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特許7666769制御装置、制御方法、制御プログラム、及び分散電源システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、制御プログラム、及び分散電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20250415BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/32
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024574725
(86)(22)【出願日】2024-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2024029734
【審査請求日】2024-12-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】松本 航輝
(72)【発明者】
【氏名】井上 禎之
(72)【発明者】
【氏名】マノハル ルティカナンダン
(72)【発明者】
【氏名】松田 啓史
(72)【発明者】
【氏名】石山 柊斗
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/148918(WO,A1)
【文献】特開2022-188498(JP,A)
【文献】特開2024-070101(JP,A)
【文献】特開2020-195166(JP,A)
【文献】特開2023-79645(JP,A)
【文献】特開2022-173860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統への出力電力を増加又は減少させて前記電力系統の系統周波数の変動を抑制する一次調整力を供給する分散電源を制御する制御装置であって、
電力市場で約定した前記一次調整力と、前記分散電源が出力可能な電力の最大値及び最小値の少なくともいずれかとに基づいて、前記電力系統の基準周波数における前記分散電源の前記出力電力を指令値として決定する指令値決定部と、
前記指令値決定部が決定した前記指令値による前記出力電力を基準として、前記系統周波数の前記基準周波数からの低下に応じて前記分散電源の前記出力電力を増加させ、前記系統周波数の前記基準周波数からの上昇に応じて前記分散電源の前記出力電力を減少させる垂下特性を決定する垂下特性決定部と、
前記指令値決定部が決定した前記指令値及び前記垂下特性決定部が決定した前記垂下特性を前記分散電源に出力する出力部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記指令値決定部は、前記分散電源が出力可能な電力の前記最大値から、前記一次調整力のうち前記出力電力を増加させる上げ調整に関する約定量を減算した値以下となるように、前記指令値を決定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記指令値決定部は、前記分散電源が出力可能な電力の前記最小値に、前記一次調整力のうち前記出力電力を減少させる下げ調整に関する約定量を加算した値以上となるように、前記指令値を決定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記垂下特性決定部は、前記電力市場で約定した前記一次調整力に基づいて、前記分散電源の前記出力電力の上限値及び下限値の少なくともいずれかを前記垂下特性に設定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記垂下特性決定部は、前記指令値に、前記電力市場で約定した前記一次調整力のうち前記出力電力の増加量である上げ調整力の約定量を加算した値を、前記上限値として設定する、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記垂下特性決定部は、前記指令値から、前記電力市場で約定した前記一次調整力のうち前記出力電力の減少量である下げ調整力の約定量を減算した値を、前記下限値として設定する、請求項4に記載の制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の制御装置と、
前記制御装置が出力する前記指令値に基づいて前記出力電力を変化させる前記分散電源と、
を備える分散電源システム。
【請求項8】
電力系統への出力電力を増加又は減少させて前記電力系統の系統周波数の変動を抑制する一次調整力を供給する分散電源を制御する制御方法であって、
電力市場で約定した前記一次調整力と、前記分散電源が出力可能な電力の最大値及び最小値の少なくともいずれかとに基づいて、前記電力系統の基準周波数における前記分散電源の前記出力電力を指令値として決定する工程と、
前記指令値による前記出力電力を基準として、前記系統周波数の前記基準周波数からの低下に応じて前記分散電源の前記出力電力を増加させ、前記系統周波数の前記基準周波数からの上昇に応じて前記分散電源の前記出力電力を減少させる前記分散電源の垂下特性を決定する工程と、
前記指令値及び前記垂下特性を前記分散電源に出力する工程と、
を備える制御方法。
【請求項9】
電力系統への出力電力を増加又は減少させて前記電力系統の系統周波数の変動を抑制する一次調整力を供給する分散電源を制御する制御プログラムであって、
電力市場で約定した前記一次調整力と、前記分散電源が出力可能な電力の最大値及び最小値の少なくともいずれかとに基づいて、前記電力系統の基準周波数における前記分散電源の前記出力電力を指令値として決定する工程と、
前記指令値による前記出力電力を基準として、前記系統周波数の前記基準周波数からの低下に応じて前記分散電源の前記出力電力を増加させ、前記系統周波数の前記基準周波数からの上昇に応じて前記分散電源の前記出力電力を減少させる前記分散電源の垂下特性を決定する工程と、
前記指令値及び前記垂下特性を前記分散電源に出力する工程と、
をコンピュータに実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分散電源を制御する制御装置、制御方法、制御プログラム、及び分散電源を含む分散電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統における周波数変動を抑制する一次調整力の供給方法として、分散電源を電力系統に連系させるインバータに、系統周波数の低下に応じて出力電力を増加させ、系統周波数の上昇に応じて出力電力を減少させる垂下特性を持たせる方法がある。例えば蓄電池を用いた分散電源では、供給できる電力量に限度があることから、例えばSoC(State of Charge)に基づく制御が行われる。
【0003】
例えば特許文献1の制御装置では、蓄電池を含む電力貯蔵器の電力貯蔵状態に応じて垂下特性を調整することにより、電力貯蔵装置に蓄えられた電力を交流へ変換して電力系統に出力する電力出力装置の出力電力を調整している。これにより、電力貯蔵器の故障を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-173860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の制御装置は、電力市場において一次調整力の取引が行われる点、及び当該取引により約定された一次調整力の量を考慮していなかった。このため、分散電源は、約定された量の一次調整力を発揮するために、制御装置により決定された垂下特性に基づいて出力を増加又は減少させた場合、その出力が例えば定格値などの出力の制限を超過し、機器の保護停止につながる可能性があった。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたもので、一次調整力の約定量を考慮して分散電源の出力電力の指令値を決定し、当該指令値に基づいて分散電源の垂下特性を決定することで、分散電源が電力市場で約定した一次調整力を発揮した場合に、分散電源の出力電力が出力の制限を超過することを防止できる制御装置、制御方法、制御プログラム、及び分散電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る制御装置は、電力系統への出力電力を増加又は減少させて電力系統の系統周波数の変動を抑制する一次調整力を供給する分散電源を制御する制御装置であって、電力市場で約定した一次調整力と、分散電源が出力可能な電力の最大値及び最小値の少なくともいずれかとに基づいて、電力系統の基準周波数における分散電源の出力電力を指令値として決定する指令値決定部と、指令値決定部が決定した指令値による出力電力を基準として、系統周波数の基準周波数からの低下に応じて分散電源の出力電力を増加させ、系統周波数の基準周波数からの上昇に応じて分散電源の出力電力を減少させる垂下特性を決定する垂下特性決定部と、指令値決定部が決定した指令値及び垂下特性決定部が決定した垂下特性を分散電源に出力する出力部と、を備えるものである。また、本開示に係る分散電源システムは、上記の制御装置と、制御装置が出力する指令値に基づいて出力電力を変化させる分散電源と、を備えるものである。
【0008】
本開示に係る制御方法は、電力系統への出力電力を増加又は減少させて電力系統の系統周波数の変動を抑制する一次調整力を供給する分散電源を制御する制御方法であって、電力市場で約定した一次調整力と、分散電源が出力可能な電力の最大値及び最小値の少なくともいずれかとに基づいて、電力系統の基準周波数における分散電源の出力電力を指令値として決定する工程と、指令値による出力電力を基準として、系統周波数の基準周波数からの低下に応じて分散電源の出力電力を増加させ、系統周波数の基準周波数からの上昇に応じて分散電源の出力電力を減少させる分散電源の垂下特性を決定する工程と、指令値及び垂下特性を分散電源に出力する工程と、を備えるものである。また、本開示に係る制御プログラムは、上記の各工程をコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、分散電源が電力市場で約定した一次調整力を発揮した場合に、分散電源の出力電力が出力の制限を超過することを防止できる制御装置、制御方法、制御プログラム、及び分散電源システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1における電力系統の構成例を示す図
図2】実施の形態1における制御装置の構成例を示すブロック図
図3】実施の形態1における制御装置を実現するコンピュータシステムの構成例を示すブロック図
図4】実施の形態1における制御装置の動作を示すフローチャート
図5】実施の形態1における指令値決定部指令値を決定する処理を示すフローチャート
図6】実施の形態1における指令値決定部が決定した指令値の設定範囲を示す図
図7】実施の形態1における垂下特性決定部が垂下特性を決定する処理を示すフローチャート
図8】実施の形態1における垂下特性決定部が決定した垂下特性を示す図
図9】実施の形態1の変形例1における垂下特性決定部が垂下特性に上限値及び下限値の少なくともいずれかを設定する処理を示す図
図10】実施の形態1の変形例2における垂下特性決定部が垂下特性を決定する処理を示す図
図11】実施の形態1の変形例3における垂下特性決定部が垂下特性を決定する処理を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1
図1を用いて、実施の形態1における制御装置10と、分散電源20と、これらを備える分散電源システム200とを説明する。図1は、実施の形態1における電力系統30の構成例を示す図である。電力系統30は、制御装置10により出力が制御される分散電源20と、電力を消費する設備である負荷34とを有し、これらが送配電網31により接続されている。また、電力系統30は、例えば遮断器(図示せず)や系統用変圧器(図示せず)などを介して電力系統30とは異なる電力系統30aに連系されており、電力系統30と電力系統30aとの間で電力を融通することができる。以降、制御装置10及び分散電源20を合わせて分散電源システム200と記載する
【0012】
分散電源20は、電力変換装置22及び蓄電池23を有する。電力変換装置22は、蓄電池23が放電を行う場合、蓄電池23が送配電網31へ出力する直流電力を交流電力に変換し、蓄電池23が充電を行う場合、蓄電池23が送配電網31から受電する交流電力を直流電力に変換する、交直流を相互に変換可能なインバータ装置である。
また、電力変換装置22は、電力系統30の電圧周波数(以降、系統周波数と記載)が低下した場合に出力電力を増加させ、系統周波数が増加した場合に出力電力を減少させるf-P垂下特性(以降、単に垂下特性と記載)に基づいて出力電力を変化させる。これにより、分散電源20は、系統周波数の変動を抑制する電力系統30の調整力であって、同期発電機における回転数を一定に保つ制御であるガバナフリー制御に相当する一次調整力を提供することができる。以降、系統周波数の基準値からの変動量を周波数偏差と記載する。
【0013】
電力変換装置22は、例えば同軸ケーブルなどの信号線により、制御装置10と接続される。また、電力変換装置22は、通信装置(図示せず)を有し、当該通信装置により制御装置10から出力される垂下特性を示す情報を含む制御指令を受信する。電力変換装置22は、受信した制御指令に基づいて出力を変化させる。また、電力変換装置22は、電力系統30の電圧を計測するセンサ(図示せず)を有する。電力系統30の系統周波数は、当該センサにより計測された電圧から算出できる。
【0014】
電力変換装置22の出力を制御する制御装置10は、例えばLAN(Local Area Network)ケーブルなどの信号線又は無線通信により、エネルギー管理装置32とさらに接続される。
エネルギー管理装置32は、例えばCEMS(Community Energy Management System)、AEMS(Aria Energy Management System)、BEMS(Building and Energy Management System)など、電力系統30における電力の需給を管理する装置である。具体的には、エネルギー管理装置32は、電力系統30における電力需要の予測結果に基づいて、例えば30分単位で区切られた時間帯ごとの電力の需給計画を作成し、作成した需給計画に基づいて、複数の分散電源20が出力すべき合計の出力電力(以降、必要出力と記載)を時間帯ごとに決定する。さらにエネルギー管理装置32は、決定した時間帯ごとの必要出力を示す情報を、対象の時間帯を示す情報に関連付けて制御装置10へ送信する。ここで、出力電力は、有効電力を示しており、以降に記載する出力電力も同様である。
【0015】
また、エネルギー管理装置32は、制御装置10により制御される分散電源20が供給する電力のうち、例えば系統周波数の制御や需要と供給とのバランス調整などに関する調整力として機能する電力に関して、需給調整市場33で取引を行う。エネルギー管理装置32は、需給調整市場33を運営するEPRX(Electric Power Reserve eXchange:電力需給調整力取引所)のサーバとネットワークを介して接続される。ここで、需給調整市場33は、電力に関する取引を行う市場(以降、電力市場と記載)のうちの1つである。需給調整市場33で取引される調整力は、調整力が果たす機能に基づいて複数の種類に分類されている。
【0016】
エネルギー管理装置32は、需給調整市場33における取引で約定した調整力に関する電力のうち、同期発電機におけるガバナフリー制御に相当し、系統周波数の変動を抑制する一次調整力に関する電力(以降、一次調整力の約定量と記載)を示す情報を、約定した対象の分散電源20を示す情報及び約定した対象の時間帯を示す情報に関連付けて制御装置10に送信する。
ここで、一次調整力は、出力電力を増加させること(以降、上げ調整と記載)により発揮する一次調整力及び出力電力を減少させること(以降、下げ調整と記載)により発揮する一次調整力の2つにさらに区別される。このため、エネルギー管理装置32は、上げ調整及び下げ調整の少なくともいずれかに関する一次調整力の約定量を示す情報を、約定した対象の分散電源20を示す情報及び約定した対象の時間帯を示す情報に関連付けて制御装置10へ送信する。
【0017】
制御装置10は、必要出力を示す情報と、一次調整力の約定量を示す情報とを、エネルギー管理装置32から受信して、これらの情報に基づいて、複数の分散電源20が需給調整市場33で約定した量の一次調整力を発揮するように、分散電源20の電力変換装置22による出力電力を制御する。すなわち、制御装置10は、電力系統30への出力電力を増加又は減少させて系統周波数の変動を抑制する一次調整力を供給する分散電源20を制御する。
【0018】
次に、図2及び図3を用いて、制御装置10の機能構成及びハードウェア構成について説明する。図2は、制御装置10の構成例を示すブロック図、図3は、制御装置10を実現するコンピュータシステムの構成例を示すブロック図である。
制御装置10は、図2に示すとおり、エネルギー管理装置32から情報を取得する取得部101と、各種の情報を記憶する記憶部111と、分散電源20の出力電力に関する指令値(以降、単に指令値と記載)を決定する指令値決定部102と、系統周波数に応じて分散電源20の出力電力を変化させる垂下特性を決定する垂下特性決定部103と、指令値及び垂下特性を制御指令として分散電源20に出力する出力部104と、を備える。
【0019】
制御装置10は、図3に構成例を示すコンピュータシステムにおいて、制御装置10が行う処理が記述されたプログラム(以降、制御プログラムと記載)が実行されることにより実現される。このコンピュータシステムは、演算装置301、記憶装置302、通信装置303、及びデバイスコントローラ304を備え、これらはシステムバス311を介して接続される。ここで、図3は一例であり、制御装置10を実現するコンピュータシステムの構成は図3の例に限定されない。
【0020】
ここで、演算装置301は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサであり、制御プログラムを実行する。記憶装置302は、RAM(Random Access Memory)などの各種メモリ及びハードディスクなどのストレージデバイスを含み、演算装置301が実行する制御プログラムや処理の過程で得られた必要なデータなどを記憶するとともに、プログラムの一時的な記憶領域として使用される。通信装置303は、通信処理を実施する受信機及び送信機である。デバイスコントローラ304は、各種の設定値入力に係る入力装置(図示せず)からの操作信号を取得して、演算装置301が実行する制御プログラムに伝達する。
【0021】
図2に示す制御装置10の各機能構成のうち記憶部111は、図3の記憶装置302により実現される。また、図2の取得部101が例えばエネルギー管理装置32から情報を取得する処理及び取得した情報を記憶部111へ記憶させる処理、指令値決定部102が指令値を決定する処理、垂下特性決定部103が垂下特性を決定する処理、及び出力部104が指令値及び垂下特性を電力変換装置22へ出力する処理は、図3の演算装置301が実行する制御プログラムにより実現される。また、図2に示す取得部101が例えばエネルギー管理装置32から情報を取得する通信動作、及び出力部104が電力変換装置22へ指令値又は垂下特性を出力するための通信動作は、図3の通信装置303により実現される。
【0022】
次に、図2及び図4を用いて、制御装置10の各機能構成について詳細に説明する。図4は、実施の形態1における制御装置10の動作を示すフローチャートである。ここで、図4に示すステップS01からS04の一連の動作は、一次調整力が約定された対象の時間帯ごとに行われる。
【0023】
図4のステップS01において、取得部101は、必要出力を示す情報と、一次調整力の約定量を示す情報とを、エネルギー管理装置32から取得して、記憶部111に記憶させる。取得部101は、必要出力を示す情報を、対象の時間帯を示す情報が関連付けられた状態で、一次調整力の約定量を示す情報を、対象の分散電源20を示す情報及び対象の時間帯を示す情報が関連付けられた状態で取得し、記憶部111に記憶させる。
ここで、取得部101が取得する一次調整力の約定量を示す情報は、詳細には、上げ調整に関する約定量及び下げ調整に関する約定量の少なくともいずれかを示す情報である。また、取得部101は、例えば毎週火曜日の15時などのように定期的にエネルギー管理装置32から情報を取得するが、情報を取得するタイミング及び時間間隔はこの例に限定されない。
【0024】
記憶部111は、取得部101により取得された必要出力を示す情報及び一次調整力の約定量を示す情報に加えて、分散電源20の制御に必要となる各種の定数を記憶する。
【0025】
詳細には、記憶部111は、各分散電源20の電力変換装置22が出力可能な電力の最大値(以降、最大出力と記載)及び出力可能な電力の最小値(以降、最小出力と記載)を記憶する。ここで、最大出力及び最小出力は、電力変換装置22の定格値として定められた出力電力(以降、定格電力と記載)でもよく、例えば蓄電池23に関して、例えば劣化度などの状態を考慮して定格電力とは別に設定した制限値でもよい。
さらに記憶部111は、電力系統30の系統周波数の基準値(以降、基準周波数と記載)と、例えば需給調整市場33の取引規程により定められ、一次調整力を供給する分散電源20が遵守しなければならない速度調定率とを記憶する。ここで、基準周波数は、例えば日本では、東日本地域で50Hz、西日本地域で60Hzと定められた系統周波数である。また、速度調定率は、基準周波数に対する周波数偏差の比率と、分散電源20が変化させるべき出力電力の定格電力に対する比率との関係を示す値(単位は%)である。一例として、速度調定率が5%と定められた例においては、分散電源20は、基準周波数に対して5%の周波数偏差が生じた場合に出力電力を定格電力の100%変化させるような変化率で出力電力を変化させる必要がある。ただし、上げ調整又は下げ調整に関する一次調整力の約定量以上に出力を変化させる必要はない。
【0026】
記憶部111が記憶するこれらの定数は、デバイスコントローラ304を介して例えばキーボードなどの入力装置(図示せず)により入力されてもよく、通信装置303を介して例えば電力変換装置22から取得してもよい。
【0027】
図4のステップS02において、指令値決定部102は、系統周波数が基準周波数と一致している場合に分散電源20が出力すべき電力を指令値として決定し、垂下特性決定部103及び出力部104へ出力する。
以降、指令値決定部102が指令値を決定する処理について、図5及び図6を用いて詳細に説明する。図5は、指令値決定部102がn番目の分散電源20に関する指令値Pref(n)(単位はkW)を決定する処理を示すフローチャートである。図6は、指令値決定部102が決定するn番目の分散電源20に関する指令値Pref(n)(単位はkW)の設定範囲を示す図であり、横軸を周波数偏差Δf(単位はHz)、縦軸をn番目の分散電源20の出力電力Pout(n)(単位はkW)とする二次元座標上に、指令値Pref(n)を点αとして描いたものである。図6では、点αの例として、点α1と点α2の2つを同一座標平面上に記載している。ここで、指令値Pref(n)は、基準周波数(すなわち、周波数偏差Δf=0)における分散電源20の出力電力Pout(n)であるから、図6における点αの横軸座標は常に0となる。したがって、点αの座標は常に(0,Pref(n))となる。
【0028】
図5のステップS11において、指令値決定部102は、指令値Pref(n)を決定する処理に必要な情報を記憶部111から読み出す。
詳細には、指令値決定部102は、必要出力Ptotalを読み出す。さらに指令値決定部102は、各分散電源20の上げ調整に関する約定量ΔPinc(単位はkW)及び下げ調整に関する約定量ΔPdec(単位はkW)を読み出す。さらに指令値決定部102は、各分散電源20の最大出力Pmax(単位はkW)及び最小出力Pmin(単位はkW)を読み出す。ここで、図6において、ΔPinc(n)はn番目の分散電源20の上げ調整に関する約定量、ΔPdec(n)はn番目の分散電源20の下げ調整に関する約定量、Pmax(n)はn番目の分散電源20の最大出力、Pmin(n)はn番目の分散電源20の最小出力を表す。また、各分散電源20に関して、上げ調整に関する一次調整力が約定されていない場合、上げ調整に関する約定量ΔPinc(n)の読み出しを省略してよい。同様に、各分散電源20に関して、下げ調整に関する一次調整力が約定されていない場合、下げ調整に関する約定量ΔPdec(n)の読み出しを省略してよい。
【0029】
図5のステップS12において、指令値決定部102は、各分散電源20の最大出力Pmax(n)及び最小出力Pmin(n)の少なくともいずれかに基づいて、各分散電源20の指令値Pref(n)の設定範囲を決定する。
詳細には、指令値決定部102は、上げ調整に関して一次調整力が約定されている場合、式(1-1a)を満たすように指令値Pref(n)の設定範囲を決定し、下げ調整に関して一次調整力が約定されている場合、式(1-1b)を満たすように指令値Pref(n)の設定範囲を決定する。すなわち、上げ調整及び下げ調整の両方に関して一次調整力が約定されている場合、指令値決定部102は、式(1-1a)及び式(1-1b)の両方を満たすように指令値Pref(n)の設定範囲を決定する。
ここで、式(1-1a)及び式(1-1b)における≧及び≦のそれぞれは、>及び<に変更してもよい。
【0030】
【数1】
【0031】
図5のステップS13において、指令値決定部102は、必要出力Ptotal及び各分散電源20に関する指令値Pref(n)の設定範囲に基づいて、各分散電源20の指令値Pref(n)を決定する。
詳細には、指令値決定部102は、式(1-1a)及び式(1-1b)の少なくともいずれかに示される指令値Pref(n)の設定範囲と、式(1-2)とを満たすように、必要出力Ptotalを各分散電源20に指令値Pref(n)として分配する。これにより、図6における点αの座標が決定される。
ここで、式(1-2)において、Nは分散電源20の数である。また、必要出力Ptotalの分配方法は、何ら限定されるものでなく、式(1-1a)及び式(1-1b)の少なくともいずれかに示される指令値Pref(n)の設定範囲内で均等に分配してもよく、例えば重み付けの係数を導入して分配の割合を分散電源20ごとに変更してもよい。
【0032】
【数2】
【0033】
図4に戻って、ステップS03において、垂下特性決定部103は、系統周波数の基準周波数からの変動量に応じて、指令値決定部102が出力した指令値Pref(n)から分散電源20の出力電力を変化させる垂下特性を決定し、出力部104へ出力する。
以降、垂下特性決定部103が垂下特性を決定する処理について、図7及び図8を用いて詳細に説明する。図7は、垂下特性決定部103が垂下特性を決定する処理を示すフローチャート、図8は、垂下特性決定部103が決定した垂下特性を示す図である。ここで、図8は、速度調定率Δfregの定義に合わせて、横軸座標及び縦軸座標の単位を図6から変更している。具体的には、横軸座標は、基準周波数frefに対する周波数偏差Δfの比率(単位は%)を示しており、座標値に基準周波数frefを乗算することで図6と同じ単位へ変換することができる。縦軸座標は、最大出力Pmax(n)に対する分散電源20の出力電力Pout(n)の比率を示しており、座標値に最大出力Pmax(n)を乗算することで図6と同じ単位へ変換することができる。また、図8において、Pref-%(n)は、最大出力Pmax(n)に対する指令値Pref(n)の比率である。
【0034】
図7のステップS21において、垂下特性決定部103は、垂下特性を決定する処理に必要な情報を記憶部111から読み出す。詳細には、垂下特性決定部103は、速度調定率Δfregを記憶部111から読み出す。
【0035】
図7のステップS22において、垂下特性決定部103は、速度調定率Δfregに基づき図8における点βを決定する。
詳細には、垂下特性決定部103は、図8の(A)に示すとおり、横軸座標が-Δfreg、縦軸座標がPref-%(n)+100である点を、点βとして決定する。
【0036】
図7のステップS23において、垂下特性決定部103は、点α及び点βを通る直線501を垂下特性として決定し、決定した垂下特性を出力部104へ出力する。
【0037】
図4に戻って、ステップS04において、出力部104は、指令値決定部102が出力した指令値Pref(n)及び垂下特性決定部103が出力した垂下特性を分散電源20の電力変換装置22へ出力する。電力変換装置22は、制御装置10の出力部104から受け取った指令値Pref(n)及び垂下特性に基づいて出力電力を変化させる。
【0038】
このように、指令値決定部102により、電力市場で約定した一次調整力と、分散電源20が出力可能な電力の最大値及び最小値の少なくともいずれかとに基づいて、電力系統30の基準周波数における分散電源20の出力電力を指令値として決定し、垂下特性決定部103により、指令値を基準として、系統周波数の基準周波数からの低下に応じて分散電源20の出力電力を増加させ、系統周波数の基準周波数からの上昇に応じて分散電源20の出力電力を減少させる垂下特性を決定し、出力部104により、指令値及び垂下特性を分散電源20に出力するように構成したため、分散電源20が電力市場で約定した一次調整力を発揮した場合において、分散電源20の出力電力が最大出力及び最小出力を超過することを防止することが可能な制御装置10を提供することができる。
【0039】
ここで、実施の形態1において、電力系統30及び分散電源システム200は、複数の分散電源20を有する例を図1により示したが、この例に限られず、分散電源20は1つでもよい。また、電力系統30は、1つの負荷34を有する例を図1により示したが、この例に限られず、負荷34は複数あってもよい。
【0040】
また、実施の形態1において、分散電源20として蓄電池23を用いる例を示したが、蓄電池23は、充電及び放電の両方が可能なものに限られず、放電のみが可能なものを含んでいてもよい。また、出力電力Pout(n)は負の値であってもよく、蓄電池23は、充電のみが可能なものを含んでいてもよい。また、分散電源20は、蓄電池23に限られず、周波数偏差Δfに応じて出力電力Pout(n)を変化させる制御が可能な電源設備であればよく、例えば太陽光発電設備や風力発電設備などを用いたものでもよい。
【0041】
また、実施の形態1において、分散電源20の電力変換装置22は、電圧を計測するセンサを有し、当該センサにより計測された電圧から系統周波数を算出する例を示したが、系統周波数の計測方法はこの例に限られず、例えば電力系統30にトランスデューサを接続し、当該トランスデューサにより系統周波数を計測してもよい。この場合、電力変換装置22は、トランスデューサと例えば同軸ケーブルなどの信号線により接続されてよい。
【0042】
また、実施の形態1において、分散電源20は、交直流を相互に変換可能なインバータ装置であって、垂下特性に基づいて出力電力を変化させる電力変換装置22を有する例を示したが、この例に限られず、電源(実施の形態1における蓄電池23)が電力変換装置22の機能を有してもよい。この場合、分散電源20は、電力変換装置22を有していなくてもよい。
【0043】
また、実施の形態1において、エネルギー管理装置32は、EPRXと接続され、EPRXにより運営される需給調整市場33において調整力の取引を行う例を示したが、調整力の取引を行う市場は需給調整市場33に限られず、他の電力市場であってもよい。
【0044】
また、実施の形態1において、エネルギー管理装置32は、EPRXと接続される例を示したが、この例に限られず、エネルギー管理装置32は、例えば、翌日に供給する電力量を取引する場であるスポット市場などを運営するJEPX(Japan Electric Power eXchange:日本卸電力取引所)、電気事業者各社の電力の需給状況を管理して電気事業者間の電力の融通を指示するOCCTO(Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators:電力広域的運用推進機関)、一般送配電事業者、及び小売電気事業者と接続されてもよい。
【0045】
また、実施の形態1において、制御装置10及びエネルギー管理装置32が個別に存在する例を示したが、この例に限らず、例えば制御装置10がエネルギー管理装置32の一部として構成されていてもよい。
【0046】
また、実施の形態1において、制御装置10は、信号線を介して分散電源20及びエネルギー管理装置32と接続される例を示したが、この例に限られず、無線通信により接続されてもよく、インターネットやイントラネットを介して接続されてもよい。
【0047】
また、実施の形態1において、図3に一例を示すコンピュータシステムにより制御装置10を実現する例を示したが、この例に限られず、制御装置10は、複数のコンピュータシステムやクラウドシステムにより実現されてもよい。これにより、例えば制御対象の分散電源20の数などの計算負荷に応じて好適なハードウェア構成を適宜選択することができる。
【0048】
また、実施の形態1において、制御装置10の取得部101は、定期的にエネルギー管理装置32から情報を取得する例を示したが、この例に限られず、取得部101は、情報を取得する指令を受け取った場合に情報を取得してもよい。具体的には、取得部101は、デバイスコントローラ304を介して入力装置から情報を取得する指令が入力された場合に、エネルギー管理装置32から情報を取得してもよい。
【0049】
また、実施の形態1において、制御装置10の指令値決定部102は、指令値Pref(n)を正の値として決定する例を図6により示したが、この例に限られず、指令値決定部102は、指令値Pref(n)を負の値として決定してもよい。これにより、分散電源20による発電量又は放電量だけでなく、分散電源20の電力消費量又は充電量に関する制御も行うことができる。
【0050】
また、実施の形態1において、制御装置10の垂下特性決定部103は、図8の(A)に示すとおり、横軸座標が-Δfreg、縦軸座標がPref-%(n)+100である点を点βとして決定する例を示したが、この例に限らず、垂下特性決定部103は、図8の(B)に示すとおり、横軸座標がΔfreg、縦軸座標がPref-%(n)-100である点を、点βとして決定してもよい。
【0051】
また、実施の形態1において、制御装置10の垂下特性決定部103は、速度調定率Δfregを用いて図8における点βの横軸座標を決定する例を示したが、点βの決定方法はこの例に限られない。例えば、速度調定率Δfregが値の範囲として定められている場合、当該範囲内で点βの横軸座標を任意に決定してもよい。具体的には、速度調定率Δfregが5%以下と定められている場合、垂下特性決定部103は、図8の(A)における点βの横軸座標を例えば-4%(例えば基準周波数が50Hzの場合は-2Hz)としてもよく、同様に図8の(B)における点βの横軸座標を4%としてもよい。
【0052】
また、実施の形態1において、分散電源20は、制御装置10が出力する指令値Pref(n)及び垂下特性に基づいて出力電力を変化させる例を示したが、この例に限られず、例えば速度調定率Δfregを満たす垂下特性を予め分散電源20に設定しておき、分散電源20は、指令値Pref(n)のみを制御装置10の出力部104から受信し、受信した指令値Pref(n)に基づいて出力電力を変化させてもよい。
【0053】
実施の形態1の変形例1
実施の形態1の変形例1について説明する。本変形例において、制御装置10の構成は、図2に示す実施の形態1と同様である。本変形例の制御装置10は、垂下特性決定部103により垂下特性に分散電源20の出力電力Pout(n)に関する上限値及び下限値の少なくともいずれかを設定する点で、実施の形態1と異なっている。
【0054】
本変形例において、垂下特性決定部103は、実施の形態1と同様にして垂下特性を決定する。さらに垂下特性決定部103は、決定した垂下特性に対して、分散電源20の出力電力Pout(n)に関する上限値及び下限値の少なくともいずれかを設定する。
以降、本変形例の垂下特性決定部103が、垂下特性に上限値を設定する処理及び下限値を設定する処理について、図9を用いて詳細に説明する。図9は、垂下特性決定部103が垂下特性に上限値及び下限値の少なくともいずれかを設定する処理を示す図である。
【0055】
上げ調整に関する一次調整力が約定されている場合、垂下特性決定部103は、図9の(A)に示すとおり、指令値Pref(n)に上げ調整に関する約定量ΔPinc(n)を加算した値を、上限値521として垂下特性に設定する。
また、下げ調整に関する一次調整力が約定されている場合、垂下特性決定部103は、図9の(B)に示すとおり、指令値Pref(n)から下げ調整に関する約定量ΔPdec(n)を減算した値を、下限値522として垂下特性に設定する。
また、上げ調整及び下げ調整の両方に関して一次調整力が約定されている場合、図9の(C)に示すとおり、指令値Pref(n)に上げ調整に関する約定量ΔPinc(n)を加算した上限値521と、指令値Pref(n)から下げ調整に関する約定量ΔPdec(n)を減算した下限値522とを、垂下特性に設定する。
【0056】
このように構成した制御装置10も同様に、分散電源20が電力市場で約定した一次調整力を発揮した場合において、分散電源20の出力電力が最大出力及び最小出力を超過することを防止することが可能な制御装置10を提供することができる。さらに、垂下特性決定部103は、分散電源20の出力電力Pout(n)に関する上限値521及び下限値522の少なくともいずれかを垂下特性に設定するように構成したため、約定量より大きな一次調整力を分散電源20が供給してしまうことを防止することができる。
【0057】
実施の形態1の変形例2
実施の形態1の変形例2について説明する。本変形例において、制御装置10の構成は、図2に示す実施の形態1と同様である。本変形例の制御装置10は、垂下特性決定部103における垂下特性の決定方法が実施の形態1及び実施の形態1の変形例1と異なっている。
【0058】
本変形例において、記憶部111は、例えば電力系統30の運用規程などにより定められた系統周波数の変動下限値又は変動上限値を記憶する。記憶部111が記憶するこれらの情報は、デバイスコントローラ304を介して例えばキーボードなどの入力装置(図示せず)により入力されてもよく、通信装置303を介して例えばエネルギー管理装置32から取得してもよい。
【0059】
本変形例において、垂下特性決定部103は、系統周波数の変動下限値又は変動上限値に基づいて垂下特性を決定する。
以降、本変形例の垂下特性決定部103が、系統周波数の変動下限値又は変動上限値に基づいて垂下特性を決定する処理について、図10を用いて詳細に説明する。図10は、本変形例において垂下特性決定部103が垂下特性を決定する処理のうち、上げ調整又は下げ調整のいずれか一方に関して一次調整力が約定されている場合に垂下特性を決定する処理を示す図である。
【0060】
垂下特性決定部103は、上げ調整に関する一次調整力が約定されている場合、系統周波数の変動下限値Δfminを記憶部111から読み出し、下げ調整に関する一次調整力が約定されている場合、系統周波数の変動上限値Δfmaxを記憶部111から読み出す。
【0061】
続いて、垂下特性決定部103は、上げ調整に関する一次調整力が約定されている場合、図10の(A)に示すとおり、横軸座標が系統周波数の変動下限値Δfmin、縦軸座標が指令値Pref(n)に上げ調整に関する約定量ΔPinc(n)を加算した値である点を、点γとして決定する。他方、下げ調整に関する一次調整力が約定されている場合、垂下特性決定部103は、図10の(B)に示すとおり、横軸座標が系統周波数の変動上限値Δfmax、縦軸座標が指令値Pref(n)から下げ調整に関する約定量ΔPdec(n)を減算した値である点を、点γとして決定する。
さらに垂下特性決定部103は、点α及び点γを通る直線531を垂下特性として決定する。
【0062】
このように構成した制御装置10も同様に、分散電源20が電力市場で約定した一次調整力を発揮した場合において、分散電源20の出力電力が最大出力及び最小出力を超過することを防止することが可能な制御装置10を提供することができる。さらに、垂下特性決定部103は、系統周波数の変動下限値Δfminにおいて分散電源20が上げ調整に関する約定量ΔPinc(n)を発揮し、系統周波数の変動上限値Δfmaxにおいて分散電源20が下げ調整に関する約定量ΔPdec(n)を発揮するような垂下特性を決定するように構成したため、約定量より大きな一次調整力を分散電源20が供給してしまうことを防止することができる。
【0063】
なお、実施の形態1の変形例2において、垂下特性決定部103は、点α及び点γを通る直線を垂下特性として決定する例を示したが、垂下特性の決定方法はこの例に限られない。例えば、速度調定率の要件を満たすように垂下特性を決定するため、垂下特性決定部103は、点α及び点γを通る直線531に加えて、実施の形態1と同様にして点α及び点βを通る直線501を描き、直線531及び501のうち傾きが大きい直線を垂下特性として決定してもよい。この場合、垂下特性決定部103は、実施の形態1の変形例1と同様に、出力電力の上限値521及び下限値522の少なくともいずれかを垂下特性に設定してもよい。これにより、分散電源20が速度調定率の要件を満たしつつ、約定量より大きな一次調整力を供給してしまうことを防止することができる。
【0064】
実施の形態1の変形例3
実施の形態1の変形例3について説明する。本変形例において、制御装置10の構成は、図2に示す実施の形態1と同様である。本変形例の制御装置10において、垂下特性決定部103は、変動下限値Δfmin及び変動上限値Δfmaxの少なくともいずれかに基づいて垂下特性を決定する点で実施の形態1の変形例2と類似するものの、本変形例では周波数偏差Δfによらず分散電源20の出力電力Pout(n)が変化しない不感帯を設定する点で、実施の形態1、実施の形態1の変形例1、及び実施の形態1の変形例2と異なっている。
【0065】
本変形例において、記憶部111は、不感帯とする周波数の範囲を記憶する。詳細には、記憶部111は、不感帯に関する周波数偏差の下限値Δfdb-min及び不感帯に関する周波数偏差の上限値Δfdb-maxを記憶する。記憶部111が記憶するこれらの情報は、デバイスコントローラ304を介して例えばキーボードなどの入力装置(図示せず)により入力されてもよく、通信装置303を介して分散電源20から取得してもよい。
【0066】
本変形例において、垂下特性決定部103は、記憶部111から、不感帯に関する周波数偏差の下限値Δfdb-min、不感帯に関する周波数偏差の上限値Δfdb-max、系統周波数の変動下限値Δfmin、及び系統周波数の変動上限値Δfmaxを読み出す。さらに垂下特性決定部103は、指令値決定部102が出力する指令値Pref(n)と、記憶部111から読み出した不感帯に関する周波数偏差の下限値Δfdb-min、不感帯に関する周波数偏差の上限値Δfdb-max、系統周波数の変動下限値Δfmin、及び系統周波数の変動上限値Δfmaxとに基づいて不感帯を有する垂下特性を決定する。
以降、本変形例の垂下特性決定部103が不感帯を有する垂下特性決定する処理について、図11を用いて詳細に説明する。図11は、本変形例において垂下特性決定部103が不感帯541を有する垂下特性を決定する処理を示す図である。
【0067】
垂下特性決定部103は、図11の(A)に示すとおり、横軸座標が系統周波数の変動下限値Δfmin、縦軸座標が指令値Pref(n)に上げ調整に関する約定量ΔPinc(n)を加算した値である点を、点γ1として決定するとともに、横軸座標が系統周波数の変動上限値Δfmax、縦軸座標が指令値Pref(n)から下げ調整に関する約定量ΔPdec(n)を減算した値である点を、点γ2として決定する。
さらに垂下特性決定部103は、不感帯541の端部にあたる点α1及びα2を決定する。詳細には、垂下特性決定部103は、横軸座標が不感帯541の周波数偏差下限値Δfdb-min、縦軸座標が指令値Pref(n)である点を、点α1として決定するとともに、横軸座標が不感帯541の周波数偏差上限値Δfdb-max、縦軸座標が指令値Pref(n)である点を、点α2として決定する。
さらに垂下特性決定部103は、点α1と点γ1とをつなぐ直線542、点α1と点α2とをつなぐ直線である不感帯541、及び点α2と点γ2とをつなぐ直線543の3つの直線を垂下特性として決定する。
【0068】
このように構成した制御装置10も同様に、分散電源20が電力市場で約定した一次調整力を発揮した場合において、分散電源20の出力電力が最大出力及び最小出力を超過することを防止することが可能な制御装置10を提供することができる。さらに、垂下特性決定部103は、系統周波数の変動下限値Δfminにおいて分散電源20が上げ調整に関する約定量ΔPinc(n)を発揮し、系統周波数の変動上限値Δfmaxにおいて分散電源20が下げ調整に関する約定量ΔPdec(n)を発揮するような垂下特性を決定するように構成したため、約定量より大きな一次調整力を分散電源20が供給してしまうことを防止することができる。さらに、垂下特性決定部103は、不感帯541を有する垂下特性を決定するように構成したため、例えば図11の(B)に示すように、不感帯541を設定せずに変曲点を有する垂下特性を決定する場合に比べて、周波数偏差Δf=0を境に分散電源の出力が急変することを防止することができる。
【0069】
なお、実施の形態1の変形例4において、図11の(A)を用いて、垂下特性決定部103は、不感帯541が周波数偏差Δf≧0の範囲及び周波数偏差Δf≦0の範囲の両方を含むように垂下特性を設定する例を示したが、この例に限られず、垂下特性決定部103は、不感帯541を周波数偏差Δf≧0の範囲又は周波数偏差Δf≦0の範囲のいずれかを含むように垂下特性を設定してもよい。
【0070】
また、実施の形態に関する複数の変形例を説明したが、上記の開示内容以外にも、実施の形態及びこれらの変形例に記載された特徴が矛盾しない限り、各変形例の自由な組み合わせ、各変形例の任意の構成要素のさらなる変形、置き換え、又は省略が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 制御装置、20 分散電源、22 電力変換装置、23蓄電池、30、30a 電力系統、31 送配電網、32 エネルギー管理装置、33 需給調整市場、34 負荷、101 取得部、102 指令値決定部、103 垂下特性決定部、104 出力部、111 記憶部、200 分散電源システム、301 演算装置、302 記憶装置、303 通信装置、304 デバイスコントローラ、311 システムバス
【要約】
分散電源が電力市場で約定した一次調整力を発揮した場合に、分散電源の出力電力が出力の制限を超過することを防止できる制御装置を提供する。電力系統への出力電力を増加又は減少させて電力系統の系統周波数の変動を抑制する一次調整力を供給する分散電源(20)を制御する制御装置(10)であって、電力市場で約定した一次調整力と、分散電源が出力可能な電力の最大値及び最小値の少なくともいずれかとに基づいて、電力系統の基準周波数における分散電源(20)の出力電力を指令値として決定する指令値決定部(102)と、指令値による出力電力を基準として、系統周波数の基準周波数からの低下に応じて出力電力を増加させ、系統周波数の基準周波数からの上昇に応じて出力電力を減少させる垂下特性を決定する垂下特性決定部(103)と、指令値及び垂下特性を分散電源(20)に出力する出力部(104)と、を備える制御装置(10)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11