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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】コンパクト容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20250415BHJP
【FI】
A45D33/00 630Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020094743
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021186261
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-02
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】北村 英隆
【審判官】米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104472(JP,A)
【文献】実開昭60-116906(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00、40/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、
前記容器本体に対して左右方向に延びる回動軸を中心として上下方向に回動可能に連結された蓋体と、
前記蓋体および前記容器本体のうちのいずれか一方に支持され、前記回動軸と交差する面に沿って延在する板面を有する摺動板と、
前記蓋体および前記容器本体のうちのいずれか他方に支持され、前記回動軸と交差する面に沿って延在する板面を有する干渉板と、
を備え、
前記蓋体が前記容器本体に対して所定の開位置まで回動した際に前記摺動板の板面が前記干渉板の板面に摺接し、前記干渉板が前記回動軸の軸方向に撓み変形することによって前記蓋体が前記開位置で保持され
前記蓋体を前記容器本体に対して回動可能に連結するヒンジ部材をさらに備え、
前記ヒンジ部材は、
前記容器本体に連結される容器本体側連結部と、
前記蓋体に連結される蓋体側連結部と、
前記容器本体側連結部と前記蓋体側連結部とを連結する弾性変形部と、
を有し、
前記摺動板は、前記蓋体と一体に形成され、
前記干渉板は、前記容器本体に支持された前記ヒンジ部材と一体に形成された、コンパクト容器。
【請求項2】
前記容器本体に下方に向けて開口する本体側溝部が形成され、
前記蓋体に下方に向けて開口する蓋体側溝部が形成され、
閉蓋状態において、前記ヒンジ部材は、前記容器本体側連結部および前記蓋体側連結部の各先端が上方に向かって延びるとともに、前記弾性変形部が下方に位置し、左右方向から見た断面が全体として略U字状の形状を呈し、
前記ヒンジ部材は、前記容器本体側連結部が前記本体側溝部に嵌合することによって前記容器本体に連結されるとともに、前記蓋体側連結部が前記蓋体側溝部に嵌合することによって前記蓋体に連結されている、請求項1に記載のコンパクト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体に開閉可能に連結された蓋体を任意の開位置で静止させる機能を備えたコンパクト容器が、従来から知られている。以下、本明細書においては、上記の蓋体を任意の開位置で静止させることをフリーストップと称する。例えば下記の特許文献1に、容器本体に対して蓋体を回動可能に枢着するヒンジピン部およびピン受け部を備え、ヒンジピン部およびピン受け部は、容器本体と蓋体とを回動可能に保持する第1部分と、摩擦力を発生する第2部分と、を有するコンパクト容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-83016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1のコンパクト容器においては、ヒンジピン部の外周面とピン受け部の内周面との間に発生する摩擦力によってフリーストップ作用を発現させている。そのため、蓋体を任意の開位置で安定して静止させるために、摩擦力をある程度大きく設計した場合に、蓋体の開閉操作を円滑に行うことが難しくなるおそれがある。すなわち、従来のコンパクト容器においては、フリーストップ作用の安定性向上と蓋体開閉時の操作性向上とを両立させることが難しく、両者のバランスに優れたコンパクト容器の提供が望まれている。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記の課題を解決するためになされたものであって、蓋体を任意の開位置で安定して保持させつつ、蓋体の開閉操作を円滑に行うことができるコンパクト容器を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様のコンパクト容器は、容器本体と、前記容器本体に対して回動軸を中心として回動可能に連結された蓋体と、前記蓋体および前記容器本体のうちのいずれか一方に支持され、前記回動軸と交差する面に沿って延在する板面を有する摺動板と、前記蓋体および前記容器本体のうちのいずれか他方に支持され、前記回動軸と交差する面に沿って延在する板面を有する干渉板と、を備え、前記蓋体が前記容器本体に対して所定の開位置まで回動した際に前記摺動板の板面が前記干渉板の板面に摺接し、前記干渉板が前記回動軸の軸方向に撓み変形することによって前記蓋体が前記開位置で保持される。
【0007】
本発明の一つの態様のコンパクト容器においては、蓋体が容器本体に対して所定の開位置まで回動した際に、前記蓋体および前記容器本体のうちのいずれか一方に支持された摺動板の板面が、前記蓋体および前記容器本体のうちのいずれか他方に支持された干渉板の板面に摺接する。このとき、各板面間に発生する摩擦力に加えて、干渉板が回動軸の軸方向に撓み変形した際の弾性力によって、蓋体が所定の開位置で保持される。ここで、フリーストップ作用を発現させる摺動板および干渉板の板面は、回動軸と交差する面に沿って延在する面であって、従来のコンパクト容器のような回動軸の周面とは異なる。そのため、摩擦力および弾性力は、蓋体開閉時の操作性に大きな影響を与えることなく、調整が可能である。したがって、本発明の一つの態様によれば、蓋体を任意の開位置で安定して保持できるとともに、蓋体の開閉操作を円滑に行うことができるコンパクト容器を提供することができる。
【0008】
本発明の一つの態様のコンパクト容器は、前記蓋体を前記容器本体に対して回動可能に連結するヒンジ部材をさらに備えていてもよく、前記ヒンジ部材は、前記容器本体に連結される容器本体側連結部と、前記蓋体に連結される蓋体側連結部と、前記容器本体側連結部と前記蓋体側連結部とを連結する弾性変形部と、を有していてもよい。
【0009】
この構成によれば、ヒンジ部材の弾性変形部の設計によって蓋体の開閉操作時の操作性を容易に調整することができる。また、従来のコンパクト容器におけるヒンジ部分を構成するピンやピン受け部を用いる必要がなく、簡易な構成のヒンジ部を実現することができる。また、従来のコンパクト容器では金属製のピンが用いられることが多いが、上記の構成であれば、樹脂製のヒンジ部材を作製しやすく、容器本体や蓋体を樹脂製とした場合、ヒンジ部材を容器本体や蓋体と同種の材料とすることが容易である。これにより、コンパクト容器を廃棄する際の分別作業が不要となる。
【0010】
本発明の一つの態様のコンパクト容器において、前記摺動板は、前記蓋体と一体に形成され、前記干渉板は、前記容器本体に支持された前記ヒンジ部材と一体に形成されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、コンパクト容器の部品点数を少なくすることができる。また、上記のように、ヒンジ部材を樹脂製とした場合、干渉板を板厚方向(回動軸の軸方向)に容易に撓み変形可能な構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一つの態様によれば、蓋体を任意の開位置で安定して静止させつつ、蓋体の開閉操作を円滑に行うことができるコンパクト容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態のコンパクト容器の平面図であって、開蓋状態を示している。
図2図3のII-II線に沿うコンパクト容器の横断面図である。
図3図1のIII-III線に沿うコンパクト容器の縦断面図であって、閉蓋状態を示している。
図4図2のIV-IV線に沿うコンパクト容器の縦断面図であって、閉蓋状態を示している。
図5図2のV-V線に沿うコンパクト容器の縦断面図であって、閉蓋状態を示している。
図6図2のVI-VI線に沿うコンパクト容器の縦断面図であって、蓋体を所定の開位置まで開いた状態を示している。
図7図2のIV-IV線に沿うコンパクト容器の縦断面図であって、蓋体を所定の開位置まで開いた状態を示している。
図8図2のV-V線に沿うコンパクト容器の縦断面図であって、蓋体を所定の開位置まで開いた状態を示している。
図9図2のIX-IX線に沿うコンパクト容器の縦断面図であって、閉蓋状態を示している。
図10】摺動板と干渉板の作用を説明するための図であって、蓋体を所定の開位置まで開いた状態における摺動板と干渉板とを抜き出して示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るコンパクト容器について、図1図10を用いて説明する。
図1は、本実施形態のコンパクト容器10の平面図である。図2は、図3のII-II線に沿うコンパクト容器の横断面図であって、閉蓋状態を示している。図3は、図1のIII-III線に沿うコンパクト容器10の縦断面図であって、閉蓋状態を示している。
なお、本実施形態のコンパクト容器10は左右対称の構成を有しているため、図2においては、図1に示すコンパクト容器10のうち、ヒンジ部材13の右端側にあたる部分のみを図示し、左端側の図示を省略する。
【0015】
図1および図3に示すように、本実施形態のコンパクト容器10は、容器本体11と、蓋体12と、ヒンジ部材13と、を備えている。また、詳細は後述するが、摺動板14が蓋体12と一体に形成され、干渉板15がヒンジ部材13と一体に形成されている。
【0016】
容器本体11には、収容凹部16が形成されている。蓋体12は、容器本体11の収容凹部16を開閉可能に閉塞する。ヒンジ部材13は、蓋体12を容器本体11に対して回動可能に連結する。閉蓋状態のコンパクト容器10は、平面視矩形状の扁平状の容器である。コンパクト容器10は、ヒンジ部材13が設けられた側の縁部とは反対側の縁部に、蓋体12が閉じた状態を解除し、開いた状態とするための操作片17が設けられている。
【0017】
以下の説明では、閉蓋状態のコンパクト容器10の厚さ方向(高さ方向)において、蓋体12が位置する側を上側と称し、容器本体11が位置する側を下側と称する。また、上下方向に直交する水平面内において、ヒンジ部材13が設けられた側を後側と称し、操作片17が設けられた側を前側と称する。また、水平面内において、前後方向に直交する方向を左右方向と称する。また、左右方向は、ヒンジ部材13が延在する方向であって、回動軸方向に対応する。閉蓋状態において、コンパクト容器10の外形である矩形の中心を通り、上下方向に延在する軸を容器軸Oと称する。
【0018】
容器本体11は、樹脂等の材料により形成され、左右方向を長手方向とする平面視矩形状であって、上方が開口した箱状の形状を有する。容器本体11には、上方が開口した複数の収容凹部16が形成されている。収容凹部16には、図示しない中皿が収容されてもよい。中皿は、各種の化粧料を収容する容器であり、容器本体11の上面カバー19によって収容凹部16に固定される。なお、収容凹部16には、中皿だけでなく、化粧料を塗布するための塗布具などが収容されてもよい。また、本実施形態では、容器本体11に複数の収容凹部16が形成されているが、収容凹部16の数は1つでもよいし、特に限定されない。
【0019】
図3に示すように、容器本体11は、底壁部21と、底壁部21の外周に沿って延在し、上方に突出する本体側周壁部22と、上方に突出して前後方向に延び、2つの収容凹部16を区画する仕切壁部23と、を有する。本体側周壁部22のうち、前側の本体側周壁部221の左右方向中央部には、後方に向けて凹む凹部24が形成されている。また、凹部24の一部には、凹部24側から収容凹部16側に向けて貫通する孔25が形成され、孔25の上面には下方に向けて突出する嵌合凸部26が形成されている。また、孔25の上方にあたる本体側周壁部221の前面には、前方に向けて突出する嵌合突起27が形成されている。
【0020】
容器本体11の凹部24には、操作片17が配設されている。操作片17は、樹脂等の材料により形成され、容器本体11の底壁部21に当接する支持部29と、支持部29の前端から上方に突出する操作部30と、を有する。支持部29は、後端側が容器本体11の孔25に挿入されるとともに、後端上面に設けられた嵌合凸部31が孔25の上面の嵌合凸部26を乗り越えてアンダーカット嵌合することにより、容器本体11に固定されている。
【0021】
操作部30は、厚肉部301と、厚肉部301の上下方向中央部に設けられた薄肉部302と、を有する。閉蓋状態において、操作部30は、薄肉部302の前端が厚肉部301の後端よりも前方に突出する形状となり、全体として上下方向中央部で屈曲した状態となっている。
【0022】
蓋体12は、樹脂等の材料により形成され、左右方向を長手方向とする平面視矩形状の形状を有する。蓋体12は、平板状の天壁部33と、天壁部33の外周に沿って延在し、下方に突出する蓋側周壁部34と、を有する。蓋側周壁部34のうち、前側の蓋側周壁部341の左右方向中央部には、下方に向けて突出する係合部35が形成されている。係合部35の下端には、後方に向けて突出する嵌合突起36が形成されている。閉蓋状態において、蓋体12は、係合部35の嵌合突起36が容器本体11の嵌合突起27を乗り越えてアンダーカット嵌合することにより、容器本体11に嵌合される。この嵌合構造により、操作部30が所定の圧力で押圧されない限り、例えばコンパクト容器10が落下した際などに蓋体12が意図せずに開いてしまうことが抑制される。
【0023】
天壁部33は、閉蓋状態において上下方向で収容凹部16と対向する。天壁部33の下面には、凹部38が形成され、凹部の内部には鏡部材39が嵌め込まれている。
【0024】
図3に示すように、容器本体11において、後側の本体側周壁部222と底壁部21とが連設された角部には、断面視矩形に切り欠かれ、左右方向に延在する切欠部41が形成されている。後述するように、切欠部41は、蓋体12が開いた際に蓋側周壁部342の下端が回り込み、容器本体11と干渉することなく収容されるための空間として機能する。図9に示すように、切欠部41の側方には、ヒンジ部材13の端面に対向する側板部42が形成されている。
【0025】
図3に示すように、切欠部41に臨む本体側周壁部222の下面222bには、下方に向けて開口する本体側溝部44が形成されている。本体側周壁部22のうち、本体側溝部44の後方に位置する部分は、左右方向に延在し、後述するU字状のヒンジ部材13の内側に収容される本体側支持部45となる。
【0026】
一方、蓋体12において、ヒンジ部材13が連結される後側の蓋側周壁部342の下面342bは、容器本体11の本体側周壁部222の下面222bと略同じ高さに位置している。切欠部41に臨む蓋側周壁部342の下面には、下方に向けて開口する蓋体側溝部47が形成されている。蓋側周壁部342のうち、蓋体側溝部47の前方に位置する部分は、左右方向に延在し、後述するU字状のヒンジ部材13の内側に収容される蓋体側支持部48となる。
【0027】
図3に示すように、ヒンジ部材13は、容器本体11に連結される容器本体側連結部51と、蓋体12に連結される蓋体側連結部52と、容器本体側連結部51と蓋体側連結部52とを連結する弾性変形部53と、を有する。閉蓋状態において、ヒンジ部材13は、容器本体側連結部51および蓋体側連結部52の先端が上方に向かって延びるとともに、弾性変形部53が下方に位置し、左右方向から見た断面が全体として略U字状の形状を呈する。図1に示すようにヒンジ部材13は、鏡部材39の左右方向の幅と略同じ長さにわたって左右方向に延在している。ヒンジ部材13は、弾性変形可能な樹脂等の材料から一体に形成されている。
【0028】
ヒンジ部材13は、容器本体側連結部51が本体側溝部44に嵌合することによって容器本体11に連結されるとともに、蓋体側連結部52が蓋体側溝部47に嵌合することによって蓋体12に連結されている。容器本体11の本体側支持部45と蓋体12の蓋体側支持部48とは、ヒンジ部材13の容器本体側連結部51と蓋体側連結部52との間の空間に収容され、容器本体側連結部51と蓋体側連結部52とに挟み込まれた状態で支持される。このような構造により、ヒンジ部材13は、容器本体11と蓋体12とに連結されている。
【0029】
そこで、蓋体12の前側を上方に引き上げることによって、図6に示すように、蓋体12は、容器本体11に対して弾性変形部53の略中央を中心として回動する。以下、弾性変形部53の中心を通り、蓋体12が回動する際の中心軸を回動軸Cと称する。
【0030】
図9に示すように、摺動板14は、蓋体12の天壁部33および蓋側周壁部34と一体に形成されている。また、図2に示すように、摺動板14は、蓋体12の左右方向の端部に近い位置に形成されている。図4に示すように、摺動板14は、摺動板14が設けられていない個所における蓋側周壁部342の厚さT1よりも広い幅W1を有し、天壁部33から垂下するとともに、蓋側周壁部342から前方に張り出すように形成されている。図9に示すように、摺動板14は、回動軸Cと直交する面に沿って延在する板面を有する。摺動板14の2つの板面のうち、干渉板15に対向し、蓋体12の回動に伴って干渉板15の板面に摺接する側の面を摺接面14sと称する。
【0031】
図2に示すように、干渉板15は、左右方向における摺動板14の外側であって、摺動板14と容器本体11の側板部42との間に対応する位置に、ヒンジ部材13と一体に形成されている。図9に示すように、干渉板15は、回動軸Cと直交する面に沿って延在する板面を有する。干渉板15の2つの板面のうち、摺動板14の摺接面14sに対向し、蓋体12の回動に伴って摺接面14sに接触する側の面を接触面15sと称する。
【0032】
図5および図9に示すように、干渉板15は、段部55と、段部55よりも上方に位置する固定部56と、段部55よりも下方に位置する変形部57と、を有する。また、干渉板15は、左右方向から見て、回動軸Cを中心とした扇状の形状を有する。したがって、扇形の中央部が段部55であり、扇形の略上半分が固定部56であり、扇形の略下半分が変形部57である。
【0033】
図9に示すように、段部55が回動軸C方向に屈曲していることによって、変形部57は固定部56よりも左右方向中央寄りにずれた位置にある。そのため、回動軸C方向において、変形部57の接触面15sは、摺動板14の摺接面14sよりも左右方向中央寄りに位置している。このように、干渉板15の変形部57は、蓋体12の回動に伴って摺動板14が回動した際に摺動板14に干渉する位置にある。また、干渉板15の変形部57と容器本体11の側板部42との間には隙間Fが設けられている。したがって、変形部57は、いわゆる上端が固定された片持ち構造を呈しており、下端側が自由に移動できる構成となっている。
【0034】
以下、本実施形態のコンパクト容器10におけるフリーストップ作用に係る各部の動きについて説明する。
図3図5および図9に示すように、閉蓋状態において、蓋体12の摺動板14は、ヒンジ部材13の干渉板15のうち、固定部56と対向した位置にある。このとき、摺動板14の摺接面14sと干渉板15の接触面15sとは接触していないため、摩擦力や弾性力が生じることはない。
【0035】
次に、図3に示す状態から、使用者が指等を用いて操作片17の操作部30を後方(容器本体11側)に向けて押すことにより、操作部30が屈曲した形状から上下方向に直線状に伸びた形状に弾性変形するとともに、蓋体12と容器本体11との嵌合状態が解除され、蓋体12が容器本体11に対して開いた状態となる。その後、使用者は、蓋体12の前端を上方に引き上げて、蓋体12を所望の角度まで開くことができる。
【0036】
図6図8および図10に示すように、蓋体12が所定の位置まで開いた際には、蓋体12の回動に伴って摺動板14が回動軸Cの周方向に沿って移動し、摺動板14の摺接面14sが干渉板15の接触面15sに摺接する。このとき、摺接面14sと接触面15sとの間に摩擦力が発生する。同時に、干渉板15の変形部57が摺動板14に干渉する位置にあるため、摺動板14が変形部57を押し退けつつ下降するとともに、変形部57が回動軸C方向に撓み変形する。このとき、摺動板14は、干渉板15の撓み変形によって生じる弾性力によって回動軸C方向に押圧される。
【0037】
このように、摺接面14sと接触面15sとの間に発生する摩擦力に加えて、干渉板15の撓み変形によって生じる弾性力によって、蓋体12が自重などによって意図せずに回動することが抑制され、所定の開位置で静止し、保持される。
【0038】
例えば特許文献1に示すように、従来のコンパクト容器においては、ヒンジを構成するピンの外周面とピン受け部の内周面との間に発生する摩擦力によってフリーストップ作用を発現させていた。そのため、蓋体を任意の開位置で安定して静止させるために、摩擦力をある程度大きく設計すると、蓋体の開閉操作時の感触が固くなり、開閉操作を円滑に行うことが難しくなる。逆に、摩擦力を小さく設計すると、蓋体の開閉操作を円滑に行うことができる反面、蓋体を任意の開位置で安定して静止させることが難しくなる。このように、従来のコンパクト容器においては、フリーストップ作用の安定性向上と蓋体開閉時の操作性向上とを両立させることが難しいという課題があった。
【0039】
これに対して、本実施形態のコンパクト容器10においては、フリーストップ作用を発現させる摺動板14の摺接面14sおよび干渉板15の接触面15sは、回動軸Cと直交する面に沿って延在する面であって、従来のコンパクト容器のような回動軸Cの周面とは異なる。そのため、上記の摺接面14sや接触面15sを介して作用する摩擦力および弾性力は、蓋体開閉時の操作性に大きな影響を与えることなく、フリーストップ作用の安定性向上を狙った調整が可能である。例えば干渉板15の板厚を厚くして弾性力を増大させることによって、フリーストップ作用の安定性を向上させることができる。一方、ヒンジ部材13の弾性変形部53の設計を最適化することによって、蓋体開閉時の操作性を調整することができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、コンパクト容器10内の異なる部位の設計によってフリーストップ作用の安定性と蓋体開閉時の操作性とを独立して調整できるため、蓋体12を任意の開位置で安定して保持できるとともに、蓋体12の開閉操作を円滑に行うことができるコンパクト容器10を提供することができる。
【0041】
また、本実施形態のコンパクト容器10は、蓋体12を容器本体11に対して回動可能に連結するヒンジ部材13を備え、ヒンジ部材13が容器本体側連結部51と蓋体側連結部52と弾性変形部53とを有している。この構成によれば、弾性変形部53の設計によって蓋体12の開閉操作時の操作性を容易に調整することができる。例えば弾性変形部53の肉厚を薄くすることによって、蓋体12の開閉操作を比較的小さな力で行うことができる。
【0042】
また、従来のコンパクト容器におけるピンやピン受け部を用いる必要がなく、簡易な構成のヒンジ部を実現することができる。また、従来のコンパクト容器では金属製のピンが用いられることが多いが、上記の構成であれば、樹脂製のヒンジ部材13を作製しやすく、容器本体11や蓋体12を樹脂製とした場合、ヒンジ部材13を容器本体11や蓋体12と同種の材料とすることが容易である。これにより、コンパクト容器10を廃棄する際の分別作業が不要となる。
【0043】
また、本実施形態において、摺動板14が蓋体12と一体に形成され、干渉板15が容器本体11に支持されたヒンジ部材13と一体に形成されているため、コンパクト容器10の部品点数を少なくすることができる。また、樹脂製のヒンジ部材13が用いられているため、干渉板15を板厚方向(回動軸の軸方向)に容易に撓み変形可能な構成とすることができる。
【0044】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記実施形態では、摺動板14が蓋体12と一体に形成されているが、摺動板14は、蓋体12に支持され、蓋体12に伴って回動する部材であればよいため、例えば蓋体とは別体に形成され、任意の方法によって蓋体に固定されていてもよい。また、上記実施形態では、干渉板15がヒンジ部材13と一体に形成されているが、干渉板15は、蓋体12が回動する際に摺動板14に干渉する位置に配置される部材であればよいため、例えばヒンジ部材13とは別体に形成され、任意の方法によってヒンジ部材13に固定されていてもよいし、容器本体11に直接支持されていてもよい。または、干渉板15は、容器本体11と一体に形成されていてもよい。
【0045】
また、上記実施形態の構成とは逆に、摺動板14が容器本体11側に支持され、干渉板15が蓋体12側に支持されていてもよい。この場合、摺動板14は、必ずしも容器本体11に直接支持されていなくてもよく、容器本体11に支持された容器本体側連結部51に支持されていてもよいし、容器本体側連結部51と一体に形成されていてもよい。同様に、干渉板15は、必ずしも蓋体12に直接支持されていなくてもよく、蓋体12に支持された蓋体側連結部52に支持されていてもよいし、蓋体側連結部52と一体に形成されていてもよい。
【0046】
また、上記実施形態のヒンジ部材13に限らず、ピンとピン受け部とからなる従来のヒンジ部を有するコンパクト容器に、本発明を適用してもよい。
【0047】
また、上記実施形態の摺動板14および干渉板15は回動軸Cに直交する板面を有していたが、摺動板14および干渉板15の板面は、必ずしも回動軸Cに直交していなくてもよく、回動軸Cに交差していればよい。その他、コンパクト容器10を構成する各部の形状、数、配置、構成材料等の具体的な記載は、上記実施形態に限ることなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 コンパクト容器
11 容器本体
12 蓋体
13 ヒンジ部材
14 摺動板
14s 摺接面(板面)
15 干渉板
15s 接触面(板面)
51 容器本体側連結部
52 蓋体側連結部
53 弾性変形部
C 回動軸
図1
図2
図3
図4
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図10