(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】生体情報取得装置、処理装置、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/352 20210101AFI20250415BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20250415BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
A61B5/352 100
A61B5/0245 200
A61B5/00 G
(21)【出願番号】P 2021082437
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2020090725
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐野 宙人
(72)【発明者】
【氏名】松沢 航
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-165913(JP,A)
【文献】特開2017-047211(JP,A)
【文献】特開2011-098189(JP,A)
【文献】特開2009-039357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/0538
A61B 5/06-5/398
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサから被検者の生体パラメータの測定波形に対応する波形データを受付ける受付部と、
報知部と、
前記波形データに基づいて前記生体パラメータが正常に取得されていないと判断されると、前記報知部にアラームを出力させる処理部と、
前記生体パラメータが正常に取得されていない測定波形に対応する波形データの特徴量を機械学習モデルで学習することにより当該特徴量を有する波形データが入力された場合に前記生体パラメータの値が誤って算出される確率が高いことを示す推論データを出力するように生成された学習済みモデルあるいは識別器である推論部と、
を備えており、
前記処理部は、前記推論部に前記波形データを入力することにより出力された前記推論データに対応する確率が上昇傾向に係る条件を満足すると、前記波形データの品質、前記センサの状態、およびユーザがなすべき行動の少なくとも一つの報知を前記報知部に行なわせる、
生体情報取得装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記確率が閾値を上回った頻度に基づいて、前記報知部に前記報知を行なわせる、
請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記波形データに基づいて前記生体パラメータが正常に取得されていないと判断される前に前記確率が前記上昇傾向に係る条件を満足すると、前記報知部に前記報知を行なわせうる、
請求項1または2に記載の生体情報取得装置。
【請求項4】
前記生体パラメータは、心拍数である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の生体情報取得装置。
【請求項5】
前記センサは、心電図波形を測定するために前記被検者に装着される複数の電極を含んでおり、
前記推論部は、前記心電図波形に含まれる複数の誘導波形の各々に対応する前記波形データについて前記確率を算出する、
請求項4に記載の生体情報取得装置。
【請求項6】
被検者の生体情報を処理する処理装置であって、
センサから前記被検者の生体パラメータの測定波形に対応する波形データを受付ける受付部と、
前記波形データに基づいて前記生体パラメータが正常に取得されていないと判断されると、アラームを出力装置に出力させる処理部と、
前記生体パラメータが正常に取得されていない測定波形に対応する波形データの特徴量を機械学習モデルで学習することにより当該特徴量を有する波形データが入力された場合に前記生体パラメータの値が誤って算出される確率が高いことを示す推論データを出力するように生成された学習済みモデルあるいは識別器である推論部と、
を備えており、
前記処理部は、前記推論部に前記波形データを入力することにより出力された前記推論データに対応する確率が上昇傾向に係る条件を満足すると、前記波形データの品質、前記センサの状態、およびユーザがなすべき行動の少なくとも一つの報知を、前記出力装置に行なわせる、
処理装置。
【請求項7】
被検者の生体情報を処理する処理装置の処理部により実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記処理装置は、
センサから前記被検者の生体パラメータの測定波形に対応する波形データを受付け、
前記波形データに基づいて前記生体パラメータが正常に取得されていないと判断されると、アラームを出力装置に出力させ、
前記生体パラメータが正常に取得されていない測定波形に対応する波形データの特徴量を機械学習モデルで学習することにより当該特徴量を有する波形データが入力された場合に前記生体パラメータの値が誤って算出される確率が高いことを示す推論データを出力するように生成された学習済みモデルあるいは識別器である推論部に前記波形データを入力し、
前記推論データに対応する確率が上昇傾向に係る条件を満足すると、前記波形データの品質、前記センサの状態、およびユーザがなすべき行動の少なくとも一つの報知を前記出力装置に行なわせる、
コンピュータプログラム。
【請求項8】
被検者の生体パラメータの測定波形に対応する波形データを受付ける受付部と、
報知部と
、
前記生体パラメータが正常に取得されていない測定波形に対応する波形データの特徴量を機械学習モデルで学習することにより当該特徴量を有する波形データが入力された場合に前記生体パラメータの値が誤って算出される確率が高いことを示す推論データを出力するように生成された学習済みモデルあるいは識別器である推論部と、
前記波形データに基づいて前記生体パラメータが正常に取得されていないと判断され、かつ前記推論部に前記波形データを入力することにより出力された前記推論データに対応する確率が閾値を上回らない場合、前記報知部にアラームを出力させる処理部と、
を備えており、
前記処理部は、
前記波形データに基づいて前記生体パラメータが正常に取得されていないと判断され、かつ前記推論部に前記波形データを入力することにより出力された前記推論データに対応する確率が閾値を上回る場合、
出力される前記アラーム
に変更を加え、
前記変更は、アラームの緊急度の変更、アラームの出力停止、提供される情報の付加、および提供される情報の省略の少なくとも一つを含む、
生体情報取得装置。
【請求項9】
前記報知部は、前記確率に対応する指標を報知する、
請求項8に記載の生体情報取得装置。
【請求項10】
前記アラームは、視覚的アラームと聴覚的アラームを含んでおり、
前記処理部は、前記視覚的アラームと前記聴覚的アラームの少なくとも一方の緊急度を低下させるように変更する、
請求項8または9に記載の生体情報取得装置。
【請求項11】
前記処理部は、前記アラームの緊急度を維持しつつ、前記確率が前記閾値を上回る事実に対応する追加報知を提供する、
請求項8または9に記載の生体情報取得装置。
【請求項12】
被検者の生体情報を処理する処理装置であって、
前記被検者の生体パラメータの測定波形に対応する波形データを受付ける受付部と
、
前記生体パラメータが正常に取得されていない測定波形に対応する波形データの特徴量を機械学習モデルで学習することにより当該特徴量を有する波形データが入力された場合に前記生体パラメータの値が誤って算出される確率が高いことを示す推論データを出力するように生成された学習済みモデルあるいは識別器である推論部と、
前記波形データに基づいて前記生体パラメータが正常に取得されていないと判断され、かつ前記推論部に前記波形データを入力することにより出力された前記推論データに対応する確率が閾値を上回らない場合、出力装置にアラームを出力させる処理部と、
を備えており、
前記処理部は、
前記波形データに基づいて前記生体パラメータが正常に取得されていないと判断され、かつ前記推論部に前記波形データを入力することにより出力された前記推論データに対応する前記確率が閾値を上回る場合、
出力される前記アラーム
に変更を加え、
前記変更は、アラームの緊急度の変更、アラームの出力停止、提供される情報の付加、および提供される情報の省略の少なくとも一つを含む、
処理装置。
【請求項13】
被検者の生体情報を処理する処理装置の処理部により実行可能なコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムが実行されることにより、前記処理装置は、
前記被検者の生体パラメータの測定波形に対応する波形データを受付け
、
前記生体パラメータが正常に取得されていない測定波形に対応する波形データの特徴量を機械学習モデルで学習することにより当該特徴量を有する波形データが入力された場合に前記生体パラメータの値が誤って算出される確率が高いことを示す推論データを出力するように生成された学習済みモデルあるいは識別器である推論部に前記波形データを入力し、
前記波形データに基づいて前記生体パラメータが正常に取得されていないと判断され、かつ前記推論部に前記波形データを入力することにより出力された前記推論データに対応する確率が閾値を上回らない場合、出力装置にアラームを出力させる処理部と、
前記波形データに基づいて前記生体パラメータが正常に取得されていないと判断され、かつ前記推論部に前記波形データを入力することにより出力された前記推論データに対応する確率が閾値を上回る場合、
出力される前記アラーム
に変更を加え、
前記変更は、アラームの緊急度の変更、アラームの出力停止、提供される情報の付加、および提供される情報の省略の少なくとも一つを含む、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを通じて被検者の生体情報を取得する生体情報取得装置に関連する。本発明は、当該生体情報を処理する処理装置、および当該処理装置の処理部により実行可能なコンピュータプログラムにも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている生体情報取得装置は、被検者の生体パラメータの測定波形に対応する波形データを受付ける。当該生体情報取得装置は、当該波形データに基づいて、当該生体パラメータの値と当該測定波形の少なくとも一方の異常を示すアラームを出力する。当該生体情報取得装置は、当該波形に基づいて、情報取得状態の異常を示すアラームも出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、アラームによりユーザが無用な対応を強いられる事態の発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための第一態様は、生体情報取得装置であって、
センサから被検者の生体パラメータの測定波形に対応する波形データを受付ける受付部と、
前記生体パラメータが正常に取得されていないことを示すアラームを出力する報知部と、
前記波形データに基づいて、前記報知部に前記アラームを出力させる処理部と、
前記波形データに基づいて、前記生体パラメータの値が誤って算出される確率を推論する推論部と、
を備えており、
前記処理部は、前記確率に基づいて、前記波形データの品質、前記センサの状態、およびユーザがなすべき行動の少なくとも一つの報知を前記報知部に行なわせる。
【0006】
上記の目的を達成するための第二態様は、被検者の生体情報を処理する処理装置であって、
センサから前記被検者の生体パラメータの測定波形に対応する波形データを受付ける受付部と、
前記波形データに基づいて、前記生体パラメータが正常に取得されていないことを示すアラームを出力装置に出力させる処理部と、
前記波形データに基づいて、前記生体パラメータの値が誤って算出される確率を推論する推論部と、
を備えており、
前記処理部は、前記確率に基づいて、前記波形データの品質、前記センサの状態、およびユーザがなすべき行動の少なくとも一つの報知を、前記出力装置に行なわせる。
【0007】
上記の目的を達成するための第三態様は、被検者の生体情報を処理する処理装置の処理部により実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記処理装置は、
センサから前記被検者の生体パラメータの測定波形に対応する波形データを受付け、
前記波形データに基づいて、前記生体パラメータが正常に取得されていないことを示すアラームを出力装置に出力させ、
前記波形データに基づいて、前記生体パラメータの値が誤って算出される確率を推論し、
前記確率に基づいて、前記波形データの品質、前記センサの状態、およびユーザがなすべき行動の少なくとも一つの報知を前記出力装置に行なわせる。
【0008】
本願の発明者たちは、生体情報が正常に取得されていないことを示すアラームが出力されている状態において、当該生体情報の測定波形に基づいて生体パラメータの値が誤って算出される確率が高い値で推移している場合があることを見出した。
【0009】
第一態様から第三態様の各々に係る構成によれば、推論部により推論される確率を参照することによりアラームが頻発する状態に至る兆候の推定を行ない、ユーザに対応を促すことができる。したがって、アラームによりユーザが無用な対応を強いられる事態の発生を抑制できる。
【0010】
上記の目的を達成するための第四態様は、生体情報取得装置であって、
被検者の生体パラメータの測定波形に対応する波形データを受付ける受付部と、
前記生体パラメータの値と前記測定波形の少なくとも一方の異常を示すアラームを出力する報知部と、
前記波形データに基づいて、前記報知部に前記アラームを出力させる処理部と、
前記波形データに基づいて、前記生体パラメータの値が誤って算出される確率を推論する推論部と、
を備えており、
前記処理部は、前記確率が閾値を上回る場合、前記アラームの出力を制御する。
【0011】
上記の目的を達成するための第五態様は、被検者の生体情報を処理する処理装置であって、
前記被検者の生体パラメータの測定波形に対応する波形データを受付ける受付部と、
前記波形データに基づいて、前記生体パラメータの値と前記測定波形の少なくとも一方の異常を示すアラームを出力装置に出力させる処理部と、
前記波形データに基づいて、前記生体パラメータの値が誤って算出される確率を推論する推論部と、
を備えており、
前記処理部は、前記確率が閾値を上回る場合、前記アラームの出力を制御する。
【0012】
上記の目的を達成するための第六態様は、被検者の生体情報を処理する処理装置の処理部により実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記処理装置は、
前記被検者の生体パラメータの測定波形に対応する波形データを受付け、
前記生体パラメータの値と前記測定波形の少なくとも一方の異常を示すアラームを出力装置に出力させ、
前記波形データに基づいて、前記生体パラメータの値が誤って算出される確率を推論し、
前記確率が閾値を上回る場合、前記アラームの出力を制御する。
【0013】
受付部により受付けられた波形データに何らかの異常が認められても、同じ波形データに基づいて推論部により推論された生体パラメータが誤って算出される確率が高い場合、当該異常が誤って検出されている蓋然性が高い。このような場合において出力されるアラームを制御する第四態様から第六態様の各々に係る構成によれば、異常が誤検出された可能性があることをユーザに認識させることができる。したがって、アラームによりユーザが無用な対応を強いられる事態の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る生体情報取得装置の機能構成を例示している。
【
図3】心電図波形データと第一心拍数データの関係を例示している。
【
図4】心電図波形データと第二心拍数データの関係を例示している。
【
図5】被検者から取得された心拍数の経時変化を示すデータを例示している。
【
図6】推論部による処理を経た心拍数の経時変化を示すデータを例示している。
【
図7】
図1の処理部により行なわれる処理の一例を説明するための図である。
【
図8】
図1の処理部により行なわれる処理の一例を説明するための図である。
【
図9】
図1の処理部により実行される処理の一例を説明するための図である。
【
図10】
図1の処理部により実行される処理の別例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例を以下詳細に説明する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る生体情報取得装置10の機能構成を例示している。生体情報取得装置10は、センサ20を通じて被検者30の生体パラメータを取得する装置である。センサ20の例としては、心拍数を取得するための電極、インピーダンス呼吸数を取得するための電極、観血血圧値を取得するためのカテーテル、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)や脈拍数を取得するためのプローブ、呼吸気二酸化炭素濃度を取得するためのフローセンサなどが挙げられる。
【0017】
生体情報取得装置10は、報知部11を備えている。報知部11は、アラームAを出力可能に構成されている。アラームAは、生体パラメータが正常に取得されていないことを示すアラーム(いわゆるテクニカルアラーム)と、生体パラメータの値と生体パラメータの測定波形の少なくとも一方に異常があることを示すアラーム(いわゆる生体アラーム)とを含みうる。アラームAは、視覚的アラーム、聴覚的アラーム、および触覚的アラームの少なくとも一つを含む。報知部11は、出力装置の一例である。
【0018】
生体情報取得装置10は、処理装置12を備えている。処理装置12は、受付部121、処理部122、および出力部123を備えている。
【0019】
受付部121は、センサ20から被検者30の生体パラメータの測定波形に対応する波形データWを受付けるように構成されている。波形データWは、アナログデータの形態であってもよいし、デジタルデータの形態であってもよい。波形データWがアナログデータの形態である場合、受付部121は、A/Dコンバータを含む適宜の変換回路を含むように構成される。処理部122は、デジタルデータの形態である波形データWを処理の対象とする。
【0020】
処理部122は、波形データWに基づいて、報知部11にアラームAを出力させる第一制御データC1を出力部123から出力するように構成されている。例えば、センサ20が所定の位置からずれたり、センサ20の動作に何らかの不良が生じたりすると、適当な測定波形に歪みが生じたり、信号のレベルが低下したりする。処理部122は、波形データWがこのような状態に対応すると判断した場合、第一制御データC1を出力部123から報知部11へ送信する。
【0021】
報知部11へ送信される第一制御データC1は、アナログデータの形態であってもよいし、デジタルデータの形態であってもよい。第一制御データC1がアナログデータの形態である場合、出力部123は、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を含むように構成される。
【0022】
処理部122は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、後述する処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。プロセッサは、ROM上に記憶されたコンピュータプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバ装置からダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバ装置は、コンピュータプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。
【0023】
処理部122は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶が記憶された非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。処理部122は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0024】
処理装置12は、推論部124を備えている。推論部124は、波形データWに基づいて、生体パラメータの値が誤って算出される確率Pを推論するように構成されている。推論部124は、後述する機械学習により生成された学習済みモデルあるいは識別器として実現される。
【0025】
図2を参照しつつ、一例として心電図の測定波形に基づいて心拍数が誤って算出される確率を推論可能な推論部124の生成方法について説明する。
【0026】
まず、心電図波形データEから第一心拍数データH1を取得する処理が行なわれる(STEP1)。第一心拍数データH1は、心電図波形データEから正しく算出された心拍数の値を示すデータである。心電図波形データEは、波形データWの一例である。心拍数は、生体パラメータの一例である。
【0027】
図3は、心電図波形データEと第一心拍数データH1の関係を例示している。心電図波形データEは、被検者の心臓の生理学的電気活動の経時変化を示している。心電図波形データEは、心臓の拍動に伴って変化する。1分間あたりの当該変化の回数を計数することにより、第一心拍数データH1が算出される。
図3において上下方向に延びる破線は、心電図波形データEにおいて心拍数の計数に供された部分を表している。同図においては、波形が表示されている時間内(例えば10秒間)に12回の心拍が計数されている。
【0028】
第一心拍数データH1に対応する心拍数の計数は、心電図波形データEを目視することによってなされてもよいし、適当な計数ソフトウェアを用いてなされてもよい。心電図波形データEは、心電図センサなどを用いて実際に被検者から取得された波形データが用いられてもよいし、心電計の性能評価用にデータベースとして公開されている波形データが用いられてもよい。
【0029】
続いて、あるいは並行して、心電図波形データEから第二心拍数データH2が取得される処理(
図2におけるSTEP2)が行なわれる。第二心拍数データH2は、特定の心拍数算出アルゴリズムにより心電図波形データEから自動的に算出された心拍数の値を示すデータである。心拍数算出アルゴリズムは、例えば、生体情報取得装置10に搭載された処理装置12の処理部122により実行されるものでありうる。心拍数算出アルゴリズムは、入力された心電図波形データEにおける波形形状の特徴などに基づいて、自動的に心拍数を算出するように構成されている。
【0030】
図4は、心電図波形データEと第二心拍数データH2の関係を例示している。
図4に例示されている心電図波形データEは、
図3に例示されている心電図波形データEと同一である。同一の心電図波形データEに基づいていながら、
図4に示される例においては、12回ではなく19回の心拍が計数されている。この事実は、第二心拍数データH2の取得に使用された心拍数算出アルゴリズムが、誤検出された心拍に基づいて計数を行ないうることを意味している。
【0031】
図5は、被検者から実際に取得された心電図波形データEを上記の心拍数算出アルゴリズムに入力することにより自動的に算出された心拍数の経時変化を例示している。グラフ中に含まれる複数の点の各々は、所定時間内(例えば1分間)に検出された心拍数に対応している。
【0032】
図6においては、
図5に例示された複数の心拍数の値のうち、誤って算出されたものを白丸で表している。誤って算出された心拍数データを除外しうる一つの手法は、心拍数について閾値範囲を設定することである。例えば、心拍数が下限閾値Th1と上限閾値Th2の間に収まっていない心拍数データが除外されうる。しかしながら、
図6に示されるように、閾値範囲内であっても誤って算出された心拍数データは存在しうるし、逆に閾値範囲外であっても正しく算出された心拍数データは存在しうる。前者は心拍数算出アルゴリズムの誤解析に基づくものであり、後者は被検者における何らかの生理的現象に起因して心拍数が上昇した場合に対応している。心拍数算出アルゴリズムの誤解析は、例えば、高振幅のT波をQRS波と誤認識して心拍数を多く計数してしまう現象(いわゆるダブルカウント)によって生じうる。心拍数算出アルゴリズムの誤解析は、被検者の体動、被検者に装着された電極の劣化や脱落などの外部ノイズによっても生じうる。
【0033】
続いて、心拍数算出アルゴリズムにより自動的に算出された心拍数に対応する第二心拍数データH2を第一心拍数データH1と照合することにより、当該心拍数が正解か不正解かを示す教師ラベルを含む教師データTを生成する処理(
図2におけるSTEP3)が行なわれる。
【0034】
図3に例示された第一心拍数データH1と
図4に例示された第二心拍数データH2が照合に供された場合、教師データTは、第二心拍数データH2に対応する心拍数は不正解であることを示す教師ラベルを含む。
【0035】
なお、正解であることを示す教師ラベルを含むために、必ずしも第一心拍数データH1に対応する心拍数と第二心拍数データH2に対応する心拍数が完全に一致していることを要しない。第一心拍数データH1に対応する心拍数に対する第二心拍数データH2に対応する心拍数の誤差が許容範囲内であれば、教師データTは、正解を示す教師データを含みうる。
【0036】
すなわち、心拍数算出アルゴリズムによって自動的に算出された心拍数が、正しく算出されたことが知られている心拍数との照合に供される。したがって、照合の結果として得られる教師ラベルは、入力される心電図波形データEに対して当該心拍数算出アルゴリズムが正しく、あるいは誤って心拍数を算出する傾向あるいは癖を反映しうる。
【0037】
続いて、心電図波形データEと教師データTの組合せに基づいて、推論部124の機械学習が行なわれる(
図2におけるSTEP4)。機械学習は、周知の教師あり学習に係る手法が適宜に使用される。すなわち、推論部124は、誤って心拍数が算出された心電図波形データEの特徴量を学習し、そのような特徴量を有する心電図波形データEが入力された場合に心拍数が誤って算出される確率Pが高いことを示す推論データを出力するように演算パラメータの修正がなされる。演算パラメータの修正は、学習実行者によりなされてもよいし、学習を通じて推論部124自身によりなされてもよい。推論データは、算出された確率P自体を示してもよいし、確率Pに対応するスコア(例えば1から5までの値のいずれか)などに対応付けられてもよい。
【0038】
図1に例示されるように、処理部122は、推論部124により算出された確率Pに基づいて、出力部123から第二制御データC2を出力するように構成されている。第二制御データC2は、報知部11に後述する予備通知Nを出力させるように構成されている。報知部11へ送信される第二制御データC2は、アナログデータの形態であってもよいし、デジタルデータの形態であってもよい。第二制御データC2がアナログデータの形態である場合、出力部123は、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を含むように構成される。
【0039】
図7から
図9を参照しつつ、生体情報取得装置10により行なわれる予備通知Nについて詳細に説明する。
【0040】
図7は、従来の生体情報取得装置を用いて被検者の心電図波形を取得している場合に出力されたアラームの頻度を例示する棒グラフである。アラームは、心拍数の取得が正常に行なわれていないことを示すために出力される。アラームは、被検者の体動、被検者に装着された電極の劣化や位置ずれ・脱落などを原因として出力される。空白の棒は、出力時間が5秒未満のアラームを表している。斜線のハッチングが付された棒は、出力時間が5秒以上30秒未満のアラームを表している。格子のハッチングが付された棒は、出力時間が30秒以上のアラームを表している。
【0041】
図7に示される例においては、時刻t1からアラームが出力され始めている。心拍数の正常な取得を阻害する前述の原因が発生していることが判る。時間の経過とともにアラーム出力の頻度が上がるとともに出力時間の長いアラームが増え、状況が悪化していることが判る。時刻t2において電極の交換あるいは再配置が行なわれることにより、アラームの出力が止んでいる。
【0042】
図8は、
図7に示される例において取得された心電図波形を本実施形態に係る推論部124への入力とした場合に推論部124から出力された確率Pをプロットしたグラフである。
図9は、
図8に示されたプロット群の時間移動平均値を算出してスムージングされた確率Pの経時変化を、
図7の棒グラフに重ねて示したグラフである。アラームが出力されている期間と、推論部124により出力された心拍数が誤って算出される確率Pが高い期間との間に相関があることが判る。
【0043】
本願の発明者たちは、時刻t1に先立つ期間に着目した。時刻t1に先立つ時刻t0以前における確率Pが低い値で推移する状態から突如として時刻t1以降の確率Pが高い値で推移する状態に遷移するのではなく、時刻t0から時刻t1までの期間において確率Pが比較的高い値をとる頻度が徐々に増えている。換言すると、心拍数の正常な取得がなされている状態から心拍数の正常な取得がなされていない状態へ、アラームの出力を伴わずに移行する期間が存在する。
【0044】
上記に鑑み、処理部122は、推論部124により算出される確率Pの上昇傾向に基づいて、報知部11に予備通知Nを出力させるように構成されている。例えば、処理部122は、確率Pが所定の確率閾値を上回る頻度(単位時間あたりの回数)が所定の頻度閾値を上回る場合に、報知部11に予備通知Nを出力させうる。あるいは、処理部122は、確率Pが所定の確率閾値を上回った累積回数が所定の回数閾値を上回る場合に、報知部11に予備通知Nを出力させうる。あるいは、処理部122は、
図9に例示される確率Pの時間移動平均値が所定の確率閾値を上回る場合に、報知部11に予備通知Nを出力させうる。
【0045】
予備通知Nは、波形データWの品質、センサ20の状態、およびユーザがなすべき行動の少なくとも一つを報知する。予備通知Nは、視覚的報知、聴覚的報知、および触覚的報知の少なくとも一つを含む。
【0046】
図8と
図9に示される例の場合、心拍数が誤って算出される確率Pの上昇は、体動による心電図波形の正常状態からの逸脱、電極の劣化や位置ずれによる心電図波形の正常状態からの逸脱などが原因となりうる。例えば、予備通知Nは、「波形が乱れています」、「体動が多くなっています」、「電極の状態を確認してください」などのメッセージが、表示や音声を通じてユーザに提供されうる。
【0047】
このような構成によれば、アラームが頻発する状態に至る兆候の推定を行ない、ユーザに対応を促すことができる。したがって、アラームによりユーザが無用な対応を強いられる事態の発生を抑制できる。
【0048】
予備通知Nを出力するための条件設定は、報知部11によりアラームAが出力される状態に至る前に予備通知Nがなされるように行なわれることが好ましい。
図8と
図9に示される例においては、時刻t1よりも前に予備通知Nがなされるように確率Pに係る条件設定がなされる。アラームAの出力に先立つ予備通知Nにより然るべき対応をユーザに促すことによって、ある程度の緊張をユーザに強いるアラームAの出力を回避できる可能性を高めることができる。
【0049】
なお、上記の心電図波形データEは、複数の誘導波形を合成して得られた波形、あるいは簡易的に単一の誘導(一般的にはII誘導)を取得することにより得られた波形である。しかしながら、当該複数の誘導波形の各々に基づいて心拍数が誤って算出される確率が推定できるように推論部124の生成がなされてもよい。このような構成によれば、各誘導波形を取得する電極ごとに細やかな状態管理が可能になり、アラームによりユーザが無用な対応を強いられる事態の発生の抑制を容易にできる。
【0050】
次に、
図10を参照しつつ、生体情報取得装置10の別構成例について説明する。本例においては、処理装置12の処理部122は、受付部121により受付けられた波形データWに基づいて生体パラメータの値と生体パラメータの測定波形の少なくとも一方に異常があるかを判断する(STEP11)。生体パラメータの値と生体パラメータの測定波形の少なくとも一方に異常があると判断されるまで、当該処理が繰り返される(STEP11においてNO)。
【0051】
生体パラメータの値と生体パラメータの測定波形の少なくとも一方に異常があると判断されると(STEP11においてYES)、処理部122は、推論部124によって推論された生体パラメータの値が誤って算出される確率Pが確率閾値Pthを上回るかを判断する(STEP12)。
【0052】
確率Pが確率閾値Pthを上回らないと判断されると(STEP12においてNO)、処理部122は、予め規定された通常のアラームAを報知部11に出力させる第一制御データC1を出力部123から出力する(STEP13)。前述のように、アラームAは、視覚的手法、聴覚的手法、および触覚的手法の少なくとも一つを用いて出力されうる。
【0053】
確率Pが確率閾値Pthを上回ると判断されると(STEP12においてYES)、処理部122は、制御されたアラームA’を報知部11に出力させる第三制御信号CS3を出力部123から出力する(STEP14)。本明細書で用いられる「制御されたアラーム」あるいは「アラームの出力を制御する」という表現は、ある状況に対して割り当てられた通常のアラームAに対して何らかの変更を適用することを意味する。変更の例としては、アラームの緊急度の変更、アラームの出力停止、提供される情報の付加、提供される情報の省略などが挙げられる。すなわち、「制御されたアラームの出力」という表現は、通常のアラームが出力されないことを含む意味である。
【0054】
例えば、アラームAは、緊急度に応じて「緊急」、「警戒」、および「注意」のレベルを含みうる。心電図波形が取得の対象とされる場合、「緊急」レベルのアラームは、心室細動や心室頻拍の発生時に割り当てられうる。「警戒」レベルのアラームは、心拍数の異常や心室期外収縮の発生時に割り当てられうる。「注意」レベルのアラームは、その他の異常に割り当てられうる。
【0055】
報知の態様は、各レベル間で相違する。例えば、アラームAが視覚的アラームを含む場合、表示される色やシンボルが相違する。アラームAが聴覚的アラームを含む場合、出力される音量、音程、音長、音声などが相違する。
【0056】
例えば、心電図波形データEに基づいて心室細動が生じていると判断され、かつ心拍数が誤って算出される確率Pが確率閾値Pthを上回らない場合(STEP12においてNO)、処理部122は、心室細動に割り当てられた「緊急」レベルのアラームAを報知部11に出力させる(STEP13)。
【0057】
他方、心電図波形データEに基づいて心室細動が生じていると判断され、かつ心拍数が誤って算出される確率Pが確率閾値Pthを上回る場合(STEP12においてYES)、処理部122は、心室細動に割り当てられた「緊急」レベルのアラームAに変更を適用し、制御されたアラームA’として出力する(STEP14)。
【0058】
受付部121により受付けられた心電図波形に何らかの異常が認められても、同じ心電図波形に基づいて推論部124により推論された心拍数が誤って算出される確率Pが高い場合、当該異常が誤って検出されている蓋然性が高い。このような場合において報知部11により出力されるアラームAに何らかの変更を適用することにより、異常が誤検出された可能性があることをユーザに認識させることができる。したがって、アラームによりユーザが無用な対応を強いられる事態の発生を抑制できる。
【0059】
処理部122は、推論部124により推定された確率Pを示す指標を、報知部11に出力させてもよい。指標は、視覚的指標、聴覚的指標、および触覚的指標の少なくとも一つを用いて提供されうる。
【0060】
このような構成によれば、異常が誤検出された可能性があることを、より確実にユーザに認識させることができる。
【0061】
アラームAが視覚的アラームと聴覚的アラームを含む場合、処理部122は、視覚的アラームと聴覚的アラームの少なくとも一方の緊急度を下げるように制御されたアラームA’を出力させうる。
【0062】
例えば通常のアラームAが「緊急」レベルに割り当てられた視覚的アラームと聴覚的アラームを含む場合、視覚的アラームと聴覚的アラームの少なくとも一方が「警戒」レベルまたは「注意」レベルに割り当てられたものに変更されうる。例えば、「緊急レベル」に割り当てられた色表示が維持されつつ、「緊急レベル」に割り当てられた音声が「警戒レベル」に割り当てられた音声に変更される。
【0063】
このような構成によれば、アラームの出力自体は維持されることによりユーザの注意を喚起しつつも、より高い緊急度の出力に伴う緊張感を緩和することができる。視聴的アラームと聴覚的アラームの一方の緊急度が低下される場合、通常のアラームの組合せと異なる事実に基づいて、異常が誤検出された可能性をユーザに認識させることもできる。
【0064】
処理部122は、通常のアラームAの緊急度を維持しつつ、推論部124により推論された生体パラメータが誤って検出された確率Pが確率閾値Pthを上回る事実に対応する追加情報を、報知部11に提供させうる。追加情報の提供は、視覚的手法、聴覚的手法、および触覚的手法の少なくとも一つを用いて行なわれうる。
【0065】
このような構成によれば、アラームの出力自体は維持されることによりユーザの注意を喚起しつつも、追加情報の提供を通じて異常が誤検出された可能性をユーザに認識させることで緊張感の緩和を図ることができる。
【0066】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0067】
上記の実施形態においては、心拍数が誤って算出される確率を推論するための推論部124を生成するために、共通の心電図波形データEを用いて第一心拍数データH1と第二心拍数データH2が取得されている。前述の通り、第一心拍数データH1は、心電図波形データEから正しく算出された心拍数を示すデータである。第二心拍数データH2は、特定の心拍数算出アルゴリズムにより算出された心拍数を示すデータであり、誤算出された心拍数を含む可能性がある。
【0068】
別例として、呼吸数が誤って算出される確率を推論するための推論部124を生成するために、共通のカプノグラムデータを用いて第一呼吸数データと第二呼吸数データが取得されてもよい。カプノグラムデータは、波形データの一例である。呼吸数は、生体パラメータの一例である。第一呼吸数データは、カプノグラムデータから正しく算出された呼吸数を示すデータである。第二呼吸数データは、特定の呼吸数算出アルゴリズムにより算出された呼吸数を示すデータであり、誤算出された呼吸数を含む可能性がある。
【0069】
推論部124が誤算出確率の推定の対象としている生体パラメータと、アラームの出力対象となる生体パラメータとが相違していてもよい。例えば、心電図波形データにおけるST値、QT間隔、QTcなどの異常に対してアラームが出力される構成に対して、心拍数が誤って算出される確率を推論するための推論部124が用いられうる。あるいは、カプノグラムデータにおける呼気終末期二酸化炭素分圧(EtCO2)などの異常に対してアラームが出力される構成に対して、呼吸数が誤って算出される確率を推論するための推論部124が用いられうる。
【0070】
種別の異なる生体パラメータが推論部124の生成に使用されてもよい。一例として、脈拍数が誤って算出される確率を推論するための推論部124を生成するために、心電図波形データから取得された心拍数データと観血的動脈圧波形データから取得された脈拍数データが用いられうる。心電図波形データと観血的動脈圧波形データは、同一の被検者から取得されることを要する。心拍数データは、心電図波形データから正しく算出された心拍数を示すデータである。脈拍数データは、特定の脈拍数算出アルゴリズムにより算出された脈拍数を示すデータであり、誤算出された脈拍数を含む可能性がある。
【0071】
上記のように生成された推論部124は、観血的動脈圧が誤って算出される確率を推論するために使用される。観血的動脈圧波形データは、波形データの一例である。観血的動脈圧は、生体パラメータの一例である。
【0072】
脈拍数データを取得するために、脈波波形データが用いられてもよい。脈波波形データは、パルスフォトメトリプローブなどを用いて血液の吸光度の経時変化を非観血的に測定することによって取得されうる。あるいは、脈波波形データは、非観血的動脈圧計などを用いてカフ内圧の経時変化を測定することによって取得されうる。この場合、生成された推論部124は、非観血的動脈圧、脈拍数、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)が誤って算出される確率を推論するために使用される。脈波波形データは、波形データの一例である。被観血的動脈圧、脈拍数、およびSpO2は、生体パラメータの一例である。
【0073】
別例として、呼吸数が誤って算出される確率を推論するための推論部124を生成するために、インピーダンス呼吸波形データから取得された第一呼吸数データとカプノグラムデータから取得された第二呼吸数データが用いられうる。インピーダンス呼吸波形データとカプノグラムデータは、同一の被検者から取得されることを要する。第一呼吸数データは、インピーダンス呼吸波形データから正しく算出された呼吸数を示すデータである。第二呼吸数データは、特定の呼吸数算出アルゴリズムにより算出された呼吸数を示すデータであり、誤算出された呼吸数を含む可能性がある。インピーダンス呼吸波形データは、波形データの一例である。呼吸数は、生体パラメータの一例である。
【0074】
上記の実施形態においては、アラームA、制御されたアラームA’、および予備通知Nを出力する報知部11が、生体情報取得装置10に搭載されている。しかしながら、報知部11の機能は、通信ネットワークを介して生体情報取得装置10とデータ通信が可能である独立した出力装置において実現されうる。この場合、処理装置12の処理部122は、アラームA、制御されたアラームA’、および予備通知Nの出力を当該出力装置に行なわせる第一制御データC1および第二制御データC2を、出力部123から送信する。
【0075】
上記の実施形態においては、報知部11と処理装置12の双方が生体情報取得装置10に搭載されている。しかしながら、処理装置12は、生体情報取得装置10と通信ネットワークを介して通信可能な外部サーバ装置に搭載されてもよい。この場合、処理装置12は、センサ20あるいは生体情報取得装置10から通信ネットワークを介して受け付けた波形データWに基づいて前述の処理を実行し、通信ネットワークを介して適宜の制御データを送信し、報知部11にアラームA、制御されたアラームA’、および予備通知Nを出力させる。外部サーバ装置から送信される制御データに基づく動作を実行する装置は、生体情報取得装置10とは独立した出力装置であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
10:モニタ装置、11:報知部、12:制御装置、121:受付部、122:処理部、124:推論部、20:センサ、30:被検者、A:アラーム、A’:制御されたアラーム、N:予備通知、P:確率、W:波形データ