(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20250415BHJP
B66C 13/16 20060101ALI20250415BHJP
G01G 19/10 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
E02F9/22 P
B66C13/16 F
G01G19/10 B
(21)【出願番号】P 2022565507
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2021043852
(87)【国際公開番号】W WO2022114220
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2024-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2020198907
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平沼 一則
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145754(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180555(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/002850(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
B66C 13/16
G01G 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回機構を介して搭載される上部旋回体と、
少なくともブームを有し、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記ブームを駆動するブームシリンダと、
前記アタッチメントに取り付けられる
リフティングマグネットと、
前記リフティングマグネットを励磁するための供給電圧を制御する電力制御装置と、
制御部と、を備える、作業機械であって、
前記制御部は、
前記ブームシリンダのブームシリンダ圧に基づいて、前記
リフティングマグネットで搬送される搬送物の重量を計測する重量算出部と、
前記アタッチメントの振動を抑制する指令を生成する振動抑制制御部と、を有
し、
前記振動抑制制御部は、前記電力制御装置に前記供給電圧を制御する指令を生成する、
作業機械。
【請求項2】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回機構を介して搭載される上部旋回体と、
少なくともブームを有し、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記ブームを駆動するブームシリンダと、
前記ブームシリンダに作動油を供給する油圧回路と、
前記アタッチメントに取り付けられる作業具と、
制御部と、を備える、作業機械であって、
前記制御部は、
前記ブームシリンダのブームシリンダ圧に基づいて、前記作業具で搬送される搬送物の重量を計測する重量算出部と、
前記アタッチメントの振動を抑制する指令を生成する振動抑制制御部と、を有
し、
前記油圧回路は、
前記ブームシリンダに供給する作動油の流れを切り替える制御弁と、
前記ブームシリンダのロッド側油室の作動油を作動油タンクに排出させる第1バイパス流路に設けられた第1電磁リリーフ弁と、
前記ブームシリンダのボトム側油室の作動油を前記作動油タンクに排出させる第2バイパス流路に設けられた第2電磁リリーフ弁と、を有し、
前記振動抑制制御部は、前記第1電磁リリーフ弁及び前記第2電磁リリーフ弁に対して前記ブームシリンダの圧力変化を抑制する指令を生成する、
作業機械。
【請求項3】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回機構を介して搭載される上部旋回体と、
少なくともブームを有し、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記ブームを駆動するブームシリンダと、
前記ブームシリンダに供給させる作動油を制御するコントロールバルブと、
前記アタッチメントに取り付けられる作業具と、
制御部と、を備える、作業機械であって、
前記制御部は、
前記ブームシリンダのブームシリンダ圧に基づいて、前記作業具で搬送される搬送物の重量を計測する重量算出部と、
前記アタッチメントの振動を抑制する指令を生成する振動抑制制御部と、を有
し、
前記コントロールバルブは、パイロット圧によって作動する制御弁であって、
前記振動抑制制御部は、前記コントロールバルブにパイロット圧を入力するパイロットラインに設けられた減圧弁に対して前記ブームシリンダの圧力変化を抑制する指令を生成する、
作業機械。
【請求項4】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回機構を介して搭載される上部旋回体と、
少なくともブームを有し、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記ブームを駆動するブームシリンダと、
前記ブームシリンダに供給させる作動油を制御するコントロールバルブと、
前記アタッチメントに取り付けられる作業具と、
制御部と、を備える、作業機械であって、
前記制御部は、
前記ブームシリンダのブームシリンダ圧に基づいて、前記作業具で搬送される搬送物の重量を計測する重量算出部と、
前記アタッチメントの振動を抑制する指令を生成する振動抑制制御部と、を有
し、
前記コントロールバルブは、パイロット圧によって作動する制御弁であって、
前記振動抑制制御部は、前記コントロールバルブにパイロット圧を入力するパイロットラインに設けられた電磁弁に対して前記ブームシリンダの圧力変化を抑制する指令を生成する、
作業機械。
【請求項5】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回機構を介して搭載される上部旋回体と、
少なくともブームを有し、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記ブームを駆動するブームシリンダと、
前記ブームシリンダに供給させる作動油を制御するコントロールバルブと、
前記アタッチメントに取り付けられる作業具と、
制御部と、を備える、作業機械であって、
前記制御部は、
前記ブームシリンダのブームシリンダ圧に基づいて、前記作業具で搬送される搬送物の重量を計測する重量算出部と、
前記アタッチメントの振動を抑制する指令を生成する振動抑制制御部と、を有
し、
前記コントロールバルブは、電磁制御弁であって、
前記振動抑制制御部は、前記コントロールバルブに対して前記ブームシリンダの圧力変化を抑制する指令を生成する、
作業機械。
【請求項6】
前記振動抑制制御部は、ブーム上げ操作時に前記アタッチメントで生じる振動を抑制する、
請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
前記重量算出部は、
前記アタッチメントの振動が所定の閾値以下の場合に、前記搬送物の重量を算出する、
請求項
1乃至請求項6のいずれか1項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業具を先端に備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スクラップを吸着するリフティングマグネットを備える作業機械において、スクラップの荷重を測定する荷重測定手段を有する作業機械の荷重測定装置が開示されている。また、実転倒モーメントが定格荷重曲線で規定する転倒モーメントを超えた場合、それ以上の作業半径の拡大を制限することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リフティングマグネットを備える作業機械において、リフティングマグネットで鉄屑等の吊荷(搬送物)を吸着して吊り上げる際、作業機械のアタッチメント(ブーム)に振動が発生するおそれがある。これは、リフティングマグネットを備える作業機械では、アタッチメントの先端に設けられるリフティングマグネット及び吊荷の重量が重いために、アタッチメント(ブーム)に振動が発生する。また、リフティングマグネットを備える作業機械の作業では、上部旋回体から離れた位置の吊荷を吊り上げて運搬することがある。この場合、アタッチメントを伸ばした姿勢で吊荷を吊り上げるために、アタッチメント(ブーム)に振動が発生する。この様に、アタッチメント(ブーム)に振動が発生することでブームシリンダ圧力が振動する。このため、ブームシリンダ圧力に基づいて吊荷の重量を検出する際、好適に吊荷の重量を計測できないおそれがある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、精度よく搬送物の重量を算出する作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態では、下部走行体と、前記下部走行体に旋回機構を介して搭載される上部旋回体と、少なくともブームを有し、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、前記ブームを駆動するブームシリンダと、前記アタッチメントに取り付けられるリフティングマグネットと、前記リフティングマグネットを励磁するための供給電圧を制御する電力制御装置と、制御部と、を備える、作業機械であって、前記制御部は、前記ブームシリンダのブームシリンダ圧に基づいて、前記リフティングマグネットで搬送される搬送物の重量を計測する重量算出部と、前記アタッチメントの振動を抑制する指令を生成する振動抑制制御部と、を有し、前記振動抑制制御部は、前記電力制御装置に前記供給電圧を制御する指令を生成する、作業機械が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上述の実施形態によれば、精度よく搬送物の重量を算出する作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1に示す作業機械に搭載される駆動系の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る作業機械が吊荷を吊り下げる際の様子を示す模式図である。
【
図4】第1実施例に係る作業機械におけるブームシリンダの油圧回路を説明する図である。
【
図5】第1実施例に係る作業機械における他のブームシリンダの油圧回路を説明する図である。
【
図6】第2実施例に係る作業機械におけるブームシリンダの油圧回路を説明する図である。
【
図7】第2実施例に係る作業機械における電気式操作システムの構成例を示す図である。
【
図8】第2実施例に係る作業機械における他の電気式操作システムの構成例を示す図である。
【
図9】第3実施例に係る作業機械におけるリフティングマグネットの供給電圧の切り換えを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
<作業機械の概要>
図1は、本実施形態に係る作業機械100の側面図である。作業機械100の下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメント(作業具)としてのリフティングマグネット6が取り付けられている。ブーム4及びアーム5はアタッチメントの一例である作業アタッチメントを構成している。そして、ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、リフティングマグネット6はリフティングマグネットシリンダ9で駆動される。なお、本実施形態において、アタッチメントの先端に取り付けられ搬送物の搬送に用いることができる作業具(搬送機構)はリフティングマグネット6であるが、作業の種類によって、土砂等を掘削及び搬送するバケットや、グラップル、解体用フォーク、チェーンソーを含むハーベスタ等の他の作業具が取り付けられてもよい。
【0011】
ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、リフティングマグネット6にはリフティングマグネット角度センサS3が取り付けられている。上部旋回体3には、コントローラ30、表示装置40、空間認識装置80、機体傾斜センサS4及び旋回角速度センサS5が取り付けられている。
【0012】
ブーム角度センサS1は、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度であるブーム角度を検出するように構成されている。ブーム角度センサS1は、例えば、ブームフートピン回りのブーム4の回転角度を検出する回転角度センサ、ブームシリンダ7のストローク量(ブームストローク量)を検出するシリンダストロークセンサ、又は、ブーム4の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等であってもよく、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせであってもよい。ブーム4に対するアーム5の回動角度であるアーム角度を検出するアーム角度センサS2、及び、アーム5に対するリフティングマグネット6の回動角度であるリフティングマグネット角度を検出するリフティングマグネット角度センサS3についても同様である。
【0013】
機体傾斜センサS4は水平面に対する上部旋回体3の傾斜(機体傾斜角度)を検出するように構成されている。本実施形態では、機体傾斜センサS4は上部旋回体3の前後軸及び左右軸回りの傾斜角度を検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交して作業機械100の旋回軸上の一点である機械中心点を通る。
【0014】
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出する。本実施形態では、ジャイロセンサである。レゾルバ、ロータリエンコーダ等であってもよい。
【0015】
空間認識装置80は作業機械100の周囲を撮像するように構成されている。空間認識装置80は、例えば、単眼カメラ、ステレオカメラ、距離画像カメラ、赤外線カメラ又はLIDAR等である。
図1の例では、空間認識装置80は、上部旋回体3の上面前端に取り付けられたフロントカメラ80F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられたバックカメラ80B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左カメラ80L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右カメラ80R(
図1では不可視。)を含む。
【0016】
そして、空間認識装置80は、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を有する単眼カメラであり、撮像した画像を表示装置40に出力する。また、空間認識装置80は、空間認識装置80又は作業機械100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。撮像した画像を利用するだけでなく、空間認識装置80としてミリ波レーダ、超音波センサ、又はレーザレーダ等を利用する場合には、多数の信号(レーザ光等)を物体に発信し、その反射信号を受信することで、反射信号から物体の距離及び方向を検出してもよい。
【0017】
空間認識装置80は、作業機械100の周囲に存在する物体を検知するように構成されている。物体は、例えば、ダンプトラック、地形形状(傾斜、穴等)、電線、電柱、人、動物、車両、建設機械、建造物、壁、ヘルメット、安全ベスト、作業服、又は、ヘルメットにおける所定のマーク等である。このようにして、空間認識装置80は、物体の種類、位置、及び形状等の少なくとも1つを識別できるように構成されていてもよい。例えば、空間認識装置80は、人と人以外の物体とを区別できるように構成されていてもよい。
【0018】
ブームシリンダ7にはブームシリンダ7用の圧力センサとして、ブームロッド圧センサS6a、ブームボトム圧センサS6b、及び、ブームシリンダストロークセンサS7が取り付けられていてもよい。アームシリンダ8にはアームシリンダ8用の圧力センサとして、アームロッド圧センサS6c、アームボトム圧センサS6d、及び、アームシリンダストロークセンサS8が取り付けられていてもよい。リフティングマグネットシリンダ9にはリフティングマグネットシリンダ9用の圧力センサとして、リフティングマグネットロッド圧センサS6e、リフティングマグネットボトム圧センサS6f、及び、リフティングマグネットシリンダストロークセンサS9が取り付けられていてもよい。
【0019】
ブームロッド圧センサS6aはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS6bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS6cはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS6dはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。リフティングマグネットロッド圧センサS6eはリフティングマグネットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「リフティングマグネットロッド圧」とする。)を検出し、リフティングマグネットボトム圧センサS6fはリフティングマグネットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「リフティングマグネットボトム圧」とする。)を検出する。
【0020】
上部旋回体3には、運転室としてのキャブ10が設けられ且つエンジン11等の動力源が搭載されている。
【0021】
また、上部旋回体3上にはキャブ10がキャブ昇降装置90を介して昇降可能に設けられている。以下では、このように昇降可能なキャブを「エレベータキャブ」と称する場合がある。なお、
図1は、キャブ昇降装置90によりキャブ10が最高位置まで上昇した状態を示す。また、キャブ10は、ブーム4の側方(通常、左側)に配置されている。
【0022】
図2は、作業機械100に搭載される駆動系の構成例を示す図である。
図2において、機械的動力伝達系は二重線、作動油ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気制御系は一点鎖線、電気駆動系は太点線でそれぞれ示される。
【0023】
作業機械100の駆動系は、主に、エンジン11、メインポンプ14、油圧ポンプ14G、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、コントローラ30及びエンジン制御装置74で構成されている。
【0024】
エンジン11は、作業機械100の動力源であり、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、オルタネータ11a、メインポンプ14、油圧ポンプ14G及びパイロットポンプ15の入力軸のそれぞれに接続されている。
【0025】
メインポンプ14は、作動油ライン16を介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0026】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御信号等に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14の吐出量を制御する。
【0027】
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介して操作装置26を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。
【0028】
コントロールバルブ17は、作業機械100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、例えば、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、リフティングマグネットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R及び旋回用油圧モータ2Aのうちの1又は複数のものに対し、メインポンプ14が吐出する作動油を選択的に供給する。なお、以下の説明では、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、リフティングマグネットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R及び旋回用油圧モータ2Aを集合的に「油圧アクチュエータ」と称する。
【0029】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施形態では、操作装置26は、パイロットポンプ15からの作動油をコントロールバルブ17内にある対応する流量制御弁のパイロットポートに供給してパイロット圧を生成する。具体的には、操作装置26は、旋回操作及びアーム操作のための左操作レバー、ブーム操作及びリフティングマグネット操作のための右操作レバー、走行ペダル、並びに、走行レバー(何れも図示せず。)等を含む。パイロット圧は、操作装置26の操作内容(例えば操作方向及び操作量を含む。)に応じて変化する。
【0030】
操作圧センサ29は、操作装置26が生成するパイロット圧を検出する。本実施形態では、操作圧センサ29は、操作装置26が生成したパイロット圧を検出し、その検出値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、操作圧センサ29の出力に基づいて操作装置26のそれぞれの操作内容を把握する。
【0031】
コントローラ30は、各種演算を実行する制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置及び不揮発性記憶装置等を備えたマイクロコンピュータである。コントローラ30は、例えば、各種機能に対応するプログラムを不揮発性記憶装置から読み出して揮発性記憶装置にロードし、それらプログラムのそれぞれに対応する処理をCPUに実行させる。
【0032】
油圧ポンプ14Gは作動油ライン16aを介して作動油を油圧モータ60に供給する。本実施形態では、油圧ポンプ14Gは固定容量型油圧ポンプであり、切換弁61を通じて油圧モータ60に作動油を供給する。
【0033】
切換弁61は、油圧ポンプ14Gが吐出する作動油の流れを切り換えるように構成されている。本実施形態では、切換弁61はコントローラ30からの制御指令に応じて弁位置が切り換わる電磁弁である。切換弁61は、油圧ポンプ14Gと油圧モータ60との間を連通させる第1弁位置と、油圧ポンプ14Gと油圧モータ60との間を遮断する第2弁位置とを有する。
【0034】
コントローラ30は、モード切換スイッチ62が操作されて作業機械100の動作モードがリフティングマグネットモードに切り換えられると、切換弁61に対して制御信号を出力して切換弁61を第1弁位置に切り換える。また、コントローラ30は、モード切換スイッチ62が操作されて作業機械100の動作モードがリフティングマグネットモード以外に切り換えられると、切換弁61に対して制御信号を出力して切換弁61を第2弁位置に切り換える。
図2は、切換弁61が第2弁位置にある状態を示す。
【0035】
モード切換スイッチ62は、作業機械100の動作モードを切り換えるスイッチである。本実施形態では、キャブ10内に設置されるロッカスイッチである。操作者はモード切換スイッチ62を操作してショベルモードとリフティングマグネットモードとを二者択一的に切り換える。ショベルモードは作業機械100を掘削機(ショベル)として作動させるときの動作モードであり、例えばリフティングマグネット6の代わりにバケットがアーム5の先端に取り付けられているときに選択される。リフティングマグネットモードは作業機械100をリフティングマグネット付き作業機械として作動させるときのモードであり、リフティングマグネット6がアーム5の先端に取り付けられているときに選択される。なお、コントローラ30は各種センサの出力に基づいて作業機械100の動作モードを自動的に切り換えてもよい。
【0036】
リフティングマグネットモードが選択された場合、切換弁61は第1弁位置に設定され、油圧ポンプ14Gが吐出する作動油を油圧モータ60に流入させる。一方、リフティングマグネットモード以外の動作モードが選択された場合、切換弁61は第2弁位置に設定され、油圧ポンプ14Gが吐出する作動油を油圧モータ60に流入させることなく作動油タンクに流出させる。
【0037】
油圧モータ60の回転軸は発電機63の回転軸に機械的に連結されている。発電機63は、リフティングマグネット6を励磁するための電力を生成する。本実施形態では、発電機63は電力制御装置64からの制御指令に応じて動作する交流発電機である。
【0038】
電力制御装置64はリフティングマグネット6を励磁するための電力の供給・遮断を制御する。本実施形態では、電力制御装置64は、コントローラ30からの発電開始指令・発電停止指令に応じて発電機63による交流電力の発電の開始・停止を制御する。また、電力制御装置64は発電機63が発電した交流電力を直流電力に変換してリフティングマグネット6に供給する。また、電力制御装置64はリフティングマグネット6に印加される電圧の大きさ、及び、リフティングマグネット6を流れる電流の大きさを制御できる。
【0039】
コントローラ30は、リフティングマグネットスイッチ65がオン操作されてオン状態になると電力制御装置64に対して吸着指令を出力する。吸着指令を受けた電力制御装置64は、発電機63が発電した交流電力を直流電力に変換してリフティングマグネット6に供給し、リフティングマグネット6を励磁する。励磁されたリフティングマグネット6は物体(磁性体)を吸着可能な吸着状態となる。
【0040】
また、コントローラ30は、リフティングマグネットスイッチ65がオフ操作されてオフ状態になると電力制御装置64に対して釈放指令を出力する。釈放指令を受けた電力制御装置64は、発電機63による発電を中止させ、吸着状態にあるリフティングマグネット6を非吸着状態(釈放状態)にする。リフティングマグネット6の釈放状態は、リフティングマグネット6への電力供給が中止されてリフティングマグネット6が発生させていた電磁力が消失した状態を意味する。
【0041】
リフティングマグネットスイッチ65は、リフティングマグネット6の吸着・釈放を切り換えるスイッチである。本実施形態では、リフティングマグネットスイッチ65は、左操作レバー26Lの頂部に設けられる押しボタンスイッチとしての弱励磁ボタン65A及び強励磁ボタン65Bと、右操作レバー26Rの頂部に設けられる押しボタンスイッチとしての釈放ボタン65Cとを含む。
【0042】
弱励磁ボタン65Aは、リフティングマグネット6に所定の電圧を印加してリフティングマグネット6を吸着状態(弱吸着状態)にするための入力装置の一例である。所定の電圧は、例えば、磁力調節ダイヤル66を通じて設定される電圧である。
【0043】
強励磁ボタン65Bは、リフティングマグネット6に許容最大電圧を印加してリフティングマグネット6を吸着状態(強吸着状態)にするための入力装置の一例である。
【0044】
釈放ボタン65Cは、リフティングマグネット6を釈放状態にするための入力装置の一例である。
【0045】
磁力調節ダイヤル66は、リフティングマグネット6の磁力(吸着力)を調節するためのダイヤルである。本実施形態では、磁力調節ダイヤル66はキャブ10内に設置され、弱励磁ボタン65Aが押されたときのリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を4段階で切り換えできるように構成されている。具体的には、磁力調節ダイヤル66は、第1レベルから第4レベルの4段階でリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を切り換えできるように構成されている。
図2は、磁力調節ダイヤル66で第3レベルが選択された状態を示す。
【0046】
リフティングマグネット6は、磁力調節ダイヤル66で設定されたレベルの磁力(吸着力)を発生させるように制御される。磁力調節ダイヤル66は、磁力(吸着力)のレベルを示すデータをコントローラ30に対して出力する。
【0047】
この構成により、操作者は、左手で左操作レバー26Lを操作し且つ右手で右操作レバー26Rを操作して作業アタッチメントを動作させながら、指でリフティングマグネット6による物体(磁性体)の吸着及び釈放を実行できる。典型的には、操作者は、物体(例えば鉄屑等)にリフティングマグネット6を接触させた状態で弱励磁ボタン65Aを押して鉄屑をリフティングマグネット6に吸着させる。その後、操作者は、ブーム4を緩やかに上昇させ、鉄屑を吸着したリフティングマグネット6を持ち上げた後で、強励磁ボタン65Bを押してリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を増大させる。アタッチメント操作(ブーム操作、アーム操作及びバケット操作の少なくとも1つを含む操作)又は旋回操作による鉄屑の運搬中において、鉄屑がリフティングマグネット6から落ちるのを防止するためである。
【0048】
また、操作者は、磁力調節ダイヤル66でリフティングマグネット6の磁力(吸着力)を調節することで、物体の仕分けを行うことができる。操作者は、例えば、比較的弱いレベルの磁力(吸着力)を用いてスクラップの山から比較的軽い物体を選択的に持ち上げて移動させることで、比較的軽い物体と比較的重い物体とを仕分けることができる。操作者は、比較的弱いレベルの磁力(吸着力)を用いることで、比較的重い物体を持ち上げてしまうのを防止できるためである。
【0049】
作業機械100は、弱励磁ボタン65A又は強励磁ボタン65Bが押されたときに、動作モードを自動的に速度制限モードに切り換えるように構成されていてもよい。速度制限モードは、例えば、リフティングマグネットモードにおいて、旋回速度及びアタッチメントの駆動速度が制限される動作モードである。
【0050】
また、作業機械100は、弱励磁ボタン65Aが押された後で、所定の操作が行われた場合、或いは、所定の状態になった場合、リフティングマグネット6の状態を、強励磁ボタン65Bが押されたときの状態である強吸着状態に自動的に移行させてもよい。所定の操作は、例えば、旋回操作である。所定の状態は、例えば、アタッチメントが所定の姿勢になった状態、具体的には、ブーム角度が所定角度になった状態である。この場合、作業機械100は、例えば、弱励磁ボタン65Aが押されて弱吸着状態となっているリフティングマグネット6がブーム上げ操作に応じて持ち上げられた後で旋回操作が行われたときに、強励磁ボタン65Bが押されなくとも、リフティングマグネット6の状態を強吸着状態に自動的に移行させることができる。
【0051】
表示装置40は、各種情報を表示する装置である。本実施形態では、表示装置40は、運転席が設けられたキャブ10の右前部のピラー(図示せず。)に固定されている。また、
図2に示すように、表示装置40は、作業機械100に関する情報を画像表示部41に表示して操作者に情報を提供できる。また、表示装置40は、入力装置としてのスイッチパネル42を含む。操作者はスイッチパネル42を利用して各種指令をコントローラ30に対して入力できる。
【0052】
スイッチパネル42は、各種スイッチを含むパネルである。本実施形態では、スイッチパネル42は、ハードウェアボタンとしてのライトスイッチ42a、ワイパースイッチ42b、及びウインドウォッシャスイッチ42cを含む。ライトスイッチ42aは、キャブ10の外部に取り付けられるライトの点灯・消灯を切り換えるためのスイッチである。ワイパースイッチ42bは、ワイパーの作動・停止を切り換えるためのスイッチである。ウインドウォッシャスイッチ42cは、ウインドウォッシャ液を噴射するためのスイッチである。
【0053】
表示装置40は、蓄電池70から電力の供給を受けて動作する。蓄電池70はオルタネータ11aで発電した電力で充電される。蓄電池70の電力は、コントローラ30及び表示装置40以外の電装品72等にも供給される。エンジン11のスタータ11bは蓄電池70からの電力で駆動されてエンジン11を始動する。
【0054】
エンジン制御装置74は、エンジン11を制御する。本実施形態では、エンジン制御装置74は、エンジン11の状態を示す各種データを収集し、収集したデータをコントローラ30に送信する。エンジン制御装置74とコントローラ30とは別体として構成されているが一体的に構成されていてもよい。例えば、エンジン制御装置74は、コントローラ30に統合されてもよい。
【0055】
エンジン回転数調節ダイヤル75は、エンジン回転数を調節するためのダイヤルである。本実施形態では、エンジン回転数調節ダイヤル75はキャブ10内に設置され、エンジン回転数を4段階で切り換えできるように構成されている。具体的には、エンジン回転数調節ダイヤル75は、SPモード、Hモード、Aモード及びアイドリングモードの4段階でエンジン回転数を切り換えできるように構成されている。
図2は、エンジン回転数調節ダイヤル75でHモードが選択された状態を示す。
【0056】
SPモードは、作業量を優先させたい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用する。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音で作業機械を稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数を利用する。アイドリングモードは、エンジンをアイドリング状態で動作させたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数(アイドリング回転数)を利用する。
【0057】
エンジン11は、エンジン回転数調節ダイヤル75で設定された回転数モードに対応するエンジン回転数が維持されるように制御される。エンジン回転数調節ダイヤル75は、エンジン回転数の設定状態を示すデータをコントローラ30に対して出力する。
【0058】
また、コントローラ30は、目標重量設定部31と、重量算出部32と、吸着力制御部33と、最大積載量設定部34と、累積重量算出部35と、残重量算出部36と、振動抑制制御部37と、を有している。
【0059】
目標重量設定部31は、リフティングマグネット6で吸着する物体の目標重量を取得する。なお、目標重量は、オペレータにより入力されてもよく、後述する残重量算出部36の残重量に基づいて設定してもよく、予め設定されていてもよい。
【0060】
重量算出部32は、リフティングマグネット6に吸着された物体の重量(現重量)を算出する。現重量は、例えば、ブーム4の根元回りのトルクの釣り合いで算出される。具体的には、リフティングマグネット6に吸着された物体によってブームシリンダ7の推力が増加し、ブームシリンダ7の推力から算出されるブーム4の根元回りのトルクも増加する。トルクの増加分と、物体の重量及び物体の重心から計算されるトルクとが、一致する。このように、重量算出部32は、ブームシリンダ7の推力(ブームロッド圧センサS6a、ブームボトム圧センサS6bの測定値)及び物体の重心に基づいて、物体の重量を算出することができる。なお、物体の重心は、例えば、実験的に予め求めてコントローラ30に記憶させておく。なお、物体の重量の算出方法は、これに限られるものではなく、種々の方法が適用できる。
【0061】
吸着力制御部33は、リフティングマグネット6に供給される電流の電流指令値を制御して、リフティングマグネット6の吸着力を制御する。
【0062】
最大積載量設定部34は、物体を積み込むダンプトラックの最大積載量を設定する。なお、最大積載量は、例えば、オペレータにより入力されてもよく、例えば、空間認識装置80で撮像されたダンプトラック画像に基づいてダンプトラックの車種(サイズ等)を判定し、判定された車種(サイズ等)に基づいて最大積載量を設定してもよい。
【0063】
累積重量算出部35は、ダンプトラックの荷台に積み込まれた物体の累積重量を算出する。
【0064】
残重量算出部36は、最大積載量と累積重量との差である残重量を算出する。
【0065】
振動抑制制御部37は、アタッチメントの振動を抑制する指令を生成して出力する。
【0066】
以下、本実施形態に係る作業機械100の動作の一例に沿って説明する。
【0067】
まず、コントローラ30の目標重量設定部31は、リフティングマグネット6で吸着する物体の目標重量を設定する。また、最大積載量設定部34は、物体を積み込むダンプトラックの最大積載量を設定する。
【0068】
次に、オペレータは、操作装置26を操作して、リフティングマグネット6を吸着対象の物体の上に移動させる。
【0069】
次に、オペレータは、弱励磁ボタン65Aを操作して、リフティングマグネット6に磁力(吸着力)を発生させる。これにより、物体がリフティングマグネット6に吸着される。この際、コントローラ30の吸着力制御部33は、電流指令値として第1電流指令値を指令する。なお、第1電流指令値は、リフティングマグネット6に吸着される物体が目標重量以上となるような十分な電流値が設定される。電力制御装置64は、電流指令値に基づいて、リフティングマグネット6へ供給される電流を制御する。
【0070】
次に、オペレータは、操作装置26を操作して、リフティングマグネット6を所定の高さまで上昇させる。これにより、リフティングマグネット6に吸着された物体が、リフティングマグネット6とともに持ち上げられる。また、コントローラ30が後述する補償制御を開始するトリガとなる。なお、リフティングマグネット6が所定の高さまで上昇したか否かは、リフティングマグネット6の位置で判断してもよく、アタッチメントの姿勢、アタッチメントの各連結ピンの位置、リフティングマグネット6の上昇を開始してからの経過時間、吸着スイッチの操作状態等に基づいて判断してもよい。
【0071】
次に、コントローラ30の重量算出部32は、リフティングマグネット6に吸着された(吊られた)物体の重量(現重量)を算出する。
【0072】
次に、コントローラ30の吸着力制御部33は、現重量が目標重量より重い場合、リフティングマグネット6へ供給される電流の補償制御を行う。例えば、吸着力制御部33は、電流指令値を減少させるように調整する。これにより、リフティングマグネット6の磁力(吸着力)が低下し、リフティングマグネット6に吸着された物体の一部が落下する。即ち、リフティングマグネット6に吸着された物体の重量が低下する。
【0073】
以下、コントローラ30は、補償制御において、リフティングマグネット6に吸着された物体の重量(現重量)の算出と、電流指令値の調整(減少)を繰り返し、現重量が目標重量となるまで繰り返す。なお、現重量が目標重量となった際の電流指令値を第2電流指令値とする。
【0074】
次に、コントローラ30の吸着力制御部33は、電流指令値を第3電流指令値とする。第3電流指令値は、第2電流指令値よりも大きな電流指令値である。これにより、目標重量となった物体がリフティングマグネット6から脱落することを抑制する。
【0075】
次に、コントローラ30は、現重量が目標重量となると、オペレータに報知する。なお、報知方法は、例えば、表示装置40に表示するものであってもよく、音声によるものであってもよい。
【0076】
次に、報知されたオペレータは、強励磁ボタン65Bを操作して、リフティングマグネット6を吸着状態(強吸着状態)とする。次に、オペレータは、操作装置26を操作して、上部旋回体3、作業アタッチメント(ブーム4、アーム5)を動かし、リフティングマグネット6をダンプトラックの荷台の上まで移動させる。次に、オペレータは、釈放ボタン65Cを操作して、釈放ボタン65Cは、リフティングマグネット6を釈放状態とする。これにより、目標重量の物体がダンプトラックの荷台に積み込まれる。
【0077】
なお、累積重量算出部35は、前回までの累積重量に今回の目標重量を加算して、累積重量を更新する。残重量算出部36は、更新された累積重量に基づいて、残重量を算出する。
【0078】
これらの動作を繰り返すことにより、ダンプトラックの荷台に所望の累積重量の物体を積み込むことができる。
【0079】
なお、コントローラ30は、リフティングマグネット6を所定の高さまで上昇させた後、現重量が目標重量となるまでの間(現重量の算出と電流調整を繰り返す間)、上部旋回体3の旋回を禁止または所定の角度範囲内に制限してもよい。これにより、現重量が目標重量となるように調整する際に落下する物体が周囲に散乱することを抑制することができる。
【0080】
なお、ダンプトラックへの積み込みの場合を例に説明したが、これに限られるものではなく、積み降ろしの時も同様に所望の目標重量の物体をダンプトラックから積み下ろすことができる。
【0081】
ここで、アタッチメントの振動について
図3を用いて説明する。
図3は、本実施形態に係る作業機械100が吊荷を吊り下げる際の様子を示す模式図である。
【0082】
リフティングマグネット6で吊荷を吊り上げる際、アタッチメントは、ブーム4を下げ、アーム5を開き、リフティングマグネット6を閉じた姿勢で、吊荷を吊り上げる。また、アタッチメントは、ブーム4のフートピン側で上部旋回体3に片持ち支持されている。また、アタッチメントの先端側には、重量の重いリフティングマグネット6が設けられている。また、リフティングマグネット6には、このため、ブーム上げ時には、ブーム4に振動が発生する。また、ブーム4の振動によって、ブームシリンダ7の圧力(センサS6a,S6bの検出値)にも振動が発生する。このため、重量算出部32が、ブームシリンダ7の圧力に基づいて吊荷の重量を検出する際、好適に吊荷の重量を算出することができないおそれがある。
【0083】
<第1実施例>
次に、第1実施例に係る作業機械100におけるブーム4の振動を抑制する動作について、
図4および
図5を用いて説明する。ここで、第1実施例に係る作業機械100では、コントローラ30がブームシリンダ7の作動圧を制御することにより、ブーム4の振動を抑制する。
【0084】
図4は、第1実施例に係る作業機械100におけるブームシリンダ7の油圧回路を説明する図である。
【0085】
なお、本例では、ブーム操作レバー26Aによりブーム4、即ち、ブームシリンダ7の操作が行われるものとして説明する。また、コントロールバルブ17内のブームシリンダ7に作動油を供給するブーム用の制御弁175のポートに、ブーム操作レバー26Aからの二次側のパイロット圧を伝達するパイロットラインをパイロットライン27Aと称する。
【0086】
図4に示すように、本例では、コントロールバルブ17内のブーム用の制御弁175とブームシリンダ7のロッド側油室及びボトム側油室との間から分岐し、作動油をタンクTに排出させるバイパス油路271,272が設けられる。
【0087】
バイパス油路271には、ブームシリンダ7のロッド側油室の作動油をタンクTに排出させる電磁リリーフ弁201が設けられる。
【0088】
バイパス油路272には、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油をタンクTに排出させる電磁リリーフ弁202が設けられる。
【0089】
なお、バイパス油路271,272、及び電磁リリーフ弁201,202は、コントロールバルブ17の内部及び外部の何れに設けられてもよい。
【0090】
コントローラ30には、ブームロッド圧センサS6aで検出したブームシリンダ7のロッド圧PRが入力される。コントローラ30には、ブームボトム圧センサS6bで検出したブームシリンダ7のボトム圧PBが入力される。
【0091】
コントローラ30は、ブームロッド圧センサS6a及びブームボトム圧センサS6bから入力される出力信号に基づき、ロッド圧PR及びボトム圧PBを監視することができる。また、コントローラ30は、適宜、電磁リリーフ弁201,202に電流指令値を出力し、ブームシリンダ7のロッド側油室或いはボトム側油室の作動油を強制的にタンクTに排出させ、ブームシリンダ7内の過剰な圧力を抑制することができる。
【0092】
ここで、コントローラ30の振動抑制制御部37は、ブームロッド圧センサS6a及びブームボトム圧センサS6bで検出したブームシリンダ7のロッド圧P
R及びボトム圧P
Bの変化に基づいて、振動の発生を検知する。その後、ブームロッド圧センサS6a及びブームボトム圧センサS6bの検出値を用いて電磁リリーフ弁201,202を制御する。即ち、ブームシリンダ7の作動油圧を制御する。具体的には、コントローラ30の振動抑制制御部37は、急なブームシリンダ7の圧力変化を抑制するように電磁リリーフ弁201,202を制御する。これにより、ブーム4の振動(
図3参照)を抑制することができる。また、重量算出部32は、ブームシリンダ7の圧力(センサS6a,S6bの検出値)に基づいて、好適に吊荷の重量を算出することができる。なお、振動の発生の検知は、加速度センサ(機体傾斜センサS4等)を用いてもよい。
【0093】
なお、コントローラ30は、ブーム角度センサS1で検出したブーム4の角速度に基づいて、電磁リリーフ弁201,202を制御してもよい。これにより、ブーム4の振動を抑制することができる。
【0094】
また、ブーム4の振動を抑制することにより、重量算出部32は、ブームシリンダ7の圧力(センサS6a,S6bの検出値)に基づいて、好適に吊荷の重量を算出することができる。なお、ブーム4の角速度は、ブームシリンダストロークセンサS7で検出してもよい。
【0095】
図5は、第1実施例に係る作業機械100における他のブームシリンダ7の油圧回路を説明する図である。以下、図中において、二つのブームシリンダ7が示されるが、メインポンプ14とブームシリンダ7との間にコントロールバルブ17と後述する圧力保持回路50が介設される点は、何れのブームシリンダ7についても同様であるため、一方のブームシリンダ7(図中の右側のブームシリンダ7)についての油圧回路を中心に説明する。
【0096】
コントロールバルブ17とブームシリンダ7のロッド側油室との間から分岐する油路に、ロッド側油室の作動油をタンクTに排出させる電磁リリーフ弁201が設けられる。
【0097】
図5に示すように、本例に係る作業機械100には、例えば、油圧ホースが破裂等により破損した場合であっても、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油が排出されないように保持する圧力保持回路50が設けられる。
【0098】
圧力保持回路50は、コントロールバルブ17とブームシリンダ7のボトム側油室との間を接続する油路に介設される。圧力保持回路50は、主に、保持弁52と、スプール弁54とを含む。
【0099】
保持弁52は、スプール弁54の状態に依らず、油路321を経由してコントロールバルブ17から供給される作動油を、ブームシリンダ7のボトム側油室に供給する。
【0100】
また、保持弁52は、スプール弁54が非連通状態(図中の左端のスプール状態)の場合、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油が圧力保持回路50の下流側に排出されないように保持する。一方、保持弁52は、スプール弁54が連通状態(図中の右端のスプール状態)の場合、油路322を経由して、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油が圧力保持回路50の下流側に排出することができる。
【0101】
スプール弁54は、ブームシリンダ7を操作する操作装置26に含まれる、ブーム4の下げ操作(ブーム下げ操作)に対応するパイロット圧を出力するブーム下げ用リモコン弁26Aaからポートに入力されるパイロット圧に応じて、その連通・非連通状態が制御される。具体的には、スプール弁54は、ブーム下げ用リモコン弁26Aaからブーム下げ操作がされていることを示すパイロット圧が入力される場合、連通状態に対応するスプール状態(図中の右端のスプール状態)にする。一方、スプール弁54は、ブーム下げ用リモコン弁26Aaからブーム下げ操作がされていないことを示すパイロット圧が入力される場合、非連通状態に対応するスプール状態(図中の左端のスプール状態)にする。これにより、ブーム下げ操作がされていない状態で、圧力保持回路50よりも下流側の油圧ホースの破損等が発生しても、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油(ボトム圧)が保持されるため、ブーム4の落下を防止することができる。
【0102】
また、圧力保持回路50は、電磁リリーフ弁203を含む。
【0103】
電磁リリーフ弁203は、圧力保持回路50内の保持弁52とブームシリンダ7のボトム側油室との間の油路323から分岐し、タンクTに接続される油路324に設けられる。つまり、電磁リリーフ弁203は、保持弁よりも上流側、即ち、ブームシリンダ7側の油路323から作動油をタンクTにリリーフする。よって、電磁リリーフ弁203は、圧力保持回路50の作動状態、具体的には、スプール弁54の連通/非連通状態に依らず、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油をタンクTに排出させることができる。つまり、圧力保持回路50によるブームシリンダ7のボトム側油室の作動油の保持機能によりブーム4の落下を防止しつつ、ブーム下げ操作の有無に依らず、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油をタンクTに排出させ、過剰なボトム圧を抑制することができる。
【0104】
コントローラ30は、ブームロッド圧センサS6a及びブームボトム圧センサS6bから入力される出力信号に基づき、ロッド圧PR及びボトム圧PBを監視することができる。また、コントローラ30は、適宜、電磁リリーフ弁201,203に電流指令値を出力することにより、ブーム下げ操作の有無に依らず、ブームシリンダ7のロッド側油室或いはボトム側油室の作動油を強制的にタンクTに排出させ、ブームシリンダ7内の過剰な圧力を抑制することができる。
【0105】
ここで、コントローラ30の振動抑制制御部37は、ブームロッド圧センサS6a及びブームボトム圧センサS6bで検出したブームシリンダ7のロッド圧PR及びボトム圧PBに基づいて、電磁リリーフ弁201,203を制御する。即ち、ブームシリンダ7の作動油圧を制御する。具体的には、コントローラ30の振動抑制制御部37は、急なブームシリンダ7の圧力変化を抑制するように電磁リリーフ弁201,203を制御する。これにより、ブーム4の振動(
図3参照)を抑制することができる。また、重量算出部32は、ブームシリンダ7の圧力(センサS6a,S6bの検出値)に基づいて、好適に吊荷の重量を算出することができる。
【0106】
また、コントローラ30の振動抑制制御部37は、アタッチメント(ブーム4)の振動の発生を判断してもよい。振動抑制制御部37は、例えば、所定期間内に、ブームシリンダ7の圧力値の脈動を検出すると、アタッチメント(ブーム4)に振動が発生したと判断してもよい。更に、振動抑制制御部37は、例えば、所定期間内にブームシリンダ7の圧力値が急激に増加または減少し、圧力値の増加量または減少量が所定値を超えた場合に、アタッチメント(ブーム4)に振動が発生したと判断してもよい。このようにして、コントローラ30の振動抑制制御部37は、振動の発生を判断してもよい。
【0107】
なお、コントローラ30は、ブーム角度センサS1で検出したブーム4の角速度に基づいて、電磁リリーフ弁201,203を制御してもよい。これにより、ブーム4の振動を抑制することができる。また、重量算出部32は、ブームシリンダ7の圧力(センサS6a,S6bの検出値)に基づいて、好適に吊荷の重量を算出することができる。なお、ブーム4の角速度は、ブームシリンダストロークセンサS7で検出してもよい。
【0108】
なお、コントローラ30は、ボトム側の電磁リリーフ弁203のみを制御してもよく、ボトム側の電磁リリーフ弁203とロッド側の電磁リリーフ弁201の両方を制御してもよい。
【0109】
<第2実施例>
次に、第2実施例に係る作業機械100におけるブーム4の振動を抑制する動作について、
図6から
図8を用いて説明する。ここで、第2実施例に係る作業機械100では、コントローラ30がコントロールバルブ17(制御弁175)を制御することにより、ブーム4の振動を抑制する。
【0110】
図6は、第2実施例に係る作業機械100におけるブームシリンダ7の油圧回路を説明する図である。ここでは、作業機械の操作レバーは油圧式の操作レバーであり、コントローラ30は、コントロールバルブ17(制御弁175)へのパイロット圧を制御することにより、ブーム4の振動を抑制する。なお、
図6は、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御ラインを、それぞれ二重線、実線、破線及び点線で示している。
【0111】
油圧システムは、エンジン11によって駆動される左メインポンプ14Lから、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、且つ、エンジン11によって駆動される右メインポンプ14Rから右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させている。左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rは、
図2のメインポンプ14に対応する。
【0112】
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。制御弁175L及び175Rは、
図2の制御弁175に対応する。制御弁176L及び176Rは、
図2の制御弁176に対応する。
【0113】
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左側走行用油圧モータ1Lへ供給し、且つ、左側走行用油圧モータ1Lが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0114】
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右側走行用油圧モータ1Rへ供給し、且つ、右側走行用油圧モータ1Rが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0115】
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0116】
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をリフティングマグネットシリンダ9へ供給し、且つ、リフティングマグネットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0117】
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0118】
制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0119】
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0120】
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0121】
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0122】
左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。右レギュレータ13Rは、右メインポンプ14Rの吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、右レギュレータ13Rは、例えば、右メインポンプ14Rの吐出圧に応じて右メインポンプ14Rの斜板傾転角を調節することによって、右メインポンプ14Rの吐出量を制御する。左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rは、
図2のレギュレータ13に対応する。左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
【0123】
左吐出圧センサ28Lは、吐出圧センサ28の一例であり、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。右吐出圧センサ28Rについても同様である。
【0124】
ここで、
図6の油圧システムで採用されるネガティブコントロール制御について説明する。
【0125】
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。右センターバイパス管路40Rには、最も下流にある制御弁176Rと作動油タンクとの間に右絞り18Rが配置されている。右メインポンプ14Rが吐出した作動油の流れは、右絞り18Rで制限される。そして、右絞り18Rは、右レギュレータ13Rを制御するための制御圧を発生させる。右制御圧センサ19Rは、制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0126】
コントローラ30は、制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
【0127】
具体的には、
図6で示されるように、作業機械100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。右メインポンプ14Rが吐出する作動油についても同様である。
【0128】
上述のような構成により、
図6の油圧システムは、待機状態においては、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rのそれぞれにおける無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油が左センターバイパス管路40Lで発生させるポンピングロス、及び、右メインポンプ14Rが吐出する作動油が右センターバイパス管路40Rで発生させるポンピングロスを含む。また、
図6の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rのそれぞれから必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに供給できる。
【0129】
また、リモコン弁26Aaから、制御弁175(175L,175R)へと接続するパイロット圧回路には、減圧弁204,205が設けられている。
【0130】
作業機械100は、操作指令に基づいてリフティングマグネット6に電流を印加させることにより吊荷(搬送物)をリフティングマグネット6に吸着させ、その後、ブーム上げ動作を行う。そして、釈放位置まで吊荷を搬送すべく旋回動作やアーム開き動作を行う。ところが、吸着時やブーム上げ動作時に発生するアタッチメント(ブーム4)の振動が大きいと、旋回動作中にも振動が継続してしまい、正確に吊荷の荷重を計測できない。そこで、コントローラ30の振動抑制制御部37は、ブームロッド圧センサS6a及びブームボトム圧センサS6bで検出したブームシリンダ7のロッド圧PR及びボトム圧PBに基づいて、減圧弁204,205を制御する。即ち、コントロールバルブ17(制御弁175)のパイロット圧を制御する。具体的には、コントローラ30の振動抑制制御部37は、急なブームシリンダ7の圧力変化を抑制するように減圧弁204,205を制御する。これにより、吸着(グラップルでは把持)から釈放するまでの間に、ブーム4の振動(
図3参照)を抑制することができる。そして、重量算出部32は、ブーム4の振動が所定の閾値以下の場合に算出される重量を今回の吊荷の重量として算出する。このようにして、また、重量算出部32は、ブームシリンダ7の圧力(センサS6a,S6bの検出値)に基づいて、好適に吊荷の重量を算出することができる。
【0131】
なお、コントローラ30は、ブーム角度センサS1で検出したブーム4の角速度に基づいて、減圧弁204,205を制御してもよい。これにより、ブーム4の振動を抑制することができる。また、重量算出部32は、ブームシリンダ7の圧力(センサS6a,S6bの検出値)に基づいて、好適に吊荷の重量を算出することができる。なお、ブーム4の角速度は、ブームシリンダストロークセンサS7で検出してもよい。
【0132】
図7は、第2実施例に係る作業機械100における電気式操作システムの構成例を示す図である。ここでは、作業機械の操作レバーは電磁式の操作レバーであり、コントローラ30は、コントロールバルブ17(制御弁175)へのパイロット圧を制御することにより、ブーム4の振動を抑制する。
【0133】
電気式操作レバーを備えた電気式操作システムが採用された場合、コントローラ30は、油圧式操作レバーを備えた油圧式操作システムが採用される場合に比べ、自律制御機能を容易に実行できる。具体的には、
図7の電気式操作システムは、ブーム操作システムの一例であり、主に、パイロット圧作動型のコントロールバルブ17と、電気式操作レバーとしてのブーム操作レバー26Aと、コントローラ30と、ブーム上げ操作用の電磁弁160と、ブーム下げ操作用の電磁弁162とで構成されている。
図7の電気式操作システムは、アーム操作システム及びバケット操作システム等にも同様に適用され得る。
【0134】
パイロット圧作動型のコントロールバルブ17は、ブームシリンダ7に関する制御弁175(
図6参照。)、アームシリンダ8に関する制御弁176(
図6参照。)、及び、リフティングマグネットシリンダ9に関する制御弁174(
図6参照。)等を含む。電磁弁160は、パイロットポンプ15と制御弁175の上げ側パイロットポートとを繋ぐ管路の流路面積を調節できるように構成されている。電磁弁162は、パイロットポンプ15と制御弁175の下げ側パイロットポートとを繋ぐ管路の流路面積を調節できるように構成されている。
【0135】
手動操作が行われる場合、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aの操作信号生成部が出力する操作信号(電気信号)に応じてブーム上げ操作信号(電気信号)又はブーム下げ操作信号(電気信号)を生成する。ブーム操作レバー26Aの操作信号生成部が出力する操作信号は、ブーム操作レバー26Aの操作量及び操作方向に応じて変化する電気信号である。
【0136】
具体的には、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aがブーム上げ方向に操作された場合、レバー操作量に応じたブーム上げ操作信号(電気信号)を電磁弁160に対して出力する。電磁弁160は、ブーム上げ操作信号(電気信号)に応じて流路面積を調節し、制御弁175の上げ側パイロットポートに作用する、ブーム上げ操作信号(圧力信号)としてのパイロット圧を制御する。同様に、コントローラ30は、ブーム操作レバー26Aがブーム下げ方向に操作された場合、レバー操作量に応じたブーム下げ操作信号(電気信号)を電磁弁162に対して出力する。電磁弁162は、ブーム下げ操作信号(電気信号)に応じて流路面積を調節し、制御弁175の下げ側パイロットポートに作用する、ブーム下げ操作信号(圧力信号)としてのパイロット圧を制御する。
【0137】
自律制御を実行する場合、コントローラ30は、例えば、ブーム操作レバー26Aの操作信号生成部が出力する操作信号(電気信号)に応じる代わりに、補正操作信号(電気信号)に応じてブーム上げ操作信号(電気信号)又はブーム下げ操作信号(電気信号)を生成する。補正操作信号は、コントローラ30が生成する電気信号であってもよく、コントローラ30以外の外部の制御装置等が生成する電気信号であってもよい。
【0138】
ここで、コントローラ30の振動抑制制御部37は、ブームロッド圧センサS6a及びブームボトム圧センサS6bで検出したブームシリンダ7のロッド圧PR及びボトム圧PBに基づいて、電磁弁160,162を制御する。即ち、コントロールバルブ17(制御弁175)のパイロット圧を制御する。具体的には、コントローラ30の振動抑制制御部37は、急なブームシリンダ7の圧力変化を抑制するように電磁弁160,162を制御する。これにより、ブーム4の振動(
図3参照)を抑制することができる。また、重量算出部32は、ブームシリンダ7の圧力(センサS6a,S6bの検出値)に基づいて、好適に吊荷の重量を算出することができる。
【0139】
なお、コントローラ30は、ブーム角度センサS1で検出したブーム4の角速度に基づいて、電磁弁160,162を制御してもよい。これにより、ブーム4の振動を抑制することができる。また、重量算出部32は、ブームシリンダ7の圧力(センサS6a,S6bの検出値)に基づいて、好適に吊荷の重量を算出することができる。なお、ブーム4の角速度は、ブームシリンダストロークセンサS7で検出してもよい。
【0140】
図8は、第2実施例に係る作業機械100における他の電気式操作システムの構成例を示す図である。ここでは、作業機械の操作レバーは電磁式の操作レバーであり、コントロールバルブ17(制御弁175)は電磁弁であって、コントローラ30は、コントロールバルブ17(制御弁175)への電気信号を制御することにより、ブーム4の振動を抑制する。
【0141】
コントロールバルブ17は、電磁弁であって、コントローラ30からの操作信号(電気信号)によって、制御される。
【0142】
ここで、コントローラ30の振動抑制制御部37は、ブームロッド圧センサS6a及びブームボトム圧センサS6bで検出したブームシリンダ7のロッド圧PR及びボトム圧PBに基づいて、コントロールバルブ17を直接制御する。具体的には、コントローラ30の振動抑制制御部37は、急なブームシリンダ7の圧力変化を抑制するようにコントロールバルブ17を制御する。これにより、ブーム4の振動(
図3参照)を抑制することができる。また、重量算出部32は、ブームシリンダ7の圧力(センサS6a,S6bの検出値)に基づいて、好適に吊荷の重量を算出することができる。
【0143】
なお、コントローラ30は、ブーム角度センサS1で検出したブーム4の角速度に基づいて、コントロールバルブ17を直接制御してもよい。これにより、ブーム4の振動を抑制することができる。また、重量算出部32は、ブームシリンダ7の圧力(センサS6a,S6bの検出値)に基づいて、好適に吊荷の重量を算出することができる。なお、ブーム4の角速度は、ブームシリンダストロークセンサS7で検出してもよい。
【0144】
<第3実施例>
次に、第3実施例に係る作業機械100におけるブーム4の振動を抑制する動作について、
図9を用いて説明する。
【0145】
図9は、第3実施例に係る作業機械100におけるリフティングマグネット6の供給電圧(吸着力、磁力)の切り換えを説明する説明図である。
図9の横軸は経過時間を示し、縦軸はリフティングマグネット6に供給する電圧を示す。また、参考例に係る供給電圧を破線で図示し、本実施例における供給電圧を実線で図示する。
【0146】
図9に示すように、参考例における供給電圧は、ステップ状に立ち上がる。このため、磁力によって引き寄せられる鉄屑等の搬送物が、リフティングマグネット6と衝突することにより、ブーム4が振動するおそれがあった。
【0147】
これに対し、本実施例における供給電圧は、滑らかに立ち上がる。このため、磁力によって引き寄せられる鉄屑等の搬送物がリフティングマグネット6と衝突することにより生じるブーム4の振動を低減することができる。
【0148】
なお、コントローラ30は、ブームシリンダ圧の変化、ブーム4の角速度(各加速度)の変化を検知して、リフティングマグネット6への供給電圧を制御してもよい。
【0149】
なお、第3実施例におけるリフティングマグネット6の供給電圧制御によるブーム4の振動抑制を第1~2実施例に係る作業機械100に適用してもよい。
【0150】
上述した実施の形態として、
図4,5等に示すように、ブームシリンダ7の作動油を作動油タンクTへ排出することにより、アタッチメント(ブーム4)の振動を抑制させる形態を示したが、必ずしもこの形態に限定されるものではない。
【0151】
例えば、ブームシリンダ7の作動油をアームシリンダ8へ供給することにより、ブーム動作時に発生するアタッチメント(ブーム4)の振動を抑制させてもよい。
【0152】
ブームシリンダ7とアームシリンダ8との間に切換え弁(図示せず)を設け、コントローラ30の振動抑制制御部37は、ブームロッド圧センサS6a及びブームボトム圧センサS6bで検出したブームシリンダ7のロッド圧PR及びボトム圧PBに基づいて、切換え弁を制御する。即ち、ブーム4の上げ動作(ブーム上げ動作)とアーム5の開き動作(アーム開き動作)或いはアーム5の閉じ動作(アーム閉じ動作)に対応する複合操作が行われると、切換え弁が遮断状態から連通状態に切り替わる。具体的には、切換え弁はコントローラ30により制御される電磁比例弁から供給されるパイロット圧に応じて、遮断状態から連通状態に切り替わる。これにより、油圧制御弁172は、ブームシリンダ7のボトム側油室から排出される作動油を切換え弁を介してアームシリンダ8に供給することができる。
【0153】
また、ブームシリンダ7の制御弁175内に再生回路を形成し、ブームシリンダ7の作動油を作動油タンクTへ排出させてもよい。この場合、ブームシリンダ7とアームシリンダ8との間に切換え弁を設ける必要ない。
【0154】
また、必ずしもブームシリンダ7の作動油をアームシリンダ8へ供給する構成でなくてもよい。ブームシリンダ7の作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給する構成であってもよく、エンドアタッチメントを駆動する油圧シリンダ(リフティングマグネットシリンダ9、バケットシリンダ等)へ供給する構成であってもよい。
【0155】
このように、ブーム4と複合動作を形成する他の油圧アクチュエータへ、作動油を供給することで、振動を抑制することができる。
【0156】
以上、本発明の好ましい作業機械に係る実施形態及び実施例について説明したが、本発明は、上述した実施形態又は実施例に制限されるものではない。すなわち、本発明は、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形又は変更することが可能である。
【0157】
本願は、2020年11月30日に出願した日本国特許出願2020-198907号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0158】
100 作業機械
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム(アタッチメント)
5 アーム(アタッチメント)
6 リフティングマグネット(作業具、搬送機構)
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 リフティングマグネットシリンダ
17 コントロールバルブ
175 制御弁
30 コントローラ
32 重量算出部
33 吸着力制御部(電力制御部)
37 振動抑制制御部