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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】電線及びケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/42 20060101AFI20250415BHJP
【FI】
H01B7/42 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024520101
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2022019677
(87)【国際公開番号】W WO2023218506
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2024-07-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】福本 遼太
(72)【発明者】
【氏名】樋熊 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】藤田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】上原 真一
(72)【発明者】
【氏名】西川 信也
(72)【発明者】
【氏名】内野 道夫
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517817(JP,A)
【文献】特開2013-147586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/42
H01B 3/22
C08L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単線からなる導体又は複数の素線を撚り合わせた導体と、
上記導体の外周を被覆する絶縁層と
を備えており、
上記絶縁層が樹脂成分、第1フィラー及び第2フィラーを含有し、
上記樹脂成分がオレフィン系樹脂と、上記オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂とを含み、
上記オレフィン系樹脂と上記オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂が海島構造を形成し、
上記第1フィラーが黒鉛からなり、
上記第2フィラーが金属酸化物、金属水酸化物又はこれらの組み合わせからなり、
上記樹脂成分に対する上記第1フィラーの質量比が10/100以上80/100以下であり、
上記絶縁層における25℃での熱伝導率が0.5W/m・K以上であり、体積固有抵抗が1×1013Ω・cm以上であり、
上記樹脂成分に対する上記第2フィラーの質量比が30/100以上200/100以下である電線。
【請求項2】
上記第2フィラーに対する上記第1フィラーの平均粒径比が、1.1倍以上である請求項1に記載の電線。
【請求項3】
上記非相溶の樹脂がスチレン系共重合体であり、
上記オレフィン系樹脂がポリプロピレンであり、
上記ポリプロピレンに対する上記スチレン系共重合体の質量比が20/80以上80/20以下である請求項1に記載の電線。
【請求項4】
上記ポリプロピレンがランダムポリプロピレン又はブロックポリプロピレンである請求項に記載の電線。
【請求項5】
上記スチレン系共重合体に対するスチレンに由来する構造単位の含有量が5質量%以上40質量%以下である請求項に記載の電線。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の1又は複数の電線と、
上記1又は複数の電線の周囲に配される外被層と
を備えているケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電線及びケーブルに関する。
【0002】
近年、情報電線及びケーブルでは、より一層の情報伝送の容量の増大及び高速化が求められている。従来技術のケーブルとしては、複数の絶縁電線(コア電線)を撚ったコア材(芯線)と、このコア材を被覆する外被層とを備えるものが一般に用いられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-139177号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の電線は、単線からなる導体又は複数の素線を撚り合わせた導体と、上記導体の外周を被覆する絶縁層とを備えており、上記絶縁層が樹脂成分、第1フィラー及び第2フィラーを含有し、上記樹脂成分がオレフィン系樹脂と、上記オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂とを含み、上記オレフィン系樹脂と上記オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂が海島構造を形成し、上記第1フィラーが黒鉛からなり、上記第2フィラーが金属酸化物、金属水酸化物又はこれらの組み合わせからなり、上記樹脂成分に対する上記第1フィラーの質量比が10/100以上80/100以下であり、上記絶縁層における25℃での熱伝導率が0.5W/m・K以上であり、体積固有抵抗が1×1013Ω・cm以上である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、一実施形態に係る電線を示す模式的断面図である。
図2図2は、一実施形態に係るケーブルを示す模式的断面図である。
図3図3は、他の実施形態に係るケーブルを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
近年、情報量の増大に伴い、消費電力量が増大している。そのため、電力を給電する電線及びケーブルは、電流を流すと導体の温度が上昇して、導通抵抗が増加し、電力ロスが生じやすい。
【0007】
本開示は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、優れた放熱性とともに、高絶縁性、機械的強度及び高耐油性を有する絶縁層を備える電線の提供を目的とする。
【0008】
[本開示の効果]
本開示によれば、優れた放熱性とともに、高絶縁性、機械的強度及び高耐油性を有する絶縁層を備える電線を提供することができる。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の一態様に係る電線は、単線からなる導体又は複数の素線を撚り合わせた導体と、上記導体の外周を被覆する絶縁層とを備えており、上記絶縁層が樹脂成分、第1フィラー及び第2フィラーを含有し、上記樹脂成分がオレフィン系樹脂と、上記オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂とを含み、上記オレフィン系樹脂と上記オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂が海島構造を形成し、上記第1フィラーが黒鉛からなり、上記第2フィラーが金属酸化物、金属水酸化物又はこれらの組み合わせからなり、上記樹脂成分に対する上記第1フィラーの質量比が10/100以上80/100以下であり、上記絶縁層における25℃での熱伝導率が0.5W/m・K以上であり、体積固有抵抗が1×1013Ω・cm以上である。
【0011】
本発明者らは、従来の電線に用いられている被覆材料の放熱性が低いために、温度上昇した導体の熱を逃がせないことに着目した。そこで、上記被覆材料の熱伝導性を向上させて、導体の温度上昇を抑制することを鋭意検討し、本発明を完成した。当該電線の絶縁層は、上記樹脂成分として結晶成分が多いオレフィン系樹脂を含むことで、引張強度及び耐油性に優れる。また、上記絶縁層が黒鉛からなる上記第1フィラーと、金属酸化物、金属水酸化物又はこれらの組み合わせからなる上記第2フィラーとを含有し、上記樹脂成分に対する上記第1フィラーの質量比が10/100以上80/100以下であり、上記絶縁層における25℃での熱伝導率が0.5W/m・K以上であり、高い熱伝導性を有するので、導体の熱を外部に放出され、導体の温度上昇の抑制効果が高い。また、体積固有抵抗が1×1013Ω・cm以上であることで、絶縁層の絶縁性を良好にできる。さらに、上記樹脂成分がオレフィン系樹脂と上記オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂とを含み、これらが海島構造を形成していることで、オレフィン系樹脂に分散しにくい第1フィラーを上記非相溶の樹脂側へ偏在させることができるため、絶縁層の放熱性をより向上できる。従って、当該電線においては、絶縁層が優れた放熱性を有することで、導体の温度上昇を抑制して電力ロス低減できるとともに、高絶縁性、機械的強度及び高耐油性を有する。
【0012】
上記「体積固有抵抗」とは、JIS-K6271:2008に基づいて二重リング電極法によって測定される電気抵抗値を意味する。上記「オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂」とは、オレフィン系樹脂に相溶しない樹脂のことであり、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、絶縁層において電線の長手方向に垂直な横断面の観察を行うことによって確認することができる。オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂は、断面を電子顕微鏡で観察した際に海島構造が観察される。このような海島構造の分散状態を取ることで、オレフィン系樹脂とこのオレフィン系樹脂と非相溶の樹脂の双方に由来する物性挙動が独立して現れ、お互い非相溶であることで、双方の樹脂の特性がより発揮される。
【0013】
上記樹脂成分に対する上記第2フィラーの質量比が30/100以上200/100以下であることが好ましい。当該電線においては、上記樹脂成分に対する上記第2フィラーの質量比が30/100以上200/100以下であることで、絶縁性及び引張伸びの双方の両立を図り、良好にできる。
【0014】
上記第2フィラーに対する上記第1フィラーの平均粒径比が、1.1倍以上であることが好ましい。上記第2フィラーに対する上記第1フィラーの平均粒径比が、1.1倍以上であることで、当該電線の絶縁層の放熱性をより向上できる。
【0015】
上記「平均粒径」とは、JIS-Z-8819-2:2001に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値であるメジアン径(D50)を意味する。メジアン径(D50)は、具体的には以下の方法による測定値とすることができる。測定装置としてレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定する。散乱式の測定モードを採用し、測定対象試料の粒子が分散溶媒中に分散する分散液が循環する湿式セルにレーザー光を照射し、測定試料から散乱光分布を得る。そして、散乱光分布を対数正規分布により近似し、累積度50%(D50)にあたる粒子径をメジアン径とする。
【0016】
上記非相溶の樹脂がスチレン系共重合体であり、上記オレフィン系樹脂がポリプロピレンであり、上記ポリプロピレンに対する上記スチレン系共重合体の質量比が20/80以上80/20以下であることが好ましい。上記オレフィン系樹脂がポリプロピレンであることで、当該電線の絶縁層の引張強さ及び耐油性をより向上できる。上記非相溶の樹脂がスチレン系共重合体であることで、当該電線の絶縁層の引張伸びを向上でき、第1フィラーの分散性が高まることで、放熱性を向上できる。上記ポリプロピレンに対する上記スチレン系共重合体の質量比が20/80以上80/20以下であることで、当該電線の絶縁層の引張特性、放熱性及び耐油性をより向上できる。
【0017】
上記ポリプロピレンがランダムポリプロピレン又はブロックポリプロピレンであることが好ましい。上記ポリプロピレンがランダムポリプロピレン又はブロックポリプロピレンであることで、上記絶縁層の引張強さ及び耐油性をより向上できる。
【0018】
上記スチレン系共重合体に対するスチレンに由来する構造単位の含有量が5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。一方、上記スチレン系共重合体に対するスチレンに由来する構造単位の含有量が5質量%以上40質量%以下であることで、上記絶縁層の引張伸び及び耐油性をより向上できる。
【0019】
本開示の別の態様に係るケーブルは、当該1又は複数の電線と、上記1又は複数の電線の周囲に配される外被層とを備えている。当該ケーブルは、芯線を構成するコア電線として上述の当該電線を備えているため、優れた放熱性とともに、高絶縁性、機械的強度及び高耐油性を有する。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態に係る電線について、適宜図面を参照しつつ詳説する。
【0021】
<電線>
当該電線は、単線からなる導体又は複数の素線を撚り合わせた導体と、上記導体の外周を被覆する絶縁層とを備えている。図1に、本開示の一実施形態に係る電線を示す。図1の電線1は、単線からなる導体又は複数の素線を撚り合わせた導体線状の導体2と、この導体2の外周面を被覆する絶縁層3と備える。当該電線においては、導体と絶縁層との間にプライマー処理層等のさらなる層が設けられてもよい。
【0022】
[導体]
導体2は、電線1の電気伝導を担う金属製の線状体である。導体2としては、例えば断面形状が円形状の丸線、断面形状が角丸正方形状の角線、断面形状が角丸長方形状の平角線等が挙げられる。また、導体2は、図1及び図2に示すような1つの線状体であってもよいし、複数の細線を撚り合わせた撚り線体であってもよい。
【0023】
導体2の材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄等の金属又はこれらの合金が用いられるが、導電性及び加工性の観点から、銅又はアルミニウムが用いられると好ましい。また、導体2は、金属製の線状体の外周面に他の金属製の被膜を積層した多層構造を有していてもよい。
【0024】
導体2の横断面における平均断面積(素線間の空隙も含む)の下限としては、2mmが好ましく、8mmがより好ましく、14mmがさらに好ましい。一方、導体2の平均断面積の上限としては600mmが好ましく、500mmがより好ましく、400mmがさらに好ましい。導体2の平均断面積が上記下限に満たないと、十分に電流を流すことができないおそれがある。また、導体2の平均断面積が上記上限を超えると、耐屈曲性が十分に得られないおそれがある。ここで「平均断面積」とは、任意の10点の断面において測定した値の平均値をいう。
【0025】
[絶縁層]
絶縁層3は、樹脂成分、第1フィラー及び第2フィラーを含有する。
【0026】
絶縁層3の平均厚さとしては、特に限定されないが、平均厚さの下限としては、例えば0.8mmが好ましく、1.0mmがより好ましい。一方、絶縁層3の平均厚さの上限としては、10mmが好ましく、7mmがより好ましい。絶縁層3の平均厚さが上記下限に満たないと、絶縁層3の絶縁性が不足するおそれがある。また、絶縁層3の平均厚さが上記上限を超えると、柔軟性が損なわれるおそれがある。ここで「平均厚さ」とは、任意の十点において測定した厚さの平均値をいう。なお、以下において他の部材等に対して「平均厚さ」という場合にも同様に定義される。
【0027】
(樹脂成分)
樹脂成分は、オレフィン系樹脂と、上記オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂とを含有する。また、上記オレフィン系樹脂と上記オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂が海島構造を形成している。上記樹脂成分がオレフィン系樹脂と上記オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂とを含み、これらが海島構造を形成していることで、オレフィン系樹脂に分散しにくい第1フィラーを上記非相溶の樹脂側へ偏在させることができるため、絶縁層3の放熱性をより向上できる。
【0028】
〈オレフィン系樹脂〉
絶縁層3が樹脂成分として、オレフィン系樹脂を含有することで、引張強度及び耐油性に優れる。オレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
【0029】
ポリエチレンとしては、例えば高密度ポリエチレン(PE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-αオレフィン共重合体、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された酸変性ポリエチレン等が挙げられる。また、エチレン-αオレフィン共重合体としては、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体(EBA)、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体が挙げられる。
【0030】
ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。ランダムポリプロピレンとしては、例えばプロピレンとエチレン又は炭素数が4~20のα-オレフィンとの共重合体であるプロピレン-αオレフィン共重合体が挙げられる。ブロックポリプロピレンとは、主成分としてのホモポリプロピレン、並びに共重合体成分としてのランダム共重合体エラストマー及び任意成分であるエチレン重合体とからなる樹脂である。
【0031】
上記酸変性に用いる酸における不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えばマレイン酸モノエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、無水フマル酸等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸の誘導体が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0032】
上記プロピレン-αオレフィン共重合体としては、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-アクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-アクリレートエステル共重合体、プロピレン-メタクリレートエステル共重合体等が挙げられる。
【0033】
オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンが好ましく、ランダムポリプロピレン又はブロックポリプロピレンであることがより好ましい。上記オレフィン系樹脂がランダムポリプロピレン又はブロックポリプロピレンであることで、引張伸びの大幅な低下を抑制しつつ、引張強さ及び耐油性を向上できる。
【0034】
〈オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂〉
上記樹脂成分がオレフィン系樹脂と非相溶の樹脂とを含むことで、オレフィン系樹脂に分散しにくい第1フィラーを上記オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂側へ偏在させることができるため、絶縁層の放熱性をより向上できる。オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂としては、例えばスチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、フッ素樹脂、フッ素ゴム、シリコーン等が挙げられる。これらの中でも、第1フィラーの分散性が良好であり、絶縁層の引張伸びを向上できるスチレン系共重合体がより好ましい。非相溶の樹脂は、1種又は複数種含んでいてもよい。
【0035】
スチレン系共重合体としては、例えばスチレン・エチレンブロック共重合体(SE)、スチレン/エチレン・ブチレン/エチレンブロック共重合体(SEBE)又はその水添物、スチレン/エチレン・ブチレン/スチレンブロック共重合体(SEBS)又はその水添物、スチレン/エチレン・プロピレン/スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン/エチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEEPS)、水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)等が挙げられる。
【0036】
上記スチレン系共重合体に対するスチレンに由来する構造単位の含有量の下限としては、5質量%が好ましく、8質量%がより好ましい。上記スチレンに由来する構造単位の含有量の上限としては、40質量%が好ましく、38質量%がより好ましい。上記スチレンに由来する構造単位の含有量を上記範囲とすることで、上記絶縁層の引張伸び及び耐油性をより向上できる。
【0037】
上記非相溶の樹脂がスチレン系共重合体であり、上記オレフィン系樹脂がポリプロピレンである場合における上記ポリプロピレンに対する上記スチレン系共重合体の質量比の下限としては、20/80が好ましく、30/70がより好ましい。上記ポリプロピレンに対する上記スチレン系共重合体の質量比の上限としては、80/20以下が好ましく、70/30がより好ましい。上記ポリプロピレンに対する上記スチレン系共重合体の質量比が上記範囲であることで、当該電線の絶縁層の引張特性、放熱性及び耐油性をより向上できる。
【0038】
絶縁層3は、上記オレフィン系樹脂と、上記オレフィン系樹脂と非相溶の樹脂以外のその他の樹脂を含有していてもよい。上記その他の樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、フッ素樹脂、フッ素ゴム、シリコーン、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0039】
(第1フィラー)
第1フィラーは黒鉛からなる。上記絶縁層が黒鉛からなる上記第1フィラーを含むことで、絶縁層の導電性を高め、放熱性を良好にできる。
【0040】
上記樹脂成分に対する上記第1フィラーの質量比の下限としては、10/100であり、20/100が好ましく、25/100がより好ましい。上記樹脂成分に対する上記第1フィラーの質量比の上限としては、80/100であり、75/100が好ましく、70/100がより好ましい。上記樹脂成分に対する上記第1フィラーの質量比が上記範囲であることで、絶縁層における放熱性及び絶縁性の両立を図り、良好にできる。
【0041】
上記黒鉛の平均粒径の下限としては、0.5μmが好ましく、1μmがより好ましく、5μmがより好ましい。一方、この平均粒径の上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましく、30μmがより好ましい。黒鉛の平均粒径が0.5μm未満の場合、25℃での熱伝導率が低下するおそれがある。一方、黒鉛の平均粒径が100μmを超えると、引張伸びが低下するおそれがある。上記黒鉛の平均粒径が上記範囲であることで、放熱性をより高めることができる。
【0042】
(第2フィラー)
絶縁層3は、金属酸化物、金属水酸化物又はこれらの組み合わせからなる第2フィラーを含有する。絶縁層3が金属酸化物、金属水酸化物又はこれらの組み合わせからなる第2フィラーを含有することで、絶縁層の放熱性及び絶縁性を向上できる。
【0043】
上記金属酸化物としては、例えば酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化カルシウム等が挙げられる。
【0044】
上記金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0045】
上記樹脂成分に対する上記第2フィラーの質量比の下限としては、30/100が好ましく、50/100がより好ましい。上記樹脂成分に対する上記第2フィラーの質量比の上限としては、200/100が好ましく、180/100がより好ましい。当該電線においては、上記樹脂成分に対する上記第2フィラーの質量比が上記範囲であることで、絶縁性及び引張伸びの双方の両立を図り、良好にできる。
【0046】
上記第2フィラーに対する上記第1フィラーの平均粒径比の下限としては、1.1倍が好ましく、5倍がより好ましい。上記第2フィラーに対する上記第1フィラーの平均粒径比が、1.1倍以上であることで、当該電線の絶縁層の放熱性をより向上できる。上記第2フィラーに対する上記第1フィラーの平均粒径比の上限としては、特に限定されないが、黒鉛の粒径が大きすぎると引張伸びが低下する観点から、例えば100倍以下であってもよい。
【0047】
絶縁層3は、必要に応じてその他の添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、例えば難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、反射付与剤、隠蔽剤、加工安定剤、可塑剤等が挙げられる。
【0048】
絶縁層3における25℃での熱伝導率の下限としては、0.5W/m・Kであり、0.6W/m・Kが好ましく、0.7W/m・Kがより好ましい。絶縁層3の下限を0.5W/m・Kとすることによって、絶縁層3の放熱性を良好にできる。
【0049】
絶縁層3の体積固有抵抗の下限としては、1×1013Ω・cmであり、1×1014Ω・cmが好ましく、1×1015Ω・cmがより好ましい。絶縁層3の体積固有抵抗を1×1013Ω・cm以上とすることによって、絶縁層3の絶縁性及び耐電圧性を良好にできる。
【0050】
[電線の製造方法]
当該電線の製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の工程を備える。
(1)絶縁層を形成するための絶縁層形成用樹脂組成物(以下、樹脂組成物ともいう)を調製する工程(樹脂組成物調製工程)
(2)絶縁層形成用樹脂組成物を導体上に被覆する工程(樹脂組成物被覆工程)
【0051】
(1)樹脂組成物調製工程
樹脂組成物調製工程では、絶縁層形成用樹脂組成物の樹脂成分、第1フィラー、第2フィラー及び必要に応じてその他の添加剤を溶融混合機等により混合することにより絶縁層を形成するための絶縁層形成用樹脂組成物を調製する。溶融混合機としては、公知のもの、例えばオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、単軸混合機、多軸混合機等を使用できる。
なお、本開示の樹脂組成物は、化学架橋、シラン架橋、放射線照射架橋のいずれかで架橋処理がなされていても良い。
【0052】
(2)樹脂組成物被覆工程
樹脂組成物被覆工程では、例えば溶融押出成形機を用いて導体上に上記絶縁層形成用樹脂組成物を押出成形する方法により行うことができる。これにより、絶縁層に対応する押出成形品が得られる。押出成形品の寸法は、用途等に応じて設計することができる。
【0053】
<ケーブル>
本開示の別の態様に係るケーブルは、1又は複数の当該電線と、上記1又は複数の電線の周囲に配される外被層とを備えている。
【0054】
当該ケーブルの外径は、用途により適宜設計されるが、外径の下限としては、10mmが好ましく、15mmがより好ましい。一方、当該ケーブルの外径の上限としては、80mmが好ましく、60mmがより好ましく、50mmがさらに好ましい。
【0055】
[第1実施形態]
本開示の第1実施形態に係るケーブルを図2に示す。第1実施形態に係る同軸ケーブル5は、導体2及びこの導体2の外周を被覆する絶縁層3を備える当該電線1と、当該電線1の周囲に配される外被層4とを備える。すなわち、同軸ケーブル5は、断面形状において、導体2、絶縁層3、及び外被層4が同心円状に積層された構成を有する。当該ケーブルが同軸ケーブル5であることで、細径化が可能となる。当該電線1、導体2及び絶縁層3は、図1の当該電線1と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
外被層4の主成分としては、耐摩耗性に優れた合成樹脂であれば特に限定されず、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、クロロプレン等が挙げられる。また、外被層4は、架橋されていてもよい。
【0057】
外被層4は、絶縁層3で例示した添加剤を含有してもよい。
【0058】
外被層4の平均厚さとしては、0.5mm以上3.0mm以下が好ましい。
【0059】
[第2実施形態]
本開示の第2実施形態に係るケーブルを図3に示す。第2実施形態に係る当該ケーブル20は、2本の図1の当該電線1を撚り合せた芯線と、この芯線の周囲に配される内側被覆層7(介在)と、内側被覆層7の周囲に配される外被層10とを備えるケーブルである。芯線は、2本の同径の当該電線1の対撚りにより構成される。また、当該ケーブル20は、図3に示すように、外被層10と内側被覆層7との間に抑巻部材として、紙等のテープ部材8を巻き付けてもよい。当該ケーブル20は、例えば情報通信分野での給電ケーブルとして好適に使用できる。
【0060】
内側被覆層7の主成分としては、例えばPPヤーン、紙、ジュート等が用いられる。
【0061】
内側被覆層7の外径の下限としては、9.0mmが好ましく、10mmがより好ましい。一方、内側被覆層7の外径の上限としては、75mmが好ましく、60mmがより好ましい。
【0062】
外被層10は、図2の外被層4と同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0063】
<ケーブルの製造方法>
当該ケーブルは、1又は複数の電線の周囲に外被層を被覆する工程(外被層被覆工程)を備える製造方法により得ることができる。当該ケーブルが複数の電線を備える場合、複数の電線を撚り合せる工程を有していてもよい。また、当該ケーブルが、1又は複数の電線の周囲に内側被覆層やテープ部材を備える場合、内側被覆層を形成する工程やテープ部材を巻き付ける工程を有していてもよい。
【0064】
(外被層被覆工程)
外被層被覆工程では、例えば溶融押出成形機を用いて1又は複数の電線の外側に外被層形成用の樹脂組成物を押し出す。これにより、1又は複数の電線の外側に外被層が被覆される。
【0065】
外被層の被覆後、1又は複数の電線を冷却することで外被層が硬化し、当該ケーブルが得られる。この当該ケーブルは、巻取回収される。
【0066】
当該ケーブルの製造方法は、外被層の樹脂成分を架橋する工程(架橋工程)をさらに備えていてもよい。この架橋工程は、外被層を形成する組成物を1又は複数の電線の外側に被覆する前に行ってもよく、被覆後(外被層の形成後)に行ってもよい。
【0067】
当該ケーブルは、芯線を構成するコア電線として上述の当該電線を備えているため、優れた放熱性とともに、高絶縁性、機械的強度及び高耐油性を有する。
【0068】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【実施例
【0069】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
<絶縁層No.1~No.31>
以下の手順により単層からなるNo.1~No.31の絶縁層を形成した。
【0071】
[樹脂成分]
1.オレフィン系樹脂
樹脂成分におけるオレフィン系樹脂として、以下のポリプロピレンを用いた。
(1)ランダムポリプロピレン(ランダムPP)
MFR1.3(g/10分)、曲げ弾性率950MPa
(2)ブロックポリプロピレン(ブロックPP)
MFR:2.0(g/10分)、曲げ弾性率790MPa
なお、上記メルトフローレート(MFR)は、JIS-K7210-1:2014(A法:質量測定法)に準拠した方法により、測定温度230℃、加重2.16kgをかけ、メルトインデクサーを用いて測定される値である。また、曲げ弾性率は、JIS-K7171:2016に準拠した方法により測定される値である。
2.スチレン系共重合体
樹脂成分におけるオレフィン系樹脂と非相溶の樹脂として、以下のスチレン系共重合体を用いた。
(1)スチレン/エチレン・ブチレン/スチレンブロック共重合体(SEBS)(スチレン構造単位の含有量12質量%)
ショアA硬度42
(2)SEBS(スチレン構造単位の含有量18質量%)
ショアA硬度67
(3)SEBS(スチレン構造単位の含有量35質量%)
ショアA硬度49
(4)SEBS(スチレン構造単位の含有量43質量%)
ショアA硬度96
(5)水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)(スチレン構造単位の含有量10質量%)
ショアA硬度42
なお、「ショアA硬度」とは、JIS-K6253:2012に基づいてタイプAデュロメータによって測定される硬度を意味する。「スチレン構造単位の含有量」とは、スチレン系共重合体に対するスチレンに由来する構造単位の含有量を意味する。
【0072】
[第1フィラー]
第1フィラーとして、以下の3種類の黒鉛を用いた。
(1)薄状黒鉛(平均粒径22μm)
(2)球状黒鉛(平均粒径20μm)
(3)薄状黒鉛(平均粒径5μm)
【0073】
[第2フィラー]
第2フィラーとして、以下の5種類のフィラーを用いた。
(1)水酸化マグネシウム(平均粒径0.8μm)
(2)水酸化アルミニウム(平均粒径1.5μm)
(3)水酸化アルミニウム(平均粒径10.0μm)
(4)酸化亜鉛1種(平均粒径0.75μm)
(5)酸化マグネシウム(平均粒径4.5μm)
【0074】
上記樹脂成分、第1フィラー及び第2フィラーを用いて絶縁層形成用樹脂組成物を調製した。絶縁層の組成及び含有量を表1~表3に示す。「-」は該当する成分を用いていないことを示す。
【0075】
[絶縁層の製造]
上記絶縁層形成用樹脂組成物を用いて押出成形により絶縁層を製造した。押出成形には、押出成形用ダイを用いた。押出成形は、ダイス温度180℃で、線速5m/minで行い、平均厚さ2.5mmのNo.1~No.31の絶縁層を得た。上記絶縁層により断面積が14mm(14SQ)の導体の外周を被覆して電線を作製した。
【0076】
[評価]
絶縁層No.1~No.31について、熱伝導率、体積固有抵抗、引張強さ、引張伸び、耐油試験後の引張強さ及び引張伸び、通電時の導体温度、耐電圧並びに絶縁層の横断面での海島構造の有無を評価した。
【0077】
(熱伝導率)
絶縁層形成用樹脂組成物から熱プレス機を用いて、試験サンプルとしてφ150mm×厚さ0.5mmのサイズのプレスシートを作製し、ISO-22007-3(温度波法)に準拠して25℃での熱伝導率を測定した。熱伝導率[W/(m・K)]の値が大きいほど絶縁層の放熱性が高いことを意味する。25℃での熱伝導率が0.50[W/(m・K)]以上の場合、放熱性が優れるといえる。
【0078】
(体積固有抵抗(絶縁性))
絶縁層形成用樹脂組成物から熱プレス機を用いて、試験サンプルとしてφ150mm×厚さ1mmのサイズのプレスシートを作製し、JIS-K6271:2008に定める二重リング電極法を用いて電気抵抗を測定した。測定値から体積固有抵抗値を求めた。体積固有抵抗[Ω・cm]の値が大きいほど絶縁層の絶縁性が高いことを意味する。体積固有抵抗は、1×1013以上の場合、絶縁層の絶縁性が優れるといえる。
【0079】
(引張強さ及び引張伸び)
各絶縁層の引張強さ[MPa]及び引張伸び[%]は、JIS-K-7162:1994に準拠して測定した。引張り強さ10MPa以上、及び引張り伸び200%以上の場合、絶縁層の機械的強度が優れるといえる。
【0080】
(耐油試験後の引張強さ及び引張伸び)
JIS-C3005:2014に基づきJIS2号試験油を用い、70℃で4時間浸漬を行った後、引張強さ[MPa]及び引張伸び[%]を測定し、耐油性を評価した。なお、絶縁層の引張伸び[%]は、JIS-K-7162:1994に準拠して測定した。耐油試験後の引張強さ残率及び引張伸び残率が大きいほど耐油性を有することを意味する。引張り強さ残率が80%以上、かつ伸び残率が60%以上の場合、絶縁層の耐油性が優れるといえる。
【0081】
(通電時の導体温度)
通電時の導体温度は、導体径:4.4mmの14SQの導体の外周に平均厚さ2.5mmのNo.1~No.31の絶縁層が被覆された外径9.4mm、長さ3mの各電線に140Aで通電し、電線の中央部の導体表面の温度を測定した。
【0082】
(耐電圧)
JIS-C3605:2002に準拠して、No.1~No.31の絶縁層が被覆された各電線に2000Vを荷電し、絶縁破壊の有無を評価した。判定は、以下の2段階の通りとした。評価がAの場合、効果が良好である。
A:絶縁破壊が生じていない。
B:絶縁破壊が生じた。
【0083】
(絶縁層の海島構造の有無)
絶縁層の横断面での海島構造の有無は、各電線から採取した絶縁層から凍結ミクロトーム法を用いて薄膜切片を作製し、四酸化ルテニウム、四酸化オスミウム、リン酸タングステンなどで染色したサンプルを透過型電子顕微鏡で観察し、目視判定した。
【0084】
上記各絶縁層の評価結果を表1~表3に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
表1~表3の結果から、絶縁層が樹脂成分としてオレフィン系樹脂及びオレフィン系樹脂と非相溶の樹脂を含み、上記オレフィン系樹脂と上記非相溶の樹脂が海島構造を形成し、第1フィラーの黒鉛と、第2フィラーの金属酸化物又は金属水酸化物と含有し、樹脂成分に対する第1フィラーの質量比が10/100以上80/100以下であり、上記絶縁層における25℃での熱伝導率が0.5W/m・K以上であり、体積固有抵抗が1×1013Ω・cm以上である試験No.1~No.22の絶縁層は、放熱性、絶縁性、機械的強度及び耐油性の全てにおいて良好な結果が得られた。
【0089】
一方、絶縁層がオレフィン系樹脂と非相溶の樹脂を含有しないNo.23の絶縁層は、引張伸びが低下した。
絶縁層がオレフィン系樹脂を含有しないNo.24の絶縁層は、引張強さ及び耐油試験後の引張強さ残率が低下した。
樹脂成分に対する上記第1フィラーの質量比が80/100を超え、かつ体積固有抵抗が1×1013Ω・cm未満のNo.25の絶縁層は、耐電圧試験で絶縁破壊が生じた。
体積固有抵抗が1×1013Ω・cm未満のNo.26の絶縁層は、耐電圧試験で絶縁破壊が生じた。
樹脂成分に対する上記第1フィラーの質量比が10/100未満であり、かつ25℃での熱伝導率が0.5W/m・K未満であるNo.27、No.30及びNo.31の絶縁層は、通電時の導体温度が高くなった。
25℃での熱伝導率が0.5W/m・K未満であるNo.28の絶縁層は、通電時の導体温度が高くなった。
第2フィラーを含有しないNo.29の絶縁層は、耐電圧試験で絶縁破壊が生じた。
【0090】
以上の結果より、当該電線は優れた放熱性とともに、高絶縁性、機械的強度及び高耐油性を有することが示された。
【符号の説明】
【0091】
1 電線
2 導体
3 絶縁層
4、10 外被層
5、20 ケーブル
7 内側被覆層
8 テープ部材
図1
図2
図3