(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】記録装置及びアタッチメント
(51)【国際特許分類】
B41J 15/04 20060101AFI20250415BHJP
B65H 23/038 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
B41J15/04
B65H23/038 A
(21)【出願番号】P 2021047802
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 光久
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-108680(JP,A)
【文献】実開昭60-105652(JP,U)
【文献】特開平9-207390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 15/04
B65H 23/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のチューブと
平板状の記名板とに熱転写方式で記録を行うことが可能なサーマルヘッドと、
前記チューブと前記記名板と
が通過可能な搬送路であって、所定の間隔で設けられた2つの壁と、前記2つの壁の間に設けられ前記サーマルヘッドと所定の位置関係にある基準部と、を含む搬送路と、
前記チューブと前記記名板と
を前記基準部に向かって押して、前記チューブと前記記名板とを前記基準部に接触させるコロ部であって、前記記名板を押したときに前記記名板が前記コロ部から外れないようにする周方向に沿った溝部を備え、前記記名板が前記搬送路にセットされたときには、前記記名板の一方の側端部を前記溝部で押して前記記名板の他方の側端部を前記基準部に接触させるコロ部と、
前記記名板を前記搬送路にセットするときに、前記記名板の前記一方の側端部に接触して、前記記名板の前記一方の側端部を前記溝部に導くガイドと、
を備え、
前記基準部と前記溝部とで前記記名板を支持することが可能であることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記ガイ
ドは、前記溝
部に向かって幅が狭くなる凹部を有
し、
前記記名板は、前記凹部と前記記名板の前記一方の側端部とが接触しながら搬送され、前記一方の側端部が前記溝部に導かれることを特徴とする請求項
1に記載の記録装置。
【請求項3】
チューブと記名板とに記録熱転写方式で記録を行うことが可能な記録装置に対して着脱可能なアタッチメントであって、
前記チューブと前記記名板とが通過可能な搬送路であって、所定の間隔で設けられた2つの壁と、前記2つの壁の間に設けられ、前記アタッチメントが前記記録装置に装着されたときに、サーマルヘッドと所定の位置関係となる基準部と、を含む搬送路と、
前記チューブと前記記名板とを前記基準部に向かって押して、前記チューブと前記記名板とを前記基準部に接触させるコロ部であって、前記記名板を押したときに前記記名板が前記コロ部から外れないようにする周方向に沿った溝部を備え、前記記名板が前記搬送路にセットされたときには、前記記名板の一方の側端部を前記溝部で押して前記記名板の他方の側端部を前記基準部に接触させるコロ部と、
前記記名板を前記搬送路にセットするときに、前記記名板の前記一方の側端部に接触して、前記記名板の前記一方の側端部を前記溝部に導くガイドと、
を備え、
前記基準部と前記溝部とで前記記名板を支持することが可能であることを特徴とするアタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録処理を行う記録装置及びアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーマルプリンタでは、装着されたアタッチメントにセットされた長尺状の記名板等の薄板媒体又はチューブの記録媒体を搬送し、搬送された記録媒体に記録処理を行っている。このようなアタッチメントには、記録媒体の厚さに合わせた幅の搬送路が形成されている。これより、従来のサーマルプリンタでは、薄板媒体に記録処理を行う場合には薄板専用のアタッチメントを用い、チューブに記録処理を行う場合にはチューブ専用のアタッチメントを用いていた。
【0003】
また、このようなアタッチメントは、セットされた記録媒体を装置の搬送基準面の方向に押し当てるための加圧機構を有している。アタッチメントにセットされた記録媒体は、この加圧機構により搬送基準面の方向に押圧されることにより、記録媒体の高さ方向の位置が規制されて所定の高さを維持しつつ搬送される(例えば、特許文献1)。これにより、記録媒体は、搬送基準面から浮き上がらず記録の際に高さ方向にずれないため、記録部で所定の位置に記録される。また、従来のサーマルプリンタは、アタッチメントが記録媒体の厚さに合わせた幅の搬送路を備えることにより、記録媒体の厚さ方向の位置を規制している。
【0004】
また、近年、長尺状のチューブとしては、扁平状、又は、様々な内径、肉厚及び幅等を有するものが存在し、その種類は多様化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のサーマルプリンタでは、チューブに記録を行うときと、記名板に記録を行うときとで、アタッチメントを使い分けなくてはならないという課題がある。
【0007】
これは、チューブをセットできる幅の搬送経路に記名板をセットして加圧機構で押圧しようとすると、記名板が搬送経路内で傾いて加圧機構の記名板を押す部材から記名板が外れてしまい、記名板を搬送基準面に押し当てることが出来なくなってしまうことがあるためである。そのため、チューブに記録するときと記名板に記録するときとでアタッチメントを使い分けていた。
【0008】
本発明の目的は、アタッチメントを使い分けることなくチューブと記名板に対して所定の位置での記録を行える記録装置及びアタッチメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の記録装置は、円筒状のチューブと平板状の記名板とに熱転写方式で記録を行うことが可能なサーマルヘッドと、前記チューブと前記記名板とが通過可能な搬送路であって、所定の間隔で設けられた2つの壁と、前記2つの壁の間に設けられ前記サーマルヘッドと所定の位置関係にある基準部と、を含む搬送路と、前記チューブと前記記名板とを前記基準部に向かって押して、前記チューブと前記記名板とを前記基準部に接触させるコロ部であって、前記記名板を押したときに前記記名板が前記コロ部から外れないようにする周方向に沿った溝部を備え、前記記名板が前記搬送路にセットされたときには、前記記名板の一方の側端部を前記溝部で押して前記記名板の他方の側端部を前記基準部に接触させるコロ部と、前記記名板を前記搬送路にセットするときに、前記記名板の前記一方の側端部に接触して、前記記名板の前記一方の側端部を前記溝部に導くガイドと、を備え、前記基準部と前記溝部とで前記記名板を支持することが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アタッチメントを使い分けることなくチューブと記名板に対して所定の位置での記録を行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る記録装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る記録装置の記録部の周辺のサーマルヘッドが離間位置に有る状態の模式図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る記録装置の記録部の周辺のサーマルヘッドがプラテンローラに当接した状態の模式図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る記録装置の記録部の周辺のチューブを装着した状態の模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る記録装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る記録装置のアタッチメントの構成を示す模式図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る記録装置の上カバーを外した状態のアタッチメントの構成を示す模式図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る記録装置の加圧機構を取り除いた状態のアタッチメントの構成を示す模式図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る記録装置の加圧機構の一部の斜視図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る記録装置の加圧機構の加圧部材の模式図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る記録装置の加圧機構のコロ部材の模式図である。
【
図14】本発明の実施の形態に係る記録処理を示すフロー図である。
【
図15】本発明の実施の形態に係る記録装置の動作との比較として従来の記録装置に薄板専用のアタッチメントを取り付けた際の動作を示す図である。
【
図16】本発明の実施の形態に係る記録装置の動作との比較として従来の記録装置にチューブ専用のアタッチメントを取り付けた際における扁平チューブが傾いた状態の動作を示す図である。
【
図17】本発明の実施の形態に係る記録装置の動作との比較として従来の記録装置にチューブ専用のアタッチメントを取り付けた際における扁平チューブが偏った状態の動作を示す図である。
【
図18】本発明の実施の形態に係る記録装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
<記録装置の構成>
本発明の実施の形態に係る記録装置Aの構成について、
図1から
図5を参照しながら、詳細に説明する。
【0014】
図4は、記録媒体として扁平状のチューブTを装着した場合を例示している。ここで、扁平状のチューブTは、長尺方向と直交する平面で切断した断面形状が楕円形のチューブである。なお、記録装置Aは、扁平状のチューブTに記録処理する場合に限らず、記名板等の薄板媒体に記録処理することもできる。
【0015】
記録装置Aは、持ち運び可能に構成されている。具体的には、記録装置Aは、供給部Bと、記録部Cと、切断部Dと、排出部Eと、操作部Fと、リボンカセットGと、表示部Hと、を有している。また、記録装置Aは、電源部1と、ヘッド/カッターモータ2と、サーマルヘッドモータ3と、リボン/搬送モータ4と、制御部5と、アタッチメント45と、を有している。
【0016】
供給部Bには、アタッチメント45が装着される。供給部Bは、供給ローラ11と、供給コロ12と、を備えている。供給部Bには、アタッチメント45が装着された際に、供給ローラ11と供給コロ12との間に扁平状のチューブTが装着される。
【0017】
供給ローラ11は、図示しないモータに連結されており、モータの駆動により回転駆動して扁平状のチューブTを記録部Cに搬送する。なお、供給ローラ11を回転駆動させるモータは、後述のプラテンローラ20、搬送ローラ23及びリボンカセットGの巻取りスプールを駆動させるリボン/搬送モータ4を用いても良い。
【0018】
供給コロ12は、供給ローラ11に扁平状のチューブTを介して圧接して供給ローラ11と共に扁平状のチューブTを記録部Cに搬送する。
【0019】
記録部Cは、リボンカセットGに収容されたインクリボン22によって、供給部Bより搬送されてくる扁平状のチューブTに記録処理を行う。記録部Cは、記録処理した扁平状のチューブTを切断部Dへ搬送する。
【0020】
具体的には、記録部Cは、プラテンローラ20と、サーマルヘッド21と、搬送ローラ23と、を備えている。
【0021】
プラテンローラ20は、サーマルヘッド21に対向して配置されている。
【0022】
サーマルヘッド21は、図示しない発熱素子を備えている。サーマルヘッド21は、サーマルヘッドモータ3が駆動することにより、
図2に示す搬送路Pから退避した離間位置と、
図3に示すプラテンローラ20に当接する位置と、の間で移動可能に構成されている。
【0023】
搬送ローラ23は、プラテンローラ20の扁平状のチューブTの搬送方向(以下、単に「搬送方向」と記載する)の下流側においてプラテンローラ20に対向するように配置されている。ここで、搬送方向は、
図2から
図4において左方向である。
【0024】
上記の構成を有する記録部Cにおいて、記録時にサーマルヘッド21がインクリボン22と扁平状のチューブTとを挟んでプラテンローラ20に圧接する。また、サーマルヘッド21は、制御部5の制御に従って発熱素子を選択的に発熱させることにより、インクリボン22のインクを溶融して扁平状のチューブTに文字列等を1ラインずつ転写して記録を行う。
【0025】
切断部Dは、記録部Cの搬送方向の下流側に配置され、記録部Cより搬送されてくる扁平状のチューブTに対してハーフカット(半切り)又はフルカット(全切り)等の切断処理を行う。切断部Dは、切断処理した扁平状のチューブTを排出部Eへ搬送する。
【0026】
具体的には、切断部Dは、カッター30と、刃受31と、を備えている。
【0027】
カッター30は、ヘッド/カッターモータ2が駆動することにより退避位置から切断位置へと移動してハーフカット処理又はフルカット処理を行う。カッター30は、ハーフカット処理を行う場合とフルカット処理を行う場合とで、退避位置から切断位置への移動量が異なる。
【0028】
刃受31は、ハーフカット処理を行う場合とフルカット処理を行う場合とで位置を変えて、図示しない駆動部の駆動によって回転する。
【0029】
排出部Eは、切断部Dより搬送されてくる切断された扁平状のチューブTを機外に排出する。
【0030】
操作部Fは、シフトキー、文字・数字・記号キー、スペースキー、変換キー、十字方向キー及びエンターキー等の複数のキーから構成されるキーボードと、キーボードのキー操作に応じた信号を出力する図示しない入力制御部と、を備えている。操作部Fは、キーボードのキー操作によって、記録媒体の種類、サイズ、記録文字、記録数量又は切断の有無等が入力される。操作部Fは、入力制御部がキーボードのキー操作に応じて、記録条件及び切断条件を設定するための信号を制御部5に出力する。
【0031】
リボンカセットGは、インクリボン22を収容している。リボンカセットGは、記録装置Aに装着され、収容しているインクリボン22を記録部Cに搬送する。
【0032】
インクリボン22は、リボンカセットGの図示しない供給スプールから供給されてリボンカセットGの図示しない巻取りスプールによって巻き取られる。記録部Cのプラテンローラ20及び搬送ローラ23と、リボンカセットGの巻取りスプールと、は図示しない駆動列で連結されていると共に、リボン/搬送モータ4が駆動することによって回転駆動する。
【0033】
表示部Hは、LCDと、LCDにおける表示処理を行う図示しない表示制御部と、を備えている。LCDは、記録モード、記録数量又は切断条件等を表示する記録情報表示エリアと、操作部Fから入力された文字、数字、記号等を表示する文字情報表示エリアと、文字サイズ又はページ数等を表示するパラメータ表示エリアと、に分割されている。ユーザは、記録する詳細条件を表示部Hで確認することができる。
【0034】
電源部1は、制御部5に電力を供給している。
【0035】
ヘッド/カッターモータ2は、制御部5の制御により駆動してカッター30を駆動させる。
【0036】
サーマルヘッドモータ3は、制御部5の制御により駆動してサーマルヘッド21を駆動させる。
【0037】
リボン/搬送モータ4は、制御部5の制御により駆動してプラテンローラ20、搬送ローラ23及びリボンカセットGの巻取りスプールを駆動させる。
【0038】
制御部5は、何れも図示しないCPU、ROM及びRAMから構成されている。制御部5は、電源部1より電力が供給されて駆動して、操作部Fより入力された信号に基づいて、表示部H、ヘッド/カッターモータ2、サーマルヘッドモータ3及びリボン/搬送モータ4の駆動を制御する。なお、制御部5は、図示及び説明を省略するが、記録装置Aの全体の上記以外の他の動作も制御する。
【0039】
アタッチメント45は、記録装置Aに対して着脱自在に装着されている。アタッチメント45は、セットされた扁平状のチューブTを、供給ローラ11及び供給コロ12を介して搬送路Pを搬送しながら記録部Cに案内する。
【0040】
<アタッチメントの構成>
本発明の実施の形態に係る記録装置Aのアタッチメント45の構成について、
図6から
図13を参照しながら、詳細に説明する。
図10は、記録媒体として記名板Kを装着した場合を例示している。
【0041】
アタッチメント45は、ガイド部材46と、凹部47と、コロ部48と、溝部49と、加圧部材50と、加圧部上カバー51と、搬送路幅調整部材53と、を備えている。
【0042】
図11は、ガイド部材46の凹部47を示す図である。記名板Kは、凹部47と接触しながら搬送され、その後、コロ部48の溝部49と接触しながら搬送される。記名板Kを搬送する場合、記名板Kは、ガイド部材46の底部54とは接触せずに搬送される。
【0043】
【0044】
ガイド部材46は、供給ローラ11及び供給コロ12によって搬送される記名板Kを記録部Cに案内する。ガイド部材46は、搬送方向の上流側(
図9において右側)から下流側(
図10において左側)に向けて記名板Kに対する押圧方向(
図10において下方向)に傾斜している。
【0045】
凹部47は、ガイド部材46の底面に凹設されている。凹部47は、搬送方向の最上流部の幅H1が搬送方向の最下流部の幅H3よりも大きいと共に(H1>H3)、搬送方向の最下流部の幅H3が記名板の厚み及び扁平状のチューブの短径よりも大きい。凹部47は、記名板Kの搬送路Pの搬送基準面43に向けて記名板Kを押圧して記名板Kを記録部Cに案内する。凹部47は、
図12(a)に示す凹部47aの形状、
図12(b)に示す凹部47bの形状、
図12(c)に示す凹部47cの形状及び
図12(d)に示す凹部47dの形状の何れの形状でもよい。
【0046】
コロ部48は、ガイド部材46と記録部Cとの間に設けられていると共に、記名板Kを記録部Cに搬送する。コロ部48は、溝部49の幅方向の中心Q2がガイド部材46の幅方向の中心Q1と一致するように配置されている。
【0047】
溝部49は、コロ部48の周方向に沿ってコロ部48に設けられている。溝部49は、幅方向の中心Q2とガイド部材46の幅方向の中心Q1とが一致するようにコロ部48を配置することにより、幅方向(
図6において上下方向)において凹部47と同じ位置に設けられている。
【0048】
溝部49は、凹部47の最下流部の幅H3よりも大きく且つ凹部47の最上流部の幅H1よりも小さい幅H4を有している(H1>H4>H3)。溝部49は、
図13(a)に示す溝部49aの形状、
図13(b)に示す溝部49bの形状及び
図13(c)に示す溝部49cの形状の何れの形状でもよい。溝部49は、ガイド部材46によって案内される記名板Kを搬送基準面43に向けて押圧する。なお、溝部49は、凹部47の最下流部の幅H3よりも大きい幅を有する場合に限らず、凹部47の最下流部の幅H3と同じ幅を有していてもよい(H4=H3)。
【0049】
なお、溝部49の幅方向の中心Q2とガイド部材46の幅方向の中心Q1とは、一致するように配置される場合に限らず、凹部47の最下流部の幅H3が溝部49の幅H4内である範囲であれば、ずれていてもよい。
【0050】
加圧部材50は、弾性変形可能なバネ部材であり、ガイド部材46と加圧部上カバー51との間に設けられていると共に、記名板Kが通過してガイド部材46が上方に押圧された際にガイド部材46を下方に付勢する。記名板Kが記録装置Aにセットされていない状態において、ガイド部材46は、傾斜した状態となるよう設置されている。そして、そのとき、ガイド部材46の凹部47の搬送方向の最下流部と搬送基準面43との間の距離は、凹部47の搬送方向の最上流部と搬送基準面43との間の距離よりも短い。なお、バネ部材を設ける代わりに、ガイド部材46の自重により付勢する構成としても良い。
【0051】
加圧部上カバー51は、ガイド部材46の一部を覆っている。
【0052】
搬送路幅調整部材53は、搬送路Pの幅方向の両側において搬送基準面43より立設されている。一対の搬送路幅調整部材53の間隔H2は、凹部47の搬送方向の最上流部の幅H1よりも小さい(H1>H2)(
図9参照)。なお、一対の搬送路幅調整部材53の間隔H2は、凹部47の搬送方向の最上流部の幅H1よりも小さい場合に限らず、凹部47の搬送方向の最上流部の幅H1と同じであってもよい(H1=H2)。
【0053】
<記録処理>
本発明の実施の形態に係る記録処理について、
図14を参照しながら、詳細に説明する。
【0054】
図14に示す記録処理は、操作部Fが操作されることによって制御部5が印刷ジョブの実行を開始したタイミングで開始される。
【0055】
まず、制御部5は、搬送ローラ23を正転駆動させることにより記録媒体を搬送方向に搬送する(S1)。
【0056】
次に、制御部5は、記録部Cと切断部Dとの間に設けられた図示しない先端検知センサの検出結果に基づいて、記録媒体の搬送方向の先端を検知したか否かを判定する(S2)。
【0057】
制御部5は、記録媒体の搬送方向の先端を検知しない場合に(S2:NO)、ステップS1の処理に戻る。
【0058】
一方、制御部5は、記録媒体の搬送方向の先端を検知した場合に(S2:YES)、搬送ローラ23の駆動を停止させる(S3)。
【0059】
次に、制御部5は、搬送ローラ23を逆転駆動させることにより記録媒体を搬送方向と反対方向に搬送する(S4)。
【0060】
次に、制御部5は、記録媒体を記録位置まで搬送したか否かを判定する(S5)。
【0061】
制御部5は、記録媒体を記録位置まで搬送していない場合に(S5:NO)、ステップS4の処理に戻る。
【0062】
一方、制御部5は、記録媒体を記録位置まで搬送した場合に(S5:YES)、搬送ローラ23の駆動を停止させて記録動作を開始させる(S6)。
【0063】
次に、制御部5は、搬送ローラ23を正転駆動させる(S7)。これにより、記録媒体の所定の位置に記録処理を行う。
【0064】
次に、制御部5は、ヘッド/カッターモータ2の駆動を制御して記録媒体を所定の位置で切断する切断動作を行い(S8)、その後に記録処理を終了する。
【0065】
<アタッチメントの動作>
本発明の実施の形態に係る記録装置Aのアタッチメント45の動作について、
図15から
図18を参照しながら、詳細に説明する。
【0066】
図15において、
図15(a)は、従来の記名板アタッチメント41の
図6のL-L断面に相当する断面を模式的に示すものであり、
図15(b)は、従来の記名板アタッチメント41の
図6のM-M断面に相当する断面を模式的に示すものである。
【0067】
図16において、
図16(a)は、従来のチューブアタッチメント40の
図6のL-L断面に相当する断面を模式的に示すものであり、扁平チューブT2が傾いた状態及び横倒しになった状態を示している。また、
図16(b)は、従来のチューブアタッチメント40の
図6のM-M断面に相当する断面を模式的に示すものである。
【0068】
図17において、
図17(a)は、従来のチューブアタッチメント40の
図6のL-L断面に相当する断面を模式的に示すものであり、扁平チューブT2が加圧部材42の横の隙間を通過する状態を示している。また、
図17(b)は、従来のチューブアタッチメント40の
図6のM-M断面に相当する断面を模式的に示すものである。
【0069】
図18において、
図18(a)は、記名板Kの角部52がガイド部材46の凹部47の搬送方向の上流側に当接した状態を示している。
図18(b)は、記名板Kによってガイド部材46を上方に押し上げながら搬送方向の下流側に向けて搬送される状態を示している。
図18(c)は、記名板Kが凹部47に案内されている状態を示している。
図18(d)は、記名板Kが搬送基準面43に対して垂直状態となった様子を示している。
【0070】
まず、本実施の形態との比較として、従来のアタッチメントの動作について、説明する。
【0071】
従来の記名板アタッチメント41は、
図15に示すように、記名板Kを搬送基準面43に向けて押圧する加圧部材42を有している。記名板アタッチメント41は、加圧部材42の下方において記名板Kを通過させ、通過の際に加圧部材42により搬送基準面43側に記名板Kを押圧しながら搬送する。加圧部材42は、図示しない板バネの付勢力によって記名板Kを搬送基準面43の方向に押圧する。この際に、加圧部材42は、幅H11に対して十分大きい幅を有することにより、記名板Kに対する加圧状態を維持することができる。このように搬送される記名板Kは、記録部Cに到着した際に記録される。
【0072】
ここで、記名板アタッチメント41を用いた場合には、記録媒体として使用できるのは記名板Kのみであり、媒体搬送路の幅H11は1枚の記名板Kのみが通過可能な幅になっており、幅H11より厚みのある記録媒体は通過できない。従って、記名板アタッチメント41は、記名板K以外の記録媒体を搬送することができない。例えば、従来、近年使用頻度が増えている扁平チューブT2に記録したい場合には、
図16に示す搬送路幅の広いチューブアタッチメント40に交換して記録を行うしかないが、以下の様な問題が発生する。
【0073】
扁平チューブT2は、搬送路幅の広いチューブアタッチメント40にセットされた場合に、
図16(a)に示すように搬送路の中で斜めになってしまう。
【0074】
特にコシの弱い扁平チューブT2は、加圧部材42によって押圧された場合であっても押し開かれない。このため、扁平チューブT2は、逃げ場を失って
図17(a)に示すように加圧部材42の横の隙間を通過するか、又は
図16(a)に示すように加圧部材42の下側の隙間を横倒しになった状態で通過する。扁平チューブT2は、この状態で供給ローラ11と供給コロ12とに挟み込まれた場合に、加圧部材42と搬送路との隙間をすり抜けてしまうため、搬送基準面43に向けて押圧されず、媒体搬送路から浮き上がってしまう。
【0075】
従って、扁平チューブT2は、この状態で記録された際に正しい位置に記録されない。
【0076】
また、誤ってチューブアタッチメント40に記名板をセットした場合にも、上記の扁平チューブT2と同様に、記名板の正しい位置に記録されない。
【0077】
なお、特許文献1の記名板アタッチメントも、上記の従来の記名板アッタチメントと同様に記名板以外の媒体を搬送できない構成になっている。
【0078】
これに対して、本実施の形態の記録装置Aに装着されるアタッチメント45では、セットされた記名板Kが搬送路Pの搬送基準面43に沿って搬送される際に、記名板Kの角部52がガイド部材46の凹部47に当接する。この際に、記名板Kは、角部52が凹部47の何れかに必ず接触するように搬送路幅調整部材53により調整される(
図18(a))。
【0079】
ガイド部材46は搬送方向の上流側から下流側に向けて傾斜しているため、記名板Kは、角部52によってガイド部材46を上方に押し上げながら搬送方向の下流側に向けて搬送される(
図18(b))。この間、記名板Kは、ガイド部材46の凹部47より搬送基準面43に向けて押圧された状態を維持されて搬送方向の下流側に向けて搬送される。
【0080】
搬送方向の下流側に向けて搬送される記名板Kは、幅の狭い凹部47の下流側に案内(整流)されていく(
図18(c))。この際に、記名板Kは、ガイド部材46の凹部47によって上方から押圧されているので、凹部47の外側に外れることなくコロ部48の溝部49の中に引き込まれる。また、溝部49の幅を、凹部47の搬送方向の最下流部における幅よりも広くしておくことで、ガイド部材46からコロ部48への記名板Kの受け渡しをスムーズに行うことができる。
【0081】
その後、記名板Kは、コロ部48の溝部49により押圧された状態を維持して供給ローラ11及び供給コロ12に到達する際に、溝部49の表面に倣うように搬送されて溝部49によって搬送基準面43に向けて押圧される。これにより、搬送路Pで傾いた状態で搬送されていた記名板Kは、搬送基準面43に対して垂直状態となり(
図18(d))、この垂直状態を維持して記録部Cへ搬送されて記録される。
【0082】
このように、ガイド部材46により記名板Kを搬送基準面43に向けて常時押圧することにより、記名板Kを記録部Cに向けて安定して案内することができる。また、ガイド部材46の凹部47とコロ部48の溝部49との両方によって記名板Kを搬送基準面43に向けて押圧することにより、記名板Kを記録部Cに向けて安定して案内することができる。
【0083】
図18を参照しながら説明した上記のアタッチメント45の動作は、記名板Kをアタッチメント45にセットした場合に限らず、扁平状のチューブTをアタッチメント45にセットした場合においても同様である。
【0084】
具体的には、アタッチメント45では、セットされた扁平状のチューブTが搬送路Pの搬送基準面43に沿って搬送される際に、扁平状のチューブTがガイド部材46の凹部47に当接する。この際に、扁平状のチューブTは、凹部47の何れかに必ず接触するように搬送路幅調整部材53により調整される。
【0085】
扁平状のチューブTは、ガイド部材46を上方に押し上げながら搬送方向の下流側に向けて搬送される。この間、扁平状のチューブTは、ガイド部材46の凹部47より搬送基準面43に向けて押圧された状態を維持されて搬送方向の下流側に向けて搬送される。
【0086】
搬送方向の下流側に向けて搬送される扁平状のチューブTは、幅の狭い凹部47の下流側に案内(整流)されていく。この際に、扁平状のチューブTは、ガイド部材46の凹部47によって上方から押圧されているので、凹部47の外側に外れることなくコロ部48の溝部49の中に引き込まれる。
【0087】
その後、扁平状のチューブTは、コロ部48の溝部49により押圧された状態を維持して供給ローラ11及び供給コロ12に到達する際に、溝部49の表面に倣うように搬送されて溝部49によって搬送基準面43に向けて押圧される。これにより、搬送路Pで傾いた状態で搬送されていた扁平状のチューブTは、搬送基準面43に対して垂直状態となり、この垂直状態を維持して記録部Cへ搬送されて記録される。
【0088】
なお、記録装置Aの記録媒体として円筒状のチューブを使用する場合も、アタッチメント45をそのまま使用することができる。この場合、ガイド部材46の底部54もチューブに接触し、チューブを搬送基準面43に押圧することとなる。また、アタッチメント45から搬送路幅調整部材53を取り外し可能とすることにより、幅H11よりも大きい外径を持つチューブであっても、案内することが可能となる。
【0089】
記録装置Aによれば、アタッチメント45により円筒状のチューブ以外に、記名板Kと扁平状のチューブTとの両方を、搬送基準面43の方向に安定して押圧しながら記録部Cに向けて案内することができる。これにより、多様な形状の記録媒体に記録を行う際の記録精度を向上させることができる。
【0090】
本実施の形態では、記録媒体の搬送方向の最上流部の幅が搬送方向の最下流部の幅よりも広い凹部47を備えるガイド部材46により、記録媒体を凹部47により搬送基準面43に向けて押圧して記録媒体を記録部Cに案内する。これにより、多様な種類の記録媒体に対して正しい位置に記録を行うことができる。
【0091】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。
【0092】
具体的には、上記の実施の形態において、ガイド部材46に凹部47を設けたが、記録装置Aの装置本体によって記録媒体を記録部Cに案内する場合には、装置本体に凹部47を設けてもよい。
【符号の説明】
【0093】
A 記録装置
B 供給部
C 記録部
D 切断部
F 操作部
G リボンカセット
H 表示部
K 記名板
P 搬送路
T 扁平状のチューブ
5 制御部
11 供給ローラ
12 供給コロ
20 プラテンローラ
21 サーマルヘッド
22 インクリボン
23 搬送ローラ
45 アタッチメント
46 ガイド部材
47 凹部
47a 凹部
47b 凹部
47c 凹部
47d 凹部
48 コロ部
49 溝部
49a 溝部
49b 溝部
49c 溝部
50 加圧部材
51 加圧部上カバー
53 搬送路幅調整部材