(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/09 20060101AFI20250415BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20250415BHJP
H05K 3/40 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
H05K1/09 A
H05K1/09 C
H05K1/11 H
H05K3/40 E
(21)【出願番号】P 2024008072
(22)【出願日】2024-01-23
(62)【分割の表示】P 2020509993の分割
【原出願日】2019-03-22
【審査請求日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2018061148
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】古庄 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】千吉良 敦子
(72)【発明者】
【氏名】笹生 恵大
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 宏
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002672(WO,A1)
【文献】特開2011-222567(JP,A)
【文献】特開昭49-51131(JP,A)
【文献】特開平8-293654(JP,A)
【文献】特開2013-115423(JP,A)
【文献】特開2009-283739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/09
H05K 1/11
H05K 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の元素を含む基板、
前記基板に接し、第1の金属元素を含む拡散層、
前記拡散層と接し、第2の金属元素を含む第1の金属膜、および
前記第1の金属膜上に位置し、前記第1の金属膜と接する第2の金属膜を有し、
前記拡散層は、厚さが1nm以上10nm以下であり、
前記拡散層において、前記第1の元素、前記第1の金属元素、および前記第2の金属元素が共存
し、
前記基板は貫通孔を有し、
前記拡散層、前記第1の金属膜、および前記第2の金属膜は、前記基板の上面と下面、および前記貫通孔の側壁を連続的に覆う、配線基板。
【請求項2】
前記拡散層における前記第2の金属元素の濃度は、厚さ方向において前記基板に近づくにつれて減少し、
前記拡散層における前記第1の元素の濃度は、前記厚さ方向において前記第1の金属膜に近づくにつれて減少する、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記拡散層において、前記拡散層の厚さに対する前記第2の金属元素の濃度のプロットが前記厚さに対する前記第1の元素の濃度のプロットと交差する領域が存在する、請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記第1の元素はケイ素であり、
前記第2の金属元素は、銅、チタン、クロム、ニッケル、および金から選択される、請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第1の金属元素は、亜鉛、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、およびスズから選択される、請求項4に記載の配線基板。
【請求項6】
前記第1の金属元素は、前記拡散層において酸化物として存在する、請求項1に記載の配線基板。
【請求項7】
前記基板は、ガラス基板、石英基板、半導体基板、およびセラミック基板から選択される、請求項1に記載の配線基板。
【請求項8】
前記拡散層、前記第1の金属膜、および前記第2の金属膜上に位置し、前記貫通孔と重なる開口を有する絶縁層、および
前記開口に位置する第1の配線をさらに備える、請求項
1に記載の配線基板。
【請求項9】
前記第1の配線上に、前記第1の配線と電気的に接続される第2の配線をさらに備える、請求項
8に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板上に配線が形成された配線基板、配線基板の製造方法、および配線基板を含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、通常、基板とその上に設けられる配線を含む基本構造(以下、配線基板と記す)が用いられる。このような配線基板は、それ自体が半導体装置として機能するだけでなく、種々の電子部品を電気的に接続するための基板として、あるいは半導体装置を電子機器に実装するための基板(インターポーザ)としても広く応用されている。基板上に配線を設けるための様々な方法が開発されており、例えば特許文献1、2に開示された方法では、絶縁性の基板と配線の間に金属酸化物を含む膜を設け、これにより基板と配線間の密着性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016/533430号明細書
【文献】特表2016/533429号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の課題の一つは、配線基板とその製造方法を提供することである。例えば本開示の課題の一つは、基板と配線間の密着性が高い配線基板とその製造方法を提供することである。あるいは本開示の課題の一つは、この配線基板を有する半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態の一つは、配線基板である。この配線基板は、第1の元素を含む基板、基板に接し、第1の金属元素を含む拡散層、および拡散層に接し、第2の金属元素を含む第1の金属膜を有する。拡散層は、少なくとも第1の元素と第1の金属元素を含む領域と、第1の金属元素と第2の金属元素を含む領域を有する。
【0006】
本開示の実施形態の一つは、配線基板の製造方法である。この製造方法は、第1の金属元素の酸化物を含む第1の中間層を第1の元素を含む基板上に形成すること、第1の元素を第1の中間層へ拡散することによって第1の中間層を第2の中間層に変換すること、第2の金属元素を含む第1の金属膜を第2の中間層の上に形成すること、および第2の金属元素を第2の中間層に拡散することによって第2の中間層を拡散層へ変換することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の一つに係る配線基板の模式的断面図、および配線基板の厚さ方向の濃度プロフィールの模式図。
【
図2】実施形態の一つに係る配線基板の、厚さ方向における元素濃度プロフィールの模式図。
【
図3】実施形態の一つに係る配線基板の、厚さ方向における元素濃度プロフィールの模式図。
【
図4】実施形態の一つに係る配線基板の、厚さ方向における元素濃度プロフィールの模式図。
【
図5】実施形態の一つに係る配線基板の、厚さ方向における元素濃度プロフィールの模式図。
【
図6】実施形態の一つに係る配線基板の模式的断面図。
【
図7】実施形態の一つに係る配線基板の製造方法を示す模式的断面図。
【
図8】実施形態の一つに係る配線基板の製造方法を示す模式的断面図。
【
図9】実施形態の一つに係る配線基板の製造方法を示す模式的断面図。
【
図10】実施形態の一つに係る配線基板の製造方法を示す模式的断面図。
【
図11】実施形態の一つに係る配線基板を含む半導体装置の模式的断面図。
【
図12】実施形態の一つに係る配線基板を含む半導体装置の模式的断面図。
【
図13】実施形態の一つに係る配線基板を含む半導体装置の模式的断面図。
【
図14】実施形態の一つに係る配線基板のエネルギー分散型X線分析結果。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本開示は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0009】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省くことがある。
【0010】
本明細書および特許請求の範囲において、ある構造体の上、あるいは下に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」、あるいは「下」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上、あるいは直下に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方あるいは直下に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0011】
本明細書および請求項において、「ある構造体が他の構造体から露出するという」という表現は、ある構造体の一部が他の構造体によって覆われていない態様を意味し、この他の構造体によって覆われていない部分は、さらに別の構造体によって覆われる態様も含む。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態では、本開示の実施形態の一つに係る配線基板100について説明する。
【0013】
1.基本構造
配線基板100の断面模式図を
図1(A)に示す。配線基板100は、基板102、基板102上に位置し、基板102と接する拡散層106、拡散層106の上に位置し、拡散層106と接する第1の金属膜104を含む。配線基板100はさらに、第1の金属膜104の上に位置し、第1の金属膜104と接する第2の金属膜108を任意の構成として備えてもよい。
【0014】
基板102は第1の元素を含む。ここで第1の元素は、酸素以外の元素から選択され、基板102の主成分に含まれる元素である。本明細書と請求項では、ある構成の主成分とは、その構成の90重量%以上を占める成分である。基板102としては、ガラス基板、石英基板、ケイ素やゲルマニウム、ヒ化ガリウム、窒化ガリウムなどの半導体を含む半導体基板、アルミナやジルコニアなどのセラミックを含むセラミック基板、サファイア基板などの単結晶金属酸化物を含む基板などが例示される。ガラスを主成分とする基板の場合、樹脂が複合されていてもよい。上述した基板を用いる場合、第1の元素はケイ素、ゲルマニウム、アルミニウム、ジルコニウム、ヒ素、窒素などから選択される。
【0015】
上述した基板の中でも、ガラス基板は安価に入手でき、優れた絶縁性を示すことから、配線基板100を半導体装置のインターポーザとして利用する場合に好ましい。ガラス基板に含まれるガラスとしては、ソーダ石灰ガラスやフッ化物ガラス、リン酸ガラス、ホウ酸ガラスなどが挙げられる。
【0016】
基板102の表面の粗さに制約はなく、例えば0.1nm以上、1nm以上、5nm以上であってよい。基板102の表面の粗さは200nm以下、100nm以下、あるいは50nm以下でもよい。基板102の表面の粗さは0.1nm以上200nm以下、1nm以上100nm以下、5nm以上50nm以下でもよい。表面粗さは、例えば光干渉顕微鏡を用いて測定すればよい。基板102上に比較的厚さの小さい配線を設けると、その表面に基板102の表面粗さが反映されるが、基板102の表面粗さを上述した範囲に調整することにより、配線の表面粗さの増大も抑制される。このため、配線基板100を高周波回路基板に適用した場合、伝送損失を低減することができる。また、配線をフォトリソグラフィーによって加工する場合、露光機からの光の散乱を抑制することができ、配線の微細加工が妨げられることを防止することができる。
【0017】
ここで表面粗さは、以下の式で表されるパラメータである、算術平均粗さRaによって評価することができる。この式において、Lは評価対象である基板102上の測定長であり、f(x)は測定長方向をxとした時の高さである。Raは、測定長における高さの絶対値を測定長で平均したものである。
【数1】
【0018】
算術平均粗さRaの測定方法の一例は以下の通りである。まず、基板102上の任意の測定領域を複数選択する。測定領域の大きさは、例えば0.30mm×0.22mmの四角形とすればよい。例えば基板102上の四隅と中央の五か所を測定領域として選択すればよい。次に複数の領域のそれぞれにおいて任意の二点を設定する。この二点間の距離は0.1mmとし、これが測定長Lに相当する。この二点間の算術平均粗さRaを測定し、複数の測定領域で得られる算術平均粗さRaの平均を基板102の表面粗さとして採用する。例えば基板102上の四隅と中央の五か所を測定領域として選択した場合、五つの測定結果の平均が基板102の表面粗さとなる。なお、それぞれの測定領域で複数の測定を行い、その平均を一つの測定領域における算術平均粗さRaとして採用してもよい。算術平均粗さRaは、例えば白色干渉計を用いた3D光学プロファイラー(例えばZygo社製3D光学プロファイラーZygo New View5000など)を用いて測定することができる。
【0019】
第1の金属膜104は、0価の金属元素(第2の金属元素)を含み、配線基板100の配線として、あるいは第2の金属膜108もしくは配線基板100上に設けられる種々の配線(図示しない)を電解めっき法で形成するためのシード層として機能することができる。第2の金属元素としては、銅、チタン、クロム、ニッケル、金などが挙げられる。第1の金属膜104の厚さに制約は無く、例えば0.5μm以上、1μm以上、あるいは5μm以上であり、50μm以下、30μm以下、あるいは20μm以下とすることができる。第1の金属膜104の厚さは0.5μm以上50μm以下、1μm以上30μm以下、あるいは5μm以上20μm以下でもよい。第1の金属膜104の厚さをこの範囲に設定することで、配線として十分な導電性を確保することが可能である。また、例えば第1の金属膜104をめっき法で形成する場合でも短時間で形成することができ、フォトリソグラフィーで第1の金属膜104を形成した場合でも、微細加工を容易に行うことができる。
【0020】
拡散層106は、第1の金属膜104を基板102に強固に接着する機能を有し、したがって、密着層とも呼ばれる。拡散層106は、第1の金属膜104と基板102の間に設けられる中間層の相互拡散により生成されるものである。中間層は第1の金属元素を含む。例えば、中間層は第1の金属の酸化物、あるいは窒化物を含み、第1の金属としては、亜鉛、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、スズなどが挙げられる。中間層の第1の金属を含む領域を拡散層106とする。拡散層106の厚さは1nm以上であればよい。これにより、拡散層106が基板102の表面粗さに追従することができ、第1の金属膜104と基板102との高い密着性を確保できるのみならず、第1の金属膜104と同時に微細加工を施すことができる。拡散層106の厚さは1μm以下、100nm以下、20nm以下、あるいは10nm以下であってもよい。拡散層106の厚さは1nm以上1μm以下、1nm以上100nm以下、1nm以上20nm以下、あるいは1nm以上10nm以下であってもよい。これにより、拡散層106を短時間で形成することができるとともに、エッチングなどの加工時にエッチング残渣が基板102上に残存することなく、近接する配線間を確実に絶縁することができる。例えば基板102の算術平均粗さRaが5nmの場合、拡散層106の厚さを10nm以上20nm以下の範囲で設定すればよい。
【0021】
2.拡散層の組成
拡散層106にはさらに、第1の金属元素に加え、基板102に含まれる第1の元素、および第1の金属膜104に含まれる第2の金属元素が含まれる。より具体的には、拡散層106は、第1の元素、第1の金属元素、および第2の金属元素が共存する領域、第1の金属元素と第1の元素が共存する領域、および第1の金属元素と第2の金属元素が共存する領域の少なくとも一つを含む。例えば拡散層106は、第1の金属元素と第1の元素を含む領域と、第1の金属元素と第2の金属元素を含む領域を有してもよい。
【0022】
したがって拡散層106の厚さは中間層の厚さとは必ずしも一致せず、上記三つの領域のうち少なくとも一つが存在する部分の厚さとして定義することができる。この場合の厚さの測定は、エネルギー分散型X線(EDX)分析により行うことができる。具体的には、基板102上に少なくとも拡散層106と第1の金属膜104が配置された試料を集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)を用いて加工して断面を露出し、各層間の界面を走査するように基板102側から電子線を照射し、Siドリフト検出器などを用いて特性X線を検出する。特性X線の強度に基づいて各元素の原子組成分率(atomic%)を得る。これにより、深さ方向の元素分布が得られ、上記領域が特定される。これらの領域の少なくとも一つが存在する部分の厚さを算出することで拡散層106の厚さとすることができる。
【0023】
図1(B)に、第1の元素、第1の金属元素、第2の金属元素の配線基板100の厚さ方向における濃度プロフィールを模式的に示す。以下
図1(B)から
図5(B)では、縦軸は、規格化された元素濃度(すなわち、単位体積当たりの第1の元素、第1の金属元素、第2の金属元素の原子の数)であり、横軸は配線基板100の深さである。深さとは、第1の金属膜104の上面の法線に沿った、基板102へ向かう方向における第1の金属膜104の上面からの距離である。
【0024】
図1(B)に示すように、第1の元素の濃度102aは、厚さ方向において基板102と拡散層106の界面103から第1の金属膜104に近づくにつれて低下する。同様に、第2の金属元素の濃度104aは、厚さ方向において拡散層106と第1の金属膜104との界面105から基板102に近づくにつれて減少する。これらの濃度変化は連続的でもよい。ここで界面103とは、第1の金属元素が存在しない、あるいは実質的に検出できない領域と、第1の金属元素が存在する、あるいは検出可能な領域との間に位置し、かつ、第1の金属膜104よりも基板102に近い面である。界面105とは第1の金属元素が存在しない、あるいは実質的に検出できない領域と、第1の金属元素が存在する、あるいは検出可能な領域との間に位置し、かつ、基板102よりも第1の金属膜104に近い面である(
図1(B)参照)。これらの界面103、105の間が拡散層106であり、拡散層106では、第1の金属元素の濃度106aの深さに対するプロットは、少なくとも一つのピークを与える(
図1(B))。
【0025】
したがって拡散層106では、配線基板100の深さに対する第2の金属元素の濃度104aのプロット(
図1(B)中の一点鎖線)は、深さに対する第1の元素のプロット(
図1(B)中の破線)と交差する。なお、第1の元素の濃度102a、第1の金属元素の濃度106a、および第2の金属元素の濃度104aは、例えばEDX分析などによって測定することができる。
【0026】
図1(B)に示した例では、第2の金属元素の濃度104aは、拡散層106内で基板102に近づくにつれて減少し、界面103において実質的に検出できなくなる。同様に、第1の元素の濃度102aは、拡散層106内で第1の金属膜104に近づくにつれて減少し、界面105において実質的に検出できなくなる。換言すると、拡散層106の全体にわたって第1の元素、第1の金属元素、および第2の金属元素が共存する。
【0027】
拡散層106における第1の元素と第2の金属元素の濃度プロフィールは
図1(B)に示したものに限られない。例えば
図2(A)に示すように、拡散層106は、第1の元素が存在しない、あるいは実質的に検出できない領域106bを界面105側に有してもよい。あるいは
図2(B)に示すように、拡散層106は、第2の金属元素が存在しない、あるいは実質的に検出できない領域106cを界面103側に有してもよい。
【0028】
あるいは
図3(A)に示すように、第2の金属元素は、拡散層106だけでなく基板102に含まれてもよい。この場合、基板102内の第2の金属元素の濃度104aは、界面103から遠ざかるにつれて減少する。逆に、第1の元素が拡散層106だけでなく第1の金属膜104に含まれてもよい(
図3(B))。この場合、第1の金属膜104内の第1の元素の濃度102aは、界面105から遠ざかるにつれて減少する。
【0029】
拡散層106は、上述した濃度プロフィールが組み合わされるように構成してもよい。例えば
図4(A)に示すように、拡散層106は、領域106bと領域106cの両者をそれぞれ界面105側、103側に有してもよい。この場合、拡散層106において第1の元素、第1の金属元素、および第2の金属元素が共存する領域が領域106b、106cに挟まれる。
【0030】
あるいは
図4(B)に示すように、拡散層106が領域106cを有するとともに、第1の元素が拡散層106だけでなく第1の金属膜104に含まれてもよい。逆に、
図5(A)に示すように、拡散層106が領域106bを有するとともに、第2の金属元素が拡散層106だけでなく基板102に含まれてもよい。あるいは
図5(B)に示すように、第1の元素が拡散層106だけでなく第1の金属膜104に含まれ、かつ、第2の金属元素が拡散層106だけでなく基板102に含まれてもよい。
【0031】
いずれの濃度プロフィールを有する場合でも、拡散層106では、配線基板100の深さに対する第2の金属元素の濃度104aのプロットは、深さに対する第1の元素の濃度のプロットと交差する。したがって、拡散層106のいずれの領域でも第1の金属元素に加え、第1の元素と第2の金属元素の少なくとも一方が含まれ、第1の金属元素は含まれるものの第1の元素と第2の金属元素の両者がともに含まれない領域は存在しない。
【0032】
3.変形例
図6(A)に示すように、配線基板100の基板102は貫通孔110を有していてもよい。この場合、拡散層106と第1の金属膜104は、基板102の上面と下面、および貫通孔110の側壁を覆うように設けられる。任意の構成として設けられる第2の金属膜108も基板102の上面と下面、および貫通孔110の側壁を覆うように配置してもよい。貫通孔110の全体を第1の金属膜104、あるいは第2の金属膜108で塞がない場合、貫通孔110を埋めるように充填材112を形成してもよい。充填材112としては、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどの有機化合物が挙げられる。有機化合物には酸化ケイ素などの無機材料が混合されていてもよい。あるいは
図6(B)に示すように、貫通孔110を塞ぐように第2の金属膜108、あるいは第1の金属膜104を設けてもよい。後述するように、第1の金属膜104、あるいは第1の金属膜104と第2の金属膜108の積層は、基板102に搭載される種々の素子や半導体装置を電気的に接続するための貫通配線として機能することができる。
【0033】
上述した構成を有する配線基板100では、実施例において実験的に証明されるように、拡散層106の存在に起因して基板102と第1の金属膜104との間に大きな接着力が得られる。また、拡散層106には第1の元素の酸化物が単独で存在する領域が実質的に存在しないため、拡散層106は、実質的に第1の元素の酸化物のみからなる領域を有する膜と比較して高いエッチング耐性を有する。このため、拡散層106は第1の金属膜104と同程度のエッチング速度を示し、第1の金属膜104のエッチング時、第1の金属膜104の下に位置する拡散層106のエッチング(サイドエッチング)が生じにくい。特に拡散層106が第1の元素、第1の金属元素、および第2の金属元素が共存する領域を有する場合、中間層が単独で存在することが無いため、このようなサイドエッチングが防止され、高い接着力を発現することができる。その結果、第1の金属膜104が基板102から剥離する現象を効果的に抑制することができ、信頼性の高い配線基板、およびそれを含む半導体装置を提供することができる。
【0034】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態で述べた配線基板100の製造方法について述べる。第1実施形態で述べた構成と同様、あるいは類似する構成については説明を割愛することがある。
【0035】
まず、拡散層106の前駆体となる第1の中間層120を基板102-1上に形成する(
図7、S1)。第1の中間層120は、第1の元素の酸化物を含み、スパッタリング法、電子線蒸着や真空蒸着などの物理的気相成長(PVP)法、あるいはゾル-ゲル法などによって形成される。ゾル-ゲル法を用いる場合には、テトラエチル亜鉛やテトラエトキシチタン、テトラエトキシジルコニウムなどの金属アルコキシドを原料として用い、これを含む溶液、あるいは混合液をスピンコート法やディップコーティング法、印刷法などによって基板102-1上に塗布し、その後、金属アルコキシドを加水分解することによって第1の中間層120が形成される。第1の中間層120の厚さは5nm以上であればよく、20nm、あるいは15nm以下とすればよい。第1の中間層120の厚さは5nm以上20nm以下、あるいは5nm以上15nm以下でもよい。
【0036】
中間層の厚さは、薄膜検量線法で測定することができる。具体的には、まず、既知の厚さを有し、中間層120に含まれる金属を含む金属薄膜を標準サンプルとして用い、これにX線を照射して得られる蛍光X線強度を測定する。厚さの異なるサンプルを複数用い、厚さと蛍光X線強度の関係を示す検量線を作製する。次に基板102上に形成される中間層120に対して同様の測定を行い、得られる蛍光X線強度から検量線を用いて厚さを見積もる。この測定においても、中間層120の複数の領域で測定を行い、それぞれの領域で得られる厚さを平均することで得られる値と中間層120の厚さとして採用することができる。複数の領域としては、例えば基板102の四隅と中央の五つの領域を選択することができる。
【0037】
測定装置の一例としては、半導体検出器と比例計数管の両者を検出器として搭載し、0.1mm径のコリメータが搭載されたセイコーインスツル製蛍光X線分析装置SFT9450が挙げられる。本装置を用い、管電流1500μA、測定時間30秒の条件下、上述した方法に従って中間層120の厚さを測定される。
【0038】
その後、基板102-1、およびその上に形成された第1の中間層120に対して加熱処理を行い、基板102-1に含まれる第1の元素を第1の中間層120へ拡散させる。加熱処理は、例えば100℃以上、200℃以上、250℃以上、あるいは350℃以上であり、700℃以下、600℃以下、あるいは550℃以下の温度範囲から設定される温度で行えばよい。この温度範囲は、100℃以上700℃以下、200℃以上700℃以下、250℃以上600℃以下、あるいは350℃以上550℃以下でもよい。加熱温度にも依存するが、加熱時間は、例えば10分以上、15分以上、あるいは30分以上でよく、5時間以下、あるいは2時間以下でよい。典型的な加熱時間は1時間である。加熱時間は、10分以上5時間以下、15分以上5時間以下、あるいは30分以上2時間以下でもよい。基板102の耐熱温度(ガラス転移温度、あるいは融点)よりも高い温度で加熱する場合には、1秒から30秒程度の短時間で加熱処理を行うことが好ましい。この加熱処理により、第1の中間層120は、第1の金属元素と第1の元素を含む第2の中間層122へ変換される(
図7、S2)。第1の金属元素の少なくとも一部は酸化物として存在する。基板102-1と第1の中間層120はそれぞれ相互拡散により、基板102-2と第2中間層122に変換される。
【0039】
引き続き、金属膜104-1を第2の中間層122上に形成する。第2の中間層122は、例えば無電解めっき法、スパッタリング法、有機金属気相成長(MOCVD)法を含む化学気相成長(CVD)法、真空蒸着や電子線蒸着などのPVD法などによって形成すればよい。この時の温度は、室温(20℃以上25℃以下)または室温以上であり、100℃以下または50℃以下の温度で行うことができる(
図7、S3)。金属膜104-1形成時の温度は、室温以上100℃以下、あるいは室温以上50℃以下でもよい。
【0040】
この後、再度加熱処理を行い、金属膜104-1に含まれる第1の金属を第2の中間層122へ拡散させる。加熱処理の温度や時間は、上述した範囲から適宜選択することができる。この時、基板102に含まれる第1の元素がさらに第2の中間層122へ拡散してもよい。この加熱処理により、第2の中間層122は、第1実施形態で述べた濃度プロフィールを有する拡散層106へ変換される(
図7、S4)。また、第2の中間層122と相互拡散を行った後の金属膜104-1を第1の金属膜104とする。図示しないが、第1の金属膜104上に第2の金属膜108を形成してもよい。第2の金属膜108は、スパッタリング法やCVD法、PVD法などによって形成することができる。あるいは第1の金属膜104をシード層として用い、第1の金属膜104に給電することによって第2の金属膜108を形成してもよい。
【0041】
貫通孔110を有する配線基板100を製造する場合には、まず、基板102に貫通孔110を設ける(
図8、S10)。貫通孔110はプラズマエッチングやウェットエッチングなどのエッチング、レーザ照射、あるいはサンドブラストや超音波ドリルなどの機械的な加工によって形成すればよい。必要に応じ、貫通孔110を形成した後に基板102をフッ酸で処理し、基板102の上面や下面、貫通孔110の側壁の平坦化を行ってもよい。
【0042】
貫通孔110を形成した後、第1の中間層120を基板102の上面、下面、および貫通孔110の側壁を覆うように形成する(
図8、S11)。その後、上述した加熱処理によって第1の中間層120を第2の中間層122へ変換し(
図8、S12)、第2の中間層122上に金属膜104-1を形成する(
図8、S13)。この後、上述した加熱処理を行って第2の中間層122を拡散層106へ変換する(
図9、S14)。
【0043】
この後、基板102の上面と下面の一部に第2の金属膜108を形成する。例えば
図9のS15に示すように、第2の金属膜108を設けない領域を覆うようにレジストマスク124を第1の金属膜104上に設ける。レジストマスク124は液体のレジストを塗布、硬化することで形成しても良いが、基板102が貫通孔110を有しているため、フィルム状のレジストを基板102の上面と下面に貼り付け、その後露光と現像を行うことでレジストマスク124を効率よく形成することができる。
【0044】
この後、第1の金属膜104に対して給電を行って電解めっきを行う。これにより、レジストマスク124から露出した第1の金属膜104上に第2の金属膜108が形成される(
図9、S16)。この後、レジストマスク124を除去し(
図10、S17)、エッチングによって第2の金属膜108から露出した第1の金属膜104と拡散層106を除去する(
図10、S18)。エッチングは、硫酸などの酸を含むエッチャントを使用して行うことができる。以上のプロセスにより、貫通孔110を有する配線基板100を製造することができる。詳細な説明は割愛するが、貫通孔110は、第1の金属膜104を形成した後、あるいは第2の金属膜108を形成した後に形成してもよい。
【0045】
上述したように、本開示の拡散層106は第1の金属膜104と同程度のエッチング速度を示すため、第1の金属膜104のエッチングプロセス(S18)においても拡散層106のサイドエッチングが起こらない、あるいは非常に遅い。したがって、拡散層106を介し、第1の金属膜104と基板102間に十分な接触面積を提供することができる。その結果、第1の金属膜104や第2の金属膜108の剥離を効果的に防ぐことができる。
【0046】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1、第2実施形態で述べた配線基板100を利用した半導体装置について説明する。ここでは、
図10のステップS18で得られる配線基板100を利用した半導体装置を代表的な例として説明する。
【0047】
図11に示す半導体装置130は、メイン基板132と、その上に積層された複数の配線基板100(配線基板100-1、100-2、100-3)を有する。配線基板100の数に制限はなく、半導体装置130に要求される性能に従って決定される。メイン基板132には種々の半導体チップ(メモリ装置、中央演算ユニット)や半導体素子(微小電気機械システム(MEMS)など)が接続される。
図11には中央演算ユニット133をメイン基板132に設置した例を示す。第1実施形態で述べたように、配線基板100は貫通配線として機能し、基板102の上面と下面に設けられる第2の金属膜108と第1の金属膜104(以下、これらを合わせて接続配線134と記す)を有し、接続配線134は半導体装置130における上下方向の電気的接続に寄与する。最下層の配線基板100-1の接続配線134は、層間絶縁層142、142の間に配置されたビアホールまたは配線を通してバンプ136-1を介してメイン基板132上に設けられる端子138と電気的に接続される。配線基板100-1の上部に設けられる接続配線134は、層間絶縁層139、140の間に設置されたビアホールまたは配線を通してバンプ136-2を介して配線基板100-2に電気的に接続される。同様に、配線基板100-2と配線基板100-3もバンプ136-3を介して電気的に接続される。バンプ136には、インジウム、銅、金などの金属、あるいははんだなどの合金が含まれる。
【0048】
図12に示す半導体装置150のように、積層される配線基板100は互いにサイズや形状が異なっていてもよく、メイン基板132上で積層される配線基板100の数も異なっていてもよい。
図12に示した例では、一部の領域では二つの配線基板100-4、100-5が積層され、一部の領域では三つの配線基板100-1、100-2、100-3が積層されている。
【0049】
図13に示す半導体装置160は、複数の半導体チップ162-1、162-2が配線基板100を介してメイン基板132上に積層された構造を有する。半導体チップ162-1、162-2にはそれぞれ端子164、166が形成され、これらがバンプ168を介して配線基板100-1の接続配線134と電気的に接続される。半導体チップの例としては、半導体チップ162-1は駆動チップ、半導体チップ162-2はメモリーチップ等が挙げられる。これにより、半導体チップ162-1、162-2が互いに電気的に接続される。また、ワイヤ配線170により、半導体チップ162-2とメイン基板132を電気的に接続してもよい。
図11から
図13では、接続配線134が直接バンプ136、168と接続されるように示されているが、バンプ136、168と接続配線134の間にリード配線などの他の配線が設けられてもよい。
【実施例】
【0050】
1.実施例1
本実施例では、第2実施形態で述べた製造方法に従って作製された配線基板100に含まれる元素を分析した結果について述べる。
【0051】
配線基板100の構造は
図1(A)に示すとおりであり、具体的な作製方法は以下の通りであった。酸化亜鉛を含む膜をゾル-ゲル法によってガラス基板(30cm×40cm、厚さ0.5mm、表面粗さ5nm)上に形成することによって第1の中間層120(厚さ15nm)を形成した。その後、550℃で1時間加熱を行い、第1の中間層120を第2の中間層122へ変換した。引き続き、無電解めっき法を適用して銅の膜(厚さ0.5μm)を第1の金属膜104として第2の中間層122上に形成した。その後、再度450℃で1時間加熱を行い、第2の中間層122を拡散層106へ変換した。
【0052】
なお、比較例として、表面粗さが5nm、200nm、および1μm(1000nm)の三つの基板を用い、第1の中間層120を形成せずに第1の金属膜104を基板上に直接形成した試料も作製した。これらの試料はそれぞれ、後述する表1の試料8から10に相当し、拡散層106を持たない試料である。
【0053】
元素分析は、加熱を行った後の配線基板100をFIBを用いて加工することによって断面を露出させ、各層間の界面を走査するように、基板102側からEDXによって元素分析を行った。得られる特性X線強度を原子組成分率に変換し、深さ方向の元素分布を評価した。測定装置としては、元素分析装置を搭載した透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、型番:HD-2700)を用い、加速電圧200kVでビーム径約0.2nmの電子線を配線基板100に照射し、発生した特性X線をSiドリフト検出器を用いて検出した。元素分析装置としては堀場製作所製EMAX Evolutionを用いた。エネルギー分解能は約130eV、X線取出角は24.8°、立体角は2.2srであった。取り込み点数は100点とし、各取り込み時間は1秒とした。
【0054】
EDX分析結果を
図14に示す。
図14では、配線基板100の深さに対する亜鉛、ケイ素、および銅の濃度変化が示されている。
図14に示すように、深さが0nmから35nmの領域と50nmより深い領域では亜鉛が実質的に検出できない。したがって、基板102と拡散層106の界面103、および拡散層106と第1の金属膜104の界面105はそれぞれ35nm、50nmの深さに位置することが分かる。拡散層106に含まれる亜鉛の濃度のプロットは、拡散層106において一つのピークを示すことが確認された。
【0055】
図14から、基板102に含まれる第1の元素であるケイ素は、界面103から第1の金属膜104に近づくにつれてその濃度が減少することが分かる。同様に、第1の金属膜104に含まれる銅の濃度も界面105から基板102に近づくにつれて減少することが理解される。以上のことから、拡散層106には第1の金属元素である亜鉛が含まれ、かつ、第1の元素であるケイ素と第2の金属元素である銅が含まれることが確認された。また、拡散層106において、深さに対するケイ素と銅の濃度プロットは互いに交差する。このことから、拡散層106は、いずれの領域においても、第1の金属元素に加え、少なくとも第1の元素と第2の金属元素の一方が含まれることが分かった。
【0056】
2.実施例2
本実施例では、基板102と第1の金属膜104との間の接着力に対する拡散層106の効果を評価した結果を示す。
【0057】
実施例1で作製した配線基板100の第1の金属膜104に対して給電を行い、電解めっき法により銅の膜(厚さ3μm)を第2の金属膜108として形成した。本実施例では、第1の中間層120の厚さは15nmとし、第2の金属膜108を形成した後の加熱温度を変化させ、拡散層106の効果を評価した。また、試料8から10、すなわち拡散層106を設けない配線基板も比較例として評価した。
【0058】
第1の金属膜104と基板102間の接着性に対する拡散層106の効果は、テープピール試験、およびエッチング試験により評価した。前者は、ポリイミドを基材とする接着テープ(日東電工社製、型番:耐熱絶縁用ポリイミド粘着テープNo.360UL)を第2の金属膜108に貼り付けた後に粘着テープをはがし、粘着テープを目視で観察することで評価した。後者は、配線基板100に対してエッチングを行い、エッチング中に第1の金属膜104や第2の金属膜108の剥離の有無を目視で確認することによって行った。エッチングは、エッチャントとして1%過硫酸アンモニウムを用い、23℃、1minの条件で行った。
【0059】
結果を表1に示す。表1に示すように、本開示で示した構造を有する拡散層106を用いる場合、第2の金属膜108形成後の加熱温度が250℃以上であれば(試料番号3から7)、テープピール試験において剥離が観測されず、第1の金属膜104、および第2の金属膜108が基板102上に残存することが分かった。また、加熱温度が350℃以上であれば(試料番号4から7)テープピール試験とエッチング試験のいずれにおいても剥離は観測されなかった。一方、拡散層106を用いない比較例(試料番号8)、すなわち、第1の中間層120を基板102上に形成しない場合では、第2の金属膜108形成後の加熱温度が450℃であってもテープピール試験において剥離が観察された。これらの結果は、本開示の拡散層106を設けない場合には第1の金属膜104と基板102との接着性が小さく、第1の金属膜104や第2の金属膜108が容易に基板102から剥離するのに対し、本開示の拡散層106を設けることで、基板102上に強固な接着力で金属配線を形成できることを明確に表している。
【0060】
ここで、基板の表面粗さが増大するとアンカー効果が発現するため、通常、その上に形成される金属膜との密着性が向上する。しかしながら基板102の表面粗さが200nmであってもテープピール試験において剥離が観察され(試料9)、拡散層106を設けない場合には、表面粗さ1000nmという粗い表面が必要であることが試料10の結果から確認された。しかしながら1000nmもの厚い拡散層106を設ける場合、上述したように微細加工が困難となり、例えばライン-スペース(L/S)が10μm/10μmの配線を形成するには著しく不利となる。したがって、本開示の拡散層106を用いることにより、アンカー効果が期待されない程度の表面粗さを有する基板、すなわち、表面の平坦性が極めて高い基板上に微細加工が施された配線を形成することが可能となる。これは、例えば配線の高い平坦性が要求される高周波回路基板などの配線基板の製造に寄与するものである。
【0061】
【0062】
本開示の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本開示の要旨を備えている限り、本開示の範囲に含まれる。
【0063】
また、上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0064】
100:配線基板、100-1:配線基板、100-2:配線基板、100-3:配線基板、100-4:配線基板、100-5:配線基板、102:基板、102-1:基板、102-2:基板、102a:第1の元素の濃度、103:界面、104:第1の金属膜、104-1:金属膜、104a:第2の金属元素の濃度、105:界面、106:拡散層、106a:第1の金属元素の濃度、106b:領域、106c:領域、108:第2の金属膜、110:貫通孔、112:充填材、120:第1の中間層、122:第2の中間層、124:レジストマスク、130:半導体装置、132:メイン基板、133:中央演算ユニット、134:接続配線、136:バンプ、136-1:バンプ、136-2:バンプ、136-3:バンプ、138:端子、140:層間絶縁層、141:層間絶縁層、150:半導体装置、160:半導体装置、162-1:半導体チップ、162-2:半導体チップ、164:端子、166:端子、168:バンプ、170:ワイヤ配線