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特許7666598光干渉断層撮像装置、光干渉断層撮像方法、及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】光干渉断層撮像装置、光干渉断層撮像方法、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20250415BHJP
【FI】
G01N21/17 630
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023531146
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2021024337
(87)【国際公開番号】W WO2023275929
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】中村 滋
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/118541(WO,A1)
【文献】特表2021-503595(JP,A)
【文献】特開2020-060455(JP,A)
【文献】国際公開第2008/090599(WO,A1)
【文献】特開2002-014037(JP,A)
【文献】特開平03-123323(JP,A)
【文献】特開2002-050816(JP,A)
【文献】特表2018-521326(JP,A)
【文献】特表2014-525563(JP,A)
【文献】特表2010-540914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/17
A61B 1/00
A61B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長掃引レーザ光源と、
前記波長掃引レーザ光源から出射された光を分岐し、分岐した光を増幅し、増幅した光を更に分岐して複数の光として出力する分岐部と、
前記分岐部から出力された複数の光の各々を用いて、異なる測定対象物に対する断層構造情報を取得する複数のユニットと、
を備え、
前記複数のユニット各々は、
前記分岐部から出力された光を分岐させて物体光と参照光とを生成する分岐生成部と、
前記物体光を前記測定対象物に照射する光ビーム走査部と、
前記測定対象物で散乱された前記物体光と前記参照光とを干渉させた干渉光の強度に応じて電気信号を生成する信号生成部と、
前記電気信号に基づいて前記測定対象物の断層構造情報を生成する情報生成部と、
を備える光干渉断層撮像装置。
【請求項2】
前記分岐部は、前記波長掃引レーザ光源から出射された光を時分割して、前記複数の光として出力する請求項に記載の光干渉断層撮像装置。
【請求項3】
前記分岐生成部、前記信号生成部、及び前記情報生成部が、前記複数のユニット間で共通する1つの集約ユニットとして構成されている請求項1又は2に記載の光干渉断層撮像装置。
【請求項4】
前記波長掃引レーザ光源は、第1の光パルスと第2の光パルスとを出射し、
前記分岐部は、前記第1の光パルスと前記第2の光パルスとを合流させた光を分岐して前記複数の光として出力し、
前記複数のユニットの各々は、前記分岐部から出力された光を前記第1の光パルスと前記第2の光パルスとに分離して、前記第1の光パルスを前記物体光と前記参照光を生成する光として出力し、前記第2の光パルスを前記信号生成部が前記断層構造情報を生成するトリガとなるトリガ信号として出力する分離部を更に備える
請求項1からのいずれか一項に記載の光干渉断層撮像装置。
【請求項5】
前記複数のユニットの各々は、前記分岐部から出力された光のパワーの一部分を分離して光電変換することで、前記信号生成部が前記断層構造情報を生成するトリガとなるトリガ信号を抽出する抽出部を更に備える請求項1からのいずれか一項に記載の光干渉断層撮像装置。
【請求項6】
コンピュータによって、
波長掃引レーザ光源から光を出射し、
前記波長掃引レーザ光源から出射された光を分岐し、分岐した光を増幅し、増幅した光を更に分岐して複数の光として出力し
前記複数の光の各々を用いて、異なる測定対象物に対する断層構造情報を複数のユニットの各々で取得する、
光干渉断層撮像方法であって、
前記複数のユニット各々は、
前記複数の光を更に分岐させて物体光と参照光とを生成し、
前記物体光を前記測定対象物に照射し、
前記測定対象物で散乱された前記物体光と前記参照光とを干渉させた干渉光の強度に応じて電気信号を生成し、
前記電気信号に基づいて前記測定対象物の断層構造情報を生成する、
光干渉断層撮像方法。
【請求項7】
コンピュータに、
波長掃引レーザ光源から光を出射し、
前記波長掃引レーザ光源から出射された光を分岐し、分岐した光を増幅し、増幅した光を更に分岐して複数の光として出力し
前記複数の光の各々を用いて、異なる測定対象物に対する断層構造情報を複数のユニットの各々で取得する、
光干渉断層撮像方法であって、
前記複数のユニット各々は、
前記複数の光を更に分岐させて物体光と参照光とを生成し、
前記物体光を前記測定対象物に照射し、
前記測定対象物で散乱された前記物体光と前記参照光とを干渉させた干渉光の強度に応じて電気信号を生成し、
前記電気信号に基づいて前記測定対象物の断層構造情報を生成する、
光干渉断層撮像方法を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、光干渉断層撮像を行う光干渉断層撮像装置、光干渉断層撮像方法、及び記録媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の表面近傍の断層撮像を行う技術として、光コヒーレンス・トモグラフィー(Optical Coherence Tomography:OCT)技術が知られている。例えば特許文献1では、OCT技術を用いて角膜の3次元形状データを演算する技術が開示されている。特許文献2では、眼科手術用のプローブにおいてOCT走査を行い、組織の電子画像を生成する技術が開示されている。特許文献3では、OCT技術を用いて網膜の層構造を示す断層画像を作成する際に、光源からの光を2つのファイバーカプラーで分岐させてもよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-051101号公報
【文献】特表2014-503268号公報
【文献】特開2015-221091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この開示は、先行技術文献に開示された技術を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この開示の光干渉断層撮像装置の一の態様は、波長掃引レーザ光源と、前記波長掃引レーザ光源から出射された光を複数の光に分岐する分岐部と、前記分岐部から出力された複数の光の各々を用いて、異なる測定対象物に対する断層構造情報を取得する複数のユニットと、を備え、前記複数のユニット各々は、前記分岐部から出力された光を分岐させて物体光と参照光とを生成する分岐生成部と、前記物体光を前記測定対象物に照射する光ビーム走査部と、前記測定対象物で散乱された前記物体光と前記参照光とを干渉させた干渉光の強度に応じて電気信号を生成する信号生成部と、前記電気信号に基づいて前記測定対象物の断層構造情報を生成する情報生成部と、を備える。
【0006】
この開示の光干渉断層撮像方法の一の態様は、コンピュータによって、波長掃引レーザ光源から光を出射し、前記波長掃引レーザ光源から出射された光を複数の光に分岐し、前記複数の光の各々を用いて、異なる測定対象物に対する断層構造情報を複数のユニットの各々で取得する光干渉断層撮像方法であって、前記複数のユニット各々は、前記複数の光を更に分岐させて物体光と参照光とを生成し、前記物体光を前記測定対象物に照射し、前記測定対象物で散乱された前記物体光と前記参照光とを干渉させた干渉光の強度に応じて電気信号を生成し、前記電気信号に基づいて前記測定対象物の断層構造情報を生成する。
【0007】
この開示の記録媒体の一の態様は、コンピュータに、波長掃引レーザ光源から光を出射し、前記波長掃引レーザ光源から出射された光を複数の光に分岐し、前記複数の光の各々を用いて、異なる測定対象物に対する断層構造情報を複数のユニットの各々で取得する、光干渉断層撮像方法であって、前記複数のユニット各々は、前記複数の光を更に分岐させて物体光と参照光とを生成し、前記物体光を前記測定対象物に照射し、前記測定対象物で散乱された前記物体光と前記参照光とを干渉させた干渉光の強度に応じて電気信号を生成し、前記電気信号に基づいて前記測定対象物の断層構造情報を生成する、光干渉断層撮像方法を実行させるコンピュータプログラムが記録されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る光干渉断層撮像装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。
図3】第2実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。
図4】第3実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。
図5】第4実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。
図6】第5実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。
図7】第6実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。
図8】第7実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。
図9】第8実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。
図10】第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置を接触型指紋スキャナに適用した場合の構成を示す概略図である。
図11】第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置を非接触型指紋スキャナに適用した場合の構成を示す概略図(その1)である。
図12】第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置を非接触型指紋スキャナに適用した場合の構成を示す概略図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、光干渉断層撮像装置、光干渉断層撮像方法、及び記録媒体の実施形態について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る光干渉断層撮像装置について、図1及び図2を参照して説明する。
【0011】
(ハードウェア構成)
まず、図1を参照しながら、第1実施形態に係る光干渉断層撮像装置100のハードウェア構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る光干渉断層撮像装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、第1実施形態に係る光干渉断層撮像装置100は、プロセッサ11と、RAM(Random Access Memory)12と、ROM(Read Only Memory)13と、記憶装置14とを備えている。光干渉断層撮像装置100は更に、入力装置15と、出力装置16と、を備えていてもよい。また、第1実施形態に係る光干渉断層撮像装置100は、波長掃引レーザ光源101と、複数の光学系ユニット20とを備えている。上述した、プロセッサ11と、RAM12と、ROM13と、記憶装置14と、入力装置15と、出力装置16と、波長掃引レーザ光源101と、複数の光学系ユニット20とは、データバス17を介して接続されていてよい。
【0013】
プロセッサ11は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、プロセッサ11は、RAM12、ROM13及び記憶装置14のうちの少なくとも一つが記憶しているコンピュータプログラムを読み込むように構成されている。或いは、プロセッサ11は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。プロセッサ11は、ネットワークインタフェースを介して、光干渉断層撮像装置100の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、読み込んでもよい)。プロセッサ11は、読み込んだコンピュータプログラムを実行することで、RAM12、記憶装置14、入力装置15及び出力装置16を制御する。
【0014】
プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)、DSP(Demand-Side Platform)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成されてよい。プロセッサ11は、これらのうち一つで構成されてもよいし、複数を並列で用いるように構成されてもよい。
【0015】
RAM12は、プロセッサ11が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶する。RAM12は、プロセッサ11がコンピュータプログラムを実行している際にプロセッサ11が一時的に使用するデータを一時的に記憶する。RAM12は、例えば、D-RAM(Dynamic RAM)であってもよい。
【0016】
ROM13は、プロセッサ11が実行するコンピュータプログラムを記憶する。ROM13は、その他に固定的なデータを記憶していてもよい。ROM13は、例えば、P-ROM(Programmable ROM)であってもよい。
【0017】
記憶装置14は、光干渉断層撮像装置100が長期的に保存するデータを記憶する。記憶装置14は、プロセッサ11の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置14は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0018】
入力装置15は、光干渉断層撮像装置100のユーザからの入力指示を受け取る装置である。入力装置15は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。入力装置15は、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末として構成されてもよい。
【0019】
出力装置16は、光干渉断層撮像装置100に関する情報を外部に対して出力する装置である。例えば、出力装置16は、光干渉断層撮像装置10に関する情報を表示可能な表示装置(例えば、ディスプレイ)であってもよい。また、出力装置16は、光干渉断層撮像装置10に関する情報を音声出力可能な装置(例えば、スピーカ)であってもよい。入力装置15は、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末として構成されてもよい。
【0020】
波長掃引レーザ光源101は、波長を連続的に変化させたレーザ光を発生させることが可能な光源である。本実施形態に係る光干渉断層撮像装置100は、波長掃引レーザ光源101から出射されるレーザ光のコヒーレンス性を利用して、測定対象物の断層画像を行うことが可能に構成されている。
【0021】
光学系ユニット20は、複数の光学部材を備えるユニットとして構成されている。光学系ユニット20は、波長掃引レーザ光源101から出射される光を測定対象物まで導く他、測定対象物で散乱された光を干渉させて干渉光を生成可能に構成されている。なお、光学系ユニット20のより具体的な構成については後述する。本実施形態では特に、1つの波長掃引レーザ光源101に対して、複数の光学系ユニット20が備えられている。
【0022】
(具体的構成及び各部の動作)
次に、図2を参照しながら、第1実施形態に係る光干渉断層撮像装置100の具体的な構成及び各部の動作について説明する。図2は、第1実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0023】
図2において、第1実施形態に係る光干渉断層撮像装置100は、波長掃引レーザ光源101から出射される光を用いて、測定対象物108及び109の断層画像を撮像可能な装置として構成されている。本実施形態に係る光干渉断層撮像装置100は特に、1つの波長掃引レーザ光源101を分岐して複数のユニットに出力し、各ユニットで異なる測定対象物(ここでは、測定対象物108及び109)の断層画像を撮像可能に構成されている。
【0024】
具体的には、波長掃引レーザ光源101から出射される光パルスは、光分岐器131で分岐された後、光干渉・受光部102、光ビーム走査部104、及び信号処理部106を備える第一のユニットと、光干渉・受光部103、光ビーム走査部105、信号処理部107を備える第二のユニットと、にそれぞれ供給される。第一のユニットでは測定対象物108の断層画像が得られ、第二のユニットでは測定対象物109の断層画像が得られる。
【0025】
波長掃引レーザ光源101は、例えば持続時間10μsの間に波長が1250nmから1350nmまで増加する光パルスを生成し、この光パルスを20μs毎に50kHz繰り返しで生成する。
【0026】
波長掃引レーザ光源101から出射され、光分岐器131を経て第一のユニットの光干渉・受光部102に供給された光は、光ビーム走査部104を経て測定対象物108に照射され散乱される。この散乱光の一部が光干渉・受光部102に戻り光電変換される。光干渉・受光部102から出力される電気信号が信号処理部106で断層画像データに変換され、測定対象物108の断層画像が得られる。
【0027】
また、波長掃引レーザ光源101から出射され、光分岐器131を経て第二のユニットの光干渉・受光部103に供給された光は、光ビーム走査部105を経て測定対象物109に照射され散乱される。この散乱光の一部が光干渉・受光部103に戻り光電変換される。光干渉・受光部103から出力される電気信号が信号処理部107で断層画像データに変換され、測定対象物109の断層画像が得られる。
【0028】
より具体的には、第一のユニットの光干渉・受光部102に供給された光は、サーキュレータ111を経由して分岐合流器112に入力される。分岐合流器112入力された光は、物体光R11と参照光R21とに分岐される。物体光R11はファイバコリメータ115、走査ミラー及びレンズから成る照射光学系116を経て、測定対象物108に照射される。そして、測定対象物108において散乱された物体光R31は、分岐合流器112へ戻る。他方、参照光R21は参照光ミラー113を経て、分岐合流器112へ戻る。したがって、分岐合流器112では、測定対象物108から散乱された物体光R31と参照光ミラー113から反射された参照光R41とが干渉し、干渉光R51、R61が生成される。すなわち、物体光R31と参照光R41との位相差によって干渉光R51と干渉光R61との強度比が決定される。
【0029】
干渉光R51はサーキュレータ111を経て、干渉光R61は直接に、二入力のバランス型受光器114へ入力される。バランス型受光器114からは干渉光R51と干渉光R61の強度差に応じた電圧が出力され、信号処理部106を成す光スペクトルデータ生成・Aスキャン波形生成部117へ入力される。
【0030】
なお、バランス型受光器114は2つのフォトダイオードが直列に接続され、その接続が出力(差動出力)となっている受光器である。また、バランス型受光器114の帯域は1GHz以下である。
【0031】
光スペクトルデータ生成・Aスキャン波形生成部117では、波長掃引レーザ光源101からの出射光の波長変化に関する情報と、干渉光R51とR61との強度比の変化に関する情報とに基づいて、干渉光スペクトルデータを生成する。光スペクトルデータ生成・Aスキャン波形生成部117は、生成した干渉光スペクトルデータをフーリエ変換して、深さ方向(Z方向)の異なる位置における後方散乱光(物体光)の強度を示すデータを得る(以下、測定対象物108のある位置の深さ方向(Z方向)の後方散乱光(物体光)の強度を示すデータを得る動作を、「Aスキャン」と称する)。
【0032】
光パルスの繰り返し周期20μs毎にAスキャン波形を生成するため、波長掃引レーザ光源101から繰り返し周波数50kHzの電気信号がトリガ信号として断層画像生成部118を通して信号処理部106へ供給されている。なお、トリガ信号は、波長掃引レーザ光源101から出力された後、トリガ信号分岐器132で分岐され、断層画像生成部118及び断層画像生成部128に供給されている。
【0033】
波長λ、波数k(=2π/λ)の物体光と参照光の干渉を考える。参照光が分岐合流器112で分岐されてから参照光ミラー113で反射されて分岐合流器112へ戻るまでの光路長がPであり、物体光が分岐合流器112で分岐されてから測定対象物108の光散乱点1ケ所で後方散乱されて分岐合流器112へ戻るまでの光路長がP=P+zである場合、分岐合流器112で干渉する物体光R31と参照光R41は、位相差kz+φで干渉する。ここでφはkやzに依存しない定数である。分岐合流器112で干渉する物体光R31の振幅をE、参照光R41の振幅をEとすると、干渉光R51と干渉光R61の強度差は下記式(1)のようになる。
【0034】
【数1】
【0035】
すなわち、波数k-Δk/2からk+Δk/2まで測定して得られた干渉光スペクトルデータI(k)には、周期2π/zの変調が現れることになる。
【0036】
I(k)のフーリエ変換の振幅J(z)は、下記式(2)のようになる。
【0037】
【数2】
【0038】
これは、光散乱点位置zを反映してz=z(およびz=-z)でδ関数状のピークを示すことになる。
【0039】
測定対象物がミラーの場合には光散乱点位置は1ヶ所である。しかし、通常、測定対象物に照射された物体光はある程度内部まで減衰しながら伝搬しつつ順次後方散乱され、物体光の光散乱点は表面からある深さまでの範囲に分布することになる。光散乱点が深さ方向にz-Δzからz+Δzまで分布している場合には、干渉光スペクトルにおいて周期2π/(z-Δz)から2π/(z+Δz)までの変調が重なって現れる。
【0040】
さらに、照射光学系116によって物体光R31の照射位置が測定対象物108上で走査される。断層画像生成部118を通して供給されるトリガ信号に応じてビーム位置設定部119が照射光学系116を制御して物体光R31の照射位置を走査線方向(X方向)に移動させる。Aスキャン動作を繰り返し行い、断層画像生成部118でAスキャン測定結果を接続することにより、走査線方向と深さ方向との二次元の後方散乱光(物体光)の強度のマップが断層構造データとして得られる(以下、走査線方向(X方向)にAスキャン動作を繰り返し行って、その測定結果を接続する動作を、「Bスキャン」と称する)。
【0041】
さらに、照射光学系116によって物体光R31の照射位置を走査線方向だけでなく走査線に垂直な方向(Y方向)にも移動させながらBスキャン動作を繰り返し行い、断層画像生成部118でAスキャン測定結果を接続することにより、三次元の断層構造データが得られる(以下、走査線に垂直な方向(Y方向)にBスキャン動作を繰り返し行って、その測定結果を接続する動作を、「Cスキャン」と称する)。
【0042】
なお、第二のユニットにおいても同様の手順(即ち、上述した第1ユニットと同様の手順)で測定対象物109の断層構造データが得られる。
【0043】
(技術的効果)
次に、第1実施形態に係る光干渉断層撮像装置100によって得られる技術的効果について説明する。
【0044】
図1及び図2で説明したように、第1実施形態に係る光干渉断層撮像装置100では、1台の波長掃引レーザ光源101から出射される光が、複数のユニットに分配して測定が行われる。このようにすれば、高コストの波長掃引レーザ光源を複数台のユニットで共有しつつ、各々のユニットで測定対象物の断層構造データの取得が可能となる。その結果、装置コストを抑制することが可能となる。
【0045】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る光干渉断層撮像装置200について、図3を参照して説明する。なお、第2実施形態は、上述した第1実施形態と一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の部分については第1実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0046】
(具体的構成及び各部の動作)
まず、図3を参照しながら、第2実施形態に係る光干渉断層撮像装置200の具体的な構成及び各部の動作について説明する。図3は、第2実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。なお、図3では、図2で示した光干渉・受光部、光ビーム走査部、及び信号処理部に含まれる詳細な構成要素の図示を省略している。
【0047】
図3に示すように、第2実施形態に係る光干渉断層撮像装置200は、波長掃引レーザ光源201から出射される光の入力先として、4台のユニット210、220、230、及び240を備えている。このように、分岐した複数の光が入力されるユニットの数は、特に制限されるものではない。よって、ユニットの数は、例えば5台、6台、あるいは、それ以上の数であってもよい。
【0048】
第2実施形態に係る光干渉断層撮像装置200では、波長掃引レーザ光源201から出射された光は、光分岐器202で4つの光に分岐される。そして、分岐された各々の光は、第一のユニット210の光干渉・受光部211、第二のユニット220の光干渉・受光部221、第三のユニット230の光干渉・受光部231、及び第四のユニット240の光干渉・受光部241に供給される。
【0049】
第一のユニット210の光干渉・受光部211に入力された光は、光ビーム走査部212による走査に用いられる。第二のユニット220の光干渉・受光部221に入力された光は、光ビーム走査部222による走査に用いられる。第三のユニット230の光干渉・受光部231に入力された光は、光ビーム走査部232による走査に用いられる。第四のユニット240の光干渉・受光部241に入力された光は、光ビーム走査部242による走査に用いられる。これにより、各々のユニットで、互いに異なる測定対象物(ここでは4個の測定対象物)の断層構造データの取得が可能となる。
【0050】
なお、波長掃引レーザ光源201から出力されるトリガ信号についても、トリガ信号分岐器203で分岐され、ユニット210の信号処理部213、ユニット220の信号処理部223、ユニット230の信号処理部233、及びユニット240の信号処理部243に供給されている。
【0051】
(技術的効果)
次に、第2実施形態に係る光干渉断層撮像装置200によって得られる技術的効果について説明する。
【0052】
図3で説明したように、第2実施形態に係る光干渉断層撮像装置200では、1台の波長掃引レーザ光源101から出射される光が、第1実施形態よりも多い台数のユニットに分配して測定が行われる。このようにすれば、高コストの波長掃引レーザ光源をより多くのユニットで共有できるようになるため、更に装置コストを抑制することが可能となる。
【0053】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る光干渉断層撮像装置300について、図4を参照して説明する。なお、第3実施形態は、上述した第1及び第2実施形態と一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の部分については第1及び第2実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と異なる部分について詳細に説明し、他の重複する部分について適宜説明を省略するものとする。
【0054】
(具体的構成及び各部の動作)
まず、図4を参照しながら、第3実施形態に係る光干渉断層撮像装置300の具体的な構成及び各部の動作について説明する。図4は、第3実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。なお、図4では、図3で示した構成要素と同様のものに同一の符号を付している。
【0055】
図4に示すように、第3実施形態に係る光干渉断層撮像装置300は、波長掃引レーザ光源201から出射された光パルスを増幅する光増幅器204を備えている。光干渉断層撮像装置300が動作する際には、波長掃引レーザ光源201から出射された光パルスが、まず光増幅器204で増幅される。そして、増幅された光が光分岐器205で2つに分岐される。光分岐器205で分岐された各々の光は、第一のユニット210の光干渉・受光部211、及び第二のユニット220の光干渉・受光部221に供給される。
【0056】
(技術的効果)
次に、第3実施形態に係る光干渉断層撮像装置300によって得られる技術的効果について説明する。
【0057】
図4で説明したように、第3実施形態に係る光干渉断層撮像装置300では、波長掃引レーザ光源201から出射された光パルスが分岐前に増幅される。このようにすれば、分岐による光パルスのパワーの減少を、増幅によって補うことができる。よって、例えば分岐数が多く、そのままでは分岐後の光パルスのパワーが不足してしまうような場合であっても、増幅によってパワーを補い、適切に断層画像を撮像することが可能となる。
【0058】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る光干渉断層撮像装置400について、図5を参照して説明する。なお、第4実施形態は、上述した第1から第3実施形態と一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の部分については第1から第3実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0059】
(具体的構成及び各部の動作)
まず、図5を参照しながら、第4実施形態に係る光干渉断層撮像装置400の具体的な構成及び各部の動作について説明する。図5は、第4実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。なお、図5では、図3及び図4で示した構成要素と同様のものに同一の符号を付している。
【0060】
図5に示すように、第4実施形態に係る光干渉断層撮像装置400は、波長掃引レーザ光源201から出射された光パルスを分岐する第1光分岐器206と、第1光分岐器で分岐された光の各々を増幅する2つの光増幅器207と、光増幅器207の各々で増幅された光の各々を更に分岐する第2光分岐器208とを備えている。
【0061】
光干渉断層撮像装置300が動作する際には、波長掃引レーザ光源201から出射された光パルスが、まず第1光分岐器206で2つの光に分岐される。そして、分岐された2つの光は、それぞれ2つの光増幅器207に供給される。光増幅器207では、第1光分岐器206分岐された2つの光の各々が増幅される。そして、光増幅器207で増幅された2つの光は、それぞれ第2光分岐器208に供給される。第2光分岐器208は、入力された光を更に2つに分岐する。
【0062】
上記の結果、波長掃引レーザ光源201から出射された光パルスは、第1光分岐器206、光増幅器207、及び第2光分岐器208を経て、4つの光に分岐される。第2光分岐器208から出射される4つの光は、第2実施形態と同様に、第一のユニット210の光干渉・受光部211、第二のユニット220の光干渉・受光部221、第三のユニット230の光干渉・受光部231、及び第四のユニット240の光干渉・受光部241に供給される。
【0063】
(技術的効果)
次に、第4実施形態に係る光干渉断層撮像装置400によって得られる技術的効果について説明する。
【0064】
図5で説明したように、第4実施形態に係る光干渉断層撮像装置400では、増幅を挟んで段階的に光パルスが分岐される。このようにすれば、光パルスを比較的多い数に分岐する場合に、適切に分岐及び増幅が行える。なお、第4実施形態では2段階で光パルスを分岐する例を上げたが、3段階以上の段階で光パルスを分岐するようにしてもよい。その場合、各段階の分岐前に増幅を行うようにしてもよい(即ち、段階的に複数回の増幅を行うようにしてもよい)。
【0065】
<第5実施形態>
第5実施形態に係る光干渉断層撮像装置500について、図6を参照して説明する。なお、第5実施形態は、上述した第1から第4実施形態と比べて一部の構成及び動作が異なるのみで、その他の部分については第1から第4実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と異なる部分について詳細に説明し、他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0066】
(具体的構成及び各部の動作)
まず、図6を参照しながら、第5実施形態に係る光干渉断層撮像装置500の具体的な構成及び各部の動作について説明する。図6は、第5実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。なお、図6では、図3から図5で示した構成要素と同様のものに同一の符号を付している。
【0067】
図6に示すように、第5実施形態に係る光干渉断層撮像装置500は、波長掃引レーザ光源201から出射された光パルスを分岐する要素として、光スイッチ209を備えて構成されている。光スイッチ209は、波長掃引レーザ光源201を時分割して分岐させる(即ち、タイミングによって光の経路を切り替える)ことが可能に構成されている。
【0068】
光干渉断層撮像装置400が動作する際には、波長掃引レーザ光源201から出射された光パルスが、各ユニット210、及び220に順次供給されるように、光スイッチ209が切り替わる。例えば、最初に第一のユニット210の光干渉・受光部211に光パルスが供給されるように、光スイッチ209が切り替えられる。その後、第二のユニット220の光干渉・受光部221に光パルスが供給されるように、光スイッチ209が切り替えられる。このような一連の動作を繰り返せば、各ユニット210、及び220の各々に対して、波長掃引レーザ光源101から出射された光パルスを順次供給することが可能である。
【0069】
(技術的効果)
次に、第5実施形態に係る光干渉断層撮像装置500によって得られる技術的効果について説明する。
【0070】
図6で説明したように、第5実施形態に係る光干渉断層撮像装置500では、波長掃引レーザ光源201から出射された光パルスが、光スイッチ209によって分岐される。このようにすれば、分岐による光パルスのパワーの減少を抑制することができる。よって、例えば上述した第3及び第4実施形態のように光増幅器を備えずとも、分岐後の光パルスのパワーを維持することが可能である。
【0071】
<第6実施形態>
第6実施形態に係る光干渉断層撮像装置600について、図7を参照して説明する。なお、第6実施形態は、上述した第1から第5実施形態と比べて一部の構成及び動作が異なるのみで、その他の部分については第1から第5実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と異なる部分について詳細に説明し、他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0072】
(具体的構成及び各部の動作)
まず、図7を参照しながら、第6実施形態に係る光干渉断層撮像装置600の具体的な構成及び各部の動作について説明する。図7は、第6実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0073】
図7に示すように、第6実施形態に係る光干渉断層撮像装置600は、複数のユニットにおける光干渉・受光部及び信号処理部が、共通する1つの集約ユニット310として構成されている。具体的には、集約ユニット310は、光干渉・受光部311、及び321と、信号処理部313、及び323とを備えている。
【0074】
集約ユニット310に含まれる光干渉・受光部311、及び321の各々には、光分岐部302で分岐された光パルスが供給される。また、集約ユニット310に含まれる信号処理部313、及び323には、トリガ信号分岐器303で分岐されたトリガ信号が供給される。
【0075】
集約ユニット310には、複数の光ビーム走査部312、及び322が遠隔配置されている。これら複数の光ビーム走査部312、及び322の各々は、集約ユニット310に含まれる異なる光干渉・受光部及び信号処理部を介して動作するように構成されている。光ビーム走査部312、及び322の各々は、互いに異なる複数の対象測定物に対する走査を行うことが可能である。
【0076】
(技術的効果)
次に、第6実施形態に係る光干渉断層撮像装置600によって得られる技術的効果について説明する。
【0077】
図7で説明したように、第6実施形態に係る光干渉断層撮像装置600では、複数の光干渉・受光部及び信号処理部が、共通する1つの集約ユニット310として構成されている。このようにすれば、光干渉・受光部及び信号処理部を別々のユニットとして構成する場合(例えば、第1から第5実施形態)と比較して、装置構成を簡単化することができ、コストの増加も抑制することが可能である。
【0078】
<第7実施形態>
第7実施形態に係る光干渉断層撮像装置700について、図8を参照して説明する。なお、第7実施形態は、上述した第1から第6実施形態と比べて一部の動作が異なるのみであり、その他の部分については第1から第6実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と異なる部分について詳細に説明し、他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0079】
(具体的構成及び各部の動作)
まず、図8を参照しながら、第7実施形態に係る光干渉断層撮像装置700の具体的な構成及び各部の動作について説明する。図8は、第7実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0080】
図8に示すように、第7実施形態に係る光干渉断層撮像装置700は、光合流器721と、光分岐器722とを備えている。光合流器721は、波長掃引された第一の光パルス
第二の光パルスを合流して出力可能に構成されている。光分岐器722は、光合流器721で合流した光を分岐して出力可能に構成されている。
【0081】
第7実施形態に係る光干渉断層撮像装置700では、波長掃引レーザ光源701から、波長掃引された第一の光パルスと、この光パルスの繰り返しと同期した第二の光パルスが出射される。例えば、波長掃引された第一の光パルスは、持続時間10μsの間に波長が1250nmから1350nmまで増加し20μs毎に50kHz繰り返しで生成される。これと同期して、第二の光パルスは、波長1550nm帯で、50kHz繰り返しで生成されている。
【0082】
光干渉断層撮像装置700が動作する際には、第一の光パルスと第二の光パルスは、光合流器721で合流し、光分岐器723で分岐される。光合流器721は、第一の光パルスと第二の光パルスの波長帯が異なる場合、波長合波器を用いて合流時の光損失を抑制することができる。光分岐器723で分岐された光は、光干渉・受光部702、光ビーム走査部104、信号処理部106から成る第一のユニット、及び、光干渉・受光部703、光ビーム走査部105、信号処理部107から成る第二のユニットへ供給される。
【0083】
第一のユニットでは、波長掃引レーザ光源701から出射され光合流器721、光分岐器722を経て光干渉・受光部702に供給された光がトリガ信号分離部724に入力される。第一の光パルスと第二の光パルスの波長帯が異なる場合、波長分波器を用いて分離時の光損失を抑制しつつ、第一の光パルスと第二の光パルスを分離した後、第一の光パルスはサーキュレータ111へ導き、第二の光パルスは受光器で光電変換する。第一の光パルスは、第1実施形態(図2参照)と同様の手順で測定対象物108の断層構造データを取得するために用いられる。第二の光パルスを光電変換して得られた電気信号は、第1実施形態と同様に信号処理部106の断層画像生成部118に入力される。
【0084】
なお、第二のユニットにおいても同様の手順(即ち、上述した第1ユニットと同様の手順)で測定対象物109の断層構造データが得られる。
【0085】
(技術的効果)
次に、第7実施形態に係る光干渉断層撮像装置700によって得られる技術的効果について説明する。
【0086】
図8で説明したように、第7実施形態に係る光干渉断層撮像装置700では、第1のパルス及び第2のパルスが、各ユニット(具体的には、各ユニットのトリガ信号分離部724及び725)において分離される。このようにすれば、各ユニットに物体光及び参照光を生成するための光パルスと、トリガ信号用の光パルスとを別々に供給せずに済む。よって、例えば各ユニットの前段に、光分岐器とトリガ信号分岐器とを別々に設ける必要がなくなる。
【0087】
<第8実施形態>
第8実施形態に係る光干渉断層撮像装置800について、図9を参照して説明する。なお、第8実施形態は、上述した第1から第7実施形態と比べて一部の動作が異なるのみであり、その他の部分については第1から第7実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と異なる部分について詳細に説明し、他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0088】
(具体的構成及び各部の動作)
まず、図9を参照しながら、第8実施形態に係る光干渉断層撮像装置800の具体的な構成及び各部の動作について説明する。図9は、第8実施形態に係る光干渉断層撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0089】
図9に示すように、第8実施形態に係る光干渉断層撮像装置800は、各ユニットがトリガ信号抽出部822及び823を備えている。トリガ信号抽出部822及び823は、光パルスのパワーの一部分を分岐して光電変換することにより、光パルスに同期した電気信号を生成することが可能に構成されている。
【0090】
光干渉断層撮像装置800が動作する際には、波長掃引レーザ光源801から光パルスが出射され、光干渉・受光部802、光ビーム走査部104、信号処理部106から成る第一のユニット、および、光干渉・受光部803、光ビーム走査部105、信号処理部107から成る第二のユニットへ供給される。
【0091】
第一のユニットには、光分岐器821で分岐された光の一方が、光干渉・受光部802に供給される。光干渉・受光部802に供給された光パルスは、トリガ信号抽出部822に入力される。トリガ信号抽出部822は、光パルスのパワーの一部分を分岐して光電変換して、光パルスに同期した電気信号を生成する。光パルスのパワーの残りの大部分は、第1実施形態(図2参照)と同様の手順で測定対象物108の断層構造データを取得するために用いられる。トリガ信号抽出部822で得られた電気信号は、トリガ信号として信号処理部106の断層画像生成部118に入力される。
【0092】
なお、第二のユニットにおいても同様の手順(即ち、上述した第1ユニットと同様の手順)で測定対象物109の断層構造データが得られる。
【0093】
(技術的効果)
次に、第8実施形態に係る光干渉断層撮像装置800によって得られる技術的効果について説明する。
【0094】
図9で説明したように、第8実施形態に係る光干渉断層撮像装置800では、各ユニット(具体的には、各ユニットのトリガ信号抽出部822及び823)において分離される。このようにすれば、各ユニットに物体光及び参照光を生成するための光パルスと、トリガ信号用の光パルスとを別々に供給せずに済む。よって、例えば各ユニットの前段に、光分岐器とトリガ信号分岐器とを別々に設ける必要がなくなる。
【0095】
<第9実施形態>
第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置について、図10から図12を参照して説明する。なお、第9実施形態は、上述した第1から第8実施形態に係る光干渉断層撮像装置の具体的な適用例を説明するものであり、装置の基本的な構成や動作については第1から第8実施形態と同一であってよい。このため、以下では、すでに説明した各実施形態と異なる部分について詳細に説明し、他の重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0096】
(接触型指紋スキャナ)
まず、図10を参照しながら第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置を接触型指紋スキャナに適用する場合の構成について説明する。図10は、第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置を接触型指紋スキャナに適用した場合の構成を示す概略図である。なお、図10では、図2で示した構成要素と同様の要素に同一の符号を付している。
【0097】
図10に示すように、第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置は、接触型指紋スキャナ(即ち、指を装置に接触させて指紋を読み取る装置)に適用されてよい。この場合、生体の指50が触れることになるスキャン部910は、照射光学系116を備えて構成されてよい。照射光学系116は、スキャン部910に接触している生体の指50に対して光ビームを照射する。そして、生体の指50において散乱された散乱光は照射光学系116に入射する。この散乱光に基づいて、接触型指紋スキャナでは指紋の画像が生成される。
【0098】
なお、すでに説明したように、照射光学系116には波長掃引レーザ光源101から出射されたレーザ光が、分岐された状態で供給されている。よって、ここでの図示は省略しているが、1つの波長掃引レーザ光源101に対して、複数のスキャン部910が備えられていてよい。
【0099】
(非接触型指紋スキャナ)
次に、図11及び図12を参照しながら第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置を非接触型指紋スキャナに適用する場合の構成について説明する。図11は、第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置を非接触型指紋スキャナに適用した場合の構成を示す概略図(その1)である。図12は、第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置を非接触型指紋スキャナに適用した場合の構成を示す概略図(その2)である。なお、図11及び図12では、図2で示した構成要素と同様の要素に同一の符号を付している。
【0100】
図11に示すように、第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置は、非接触型指紋スキャナ(即ち、指を装置に接触させずに指紋を読み取る装置)に適用されてよい。この場合、生体の指50をかざすことになるスキャン部920は、照射光学系116を備えて構成されてよい。照射光学系116は、スキャン部920とは接触していない生体の指50に対して光ビームを照射する。そして、生体の指50において散乱された散乱光は照射光学系116に入射する。この散乱光に基づいて、非接触型指紋スキャナでは指紋の画像が生成される。
【0101】
図12に示すように、第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置は、ガイド付きの非接触型指紋スキャナに適用されてもよい。この場合、生体の指50をかざすことになるスキャン部930には、生体の指50を載せるためのガイド部931及び932が設けられる。このようにすれば、ガイド部931及び932に生体の指50を接触させても、スキャナ部930と生体の指50とが接触しない(即ち、非接触状態を維持できる)。
【0102】
なお、接触型スキャナの場合と同様に、非接触型スキャナにおける照射光学系116にも波長掃引レーザ光源101から出射されたレーザ光が、分岐された状態で供給されている。よって、ここでの図示は省略しているが、1つの波長掃引レーザ光源101に対して、複数のスキャン部920又は930が備えられていてよい。
【0103】
(技術的効果)
次に、第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置によって得られる技術的効果について説明する。
【0104】
図10から図12で説明したように、第9実施形態に係る光干渉断層撮像装置は、接触型指紋スキャナ又は非接触型指紋スキャナに適用される。このようにすれば、、高コストの波長掃引レーザ光源101を複数台のユニットで共有しつつ、各々のユニットで生体の指50の指紋画像を取得できる。よって、例えば波長掃引レーザ光源101が1つしかない場合であっても、同時に複数の生体の指紋画像を取得可能である。
【0105】
上述した各実施形態の機能を実現するように該実施形態の構成を動作させるプログラムを記録媒体に記録させ、該記録媒体に記録されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も各実施形態の範疇に含まれる。すなわち、コンピュータ読取可能な記録媒体も各実施形態の範囲に含まれる。また、上述のプログラムが記録された記録媒体はもちろん、そのプログラム自体も各実施形態に含まれる。
【0106】
記録媒体としては例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROMを用いることができる。また該記録媒体に記録されたプログラム単体で処理を実行しているものに限らず、他のソフトウェア、拡張ボードの機能と共同して、OS上で動作して処理を実行するものも各実施形態の範疇に含まれる。
【0107】
この開示は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光干渉断層撮像装置、光干渉断層撮像方法、及び記録媒体もまたこの開示の技術思想に含まれる。
【0108】
<付記>
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0109】
(付記1)
付記1に記載の光干渉断層撮像装置は、波長掃引レーザ光源と、前記波長掃引レーザ光源から出射された光を複数の光に分岐する分岐部と、前記分岐部から出力された複数の光の各々を用いて、異なる測定対象物に対する断層構造情報を取得する複数のユニットと、を備え、前記複数のユニット各々は、前記分岐部から出力された光を分岐させて物体光と参照光とを生成する分岐生成部と、前記物体光を前記測定対象物に照射する光ビーム走査部と、前記測定対象物で散乱された前記物体光と前記参照光とを干渉させた干渉光の強度に応じて電気信号を生成する信号生成部と、前記電気信号に基づいて前記測定対象物の断層構造情報を生成する情報生成部と、を備える光干渉断層撮像装置である。
【0110】
(付記2)
付記2に記載の光干渉断層撮像装置は、前記分岐部は、前記波長掃引レーザ光源から出射された光を増幅し、増幅した光を複数の光に分岐する付記1に記載の光干渉断層撮像装置である。
【0111】
(付記3)
付記3に記載の光干渉断層撮像装置は、前記分岐部は、前記波長掃引レーザ光源から出射された光を分岐し、分岐した光を増幅し、増幅した光を更に分岐して前記複数の光として出力する付記1に記載の光干渉断層撮像装置である。
【0112】
(付記4)
付記4に記載の光干渉断層撮像装置は、前記分岐部は、前記波長掃引レーザ光源から出射された光を時分割して、前記複数の光として出力する付記1から3のいずれか一項に記載の光干渉断層撮像装置である。
【0113】
(付記5)
付記5に記載の光干渉断層撮像装置は、前記分岐生成部、前記信号生成部、及び前記情報生成部が、前記複数のユニット間で共通する1つの集約ユニットとして構成されている付記1から4のいずれか一項に記載の光干渉断層撮像装置である。
【0114】
(付記6)
付記6に記載の光干渉断層撮像装置は、前記波長掃引レーザ光源は、第1の光パルスと第2の光パルスとを出射し、前記分岐部は、前記第1の光パルスと前記第2の光パルスとを合流させた光を分岐して前記複数の光として出力し、前記複数のユニットの各々は、前記分岐部から出力された光を前記第1の光パルスと前記第2の光パルスとに分離して、前記第1の光パルスを前記物体光と前記参照光を生成する光として出力し、前記第2の光パルスを前記信号生成部が前記断層構造情報を生成するトリガとなるトリガ信号として出力する分離部を更に備える付記1から5のいずれか一項に記載の光干渉断層撮像装置である。
【0115】
(付記7)
付記7に記載の光干渉断層撮像装置は、前記複数のユニットの各々は、前記分岐部から出力された光のパワーの一部分を分離して光電変換することで、前記信号生成部が前記断層構造情報を生成するトリガとなるトリガ信号を抽出する抽出部を更に備える付記1から5のいずれか一項に記載の光干渉断層撮像装置である。
【0116】
(付記8)
付記8に記載の光干渉断層撮像方法は、コンピュータによって、波長掃引レーザ光源から光を出射し、前記波長掃引レーザ光源から出射された光を複数の光に分岐し、前記複数の光の各々を用いて、異なる測定対象物に対する断層構造情報を複数のユニットの各々で取得する、光干渉断層撮像方法であって、前記複数のユニット各々は、前記複数の光を更に分岐させて物体光と参照光とを生成し、前記物体光を前記測定対象物に照射し、前記測定対象物で散乱された前記物体光と前記参照光とを干渉させた干渉光の強度に応じて電気信号を生成し、前記電気信号に基づいて前記測定対象物の断層構造情報を生成する、光干渉断層撮像方法である。
【0117】
(付記9)
付記9に記載の記録媒体は、コンピュータに、波長掃引レーザ光源から光を出射し、前記波長掃引レーザ光源から出射された光を複数の光に分岐し、前記複数の光の各々を用いて、異なる測定対象物に対する断層構造情報を複数のユニットの各々で取得する、光干渉断層撮像方法であって、前記複数のユニット各々は、前記複数の光を更に分岐させて物体光と参照光とを生成し、前記物体光を前記測定対象物に照射し、前記測定対象物で散乱された前記物体光と前記参照光とを干渉させた干渉光の強度に応じて電気信号を生成し、前記電気信号に基づいて前記測定対象物の断層構造情報を生成する、光干渉断層撮像方法を実行させるコンピュータプログラムが記録された記録媒体である。
【0118】
(付記10)
付記10に記載のコンピュータプログラムは、コンピュータに、波長掃引レーザ光源から光を出射し、前記波長掃引レーザ光源から出射された光を複数の光に分岐し、前記複数の光の各々を用いて、異なる測定対象物に対する断層構造情報を複数のユニットの各々で取得する、光干渉断層撮像方法であって、前記複数のユニット各々は、前記複数の光を更に分岐させて物体光と参照光とを生成し、前記物体光を前記測定対象物に照射し、前記測定対象物で散乱された前記物体光と前記参照光とを干渉させた干渉光の強度に応じて電気信号を生成し、前記電気信号に基づいて前記測定対象物の断層構造情報を生成する、光干渉断層撮像方法を実行させるコンピュータプログラムである。
【符号の説明】
【0119】
100 光干渉断層撮像装置
101 波長掃引レーザ光源
102 光干渉・受光部
104 光ビーム走査部
108 測定対象物
111 サーキュレータ
112 分岐合流器
113 参照光ミラー
115 ファイバコリメータ
116 照射光学系
117 光スペクトルデータ生成・Aスキャン波形生成部
118 断層画像生成部
119 ビーム位置設定部
131 光分岐器
132 トリガ信号分岐器
204 光増幅器
205 光分岐器
206 第1光分岐器
207 光増幅器
208 第2光分岐器
209 光スイッチ
310 集約ユニット
721 光合流器
722 光分岐器
724 トリガ信号分離部
822 トリガ信号抽出部
910,920,930 スキャン部
931,932 ガイド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12