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特許7666927ケイ素を含む乾式アノードフィルムのための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】ケイ素を含む乾式アノードフィルムのための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20250415BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20250415BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250415BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250415BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20250415BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20250415BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20250415BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20250415BHJP
   H01G 11/32 20130101ALI20250415BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20250415BHJP
   H01G 11/50 20130101ALI20250415BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20250415BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/1393
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/62 Z
H01G11/30
H01G11/32
H01G11/38
H01G11/50
H01G11/84
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020554305
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 US2019029898
(87)【国際公開番号】W WO2019213068
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】62/666,037
(32)【優先日】2018-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509316442
【氏名又は名称】テスラ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ファイゲンバウム ハイム
(72)【発明者】
【氏名】ドゥオン ヒエウ ミン
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-164960(JP,A)
【文献】特開2004-327282(JP,A)
【文献】特開2007-134108(JP,A)
【文献】特開平10-270086(JP,A)
【文献】特開平07-235293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0114643(US,A1)
【文献】国際公開第2016/210419(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/156518(WO,A1)
【文献】荒川 正文,粒度測定入門,粉体工学会誌,日本,1980年,Vol.17, No.6,pp. 299-307
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第14族活性材料およびグラファイト活性材料を含む活性材料と、バインダとを含み、電極フィルムが自立型であり、
前記第14族活性材料は、ケイ素およびスズの少なくとも1つを含み、
前記グラファイト活性材料は、一次グラファイト(PG)粒子および二次グラファイト(SG)粒子を含み、
前記一次グラファイト(PG)粒子は、15μm~30μmのD 50 平均粒径を有し、
前記二次グラファイト(SG)粒子は、2μm~10μmのD 50 平均粒径を有し、
前記一次グラファイト(PG)粒子と前記二次グラファイト(SG)粒子の質量比率は、10:1~1:10であり
前記電極フィルムは、1質量%~30質量%の前記第14族活性材料を含み、溶媒残留物を含まない、
エネルギー貯蔵装置の電極フィルム。
【請求項2】
前記電極フィルムが、10質量%~30質量%の前記第14族活性材料を含む、請求項1に記載の電極フィルム。
【請求項3】
前記第14族活性材料が、純ケイ素、酸化ケイ素(SiOx)、ケイ素-炭素複合材料、ケイ素合金、SiH、スズ、酸化スズ、スズグラファイトおよびスズグラフェンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1または2に記載の電極フィルム。
【請求項4】
前記ケイ素-炭素複合材料が、ケイ素グラフェン(SiC)、ケイ素グラファイト(Si/C)、酸化ケイ素グラフェン(SiOC)および酸化ケイ素グラファイト(SiO/C)のうちの少なくとも1つから選択される、請求項3に記載の電極フィルム。
【請求項5】
前記ケイ素合金が、Si-AlおよびSi-Snのうちの少なくとも1つから選択される、請求項3に記載の電極フィルム。
【請求項6】
前記第14族活性材料が、プレリチウム化されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の電極フィルム。
【請求項7】
前記グラファイト活性材料は、人工グラファイト及び天然グラファイトの少なくとも一方から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の電極フィルム。
【請求項8】
記バインダが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の電極フィルム。
【請求項9】
記バインダが、フィブリル化バインダを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の電極フィルム。
【請求項10】
記フィブリル化バインダが、ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項に記載の電極フィルム。
【請求項11】
集電体に接する請求項1~10のいずれか1項に記載の前記電極フィルムを含むことを特徴とする電極。
【請求項12】
請求項11に記載の電極を含むリチウムイオンバッテリー。
【請求項13】
エネルギー貯蔵装置の乾式電極フィルムの製造方法であって、
乾式第14族活性材料を、乾式グラファイト材料と混合して乾式活性材料混合物を形成することを含む、第1混合プロセスと、
前記乾式活性材料混合物を、乾式バインダと混合して乾式電極フィルム混合物を形成しすることを含む、第2混合プロセスと、
前記乾式電極フィルム混合物を、カレンダー加工して自立型乾式電極フィルムを形成する、カレンダー加工と、を含み、
前記乾式第14族活性材料は、ケイ素およびスズの少なくとも1つを含み、
前記乾式グラファイト材料は、一次グラファイト(PG)粒子および二次グラファイト(SG)粒子を含み、
前記一次グラファイト(PG)粒子は、15μm~30μmのD 50 平均粒径を有し、
前記二次グラファイト(SG)粒子は、2μm~10μmのD 50 平均粒径を有し、
前記一次グラファイト(PG)粒子と前記二次グラファイト(SG)粒子の質量比率は、10:1~1:10であり
前記乾式電極フィルムが、1質量%~30質量%の前記乾式第14族活性材料を含む、
エネルギー貯蔵装置の乾式電極フィルム製造方法。
【請求項14】
前記乾式第14族活性材料を前記乾式グラファイト材料と混合する前に、前記乾式第14族活性材料を第1乾式バインダと混合することを含む予備混合プロセスをさらに含み、前記乾式活性材料混合物を前記乾式バインダと混合することは、前記乾式活性材料混合物を第2乾式バインダと混合することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1乾式バインダと前記第2乾式バインダは、異なるバインダ材料である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記予備混合プロセス、前記第1混合プロセス、および前記第2混合プロセスのうち少なくとも1つが、非破壊混合プロセスを含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記非破壊混合プロセスは、共鳴音響混合プロセスを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記予備混合プロセス、前記第1混合プロセス、および前記第2混合プロセスのうちの少なくとも1つが、高剪断プロセスを含む、請求項1417のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記高剪断プロセスがジェットミル粉砕プロセスを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、乾式の製造方法である、請求項1319のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記二次グラファイト(SG)粒子は、前記一次グラファイト(PG)粒子と異なる、請求項1に記載の電極フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年5月2日に出願された「ケイ素を含む乾式アノードフィルムのための組成物および方法」と題された米国仮特許出願第62/666,037号の優先権の利益を主張し、その仮出願の開示内容全体は本明細書中に含まれる。
【0002】
本発明は、エネルギー貯蔵装置に関し、特に、ケイ素系活性材料を含む乾式電極フィルムのための材料および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電気エネルギー貯蔵セルは、電子、電気機械、電気化学、および他の有益な装置に電力を供給するために広く使用されている。このようなセルには、一次化学電池や二次(充電式)電池のようなバッテリー、燃料電池、およびウルトラキャパシタを含む様々な種類のキャパシタが含まれる。キャパシタおよびバッテリーを含むエネルギー貯蔵装置の動作電力およびエネルギーを増加させることは、エネルギー貯蔵性能を高め、電力能力を増加させ、実際の使用例を広げるために望ましい
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
相補的な属性を組み合わせた電極フィルムを含むエネルギー貯蔵装置は、実際の用途においてエネルギー貯蔵装置の性能を向上させることができる。さらに、既存の乾式および溶媒フリーの製造方法は、電極の組成に実際的な制限を課すことがある。したがって、新しい電極フィルム配合物、およびそれらの製造方法は電極フィルム配合物の可能性を拡大し、その結果、性能を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
先行技術を超えて達成される本発明とその優位性を要約する目的で、本明細書において本発明の特定の目的とその優位性について説明する。このような目的または優位性のすべてが本発明の特定の実施形態において達成されるわけではない。したがって、例えば、当業者は、本明細書において教示または示唆される他の目的または優位性を必ずしも達成する必要はなく、本明細書において教示される1つのまたは一群の優位性を達成または最適化する方法により、本発明を具体化または実行できることを認識するだろう。
【0006】
ある実施形態は、2つの異なったグラファイト粒径を含み、非溶媒ベースの乾式法によって作製されるケイ素ベースのリチウムバッテリーアノードである。アノードにおいて、一次グラファイトは、平均で(すなわち、D50)約20~30μmの粒径を有することができ、二次グラファイトは、約4~7μmの平均粒径を有することができる。アノードのケイ素成分は、純ケイ素、酸化ケイ素、プレリチウム化ケイ素及びケイ素-炭素複合体を含むことができる。一実施形態では、ケイ素成分が電極配合物の全質量の約10質量%~30質量%を構成する。アノード内の乾式バインダは、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンおよびそれらの組合せを含むことができる。一実施形態では、乾式バインダがアノード配合物の全質量の約4質量%~10質量%で含まれる。
【0007】
第1の態様では、ケイ素活性材料を含む自己支持型乾式アノードフィルムが提供される。
【0008】
第2の態様では、エネルギー貯蔵装置の乾式電極フィルムが提供される。乾式電極フィルムは、14族活物質およびグラファイト活性材料を含む乾式活性材料と、乾式電極フィルムが自立型である乾式バインダとを含む。
【0009】
第3の態様では、エネルギー貯蔵装置の乾式電極フィルムの製造方法が提供される。前記方法は、乾式第14族活性材料を乾式グラファイト材料と混合して乾式活性材料混合物を形成するステップと、乾式活性材料混合物を乾式バインダと混合して乾式電極フィルム混合物を形成するステップと、乾式電極フィルム混合物をカレンダー加工して自立型乾式電極フィルムを形成するステップとを含む。
【0010】
これらの実施形態の全ては、本明細書に開示される本発明の範囲内であることが意図される。本発明のこれらの実施形態および他の実施形態は添付の図面を参照した以下の好ましい実施形態の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるであろうが、本発明は開示される任意の特定の好ましい実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、ケイ素ベースの電極フィルムを含むエネルギー貯蔵装置の実施形態を示す。
図2図2は、第14族活性材料および1つ以上のグラファイト材料を含む自己支持型アノード電極フィルムを製造するための方法を示す。
図3図3は、例1に係る、ケイ素/グラファイト複合乾式アノード電極フィルムの実施形態の測定された電気化学的充電容量と、各フィルムについて計算された理論容量とを比較した棒グラフの比較を提供する。
図4A】例2に係る、表面改質された人工グラファイト/10質量%Si(「AG」)および天然グラファイト/10質量%Si(「NG」)の複合アノード電極ハーフセルの実施形態に関し、図4Aは、電気化学的充電容量および放電容量を示す棒グラフである。
図4B図4Bは、クーロン効率を示す棒グラフである。
図4C図4Cは、エネルギー密度を示す棒グラフである。
図5A図5A~5Cは、例3に係る、グラファイト乾式電極(「0wt%Si」)を、5wt%ケイ素(「5wt%Si」)及び10wt%ケイ素(「10wt%Si」)を含むケイ素/グラファイト乾式電極の2つの実施形態と比較した場合であり、図5Aは、電気化学的充電容量および放電容量を示す棒グラフである。
図5B図5Bは、クーロン効率を示す棒グラフである。
図5C図5Cは、電極エネルギー密度を示す棒グラフである。
図6A図6A~6Cは、例4に係る、表1の配合2,3および4についての、10質量%Siを含むSi/PG/SG複合乾式電極ハーフセルに関し、図6Aは、電気化学的充電容量および放電容量を示す棒グラフである。
図6B図6Bは、クーロン効率を示す棒グラフである。
図6C図6Cは、電極エネルギー密度を示す棒グラフである。
図7A図7A~7Cは、例5に係る、15質量%のケイ素を含む、種々のPG:SG質量比での配合1によるSiC/PG/SG複合乾式電極ハーフセルの実施形態についての棒グラフおよび線グラフを提供し、図7Aは、電気化学的充電容量および放電容量を示す。
図7B図7Bは、クーロン効率を示す。
図7C図7Cは、電極エネルギー密度を示す。
図8A図8A~8Cは、例6に係る、ケイ素、ケイ素/グラフェン(SiC)および酸化ケイ素(SiO)を含む、PG(AG)/SG(AG)複合乾式電極ハーフセルの実施形態についての棒グラフおよび線グラフであり、図8Aは、電気化学的充電容量および放電容量を示す。
図8B図8Bは、クーロン効率を示す。
図8C図8Cは、電極エネルギー密度を示す。
図9図9は、例7に係る、様々なアノード活性物質を含む自立型乾式電極フィルムの実施形態の最大引張強度を示す。
図10A図10A~10Cは、例8に係る、10質量%のケイ素活性材料を含むSiO/PG/SG複合乾式電極フィルムをハーフセルとして、表4に列挙される電解質配合物を使用する4つの実施形態の棒グラフおよび線グラフであり、図10Aは、充電容量および放電容量を示す。
図10B図10Bは、クーロン効率を示す。
図10C図10Cは、電極エネルギー密度を示す。
図11A図11Aは、例9に係る、ケイ素含有アノード電極フィルムの実施形態についてのエネルギー密度を示す棒グラフである。
図11B図11Bは、例9に係る、ケイ素含有アノード電極フィルムの実施形態についてのエネルギー密度増加を示す棒グラフである。
図12図12は、例10に係る、4.7質量%のケイ素ナノ粒子を含むケイ素含有アノード電極フィルムの実施形態における表面のSEM像である。
図13A図13Aは、グラファイトアノードフィルムの構成要素としての第14族元素の種々のフラクションについての理論比容量を示すグラフである。
図13B図13Bは、グラファイトアノードフィルムの構成要素としての第14族元素の種々のフラクションについての比容量増加を示すグラフである。
図14A図14Aは、実施例12に係る実施形態において、対照グラファイトフィルムと比較した、ケイ素含有アノード電極フィルムの電気化学的充電容量および放電容量の対電圧のグラフである。
図14B図14Bは、実施例12に係る実施形態において、対照グラファイトフィルムと比較した、スズ含有アノード電極フィルムの電気化学的充電容量および放電容量の対電圧のグラフである。
図15図15は、例13に係る実施形態において、典型的な自立型グラファイトフィルムと比較した、第14族活性材料を含む乾式自立型アノード電極フィルムの最大引張強度である。
図16A図16Aは、例14に係る実施形態において、電圧5mV~2V、0.05Cレートで試験したプレリチウム化Li-SiO/C複合アノードの充電容量および放電容量を示す棒グラフである。
図16B図16Bは、例14に係る実施形態において、電圧5mV~2V、0.05Cレートで試験されたプレリチウム化Li-SiO/C複合アノードの効率を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
エネルギー貯蔵装置に使用するための電極フィルムの様々な実施形態が記載されている。特に、特定の実施形態では、本明細書に開示されるエネルギー貯蔵装置はケイ素材料を含むアノード電極フィルムを含む。電極フィルムは、典型的なケイ素含有電極フィルムよりも改善された機械特性および加工特性を示す。また、このような電極フィルムを製造する方法も提供される。本発明は、特定の成分の粒径が本明細書に提供される範囲内である場合に、電極フィルムの材料を実現することができることを明らかにする。
【0013】
リチウムイオンバッテリーは例えば、民生用機器、生産性装置、及びバッテリー駆動車両において、数多くの商業用及び工業用の電源として信頼されてきた。しかしながら、エネルギー貯蔵装置に対する要求は、継続的かつ急速に増大している。例えば、自動車産業は、プラグインハイブリッド車や純粋な電気自動車など、小型で効率的なエネルギー貯蔵に依存する車両を開発している。
【0014】
第14族の半金属および金属、例えばスズおよびケイ素は、エネルギー貯蔵装置のアノードに含まれることが望ましい高エネルギー活性材料として知られている。1個のケイ素原子が4.4当量のリチウムイオンを収容できると考えられる。理論的には、形成される材料はLi4.4Siであってもよい。したがって、原則として、ケイ素アノード材料はグラファイト(372 mAh/g)の約11倍の容量(4200mAh/gおよび9782mAh/L)を貯蔵する可能性がある。ケイ素は、大容量のアノード材料として記載されてきた。スズは、本明細書でアノード活性材料として説明されている別の第14族元素である。
【0015】
しかしながら、第14族の半金属および金属、特にケイ素のいくつかの特性は、実際のデバイスでの実装において課題を提示している。特に、ケイ素は、リチウム化および脱リチウム化の間に比較的大きな体積変化を受けると考えられる。このような変化は、サイクル時に電極フィルムの凝集性および/または接着性の喪失をもたらすおそれがあり、それは電極内での高い接触抵抗をもたらし、最終的にはセルの故障の一因となり得る。さらに、ケイ素は、典型的にはナノ粒子として電極に組み込まれている。このようなナノ粒子は、フィルムの完全性を維持するために、より多量のバインダを必要とし、30質量%までのバインダが必要とされ得る。さらに、湿式製造プロセスでは、ナノ粒子を懸濁させるために、より多量の溶媒が必要とされる。このため、電極フィルム能力の向上が望まれるケイ素を配合すると、電極フィルムの安定性や加工性が低下するおそれがある。従って、サイクル性を維持し、工業的加工技術に適合するケイ素を含む電極フィルムが必要とされている。
【0016】
ケイ素材料は、ナノ粒子、ナノワイヤ、およびケイ素/グラフェン複合材料を含んでもよい。ケイ素ナノ粒子およびナノワイヤのアノードは、これらの材料の表面積が大きいため、湿式電極コーティングプロセスにおいてかなり高いバインダ荷重(~30質量%)および溶剤から利益を得ることが期待される。アノードにケイ素を使用するための一つのアプローチは、ケイ素とグラファイトを結合してケイ素/グラファイト複合体を形成することである。しかしながら、ケイ素/グラファイト複合体中のケイ素の含有量は、材料の性質に制限され得るものであり、その材料の性質とは、ケイ素/グラファイト複合電極の電気化学的性能に影響を及ぼすことが予想される、体積膨張およびケイ素の均一な分散の達成などである。
【0017】
ある実施形態は、様々な電極材料、例えば、グラファイト、ケイ素、酸化ケイ素、ケイ素-グラフェン、ケイ素-アルミニウム合金、スズ/グラフェン、および様々な高分子バインダを含んで製造される電極フィルムを含む。ケイ素活性材料を含む第14族活性材料は、アノード内のグラファイトと共に、エネルギー貯蔵能力を増大しながら処理可能なアノード電極フィルムを提供することが分かった。ある実施形態は、約10μmを超える粒径を有する第1のグラファイト材料と、約10μm未満の粒径を有する第2のグラファイト材料とを含むケイ素含有アノード電極フィルムである。
【0018】
本明細書に記載される材料および方法は、合成アノード電極フィルム中のより高いSi含有量が有利をもたらし得、高エネルギー密度電極を提供し得る。本明細書に記載のケイ素/グラファイト複合アノード活性材料を含む乾式アノード電極フィルムは、その理論的充電容量に匹敵する電気化学的充電容量を提供することができる。したがって、乾式ケイ素/グラファイト複合アノード電極フィルム中のケイ素活性材料は電気化学的に活性であり、充電/放電サイクルにわたってアクセス可能であり得る。
【0019】
「バッテリー」および「キャパシタ」という用語は、当業者にとって一般的および習慣的な意味が与えられる。「バッテリー」および「キャパシタ」という用語は、互いに排他的ではない。キャパシタまたはバッテリーは、単独で、または、マルチセルシステムの構成要素として動作させてもよい単一の電気化学セルである。
【0020】
エネルギー貯蔵装置の電圧は、単一のバッテリーまたはキャパシタセルの動作電圧である。電圧は、負荷が掛かった状態で、または製造公差に従って、定格電圧を超えるか、または定格電圧を下回ることがある。
【0021】
「自己支持型」の電極フィルムという用語は、フィルムまたは層を支持し、電極フィルムまたは層を自立型にすることができるように、その形状を維持するのに充分なバインダマトリクス構造を組み込んだ電極フィルムである。エネルギー貯蔵装置に組み込まれる場合、自己支持型の電極膜または活性層は、そのようなバインダマトリクス構造を組み込んだものである。一般的に、および使用される方法に応じて、そのような電極フィルムは、集電体や他のフィルムなどの外部の支持要素を用いることなくエネルギー貯蔵装置の製造工程で採用されるほど十分な強度を有する。例えば、「自己支持型」電極フィルムは、他の支持要素なしに電極製造工程中で、巻き取られ、取り扱われ、巻き出されるのに十分な強度を有することができる。カソード電極フィルムまたはアノード電極フィルムなどの乾式電極フィルムは、自己支持型であってもよい。
【0022】
「溶媒フリーの」電極フィルムとは、検出可能な処理溶媒、処理溶媒残留物、または処理溶媒不純物を含まない電極フィルムである。カソード電極膜またはアノード電極膜などの乾式電極膜は無溶媒であり得る。
【0023】
「湿式」電極、「湿式工程」電極またはスラリー電極は、活性材料、バインダ、および任意に添加剤のスラリーを含む少なくとも1つのステップによって調製される電極である。湿式電極は、処理溶媒、処理溶媒残留物、および/または処理溶媒不純物を含んでもよい。
【0024】
「非破壊」プロセスは、電極活性材料の表面を含む電極活性材料がプロセス中に実質的に改変されないプロセスである。したがって、活性材料のエネルギー貯蔵装置への組み込みなどの用途における分析特性および/または性能はプロセスを受けていないものと同一またはほぼ同一である。例えば、プロセス中に活物質上のコーティングが乱されないか、または実質的に乱されないことがある。非破壊プロセスの非限定的な実施例は「非破壊混合または混合」であり、減圧下、供給速度の増加、速度の減少(例えば、ブレンダー速度)、および/または活性材料に与えられる剪断が、エネルギー貯蔵装置に実装された場合に活性材料の分析特性および/または性能が悪影響を受ける閾値未満のままであるような他のプロセスパラメータを変化させたジェットミル粉砕である。「非破壊」プロセスは、電極活性材料の表面などの電極活性材料を実質的に修飾し、活性材料の分析特性および/または性能に実質的に影響を与える高剪断プロセスと区別することができる。例えば、高剪断ブレンドまたは高剪断ジェットミル粉砕は、電極活性材料の表面に有害な影響を及ぼし得る。高剪断プロセスは、活性材料の表面特性を損なうことなく、バインダ材料のフィブリル化、または自己支持型電極フィルムの形成を助けるためのバインダ/活性材料マトリクスの形成などの他の利点を提供するために実施することができる。本明細書の実施形態は、高剪断プロセスの過剰な使用による有害な影響を回避しながら、同様の利益を提供することができる。一般に、本明細書の非破壊プロセスはより高い供給速度、より低い速度、および/またはより低い圧力のうちの1つ以上で実行され、電極活性材料を実質的に改変して性能に影響を及ぼす破壊的なプロセスよりも、低い剪断プロセスをもたらす。
【0025】
ケイ素含有自己支持アノード電極フィルム
電極材料の形状および大きさの最適化、および電極配合物中の材料組成の変化によって、エネルギー密度の高いケイ素および/またはスズ含有電極を、乾式加工法で製造することができる。グラファイト材料は、合成グラファイトなどの人工グラファイト、天然グラファイト、及びグラファイトの混合物を含むことができる。一般に、グラファイト材料は、質量比率、粒径、粒形、および原材料などの特性が異なっていてもよい。
【0026】
ある実施形態は、高いケイ素含有量を有する自立型および/または自己支持型ケイ素/グラファイト複合乾式フィルムである。乾式フィルムは、2つの異なったサイズのグラファイトを使用することによって製造することができる。一次グラファイトは、粒径が約20~30μmであってもよく、二次グラファイト材料は例えば、4~7ミクロンの粒径を有する、より小さい粒子径を有する。異なるサイズのグラファイトを使用すると、10~30質量%までの比較的高ケイ素含有量の使用が可能になり、ロールツーロール電極加工性を有する強固な薄い乾式フィルムを製造できることが見出された。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるアノード電極フィルムが少なくとも1つの活性材料および少なくとも1つのバインダを含む。少なくとも1つの活性材料は一般に、14族活性材料、例えば、ケイ素活性材料および/またはスズ活性材料と、少なくとも1つの炭素系材料、例えば、グラファイト材料とを含む。
【0028】
ある実施形態は、粒径の異なる複数のグラファイト材料を含む場合に製造されるケイ素を含む自己支持型アノード電極フィルムの製造方法である。グラファイト材料は、例えば天然または人工グラファイトなどの原料、表面特性、粒径、表面積、および/または粒形によって識別可能であり得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの一次グラファイト(PG)および少なくとも1つの二次グラファイト(SG)がアノード電極フィルムに含まれる。
【0029】
少なくとも1つの一次グラファイトおよび少なくとも1つの二次グラファイトは、2つの異なった粒径を有するものとして区別することができる。いくつかの実施形態では、第1の平均粒径(すなわち、D50)を有する少なくとも1つの一次グラファイトと、より小さい第2の平均粒径を有する少なくとも1つの二次グラファイトとが、ケイ素含有電極フィルムに含まれる。少なくとも1つの一次グラファイトは、約10μmより大きい粒径を有する人工グラファイトまたは天然グラファイトであってもよい。少なくとも1つの二次グラファイトは、10μm未満の粒径を有する人工グラファイトまたは天然グラファイトであってもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの一次グラファイトが、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約35μm、または約40μm、あるいはそれらの間の任意の値の平均粒径を有する。さらなる実施形態では、少なくとも1つの二次グラファイトが約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、または約10μm、あるいはそれらの間の任意の値の平均粒径を有する。特定の実施形態では少なくとも1つの一次グラファイトが約22~30μmの平均粒径を有し、少なくとも1つの二次グラファイトは約4~7μmの平均粒径を有する。さらなる実施形態では、アノード電極フィルムが上述のように、二次グラファイトと組み合わせて、第1の一次グラファイトおよび第2の一次グラファイトを含む。さらなる実施形態では、アノード電極フィルムが上述のように、一次グラファイトと組合せて、第1の二次グラファイトおよび第2の二次グラファイトを含む。さらなる実施形態では、アノード電極フィルムが第3の一次グラファイトおよび/または第3の二次グラファイトをさらに含む。
【0030】
アノード電極フィルムは一次グラファイト(PG)及び二次グラファイト(SG)を様々な質量比、例えば、PG:SGを10:1~1:10で含むことができる。様々な実施形態において、PG:SG質量比は例えば、約10:1、約8:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:8、または約1:10、またはそれらの間の任意の範囲の値であり得る。
【0031】
少なくとも1つの一次グラファイトおよび/または少なくとも1つの二次グラファイトの各々は、天然グラファイトまたは人工グラファイトであってもよい。少なくとも1つの一次グラファイトおよび/または少なくとも1つの二次グラファイトの各々は、例えば、球形、薄片状、楕円形、または不規則な形状などの粒子形状によって特徴付けられてもよい。一次グラファイトおよび/または二次グラファイトの各々は、表面コーティングを含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの一次グラファイトが天然グラファイトまたは合成グラファイトを含む。さらなる実施形態では、少なくとも1つの二次グラファイトが天然グラファイトまたは合成グラファイトを含む。
【0032】
アノード電極フィルムは一般に、アノード活性材料を含む。アノード活性材料は少なくとも1つの一次グラファイト、少なくとも1つの二次グラファイト、および第14族活性材料、例えば、ケイ素活性材料またはスズ活性材料を含むことができる。アノード電極フィルム中のケイ素活性材料は、純ケイ素、ケイ素酸化物、プレリチウム化ケイ素またはケイ素-炭素複合体を含むことができる。ケイ素活性材料は純ケイ素(Si)、酸化ケイ素(SiO)、ケイ素合金、例えば、Si-AlまたはSi-Snから選択され得る。ケイ素活性材料は、ケイ素-炭素複合体を含むことができる。ケイ素-炭素複合体は例えば、ケイ素グラフェン(SiC)、ケイ素グラファイト(Si/C)、酸化ケイ素グラフェン(SiOC)、酸化ケイ素グラファイト(SiO/C)、プレリチウム化ケイ素グラファイト及びプレリチウム化ケイ素グラフェンである。いくつかの実施形態では、プレリチウム化ケイ素グラファイトがプレリチウム化酸化ケイ素グラファイト複合体であってもよい。ケイ素活性材料は、SiHであってもよい。ケイ素活性材料は、プレリチウム化ケイ素であってもよい。プレリチウム化ケイ素は、LiSiOまたはLiSiとして、電極フィルムに組み込まれてもよい。ケイ素活性材料の粒径はナノスケール、すなわち、約1nm~約1000nm、マイクロスケール、すなわち、約1μm~約1000μmであってもよい。ケイ素活性材料は、約30nm~約10μmの一次粒径を有する粒子を含むことができる。ケイ素活性材料は、約100nm、約250nm、約500nm、約1μm、約2μm、約4μm、約6μm、約8μm、または約10μm、あるいはそれらの間の任意の値の一次粒径を有する粒子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ケイ素活性材料がさらなる処理を行わずに使用される市販の材料である。
【0033】
いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムが約1質量%、約2質量%、約3質量%、約5質量%、約7.5質量%、約10質量%、約15質量%、約20質量%、約25質量%、約30質量%、約40質量%、または約50質量%のケイ素、またはそれらの間の任意の値を含むか、または占める。さらなる実施形態では、アノード電極フィルムまたはアノード電極フィルム混合物が約1~30質量%のケイ素、または10~30質量%のケイ素を含むか、または占める。なおさらなる実施形態において、アノード電極フィルムまたはアノード電極フィルム混合物は、約1~5質量%のケイ素、または5~15質量%のケイ素を含むか、または占める。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムが14族活性材料を約1%、約2%、約3%、約5%、約7.5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、または約50質量%、またはそれらの間の任意の値を含むか、または占める。さらなる実施形態では、アノード電極フィルムまたはアノード電極フィルム混合物が約1~30質量%の第14族活性材料、または10~30質量%の第14族活性材料を含むか、または占める。なおさらなる実施形態において、アノード電極フィルムまたはアノード電極フィルム混合物は、約1~5質量%の第14族活性材料、または5~15質量%の第14族活性材料を含むか、または占める。通常、ケイ素活性材料などの第14族活性材料を規定量(百分率など)で含むアノード電極フィルムは規定量の第14族活性材料を含み、活性材料の残りはグラファイトである。特に断らない限り、14族活性材料の質量%は、活性材料、バインダ、および任意の他の添加剤を含む電極フィルム物の総質量に対するものである。
【0034】
ケイ素活性材料およびグラファイトを含むアノード活性材料は、例えば、挿入材料(炭素、グラファイト、および/またはグラフェンなど)、合金化/脱合金化材料(ケイ素、酸化ケイ素(SiOx)、アルミニウム、スズ、および/または酸化スズ(SnOx)など)、金属合金または化合物(Si-Al、および/またはSi-Snなど)、および/または変換材料(遷移金属酸化物、例えば、酸化マンガン(MnOx)、酸化モリブデン(MoO2)、酸化ニッケル(NiOx)、および/または酸化銅(CuOx)など)として分類することができる。アノード活性材料は単独で使用するか、または一緒に混合して多相材料(例えば、Si-C、Sn-C、SiOx-C、SnOx-C、Si-Sn、Si-SiOx、Sn-SnOx、Si-SnOx-C、Sn-SnOx-C、Si-Sn-C、SiOx-Sn、またはSn-SiOx-SnOxなど)を形成することができる。ケイ素活性材料は、ナノ粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、アノード活性材料が単一の第14族活性材料を含む。さらなる実施形態では、アノード活性材料が単一の第14族元素を含む。さらに別の実施形態では、アノード活性材料が複数の第14族元素を含む。なおさらなる実施形態において、アノード活性材料は、ケイ素およびスズを含む。
【0035】
アノード活性材料は、表1、表2、及び表3に示すように、ケイ素及びグラファイト活性材料の様々な組み合わせを含むことができる。表1、表2および表3の各配合例に示すように、一次グラファイト、二次グラファイト、およびケイ素活性材料の比率を変えることができる。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
本明細書に記載されるアノード電極フィルムは少なくとも50μm、例えば、約50μm、約100μm、約150μm、約200μm、約225μm、約250μm、約275μm、約300μm、または約400μm、あるいはそれらの間の任意の値のフィルム厚さを有することができる。
【0040】
本明細書に記載のアノード電極フィルムは、少なくとも約10mg/cm、例えば、約10mg/cm、約15mg/cm、約20mg/cm、約25mg/cm、約30mg/cm、約35mg/cm、約40mg/cm、またはそれらの間の任意の値の活性材料負荷(電極フィルムまたは集電体の単位面積当たりの質量として表すことができる)を有することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ケイ素含有アノード電極フィルムが、約75%、約78%、約80%、約82%、約84%、約86%、約88%、約90%、約92%、約94%、またはそれらの間の任意の値のクーロン効率を提供することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、ケイ素含有アノード電極フィルムが、約1000Wh/kg、約1200Wh/kg、約1400Wh/kg、約1600Wh/kg、約1800Wh/kg、約2000Wh/kg、またはそれらの間の任意の範囲の値のエネルギー密度(電極フィルムの質量あたりのエネルギーとして表すことができる)を提供することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、ケイ素含有アノード電極フィルムが約2000Wh/L、約3000Wh/L、約4000Wh/L、約5000Wh/L、またはそれらの間の任意の範囲の値の比エネルギー貯蔵(最終またはその場電極フィルムの単位体積あたりのエネルギーとして表すことができる)を提供することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、ケイ素含有アノード電極フィルムが約400mAh/g、約500mAh/g、約600mAh/g、約700mAh/g、約800mAh/g、約1000mAh/g、約1500mAh/g、約2000mAh/g、約3000mAh/g、またはそれらの間の任意の値の充電または放電時の比容量を提供し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、ケイ素含有アノード電極フィルムが、その理論的能力の少なくとも95%、例えば、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%、またはそれらの間の任意の値の測定比容量を提供し得る。
【0046】
1つ以上のバインダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン、ポリアルキレン、ポリエーテル、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリシロキサンおよびポリシロキサンのコポリマー、分岐ポリエーテル、ポリビニルエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルカーボネート、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含むことができる。1つ以上のバインダは、グアー、アルギン酸、ポリ[(イソブチレン-alt-マレイン酸、アンモニウム塩)-co-イソブチレン-alt-マレイン酸無水物]、ポリ(エチレン-alt-マレイン酸無水物)、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、およびポリビニルエーテルをさらに含むことができる。バインダはセルロースを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンがポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含むことができる。例えば、バインダは、ポリ塩化ビニレン、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン-石炭アルキルメチルシロキサン、それらのコポリマー、及び/又はこれらの混合物を含むことができる。特定の実施形態では、フィブリル化可能なバインダはPTFEである。乾式自己支持型電極フィルムは、前述のバインダの相互貫入ネットワークを含むことができる。
【0047】
バインダは、セルロースまたはセルロースの誘導体を含んでもよい。セルロースの誘導体としては、例えば、セルロースアセテートなどのセルロースエステル;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロース(HEC)などのセルロースエーテル;硝酸セルロース;例えばカルボキシメチルセルロースキトサンなどのセルロースキトサン;またはカルボキシアルキルセルロース、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、またはカルボキシイソプロピルセルロースを挙げることができる。さらなる実施形態において、セルロースまたはセルロース誘導体は、セルロース塩を含み得る。なおさらなる実施形態において、セルロース塩のカチオンは、ナトリウム、アンモニウム、カルシウム、またはリチウムから選択され得る。例えば、セルロースまたはセルロース誘導体は、ナトリウムセルロースエステル、ナトリウムセルロースエーテル、硝酸セルロースナトリウム、またはカルボキシアルキルセルロースナトリウムから選択されるナトリウムセルロースまたはナトリウムセルロース誘導体を含み得る。CMCは、ナトリウムカルボキシメチルセルロースを含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のバインダがCMC、PVDF、および/またはPTFEを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるケイ素含有アノード電極フィルムが、そのようなフィルムのために選択されたグラファイト物質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるケイ素含有アノード電極電極フィルムの乾式電極プロセスを可能にするためにグラファイト含有配合物を提供する。さらなる実施形態では、アノード電極フィルムは自立型フィルムである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるケイ素含有アノード電極フィルムが10質量%を超えるケイ素質量負荷を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるケイ素含有アノード電極フィルムは、性能を改善するための非水性炭酸塩ベースの電解質を含む。
【0049】
本明細書に記載される電極フィルム、または本明細書に記載される電極フィルムを組み込むエネルギー貯蔵装置は、有利には改善された比容量(mAh/gで測定されてもよい)によって特徴付けることができる。様々な実施形態において実現され得るさらなる改善は、典型的なケイ素含有電極フィルムと比較して、装置の寿命にわたる能力低下の減少を含む。
【0050】
本明細書に記載の自立型アノード電極フィルムは、改善された最大引張強度(20ミリメートルの幅を有するフィルムからニュートン(N)で測定することができる)を有することができる。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムの最大引張強度が、少なくとも約2N、例えば、約2N、約2.5N、約3N、約3.5N、約4N、またはそれらの間の任意の値である。
【0051】
いくつかの実施形態は、乾式電極処理技術に関する。乾式電極製造プロセスは米国特許出願公開第2006/0114643号、米国特許出願公開第2006/0133013号、米国特許第9,525,168号、または米国特許第7,935,155号のうちの1つまたは複数に開示されているものとすることができ、これらの各々は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0052】
いくつかの実施形態では、自立型電極フィルムの製造方法が提供される。図2に関して、方法200は、第14族活性材料(205)を選択するステップと、第14族活性材料を第1および第2のグラファイト材料などの1つまたは複数のグラファイト材料と組み合わせて(例えば、混合して)活性材料混合物を形成するステップ(210)と、活性材料混合物をバインダと混合して電極フィルム混合物を形成するステップ(215)と、電極フィルム混合物をカレンダー加工して自己支持型および/または自立型電極フィルムを形成するステップ(220)とを含むことができる。ステップ210は粒子を分散させるために、14族活性材料およびグラファイトをブレンドまたは粉砕することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、それぞれの工程が乾式および溶媒フリーである。さらなる実施形態では、14族活性材料はケイ素活性材料である。なおさらなる実施形態において、バインダは、PTFEのようなフィブリル化可能なバインダである。いくつかの実施形態は、乾式第14族活性材料を乾式バインダと予備混合することを含む、ステップ210の前の予備混合ステップを含むことができる。このような予備混合工程で使用される乾式バインダは、ステップ215で使用されるバインダと同じまたは異なった物質であってもよい。
【0053】
様々な実施形態において、乾式粉末、例えば、バインダ粒子および/または活性材料粒子を含む混合物は、混合媒体(例えば、ガラスビーズ、セラミックボール)を伴うおよび伴わないタンブラー、パドルミキサー、ブレードブレンダー、または音響ミキサーのような、例えば、対流、空気圧または拡散ミキサーを使用する穏やかなステップによって(例えば、ステップ210、215、または方法200の前述の予備混合ステップにおいて)形成することができる。穏やかな混合プロセスは、混合物中の任意の活性材料に関して非破壊的であり得る。限定されるものではないが、グラファイト粒子及び/又はケイ素活性材料粒子は、穏やかな混合プロセスの後にサイズが保存されてもよい。さらなる実施形態において、粉末混合のシーケンスおよび条件は、活性材料、バインダ、および任意の添加剤の均一な分配を改善するために変更され得る。穏やかな予備混合は、エネルギー貯蔵装置のサイクルの間、ケイ素のような第14族活性材料の構造的安定性を高めることもできる。
【0054】
様々な実施形態では、乾式粉末、例えばバインダ粒子および/または活性材料粒子を含む混合物は、高剪断ブレンドまたは高剪断ジェットミル粉砕などの高剪断ステップによって、(例えば、ステップ210、215、または方法200の前述の予備混合ステップで)形成することができる。高剪断の予備混合は、ケイ素などの第14族活性材料と1つまたは複数のバインダとの間の接触を強化することができる。さらなる実施形態において、粉末混合のシーケンスおよび条件は、活性材料、バインダ、および任意の添加剤の均一な分布を改善するために変更されてもよい。
【0055】
本明細書で提供される材料および方法は、様々なエネルギー貯蔵装置で実施することができる。本明細書で提供されるように、エネルギー貯蔵装置は、キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ(LIC)、ウルトラキャパシタ、リチウムイオンバッテリーなどのバッテリー、または前述の2つ以上の態様を組み合わせた混成エネルギー貯蔵装置とすることができる。好ましい実施形態では、装置はリチウムイオンバッテリーである。
【0056】
本明細書で提供されるエネルギー貯蔵装置は任意の好適な形状、例えば、平面、らせん状に巻かれたもの、ボタン形状のもの、またはパウチであってもよい。本明細書で提供されるエネルギー貯蔵装置は、システムの構成要素、例えば、発電システム、無停電電源システム(UPS)、太陽光発電システム、例えば、産業機械および/または輸送に使用されるエネルギー回収システムであってもよい。本明細書で提供されるエネルギー貯蔵装置は、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、および/または電気自動車(EV)を含む様々な電子装置および/または自動車にパワーを供給するために使用され得る。
【0057】
図1は、本明細書に提供されるケイ素含有アノード電極フィルムを含む電極フィルムを有するエネルギー貯蔵装置100の一例の側断面概略図を示す。エネルギー貯蔵装置100は、例えば、キャパシタ、バッテリー、キャパシタ-バッテリーハイブリッド、又は燃料電池に分類することができる。好ましい実施形態では、装置100はリチウムイオンバッテリーである。
【0058】
この装置は、ケイ素ベースのアノード102と、カソード104と、アノード102とカソード104の間に配置されたセパレータ106とを有する。アノード102およびカソード104は、セパレータ106のそれぞれの対向する表面に隣接している。エネルギー貯蔵装置100は、エネルギー貯蔵装置100のアノード102とカソード104との間のイオン連通を促進するための電解質118を含む。電解質118、アノード102、カソード104、およびセパレータ106は、エネルギー貯蔵装置ハウジング120内に収容される。
【0059】
エネルギー貯蔵装置ハウジング120は、第1の電極102、第2の電極104、およびセパレータ106の周囲に封止されてもよく、周囲の環境から物理的に封止されてもよい。
【0060】
セパレータ106は、アノード102をカソード104から電気的に絶縁すると同時に、2つの隣接する電極間のイオン通信を可能にするように構成される。セパレータ106は、適切な多孔質の電気絶縁材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、セパレータ106がポリマー材料を含むことができる。例えば、セパレータ106はセルロース材料(例えば、紙)、ポリエチレン(PE)材料、ポリプロピレン(PP)材料、および/またはポリエチレンおよびポリプロピレン材料を含むことができる。
【0061】
一般に、アノード102及びカソード104はそれぞれ集電体及び電極フィルムを含む。例えば、アノード102は電極フィルム112を含み、カソード104は電極フィルム114をそれぞれ含む。電極フィルム112及び114は、任意の好適な形、大きさ及び厚さを有することができる。例えば、電極フィルムは約30ミクロン(μm)~約250ミクロン、例えば、約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約250ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約750ミクロン、約1000ミクロン、約2000ミクロン、またはそれらの間の値の厚さを有することができる。電極フィルムは一般に、1つ以上の活性材料、例えば、本明細書で提供されるアノード活性材料またはカソード活性材料を含む。電極フィルム112および/または114は、本明細書で提供されるような乾式および/または自己支持型電極フィルムであってもよく、本明細書で提供されるような引張強度または容量などの有益な特性を有することができる。第1電極フィルム112および/または第2電極フィルム114は本明細書に記載されるように、14族活性材料、例えばケイ素活性材料を含んでもよい。図示されるように、第1電極フィルム112は、ケイ素活性材料粒子122とグラファイト活性材料粒子124とを含む。電極フィルム112および/または114は、本明細書に記載されるような方法によって調製されてもよい。電極フィルム112および/または114は本明細書に記載されるように、湿式電極または自己支持型乾式電極であってもよい。
【0062】
第1集電体108および第2集電体110は、各々の対応する電極フィルムと外部電気回路(図示せず)との間の電気的結合を容易にする。第1集電体108および/または第2集電体110は1つまたは複数の導電性材料を含み、対応する電極と外部回路との間の電荷の移動を容易にするように選択された任意の適切な形状およびサイズを有することができる。例えば、集電体は、アルミニウム、ニッケル、銅、レニウム、ニオブ、タンタル、および貴金属、例えば銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、ならびにこれらの合金および組合せを含む材料などの金属材料を含むことができる。
例えば、第1集電体108および/または第2集電体110は例えば、アルミニウム箔または銅箔を含むことができる。第1集電体108および/または第2集電体110は、対応する電極と外部回路との間で電荷の移動を提供するようなサイズにされた長方形または実質的に長方形の形状を有することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100はリチウムイオンバッテリーとすることができる。いくつかの実施形態では、リチウムイオンバッテリー電極の電極フィルムが、ケイ素活性材料を含むことができる。
【0064】
さらなる実施形態では、エネルギー貯蔵装置100が適切なリチウム含有電解質で充電される。例えば、装置100は、リチウム塩、および非水性または有機溶媒などの溶媒を含むことができる。一般に、リチウム塩は、酸化還元安定性のアニオンを含む。いくつかの実施形態では、アニオンは一価であり得る。いくつかの実施形態において、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸塩(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SOCF)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(FNOLi)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBCおよびそれらの組合せから選択することができる。いくつかの実施形態では、電解質が第四級アンモニウムカチオンと、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレートおよびヨウ化物からなる群から選択されるアニオンとを含むことができる。いくつかの実施形態において、塩濃度は、約0.1mol/L(M)~約5M、約0.2M~約3M、または約0.3M~約2Mであってもよい。さらなる実施形態において、電解質の塩濃度は、約0.7M~約1Mであってもよい。特定の実施形態では、電解質の塩濃度が約0.2M、約0.3M、約0.4M、約0.5M、約0.6M、約0.7M、約0.8M、約0.9M、約1M、約1.1M、約1.2M、またはそれらの間の値であってもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるエネルギー貯蔵装置電解質が液体溶媒を含むことができる。本明細書で提供される溶媒は、電解質のすべての成分を溶解する必要はなく、いかなる成分も完全に溶解する必要はない。さらなる実施形態において、溶媒は、有機溶媒であり得る。いくつかの実施形態では、溶媒がカーボネート、エーテルおよび/またはエステルから選択される1つ以上の官能基を含むことができる。いくつかの実施形態では、溶媒はカーボネートを含むことができる。さらなる実施形態では、カーボネートが、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、およびそれらの組み合わせなどの環状カーボネート、または、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびそれらの組み合わせなどの非環状カーボネートから選択することができる。特定の実施形態では、電解質は、LiPF、および1つ以上のカーボネートを含むことができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、電解質溶媒がエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、およびプロピレンカーボネート(PC)を含む。さらなる実施形態では、電解質溶媒がエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)を含む。なおさらなる実施形態では、電解質溶媒がエチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を含む。さらなる実施形態では、電解質溶媒がエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジメチルカーボネート(DMC)を含む。電解質溶媒は、エチルメチルカーボネートリッチな溶媒配合物を含んでもよい。電解質は、添加剤をさらに含んでもよい。電解質添加剤は、カーボネート、例えばフルオロエチレンカーボネート(FEC)またはジアリルピロカーボネート(DAPC)であってもよい。電解質添加剤は、シクロヘキサン(CH)であってもよい。電解質溶媒は、添加剤を約1質量%~約30質量%、例えば、約1質量%~約20質量%または約1質量%~約10質量%含むことができる。
【0067】
表4は、カーボネート溶媒、リチウム塩、および1以上の添加剤を含む電解質配合物の実施形態を提供し、1以上の添加剤は、FEC、CH、および/またはDAPCであった。特定の実施形態は、EC:EMCの体積比が約3:7である電解質1~4のそれぞれを提供する。さらなる実施形態は、LiPF塩濃度が約1.2Mである電解質1~4のそれぞれを提供する。表4において、各添加剤の質量%は、溶媒、塩、および添加剤を含む電解質の総質量に対するものである。
【0068】
【表4】
【0069】
本明細書で提供される材料および方法は、様々なエネルギー貯蔵装置で実施することができる。本明細書で提供されるように、エネルギー貯蔵装置は、キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ(LIC)、ウルトラキャパシタ、バッテリー、またはハイブリッドエネルギー貯蔵装置および/またはハイブリッドセルとすることができ、これらのうちの2つ以上の態様を組み合わせることができる。好ましい実施形態において、装置はバッテリーである。エネルギー貯蔵装置は、動作電圧によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエネルギー貯蔵装置が約0V~約5Vの動作電圧を有することができる。さらなる実施形態では、動作電圧が約2.7V~約4.2V、約3.0V~約4.2V、またはそれらの間の値とすることができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンバッテリーが約2.5~5V、すなわち3.0~4.2Vで動作するように構成される。さらなる実施形態では、リチウムイオンバッテリーがそれぞれ、約2.5V~約3Vの最小動作電圧を有するように構成される。さらに別の実施形態では、リチウムイオンバッテリーがそれぞれ、約4.1V~約4.4Vの最大動作電圧を有するように構成される。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される電極フィルムが、少なくとも1つの活性材料および少なくとも1つのバインダを含む。少なくとも1つの活性材料は、当技術分野で知られている任意の活性材料とすることができる。少なくとも1つの活性材料は、バッテリーのアノードまたはカソードでの使用に適した材料であってもよい。カソード活性材料は例えば、金属酸化物、金属硫化物、硫黄-炭素複合体、またはリチウム金属酸化物であり得る。
リチウム金属酸化物は、例えば、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、チタン酸リチウム(LTO)、リチウムニッケルマンガン酸化物(LNMO)および/またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)であり得る。いくつかの実施形態では、カソード活性材料が例えば、層状遷移金属酸化物(LiCoO(LCO)、Li(NiMnCo)O(NMC)および/またはLiNi0.8Co0.15Al0.05(NCA)など)、スピネルマンガン酸化物(LiMn(LMO)および/またはLiMn1.5Ni0.5(LMNO)など)またはカンラン石(LiFePOなど)から構成され得る。カソード活性材料は、硫黄、または硫化リチウム(LiS)などの硫黄を含む材料、または他の硫黄ベースの材料、またはそれらの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、カソードフィルムが硫黄、または少なくとも50質量%の硫黄活性材料を含む材料を含む。いくつかの実施形態では、硫黄または硫黄活性材料を含む材料を含むカソードフィルムが少なくとも10mAh/cmの面積正規化比容量(すなわち、面積能力)を有する。いくつかの実施形態では、硫黄または硫黄活性材料を含む材料を含むカソードフィルムが1g/cmの電極フィルム濃度を有する。いくつかの実施形態では、硫黄または硫黄活性材料を含む材料を含むカソードフィルムがバインダをさらに含む。
【0072】
少なくとも1つの活性材料は、1つ以上の炭素材料を含んでもよい。炭素材料は例えば、黒鉛材料、グラファイト、グラフェン含有材料、硬質炭素、軟質炭素、カーボンナノチューブ、多孔質炭素、導電性炭素、またはそれらの組み合わせから選択されてもよい。
グラファイトは、合成繊維または天然由来であってもよい。活性炭は、水蒸気プロセスまたは酸/エッチングプロセスから得ることができる。いくつかの実施形態では、グラファイト材料が表面処理された材料であってもよい。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は活性炭を含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素が階層構造炭素を含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素が構造化カーボンナノチューブ、構造化カーボンナノワイヤおよび/または構造化カーボンナノシートを含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素がグラフェンシートを含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素が表面処理された炭素であってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンバッテリーまたはハイブリッドエネルギー貯蔵装置のカソード電極フィルムが、約70質量%~約92質量%、または約70質量%~約96質量%を含む、約70質量%~約98質量%の少なくとも1つの活性材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムが約5質量%まで、または約1質量%~約5質量%までを含む、約10質量%までの多孔質カーボン材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムが約1重み付け%~約3重み付け%を含む約5重み付け%までの導電性添加剤を含む。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムが約20質量%までのバインダ、例えば、約1.5質量%~10質量%、約4質量%~10質量%、約1.5質量%~5質量%、または約1.5質量%~3質量%を含む。いくつかの実施形態では、カソード電極フィルムが約1.5質量%~約3質量%のバインダを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムが少なくとも1つの活性材料、バインダ、および任意選択で導電性添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、導電性添加剤がカーボンブラックなどの導電性炭素添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、アノードの少なくとも1つの活性材料が合成グラファイト、天然グラファイト、硬質炭素、軟質炭素、グラフェン、メソ多孔質炭素、ケイ素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、ゲルマニウム、チタン酸リチウム、前述の材料の混合物、または複合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムが約80質量%~約98質量%、または約94質量%~約97質量%を含む、約80質量%~約98質量%の少なくとも1つの活性材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムが約1質量%~約3質量%を含む約5質量%までの導電性添加剤を含む。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムが約1.5質量%~10質量%、約4質量%~10質量%、約1.5質量%~5質量%、または約3質量%~5質量%を含む、約20質量%までのバインダを含む。いくつかの実施形態では、アノード電極フィルムが約4質量%のバインダを含む。いくつかの実施形態では、アノードフィルムが導電性添加剤を含まなくてもよい。
【0075】
1つまたは複数のバインダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン、ポリアルキレン、ポリエーテル、スチレン-ブタジエン、ポリシロキサンおよびポリシロキサンのコポリマー、分岐ポリエーテル、ポリビニルエーテル、ポリアクリル酸、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含むことができる。バインダはセルロースを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンがポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含むことができる。例えば、バインダは、ポリ塩化ビニレン、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン-コアルキルメチルシロキサン、それらのコポリマー、及び/又はこれらの混合物を含むことができる。特定の実施形態では、フィブリル化可能なバインダはPTFEである。乾式自己支持型電極フィルムは、前述のバインダの相互貫入ネットワークを含むことができる。
【0076】
バインダは、セルロースまたはセルロースの誘導体を含み得る。セルロースの誘導体は例えば、セルロースアセテートなどのセルロースエステル;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはヒドロキシエチルセルロース(HEC)などのセルロースエーテル;硝酸セルロース;またはカルボキシアルキルセルロース、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、またはカルボキシイソプロピルセルロースを含むことができる。さらなる実施形態において、セルロースまたはセルロース誘導体は、セルロース塩を含み得る。なおさらなる実施形態において、セルロース塩のカチオンは、ナトリウム、アンモニウム、またはリチウムから選択され得る。例えば、セルロースまたはセルロース誘導体は、ナトリウムセルロースエステル、ナトリウムセルロースエーテル、ナトリウムセルロース硝酸塩、またはナトリウムカルボキシアルキルセルロースから選択されるナトリウムセルロースまたはナトリウムセルロース誘導体を含み得る。CMCは、ナトリウムカルボキシメチルセルロースを含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のバインダがCMC、PVDF、および/またはPTFEを含む。
【0077】
電極フィルム混合物は、選択された大きさを有するバインダ粒子、例えば、ポリテトラフルオロエチレンバインダ粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、バインダ粒子が、約50nm、約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm、約500nm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約10μm、約50μm、約100μm、またはそれらの間の値であり得る。
【0078】
乾式製造プロセスとは、電極フィルムの形成に溶媒を使用しないか、または実質的に使用しないプロセスを指すことができる。例えば、活性材料及びバインダを含む電極フィルムの構成要素は、乾式粒子を含むことができる。電極フィルムを形成するための乾式粒子を組み合わせて、乾式粒子電極フィルム混合物を提供することができる。いくつかの実施形態では、電極フィルムが、電極フィルムの成分の質量パーセンテージと、乾式粒子電極フィルム混合物の成分の質量パーセンテージとが実質的に同じになるように、乾式粒子電極フィルム混合物から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、乾式製造プロセスを使用して乾式粒子電極フィルム混合物から形成される電極フィルムが、溶媒およびそれから生じる溶媒残渣などの加工添加剤を含まないか、または実質的に含まないことができる。いくつかの実施形態では、得られた電極フィルムは、乾式法を用いて乾式粒子混合物から形成された自己支持型フィルムである。いくつかの実施形態では、得られた電極フィルムは、乾式法を使用して、乾式粒子電極フィルム混合物から形成された自立型フィルムである。活性層または電極フィルムを形成するための方法は、フィルムがフィブリル化バインダマトリクスを含むように、フィブリル化可能なバインダ成分をフィブリル化することを含むことができる。さらなる実施形態では、自立型電極フィルムが集電体の非存在下で形成されてもよい。なおさらなる実施形態において、電極フィルムはフィルムが自己支持型であるように、フィブリル化ポリマーマトリクスを含むことができる。フィブリルのマトリクス、格子、またはウエブを形成して、電極フィルムに機械的構成を提供することができると考えられる。
【0079】
電極フィルムは、特定の用途に適した選択された厚さを有することができる。本明細書で提供される電極フィルムの厚さは、従来のプロセスによって調製される電極フィルムの厚さよりも厚くてもよい。いくつかの実施形態では、電極フィルムが約250ミクロン、約300ミクロン、約350ミクロン、約400ミクロン、約450ミクロン、約500ミクロン、約750ミクロン、約1mm、または約2mm、あるいはそれらの間の任意の値の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、電極フィルムの厚さは、選択された体積エネルギー密度に対応するように変化させることができる。
【0080】
以下の具体例では、アノード電極フィルムを作製し、試験した。
【0081】

複合乾式電極の調製:実施形態のケイ素/グラファイト複合乾式電極は、グラファイトとケイ素とを電極構成要素とともに乾式粉末混合し、カレンダー加工して自立フィルムを形成し、続いて集電体上にラミネートすることによって調製した。乾式粉末混合は、グラファイト/ポリマーバインダ/ケイ素の順に行った。具体的には、乾式粉末混合を、50%の加速度で共鳴アコースティックミキサを用いて以下のように実施した:一次および二次グラファイト、および任意の14族活性材料を5分間混合し、次いで、CMC、PVDF、およびPTFEを、グラファイト混合物に連続的に混合しながら添加した。乾式混合粉末を、40psiの供給および40psiの粉砕圧力で微粉化ジェットミルに通して処理し、次いで100℃~185℃でカレンダー加工して自立フィルムにした。
【0082】
電気化学的特性評価:電気化学的測定を行うために、単層アノード/リチウム箔ハーフセルをパウチセル構成に組み立てた。電気化学的測定は、周囲温度でアノードハーフセルに定電流および/または定電位を印加することによって行った。
【0083】
例1
図3は、フィルムの理論比容量と比較した、例示的なケイ素およびグラファイト複合アノード電極フィルムの比容量を示すグラフである。グラファイトは370mAh/g、ケイ素は4200mAh/gの能力を仮定して理論比容量を決定した。
【0084】
例2
図4A~4Cの実施形態では、市販の人工グラファイト(AG)および天然グラファイト(NG)を使用して、乾式製造工程によって調製されたケイ素/グラファイト複合電極を製造した。驚くべきことに、図4A~4Cの実施形態において、人工グラファイトは、ハーフセル構成における天然グラファイトよりもわずかに低いクーロン効率と共に、ケイ素/グラファイト複合ハーフセルにおける天然グラファイトよりも高い電気化学容量を提供した。ケイ素粉末のより均一な分布と人工グラファイト粉末とケイ素ナノ粒子間の相互接続が役割を果たす可能性がある。図4A~4Cにおける実施形態では、天然グラファイトが人工グラファイトよりも高いクーロン効率を提供した。表面改質された人工グラファイト/10質量%Si(「AG」)および天然グラファイト/10質量%Si(「NG」)複合アノード電極ハーフセルに関し、図4Aは電気化学的容量、図4Bはクーロン効率、図4Cはエネルギー密度を示す。活性物質負荷は以下の通りであった。AG:23.5mg/cm、NG:25mg/cm
【0085】
例3
図5は、グラファイト乾式電極(「0wt%Si」)の電気化学的比容量およびクーロン効率を、それぞれ5wt%(「5wt%Si」)および10wt%Si(「10wt%Si」)を含むケイ素/グラファイト乾式電極の2つの実施形態と比較して提供する。いずれの場合もグラファイトは人工グラファイトであった。予想されたように、10質量%ケイ素(Siとして)含有ケイ素/グラファイト乾式電極は、最も高い比容量およびエネルギー密度を有していた。5wt%ケイ素含有グラファイト複合電極に対する10wt%ケイ素グラファイト複合体の比容量の増大も、各電極のケイ素含有量に比例し、ケイ素活性材料粉末が、本明細書に記載の乾式電極加工法の条件下で十分に分散され、活性であることを示唆した。活性材料負荷は、0wt%Si:24.5mg/cm,5wt%Si:24.6mg/cm,10wt%Si:23.5mg/cmとした。
【0086】
例4
図6A~6Cは、表1の配合2、3、および4に従う実施形態であり、10質量%ケイ素(Si)を含むSi/PG/SG合成乾式電極ハーフセルの電気化学的性能を示す。各実施形態に対応する、図6Aは容量を提供し、図6Bは効率を提供し、図6Cは電極エネルギー密度を提供する。結果は、一次グラファイトの選択が複合電極の電気化学容量とクーロン効率に影響することを示した。この実施形態では、天然グラファイトが電気化学的性能およびエネルギー密度を改善した。活性物質負荷は以下の通りであった。配合2:22.5mg/cm、配合3:24.6mg/cm、配合4:22.5mg/cm
【0087】
例5
図7A~7Cは、15質量%ケイ素活性材料を含む、配合1によるSiC/PG/SG複合乾式電極ハーフセルを含むケイ素/グラフェン(SiC)の電気化学的性能を示す。電極フィルムは、1:1、1:2、1:3および1:4のPG:SG比で調製した。PGとSGの両方は、それぞれのフィルムに人工グラファイトを含んでいた。各実施形態に対応する、図7Aは容量を提供し、図7Bは効率を提供し、図7Cは電極エネルギー密度を提供する。その結果、PG:SGの質量比率の変化は、この一連の合成乾式電極の比容量および有効性にほとんど影響を与えないことが示された。体積エネルギー密度は全体の電極厚さに支配される。そのように、厚さは、体積エネルギー密度のより良い配置のために、電極製造ステップにおいて変更することができる。活性物質負荷は以下の通りであった。1:1フィルム:12.7mg/cm、1:2フィルム:12.5mg/cm、1:3フィルム:11mg/cm、1:4フィルム:11.6mg/cm
【0088】
例6
図8A~8Cは、配合1による、ケイ素(「Si」)、ケイ素/グラフェン(「SiC」)および酸化ケイ素(「SiO」)を含むPG(AG)/SG(AG)複合乾式電極ハーフセルの電気化学的性能を示す。電極フィルムは、3:1のPG:SGの比率で調製した。PGおよびSGの両方は、人工グラファイトを含んでいた。Siフィルムは10% Siを含み、SiCフィルムは15% SiCを含み、SiOフィルムは10% SiOを含んでいた。各実施形態に対応する、図8Aは容量を提供し、図8Bは効率を提供し、図8Cは電極エネルギー密度を提供する。活性材料負荷は、Siフィルム:22.5mg/cm,SiCフィルム:12.5mg/cm,SiOフィルム:17mg/cmとした。
【0089】
例7
図9は、標準的なグラファイト乾式フィルムと比べた場合の、各種ケイ素/グラファイト複合乾式フィルムの最大引張強度を示している。試験したフィルムは自立型乾式電極フィルムであり、様々な負極活性材料を含んでいた。試験したフィルムは、天然グラファイトフィルム(「NG」)、人工グラファイトフィルム(「AG」)、10質量%ケイ素(「Siとして」)を含む人工グラファイトフィルム(「10質量%Si/AG」)、10質量%ケイ素(「Siとして」)を含む天然グラファイトフィルム(「10質量%Si/NG」)、および人工グラファイトおよび天然グラファイトおよび10質量%ケイ素(「Siとして」)を含むフィルム(「10質量%Si/AG/NG」)を含んでいた。フィルムの厚さは以下の通りであった。NGフィルム:264μm、AGフィルム:260μm、10wt%Si/AGフィルム:248μm、10wt%Si/NGフィルム:311μm、10wt%Si/AG/NGフィルム:292μm。結果は、単純なグラファイトフィルムに比べて、ケイ素/グラファイト複合乾式フィルムが引張強度の向上を示した。さらに、PGとSGを含むアノードフィルムは観察された引張強度の増加と共に、自立型乾式ケイ素含有複合フィルムの弾性と柔軟性を改善した。
【0090】
例8
図10A~10Cはハーフセルとして10質量%のケイ素活性材料を含み、表4に列挙される電解質配合物を使用するSiO/PG/SGの4つの合成乾式電極フィルムの電気化学的性能およびエネルギー密度を提供する。各実施例に対応する、図10Aは容量を提供し、図10Bは効率を提供し、図10Cは電極エネルギー密度を提供する。その結果、電解質組成は電気化学的能力とクーロン効率に影響を及ぼし、ケイ素/グラファイト複合乾式電極の高エネルギー密度につながることが分かった。活性物質負荷は以下の通りであった。電解質1フィルム:19.2mg/cm、電解質2フィルム:17.5mg/cm、電解質3フィルム:21mg/cm、電解質4フィルム:19.2mg/cm
【0091】
例9
図11Aおよび図11Bは、ケイ素含有アノード電極フィルムに関する追加の性能データを提供する。試験したフィルムは自立型乾式電極フィルムであり、ケイ素含有アノード活性材料を含んでいた。試験したフィルムは、典型的なグラファイトアノード電極フィルム(「0wt.%Si」)、4.7wt%ケイ素/グラファイトフィルム(「4.7wt.%Si」)および10wt%ケイ素/グラファイトフィルム(「10wt.%Si」)を含む。図11Aおよび11Bは、ケイ素含有フィルムが典型的なグラファイトアノード電極フィルムよりも大きなエネルギー密度を提供することを実証する。
【0092】
例10
図12は、4.7質量%のナノ粒子ケイ素を含むケイ素含有アノード電極フィルムの、表面のSEM像を提供する。
【0093】
例11
図13Aおよび13Bは、グラファイトアノードフィルムの構成要素としての第14族元素の種々の分率に対応する容量の理論的増加を示すグラフである。理論的には、わずか3%のケイ素が典型的なグラファイトアノードよりも約33%容量を増加させることができる。
【0094】
例12
図14Aおよび14Bは、典型的なグラファイトフィルム(「対照」)と比較して、それぞれ、ケイ素およびスズ含有アノード電極フィルムの電気化学的充電容量および放電容量の対電圧のグラフを提供する。試験されたフィルムを含む第14族元素には、4.7質量%ケイ素(「4.7質量%Si-C」)または4.7質量%スズ(「4.7%Sn-C」)と共にグラファイトが含まれていた。ケイ素含有およびスズ含有フィルムの両方は、典型的なグラファイト対照フィルムと比較して容量が向上していた。ケイ素の場合、この増加は、図14Aに示す充電サイクルのグラフにおいて、0.4V~0.5V付近の拡張された平坦域と相関している。
【0095】
例13
図15は、典型的な自立型グラファイトフィルム(「対照」)と比較した、第14族活性材料を含む乾式自立型アノード電極フィルムの最大引張強度を提供する。試験されたフィルムは、ナノ粒子ケイ素を含む第1グラファイトフィルム(「Si-C」)と、ナノ粒子スズを含む第2グラファイトフィルム(「Sn-C」)を含む。ケイ素を含むフィルムは、最も高い引張強度が測定された。
【0096】
例14
プレリチウム化酸化ケイ素グラファイト(SiO/C)ハーフセルを調製し、試験した。表5は、購入したタイプAからCの市販のプレリチウム化SiO/Cを示している。タイプCは、表面コーティングのないタイプBと同様の物理的性質を有し、タイプAおよびBは表面コーティングを有する。
【0097】
【表5】
【0098】
プレリチウム化されたSiO/Cの各タイプを使用し、表6に詳述される配合に従って電極を作製した。60%強度で5分間の共鳴音響混合に続き、乾式粉末混合を行った。乾式混合粉末を、40psi供給および40psi粉砕でジェットミル粉砕した。最終配合物を室温50℃にてカレンダー加工して自立型フィルムを形成し、続いて185℃で集電体上にラミネートした。全てのカレンダー加工及びラミネート工程は、乾燥室内で行った。
【0099】
【表6】
【0100】
5mV~2Vの電圧で0.05Cレートで試験された配合1~3のプレリチウム化Li-SiO/C複合アノードについて、図16Aは、充放電容量を示す棒グラフを提供し、図16Bは、効率を示す棒グラフを提供する。配合2のBタイププレリチウム化SiO/Cアノードは、わずかに高い効率を示したが、これはわずかに低い表面積に起因すると考えられ、表面被覆されていないプレリチウム化SiO/Cが、乾式被覆工程を通して処理される可能性を示している。活性物質の負荷は以下の通りであった。配合1:20.4mg/cm、配合2:18.9mg/cm、配合3:17.8mg/cm
【0101】
本発明の特定の実施形態を説明してきたが、これらの実施形態は例としてのみ提示されており、本開示の範囲を限定することを意図していない。実際に、本明細書に記載される新規な方法およびシステムは、様々な他の形態で具現化されてもよい。さらに、本明細書で説明されるシステムおよび方法における様々な省略、置換、および変更は、本開示の主旨から逸脱することなく行われ得る。添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物は、本開示の範囲および主旨に含まれるような形態または修正を包含することが意図される。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義される。
【0102】
特定の態様、実施形態、または例に関連して説明される特徴、材料、特性、またはグループは本明細書のこのセクションまたは他の箇所で説明される任意の他の態様、実施形態、または例と互換性がない限り、それらに適用可能であると理解されるべきである。本明細書に開示されたすべての特徴(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)、および/またはそのように開示された任意の方法またはプロセスのすべてのステップはそのような特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互に排他的である場合を除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。保護は、前述の実施形態の詳細に限定されない。保護は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせ、またはそのように開示された任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0103】
さらに、別個の実施形態の文脈で本開示に記載される特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で記述される様々な特徴は、別々に複数の実施形態で、または任意の適切なサブコンビネーションで実装することも可能である。さらに、特徴は特定の組合せで作用するものとして上述されてもよいが、特許請求される組合せからの1つ以上の特徴は、場合によっては組合せから削除されてもよく、組合せは、サブコンビネーションのサブコンビネーションまたはバリエーションとして特許請求されてもよい。
【0104】
さらに、操作は、図面に示されるか、または特定の順序で本明細書に記載されてもよいが、そのような操作は所望の結果を達成するために、示される特定の順序で、または連続的な順序で、またはすべての操作が実行される必要はない。図示または説明されていない他の操作を、例示的な方法およびプロセスに組み込むことができる。例えば、1つまたは複数の追加の操作を、説明した操作のいずれかの前、後、同時に、またはその間に実行することができる。さらに、操作は、他の実装において再配置または再順序付けされてもよい。当業者であれば、いくつかの実施形態において、図示および/または開示されたプロセスにおいて取られる実際のステップは、図面に示されたものとは異なり得ることを理解するであろう。実施形態に応じて、上述のステップのうちのいくつかを除去することができ、他のステップを追加することができる。さらに、上記で開示された特定の実施形態の特徴および属性は追加の実施形態を形成するために異なる方法で組み合わされてもよく、それらのすべては本開示の範囲内にある。また、上述の実施態様における様々なシステム構成要素の分離は、すべての実施態様においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、説明される構成要素およびシステムは一般に、単一の製品に一体化されるか、または複数の製品にパッケージ化され得ることを理解されたい。例えば、本明細書に記載されるエネルギー貯蔵システムのための構成要素のいずれも、別個に提供されるか、または一体化されて(例えば、一緒にパッケージ化されて、または一緒に取り付けられて)、エネルギー貯蔵システムを形成することができる。
【0105】
本開示の目的で、特定の態様、優位性、及び新規な特徴について、本明細書に説明する。必ずしもすべてのそのような優位性が、任意の特定の実施形態に従って達成され得るわけではない。したがって、例えば、当業者は、本開示が本明細書で教示または示唆され得るような他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの利点または利点のグループを達成する方法で実施または実行され得ることを認識するのであろう。
【0106】
「可能」、「し得る」、「できる」、「でもよい」などの条件付き文言は、特に断りのない限り、または使用されるような文脈内で別様に理解されない限り、一般に、他の実施形態は特定の特徴、要素、および/またはステップを含まない一方で、特定の実施形態が含まれることを伝えるように意図されている。したがって、そのような条件付き文言は、一般に、特徴、要素、および/またはステップが、1つまたは複数の実施形態に何らかの形で必要とされること、または1つまたは複数の実施形態が、ユーザ入力または指示の有無にかかわらず、これらの特徴、要素、および/またはステップが、任意の特定の実施形態に含まれているか、または任意の特定の実施形態で実行されるべきかどうかを決定するための論理を必然的に含むことを意図するものではない。
【0107】
特に断らない限り、語句「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」などの接続詞は、項目、用語などがX、Y、またはZのいずれかであり得ることを伝えるために一般的に使用される文脈とは別に理解されるので、このような接続詞は、特定の実施形態がX、Yのうちの少なくとも1つ、およびZのうちの少なくとも1つの存在を必要とすることを一般的に暗示することを意図するものではない。
【0108】
用語としての「ほぼ」、「約」、「一般的に」、および「実質的に」などの程度の言語は、所望の機能を依然として実行するか、または所望の結果を達成する、記載された値、量、または特性に近い値、量、または特性を表す。
【0109】
本開示の範囲は、このセクションまたは本明細書の他の場所における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されるようには意図されておらず、このセクションまたは本明細書の他の場所に提示されるように、あるいは将来提示されるように、特許請求の範囲によって定義されてもよい。特許請求の範囲の言葉は特許請求の範囲で使用される言葉に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書または本用途の実施中に記載される実施例に限定されず、これらの実施例は、非排他的であると解釈されるべきである。
【0110】
実施形態
様々な例示的な実施形態が以下に提供される。
【0111】
1.第14族活性材料およびグラファイト活性材料を含む乾式活性材料と、乾式バインダとを含み、乾式電極フィルムが自立型であるエネルギー貯蔵装置の乾式電極フィルム。
【0112】
2.乾式電極フィルムが、第14族活性材料を約1質量%~30質量%含む、実施形態1に記載の電極フィルム。
【0113】
3.乾式電極フィルムが、第14族活性材料を約10質量%~30質量%含む、実施形態2に記載の電極フィルム。
【0114】
4.14族活性材料が、ケイ素およびスズの少なくとも1つを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の電極フィルム。
【0115】
5.第14族活性材料が、純ケイ素、酸化ケイ素(SiO)、ケイ素-炭素複合材料、ケイ素合金およびSiHのうちの少なくとも1つから選択される、実施形態1~4のいずれか1つに記載の電極フィルム。
【0116】
6.ケイ素-炭素複合体が、ケイ素グラフェン(SiC)、スズグラフェン、ケイ素グラファイト(Si/C)、スズグラファイト、酸化ケイ素グラフェン(SiOC)および酸化ケイ素グラファイト(SiO/C)のうちの少なくとも1つから選択される、実施形態5に記載の電極フィルム。
【0117】
7.ケイ素合金が、Si-AlおよびSi-Snのうちの少なくとも1つから選択される、実施形態5に記載の電極フィルム。
【0118】
8.第14族活性材料がプレリチウム化されている、実施形態1~7のいずれか1つに記載の電極フィルム。
【0119】
9.第14族活性材料が、約1μm~約10μmのD50一次粒径を有する粒子を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の電極フィルム。
【0120】
10.前記グラファイト活性材料が、人工グラファイトおよび天然グラファイトのうちの少なくとも1つから選択される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の電極フィルム。
【0121】
11.前記グラファイト活性材料が、一次グラファイト(PG)粒子および二次グラファイト(SG)粒子を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の電極フィルム。
【0122】
12.前記PG粒子が、約15μm~約30μmのD50一次粒径を有する、実施形態11に記載の電極フィルム。
【0123】
13.SG粒子が約2μm~約10μmのD50二次粒径を有する、実施形態11または12に記載の電極フィルム。
【0124】
14.PG粒子とSG粒子の質量比が10:1~1:10である、実施形態11~13のいずれか1つに記載の電極フィルム。
【0125】
15.前記乾式バインダが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の電極フィルム。
【0126】
16.前記乾式バインダは、乾式フィブリル化バインダを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の電極フィルム。
【0127】
17.乾式フィブリル化バインダがポリテトラフルオロエチレンを含む、実施形態16に記載の乾式電極フィルム。
【0128】
18.集電体に接する実施形態1~17のいずれかに記載の乾式電極フィルムを含む、電極。
【0129】
19.実施形態18の電極を含むリチウムイオンバッテリー。
【0130】
20.エネルギー貯蔵装置の乾式電極フィルムを製造する方法であって、乾式第14族活性材料を乾式グラファイト材料と混合して乾式活性材料混合物を形成し、該乾式活性材料混合物を乾式バインダと混合して乾式電極フィルム混合物を形成し、そして、該乾式電極フィルム混合物をカレンダー加工して、自立型乾式電極フィルムを形成する、エネルギー貯蔵装置の乾式電極フィルム製造方法。
【0131】
21.乾式第14族活性材料を乾式グラファイト材料と混合する前に、乾式第14族活性材料を第1乾式バインダと予備混合することをさらに含み、乾式活性材料混合物を乾式バインダと混合することは、乾式活性材料混合物を第2乾式バインダと混合することを含む、実施形態20に記載の方法。
【0132】
22.前記第1乾式バインダと前記第2乾式バインダは異なるバインダ材料である、実施形態21に記載の方法。
【0133】
23.前記予備混合プロセス、第1混合プロセス、および第2混合プロセスのうちの少なくとも1つが、非破壊混合プロセスを含む、実施形態20~22のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
24.前記非破壊混合プロセスは、共鳴音響混合プロセスを含む、実施形態23に記載の方法。
【0135】
25.前記予備混合プロセス、第1混合プロセス、および第2混合プロセスのうちの少なくとも1つは、高剪断プロセスを含む、実施形態20~24のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
26.前記高剪断プロセスは、ジェットミル粉砕処理を含む、実施形態25に記載の方法。
【0137】
27.前記乾式グラファイト材料が、一次グラファイト(PG)粒子および二次グラファイト(SG)粒子を含む、実施形態20~26のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
28.PG粒子が、約15μm~約30μmのD50一次粒径を有する、実施形態27記載の方法。
【0139】
29.SG粒子が、約2μm~約10μmのD50二次粒径を有する、実施形態27または28記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16A
図16B