(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信装置の方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20250415BHJP
【FI】
H04B7/06 982
(21)【出願番号】P 2022569761
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2021040738
(87)【国際公開番号】W WO2022130821
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2020209739
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】田和 憲明
(72)【発明者】
【氏名】桑原 俊秀
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-182804(JP,A)
【文献】特開2005-064626(JP,A)
【文献】特開2004-235829(JP,A)
【文献】国際公開第2015/185680(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナのうちの1つ以外のアンテナから校正用DL(Down Link)信号を送信し、1つのアンテナで前記校正用DL信号を受信するDL制御と、前記1つのアンテナから校正用UL(Up Link)信号を送信し、前記1つ以外のアンテナで前記校正用UL信号を受信するUL制御と、を複数の前記アンテナごとに行う校正制御手段と、
前記DL制御において複数の前記アンテナから送信した前記校正用DL信号と複数の前記アンテナで受信した前記校正用DL信号と、前記UL制御において複数の前記アンテナから送信した前記校正用UL信号と複数の前記アンテナで受信した前記校正用UL信号と、に基づいて複数の前記アンテナごとに前記アンテナに接続する送信機のDLチャネル係数と受信機のULチャネル係数を計算し、
前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数とに基づいて、無線DL信号を校正するための校正係数を計算する校正係数計算手段と、
前記校正係数に基づいて複数の前記アンテナのそれぞれから送信する前記無線DL信号の位相と振幅を調整する校正適用手段と、
を備え、
前記校正係数計算手段は、
前記1つ以外のアンテナから送信した送信時の前記校正用DL信号と前記1つのアンテナで受信した受信時の前記校正用DL信号とに基づいて前記1つ以外のアンテナに対応する複数の前記DLチャネル係数を、複数の前記アンテナごとに計算し、
前記1つのアンテナから送信した送信時の前記校正用UL信号と前記1つ以外のアンテナで受信した受信時の前記校正用UL信号とに基づいて前記1つ以外のアンテナに対応する複数の前記ULチャネル係数を、複数の前記アンテナごとに計算し、
前記DL制御と前記UL制御により得られた複数の校正用測定から計算した前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数とに基づいて、前記無線DL信号を校正するための前記校正係数を計算し、
前記校正係数計算手段は、
複数の前記校正用測定から計算した前記ULチャネル係数に対する前記DLチャネル係数の割合をUL/DLチャネル係数比率として計算し、
複数の前記校正用測定の前記UL/DLチャネル係数比率のうちの1つを基準チャネル係数比率として選択し、
複数の前記校正用測定の前記UL/DLチャネル係数比率に対する前記基準チャネル係数比率の割合を複数の校正用測定間の補正係数として計算し、
複数の前記校正用測定間の前記補正係数を用いて、複数の前記校正用測定に対して、前記ULチャネル係数に対する前記DLチャネル係数の割合を補正し、
前記校正係数計算手段は、
複数回の前記校正用測定を行い、前記1つのアンテナに対して複数の前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数が得られた場合、前記校正用DL信号又は前記校正用UL信号の受信電力に基づいて重み付け係数を求め、
前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数から、前記校正用測定ごとに前記ULチャネル係数に対する前記DLチャネル係数の比率を、前記UL/DLチャネル係数比率として計算し、
前記校正用測定ごとに前記UL/DLチャネル係数比率を、前記補正係数を用いて、前記校正用測定間の補正を行い、
複数の前記アンテナごとに、補正した前記校正用測定ごとの前記UL/DLチャネル係数比率を、前記重み付け係数に基づいて複数の前記校正用測定間で重み付け平均した重み付け平均UL/DLチャネル係数比率を計算し、
前記重み付け平均UL/DLチャネル係数比率を、新たに前記校正係数とする、
無線通信装置。
【請求項2】
前記校正係数計算手段は、
複数の前記校正用測定で計算した複数の前記校正用測定間の前記補正係数を平均して平均補正係数を計算し、
前記平均補正係数を新たに前記補正係数とする、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記校正制御手段は、複数の前記アンテナのそれぞれから異なる周波数の前記校正用DL信号が送信するように制御する、
請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記校正適用手段は、複数の前記アンテナのいずれかの温度と前回の校正時の温度との差が所定温度以上の場合、又は、全ての前記アンテナの平均温度と前回の校正時の温度との差が前記所定温度以上の場合、前記無線DL信号の位相と振幅を再度調整する、
請求項1から3のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【請求項5】
複数のアンテナのうちの1つ以外のアンテナから校正用DL(Down Link)信号を送信し、1つのアンテナで前記校正用DL信号を受信するDL制御と、前記1つのアンテナから校正用UL(Up Link)信号を送信し、前記1つ以外のアンテナで前記校正用UL信号を受信するUL制御と、を複数の前記アンテナごとに行うことと、
前記DL制御において複数の前記アンテナから送信した前記校正用DL信号と複数の前記アンテナで受信した前記校正用DL信号と、前記UL制御において複数の前記アンテナから送信した前記校正用UL信号と複数の前記アンテナで受信した前記校正用UL信号と、に基づいて複数の前記アンテナごとに前記アンテナに接続する送信機のDLチャネル係数と受信機のULチャネル係数を計算することと、
前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数とに基づいて、無線DL信号を校正するための校正係数を計算することと、
前記校正係数に基づいて複数の前記アンテナのそれぞれから送信する前記無線DL信号の位相と振幅を調整することと、
前記1つ以外のアンテナから送信した送信時の前記校正用DL信号と前記1つのアンテナで受信した受信時の前記校正用DL信号とに基づいて前記1つ以外のアンテナに対応する複数の前記DLチャネル係数を、複数の前記アンテナごとに計算することと、
前記1つのアンテナから送信した送信時の前記校正用UL信号と前記1つ以外のアンテナで受信した受信時の前記校正用UL信号とに基づいて前記1つ以外のアンテナに対応する複数の前記ULチャネル係数を、複数の前記アンテナごとに計算することと、
前記DL制御と前記UL制御により得られた複数の校正用測定から計算した前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数とに基づいて、前記無線DL信号を校正するための前記校正係数を計算することと、
複数の前記校正用測定から計算した前記ULチャネル係数に対する前記DLチャネル係数の割合をUL/DLチャネル係数比率として計算することと、
複数の前記校正用測定の前記UL/DLチャネル係数比率のうちの1つを基準チャネル係数比率として選択することと、
複数の前記校正用測定の前記UL/DLチャネル係数比率に対する前記基準チャネル係数比率の割合を複数の校正用測定間の補正係数として計算することと、
複数の前記校正用測定間の前記補正係数を用いて、複数の前記校正用測定に対して、前記ULチャネル係数に対する前記DLチャネル係数の割合を補正することと、
複数回の前記校正用測定を行い、前記1つのアンテナに対して複数の前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数が得られた場合、前記校正用DL信号又は前記校正用UL信号の受信電力に基づいて重み付け係数を求めることと、
前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数から、前記校正用測定ごとに前記ULチャネル係数に対する前記DLチャネル係数の比率を、前記UL/DLチャネル係数比率として計算することと、
前記校正用測定ごとに前記UL/DLチャネル係数比率を、前記補正係数を用いて、前記校正用測定間の補正を行うことと、
複数の前記アンテナごとに、補正した前記校正用測定ごとの前記UL/DLチャネル係数比率を、前記重み付け係数に基づいて複数の前記校正用測定間で重み付け平均した重み付け平均UL/DLチャネル係数比率を計算することと、
前記重み付け平均UL/DLチャネル係数比率を、新たに前記校正係数とすることと、
を備える無線通信装置の方法。
【請求項6】
複数のアンテナのうちの1つ以外のアンテナから校正用DL(Down Link)信号を送信し、1つのアンテナで前記校正用DL信号を受信するDL制御と、前記1つのアンテナから校正用UL(Up Link)信号を送信し、前記1つ以外のアンテナで前記校正用UL信号を受信するUL制御と、を複数の前記アンテナごとに行うことと、
前記DL制御において複数の前記アンテナから送信した前記校正用DL信号と複数の前記アンテナで受信した前記校正用DL信号と、前記UL制御において複数の前記アンテナから送信した前記校正用UL信号と複数の前記アンテナで受信した前記校正用UL信号と、に基づいて複数の前記アンテナごとに前記アンテナに接続する送信機のDLチャネル係数と受信機のULチャネル係数を計算することと、
前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数とに基づいて、無線DL信号を校正するための校正係数を計算することと、
前記校正係数に基づいて複数の前記アンテナのそれぞれから送信する前記無線DL信号の位相と振幅を調整することと、
前記1つ以外のアンテナから送信した送信時の前記校正用DL信号と前記1つのアンテナで受信した受信時の前記校正用DL信号とに基づいて前記1つ以外のアンテナに対応する複数の前記DLチャネル係数を、複数の前記アンテナごとに計算することと、
前記1つのアンテナから送信した送信時の前記校正用UL信号と前記1つ以外のアンテナで受信した受信時の前記校正用UL信号とに基づいて前記1つ以外のアンテナに対応する複数の前記ULチャネル係数を、複数の前記アンテナごとに計算することと、
前記DL制御と前記UL制御により得られた複数の校正用測定から計算した前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数とに基づいて、前記無線DL信号を校正するための前記校正係数を計算することと、
複数の前記校正用測定から計算した前記ULチャネル係数に対する前記DLチャネル係数の割合をUL/DLチャネル係数比率として計算することと、
複数の前記校正用測定の前記UL/DLチャネル係数比率のうちの1つを基準チャネル係数比率として選択することと、
複数の前記校正用測定の前記UL/DLチャネル係数比率に対する前記基準チャネル係数比率の割合を複数の校正用測定間の補正係数として計算することと、
複数の前記校正用測定間の前記補正係数を用いて、複数の前記校正用測定に対して、前記ULチャネル係数に対する前記DLチャネル係数の割合を補正することと、
複数回の前記校正用測定を行い、前記1つのアンテナに対して複数の前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数が得られた場合、前記校正用DL信号又は前記校正用UL信号の受信電力に基づいて重み付け係数を求めることと、
前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数から、前記校正用測定ごとに前記ULチャネル係数に対する前記DLチャネル係数の比率を、前記UL/DLチャネル係数比率として計算することと、
前記校正用測定ごとに前記UL/DLチャネル係数比率を、前記補正係数を用いて、前記校正用測定間の補正を行うことと、
複数の前記アンテナごとに、補正した前記校正用測定ごとの前記UL/DLチャネル係数比率を、前記重み付け係数に基づいて複数の前記校正用測定間で重み付け平均した重み付け平均UL/DLチャネル係数比率を計算することと、
前記重み付け平均UL/DLチャネル係数比率を、新たに前記校正係数とすることと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置、無線通信装置の方法、及びプログラムに関するものであり、特に、分散アンテナの校正を容易に行うことが可能な無線通信装置、無線通信装置の方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の基地局では、MIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送方式を用いて、通信容量の向上が図られている。MIMO伝送方式に対応した基地局は、複数のアンテナと変復調器を備え、それぞれから異なる無線信号を送受信する。この複数の無線信号(送受信信号)を用いて、空間的に無線信号(ユーザ信号)を多重することで、周波数利用効率を増加させている。MIMO伝送方式に対応した基地局では、複数のアンテナを用いて特定の方向へのアンテナゲインの増加や、ヌル形成による混信の抑圧などを行うことができる。この技術をビームフォーミングと呼び、主に2つの種類が有る。1つはアナログビームフォーミングであり、もう1つはデジタルビームフォーミングである。アナログビームフォーミングは、1つ以上の無線信号を複数のアンテナに分配(分散)し、それぞれに位相器などで異なる位相を与えることで、特定の方向のアンテナゲインを増加させる技術である。一方、デジタルビームフォーミングは、各アンテナの送受信信号の位相と振幅を調整する技術である。デジタルビームフォーミングに対応した基地局は、アンテナ数と同数のトランシーバを備え、各アンテナからの送受信信号をデジタル的に制御する。これにより、ZF(Zero Forcing)やMMSE(Minimum Mean Square Error)などの空間多重技術を使用できる。ZFやMMSEでは、アンテナゲインのヌル方向の制御も行うため、複数の送受信信号の混信を抑え、より効率的に信号を多重することができる。
【0003】
空間多重技術を用いるためには、電波の伝搬環境を示すチャネル係数を求める必要がある。基地局は、チャネル係数を、例えば、基地局の受信信号(UL(Uplink)信号)を用いて、これに含まれるリファレンス信号から推定する。チャネル係数を推定する処理のことをチャネル推定という。基地局が複数のユーザ端末(UE:User Equipment)からのUL信号を受信した場合、これらのUL信号は混信してしまう。そこで、基地局は、チャネル推定で求めたチャネル係数と空間多重技術とを用いて、多重化されたUL信号を分離することでそれぞれのUEとの間でUL通信を行うことができる。一方、基地局からUEへのDL(Down Link)通信では、UL信号から推定したチャネル係数を用いて、予め空間多重技術を適応したDL信号を送信することで多重化したDL通信を行う。チャネル係数を用いて、予め空間多重技術を適応したDL信号を生成する処理をプリコーディングという。基地局は、プリコーディングを行うことで、DL通信において、UE間の混信を抑圧することができ、複数のUEと通信することができる。これにより、基地局は、同じ周波数帯域、且つ、同じ時間帯において、複数のユーザと通信することができ、周波数利用効率を向上させることができる。
【0004】
DL通信では、UL信号から推定したチャネル係数を用いて、予め空間多重技術を適応したDL信号を送信する。これは、UL通信とDL通信における伝搬チャネルの相反性を利用するものであり、TDD(Time Division Duplex)方式の通信で用いられる。チャネルの相反性をMIMO伝送方式に用いるためには、各アンテナから送受信される送受信信号を校正する必要がある。この校正が不完全な場合、チャネル推定で得られるチャネル係数に受信機に起因する誤差が含まれ、無線信号を正確に空間多重することができない。また、送信機の誤差も空間多重に影響を与え通信特性を劣化させる。
【0005】
そこで、基地局は、通信に使用する送受信回路に加えて校正用送受信回路を備え、校正用送受信回路を用いて通信に使用する送受信回路を校正する場合がある。このようにすることで、基地局を運用場所に設置後も校正が可能なため、温度や経年変化による送受信特性の変化を補正でき、高い精度の空間多重技術を使用することができる。一方、基地局は、校正用送受信回路が追加となるため、コストや消費電力が増加してしまう。また、アナログビームフォーミングとデジタルビームフォーミングを組み合わせたハイブリッドビームフォーミングと呼ばれる技術を使用した基地局が有る。このような基地局においても、送受信回路の校正が必要である。
【0006】
MIMO伝送方式に対応した基地局を、MIMO装置、又は、MIMO基地局と称する。MIMO装置は、2つの種類に分けられる。1つは、複数のアンテナ部が1つの筐体に搭載されたC-MIMO(Collocated - MIMO)装置と、もう1つは、複数のアンテナ部のそれぞれが個別の筐体に搭載された分散MIMO装置である。分散MIMO装置をD-MIMO(Distributed - MIMO)装置と称する。アンテナ部の校正は、特に、D-MIMO装置で重要とされる。D-MIMO装置の複数のアンテナ部は、それぞれ異なる位置に設置され、1つのRU(Radio Unit)部と有線で接続される。RU部は、デジタルベースバンド信号処理を行うDFE(Digital Front End)と変復調部とを備える。複数のアンテナ部のそれぞれは、アンテナと、RUからのDL信号を高周波帯域に変換するアップダウンコンバータ(Up/Down Converter)部と、を備える。D-MIMO装置は、RUとアンテナ部とが離れているため、複数のアンテナ部のそれぞれのアンテナ端でDL信号の振幅と位相を製造時に予め校正しておくことが難しい。このため、D-MIMO装置の校正は、D-MIMO装置を運用場所に設置後、外部測定器を用いて行う必要があった。外部測定器を用いて校正を行った場合、D-MIMO装置を設置後にアンテナ部の位置を変更することが難しく、また、D-MIMO装置の温度変化などによる位相と振幅の変化にも対応することが難しく、通信品質が低下するという課題があった。
【0007】
特許文献1には、「ベースステーションの第1の校正から決定される第1の修正情報がシステムモジュールから受信される。ベースステーションの少なくとも1つのアンテナからの信号が高周波モジュールで受信される。その受信信号及び第1の修正情報に基づいて第2の修正情報が決定される。」と記載されている。特許文献2には、「アダプティブアレイ通信を行う通信基地局において、通信中に、通信基地局に装備されているN本のアンテナ素子の内の任意の1本が送信するCCHキャリアを残りの(N-1)本のアンテナ素子で受信するキャリブレーション用処理を実施して、各アンテナ素子の受信時の振幅比と位相差から、各アンテナ素子のキャリブレーションデータを決定する。」と記載されている。特許文献2には、「複数のアンテナのうちの1つ以外のアンテナから校正用DL(Down Link)信号を送信し、前記1つのアンテナで前記校正用DL信号を受信するDL制御と、前記1つのアンテナから校正用UL(Up Link)信号を送信し、前記1つ以外のアンテナで前記校正用UL信号を受信するUL制御と、を複数の前記アンテナごとに行うこと」は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2013-535124号公報
【文献】特開2008-166866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、MIMO装置では、複数のアンテナ部の校正、すなわち、アンテナ間送受信誤差の校正が必要である。特に空間多重技術を用いたC-MIMO装置では、装置内に校正用のフィードバック送受信機(送受信回路)を追加し、これを用いて校正を行う場合がある。フィードバック送受信回路を備える場合、これに加えて、各信号経路からのフィードバック送受信回路への信号配線も必要なる。これらにより、C-MIMO装置が複雑化するとともに、コストや消費電力が増加するという課題があった。また、D-MIMO装置は、アンテナ部と変復調部とが分離しており、製造時にアンテナ部の校正を行うことが難しい。よって、D-MIMO装置を運用場所に設置した後に、外部測定器を用いてアンテナ部を校正する必要がある。外部測定器を用いた校正は頻繁に行うことが難しいため、アンテナ部の設置位置を変更することが難しい。また、D-MIMO装置の温度変化などによる通信特性の劣化に対応するため、その都度、アンテナ部の校正をすることが難しいという課題があった。
【0010】
本開示の目的は、上述した課題のいずれかを解決する無線通信装置、無線通信装置の方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る無線通信装置は、
複数のアンテナのうちの1つ以外のアンテナから校正用DL(Down Link)信号を送信し、前記1つのアンテナで前記校正用DL信号を受信するDL制御と、前記1つのアンテナから校正用UL(Up Link)信号を送信し、前記1つ以外のアンテナで前記校正用UL信号を受信するUL制御と、を複数の前記アンテナごとに行う校正制御部と、
前記DL制御において複数の前記アンテナから送信した前記校正用DL信号と複数の前記アンテナで受信した前記校正用DL信号と、前記UL制御において複数の前記アンテナから送信した前記校正用UL信号と複数の前記アンテナで受信した前記校正用UL信号と、に基づいて複数の前記アンテナごとに前記アンテナに接続する送信機のDLチャネル係数と受信機のULチャネル係数を計算し、
前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数とに基づいて、無線DL信号を校正するための校正係数を計算する校正係数計算部と、
前記校正係数に基づいて複数の前記アンテナのそれぞれから送信する前記無線DL信号の位相と振幅を調整する校正適用部と、
を備える。
【0012】
本開示に係る無線通信装置の方法は、
複数のアンテナのうちの1つ以外のアンテナから校正用DL(Down Link)信号を送信し、前記1つのアンテナで前記校正用DL信号を受信するDL制御と、前記1つのアンテナから校正用UL(Up Link)信号を送信し、前記1つ以外のアンテナで前記校正用UL信号を受信するUL制御と、を複数の前記アンテナごとに行うことと、
前記DL制御において複数の前記アンテナから送信した前記校正用DL信号と複数の前記アンテナで受信した前記校正用DL信号と、前記UL制御において複数の前記アンテナから送信した前記校正用UL信号と複数の前記アンテナで受信した前記校正用UL信号と、に基づいて複数の前記アンテナごとに前記アンテナに接続する送信機のDLチャネル係数と受信機のULチャネル係数を計算することと、
前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数とに基づいて、無線DL信号を校正するための校正係数を計算することと、
前記校正係数に基づいて複数の前記アンテナのそれぞれから送信する前記無線DL信号の位相と振幅を調整することと、
を備える。
【0013】
本開示に係るプログラムは、
複数のアンテナのうちの1つ以外のアンテナから校正用DL(Down Link)信号を送信し、前記1つのアンテナで前記校正用DL信号を受信するDL制御と、前記1つのアンテナから校正用UL(Up Link)信号を送信し、前記1つ以外のアンテナで前記校正用UL信号を受信するUL制御と、を複数の前記アンテナごとに行うことと、
前記DL制御において複数の前記アンテナから送信した前記校正用DL信号と複数の前記アンテナで受信した前記校正用DL信号と、前記UL制御において複数の前記アンテナから送信した前記校正用UL信号と複数の前記アンテナで受信した前記校正用UL信号と、に基づいて複数の前記アンテナごとに前記アンテナに接続する送信機のDLチャネル係数と受信機のULチャネル係数を計算することと、
前記DLチャネル係数と前記ULチャネル係数とに基づいて、無線DL信号を校正するための校正係数を計算することと、
前記校正係数に基づいて複数の前記アンテナのそれぞれから送信する前記無線DL信号の位相と振幅を調整することと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、分散アンテナの校正を容易に行うことが可能な無線通信装置、無線通信装置の方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1に係る無線通信装置を例示するブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る分散アンテナの設置を例示する模式図である。
【
図3】実施の形態1に係る分散アンテナの設置を例示する模式図である。
【
図4】実施の形態1に係るD-MIMO装置の構成を例示するブロック図である。
【
図5】実施の形態1に係るデジタルフロントエンドDFEを例示するブロック図である。
【
図6】実施の形態1に係るD-MIMO装置の動作を例示するブローチャートである。
【
図7】実施の形態1に係る校正用DL信号の周波数配置を例示する模式図である。
【
図8】実施の形態1に係る校正用DL信号の周波数配置を例示する模式図である。
【
図9】実施の形態1に係る校正用DL信号の周波数配置を例示する模式図である。
【
図10】実施の形態1に係る校正用DL信号の周波数配置を例示する模式図である。
【
図11】実施の形態1に係る校正用UL信号の周波数配置を例示する模式図である。
【
図12】実施の形態2に係る分散アンテナと外部アンテナの設置を例示する模式図である。
【
図13】実施の形態3に係るD-MIMO装置の構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明を省略する。
【0017】
[実施の形態1]
<無線通信装置の構成の概要>
図1は、実施の形態1に係る無線通信装置を例示するブロック図である。
図1は、実施の形態1に係る無線通信装置の最小構成を示す。
無線通信装置をD-MIMO装置と称することもある。
実施の形態1では、複数のアンテナとしてD-MIMO装置の分散アンテナを例に挙げて説明するが、これには限定されない。
【0018】
図1に示すように、実施の形態1に係る無線通信装置11は、校正制御部111と、校正係数計算部112と、校正適用部113と、を備える。
【0019】
校正制御部111は、複数の分散アンテナDAのうちの1つ以外のアンテナから校正用DL(Down Link)信号を送信し、1つのアンテナで校正用DL信号を受信するDL制御を行う。すなわち、複数の分散アンテナDAのうちの1つのアンテナを校正用アンテナとして使用する。1つのアンテナは、例えば、分散アンテナDA1である。校正制御部111は、1つのアンテナから校正用UL(Up Link)信号を送信し、1つ以外のアンテナで校正用UL信号を受信するUL制御を行う。校正制御部111は、DL制御とUL制御を、複数の分散アンテナDAごとに行う。
【0020】
校正係数計算部112は、DL制御において複数の分散アンテナDAから送信した校正用DL信号と複数の分散アンテナDAで受信した校正用DL信号と、UL制御において複数の分散アンテナDAから送信した校正用UL信号と複数の分散アンテナで受信した校正用UL信号と、に基づいて複数の分散アンテナごとに分散アンテナに接続する送信機のDLチャネル係数と受信機のULチャネル係数を計算する。校正係数計算部112は、DLチャネル係数とULチャネル係数とに基づいて、無線DL信号を校正するための校正係数を計算する。
【0021】
校正係数計算部112は、DLチャネル係数とULチャネル係数とに基づき、DLチャネル係数に含まれるDL伝搬チャネルはULチャネル係数に含まれるUL伝搬チャネルに等しいものとして、複数の分散アンテナDAごとに送受信利得比率を計算し、無線DL信号を校正するための校正係数としてもよい。
【0022】
校正適用部113は、校正係数に基づいて複数の分散アンテナのそれぞれから送信する無線DL信号の位相と振幅を調整する。無線DL信号のことを、DL信号と称することもある。
【0023】
実施の形態1に係る無線通信装置11は、複数の分散アンテナDAのうちの1つのアンテナを校正用アンテナとして使用して校正用測定を行う。上記校正用アンテナとして用いる1つの分散アンテナDAを、複数の分散アンテナDAのうちいずれかの1つの分散アンテナDAに変えつつ複数回校正用測定を行う。これにより、実施の形態1によれば、外部測定器、校正専用アンテナ、若しくは校正専用回路が無くても分散アンテナDAの校正を行うことができる。その結果、分散アンテナの校正を容易に行うことが可能な無線通信装置、無線通信装置の方法、及びプログラムを提供することができる。
【0024】
校正係数計算部112は、1つ以外のアンテナから送信した送信時の校正用DL信号と1つのアンテナで受信した受信時の校正用DL信号とに基づいて、DL電波伝搬の特性(伝搬チャネル)と分散アンテナDAの送信特性を含むDLチャネル係数であって、1つ以外のアンテナに対応する複数のDLチャネル係数を、複数の分散アンテナDAごとに計算する。上記DLチャネル係数の計算を、上記校正用アンテナを変えて行った複数の校正用測定に対しても実施する。
【0025】
校正係数計算部112は、1つのアンテナから送信した送信時の校正用UL信号と1つ以外のアンテナで受信した受信時の校正用UL信号とに基づいて、UL電波伝搬の特性(伝搬チャネル)と分散アンテナDAの受信特性を含むULチャネル係数であって、1つ以外のアンテナに対応する複数のULチャネル係数を、複数の分散アンテナDAごとに計算する。上記ULチャネル係数の計算を、上記校正用アンテナを変えて行った複数の校正用測定に対しても実施する。
【0026】
校正係数計算部112は、複数の校正用測定ごと、かつ、複数の分散アンテナDAごとの複数のDLチャネル係数と複数のULチャネル係数とに基づいて、複数の校正用測定ごと、かつ、複数の分散アンテナDAごとにULチャネル係数に対するDLチャネル係数の比率(UL/DLチャネル係数比率)比率を計算する。校正係数計算部112は、DLチャネル係数とULチャネル係数とに基づいて、無線DL信号を校正するための校正係数を計算する。DLチャネル係数とULチャネル係数には、分散アンテナDAの送受信特性も含まれる。ただし、DLチャネル係数に含まれる伝搬チャネルは、ULチャネル係数に含まれる伝搬チャネルに等しいものとする。すなわち、DLもULも同じ伝搬路なので、伝搬チャネルは等しいものとした。
【0027】
校正係数計算部112は、複数回の校正用測定のうち基準とする校正用測定おける校正用アンテナと、基準とする分散アンテナとのUL/DLチャネル係数比率と、
基準以外の校正用測定における校正用アンテナと、基準とする分散アンテナとのUL/DLチャネル係数比率との、
比率を計算する。この比率を校正用測定の補正係数と称する。
複数の校正用測定間の補正係数を用いて、複数の校正用測定に対して、ULチャネル係数に対するDLチャネル係数の割合を補正する。
上記、基準とする分散アンテナを複数とし、上記複数の基準分散アンテナで計算した補正係数を平均して、新たに補正係数としてもよい。
【0028】
校正係数計算部112は、複数回校正用測定を行い、1つの分散アンテナDAに対して、複数のDLチャネル係数とULチャネル係数が得られた場合(複数有効な測定があった場合)、校正用DL信号又は校正用UL信号の受信電力に基づいて重み付け係数を求める。
校正係数計算部112は、上記DLチャネル係数とULチャネル係数から、校正用測定ごとにUL/DLチャネル係数比率を計算する。
校正係数計算部112は、上記校正用測定ごとにUL/DLチャネル係数比率を、上記補正係数を用いて、校正用測定間の補正を行う。
校正係数計算部112は、複数の分散アンテナDAごとに、補正した前記校正用測定ごとのUL/DLチャネル係数比率を、重み付け係数に基づいて複数校正用測定間で重み付け平均した、重み付け平均UL/DLチャネル係数比率を計算する。
重み付け平均UL/DLチャネル係数比率を校正係数と称する。
【0029】
校正係数計算部112は、受信電力が所定電力以上の校正用DL信号に対応するDLチャネル係数を、複数測定のDLチャネル係数のうちから選択する。校正係数計算部112は、受信電力が所定電力以上の校正用UL信号に対応するDLチャネル係数を、複数測定のULチャネル係数のうちから選択する。校正係数計算部112は、選択したDLチャネル係数と選択したULチャネル係数を使用して、複数の分散アンテナDAごとに校正係数を計算してもよい。
【0030】
校正制御部111は、複数の分散アンテナのそれぞれから送信される無線DL信号に校正用DL信号又は校正用UL信号を付加して校正用の測定を行ってもよい。
【0031】
<無線通信装置の動作の概要>
以下では、無線通信装置の1つとしてD-MIMO装置を例に挙げて説明する。また、D-MIMO装置11は、MIMO伝送に対応し、TDD方式を使用していることを例に挙げて説明する。
【0032】
図2は、実施の形態1に係る分散アンテナの設置を例示する模式図である。
図3は、実施の形態1に係る分散アンテナの設置を例示する模式図である。
図2及び
図3は、実施の形態1に係るD-MIMO装置の分散アンテナを運用場所、例えば、室内に設置した場合を上方から見た図である。
【0033】
図2は、校正時の通信状態を示す。
図3は、運用時の通信状態を示す。実施の形態1では、分散アンテナDAの数は4つで、それぞれ室内の四隅に設置されたものとする。
図2に示すように、分散アンテナDA1から送信された電波は、柱で遮られるため、分散アンテナDA3に届かず、逆もまた同様とする。また、
図2に示す点線は、複数の分散アンテナDAが相互に通信可能なことを示す。
【0034】
分散アンテナDA1から分散アンテナDA4の全てを校正するものとする。校正は、校正用の既知信号である校正用信号を、これらの分散アンテナDAで送受信することで行う。実施の形態1は、外部測定器やUE(User Equipment)を用いて校正することも可能だが、分散アンテナDAのみで校正を行うものとする。
【0035】
実施の形態1に係る分散アンテナDAで校正を行う方法は、通常の運用中のように、全ての分散アンテナDAを同じタイミングで送信と受信を切り替えるのでは無い。実施の形態1では、いずれかの分散アンテナDAの1つを、他の分散アンテナDAとは送信と受信を逆にして動作させる。すなわち、1つの分散アンテナDAを外部測定器のように用いる。この1つの分散アンテナDAを校正用アンテナと呼ぶ。これにより、D-MIMO装置11のみで校正が可能になる。
【0036】
実施の形態1に係るD-MIMO装置11の分散アンテナDAは、運用場所によってさまざまな場所に設置される。そのため、
図2に示す分散アンテナDA1と分散アンテナDA4のように、互いに信号が届かない場合がある。そこで、D-MIMO装置11の校正用信号を用いた校正(測定)は、校正用アンテナとして用いる分散アンテナDAを変更して複数回実施する。D-MIMO装置11は、複数回の測定結果を用いて、D-MIMO装置11の送信部分を校正するための校正係数を求める。その後、D-MIMO装置11は、求めた校正係数を、各分散アンテナDAから送信するDL信号に付加することで校正を行う。
【0037】
<無線通信装置の構成の詳細>
図4は、実施の形態1に係るD-MIMO装置の構成を例示するブロック図である。
図5は、実施の形態1に係るデジタルフロントエンドDFEを例示するブロック図である。
【0038】
図4に示すように、実施の形態1に係るD-MIMO装置11は、分散アンテナ部DA1と分散アンテナ部DA2と分散アンテナ部DA3と分散アンテナ部DA4と無線部RUとを備える。各分散アンテナ部DAは、主にアンテナとRFアップダウンコンバータ部とを有する。分散アンテナ部DA1と分散アンテナ部DA2と分散アンテナ部DA3と分散アンテナ部DA4とを総称して分散アンテナ部DAと称する。
【0039】
図4に示すデジタルフロントエンドDFEは、
図1に示す校正制御部111と校正係数計算部112と校正適用部113を含む。
図4に示す分散アンテナ部DAのRFアップダウンコンバータ部は、
図1に示す送受信機114に含まれる。
【0040】
無線部RUは、DL(Down Link)通信では、送信信号であるデジタル信号をアナログ信号に変換し、UL(Up Link)通信では、受信信号であるアナログ信号をデジタル信号に変換する。無線部RUと、4つの分散アンテナ部DA(分散アンテナ部DA1から分散アンテナ部DA4)のそれぞれは、ケーブルで接続されている。分散アンテナ部DAは、ケーブルの届く範囲内で自由に設置することができる。実施の形態1では、分散アンテナ部DAの数を4つとしたが、これには限定されない。分散アンテナ部DAの数は、3つ以上でもよい。
【0041】
無線部RUは、デジタル信号処理を行うデジタルフロントエンドDFE(Digital Front End)と、デジタル信号とアナログ変調信号とを変換する変復調器MODEMと、を備える。無線部RUは、分散アンテナ部DAの数と同数である4つの変復調器MODEMを有し、デジタルビームフォーミングを行う。無線部RUと4つの分散アンテナ部DAは、同軸ケーブルで接続され、同軸ケーブルを使用してアナログ変調信号を伝送する。
【0042】
分散アンテナ部DAは、無線部RUから送信されたアナログ変調信号を、RFアップダウンコンバータ部でRF信号にアップコンバートした後、アンテナから送信する。また、分散アンテナ部DAは、アンテナで受信した信号を、RFアップダウンコンバータ部でアナログ変調信号にダウンコンバートした後、無線部RUに伝送する。
【0043】
デジタルフロントエンドDFEのDL信号の処理について以下に示す。
図5に示すように、デジタルフロントエンドDFEは、DL信号の処理では、送信信号をレイヤマッパ(Layer mapper)部1151でレイヤごとに分けてレイヤ信号Xを出力する。この例では、レイヤ数は、例えば2つとする。プリコーディング(Precoding)部1152は、各レイヤ信号Xを、プリコーディング用ウェイト係数Wに従って重み付けし、互いに加算することにより4つのDL信号WXを生成する。校正適用部113は、プリコーディング後のDL信号WXに送受信機の誤差を校正する係数Cを乗算してDL信号CWXを出力する。OFDM信号生成部1153は、プリコーディングと校正が行われたDL信号CWXに対してOFDM変調を行い、デジタルベースバンド信号を生成する。デジタルベースバンド信号は、変復調器MODEMに送られ、アナログ変調信号に変換される。
【0044】
デジタルフロントエンドDFEのUL信号の処理について以下に示す。
OFDM信号復調部1154は、変復調器MODEMから入力された受信ベースバンド信号(OFDM信号)を復調処理し、信号Uを出力する。これにより、受信ベースバンド信号は、タイムドメインの信号から周波数ドメインの信号に変換される。すなわち、サブキャリアごとの信号に変換される。OFDM復調された信号Uは、複数のUEとの多重通信間の混信や伝搬環境などの影響により位相と振幅が変化している信号である。
【0045】
チャネル推定部1155は、OFDM信号に含まれる既知のリファレンス信号、もしくは分散アンテナ部DA校正用信号を用いて、伝搬路(通信路)のチャネル係数Hu、Hdを求める。UL信号、もしくは分散アンテナ部DA校正用UL信号からチャネル推定により求めたチャネル係数をHuとする。分散アンテナ部DA校正用DL信号からチャネル推定により求めたチャネル係数をHdとする。D-MIMO装置11は、チャネル係数Huを用いて空間多重技術によって、信号混信の除去や位相・振幅の変化を補正し、レイヤごとのUL信号を取得する。
【0046】
プリコーディングウェイト計算部1156は、空間多重技術を用いて、チャネル推定部1155で求められたチャネル係数Huから、DL用のプリコーディング用ウェイト係数Wを計算する。校正係数計算部112は、チャネル係数Hu、Hdを用いて、校正係数Cを計算する。校正適用部113は、校正係数Cを用いて、DL信号の校正を行う。
【0047】
<無線通信装置の動作の詳細>
図6は、実施の形態1に係るD-MIMO装置の動作を例示するブローチャートである。
図6は、実施の形態1に係るD-MIMO装置の校正時の動作を示す。
図7は、実施の形態1に係る校正用DL信号の周波数配置を例示する模式図である。
図7は、分散アンテナDA1から送信する校正用DL信号の周波数配置を示す。
図8は、実施の形態1に係る校正用DL信号の周波数配置を例示する模式図である。
図8は、分散アンテナDA2から送信する校正用DL信号の周波数配置を示す。
図9は、実施の形態1に係る校正用DL信号の周波数配置を例示する模式図である。
図9は、分散アンテナDA3から送信する校正用DL信号の周波数配置を示す。
図10は、実施の形態1に係る校正用DL信号の周波数配置を例示する模式図である。
図10は、分散アンテナDA4から送信する校正用DL信号の周波数配置を示す。
図11は、実施の形態1に係る校正用UL信号の周波数配置を例示する模式図である。
【0048】
D-MIMO装置11は、以下に示すいずれかの動作を契機として、校正動作、すなわち、DL信号の位相と振幅を調整する動作を開始してもよい。
・D-MIMO装置11の起動時(電源投入時)。
・複数の分散アンテナDAのいずれかの温度と前回の校正時の温度との差が所定温度以上の場合、又は、全ての分散アンテナDAの平均温度と前回の校正時の温度との差が所定温度以上の場合。
・前回の校正時から所定時間以上経過した場合、
・DL信号の通信品質が所定期間以上の間、所定品質よりも低い場合。
【0049】
上記を契機として、
図6に示すように、変数kに1を設定する(ステップS101)。ただし、変数kは、整数とする。
【0050】
変数k=1のため、分散アンテナDAkは分散アンテナDA1となる。分散アンテナDA1を校正用アンテナに設定し、分散アンテナDA1を使用して校正用の測定を行う(ステップS102)。ただし、k番目の分散アンテナDAを、分散アンテナDAkとする。
【0051】
分散アンテナDAk以外の全ての分散アンテナDAから、既知の校正用DL信号を送信し、分散アンテナDAkで受信する(ステップS103)。校正用DL信号は、分散アンテナDA間の混信を避けるため、複数の分散アンテナDAごとに異なる周波数(サブキャリア)に配置したOFDM信号を使用する。
【0052】
図7から
図10に示すように、複数の分散アンテナDAごとに異なるサブキャリアに配置された校正用DL信号が割当てられる。校正用DL信号には、4サブキャリアに1つのサブキャリアが配置される。校正用アンテナとして使用する分散アンテナDAkからは、校正用DL信号は送信しない。校正用アンテナとして使用する分散アンテナDAk以外の分散アンテナDAから送信され、分散アンテナDAkで受信され測定された校正用DL信号(データ)は、通常のOFDM信号受信時と同様に復調されチャネル推定された後に記憶部(図示せず)に保持される。この例では、分散アンテナDA1から分散アンテナDA4までの例を示したが、これには限定されない。
【0053】
ステップS103の後、分散アンテナDAkから既知の校正用UL信号を送信し、分散アンテナDAk以外の分散アンテナDAで受信する(ステップS104)。
【0054】
図11に示すように、校正用UL信号は、校正用DL信号と異なり、分散アンテナDAごとに配置されるサブキャリアを変更しない。校正用UL信号のサブキャリアマッピング(周波数配置)は、校正用DL信号とは異なり、全てのサブキャリアに配置される。各分散アンテナDAで受信した校正用UL信号(データ)は、通常のOFDM信号の受信時と同様に復調されチャネル推定された後に記憶部に保持される。
【0055】
ステップS104の後、変数kに1を加算する(ステップS105)。
【0056】
変数kが4以下の場合(ステップS106:Nо)は、ステップS102に戻る。また、変数kが4よりも大きい場合(ステップS106:Yes)、ステップS107に進む。実施の形態1では、分散アンテナDA1から順番に校正用アンテナに設定し、全ての分散アンテナDAが1度は校正用アンテナになるようにして測定を行う。
【0057】
ステップS106がYesの後、ステップS103とステップS104を繰り返して測定した校正用DL信号、又は、校正用UL信号(データ)に基づいて、校正係数を計算し、校正適用部113に適用する(ステップS107)。
【0058】
ステップS107の後、校正係数算出のための測定を終了し、通常の運用に戻る(ステップS108)。
【0059】
<校正係数の計算方法>
ここで、
図6に示すステップS107で行う校正係数の計算方法について説明する。
図7から
図10に示すように、分散アンテナDAから出力した校正用DL信号は、それぞれの分散アンテナDAごとに異なるサブキャリアに配置される。例えば、分散アンテナDA2から分散アンテナDA4で送信された校正用DL信号は、校正用アンテナとしての分散アンテナDA1で受信される。校正用DL信号は、OFDM復調され、サブキャリアごとに分けることで、複数の分散アンテナDA相互の間の混信が無く受信される。
【0060】
ここで、i番目の分散アンテナDAiとの通信に使用するサブキャリアをs
iとする。校正用DL信号と校正用UL信号とを総称して、校正用信号と称することもある。
実施の形態1では、変数iは1から4の整数とする。
図7から
図10に示すように、サブキャリアs
1は、例えば、1、5、9、…、番目のサブキャリアである。サブキャリアs
2は、2、6、10、…、番目のサブキャリアである。k番目の校正用アンテナで受信されたOFDM信号を復調して得られたs
i番目のサブキャリアのデータをd
k、i(s
i)と表すことにする。k=iの場合は、d
k、i(s
i)=0とする。
【0061】
校正用UL信号の測定においては、k番目の分散アンテナDAkから送信され、i番目の分散アンテナDAiで受信して得られた校正用UL信号のs
i番目のサブキャリアの信号を、u
k、i(s
i)とする。k=iの場合、u
k、i(s
i)=0とする。校正用UL信号は、
図11に示すように、全てのサブキャリアに配置されており、各分散アンテナDAの校正用DL信号で使用したサブキャリアを用いて校正係数の計算を行う。
【0062】
実施の形態1では、校正用アンテナを変えて、4回それぞれ校正用DL信号と校正用UL信号の測定を行う。校正用アンテナを変えたため、それぞれの校正用アンテナ間で送受信特性が異なる。k番目の校正用アンテナの送信複素利得をεk、tとし、受信複素利得をεk、rとする。ここでの利得は、複素数で表される値であり、振幅と位相の情報を有する。よって、送信複素利得、受信複素利得と称するが、以後の記載では、複素を省略し送信利得、受信利得とすることがある。
【0063】
同様に、個々の分散アンテナDAにも誤差が存在する。i番目の分散アンテナDAiの送信複素利得をei、tとし、受信複素利得をei、rとする。実施の形態1は、この利得による運用中のDL信号への影響を補正することを目的とする。実施の形態1では、分散アンテナDAの1つを校正用アンテナとして使用したため、k=iの場合、送信利得εk、tと送信利得ei、t、又は、受信利得εk、rと受信利得ei、rは等しい。ただし、後述する実施の形態2と実施の形態3では異なる場合もあるため、別の利得として扱う。
【0064】
k番目に測定した校正用DL信号d
k、i(s
i)は、以下のように表せる。
h
k、iは、分散アンテナDAiから分散アンテナDAkまでの伝搬路のチャネル係数であり、x
iは、分散アンテナDAiから送信された既知の校正用DL信号である。式(1)中の(s
i)は、周波数(サブキャリア)に依存して変化することを示すが、以後、簡単のため省略して記載する。また、校正用DL信号d
k、i(s
i)は、OTA(Over The Air)で測定されたためノイズが含まれるが、この例では省略するものとする。
【0065】
同様に、k番目に測定した校正用UL信号において、i番目の分散アンテナDAiで受信した信号u
k、i(s
i)は、以下のように表せる。
y
kは、校正用アンテナCAkから送信された既知の校正用UL信号である。式(2)中の(s
i)は、周波数(サブキャリア)に依存して変化することを示すが、以後、簡単のため省略して記載する。また、校正用UL信号u
k、i(s
i)は、OTAで測定されたため、ノイズが含まれるが、この例では省略する。
【0066】
測定した校正用DL信号d
k、iと測定した校正用UL信号u
k、iに含まれるチャネル係数h
k、iは、校正用信号が同じ伝搬経路を伝搬するものと考えて等しいものとする。式(1)と式(2)からそれぞれチャネル推定を行う。校正用DL信号d
k、iから推定したチャネル係数をh
d、k、iとする。
既知の校正用DL信号x
iは、x
i・x
i
*=1とする。(*)は共役複素数を表す。
【0067】
同様に、校正用UL信号から推定したチャネル係数h
u、k、iは、式(5)又は式(6)のように計算される。
既知の校正用UL信号y
kは、y
k・y
k
*=1とする。
【0068】
式(3)と式(5)で求めたチャネル係数h
d、k、iとチャネル係数h
u、k、iから、k番目の校正用アンテナの送信利得ε
k、tと受信利得ε
k、rを補正する補正係数γ
kを求める。補正係数γ
kは、k=1から4のいずれかの測定を基準として求める。以下では、k0番目の測定のうち、i0番目の分散アンテナDAi0と通信して得られた校正用信号(データ)を基準として用いる。
kとk0とi0はそれぞれ異なる番号とする。
【0069】
式(7)と式(8)では、i0番目の分散アンテナDAi0との測定結果のみで補正係数γkを求めたが、i0の番号を変えて複数の分散アンテナDAとの通信から上記を計算し、平均して補正係数γkを算出しても良い。補正係数γkは、全てのk(この例では1から4)について計算する。ただし、kの値が変わるごとに分散アンテナDAi0の番号i0を変えてもよい。基準としたk0番目の補正係数γk0は1とする。
【0070】
k番目で用いた校正用アンテナと、基準としたk0番目の校正用アンテナの配置によっては電波が届かず、校正用信号(データ)の取得ができない場合がある。基準とした校正用アンテナからの電波が届かない分散アンテナDAの番号を新たにk’とする。このようなk’番目の補正係数ε
k’は、既に補正係数を求めたk1番目の測定を用い、式(9)、式(10)のように求める。
【0071】
式(7)、式(9)のように、補正係数γkを求めるためには、2つの伝搬路が必要である。伝搬路が1つ以下の場合、γkはゼロとする。また、受信電力が所定閾値以下である伝搬路は無いものと判定しても良い。受信電力が所定閾値以下である場合、該当するk番目の校正アンテナとi番目の分散アンテナDAiとの測定結果dk、iとuk、iをともにゼロにする。
【0072】
補正係数γkは、周波数に依存しており、サブキャリアごとに異なる。全てのサブキャリア、又は一定のサブキャリア数ごとに平均して、補正係数γkを求めても良い。また、振幅利得が小さい場合、補正係数γkの振幅成分を無視し、補正係数γkの位相成分のみを用いても良い。
【0073】
D-MIMO装置11の送信部分における、分散アンテナDAの送信利得e
i、tと受信利得e
i、rを校正する校正係数c
iは、式(11)のようになる。
ただし、校正用アンテナを変えて行った校正用測定回数をN
m個とする。実施の形態1の場合、N
m=4である。分散アンテナDAの数をN個とする。補正係数γ
k=0の場合、(γ
k)
-1=0とする。式(11)は、式(12)のように展開できる。式(12)によると、校正係数c
iは、(e
i、r/e
i、t)を、(|ε
k、r|
2|h
k、r|
2)の重みを付けて平均したものである。また、(|ε
k、r|
2|h
k、r|
2)は、校正用信号の受信電力に比例する。
【0074】
実際に校正用信号を測定する場合、分散アンテナDAの配置などによって受信電力は大きく変化する。通常、受信電力が大きいほど雑音の影響が小さくなり、精度の良い校正用信号を取得できる。そこで、(|εk、r|2|hk、r|2)で重みを付けて平均することで、精度の良い測定の影響を大きくし、精度の低い測定の影響を小さくすることにより、全体として精度の良い校正係数ciを得ることができる。
【0075】
実際に校正係数c
iを、D-MIMO装置11に適応する場合、D-MIMO装置11のダイナミックレンジに合わせて校正係数c
iを規格化する。また、式(12)の(ε
k0、t/ε
k0、r)は、補正係数γ
kの基準とした校正用アンテナの送受信利得の比である。これは全ての分散アンテナDAで一定なため、DL信号の精度に影響しない。そこで、規格化と合わせて、(ε
k0、t/ε
k0、r)を省略して、式(12)は近似的に、式(13)のように表せる。
よって、分散アンテナDAの送受信利得の比を用いることで、D-MIMO装置11の送信部分の校正を行う。
【0076】
校正係数ciは、校正に使用したサブキャリアsiごとに求められる。他の分散アンテナDAの校正に使用したサブキャリアなど、校正に使用しなかったサブキャリアの校正係数ciは、サブキャリアsiの校正係数から内挿や外挿により求める。また、あるサブキャリア範囲で平均して校正係数を求めてもよい。これにより、分散アンテナDA間の誤差の周波数特性も考慮して校正できる。
【0077】
実施の形態1では、全てのサブキャリアに校正用信号を配置したが、一部のサブキャリアのみを使用しても校正可能である。校正用信号を配置できなかったサブキャリアは、近傍のサブキャリアの校正結果から内挿・外挿して校正する。よって、運用中においてもリファレンス信号などのサブキャリアやタイミングを使用して校正を実行できる。
【0078】
<効果>
実施の形態1の効果を説明する。ここでは、2台のUEと空間多重を用いて通信する通常の運用状態(
図3参照)での効果を説明する。以下の説明では、UEの数をM=2台とする。UEの数は、一般的にD-MIMO装置11のアンテナの本数以下であり、分散アンテナDAの数をN個とした場合、Mは、1からNのいずれかの整数を取り得る。
【0079】
各UEから送信され、分散アンテナDAで受信された(測定された)UL信号をUとする。UL信号UはN行1列(以後、Nx1のように記載する)の行列であり、式(14)のように表すことができる。
Hは伝搬路のチャネル係数でありNxMの行列で表され、YはUEから送信されたUL信号でありMx1の行列で表される。E
rは分散アンテナDAの受信利得を表し、e
i、rを用いて、
と表され、NxNの対角行列となる。
【0080】
受信されたUL信号Uからチャネル推定により求めたチャネル係数H
uは、式(16)となる。
チャネル係数H
uに受信利得E
rが含まれることがわかる。
【0081】
プリコーディング用ウェイト係数Wは、式(17)のように、空間多重技術の1つであるZF(Zero-Forcing)アルゴリズムを用いて求める。
プリコーディング用ウェイト係数Wの上付きTは転置行列を示し、上付き+は疑似逆行列を示す。空間多重技術にはZFアルゴリズムの他に、MMSEアルゴリズムなど複数のものがあるが、ZFアルゴリズムと同様に校正の効果を得られる。
【0082】
プリコーディング用ウェイト係数Wと、式(11)に示す校正係数c
iと、を乗算したDL信号が各分散アンテナDAから送信される。そして、各UEで受信されたDL信号Dは以下のように表される。
XはMx1の行列であり各UEに送信する元信号である。実施の形態1では、1UEあたり1レイヤで信号を伝送する。Cは実施の形態1の手法で求めた校正係数c
iを有する式(19)に示すようなNxNの対角行列である。
E
tは分散アンテナDAの送信利得を表し、式(20)のようなNxNの対角行列となる。
校正係数行列Cは、式(13)から式(15)と式(20)を用いて式(21)のように表される。
【0083】
式(18)に式(17)と式(21)を代入して式(22)、式(23)を得る。
これにより、実施の形態1で求めた校正係数Cを用いることで、D-MIMO装置11の送信利得と受信利得を補正し、精度のよいDL信号を送信することができる。
【0084】
尚、実施の形態1では、D-MIMO装置に適用することを例に挙げて説明したが、これには限定されない。実施の形態1は、C-MIMO装置にも適用可能である。C-MIMO装置は、複数のアンテナが1つの筐体に搭載されたMIMO装置のことである。実施の形態1をC-MIMO装置に適用する場合、1つの筐体内に搭載された複数のアンテナのうちの1つを校正用アンテナとして動作させ、D-MIMO装置と同様に校正を行う。C-MIMO装置内の校正用アンテナ以外のアンテナと校正用アンテナとは、電波の漏れ込みにより、校正用DL信号と校正用UL信号を送受信する。これにより、校正用のフィードバック回路等を搭載する必要が無い。
【0085】
[実施の形態2]
図12は、実施の形態2に係る分散アンテナと外部アンテナの設置を例示する模式図である。
【0086】
実施の形態1では、D-MIMO装置又はC-MIMO装置が備えるアンテナを用いて校正を行った。一方、実施の形態2では、校正用の外部アンテナを使用する。この例では、外部アンテナの数を3として説明する。複数のアンテナのうちの1つ以外のアンテナは、MIMOを構成するアンテナである。また、複数のアンテナのうちの1つのアンテナは、MIMOを構成するアンテナではない外部アンテナである。
【0087】
図12に示すように、室内に外部アンテナEAを設置する。分散アンテナDAの設置場所によっては1つの外部アンテナ(例えば、外部アンテナEA1)だけでは全ての分散アンテナDAと通信することが難しい場合がある。そこで、複数の外部アンテナEAを使用して校正用測定を行う。または、1つの外部アンテナを移動させることで、全ての分散アンテナDAと校正用測定を行う。複数の外部アンテナEAや、位置移動による複数回の測定は、実施の形態1の校正用アンテナの番号kを変えたときと同様に扱うことができる。
【0088】
実施の形態2では、D-MIMO装置における外部アンテナEAを用いた校正方法を例に挙げて説明したが、これには限定されない。実施の形態2に係る校正方法は、C-MIMO装置にも適用できる。
【0089】
[実施の形態3]
図13は、実施の形態3に係るD-MIMO装置の構成を例示するブロック図である。
【0090】
実施の形態3に係るD-MIMO装置11は、実施の形態1に係るD-MIMO装置31と比べて、無線部RUと分散アンテナ部DUとの間を光ケーブルで接続する点が異なる。
【0091】
図13に示すように、無線部RUのデジタルフロントエンドDFEで生成されたDL信号は、送受信切り替え信号とともに光信号に変換され、光ケーブルを通じて分散アンテナ部DAに伝送される。分散アンテナ部DAに伝送された光信号は、電気信号に変換された後にRF信号に変換されアンテナから送信される。UL信号は、DL信号とは逆の処理が行われる。
【0092】
無線部RUと各分散アンテナ部DAの基準となる基準クロックは同期しているものとする。しかしながら、基準クロックが同期していても、基準クロックのスキューや、局部発振器の位相など、アナログ回路特性のバラツキによって、分散アンテナ部DAの送受信特性はそれぞれ異なる。実施の形態3によれば、分散アンテナ部DAの送受信特性の差は、実施の形態1と同様の方法で校正することができる。
【0093】
尚、上記の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、各構成要素の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0094】
上記の実施の形態において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実態のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(具体的にはフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(具体的には光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(具体的には、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM))、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0095】
さらに、動作は特定の順序で描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作が示された特定の順序または連続した順序で実行されること、または示されたすべての動作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。特定の状況では、マルチタスクと並列処理が有利な場合がある。同様に、いくつかの特定の実施の形態の詳細が上記の議論に含まれているが、これらは本開示の範囲に対する制限としてではなく、特定の実施の形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施の形態の文脈で説明される特定の特徴は、単一の実施の形態に組み合わせて実装されてもよい。逆に、単一の実施の形態の文脈で説明される様々な特徴は、複数の実施の形態で別々にまたは任意の適切な組み合わせで実装されてもよい。
【0096】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0097】
尚、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0098】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0099】
この出願は、2020年12月17日に出願された日本出願特願2020-209739を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0100】
11:無線通信装置、D-MIMO装置
111:校正制御部
112:校正係数計算部
113:校正適用部
1141、1142,1143、1144:送受信機
1141t、1142t、1143t、1144t:送信機
1141r、1142r、1143r、1144r:受信機
1151:レイヤマッパ部
1152:プリコーディング部
1153:OFDM信号生成部
1154:OFDM信号復調部
1155:チャネル推定部
1156:プリコーディングウェイト計算部
DA、DA1、DA2、DA3、DA4:分散アンテナ、分散アンテナ部
EA、EA1、EA2、EA3:外部アンテナ
RU:無線部
DFE:デジタルフロントエンド
MODEM:変復調器