(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】光伝送システム及び光伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/293 20130101AFI20250415BHJP
【FI】
H04B10/293
(21)【出願番号】P 2023503281
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2021008392
(87)【国際公開番号】W WO2022185475
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178216
【氏名又は名称】浜野 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】松尾 祐志
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072834(JP,A)
【文献】特開2016-158125(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051935(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが相異なるユーザと関連付けられた複数の光送信機と、
光伝送装置と、を備え、
複数の前記光送信機はそれぞれ相異なる陸上伝送路によって前記光伝送装置と接続され、
前記光伝送装置は、
複数の
前記光送信
機から出力された複数の光信号の各々を減衰量に応じて減衰させ、減衰した光信号を
波長分割多重して出力する波長選択切替手段と、
複数の前記光信号の少なくとも一つの強度を検出し、第1の閾値及び前記第1の閾値よりも高い第2の閾値と比較する光検出手段と、を備え、
前記波長選択切替手段は、前記比較の結果に基づいて、強度が検出された前記光信号の強度が前記第1の閾値よりも低くなった場合は前記光信号に対する前記減衰量を減少させ、強度が検出された前記光信号の強度が前記第2の閾値よりも高くなった場合は前記光信号に対する前記減衰量を増加させることにより、強度が検出された前記光信号の強度が前記第1の閾値と前記第2の閾値の間の値になるように前記減衰量を制御
し、
強度が検出された前記光信号の強度が前記第1の閾値よりも低くなり、強度が検出された前記光信号の強度と前記第1の閾値との差分が前記減衰量よりも大きい場合、強度が前記第1の閾値よりも低くなった前記光信号を送信した前記光送信機に対して強度が前記第1の閾値よりも低くなった前記光信号の強度を増加させる、
光伝送システム。
【請求項2】
前記光伝送装置は、前記光信号の強度が前記第1の閾値よりも低くなった場合又は前記光信号の強度が前記第2の閾値よりも高くなった場合に、警報信号を生成する警報信号生成手段を更に備える、請求項1に記載の光伝送
システム。
【請求項3】
前記警報信号生成手段は、前記光信号を出力した前記光送信
機の制御装置に対して、前記警報信号を送信する、請求項2に記載の光伝送
システム。
【請求項4】
前記波長選択切替手段は
、複数の前記光送信
機から入力された複数の前記光信号の各々を減衰させ、
波長分割多重した前記光信号を海底に設けられた海底伝送路に向けて出力する、
請求項1から3の何れか1項に記載の光伝送
システム。
【請求項5】
前記波長選択切替手段は、前記光信号の帯域幅毎に前記減衰量を調整する請求項1から4の何れか1項に記載の光伝送
システム。
【請求項6】
それぞれが相異なるユーザと関連付けられた複数の光送信機が、それぞれ相異なる陸上伝送路によって光伝送装置と接続された光伝送システムで用いられる光伝送方法であって、
前記光伝送装置において、
複数の
前記光送信
機から出力された複数の光信号の各々を減衰量に応じて減衰させ、
前記減衰した前記光信号を
波長分割多重して出力し、
複数の前記光信号のうちの少なくとも一つの強度を検出し、第1の閾値及び前記第1の閾値よりも高い第2の閾値と比較し、
前記比較の結果に基づいて、強度が検出された前記光信号の強度が前記第1の閾値よりも低くなった場合は前記光信号に対する前記減衰量を減少させ、強度が検出された前記光信号の強度が前記第2の閾値よりも高くなった場合は前記光信号に対する前記減衰量を増加させることにより、強度が検出された前記光信号の強度が前記第1の閾値と前記第2の閾値の間の値になるように前記減衰量を制御
し、
強度が検出された前記光信号の強度が前記第1の閾値よりも低くなり、強度が検出された前記光信号の強度と前記第1の閾値との差分が前記減衰量よりも大きい場合、強度が前記第1の閾値よりも低くなった前記光信号を送信した前記光送信機に対して強度が前記第1の閾値よりも低くなった前記光信号の強度を増加させる、
光伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号の強度を適正に制御可能な光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海底ケーブルシステム等の光通信システムにおいては、波長が異なる複数の光信号を多重化した波長分割多重光信号を陸上端局間で送受信することで通信が行われる。この際、波長分割多重光信号に含まれる複数の光信号の強度は、システム設計上の適正な信号強度に調整された上で、端局から海底伝送路に出力される。
【0003】
また近年、波長分割多重光信号の帯域を異なるユーザに割り当てるスペクトラムシェアリングが行われている。スペクトラムシェアリングにおいては、各ユーザが、システム設計上の適正な信号強度で光信号が出力されるように、光送信機を管理している。
【0004】
この際、光信号の強度は、光信号を出力する光送信機や、光送信機から陸上端局までを接続する陸上伝送路等の経年劣化や障害などにより変動するおそれがある。そのため、光信号の強度を調整するための技術が用いられている。
【0005】
例えば、特許文献1には、波長分割多重光信号に含まれる光信号の強度が均一になるように調整されることが開示されている。また、特許文献2にも、関連する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-038328号公報
【文献】特開2013-255195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、光信号の強度が変動した場合に、光信号の強度をシステム設計上の適正な信号強度に戻すための手段がなかった。端局から送信される光信号の強度が適正な信号強度から変動すると、海底伝送路に設けられた増幅器の利得特性により、波長分割多重光信号に含まれる光信号のうち、強度が変動した光信号以外の光信号の強度にも影響を与える。
【0008】
特にスペクトラムシェアリングにおいては、前述のように特定のユーザに割り当てられた帯域の光信号の強度が変動すると、他のユーザに割り当てられた帯域の光信号にも影響を与えるため問題になる。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、送信機や陸上伝送路等の経年劣化や障害などよって光信号の強度が変動した場合に光信号の強度を戻すことが可能な光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光伝送装置は、
複数の光送信手段から出力された複数の光信号の各々を減衰量に応じて減衰させ、減衰した光信号を多重化して出力する波長選択切替手段と、
前記複数の光信号の少なくとも一つの強度を検出し、第1の閾値及び前記第1の閾値よりも高い第2の閾値と比較する光検出手段と、を備え、
前記波長選択切替手段は、前記比較の結果に基づいて、強度が検出された前記光信号の強度が第1の閾値よりも低くなった場合は前記光信号に対する前記減衰量を減少させ、強度が検出された前記光信号の強度が前記第2の閾値よりも高くなった場合は前記光信号に対する前記減衰量を増加させることにより、強度が検出された前記光信号の強度が前記第1の閾値と前記第2の閾値の間の値になるように前記減衰量を制御する。
【0011】
または、本発明の光伝送システムは、
前述の光伝送装置と、
複数の前記光送信手段と、を備える。
【0012】
または、本発明の光伝送方法は、
複数の光送信手段から出力された複数の光信号の各々を減衰量に応じて減衰させ、
前記減衰された前記光信号を多重化して出力し、
前記複数の光信号のうちの少なくとも一つの強度を検出し、第1の閾値及び前記第1の閾値よりも高い第2の閾値と比較し、
前記比較の結果に基づいて、強度が検出された前記光信号の強度が第1の閾値よりも低くなった場合は前記光信号に対する前記減衰量を減少させ、強度が検出された前記光信号の強度が前記第2の閾値よりも高くなった場合は前記光信号に対する前記減衰量を増加させることにより、強度が検出された前記光信号の強度が前記第1の閾値と前記第2の閾値の間の値になるように前記減衰量を制御する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、送信機や陸上伝送路等の経年劣化や障害などよって光信号の強度が変動した場合に光信号の強度を戻すことが可能な光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態における光伝送システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態における光伝送システムを説明するための図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における光伝送システムを説明するための図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態における光伝送システムの動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第1の実施形態における光伝送システムの動作を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第1の実施形態における光伝送システムの動作を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第2の実施形態における光伝送装置の構成例を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態における光伝送装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
第1の実施形態における光伝送システム1について、
図1、
図2、
図3及び
図4に基づき説明する。
図1は、光伝送システム1の構成例を示すブロック図である。また、
図2および
図3は、光伝送システムの詳細を説明するための図である。
図4は、光伝送システム1の動作例を示すフローチャートである。
【0016】
図1に示されるように、光伝送システム1は、データセンタ10A、10B、10C、光伝送装置20、陸上伝送路30A、30B,30C及び海底伝送路40を備える。なお、データセンタ10A、10B、10Cを区別する必要がない場合、データセンタ10A、10B、10Cの各々をデータセンタ10と称する。また、陸上伝送路30A、30B、30Cを区別する必要がない場合、陸上伝送路30A、30B、30Cの各々を陸上伝送路30と称する。
【0017】
データセンタ10は、光送信機11及び制御装置12を備える。光送信機11は、光送信手段に対応する。光送信機11は、陸上伝送路30を介して、光信号を光伝送装置20に出力する。光送信機11は、予め設定された強度で光信号を出力する。また、光送信機11は、制御装置12からの指示に応じて、光信号の強度を調整することができる。例えば、光送信機11は、光トランスポンダである。なお、光送信機11は、データセンタ10に複数備えられていても良い。この場合、データセンタ10は、複数の光送信機11から出力された光信号が合波された波長分割多重光信号を、光伝送装置20に出力する。
【0018】
制御装置12は、光送信機11を制御するものである。例えば、制御装置12は、ユーザから受け付けた強度を光送信機11に指示することにより、当該強度の光信号を光送信機11に出力させることができる。また、制御装置12は、光伝送装置20と通信可能であり、光伝送装置20から受信した情報を、光送信機11のユーザに向けて通知する。例えば、制御装置12は、光信号の異常を示す警報を後述の警報信号生成手段24から受信した場合には、光送信機11のユーザに向けて異常の発生を通知する。
【0019】
光伝送装置20は、波長選択切替手段22、光検出手段23、警報信号生成手段24及び分岐手段25を備える。光伝送装置20は、陸上伝送路30を介して複数のデータセンタ10と接続されている。
【0020】
波長選択切替手段22は、複数の光送信機11から出力された複数の光信号の各々を減衰量に応じて減衰させ、減衰した光信号を多重化して波長分割多重光信号を出力する。光伝送システム1において、波長選択切替手段22は、データセンタ10A、10B、10C内の光送信機11から出力された複数の光信号の各々を、予め定められた減衰量で減衰させる。
【0021】
波長選択切替手段22は、例えばWSS(Wavelength Selective Switch)である。WSSは、入力した光信号を波長ごとに分波し、分波した光信号の各々をミラーで反射し、反射した光信号を合波して波長分割多重光信号として出力する。WSSは、分波された光信号の各々を反射するミラーの角度を調整することにより、光信号の各々に対する減衰量を調整することができる。なお、波長選択切替手段22から出力された波長分割多重光信号は、分岐手段25により分岐され、海底伝送路40及び光検出手段23に向けて出力される。分岐手段25は、例えば光カプラである。
【0022】
図2を用いて、波長選択切替手段22の詳細について説明する。本説明においては、データセンタ10Aは、
図2に示される光信号A及び光信号Bが多重化された波長分割多重光信号を光伝送装置20に出力する。また、データセンタ10Bは光信号Cを光伝送装置20に出力し、データセンタ10Cは光信号Dを光伝送装置20に出力する。
【0023】
波長選択切替手段22には、例えば
図2に示される光信号A、B、C、Dが入力される。波長選択切替手段22には、
図2に示されるような複数の中心波長と、各中心波長を中心とする波長間隔が複数の透過帯域として設定されている。波長選択切替手段22は、透過帯域以外の帯域における減衰量を最大にすることで、透過帯域外の光を遮断する。また、波長選択切替手段22は、透過帯域の光信号の強度を、透過帯域毎に設定された基準値まで減衰させる。例えば、波長選択切替手段22における透過帯域の減衰量は、予め設定された光信号の強度と基準値との差分である。また、透過帯域には、第1の閾値及び第1の閾値よりも大きい第2の閾値が設定されている。
【0024】
光検出手段23は、波長選択切替手段22から出力された波長分割多重光信号に基づいて、複数の光信号の各々の強度を検出する。具体的には、光検出手段23は、分岐手段25により分岐された波長分割多重光信号を受信する。光検出手段23は、単位波長ごとに強度を算出することで、複数の透過帯域における光信号の強度を検出する。光検出手段23は、たとえば光スペクトラムアナライザを含む。
【0025】
また、光検出手段23は、各透過帯域に設定された第1の閾値及び第2の閾値を記憶している。例えば、光検出手段23は、
図3に示すように、透過帯域内の光信号Aの強度が第1の閾値を下回ったことを検知した場合、波長選択切替手段22における当該透過帯域に対する減衰量を低下させる。これにより、波長選択切替手段22は、波長分割多重光信号における光信号Aの強度を上昇させる。一方で、光検出手段23は、透過帯域内の光信号Aの強度が第2の閾値を上回ったことを検知した場合、波長選択切替手段22における当該透過帯域に対する減衰量を増加させる。これにより、波長選択切替手段22は、光信号の強度を減少させる。以上のように、透過帯域内の光信号の強度は、光検出手段23及び波長選択切替手段22によって、第1の閾値から第2の閾値の間に保たれる。
【0026】
また、警報信号生成手段24は、光信号の強度が第1の閾値を下回った場合及び光信号の強度が第2の閾値を上回った場合の少なくとも一方において、警報信号を生成する。例えば、警報信号生成手段24は、
図2に示されるような光信号A、B、C、Dのうち少なくとも一つが第1の閾値を下回った場合に、警報信号を生成する。また、警報信号生成手段24は、
図2に示されるような光信号A、B、C、Dのうち少なくとも一つが第2の閾値を上回った場合に、警報信号を生成する。警報信号生成手段24は、警報信号を生成した際に、光伝送装置20が設置されている端局内に、光信号の異常を通知する。
【0027】
また、警報信号生成手段24は、光信号を出力する光送信機11を制御する制御装置12のアドレス(例えば、MAC(Media Access Control)アドレスやIP(Internet Protocol)アドレスなど)を記憶しているとする。例えば、警報信号生成手段24は、データセンタ10A内の制御装置12のアドレスを、光信号A及び光信号Bと対応付けて記憶している。また、警報信号生成手段24は、データセンタ10B内の制御装置12のアドレスを光信号Cと対応付けて記憶し、データセンタ10C内の制御装置12のアドレスを光信号Dと対応付けて記憶する。
【0028】
警報信号生成手段24は、光信号の強度が第1の閾値を下回った場合又は光信号の強度が第2の閾値を上回った場合に、当該光信号に対応付けられたアドレスに対して、光信号の異常を通知する。これにより、データセンタ10内の光送信機11のユーザは、光信号に異常が生じていることを把握できる。
【0029】
次に、光伝送システム1の動作を
図4、
図5及び
図6に基づいて説明する。
図4、
図5及び
図6は、光伝送システム1の動作例を示すフローチャートである。
【0030】
光送信機11は、光信号を光伝送装置20に出力する(S101)。本動作例においては、データセンタ10A内の二つの光送信機11は、光信号A及び光信号Bを出力する。また、データセンタ10B内の光送信機11は光信号Cを出力し、データセンタ10Cの光送信機11は光信号Dを出力する。
【0031】
波長選択切替手段22は、光信号を減衰させる(S102)。本動作例においては、波長選択切替手段22には、光信号A、B、C、Dが入力される。波長選択切替手段22は、光信号A~Dの各々を波長ごとに分波し、光信号のA~Dの各々に所定の減衰量を与える。例えば、波長選択切替手段22は、予め設定された光信号の強度と、光信号に設定された基準値との差分だけ、光信号を減衰させる。これにより、波長選択切替手段22によって減衰した各光信号は、
図2に示されるように基準値の強度を有する。
【0032】
波長選択切替手段22は、減衰した光信号を合波して波長分割多重光信号を出力する(S103)。光検出手段23は、光信号の強度を検出する(S104)。具体的には、光検出手段23は、分岐手段25で分岐された波長分割多重光信号を受信し、波長分割多重光信号に含まれる光信号の強度を検出する。
【0033】
光検出手段23は、複数の透過帯域のうちの一つを選択することで、当該透過帯域内の光信号を調整対象の光信号として特定する(S105)。本動作例においては、光検出手段23は、光信号A~Dの各々が位置する透過帯域の少なくとも一つを選択し、光信号A~Dのうちの一つを調整対象の光信号として特定する。例えば、光検出手段23は、光信号A~Dのうち、最も中心波長が短い光信号Aを調整対象として特定する。
【0034】
光検出手段23は、光信号の強度が第1の閾値よりも低いかどうかを判断する(S106)。具体的には、前述のS105において光信号Aが調整対象として特定されている場合、光検出手段23は、光信号Aの強度が、光信号Aに対応付けられた透過帯域に設定された第1の閾値よりも低いかどうかを判断する。
【0035】
光信号の強度が第1の閾値よりも低いと判断されなかった場合、(S106のNo)、光検出手段23は、光信号の強度が第2の閾値よりも高いかどうかを判断する(S107)。例えば、光検出手段23は、光信号Aの強度が、光信号Aに対応付けられた透過帯域に設定された第2の閾値よりも高いかどうかを判断する。光信号の強度が第2の閾値よりも高いと判断されなかった場合(S107のNo)、光検出手段23は、全ての光信号が調整対象となったかどうかを判断する(S108)。具体的には、光検出手段23は、波長多重光信号に含まれる光信号A~Dの全てが、S105において調整対象として特定されたかどうかを判断する。例えば、光検出手段23は、S105で特定された光信号の透過帯域を記憶しておき、波長選択切替手段22に設定された透過帯域と比較することで、全ての光信号が調整対象として特定されたかどうかを判断する。また、全ての光信号が調整対象となったと判断された場合(S108のYes)、波長選択切替手段22に対する減衰量の調整が終了する。具体的には、光伝送システム1におけるS101~103の動作は継続して実行されるが、S104~S118の動作は実行されない。
【0036】
また、波長多重光信号に含まれる光信号の少なくとも一つが調整対象として特定されていないと判断された場合(S108のNo)、光検出手段23は、S105の処理を行う。当該S105の処理において、光検出手段23は、調整対象の光信号として特定されていない光信号を、新たな調整対象として特定する。例えば、光検出手段23は、以前に実行されたS105において光信号Aが調整対象として特定されていた場合には、光信号B~Dのうちの何れか一つを新たな調整対象として特定する。
【0037】
S106の処理において、調整対象の光信号の強度が第1の閾値よりも低いと判断された場合(S106のYes)、
図5に示されるように、警報信号生成手段24は、警報信号を生成する(S109)。この際、光検出手段23は、調整対象の光信号を示す情報を、警報信号生成手段24に通知する。警報信号生成手段24は、通知された光信号において異常が生じていることを、光伝送装置20が設けられている端局内に報知する。また、警報信号生成手段24は、通知された光信号を示す情報を含む警報信号を生成し、当該光信号に対応付けられたアドレスに警報信号を送信する。これにより、データセンタ10内の制御装置12は警報信号を受信できるため、データセンタ10内の光送信機11のユーザは、光信号において異常が発生していることを知ることができる。
【0038】
次に、光検出手段23は、強度が第1の閾値を下回った光信号の強度と、第1の閾値との差分を検出する(S110)。光検出手段23は、光信号の強度と第1の閾値との差分が、当該光信号に与えている減衰量よりも大きいかどうかを判断する(S111)。差分が減衰量よりも大きいと判断した場合(S111のYes)、光検出手段23は、波長選択切替手段22及び警報信号生成手段24に通知する(S112)。例えば、光検出手段23は、光信号の透過帯域に対する減衰量をゼロにするように、波長選択切替手段22に通知をする。また、光検出手段23は、光信号の強度と第1の閾値との差分とゼロにする前の減衰量との差及び、光信号の透過帯域を、警報信号生成手段24に通知する。警報信号生成手段24は、光検出手段23から通知された差だけ光送信機11の出力を増加させるように、光信号の透過帯域に対応付けられたアドレスに通知する。これにより、光伝送システム1においては、波長選択切替手段22における減衰量をゼロにしても光信号の強度が第1の閾値を下回る場合に、光送信機11から出力される光信号の強度を増加させるように通知することができる。当該通知を受けた光送信機11のユーザが、光送信機11の出力を増加させることにより、光信号の強度が第1の閾値を上回るように調整される。
【0039】
また、光検出手段23は、差分が減衰量よりも大きいと判断しなかった場合(S111のNo)、波長選択切替手段22に、強度が第1の閾値を下回った光信号の強度と第1の閾値との差分及び光信号の透過帯域を通知する。これにより、波長選択切替手段22は、通知された透過帯域における減衰量を、通知された差分だけ減少させる(S113)。なお、波長選択切替手段22は、通知された差分に、予め定められた所定量を加えた量だけ、減衰量を減少させてもよい。これにより、光伝送システム1においては、強度が第1の閾値を下回った光信号の強度を、上昇させることができる。
【0040】
S112及びS113の後、光検出手段23は、全ての光信号が調整対象となったかどうかを判断する(S114)。具体的には、光検出手段23は、S108と同様の処理を行う。また、全ての光信号が調整対象となったと判断された場合(S114のYes)、波長選択切替手段22に対する減衰量の調整が終了する。具体的には、光伝送システム1におけるS101~103の動作は継続して実行されるが、S104~S118の動作は実行されない。
【0041】
また、波長多重光信号に含まれる光信号の少なくとも一つが調整対象として特定されていないと判断された場合(S114のNo)、光検出手段23は、S105の処理を行う。当該S105の処理において、光検出手段23は、S108の処理の後のS105の処理と同様に、調整対象の光信号として特定されていない光信号を、新たな調整対象として特定する。
【0042】
また、波長分割多重信号に含まれている光信号の少なくとも一つの強度が第2の閾値よりも高い場合(S107のYes)、
図6に示されるように、警報信号生成手段24は、警報信号を生成する(S115)。この際、光検出手段23は、調整対象の光信号を示す情報を、警報信号生成手段24に通知する。警報信号生成手段24は、通知された光信号において異常が生じていることを、光伝送装置20が設けられている端局内に報知する。また、警報信号生成手段24は、通知された光信号を示す情報を含む警報信号を生成し、当該光信号に対応付けられたアドレスに警報信号を送信する。これにより、データセンタ10内の制御装置12は警報信号を受信できるため、データセンタ10内の光送信機11のユーザは、光信号において異常が発生していることを知ることができる。
【0043】
次に、光検出手段23は、強度が第2の閾値を上回った光信号の強度と、第2の閾値との差分を検出する(S116)。この際、光検出手段23は、検出した差分及び光信号の透過帯域を波長選択切替手段22に通知する。
【0044】
波長選択切替手段は、減衰量を増加させる(S117)。具体的には、光検出手段23から通知された透過帯域における光信号への減衰量を、通知された差分だけ増加させる。なお、波長選択切替手段22は、通知された差分に、予め定められた所定量を加えた量だけ、減衰量を増加させてもよい。これにより、光伝送システム1においては、強度が第2の閾値を上回った光信号の強度を、減少させることができる。
【0045】
S117の後、光検出手段23は、全ての光信号が調整対象となったかどうかを判断する(S118)。具体的には、光検出手段23は、S108と同様の処理を行う。また、全ての光信号が調整対象となったと判断された場合(S118のYes)、波長選択切替手段22に対する減衰量の調整が終了する。具体的には、光伝送システム1におけるS101~103の動作は継続して実行されるが、S104~S118の動作は実行されない。
【0046】
また、波長多重光信号に含まれる光信号の少なくとも一つが調整対象として特定されていないと判断された場合(S118のNo)、光検出手段23は、S105の処理を行う。当該S105の処理において、光検出手段23は、S108の処理の後のS105の処理と同様に、調整対象の光信号として特定されていない光信号を、新たな調整対象として特定する。
【0047】
なお、
図4に示されるS108の処理において光検出手段23が全ての光信号を調整対象としたと判断した場合(S108のYes)、
図5に示されるS114の処理において光検出手段23が全ての光信号を調整対象としたと判断した場合(S114のYes)、
図6に示されるS118において光検出手段23が全ての光信号を調整対象としたと判断した場合(S118のYes)、波長選択切替手段22に対する減衰量の調整が終了する。一方で、各処理の後、波長選択切替手段22に対する減衰量の調整を終了させず、再度S104の処理から実行させても良い。これにより、継続して、光信号の強度を、第1の閾値と第2の閾値との間に調整できる。再度S104の処理を実行する際、光検出手段23は、全ての光信号の何れもが調整対象として特定されていないとして、記憶する。
【0048】
以上のように、光伝送システム1は、波長選択切替手段22及び光検出手段23を備える。波長選択切替手段22は、複数の光送信手段(光送信機11)から出力された複数の光信号の各々を減衰量に応じて減衰させ、減衰した光信号を多重化して出力する。また、光検出手段23は、複数の光信号の各々の強度を検出し、第1の閾値及び第1の閾値よりも高い第2の閾値と比較する。更に、波長選択切替手段22は、比較の結果にもとづいて、光信号の強度が第1の閾値よりも低くなった場合は光信号に対する減衰量を減少させ、光信号の強度が第1の閾値よりも高い第2の閾値よりも高くなった場合は光信号に対する減衰量を増加させる。これにより、波長選択切替手段22は、強度が検出された光信号の強度が第1の閾値と第2の閾値の間の値になるように減衰量を制御する。
【0049】
光伝送装置20に入力される光信号の強度は、光信号を出力する光送信機や、光送信機から陸上端局までの陸上伝送路等の経年劣化や障害などにより変動するおそれがある。光伝送システム1においては、光信号の強度が変動したとしても、光信号の強度は、第1の閾値から第2の閾値の間に戻すことができる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態における光伝送装置2について、
図7及び
図8に基づき説明する。
図7は、光伝送装置2の構成例を示すブロック図である。また、
図8は、光伝送装置2の動作例を示すフローチャートである。
図7に示されるように、光伝送装置2は、波長選択切替手段22及び光検出手段23を備える。
【0050】
波長選択切替手段22は、複数の光送信手段から出力された複数の光信号の各々を減衰量に応じて減衰させ、減衰した光信号を多重化して出力する。また、波長選択切替手段22には、不図示のデータセンタ等から波長分割多重光信号が出力されているとする。なお、光伝送装置2における波長選択切替手段22は、光伝送システム1の波長選択切替手段22と同様の構成、機能及び接続関係を備えていても良い。
【0051】
光検出手段23は、複数の光信号の少なくとも一つの強度を検出する。また、光検出手段23は、検出した強度を、第1の閾値及び第1の閾値よりも高い第2の閾値と比較する。なお、光伝送装置2における光検出手段23は、光伝送システム1の光検出手段23と同様の構成、機能及び接続関係を備えていても良い。光検出手段23は、検出した強度と、第1の閾値及び第2の閾値の各々との比較の結果を、波長選択切替手段22に通知する。
【0052】
更に、波長選択切替手段22は、光検出手段23による比較の結果に基づいて、光信号の強度が第1の閾値よりも低くなった場合は光信号に対する減衰量を減少させる。また、波長選択切替手段22は、光検出手段23による比較の結果に基づいて、光信号の強度が第1の閾値よりも高い第2の閾値よりも高くなった場合は光信号に対する減衰量を増加させる。これにより、波長選択切替手段22は、強度が検出された光信号の強度が第1の閾値と第2の閾値の間の値になるように、光信号に対する減衰量を制御する。
【0053】
なお、光伝送装置2は、
図7に示されるように分岐手段25を備えても良い。分岐手段25は、例えば波長選択切替手段22からの光を外部に出力する必要が無い場合において、不要である。
【0054】
図8に基づき、光伝送装置2の動作について説明する。
【0055】
波長選択切替手段22は、光信号を減衰させる(S201)。波長選択切替手段22は、減衰した光信号を多重化して出力する(S202)。光検出手段23は、複数の光信号のうちの少なくとも一つの光信号の強度を検出する(S203)。光検出手段23は、検出された光信号の強度が第1の閾値よりも低いかどうかを判断する(S204)。
【0056】
光検出手段23が、強度が検出された光信号のうち、いずれか一つの光信号の強度は第1の閾値よりも低いと判断した場合(S204のYes)に、波長選択切替手段22は、第1の閾値よりも低い強度の光信号に対する減衰量を減少させる。
【0057】
また、光検出手段23が、強度が検出されたいずれの光信号についてもその強度が第1の閾値よりも低いと判断しなかった場合(S204のNo)に、光検出手段23は、強度が検出された少なくとも一つの光信号の強度が第2の閾値よりも高いかどうかを判断する(S206)。
【0058】
光検出手段23が、強度が検出された光信号のうち、いずれか一つの光信号の強度は第2の閾値よりも高いと判断した場合(S206のYes)、波長選択切替手段22は、第2の閾値よりも高い強度の光信号に対する減衰量を増加させる。一方で、光検出手段23が、強度が検出されたいずれの光信号についてもその強度は第2の閾値よりも高いと判断しなかった場合(S206のNo)、光伝送装置2は、動作を終了する。
【0059】
以上のように、光伝送装置2は、波長選択切替手段22及び光検出手段23を備える。波長選択切替手段22は、複数の光送信手段から出力された複数の光信号の各々を減衰量に応じて減衰させ、減衰した光信号を多重化して出力する。また、光検出手段23は、複数の光信号の少なくとも一つの強度を検出し、第1の閾値及び第1の閾値よりも高い第2の閾値と比較する。更に、波長選択切替手段22は、比較の結果に基づいて、光信号の強度が第1の閾値よりも低くなった場合は光信号に対する減衰量を減少させ、光信号の強度が第1の閾値よりも高い第2の閾値よりも高くなった場合は光信号に対する減衰量を増加させる。これにより、波長選択切替手段22は、光信号の強度が第1の閾値と第2の閾値の間の値になるように減衰量を制御する。
【0060】
光伝送装置2に入力される光信号の強度は、光信号を出力する光送信機や、光送信機から陸上端局までの陸上伝送路等の経年劣化や障害などにより変動するおそれがある。光伝送装置2においては、光信号の強度が変動したとしても、光信号の強度は、第1の閾値から第2の閾値の間に戻すことができる。
【0061】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 光伝送システム
2 光伝送装置
10、10A、10B、10C データセンタ
11 光送信機
12 制御装置
20 光伝送装置
22 波長選択切替手段
23 光検出手段
24 警報信号生成手段
25 分岐手段