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特許7666978状態監視装置、状態監視方法、及び状態監視プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】状態監視装置、状態監視方法、及び状態監視プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20250415BHJP
【FI】
G05B23/02 301X
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021073436
(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公開番号】P2022167567
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】森本 真弘
(72)【発明者】
【氏名】亀井 宏和
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-157072(JP,A)
【文献】特開2008-059270(JP,A)
【文献】特開2020-204968(JP,A)
【文献】特開平04-152220(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143118(WO,A1)
【文献】特開2019-096239(JP,A)
【文献】特開平03-123909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 -23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールド機器の状態量の時間変化を示す時系列データを取得するように構成された取得部と、
前記時系列データに基づいて、前記時系列データにおける時系列に沿って順次ずらした複数の第1区間それぞれについて前記状態量の集合の標準偏差を導出し、当該導出により得られた前記標準偏差の時間変化において、時系列に沿って順次ずらした複数の第2区間のうち、1つ前の前記標準偏差に対して上昇している前記標準偏差の個数が第1基準以上となっている第2区間を前記状態量の時間変化の振動振幅が時間経過とともに大きくなっており前記状態量の時間変化が正常でない非正常期間として特定するように構成された特定部と、を備え
前記状態量は、オリジナルの状態量に基づく移動平均値であり、
前記第1基準の個数は、前記第2区間のそれぞれの前記標準偏差の個数の一部の個数であって、前記標準偏差の個数が当該第1基準の個数以上のときに前記移動平均値の散らばり具合が拡大傾向といえる個数である、
状態監視装置。
【請求項2】
前記取得部が取得する時系列データの期間の長さである分析期間と、前記移動平均値のもととなる前記状態量の数と、前記標準偏差のもととなる前記状態量の数とは、ユーザが指定可能である、
請求項1に記載の状態監視装置。
【請求項3】
前記特定部は、さらに、前記時系列データにおける時系列に沿って順次ずらした複数の第3区間のうち、1つ前の前記状態量に対して上昇している前記状態量の個数が第2基準以上である第3区間を前記非正常期間として特定する、ように構成されている、
請求項1又は2に記載の状態監視装置。
【請求項4】
前記特定部は、さらに、前記時系列データにおける時系列に沿って順次ずらした複数の第3区間のうち、1つ前の前記状態量に対して下降している前記状態量の個数が第3基準以上である第4区間を前記非正常期間として特定する、ように構成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の状態監視装置。
【請求項5】
前記時系列データのグラフを表示装置に表示するように構成された表示制御部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記グラフの前記非正常期間を表す部分を前記非正常期間以外の正常期間を表す部分と異なる表示態様で表示装置に表示する、ように構成されている、
請求項1からのいずれか1項に記載の状態監視装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1に記載の状態監視装置として機能させる、
状態監視プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油プラントなどが有するフィールド機器の状態量を監視する状態監視装置、状態監視方法、及び状態監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フィールド機器の状態量の時系列データに基づいて状態量の変化率が所定の閾値を超えたときに、当該時系列データに正常でない非正常期間が含まれると判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-180703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、変化率が所定の閾値を超えていない状態で発生する非正常期間を特定できないといった不都合がある。
【0005】
本発明は、状態量の変化率が所定の閾値を超えたか否かという判別以外の方法で非正常期間を特定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る状態監視装置は、フィールド機器の状態量の時間変化を示す時系列データを取得するように構成された取得部と、前記時系列データに基づいて、前記状態量の時間変化の振動振幅が時間経過とともに大きくなっている期間を前記状態量の時間変化が正常でない非正常期間として特定するように構成された特定部と、を備える。
【0007】
前記特定部は、前記時系列データにおける時系列に沿って順次ずらした複数の第1区間それぞれの前記状態量の集合の各標準偏差を導出し、当該導出により得られた前記標準偏差の時間変化において、時系列に沿って順次ずらした複数の第2区間のうち、1つ前の前記標準偏差に対して上昇している前記標準偏差の個数が第1基準以上となっている第2区間を前記非正常期間として特定する、ように構成されている、ようにしてもよい。
【0008】
前記特定部は、前記時系列データにおける時系列に沿って順次ずらした複数の第3区間のうち、1つ前の前記状態量に対して上昇している前記状態量の個数が第2基準以上である第3区間を前記非正常期間として特定する、ように構成されている、ようにしてもよい。
【0009】
前記特定部は、前記時系列データにおける時系列に沿って順次ずらした複数の第3区間のうち、1つ前の前記状態量に対して下降している前記状態量の個数が第3基準以上である第4区間を前記非正常期間として特定する、ように構成されている、ようにしてもよい。
【0010】
前記状態量は、オリジナルの状態量に基づく移動平均値である、ようにしてもよい。
【0011】
前記時系列データのグラフを表示装置に表示するように構成された表示制御部をさらに備え、前記表示制御部は、前記グラフの前記非正常期間を表す部分を前記非正常期間以外の正常期間を表す部分と異なる表示態様で表示装置に表示する、ように構成されている、ようにしてもよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る状態監視方法は、フィールド機器の状態量の時間変化を示す時系列データに基づいて、前記状態量の時間変化の振動振幅が時間経過とともに大きくなっている期間を前記状態量の時間変化が正常でない非正常期間として特定するステップを備える。
【0013】
本発明の第3の観点に係る状態監視プログラムは、コンピュータに、フィールド機器の状態量の時間変化を示す時系列データに基づいて、前記状態量の時間変化の振動振幅が時間経過とともに大きくなっている期間を前記状態量の時間変化が正常でない非正常期間として特定するステップを実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、状態量の変化率が所定の閾値を超えたか否かという判別以外の方法で非正常期間を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る状態監視装置及びその監視対象である石油プラントの構成図である。
図2図2は、状態監視装置の構成を示す図である。
図3図3は、オリジナル時系列データ及び移動平均時系列データの内容例を示す図である。
図4図4は、図2の非正常特定部により実行される非正常特定処理のフローチャートである。
図5図5は、記憶装置に記憶される、オリジナル時系列データ、移動平均時系列データ、正常/非正常の判別結果などの内容を示す図である。
図6図6は、図5の各時系列データのグラフである。
図7図7は、記憶装置に記憶される、オリジナル時系列データ、移動平均時系列データ、正常/非正常の判別結果などの内容を示す図である。
図8図8は、図7の各時系列データのグラフである。
図9図9は、記憶装置に記憶される、オリジナル時系列データ、移動平均時系列データ、正常/非正常の判別結果などの内容を示す図である。
図10図10は、図9の各時系列データのグラフである。
図11図11は、図9の標準偏差のグラフである。
図12図12は、非正常期間データベースの構成例を示す図である。
図13図13は、表示装置に表示される画像例の図である。
図14図14は、表示装置に表示される画像例の図である。
図15図15は、表示装置に表示される画像の遷移例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る状態監視装置を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態に係る状態監視装置10は、石油プラントPと接続されている。状態監視装置10は、石油プラントPが有するフィールド機器である第1バルブV1~第15バルブV15(以下、単にバルブV1~V15ともいう)の状態を監視する。
【0018】
石油プラントPは、重油を精製して石油を生産する施設である。石油プラントPは、バルブV1~V15と、バルブV1~V15を制御するコントローラP1と、を備える。バルブV1~V15は、石油プラントPが備える不図示の配管を流れる重油、石油などの油の流量を制御するために設けられている。コントローラP1は、石油プラントPが有する各種センサから、この各種センサが測定したバルブV1~V15それぞれの状態を表す各種の測定値を取得する。コントローラP1は、取得した各種の測定値の少なくとも一部の測定値をフィードバック値として、バルブV1~V15それぞれの弁開度をフィードバック制御する。バルブV1~V15は、流量制御弁であってもよく、この場合、コントローラP1は、流量を指定する制御量をバルブV1~V15に供給する。コントローラP1は、取得した測定値及び出力した制御量をリアルタイムで状態監視装置10に供給する。つまり、コントローラP1は、測定値及び制御量を取得した又は出力した時点で状態監視装置10に出力する。
【0019】
状態監視装置10は、コンピュータなどからなり、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ11と、プロセッサ11のメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)12と、不揮発性の記憶装置13と、を備える。状態監視装置10は、さらに、各種画像を表示する表示装置14と、石油プラントPに接続されたI/O(Input/Output)15と、石油プラントPのオペレータである状態監視装置10のユーザからの入力操作を受け付ける操作装置16と、を備える。I/O(Input/Output)15は、LAN(Local Area Network)又はインターネットなどのネットワークを介して石油プラントPに接続されてもよい。操作装置16は、キーボード、マウス、又は、タッチパネルなどの操作装置を含む。
【0020】
記憶装置13は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどを含んで構成され、状態監視プログラムを記憶している。記憶装置13は、状態監視プログラムを記憶した非一時的なコンピュータが読取り可能な記憶媒体ともいえる。プロセッサ11は、記憶装置13が記憶している状態監視プログラムを実行する。これにより、プロセッサ11は、図2に示す状態量取得部11A、時系列データ取得部11B、非正常特定部11C、表示制御部11Dとして動作する。なお、各部11A~11Dのハードウェ構成は、任意であり、各部11A~11Dの少なくとも一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの他の回路により構成されてもよい。
【0021】
図2に示す状態量取得部11Aは、石油プラントPのコントローラP1から供給される、上記測定値及び制御量をI/O15を介して取得する。状態量取得部11Aは、取得した情報に基づいて、バルブV1~V15それぞれごとにその状態を示す状態量A~Hを取得する。状態量A~Hは、バルブV1~V15の異常を検知するためのものとして任意のものが採用される。状態量A~Hは、1日ごとに状態量取得部11Aに取得される。状態量A~Hは、例えば、バルブの1日の摺動距離積算値、バルブの1日の全閉回数、バルブの1日の最大摩擦力、バルブの1日の反転動作回数、及び、バルブのスティックスリップの1日の最大の大きさを含む。状態量A~Hは、正常時において変動が少ない又はないものである。
【0022】
例えば、状態量取得部11Aは、コントローラP1がロータリエンコーダなどにより測定及び出力したバルブV1の弁体の回転角を、I/O15を介して取得し、取得した回転角に基づいて第1バルブV1の弁体の摺動距離を導出する。なお、導出は、式を使った算出、及び、予め用意されたテーブルの参照による取得との両者を含む(以下、導出について同じ)。状態量取得部11Aは、導出した摺動距離の1日の合計を求め、これにより摺動距離積算値を取得する。同様に、状態量取得部11Aは、バルブV2~V15それぞれについても、摺動距離積算値を取得する。
【0023】
例えば、状態量取得部11Aは、コントローラP1により第1バルブV1が全閉されたことを示す制御量をI/O15を介して取得し、この制御量の1日の取得回数をカウントし、カウントした取得回数を第1バルブV1の全閉回数として取得する。同様に、状態量取得部11Aは、バルブV2~V15それぞれについても、全閉回数を取得する。
【0024】
例えば、状態量取得部11Aは、コントローラP1が摩擦を測定するセンサなどにより測定及び出力した第1バルブV1の弁体と弁座との動摩擦力を、弁体が動くたびにI/O15を介して取得する。状態量取得部11Aは、取得した1日の動摩擦力のうち最大のものを最大摩擦力として取得する。同様に、状態量取得部11Aは、バルブV2~V15それぞれについても、最大摩擦力を取得する。
【0025】
上記と同様に、状態量取得部11Aは、バルブV1~V15それぞれの反転動作回数、及び、スティックスリップの1日の最大の大きさなども、コントローラP1からの測定値及び制御量に基づいて取得する。
【0026】
状態量取得部11Aは、状態量A~Hを1日ごとに取得し、取得した状態量A~Hを個別に記憶装置13に時系列順に記録していく。例えば、状態量取得部11Aは、記録時の日付のデータに対応付けて状態量A~Hを記憶装置13に記録していく。このような処理により、記憶装置13には、バルブV1~V15ごとかつ状態量A~Hごとに状態量の時間変化を示す時系列データが記録されることになる。なお、後述のように、状態量A~Hに基づいて、移動平均値が導出される。この移動平均値もバルブV1~V15の状態を表す。従って、この移動平均値も、状態量の1種である。状態量A~Hは、移動平均値の基となる値であり、オリジナルの状態量ともいえる。このオリジナルの状態量の時系列データを、オリジナル時系列データともいう。図3に、記憶装置13に記憶された、最大摩擦力としての状態量Cの時間変化を示すオリジナル時系列データの内容を示す。図3に示すように、ここでは、2021年6月3日から6月24日までの状態量Cのオリジナル時系列データが記憶装置13に記録される。ここでは、他の状態量A等についても、2021年6月3日から6月24日までの各状態量のオリジナル時系列データが記憶装置13に記録されるものとする。
【0027】
図2に示す時系列データ取得部11Bは、任意のタイミング(例えば、後述の監視ウィンドウ90の表示指示があったタイミング)で、記憶装置13が記憶するオリジナル時系列データをこの記憶装置13から取得する。時系列データ取得部11Bは、取得したオリジナル時系列データに基づいて、時系列に沿って順次ずらした複数の一定区間それぞれの状態量の移動平均値を求める。この複数の一定区間は、ここでは、それぞれが3日分つまり3つの状態量が含まれる期間であって、1日ずつ順次ずらした区間である。時系列データ取得部11Bは、例えば、図3に示す状態量Cのオリジナル時系列データに基づいて、連続する3日分の状態量Cの単純移動平均値を、当該3日の最後の日の移動平均値として導出し、図3に示すように当該最後の日に対応して記憶装置13に記録する。例えば、時系列データ取得部11Bは、2021年6月3日から6月5日までの3つの状態量C(20.8、19.9、20.5)の平均値(20.4)を2021年6月5日の移動平均値として記憶装置13に記録する。2021年6月4日から6月6日までの3つの状態量C(19.9、20.5、19.6)の平均値(20.0)を2021年6月6日の移動平均値として記憶装置13に記録する。時系列データ取得部11Bは、このようにして、状態量Cの移動平均値の時間変化を示す時系列データを移動平均時系列データとして取得して記憶装置13に記録する。同様にして、時系列データ取得部11Bは、他の状態量である状態量Aなどのそれぞれの移動平均値の時間変化を示す時系列データを各バルブV1~V15それぞれの状態量A~Hそれぞれごとに移動平均時系列データとして取得して記憶装置13に記録する。上述のように、この移動平均値は、状態量A~Hと同様にバルブの状態を表す状態量でもある。
【0028】
図2に示す非正常特定部11Cは、時系列データ取得部11Bにより取得された複数の移動平均時系列データのうち、状態量(ここでは移動平均値)の時間変化が予め定められた基準を満たす非正常期間を有する移動平均時系列データを非正常時系列データとして特定し、非正常期間を有さない移動平均時系列データを正常時系列データとして特定する。非正常期間は、状態量の傾向が変化した(例えば、一定の傾向が、上昇傾向又は下降傾向に変化した)傾向変化の期間でもある。
【0029】
非正常特定部11Cは、図4に示す非正常特定処理を任意のタイミング(例えば、後述の監視ウィンドウ90の表示指示があったタイミング)で実行することで上記特定を行う。この非正常特定処理は、バルブV1~V15それぞれの各状態量A~Hの移動平均時系列データそれぞれを処理対象にして、移動平均時系列データの数分、個別に順次繰り返して実行される。
【0030】
図4の非正常特定処理において、非正常特定部11Cは、まず、処理対象の移動平均時系列データにおける時系列に沿って順次ずらした複数の区間から、1つ前の移動平均値(状態量)に対して上昇している移動平均値の個数が4つ以上である区間を検出する(ステップS11)。
【0031】
処理対象の移動平均時系列データが図5に示すものである場合、非正常特定部11Cは、ステップS11において、各移動平均値がその1つ上(1つ前)の移動平均値に対して上昇しているか下降しているかを特定し、特定した結果を各移動平均値にそれぞれ対応付けて記憶装置13に格納する(図5の「変化種別」参照)。その後、非正常特定部11Cは、各移動平均値について、その移動平均値と、その移動平均値よりも前4つ分の移動平均値とのそれぞれの上昇/下降をカウントする。例えば、図5のインデックス8~12の区間では、上昇が2つ、下降が3つとカウントされる。カウント結果は、前記「その移動平均値」に対応付けて記憶装置13に記録される(図5の「上昇下降カウント結果」の欄参照)。
【0032】
その後、非正常特定部11Cは、上記区間を「非正常」と特定し、この区間以外の区間を「正常」と特定する(ステップS12)。非正常特定部11Cは、カウント結果で上昇4つ以上の移動平均値(インデックス17~20)に「非正常」の情報を対応付けて記憶装置13に格納する(「正常/非正常」の欄参照)。非正常特定部11Cは、それ以外の移動平均値に「正常」の情報を対応付けて記憶装置13に格納する(「正常/非正常」の欄参照)。
【0033】
図6は、図5のオリジナル時系列データ及び移動平均時系列データの各グラフを示す図である。各グラフは、表示制御部11Dにより、オリジナル時系列データ、移動平均時系列データ、及び、上記「正常」/「非正常」のデータに基づいて、図6に示すような態様で表示装置14に表示される。移動平均時系列データの黒丸は、「非正常」が対応付けられた移動平均値を示しており、この移動平均値以前の一定期間(この移動平均値を含め5日分の期間)が、非正常期間であることが表される。黒丸は、この一定期間における移動平均値すべてに付されてもよい(他のグラフでも同様)。図6に示すように、上昇が4つ以上の区間(上昇頻度が高い区間)では、移動平均値が上昇傾向にある。つまり、ステップS11及びS12により、移動平均値が上昇傾向にある区間を非正常期間として検出することができる。
【0034】
その後、非正常特定部11Cは、処理対象の移動平均時系列データにおける時系列に沿って順次ずらした複数の区間から、1つ前の移動平均値(状態量)に対して下降している移動平均値の個数が4つ以上である区間を検出する(ステップS13)。その後、非正常特定部11Cは、検出した区間を「非正常」と特定し、この区間以外の区間を「正常」と特定する(ステップS14)。
【0035】
ステップS13及びS14の具体例は、上記ステップS11及びS12での説明に準じる(「上昇」を「下降」に変更すればよい)。処理対象の移動平均時系列データが図7に示すものである場合、インデックス16~20の移動平均値に「非正常」の情報が対応付けられる。図8は、図7のオリジナル時系列データ及び移動平均時系列データの各グラフを示す図である。各グラフは、表示制御部11Dにより、オリジナル時系列データ、移動平均時系列データ、及び、上記「正常」/「非正常」のデータに基づいて、図8に示すような態様で表示装置14に表示される。移動平均時系列データの黒丸は、「非正常」が対応付けられた移動平均値を示しており、この移動平均値以前の一定期間(この移動平均値を含め5日分の期間)が、非正常期間であることが表される。図8に示すように、下降が4つ以上の区間(下降頻度が高い区間)では、移動平均値が下降傾向にある。つまり、ステップS13及びS14により、移動平均値が下降傾向にある区間を非正常期間として検出することができる。
【0036】
その後、非正常特定部11Cは、移動平均時系列データの移動平均値に基づいて、標準偏差を導出する(ステップS15)。非正常特定部11Cは、移動平均値の導出と同様に、移動平均時系列データにおける時系列に沿って順次ずらした複数の区間それぞれの移動平均値の集合の各標準偏差を導出する。この複数の区間は、ここでは、それぞれが5日分つまり5つの移動平均値が含まれる期間であって、1日ずつ順次ずらした区間である。非正常特定部11Cは、図9に示す移動平均時系列データを処理対象とする場合、当該移動平均時系列データに基づいて、連続する5日分の移動平均値の標準偏差を、当該5日の最後の日の標準偏差として導出し、当該最後の日の移動平均値に対応付けて記憶装置13に記録する。例えば、非正常特定部11Cは、2021年6月5日から6月9日までの5つの移動平均値の標準偏差を2021年6月9日の標準偏差として導出する。
【0037】
その後、非正常特定部11Cは、導出した標準偏差の時間変化(1日ごとの変遷)において、時系列に沿って順次ずらした複数の区間のうち、1つ前の標準偏差に対して上昇している標準偏差の個数が4つ以上となっている区間を検出する(ステップS16)。その後、非正常特定部11Cは、検出した区間を「非正常」と特定し、この区間以外の区間を「正常」と特定する(ステップS17)。
【0038】
ステップS16及びS17の具体例は、上記ステップS11及びS12での説明に準じる(「移動平均値」を「標準偏差」に変更すればよい)。前記の複数の区間は、それぞれが標準偏差5つ分の区間で、1日ずつずれた区間である。処理対象の標準偏差が図9に示すものである場合、インデックス10、及び、16~20の移動平均値が「非正常」となる。図10は、図9のオリジナル時系列データ及び移動平均時系列データの各グラフを示す図である。後述のように、オリジナル時系列データ及び移動平均時系列データの各グラフは、表示制御部11Dにより、オリジナル時系列データ、移動平均時系列データ、及び、上記「正常」/「非正常」のデータに基づいて、図10に示すような態様で表示装置14に表示される。移動平均時系列データの黒丸は、上昇の標準偏差が4つ以上のカウント結果つまり「非正常」が対応付けられた移動平均値を示しており、この移動平均値以前の一定期間(この移動平均値を含め5日分の期間)が、非正常期間であることが表される。図10に示すように、標準偏差の上昇が4つ以上の区間、つまり、図11に示すように標準偏差の上昇頻度が大きい区間では、移動平均値の散らばり具合が拡大傾向にあり、移動平均値が時間経過とともに振動している場合にその振幅(例えば、状態量の時間変化における極値と正常時における移動平均値の平均との差)が徐々に大きくなる。ステップS16及びS17により、時間経過とともに振幅が徐々に大きくなる区間を非正常期間として検出することができる。なお、図11のグラフも図10のグラフとともに表示装置14に表示されてもよい。
【0039】
その後、非正常特定部11Cは、記憶装置13に記録されている非正常期間データベースを更新する(ステップS18)。非正常期間データベースは、図12に示すように、バルブV1~V15それぞれの状態量A~Hそれぞれに対応付けて、非正常期間の「有り」又は「無し」を示す非正常期間情報が格納されている。ステップS11、S13、S16の全てで前記の区間が検出されなかった場合つまり「非正常」が無い場合、今回の処理対象の移動平均時系列データは、非正常期間を含まない正常時系列データ(移動平均の変動が許容範囲内の時系列データであり、例えば、変動のない時系列データ)である。この場合、非正常特定部11Cは、非正常期間データベースにおける、処理対象の移動平均時系列データの状態量に対応する非正常期間情報を「無し」に更新する。他方、ステップS11、S13、S16の少なくとも1つで前記の区間が検出された場合つまり「非正常」がある場合、今回の処理対象の移動平均時系列データは、非正常期間を含む非正常時系列データである。この場合、非正常特定部11Cは、非正常期間データベースにおける、処理対象の移動平均時系列データの状態量に対応する非正常期間情報を「有り」に更新する。
【0040】
上記一連の処理により、非正常特定部11Cは、処理対象の移動平均時系列データを正常時系列データと非正常時系列データとのいずれかに特定する。なお、ステップS11~S12、ステップS13~S14、及び、ステップS15~S17のいずれかを省略してもよい。
【0041】
図2の表示制御部11Dは、ユーザが、バルブV1~V15の状態を監視するための監視ウィンドウ90の表示指示を操作装置16に対して行ったときに、表示装置15に図13に示す監視ウィンドウ90を表示する。監視ウィンドウ90は、ダッシュボード画像91と、時系列データの処理条件を入力する入力領域95と、を備える。なお、図13では、第8バルブが欠損している。以下で説明する画像の表示制御は、表示制御部11Dにより行われる。表示制御に必要なデータは、記憶装置13に記憶されているものとする。
【0042】
ダッシュボード画像91には、非正常期間のあったバルブ(上記で「非正常」が記録された時系列データに対応するバルブ)の割合などを表示する円グラフ91Aが表示されている。
【0043】
ダッシュボード画像91は、さらに、バルブV1~V15それぞれの各状態量A~Hをそれぞれ表す複数の状態量画像(「有り」、「無し」などのセル)91BAを一覧表示している一覧表示画像91Bを含む。一覧表示画像91Bは、スクロールバーによりスクロール可能に表示されている。複数の状態量画像91BAは、縦軸をバルブの種類、横軸を状態量の種類としたマトリクス状に一覧表示されている。縦軸には、バルブV1~V15それぞれをその名称により表す機器画像(「第1バルブ」といった機器名の画像)91BBが縦方向に一列に一覧表示されている。横軸には、状態量の種類をその名称により表す種類画像(「状態量A」といった画像)91BCが横方向に一列に一覧表示されている。状態量画像91BAは、縦軸と横軸とに対する相対位置により状態量を表している。つまり、状態量画像91BAが表す状態量は、前記相対位置により、どのバルブの状態量か、及び、状態量A~Hのどれであるかが識別される。なお、縦軸と横軸を反対としてもよい。
【0044】
状態量画像93BAは、ここでは、当該状態量93BAが表す状態量の時系列データに非正常期間が含まれるか否かを表す「有り」、「無し」などで表現されている。表示制御部11Dは、記憶装置13の非正常期間データベースを参照して「有り」、「無し」を特定する。バルブ名と状態量名とのうちの少なくとも一方を示す文字列によって表現されてもよい。この場合、縦軸及び横軸の少なくとも一方は無くてもよい。状態量画像93BAは、無地であってよい。この場合、上記相対位置により状態量を表すため縦軸及び横軸が必要となる。なお、「有り」の状態量画像91BA(例えば、第6バルブV6の状態量Cを表す状態量画像91BA)、つまり、非正常期間のある状態量を表す状態量画像91BAは第1表示態様で表示されている。「無し」の状態量画像91BA(例えば、第6バルブV6の状態量Aを表す状態量画像91BA)、つまり、非正常期間のない状態量を表す状態量画像91BAは、第1表示態様とは異なる第2表示態様で表示されている。表示態様が異なるとは、「有り」、「無し」といった文字(その画像に必要な要素)の色又はセル内の前記文字以外の部分である背景(色、図柄など)が異なっていることを含む。例えば、第1表示態様は、セル内の背景色が白になっている態様で、第2表示態様は、セル内の背景色がピンクになっている態様である。このように、非正常期間の有無で表示態様を変えることで、非正常期間の有無がユーザに対して分かりやすく報知される。
【0045】
ユーザは、操作装置16を使用して、複数の状態量画像91BA及び複数の機器画像91BBのうちのいずれかを選択することができる。ここでは、第6バルブV6に関する状態量画像91BA又は機器画像91BBが選択されたものとする。その場合、図14に示すように、第6バルブV6のタブ92Aが新たに生成され、当該タブ92Aを備える第6バルブ画像92がダッシュボード画像91に変えて表示される。なお、ダッシュボード画像91への表示切替は、ダッシュボード画像91のタブ91Cの選択により行われる。
【0046】
第6バルブ画像92は、状態量A~Hをそれぞれ表す状態量種類画像92Bと、第6バルブ画像92の状態量A~Hそれぞれの時系列データ(オリジナル時系列データ及び移動平均時系列データ)のグラフを縦方向に並べて一覧表示するグラフ画像92Cと、を備える。グラフ画像92Cは、スクロール表示される。これにより、ユーザは、一覧表示されるグラフ同士を比較しやすい。状態量種類画像92Bのうちのいずれかがユーザにより選択されると、選択された状態量種類画像92Bが表す状態量の時系列データのグラフが表示されるようにグラフ画像92Cがスクロールする。
【0047】
図15に示すように、第6バルブV6を表す機器画像91BBが選択されて第6バルブ画像92が表示される場合、グラフ画像92Cについては、その上端部分である先頭部分が最初に表示される。他方、第6バルブV6に対応する状態量画像91BAが選択されて第6バルブ画像92が表示される場合、グラフ画像92Cについては、選択された状態量画像91BAが表す状態量の時系列データのグラフが最初に表示される。図15に示すように、状態量Cを表す状態量画像91BAが選択された場合、状態量Cの時系列データのグラフが最初に表示される。このような表示により、選択された状態量画像91BAが表す状態量のグラフをユーザが手動で探す手間が軽減される。ここで、第6バルブV6の状態量Cを表す状態量画像91BAは「有り」となっており、状態量Cの時系列データは、図6、8及び10の態様で表示される。つまり、黒丸により、非正常期間の部分とそれ以外の正常期間の部分とを異なる表示態様としたグラフが表示される。これにより、ユーザは、非正常期間を容易に特定できる。ユーザは、このグラフを確認して、その後の対処などを検討する。非正常期間の部分の表示態様とそれ以外の正常期間の部分の表示態様とを異ならせる具体的手段は、任意である。例えば、グラフそのものの色彩及び又は形状を異ならせればよい。より詳細には、上記黒丸を付すことの他、黒丸とは異なる形状の画像を付してもよいし、グラフの色、太さ、及びパターン(実線、点線、一点鎖線など)の少なくとも1つを変えてもよい。
【0048】
状態量Cの時系列データのグラフの横には、ユーザにより選択されたときに、石油プラントPのコントローラP1に設定されている、バルブV1~V15それぞれの制御態様を示す制御パラメータ(設定流量など)を変更するための画面に移行するメンテナンス指定画像93Aが配置されている。メンテナンス指定画像93Aがユーザにより指定された場合、表示制御部11Dは、パラメータ設定画像を表示し、制御パラメータの変更があった場合には、新たな制御パラメータをI/O15を介してコントローラP1に設定してもよい。
【0049】
状態量Cの時系列データのグラフの横には、第6バルブV6に対する対処を近日中に行う必要がある旨を表す画像93B、当該状態量Cの経過を観察する旨を表す画像93C、及び、当該状態量Cの経過を観察する必要がなく対処も必要ない旨を表す画像93Dも表示されている。画像93Bがユーザにより選択された場合には、ダッシュボード画像91のタブ91Cが選択されたことで再度表示される一覧表示画像91Bにおける、第6バルブV6の状態量Cを表す状態量画像91BA及び第6バルブV6を表す機器画像91BBのうちの少なくとも前者の表示態様が上記第1及び第2表示態様とは異なる第3表示態様に変更される。例えば、各表示態様をセルの色とし、第2表示態様を白色として、第1表示態様をオレンジ又はピンクとし、第3表示態様を赤とする。このように、第3表示態様を最も濃い色とすることで、緊急性をユーザに報知できる。画像93Cが選択された場合、第6バルブV6の状態量Cを表す状態量画像91BA及び第6バルブV6を表す機器画像91BBの表示態様は変更されない。画像93Dが選択された場合、第6バルブV6の状態量Cを表す状態量画像91BA及び第6バルブV6を表す機器画像91BBの表示態様が第1表示態様に変更される。この場合、状態量画像は、「無し」に変更されてもよい。これにより、問題の無い非正常期間についての報知が継続されることが抑制される。なお、他の状態量について非正常期間がある場合、機器画像91BBの表示態様については、第1表示態様に変更しないとよい。
【0050】
図13の入力領域95には、時系列データ取得部11B、非正常特定部11Cなどが処理する処理条件がユーザにより入力される。当該入力は、操作装置16により行われる。「期間」及び「終了日時」が入力されることにより、「分析期間」が定まる。時系列データ取得部11B、非正常特定部11Cなどは、この分析期間の時系列データを使用して処理を行う。「移動平均サンプル数」は、移動平均値を導出するときの基となるオリジナルの状態量の数である。「標準偏差サンプル数」は、標準偏差を導出するときの基となる移動平均値の数である。これら入力値を適切に管理することで、状態の監視を長期的視野で行うか、短期的視野で行うかを切り替えることができ、非正常期間の特定などの精度も良くなる。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態では、状態量の時間変化を示す時系列データに基づいて、状態量の時間変化の振動振幅(例えば、正常時の状態量の平均値との差)が時間経過とともに大きくなっている期間(図11)が、状態量の時間変化が正常でない非正常期間として特定されるので、状態量の変化率が所定の閾値を超えたか否かという判別以外の方法で非正常期間が特定される。例えば、状態量がバルブの最大摩擦力の場合、バルブが破損などして、最大摩擦力が安定せずにその振動振幅が時間経過とともに大きくなることがある。このとき、最大摩擦力の変化率は、それほど大きくならない場合もある。このように本実施形態によれば、変化率と閾値との比較では特定できない非正常期間を特定することもできる。
【0052】
本実施形態では、非正常特定部11Cが、前記時系列データにおける時系列に沿って順次ずらした複数の第1区間それぞれの状態量の集合の各標準偏差を導出し、当該導出により得られた前記標準偏差の時間変化において、時系列に沿って順次ずらした複数の第2区間のうち、1つ前の前記標準偏差に対して上昇している前記標準偏差の個数が第1基準以上となっている第2区間を前記非正常期間として特定する(図4のステップS16及びS17)。これにより、状態量の変化率が所定の閾値を超えたか否かという判別以外の方法で非正常期間が特定される。このような構成によれば、状態量の変化の傾きが、時間とともに大きくなっていく期間も非正常期間として特定することができる場合がある。状態量の時間変化の振動振幅が時間経過とともに大きくなっている期間の特定は、他の方法であってもよい。例えば、状態量の時間変化の極大値が時間経過とともに大きくなっている、又は極小値が時間経過とともに小さくなっていることを検出することで非正常期間を特定してもよい。
【0053】
本実施形態では、非正常特定部11Cが、前記時系列データにおける時系列に沿って順次ずらした複数の第3区間のうち、1つ前の前記状態量に対して上昇している前記状態量の個数が第2基準以上である第3区間を前記非正常期間として特定する(図4のステップS11及びS12)。これにより、状態量が上昇傾向となっている非正常期間も特定することができる。
【0054】
本実施形態では、非正常特定部11Cが、前記時系列データにおける時系列に沿って順次ずらした複数の第3区間のうち、1つ前の前記状態量に対して下降している前記状態量の個数が第3基準以上である第4区間を前記非正常期間として特定する(図4のステップS13及びS14)。これにより、状態量が下降傾向となっている非正常期間も特定することができる。
【0055】
また、状態量は、上記オリジナルの状態量でもよいが、オリジナルの状態量に基づく移動平均値の方が好ましい。これにより、ノイズ的な状態量により非正常期間が誤検出されることが抑制される。
【0056】
また、表示制御部11Dは、時系列データのグラフを表示し、当該グラフの前記非正常期間を表す部分を前記非正常期間以外の正常期間を表す部分と異なる表示態様(黒丸を付した態様)で表示装置に表示する。これにより、グラフにおける非正常期間の部分がユーザにわかりやすく報知される。なお、「異なる表示態様」は、上記黒丸などの図形(例えば、物理量を示すポイントであって正常時とは異なる形状のもの)を付するほか、色を異ならせる、太さを異ならせる、点線、実線などの線種を異ならせることなどを含む。
【0057】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記の実施の形態に対する様々な変更が含まれる。
【0058】
例えば、本発明は、バルブ以外のフィールド機器を監視する技術一般に適用可能である。フィールド機器は、各種のプラントを構成するプラント機器を含む。フィールド機器は、流量計などの各種センサであってもよい。監視されるフィールド機器の状態量は、例えば、そのフィールド機器の状態をそのフィールド機器に取り付けられたセンサなどで測定した値、そのフィールド機器に入力される制御量又は情報、又は、フィールド機器自身が測定した測定値などとすることができる。さらに、状態量は、流量、圧力、温度、振動など、連続的に変化する物理量又はその移動平均値などであってもよい。このような物理量の時間変化の振動振幅が時間経過とともに大きくなっている期間が特定されること(図4のステップS16及びS17参照)で、ハンチング現象、共振などによる非正常期間が特定される。状態量は、オリジナルの状態量から、移動平均値以外の値として導出された値であってもよい。時系列データ取得部11Bは、状態監視装置外部に設けられた記憶部に格納された時系列データを取得してもよい。時系列データのグラフは、移動平均時系列データのグラフのみであってもよい。オリジナル時系列データに基づいて、非正常期間の特定などの上記各種処理が行われてもよい。この場合、時系列データのグラフは、オリジナル時系列データのグラフのみであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…状態監視装置、11…プロセッサ、11B…時系列データ取得部、11C…非正常特定部、11D…表示制御部、13…記憶装置、14…表示装置、16…操作装置、91B…一覧表示画像、91BA…状態量画像、91BB…機器画像、91BC…種類画像、92C…グラフ画像、93B~93D…画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15