(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】超電導コイル
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20250415BHJP
【FI】
H01F6/06 110
H01F6/06 500
(21)【出願番号】P 2021137969
(22)【出願日】2021-08-26
【審査請求日】2024-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真司
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/112181(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/038826(WO,A1)
【文献】特開2015-065116(JP,A)
【文献】特開2007-266149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0288323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線材が巻回された巻線部と、前記巻線部を構成する前記超電導線材の少なくとも1つの端末に設けられる端末部と、を備え、
前記端末部は、前記超電導線材の一端を含む端領域部と、他の前記巻線部に接続された接続体または電極である被接続部と、を電気的に接続する一対の接続用テープを有し、
一対の前記接続用テープの一部は、前記端領域部を挟んで前記端領域部の両面に接合され、
一対の前記接続用テープの他の一部は、前記被接続部を挟んで前記被接続部の両面に接合される、
超電導コイル。
【請求項2】
前記端末部は、一対の前記接続用テープの間に挿入されたスペーサをさらに備え、
前記スペーサは、2つの前記接続用テープが互いに近づく方向の変位を規制する、請求項1記載の超電導コイル。
【請求項3】
前記接続用テープは、前記巻線部を構成する前記超電導線材と同じ構成の超電導線材である、請求項1または2に記載の超電導コイル。
【請求項4】
前記接続用テープは、金属テープである、請求項1または2に記載の超電導コイル。
【請求項5】
前記巻線部を構成する前記超電導線材は、
金属基板と酸化物超電導層とを有する超電導積層体を備え、
一対の前記接続用テープのうち、前記超電導線材の前記金属基板が形成された側の面に接続された接続用テープと前記超電導線材との接合長さは、前記酸化物超電導層が形成された側の面に接続された接続用テープと前記超電導線材の接合長さより長い、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の超電導コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の超電導コイルは、複数のパンケーキコイルが積層されて構成されている。積層方向に隣り合うパンケーキコイルは、接続部位において互いに電気的に接続されている。最上段および最下段のパンケーキコイルには、通電のための電極が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超電導コイルに大きな電流を流すと、超電導コイルに径方向外側への電磁力が加えられ、超電導コイルを構成する超電導線材に引張力が作用する。これにより、超電導線材と、接続部位または電極との接続部分において超電導線材が屈曲変形し、超電導線材の劣化を原因として超電導コイルの特性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、超電導特性の低下が起こりにくい超電導コイルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、超電導線材が巻回された巻線部と、前記巻線部を構成する前記超電導線材の少なくとも1つの端末に設けられる端末部と、を備え、前記端末部は、前記超電導線材の一端を含む端領域部と、他の前記巻線部に接続された接続体または電極である被接続部と、を電気的に接続する一対の接続用テープを有し、一対の前記接続用テープの一部は、前記端領域部を挟んで前記端領域部の両面に接合され、一対の前記接続用テープの他の一部は、前記被接続部を挟んで前記被接続部の両面に接合される、超電導コイルを提供する。
【0007】
この構成によれば、一対の接続用テープは、端領域部と被接続部とをそれぞれ挟み込んで両面に接合されるため、引張力が加えられた場合に、引張荷重を両面の接合箇所において負担できる。そのため、接合箇所における応力集中を緩和することができる。したがって、応力集中によって超電導線材および接続用テープが損傷を受けるのを回避できる。よって、超電導特性の低下を抑えることができる。
【0008】
前記端末部は、一対の前記接続用テープの間に挿入されたスペーサをさらに備え、前記スペーサは、2つの前記接続用テープが互いに近づく方向の変位を規制することが好ましい。
【0009】
前記接続用テープは、前記巻線部を構成する前記超電導線材と同じ構成の超電導線材であってよい。
【0010】
前記接続用テープは、金属テープであってよい。
【0011】
前記巻線部を構成する前記超電導線材は、金属基板と酸化物超電導層とを有する超電導積層体を備え、一対の前記接続用テープのうち、前記超電導線材の前記金属基板が形成された側の面に接続された接続用テープと前記超電導線材との接合長さは、前記酸化物超電導層が形成された側の面に接続された接続用テープと前記超電導線材の接合長さより長いことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、超電導特性の低下が起こりにくい超電導コイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】実施形態の超電導コイルに用いられる酸化物超電導線材の断面図である。
【
図3】実施形態の超電導コイルの端末部の断面図である。
【
図4】実施形態の超電導コイルの端末部の断面図である。
【
図5】実施形態の超電導コイルの概略構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0015】
[超電導コイル]
図1は、実施形態の超電導コイル100の正面図である。
図2は、超電導コイル100に用いられる酸化物超電導線材10の断面図である。
図3は、超電導コイル100の外周端末部20Aの断面図である。
図4は、超電導コイル100の内周端末部20Bの断面図である。
図5は、超電導コイル100の概略構造を示す斜視図である。
【0016】
図1に示すように、超電導コイル100は、複数の巻線部30(
図5参照)と、端末部20と、を備える。
巻線部30は、酸化物超電導線材10(超電導線材)で構成される。巻線部30は、酸化物超電導線材10が、複数回、巻回された多層巻きコイルである。「C」は、巻線部30の巻回軸である。巻線部30は、例えば、円環状のパンケーキコイルである。巻回軸C周りの方向は、巻線部30の周方向である。巻線部30は、酸化物超電導線材10と、絶縁テープとが共巻きされた構成であってもよい。巻線部30は、エポキシ樹脂などの樹脂が含浸されていてもよい。
複数の巻線部30は、巻回軸Cの方向に積層される(
図5参照)。
【0017】
図2に示すように、酸化物超電導線材10は、超電導積層体5と、安定化層6とを備えている。酸化物超電導線材10は、「超電導線材」の具体例である。
【0018】
超電導積層体5は、金属基板1と、中間層2と、酸化物超電導層3と、保護層4とを備える。超電導積層体5は、金属基板1上に中間層2を介して酸化物超電導層3および保護層4が形成された構造を有する。すなわち、超電導積層体5は、テープ状の金属基板1の一方の面に、中間層2、酸化物超電導層3、および保護層4がこの順に積層された構成を有する。
【0019】
酸化物超電導線材10は、テープ状に形成されている。Y方向は、酸化物超電導線材10の厚さ方向であり、金属基板1、中間層2、酸化物超電導層3、保護層4が積層される方向である。X方向は、酸化物超電導線材10の幅方向であり、酸化物超電導線材10の長さ方向および厚さ方向に直交する方向である。
【0020】
金属基板1は、金属で形成されている。金属基板1を構成する金属の具体例として、ハステロイ(登録商標)などのニッケル合金;ステンレス鋼;ニッケル合金に集合組織を導入した配向Ni-W合金などが挙げられる。金属基板1の厚さは、目的に応じて適宜調整すればよく、例えば10~500μmの範囲である。金属基板1の一方の面(中間層2が形成された面)を第1主面1aといい、第1主面1aと反対の面を第2主面1bという。
【0021】
中間層2は、金属基板1と酸化物超電導層3との間に設けられる。中間層2は、金属基板1の第1主面1aに形成される。中間層2は、多層構成でもよく、例えば金属基板1側から酸化物超電導層3側に向かう順で、拡散防止層、ベッド層、配向層、キャップ層等を有してもよい。これらの層は必ずしも1層ずつ設けられるとは限らず、一部の層を省略する場合や、同種の層を2以上繰り返し積層する場合もある。なお、中間層2は、酸化物超電導線材10において必須な構成ではなく、金属基板1自体が配向性を備えている場合は中間層2が形成されていなくてもよい。
【0022】
拡散防止層は、金属基板1の成分の一部が拡散し、不純物として酸化物超電導層3側に混入することを抑制する機能を有する。拡散防止層は、例えば、Si3N4、Al2O3、GZO(Gd2Zr2O7)等から構成される。拡散防止層の厚さは、例えば10~400nmである。
【0023】
拡散防止層の上には、金属基板1と酸化物超電導層3との界面における反応を低減し、その上に形成される層の配向性を向上するためにベッド層を形成してもよい。ベッド層の材質としては、例えばY2O3、Er2O3、CeO2、Dy2O3、Eu2O3、Ho2O3、La2O3等が挙げられる。ベッド層の厚さは、例えば10~100nmである。
【0024】
配向層は、その上のキャップ層の結晶配向性を制御するために2軸配向する物質から形成される。配向層の材質としては、例えば、Gd2Zr2O7、MgO、ZrO2-Y2O3(YSZ)、SrTiO3、CeO2、Y2O3、Al2O3、Gd2O3、Zr2O3、Ho2O3、Nd2O3等の金属酸化物を例示することができる。配向層はIBAD(Ion-Beam-Assisted Deposition)法で形成することが好ましい。
【0025】
キャップ層は、上述の配向層の表面に成膜されて、結晶粒が面内方向に自己配向し得る材料からなる。キャップ層の材質としては、例えば、CeO2、Y2O3、Al2O3、Gd2O3、ZrO2、YSZ、Ho2O3、Nd2O3、LaMnO3等が挙げられる。キャップ層の厚さは、50~5000nmの範囲が挙げられる。
【0026】
酸化物超電導層3は、酸化物超電導体から構成される。酸化物超電導体としては、特に限定されないが、例えば一般式REBa2Cu3OX(RE123)で表されるRE-Ba-Cu-O系酸化物超電導体(REBCO系酸化物超電導体)が挙げられる。希土類元素REとしては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうちの1種又は2種以上が挙げられる。中でも、Y、Gd、Eu、Smの1種か、又はこれら元素の2種以上の組み合わせが好ましい。一般に、Xは、7-x(酸素欠損量x:約0~1程度)である。酸化物超電導層3の厚さは、例えば0.5~5μm程度である。この厚さは、長手方向に均一であることが好ましい。酸化物超電導層3は、中間層2の主面2a(金属基板1側とは反対の面)に形成されている。
【0027】
保護層4は、事故時に発生する過電流をバイパスしたり、酸化物超電導層3と保護層4の上に設けられる層との間で起こる化学反応を抑制する等の機能を有する。保護層4の材質としては、例えば銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、金と銀との合金、その他の銀合金、銅合金、金合金などが挙げられる。保護層4は、少なくとも酸化物超電導層3の主面3a(中間層2側とは反対の面)を覆っている。保護層4の厚さは、特に限定されないが、例えば1~30μm程度が挙げられる。
【0028】
5aは超電導積層体5の第1主面(保護層4の主面4a)である。第1主面5aは、超電導積層体5の、酸化物超電導層3が形成された側の面である。5bは超電導積層体5の側面(金属基板1の側面、中間層2の側面、酸化物超電導層3の側面、および保護層4の側面)である。5cは、第1主面5aとは反対の面であって、超電導積層体5の第2主面(金属基板1の第2主面1b)である。第2主面5cは、超電導積層体5の、金属基板1が形成された側の面である。
【0029】
安定化層6は、超電導積層体5の第1主面5a、側面5b,5bおよび第2主面5cを覆う。安定化層6は、超電導積層体5を囲んで形成されている。安定化層6は、酸化物超電導層3が常電導状態に転移した時に発生する過電流を転流させるバイパス部としての機能を有する。
安定化層6の構成材料としては、銅、銅合金(例えばCu-Zn合金、Cu-Ni合金等)、アルミニウム、アルミニウム合金、銀等の金属が挙げられる。安定化層6の厚さは、例えば10~300μm程度である。安定化層6は、めっき(例えば電解めっき)によって形成することができる。
【0030】
巻線部30(
図1参照)は、酸化物超電導線材10が、金属基板1を外周側に向け、酸化物超電導層3を内周側に向けた姿勢で巻回されていることが望ましい。
【0031】
図1に示すように、端末部20は、巻線部30の一方および他方の端末にそれぞれ設けられている。巻線部30の外周側の端末に設けられた端末部20を外周端末部20Aともいう。巻線部30の内周側の端末に設けられた端末部20を内周端末部20Bともいう。
外周端末部20Aは、2つの接続用テープ21(一対の接続用テープ21)と、スペーサ22とを備える。接続用テープ21は、例えば、酸化物超電導線材10と同じ構成の超電導線材である。
【0032】
外周端末部20Aの第1端部23(一方の端部)において、2つの接続用テープ21は、酸化物超電導線材10の外周端10aを含む端領域部10Aを挟み込む。2つの接続用テープ21は、端領域部10Aの一方および他方の面にそれぞれ接合され、端領域部10Aと電気的に接続されている。
【0033】
外周端末部20Aの第2端部24(他方の端部)において、2つの接続用テープ21は、シート状の被接続部25を挟み込む。被接続部25は、他の巻線部30に接続された接続体、または電極である。被接続部25は、金属などの導電体によって形成されている。2つの接続用テープ21は、被接続部25の一方および他方の面にそれぞれ接合され、被接続部25と電気的に接続されている。
【0034】
図3に示すように、2つの接続用テープ21のうち第1接続用テープ21Aは、酸化物超電導層3が設けられた側の面21Aaを、端領域部10Aの、酸化物超電導層3が設けられた側の面10Aaに向けた姿勢で、端領域部10Aおよび被接続部25に接合されている。
2つの接続用テープ21のうち第2接続用テープ21Bは、酸化物超電導層3が設けられた側の面21Baを、端領域部10Aの、金属基板1が設けられた側の面10Abに向けた姿勢で、端領域部10Aおよび被接続部25に接合されている。
接続用テープ21は、半田などの接合材26によって、端領域部10Aおよび被接続部25に接合されている。
【0035】
2つの接続用テープ21は、互いに同じ構成の超電導線材であることが好ましい。2つの接続用テープ21が互いに同じ構成であると、これらの機械的強度は同等となる。これにより、2つの接続用テープ21は、端領域部10Aおよび被接続部25に対する接合箇所において引張荷重を均等に分担できるため、応力集中を抑制できる。
【0036】
2つの接続用テープ21は、酸化物超電導線材10の端領域部10Aと、被接続部25とに接続されているため、酸化物超電導線材10の端領域部10Aと、被接続部25とを中継接続する。そのため、酸化物超電導線材10の端領域部10Aと、被接続部25とは電気的に接続される。
【0037】
図1に示すように、スペーサ22は、一端22aから他端22bに向けて厚さを減じる板状とされている。スペーサ22は、例えば、繊維強化樹脂(ガラス繊維強化樹脂、炭素繊維強化樹脂など)などの樹脂材料で形成される。
【0038】
スペーサ22は、被接続部25に近接して、2つの接続用テープ21の間に挿入されている。スペーサ22は、一端22aが被接続部25の一端に対向して位置する。そのため、スペーサ22は、被接続部25から離れるほど厚さを減じる。一端22aにおけるスペーサ22の厚さは、被接続部25の厚さ以下である。
スペーサ22は、2つの接続用テープ21の間にあるため、2つの接続用テープ21が互いに近づく方向の変位を規制する。そのため、被接続部25の一端において、接続用テープ21が屈曲変形するのを抑制できる。よって、接続用テープ21の損傷を回避できる。
【0039】
内周端末部20Bは、2つの接続用テープ21と、スペーサ22とを備える。
内周端末部20Bの第1端部33(一方の端部)において、2つの接続用テープ21は、酸化物超電導線材10の内周端10bを含む端領域部10Bを挟み込む。2つの接続用テープ21は、端領域部10Bの一方および他方の面にそれぞれ接合され、端領域部10Bと電気的に接続されている。
【0040】
内周端末部20Bの第2端部34(他方の端部)において、2つの接続用テープ21は、シート状の被接続部35を挟み込む。被接続部35は、他の巻線部30に接続された接続体、または電極である。被接続部35は、金属などの導電体によって形成されている。2つの接続用テープ21は、被接続部35の一方および他方の面にそれぞれ接合され、被接続部35と電気的に接続されている。
【0041】
図4に示すように、2つの接続用テープ21のうち第1接続用テープ21Aは、酸化物超電導層3が設けられた側の面21Aaを、端領域部10Bの、酸化物超電導層3が設けられた側の面10Baに向けた姿勢で、端領域部10Bおよび被接続部35に接合されている。
2つの接続用テープ21のうち第2接続用テープ21Bは、酸化物超電導層3が設けられた側の面21Baを、端領域部10Bの、金属基板1が設けられた側の面10Bbに向けた姿勢で、端領域部10Bおよび被接続部35に接合されている。
接続用テープ21は、半田などの接合材26によって、端領域部10Bおよび被接続部35に接合されている。
【0042】
2つの接続用テープ21は、酸化物超電導線材10の端領域部10Bと、被接続部35とに接続されているため、酸化物超電導線材10の端領域部10Bと、被接続部35とを中継接続する。そのため、酸化物超電導線材10の端領域部10Bと、被接続部35とは電気的に接続される。
【0043】
図1に示すように、スペーサ22は、被接続部35に近接して、2つの接続用テープ21の間に挿入されている。スペーサ22は、一端22aが被接続部35の一端に対向して位置する。そのため、スペーサ22は、被接続部35から離れるほど厚さを減じる。一端22aにおけるスペーサ22の厚さは、被接続部35の厚さ以下である。
【0044】
スペーサ22は、2つの接続用テープ21の間にあるため、2つの接続用テープ21が互いに近づく方向の変位を規制する。そのため、被接続部35の一端において、接続用テープ21が屈曲変形するのを抑制できる。よって、接続用テープ21の損傷を回避できる。
【0045】
被接続部25,35が他の巻線部30に接続された接続体である場合には、酸化物超電導線材10は、接続用テープ21および被接続部25,35を介して他の巻線部30(例えば、
図5において積層方向に隣接する巻線部30)と接続される。被接続部25,35が電極である場合には、酸化物超電導線材10は、この電極を介して通電可能となる。
【0046】
[実施形態の超電導コイルが奏する効果]
超電導コイル100に大きな電流を流すと、超電導コイル100に径方向外側への電磁力が加えられ、酸化物超電導線材10に引張力が作用することがある。
超電導コイル100は、2つの接続用テープ21を有する端末部20(20A,20B)を備える。2つの接続用テープ21は、端領域部10A,10Bと被接続部25,35とをそれぞれ挟み込んで両面に接合されるため、引張力が加えられた場合に、引張荷重を両面の接合箇所において負担できる。そのため、接合箇所における応力集中を緩和することができる。したがって、応力集中によって酸化物超電導線材10および接続用テープ21が損傷を受けるのを回避できる。よって、超電導特性の低下を抑えることができる。
【0047】
接続用テープ21は超電導線材であるため、端領域部10A,10Bと被接続部25,35との間の電気抵抗を小さくでき、端末部20における電気的な特性を高めることができる。
【0048】
図6は、端末部20の第1変形例である端末部20Cの断面図である。
図6に示すように、端末部20Cは、接続用テープ31が金属テープで形成されている点で、
図3に示す端末部20と異なる。接続用テープ31は、例えば、銅、銅合金(真鍮など)の金属で形成されている。
端末部20Cは、接続用テープ31が金属テープで形成されているため、機械的強度を高めることができる。
【0049】
図7は、端末部20の第2変形例である端末部120の断面図である。
図7に示すように、端末部120は、2つの接続用テープ121(121A,121B)を備える。2つの接続用テープ121のうち第1接続用テープ121Aは、
図7における端領域部10Aの上面(酸化物超電導層3が設けられた側の面10Aa)、および被接続部25の上面に接合されている。
2つの接続用テープ121のうち第2接続用テープ121Bは、
図7における端領域部10Aの下面(金属基板1が設けられた側の面10Ab)、および被接続部25の下面に接合されている。
【0050】
第2接続用テープ121Bは、第1接続用テープ121Aに比べて長い。そして、第2接続用テープ121Bと超電導線材10との接合長さは、第1接続用テープ121Aと超電導線材10との接合長さよりも長い。そのため、端領域部10Aに対する第2接続用テープ121Bの接合面積は、端領域部10Aに対する第1接続用テープ121Aの接合面積に比べて大きくなる。端領域部10Aの下面(金属基板1が設けられた側の面10Ab)に対する接合面積が大きくなるため、引張荷重が加わったときに端領域部10Aの上面(酸化物超電導層3が設けられた側の面10Aa)よりも下面(金属基板1が設けられた側の面10Ab)の側に応力が集中しやすい。そのため、酸化物超電導線材10の端領域部10Aの上面に近い側に形成された酸化物超電導層3の劣化を抑制することができる。
【0051】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、
図3に示す端末部20において、2つの接続用テープ21の間には、半田などの金属材料が充てんされていてもよい。これにより、端末部20の機械的強度を高めるとともに、端末部20における電気抵抗を小さくできる。2つの接続用テープ21の間には、樹脂などの非導電性料が充てんされていてもよい。これにより、端末部20の機械的強度を高めることができる。
【0052】
図1に示す端末部20は、巻線部30を構成する酸化物超電導線材10の一方および他方の端末にそれぞれ設けられているが、端末部は、巻線部を構成する超電導線材の一方の端末のみに設けられていてもよい。すなわち、端末部は、巻線部を構成する超電導線材の少なくとも1つの端末に設けられていればよい。
超電導積層体の構造は、
図2に示す構造に限定されない。超電導積層体は、保護層を備えていなくてもよい。超電導積層体には、金属基板、中間層、酸化物超電導層、および保護層以外の層が含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…金属基板、3…酸化物超電導層、5…超電導積層体、10…酸化物超電導線材(超電導線材)、10A,10B…端領域部、20,20C,120…端末部、20A…外周端末部、20B…内周端末部、25,35…被接続部、21,121…接続用テープ、22…スペーサ、30…巻線部、100…超電導コイル。