IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水メディカル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-核酸測定方法 図1
  • 特許-核酸測定方法 図2
  • 特許-核酸測定方法 図3
  • 特許-核酸測定方法 図4
  • 特許-核酸測定方法 図5
  • 特許-核酸測定方法 図6
  • 特許-核酸測定方法 図7
  • 特許-核酸測定方法 図8
  • 特許-核酸測定方法 図9
  • 特許-核酸測定方法 図10
  • 特許-核酸測定方法 図11
  • 特許-核酸測定方法 図12
  • 特許-核酸測定方法 図13
  • 特許-核酸測定方法 図14
  • 特許-核酸測定方法 図15
  • 特許-核酸測定方法 図16
  • 特許-核酸測定方法 図17
  • 特許-核酸測定方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】核酸測定方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20250415BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20250415BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20250415BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20250415BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
C12Q1/68 ZNA
C12Q1/6876 Z
G01N21/64 F
G01N30/88 D
G01N33/53 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024547420
(86)(22)【出願日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2023042669
(87)【国際公開番号】W WO2024117156
(87)【国際公開日】2024-06-06
【審査請求日】2024-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2022191121
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】安倍 健滋
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一博
(72)【発明者】
【氏名】井手野 晃
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-505644(JP,A)
【文献】国際公開第2017/068087(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/140890(WO,A1)
【文献】特開2015-073523(JP,A)
【文献】特開2012-147704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
G01N 21/00
G01N 30/00
G01N 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸を前記標的核酸の代謝物と区別して測定する核酸測定方法であって、
光架橋性人工核酸を含む蛍光標識プローブを前記標的核酸とハイブリダイズさせて標的核酸-蛍光標識プローブ複合体を形成する工程、
前記標的核酸-蛍光標識プローブ複合体に紫外線を照射して前記標的核酸と前記蛍光標識プローブとの間に共有結合を形成させて標的核酸-蛍光標識プローブ結合体を形成する工程、及び
前記標的核酸-蛍光標識プローブ結合体を高速液体クロマトグラフィーで分析し、前記蛍光標識プローブが発する蛍光波長から前記標的核酸-蛍光標識プローブ結合体のピークを検出する工程
を備え
前記蛍光標識プローブの鎖長が、5~8merであり、
前記蛍光標識プローブが2個以上の人工核酸を含む、核酸測定方法。
【請求項2】
記人工核酸がロック核酸、5-メチルシチジル酸、及び2’-デオキシ-5-メチルシチジル酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の核酸測定方法。
【請求項3】
記標的核酸が、ヒト、マウス、ラット、又はサルから採取した血液又は血漿である試料に含まれる、請求項1又は2に記載の核酸測定方法。
【請求項4】
記標的核酸のピークエリア面積と前記標的核酸とは別の蛍光色素で検出した内部標準核酸のピークエリア面積から前記標的核酸の濃度を測定する、請求項1又は2に記載の核酸測定方法。
【請求項5】
記光架橋性人工核酸がCNV-K又はCNV-Dである、請求項1又は2に記載の核酸測定方法。
【請求項6】
記標的核酸は少なくとも1つのリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート修飾されている、請求項1又は2に記載の核酸測定方法。
【請求項7】
架橋性人工核酸を含む蛍光標識プローブであって、
前記蛍光標識プローブのオリゴヌクレオチド鎖長が5~8merであり、GC含量が40%以上であり、かつロック核酸、5-メチルシチジル酸、及び2’-デオキシ-5-メチルシチジル酸からなる群から選択される少なくとも1種の人工核酸を2個以上含む、蛍光標識プローブ。
【請求項8】
記光架橋性人工核酸がCNV-K又はCNV-Dである、請求項に記載の蛍光標識プローブ。
【請求項9】
求項又はに記載の蛍光標識プローブと標的核酸がハイブリダイズしてなる標的核酸-蛍光標識プローブ複合体。
【請求項10】
求項又はに記載の蛍光標識プローブと標的核酸が共有結合してなる標的核酸-蛍光標識プローブ結合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸測定方法に関する。
本願は、2022年11月30日に、日本に出願された特願2022-191121号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
オリゴ核酸を基本骨格とする核酸医薬品は、これまでの創薬手法では標的とするのが難しかった遺伝性疾患等に対する新しい創薬モダリティとして注目を集めている。
核酸医薬品とは一般に、核酸又は修飾核酸が十数~数十塩基連結したオリゴ核酸で構成され、タンパク質に翻訳されることなく直接生体に作用するもので、化学合成により製造される医薬品を指す。遺伝子治療用製品も核酸で構成されるが、タンパク質に翻訳されて作用する点、また、生物学的に製造される点で核酸医薬品とは異なる。
核酸医薬品は大きく分けて、RNAに作用するものとタンパク質に作用するものに大別できる。RNAに作用するものとしては、アンチセンスとsiRNAがあり、これらがこれまで実用化された核酸医薬品の大部分を占める。タンパク質に作用するものには、アプタマーとCpGオリゴがある。実用化されているアンチセンス医薬品の作用機序は大きく分けて二つのタイプがある。一つは、RNaseH依存的にRNAの分解を誘導して標的遺伝子の発現を負に制御するもので、構造的には配列の両端に糖部修飾核酸を導入し、中央部には非修飾のDNAを配したgapmerと呼ばれるものである。もう一方は、スプライシング調節部位に結合することでスプライシングを制御するタイプである。これはSSO(splice-switching oligonucleotide)と呼ばれ、エクソンスキップ又はエクソンインクルージョン等のメカニズムで標的遺伝子の発現を正又は負に制御する。
核酸医薬品の実用化には、生体内での安定化や標的RNAとの結合力の向上が重要であり、これまでに様々な修飾核酸技術が開発、応用されてきた。オリゴ核酸の分解は主として生体内のヌクレアーゼによる加水分解であるため、リン酸ジエステル結合のバックボーンの安定化が必要となる。臨床開発段階にあるアンチセンス医薬品のバックボーンの修飾としては、リン酸ジエステル部分のO原子をS原子に変換したホスホロチオエート修飾(PS修飾)が用いられている。PS修飾核酸においては、糖部への化学修飾も合わせて導入されることが多く、2’-O-メチル化RNA(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル化RNA(2’-MOE)、2’-フッ素化RNA(2’-F)などの2’位への置換基の導入や、構成するリボースの2’及び4’の炭素が架橋で修飾されたヌクレオチドであるLNA(locked nucleicacid:ロック核酸)等の架橋型修飾が用いられる。もう一つの代表的な化学修飾として、リン酸ジエステル結合を電荷のないホスホロジアミデート結合に変換し、リボースの代わりにモルホリン環を導入したモルホリノ核酸も広く用いられている。現在、臨床開発されているアンチセンス医薬品は、全ての核酸にPS修飾核酸を用いているS化オリゴ核酸か、全ての核酸にモルホリノ核酸を用いているモルホリノオリゴ核酸に大別される。
化学合成品である核酸医薬品の薬物動態プロファイルは、低分子医薬品における薬物動態の考え方及び試験方法に準じて評価されている。
【0003】
特許文献1には、検出プローブの使用量を減らしても検出感度(S/N比)を低下させずに標的核酸を高感度に検出できる標的核酸の検出方法として、標的核酸とハイブリダイズする検出プローブ及び支持体に固定された捕捉プローブとを用いるサンドイッチハイブリダイゼーション法による標的核酸の検出方法であって検出プローブ及び/又は捕捉プローブの核酸分子中の少なくとも一つの核酸塩基が光反応性基に置換されており標的核酸と検出プローブ及び/又は捕捉プローブとがハイブリダイズして形成された複合体に光照射して光反応性基と標的核酸中の核酸塩基との間で共有結合を形成させる工程を有する検出方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、光応答性核酸類を含むプローブを使用した標的核酸との光連結が停滞してしまうという問題を克服し光連結効率を向上させる方法として、核酸サンプル中に存在する標的部位と該標的部位に対して相補的な配列を有し光応答性核酸類を含む第一のプローブとを反応溶液中でハイブリダイゼーションし光照射することにより光連結させる方法であって該第一のプローブ内の該光応答性核酸類に起因する自己会合を抑制させることを特徴とする光連結方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、細胞内の高次構造RNA中の検出困難な部位にある塩基配列を検出するための手段として、光架橋性人工核酸プローブをRNA分子中の標的塩基配列と二重鎖形成させて光架橋する方法であって、光架橋性人工核酸プローブとRNA分子中の標的塩基配列の二重鎖形成と同時に又は二重鎖形成に先立って光架橋性人工核酸アシストプローブをRNA分子と二重鎖形成させて光架橋する工程を含む方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2014/034753号
【文献】国際公開第2014/014106号
【文献】特開2022-039526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC,High Performance Liquid Chromatography)は、定性・定量を行うために利用されるもっともポピュラーな分析手法のひとつである。HPLCは試料に含まれる複数の溶質成分を迅速かつ同時に定性・定量が可能で、高精度の装置群により構成されるため分析値の再現性にも優れている。また、HPLCに注入する試料量は数μLオーダー程度から測定が可能で、HPLCの装置の構成やパラメーターを分析者の目的に応じて選定可能なため、幅広い試料適用性を得られる。このような特長から、世界中のあらゆる科学分野や産業の基盤を支える科学技術としてその地位を確立している。
しかし、オリゴ核酸を基本骨格とする核酸医薬品の薬物動態特性解析においては、核酸医薬品である標的核酸をその代謝物と区別して測定する必要があるところ、HPLCの分離性能をもってしても標的核酸とその代謝物を区別して精度よく測定することが困難な場合があった。
【0008】
本発明は、高速液体クロマトグラフィーを用いて標的核酸をその代謝物と区別して精度よく測定することができる核酸測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の態様を含む。
[1] 標的核酸を前記標的核酸の代謝物と区別して測定する核酸測定方法であって、 光架橋性人工核酸を含む蛍光標識プローブを前記標的核酸とハイブリダイズさせて標的核酸-蛍光標識プローブ複合体を形成する工程、
前記標的核酸-蛍光標識プローブ複合体に紫外線を照射して前記標的核酸と前記蛍光標識プローブとの間に共有結合を形成させて標的核酸-蛍光標識プローブ結合体を形成する工程、及び
前記標的核酸-蛍光標識プローブ結合体を高速液体クロマトグラフィーで分析し、前記蛍光標識プローブが発する蛍光波長から前記標的核酸-蛍光標識プローブ結合体のピークを検出する工程
を備える核酸測定方法。
[2] 前記蛍光標識プローブの鎖長が4~11merである、[1]に記載の核酸測定方法。
[3] 前記蛍光標識プローブが2個以上の人工核酸を含む、[1]又は[2]に記載の核酸測定方法。
[4] 前記人工核酸がロック核酸、5-メチルシチジル酸、及び2’-デオキシ-5-メチルシチジル酸からなる群から選択される少なくとも1種である、[3]に記載の核酸測定方法。
[5] 前記標的核酸が、ヒト、マウス、ラット、又はサルから採取した血液又は血漿である試料に含まれる、[1]~[4]のいずれかに記載の核酸測定方法。
[6] 前記標的核酸のピークエリア面積と前記標的核酸とは別の蛍光色素で検出した内部標準核酸のピークエリア面積から前記標的核酸の濃度を測定する、[1]~[5]のいずれかに記載の核酸測定方法。
[7] 前記光架橋性人工核酸がCNV-K又はCNV-Dである、[1]~[6]のいずれかに記載の核酸測定方法。
[8] 前記標的核酸は少なくとも1つのリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート修飾されている、[1]~[7]のいずれかに記載の核酸測定方法。
[9] 光架橋性人工核酸を含む蛍光標識プローブであって、
前記蛍光標識プローブのオリゴヌクレオチド鎖長が4~11merであり、GC含量が40%以上であり、かつロック核酸、5-メチルシチジル酸、及び2’-デオキシ-5-メチルシチジル酸からなる群から選択される少なくとも1種の人工核酸を2個以上含む、蛍光標識プローブ。
[10] 前記光架橋性人工核酸がCNV-K又はCNV-Dである、[9]に記載の蛍光標識プローブ。
[11] [9]又は[10]に記載の蛍光標識プローブと標的核酸がハイブリダイズしてなる標的核酸-蛍光標識プローブ複合体。
[12] [9]又は[10]に記載の蛍光標識プローブと標的核酸が共有結合してなる標的核酸-蛍光標識プローブ結合体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高速液体クロマトグラフィーを用いて標的核酸をその代謝物と区別して精度よく測定することができる核酸測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態の概略を説明する模式図である。
図2図2は、比較例1の結果を示すグラフである。
図3図3は、実施例1の結果を示すグラフである。
図4図4は、比較例2の結果を示すグラフである。
図5図5は、実施例2の結果を示すグラフである。
図6図6は、実施例3-1の結果を示すグラフである。
図7図7は、実施例3-2の結果を示すグラフである。
図8図8は、実施例3-3の結果を示すグラフである。
図9図9は、実施例3-4の結果を示すグラフである。
図10図10は、実施例3-5の結果を示すグラフである。
図11図11は、実施例3-6の結果を示すグラフである。
図12図12は、実施例3-7の結果を示すグラフである。
図13図13は、実施例4-1の結果を示すグラフである。
図14図14は、実施例4-2の結果を示すグラフである。
図15図15は、実施例4-3の結果を示すグラフである。
図16図16は、実施例5-1の結果を示すグラフである。
図17図17は、実施例5-2の結果を示すグラフである。
図18図18は、実施例5-3の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び特許請求の範囲において「~」を用いて数値範囲を表す場合、その数値範囲は「~」の両側の数値を含むものとする。
【0013】
[核酸測定方法]
本発明の核酸測定方法は、標的核酸を前記標的核酸の代謝物と区別して測定する核酸測定方法であり、複合体形成工程、結合体形成工程、及び以下の工程を備える。
【0014】
〈複合体形成工程〉
複合体形成工程は、光架橋性人工核酸を含む蛍光標識プローブを標的核酸とハイブリダイズさせて標的核酸-蛍光標識プローブ複合体を形成する工程である。
【0015】
(標的核酸)
標的核酸は本発明によって測定しようとする核酸である。
前記標的核酸は、例えばオリゴ核酸を基本骨格とする核酸医薬品であり得る。
前記標的核酸の基本骨格であるオリゴ核酸は、リン酸ジエステル部分のO原子をS原子に置換するホスホロチオエート修飾が1箇所以上されていてもよい。
また、前記標的核酸の基本骨格であるオリゴ核酸は、リボース又はデオキシリボースの2’-O-メチル化、2’-O-メトキシエチル化、2’-フッ素化などの2’位への置換基の導入がされていてもよい。
また、前記標的核酸の基本骨格であるオリゴ核酸は、ロック核酸(LNA,Locked Nucleic Acid)等の架橋型修飾を含んでいてもよい。
また、前記標的核酸の基本骨格であるオリゴ核酸は、リン酸ジエステル結合を電荷のないホスホロジアミデート結合に変換し、デオキシリボース又はリボースの代わりにモルホリン環を導入したモルホリノ核酸を含んでいてもよい。
【0016】
前記標的核酸は、ヒト、マウス、ラット、又はサルから採取した血液又は血漿である試料に含まれることが好ましい。
【0017】
前記標的核酸の鎖長は、その用途等によって適宜選択することができ、特に限定されないが、10~150merが好ましく、10~50merがより好ましく、10~20merがさらに好ましい。
【0018】
このような核酸医薬品の非限定的な例としては、Vitravene(商品名,登録商標;一般名 fomivirsen)、Macugen(商品名,登録商標;一般名 pegaptanib)、Kynamro(商品名,登録商標;一般名 mipomersen)、Exondys 51(商品名,登録商標;一般名 eteplirsen)、Spinraza(商品名,登録商標;一般名 nusinersen)、HEPLISAV-B(商品名,登録商標;一般名 CpG1018)、Tegsedi(商品名,登録商標;一般名 inotersen)、Onpattro(商品名,登録商標;一般名 patisiran)、Waylivra(商品名,登録商標;一般名 volanesorsen)、Givlaari(商品名,登録商標;一般名 givosiran)、Vyondys 53(商品名,登録商標;一般名 golodirsen)、Viltepso(商品名,登録商標;一般名 viltolarsen)、及びOxlumo(商品名,登録商標;一般名 lumasiran)が挙げられる。
【0019】
(蛍光標識プローブ)
蛍光標識プローブは上述した標的核酸とハイブリダイズして複合体を形成することができ、かつ、光架橋性人工核酸を含む。
【0020】
前記蛍光標識プローブの塩基配列は前記標的核酸の塩基配列の少なくとも一部と相補的である。前記蛍光標識プローブは前記標的核酸の5’側又は3’側にハイブリダイズすることが好ましい。
前記蛍光標識プローブとしては、前記標的核酸の5’側にハイブリダイズするものと、3’側にハイブリダイズするものとを併用することが好ましい。
【0021】
前記蛍光標識プローブの標識に用いる蛍光色素は、特に限定されず、従来オリゴ核酸の標識に用いられているものから適宜選択すればよい。前記蛍光標識プローブとしては、前記標的核酸の5’側にハイブリダイズするものと、3’側にハイブリダイズするものとを併用する場合、蛍光色が異なる組合せとすることが好ましい。
前記蛍光色素の非限定的な例としては、DyLight 405(励起波長400nm,蛍光波長420nm)、DY-405(励起波長400,蛍光波長420nm)、Alexa Fluor 405(励起波長401nm,蛍光波長421nm)、AMCA(励起波長353nm,蛍光波長440nm)、AMCA-X(励起波長347nm,蛍光波長447nm)、Pacific Blue(励起波長405nm,蛍光波長455nm)、DY-415(励起波長418nm,蛍光波長467nm)、Royal Blue(励起波長426nm,蛍光波長480nm)、ATTO 425(励起波長436nm,蛍光波長484nm)、Cy2(励起波長489nm,蛍光波長505nm)、ATTO 465(励起波長453nm,蛍光波長508nm)、DY-475XL(励起波長492nm,蛍光波長509nm)、NorthernLights 493(励起波長493nm,蛍光波長514nm)、DY-490(励起波長490nm,蛍光波長516nm)、DyLight 488(励起波長493nm,蛍光波長518nm)、Alexa Fluor 488(励起波長495nm,蛍光波長519nm)、5-FITC(励起波長494nm,蛍光波長519nm)、5-FAM(励起波長495nm,蛍光波長520nm)、DY-495-X5(励起波長495nm,蛍光波長520nm)、DY-495(励起波長493nm,蛍光波長521nm)、Fluorescein(励起波長494nm,蛍光波長521nm)、FITC(励起波長498nm,蛍光波長522nm)、ATTO 488(励起波長501nm,蛍光波長523nm)、HiLyte Flour 488(励起波長499nm,蛍光波長523nm)、MFP488(励起波長501nm,蛍光波長523nm)、ATTO 495(励起波長495nm,蛍光波長527nm)、Oyster 500(励起波長505 530nm)、Spectrum Green 497 538nm)、ATTO 520(励起波長525nm,蛍光波長545nm)、ATTO 532(励起波長532nm,蛍光波長553nm)、DY-500XL(励起波長505nm,蛍光波長555nm)、DY-485XL(励起波長485nm,蛍光波長560nm)、Alexa Fluor 555(励起波長555nm,蛍光波長565nm)、HiLyte Plus 555(励起波長552nm,蛍光波長567nm)、DyLight 549(励起波長550nm,蛍光波長568nm)、HiLyte Fluor 555(励起波長553nm,蛍光波長568nm)、Cy3(励起波長550nm,蛍光波長570nm)、DyLight 547(励起波長557nm,蛍光波長570nm)、Rhodamine(励起波長550nm,蛍光波長570nm)、TRITC(励起波長550nm,蛍光波長570nm)、DY-548(励起波長558nm,蛍光波長572nm)、DY-554(励起波長551nm,蛍光波長572nm)、DY-555(励起波長547nm,蛍光波長572nm)、Alexa Fluor 546(励起波長556nm,蛍光波長nm,蛍光波長573nm)、DY-556(励起波長548nm,蛍光波長573nm)、NorthernLights 557(励起波長557nm,蛍光波長574nm)、Oyster 550(励起波長555nm,蛍光波長574nm)、5-TAMRAnm,蛍光波長547(励起波長574nm)、DY-505-X5(励起波長505nm,蛍光波長574nm)、DY-547(励起波長557nm,蛍光波長574nm)、Oyster 556(励起波長562nm,蛍光波長575nm)、DY-549(励起波長560nm,蛍光波長575nm)、ATTO 550(励起波長554nm,蛍光波長576nm)、PE(励起波長488nm,蛍光波長578nm)、B-PE(励起波長545nm,蛍光波長578nm)、R-PE(励起波長566nm,蛍光波長578nm)、DY-560(励起波長559nm,蛍光波長578nm)、TAMRA(励起波長555nm,蛍光波長580nm)、MFP555(励起波長560nm,蛍光波長585nm)、Spectrum Orange(励起波長559nm,蛍光波長588nm)、DY-510XL(励起波長509nm,蛍光波長590nm)、ATTO 565(励起波長563nm,蛍光波長592nm)、Cy3.5(励起波長581nm,蛍光波長596nm)、ROX(X-Rhodamine,Rhodamine Red X)(励起波長587nm,蛍光波長599nm)、DY-590(励起波長580nm,蛍光波長599nm)、5-ROX(励起波長573nm,蛍光波長602nm)、Spectrum Red(励起波長587nm,蛍光波長612nm)、ECD(励起波長488nm,蛍光波長613nm)、Texas Red(励起波長596nm,蛍光波長615nm)、DyLight 594(励起波長593nm,蛍光波長618nm)、Alexa Fluor 594(励起波長590nm,蛍光波長619nm)、HiLyte Fluor TR(励起波長591nm,蛍光波長622nm)、ATTO 590(励起波長594nm,蛍光波長624nm)、MFP590(励起波長597nm,蛍光波長624nm)、DY-610(励起波長610nm,蛍光波長630nm)、DY-480XL(励起波長500nm,蛍光波長630nm)、ATTO 610(励起波長615nm,蛍光波長634nm)、DY-615(励起波長621nm,蛍光波長641nm)、C-PC(C-Phycocyanin)(励起波長616nm,蛍光波長647nm)、ATTO 620(励起波長619nm,蛍光波長643nm)、Phycocyanin(励起波長620nm,蛍光波長650nm)、DY-481XL(励起波長515nm,蛍光波長650nm)、ATTO 633(励起波長629nm,蛍光波長657nm)、DY-630(励起波長636nm,蛍光波長657nm)、DY-632(励起波長637nm,蛍光波長657nm)、DY-633(励起波長637nm,蛍光波長657nm)、MFP631(励起波長633nm,蛍光波長658nm)、DyLight 633(励起波長638nm,蛍光波長658nm)、NorthernLights 637(励起波長637nm,蛍光波長658nm)、DY-631(励起波長637nm,蛍光波長658nm)、DY-634(励起波長635nm,蛍光波長658nm)、APC(Allophycocyanin)(励起波長650nm,蛍光波長660nm)、APC-XL(励起波長650nm,蛍光波長662nm)、DY-520XL(励起波長520nm,蛍光波長664nm)、Alexa Fluor 647(励起波長650nm,蛍光波長665nm)、Cy5(励起波長643nm,蛍光波長667nm)、DY-521XL(励起波長523nm,蛍光波長668nm)、Oyster 645(励起波長650nm,蛍光波長669nm)、Quantum Red(励起波長488nm,蛍光波長670nm)、Tri-Color(励起波長488nm,蛍光波長670nm)、DY-635(励起波長647nm,蛍光波長671nm)、DY-636(励起波長645nm,蛍光波長671nm)、DY-647(励起波長653nm,蛍光波長672nm)、DyLight 647(励起波長652nm,蛍光波長673nm)、HiLyte Fluor 647(励起波長653nm,蛍光波長673nm)、DyLight 649(励起波長646nm,蛍光波長674nm)、HiLyte Plus 647(励起波長649nm,蛍光波長nm,蛍光波長674nm)、Oyster 650(励起波長655nm,蛍光波長674nm)、DY-648(励起波長653nm,蛍光波長674nm)、DY-650(励起波長653nm,蛍光波長674nm)、PerCP(励起波長488nm,蛍光波長675nm)、DY-652(励起波長654nm,蛍光波長675nm)、DY-649(励起波長655nm,蛍光波長676nm)、DY-651(励起波長656nm,蛍光波長678nm)、Oyster 656(励起波長662nm,蛍光波長679nm)、ATTO 655(励起波長663nm,蛍光波長684nm)、Cy5.5(励起波長675nm,蛍光波長694nm)、DY-677(励起波長673nm,蛍光波長694nm)、DY-678(励起波長674nm,蛍光波長698nm)、HiLyte Fluor 680(励起波長678nm,蛍光波長699nm)、DY-675(励起波長674nm,蛍光波長699nm)、DY-676(励起波長674nm,蛍光波長699nm)、IRDye700DX(励起波長689nm,蛍光波長700nm)、DY-681(励起波長691nm,蛍光波長708nm)、DY-680(励起波長690nm,蛍光波長709nm)、DY-682(励起波長690nm,蛍光波長709nm)、DyLight 680(励起波長682nm,蛍光波長715nm)、Alexa Fluor 700(励起波長702nm,蛍光波長723nm)、DY-700(励起波長707nm,蛍光波長730nm)、DY-701(励起波長706nm,蛍光波長731nm)、PREX710(励起波長710nm,蛍光波長740nm)、DY-730(励起波長732nm,蛍光波長758nm)、DY-732(励起波長736nm,蛍光波長759nm)、DY-734(励起波長736nm,蛍光波長759nm)、DY-731(励起波長736nm,蛍光波長760nm)、DY-752(励起波長748nm,蛍光波長772nm)、DY-750(励起波長747nm,蛍光波長776nm)、DyLight 750(励起波長752nm,蛍光波長778nm)、HiLyte Fluor 750(励起波長754nm,蛍光波長778nm)、DY-749(励起波長752nm,蛍光波長778nm)、HiLyte Plus 750(励起波長751nm,蛍光波長nm,蛍光波長779nm)、DY-751(励起波長751nm,蛍光波長779nm)、DyLight 800(励起波長770nm,蛍光波長794nm)、IRDye800CW(励起波長774nm,蛍光波長800nm)、DY-780(励起波長782nm,蛍光波長800nm)、DY-781(励起波長783nm,蛍光波長800nm)、DY-782(励起波長784nm,蛍光波長800nm)、DY-776(励起波長771nm,蛍光波長801nm)、DY-777(励起波長771nm,蛍光波長801nm)、及びIRDye800(励起波長778nm,蛍光波長806nm)が挙げられる。
【0022】
前記光架橋性人工核酸は、紫外線照射によって標的核酸の塩基と架橋を形成するものであれば特に限定されない。
前記光架橋性人工核酸の非限定的な例としては、デオキシリボースを基本骨格とするCNV-K(下記式(1))及びD-トレオニノールを基本骨格とするCNV-D(下記式(2))が挙げられる(いずれも日華化学(株)製)。なお、下記式(1)及び下記式(2)は、ホスホロアミダイト体として示す。
【0023】
【化1】
【0024】
前記蛍光標識プローブは、前記光架橋性人工核酸とは別に、2個以上の人工核酸を含むことが好ましい。
前記人工核酸の非限定的な例としては、ロック核酸(LNA)、5-メチルシチジル酸、及び2’-デオキシ-5-メチルシチジル酸が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0025】
前記蛍光標識プローブの鎖長は、特に限定されないが、4~11merが好ましく、5~10merがより好ましい。鎖長がこの範囲内であると、前記標的核酸により特異的にハイブリダイズしやすくなる。
【0026】
(ハイブリダイゼーション)
複合体形成工程において、標的核酸と蛍光標識プローブのハイブリダイゼーションは、標的核酸と蛍光標識プローブを緩衝液中でインキュベートすることによって行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0027】
〈結合体形成工程〉
結合体形成工程は、複合体形成工程で形成した標的核酸-蛍光標識プローブ複合体に紫外線を照射して前記標的核酸と前記蛍光標識プローブとの間に共有結合を形成させて標的核酸-蛍光標識プローブ結合体を形成する工程である。
【0028】
(光架橋による共有結合の形成)
結合体形成工程において、標的核酸-蛍光標識プローブ複合体の標的核酸と蛍光標識プローブとの間の共有結合は、標的核酸-蛍光標識プローブ複合体に紫外線を照射することにより行う。
紫外線の波長及び照射時間は、光架橋性人工核酸の種類に応じて適宜設定することができる。
光架橋性人工核酸がCNV-K又はCNV-Dである場合、紫外線の波長は313~380nmが好ましく、320~380nmがより好ましい。また、紫外線の照射時間は、1~30分間が好ましく、5~15分間がより好ましい。
【0029】
〈ピーク検出工程〉
ピーク検出工程は、結合体形成工程で形成した標的核酸-蛍光標識プローブ結合体を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、前記蛍光標識プローブが発する蛍光波長から前記標的核酸-蛍光標識プローブ結合体のピークを検出する工程である。
【0030】
HPLCの条件は特に限定されず、適宜設定することができる。
標的核酸のピークエリア面積と標的核酸とは別の蛍光色素で検出した内部標準核酸のピークエリア面積から標的核酸の濃度を測定することができる。
【0031】
[蛍光標識プローブ、複合体、及び結合体]
蛍光標識プローブ、標的核酸、複合体、及び結合体は上述したとおりである。
本発明の蛍光標識プローブは、蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブのオリゴヌクレオチド鎖長が5~10merであり、GC含量が40%以上であり、かつロック核酸、5-メチルシチジル酸、及び2’-デオキシ-5-メチルシチジル酸からなる群から選択される少なくとも1種の人工核酸を2個以上含む。前記光架橋性人工核酸は、CNV-K又はCNV-Dであることが好ましい。これらの条件を満たす蛍光標識プローブは、未変化体と5’代謝物、及び3’代謝物が共存している場合においても、1塩基のみが欠損している5’代謝物、及び3’代謝物には欠損側に対応する蛍光標識プローブは結合せず、未変化体にのみに5’及び3’側に対応する蛍光標識プローブの両方がハイブリダイズすることができる。
本発明の標的核酸-蛍光標識プローブ複合体は、上述した蛍光標識プローブと標的核酸がハイブリダイズしてなるものである。
本発明の標的核酸-蛍光標識プローブ結合体は、上述した蛍光標識プローブと標的核酸が共有結合してなるものである。
【0032】
[作用効果]
標的核酸の未変化体、5’代謝物、及び3’代謝物が共存している場合、これら三者のオリゴヌクレオチド鎖長の違いはしばしばヌクレオチド1~2個に過ぎないため、そのままではHPLCで分離することが困難である。本発明の一実施形態では、標的核酸の5’側及び3’側のそれぞれに特異的にハイブリダイズする蛍光標識プローブを用い、さらに標的核酸と蛍光標識プローブとの間で架橋して共有結合させることで、安定して精度よく、未変化体、5’代謝物、3’代謝物を分離して検出することができる。
図1によれば、未変化体の5’側には蛍光色素Aで標識されたプローブが結合するとともに3’側には蛍光色素Bで標識されたプローブが結合し、5’代謝物の3’側には蛍光色素Bで標識されたプローブが結合し、3’代謝物の5’側には蛍光色素Aで標識されたプローブが結合する。これらをHPLCで分離すると、未変化体では蛍光色素A及び蛍光色素Bの蛍光が測定されるのに対し、代謝物ではいずれか一方のみが測定される。
【実施例
【0033】
以下では実験例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は後述する実験例に限定されるものではない。
【0034】
[材料]
(1)標的核酸((株)日本遺伝子研究所に委託して合成)
・T-PT1-5’a(未変化体16mer):配列番号1
核酸配列(5’→3’):A(L)^G(L)^A(L)^G^C^T^G^A^C^T^T^G^A^T(L)^G(L)^5(L)
(2)標的核酸の模擬代謝物((株)日本遺伝子研究所に委託して合成)
・T-PT1-5’a-3n-1(3’n-1体:15mer):配列番号2
核酸配列(5’→3’):A(L)^G(L)^A(L)^G^C^T^G^A^C^T^T^G^A^T(L)^G(L)
・T-PT1-5n-1(5’n-1体:15mer):配列番号3
核酸配列(5’→3’):G(L)^A(L)^G^C^T^G^A^C^T^T^G^A^T(L)^G(L)^5(L)
(3)内部標準核酸((株)日本遺伝子研究所に委託して合成)
T-IS-16mer(内標核酸:16mer):配列番号4
核酸配列(5’→3’):A(L)GCTTCGAGCTAATCG(L)
(4)蛍光標識プローブ(北海道システム・サイエンス(株)に委託して合成)
・7mer(3L1D)-5’-FAM(3)(5’n-1体判別用、FAM標識(3’修飾)、CNV-D挿入プローブ):配列番号5
核酸配列(5’→3’):5(L)AD5(L)TCT(L)-FAM
・6mer(3L1D)-5’-FAM(3)(5’n-1体判別用、FAM標識(3’修飾)、CNV-D挿入プローブ):配列番号6
核酸配列(5’→3’):A(L)D5(L)TCT(L)-FAM
・5mer(3L1D)-5’-FAM(3)(5’n-1体判別用、FAM標識(3’修飾)、CNV-D挿入プローブ):配列番号7
核酸配列(5’→3’):D5(L)TCT(L)-FAM
・ROX-7mer(3L1D)-3’(3’n-1体判別用、ROX標識(5’修飾)、CNV-D挿入プローブ):配列番号8
核酸配列(5’→3’):ROX-G(L)CAD5(L)AA(L)
・ROX-8mer(3L1D)-3’(3’n-1体判別用、ROX標識(5’修飾)、CNV-D挿入プローブ):配列番号9
核酸配列(5’→3’):ROX-G(L)CAD5(L)AA(L)G
・ROX-8Mer(3L1D)-3’(3’n-1体判別用、ROX標識(5’修飾)、CNV-K挿入プローブ):配列番号10
核酸配列(5’→3’):ROX-G(L)CAK5(L)AA(L)G
・ROX-10mer(3L1D)-3’(3’n-1体判別用、ROX標識(5’修飾)、CNV-D挿入プローブ):配列番号11
核酸配列(5’→3’):ROX-G(L)CAD5(L)AA(L)GTC
・Cy5-IS-16mer(D)(内標核酸用、Cy5標識(5’修飾)、CNV-D挿入プローブ:配列番号12
核酸配列(5’→3’):Cy5-5(L)GATTAGCTCGADGCT(L)
【0035】
核酸配列において各記号は以下の意味である。
A:デオキシアデニル酸
C:デオキシシチジル酸
G:デオキシグアニル酸
T:デオキシチミジル酸
5:2’-デオキシ-5-メチルシチジル酸
(L):ロック核酸(Locked Nucleic Acid)(左側の核酸を構成するリボースの2’位の酸素原子と4’位の炭素原子をメチレンで架橋していることを示す)
^:ホスホロチオエート修飾(ホスホジエステル結合の酸素原子の1つが硫黄原子に置換されていることを示す)
D:CNV-D(日華化学(株))
K:CNV-K(日華化学(株))
FAM:フルオレセイン(励起波長:494nm,蛍光波長:521nm;緑色蛍光) ROX:X-ローダミン(励起波長:587nm,蛍光波長:599nm;オレンジ色蛍光)
Cy5:スルホン化シアニン色素(励起波長:643nm,蛍光波長:667nm;赤色蛍光)
【0036】
[試薬・反応液・資材等]
10%SDS溶液(SDS Solution, Molecular Biology Grade(10% w/v),Promega,#V6551)
Proteinase K(TAKARA,#9034)
20×SSC(Promega,#V4261)
10×supplement:500mM Tris-HCl/pH8.0(Thermo Fisher Scientific,#15568-025)、40mM EDTA/pH8.0(Thermo Fisher Scientific,#15575-038)
10%ツイーン20(CALBIOCHEM)
1%ツイーン20(CALBIOCHEM)
17.5%ポリエチレングリコール(PEG8000)溶液(SIGMA)
Nucleaseフリー水(DEPC処理ではない)(invitrogen,#AM9937)
TE緩衝液(invitrogen,12090015)
Tris(富士フイルム和光純薬(株),#207-06275)
1mol/L水酸化ナトリウム溶液(富士フイルム和光純薬(株),#192-02175)
過塩素酸ナトリウム(NaClO)(富士フイルム和光純薬(株),#192-09255)
1mol/L塩酸(HCl)(富士フイルム和光純薬(株),#083-01095)
ボトルトップフィルター 1000mL(Thermo Fisher Scientific,#597-4520)
BioPro IEX QF陰イオン交換カラム(YMC,QF00S05-0546WP)
Hard-Shell 96ウェルスカート付きPCRプレート(Bio-Rad,#HSP9655)
RAPID Slit Seal(Meso Scale Discovery,RSS-S96-80122)
DNA LoBind tubes,1.5mL,PCR clean(Eppendorf,#0030108051)
Adhesive PCR Plate Seals(Thermo Fisher Scientific,#AB0558)
DNA Lobind Microplate 96/V-PP(Eppendorf,#0030603303)
【0037】
[実験機器]
Thermo Mixer comfort(Eppendorf)
Thermo Mixer F1.5(Eppendorf)
紫外線照射スタンド(オプトコード(株),#FL365-SD)
HPLC((株)島津製作所,LC2050C)
乾熱滅菌器(ヤマト科学(株),SG400)
【0038】
[実験例1]UV照射有り無しでピーク比較(条件A)
〈ハイブリダイゼーション反応〉
(1)標的核酸の調製
標的核酸(未変化体;T-PT1-5’a)を、0.01%ツイーン20を含むNucleaseフリー水を用いて1500ng/mLに調製した。
内部標準核酸(内標核酸;T-IS-16mer)についても同様の溶液で3000ng/mLに調製した。
【0039】
(2)蛍光標識プローブの調製
FAM5’プローブ(7mer(3L1D)-5’-FAM(3))及びCy5-ISプローブ(Cy5-IS-16mer(D))を、TE緩衝液で5μMに希釈調製した。(3)ハイブリダイゼーションバッファーの調製
1サンプルあたり内標核酸(T-IS-16mer)5μL、FAM5’プローブ(7mer(3L1D)-5’-FAM(3))1.4μL(終濃度:0.2μM)、Cy5-ISプローブ(Cy5-IS-16mer(D))1.4μL(終濃度:0.2μM)、20×SSC 8.75μL(終濃度:5×)、10×Supplement 5.25μL(終濃度:1.5×)、17.5% PEG8000を含むNucleaseフリー水 4μL(終濃度:2%)、及び1%ツイーン20を含むNucleaseフリー水 0.35μL(終濃度:0.01%)を混合し、TE緩衝液でトータル30μLになるように調製した。
【0040】
(4)ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションバッファーを30μLずつ96ウェルプレート(Hard-Shell 96ウェルスカート付きPCRプレート)に添加し、測定対象核酸を5μL添加した。プレートシール(RAPID Slit Seal)で表面をシートし、420×gで1分間遠心した後、サーモミキサー(Thermo Mixer comfort)で25℃、800rpm、1時間反応させた。
【0041】
〈UV照射による光架橋〉
ハイブリダイゼーション反応を行ったプレートのシールを剥がし、紫外線照射スタンド下で10分間静置し、光架橋させた。
UV未照射サンプルについてはウェルにアルミホイルを被せてUVを遮光した。
【0042】
〈HPLC分析〉
(1)溶離液(A液,B液)の調製
溶離液A液及びB液を次の通り調製した。
B液はTris 9.69g及び過塩素酸ナトリウム489.76gを秤量し、ミリQ水約3Lに溶解したのち1M HClでpHを8.1に調整した。その後、4Lまでmilli-Q水でメスアップしたのち、孔径0.2μmのボトルトップフィルターでフィルトレーションを行い、超音波処理を15分間行い脱気した。
A液はB液から過塩素酸ナトリウムを除いたものであり、方法はB液の方法に過塩素酸ナトリウムの添加を省いたものである。
組成:A液 20mM Tris-HCl,pH8.1
B液 20mM Tris-HCl,1M NaClO,pH8.1
【0043】
(2)分析開始
(1)で調製した溶離液(A液,B液)を用いて、カラム(BioPro IEX QF陰イオン交換カラム)を装着し、プレートをHPLC装置(LC2050C)にセットし、以下のメソッドで分析を行った。
・分離モード:陰イオン交換
・溶離液:A液,20mM Tris-HCl,pH8.1
B液,20mM Tris-HCl,1M NaClO,pH8.1
・メソッド:20~50% B(0~7.5min)
50~90% B(7.5~8.5min)
90% B(8.5~10.5min)
20% B(10.5~14.5min)
・流速:0.5mL/min
【0044】
〈実験結果〉
UV照射を行なわなかった実験例が比較例(比較例1)であり、UV照射を行った実験例が実施例(実施例1)である。
比較例1の結果を図2に、実施例1の結果を図3に示す。
光架橋性人工核酸を含む蛍光標識プローブを用いることで、クロマトピークが効果的に検出できた(実施例1)。しかし、UV照射を行わなかった場合、標的核酸と蛍光標識プローブが共有結合しないため、HPLC分離中に解離してしまい、標的核酸を検出することができなかった(比較例1)。
【0045】
[実験例2]UV照射有り無しでピーク比較(条件B)
〈ハイブリダイゼーション反応〉
(1)標的核酸の調製
標的核酸(未変化体;T-PT1-5’a)を、0.01%ツイーン20を含むNucleaseフリー水を用いて1500ng/mLに調製した。
内部標準核酸(内標核酸;T-IS-16mer)についても同様の溶液で3000ng/mLに調製した。
【0046】
(2)蛍光標識プローブの調製
FAM5’プローブ(7mer(3L1D)-5’-FAM(3))、ROX3’プローブ(ROX-7mer(3L1D)-3’)、及びCy5-ISプローブ(Cy5-IS-16mer(D))を、TE緩衝液で5μMに希釈調製した。
【0047】
(3)ハイブリダイゼーションバッファーの調製
1サンプルあたり内標核酸(T-IS-16mer)5μL、FAM5’プローブ(7mer(3L1D)-5’-FAM(3))1.4μL(終濃度:0.2μM)、ROX3’プローブ(ROX-7mer(3L1D)-3’)1.4μL(終濃度:0.2μM)、Cy5-ISプローブ(Cy5-IS-16mer(D))1.4μL(終濃度:0.2μM)、20×SSC 8.75μL(終濃度:5×)、10×Supplement 5.25μL(終濃度:1.5×)、17.5% PEG8000を含むNucleaseフリー水 4μL(終濃度:2%)、及び1%ツイーン20を含むNucleaseフリー水 0.35μL(終濃度:0.01%)を混合し、TE緩衝液でトータル30μLになるように調製した。
【0048】
(4)ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションバッファーを30μLずつ96ウェルプレート(Hard-Shell 96ウェルスカート付きPCRプレート)に添加し、測定対象核酸を5μL添加した。プレートシール(RAPID Slit Seal)で表面をシートし、420×gで1分間遠心した後、サーモミキサー(Thermo Mixer comfort)で25℃、800rpm、1時間反応させた。
【0049】
〈UV照射による光架橋〉
ハイブリダイゼーション反応を行ったプレートのシールを剥がし、紫外線照射スタンド下で10分間静置し、光架橋させた。
UV未照射サンプルについてはウェルにアルミホイルを被せてUVを遮光した。
【0050】
〈HPLC分析〉
(1)溶離液(A液,B液)の調製
溶離液A液及びB液を次の通り調製した。
B液は1mol/L水酸化ナトリウム溶液40mL、過塩素酸ナトリウム489.76gを秤量し、ミリQ水約3Lに溶解後、4LまでミリQ水でメスアップしたのち、孔径0.2μmのボトルトップフィルターでフィルトレーションを行い、超音波処理を15分間行い脱気した。
A液はB液から過塩素酸ナトリウムを除いたものであり、方法はB液の方法に過塩素酸ナトリウムの添加を省いたものである。
組成:A液 10mM NaOH
B液 10mM NaOH、1M NaClO
【0051】
(2)分析開始
(1)で調製した溶離液を用いて、カラム(BioPro IEX QF陰イオン交換カラム)を装着し、プレートをHPLC装置(LC2050C)にセットし、以下のメソッドで分析を行った。
・分離モード:陰イオン交換
・溶離液:A液,10mM NaOH
B液,10mM NaOH,1M NaClO
・メソッド:20~90% B(0~25min)
20% B(25~30min)
・流速:0.5mL/min
【0052】
〈実験結果〉
UV照射を行わなかった実験例が比較例(比較例2)であり、UV照射を行った実験例が実施例(実施例2)である。
比較例2の結果を図4に、実施例2の結果を図5に示す。
光架橋性人工核酸を含む蛍光標識プローブを用いることで、クロマトピークが効果的に検出できた(実施例2)。しかし、UV照射を行わなかった場合、標的核酸と蛍光標識プローブが共有結合しないため、HPLC分離中に解離してしまい、標的核酸を検出することができなかった(比較例2)。
【0053】
[実験例3]ハイブリ特異性による未変化体と代謝物の測り分け
〈ハイブリダイゼーション反応〉
(1)標的核酸の調製
標的核酸(未変化体;T-PT1-5’a)、標的核酸の3’代謝物(T-PT1-5’a-3n-1)、及び標的核酸の5’代謝物(T-PT1-5n-1)を、それぞれ、0.01%ツイーン20を含むNucleaseフリー水を用いて1500ng/mLに調製した。
内部標準核酸(内標核酸;T-IS-16mer)についても同様の溶液で3000ng/mLに調製した。
【0054】
(2)プローブの調製
FAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))、ROX3’プローブ(ROX-7mer(3L1D)-3’、ROX-8mer(3L1D)-3’)、及びCy5-ISプローブ(Cy5-IS-16mer(D))を、TE緩衝液で5μMに希釈調製した。同様にROX3’プローブ(ROX-10mer(3L1D)-3’)を、TE緩衝液で0.5μMに希釈調製した。
【0055】
(3)ハイブリダイゼーションバッファーの調製
1サンプルあたり内標核酸5μL、FAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))1.4μL(終濃度:0.2μM)、ROX3’プローブ(ROX-7mer(3L1D)-3’ 1.4μL(終濃度:0.2μM)、ROX-8mer(3L1D)-3’ 1.4μL(終濃度:0.2μM)、又はROX-10mer(3L1D)-3’ 1.4μL(終濃度:0.02μM))、Cy5-ISプローブ(Cy5-IS-16mer(D))1.4μL(終濃度:0.2μM)、20×SSC 8.75μL(終濃度:5×)、10×Supplement 5.25μL(終濃度:1.5×)、17.5% PEG8000を含むNucleaseフリー水 4μL(終濃度:2%)、及び1%ツイーン20を含むNucleaseフリー水 0.35μL(終濃度:0.01%)を混合し、TE緩衝液でトータル30μLになるように調製した。
【0056】
(4)ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションバッファーを30μLずつ96ウェルプレート(Hard-Shell 96ウェルスカート付きPCRプレート)に添加し、測定対象核酸(未変化体及び代謝物)を5μL添加した。プレートシール(RAPID Slit Seal)で表面をシートし、420×gで1分間遠心した後、サーモミキサー(Thermo Mixer comfort)で25℃、800rpm、1時間反応させた。
【0057】
〈UV照射による光架橋〉
ハイブリダイゼーション反応を行ったプレートのシールを剥がし、紫外線照射スタンド下で10分間静置し、光架橋させた。
【0058】
〈HPLC分析〉
(1)溶離液(A液,B液)の調製
溶離液A液及びB液を次の通り調製した。
B液はTris9.69g及び過塩素酸ナトリウム489.76gを秤量し、ミリQ水約3Lに溶解したのち1M HClでpHを8.1に調整した。その後、4LまでミリQ水でメスアップしたのち、孔径0.2μmのボトルトップフィルターでフィルトレーションを行い、超音波処理を15分間行い脱気した。
A液はB液から過塩素酸ナトリウムを除いたものであり、方法はB液の方法に過塩素酸ナトリウムの添加を省いたものである。
組成:A液 20mM Tris-HCl,pH8.1
B液 20mM Tris-HCl,1M NaClO,pH8.1
【0059】
(2)分析開始
(1)で調製した溶離液(A液,B液)を用いて、カラム(BioPro IEX QF陰イオン交換カラム)を装着し、プレートをHPLC装置(LC2050C)にセットし、以下のメソッドで分析を行った。
・分離モード:陰イオン交換
・溶離液:A液,20mM Tris-HCl,pH8.1
B液,20mM Tris-HCl,pH8.1,1M NaClO
・メソッド:20~50% B(0~7.5min)
50~90% B(7.5~8.5min)
90% B(8.5~10.5min)
20% B(10.5~14.5min)
・流速:0.5mL/min
【0060】
〈実験結果〉
標的核酸(未変化体;T-PT1-5’a)とFAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))1.4μL(終濃度:0.2μM)及びROX3’プローブ(ROX-7mer(3L1D)-3’)1.4μL(終濃度:0.2μM)とを用いた実験例(実施例3-1)の結果を図6に示す。
【0061】
標的核酸(5’代謝物;T-PT1-5n-1)とFAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))1.4μL(終濃度:0.2μM)及びROX3’プローブ(ROX-7mer(3L1D)-3’)1.4μL(終濃度:0.2μM)とを用いた実験例(実施例3-2)の結果を図7に示す。
【0062】
標的核酸(3’代謝物;T-PT1-5’a-3n-1)とFAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))1.4μL(終濃度:0.2μM)及びROX3’プローブ(ROX-7mer(3L1D)-3’)1.4μL(終濃度:0.2μM)とを用いた実験例(実施例3-3)の結果を図8に示す。
【0063】
標的核酸(未変化体;T-PT1-5’a)とFAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))1.4μL(終濃度:0.2μM)及びROX3’プローブ(ROX-8mer(3L1D)-3’)1.4μL(終濃度:0.2μM)とを用いた実験例(実施例3-4)の結果を図9に示す。
【0064】
標的核酸(3’代謝物;T-PT1-5’a-3n-1)とFAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))1.4μL(終濃度:0.2μM)及びROX3’プローブ(ROX-8mer(3L1D)-3’)1.4μL(終濃度:0.2μM)とを用いた実験例(実施例3-5)の結果を図10に示す。
【0065】
標的核酸(未変化体;T-PT1-5’a)とFAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))1.4μL(終濃度:0.2μM)及びROX3’プローブ(ROX-10mer(3L1D)-3’)1.4μL(終濃度:0.02μM)とを用いた実験例(実施例3-6)の結果を図11に示す。
【0066】
標的核酸(3’代謝物;T-PT1-5’a-3n-1)とFAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))1.4μL(終濃度:0.2μM)及びROX3’プローブ(ROX-10mer(3L1D)-3’)1.4μL(終濃度:0.02μM)とを用いた実験例(実施例3-7)の結果を図12に示す。
【0067】
実験例3-1(標的核酸の未変化体を用いた実験例)では、図6に示すとおり、FAM及びROXのいずれのピークも検出された。
【0068】
実験例3-2(標的核酸の5’代謝物を用いた実験例)では、図7に示すとおり、ROXのピークのみ検出され、FAMのピークは検出されなかった。
【0069】
実験例3-3(標的核酸の3’代謝物を用いた実験例)では、図8に示すとおり、FAMのピークのみ検出され、ROXのピークは検出されなかった。
【0070】
実施例3-4(標的核酸の未変化体を用いた実験例)では、図9に示すとおり、FAM及びROXのいずれのピークも検出された。
【0071】
実施例3-5(標的核酸の3’代謝物を用いた実験例)では、図10に示すとおり、FAMのピークのみ検出され、ROXのピークは検出されなかった。
【0072】
実施例3-6(標的核酸を用いた実験例)では、図11に示すとおり、FAM及びROXのいずれのピークも検出された。
【0073】
実施例3-7(標的核酸の3’代謝物を用いた実験例)では、図12に示すとおり、FAMのピークのみ検出され、ROXのピークは検出されなかった。
【0074】
以上の結果からわかるとおり、未変化体に特異的な蛍光標識プローブ(FAM5’プローブ、ROX3’プローブ)は1塩基のみが欠損している5’代謝物、及び3’代謝物には欠損側に対応する蛍光標識プローブは結合せず、未変化体にのみに5’及び3’側に対応する蛍光標識プローブの両方がハイブリダイズすることで、代謝物と未変化体とを精度よく区別して測定できることが示唆された。
【0075】
[実験例4]ラット血漿を用いて調製したサンプルの測定
〈ハイブリダイゼーション反応〉
(1)標的核酸の調製
標的核酸(未変化体;T-PT1-5’a)、標的核酸の5’代謝物(T-PT1-5’a-3n-1)、及び標的核酸の3’代謝物(T-PT1-5n-1)を、それぞれ、0.01%ツイーン20を含むNucleaseフリー水を用いて100μg/mLに調製した。
内部標準核酸(内標核酸;T-IS-16mer)についても同様の溶液で10μg/mLに調製した。
【0076】
(2)プローブの調製
FAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))、ROX3’プローブ(ROX-8mer(3L1D)-3’)、及びCy5-ISプローブ(Cy5-IS-16mer(D))を、TE緩衝液で50μMに希釈調製した。
【0077】
(3)添加血漿の調製
(1)で100μg/mLに調製した的核酸(未変化体;T-PT1-5’a)、標的核酸の5’代謝物(T-PT1-5’a-3n-1)、及び標的核酸の3’代謝物(T-PT1-5n-1)を、それぞれ、プールラットEDTA血漿で1μg/mLに希釈調製した。
【0078】
(4)Proteinase処理液の調製
DirectPCR Lysis Reagent(Tail)35.5μL、10%SDS溶液35.5μL(終濃度:2%)、Proteinase K 35.5 μL(終濃度:1/20)及び10 μg/mL内標核酸(T-IS-16mer)35.5 μL(終濃度:0.4 μg/mL)を混合し(総量50μL)、調製した。
【0079】
(5)Proteinase処理法
添加血漿50μLにProteinase処理液50uLを添加後、サーモミキサー(Thermo Mixer F1.5)で55℃、1500rpm、1時間反応させた。
【0080】
(6)SDS沈殿法
3M KClを20μL添加後、5分間氷冷下で静置した。静置後、遠心分離(10000×g,25℃,5分間)し、上清60μLを96ウェルプレート(DNA Lobind Microplate 96/V-PP)に採取した。
【0081】
(7)ハイブリダイゼーションバッファーの調製
20×SSC 16.5μL(終濃度:3×)、50μM FAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))0.5μL(終濃度:0.4μM)、50μM ROX3’プローブ(ROX-8mer(3L1D)-3’)0.5μL(終濃度:0.4μM)、及び50μM Cy5-ISプローブ(Cy5-IS-16mer(D))0.5μL(終濃度:0.4μM)を混合し、0.01%ツイーン20を含むNucleaseフリー水で全量50μLになるように調製した。
【0082】
(8)ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションバッファーを50μLずつ96ウェルプレート(DNA Lobind Microplate 96/V-PP)に添加した。プレートシール(Adhesive PCR Plate Seals)で表面をシートし、恒温槽(乾熱滅菌器(SG400))で95℃、5分間反応させた後、サーモミキサー(Thermo Mixer comfort)で25℃、900rpm、1時間反応させた。
【0083】
〈UV照射による光架橋〉
ハイブリダイゼーション反応を行ったプレートのシールを剥がし、液を別の96ウェルプレート(Hard-Shell 96ウェルスカート付きPCRプレート)に移し、紫外線照射スタンド下で10分間静置し、光架橋させた。
【0084】
〈HPLC分析〉
(1)溶離液(A液,B液)の調製
溶離液A液及びB液を次の通り調製した。
B液はTris9.69g及び過塩素酸ナトリウム489.76gを秤量し、ミリQ水約3Lに溶解したのち1M HClでpHを8.1に調整した。その後、4LまでミリQ水でメスアップしたのち、孔径0.2μmのボトルトップフィルターでフィルトレーションを行い、超音波処理を15分間行い脱気した。
A液はB液から過塩素酸ナトリウムを除いたものであり、方法はB液の方法に過塩素酸ナトリウムの添加を省いたものである。
組成:A液 20mM Tris-HCl,pH8.1
B液 20mM Tris-HCl,pH8.1,1M NaClO
【0085】
(2)分析開始
(1)で調製した溶離液(A液,B液)を用いて、カラム(BioPro IEX QF陰イオン交換カラム)を装着し、プレートをHPLC装置(LC2050C)にセットし、以下のメソッドで分析を行った。
・分離モード:陰イオン交換
・溶離液:A液,20mM Tris-HCl,pH8.1
B液,20mM Tris-HCl,pH8.1,1M NaClO
・メソッド:20~50% B(0~7.5min)
50~90% B(7.5~8.5min)
90% B(8.5~10.5min)
20% B(10.5~14.5min)
・流速:0.5mL/min
【0086】
〈実験結果〉
標的核酸(未変化体:T-PT1-5’a)とFAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))0.5μL(終濃度:0.4μM)及びROX’プローブ(ROX-8mer(3L1D)-3’)0.5μL(終濃度:0.4μM)とを用いた実験例(実施例4-1)の結果を図13に示す。
【0087】
標的核酸(5’代謝物;T-PT1-5n-1)とFAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))0.5μL(終濃度:0.4μM)及びROX3’プローブ(ROX-8mer(3L1D)-3’)0.5μL(終濃度:0.4μM)とを用いた実験例(実施例4-2)の結果を図14に示す。
【0088】
標的核酸(3’代謝物;T-PT1-5’a-3n-1)とFAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))0.5μL(終濃度:0.4μM)及びROX3’プローブ(ROX-8mer(3L1D)-3’)0.5μL(終濃度:0.4μM)とを用いた実験例(実施例4-3)の結果を図15に示す。
【0089】
実施例4-1(標的核酸の未変化体を用いた実験例)では、図13に示すとおり、FAM及びROXのいずれのピークも検出された。
【0090】
実施例4-2(標的核酸の5’代謝物を用いた実験例)では、図14に示すとおり、ROXのピークのみ検出され、FAMのピークは検出されなかった。
【0091】
実施例4-3(標的核酸の3’代謝物を用いた実験例)では、図15に示すとおり、FAMのピークのみ検出され、ROXのピークは検出されなかった。
【0092】
以上の結果からわかるとおり、ラット血漿を実サンプルとして用いた場合であっても、未変化体に特異的な蛍光標識プローブ(FAM5’プローブ、ROX3’プローブ)は1塩基のみが欠損している5’代謝物、及び3’代謝物には欠損側に対応する蛍光標識プローブは結合せず、未変化体にのみに5’及び3’側に対応する蛍光標識プローブの両方がハイブリダイズすることで、代謝物と未変化体とを精度よく区別して測定できることが示唆された。
【0093】
[実験例5]CNV-Kを挿入した蛍光標識プローブを用いた測定
〈実験の概要〉
ROX3’プローブとして、ROX-8mer(3L1D)-3’(配列番号9)に代えて、ROX-8mer(3L1K)-3’(配列番号10)を使用したこと以外は、実験例3と同様に処理をして、HPLC分析を行った。
【0094】
〈実験結果〉
標的核酸(未変化体:T-PT1-5’a)とFAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))0.5μL(終濃度:0.4μM)及びROX’プローブ(ROX-8mer(3L1K)-3’)0.5μL(終濃度:0.4μM)とを用いた実験例(実施例5-1)の結果を図16に示す。
【0095】
標的核酸(5’代謝物;T-PT1-5n-1)とFAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))0.5μL(終濃度:0.4μM)及びROX3’プローブ(ROX-7mer(3L1K)-3’)0.5μL(終濃度:0.4μM)とを用いた実験例(実施例5-2)の結果を図17に示す。
【0096】
標的核酸(3’代謝物;T-PT1-5’a-3n-1)とFAM5’プローブ(5mer(3L1D)-5’-FAM(3))0.5μL(終濃度:0.4μM)及びROX3’プローブ(ROX-7mer(3L1K)-3’)0.5μL(終濃度:0.4μM)とを用いた実験例(実施例5-3)の結果を図18に示す。
【0097】
実施例5-1(標的核酸の未変化体を用いた実験例)では、図16に示すとおり、FAM及びROXのいずれのピークも検出された。
【0098】
実施例5-2(標的核酸の5’代謝物を用いた実験例)では、図17に示すとおり、ROXのピークのみ検出され、FAMのピークは検出されなかった。
【0099】
実施例5-3(標的核酸の3’代謝物を用いた実験例)では、図18に示すとおり、FAMのピークのみ検出され、ROXのピークは検出されなかった。
【0100】
以上の結果からわかるとおり、CNV-Kを挿入した蛍光標識プローブを用いた場合であっても、実施例3-1から実施例3-3までと同様に、未変化体に特異的な蛍光標識プローブ(FAM5’プローブ、ROX3’プローブ)は1塩基のみが欠損している5’代謝物、及び3’代謝物には欠損側に対応する蛍光標識プローブは結合せず、未変化体にのみに5’及び3’側に対応する蛍光標識プローブの両方がハイブリダイズすることで、代謝物と未変化体とを精度よく区別して測定できることが示唆された。
【0101】
[配列一覧]
本明細書に開示した核酸配列を以下の表に示す。
【0102】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の核酸測定方法は、例えば核酸医薬品の薬物動態解析において有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
0007666838000001.xml