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特許7666736プリント配線板用基板及びプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】プリント配線板用基板及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20250415BHJP
   H05K 3/24 20060101ALI20250415BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20250415BHJP
   H05K 3/42 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
H05K3/18 B
H05K3/24 C
H05K1/11 H
H05K3/42 610A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024511830
(86)(22)【出願日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2023010643
(87)【国際公開番号】W WO2023189744
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2022053407
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】部谷 拓斗
(72)【発明者】
【氏名】御影 勝成
(72)【発明者】
【氏名】今北 健太
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-307245(JP,A)
【文献】特開平03-201592(JP,A)
【文献】特開2016-058545(JP,A)
【文献】特開2003-158364(JP,A)
【文献】特開2017-098422(JP,A)
【文献】特開2019-197851(JP,A)
【文献】特開2004-095972(JP,A)
【文献】特開2018-093141(JP,A)
【文献】特開2010-183046(JP,A)
【文献】特開2016-025329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00- 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び第2主面を有するベースフィルムと、
前記第1主面上に配置されている第1導電層と、
前記第2主面上に配置されている第2導電層と、
第1無電解銅めっき層と、
第2無電解銅めっき層と、
第3無電解銅めっき層とを備え、
前記ベースフィルムには、前記ベースフィルムを厚さ方向に沿って貫通している貫通穴が形成されており、
全ての前記第1導電層の上には、前記第1無電解銅めっき層が配置されており、
全ての前記第2導電層の上には、前記第2無電解銅めっき層が配置されており、
前記第3無電解銅めっき層は、前記貫通穴の内壁面上に配置されており、
前記第1主面及び前記第2主面における前記ベースフィルム中のパラジウム量は、前記内壁面における前記ベースフィルム中のパラジウム量よりも少な
前記第1導電層及び前記第2導電層は、焼結された複数の銅粒子を含む層である、プリント配線板用基板。
【請求項2】
前記第1主面及び前記第2主面における前記ベースフィルム中のパラジウム量は、0.02原子パーセント以下であり、
前記内壁面における前記ベースフィルム中のパラジウム量は、0.06原子パーセント以上である、請求項1に記載のプリント配線板用基板。
【請求項3】
前記第1主面及び前記第2主面における前記ベースフィルム中のパラジウム量は、0.008原子パーセント以下であり、
前記内壁面における前記ベースフィルム中のパラジウム量は、0.07原子パーセント以上である、請求項1に記載のプリント配線板用基板。
【請求項4】
前記第1導電層中及び前記第2導電層中のパラジウム量は、0.08原子パーセント以下である、請求項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項5】
前記第1無電解銅めっき層中及び前記第2無電解銅めっき層中のパラジウム量は、0.07原子パーセント以下である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項6】
前記第1主面及び前記第2主面における前記ベースフィルム中のニッケル量は前記内壁面における前記ベースフィルム中のニッケル量よりも少ない、請求項1に記載のプリント配線板用基板。
【請求項7】
第1主面及び第2主面を有するベースフィルムと、
前記第1主面上に配置されている第1導電層と、前記第1導電層上に配置されている第1無電解銅めっき層と、前記第1無電解銅めっき層上に配置されている第1電解銅めっき層とを有する第1配線と、
前記第2主面上に配置されている第2導電層と、前記第2導電層上に配置されている第2無電解銅めっき層と、前記第2無電解銅めっき層上に配置されている第2電解銅めっき
層とを有する第2配線と、
第3無電解銅めっき層と、
第3電解銅めっき層とを備え、
前記ベースフィルムには、前記ベースフィルムを厚さ方向に沿って貫通している貫通穴が形成されており、
全ての前記第1導電層の上には、前記第1無電解銅めっき層が配置されており、
全ての前記第2導電層の上には、前記第2無電解銅めっき層が配置されており、
前記第3無電解銅めっき層は、前記貫通穴の内壁面上に配置されており、
前記第3電解銅めっき層は、前記第3無電解銅めっき層上に配置されており、
前記第1配線は、前記第3無電解銅めっき層及び前記第3電解銅めっき層により前記第2配線に電気的に接続されており、
前記第1主面及び前記第2主面における前記ベースフィルム中のパラジウム量は、前記内壁面における前記ベースフィルム中のパラジウム量よりも少なく、
前記第1導電層及び前記第2導電層は、焼結された複数の銅粒子を含む層である、プリント配線板。
【請求項8】
間隔を空けて隣り合う2つの前記第1配線の部分の間の距離及び間隔を空けて隣り合う2つの前記第2配線の部分の間の距離は、20μm以下である、請求項に記載のプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリント配線板用基板及びプリント配線板に関する。本出願は、2022年3月29日に出願した日本特許出願である特願2022-053407号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
例えば国際公開第2019/208077号(特許文献1)には、プリント配線板用基板が記載されている。特許文献1に記載のプリント配線板用基板は、ベースフィルムと、第1焼結体層と、第2焼結体層と、第1無電解銅めっき層と、第2無電解銅めっき層とを有している。
【0003】
ベースフィルムは、第1主面と、第2主面とを有している。第1焼結体層及び第2焼結体層は、それぞれ、第1主面上及び第2主面上に配置されている。第1焼結体層及び第2焼結体層は、複数の銅粒子を焼結することにより形成されている。第1無電解銅めっき層及び第2無電解銅めっき層は、それぞれ、第1焼結体層上及び第2焼結体層上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/208077号
【発明の概要】
【0005】
本開示のプリント配線板用基板は、第1主面及び第2主面を有するベースフィルムと、第1主面上に配置されている第1導電層と、第2主面上に配置されている第2導電層と、第1導電層上に配置されている第1無電解銅めっき層と、第2導電層上に配置されている第2無電解銅めっき層と、第3無電解銅めっき層とを備えている。ベースフィルムには、ベースフィルムを厚さ方向に沿って貫通している貫通穴が形成されている。第3無電解銅めっき層は、貫通穴の内壁面上に配置されている。第1主面及び第2主面におけるベースフィルム中のパラジウム量は、内壁面におけるベースフィルム中のパラジウム量よりも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、プリント配線板用基板100の断面図である。
図2図2は、プリント配線板用基板100の製造工程図である。
図3図3は、準備工程S1を説明する断面図である。
図4図4は、導電層形成工程S2を説明する断面図である。
図5図5は、貫通穴形成工程S3を説明する断面図である。
図6図6は、触媒付与工程S4を説明する断面図である。
図7図7は、フィルム剥離工程S5を説明する断面図である。
図8図8は、無電解めっき工程S6に用いられるめっき装置300の概略構成図である。
図9図9は、第1工程S61を説明する断面図である。
図10図10は、第2工程S62を説明する断面図である。
図11図11は、プリント配線板200の断面図である。
図12図12は、プリント配線板200の製造工程図である。
図13図13は、レジストパターン形成工程S7を説明する断面図である。
図14図14は、電解めっき工程S8を説明する断面図である。
図15図15は、レジストパターン除去工程S9を説明する断面図である。
図16図16は、第1評価用TEGの平面図である。
図17図17は、第2評価用TEGの平面図である。
図18図18は、図17中のXVIII-XVIIIにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
しかしながら、特許文献1に記載のプリント配線板用基板を用いて第1主面上に第1配線を有するとともに第2主面上に第2配線を有するプリント配線板を形成しようとする場合、第1配線と第2配線との間の導通信頼性を確保しつつ第1配線及び第2配線をファインピッチ化することができない。
【0008】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、一方主面上に形成される配線と他方主面上に形成される配線との間の導通信頼性を確保しつつ、配線のファインピッチ化が可能なプリント配線板用基板を提供するものである。
【0009】
[本開示の効果]
本開示のプリント配線板用基板によると、一方主面上に形成される配線と他方主面上に形成される配線との間の導通信頼性を確保しつつ配線のファインピッチ化が可能である。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
まず、本開示の実施形態を列記して説明する。
【0011】
(1)実施形態に係るプリント配線板用基板は、第1主面及び第2主面を有するベースフィルムと、第1主面上に配置されている第1導電層と、第2主面上に配置されている第2導電層と、第1導電層上に配置されている第1無電解銅めっき層と、第2導電層上に配置されている第2無電解銅めっき層と、第3無電解銅めっき層とを備える。ベースフィルムには、ベースフィルムを厚さ方向に沿って貫通している貫通穴が形成されている。第3無電解銅めっき層は、貫通穴の内壁面上に配置されている。第1主面及び第2主面におけるベースフィルム中のパラジウム量は、内壁面におけるベースフィルム中のパラジウム量よりも少ない。上記(1)のプリント配線板用基板によると、第1主面上に形成される配線と第2主面上に形成される配線との間の導通信頼性を確保しつつ、配線のファインピッチ化が可能である。
【0012】
(2)上記(1)のプリント配線板用基板では、第1主面及び第2主面におけるベースフィルム中のパラジウム量が、0.02原子パーセント以下であってもよい。内壁面におけるベースフィルム中のパラジウム量は、0.06原子パーセント以上であってもよい。上記(2)のプリント配線板用基板によると、第1主面上に形成される配線と第2主面上に形成される配線との間の導通信頼性をさらに確保しつつ、配線のさらなるファインピッチ化が可能である。
【0013】
(3)上記(1)又は(2)のプリント配線板用基板では、第1主面及び第2主面におけるベースフィルム中のパラジウム量が0.008原子パーセント以下であってもよい。内壁面におけるベースフィルム中のパラジウム量は、0.07原子パーセント以上であってもよい。上記(3)のプリント配線板用基板によると、第1主面上に形成される配線と第2主面上に形成される配線との間の導通信頼性をさらに確保しつつ、配線のさらなるファインピッチ化が可能である。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のプリント配線板用基板では、第1導電層及び第2導電層が、焼結された複数の銅粒子を含む層であってもよい。
【0015】
(5)上記(4)のプリント配線板用基板では、第1導電層中及び第2導電層中のパラジウム量が、0.08原子パーセント以下であってもよい。
【0016】
(6)上記(1)から(5)のプリント配線板用基板では、第1無電解銅めっき層中及び第2無電解銅めっき層中のパラジウム量が、0.07原子パーセント以下であってもよい。
【0017】
(7)上記(1)から(6)のプリント配線板用基板では、第1主面及び第2主面におけるベースフィルム中のニッケル量が、内壁面におけるベースフィルム中のニッケル量よりも少なくてもよい。
【0018】
(8)実施形態に係るプリント配線板は、第1主面及び第2主面を有するベースフィルムと、第1主面上に配置されている第1導電層と、第1導電層上に配置されている第1無電解銅めっき層と、第1無電解銅めっき層上に配置されている第1電解銅めっき層とを有する第1配線と、第2主面上に配置されている第2導電層と、第2導電層上に配置されている第2無電解銅めっき層と、第2無電解銅めっき層上に配置されている第2電解銅めっき層とを有する第2配線と、第3無電解銅めっき層と、第3電解銅めっき層とを備えている。ベースフィルムには、ベースフィルムを厚さ方向に沿って貫通している貫通穴が形成されている。第3無電解銅めっき層は、貫通穴の内壁面上に配置されている。第3電解銅めっき層は、第3無電解銅めっき層上に配置されている。第1配線は、第3無電解銅めっき層及び第3電解銅めっき層により、第2配線に電気的に接続されている。第1主面及び第2主面におけるベースフィルム中のパラジウム量は、内壁面におけるベースフィルム中のパラジウム量よりも少ない。上記(8)のプリント配線板によると、第1配線と第2配線との間の導通信頼性を確保しつつ、第1配線及び第2配線のファインピッチ化が可能である。
【0019】
(9)上記(8)のプリント配線板では、間隔を空けて隣り合う2つの第1配線の部分の間の距離及び間隔を空けて隣り合う2つの第2配線の部分の間の距離が、20μm以下であってもよい。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。実施形態に係るプリント配線板用基板及びプリント配線板を、それぞれプリント配線板用基板100及びプリント配線板200とする。
【0021】
(プリント配線板用基板100の構成)
以下に、プリント配線板用基板100の構成を説明する。
【0022】
図1は、プリント配線板用基板100の断面図である。プリント配線板用基板100は、図1に示されるように、ベースフィルム10と、第1導電層21及び第2導電層22と、第1無電解銅めっき層31、第2無電解銅めっき層32及び第3無電解銅めっき層33とを有している。
【0023】
ベースフィルム10は、第1主面10aと、第2主面10bとを有している。第1主面10a及び第2主面10bは、ベースフィルム10の厚さ方向における端面である。第2主面10bは、第1主面10aの反対面である。ベースフィルム10には、貫通穴10cが形成されている。貫通穴10cは、ベースフィルム10を厚さ方向に沿って貫通している。ベースフィルム10は、可撓性を有する絶縁性の材料により形成されている。ベースフィルム10は、例えば、ポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂等により形成されている。但し、ベースフィルム10の構成材料は、これらに限られない。
【0024】
第1主面10a及び第2主面10bにおけるベースフィルム10中のパラジウム量は、貫通穴10cの内壁面におけるベースフィルム10中のパラジウム量よりも少ない。なお、第1主面10a及び第2主面10bにおけるベースフィルム10中のニッケル量は、貫通穴10cの内壁面におけるベースフィルム10中のニッケル量よりも少なくてもよい。
【0025】
第1主面10a及び第2主面10bにおけるベースフィルム10中のパラジウム量は、0.02原子パーセント以下であってもよい。第1主面10a及び第2主面10bにおけるベースフィルム10中のパラジウム量は、0.008原子パーセント以下であってもよい。貫通穴10cの内壁面におけるベースフィルム10中のパラジウム量は、0.06原子パーセント以上であってもよい。貫通穴10cの内壁面におけるベースフィルム10中のパラジウム量は、0.07原子パーセント以上であってもよい。
【0026】
ベースフィルム10中のパラジウム量は、エネルギ分散型X線分析装置(例えば日立ハイテクノロジーズ株式会社製SU8020)により測定される。測定の際の加速電圧は、6kVとされる。第1主面10aにおけるベースフィルム10中のパラジウム量の測定位置は、第1導電層21との界面からの距離が100nmとなる位置までの任意の領域とされる。第2主面10bにおけるベースフィルム10中のパラジウム量の測定位置は、第2導電層22との界面からの距離が100nmとなる位置までの任意の領域とされる。貫通穴10cの内壁面におけるベースフィルム10中のパラジウム量の測定位置は、第3無電解銅めっき層33との界面からの距離が100nmの位置までの任意の領域とされる。ベースフィルム10中のニッケル量は、ベースフィルム10中のパラジウム量と同様の方法により測定される。
【0027】
第1導電層21は、第1主面10a上に配置されている。第1導電層21は、焼結されている複数の銅粒子により形成されている。そのため、第1導電層21は、ポーラスになっている。第1導電層21に含まれている銅粒子の平均粒径は、1nm以上又は30nm以上であってもよい。第1導電層21に含まれている銅粒子の平均粒径は、100nm以下又は500nm以下であってもよい。すなわち、第1導電層21に含まれている銅粒子は、ナノ銅粒子であってもよい。なお、第1導電層21に含まれている銅粒子の平均粒径は、粒子径分布測定装置(例えば、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布計UPA-150EX)により測定される。
【0028】
第2導電層22は、第2主面10b上に配置されている。第2導電層22は、焼結されている複数の銅粒子により形成されている。そのため、第2導電層22は、ポーラスになっている。第2導電層22に含まれている銅粒子の平均粒径は、1nm以上又は30nm以上であってもよい。第2導電層22に含まれている銅粒子の平均粒径は、100nm以下又は500nm以下であってもよい。すなわち、第2導電層22に含まれている銅粒子は、ナノ銅粒子であってもよい。なお、第2導電層22に含まれている銅粒子の平均粒径は、第1導電層21に含まれている銅粒子の平均粒径と同様の方法により測定される。
【0029】
第1導電層21中及び第2導電層22中のパラジウム量は、0.08原子パーセント以下であってもよい。第1導電層21中及び第2導電層22中のパラジウム量は、0原子パーセントであってもよい。このことを別の観点から言えば、第1導電層21中及び第2導電層22中にパラジウムが含まれていなくてもよい。なお、第1導電層21中のパラジウム量は、ベースフィルム10と第1導電層21との界面から第1導電層21と第1無電解銅めっき層31との界面までの厚み方向全体を含む任意の領域におけるパラジウムの含有量である。第2導電層22中のパラジウム量は、ベースフィルム10と第2導電層22との界面から第2導電層22と第2無電解銅めっき層32との界面までの厚み方向全体を含む任意の領域におけるパラジウムの含有量である。第1導電層21中のパラジウム量及び第2導電層22中のパラジウム量は、測定領域を除いてベースフィルム10中のパラジウム量と同様の方法により測定される。
【0030】
第1導電層21には、第1導電層21を厚さ方向に沿って貫通している貫通穴21aが形成されている。第2導電層22には、第2導電層22を厚さ方向に沿って貫通している貫通穴22aが形成されている。貫通穴21a及び貫通穴22aは、平面視において貫通穴10cに重なっている。貫通穴21aの内壁面及び貫通穴22aの内壁面は、貫通穴10cの内壁面に連なっている。
【0031】
なお、上記の例では、第1導電層21及び第2導電層22の構成材料が銅粒子の焼結体である例を示したが、第1導電層21及び第2導電層22は、焼結体で構成されている層に限られない。
【0032】
第1無電解銅めっき層31は、第1導電層21上に配置されている。第1無電解銅めっき層31は、無電解めっきにより形成されている銅の層である。第1無電解銅めっき層31中のパラジウム量は、0.07原子パーセント以下であってもよい。第2無電解銅めっき層32は、第2導電層22上に配置されている。第2無電解銅めっき層32は、無電解めっきにより形成されている銅の層である。第2無電解銅めっき層32中のパラジウム量は、0.07原子パーセント以下であってもよい。なお、第1無電解銅めっき層31中のパラジウム量は、第1導電層21と第1無電解銅めっき層31との界面から第1無電解銅めっき層31の当該界面とは反対側の面までの厚み方向全体を含む任意の領域におけるパラジウムの含有量である。第2無電解銅めっき層32中のパラジウム量は、第2導電層22と第2無電解銅めっき層32との界面から第2無電解銅めっき層32の当該界面とは反対側の面までの厚み方向全体を含む任意の領域におけるパラジウムの含有量である。第1無電解銅めっき層31中のパラジウム量及び第2無電解銅めっき層32中のパラジウム量は、測定領域を除いて、ベースフィルム10中のパラジウム量と同様の方法により測定される。
【0033】
第3無電解銅めっき層33は、貫通穴10cの内壁面上に配置されている。第3無電解銅めっき層33は、貫通穴21aの内壁面上及び貫通穴22aの内壁面上にも配置されている。第3無電解銅めっき層33は、無電解めっきにより形成されている銅の層である。なお、第1無電解銅めっき層31、第2無電解銅めっき層32及び第3無電解銅めっき層33は、ニッケルを含有していてもよい。
【0034】
(プリント配線板用基板100の製造方法)
以下に、プリント配線板用基板100の製造方法を説明する。
【0035】
図2は、プリント配線板用基板100の製造工程図である。プリント配線板用基板100の製造方法は、図2に示されるように、準備工程S1と、導電層形成工程S2と、貫通穴形成工程S3と、触媒付与工程S4と、フィルム剥離工程S5と、無電解めっき工程S6とを有している。
【0036】
導電層形成工程S2は、準備工程S1の後に行われる。貫通穴形成工程S3は、導電層形成工程S2の後に行われる。触媒付与工程S4は、貫通穴形成工程S3の後に行われる。フィルム剥離工程S5は、触媒付与工程S4の後に行われる。無電解めっき工程S6は、フィルム剥離工程S5の後に行われる。
【0037】
図3は、準備工程S1を説明する断面図である。準備工程S1では、図3に示されるように、ベースフィルム10が準備される。準備工程S1において準備されるベースフィルム10では、第1主面10a上に第1導電層21及び第1無電解銅めっき層31が配置されておらず、第2主面10b上に第2導電層22及び第2無電解銅めっき層32が配置されていない。また、準備工程S1において準備されるベースフィルム10には、貫通穴10cが形成されていない。
【0038】
図4は、導電層形成工程S2を説明する断面図である。導電層形成工程S2では、図4に示されるように、第1導電層21及び第2導電層22がそれぞれ第1主面10a上及び第2主面10b上に形成される。導電層形成工程S2では、第1に、銅粒子を含むペーストが、第1主面10a上及び第2主面10b上に塗布される。第2に、塗布されたペーストに含まれる溶剤が乾燥される。第3に、乾燥されたペーストが焼成される。これにより、乾燥されたペースト中に含まれる銅粒子が互いに焼結され、第1導電層21及び第2導電層22が形成される。
【0039】
図示されていないが、導電層形成工程S2が行われた後に、第1導電層21の表面(第1主面10aとは反対側の第1導電層21の面)及び第2導電層22の表面(第2主面10bの反対側の第2導電層22の面)に対して、脱脂処理及び酸洗処理が行われる。
【0040】
図5は、貫通穴形成工程S3を説明する断面図である。貫通穴形成工程S3では、図5に示されるように、ベースフィルム10に貫通穴10cが形成される。貫通穴形成工程S3では、第1に、マスキングフィルム41及びマスキングフィルム42がそれぞれ第1導電層21上及び第2導電層22上に配置される。
【0041】
第2に、ベースフィルム10、第1導電層21、第2導電層22、マスキングフィルム41及びマスキングフィルム42に対してレーザLが照射される。これにより、ベースフィルム10に貫通穴10cが形成される。また、これにより、第1導電層21に貫通穴21aが形成されるとともに、第2導電層22に貫通穴22aが形成される。さらに、マスキングフィルム41及びマスキングフィルム42にも、貫通穴41a及び貫通穴42aがそれぞれ形成される。
【0042】
図6は、触媒付与工程S4を説明する断面図である。図6に示されるように、触媒付与工程S4では、貫通穴10cの内壁面上、貫通穴21aの内壁面上、貫通穴22aの内壁面上、貫通穴41aの内壁面上、貫通穴42aの内壁面上に、パラジウム触媒43が付与される。なお、パラジウム触媒43は、マスキングフィルム41上及びマスキングフィルム42上にも付与される。
【0043】
図7は、フィルム剥離工程S5を説明する断面図である。図7に示されているように、フィルム剥離工程S5では、マスキングフィルム41が第1導電層21上から剥離されるとともに、マスキングフィルム42が第2導電層22上から剥離される。
【0044】
無電解めっき工程S6は、めっき装置300を用いて行われる。図8は、無電解めっき工程S6に用いられるめっき装置300の概略構成図である。めっき装置300は、図8に示されるように、めっき処理槽310と、複数のローラ320と、電極ローラ331及び電極ローラ332と、電源340とを有している。
【0045】
めっき処理槽310には、めっき液が貯留されている。めっき液には、銅が含まれている。また、めっき液には、ニッケルが含まれていてもよい。めっき処理槽310の内部には、電極311が配置されている。電極311は、導電性の材料により形成されている。電極311は、例えばチタンにより形成されている。電極311は、めっき液中に浸漬されている。
【0046】
複数のローラ320は、ベースフィルム10の搬送方向(図8中の矢印参照)に沿って並んでいる。複数のローラ320を回転させることにより、ベースフィルム10は、搬送方向に沿って搬送される。ベースフィルム10は、搬送の過程において、めっき処理槽310に貯留されているめっき液を通過する。
【0047】
電極ローラ331及び電極ローラ332は、めっき液を通過する前のベースフィルム10に接触する位置に配置されている。電極ローラ331及び電極ローラ332は、それぞれ、第1導電層21及び第2導電層22に接触している。電極ローラ331及び電極ローラ332は、例えばステンレス鋼により形成されている。
【0048】
電源340は、電極311と電極ローラ331及び電極ローラ332とに電気的に接続されている。より具体的には、電源340の正極は電極311に電気的に接続され、電源340の負極は電極ローラ331及び電極ローラ332に電気的に接続される。
【0049】
無電解めっき工程S6は、第1工程S61と、第1工程S61の後に行われる第2工程S62とを有している。第1工程S61では、電源340により、電極311と電極ローラ331及び電極ローラ332との間で通電が行われる。
【0050】
図9は、第1工程S61を説明する断面図である。図9に示されるように、この通電に伴う電気的なエネルギに駆動されて、第1無電解銅めっき層31及び第2無電解銅めっき層32が、それぞれ第1導電層21の表面上及び第2導電層22の表面上に急速に形成される。
【0051】
図10は、第2工程S62を説明する断面図である。第2工程S62では、電極311と電極ローラ331及び電極ローラ332との間の通電が停止される。しかしながら、第1工程S61により第1無電解銅めっき層31及び第2無電解銅めっき層32が形成されているため、図10に示されるように、銅の自己触媒作用により、パラジウム触媒43を用いずとも、第1無電解銅めっき層31及び第2無電解銅めっき層32の成長が継続される。
【0052】
上記のとおり、貫通穴10cの内壁面上、貫通穴21aの内壁面上及び貫通穴22aの内壁面上には、パラジウム触媒43が付与されている。そのため、図9及び図10に示されるように、第1工程S61及び第2工程S62では、パラジウム触媒43に駆動されて、貫通穴10cの内壁面上、貫通穴21aの内壁面上及び貫通穴22aの内壁面上に第3無電解銅めっき層33が成長される。
【0053】
以上により、図1に示されている構造のプリント配線板用基板100が製造される。なお、図示されていないが、無電解めっき工程S6が行われた後、アニールが行われていてもよい。
【0054】
(プリント配線板200の構成)
以下に、プリント配線板200の構成を説明する。
【0055】
図11は、プリント配線板200の断面図である。プリント配線板200は、図11に示されているように、ベースフィルム10と、第1配線51と、第2配線52とを有している。
【0056】
第1主面10a(第2主面10b)の法線方向を、第1方向DR1とする。第1方向DR1に直交する方向を、第2方向DR2とする。第1方向DR1及び第2方向DR2に直交する方向を、第3方向DR3とする。
【0057】
第1配線51は、第1主面10a上に配置されている。第1配線51は、第1主面10a上に配置されている第1導電層21と、第1導電層21上に配置されている第1無電解銅めっき層31と、第1無電解銅めっき層31上に配置されている第1電解銅めっき層61とを有している。第1電解銅めっき層61は、電解めっきにより形成されている銅の層である。
【0058】
第2配線52は、第2主面10b上に配置されている。第2配線52は、第2主面10b上に配置されている第2導電層22と、第2導電層22上に配置されている第2無電解銅めっき層32と、第2無電解銅めっき層32上に配置されている第2電解銅めっき層62とを有している。第2電解銅めっき層62は、電解めっきにより形成されている銅の層である。
【0059】
プリント配線板200は、第3電解銅めっき層63をさらに有している。第3電解銅めっき層63は、第3無電解銅めっき層33上に配置されている。第1配線51及び第2配線52は、第3無電解銅めっき層33及び第3電解銅めっき層63により、互いに電気的に接続されている。
【0060】
第1配線51は、複数の配線部51aを有している。配線部51aは、第2方向DR2に沿って延在している。複数の配線部51aは、第3方向DR3に沿って並んでいる。複数の配線部51aのうちの隣り合っている2つの間の第3方向DR3における距離を、距離DIS1とする。距離DIS1は、20μm以下であってもよい。距離DIS1は、10μm以下であってもよい。
【0061】
第2配線52は、複数の配線部52aを有している。配線部52aは、第2方向DR2に沿って延在している。複数の配線部52aは、第3方向DR3に沿って並んでいる。複数の配線部52aのうちの隣り合っている2つの間の第3方向DR3における距離を、距離DIS2とする。距離DIS2は、20μm以下であってもよい。距離DIS2は、10μm以下であってもよい。
【0062】
(プリント配線板200の製造方法)
以下に、プリント配線板200の製造方法を説明する。
【0063】
図12は、プリント配線板200の製造工程図である。プリント配線板200の製造方法は、図12に示されるように、レジストパターン形成工程S7と、電解めっき工程S8と、レジストパターン除去工程S9と、エッチング工程S10とを有している。
【0064】
電解めっき工程S8は、レジストパターン形成工程S7の後に行われる。レジストパターン除去工程S9は、電解めっき工程S8の後に行われる。エッチング工程S10は、レジストパターン除去工程S9の後に行われる。プリント配線板200は、プリント配線板用基板100を用いて形成される。
【0065】
図13は、レジストパターン形成工程S7を説明する断面図である。レジストパターン形成工程S7では、図13に示されるように、レジストパターン71及びレジストパターン72が第1無電解銅めっき層31上及び第2無電解銅めっき層32上にそれぞれ形成される。
【0066】
レジストパターン71は、開口部71aを有している。開口部71aは、レジストパターン71を厚さ方向に沿って貫通している。開口部71aからは、第1無電解銅めっき層31が露出している。レジストパターン72は、開口部72aを有している。開口部72aは、レジストパターン72を厚さ方向に沿って貫通している。開口部72aからは、第2無電解銅めっき層32が露出している。
【0067】
なお、開口部71aからは貫通穴10cの周囲にある第1無電解銅めっき層31が露出しており、開口部72aからは貫通穴10cの周囲にある第2無電解銅めっき層32が露出している。
【0068】
レジストパターン形成工程S7では、第1に、第1無電解銅めっき層31上及び第2無電解銅めっき層32上に、レジストが貼付される。第2に、貼付されたレジストに対して露光及び現像が行われる。その結果、除去されなかったレジストの残部がレジストパターン71及びレジストパターン72となり、除去されたレジストの部分が開口部71a及び開口部72aとなる。
【0069】
図14は、電解めっき工程S8を説明する断面図である。電解めっき工程S8では、図14に示されるように、開口部71aから露出している第1無電解銅めっき層31上に第1電解銅めっき層61が形成されるとともに、開口部72aから露出している第2無電解銅めっき層32上に第2電解銅めっき層62が形成される。また、電解めっき工程S8では、第3無電解銅めっき層33上に、第3電解銅めっき層63が形成される。第1電解銅めっき層61、第2電解銅めっき層62及び第3電解銅めっき層63は、銅を含むめっき液中において第1無電解銅めっき層31、第2無電解銅めっき層32及び第3無電解銅めっき層33に通電して電解めっきを行うことにより、形成される。
【0070】
図15は、レジストパターン除去工程S9を説明する断面図である。レジストパターン除去工程S9では、図15に示されるように、レジストパターン71が第1無電解銅めっき層31上から除去されるとともに、レジストパターン72が第2無電解銅めっき層32上から除去される。その結果、隣り合っている2つの第1電解銅めっき層61の間からは第1無電解銅めっき層31及び第1導電層21が露出し、隣り合っている2つの第2電解銅めっき層62の間からは第2無電解銅めっき層32及び第2導電層22が露出することになる。
【0071】
エッチング工程S10では、隣り合っている2つの第1電解銅めっき層61の間から露出している第1無電解銅めっき層31及び第1導電層21の部分及び隣り合っている2つの第2電解銅めっき層62の間から露出している第2無電解銅めっき層32及び第2導電層22の部分が、エッチングにより除去される。以上により、図11に示されている構造のプリント配線板200が形成されることになる。
【0072】
(プリント配線板用基板100及びプリント配線板200の効果)
以下に、プリント配線板用基板100及びプリント配線板200の効果を説明する。
【0073】
プリント配線板用基板100では、貫通穴10cの内壁面上におけるベースフィルム10中のパラジウム量が多くなっている。すなわち、プリント配線板用基板100では、第3無電解銅めっき層33がパラジウム触媒43を用いて形成されている。そのため、プリント配線板用基板100を用いて形成されるプリント配線板200では、第1配線51と第2配線52との間の導通信頼性が確保されている。
【0074】
プリント配線板用基板100の製造工程では、触媒付与工程S4が行われている際に、第1導電層21上にマスキングフィルム41が配置されているとともに、第2導電層22上にマスキングフィルム42が配置されているため、第1導電層21の表面及び第2導電層22の表面にパラジウム触媒43が付与されない。
【0075】
また、プリント配線板用基板100の製造工程では、無電解めっき工程S6の初期に電極311と電極ローラ331及び電極ローラ332との間に通電されることにより、第1無電解銅めっき層31及び第2無電解銅めっき層32がそれぞれ第1導電層21上及び第2導電層22上に急速に形成される。その結果、第1導電層21中及び第2導電層22中へのめっき液の浸透が抑制される。
【0076】
そのため、プリント配線板用基板100では、第1主面10a及び第2主面10bにおけるベースフィルム10中のパラジウム量が、貫通穴10cの内壁面におけるベースフィルム10中のパラジウム量よりも少なくなっている。
【0077】
第1無電解銅めっき層31及び第2無電解銅めっき層32は、それぞれ第1導電層21上及び第2導電層22上に成長される。また、第1工程S61において、第1導電層21の表面及び第2導電層22の表面上に第1無電解銅めっき層31及び第2無電解銅めっき層32がそれぞれ急速に成長される。そのため、めっき液中のニッケルは、第1導電層21及びその下にある第1主面10a並びに第2導電層22及びその下にある第2主面10bまで到達しにくい。
【0078】
他方で、貫通穴10cの内壁面は、めっき液に接触する。また、貫通穴10cの内壁面上にある第3無電解銅めっき層33は、通電による電気的なエネルギにより駆動されて急速に成長する無電解銅めっき層ではなく、パラジウム触媒43により駆動されて成長する無電解銅めっき層である。そのため、第1主面10a及び第2主面10bにおけるベースフィルム10中のニッケル量は、貫通穴10cの内壁面におけるベースフィルム10中のニッケル量よりも少なくなる。
【0079】
第1主面10a及び第2主面10bにおけるベースフィルム10中のパラジウム量やニッケル量が多い場合、エッチング工程S10において、隣り合っている2つの第1電解銅めっき層61の間及び隣り合っている2つの第2電解銅めっき層62の間から露出しているベースフィルム10中のパラジウムやニッケルも除去しなければならない。
【0080】
この際に、第1配線51及び第2配線52にアンダーカットが生じることがあるため、第1主面10a及び第2主面10bにおけるベースフィルム10中のパラジウム量が多い場合には、第1配線51及び第2配線52のファインピッチ化が困難である。
【0081】
しかしながら、プリント配線板200は、第1主面10a及び第2主面10bにおけるベースフィルム10中のパラジウム量が少ないプリント配線板用基板100を用いて形成されているため、エッチング工程S10が行われている際に第1配線51及び第2配線52のアンダーカットが生じにくく、第1配線51及び第2配線52のファインピッチ化が可能である。なお、第1配線51のアンダーカットとは、第1配線51の側面において第1無電解銅めっき層31と第1電解銅めっき層61との間に生じる切り欠きをいう。同様に、第2配線52のアンダーカットとは、第2配線52の側面において第2無電解銅めっき層32と第2電解銅めっき層62との間に生じる切り欠きをいう。
【0082】
このように、プリント配線板用基板100を用いて形成されるプリント配線板200によると、第1配線51と第2配線52との間の導通信頼性を確保しつつ第1配線51及び第2配線52をファインピッチ化することが可能である。
【0083】
<配線のファインピッチ化の評価>
サンプル1からサンプル7を用いて、ベースフィルム10の主面及びベースフィルム10の貫通穴の内壁面におけるパラジウム量が配線のファインピッチ化に与える影響が評価された。サンプル1からサンプル7では、第1主面10aにおけるベースフィルム10中のパラジウム量が変化された。また、サンプル1からサンプル7では、第1導電層21中のパラジウム量及び第1無電解銅めっき層31中のパラジウム量も変化されている。
【0084】
【表1】
【0085】
配線のファインピッチ化の評価には、第1評価用TEG(Test Element Group)が用いられた。図16は、第1評価用TEGの平面図である。図16に示されるように、第1評価用TEGは、ベースフィルム10と第1配線51とを有している。第1評価用TEGでは、第1主面10aが20個の配線形成領域R1と、20個の配線形成領域R2と、20個の配線形成領域R3とを有している。20個の配線形成領域R1、20個の配線形成領域R2及び20個の配線形成領域R3は、左右方向に沿って列をなすように並んでいる。
【0086】
配線形成領域R1、配線形成領域R2及び配線形成領域R3上には、複数の配線部51aを有している第1配線51が形成されている。配線形成領域R1上に形成されている配線部51aは、上下方向に沿って延在している。配線形成領域R2上に形成されている配線部51a及び配線形成領域R3上に形成されている配線部51aは、それぞれ、上下方向に対して45°及び-45°傾斜している方向に沿って延在している。
【0087】
右からn番目(nは20以下の自然数)にある配線形成領域R1上に形成されている配線部51aのL/Sは、nμm/nμmになっている。Lは配線部51aの幅であり、Sは距離DIS1である。配線形成領域R2上に形成されている配線部51a及び配線形成領域R3上に形成されている配線部51aも、同様にL/Sが変化されている。なお、配線部51aのアスペクト比(配線部51aの高さを配線部51aの幅で除した値)は、1以上2以下とされた。
【0088】
20個の配線形成領域R1の各々、20個の配線形成領域R2の各々及び20個の配線形成領域R3の各々に対して、SEM(Scanning Electron Microscope)を用いて第1配線51を観察することにより、配線形成が適切に行われているか否かを判断した。
【0089】
適切に形成可能な配線部51aの幅及び距離DIS1の最小値が10μm以下である場合に、評価がAとされた。適切に形成可能な配線部51aの幅及び距離DIS1の最小値が10μm超20μm以下である場合に、評価がBとされた。適切に形成可能な配線部51aの幅及び距離DIS1の最小値が20μm超30μm以下である場合に、評価がCとされた。適切に形成可能な配線部51aの幅及び距離DIS1の最小値が30μm超である場合に、評価がDとされた。
【0090】
表1に示されるように、第1主面10aにおけるベースフィルム10中のパラジウム量が0.02原子パーセント以下である場合、ファインピッチ化の評価がB以上であった。他方で、第1主面10aにおけるベースフィルム10中のパラジウム量が0.02原子パーセント超である場合に、ファインピッチ化の評価がC以下であった。
【0091】
<配線の導通信頼性の評価>
サンプル8からサンプル14を用いて、ベースフィルム10の貫通穴の内壁面におけるパラジウム量が配線の導通信頼性に与える影響が評価された。サンプル8からサンプル14では、表2に示されるように、貫通穴10cの内壁面におけるベースフィルム10中のパラジウム量が変化された。
【0092】
【表2】
【0093】
配線の導通信頼性の評価には、第2評価用TEGが用いられた。図17は、第2評価用TEGの平面図である。図18は、図17中のXVIII-XVIIIにおける断面図である。図16及び図17に示されるように、第2評価用TEGは、ベースフィルム10と、第1配線51と、第2配線52と、第3無電解銅めっき層33及び第3電解銅めっき層63とを有している。
【0094】
第2評価用TEGでは、10000個の貫通穴10cが列をなすように並んでおり、第1配線51、第2配線52、第3無電解銅めっき層33及び第3電解銅めっき層63により、10000個のデイジーチェーンが形成されている。
【0095】
第2評価用TEGは、サンプルごとに1000枚準備された。サンプルごとに1000万個のデイジーチェーンに対して抵抗率の測定を行い、抵抗率が1×10-5Ω・m以上となる貫通穴10cの割合(導通不良率)を算出した。導通不良率が0.5ppm未満である場合、評価Aとされた。導通不良率が0.5ppm超1ppm以下である場合、評価Bとされた。導通不良率が1ppm超10ppm以下である場合、評価Cとされた。導通不良率が10ppm超100ppm以下である場合、評価Dとされた。導通不良率が100ppm以上である場合、評価Eとされた。
【0096】
表2に示されるように、貫通穴10cの内壁面におけるパラジウム量が0.06原子パーセント以上である場合に、評価B以上になっていた。他方で、貫通穴10cの内壁面におけるパラジウム量が0.06原子パーセント未満である場合に、評価D以下になっていた。
【0097】
<総合評価>
以上から、第1主面10a及び第2主面10bにおけるベースフィルム10中のパラジウム量が0.02原子パーセント以下となり、かつ貫通穴10cの内壁面におけるベースフィルム10中のパラジウム量が0.06原子パーセント以上であれば、第1配線51と第2配線52との間の導通信頼性を確保しつつ、第1配線51及び第2配線52のファインピッチ化が可能である。
【0098】
第1無電解銅めっき層31、第2無電解銅めっき層32及び第3無電解銅めっき層33をパラジウム触媒43を用いた無電解めっき法により形成する場合、第1主面10a及び第2主面10bにおけるベースフィルム10中のパラジウム量は、貫通穴10cの内壁面におけるベースフィルム10中のパラジウム量と同程度になる。そのため、このような方法により第1無電解銅めっき層31、第2無電解銅めっき層32及び第3無電解銅めっき層33が形成される場合、第1配線51と第2配線52との間の導通信頼性を確保しつつ第1配線51及び第2配線52のファインピッチ化することはできない。
【0099】
しかしながら、プリント配線板用基板100では、パラジウム触媒43を用いた無電解めっき法により第3無電解銅めっき層33が形成されている一方、第1無電解銅めっき層31及び第2無電解銅めっき層32がパラジウム触媒43を用いずに通電を利用した無電解めっき法により形成されている。そのため、プリント配線板用基板100では、第1主面10a及び第2主面10bにおけるベースフィルム10中のパラジウム量を貫通穴10cの内壁面におけるベースフィルム10中のパラジウム量よりも少なくすることが可能であり、第1配線51と第2配線52との間の導通信頼性を確保しつつ、第1配線51及び第2配線52のファインピッチ化が可能となる。
【0100】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記の実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
100 プリント配線板用基板、200 プリント配線板、10 ベースフィルム、10a 第1主面、10b 第2主面、10c 貫通穴、21 第1導電層、21a 貫通穴、22 第2導電層、22a 貫通穴、31 第1無電解銅めっき層、32 第2無電解銅めっき層、33 第3無電解銅めっき層、41,42 マスキングフィルム、41a 貫通穴、42a 貫通穴、43 パラジウム触媒、51 第1配線、51a 配線部、52 第2配線、52a 配線部、61 第1電解銅めっき層、62 第2電解銅めっき層、63 第3電解銅めっき層、71 レジストパターン、71a 開口部、72 レジストパターン、72a 開口部、300 めっき装置、310 めっき処理槽、311 電極、320 ローラ、331,332 電極ローラ、340 電源、DIS1,DIS2 距離、DR1 第1方向、DR2 第2方向、DR3 第3方向、L レーザ、R1 配線形成領域、R2 配線形成領域、R3 配線形成領域、S1 準備工程、S2 導電層形成工程、S3 貫通穴形成工程、S4 触媒付与工程、S5 フィルム剥離工程、S6 無電解めっき工程、S61 第1工程、S62 第2工程、S7 レジストパターン形成工程、S8 電解めっき工程、S9 レジストパターン除去工程、S10 エッチング工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18