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特許7666591クロマトグラフ装置及び試料導入量設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】クロマトグラフ装置及び試料導入量設定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/24 20060101AFI20250415BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
G01N30/24 Z
G01N30/86 T
G01N30/86 R
G01N30/86 V
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023520759
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021046181
(87)【国際公開番号】W WO2022239288
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2021081082
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 康介
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-175156(JP,A)
【文献】特開平03-085449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料とともに移動相をカラム内に導入し、前記カラム内で分離された試料中の成分を検出部で検出するクロマトグラフ装置であって、
前記カラム内への試料の導入量が異なる複数回のテスト分析を、前記導入量に応じた所定の順序で実行するテスト処理部と、
テスト分析時の前記検出部による検出結果に基づいて、前記所定の順序に従って前記テスト処理部で次のテスト分析を実行するか否かを判断する判断処理部と、
前記判断処理部により、次のテスト分析を実行しないと判断される場合に、実行済みのテスト分析時における試料の導入量に基づいて、繰り返しの導入量を設定する導入量設定処理部と、
前記繰り返しの導入量で前記カラム内に試料を導入する導入処理を複数回繰り返す繰り返し導入処理部とを備え
前記テスト処理部が、前記複数回のテスト分析を前記導入量の昇順に沿った順序で実行する場合は、前記判断処理部が、テスト分析時の前記検出部による検出結果におけるピークの分離度に基づいて、次のテスト分析を実行するか否かを判断し、
前記テスト処理部が、前記複数回のテスト分析を前記導入量の降順に沿った順序で実行する場合は、前記判断処理部が、テスト分析時の前記検出部による検出結果におけるピークの強度に基づいて、次のテスト分析を実行するか否かを判断する、クロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記複数回のテスト分析のうちの最後のテスト分析時において、前記判断処理部により、次のテスト分析を実行すると判断される場合に、前記テスト処理部で、次のテスト分析を行う代わりに、前記導入量設定処理部で、実行済みのテスト分析時における試料の導入量に基づいて、繰り返しの導入量を設定する、請求項1記載のクロマトグラフ装置。
【請求項3】
前記複数回のテスト分析のうちの最初のテスト分析時において、前記判断処理部により、次のテスト分析を実行しないと判断される場合に、前記導入量設定処理部で、繰り返しの導入量を設定しない、請求項1又は2記載のクロマトグラフ装置。
【請求項4】
前記導入量設定処理部で設定される繰り返しの導入量に基づいて、前記導入処理の回数を設定する回数設定処理部をさらに備え、
前記繰り返し導入処理部は、前記導入処理を前記回数設定処理部で設定される回数行う、請求項1からのいずれかに記載のクロマトグラフ装置。
【請求項5】
試料とともに移動相をカラム内に導入し、前記カラム内で分離された試料中の成分を検出部で検出するクロマトグラフ装置における試料導入量設定方法であって、
前記カラム内への試料の導入量が異なる複数回のテスト分析を、前記導入量に応じた所定の順序で実行するテストステップと、
テスト分析時の前記検出部による検出結果に基づいて、前記所定の順序に従って前記テストステップで次のテスト分析を実行するか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップにより、次のテスト分析を実行しないと判断される場合に、実行済みのテスト分析時における試料の導入量に基づいて、前記クロマトグラフ装置において前記カラム内に試料を導入する導入処理を複数回繰り返す際の繰り返しの導入量を設定する導入量設定ステップとを含み、
前記テストステップで、前記複数回のテスト分析を前記導入量の昇順に沿った順序で実行する場合は、前記判断ステップで、テスト分析時の前記検出部による検出結果におけるピークの分離度に基づいて、次のテスト分析を実行するか否かを判断し、
前記テストステップで、前記複数回のテスト分析を前記導入量の降順に沿った順序で実行する場合は、前記判断ステップで、テスト分析時の前記検出部による検出結果におけるピークの強度に基づいて、次のテスト分析を実行するか否かを判断する、試料導入量設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフ装置及び試料導入量設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1で開示されるような、従来のクロマトグラフ装置では、試料とともに移動相がカラム内に導入され、カラム内で分離された試料中の成分が検出部で検出される。
【0003】
クロマトグラフ装置の一例である液体クロマトグラフにおいては、液体からなる移動相とともに試料がカラム内に導入される。カラム内への試料の導入量は、試料中の成分の濃度及び検出部の応答性などに応じて設定される。また、分取精製を行う場合には、必要とされる精製量に応じて、カラム内への試料の導入量が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/208300号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カラム内への試料の導入量が過剰な場合には、カラム内で保持可能な試料中の成分の量を超えることにより、カラム内の保持サイトが枯渇する場合がある。この場合、検出部において検出される試料中の成分のピーク形状や分離度が悪化し、分析又は分取を良好に行うことができない可能性がある。また、試料が多量に導入される場合、試料溶媒が移動相のように振る舞うため、試料溶媒の溶出力が強い場合には、試料中の成分のバンド幅が広がることにより、ピーク形状や分離度が悪化する可能性もある。一方、導入試料量が十分ではない場合、ピーク形状や分離度は問題ないが検出感度が足りず、濃度などの定量分析を正確に行えない可能性がある。これらの課題は、移動相が液体の場合に限らず、気体の場合にも生じ得る課題である。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、カラム内への試料の導入量を適切な値に設定することができるクロマトグラフ装置及び試料導入量設定方法を提供することを目的とする。また、本発明は、カラム内への試料の導入量を分析者が検討する必要がないクロマトグラフ装置及び試料導入量設定方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、カラム内への試料の導入量の検討時間及び検討結果が分析者によって異なることを防止できるクロマトグラフ装置及び試料導入量設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、試料とともに移動相をカラム内に導入し、前記カラム内で分離された試料中の成分を検出部で検出するクロマトグラフ装置であって、テスト処理部と、判断処理部と、導入量設定処理部と、繰り返し導入処理部とを備える。前記テスト処理部は、前記カラム内への試料の導入量が異なる複数回のテスト分析を、前記導入量に応じた所定の順序で実行する。前記判断処理部は、テスト分析時の前記検出部による検出結果に基づいて、前記所定の順序に従って前記テスト処理部で次のテスト分析を実行するか否かを判断する。前記導入量設定処理部は、前記判断処理部により、次のテスト分析を実行しないと判断される場合に、実行済みのテスト分析時における試料の導入量に基づいて、繰り返しの導入量を設定する。前記繰り返し導入処理部は、前記繰り返しの導入量で前記カラム内に試料を導入する導入処理を複数回繰り返す。
【0008】
本発明の第2の態様は、試料とともに移動相をカラム内に導入し、前記カラム内で分離された試料中の成分を検出部で検出するクロマトグラフ装置における試料導入量設定方法であって、テストステップと、判断ステップと、導入量設定ステップとを含む。前記テストステップでは、前記カラム内への試料の導入量が異なる複数回のテスト分析を、前記導入量に応じた所定の順序で実行する。前記判断ステップでは、テスト分析時の前記検出部による検出結果に基づいて、前記所定の順序に従って前記テストステップで次のテスト分析を実行するか否かを判断する。前記導入量設定ステップでは、前記判断ステップにより、次のテスト分析を実行しないと判断される場合に、実行済みのテスト分析時における試料の導入量に基づいて、前記クロマトグラフ装置において前記カラム内に試料を導入する導入処理を複数回繰り返す際の繰り返しの導入量を設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カラム内への試料の導入量を適切な値に設定することができる。また、本発明によれば、カラム内への試料の導入量を分析者が検討する必要がない。さらに、本発明によれば、カラム内への試料の導入量が分析者によって異なることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態のクロマトグラフ装置の全体の構成の一例を示すブロック図である。
図2】第1実施形態の自動設定処理の一例を説明するための図である。
図3】第1実施形態のRAMのメモリマップの一例を示す図解図である。
図4】第1実施形態のクロマトグラフ装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
図5】第1実施形態のクロマトグラフ装置のCPUの動作処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.クロマトグラフ装置の全体構成
図1は、第1実施形態のクロマトグラフ装置10の全体の構成の一例を示すブロック図である。なお、第1実施形態では、クロマトグラフ装置10として、液体クロマトグラフ装置を例に挙げて説明する。
【0012】
クロマトグラフ装置10は、制御部20、移動相容器28、送液ポンプ30、試料導入部32、カラムオーブン34、分離カラム36、検出部38、信号処理回路40、切替部42、分取部44、表示部46、表示制御回路48、操作部50、操作検出回路52を含む。また、制御部20は、CPU(Central Processing Unit)22を含む。また、制御部20は、CPU22が直接的にアクセス可能なRAM(Random Access Memory)24及び記憶部26を含む。
【0013】
制御部20は、バス等の接続回路54を介して、送液ポンプ30、試料導入部32、カラムオーブン34、信号処理回路40、切替部42、分取部44、表示制御回路48、操作検出回路52の各々と電気的に接続される。また、信号処理回路40は、検出部38に電気的に接続され、表示制御回路48は、表示部46に電気的に接続され、操作検出回路52は、操作部50に電気的に接続される。
【0014】
制御部20は、クロマトグラフ装置10の全体的な制御を担う。CPU22は、クロマトグラフ装置10の各コンポーネントを制御する。RAM24は、CPU22のワーク領域およびバッファ領域として用いられる。記憶部26は、不揮発性メモリであり、たとえば、記憶部26としてHDD(Hard Disc Drive)またはSSD(Solid State Drive)等が用いられる。
【0015】
記憶部26には、クロマトグラフ装置10の各コンポーネントを制御するための制御プログラム及び制御プログラムの実行に必要とされるデータ(実行用データ)等が記憶される。なお、記憶部26がRAM24を含むように構成されてもよい。
【0016】
移動相容器28は、移動相を貯蔵する容器であり、送液ポンプ30は、移動相を送液するポンプである。分析中、送液ポンプ30は、一定の速度で移動相を連続的に送液する。試料導入部32は、オートサンプラなどの汎用の試料導入装置であり、カラムオーブン34は、内部にて分離カラム36を加熱する汎用の加熱装置である。
【0017】
検出部38は、分離カラム36によって分離される試料中の成分を検出する汎用の検出装置である。信号処理回路40は、検出部38から出力される信号を増幅してからA/D(アナログ/デジタル)変換し、制御部20に出力する。
【0018】
切替部42は、検出部38に導入された後の試料の導入先を分取部44と図示しない排出口との間で切り替えるために設けられる。切替部42は、たとえば汎用の三方弁を含む。切替部42によって、試料の導入先が分取部44に設定される場合、試料が分取部44に導入される。また、試料の導入先が排出口に設定される場合、試料がその排出口から排出される。ただし、切替部42が省略されることにより、分取のみを行うことができるような構成であってもよい。
【0019】
分取部44は、たとえば分離カラム36によって分離される成分を分取する汎用の分画装置を含む。なお、分取部44によって各種成分が分取された後の試料は、図示しない排出口から排出される。ただし、分取部44が省略されることにより、分析のみを行うことができるような構成であってもよい。
【0020】
表示部46は、LCD(Liquid crystal display)又はEL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの汎用の表示装置である。表示制御回路48は、GPUおよびVRAMなどを含み、GPUは、CPU22の指示の下、RAM24に記憶された画像生成データを用いて表示部46に種々の画面を表示するための表示画像をVRAMに生成し、その表示画像データに対応する表示画像を表示部46に出力する。
【0021】
操作部50は、クロマトグラフ装置10のハードウェアキー(操作キー)を含む。操作キーとしては、たとえば、電源キー等が挙げられる。また、操作部50は、入力装置を含む。入力装置としては、たとえば、キーボード及びマウス等が挙げられる。さらに、入力装置には、タッチパネルが含まれても良い。なお、この場合、タッチパネルは、表示部46の表示面上に設けられる。また、タッチパネルとディスプレイとが一体的に形成されたタッチパネルディスプレイが用いられてもよい。操作検出回路52は、操作部50の操作に応じた信号ないし操作データを制御部20に出力する。
【0022】
このような、クロマトグラフ装置10では、制御部20によって各種コンポーネントが制御されることで、送液ポンプ30の動作により、移動相容器28から移動相が送出される。また、移動相容器28から移動相が送出されると、試料導入部32によって、試料が移動相に導入される。また、試料の導入にともなって、分離カラム36で試料中の成分が分離された後、検出部38に導入される。そして、検出部38において、成分ごとに分離された試料成分が検出される。また、必要に応じて、分離カラム36によって分離される成分が分取部44に導入され、その分取部44で、各種成分が分取される。
【0023】
したがって、このようなクロマトグラフ装置10では、試料を分離カラム36へ導入する処理(導入処理)を実行することができる。導入処理は、たとえば、試料に含まれる成分を分析する分析処理、又は、試料に含まれる成分を分取する分取処理等において実行することができる。
【0024】
2.自動設定処理の概要
第1実施形態のクロマトグラフ装置10では、所定の操作が検出されると、自動設定処理が実行される。また、自動設定処理が実行されると、その自動設定処理の実行に伴って設定される設定項目にしたがって、導入処理が繰り返し実行される。
【0025】
つまり、第1実施形態における自動設定処理は、その自動設定処理の後の繰り返しの導入処理に係る設定項目(繰り返し設定項目)を設定するための処理である。
【0026】
繰り返し設定項目には、繰り返しの導入処理において分離カラム36に導入される試料の導入量(繰り返し導入量)及び導入処理を繰り返す回数(繰り返し回数)等が含まれる。
【0027】
詳細は後述するが、自動設定処理では、試料の分析がテスト的に複数回実行される。また、複数回のテスト分析において、分離カラム36内への試料の導入量がそれぞれ異なる。
【0028】
つまり、自動設定処理では、分離カラム36内への試料の導入量がそれぞれ異なる複数回のテスト分析が実行されることで、繰り返し設定項目が設定される。
【0029】
なお、以下において、各テスト分析における試料の導入量を単に「テスト量」と記述する。初めに、自動設定処理が実行されるまでの一連の処理について説明する。
【0030】
図示は省略するが、第1実施形態では、たとえば、クロマトグラフ装置10のメインメニュー画面が表示部46に表示された状態で、所定のアイコンが操作されると、自動設定処理を実行するための画面(実行画面)が表示部46に表示される。
【0031】
実行画面では、その実行画面に設けられるアイコンが操作されることで、複数回のテスト分析に係る設定項目(テスト設定項目)が適宜に設定される。
【0032】
テスト設定項目には、たとえば、テスト量、テスト順序等が含まれる。テスト量は、繰り返し実行されるテスト分析の回数に応じて、複数設定される。ただし、複数のテスト量は、既定の値として予め設定されていてもよい。
【0033】
テスト順序では、複数回のテスト分析を行う際の順序が設定される。テスト分析順序は、テスト量を徐々に増加させる昇順、又は、テスト量を徐々に減少させる降順に設定される。テスト分析順序が昇順に設定される場合は、複数回のテスト分析は、テスト量の昇順に沿った順序で実行され、降順に設定される場合は、複数回のテスト分析は、テスト量の降順に沿った順序で実行される。ただし、テスト分析順序は、自動設定処理後に繰り返し実行される導入処理の種類に応じて自動的に選択されてもよい。
【0034】
自動設定処理後に繰り返し実行される導入処理の種類としては、1回の導入処理における分離カラム36内への試料の導入量ができるだけ多くなるように設定される多量導入と、1回の導入処理における分離カラム36内への試料の導入量ができるだけ少なくなるように設定される少量導入とが挙げられる。分取部44で分取を行う場合には、所定量の試料成分が分取されるまでに繰り返し実行される導入処理の回数を少なくして、効率よく試料中の成分を分取するために、多量導入を選択することが好ましい。一方、少量の試料に含まれる成分を検出部38で検出する場合(高感度分析)には、試料の使用量をできるだけ少なくするために、少量導入を選択することが好ましい。なお、詳細な説明は省略するが、多量導入と言えども、クロマトグラフ装置10を構成するコンポーネントの性能に基づいて、設定される導入量には上限が決められている。
【0035】
多量導入を行う場合には、事前に実行されるテスト分析が昇順で実行されることにより、繰り返し導入処理時の繰り返し導入量ができるだけ大きい値に設定される。一方、少量導入を行う場合には、事前に実行されるテスト分析が降順で実行されることにより、繰り返し導入処理時の繰り返し導入量ができるだけ小さい値に設定される。各テスト分析では、クロマトグラムのピークに関する指標(ピーク指標)が閾値以上となるか否か、又は、ピーク指標が閾値未満となるか否かに基づいて、次のテスト分析を実行するか否かが判断される。
【0036】
ピーク指標としては、ピークの分離度に基づく指標、又は、ピークの強度に基づく指標等が挙げられる。ピークの分離度に基づく指標は、ピーク間の分離状態を示す指標であり、分離カラム36の性能を示す理論段数に基づいて算出される。また、ピークの強度に基づく指標としては、ピークの高さ、ピークの面積又はSN(Signal Noise)比等が挙げられる。
【0037】
第1実施形態では、たとえば、実行画面が表示部46に表示された状態で、自動設定処理を実行する機能が割り当てられるアイコンが操作されると、その自動設定処理が開始される。なお、テスト設定項目の設定方法、自動設定処理を実行する方法は、あくまで一例であって、特に限定されない。
【0038】
3.自動設定処理の詳細
第1実施形態では、自動設定処理が実行されると、テスト設定項目が参照され、上述したようにテスト量がそれぞれ異なる複数回のテスト分析がテスト量の昇順又は降順に沿った順序で実行される。
【0039】
図2は、第1実施形態の自動設定処理の一例を説明するための図である。図2に示す例では、第1テスト量から第nテスト量まで予め設定されている。なお、nは変数であって、図2に示す例では、nは、4以上の値である。以下、図2を参照し、自動設定処理について具体的に説明する。
【0040】
自動設定処理では、テスト分析が実行される毎に、テスト分析による検出結果に基づいて、次のテスト分析を実行するかどうか判断される。具体的に、次のテスト分析を実行するか否かは、テスト分析におけるクロマトグラムが参照されたうえで、ピーク指標が閾値と比較されることにより判断される。
【0041】
たとえば、テスト分析が昇順で実行され、ピークの分離度に基づく指標をピーク指標として閾値と比較する場合には、テスト分析での分析結果において、ピーク指標が閾値以上であれば、次のテスト分析が実行され、ピーク指標が閾値未満であれば、次のテスト分析は実行されない。また、テスト分析が降順で実行され、ピークの強度に基づく指標をピーク指標として閾値と比較する場合には、テスト分析での分析結果において、ピーク指標が閾値未満であれば、次のテスト分析が実行され、ピーク指標が閾値以上であれば、次のテスト分析は実行されない。なお、次のテスト分析を実行しないと判断される場合、残りのテスト分析は実行されない。
【0042】
さらに、自動設定処理では、次のテスト分析を実行しないと判断される場合、実行済みのテスト分析時におけるテスト量に基づいて、繰り返し導入量が設定される。
【0043】
たとえば、実行済みのテスト分析時におけるテスト量のうちのいずれか一つが繰り返し導入量として設定される。なお、図2に示すように、次のテスト分析を実行しないと判断されたときの1つ前のテスト分析時におけるテスト量が繰り返し導入量として設定されるのが好ましい。
【0044】
図2に示す例では、第1テスト量、第2テスト量、第3テスト量の順でテスト分析が実行された後に、次のテスト分析を実行しないと判断されると、第2テスト量が繰り返し導入量として設定される。
【0045】
ただし、複数のテスト分析のうちの最初のテスト分析時(第1テスト量でのテスト分析)において、次のテスト分析を実行しないと判断される場合、繰り返し導入量は設定されない。また、この場合、残りのテスト分析は実行されず、その後の繰り返しの導入処理も実行されない。
【0046】
図示は省略するが、複数のテスト分析のうちの最初のテスト分析時において、次のテスト分析を実行しないと判断される場合、テスト量の再設定を促すための通知が行われてもよい。たとえば、表示部46にテスト量の再設定を促すメッセージを表示されてもよい。また、この場合、たとえば、表示部46に再度、実行画面が表示されてもよい。
【0047】
さらに、複数のテスト分析のうちの最後のテスト分析時では、次のテスト分析を実行すると判断される場合、テスト分析を実行する代わりに、上述したように、実行済みのテスト分析時におけるテスト量に基づいて、繰り返し導入量が設定される。
【0048】
最後のテスト分析が実行され、次のテスト分析を実行すると判断される場合は、最後のテスト分析時におけるテスト量が繰り返し導入量として設定されるのが好ましい。図2に示す例では、第nテスト量でのテスト分析が実行され、次のテスト分析を実行すると判断される場合、第nテスト量が繰り返し導入量として設定される。
【0049】
また、第1実施形態では、繰り返し導入量が設定されると、その繰り返し導入量に基づいて、繰り返し回数が設定される。具体的には、繰り返し回数が設定される場合、使用される試料の残量が算出される。試料の残量が算出されると、その残量が、繰り返し導入量に対応する1回の試料の導入時に使用される試料の量で除算され、商の値が、繰り返し回数として設定される。
【0050】
たとえば、次のテスト分析を実行しないと判断され、1つ前のテスト分析時におけるテスト量が繰り返し導入量として設定される場合、使用される試料の残量は下記数式1で表される。一方、最後のテスト分析において次のテスト分析を実行すると判断され、最後のテスト量が繰り返し導入量として設定される場合、使用される試料の残量は下記数式2で表される。なお、数式1及び数式2において、左辺は、自動設定処理が実行された直後の試料の残量を示す。すなわち、右辺は、自動設定処理が実行される前の試料の全量からテスト分析によって使用された試料の量を引くことを示す。試料の全量は、記憶部26に予め記憶されていてもよい。
【数1】
【数2】
【0051】
また、繰り返し回数は、下記数式3で表される。数式3において、左辺は、繰り返し回数を示す。すなわち、右辺は、自動設定処理が実行された直後の試料の残量が、繰り返し導入量に対応する1回の試料の導入時に使用される試料の量で除算されることを示す。
【数3】
【0052】
ただし、自動設定処理が実行された直後の試料の残量が、繰り返し導入量に対応する1回の試料の導入時に使用される試料の量より少ない場合、試料の不足が通知されてもよい。
【0053】
上記のような演算により、複数回繰り返される導入処理の回数が設定されるが、数式3の演算が行われた結果、余りが算出された場合には、1回分に満たない試料が残るため、この試料を導入する処理が追加的に行われる。この場合、実行される導入処理の回数は、数式3で算出される回数よりも1回多い回数となる。
【0054】
これらのことから、第1実施形態では、最初のテスト分析を除くテスト分析において、次のテスト分析を実行しないと判断される場合、及び、最後のテスト分析において、次のテスト分析を実行すると判断される場合、繰り返し設定項目が設定され、その繰り返し設定項目に従って、導入処理が繰り返し実行される。
【0055】
さらに、テスト分析において、次のテスト分析を実行すると判断される場合、テスト分析時に分離カラム36内で分離された成分を分取部44で分取してもよい。この場合、テスト分析時においても試料中の成分の分取が可能とされ、試料の無駄な消費を抑制することができる。
【0056】
4.プログラムとデータ
図3は、第1実施形態のRAM24のメモリマップ200の一例を示す図解図である。図に示すようにRAM24は、プログラム領域201およびデータ領域202を含む。プログラム領域201には、記憶部26から予め読み出された制御プログラムが記憶される。
【0057】
制御プログラムは、画像生成プログラム201a、表示プログラム201b、操作検出プログラム201c、動作制御プログラム201d、テストプログラム201e、判断プログラム201f、設定プログラム201g及び繰り返し導入プログラム201k等を含む。
【0058】
また、設定プログラム201gは、導入量設定プログラム201h及び回数設定プログラム201i等を含む。
【0059】
画像生成プログラム201aは、後述する画像生成データ202aを用いて、表示画像データを生成するためのプログラムである。
【0060】
表示プログラム201bは、画像生成プログラム201aに従って生成される表示画像データを用いて、その表示画像データに対応する表示画像を表示部46に表示するためのプログラムである。
【0061】
操作検出プログラム201cは、操作部50への操作を検出するためのプログラムである。CPU22は、操作検出プログラム201cに従って後述する操作データ202bを時系列に従ってRAM24に記憶する。
【0062】
動作制御プログラム201dは、クロマトグラフ装置10の各種コンポーネントを制御するためのプログラムである。動作制御プログラム201dには、送液ポンプ30を制御するためのプログラム、試料導入部32を制御するためのプログラム、カラムオーブン34を制御するためのプログラム、検出部38を制御して試料中の成分を検出するためのプログラム、切替部42を制御するためのプログラム、及び、分取部44を制御して試料中の成分を分取するためのプログラム等を含む。
【0063】
テストプログラム201eは、テスト設定項目を参照し、テスト量が異なる複数回のテスト分析を、テスト量に応じた所定の順序で動作制御プログラム201dに実行させるためのプログラムである。
【0064】
判断プログラム201fは、テスト分析時の検出部38による検出結果に基づいて、テストプログラム201eで次のテスト分析を実行するか否かを判断するためのプログラムである。
【0065】
設定プログラム201gは、最初のテスト分析を除くテスト分析時おいて、判断プログラム201fにより、次のテスト分析を実行しないと判断される場合に、繰り返し設定項目を設定するためのプログラムである。
【0066】
また、設定プログラム201gは、複数回のテスト分析のうちの最後のテスト分析時において、判断プログラム201fにより、次のテスト分析を実行すると判断される場合に、テストプログラム201eで、次のテスト分析を行う代わりに、繰り返し設定項目を設定するためのプログラムでもある。
【0067】
導入量設定プログラム201hは、実行済みのテスト分析時におけるテスト量に基づいて、繰り返し導入量を設定するためのプログラムである。
【0068】
回数設定プログラム201iは、導入量設定プログラム201hによって繰り返し導入量が設定されると、試料の残量を参照し、繰り返し導入量に基づく繰り返し回数を設定するためのプログラムである。
【0069】
繰り返し導入プログラム201kは、設定プログラム201gによって、繰り返し設定項目が設定されると、動作制御プログラム201dを用いて、導入処理を複数回繰り返して実行するためのプログラムである。
【0070】
なお、図示は省略するが、プログラム領域201には、他の制御プログラムも記憶される。たとえば、プログラム領域201には、通知プログラム等が記憶される。通知プログラムは、試料の不足及びテスト量の再設定等を促すための通知を行うためのプログラムである。
【0071】
データ領域202には、予め記憶部26から読み出されたデータが記憶される。図3に示す例では、データ領域202には、画像生成データ202a、操作データ202b、テスト設定項目データ202c、テスト分析データ202d及び繰り返し設定項目データ202e等が記憶される。
【0072】
画像生成データ202aは、表示部46に表示する各種の画面に対応する表示画像データを生成するためのポリゴンデータまたはテクスチャデータ等のデータである。
【0073】
操作データ202bは、操作検出プログラム201cに従って取得されたデータであって、時系列に従ってデータ領域202に記憶される。
【0074】
テスト設定項目データ202cは、テスト設定項目に対応するデータである。テスト設定項目データは、テスト量を示すデータ及びテスト順序を示すデータ等を含む。
【0075】
テスト分析データ202dは、テスト分析の結果を示すデータである。すなわち、テスト分析結果データ202dは、テスト分析の結果を示すクロマトグラムに対応するデータである。なお、データ領域202には、複数のテスト分析結果データ202dが記憶されることがある。
【0076】
繰り返し設定項目データ202eは、繰り返し設定項目に対応するデータである。繰り返し設定項目データ202fは、繰り返し導入量を示すデータ及び繰り返し回数を示すデータ等を含む。
【0077】
また、データ領域202には、他の実行用データ、及び、検出部38から出力される信号に対応するデータが一時的に記憶される。さらに、データ領域202には、制御プログラムの実行に必要なタイマ(カウンタ)およびレジスタが設けられる。
【0078】
5.クロマトグラフ装置の機能的構成
図4は、第1実施形態のクロマトグラフ装置10の機能的構成の一例を示すブロック図である。CPU22が動作制御プログラム201dを実行すると、制御部20がクロマトグラフ装置10の各種コンポーネントを制御する動作制御処理部100として機能する。
【0079】
また、CPU22がテストプログラム201eを実行すると、制御部20が動作制御処理部100を用いて、テスト量が異なる複数回のテスト分析を、テスト量に応じた所定の順序で実行するテスト処理部102として機能する。
【0080】
さらに、CPU22が判断プログラム201fを実行すると、制御部20がテスト分析時の検出部38による検出結果に基づいて、テスト処理部102で次のテスト分析を実行させるか否かを判断する判断処理部104として機能する。
【0081】
さらにまた、最初のテスト分析を除くテスト分析時おいて、判断処理部104により、次のテスト分析を実行しないと判断される場合に、CPU22が設定プログラム201gを実行すると、制御部20は、繰り返し設定項目を設定する設定処理部106として機能する。
【0082】
また、複数回のテスト分析のうちの最後のテスト分析時において、判断処理部104により、次のテスト分析を実行すると判断される場合にも、CPU22が設定プログラム201gを実行すると、制御部20は、繰り返し設定項目を設定する設定処理部106として機能する。
【0083】
さらに、CPU22が繰り返し導入プログラム201kを実行することで、制御部20が動作制御処理部100を用いて、導入処理を複数回繰り返して実行する繰り返し導入処理部108として機能する。
【0084】
さらにまた、CPU22が画像生成プログラム201aを実行することで、画像生成データ202aを用いて、表示画像データを生成する画像生成処理部110として機能する。
【0085】
さらに、CPU22が表示プログラム201bを実行することで、画像生成処理部110によって生成される表示画像データを用いて、その表示画像データに対応する表示画像を表示部46に表示する表示処理部112として機能する。
【0086】
また、CPU22が操作検出プログラム201cを実行することで、操作部50への操作を検出する操作検出処理部114として機能する。
【0087】
設定処理部106には、実行済みのテスト分析時におけるテスト量に基づいて、繰り返し導入量を設定する導入量設定処理部116が含まれ、この導入量設定処理部116は、導入量設定プログラム201hに対応する。
【0088】
さらに、設定処理部106には、導入量設定処理部116により繰り返し導入量が設定されると、試料の残量を参照し、その繰り返し導入量に基づいて、繰り返し回数を設定する回数設定処理部118が含まれ、この回数設定処理部118は、回数設定プログラム201iに対応する。
【0089】
図4に示す例では、たとえば、テスト処理部102によって、テスト量が異なる複数回のテスト分析が実行されるとき、判断処理部104によってテスト分析時の検出部38による検出結果に基づいて、次のテスト分析を実行させるか否かを判断される。
【0090】
また、複数回のテスト分析が実行されると、必要に応じて、設定処理部106により繰り返し設定項目が設定される。さらに、繰り返し設定項目が設定されると、繰り返し導入処理部108により、導入処理が複数回繰り返して実行される。
【0091】
6.フロー
図5は、第1実施形態のクロマトグラフ装置10のCPU22の動作処理の一例を示すフロー図である。CPU22は、たとえば、所定の操作を検出すると、動作処理を開始する。
【0092】
ステップS1では、テスト分析を実行し、ステップS2で、次のテスト分析を実行するかどうかを判断する。ステップS2で“No”であれば、つまり、次のテスト分析を実行しないのであれば、ステップS6に進む。一方、ステップS2で“Yes”であれば、つまり、次のテスト分析を実行するのであれば、ステップS3に進む。
【0093】
ステップS3では、直前に最後のテスト分析を実行したかどうかを判断する。ステップS3で“No”であれば、つまり、直前に最後のテスト分析を実行してないのであれば、ステップS1に戻る。一方、ステップS3で“Yes”であれば、つまり、直前に最後のテスト分析を実行したのであれば、ステップS4に進む。
【0094】
ステップS4では、繰り返し設定項目を設定し、ステップS5で、導入処理を複数回繰り返して実行する。また、ステップS5で、導入処理を繰り返して実行した後、動作処理を終了する。
【0095】
ステップS6では、直前に最初のテスト分析を実行したかどうかを判断する。ステップS6で“No”であれば、つまり、直前に最初のテスト分析を実行してないのであれば、ステップS4に進む。一方、ステップS6で“Yes”であれば、つまり、直前に最初のテスト分析を実行したのであれば、動作処理を終了する。
【0096】
このように、第1実施形態によれば、分析者は、テスト設定項目を設定するだけで、試料の繰り返しの導入量が自動的に適切な値に設定される。したがって、分析者は、試料の繰り返しの導入量を検討する必要がなく、繰り返しの導入処理を実行するまでに要する時間を短縮することができる。
【0097】
さらに、テスト設定項目を設定するだけで、繰り返し設定項目が適切に設定されることから、分析者が変わったとしても、前回と同じようにテスト設定項目を設定するだけで、前回と同じように繰り返し設定項目が設定される。したがって、分析者にかかわらず、容易に同じ結果を得ることができる。
【0098】
7.変形例
以上の実施形態では、クロマトグラフ装置10として、液体クロマトグラフを例に挙げて説明したが、ガスクロマトグラフ装置にも同様のことが言える。ガスクロマトグラフ装置の場合、たとえば、ガスボンベが移動相容器28に相当し、そのガスボンベ内のガスが移動相に相当する。また、この場合、分離カラム36で分離される試料成分は気体である。
【0099】
さらに、上述の実施形態等で挙げた具体的な構成等は一例であり、実際の製品に応じて適宜変更することが可能である。また、上述の実施形等で示したフロー図の各ステップは、同じ結果が得られるのであれば、処理される順番は適宜変更することが可能である。
【0100】
7.態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0101】
(第1項)一態様に係るクロマトグラフ装置は、
試料とともに移動相をカラム内に導入し、前記カラム内で分離された試料中の成分を検出部で検出するクロマトグラフ装置であって、
前記カラム内への試料の導入量が異なる複数回のテスト分析を、前記導入量に応じた所定の順序で実行するテスト処理部と、
テスト分析時の前記検出部による検出結果に基づいて、前記所定の順序に従って前記テスト処理部に次のテスト分析を実行させるか否かを判断する判断処理部と、
前記判断処理部により、次のテスト分析を実行させないと判断される場合に、実行済みのテスト分析時における試料の導入量に基づいて、繰り返しの導入量を設定する導入量設定処理部と、
前記繰り返しの導入量で前記カラム内に試料を導入する導入処理を複数回繰り返す繰り返し導入処理部とを備えてもよい。
【0102】
第1項に記載のクロマトグラフ装置によれば、テスト分析を実行することにより、カラム内への試料の導入量を適切に設定し、その導入量で導入処理を複数回繰り返して実行することができる。また、カラム内への試料の導入量を自動的に設定することができるため、カラム内への試料の導入量を分析者が検討する必要がなく、カラム内への試料の導入量の検討時間及び検討結果が分析者によって異なることを防止できる。
【0103】
(第2項)第1項に記載のクロマトグラフ装置において、
前記複数回のテスト分析のうちの最後のテスト分析時において、前記判断処理部により、次のテスト分析を実行させると判断される場合に、前記テスト処理部で、次のテスト分析を行う代わりに、前記導入量設定処理部で、実行済みのテスト分析時における試料の導入量に基づいて、繰り返しの導入量を設定してもよい。
【0104】
第2項に記載のクロマトグラフ装置によれば、複数回のテスト分析のうちの最後のテスト分析時において、次のテスト分析を実行させると判断される場合に、カラム内への試料の導入量を上限値に設定し、その導入量で導入処理を複数回繰り返して実行することができる。
【0105】
(第3項)第1項又は第2項に記載のクロマトグラフ装置において、
前記複数回のテスト分析のうちの最初のテスト分析時において、前記判断処理部により、次のテスト分析を実行させないと判断された場合に、前記導入量設定処理部で、繰り返しの導入量を設定しなくてもよい。
【0106】
第3項に記載のクロマトグラフ装置によれば、複数回のテスト分析のうちの最初のテスト分析時において、次のテスト分析を実行させないと判断される場合に、カラム内への試料の導入量を設定せず、導入処理の実行を中断させることができる。
【0107】
(第4項)第1項から第3項のいずれかに記載のクロマトグラフ装置において、
前記テスト処理部は、前記複数回のテスト分析を前記導入量の昇順に沿った順序で実行してもよい。
【0108】
第4項に記載のクロマトグラフ装置によれば、複数回のテスト分析が導入量の昇順に沿った順序で実行されるため、1回の導入処理におけるカラム内への試料の導入量ができるだけ多くなるように設定することができる。したがって、試料中の成分を分取するような構成の場合には、効率よく分取を行うことができる。
【0109】
(第5項)第4項に記載のクロマトグラフ装置において、
前記判断処理部は、テスト分析時の前記検出部による検出結果におけるピークの分離度に基づいて、次のテスト分析を実行するか否かを判断してもよい。
【0110】
第5項に記載のクロマトグラフ装置によれば、テスト分析時のカラム内への試料の導入量の増加に伴い悪化するピークの分離度に基づいて、次のテスト分析を実行するか否かを適切に判断することができる。
【0111】
(第6項)第1項から第3項のいずれかに記載のクロマトグラフ装置において、
前記テスト処理部は、前記複数回のテスト分析を前記導入量の降順に沿った順序で実行してもよい。
【0112】
第6項に記載のクロマトグラフ装置によれば、複数回のテスト分析が導入量の降順に沿った順序で実行されるため、1回の導入処理におけるカラム内への試料の導入量ができるだけ少なくなるように設定することができる。したがって、少量の試料に含まれる成分を検出する高感度分析を行うような構成の場合には、試料の使用量をできるだけ少なくすることができる。
【0113】
(第7項)第6項に記載のクロマトグラフ装置において、
前記判断処理部は、テスト分析時の前記検出部による検出結果におけるピークの強度に基づいて、次のテスト分析を実行するか否かを判断してもよい。
【0114】
第7項に記載のクロマトグラフ装置によれば、テスト分析時のカラム内への試料の導入量の減少に伴い低くなるピークの強度に基づいて、次のテスト分析を実行するか否かを適切に判断することができる。
【0115】
(第8項)第1項から第7項のいずれかに記載のクロマトグラフ装置は、
前記導入量設定処理部で設定される繰り返しの導入量に基づいて、前記導入処理の回数を設定する回数設定処理部をさらに備え、
前記繰り返し導入処理部は、前記導入処理を前記回数設定処理部で設定される回数行ってもよい。
【0116】
第8項に記載のクロマトグラフ装置によれば、導入量設定処理部で設定される繰り返し導入量に基づいて、導入処理の回数を適切に設定し、その繰り返し回数で導入処理を複数回繰り返して実行することができる。
【0117】
(第9項)一態様に係る試料導入量設定方法は、
試料とともに移動相をカラム内に導入し、前記カラム内で分離された試料中の成分を検出部で検出するクロマトグラフ装置における試料導入量設定方法であって、
前記カラム内への試料の導入量が異なる複数回のテスト分析を、前記導入量に応じた所定の順序で実行するテストステップと、
テスト分析時の前記検出部による検出結果に基づいて、前記所定の順序に従って前記テストステップで次のテスト分析を実行するか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップにより、次のテスト分析を実行しないと判断される場合に、実行済みのテスト分析時における試料の導入量に基づいて、前記クロマトグラフ装置において前記カラム内に試料を導入する導入処理を複数回繰り返す際の繰り返しの導入量を設定する導入量設定ステップとを含んでいてもよい。
【0118】
第9項に記載の試料導入量設定方法によれば、テスト分析を実行することにより、カラム内への試料の導入量を適切に設定し、その導入量で導入処理を複数回繰り返して実行することができる。また、カラム内への試料の導入量を自動的に設定することができるため、カラム内への試料の導入量を分析者が検討する必要がなく、カラム内への試料の導入量の検討時間及び検討結果が分析者によって異なることを防止できる。
【符号の説明】
【0119】
10 クロマトグラフ装置
36 分離カラム
38 検出部
102 テスト処理部
104 判断処理部
106 設定処理部
108 繰り返し導入処理部
116 導入量設定処理部
118 回数設定処理部
図1
図2
図3
図4
図5