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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】ピント調整方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/02 20210101AFI20250415BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20250415BHJP
【FI】
G03B17/02
H04N23/50
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023569246
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2022044527
(87)【国際公開番号】W WO2023120107
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2021207022
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 涼平
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 徳
(72)【発明者】
【氏名】安江 敏輝
(72)【発明者】
【氏名】古武 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 寛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿太
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-333987(JP,A)
【文献】特開2002-267923(JP,A)
【文献】特開平07-007676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
G02B 7/02
G02B 7/28
H04N 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系(30)と、イメージセンサ(40)と、前記イメージセンサが搭載されたカメラ基板(50)と、を備えたカメラモジュール(20)のピント調整方法において、
測距センサ(130)により、前記カメラ基板における前記イメージセンサの設置位置及び設置角度を測定する測定ステップと、
前記光学系に対する前記カメラ基板の位置及び角度を調整する調整ステップと、
前記調整ステップにより調整された後、前記光学系に前記カメラ基板を組付ける組付けステップと、を備え、
前記調整ステップでは、前記測定ステップにより測定された前記イメージセンサの設置位置及び設置角度に基づいて、前記光学系に対する前記イメージセンサの位置及び角度が前記光学系により予め定められた設定位置及び設定角度となるように前記カメラ基板の位置及び角度を調整するピント調整方法。
【請求項2】
所定位置に配置されたチャート像(60)を、前記光学系を介して前記イメージセンサに撮像させ、その撮像データを解析して合焦点となるイメージセンサの組付け状態を特定する合焦点特定ステップを備え、
前記合焦点特定ステップでは、前記設定位置を基準として設定された所定の走査範囲内で、前記カメラ基板を停止させることなく継続的に定速移動させながら撮像させ、複数の撮像データを取得し、それらの複数の撮像データを解析し、
前記イメージセンサが前記合焦点特定ステップにて特定された組付け状態となるように前記カメラ基板の位置及び角度が再調整された後、前記組付けステップにおいて、前記カメラ基板を組付ける請求項1に記載のピント調整方法。
【請求項3】
所定位置に配置されたチャート像(60)を、前記光学系を介して前記イメージセンサに撮像させ、その撮像データを解析して合焦点となるイメージセンサの組付け状態を特定する合焦点特定ステップを備え、
前記合焦点特定ステップでは、前記設定位置を基準として設定された所定の走査範囲内で、前記カメラ基板を停止させることなく継続的に移動させながら撮像させ、複数の撮像データを取得し、前記撮像データの取得に並行してそれらの複数の撮像データを解析し、
前記イメージセンサが前記合焦点特定ステップにて特定された組付け状態となるように前記カメラ基板の位置及び角度が再調整された後、前記組付けステップにおいて、前記カメラ基板を組付ける請求項1に記載のピント調整方法。
【請求項4】
光源にスリットが形成されたシートをかぶせることにより生成されるスリット光をチャート像として採用し、
前記合焦点特定ステップでは、前記チャート像を特定できる限度において露光時間を短くした請求項2又は3に記載のピント調整方法。
【請求項5】
前記合焦点特定ステップにおける走査領域(62)は、前記イメージセンサの撮像領域(63)のうち、前記チャート像が含まれない領域を除外して設定されており、
前記走査領域は、前記イメージセンサの撮影可能な前記撮像領域よりも狭い請求項2又は3に記載のピント調整方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年12月21日に出願された日本出願番号2021-207022号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、カメラのピント調整方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、車両に複数台のカメラモジュールが搭載されるようになっており、カメラモジュールの需要増加の要因となっている。カメラモジュールは、主にCCDセンサやCMOSセンサが用いられている。このようなカメラモジュールの場合、レンズに対するセンサの取り付け位置を調整するピント調整を適切に行うことが求められている。
【0004】
目視して、手作業でピント調整を行う場合もあるが、精度にバラツキがあり、作業の手間や時間がかかることから、近年では、ピント調整が自動で行われる場合が多い(例えば、特許文献1~3)。特許文献1~3によれば、ピント調整の精度を低下させることなく、作業時間を短縮することが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-267923号公報
【文献】特開2009-3152号公報
【文献】特開2008-171866号公報
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、ピント調整の作業時間については未だ改善の余地があると考えられる。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ピント調整の作業時間を短縮することができるピント調整方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
上記課題を解決するための第1のピント調整方法は、光学系と、イメージセンサと、前記イメージセンサが搭載されたカメラ基板と、を備えたカメラモジュールのピント調整方法であって、前記カメラ基板における前記イメージセンサの設置位置及び設置角度を測定する測定ステップと、前記光学系に対する前記カメラ基板の位置及び角度を調整する調整ステップと、前記調整ステップにより調整された後、前記光学系に前記カメラ基板を組付ける組付けステップと、を備え、前記調整ステップでは、前記測定ステップにより測定された前記イメージセンサの設置位置及び設置角度に基づいて、前記イメージセンサの位置及び角度が前記光学系により予め定められた設定位置及び設定角度となるように前記カメラ基板の位置及び角度を調整する。
【0009】
これによれば、測定ステップにおいて予めカメラ基板におけるイメージセンサの設置位置及び設置角度が測定されているため、調整ステップにおいて、イメージセンサが、光学系により予め定められた設定位置及び設定角度となるように光学系に対するカメラ基板の位置及び角度を調整することができる。このため、光学系に対してカメラ基板を組付ける際に、イメージセンサの焦点が合うように調整する手間を短縮することが可能となる。
【0010】
上記課題を解決するための第2のピント調整方法は、光学系と、イメージセンサと、前記イメージセンサが搭載されたカメラ基板と、を備えたカメラモジュールのピント調整方法であって、所定位置に配置されたチャート像を、前記光学系を介して前記イメージセンサに撮像させ、その撮像データを解析して合焦点となるイメージセンサの組付け状態を特定する合焦点特定ステップと、前記イメージセンサが前記合焦点特定ステップにて特定された組付け状態となるように、前記光学系に対する前記カメラ基板の位置及び角度を調整する調整ステップと、前記光学系に前記カメラ基板を組付ける組付けステップと、を備え、前記合焦点特定ステップでは、前記カメラ基板を停止させることなく、継続的に移動させながら撮像させて、複数の撮像データを取得し、それらの複数の撮像データを解析する。
【0011】
イメージセンサを停止させてからチャート像を撮影する場合、停止したときの振動が収まるまで待機する待機時間を設ける必要があることから、作業時間が多くなっていた。しかしながら、上記構成のように、継続的に移動させながら撮像させる場合、停止に基づく振動が生じないことから、待機時間を設けることなく、連続的に撮像データを取得することができ、合焦点を特定するために要する作業時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
図1図1は、カメラの分解斜視図であり、
図2図2は、カメラモジュールの概念図であり、
図3図3は、ピント調整システムの構成を示すブロック図であり、
図4図4は、カメラ基板の搬送態様を示す概念図であり、
図5図5は、カメラ基板の調整態様を示す概念図であり、
図6図6は、イメージセンサに十字光源を撮像させる様子を示す概念図であり、
図7図7は、(a)は、撮像領域における十字光源の概念図、(b)は、走査領域における十字光源の概念図であり、
図8図8は、MTF曲線の一例を示す図であり、
図9図9は、焦点深度を示す概念図であり、
図10図10は、合焦点状態におけるMTF曲線の一例を示す図であり、
図11図11は、レーザ光の照射態様を示す概念図であり、
図12図12は、ピント調整処理のフローチャートであり、
図13図13は、仮硬化時における熱膨張及びそれに伴う収縮の過程を示す概念図であり、
図14図14は、予測処理のフローチャートであり、
図15図15は、離間距離を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示にかかる「ピント調整方法」を具体化した複数の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、光軸と平行な方向をZ方向とし、Z方向と直交する方向であって、縦方向(上下方向)をX方向とし、横方向(左右方向)をY方向とする。
【0014】
図1に示すように、カメラ10には、レンズ付きCOMSカメラモジュール(以下、単にカメラモジュール20)が搭載されている。図2に示すように、カメラモジュール20は、光学系としてのレンズモジュール30と、イメージセンサ40と、イメージセンサ40が搭載されたカメラ基板50と、を備える。イメージセンサ40は、COMS等の撮像素子のことである。カメラ基板50にレンズモジュール30が固定されることにより、カメラモジュール20が構成されている。レンズモジュール30は、接着剤(熱硬化型接着剤)70を介してカメラ基板50に固定されている。
【0015】
次に、ピント調整システム100について説明する。図3に示すように、ピント調整システム100は、位置調整装置としての6軸ステージ110と、搬送装置120と、測距センサ130と、演算装置140と、レーザ光を照射可能なレーザ150と、を備える。
【0016】
6軸ステージ110は、イメージセンサ40が搭載されたカメラ基板50の位置や傾きを変更する機構を備えたものである。本実施形態において、6軸ステージ110は、X方向、Y方向、Z方向の位置調整、及びロール角、ヨー角、ピッチ角の角度調整(合わせて6軸)を行うことができる。
【0017】
搬送装置120は、カメラ基板50が設置された6軸ステージ110を搬送するものである。図4に示すように、搬送装置120は、カメラ基板50のイメージセンサ40がレンズモジュール30のレンズに対向する対向位置に到達するまで、6軸ステージ110ごと搬送する。
【0018】
測距センサ130は、搬送装置120により搬送中のカメラ基板50上のイメージセンサ40の設置距離及び設置角度を測定する。つまり、イメージセンサ40は、接着剤やはんだ付け等により、カメラ基板50に固定されることとなるが、組付け精度により多少の誤差が生じる可能性がある。そこで、カメラ基板50においてどのような状態(設置距離及び設置角度)で固定されているかについて測定する。なお、測距センサ130は、予め決められた基準点を基準として、イメージセンサ40の設置距離及び設置角度を測定する。具体的には、X方向、Y方向、Z方向の位置、及びロール角、ヨー角、ピッチ角を測定する。基準点は、例えば、カメラ基板50においてあらかじめ定められた地点である。
【0019】
演算装置140は、CPU、RAM、ROM等を備え、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。また、各種入出力デバイスを備えており、演算装置140は、各種指示の入力、及び結果の出力を可能に構成されている。また、図3に示すように、演算装置140は、6軸ステージ110、搬送装置120、測距センサ130、及びレーザ150と接続させており、各種信号を入出力可能に構成されている。各種信号としては、例えば、指示を通知する指示信号や、測定結果を通知する測定信号などがある。
【0020】
演算装置140は、各種機能として、例えば、搬送部141としての機能と、測定部142としての機能と、調整部143としての機能と、合焦点特定部144としての機能と、組付け部145としての機能と、を備える。なお、1台の演算装置140に、全ての機能を備える必要はなく、複数台の演算装置に機能を分担させて、備えてもよい。
【0021】
搬送部141としての演算装置140は、イメージセンサ40がレンズモジュール30のレンズに対向する対向位置に到達するまで、カメラ基板50及び6軸ステージ110が搬送されるように搬送装置120を制御する。
【0022】
測定部142としての演算装置140は、搬送中、カメラ基板50におけるイメージセンサ40の設置位置及び設置角度を測定させるように測距センサ130を制御する。
【0023】
調整部143としての演算装置140は、レンズモジュール30に対するカメラ基板50の位置及び角度を調整するように、6軸ステージ110を制御する。具体的には、図5に示すように、搬送装置120により6軸ステージ110が搬送された後、調整部143は、測定部142により測定されたイメージセンサ40の設置位置及び設置角度を考慮して、レンズモジュール30に対するイメージセンサ40の位置及び角度が、最適位置及び最適角度となるように調整する。最適位置及び最適角度が、レンズモジュール30により予め定められた設定位置及び設定角度にそれぞれ対応する。
【0024】
なお、当該最適位置及び最適角度にてイメージセンサ40が設置されると、イメージセンサ40の焦点がほぼ合うように、当該最適位置及び最適角度がレンズモジュール30により予め定められている。最適位置及び最適角度は、図4において破線で示すように、レンズモジュール30の製造メーカ等により予め測定されている。調整部143は、レンズモジュール30に対するイメージセンサ40の位置及び角度が、最適位置及び最適角度となるように調整する。前述したように、カメラ基板50に設置されたイメージセンサ40には、設置位置及び設置角度のずれが生じている場合があるので、その誤差を考慮して、カメラ基板50の位置及び角度を調整する。
【0025】
この最適位置及び最適角度は、完成品のレンズモジュール30のうちいくつか選択されて測定され、その平均値が使用されることが一般的である。または、設計図などから計算などにより、算出されることもある。このため、レンズモジュール30によって、多少の製造誤差が生じる場合がある。つまり、イメージセンサ40の位置及び角度が、最適位置及び最適角度となるように調整されても、焦点が合わない可能性がある。
【0026】
そこで、合焦点特定部144として演算装置140は、所定位置に配置されたチャート像を、レンズモジュール30を介してイメージセンサ40に撮像させ、その撮像データを解析して合焦点となるイメージセンサ40の組付け状態を特定するようにしている。以下、詳しく説明する。
【0027】
本実施形態では、図6に示すように、十字のスリットが形成されたシート(例えば、黒色の紙)を光源61にかぶせ、光源61から光をカメラモジュール20に照射することにより、図7に示すように、チャート像としての十字光源60を生成している。すなわち、シートの十字スリットを通過することにより生成された十字光源(十字スリット光)60が、チャート像となる。この十字光源60は、複数個所において生成するようにしており、それぞれ予め決められた位置に配置されている。例えば、図7に示すように、カメラモジュール20が撮像可能な撮像領域63の真ん中、右上、右下、左上、左下の五か所に配置されるようにしている。
【0028】
合焦点特定部144として演算装置140は、各十字光源60を、レンズモジュール30を介してイメージセンサ40に撮像させ、その撮像データを解析して各十字光源60のMTF曲線を算出する。MTF(Modulation Transfer Function)曲線は、レンズ性能を評価する指標のひとつで、レンズの結像性能を知るために、被写体(チャート像)の持つコントラストをどの程度忠実に再現できるかを空間周波数特性として表現したものである。
【0029】
具体的には、演算装置140は、複数のZ軸方向における位置(Z軸位置)において各十字光源60を撮像し、各十字光源60の撮像データを解析して、コントラストに相当するMTF値(%)を算出する。なお、MTF値を算出する際、各十字光源60における縦方向(X方向)のスリットと横方向(Y方向)のスリットとを区別して算出する。このため、本実施形態では、各Z軸位置において合計10個のMTF値を算出することなる。
【0030】
そして、所定の走査範囲内でカメラ基板50を移動させて走査した後、演算装置140は、縦軸をMTF値とし、横軸をZ軸位置とする座標上で、算出したMTF値をプロットして、それらを結ぶことにより、MTF曲線を算出する。本実施形態では、各Z軸位置において合計10個のMTF値を算出するため、図8に示すように、合計10本のMTF曲線を算出することとなる。
【0031】
10本のMTF曲線を得た後、図9に示すように、演算装置140は、MTF値が製品規格において予め決められた値(例えば、35%)であるときに、焦点深度が最大となるように、イメージセンサ40の位置及び傾きを補正する値を算出する。具体的には、図9に示す焦点深度に対応する距離が最大となるように、各MTF曲線の頂点を近づける。そして、図10に示すように、焦点深度が最大となった場合において、各MTF曲線のZ軸方向の移動量を算出し、各移動量から、X軸方向、Y軸方向、X軸方向の各位置の補正値、及びロール角、ヨー角、ピッチ角の各角度の補正値を算出する。そして、演算装置140は、算出した位置及び角度の補正値に基づいて、合焦点となるイメージセンサ40の組付け状態を特定する。その後、演算装置140は、図6に示すように、各補正値に基づいて、カメラ基板50の位置及び角度を調整して、イメージセンサ40が特定した組付け状態となるように6軸ステージ110を制御する。
【0032】
組付け部145としての演算装置140は、イメージセンサ40が、特定された組付け状態となった後、図11に示すように、カメラ基板50に塗布された接着剤70にレーザ光を照射させるようにレーザ150を制御する。つまり、接着剤70を介してレンズモジュール30とカメラ基板50とを張り合わせた状態で、接着剤70にレーザ光を照射して、加熱させる。これにより、接着剤70を仮硬化させて、レンズモジュール30にカメラ基板50を組付ける。
【0033】
ところで、前述したようにMTF曲線を算出するために、複数の異なるZ軸位置において、十字光源60を撮像する必要があり、Z軸方向にカメラ基板50を移動させる必要がある。しかしながら、カメラ基板50を移動させた後、停止させると、停止時に振動が生じる。振動が生じた状態でチャート像を撮像すると、誤差要因となるため、停止するごとに振動が収まるまで待機時間を設ける必要がある。このため、作業時間が長くなっていた。そこで、本実施形態では、作業時間短縮のために、以下のような工夫をしている。
【0034】
第1の工夫として、演算装置140は、最適位置及び最適角度を基準として設定された所定の走査範囲内でZ軸方向の位置を移動させるように、6軸ステージ110を制御する。走査範囲は、例えば、最適位置を中心とするZ軸方向において予め決められた範囲内である。
【0035】
第2の工夫として、演算装置140は、所定の走査範囲内で、カメラ基板50を停止させることなく継続的に移動させながら撮像させ、複数の撮像データを取得し、それらの複数の撮像データを解析している。本実施形態において、演算装置140は、走査範囲内で、カメラ基板50を定速で移動させながら、撮像させている。
【0036】
第3の工夫として、チャート像を特定できる限度において露光時間を短くしている。なお、本実施形態では、十字光源60をチャート像として用いているため、例えば、紙に印刷されたチャート像を撮像する場合に比較して、露光時間を短くすることができる。本実施形態では、一般的な露光時間である33.3msや16.7msよりも短くしており、具体的には、露光時間を0.7msとしている。
【0037】
第4の工夫として、イメージセンサ40で撮像可能な撮像領域63を制限して、走査領域62を設定している。具体的には、十字光源60が存在する領域は、予め決められているため、十字光源60が存在しない領域を撮像しないようにしている。例えば、図7(a)に示すように、本来の撮像領域63のうち、十字光源60が存在しない上端部の一部領域65及び下端部の一部領域64を省略して、走査領域62としている。本実施形態では、縦方向(X軸方向)において、本来の撮像領域63の縦幅が、1876(pix)である場合、走査領域62の縦幅を1369(pix)としている。なお、誤差を考慮したうえで、十字光源60が十分撮像できる程度に、走査領域62を設定することが望ましい。
【0038】
次に、本実施形態におけるピント調整方法の流れについて図12を参照して説明する。以下に示すピント調整処理は、演算装置140により実行される。
【0039】
まず、搬送部141としての演算装置140は、カメラ基板50が搬送装置120に載置された後、イメージセンサ40がレンズモジュール30の対向位置に到達するまで、カメラ基板50及び6軸ステージ110が搬送されるように搬送装置120の制御を開始する(ステップS101)。このステップS101が搬送ステップに相当する。ステップS101において、カメラ基板50には、レンズモジュール30を接着するための接着剤70がすでに塗布されている。ただし、後の工程(例えば、ステップS107等)で接着剤70を塗布するのであれば、この段階で塗布されていなくてもよい。
【0040】
また、測定部142としての演算装置140は、搬送中、カメラ基板50におけるイメージセンサ40の設置位置及び設置角度を測定させるように測距センサ130を制御する(ステップS102)。このステップS102が測定ステップに相当する。
【0041】
そして、イメージセンサ40が対向位置に到達した後、調整部143としての演算装置140は、6軸ステージ110を制御してカメラ基板50の位置及び角度を調整する(ステップS103)。このステップS103において、演算装置140は、ステップS102で測定されたイメージセンサ40の設置位置及び設置角度を考慮して、イメージセンサ40の位置及び角度が、最適位置及び最適角度となるようにカメラ基板50の位置及び角度を調整する。
【0042】
その後、合焦点特定部144として演算装置140は、チャート像としての各十字光源60を、レンズモジュール30を介してイメージセンサ40に撮像させ、その撮像データを解析して各チャート像のMTF曲線を算出する(ステップS104)。ステップS104において、演算装置140は、最適位置を基準として設定された走査範囲内でカメラ基板50を定速移動させつつ、撮像させる。このときの走査領域62は、イメージセンサ40の撮像領域63よりも狭く、また、露光時間も短くして、フレームレートを短縮している。なお、その撮像データを解析して各チャート像のMTF曲線を算出するタイミングは、撮像データの取得と平行してもよいし、全ての撮像データの取得後に、まとめて解析してもよい。本実施形態では、撮像データの取得と平行して、撮像データを順次解析して、各チャート像のMTF曲線を算出している。
【0043】
演算装置140は、MTF曲線を得た後、焦点深度が最大となるように、イメージセンサ40の位置及び傾きを補正する補正値を算出する(ステップS105)。このステップS103及びステップS104が、合焦点特定ステップに相当する。
【0044】
その後、演算装置140は、ステップS105にて算出された補正値に基づいて、カメラ基板50の位置及び角度を再調整し、イメージセンサ40が合焦点となる特定の組付け状態となるように、6軸ステージ110を制御する(ステップS106)。このステップS106及びステップS103が調整ステップに相当する。つまり、必要に応じて調整ステップは、1回又は複数回実施されてもよい。
【0045】
そして、演算装置140は、レンズモジュール30とカメラ基板50との間に塗布された接着剤70に対して、レーザ光を照射して硬化(仮硬化)させるようにレーザ150を制御する(ステップS107)。つまり、接着剤70を介してレンズモジュール30の接着面とカメラ基板50の接着面を貼り合わせた状態で、レーザ光を照射して接着剤70を加熱して、硬化させている。ステップS107が組付けステップに相当する。その後、カメラ基板50及びレンズモジュール30を恒温槽に保管して接着剤70を本硬化させ、レンズモジュール30をカメラ基板50に対して確実に固定する。これにより、カメラモジュール20が完成する。
【0046】
ところで、イメージセンサ40の位置及び角度を調整した後、ステップS107において、レーザ光を照射して、接着剤70を仮硬化させているが、調整後、仮硬化が完了するまでに位置がずれる傾向があることがわかった。
【0047】
詳しく説明すると、図13(a)に示すように、レーザ光を照射すると、図13(b)に示すように、接着剤70、レンズモジュール30、及びカメラ基板50が加熱されて一時的に熱膨張する。その後、図13(c)に示すように、接着剤70が仮硬化することに伴い、レンズモジュール30とカメラ基板50は、それぞれ接着剤70との接着面で接着されることとなる。このとき、図13(c)における拡大図に示すように、接着剤70は、レンズモジュール30とカメラ基板50とそれぞれ接着面で接着するとともに、自身は硬化収縮する。このため、レンズモジュール30とカメラ基板50は、接着剤70の硬化収縮に伴って、矢印に示すように、それぞれ接着面に引っ張られて、互いに近づくこととなる。
【0048】
その後、放熱すると、図13(d)の拡大図に示すように、レンズモジュール30、カメラ基板50、及び接着剤70はそれぞれ膨張していた分が収縮することとなる。このとき、それぞれの接着面に引っ張られて、さらにレンズモジュール30とカメラ基板50は、収縮した分だけ近づくこととなる。これにより、調整後、仮硬化が完了するまでにレンズモジュール30とカメラ基板50との距離が近づき、ずれが生じることとなっていた。また、これとは別に、レーザ光による熱により、カメラ基板50が反ってずれが生じていることも分かった。
【0049】
そこで、これらのずれを予測しておき、ステップS106において再調整する際、予測されるずれをオフセットすることにより、仮硬化完了時においてずれが極力生じないようにしている。ここで、Z軸方向において、ステップS106の再調整後から仮硬化完了までにレンズモジュール30とカメラ基板50とが近づく距離(縮まる距離、収縮ずれ量)を、単に収縮距離E100と示す。まず、この収縮距離E100の予測について説明する。
【0050】
演算装置140は、ステップS105の処理後、ステップS106の処理前において、図14に示す予測処理を実施する。演算装置140は、まず、Z軸方向において、イメージセンサ40の表面(レンズモジュール30側の表面)からカメラ基板50の表面(レンズモジュール30側の表面)までの第1の距離L1(図15参照)を取得する(ステップS201)。演算装置140は、ステップS102において、測定されたカメラ基板50におけるイメージセンサ40の設置位置及び設置角度から第1の距離L1を算出し、取得する。
【0051】
なお、長方形状のイメージセンサ40は、カメラ基板50に対して傾いて固定されている可能性があるため、カメラ基板50上のどの位置を基準にするかによって第1の距離L1に、違いが生じる可能性がある。しかしながら、その違いは、微差であることを考慮して、任意の位置を基準として第1の距離L1として特定している。本実施形態では、イメージセンサ40の中心におけるイメージセンサ40の表面位置からカメラ基板50の表面位置までの距離を、第1の距離L1として特定している。
【0052】
次に、演算装置140は、Z軸方向において、イメージセンサ40の表面からレンズモジュール30の接着面までの第2の距離L2(図15参照)を取得する(ステップS202)。なお、レンズモジュール30は、長方形状のイメージセンサ40を囲むように、4辺にてカメラ基板50に接着される。また、ピント調節のため、レンズモジュール30に対してカメラ基板50を傾けて組付けられる場合があるので、どの位置を基準にするかによって、第2の距離L2に違いが生じる可能性がある。
【0053】
しかしながら、その違いは、微差であることを考慮して、4辺のうち任意の位置におけるレンズモジュール30の接着面を基準としている。本実施形態では、レンズモジュール30の4つの角部のうち、いずれかの角部における接着面と、イメージセンサ40の中心との間におけるZ軸方向の距離を、第2の距離L2として特定している。イメージセンサ40は、最適位置及び最適角度にて配置されるため、第2の距離L2は、イメージセンサ40の最適位置及び最適角度、並びにレンズモジュール30の形状(設計寸法)から特定可能である。なお、第2の距離L2をセンサなどにより、実測してもよい。
【0054】
そして、演算装置140は、第1の距離L1と第2の距離L2との差分を算出して、当該差分をレンズモジュール30からカメラ基板50までのZ軸方向における離間距離L3(図15参照)として取得する(ステップS203)。
【0055】
演算装置140は、この離間距離L3に接着剤70の物性に基づく係数C10を乗算することにより、接着剤70の硬化収縮によるずれ量E10を算出する(ステップS204)。すなわち、接着剤70の硬化収縮により、カメラ基板50とレンズモジュール30とが近づく距離は、離間距離L3に応じて比例して大きくなることが実験によりわかった。また、その比例係数(係数C10)は、接着剤70の物性により異なることも実験によりわかった。そこで、本実施形態では、離間距離L3に接着剤70の物性に基づく係数C10を乗算することにより、接着剤70の硬化収縮によるずれ量E10を算出している。接着剤70の物性に基づく係数C10は、実験などにより特定される。
【0056】
次に、演算装置140は、接着剤70の熱膨張及びそれに伴う放熱時の収縮によるずれ量E11を取得する(ステップS205)。以下、接着剤70の熱膨張及びそれに伴う放熱時の収縮によるずれ量E11を、単に接着剤70の熱膨張によるずれ量E11と示す場合がある。接着剤70の熱膨張によるずれ量E11は、実験によりレーザ光による接着剤70の温度上昇値に比例して大きくなることが実験によりわかった。また、その比例係数(係数C11)は、接着剤70の形状(接着箇所の厚さや接着剤70の量)や、接着剤70の物性により異なることも実験によりわかった。そこで、演算装置140は、レーザ光による接着剤70の温度上昇値に、接着剤70の形状や物性に基づく係数C11を乗算することにより、接着剤70の熱膨張によるずれ量E11を算出し、取得する。
【0057】
なお、レーザ光による接着剤70の温度上昇値は、おおよそ一定であるため、実験などにより特定可能である。同様に、接着剤70の形状や物性もほぼ同じであるため、係数C11は、実験などにより特定可能である。このため、演算装置140は、それらを予め記憶しておき、ステップS205において、記憶部から読み出し、接着剤70の熱膨張によるずれ量E11を算出してもよい。同様に、接着剤70の熱膨張によるずれ量E11は、おおよそ一定であるため、実験などにより特定可能である。このため、演算装置140は、接着剤70の熱膨張によるずれ量E11を予め記憶しておき、ステップS205において、記憶部から読み出して取得してもよい。本実施形態では、ずれ量E11を予め記憶している。
【0058】
また、演算装置140は、レンズモジュール30の熱膨張及びそれに伴う放熱時の収縮によるずれ量E12を取得する(ステップS206)。以下、レンズモジュール30の熱膨張及びそれに伴う放熱時の収縮によるずれ量E12を、単にレンズモジュール30の熱膨張によるずれ量E12と示す場合がある。レンズモジュール30の熱膨張によるずれ量E12は、実験によりレーザ光によるレンズモジュール30の温度上昇値に比例して大きくなることがわかった。また、その比例係数(係数C12)は、レンズモジュール30の形状(大きさや形)や、レンズモジュール30の材質により異なることも実験によりわかった。そこで、演算装置140は、レーザ光によるレンズモジュール30の温度上昇値に、レンズモジュール30の形状や物性に基づく係数C12を乗算することにより、レンズモジュール30の熱膨張によるずれ量E12を算出し、取得する。
【0059】
なお、レーザ光によるレンズモジュール30の温度上昇値は、おおよそ一定であるため、実験などにより特定可能である。同様に、レンズモジュール30の形状等もほぼ同じであるため、係数C12は、実験などにより特定可能である。このため、演算装置140は、それらを予め記憶しておき、ステップS206において、記憶部から読み出し、レンズモジュール30の熱膨張によるずれ量E12を算出してもよい。同様に、レンズモジュール30の熱膨張によるずれ量E12は、おおよそ一定であるため、実験などにより特定可能である。このため、演算装置140は、レンズモジュール30の熱膨張によるずれ量E12を予め記憶しておき、ステップS206において、記憶部から読み出して取得してもよい。本実施形態では、ずれ量E12を予め記憶している。
【0060】
また、演算装置140は、カメラ基板50の熱膨張及びそれに伴う放熱時の収縮によるずれ量E13を取得する(ステップS207)。以下、カメラ基板50の熱膨張及びそれに伴う放熱時の収縮によるずれ量E13を、単にカメラ基板50の熱膨張によるずれ量E13と示す場合がある。カメラ基板50の熱膨張によるずれ量E13は、実験によりレーザ光によるカメラ基板50の温度上昇値に比例して大きくなることがわかった。また、その比例係数(係数C13)は、カメラ基板50の形状(大きさや形)や、カメラ基板50の材質により異なることも実験によりわかった。そこで、演算装置140は、レーザ光によるカメラ基板50の温度上昇値に、カメラ基板50の形状や物性に基づく係数C13を乗算することにより、カメラ基板50の熱膨張によるずれ量E13を算出し、取得する。
【0061】
なお、レーザ光によるカメラ基板50の温度上昇値は、おおよそ一定であるため、実験などにより特定可能である。同様に、カメラ基板50の形状等もほぼ同じであるため、係数C13は、実験などにより特定可能である。このため、演算装置140は、それらを予め記憶しておき、ステップS207において、記憶部から読み出し、カメラ基板50の熱膨張によるずれ量E13を算出してもよい。同様に、カメラ基板50の熱膨張によるずれ量E13は、おおよそ一定であるため、実験などにより特定可能である。このため、演算装置140は、カメラ基板50の熱膨張によるずれ量E13を予め記憶しておき、ステップS207において、記憶部から読み出して取得してもよい。本実施形態では、ずれ量E13を予め記憶している。
【0062】
そして、演算装置140は、レーザ光による温度上昇によるカメラ基板50の熱反りによるずれ量E14を算出する(ステップS208)。レーザ光による温度上昇によるカメラ基板50の熱反りによるずれ量E14は、カメラ基板50の形状や材質が同じであれば、ほぼ一定であるため、実験などにより特定され、記憶部に記憶されている。ステップS208は、それを読み込むことにより取得する。
【0063】
そして、演算装置140は、ステップS204~ステップS208で取得した各種ずれ量E10~E14を合算して、収縮距離E100を予測する(ステップS209)。そして、予測処理を終了する。なお、ステップS201~S209が予測ステップに相当する。
【0064】
演算装置140は、このようにして予測された収縮距離E100の分だけ、レンズモジュール30とカメラ基板50との間の距離を予め離間させるように、ステップS106の再調整後、カメラ基板50の位置を調整する。つまり、ステップS106において、演算装置140は、予測された収縮距離E100が相殺(オフセット)されるように、合焦点となる特定の組付け状態に比較してレンズモジュール30からカメラ基板50を収縮距離E100だけ遠ざける。なお、ステップS105において算出された補正値に、収縮距離E100を反映させることにより、ステップS106による再調整時に、収縮距離E100の分だけオフセットさせてもよい。
【0065】
本実施形態におけるピント調整方法の効果について説明する。
【0066】
ステップS102において、演算装置140は、カメラ基板50におけるイメージセンサ40の設置位置及び設置角度を測定する。そして、ステップS103において、測定された設置位置及び設置角度を考慮して、レンズモジュール30に対するイメージセンサ40の位置及び角度が、最適位置及び最適角度となるようにカメラ基板50の位置及び角度を調整する。すなわち、カメラ基板50において、どのようにイメージセンサ40が設置されているかについて、その状態を予め測定し、測定された設置位置及び設置角度を考慮して、イメージセンサ40が予め定められた最適位置及び最適角度となるようにカメラ基板50を精度よく調整することができる。このため、レンズモジュール30に対してカメラ基板50を組付ける際に、イメージセンサ40の焦点が合うように調整する手間を少なくすることが可能となる。また、搬送中に、測定するため、測定する時間をわざわざ設ける必要がなく、調整のための時間を短縮することができる。
【0067】
ステップS104において、MTF曲線を算出する際、演算装置140は、走査範囲内で、Z軸位置を変更させながら、撮影する。ステップS104における走査範囲は、最適位置及び最適角度を基準として設定されている。このため、走査範囲を狭くすることができる。つまり、イメージセンサ40をレンズモジュール30に対向する任意の位置に配置する場合、焦点があっていない可能性があるため、MTF曲線の位置(頂点位置や山の位置)が大きくずれる可能性がある。このため、イメージセンサ40をレンズモジュール30に対向する任意の位置に配置する場合、大きなずれを想定して、走査範囲を大きくする必要がある。
【0068】
しかしながら、本実施形態では、イメージセンサ40の位置及び角度が、最適位置及び最適角度となるように調整されている。このため、焦点があっている可能性が高く、MTF曲線の位置ずれが小さい可能性が高い。さらに言えば、本実施形態では、ステップS102において、カメラ基板50におけるイメージセンサ40の設置位置及び設置角度を測定し、それらを考慮して、カメラ基板50の位置及び角度を調整しているため、MTF曲線の位置ずれがさらに小さい可能性が高い。このため、イメージセンサ40をレンズモジュール30に対向する任意の位置に配置する場合に比較して、走査範囲を狭くすることができる。
【0069】
したがって、本実施形態では、ステップS103において、ある程度焦点を合わせた状態から焦点の位置を探索することとなるので、走査範囲を狭くすることができ、その結果、合焦点を特定するために要する時間を短くすることができる。
【0070】
また、ステップS104において、MTF曲線を算出する際、演算装置140は、6軸ステージ110によってカメラ基板50を停止させることなく継続的に移動させながら撮像させる。このため、カメラ基板50を停止させてから撮像する場合に比較して、振動が収束するまで待機する待機時間を設ける必要がなくなり、調整のために要する時間を短縮することができる。
【0071】
また、ステップS104において、十字光源60をチャート像として用いており、十字光源60を特定できる限度において露光時間を短くしているため、フレームレートを短縮することができる。すなわち、カメラ基板50を移動させる際の速度を早くすることができ、調整のために要する時間を短縮することができる。
【0072】
また、ステップS104において、撮像領域63のうち、チャート像が存在しない領域である上端部の一部領域65及び下端部の一部領域64を省略して、走査領域62としている。これにより、フレームレートを短縮することができる。すなわち、カメラ基板50を移動させる際の速度を早くすることができ、調整のために要する時間を短縮することができる。
【0073】
調整後から仮硬化完了時にまでに生じる収縮距離E100を予測し、当該収縮距離E100が相殺されるように、合焦点となる特定の組付け状態に比較してレンズモジュール30からカメラ基板50を収縮距離E100だけ遠ざけた。これにより、接着剤70の仮硬化が完了するまでの間に、レンズモジュール30とカメラ基板50との間の距離が近づいても、イメージセンサ40が精度よく合焦点となるように組付けることができる。
【0074】
収縮距離E100に、接着剤70の硬化収縮によるずれ量E10を含ませている。これにより、より正確にカメラ基板50の位置をオフセットさせることができる。また、接着剤70の硬化収縮によるずれ量E10は、離間距離L3及び接着剤70の物性に基づく係数C10を考慮して算出しており、正確にずれを予測することができる。
【0075】
カメラモジュール20の熱膨張及びそれに伴う放熱時の収縮によるずれ量を予測して、収縮距離E100に含ませている。カメラモジュール20の熱膨張及びそれに伴う放熱時の収縮によるずれ量は、カメラモジュール20の熱膨張時における温度上昇値、及びカメラモジュール20の形状及び材料に応じた係数に基づいて、予測している。
【0076】
より詳しくは、収縮距離E100に、接着剤70の熱膨張によるずれ量E11を含ませている。これにより、より正確にカメラ基板50の位置をオフセットさせることができる。また、接着剤70の熱膨張によるずれ量E11は、レーザ光による接着剤70の温度上昇値に、接着剤70の形状や物性に基づく係数C11を考慮して算出しており、正確にずれを予測することができる。
【0077】
また、収縮距離E100に、レンズモジュール30の熱膨張によるずれ量E12を含ませている。これにより、より正確にカメラ基板50の位置をオフセットさせることができる。また、レンズモジュール30の熱膨張によるずれ量E12は、レーザ光によるレンズモジュール30の温度上昇値に、レンズモジュール30の形状や材質に基づく係数C12を考慮して算出しており、正確にずれを予測することができる。
【0078】
また、収縮距離E100に、カメラ基板50の熱膨張によるずれ量E13を含ませている。これにより、より正確にカメラ基板50の位置をオフセットさせることができる。また、カメラ基板50の熱膨張によるずれ量E13は、レーザ光によるカメラ基板50の温度上昇値に、カメラ基板50の形状や材質に基づく係数C13を考慮して算出しており、正確にずれを予測することができる。
【0079】
収縮距離E100に、カメラ基板50の熱反りによるずれ量E14を含ませている。これにより、より正確にカメラ基板50の位置をオフセットさせることができる。
【0080】
(変形例)
上記実施形態におけるピント調整方法の一部を変更してもよい。以下、変形例について説明する。
【0081】
・上記実施形態では、チャート像の撮像データを解析して合焦点となるイメージセンサ40の組付け状態を特定し、カメラ基板50の位置などを再調整していた(ステップS104~S106)が、要求精度が満たされるのであれば、これらの処理を省略してもよい。
【0082】
・上記実施形態では、カメラ基板50におけるイメージセンサ40の設置位置及び設置角度を測定し、これらを考慮して、イメージセンサ40の位置及び角度が最適位置及び最適角度となるように、カメラ基板50の位置などを調整したが、ステップS104~S106の処理を実施するのであれば、これらの処理を省略してもよい。
【0083】
・上記実施形態のステップS104において、撮像領域63の一部を省略して走査領域62を設定したが、省略しなくてもよい。
【0084】
・上記実施形態のステップS104において、撮像領域63の左右両端の一部を省略して走査領域62を設定してもよい。
【0085】
・上記実施形態のステップS104において、チャート像は、十字光源60である必要なく、任意のマークを印刷したものであってもよい。また、数や形、配置を任意に変更してもよい。
【0086】
・上記実施形態のステップS104において、露光時間を任意に変更してもよい。
【0087】
・上記実施形態の予測処理において、収縮距離E100を予測する際、接着剤70の仮硬化によるずれ量E10を考慮しなくてもよい。これにより、離間距離L3を算出する必要がなくなり、処理負担を軽減することができる。
【0088】
・上記実施形態の予測処理において、接着剤70の温度上昇値、カメラ基板50の温度上昇値、及びレンズモジュール30の温度上昇値は、同じ値であってもよい。これにより、測定の手間を省くことができる。
【0089】
・上記実施形態の予測処理において、収縮距離E100を予測する際、カメラ基板50の熱反りによるずれ量E14を考慮しなくてもよい。
【0090】
・上記実施形態の予測処理において、複数位置の収縮距離E100を予測し、複数位置において各収縮距離E100がそれぞれ相殺されるように、位置ごとに遠ざける距離を異ならせてもよい。例えば、レンズモジュール30に対してカメラ基板50を傾けて組付ける場合があるため、左右方向(Y方向)の両端において、レンズモジュール30とカメラ基板50との間の離間距離L3が異なる可能性がある。接着剤70の効果収縮によるずれ量E11は、離間距離L3により異なる。したがって、収縮距離E100が左右方向両端で異なる可能性がある。そこで、左右方向の両端の任意の位置(予測位置)において、離間距離L3を算出し、それに伴って、それぞれ収縮距離E100を予測してもよい。そして、左右方向の両端の予測位置において各収縮距離E100がそれぞれ相殺されるように、予測位置ごとに遠ざける距離を異ならせてもよい。
【0091】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15