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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】電力増幅器モジュール
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/213 20060101AFI20250415BHJP
【FI】
H03F3/213
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2025504106
(86)(22)【出願日】2024-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2024040809
【審査請求日】2025-01-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】嘉藤 勝也
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-37904(JP,A)
【文献】特開2013-258334(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0133034(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/213
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波を増幅する電力増幅器モジュールであって、
高周波を増幅する能動素子が形成された半導体チップと、
前記電力増幅器モジュールの下面を構成する裏面と前記裏面に対向する表面とを有し、前記裏面に放熱端子が設けられ、前記半導体チップが接合され前記放熱端子と結合された熱散逸構造を有し、前記半導体チップと外部とをインピーダンス整合する入力整合回路及び出力整合回路が形成され、前記半導体チップの電流を制御する制御回路及び前記半導体チップに電力を供給する電力供給回路が形成された基板と、
少なくとも前記基板の前記表面を覆い、前記基板と反対側の表面が前記電力増幅器モジュールの前記下面と対向する上面を形成するモールドと、
を備え、
前記電力増幅器モジュールの前記上面に、前記入力整合回路に導通された第1の入力端子と、前記出力整合回路に導通された第1の出力端子と、前記制御回路に導通された第1の制御端子と、前記電力供給回路に導通された第1の電力供給端子とが設けられ、
前記電力増幅器モジュールの前記下面に、前記入力整合回路に導通された第2の入力端子と、前記出力整合回路に導通された第2の出力端子と、前記制御回路に導通された第2の制御端子と、前記電力供給回路に導通された第2の電力供給端子とが設けられたこと
を特徴とする電力増幅器モジュール。
【請求項2】
前記第2の入力端子と前記入力整合回路とを導通させる経路、前記第2の出力端子と前記出力整合回路とを導通させる経路、前記第2の電力供給端子と前記電力供給回路とを導通させる経路及びに前記第2の制御端子と前記制御回路とを導通させる経路のそれぞれには、その経路上に隣接しつつ離間した対をなす内部端子が設けられたことを特徴とする、請求項1に記載の電力増幅器モジュール。
【請求項3】
前記対をなす内部端子はワイヤリングして導通されたことを特徴とする請求項2に記載の電力増幅器モジュール。
【請求項4】
前記対をなす内部端子は実装されたチップ部品により導通されたことを特徴とする請求項2に記載の電力増幅器モジュール。
【請求項5】
高周波を増幅する電力増幅器モジュールであって、
高周波を増幅する能動素子が形成された半導体チップと、
前記電力増幅器モジュールの下面を構成する裏面と前記裏面に対向する表面とを有し、前記裏面に放熱端子が設けられ、前記半導体チップが接合され前記放熱端子と結合された熱散逸構造を有し、前記半導体チップと外部とをインピーダンス整合する入力整合回路及び出力整合回路が形成され、前記半導体チップの電流を制御する制御回路及び前記半導体チップに電力を供給する電力供給回路が形成された基板と、
少なくとも前記基板の前記表面を覆い、前記基板と反対側の表面が前記電力増幅器モジュールの前記下面と対向する上面を形成するモールドと、
を備え、
前記電力増幅器モジュールの前記上面に、前記入力整合回路に導通された第1の入力端子と、前記出力整合回路に導通された第1の出力端子と、前記制御回路に導通された第1の制御端子と、前記電力供給回路に導通された第1の電力供給端子とが設けられ、
前記電力増幅器モジュールの前記下面に、第2の入力端子と、第2の出力端子と、第2の電力供給端子と、第2の制御端子とが設けられ、
前記第2の入力端子と前記入力整合回路を接続するための接続経路と、前記第2の出力端子と前記出力整合回路を接続するための接続経路と、前記第2の電力供給端子と前記電力供給回路を接続するための接続経路と、前記第2の制御端子と前記制御回路を接続するための接続経路とが設けられ、前記接続経路のそれぞれは、ワイヤリング又はチップ部品を実装することにより導通可能な隣接しつつ離間した対をなす内部端子を有すること
を特徴とする電力増幅器モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は高周波電力を増幅する電力増幅器モジュールに関するものであり、特に上面排熱と下面排熱の両形態で使用可能なものである。
【背景技術】
【0002】
図9に従来の電力増幅器モジュール900の例を示す。多層の樹脂基板10上の表面パターン50にトランジスタが集積化された半導体チップ1がダイボンドされている。表面パターン50は樹脂基板10を貫通するスルーホール12により樹脂基板10の裏面に設けられた下面接地用端子34に接続され導通している。半導体チップ1の裏面は接地端子となっており、下面接地用端子34は半導体チップ1の接地端子として動作する。また半導体チップ1の動作時に発生した熱はスルーホール12を介して下面接地用端子34に伝えられるので下面接地用端子34は電力増幅器モジュール900の排熱端子、サーマルパッドとしても動作する。このような構造は例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
電力増幅器モジュールは上位となる送受信機の基板に実装され、電源回路や受信回路などが接続されて用いられる。図10は従来の電力増幅器モジュール900を、例えば上位となる送受信機のプリント基板60に実装する場合の断面図の例を示す。電力増幅器モジュール900は表面実装部品としてプリント基板60上にはんだ実装される。
【0004】
電力増幅器モジュール900の入力端子32、出力端子32a、及び下面接地用端子34は、それぞれ上位となる無線装置システムのプリント基板60に設けられた端子62、端子62a、及び端子64に接合されている。下面接地用端子34に接合されたプリント基板60の端子64は、プリント基板60を貫通するサーマルビア65を介してプリント基板60の裏面電極66に熱的に結合されている。裏面電極66はヒートシンク70に接合または接触されており、半導体チップ1で発生した熱はヒートシンク70より排熱される。この構成では、電力増幅器モジュール900を電気的に接続する面と排熱面が同じ下面に配置される。
【0005】
一般的に電力増幅器モジュールは高温になるため放熱が重要となる。そのため、プリント基板60には電力増幅器モジュール900の放熱端子(サーマルパッド)と接触する部分に放熱用のサーマルビアが埋め込まれ、ヒートシンク70に熱を伝える。
高い放熱性を実現するにはサーマルビアの密度を高くしプリント基板60の熱抵抗を低下させること効果的であるが、プリント基板60のデザインルールに制限され、十分な放熱性が得られない場合もある。また、回路の高集積化のためにプリント基板60が多層化されプリント基板60の厚さが厚くなる場合も、プリント基板60の熱抵抗が高くなり十分な放熱性が得られない場合がある。
【0006】
一方、電気的に接続する面と排熱面が上下に分離した構造を持つ電力増幅器も開示されている。図11は、電気的に接続する面と排熱面が上下に分かれた分離構造を持つ従来の電力増幅器モジュール910の例である。
半導体チップ1の裏面は接地端子となっており、樹脂基板10を覆うモールド4の樹脂基板10とは反対側の表面に設けられた接地用端子24に、モールド4を貫通するスルーホールを介して接続されている。半導体チップ1の入力側は樹脂基板10を覆うモールド4の樹脂基板10とは反対側の表面に設けられた入力端子22に接続されている。半導体チップ1の出力側は樹脂基板10を覆うモールド4の樹脂基板10とは反対側の表面に設けられた出力端子22aに接続されている。つまり電気的に接続する面はモールド4側であり、排熱面は電力増幅器モジュール900と同様に樹脂基板10の側である。このような構造は例えば特許文献2に開示されている。
【0007】
図12は従来の電力増幅器モジュール910を、上位となる送受信機のプリント基板60とヒートシンク70に実装する場合の断面図の例を示す。電力増幅器モジュール910の入力端子22、出力端子22a、及び接地用端子24は、それぞれ上位となる無線装置システムのプリント基板60に設けられた端子62、端子62a、及び端子64に接合されている。下面接地用端子34はTIM71を介してヒートシンク70に熱的に結合されている。
【0008】
電力増幅器モジュール910では、電気的に接続する面と排熱面が分離されたことでプリント基板60のサーマルビアを介さずに放熱が可能となることから高い放熱性を実現できる。この構造は電気的に接続する面を下側にすると、放熱面が上側になるため、上面排熱構造(Top Side Cooling : TSC)と呼ばれることがある。上面排熱構造に対して、電気的に接続する面と放熱面がともに下面となる図9のモジュールの構造を下面排熱構造(Bottom Side Cooling : BSC)と呼ぶことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願第17/516360号(米国特許出願公開第2023/0133034号)
【文献】特開2022-104789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上面排熱構造の電力増幅器モジュールと下面排熱構造の電力増幅器モジュールは裏面電極と表面電極のパターンが異なるため、電力増幅器モジュールのベンダーは上面排熱構造の電力増幅器モジュールと下面排熱構造の電力増幅器モジュールは個別に開発する必要があった。
【0011】
本開示は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、本開示の目的は上面排熱及び下面排熱の両方で使用可能な電力増幅器モジュールを提供する事であり、電力増幅器モジュールの開発費、製造コストを低減する事である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る電力増幅器モジュールは、高周波を増幅する電力増幅器モジュールであって高周波を増幅する能動素子が形成された半導体チップと、基板と、少なくとも基板の表面を覆い、基板と反対側の表面が電力増幅器モジュールの下面と対向する上面を形成するモールドとを備える。基板は、電力増幅器モジュールの下面を構成する裏面と裏面に対向する表面とを有し、裏面に放熱端子が設けられ、半導体チップが接合され放熱端子と結合された熱散逸構造を有し、半導体チップと外部とをインピーダンス整合する入力整合回路及び出力整合回路が形成され、半導体チップの電流を制御する制御回路及び半導体チップに電力を供給する電力供給回路が形成されている。
電力増幅器モジュールの上面には、入力整合回路に導通された第1の入力端子と、出力整合回路に導通された第1の出力端子と、制御回路に導通された第1の制御端子と、電力供給回路に導通された第1の電力供給端子とが設けられている。電力増幅器モジュールの下面には、入力整合回路に導通された第2の入力端子と、出力整合回路に導通された第2の出力端子と、制御回路に導通された第2の制御端子と、電力供給回路に導通された第2の電力供給端子とが設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、上面排熱及び下面排熱の両方で使用可能な電力増幅器モジュールが提供される。また電力増幅器モジュールの開発費、製造コストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1に係る電力増幅器モジュール100の回路ブロック図である。
図2】電力増幅器モジュール100を示す断面図である。
図3】電力増幅器モジュール100を下面排熱構造として実装する場合の断面図である。
図4】電力増幅器モジュール100を上面排熱構造として実装する場合の断面図である。
図5】電力増幅器モジュール100の熱散逸構造の変形例を示す断面図である。
図6】実施の形態1の変形例に係る電力増幅器モジュール100を示す断面図である。
図7】実施の形態2に係る電力増幅器モジュール200の内部を示す上面図である。
図8】実施の形態2の変形例に係る電力増幅器モジュール210の内部を示す上面図である。
図9】従来の電力増幅器モジュール900を示す断面図である。
図10】電力増幅器モジュール900を下面排熱構造として実装する場合の断面図である。
図11】従来の電力増幅器モジュール910を示す断面図である。
図12】電力増幅器モジュール910を上面排熱構造として実装する場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
本開示の実施の形態に係る電力増幅器について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態1にかかる電力増幅器モジュール100の回路ブロック図である。電力増幅器モジュール100は、半導体チップ1と半導体チップ1に導通された入力整合回路16、出力整合回路17、制御回路18、及び電力供給回路19を備える。入力端子22及び入力端子32は入力整合回路16と導通されている。出力端子22a及び出力端子32aは出力整合回路17と導通されている。制御端子23及び制御端子33は制御回路18と導通されている。電力供給端子25及び電力供給端子35は電力供給回路19と導通されている。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる電力増幅器モジュール100を示す断面図である。電力増幅器モジュール100は樹脂基板10を有する。実施の形態1において樹脂基板10は上層10aと下層10bからなる2層基板である。上層10aと下層10bの間には中間の配線層を有する。樹脂基板10は更に多層の基板であってよい。樹脂基板10の裏面は電力増幅器モジュール100の下面105を構成している。
【0018】
樹脂基板10には入力整合回路16、出力整合回路17、制御回路18(図示せず)、電力供給回路19(図示せず)が形成されている。入力整合回路16、出力整合回路17、制御回路18、電力供給回路19、半導体チップ1を含め、樹脂基板10の表面13はモールド4に覆われている。つまり電力増幅器モジュール100の上面側はモールド4に覆われている。樹脂基板10と反対側のモールド4の表面は電力増幅器モジュール100の上面103を構成している。
【0019】
トランジスタが集積化された半導体チップ1は、金属はんだ、導電性樹脂等により樹脂基板10上の表面パターン50にダイボンドされている。樹脂基板10を貫通するスルーホール12により、表面パターン50は樹脂基板10の裏面に設けられた下面接地用端子34に接合され導通している。半導体チップ1の裏面は接地端子となっており、下面接地用端子34は電力増幅器モジュール100の接地端子として動作する。半導体チップ1の動作時に発生した熱はスルーホール12を介して下面接地用端子34に伝えられるので、下面接地用端子34は電力増幅器モジュール100の放熱端子、サーマルパッドとしても動作する。
【0020】
実施の形態1において、半導体チップ1は能動素子としてGaN(Gallium Nitride)を主材料とするHEMT(High Electron Mobility Transistor)が形成された半導体のダイ(die)である。半導体チップ1は他の材料、例えばガリウム砒素、シリコン等を主材料としてもよく、能動素子はMOSFETであっても良い。実施の形態1において電力増幅器モジュール100は1段の増幅器を形成しているが、多段の増幅器としても良く、ドハティアンプとして構成しても良い。複数個の半導体チップを用いた構成としてもよく、半導体チップ1に受動素子を形成した構成としても良い。
【0021】
表面パターン51、表面パターン52、チップ部品42は入力整合回路16の一部を構成している。表面パターン51はワイヤ3を介して半導体チップ1の入力側に導通している。樹脂基板10の裏面に設けられた入力端子32は、スルーホール36及び内部導体パターン層38を介して表面パターン52に導通している。モールド4の上面に設けられた入力端子22は、モールド4を貫通する導体26により表面パターン52に導通されている。
つまり半導体チップ1の入力側は、樹脂基板10に形成された入力整合回路16を介して、樹脂基板10の裏面すなわち電力増幅器モジュール100の下面105に設けられた入力端子32と、モールド4の上面すなわち電力増幅器モジュール100の上面103に設けられた入力端子22に接続されている。
【0022】
入力整合回路16は入力端子32から外部を見たインピーダンス(通常は50Ω)と半導体チップ1の入力側のインピーダンスとを整合するインピーダンス整合回路である。また入力整合回路16は入力端子22から外部を見たインピーダンス(通常は50Ω)と半導体チップ1の入力側のインピーダンスとを整合するインピーダンス整合回路でもある。
【0023】
表面パターン53、表面パターン54、チップ部品44は出力整合回路17の一部を構成している。表面パターン53はワイヤ3aを介して半導体チップ1の出力側に導通している。樹脂基板10の裏面に設けられた出力端子32aは、スルーホール37及び内部導体パターン層39を介して表面パターン54に導通している。モールド4の上面に設けられた出力端子22aは、モールド4を貫通する導体27により表面パターン54に導通されている。
つまり半導体チップ1の出力側は、樹脂基板10に形成された出力整合回路17を介して、樹脂基板10の裏面すなわち電力増幅器モジュール100の下面105に設けられた出力端子32aと、モールド4の上面すなわち電力増幅器モジュール100の上面103に設けられた出力端子22aに接続されている。
【0024】
出力整合回路17は、出力端子32aから外部を見たインピーダンス(通常は50Ω)と半導体チップ1の出力側のインピーダンスとを整合するインピーダンス整合回路である。また出力整合回路17は、出力端子22aから外部を見たインピーダンス(通常は50Ω)と半導体チップ1の出力側のインピーダンスとを整合するインピーダンス整合回路でもある。
【0025】
入力端子22又は入力端子32に外部から入力された高周波信号は入力整合回路16を介して半導体チップ1へ入力される。半導体チップ1で増幅された高周波信号は出力整合回路17を介して出力端子22a又は出力端子32aから外部へ出力される。
【0026】
樹脂基板10には、半導体チップ1の電流を制御する制御回路18(図示せず)と、半導体チップ1に電力を供給する電力供給回路19(図示せず)が形成されている。
制御回路18は半導体チップ1の入力側と導通している。また制御回路18は、樹脂基板10の裏面に設けられた制御端子33(図示せず)と、モールド4の上面に設けられた制御端子23(図示せず)と導通している。
電力供給回路19は半導体チップ1の出力側と導通している。また電力供給回路19は、樹脂基板10の裏面に設けられた電力供給端子35(図示せず)と、モールド4の上面に設けられた電力供給端子25(図示せず)と導通している。
【0027】
制御回路18は、半導体チップ1に形成されたGaN-HEMTのアイドル電流を設定するためにゲートに負バイアスを与えるための回路である。制御回路18は、外部から制御端子23又は制御端子33に印加されたバイアス電圧を半導体チップ1のゲートに与える。制御回路18は、表面パターン、チップ部品等で構成された受動回路として構成されていても良いし、外部から制御端子23又は制御端子33に印加されたデジタル信号や周囲温度に応じて半導体チップ1に与えるバイアス電圧を生成する制御ICであっても良いし、これらの併用であっても良い。電力増幅器モジュール100が増幅動作を行う周波数において、制御回路18は半導体チップ1のゲートから開放に見えるようインピーダンスが設定されていることが望ましい。
【0028】
電力供給回路19は、半導体チップ1に形成されたGaN-HEMTのドレインに電力を供給するための回路である。電力供給回路19は、外部から電力供給端子25又は電力供給端子35に印加された電力を半導体チップ1のドレインに供給する。電力供給回路19は、表面パターン、チップ部品等で構成された受動回路として構成されていても良いし、レギュレータ素子等の能動素子を併用した回路であっても良い。電力増幅器モジュール100が増幅動作を行う周波数において、電力供給回路19は半導体チップ1のドレインから開放に見えるようインピーダンスが設定されていることが望ましい。
【0029】
モールド4の上面には接地用端子24が設けられている。接地用端子24はモールド4を貫通する導体28を介して表面パターン50と導通している。接地用端子24は、下面接地用端子34と同じく電力増幅器モジュール100のの接地端子として動作する。
【0030】
以上に示したように、実施の形態1に係る電力増幅器モジュール100は、上面103と下面105の両方に同じ機能を有する電極端子を配置したことから、上位となる無線装置において、上面排熱構造としても下面排熱構造としても使用する事が出来る。よって開発コストを抑えることができる。
図3に電力増幅器モジュール100を下面排熱構造として実装する場合の断面図の例を示す。また図4に電力増幅器モジュール100を上面排熱構造として実装する場合の断面図の例を示す。
【0031】
図3に示すように、下面排熱構造として実装する場合、電力増幅器モジュール100の入力端子32、出力端子32a、及び下面接地用端子34は、それぞれ上位となる無線装置システムのプリント基板60に設けられた端子62、端子62a及び端子64に接合されている。また図示しないが制御端子33、電力供給端子35もそれぞれプリント基板60に設けられた端子に接続されている。接合には金属はんだ、導電性樹脂等を用いる事が出来る。
下面接地用端子34に接合されたプリント基板60の端子64は、プリント基板60を貫通するサーマルビア65を介してプリント基板60の裏面電極66に熱的に結合されている。裏面電極66はヒートシンク70に接合または接触されており、半導体チップ1で発生した熱はヒートシンク70より排熱される。
【0032】
図4に示すように、上面排熱構造として実装する場合、電力増幅器モジュール100の入力端子22、出力端子22a、及び接地用端子24は、それぞれ上位となる無線装置システムのプリント基板60に設けられた端子62、端子62a及び端子64に接合されている。また図示しないが制御端子23、電力供給端子25もそれぞれプリント基板60に設けられた端子に接続されている。接合には金属はんだ、導電性樹脂等を用いる事が出来る。
【0033】
下面接地用端子34は絶縁性を有するTIM71を介してヒートシンク70に熱的に結合されている。TIM(Thermal Interface Material)とは、電子機器の内部で発生した不要な熱を効率よく放熱するために部材間に挿入される熱伝導性材料である。例えば高放熱のグリース、シリコーンやエポキシなどの樹脂中に高熱伝導フィラーを高充填して熱伝導性を向上させたシート等が挙げられる。TIMは一般的に絶縁体である。一般にヒートシンク70は導電性を有する金属からなるが、絶縁性を有するTIMを用いることで、入力端子22、出力端子22a、接地用端子24、制御端子23、及び電力供給端子25が短絡することは無い。
【0034】
以上で述べてきたように、実施の形態1に係る電力増幅器モジュール100は、高周波を増幅する能動素子が形成された半導体チップ1を有する。
樹脂基板10は、その裏面が電力増幅器モジュール100の下面105を構成し、その裏面に電力増幅器モジュール100の放熱端子として作用する下面接地用端子34が設けられている。また樹脂基板10には半導体チップ1と外部とをインピーダンス整合する入力整合回路16及び出力整合回路17が形成され、前記半導体チップ1の電流を制御する制御回路18及び半導体チップに電力を供給する電力供給回路19が形成されている。表面パターン50、スルーホール12、下面接地用端子34は熱散逸構造を形成し、その表面側の露出部である表面パターン50には半導体チップ1が接合されている。
入力整合回路16、出力整合回路17、制御回路18、電力供給回路19、半導体チップ1を含め、樹脂基板10の表面13はモールド4に覆われている。つまり電力増幅器モジュール100の上面側はモールド4に覆われている。モールド4の表面は電力増幅器モジュール100の上面103を構成している。
そして、電力増幅器モジュールの上面103には、入力整合回路16に導通された第1の入力端子である入力端子22と、出力整合回路17に導通された第1の出力端子である出力端子22aと、制御回路18に導通された第1の制御端子である制御端子23と、電力供給回路19に導通された第1の電力供給端子である電力供給端子25と、が設けられている。
電力増幅器モジュールの下面105には、入力整合回路16に導通された第2の入力端子である入力端子32と、出力整合回路17に導通された第2の出力端子である出力端子32aと、制御回路18に導通された第2の制御端子である制御端子33と、電力供給回路19に導通された第2の電力供給端子である電力供給端子35と、が設けられている。
【0035】
以上のように実施の形態1に係る電力増幅器モジュール100は、外部と接続する端子を上面と下面の両方に配置した。よって無線装置において使用する際に上面排熱構造としても下面排熱構造としても使用する事が出来る。また電力増幅器モジュール自体の開発コストを抑えることができる。
上面排熱構造として使用する場合、絶縁体のTIMをヒートシンクの間に挟むため上面側で端子間が短絡することはない。
【0036】
なお、実施の形態1において表面パターン50、スルーホール12、下面接地用端子34が熱散逸構造を形成し、その表面側の露出部である表面パターン50に半導体チップ1が接合された構成としたが、図5(A)に示すように樹脂基板10を貫通する金属体14を埋め込んだいわゆる銅インレイ基板を熱散逸構造としてもよい。また図5(B)に示すように、樹脂基板10を貫通する空洞15を設け、上面からみて空洞15から露出した下面接地用端子34に半導体チップ1をダイボンドする構造を熱散逸構造としても良い。この場合、下面接地用端子34を比較的厚い金属体で構成すると良い。
【0037】
実施の形態1の変形例.
なお、図6に示す電力増幅器モジュール101のように、上面の接地端子である接地用端子24と下面の接地端子である下面接地用端子34のサイズを同等としても良い。
図3に示すように電力増幅器モジュール100を下面排熱として用いる場合、上面は開放状態であり、不要波抑圧のために別途シールドが必要であった。
これに対し、電力増幅器モジュール101のように、上面の接地端子である接地用端子24を下面の接地端子である下面接地用端子34のサイズを同等に広くすることで、電力増幅器モジュールの上面と下面がそれぞれ金属層でシールドされるため、不要波を抑圧できる。
【0038】
実施の形態2.
図7は実施の形態2に係る電力増幅器モジュール200の内部を示す上面図である。ここではモールド4を透過して、樹脂基板11を上面から示している。実施の形態2では、実施の形態1における樹脂基板10に代えて樹脂基板11を用いられている。チップ部品48は入力整合回路16の一部を構成している。チップ部品49は出力整合回路17の一部を構成している。
【0039】
樹脂基板10における表面パターン52は、樹脂基板11において表面パターン52aと表面パターン52bに分割されている。表面パターン52aの端は内部端子56a、表面パターン52bの端は内部端子56bとなっている。内部端子56aと内部端子56bは離間しつつ隣接して配置された対をなす内部端子である。表面パターン52bはスルーホール36及び内部導体パターン層38を介して樹脂基板11の裏面に設けられた入力端子32に導通している。
樹脂基板10における表面パターン54は、樹脂基板11において表面パターン54aと表面パターン54bに分割されている。表面パターン54aの端は内部端子57a、表面パターン52bの端は内部端子57bとなっている。内部端子57aと内部端子57bは離間しつつ隣接して配置された対をなす内部端子である。表面パターン54bはスルーホール37及び内部導体パターン層39を介して樹脂基板11の裏面に設けられた出力端子32aに導通している。
【0040】
内部端子56a、内部端子56b、内部端子57a、及び内部端子57bはボンディングワイヤが接合可能、あるいはチップ部品が実装可能に設けられている。
実施の形態2では、内部端子56aと内部端子56bはワイヤ74によりワイヤリングされて導通している。内部端子57aと内部端子57bはワイヤ75によりワイヤリングされて導通している。
また同様に、図示しないが、制御回路18と第2の制御端子である制御端子33とを導通させる配線には離間しつつ隣接して配置された対をなす内部端子が設けられ、ワイヤにより導通されている。そして、電力供給回路19と第2の電力供給端子である電力供給端子35とを導通させる配線には離間しつつ隣接して配置された対をなす内部端子が設けられ、ワイヤにより導通されている。
その他の部分は電力増幅器モジュール100と同様である。
【0041】
実施の形態2に係る電力増幅器モジュール200は、実施の形態1に係る電力増幅器モジュール100と同様に、外部と接続する端子を上面と下面の両方に配置した。よって無線装置において使用する際に上面排熱構造としても下面排熱構造としても使用する事が出来る。
ところで、電力増幅器モジュール100を上面排熱として使用する場合、実施の形態1において説明したように、電力増幅器モジュール100の上面103を絶縁性を有するTIM71を介してヒートシンク70に熱的に結合すれば、ヒートシンク70が導電性を有していても、入力端子22、出力端子22a、接地用端子24、制御端子23、及び電力供給端子25が短絡することは無い。しかし市場には導電性を有するTIMも流通しており、これを使用する場合には短絡が問題となる。
【0042】
実施の形態2に係る電力増幅器モジュール200は、その製造時においてワイヤ74、ワイヤ75、制御回路18と制御端子33とを導通させるワイヤ、及び電力供給回路19と制御端子33とを導通させるワイヤによるワイヤリングを取りやめることで、導電性を有するTIMを使用していても、導電性を有するヒートシンクを上面103に直接接触させても端子間が短絡する事は無い。
このように製造工程において所定のワイヤリングを取りやめるだけで、電力増幅器モジュール200は、その他の設計を変更することなく端子間の短絡を防ぐことができる。また電力増幅器モジュール自体の開発コストを抑えることができる。
【0043】
実施の形態2の変形例.
なお、実施の形態2において、対をなす内部端子はワイヤリングにより導通されているが、ワイヤに代えてチップ部品により導通されても良い。
図8は、実施の形態2の変形例に係る電力増幅器モジュール210の内部を示す上面図である。ここではモールド4を透過して、樹脂基板11を上面から示している。
実施の形態2の変形例において、内部端子56aと内部端子56bは、ワイヤ74に替えてチップ部品40より導通している。内部端子57aと内部端子57bは、ワイヤ75に替えてチップ部品46より導通している。
【0044】
また同様に、図示しないが、制御回路18と第2の制御端子である制御端子33とを導通させる配線には離間しつつ隣接して配置された対をなす内部端子が設けられ、チップ部品により導通されている。そして、電力供給回路19と第2の電力供給端子である電力供給端子35とを導通させる配線には離間しつつ隣接して配置された対をなす内部端子が設けられ、チップ部品により導通されている。
その他の部分は電力増幅器モジュール200と同様である。なおワイヤリングによる導通とチップ部品による導通は混在しても良い。
【0045】
本開示は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
本発明の実施の形態に係る電力増幅器モジュールは、例えばサブ6GHz帯(Sub6)の3.7GHz帯を使用し、Massive MIMOを導入した第5世代移動通信システム向け小型基地局に好適である。
【符号の説明】
【0046】
1 半導体チップ、4 モールド、10、11 樹脂基板、12 スルーホール、13 表面、16 入力整合回路、17 出力整合回路、18 制御回路、19 電力供給回路、22、32 入力端子、22a、32a 出力端子、23、33 制御端子、24 接地用端子、25、35 電力供給端子、26、27、28 導体、34 下面接地用端子、48、49 チップ部品、50 表面パターン、56a、56b、57a、57b 内部端子、60 プリント基板、65 サーマルビア、66 裏面電極、70 ヒートシンク、74、75 ワイヤ、100、101、200、201 電力増幅器モジュール、103 上面、105 下面
【要約】
従来の電力増幅器モジュールは、放熱性を確保するためにプリント基板にサーマルビアを埋め込むが、プリント基板のデザインルールや厚さにより十分な放熱性が得られない場合がある。また、電気的に接続する面と排熱面が上下に分離した構造の電力増幅器も存在する。しかし、これらの構造はそれぞれ異なるパターンを必要とし、個別に開発する必要があった。本開示の電力増幅器モジュールは、上面と下面の両方に入力端子、出力端子を設けることで、上面排熱構造と下面排熱構造の両方で使用可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図12