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特許7666648パワーコンディショナ及び電力変換システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】パワーコンディショナ及び電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20250415BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20250415BHJP
【FI】
H02J3/32
H02M7/48 E
H02M7/48 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023569808
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2022029138
(87)【国際公開番号】W WO2024024040
(87)【国際公開日】2024-02-01
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡安 正憲
(72)【発明者】
【氏名】李 海青
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-021792(JP,A)
【文献】特開2016-140164(JP,A)
【文献】特開2021-035313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02M7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力系統と蓄電池とを接続するインバータ回路と、
上位装置から指令された充電電力の指令値と、前記上位装置から指令された放電電力の指令値とに対して制限を加えるように構成された指令値リミッタと、
前記指令値リミッタにより制限された前記充電電力の指令値、或いは前記指令値リミッタにより制限された前記放電電力の指令値に従って前記インバータ回路に対する駆動信号を生成するように構成された駆動信号生成器と、
前記インバータ回路に印可される直流電圧が所定の充電リミッタ作動電圧よりも高いことを受けて、前記直流電圧と前記充電リミッタ作動電圧との偏差に対するPI制御値である充電制限用のPI制御値を計算し、前記直流電圧が所定の放電リミッタ作動電圧よりも低いことを受けて、前記直流電圧と前記放電リミッタ作動電圧との偏差に対するPI制御値である放電制限用のPI制御値を計算するように構成されたPI制御器と、
前記充電制限用のPI制御値に応じて前記充電電力の指令値の大きさを低下させるように前記指令値リミッタによる前記充電電力の指令値に対する制限を調整し、前記放電制限用のPI制御値に応じて前記放電電力の指令値の大きさを低下させるように前記指令値リミッタによる前記放電電力の指令値に対する制限を調整するように構成されたリミッタ調整器と、を備える
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーコンディショナにおいて、
前記指令値リミッタは、前記充電電力の指令値に対して0以上1以下の値を有する充電制限ゲインを掛け、前記放電電力の指令値に対して0以上1以下の値を有する放電制限ゲインを掛けるように構成され、
前記リミッタ調整器は、前記充電制限用のPI制御値に応じて前記充電制限ゲインを低下させ、前記放電制限用のPI制御値に応じて前記放電制限ゲインを低下させるように構成されている
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項3】
請求項2に記載のパワーコンディショナにおいて、
前記リミッタ調整器は、前記充電制限用のPI制御値が所定範囲から外れている間は前記充電制限ゲインをゼロに維持し、前記放電制限用のPI制御値が所定範囲から外れている間は前記放電制限ゲインをゼロに維持するように構成されている
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項4】
交流電力系統と蓄電池とを接続するインバータ回路と、
上位装置から指令された充電電力の指令値に対して制限を加えるように構成された指令値リミッタと、
前記指令値リミッタにより制限された前記充電電力の指令値に従って前記インバータ回路に対する駆動信号を生成するように構成された駆動信号生成器と、
前記インバータ回路に印可される直流電圧が所定の充電リミッタ作動電圧よりも高いことを受けて、前記直流電圧と前記充電リミッタ作動電圧との偏差に対するPI制御値を計算するように構成されたPI制御器と、
前記PI制御値に応じて前記充電電力の指令値の大きさを低下させるように前記指令値リミッタによる前記充電電力の指令値に対する制限を調整するように構成されたリミッタ調整器と、を備える
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項5】
請求項4に記載のパワーコンディショナにおいて、
前記指令値リミッタは、前記充電電力の指令値に対して0以上1以下の値を有する充電制限ゲインを掛けるように構成され、
前記リミッタ調整器は、前記PI制御値に応じて前記充電制限ゲインを低下させるように構成されている
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項6】
請求項5に記載のパワーコンディショナにおいて、
前記リミッタ調整器は、前記PI制御値が所定範囲から外れている間は前記充電制限ゲインをゼロに維持するように構成されている
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項7】
交流電力系統と蓄電池とを接続するインバータ回路と、
上位装置から指令された放電電力の指令値に対して制限を加えるように構成された指令値リミッタと、
前記指令値リミッタにより制限された前記放電電力の指令値に従って前記インバータ回路に対する駆動信号を生成するように構成された駆動信号生成器と、
前記インバータ回路に印可される直流電圧が所定の放電リミッタ作動電圧よりも低いことを受けて、前記直流電圧と前記放電リミッタ作動電圧との偏差に対するPI制御値を計算するように構成されたPI制御器と、
前記PI制御値に応じて前記放電電力の指令値の大きさを低下させるように前記指令値リミッタによる前記放電電力の指令値に対する制限を調整するように構成されたリミッタ調整器と、を備える
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項8】
請求項7に記載のパワーコンディショナにおいて、
前記指令値リミッタは、前記放電電力の指令値に対して0以上1以下の値を有する放電制限ゲインを掛けるように構成され、
前記リミッタ調整器は、前記PI制御値に応じて前記放電制限ゲインを低下させるように構成されている
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項9】
請求項8に記載のパワーコンディショナにおいて、
前記リミッタ調整器は、前記PI制御値が所定範囲から外れている間は前記放電制限ゲインをゼロに維持するように構成されている
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項10】
共通の交流電力系統に接続された1又は複数のパワーコンディショナと、
前記1又は複数のパワーコンディショナに充電電力の指令値又は放電電力の指令値を指令する上位装置と、を備え、
前記1又は複数のパワーコンディショナのそれぞれは請求項1乃至9のいずれか1項に記載のパワーコンディショナである
ことを特徴とする電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワーコンディショナ及びそれを備えた電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交流電力系統にパワーコンディショナを介して蓄電池を接続することにより、交流電力系統の電力変動を蓄電池で抑制する技術が知られている。パワーコンディショナのインバータ回路に入力されるゲートパルスを制御することにより、交流電力系統の交流電力を直流電力へ変換して蓄電池へ充電することや、蓄電池の直流電力を交流電力へ逆変換して交流電力系統に放電することができる。従来のパワーコンディショナでは、上位装置からの指令にしたがってインバータ回路を駆動するゲートパルス信号が制御されている。上位装置としては、例えば特開2015-149840号公報に開示されているエネルギーマネジメントシステム(EMS)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-149840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パワーコンディショナは充電状態(SOC)を含む蓄電池の運転情報を一般的には把握していない。このため、上位装置が誤って電池を過充電させる指令をパワーコンディショナへ入力した場合、充電電力の指令値にそのまま従ってパワーコンディショナは運転するため、蓄電池の過充電を招くおそれがある。同様に、上位装置から指令された過放電を引き起こす可能性のある電力の指令値にそのまま従ってパワーコンディショナを運転する場合、蓄電池の過放電を招くおそれがある。
【0005】
本開示の1つの目的は、簡易な構成で蓄電池の過充電と過放電の少なくとも一方を防止することができるパワーコンディショナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様によれば、パワーコンディショナは、交流電力系統と蓄電池とを接続するインバータ回路と、指令値リミッタと、駆動信号生成器と、PI制御器と、リミッタ調整器とを備える。本開示の第1の態様によれば、指令値リミッタ、駆動信号生成器、PI制御器、及びリミッタ調整器は以下のように構成される。
【0007】
指令値リミッタは、上位装置から指令された充電電力の指令値と、上位装置から指令された放電電力の指令値とに対して制限を加えるように構成される。駆動信号生成器は、指令値リミッタにより制限された充電電力の指令値、或いは指令値リミッタにより制限された放電電力の指令値に従ってインバータ回路に対する駆動信号を生成するように構成される。PI制御器は、インバータ回路に印可される直流電圧が所定の充電リミッタ作動電圧よりも高いことを受けて、直流電圧と充電リミッタ作動電圧との偏差に対するPI制御値である充電制限用のPI制御値を計算するように構成される。また、PI制御器は、インバータ回路に印可される直流電圧が所定の放電リミッタ作動電圧よりも低いことを受けて、直流電圧と放電リミッタ作動電圧との偏差に対するPI制御値である放電制限用のPI制御値を計算するようにも構成される。リミッタ調整器は、充電制限用のPI制御値に応じて指令値リミッタによる充電電力の指令値に対する制限を強めるように構成される。また、リミッタ調整器は、放電制限用のPI制御値に応じて指令値リミッタによる放電電力の指令値に対する制限を強めるようにも構成される。
【0008】
指令値リミッタは、充電電力の指令値に対して0以上1以下の値を有する充電制限ゲインを掛け、放電電力の指令値に対して0以上1以下の値を有する放電制限ゲインを掛けるように構成されてもよい。また、リミッタ調整器は、充電制限用のPI制御値に応じて充電制限ゲインを低下させ、放電制限用のPI制御値に応じて放電制限ゲインを低下させるように構成されてもよい。さらに、リミッタ調整器は、充電制限用のPI制御値が所定範囲から外れている間は充電制限ゲインをゼロに維持するように構成されてもよい。リミッタ調整器は、放電制限用のPI制御値が所定範囲から外れている間は放電制限ゲインをゼロに維持するように構成されてもよい。
【0009】
本開示の第2の態様によれば、パワーコンディショナは、交流電力系統と蓄電池とを接続するインバータ回路と、指令値リミッタと、駆動信号生成器と、PI制御器と、リミッタ調整器とを備える。本開示の第2の態様によれば、指令値リミッタ、駆動信号生成器、PI制御器、及びリミッタ調整器は以下のように構成される。
【0010】
指令値リミッタは、上位装置から指令された充電電力の指令値に対して制限を加えるように構成される。駆動信号生成器は、指令値リミッタにより制限された充電電力の指令値に従ってインバータ回路に対する駆動信号を生成するように構成される。PI制御器は、インバータ回路に印可される直流電圧が所定の充電リミッタ作動電圧よりも高いことを受けて、直流電圧と充電リミッタ作動電圧との偏差に対するPI制御値である充電制限用のPI制御値を計算するように構成される。リミッタ調整器は、充電制限用のPI制御値に応じて指令値リミッタによる充電電力の指令値に対する制限を強めるように構成される。
【0011】
指令値リミッタは、充電電力の指令値に対して0以上1以下の値を有する充電制限ゲインを掛けるように構成されてもよい。また、リミッタ調整器は、充電制限用のPI制御値に応じて充電制限ゲインを低下させるように構成されてもよい。さらに、リミッタ調整器は、充電制限用のPI制御値が所定範囲から外れている間は充電制限ゲインをゼロに維持するように構成されてもよい。
【0012】
本開示の第3の態様によれば、パワーコンディショナは、交流電力系統と蓄電池とを接続するインバータ回路と、指令値リミッタと、駆動信号生成器と、PI制御器と、リミッタ調整器とを備える。本開示の第3の態様によれば、指令値リミッタ、駆動信号生成器、PI制御器、及びリミッタ調整器は以下のように構成される。
【0013】
指令値リミッタは、上位装置から指令された放電電力の指令値に対して制限を加えるように構成される。駆動信号生成器は、指令値リミッタにより制限された放電電力の指令値に従ってインバータ回路に対する駆動信号を生成するように構成される。PI制御器は、インバータ回路に印可される直流電圧が所定の放電リミッタ作動電圧よりも低いことを受けて、直流電圧と放電リミッタ作動電圧との偏差に対するPI制御値である放電制限用のPI制御値を計算するように構成される。リミッタ調整器は、放電制限用のPI制御値に応じて指令値リミッタによる放電電力の指令値に対する制限を強めるように構成される。
【0014】
指令値リミッタは、放電電力の指令値に対して0以上1以下の値を有する放電制限ゲインを掛けるように構成されてもよい。また、リミッタ調整器は、放電制限用のPI制御値に応じて放電制限ゲインを低下させるように構成されてもよい。さらに、リミッタ調整器は、放電制限用のPI制御値が所定範囲から外れている間は放電制限ゲインをゼロに維持するように構成されてもよい。
【0015】
また、本開示は電力変換システムを提供する。本開示の1つの態様によれば、電力変換システムは、共通の交流電力系統に接続された1又は複数のパワーコンディショナと、上記1又は複数のパワーコンディショナに充電電力の指令値又は放電電力の指令値を指令する上位装置とを備える。上記1又は複数のパワーコンディショナは、本開示の第1乃至第3のいずれかの態様にかかるパワーコンディショナである。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、簡易な構成で蓄電池の過充電と過放電の少なくとも一方を防止することができる。特に、直流電圧と充電リミッタ作動電圧との偏差に対するPI制御値に応じて指令値リミッタによる充電電力の指令値に対する制限を強めることで、電圧の変動に起因する指令値リミッタのチャタリングを抑えて可能な限り充電運転を継続することができる。また、直流電圧と放電リミッタ作動電圧との偏差に対するPI制御値に応じて指令値リミッタによる放電電力の指令値に対する制限を強めることで、電圧の変動に起因する指令値リミッタのチャタリングを抑えて可能な限り放電運転を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施形態にかかるパワーコンディショナの構成と、パワーコンディショナを用いた電力変換システムの構成とを示す図である。
図2】充電リミッタ作動電圧値及び放電リミッタ作動電圧値と、パワーコンディショナの電圧範囲及び蓄電池の電圧範囲との関係を示す図である。
図3】本開示の実施形態にかかるPI制御器の構成の例を示す図である。
図4】本開示の実施形態にかかるパワーコンディショナの過充電防止動作を説明する図である。
図5】本開示の実施形態にかかるパワーコンディショナの過放電防止動作を説明する図である。
図6】蓄電池の一般的な充電運転による電圧及び電流の動きの例と、従来のパワーコンディショナによる充電時と放電時の電圧及び電流の動きの例を示す図である。
図7】本開示の実施形態にかかるパワーコンディショナによる充電時の電圧及び電流の動きの例と、放電時の電圧及び電流の動きの例とを示す図である。
図8】本開示の実施形態にかかるパワーコンディショナの制御装置の構成の第1の具体例を示す図である。
図9】本開示の実施形態にかかるパワーコンディショナの制御装置の構成の第2の具体例を示す図である。
図10】本開示の実施形態にかかるパワーコンディショナの制御装置の構成の第3の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.パワーコンディショナの構成
以下、図を参照して本開示の実施形態に係るパワーコンディショナについて説明する。パワーコンディショナは、パワーコンディショニングシステムとも呼ばれ、一般にPCSと略称される。本明細書でもパワーコンディショナをPCSと略称する。
【0019】
図1は本開示の実施形態に係るPCS10の構成と、PCS10を用いた電力変換システム2の構成とを示す図である。電力変換システム2は、上位装置4と単機又は複数のPCS10とを組み合わせた系統連系用分散型電源システムである。図1に示す例では便宜的に1つのPCS10のみが描かれている。各PCS10には蓄電池6が接続されている。上位装置4は、電力変換システム2を構成する各PCS10に対して充電又は放電を指令するコントローラである。上位装置4の一例としてはEMSを挙げることができる。
【0020】
PCS10は、図示しない三相の交流電力系統が接続される系統接続端子14と、蓄電池6が接続される直流電源接続端子12とを備える。PCS10の内部には、交流電力系統の交流電力を直流電力へ変換し、蓄電池6の直流電力を三相の交流電力へ逆変換する三相のインバータ回路20が設けられている。なお、交流電力系統は単相であってもよい。その場合、PCS10の内部には単相のインバータ回路が設けられる。
【0021】
直流電源接続端子12とインバータ回路20との間には、直流電流を平滑する平滑回路30が設けられている。平滑回路は抵抗とキャパシタとで構成されている。直流電源接続端子12と平滑回路30との間には、直流電流を遮断する直流電流遮断器40が設けられている。また、系統接続端子14とインバータ回路20との間には、三相の交流電流を遮断する交流電流遮断器50が設けられている。
【0022】
PCS10内には電圧計80が設けられている。電圧計80は直流電源接続端子12の正極と負極との間に生じる直流入力電圧を計測する。或いは、平滑回路30と直流電流遮断器40との間に電圧計80を設置して、平滑回路30の直流キャパシタ電圧を計測してもよい。電圧計80で計測された直流電圧は次に説明する制御装置100に入力される。
【0023】
PCS10内には制御装置100が設けられている。制御装置100はPCS10の充電動作及び放電動作を制御する。上位装置4からの指令は制御装置100に入力される。上位装置4から制御装置100に入力される指令には、蓄電池6から交流電力系統に電力を放電するための放電電力の有効電力指令値(以下、放電電力指令値と表記する)と、交流電力系統から蓄電池6に電力を充電するための充電電力の有効電力指令値(以下、充電電力指令値と表記する)とが含まれる。放電電力指令値は0~100%の範囲内の値をとる電力指令値である。充電電力指令値は-100~0%の範囲内の値をとる電力指令値である。
【0024】
制御装置100は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、中央処理装置(CPU)、又は別の装置であってもよい。或いは、制御装置100は、2以上のASIC、FPGA、CPU、又は別の装置の組合せであってもよい。制御装置100に対応するASIC、FPGA、CPU、及び別の装置は一連の実行可能な命令を含む。それらの命令が実行されると、対応するASIC、FPGA、CPU、及び別の装置は後述する機能を実行するようにトリガされる。命令は記憶媒体に格納されてもよいし、対応するASICやFPGAに内蔵されてもよい。
【0025】
図1には、制御装置100が有する機能がブロックで表わされている。制御装置100は、駆動信号生成器110、指令値リミッタ120、電圧制限範囲設定器130、電圧偏差算出器140、PI制御器150、及びリミッタ調整器160を備える。これらは、一連の命令の実行によって、対応するASIC、FPGA、CPU、又は別の装置において実行される機能である。
【0026】
駆動信号生成器110は、インバータ回路20のスイッチング素子を駆動するゲートパルス発生回路を有する。駆動信号生成器110は、電力指令値の入力を受け付け、インバータ回路20の出力電力が電力指令値になるようにゲートパルス信号を生成する。入力される電力指令値が充電電力指令値の場合、駆動信号生成器110は、交流電力系統から蓄電池6への充電が行われるように、インバータ回路20を駆動するゲートパルス信号を生成する。入力される電力指令値が放電電力指令値の場合、駆動信号生成器110は、蓄電池6から交流電力系統への放電が行われるように、インバータ回路20を駆動するゲートパルス信号を生成する。
【0027】
指令値リミッタ120は、上位装置4から駆動信号生成器110に入力される電力指令値に対して制限を加える。駆動信号生成器110に入力される電力指令値は、指令値リミッタ120によって制限を加えられた電力指令値である。電力指令値が負の値をとる充電電力指令値である場合、電力指令値に対して制限を加えるとは、電力指令値をより高い値の指令値(よりゼロに近い指令値)に補正することを意味する。具体例として、指令値リミッタ120は、充電電力指令値に対して0以上1以下の値を有する充電制限ゲインを掛ける。指令値リミッタ120による充電電力指令値に対する制限は、後述するリミッタ調整器160によって自動調整される。
【0028】
上位装置4からPCS10に対する指令が放電指令の場合、駆動信号生成器110に入力される電力指令値は正の値をとる。電力指令値が正の値をとる放電電力指令値である場合、電力指令値に対して制限を加えるとは、電力指令値をより低い値の指令値(よりゼロに近い指令値)に補正することを意味する。具体例として、指令値リミッタ120は、放電電力指令値に対して0以上1以下の値を有する放電制限ゲインを掛ける。指令値リミッタ120による放電電力指令値に対する制限も、後述するリミッタ調整器160によって自動調整される。
【0029】
電圧制限範囲設定器130は、予め設定された充電リミッタ作動電圧と、予め設定された放電リミッタ作動電圧とを記憶する。充電リミッタ作動電圧はPCS10の過充電防止動作のトリガとなる電圧である。放電リミッタ作動電圧はPCS10の過放電防止動作のトリガとなる電圧である。充電リミッタ作動電圧と放電リミッタ作動電圧を設定する考え方については後述する。
【0030】
電圧偏差算出器140は、電圧制限範囲設定器130から充電リミッタ作動電圧及び放電リミッタ作動電圧を読み込む。また、電圧偏差算出器140は、電圧計80で計測された直流電圧を一定の周期で取得する。電圧偏差算出器140は、電圧計80から計測直流電圧が取得されるごとに、計測直流電圧と充電リミッタ作動電圧とを比較し、また、計測直流電圧と放電リミッタ作動電圧とを比較する。ただし、比較に用いられる計測直流電圧は瞬時値ではなく所定期間における移動平均値である。
【0031】
計測直流電圧が充電リミッタ作動電圧よりも高い場合、電圧偏差算出器140は、充電リミッタ作動電圧に対する計測直流電圧の偏差を出力する。計測直流電圧が放電リミッタ作動電圧よりも低い場合、電圧偏差算出器140は、放電リミッタ作動電圧に対する計測直流電圧の偏差を出力する。計測直流電圧が充電リミッタ作動電圧以下で放電リミッタ作動電圧以上の場合、電圧偏差算出器140は出力値をゼロにする。
【0032】
電圧偏差算出器140の出力はPI制御器150に入力される。PI制御器150は、電圧偏差算出器140の出力に対するPI制御値を計算する。より詳しくは、PI制御器150は、充電リミッタ作動電圧と計測直流電圧との偏差に対するPI制御値と、放電リミッタ作動電圧と計測直流電圧との偏差に対するPI制御値とを計算する。前者は計測直流電圧が充電リミッタ作動電圧よりも高い場合に計算されるPI制御値であって、充電の制限のために用いられる。後者は計測直流電圧が放電リミッタ作動電圧よりも低い場合に計算されるPI制御値であって、放電の制限のために用いられる。充電制限用のPI制御値を計算する計算式と、放電制限用のPI制御値を計算する計算式とは、それぞれ別々に定義されている。
【0033】
PI制御器150で計算された充電制限用のPI制御値及び放電制限用のPI制御値は、それぞれリミッタ調整器160に入力される。リミッタ調整器160は、充電制限用のPI制御値に応じて指令値リミッタ120による充電電力の指令値に対する制限を強める。計測直流電圧と充電リミッタ作動電圧との間に偏差が生じると、充電制限用のPI制御値は正側或いは負側の一方向に変化していく。正側と負側のどちらに変化するかはPI制御の比例ゲインの設定による。
【0034】
充電制限用のPI制御値が初期値から所定の閾値まで変化するまでの間、リミッタ調整器160は、充電制限用のPI制御値の変化に対して線形に指令値リミッタ120よる制限を強めていく。具体例として、リミッタ調整器160は、充電制限用のPI制御値が閾値に近づくに連れて充電制限ゲインを1からゼロに近付けていく。そして、リミッタ調整器160は、充電制限用のPI制御値が閾値に達したら充電制限ゲインをゼロにし、充電制限用のPI制御値が閾値で定義される所定範囲から外れている間は充電制限ゲインをゼロに維持する。
【0035】
また、リミッタ調整器160は、放電制限用のPI制御値に応じて指令値リミッタ120による放電電力の指令値に対する制限を強める。計測直流電圧と放電リミッタ作動電圧との間に偏差が生じると、放電制限用のPI制御値は正側或いは負側の一方向に変化していく。正側と負側のどちらに変化するかはPI制御の比例ゲインの設定による。
【0036】
放電制限用のPI制御値が初期値から所定の閾値まで変化するまでの間、リミッタ調整器160は、放電制限用のPI制御値の変化に対して線形に指令値リミッタ120よる制限を強めていく。具体例として、リミッタ調整器160は、放電制限用のPI制御値が閾値に近づくに連れて放電制限ゲインを1からゼロに近付けていく。そして、リミッタ調整器160は、放電制限用のPI制御値が閾値に達したら放電制限ゲインをゼロにし、放電制限用のPI制御値が閾値で定義される所定範囲から外れている間は放電制限ゲインをゼロに維持する。
【0037】
2.パワーコンディショナの動作
次に、上記のごとく構成されたPCS10の動作、特に、制御装置100の動作について説明する。
【0038】
まず、制御装置100の動作の説明に先立ち、電圧制限範囲設定器130で設定される充電リミッタ作動電圧及び放電リミッタ作動電圧について説明する。充電リミッタ作動電圧及び放電リミッタ作動電圧は、PCS10の運転電圧範囲と蓄電池6の電圧範囲とを考慮して設定されている。図2は、充電リミッタ作動電圧値VdclimL及び放電リミッタ作動電圧値VdclimHと、PCS10の運転電圧範囲及び蓄電池6の電圧範囲との関係を示す図である。
【0039】
図2の例1に示されるように、一般に、PCS10の運転電圧範囲は蓄電池6の電圧範囲に合わせられている。この場合、PCS10の下限運転電圧は蓄電池6の下限電圧と一致し、システム下限電圧Vdcminとして設定される。放電リミッタ作動電圧値VdclimLはシステム下限電圧Vdcminより高い電圧に設定される。例えば、システム下限電圧Vdcminが710Vの場合、放電リミッタ作動電圧値VdclimLは720Vに設定される。また、PCS10の上限運転電圧は蓄電池6の上限電圧と一致し、システム上限電圧Vdcmaxとして設定される。充電リミッタ作動電圧値VdclimHはシステム上限電圧Vdcmaxより低い電圧に設定される。例えば、システム上限電圧Vdcmaxが1100Vの場合、充電リミッタ作動電圧値VdclimHは1090Vに設定される。
【0040】
また、図2の例2に示されるように、PCS10の運転電圧範囲と蓄電池6の電圧範囲との間にずれが生じる場合がある。この場合、PCS10の下限運転電圧と蓄電池6の下限電圧のうち、より高い方がシステム下限電圧Vdcminとして設定される。また、PCS10の上限運転電圧と蓄電池6の上限電圧のうち、より低い方がシステム上限電圧Vdcmaxとして設定される。例えば、PCS10の運転電圧範囲が710乃至1100Vで、蓄電池6の電圧範囲が950乃至1300Vである場合、システム下限電圧Vdcminは950Vに設定され、システム上限電圧Vdcmaxは1100Vに設定される。充電リミッタ作動電圧値VdclimLはシステム下限電圧Vdcminより高い電圧に設定される。放電リミッタ作動電圧値VdclimHはシステム上限電圧Vdcmaxより低い電圧に設定される。ただし、PCS10の上限運転電圧は蓄電池6の上限電圧よりも低いことから、PCS10の上限運転電圧付近であっても蓄電池6は過充電にはならない。ゆえに、例2の場合、放電リミッタ作動電圧値VdclimHからシステム上限電圧Vdcmaxの範囲で出力を制限する必要はない。
【0041】
PCS10の動作を決定する一つの要素はPI制御器150である。PI制御器150は、充電時と放電時とで異なる動作をするように構成されている。図3はPI制御器150の構成の一例を示す図である。図3の上段に示されるPI制御器150の構成は、充電時に使用される充電制御用のPI制御器150の構成である。図3の下段に示されるPI制御器150の構成は、放電時に使用される放電制御用のPI制御器150の構成である。PI制御器150は、フィードバック制御部150aとリミッタ換算部150bとからなる。ただし、充電制御用と放電制御用とで異なる構成のフィードバック制御部150aが用いられる。また、充電制御用と放電制御用とで異なる構成のリミッタ換算部150bが用いられる。
【0042】
まず、充電制御用の構成について説明する。充電制御用のフィードバック制御部150aは、以下の式(1)で表される伝達関数G02を有する比例積分器を備える。ただし、以下の式(1)においてKp2は充電制御用の比例ゲインであり、T2は充電制御用の時定数である。
【数1】
【0043】
上記の伝達関数G02を用いると、充電制御用のフィードバック制御部150aの出力Y(s)を求める方程式は以下の式(2)で表される。フィードバック制御部150aは、入力X(s)を目標値として出力Y(s)を入力X(s)に追従させる。ただし、以下の式(2)における入力X(s)は、計測直流電圧Vdcfbkと充電リミッタ作動電圧値VdclimHとの偏差Vdcerrである。
【数2】
【0044】
充電制御用のリミッタ換算部150bは、フィードバック制御部150aの出力を充電制限用のPI制御値G2に変換する。この変換には、以下の式(3)で表される充電リミッタゲインK2が用いられる。充電リミッタゲインK2を用いた比例制御によって、フィードバック制御部150aの出力は電圧から無次元量に変換される。
【数3】
【0045】
上記の充電リミッタゲインK2を用いると、充電制限用のPI制御値G2を求める方程式は以下の式(4)で表される。
【数4】
【0046】
次に、放電制御用の構成について説明する。放電制御用のフィードバック制御部150aは、以下の式(5)で表される伝達関数G01を有する比例積分器を備える。ただし、以下の式(5)においてKp1は放電制御用の比例ゲインであり、T1は放電制御用の時定数である。比例ゲインKp1は充電制御用の比例ゲインKp2と同じ値であってもよいし、異なる値に設定されてもよい。時定数T1は充電制御用の時定数T2と同じ値であってもよいし、異なる値に設定されてもよい。
【数5】
【0047】
上記の伝達関数G01を用いると、放電制御用のフィードバック制御部150aの出力Y(s)を求める方程式は以下の式(6)で表される。フィードバック制御部150aは、入力X(s)を目標値として出力Y(s)を入力X(s)に追従させる。ただし、以下の式(6)における入力X(s)は、計測直流電圧Vdcfbkと放電リミッタ作動電圧値VdclimLとの偏差Vdcerrである。
【数6】
【0048】
放電制御用のリミッタ換算部150bは、フィードバック制御部150aの出力を放電制限用のPI制御値G1に変換する。この変換には、以下の式(7)で表される放電リミッタゲインK1が用いられる。放電リミッタゲインK1を用いた比例制御によって、フィードバック制御部150aの出力は電圧から無次元量に変換される。
【数7】
【0049】
上記の放電リミッタゲインK1を用いると、放電制限用のPI制御値G1を求める方程式は以下の式(8)で表される。
【数8】
【0050】
PCS10の動作は、蓄電池6を過充電から保護するための過充電防止動作を含む。PCS10の過充電防止動作の具体例は図4に示される。上位装置4から制御装置100に充電指令が入力されると、電圧偏差算出器140は、計測直流電圧Vdcfbkと充電リミッタ作動電圧値VdclimHとの偏差Vdcerrを算出する。PI制御器150は、電圧偏差算出器140で算出された偏差Vdcerrに基づくフィードバック制御を行う。フィードバック制御によるP項とI項の和が目標値である偏差Vdcerrに収束したとき、充電制限用のPI制御値G2は以下の式(9)で表わされる値に収束する。
【数9】
【0051】
リミッタ調整器160は、充電制限用のPI制御値G2の変化に応じて充電制限ゲインを1からゼロまで低下させる。そして、指令値リミッタ120は、上位装置4から入力された充電電力指令値Prefをリミッタ調整器160で調整された充電制限ゲインによって制限し、制限された充電電力指令値Pref2を駆動信号生成器110に入力する。充電制限ゲインが1のとき、充電電力指令値Prefがそのまま充電電力指令値Pref2となり、充電制限ゲインがゼロのとき、充電電力指令値Pref2はゼロとされる。
【0052】
PCS10の動作は、蓄電池6を過放電から保護するための過放電防止動作を含む。PCS10の過放電防止動作の具体例は図5に示される。上位装置4から制御装置100に放電指令が入力されると、電圧偏差算出器140は、計測直流電圧Vdcfbkと放電リミッタ作動電圧値VdclimLとの偏差Vdcerrを算出する。PI制御器150は、電圧偏差算出器140で算出された偏差Vdcerrに基づくフィードバック制御を行う。フィードバック制御によるP項とI項の和が目標値である偏差Vdcerrに収束したとき、放電制限用のPI制御値G1は以下の式(10)で表わされる値に収束する。
【数10】
【0053】
リミッタ調整器160は、放電制限用のPI制御値G1の変化に応じて放電制限ゲインを1からゼロまで低下させる。そして、指令値リミッタ120は、上位装置4から入力された放電電力指令値Prefをリミッタ調整器160で調整された放電制限ゲインによって制限し、制限された放電電力指令値Pref2を駆動信号生成器110に入力する。放電制限ゲインが1のとき、放電電力指令値Prefがそのまま放電電力指令値Pref2となり、放電制限ゲインがゼロのとき、放電電力指令値Pref2はゼロとされる。
【0054】
上述の通り、制御装置100による過充電防止動作及び過放電防止動作では、単純な比例制御ではなく、比例積分制御を用いて計算されたPI制御値によって充電制限ゲイン及び放電制限ゲインが計算される。仮に、比例積分制御ではなく比例制御のみが用いられた場合、蓄電池6の電圧の変動やインバータ回路20のスイッチングによる直流リプルの影響により直流電圧が変動し、指令値リミッタ120の充電制限ゲイン又は放電制限ゲインが急峻に変動してしまうおそれがある。例えば、放電末期電圧にて急に100%放電運転した場合、直流電圧は低下する。その直流電圧の低下を受けて指令値リミッタ120が作動すると、直流電圧は再び上昇する。単純な比例制御の場合、このような具合にチャタリングが発生してしまうおそれがある。しかし、比例積分制御で得られたPI制御値を用いて充電制限ゲイン及び放電制限ゲインが計算される場合、制御応答に時定数があるためチャタリングは発生せず、なめらかな制御が可能となる。
【0055】
また、過充電防止動作と過放電防止動作とでそれぞれ別々に定義されたPI制御系を用いることで、蓄電池6の充電特性及び放電特性に合わせた指令値リミッタ120の動作を実現することができる。例えば、蓄電池6の特性として過放電領域では電圧降下が急峻であることから、指令値リミッタ120の過放電防止動作も早くなるように放電制限用のPI制御系を設計してもよい。具体的には、放電制限用のPI制御値G1の計算式におけるI項の時定数T1を短くすることで、指令値リミッタ120の過放電防止動作を早くすることができる。また、過充電領域では電圧変動が緩やかであることから、指令値リミッタ120の過充電防止動作も緩やかになるように充電制限用のPI制御系を設計してもよい。具体的には、充電制限用のPI制御値G2の計算式におけるI項の時定数T2を長くすることで、指令値リミッタ120の過充電防止動作を緩やかにすることができる。
【0056】
ここで、従来技術との比較から、本実施形態にかかるPCS10の動作の特徴について説明する。図6には、蓄電池の一般的な充電運転方式による電圧及び電流の動きの例が示される。太線は電圧を示し、細線は電流を示している。一般的な充電運転方式は、電圧一定運転(CV運転)と直流での電流一定運転(CC運転)との組み合わせである。より詳しくは、放電運転や充電運転の初期から中期ではCC運転が行われる。そして、満充電電圧の付近でCC運転からCV運転に切り替わり、過充電することなく満充電される。満充電後もCV運転が続けられるため、原理的には電池の自己放電補償分の電流が流し続けられる。ただし、一般的な充電運転方式には、蓄電の過放電を防止する特別な機能は備わっていない。一般的な充電運転方式では、単に、電圧が装置の保護停止電圧レベルまで低下したら装置を保護停止するのみである。
【0057】
また、図6には、従来のPCSによる充電時と放電時の電圧及び電流の動きの例も示されている。太線は電圧を示し、細線は電流を示している。従来のPCSは、上位装置からの電力指令値にそのまま従って蓄電池に充電或いは放電させる。このため、万が一、電流指令値が異常の場合、蓄電池は過充電状態或いは過放電状態になるおそれがある。従来のPCSでは、電圧が過充電電圧レベルまで上昇したらPCSを停止して過充電から保護することと、電圧が放電収電圧レベルに達したらPCSを停止して過放電から保護することとが行われている。
【0058】
以上のような従来技術に対し、本実施形態にかかるPCS10による充電時の電圧及び電流の動きは図7に例示される。PCS10によれば、充電により電圧が上昇してきた場合、過充電防止動作が機能することによって、電流を単調に低下させながら電圧を満充電電圧まで緩やかに到達させることができる。これにより、電圧が過充電電圧レベルをオーバシュートしてしまうことを防ぐことができる。また、電圧が満充電電圧に達した後は、電圧を満充電電圧に維持し続けることができる。さらに、その間、指令値リミッタ120を完全に0%まで絞るのではなく、数%に絞ることにすれば、蓄電池6に自己放電補償分の電流を流し続けることができる。
【0059】
また、本実施形態にかかるPCS10による放電時の電圧及び電流の動きも図7に例示される。PCS10によれば、放電により電圧が低下してきた場合、過放電防止動作が機能することによって、電流を単調に低下させながら電圧を放電終始電圧まで緩やかに到達させることができる。これにより過放電領域での急峻な電圧降下を防ぎ、蓄電池6を過放電から保護することができる。
【0060】
3.パワーコンディショナの制御装置の構成の具体例
次に、制御装置100の構成の具体例について図を用いて説明する。具体例間で共通の機能には共通の符号を付し、その機能についての説明を省略或いは簡略化する。
【0061】
<第1の具体例>
図8は制御装置100の構成の第1の具体例を示す図である。第1の具体例では、指令値リミッタ120は可変リミッタ122からなる。可変リミッタ122は正値の電力指令値Pref、すなわち、放電電力指令値を上限値PreflimHに制限する。上限値PreflimHは電力指令値Prefを100%とした場合の百分率で表わされる。電力指令値Prefが正値の場合、可変リミッタ122からは、制限された電力指令値Pref2として上限値PreflimHが出力される。
【0062】
また、可変リミッタ122は負値の電力指令値Pref、すなわち、充電電力指令値を下限値PreflimLに制限する。下限値PreflimLは電力指令値Prefを-100%とした場合の百分率で表わされる。電力指令値Prefが負値の場合、可変リミッタ122からは、制限された電力指令値Pref2として下限値PreflimLが出力される。
【0063】
第1の具体例では、電圧偏差算出器140はリミッタ142と減算器144とからなる。リミッタ142は、計測直流電圧Vdcfbkが正値の場合、電圧制限範囲設定器130で設定された充電リミッタ作動電圧値VdclimHと、計測直流電圧Vdcfbkとを比較する。計測直流電圧Vdcfbkが充電リミッタ作動電圧値VdclimH未満であれば、リミッタ142は、計測直流電圧Vdcfbkをそのまま制限された計測直流電圧Vdclimとして出力する。計測直流電圧Vdcfbkが充電リミッタ作動電圧値VdclimH以上であれば、リミッタ142は、充電リミッタ作動電圧値VdclimHを制限された計測直流電圧Vdclimとして出力する。
【0064】
リミッタ142は、計測直流電圧Vdcfbkが負値の場合、電圧制限範囲設定器130で設定された放電リミッタ作動電圧値VdclimLと、計測直流電圧Vdcfbkとを比較する。計測直流電圧Vdcfbkが放電リミッタ作動電圧値VdclimLより大きければ、リミッタ142は、計測直流電圧Vdcfbkをそのまま制限された計測直流電圧Vdclimとして出力する。計測直流電圧Vdcfbkが放電リミッタ作動電圧値VdclimL以下であれば、リミッタ142は、放電リミッタ作動電圧値VdclimLを制限された計測直流電圧Vdclimとして出力する。
【0065】
減算器144は、計測直流電圧Vdcfbkに対する制限された計測直流電圧Vdclimの偏差Vdcerrを算出する。計測直流電圧Vdcfbkが充電リミッタ作動電圧値VdclimH以上であれば、偏差Vdcerrは充電リミッタ作動電圧値VdclimHと計測直流電圧Vdcfbkとの偏差となる。この場合の偏差Vdcerrは正値である。計測直流電圧Vdcfbkが放電リミッタ作動電圧値VdclimL以下であれば、偏差Vdcerrは放電リミッタ作動電圧値VdclimLと計測直流電圧Vdcfbkとの偏差となる。この場合の偏差Vdcerrは負値である。計測直流電圧Vdcfbkが放電リミッタ作動電圧値VdclimLより大きく充電リミッタ作動電圧値VdclimHより小さい場合、偏差Vdcerrはゼロとなる。
【0066】
具体例として、充電リミッタ作動電圧値VdclimHを1090Vとし、放電リミッタ作動電圧値VdclimLを720Vとする。また、充電時の計測直流電圧Vdcfbkの例を1150Vとし、放電時の計測直流電圧Vdcfbkの例を716Vとする。この場合、充電時にリミッタ142から出力される制限された計測直流電圧Vdclimは1090Vとなり、減算器144から出力される偏差Vdcerrは-60Vとなる。また、放電時にリミッタ142から出力される制限された計測直流電圧Vdclimは720Vとなり、減算器144から出力される偏差Vdcerrは4Vとなる。
【0067】
第1の具体例のPI制御器150はPI制御器152である。PI制御器152は、減算器144で算出された偏差Vdcerrに対するPI制御値Gを計算する。PI制御器152は、図3に示される充電制御用の構成と放電制御用の構成とを切り替えて使用する。したがって、充電時にPI制御器152から出力されるPI制御値Gは、充電制限用のPI制御値G2である。放電時にPI制御器152から出力されるPI制御値Gは、放電制限用のPI制御値G1である。
【0068】
ただし、第1の具体例では、充電制限用のPI制御値G2を求める方程式は以下の式(11)で表される。第1の具体例におけるPI制御値G2の次元は百分率である。式(11)によれば、前述の充電時の例のように偏差Vdcerrが-60Vであるならば、充電制限用のPI制御値G2は-600%となる。
【数11】
【0069】
また、第1の具体例では、放電制限用のPI制御値G1を求める方程式は以下の式(12)で表される。第1の具体例におけるPI制御値G1の次元は百分率である。式(12)によれば、前述の放電時の例のように偏差Vdcerrが4Vであるならば、放電制限用のPI制御値G1は40%となる。
【数12】
【0070】
第1の具体例では、リミッタ調整器160は、リミッタ162と減算器164とからなる放電制限ゲイン調整回路と、リミッタ166と減算器168とからなる充電制限ゲイン調整回路とで構成されている。放電制限ゲイン調整回路は、可変リミッタ122の上限値PreflimHを100%から0%の範囲内で調整する回路である。充電制限ゲイン演算回路は、可変リミッタ122の下限値PreflimLを-100%から0%の範囲内で調整する回路である。放電制限ゲイン演算回路と充電制限ゲイン演算回路とはPI制御器152に並列に接続されている。
【0071】
放電制限ゲイン演算回路を構成するリミッタ162は、放電時にPI制御器152で計算されたPI制御値G(放電制限用のPI制御値G1)を100%から0%の範囲内に制限し、制限されたPI制御値GHを出力する。つまり、PI制御値Gが100%以下であれば、リミッタ162は、PI制御値Gをそのまま制限されたPI制御値GHとして出力する。PI制御値Gが100%より高ければ、リミッタ162は、制限されたPI制御値GHとして100%を出力する。放電制限ゲイン演算回路を構成する減算器164は、制限されたPI制御値GHを固定値である100%から減算し、その差を放電制限ゲインとして出力する。放電制限ゲインは可変リミッタ122の上限値PreflimHとして設定される。
【0072】
前述の放電時の例のようにPI制御値Gが40%の場合、制限されたPI制御値GHはそのまま40%となり、上限値PreflimHは60%に設定される。その結果、放電を指令する電力指令値Prefは、可変リミッタ122において60%まで制限され、50%に制限された電力指令値Pref2が駆動信号生成器110に入力される。
【0073】
充電制限ゲイン演算回路を構成するリミッタ166は、充電時にPI制御器152で計算されたPI制御値G(充電制限用のPI制御値G2)を-100%から0%の範囲内に制限し、制限されたPI制御値GLを出力する。つまり、PI制御値Gが-100%以上であれば、リミッタ166は、PI制御値Gをそのまま制限されたPI制御値GLとして出力する。PI制御値Gが-100%より低ければ、リミッタ166は、制限されたPI制御値GLとして-100%を出力する。充電制限ゲイン演算回路を構成する減算器168は、制限されたPI制御値GLを固定値である-100%から減算し、その差を充電制限ゲインとして出力する。充電制限ゲインは可変リミッタ122の下限値PreflimLとして設定される。
【0074】
前述の充電時の例のようにPI制御値Gが-600%の場合、制限されたPI制御値GLは-100%となり、下限値PreflimLは0%に設定される。その結果、充電を指令する電力指令値Prefは、可変リミッタ122において0%まで制限され、0%に制限された電力指令値Pref2が駆動信号生成器110に入力される。
【0075】
<第2の具体例>
図9は制御装置100の構成の第2の具体例を示す図である。第2の具体例では、指令値リミッタ120は、第1の具体例と同様に可変リミッタ122からなる。可変リミッタ122からは、電力指令値Prefに対して上限値PreflimH或いは下限値PreflimLによって制限された電力指令値Pref2が出力される。
【0076】
第2の具体例では、第1の具体例と同様に、電圧偏差算出器140はリミッタ142と減算器144とからなる。計測直流電圧Vdcfbkが充電リミッタ作動電圧値VdclimH以上であれば、充電リミッタ作動電圧値VdclimHと計測直流電圧Vdcfbkとの偏差Vdcerrが減算器144から出力される。計測直流電圧Vdcfbkが放電リミッタ作動電圧値VdclimL以下であれば、放電リミッタ作動電圧値VdclimLと計測直流電圧Vdcfbkとの偏差Vdcerrが減算器144から出力される。
【0077】
第2の具体例では、PI制御器150は放電制御用のPI制御器154と充電制御用のPI制御器156とからなる。PI制御器154とPI制御器156とは減算器144に並列に接続されている。
【0078】
放電制御用のPI制御器154は図3の下段に示される構成を有する。PI制御器154より出力される放電制限用のPI制御値G1は、前述の式(10)にしたがって計算される。システム下限電圧Vdcminを710Vとし、放電リミッタ作動電圧値VdclimLを720Vとすると、前述の放電時の例のように偏差Vdcerrが4Vであるならば、放電制限用のPI制御値G1は0.6となる。
【0079】
充電制御用のPI制御器156は図3の上段に示される構成を有する。PI制御器156より出力される充電制限用のPI制御値G2は、前述の式(9)にしたがって計算される。システム上限電圧Vdcmaxを1100Vとし、充電リミッタ作動電圧値VdclimHを1090Vとすると、前述の充電時の例のように偏差Vdcerrが-60Vであるならば、充電制限用のPI制御値G2は-5となる。
【0080】
第2の具体例では、リミッタ調整器160は、リミッタ172と乗算器174とからなる放電制限ゲイン調整回路と、リミッタ176と乗算器178とからなる充電制限ゲイン調整回路とで構成されている。放電制限ゲイン調整回路は、可変リミッタ122の上限値PreflimHを100%から0%の範囲内で調整する回路である。充電制限ゲイン調整回路は、可変リミッタ122の下限値PreflimLを-100%から0%の範囲内で調整する回路である。
【0081】
放電制限ゲイン調整回路を構成するリミッタ172は、PI制御器154で計算された放電制限用のPI制御値G1を1から0の範囲内に制限し、制限されたPI制御値GHを出力する。上位装置4からの指令が放電指令の場合、PI制御値G1は1以下の値をとる。PI制御値G2が0以上1以下であれば、リミッタ172は、PI制御値G1をそのまま制限されたPI制御値GHとして出力する。PI制御値G1が0より低ければ、リミッタ172は、制限されたPI制御値GHとして0を出力する。放電制限ゲイン演算回路を構成する乗算器174は、制限されたPI制御値GHを固定値である100%に乗算し、その積を放電制限ゲインとして出力する。放電制限ゲインは可変リミッタ122の上限値PreflimHとして設定される。
【0082】
前述の放電時の例のようにPI制御値G1が0.6の場合、制限されたPI制御値GHは0.6となり、上限値PreflimHは60%に設定される。その結果、放電を指令する電力指令値Prefは、可変リミッタ122において60%まで制限され、60%に制限された電力指令値Pref2が駆動信号生成器110に入力される。
【0083】
充電制限ゲイン演算回路を構成するリミッタ176は、PI制御器156で計算された充電制限用のPI制御値G2を1から0の範囲内に制限し、制限されたPI制御値GLを出力する。上位装置4からの指令が充電指令の場合、PI制御値G2は1以下の値をとる。PI制御値G2が0以上1以下であれば、リミッタ176は、PI制御値G2をそのまま制限されたPI制御値GLとして出力する。PI制御値G2が0より低ければ、リミッタ176は、制限されたPI制御値GLとして0を出力する。充電制限ゲイン演算回路を構成する乗算器178は、制限されたPI制御値GLを固定値である-100%に乗算し、その積を充電制限ゲインとして出力する。充電制限ゲインは可変リミッタ122の下限値PreflimLとして設定される。
【0084】
前述の充電時の例のようにPI制御値G1が-5の場合、制限されたPI制御値GLは0となり、下限値PreflimLは0%に設定される。その結果、充電を指令する電力指令値Prefは、可変リミッタ122において0%まで制限され、0%に制限された電力指令値Pref2が駆動信号生成器110に入力される。
【0085】
<第3の具体例>
図10は制御装置100の構成の第3の具体例を示す図である。第3の具体例では、指令値リミッタ120はゲイン乗算器124からなる。ゲイン乗算器124は電力指令値Prefに対してゲインを乗算する。正値の電力指令値Pref、すなわち、放電電力指令値に対しては、1から0までの範囲内の放電制限ゲインが乗算される。負値の電力指令値Pref、すなわち、充電電力指令値に対しては、1から0までの範囲内の充電制限ゲインが乗算される。ゲイン乗算器124からは、制限された電力指令値Pref2として放電制限ゲイン或いは充電制限ゲインが乗算された電力指令値Prefが出力される。
【0086】
第3の具体例では、第1の具体例及び第2の具体例と同様に、電圧偏差算出器140はリミッタ142と減算器144とからなる。計測直流電圧Vdcfbkが充電リミッタ作動電圧値VdclimH以上であれば、充電リミッタ作動電圧値VdclimHと計測直流電圧Vdcfbkとの偏差Vdcerrが減算器144から出力される。計測直流電圧Vdcfbkが放電リミッタ作動電圧値VdclimL以下であれば、放電リミッタ作動電圧値VdclimLと計測直流電圧Vdcfbkとの偏差Vdcerrが減算器144から出力される。
【0087】
第3の具体例では、第2の具体例と同様に、PI制御器150は放電制御用のPI制御器154と充電制限用のPI制御器156とからなる。放電制御用のPI制御器154は図3の下段に示される構成を有し、放電制限用のPI制御値G1を出力する。充電制御用のPI制御器156は図3の上段に示される構成を有し、充電制限用のPI制御値G2を出力する。
【0088】
第3の具体例では、リミッタ調整器160は、放電制限ゲイン設定用のリミッタ182と、充電制限ゲイン設定用のリミッタ184と、ゲイン切替器186と、切替判定器188とで構成されている。リミッタ調整器160は、ゲイン乗算器124において電力指令値Prefに乗算される放電制限ゲイン及び充電制限ゲインをそれぞれ1から0までの範囲内で調整する回路である。
【0089】
放電制限ゲイン設定用のリミッタ182は、PI制御器154で計算された放電制限用のPI制御値G1を1から0の範囲内に制限し、制限されたPI制御値を放電制限ゲインGHとして出力する。上位装置4からの指令が放電指令の場合、PI制御値G1は1以下の値をとる。PI制御値G1が0以上1以下であれば、リミッタ182は、PI制御値G1をそのまま放電制限ゲインGHとして出力する。PI制御値G1が0より低ければ、リミッタ182は、制限された放電制限ゲインGHとして0を出力する。
【0090】
充電制限ゲイン設定用のリミッタ184は、PI制御器156で計算された充電制限用のPI制御値G2を1から0の範囲内に制限し、制限されたPI制御値を充電制限ゲインGLとして出力する。上位装置4からの指令が充電指令の場合、PI制御値G2は1以下の値をとる。PI制御値G2が0以上1以下であれば、リミッタ184は、PI制御値G2をそのまま充電制限ゲインGLとして出力する。PI制御値G2が0より低ければ、リミッタ184は、制限された充電制限ゲインGLとして0を出力する。
【0091】
リミッタ182から出力される放電制限ゲインGHと、リミッタ184から出力される充電制限ゲインGLとは、ともにゲイン切替器186に入力される。ゲイン切替器186は、切替判定器188から入力されるトリガ信号によって、選択するゲインを放電制限ゲインGHと充電制限ゲインGLとの間で切り替える。ゲイン切替器186によって選択されたゲインはゲイン乗算器124に入力され、放電制限ゲイン或いは充電制限ゲインとして電力指令値Prefに乗算される。
【0092】
切替判定器188は、電力指令値Prefを基準値であるゼロと比較し、その比較結果に基づいたトリガ信号をゲイン切替器186に入力する。切替判定器188は、電力指令値Prefがゼロ以上になったことを受けて、リミッタ182から入力される放電制限ゲインGHが選択されるようにゲイン切替器186に対してトリガ信号を入力する。また、切替判定器188は、電力指令値Prefがゼロになったことを受けて、リミッタ184から入力される充電制限ゲインGLが選択されるようにゲイン切替器186に対してトリガ信号を入力する。
【0093】
放電時には、電力指令値Prefは正値であるため、ゲイン切替器186ではリミッタ182から入力される放電制限ゲインGHが選択される。これにより、放電制限ゲインGHがゲイン乗算器124に入力される。前述の放電時の例のようにPI制御器154で計算されたPI制御値G1が0.6の場合、放電制限ゲインGHは0.6となり、ゲイン乗算器124では電力指令値Prefに0.5が乗算される。その結果、電力指令値Prefに対する割合が0.6に制限された電力指令値Pref2が駆動信号生成器110に入力される。
【0094】
充電時には、電力指令値Prefは負値であるため、ゲイン切替器186ではリミッタ184から入力される充電制限ゲインGLが選択される。これにより、充電制限ゲインGLがゲイン乗算器124に入力される。前述の充電時の例のようにPI制御器156で計算されたPI制御値G2が-5の場合、充電制限ゲインGLはゼロとなり、ゲイン乗算器124では電力指令値Prefにゼロが乗算される。その結果、電力指令値Prefに対する割合がゼロに制限された電力指令値Pref2が駆動信号生成器110に入力される。
【0095】
4.効果
以上述べたように、本実施形態に係るPCS10によれば、第1乃至第3の具体例に示されるような簡易な構成で蓄電池6の過充電と過放電を防止することができる。また、従来のPCSからハードウェアを変更することなく、制御装置のソフトウェアのみの変更によって本実施形態に係るPCS10を実現することができる。
【0096】
本実施形態に係るPCS10によれば、計測直流電圧と充電リミッタ作動電圧との偏差に対するPI制御値に応じて指令値リミッタ120による充電電力の指令値に対する制限が強められる。これにより、電圧の変動に起因する指令値リミッタ120のチャタリングを抑えて可能な限り充電運転を継続することができる。また、本実施形態に係るPCS10によれば、計測直流電圧と放電リミッタ作動電圧との偏差に対するPI制御値に応じて指令値リミッタ120による放電電力の指令値に対する制限が強められる。これにより、電圧の変動に起因する指令値リミッタ120のチャタリングを抑えて可能な限り放電運転を継続することができる。
【符号の説明】
【0097】
2 電力変換システム
4 上位装置
6 蓄電池
10 パワーコンディショナ
20 インバータ回路
80 電圧計
100 制御装置
110 駆動信号生成器
120 指令値リミッタ
130 電圧制限範囲設定器
140 電圧偏差算出器
150 PI制御器
160 リミッタ調整器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10