体を含むワニス、並びにポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、電気・電子部品等の分野において様々な利用が検討されている。例えば、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイ等の画像表示装置に用いられるガラス基板を、デバイスの軽量化やフレキシブル化を目的として、プラスチック基板へ代替することが望まれており、当該プラスチック基板として適するポリイミドフィルムの研究が進められている。このような用途のポリイミドフィルムには透明性と低い黄色度が求められる。
また、ガラス支持体やシリコンウェハ上に塗布したワニスを加熱硬化してポリイミドフィルムを形成する場合には、ポリイミドフィルムに残留応力が生じる。ポリイミドフィルムの残留応力が大きいと、ガラス支持体やシリコンウェハが反ってしまうという問題が生じるため、ポリイミドフィルムには残留応力の低減も求められる。
【0003】
このような点について、たとえば、特許文献1には、残留応力が低く、反りが少なく、黄色度が小さく、伸度が高いポリイミドフィルムを得ることを目的として、2種の特定のアミド酸構造単位を特定の比率で含むことを特徴とするポリイミド前駆体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/051827号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように特定の用途のポリイミドフィルムには透明性と低い黄色度が求められる。しかし、TFTのデバイスタイプがLTPS(低温ポリシリコンTFT)では、400℃を超えるプロセス温度であり、基板となるポリイミドには400℃以上の高温に耐える耐熱性が求められ、そのような熱履歴においても、透明性と低い黄色度を維持することが求められる。
また、前記のように支持体の反りの問題から残留応力を低減することも求められる。更に、デバイスを構成する無機層との線熱膨張率の違いから、接合面における剥離や製品の変形が危惧されるという理由から線熱膨張係数の低減も必要とされている。
特許文献1には残留応力を低減し、黄色度を低減する技術が開示されているが、いまだ不十分であり、特に透明性と低い黄色度を維持しつつ、耐熱性等に優れたポリイミドフィルムを得ることはできていなかった。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は残留応力と線熱膨張係数が低く、透明性と耐熱性に優れ、黄色度が低いポリイミドフィルムを得ることができる、ポリイミド樹脂の前駆体であるイミド-アミド酸共重合体及びその製造方法、該共重合体を含むワニス、並びにポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の構成単位の組み合わせを含む共重合体が上記課題を解決できることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の[1]~[18]に関する。
[1]下記式(1)で表される、イミド部分(IM)とアミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)とからなる繰り返し単位を含む、イミド-アミド酸共重合体。
【化1】

(式(1)中、
1は炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、
2はX1とは異なる炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、
1は下記式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つで表される基であり、
2は下記一般式(5)で表される基であり、
s、t及びuは正の整数である。)
【化2】

(式(3)中、Z1は、単結合、又は-O-で表される基を示す。
式(4)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。)
【化3】

(式(5)中、Z2、Z3はそれぞれ独立して、-COO-で表される基、又は-OCO-で表される基を示す。R1、R2、R3はそれぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基を表す。h、i、j、kは0~4の整数である。)
[2]前記sが1~50であり、かつ前記tが1~50である、前記[1]に記載のイミド-アミド酸共重合体。
[3]前記uが5~200である、前記[1]又は[2]に記載のイミド-アミド酸共重合体。
[4]前記X1が、下記式(6)で表される基である、前記[1]~[3]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化4】

[5]前記X2が、下記式(7)で表される基である、前記[1]~[4]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化5】

[6]前記イミド部分(IM)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X1A及びジアミンに由来する構成単位Y1Bを有し、
前記アミド酸部分(AM1)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X2A、ジアミンに由来する構成単位Y1Bを有し、
前記アミド酸部分(AM2)がテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X2A、ジアミンに由来する構成単位Y2Bを有し、
構成単位X1Aが、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を含み、
構成単位X2Aが、構成単位X1Aとは異なる芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を含み、
構成単位Y1Bが、ジアミン(b1)に由来する構成単位(B1)を含み、構成単位(B1)が、下記式(b11)で表される化合物に由来する構成単位(B11)、下記一般式(b12)で表される化合物に由来する構成単位(B12)及び下記一般式(b13)で表される化合物に由来する構成単位(B13)からなる群より選ばれる少なくともいずれか一つを含み、
構成単位Y2Bが下記一般式(b2)で表される化合物に由来する構成単位(B2)を含む、前記[1]~[5]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化6】

(式(b12)中、Z1は、単結合、又は-O-で表される基を示す。
式(b13)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。
式(b2)中、Z2、Z3はそれぞれ独立して、-COO-で表される基、又は-OCO-で表される基を示す。R1、R2、R3はそれぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基を表す。h、i、j、kは0~4の整数である。)
[7]構成単位X2Aが、芳香族テトラカルボン酸二無水物(a2)に由来する構成単位(A2)を含み、
構成単位(A2)が、下記式(a21)で表される化合物に由来する構成単位(A21)、下記式(a22)で表される化合物に由来する構成単位(A22)、下記式(a23)で表される化合物に由来する構成単位(A23)、下記式(a24)で表される化合物に由来する構成単位(A24)、及び下記式(a25)で表される化合物に由来する構成単位(A25)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、前記[6]に記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化7】

[8]更に下記一般式(b3)で表される化合物に由来する構成単位(B3)を含む、前記[6]又は[7]に記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化8】

(式(b3)中、Z4及びZ5はそれぞれ独立に2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基を示し、R4及びR5はそれぞれ独立に1価の芳香族基又は1価の脂肪族基を示し、R6及びR7はそれぞれ独立に1価の脂肪族基を示し、R8及びR9は、それぞれ独立に1価の脂肪族基又は1価の芳香族基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mとnとの和は2~1000の整数を示す。但し、R4及びR5の少なくとも一方は1価の芳香族基を示す。)
[9]前記R4及びR5が、フェニル基であり、R6及びR7が、メチル基である、前記[8]に記載のイミド-アミド酸共重合体。
[10]イミド-アミド酸共重合体中のポリオルガノシロキサン単位の含有量が1~20質量%である、前記[8]又は[9]に記載のイミド-アミド酸共重合体。
[11]構成単位X1Aが下記式(a1)で表される化合物に由来する構成単位(A1)を含む、前記[6]~[10]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化9】

[12]前記[1]~[11]のいずれか1つに記載の共重合体が有機溶媒に溶解してなる、ワニス。
[13]前記[1]~[11]のいずれか1つに記載の共重合体中のアミド酸部位をイミド化してなるポリイミド樹脂を含む、ポリイミドフィルム。
[14]前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)が100,000~300,000である、前記[13]に記載のポリイミドフィルム。
[15]下記工程1及び工程2を有する、イミド-アミド酸共重合体の製造方法。
工程1:イミド部分(IM)を構成するテトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とを反応させ、イミドオリゴマーを得る工程
工程2:工程1で得られたイミドオリゴマーと、アミド酸部分(AM2)を構成するテトラカルボン酸成分およびジアミン成分を反応させ、下記式(1)で表される、イミド部分(IM)とアミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)とからなる繰り返し単位を含む、イミド-アミド酸共重合体を得る工程
【化10】

(式(1)中、
1は炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、
2はX1とは異なる炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、
1は下記式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つで表される基であり、
2は下記一般式(5)で表される基であり、
s、t及びuは正の整数である。)
【化11】

(式(3)中、Z1は、単結合、又は-O-で表される基を示す。
式(4)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。)
【化12】

(式(5)中、Z2、Z3はそれぞれ独立して、-COO-で表される基、又は-OCO-で表される基を示す。R1、R2、R3はそれぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基を表す。h、i、j、kは0~4の整数である。)
[16]工程1で得られるイミドオリゴマーが分子鎖の主鎖の両末端にアミノ基を有する、前記[15]に記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
[17]工程1において、テトラカルボン酸成分に対するジアミン成分のモル比(ジアミン/テトラカルボン酸)が、1.01~2である、前記[15]又は[16]に記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
[18]工程2終了後に、ポリオルガノシロキサン単位を含有するジアミンを反応させる、前記[15]~[17]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、残留応力と線熱膨張係数が低く、透明性と耐熱性に優れ、黄色度が低いポリイミドフィルムを得ることができる、ポリイミド樹脂の前駆体であるイミド-アミド酸共重合体及びその製造方法、該共重合体を含むワニス、並びにポリイミドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[イミド-アミド酸共重合体]
本発明のイミド-アミド酸共重合体は、下記式(1)で表される、イミド部分(IM)とアミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)とからなる繰り返し単位を含む。
【化13】

(式(1)中、
1は炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、
2はX1とは異なる炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、
1は下記式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つで表される基であり、
2は下記一般式(5)で表される基であり、
s、t及びuは正の整数である。)
【化14】

(式(3)中、Z1は、単結合、又は-O-で表される基を示す。
式(4)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。)
【化15】

(式(5)中、Z2、Z3はそれぞれ独立して、-COO-で表される基、又は-OCO-で表される基を示す。R1、R2、R3はそれぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基を表す。h、i、j、kは0~4の整数である。)
【0010】
本発明のイミド-アミド酸共重合体がポリイミドフィルムの原料として優れ、得られたポリイミドフィルムが、残留応力と線熱膨張係数が低く、透明性に優れ、低い黄色度を維持しつつ、高い耐熱性を有するという優れた特性を有する理由は定かではないが、次のように考えられる。
芳香族基からなるテトラカルボン酸由来の成分と、前記の特定のジアミン成分からなる共重合体は、トリフルオロメチル基やスルホン基あるいはカルド構造のかさ高い骨格と剛直なビフェニル骨格とエステル骨格を適当な比率で有するために、TFT基板等に必要な低残留応力、低線熱膨張係数、また、透明性と低い黄色度と、高耐熱性を両立できるものと考えられる。
一方、適当な比率を有した場合であっても、カルド構造を含有するポリアミド酸成分はフィルム化時の熱イミド化が起こりにくく、カルド構造を含有するポリアミド酸成分を有するポリマーをフィルム化した場合、通常、良好な物性を発現しにくいが、本発明のイミド-アミド酸共重合体においては、カルド構造を含有する成分の一部をあらかじめポリマー重合時にイミド化しているため、フィルム化後の物性に優れるものと考えられる。
【0011】
<イミド部分(IM)>
本発明のイミド-アミド酸共重合体を構成するイミド部分(IM)は、前記式(1)の(IM)で示される部分である。
前記式(1)において、X1は、炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。ここで4価の芳香族基とは、イミド基に結合する4つの炭素のいずれもが芳香族炭素であることを意味する。また、前記結合基は、X1に2つ以上の芳香環を含む場合に各芳香環を結合する結合基のことをいう。なお、結合基はこれらに限定されない。
1が芳香族基であることによって、ポリイミドの耐熱性が良好となるため好ましい。
【0012】
1は、後述するテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X1Aの原料となるテトラカルボン酸二無水物から2つのジカルボン酸無水物部分(4つのカルボキシ基部分)を除いたものであることが好ましい。
これらのなかでも、X1は、下記式(6)で表される基であることがより好ましい。
【化16】
【0013】
前記式(1)において、Y1は下記式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つで表される基である。
【化17】

(式(3)中、Z1は、単結合、又は-O-で表される基を示す。
式(4)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。)
【0014】
1は、後述するジアミンに由来する構成単位Y1Bの原料となるジアミンから2つのアミノ基部分を除いたものであることが好ましい。
【0015】
<アミド酸部分(AM2)>
本発明のイミド-アミド酸共重合体を構成するアミド酸部分(AM2)は、前記式(1)の(AM2)で示される部分である。
前記式(1)において、X2は、X1とは異なる炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。ここで4価の芳香族基とは、イミド基に結合する4つの炭素のいずれもが芳香族炭素であることを意味する。また、前記結合基は、X1に2つ以上の芳香環を含む場合に各芳香環を結合する結合基のことをいう。なお、結合基はこれらに限定されない。
【0016】
2は、後述するテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X2Aの原料となるテトラカルボン酸二無水物から2つのジカルボン酸無水物部分(4つのカルボキシ基部分)を除いたものであることが好ましい。
これらのなかでも、X2は、下記式(7)で表される基であることがより好ましい。
【化18】
【0017】
前記式(1)において、Y2は下記一般式(5)で表される基である。
【化19】

(式(5)中、Z2、Z3はそれぞれ独立して、-COO-で表される基、又は-OCO-で表される基を示す。R1、R2、R3はそれぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基を表す。h、i、j、kは0~4の整数である。)
【0018】
2は、後述するジアミンに由来する構成単位Y2Bの原料となるジアミンから2つのアミノ基部分を除いたものであることが好ましい。
【0019】
<アミド酸部分(AM1)>
本発明のイミド-アミド酸共重合体を構成するアミド酸部分(AM1)は、前記式(1)の(AM1)で示される部分である。
アミド酸部分(AM1)は、イミド部分(IM)とアミド酸部分(AM2)の結合部分であり、アミド酸部分(AM1)におけるX2は、アミド酸部分(AM2)と同様であり、アミド酸部分(AM1)におけるY1は、イミド部分(IM)と同様である。
【0020】
<イミド-アミド酸共重合体の構成>
前記式(1)において、sはイミド部分(IM)の繰り返し単位の数であって、正の整数である。
sは、透明性、低黄色度、高耐熱性の観点から、1~50であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~5であることがより更に好ましい。イミド部分(IM)の平均繰り返し数、すなわち、sの平均値は、1~10であることが好ましく、1.5~9であることがより好ましく、1.5~8であることが更に好ましく、1.7~5であることがより更に好ましい。前記イミド部分(IM)の平均繰り返し数は、後述のポリイミドワニスやポリイミドフィルムに含まれる全部のイミド-アミド酸共重合体のイミド部分(IM)の繰り返し数の平均値のことをいい、sの平均値は、後述のポリイミドワニスやポリイミドフィルムに含まれる全部のイミド-アミド酸共重合体のsの平均値のことをいう。
【0021】
前記式(1)において、tはアミド酸部分(AM2)の繰り返し単位の数であって、正の整数である。
tは、高耐熱性、低残留応力および低線熱膨張係数の観点から、1~50であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~5であることがより更に好ましい。アミド酸部分(AM2)の平均繰り返し数、すなわち、tの平均値は、1~10であることが好ましく、1.5~9であることがより好ましく、1.5~8であることが更に好ましく、1.7~5であることがより更に好ましい。前記アミド酸部分(AM2)の平均繰り返し数は、後述のポリイミドワニスやポリイミドフィルムに含まれる全部のイミド-アミド酸共重合体のアミド酸部分(AM2)の繰り返し数の平均値のことをいい、tの平均値は、後述のポリイミドワニスやポリイミドフィルムに含まれる全部のイミド-アミド酸共重合体のtの平均値のことをいう。
【0022】
前記式(1)において、uは、イミド部分(IM)、アミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)とからなる繰り返し単位の数であって、正の整数である。
uは、耐熱性、低残留応力および低線熱膨張係数の観点から、5~200であることが好ましく、6~150であることがより好ましく、10~120であることが更に好ましい。
イミド部分(IM)、アミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)とからなる繰り返し単位の平均繰り返し数、すなわち、uの平均値は、5~200であることが好ましい。前記イミド部分(IM)、アミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)とからなる繰り返し単位の平均繰り返し数は、後述のポリイミドワニスやポリイミドフィルムに含まれる全部のイミド-アミド酸共重合体のイミド部分(IM)、アミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)とからなる繰り返し単位の繰り返し数の平均値のことをいい、uの平均値は、後述のポリイミドワニスやポリイミドフィルムに含まれる全部のイミド-アミド酸共重合体のuの平均値のことをいう。
【0023】
イミド-アミド酸共重合体に対する、イミド部分(IM)、アミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)の合計の比率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、更に好ましくは85質量%以上であり、上限には制限はなく、100質量%以下である。
【0024】
従来のイミド-アミド酸共重合体は、イミド部分とアミド酸部分が、ランダムに存在するのに対して、本発明のイミド-アミド酸共重合体は、イミド部分(IM)、アミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)が特定の構造を有することで、残留応力、線熱膨張係数が低く、透明性、低黄色度、耐熱性に優れるものができると考えられる。
【0025】
<イミド-アミド酸共重合体の各構成単位>
本発明のイミド-アミド酸共重合体は、前記式(1)で表される、イミド部分(IM)とアミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)とからなる繰り返し単位を含むが、該共重合体を構成する構成単位について以下に説明する。
【0026】
本発明のイミド-アミド酸共重合体は、前記イミド部分(IM)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X1A及びジアミンに由来する構成単位Y1Bを有し、
前記アミド酸部分(AM1)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X2A、ジアミンに由来する構成単位Y1Bを有し、
前記アミド酸部分(AM2)がテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X2A、ジアミンに由来する構成単位Y2Bを有し、
構成単位X1Aが、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を含み、
構成単位X2Aが、構成単位X1Aとは異なる芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を含み、
構成単位Y1Bが、ジアミン(b1)に由来する構成単位(B1)を含み、構成単位(B1)が、下記式(b11)で表される化合物に由来する構成単位(B11)、下記一般式(b12)で表される化合物に由来する構成単位(B12)及び下記一般式(b13)で表される化合物に由来する構成単位(B13)からなる群より選ばれる少なくともいずれか一つを含み、
構成単位Y2Bが下記一般式(b2)で表される化合物に由来する構成単位(B2)を含むことが好ましい。
【化20】

(式(b12)中、Z1は、単結合、又は-O-で表される基を示す。
式(b13)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。
式(b2)中、Z2、Z3はそれぞれ独立して、-COO-で表される基、又は-OCO-で表される基を示す。R1、R2、R3はそれぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基を表す。h、i、k、nは0~4の整数である。)
【0027】
(構成単位X1A)
構成単位X1Aは、本発明の共重合体のイミド部分(IM)に占めるテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位であって、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を含む。
【0028】
構成単位X1Aは、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を含むものであれば、制限はないが、構成単位X1Aは、下記式(a1)で表される化合物に由来する構成単位(A1)を含むことが好ましい。
【化21】
【0029】
式(a1)で表される化合物は、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)である。
式(a1)で表される化合物由来する構成単位(A1)を含むことで、透明性、低黄色度、高耐熱性となるため、好ましい。
【0030】
構成単位X1Aが構成単位(A1)を含む場合、構成単位X1A中における構成単位(A1)の含有比率は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは55モル%以上であり、更に好ましくは60モル%以上であり、より更に好ましくは80モル%以上であり、より更に好ましくは90モル%以上であり、より更に好ましくは95モル%以上である。構成単位(A1)の含有比率の上限値は特に限定されず、100モル%以下である。構成単位Aは構成単位(A1)のみからなっていてもよい。
【0031】
構成単位X1Aは、構成単位(A1)以外の構成単位を含んでもよい。そのような構成単位を与えるテトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、及びジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物、及び1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
なお、本明細書において、脂環式テトラカルボン酸二無水物とは、2つの酸無水物(4つのカルボキシ基)の4つのα炭素のうち、少なくとも1つの酸無水物(2つの隣接するカルボキシ基)の2つのα炭素が脂環を構成する炭素であるテトラカルボン酸二無水物を意味し、芳香族テトラカルボン酸二無水物とは、2つの酸無水物(4つのカルボキシ基)の4つのα炭素が芳香環を構成する炭素であるテトラカルボン酸二無水物を意味し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式テトラカルボン酸二無水物にも芳香族テトラカルボン酸二無水物にも該当しないテトラカルボン酸二無水物を意味する。
構成単位X1Aに任意に含まれる構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0032】
(構成単位X2A)
構成単位X2Aは、本発明の共重合体のアミド酸部分(AM2)及びアミド酸部分(AM1)に占めるテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位であって、構成単位X1Aとは異なる芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を含む。
【0033】
構成単位X2Aは、構成単位X1Aとは異なる芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を含むものであれば、制限はないが、構成単位X2Aは、芳香族テトラカルボン酸二無水物(a2)に由来する構成単位(A2)を含むことが好ましい。
ここで、構成単位(A2)は、下記式(a21)で表される化合物に由来する構成単位(A21)、下記式(a22)で表される化合物に由来する構成単位(A22)、下記式(a23)で表される化合物に由来する構成単位(A23)、下記式(a24)で表される化合物に由来する構成単位(A24)及び下記式(a25)で表される化合物に由来する構成単位(A25)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。
【化22】
【0034】
式(a21)で表される化合物は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)であり、その具体例としては、下記式(a21s)で表される3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、下記式(a21a)で表される2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)、下記式(a21i)で表される2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(i-BPDA)が挙げられる。中でも、下記式(a21s)で表される3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)が好ましい。
【0035】
【化23】
【0036】
式(a22)で表される化合物は、p-フェニレンビス(トリメリテート)二無水物(TAHQ)である。
【0037】
式(a23)で表される化合物は、オキシジフタル酸無水物(ODPA)であり、その具体例としては、下記式(a23s)で表される4,4’-オキシジフタル酸無水物(s-ODPA)、下記式(a23a)で表される3,4’-オキシジフタル酸無水物(a-ODPA)、下記式(a23i)で表される3,3’-オキシジフタル酸無水物(i-ODPA)が挙げられる。中でも、下記式(a23s)で表される4,4’-オキシジフタル酸無水物(s-ODPA)が好ましい。
【0038】
【化24】
【0039】
式(a24)で表される化合物は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)である。
【0040】
式(a25)で表される化合物は、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物である。
【0041】
構成単位(A2)は、高耐熱性、及び低残留応力の観点から、構成単位(A21)、及び構成単位(A22)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましく、構成単位(A21)を含むことがより好ましい。
特に、構成単位(A21)はフィルムの耐熱性及び熱安定性を向上させることができ、また、残留応力をより低下させる観点から好ましく、構成単位(A22)は残留応力を低下させることができ、線熱膨張係数も低下させることができる観点から好ましい。
【0042】
構成単位X2Aは、構成単位(A2)以外の構成単位を含んでもよい。そのような構成単位を与えるテトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、及びジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物、及び1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
構成単位X2Aに任意に含まれる構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0043】
構成単位(A2)中における、構成単位(A21)~(A25)の合計の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。その比率の上限値は特に限定されず、100モル%以下である。構成単位(A2)は、構成単位(A21)~(A25)から選ばれる少なくとも1種を含んでいればよく、構成単位(A21)~(A25)から選ばれるいずれか1種のみからなっていてもよい。
構成単位(A2)が構成単位(A21)~(A25)から選ばれる2種以上の構成単位を含有する場合、構成単位(A2)中における各構成単位の比率に特に制限は無く、任意の比率とすることができる。
【0044】
構成単位X2A中における、構成単位(A2)の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは85モル%以上である。当該含有比率の上限値は特に限定されず、100モル%以下である。
【0045】
構成単位X1Aが構成単位(A1)を含み、構成単位X2Aが構成単位(A2)を含む場合、イミド-アミド酸共重合体のテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位中の、構成単位(A1)と構成単位(A2)とのモル比〔(A1)/(A2)〕は、好ましくは10/90~55/45であり、より好ましくは15/85~50/50であり、更に好ましくは20/80~45/55である。
【0046】
(構成単位Y1B)
構成単位Y1Bは、本発明の共重合体のイミド部分(IM)及びアミド酸部分(AM1)に占めるジアミンに由来する構成単位であって、ジアミン(b1)に由来する構成単位(B1)を含み、構成単位(B1)が、下記式(b11)で表される化合物に由来する構成単位(B11)、下記一般式(b12)で表される化合物に由来する構成単位(B12)及び下記一般式(b13)で表される化合物に由来する構成単位(B13)からなる群より選ばれる少なくともいずれか一つを含む。
耐熱性の観点からは、カルド構造を有する式(b13)で表される化合物に由来する構成単位(B13)を含むことが好ましく、透明性の観点からは、電子吸引性基を有する式(b11)で表される化合物に由来する構成単位(B11)、式(b12)で表される化合物に由来する構成単位(B12)を含むことが好ましい。
構成単位(B1)中の、構成単位(B11)~(B13)の合計の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。その比率の上限値は特に限定されず、100モル%以下である。
【化25】

(式(b12)中、Z1は、単結合、又は-O-で表される基を示す。
式(b13)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。)
【0047】
構成単位(B11)は、下記式(b111)で表される化合物に由来する構成単位(B111)及び下記式(b112)で表される化合物に由来する構成単位(B112)からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
構成単位(B11)は、構成単位(B111)のみであってもよく、構成単位(B112)のみであってもよく、又は構成単位(B111)と構成単位(B112)の組合せであってもよい。
【化26】
【0048】
式(b111)で表される化合物は、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)であり、式(b112)で表される化合物は、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)である。
【0049】
構成単位(B12)は、下記式(b121)で表される化合物に由来する構成単位(B121)、及び下記式(b122)で表される化合物に由来する構成単位(B122)からなる群より選ばれる少なくとも1つの構成単位を含むことが好ましく、下記式(b122)で表される化合物に由来する構成単位(B122)を含むことがより好ましい。
【化27】
【0050】
式(b121)で表される化合物は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(6FODA)である。
式(b122)で表される化合物は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)である。
【0051】
構成単位(B13)は、前記式(b13)で表される化合物に由来する構成単位である。
【0052】
前記式(b13)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、好ましくはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
前記式(b13)で表される化合物としては、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)、9,9-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレン、及び9,9-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレン等が挙げられ、これら3種の化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、耐熱性の観点から、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンがより好ましい。
【0053】
構成単位Y1Bは、構成単位(B1)以外の構成単位を含んでもよい。そのような構成単位を与えるジアミンとしては、特に限定されないが、1,4-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、1,5-ジアミノナフタレン、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-5-アミン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、及び1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジアミン;並びにエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
なお、本明細書において、芳香族ジアミンとは芳香環を1つ以上含むジアミンを意味し、脂環式ジアミンとは脂環を1つ以上含み、かつ芳香環を含まないジアミンを意味し、脂肪族ジアミンとは芳香環も脂環も含まないジアミンを意味する。
構成単位Y1Bに任意に含まれる構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0054】
(構成単位Y2B)
構成単位Y2Bは、本発明の共重合体のアミド酸部分(AM2)に占めるジアミンに由来する構成単位であって、構成単位Y2Bは、低残留応力、低線熱膨張係数、耐熱性の観点から、下記一般式(b2)で表される化合物に由来する構成単位(B2)を含む。
【化28】

(式(b2)中、Z2、Z3はそれぞれ独立して、-COO-で表される基、又は-OCO-で表される基を示す。R1、R2、R3はそれぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基を表す。h、i、j、kは0~4の整数である。)
【0055】
構成単位(B2)は、耐熱性、低残留応力及び低線熱膨張係数の観点から、下記式(b21)で表される化合物に由来する構成単位(B21)を含むことが好ましい。
【化29】
【0056】
式(b21)で表される化合物は、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート(4-BAAB)である。
【0057】
構成単位Y2Bは、構成単位(B2)以外の構成単位を含んでもよい。そのような構成単位を与えるジアミンとしては、特に限定されないが、1,4-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、1,5-ジアミノナフタレン、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-5-アミン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、及び1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジアミン;並びにエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
構成単位Y2Bに任意に含まれる構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0058】
構成単位Y1Bと構成単位Y2Bの合計を100モル%とした場合の共重合体のジアミンに由来する構成単位中の構成単位(B1)の比率は、好ましくは10~55モル%、より好ましくは20~50モル%、更に好ましくは25~45モル%である。
構成単位Y1Bと構成単位Y2Bの合計を100モル%とした場合の共重合体のジアミンに由来する構成単位中の構成単位(B2)の比率は、好ましくは45~90モル%、より好ましくは50~80モル%、更に好ましくは55~75モル%である。
構成単位Y1Bが構成単位(B1)を含み、構成単位Y2Bが構成単位(B2)を含む場合、イミド-アミド酸共重合体のジアミンに由来する構成単位中の、構成単位(B1)と構成単位(B2)とのモル比〔(B1)/(B2)〕は、好ましくは10/90~55/45であり、より好ましくは20/80~50/50であり、更に好ましくは25/75~45/55である。
構成単位Y1Bと構成単位Y2Bの合計を100モル%とした場合の共重合体のジアミンに由来する構成単位中の構成単位(B1)と構成単位(B2)の合計の比率は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、上限値は特に限定されず、100モル%以下である。
【0059】
イミド-アミド酸共重合体を構成する構成単位の合計に対する、構成単位X1A、構成単位X2A、構成単位Y1B及び構成単位Y2Bの合計の比率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、更に好ましくは85質量%以上であり、上限には制限はなく、100質量%以下である。
【0060】
(その他の構成単位)
本発明のイミド-アミド酸共重合体には、前記の構成単位X1A、構成単位X2A、構成単位Y1B及び構成単位Y2B以外の構成単位を含んでもよい。
本発明のイミド-アミド酸共重合体は、さらに下記一般式(b3)で表される化合物に由来する構成単位(B3)を含んでもよい。構成単位(B3)を含むことによって、残留応力が低下する。
【化30】
【0061】
式(b3)中、Z4及びZ5はそれぞれ独立に2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基を示し、R4及びR5はそれぞれ独立に1価の芳香族基、又は1価の脂肪族基を示し、R6及びR7はそれぞれ独立に1価の脂肪族基を示し、R8及びR9は、それぞれ独立に1価の脂肪族基、又は1価の芳香族基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mとnとの和は2~1000の整数を示す。但し、R4及びR5の少なくとも一方は1価の芳香族基を示す。
なお、式(b3)において、[ ]によって並列記載されている2以上の異なる繰り返し単位は、それぞれランダム状、交互状又はブロック状のいずれの形及び順序で繰り返されていてもよい。
【0062】
式(b3)中、Z4及びZ5における2価の脂肪族基又は2価の芳香族基は、フッ素原子で置換されていてもよく、酸素原子を含んでいてもよい。エーテル結合として酸素原子を含んでいる場合、以下に示す炭素数は、脂肪族基又は芳香族基に含まれる全ての炭素数のことをいう。
2価の脂肪族基としては、炭素数1~20の2価の飽和又は不飽和の脂肪族基が挙げられる。2価の脂肪族基の炭素数は3~20が好ましい。
2価の飽和脂肪族基としては、炭素数1~20のアルキレン基、アルキレンオキシ基が挙げられ、アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が例示でき、アルキレンオキシ基としては、例えば、プロピレンオキシ基、トリメチレンオキシ基等が例示できる。
2価の不飽和脂肪族基としては、炭素数2~20のアルケニレン基が挙げられ、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、末端に不飽和二重結合を有するアルキレン基が例示できる。
2価の芳香族基としては炭素数6~20のアリーレン基、炭素数7~20のアラルキレン基等が例示できる。Z4及びZ5における炭素数6~20のアリーレン基の具体例としては、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、4,4’-ビフェニリレン基、2,6-ナフチレン基等が挙げられる。
4及びZ5としては、特に、トリメチレン基、p-フェニレン基が好ましく、トリメチレン基がより好ましい。
【0063】
式(b3)中、R4~R9における1価の脂肪族基としては、1価の飽和又は不飽和脂肪族基が挙げられる。1価の飽和脂肪族基としては炭素数1~22のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が例示できる。1価の不飽和脂肪族基としては炭素数2~22のアルケニル基が挙げられ、例えば、ビニル基、プロペニル基等が例示できる。これらの基はフッ素原子で置換されていてもよい。
式(b3)のR4、R5、R8及びR9における1価の芳香族基としては、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~30であり、かつアルキル基で置換されたアリール基、炭素数7~30のアラルキル基等が例示できる。1価の芳香族基としては、アリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
4及びR5の少なくとも一方は1価の芳香族基を示すが、Z4及びZ5がともに1価の芳香族基であることが好ましく、R4及びR5がともにフェニル基であることがより好ましい。
6及びR7としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
8及びR9としては、1価の脂肪族基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0064】
以上のように、上記一般式(b3)で表される化合物のなかでも、下記式(b31)で表される化合物が好ましい。
【0065】
【化31】

(式(b31)中、m及びnは式(b3)のm及びnとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。)
【0066】
式(b3)及び式(b31)におけるmは1価の少なくとも1つの芳香族基が結合するシロキサン単位の繰り返し数を示し、式(b3)及び式(b31)におけるnは1価の脂肪族基が結合するシロキサン単位の繰り返し数を示す。
式(b3)及び式(b31)におけるm及びnはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、m及びnの和(m+n)は2~1000の整数を示す。m及びnの和は、好ましくは3~500の整数、より好ましくは3~100、更に好ましくは3~50の整数を示す。
式(b3)及び式(b31)におけるm/nの比は、好ましくは5/95~50/50、より好ましくは10/90~40/60、更に好ましくは20/80~30/70である。
【0067】
式(b3)で表される化合物の官能基当量(アミン当量)は、好ましくは150~5,000g/mol、より好ましくは400~4,000g/mol、更に好ましくは500~3,000g/molである。
なお、官能基当量とは、官能基(アミノ基)1モルあたりの式(b3)で表される化合物の質量を意味する。
【0068】
上記一般式(b3)で表される化合物のうち、市販品として入手できるものとしては、信越化学工業株式会社製の「X-22-9409」、「X-22-1660B」、「X-22-161A」、「X-22-161B」等が挙げられる。
【0069】
構成単位(B3)を含む場合、構成単位(B3)、構成単位Y1B及び構成単位Y2Bの合計量に対する構成単位(B3)の比率は、好ましくは0.01~15.0モル%、より好ましくは0.5~12.0モル%、更に好ましくは1.0~8.0モル%である。
【0070】
構成単位(B3)を含む場合、イミド-アミド酸共重合体を構成する構成単位の合計に対するポリオルガノシロキサン単位の含有量は、好ましくは1~20質量%、より好ましくは2~18質量%、更に好ましくは5~15質量%である。当該ポリオルガノシロキサン単位の含有量が前記範囲内にあると、低リタデーションと低残留応力とをより高度に両立できる。
【0071】
式(b3)で表される化合物の市販品として入手できるものとしては、信越化学工業株式会社製の「X-22-9409」、「X-22-1660B-3」等が挙げられる。
【0072】
[イミド-アミド酸共重合体の製造方法]
本発明の前記イミド-アミド酸共重合体はいかなる方法で製造してもよいが、次の方法によって得ることが好ましい。
本発明のイミド-アミド酸共重合体の製造方法は、下記工程1及び工程2を有する。
工程1:イミド部分(IM)を構成するテトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とを反応させ、イミドオリゴマーを得る工程
工程2:工程1で得られたイミドオリゴマーと、アミド酸部分(AM2)を構成するテトラカルボン酸成分およびジアミン成分を反応させ、下記式(1)で表される、イミド部分(IM)とアミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)とからなる繰り返し単位を含む、イミド-アミド酸共重合体を得る工程
【化32】

(式(1)中、
1は炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、
2はX1とは異なる炭素数4~39の4価の芳香族基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH32-、-C24O-及び-S-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、
1は下記式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つで表される基であり、
2は下記一般式(5)で表される基であり、
s、t及びuは正の整数である。)
【化33】

(式(3)中、Z1は、単結合、又は-O-で表される基を示す。
式(4)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。)
【化34】

(式(5)中、Z2、Z3はそれぞれ独立して、-COO-で表される基、又は-OCO-で表される基を示す。R1、R2、R3はそれぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基を表す。h、i、j、kは0~4の整数である。)
【0073】
本発明のイミド-アミド酸共重合体の製造方法によれば、イミド部分とアミド酸部分を特定の構造に制御することが可能となるため、従来のイミド部分とアミド酸部分がランダムに存在するイミド-アミド酸共重合体とは異なり、各成分による熱イミド化反応性に応じて、ポリイミド部分とポリアミド酸部分を有するために耐熱性、低残留応力及び低線熱膨張係数が向上することが期待できるイミド-アミド酸共重合体を得ることができるものと考えられる。
【0074】
なかでも、本発明の好適な共重合体の製造方法は、下記工程1及び工程2を有する。
工程1:テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X1Aを与える化合物と、ジアミンに由来する構成単位Y1Bを与える化合物とを反応させ、イミドオリゴマーを得る工程
工程2:工程1で得られたイミドオリゴマーと、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X2Aを与える化合物及びジアミンに由来する構成単位Y2Bを与える化合物を反応させ、前記式(1)で表される、イミド部分(IM)とアミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)とからなる繰り返し単位を含む、イミド-アミド酸共重合体を得る工程
ただし、構成単位X1Aを与える化合物が、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含み、
構成単位X2Aを与える化合物が、構成単位X1Aとは異なる芳香族テトラカルボン酸二無水物を含み、
構成単位Y1Bを与える化合物が、構成単位(B1)を与える化合物を含み、構成単位(B1)を与える化合物が、下記式(b11)で表される化合物、下記一般式(b12)で表される化合物及び下記一般式(b13)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくともいずれか一つを含み、
構成単位Y2Bを与える化合物が下記一般式(b2)で表される化合物を含む。
【化35】

(式(b12)中、Z1は、単結合、又は-O-で表される基を示す。
式(b13)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。
式(b2)中、Z2、Z3はそれぞれ独立して、-COO-で表される基、又は-OCO-で表される基を示す。R1、R2、R3はそれぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基を表す。h、i、j、kは0~4の整数である。)
【0075】
前記工程1及び工程2を有する製造方法により、透明性及び耐熱性に優れ、黄色度が低く、低残留応力にも優れるフィルムが形成可能な共重合体を製造することができる。
以下、本発明の共重合体の製造方法について説明する。
【0076】
<工程1>
工程1は、イミド部分(IM)を構成するテトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とを反応させ、イミドオリゴマーを得る工程である。
イミド部分(IM)を構成するテトラカルボン酸成分は、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0077】
工程1は、より好ましくはテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X1Aを与える化合物と、ジアミンに由来する構成単位Y1Bを与える化合物とを反応させ、イミドオリゴマーを得る工程である。
構成単位X1Aを与える化合物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む。
構成単位Y1Bを与える化合物は、構成単位(B1)を与える化合物を含み、構成単位(B1)を与える化合物が、前記式(b11)で表される化合物、前記一般式(b12)で表される化合物及び前記一般式(b13)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくともいずれか一つを含む。
【0078】
工程1で使用するテトラカルボン酸成分としては、構成単位(A1)を与える化合物を含むことが好ましく、その全量を工程1で使用することが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(A1)を与える化合物以外のテトラカルボン酸成分を含んでいてもよい。
工程1で使用するジアミン成分としては、構成単位(B1)を与える化合物を含むことが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(B1)を与える化合物以外のジアミン成分を含んでいてもよい。
工程1において、テトラカルボン酸成分に対するジアミン成分は、1.01~2モルであることが好ましく、1.05~1.9モルであることがより好ましく、1.1~1.7モルであることが更に好ましい。
【0079】
工程1でイミドオリゴマーを得るための、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させる方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
具体的な反応方法としては、(1)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、10~110℃で0.5~30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(2)ジアミン成分及び反応溶剤を反応器に仕込んで溶解させた後、テトラカルボン酸成分を仕込み、必要に応じて10~110℃で0.5~30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(3)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、直ちに昇温してイミド化反応を行う方法等が挙げられる。
【0080】
イミド化反応では、ディーンスターク装置などを用いて、製造時に生成する水を除去しながら反応を行うことが好ましい。このような操作を行うことで、重合度及びイミド化率をより上昇させることができる。
【0081】
上記のイミド化反応においては、公知のイミド化触媒を用いることができる。イミド化触媒としては、塩基触媒又は酸触媒が挙げられる。
塩基触媒としては、ピリジン、キノリン、イソキノリン、α-ピコリン、β-ピコリン、2,4-ルチジン、2,6-ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、イミダゾール、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の有機塩基触媒、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基触媒が挙げられる。
また、酸触媒としては、クロトン酸、アクリル酸、トランス-3-ヘキセノイック酸、桂皮酸、安息香酸、メチル安息香酸、オキシ安息香酸、テレフタル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。上記のイミド化触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のうち、取り扱い性の観点から、塩基触媒が好ましく、有機塩基触媒がより好ましく、トリエチルアミン及びトリエチレンジアミンから選ばれる1種以上が更に好ましく、トリエチルアミンがより更に好ましい。
【0082】
イミド化反応の温度は、反応率及びゲル化等の抑制の観点から、好ましくは120~250℃、より好ましくは160~200℃である。また、反応時間は、生成水の留出開始後、好ましくは0.5~10時間である。
【0083】
工程1で得られたイミドオリゴマーは、構成単位(A1)を与える化合物と構成単位(B1)を与える化合物とから形成されるイミド繰り返し構造単位を有することが好ましい。
また、工程1で得られるオリゴマーは、分子鎖の主鎖の両末端にアミノ基を有することが好ましい。
上記方法により、溶剤に溶解したイミドオリゴマーを含む溶液が得られる。工程1で得られたイミドオリゴマーを含む溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、工程1においてテトラカルボン酸成分やジアミン成分として使用した成分の少なくとも一部が未反応モノマーとして含有されていてもよい。
【0084】
<工程2>
本発明の製造方法における工程2は、工程1で得られたイミドオリゴマーと、アミド酸部分(AM2)を構成するテトラカルボン酸成分およびジアミン成分を反応させ、前記式(1)で表される、イミド部分(IM)とアミド酸部分(AM1)及びアミド酸部分(AM2)とからなる繰り返し単位を含む、イミド-アミド酸共重合体を得る工程である。
工程2で使用するアミド酸部分(AM2)を構成するテトラカルボン酸成分は、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0085】
工程2は、より好ましくはテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位X2Aを与える化合物と、ジアミンに由来する構成単位Y2Bを与える化合物とを反応させ、イミド-アミド酸共重合体を得る工程である。
構成単位X2Aを与える化合物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む。
構成単位Y2Bを与える化合物は、構成単位(B2)を与える化合物を含み、構成単位(B2)を与える化合物が、前記一般式(b2)で表される化合物を含み、前記式(b21)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0086】
工程2で使用するテトラカルボン酸成分としては、構成単位(A2)を与える化合物を含むことが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(A2)を与える化合物以外のテトラカルボン酸成分を含んでいてもよい。構成単位(A2)を与える化合物以外のテトラカルボン酸成分としては、構成単位(A1)を与える化合物が挙げられるが、ただし、工程2で使用するテトラカルボン酸成分は、構成単位(A1)を与える化合物を含まないことが好ましい。また、構成単位(A2)を与える化合物は、その全量を工程2で使用することが好ましい。
工程2で使用するジアミン成分としては、構成単位(B2)を与える化合物を含むことが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(B2)を与える化合物以外のジアミン成分を含んでいてもよい。
工程2終了後に、本イミド-アミド酸共重合体にポリオルガノシロキサン単位を導入する場合、ポリオルガノシロキサン単位を含有するジアミン又はテトラカルボン酸二無水物を反応させてもよく、ポリオルガノシロキサン単位を含有するジアミンを反応させることが好ましく、構成単位(B3)を与える化合物を反応させることがより好ましい。
【0087】
工程2でイミド-アミド酸共重合体を得るための、テトラカルボン酸成分と工程1で得られたイミドオリゴマーとを反応させる方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
具体的な反応方法としては、(1)工程1で得られたイミドオリゴマー、テトラカルボン酸成分、ジアミン成分及び溶剤を反応器に仕込み、0~120℃、好ましくは5~80℃の範囲で1~72時間撹拌する方法、(2)工程1で得られたイミドオリゴマー及び溶剤を反応器に仕込んで溶解させた後、テトラカルボン酸成分、ジアミン成分を仕込み、0~120℃、好ましくは5~80℃の範囲で1~72時間撹拌する方法、等が挙げられる。
80℃以下で反応させる場合には、工程2で得られる共重合体の分子量が重合時の温度履歴に依存して変動することなく、また熱イミド化の進行も抑制できるため、当該共重合体を安定して製造できる。
【0088】
上記方法により、溶剤に溶解したイミド-アミド酸共重合体を含む共重合体溶液が得られる。
得られる共重合体溶液中の共重合体の濃度は、通常1~50質量%であり、好ましくは3~35質量%、より好ましくは5~30質量%の範囲である。
【0089】
本発明の製造方法で得られるイミド-アミド酸共重合体の数平均分子量は、得られるポリイミドフィルムの機械的強度の観点から、好ましくは5,000~500,000である。また、重量平均分子量(Mw)は、同様の観点から、好ましくは10,000~800,000であり、より好ましくは100,000~300,000である。なお、当該共重合体の数平均分子量は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。
次に本製造方法で用いられる原料等について説明する。
【0090】
<テトラカルボン酸成分>
本製造方法におけるイミド-アミド酸共重合体の原料として用いられるテトラカルボン酸成分は、前記<イミド-アミド酸共重合体の各構成単位>の(構成単位XIA)及び(構成単位X2A)に記載した、それぞれの構成単位を与える化合物を用いることが好ましい。たとえば、構成単位(A1)を与える化合物としては、式(a1)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(a1)で表される化合物に対応するテトラカルボン酸及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。構成単位(A1)を与える化合物としては、式(a1)で表される化合物が好ましい。
同様に、構成単位(A2)を与える化合物としては、式(a21)で表される化合物、式(a22)で表される化合物、式(a23)で表される化合物、式(a24)で表される化合物及び式(a25)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(a21)~(a25)のいずれかで表される化合物に対応するテトラカルボン酸及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。構成単位(A2)を与える化合物としては、式(a21)~(a25)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0091】
本製造方法におけるイミド-アミド酸共重合体の原料として用いられるテトラカルボン酸成分中の、構成単位(A1)を与える化合物と構成単位(A2)を与える化合物とのモル比〔(A1)/(A2)〕は、好ましくは10/90~55/45であり、より好ましくは15/85~50/50であり、更に好ましくは20/80~45/55である。
【0092】
構成単位(A2)を与える化合物中の、構成単位(A21)~(A25)を与える化合物の合計の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。その比率の上限値は特に限定されず、100モル%以下である。
イミド-アミド酸共重合体の原料として用いられるテトラカルボン酸成分には、構成単位(A1)を与える化合物、構成単位(A21)を与える化合物、構成単位(A22)を与える化合物、構成単位(A23)を与える化合物、構成単位(A24)を与える化合物、及び構成単位(A25)を与える化合物以外の化合物を含んでもよく、かかる化合物は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0093】
<ジアミン成分>
本製造方法におけるイミド-アミド酸共重合体の原料として用いられるジアミン成分中の、構成単位(B1)を与える化合物と構成単位(B2)を与える化合物とのモル比〔(B1)/(B2)〕は、好ましくは10/90~55/45であり、より好ましくは20/80~50/50であり、更に好ましくは25/75~45/55である。
構成単位(B1)を与える化合物としては、構成単位(B11)を与える化合物、構成単位(B12)を与える化合物、構成単位(B13)を与える化合物からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。構成単位(B1)を与える化合物中の、構成単位(B11)~(B13)を与える化合物の合計の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。その比率の上限値は特に限定されず、100モル%以下である。
構成単位(B2)を与える化合物としては、構成単位(B2)を与える化合物、1種以上が好ましい。
イミド-アミド酸共重合体の原料として用いられるジアミン成分には、構成単位(B11)を与える化合物、構成単位(B12)を与える化合物、構成単位(B13)を与える化合物、及び(B2)を与える化合物以外の化合物を含んでもよく、かかる化合物は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
構成単位(B1)を与える化合物及び構成単位(B2)を与える化合物としては、ジアミンが挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、ジアミンに対応するジイソシアネートが挙げられる。構成単位(B1)を与える化合物及び構成単位(B2)を与える化合物としては、ジアミンが好ましい。
【0094】
共重合体中に構成単位(B3)を与える化合物を含む場合、構成単位(B3)を与える化合物とジアミン成分の合計量に対して、構成単位(B3)を与える化合物を、好ましくは0.01~15.0モル%、より好ましくは0.5~12.0モル%、更に好ましくは1.0~8.0モル%含む。
【0095】
本発明において、工程1、工程2及び工程2終了後の構成単位(B3)を与える化合物等のその他の成分との反応工程を含めた共重合体の製造の全工程に用いるテトラカルボン酸成分とジアミン成分の仕込み量比は、テトラカルボン酸成分1モルに対してジアミン成分が0.9~1.1モルであることが好ましい。
【0096】
<末端封止剤>
また、本発明において、イミド-アミド酸共重合体の製造には、前述のテトラカルボン酸成分及びジアミン成分の他に、末端封止剤を用いてもよい。末端封止剤は、工程2又は工程2終了後の構成単位(B3)を与える化合物等のその他の成分との反応工程の際に用いることが好ましい。
末端封止剤としてはモノアミン類あるいはジカルボン酸類が好ましい。導入される末端封止剤の仕込み量としては、テトラカルボン酸成分1モルに対して0.0001~0.1モルが好ましく、特に0.001~0.06モルが好ましい。モノアミン類末端封止剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、4-メチルベンジルアミン、4-エチルベンジルアミン、4-ドデシルベンジルアミン、3-メチルベンジルアミン、3-エチルベンジルアミン、アニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン等が推奨される。これらのうち、ベンジルアミン、アニリンが好適に使用できる。ジカルボン酸類末端封止剤としては、ジカルボン酸類が好ましく、その一部を閉環していてもよい。例えば、フタル酸、無水フタル酸、4-クロロフタル酸、テトラフルオロフタル酸、2,3-ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4-ベンゾフェノンジカルボン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等が推奨される。これらのうち、フタル酸、無水フタル酸が好適に使用できる。
【0097】
<溶剤>
本発明の共重合体の製造方法に用いられる溶剤は、生成するイミド-アミド酸共重合体を溶解できるものであればよい。例えば、非プロトン性溶剤、フェノール系溶剤、エーテル系溶剤、カーボネート系溶剤等が挙げられる。
【0098】
非プロトン性溶剤の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等のアミド系溶剤、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶剤、ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含リン系アミド系溶剤、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸(2-メトキシ-1-メチルエチル)等のエステル系溶剤等が挙げられる。
【0099】
フェノール系溶剤の具体例としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等が挙げられる。
エーテル系溶剤の具体例としては、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス〔2-(2-メトキシエトキシ)エチル〕エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
カーボネート系溶剤の具体的な例としては、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
上記反応溶剤の中でも、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤が好ましく、アミド系溶剤がより好ましく、N-メチル-2-ピロリドンが更に好ましい。上記の反応溶剤は単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
【0100】
[ワニス]
本発明のワニスは、ポリイミド樹脂の前駆体である本発明のイミド-アミド酸共重合体が有機溶媒に溶解してなるものである。即ち、本発明のワニスは、本発明の共重合体及び有機溶媒を含み、当該共重合体は当該有機溶媒に溶解している。
有機溶媒は本発明の共重合体が溶解するものであればよく、特に限定されないが、本発明の共重合体の製造に用いられる溶剤として上述した化合物を、単独又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
本発明のワニスは、上述の共重合体溶液そのものであってもよいし、又は当該共重合体溶液に対して更に希釈溶剤を追加したものであってもよい。
【0101】
本発明のワニスは、本発明の共重合体中のアミド酸部位のイミド化を効率よく進行させる観点から、更にイミド化触媒及び脱水触媒を含有させることができる。イミド化触媒としては、沸点が40℃以上180℃以下であるイミド化触媒であればよく、沸点が180℃以下のアミン化合物が好ましいものとして挙げられる。沸点が180℃以下のイミド化触媒であれば、フィルム形成後、高温での乾燥時に該フィルムが着色し、外観が損なわれるおそれがない。また、沸点が40℃以上のイミド化触媒であれば、十分にイミド化が進行する前に揮発する可能性を回避できる。
イミド化触媒として好適に用いられるアミン化合物としては、ピリジン又はピコリンが挙げられる。上記のイミド化触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脱水触媒としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n-酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等の酸無水物;ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物;等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
本発明のワニスに含まれる共重合体は溶媒溶解性を有しているため、高濃度のワニスとすることができる。本発明のワニスは、本発明の共重合体を3~40質量%含む事が好ましく、5~40質量%含むことがより好ましく、10~30質量%含むことが更に好ましい。ワニスの粘度は0.1~100Pa・sが好ましく、0.1~20Pa・sがより好ましい。ワニスの粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定された値である。
また、本発明のワニスは、ポリイミドフィルムの要求特性を損なわない範囲で、無機フィラー、接着促進剤、剥離剤、難燃剤、紫外線安定剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、架橋剤、重合開始剤、感光剤等各種添加剤を含んでもよい。
本発明のワニスの製造方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
【0103】
[ポリイミドフィルム]
本発明のポリイミドフィルムは、本発明のイミド-アミド酸共重合体中のアミド酸部位をイミド化してなるポリイミド樹脂を含む。したがって、本発明のポリイミドフィルムは、透明性及び耐熱性に優れ、黄色度が低く、低残留応力を示す。本発明のポリイミドフィルムが有する好適な物性値は上述の通りである。
本発明のポリイミドフィルムは、前述の共重合体が有機溶媒に溶解してなるワニスを用いて製造することができる。
【0104】
本発明のワニスを用いてポリイミドフィルムを製造する方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、ガラス板、金属板、プラスチックなどの平滑な支持体上に本発明のワニスを塗布、又はフィルム状に成形した後、該ワニス中に含まれる反応溶剤や希釈溶剤等の有機溶媒を加熱により除去し、共重合体フィルムを得て、該共重合体フィルム中の共重合体のアミド酸部位を加熱によりイミド化(脱水閉環)し、次いで支持体から剥離することにより、ポリイミドフィルムを製造することができる。
本発明のポリイミドフィルムに含まれるポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、フィルムの機械的強度の観点から、好ましくは10,000~800,000であり、より好ましくは30,000~500,000であり、更に好ましくは50,000~400,000であり、より更に好ましくは100,000~300,000である。なお、当該共重合体の数平均分子量は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。
【0105】
本発明のワニスを乾燥させて共重合体フィルムを得る際の加熱温度としては、好ましくは50~150℃である。本発明の共重合体を加熱によりイミド化する際の加熱温度としては、好ましくは200~500℃であり、より好ましくは250~450℃であり、更に好ましくは300~400℃である。また、加熱時間は、通常1分間~6時間であり、好ましくは5分間~2時間、より好ましくは15分間~1時間である。
加熱雰囲気は、空気ガス、窒素ガス、酸素ガス、水素ガス、窒素/水素混合ガス等が挙げられるが、得られるポリイミド樹脂の着色を抑えるためには、酸素濃度が100ppm以下の窒素ガス、水素濃度が0.5%以下含む窒素/水素混合ガスが好ましい。
なお、イミド化の方法は熱イミド化に限定されず、化学イミド化を適用することもできる。
【0106】
本発明のポリイミドフィルムの厚さは用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは1~250μmであり、より好ましくは5~100μmであり、更に好ましくは5~50μmである。厚さが1~250μmであることで、自立膜としての実用的な使用が可能となる。
ポリイミドフィルムの厚さは、ワニスの固形分濃度や粘度を調整することにより、容易に制御することができる。
【0107】
<ポリイミドフィルム物性値>
本発明のイミド-アミド酸共重合体を用いることで、透明性及び耐熱性に優れ、黄色度が低く、更に低残留応力を示すポリイミドフィルムを形成することができる。当該フィルムの有する好適な物性値は以下の通りである。
全光線透過率は、厚さ10μmのフィルムとした際に、好ましくは85%以上、より好ましくは86%以上、更に好ましくは87%以上である。
イエローインデックス(YI)は、厚さ10±3μmのフィルムとした際に、好ましくは15.0以下、より好ましくは13.0以下、更に好ましくは12.0以下、より更に好ましくは11.0以下である。
ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは400℃以上、より好ましくは420℃以上、更に好ましくは430℃以上である。
残留応力は、好ましくは35MPa以下、より好ましくは30MPa以下、更に好ましくは24MPa以下である。
線熱膨張係数(100℃~400℃の範囲)は、好ましくは40ppm/℃以下、より好ましくは30ppm/℃以下、更に好ましくは20ppm/℃以下である。
なお、本発明における上述の物性値は、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0108】
本発明のポリイミドフィルムは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ、半導体部品、光学部材等の各種部材用のフィルムとして好適に用いられる。本発明のポリイミドフィルムは、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイ等の画像表示装置の基板として、特に好適に用いられる。
【実施例
【0109】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
実施例及び比較例で得たフィルムの各物性は以下に示す方法によって測定した。
【0110】
(1)フィルム厚さ
フィルム厚さは、株式会社ミツトヨ製のマイクロメーターを用いて測定した。
【0111】
(2)全光線透過率、イエローインデックス(YI)
全光線透過率及びYIは、JIS K7105:1981に準拠し、日本電色工業株式会社製の色彩・濁度同時測定器「COH7700」を用いて測定した。
【0112】
(3)ヘイズ
測定はJIS K7361-1:1997に準拠し、日本電色工業株式会社製の色彩・濁度同時測定器「COH7700」を用いて行った。
【0113】
(4)ガラス転移温度(Tg)
株式会社日立ハイテクサイエンス製の熱機械的分析装置「TMA/SS6100」を用いて、引張モードで試料サイズ3mm×20mm、荷重0.1N、窒素気流下(流量200mL/分)、昇温速度10℃/分の条件で、残留応力を取り除くのに十分な温度まで昇温して残留応力を取り除き、その後室温まで冷却した。その後、前記残留応力を取り除くための処理と同じ条件で試験片伸びの測定を行い、伸びの変曲点が見られたところをガラス転移温度として求めた。
【0114】
(5)線熱膨張係数(CTE)
株式会社日立ハイテクサイエンス製の熱機械的分析装置「TMA/SS6100」を用いて、引張モードで試料サイズ3mm×20mm、荷重0.1N、窒素気流下(流量200mL/分)、昇温速度10℃/分の条件で、残留応力を取り除くのに十分な温度まで昇温して残留応力を取り除き、その後室温まで冷却した。その後、前記残留応力を取り除くための処理と同じ条件で試験片伸びの測定を行い、100℃~400℃のCTEを求めた。
【0115】
(6)1%重量減少温度(Td1%)
株式会社日立ハイテクサイエンス製の示差熱熱重量同時測定装置「TG/DTA6200」を用いた。試料を昇温速度10℃/minで40~550℃まで昇温し、300℃における重量と比較して、重量が1%減少した時の温度を1%重量減少温度とした。重量減少温度は数値が大きいほど優れる。
【0116】
(7)引張強度、引張弾性率
引張強度、引張弾性率は、JIS K7127:1999に準拠し、東洋精機株式会社製の引張試験機「ストログラフVG-1E」を用いて測定した。チャック間距離は50mm、試験片サイズは10mm×70mm、試験速度は20mm/minとした。
【0117】
(8)残留応力
ケーエルエー・テンコール社製の残留応力測定装置「FLX-2320」を用いて、予め「反り量」を測定しておいた、厚み525μm±25μmの4インチシリコンウェハ上に、実施例及び比較例で得られたワニスを、スピンコーターを用いて塗布し、プリベークした。その後、熱風乾燥器を用いて、窒素雰囲気下、400℃60分間(昇温速度5℃/分)の加熱硬化処理を施し、硬化後膜厚6~15μmのポリイミドフィルムのついたシリコンウェハを作製した。このウェハの反り量を前述の残留応力測定装置を用いて測定し、シリコンウェハとポリイミドフィルムの間に生じた残留応力を評価した。
【0118】
実施例及び比較例にて使用したテトラカルボン酸成分及びジアミン成分、並びにその略号等は下記の通りである。
<テトラカルボン酸成分>
BPAF:9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレンニ酸無水物(JFEケミカル株式会社製;式(a1)で表される化合物)
s-BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱ケミカル株式会社製、式(a21s)で表される化合物)
<ジアミン成分>
4,4’-DDS:4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(セイカ株式会社製、式(b111)で表される化合物)
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(セイカ株式会社製;式(b122)で表される化合物)
4-BAAB:4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート(日本純良薬品株式会社製;式(b21)で表される化合物)
【0119】
実施例及び比較例において使用した、溶媒及び触媒の略号等は下記の通りである。
NMP:N-メチル-2-ピロリドン(東京純薬工業株式会社製)
TEA:トリエチルアミン(関東化学株式会社製)
【0120】
〈実施例1〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、4,4’-DDSを9.932g(0.040モル)、及びNMPを46.380g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、BPAF 13.753g(0.030モル)、及びNMP 11.595gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.152g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分間かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを95.849g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、s-BPDA 20.595g(0.070モル)、4-BAABを13.695g(0.060モル)及びNMP 16.858gを一括で添加し、50℃で5時間撹拌した。その後、固形分濃度が約15質量%になるようにNMPを添加し均一化させることで、イミド繰り返し構造単位とアミド酸構造単位とを有する共重合体を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、窒素雰囲気下、熱風乾燥機中430℃で60分間加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0121】
〈実施例2〉
BPAFの量を13.753(0.030モル)から9.169g(0.020モル)に変更し、s-BPDAの量を20.595g(0.070モル)から23.538g(0.080モル)に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、固形分濃度約15質量%のワニスを得た。
得られたワニスを用いて、実施例1と同様の方法によりフィルムを得た。
【0122】
〈実施例3〉
BPAFの量を13.753(0.030モル)から9.169g(0.020モル)に変更し、s-BPDAの量を20.595g(0.070モル)から23.538g(0.080モル)に変更し、4,4’-DDSの量を9.932(0.040モル)から7.449g(0.030モル)に変更し、4-BAABの量を13.695(0.060モル)から15.978g(0.070モル)に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、固形分濃度約15質量%のワニスを得た。
得られたワニスを用いて、実施例1と同様の方法によりフィルムを得た。
【0123】
〈実施例4〉
4,4’-DDS 9.932g(0.040モル)をTFMB 12.810g(0.040モル)に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、固形分濃度約15質量%のポリイミドワニスを得た。
得られたワニスを用いて、実施例1と同様の方法によりフィルムを得た。
【0124】
〈実施例5〉
BPAFの量を13.753(0.030モル)から9.169g(0.020モル)に変更し、s-BPDAの量を20.595g(0.070モル)から23.538g(0.080モル)に変更し、TFMBの量を12.810g(0.040モル)から9.607g(0.030モル)に変更し、4-BAABの量を13.695(0.060モル)から15.978g(0.070モル)に変更した以外は、実施例4と同様の方法により、固形分濃度約15質量%のワニスを得た。
得られたワニスを用いて、実施例1と同様の方法によりフィルムを得た。
【0125】
〈比較例1〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、4-BAABを22.825g(0.100モル)、及びNMPを167.190g投入し、系内温度50℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、s-BPDA 29.422g(0.100モル)、及びNMP 41.798gを一括で添加し室温にて5時間撹拌した。
その後、固形分濃度が約15質量%となるようにNMPを87.078g添加し、更に約1時間撹拌して均一化して、ポリアミド酸(PAA)ワニスを得た。
得られたワニスを用いて、実施例1と同様の方法によりフィルムを得た。
なお、比較例1で得られたワニスに含まれるポリアミド酸は、s-BPDAと4-BAABとから形成されるアミド酸繰り返し構造単位のみを有するものであった。
【0126】
〈比較例2〉
s-BPDA 29.422g(0.100モル)をBPAF 45.843g(0.100モル)に変更した以外は、比較例1と同様の方法により、固形分濃度約15質量%のポリアミド酸(PAA)ワニスを得た。
得られたワニスを用いて、実施例1と同様の方法によりフィルムを得た。
なお、比較例1で得られたワニスに含まれるポリアミド酸は、BPAFと4-BAABとから形成されるアミド酸繰り返し構造単位のみを有するものであった。
【0127】
〈比較例3〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、4,4’-DDSを9.932g(0.040モル)、4-BAABを13.695g(0.060モル)、及びNMPを139.141g投入し、系内温度50℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、BPAF 13.753g(0.030モル)、s-BPDA 20.595g(0.070モル)、及びNMP 34.785gを一括で添加し室温にて5時間撹拌した。その後、固形分濃度が約15質量%になるようにNMPを添加し均一化させることでポリアミド酸(PAA)ワニスを得た。
得られたワニスを用いて、実施例1と同様の方法によりフィルムを得た。
比較例3で得られたワニスに含まれるポリアミド酸は、BPAF、s-BPDA、4,4’-DDS、及び4-BAABとから形成されるアミド酸繰り返し構造単位のみを有するものであった。
【0128】
【表1】
【0129】
表1に示すように、特定のイミド繰り返し構造単位及びアミド酸構造単位を有する実施例のイミド-アミド酸共重合体から得られたポリイミドフィルムは、残留応力と線熱膨張係数が低く、透明性と耐熱性にも優れ、黄色度も低いことがわかる。
実施例1と比較例3はポリイミドフィルムを構成する原料組成は同じであるが、ポリアミド酸から得られた比較例3のポリイミドフィルムに比べ、実施例1のポリイミドフィルムは、透明性と低黄色度を維持しつつ、特に耐熱性に優れ、残留応力と線熱膨張係数も低いものであった。