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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20250415BHJP
   B60N 2/28 20060101ALI20250415BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/28
B60N2/42
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021156136
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023047184
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2024-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 絢香
(72)【発明者】
【氏名】中曽根 恵美
(72)【発明者】
【氏名】上木 昌徳
【審査官】丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-019410(JP,A)
【文献】特開2013-208981(JP,A)
【文献】特開2018-172113(JP,A)
【文献】特開2017-165191(JP,A)
【文献】特開2017-226376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックのシート上方側でシート幅方向に延在するアッパフレームと、前記アッパフレームの左右両端部に連結され前記左右両端部からそれぞれシート下方側に延在する左右一対のサイドフレームと、シート幅方向に延在しその両端部が一対の前記サイドフレームの下端部とそれぞれ連結されたロアフレームと、から構成されるシートバックフレームと、
前記シートバックフレームの内側に配設され、チャイルドシートから延びるトップテザーベルトの先端の取付具が係止される第1テザーブラケットと、
を備え、前記第1テザーブラケットは、
前記取付具が係止される第1取付部と、
前記第1取付部からシート下方側に延在し、その下端が前記ロアフレームに連結された第1基部と、
前記第1取付部からシート幅方向左側に延在し、その左端が左側の前記サイドフレームに連結された第1連結部と、
前記第1取付部からシート幅方向右側に延在し、その右端が右側の前記サイドフレームに連結された第2連結部と、
を有し、
前記第1基部は、前記第1取付部から真下に延在する車両用シート。
【請求項2】
前記第1テザーブラケットは、前記第1取付部に固定される第1係止部を有し、
前記第1係止部は、前記第1連結部及び前記第2連結部の上下幅内に収まるように設けられている、請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
シートバックのシート上方側でシート幅方向に延在するアッパフレームと、前記アッパフレームの左右両端部に連結され前記左右両端部からそれぞれシート下方側に延在する左右一対のサイドフレームと、シート幅方向に延在しその両端部が一対の前記サイドフレームの下端部とそれぞれ連結されたロアフレームと、から構成されるシートバックフレームと、
シート上下方向に延在し、前記アッパフレームの中間位置と前記ロアフレームの中間位置とを連結するリインフォースメントと、
前記シートバックフレームの内側で前記リインフォースメントよりも左側又は右側に配設され、チャイルドシートから延びるトップテザーベルトの先端の取付具が係止される第2テザーブラケットと、
を備え、前記第2テザーブラケットは、
前記取付具が係止される第2取付部と、
前記第2取付部からシート下方側に延在し、その下端が前記ロアフレームに連結された第2基部と、
前記第2取付部からシート幅方向左側に延在し、その左端が左側の前記サイドフレーム又は前記リインフォースメントに連結された第3連結部と、
前記第2取付部からシート幅方向右側に延在し、その右端が前記リインフォースメント又は右側の前記サイドフレームに連結された第4連結部と、
を有し、
前記第2基部は、前記第2取付部から真下に延在する車両用シート。
【請求項4】
前記第2テザーブラケットは、前記第2取付部に固定される第2係止部を有し、
前記第2係止部は、前記第3連結部及び前記第4連結部の上下幅内に収まるように設けられている、請求項3記載の車両用シート。
【請求項5】
前記シートバックフレームの内側で前記リインフォースメントを挟んで前記第2テザーブラケットと反対側に配設され、チャイルドシートから延びるトップテザーベルトの先端の取付具が係止される第3テザーブラケットをさらに備え、
前記第3テザーブラケットは、
前記取付具が係止される第3取付部と、
前記第3取付部からシート下方側に延在し、その下端が前記ロアフレームに連結された第3基部と、
前記第3取付部からシート幅方向左側に延在し、その左端が前記リインフォースメント又は左側の前記サイドフレームに連結された第5連結部と、
前記第3取付部からシート幅方向右側に延在し、その右端が右側の前記サイドフレーム又は前記リインフォースメントに連結された第6連結部と、
を有する請求項記載の車両用シート。
【請求項6】
少なくとも一つの前記連結部は、前記サイドフレームと溶接ビードを介して連結されており、前記溶接ビードは前記連結部の幅方向の全領域に亘って形成されている請求項1記載の車両用シート。
【請求項7】
全ての前記連結部は、前記サイドフレームと前記溶接ビードを介して連結されており、前記溶接ビードは前記連結部の幅方向の全領域に亘って形成されている請求項記載の車両用シート。
【請求項8】
少なくとも一つの前記連結部は、前記サイドフレーム又は前記リインフォースメントと溶接ビードを介して連結されており、前記溶接ビードは前記連結部の幅方向の全領域に亘って形成されている請求項又は記載の車両用シート。
【請求項9】
全ての前記連結部は、前記サイドフレーム又は前記リインフォースメントと溶接ビードを介して連結されており、前記溶接ビードは前記連結部の幅方向の全領域に亘って形成されている請求項記載の車両用シート。
【請求項10】
少なくとも一つの前記連結部は、シート正面視で前記サイドフレームの稜線と重複している請求項1、のいずれか一項記載の車両用シート。
【請求項11】
少なくとも一つの前記連結部は、シート正面視で前記サイドフレーム又は前記リインフォースメントの稜線と重複している請求項のいずれか一項記載の車両用シート。
【請求項12】
請求項1記載の車両用シートと請求項記載の車両用シートを左右に並べて一つの車両用シートとした車両用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用シートにチャイルドシートを固定するISOFIX形式が普及している。ISOFIX形式は、チャイルドシートの下部から後方に延在するロック装置を車両用シートのシートバックに設けられたストライカに係止させることでチャイルドシートを車両用シートに固定する。
【0003】
したがって、車両の前突時にはチャイルドシートから車両用シートのシートバックフレーム及びシートバックパネルに荷重が作用する。この荷重によりシートバックフレーム及びシートバックパネルが座屈等を生じさせないように、様々な工夫がされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、略矩形状のメイン・パイプ・フレームの左右のボトムコーナーに、左右の補強フレーム・ブラケットを溶接することで、ストライカが溶接されるサブパックパネルの強度を向上させる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-168109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ISOFIX形式のチャイルドシートの中には、ストライカに対する取り付けに加えて、チャイルドシートの背面上部から伸びるトップテザーベルトを車両用シートのシートバックの上部から背面側に延ばし、シートバックの背面側に設けられたテザーブラケットにトップテザーベルトの先端に設けられた金具を係止させるものがある。
【0007】
このテザーブラケットは、略矩形状のシートバックフレームの下辺を構成するロアフレームに取り付けられている。
【0008】
したがって、車両の前突時にチャイルドシートからトップテザーベルト、テザーブラケットを介してシートバックフレームに対して上向きの荷重が作用する。
【0009】
この上向き荷重の入力に対して、シートバックフレームの強度を向上させる点で改善の余地がある。
【0010】
本発明は、上記事実を考慮し、車両の前突時や急停車時にチャイルドシートから上向きの荷重がテザーブラケットに作用する場合でも、十分な強度を有する車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、シートバックのシート上方側でシート幅方向に延在するアッパフレームと、前記アッパフレームの左右両端部に連結され前記左右両端部からそれぞれシート下方側に延在する左右一対のサイドフレームと、シート幅方向に延在しその両端部が一対の前記サイドフレームの下端部とそれぞれ連結されたロアフレームと、から構成されるシートバックフレームと、前記シートバックフレームの内側に配
設され、チャイルドシートから延びるトップテザーベルトの先端の取付具が係止される第1テザーブラケットと、を備え、前記第1テザーブラケットは、前記取付具が係止される第1取付部と、前記第1取付部からシート下方側に延在し、その下端が前記ロアフレームに連結された第1基部と、前記第1取付部からシート幅方向左側に延在し、その左端が左側の前記サイドフレームに連結された第1連結部と、前記第1取付部からシート幅方向右側に延在し、その右端が右側の前記サイドフレームに連結された第2連結部と、を有し、前記第1基部は、前記第1取付部から真下に延在する。
また、請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、前記第1テザーブラケットは、前記第1取付部に固定される第1係止部を有し、前記第1係止部は、前記第1連結部及び前記第2連結部の上下幅内に収まるように設けられている。
【0012】
この車両用シートは、略矩形状のシートバックフレームの内側にチャイルドシートのトップテザーベルトの取付具が係止される第1テザーブラケットが配設されている。
【0013】
第1テザーブラケットは、トップテザーベルトの取付具が係止される第1取付部からシート下方に延在する基部によってロアフレームと連結され、第1取付部からシート幅方向左側に延在する第1連結部によって左側のサイドフレームと連結され、第1取付部からシート幅方向右側に延在する第2連結部によって右側のサイドフレームと連結されている。
【0014】
この車両用シートにチャイルドシートが固定され、その際、チャイルドシートのトップテザーベルトがシートバックの上部から背面に到り、第1テザーブラケットの第1取付部にトップテザーベルトの先端に設けられた取付具が係止されている。
【0015】
この状態で、車両が前突した場合や急停車した場合、チャイルドシートからトップテザーベルトを介して第1テザーブラケットにシート上方への荷重が作用する。
【0016】
ところで、シートバックには、第1テザーブラケットの第1取付部から基部、ロアフレーム、左側のサイドフレーム、第1テザーブラケットの第1連結部を介して第1取付部に戻ってくる略矩形状の枠体が構成されている。
【0017】
また、シートバックには、第1テザーブラケットの第1取付部から基部、ロアフレーム、右側のサイドフレーム、第1テザーブラケットの第2連結部を介して第1取付部に戻ってくる略矩形状の枠体が構成されている。
【0018】
このように、第1テザーブラケットの第1取付部に作用する上向きの荷重を略矩形状のシートバックフレームと、シートバックフレームの一部と第1テザーブラケットの一部によって形成される左右一対の略矩形状の枠体、すなわち、略矩形状の3つ枠体で上記荷重を受けるため、第1テザーブラケット及びシートバックフレームの変形等が防止又は抑制される。
【0019】
換言すれば、第1テザーブラケットの第1取付部に入力される上向き荷重を、第1テザーブラケットの基部からロアフレーム、第1連結部から左側のサイドフレーム、第2連結部から右側のサイドフレームに分散して伝達するため、第1テザーブラケット及びシートバックフレームの変形等が防止又は抑制される。
【0020】
請求項記載の車両用シートは、シートバックのシート上方側でシート幅方向に延在するアッパフレームと、前記アッパフレームの左右両端部に連結され前記左右両端部からそれぞれシート下方側に延在する左右一対のサイドフレームと、シート幅方向に延在しその両端部が一対の前記サイドフレームの下端部とそれぞれ連結されたロアフレームと、から構成されるシートバックフレームと、シート上下方向に延在し、前記アッパフレームの中間位置と前記ロアフレームの中間位置とを連結するリインフォースメントと、前記シートバックフレームの内側で前記リインフォースメントよりも左側又は右側に配設され、チャイルドシートから延びるトップテザーベルトの先端の取付具が係止される第2テザーブラ
ケットと、を備え、前記第2テザーブラケットは、前記取付具が係止される第2取付部と、前記第2取付部からシート下方側に延在し、その下端が前記ロアフレームに連結された第2基部と、前記第2取付部からシート幅方向左側に延在し、その左端が左側の前記サイドフレーム又は前記リインフォースメントに連結されたる第3連結部と、前記第2取付部からシート幅方向右側に延在し、その右端が前記リインフォースメント又は右側の前記サイドフレームに連結された第4連結部と、を有する。
また、請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、前記第2テザーブラケットは、前記第2取付部に固定される第2係止部を有し、前記第2係止部は、前記第3連結部及び前記第4連結部の上下幅内に収まるように設けられている。
【0021】
この車両用シートでは、シートバックフレームのアッパフレームの中間位置とロアフレームの中間位置を連結し、シート上下方向に延在するリインフォースメントを有する。
【0022】
また、この車両用シートは、略矩形状のシートバックフレームの内側でリインフォースメントの左側又は右側に、チャイルドシートのトップテザーベルトの取付具が係止される第2テザーブラケットが配設されている。
【0023】
第2テザーブラケットは、この取付具が係止される第2取付部からシート下方に延在する基部によってロアフレームと連結され、第2取付部からシート幅方向左側に延在する第3連結部によって左側のサイドフレーム又はリインフォースメントと連結され、第2取付部からシート幅方向右側に延在する第4連結部によってリインフォースメント又は右側のサイドフレームと連結されている。
【0024】
この車両用シートにチャイルドシートが固定され、その際、チャイルドシートのトップテザーベルトがシートバックの上部から背面に到り、第2テザーブラケットの第2取付部にトップテザーベルト先端に設けられた取付具が係止されている。
【0025】
この状態で、車両が前突した場合や急停車した場合、チャイルドシートからトップテザーベルトを介して第2テザーブラケットにシート上方への荷重が作用する。
【0026】
ところで、シートバックには、第2テザーブラケットの第2取付部から第2基部、ロアフレーム、左側のサイドフレーム又はリインフォースメント、第2テザーブラケットの第3連結部を介して第2取付部に戻ってくる略矩形状の枠体が構成されている。
【0027】
また、シートバックには、第2テザーブラケットの第2取付部から第2基部、ロアフレーム、リインフォースメント又は右側のサイドフレーム、第2テザーブラケットの第4連結部を介して第2取付部に戻ってくる略矩形状の枠体が構成されている。
【0028】
さらに、シートバックには、シートバックフレームの一部(アッパフレームの一部、左側又は右側のサイドフレーム、ロアフレーム一部)及びリインフォースメントからなる矩形状の枠体が形成されている。
【0029】
このように、第2テザーブラケットの第2取付部に作用する上向きの荷重を略矩形状のシートバックフレームの一部とリインフォースメントで形成さる枠体と、シートバックフレームの一部と第2テザーブラケットの一部によって形成される左右一対の略矩形状の枠体、すなわち、略矩形状の3つ枠体で上記荷重を受けるため、第2テザーブラケット及びシートバックフレームの変形等が防止又は抑制される。
【0030】
換言すれば、第2テザーブラケットの第2取付部に入力される上向き荷重を第2テザーブラケットの第2基部からロアフレーム、第3連結部から左側のサイドフレーム又はリインフォースメント、第4連結部からリインフォースメント又は右側のサイドフレームに分散して伝達するため、第2テザーブラケット及びシートバックフレームの変形等が防止又は抑制される。
【0031】
請求項記載の車両用シートは、請求項記載の車両用シートにおいて、前記シートバックフレームの内側で前記リインフォースメントを挟んで前記第2テザーブラケットと反対側に配設され、チャイルドシートから延びるトップテザーベルトの先端の取付具が係止される第3テザーブラケットをさらに備え、前記第3テザーブラケットは、前記取付具が係止される第3取付部と、前記第3取付部からシート下方側に延在し、その下端が前記ロアフレームに連結された第3基部と、前記第3取付部からシート幅方向左側に延在し、その左端が前記リインフォースメント又は左側の前記サイドフレームに連結された第5連結部と、前記第3取付部からシート幅方向右側に延在し、その右端が右側の前記サイドフレーム又は前記リインフォースメントに連結された第6連結部と、を有する。
【0032】
この車両用シートは、シートバックフレームのアッパフレームの中間位置とロアフレームの中間位置を連結し、シート上下方向に延在するリインフォースメントを有する。
【0033】
また、この車両用シートでは、略矩形状のシートバックフレームの内側でリインフォースメントを挟んで第2テザーブラケットの反対側に、チャイルドシートのトップテザーベルトの取付具が係止される第3テザーブラケットが配設されている。
【0034】
第3テザーブラケットは、この取付具が係止される第3取付部からシート下方に延在する基部によってロアフレームと連結され、第3取付部からシート幅方向左側に延在する第5連結部によってリインフォースメント又は左側のサイドフレームと連結され、第3取付部からシート幅方向右側に延在する第6連結部によって右側のサイドフレーム又はリインフォースメントと連結されている。
【0035】
この車両用シートにチャイルドシートが固定され、その際、チャイルドシートのトップテザーベルトがシートバックの上部から背面に到り、第3テザーブラケットの第3取付部にトップテザーベルトの先端に設けられた取付具が係止されている。
【0036】
この状態で、車両が前突した場合や急停車した場合、チャイルドシートからトップテザーベルトを介して第3テザーブラケットにシート上方への荷重が作用する。
【0037】
ところで、シートバックには、第3テザーブラケットの第3取付部から第3基部、ロアフレーム、リインフォースメント又は左側のサイドフレーム、第3テザーブラケットの第5連結部を介して第3取付部に戻ってくる略矩形状の枠体が構成されている。
【0038】
また、シートバックには、第3テザーブラケットの第3取付部から第3基部、ロアフレーム、右側のサイドフレーム又はリインフォースメント、第3テザーブラケットの第6連結部を介して第3取付部に戻ってくる略矩形状の枠体が構成されている。
【0039】
さらに、シートバックフレームには、シートバックフレームの一部(アッパフレームの一部、右側又は左側のサイドフレーム、ロアフレーム一部)及びリインフォースメントからなる矩形状の枠体が形成されている。
【0040】
このように、第3テザーブラケットの第3取付部に作用する上向きの荷重を略矩形状のシートバックフレームの一部とリインフォースメントで形成さる枠体と、シートバックフレームの一部と第3テザーブラケットの一部によって形成される左右一対の略矩形状の枠体、すなわち、略矩形状の3つ枠体で上記荷重を受けるため、第3テザーブラケット及びシートバックフレームの変形等が防止又は抑制される。
【0041】
換言すれば、第3テザーブラケットの第3取付部に入力される上向き荷重を第3テザーブラケットの第3基部からロアフレーム、第5連結部からリインフォースメント又は左側のサイドフレーム、第6連結部から右側のサイドフレーム又はリインフォースメントに分散して伝達するため、第3テザーブラケット及びシートバックフレームの変形等が防止又は抑制される。
【0042】
請求項記載の車両用シートは、請求項1記載の車両用シートにおいて、少なくとも一つの前記連結部は、前記サイドフレームと溶接ビードを介して連結されており、前記溶接ビードは前記連結部の幅方向の全領域に亘って形成されている。
【0043】
この車両用シートは、少なくとも一つの連結部とサイドフレームが連結部の幅方向の全領域に亘って形成された溶接ビードで溶接されている。したがって、車両の前突時や急停車時にテザーブラケットの連結部からサイドフレームに荷重伝達が効率的に行われ、テザーブラケットやシートバックフレームの変形が一層防止又は抑制される。
【0044】
請求項記載の車両用シートは、請求項記載の車両用シートにおいて、全ての前記連結部は、前記サイドフレームと溶接ビードを介して連結されており、前記溶接ビードは前記連結部の幅方向の全領域に亘って形成されている。
【0045】
この車両用シートは、全ての連結部とサイドフレームが連結部の幅方向の全領域に亘って形成された溶接ビードで溶接されている。したがって、車両の前突時や急停車時にテザーブラケットの連結部からサイドフレームに荷重伝達が効率的に行われ、テザーブラケットやシートバックフレームの変形が一層防止又は抑制される。
【0046】
なお、ここで「全ての連結部」とは、第1連結部と第2連結部を意味する。
【0047】
請求項記載の車両用シートは、請求項又は記載の車両用シートにおいて、少なくとも一つの前記連結部は、前記サイドフレーム又は前記リインフォースメントと溶接ビードを介して連結されており、前記溶接ビードは前記連結部の幅方向の全領域に亘って形成されている。
【0048】
この車両用シートは、少なくとも一つの連結部とサイドフレーム又はリインフォースメントが連結部の幅方向の全領域に亘って形成された溶接ビードで溶接されている。したがって、車両の前突時や急停車時にテザーブラケットの連結部からサイドフレーム又はリインフォースメントに荷重伝達が効率的に行われ、テザーブラケットやシートバックフレームの変形が一層防止又は抑制される。
【0049】
請求項記載の車両用シートは、請求項記載の車両用シートにおいて、全ての前記連結部は、前記サイドフレーム又は前記リインフォースメントと溶接ビードを介して連結されており、前記溶接ビードは前記連結部の幅方向の全領域に亘って形成されている。
【0050】
この車両用シートは、全ての連結部とサイドフレーム又はリインフォースメントが連結部の幅方向の全領域に亘って形成された溶接ビードで溶接されている。したがって、車両の前突時や急停車時にテザーブラケットの連結部からサイドフレーム又はリインフォースメントに荷重伝達が効率的に行われ、テザーブラケットやシートバックフレームの変形が一層防止又は抑制される。
【0051】
なお、ここで「全ての連結部」とは、請求項2記載の車両用シートでは第3連結部と第4連結部、請求項3記載の車両用シートでは第3連結部~第6連結部を意味する。
【0052】
請求項10記載の車両用シートは、請求項1、のいずれか一項記載の車両用シートにおいて、少なくとも一つの前記連結部は、シート正面視で前記サイドフレームの稜線と重複している。
【0053】
この車両用シートは、シート正面視において、少なくとも一つの連結部とサイドフレームが重複している。したがって、車両の前突時や急停車時にテザーブラケットの連結部からサイドフレームに伝達された荷重は、サイドフレームの稜線を介してアッパフレームやロアフレームに効率的に伝達され、テザーブラケットやシートバックフレームの変形が一層防止又は抑制される。
【0054】
請求項11記載の車両用シートは、請求項のいずれか一項記載の車両用シートにおいて、少なくとも一つの前記連結部は、シート正面視で前記サイドフレーム又は前記リインフォースメントの稜線と重複している。
【0055】
この車両用シートは、シート正面視において、少なくとも一つの連結部とサイドフレーム又はリインフォースメントが重複している。したがって、車両の前突時や急停車時にテザーブラケットの連結部からサイドフレーム又はリインフォースメントに伝達された荷重は、サイドフレーム又はリインフォースメントの稜線を介してアッパフレームやロアフレームに効率的に伝達され、テザーブラケットやシートバックフレームの変形が一層防止又は抑制される。
【0056】
請求項12記載の車両用シートは、請求項1記載の車両用シートと請求項記載の車両用シートを左右に並べて一つの車両用シートとしている。
【0057】
この車両用シートは、三座席分のシートを有し、各シートにチャイルドシートのトップテザーベルトの取付具が係止可能なテザーブラケットが備えられている。したがって、車両用シートの三位置(三シート)のいずれの位置にもチャイルドシートを固定可能であると共に車両の前突時や急停車時にいずれのテザーブラケットとシートバックフレーム(リインフォースメントも含む)の変形を防止又は抑制することができる。
【発明の効果】
【0058】
以上説明したように、車両用シートでは、車両の前突時や急停車時にチャイルドシートから上向きの荷重が作用する場合でもテザーブラケットやシートバックフレームが十分な強度を有し、テザーブラケットやシートバックフレームの変形を防止又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】一実施形態に係る車両用シートのシートバックの概略構成を示す正面図である。
図2】一実施形態に係る車両用シートにチャイルドシートが設置された状態を模式的に示す側面図である。
図3】一実施形態に係る左側シートバックの正面図である。
図4】一実施形態に係る左側シートバックの一部を背面側から視た図である。
図5】一実施形態に係るシートバックの作用説明図である。
図6】比較例に係る車両用シートのシートバックの概略構成を示す正面図である。
図7】比較例に係る左側シートバックの正面図である。
図8】比較例に係るシートバックの作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態に係る車両用シートとしてのリヤシート10について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FR、矢印RH、矢印UPは、リヤシート10の前方向、右方向、上方向をそれぞれ示している。また、本実施形態では、リヤシート10の前後左右上下の方向は、当該リヤシート10が搭載された車両(自動車)の前後左右上下の方向と一致している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、シート前後方向の前後、シート左右方向(シート幅方向)の左右、シート上下方向の上下を示すものとする。さらに、各図において黒塗り部分は、溶接部(溶接ビード)を示す。
【0061】
<車両用シートの構成>
【0062】
まず、本実施の形態に係る車両用シートが適用されたリヤシートの構成について説明する。
【0063】
図1には、リヤシート10のシートバックの骨格を示すシートバックフレームの正面図が示されている。図1に示すように、本実施形態では、例えば、当該リヤシート10は、2列目又は3列目のシートとされており、3人掛けのシートとされている。また、リヤシート10は、左側に設けられた左側リヤシート12と、右側に設けられた右側リヤシート14と、に大別されている。
【0064】
なお、リヤシート10が「車両用シート」に相当する。
【0065】
左側リヤシート12は、図2に示すように、着座乗員の大腿部及び腰部を支持する左側シートクッション16と、左側シートクッション16の後端側に設けられ着座乗員の上体を支持する左側シートバック18と、を備えている。また、右側リヤシート14も左側リヤシート12と同様に、着座乗員の大腿部及び腰部を支持する右側シートクッション20と、右側シートクッション20の後端側に設けられ着座乗員の上体を支持する右側シートバック22と、を備えている。
【0066】
当該左側シートバック18及び右側シートバック22は、図1に示すように、シート左右方向(車両幅方向)に隣接して設けられており、シート幅方向に沿った軸線回りに互いに独立して回動可能とされている。なお、本実施形態では、左側シートバック18と右側シートバック22との車両幅方向の寸法比が、例えば、40:60に設定されている。
【0067】
左側シートバック18の上端部には、左側ヘッドレスト24が昇降可能に連結される。また、右側シートバック22の右側上端部には、右側ヘッドレスト26が昇降可能に連結され、右側シートバック22の左側上端部には、右側ヘッドレスト26と左側ヘッドレスト24の間に配置されるセンターヘッドレスト28が昇降可能に連結される。
【0068】
(左側シートバック)
【0069】
次に、左側シートバック18の構成について説明を行う。
【0070】
左側シートバック18は、図1に示すように、当該左側シートバック18の外縁部を構成し略矩形状の枠体を成す左側シートバックフレーム30Aと、左側シートバックフレーム30Aの背面に取り付けられた板状の左側シートバックパネル32Aと、左側シートバックフレーム30Aに取り付けられたテザーブラケット34Aと、を備えている。
【0071】
なお、テザーブラケット34Aが「第1テザーブラケット」に相当する。
【0072】
左側シートバックパネル32Aは、例えば、板金がプレス成形されて形成されたものであり、溶接等の手段によって左側シートバックフレーム30Aの背面に取り付けられている。
【0073】
(シートバックフレーム)
【0074】
本実施形態では、当該左側シートバックフレーム30Aは、アッパフレーム(上側骨格部材)40Aと、ロアフレーム(下側骨格部材)42Aと、車両外側サイドフレーム(外側骨格部材)44Aと、車両内側サイドフレーム(ヒンジ用骨格部材)46Aと、を含んで構成されている。
【0075】
なお、車両外側サイドフレーム44Aが「左側のサイドフレーム」に相当し、車両内側サイドフレーム46Aが「右側のサイドフレーム」に相当する。
【0076】
アッパフレーム40Aは、左側シートバックフレーム30Aの上端部において、シート幅方向に沿って設けられており、着座乗員の頭部を支持する左側ヘッドレスト24を保持する一対の保持部材48Aが取り付けられている。
【0077】
ロアフレーム42Aは、左側シートバックフレーム30Aの下端部において、シート幅方向に沿って設けられており、左側シートクッション16に対して左側シートバック18を回動させるリクライニング用のヒンジ部50Aが取り付けられている。
【0078】
車両外側サイドフレーム44Aは、左側シートバックフレーム30Aにおける車両幅方向の外側において、シート高さ方向に沿って設けられており、車体側に固定させるための図示しないロック用のブラケットが上端側に取り付けられている。
【0079】
車両内側サイドフレーム46Aは、左側シートバックフレーム30Aにおける車両幅方向の内側において、シート高さ方向に沿って設けられており、左側シートバック18を可倒させるセンタヒンジ部52Aが取り付けられている。
【0080】
本実施形態では、アッパフレーム40A、ロアフレーム42A、車両外側サイドフレーム44A、及び車両内側サイドフレーム46Aには、それぞれ鉄やアルミニウム等の金属材料で形成され中空構造(断面四角形)とされたパイプが用いられている。
【0081】
また、アッパフレーム40A、ロアフレーム42A、車両外側サイドフレーム44A、及び車両内側サイドフレーム46Aがその端部を溶接することで一体化されている。
【0082】
(テザーブラケット)
【0083】
テザーブラケット34Aは、図1及び図3に示すように、左側シートバックフレーム30Aの内側に配設されるものである。テザーブラケット34Aは、金属プレートから一体的に形成されるものであり、取付部60Aと、取付部60Aからシート下方に延在する基部62Aと、取付部60Aから左側に延在する左側アーム部64Aと、取付部60Aから右側に延在する右側アーム部66Aと、を有する。
【0084】
なお、取付部60Aが「第1取付部」、基部62Aが「第1基部」、左側アーム部64Aが「第1連結部」、右側アーム部66Aが「第2連結部」にそれぞれ相当する。
【0085】
取付部60Aは、図3に示すように、シート幅方向に延在するアッパ部70A、ロア部72A、シート上下方向に延在する左サイド部74A、右サイド部76Aを有する略矩形の枠形状とされており、中央部に矩形の孔部78Aが形成されている。
【0086】
また、取付部60Aには、その左サイド部74Aのシート前方側と右サイド部76Aのシート前方側に、U字形状の係止部80Aの両端部が溶接されている。したがって、係止部80Aにおいてシート幅方向に延在する横バー部82Aが取付部60Aの孔部78A上に位置することになる。
【0087】
基部62Aは、図3に示すように、取付部60Aのロア部72Aからシート下方に延在するものであり、その下端がロアフレーム42Aと左側シートバックパネル32Aの間に挿入され、ロアフレーム42Aのシート後方側に溶接されている(図4参照)。すなわち、基部62Aの下端は、図4に示すように、アーク溶接によって形成された溶接部(溶接ビード)63Aによって、ロアフレーム42Aに溶接されている。また、その溶接部(溶接ビード)63Aは、基部62Aの幅方向(シート幅方向)の全領域に亘って形成されている。
【0088】
左側アーム部64Aは、図3に示すように、取付部60Aの左サイド部74Aの下側からシート幅方向左側に延在し、その左端が車両外側サイドフレーム44Aのシート前方側に溶接されている。すなわち、左側アーム部64Aの左端は、図3に示すように、アーク溶接によって形成された溶接部(溶接ビード)65Aによって、車両外側サイドフレーム44Aに溶接されている。また、その溶接部(溶接ビード)65Aは、左側アーム部64Aの幅方向(シート上下方向)の全領域に亘って形成されている。
【0089】
このように、左側アーム部64Aが車両外側サイドフレーム44Aに溶接されることにより、シート正面視において、断面四角形の中空構造である車両外側サイドフレーム44Aの稜線45Aと左側アーム部64Aが重複することになる。
【0090】
右側アーム部66Aは、図3に示すように、取付部60Aの右サイド部76Aの下側からシート幅方向右側に延在し、その右端が車両内側サイドフレーム46Aのシート前方側に溶接されている。すなわち、右側アーム部66Aの右端は、図3に示すように、アーク溶接によって形成された溶接部(溶接ビード)67Aによって、車両内側サイドフレーム46Aに溶接されている。また、その溶接部(溶接ビード)67Aは、右側アーム部66Aの幅方向(シート上下方向)の全領域に亘って形成されている。
【0091】
このように、右側アーム部66Aが車両内側サイドフレーム46Aに溶接されることにより、シート正面視において、断面四角形の中空構造である車両内側サイドフレーム46Aの稜線47Aと右側アーム部66Aが重複することになる。
【0092】
また、図4に示すように、左側シートバックパネル32Aには、取付部60Aの孔部78Aに対応する孔部90Aが形成されている。したがって、係止部80Aの横バー部82Aは、取付部60Aの孔部78A、左側シートバックパネル32Aの孔部90Aを介してシートバックの後方に露出されている。
【0093】
このように構成されるテザーブラケット34Aに対して、図2に示すように、左側リヤシート12に配置されたチャイルドシート84のトップテザーベルト86の先端に取り付けられたトップテザーアンカー88が、左側シートバック18に設けられた取付部60Aに設けられた係止部80A(横バー部82A)に係止される構成である。
【0094】
なお、トップテザーアンカー88が「取付具」に相当する。
【0095】
(右側シートバック)
【0096】
右側シートバック22も左側シートバック18と略同様であるため、同一の構成要素には同一の参照番号にB又はCを付し、その詳細な説明を省略する。左側シートバック18と異なる構成要素について簡単に説明する。
【0097】
右側シートバック22の右側シートバックフレーム30Bは、アッパフレーム40Bの中間部とロアフレーム42Bの中間部を連結するリインフォースメント92をさらに有する。リインフォースメント92は、その上端部がアッパフレーム40Bのシート前方側に溶接されており、その下端部がロアフレーム42Bのシート前方側に溶接されている。
【0098】
すなわち、右側シートバックフレーム30Bにおいて、車両外側サイドフレーム44Bと車両内側サイドフレーム46Bの間にリインフォースメント92が配設されている。なお、リインフォースメント92は、鉄やアルミニウム等の金属材料で形成され中空構造(断面四角形)とされたパイプが用いられている。
【0099】
また、車両外側サイドフレーム44Bとリインフォースメント92との間には、左側テザーブラケット34Bが配設されている。一方、車両内側サイドフレーム46Bとリインフォースメント92との間には、右側テザーブラケット34Cが配設されている。
【0100】
なお、車両外側サイドフレーム44Bが「右側のサイドフレーム」に相当し、車両内側サイドフレーム46Bが「左側のサイドフレーム」に相当する。
【0101】
また、左側テザーブラケット34B、右側テザーブラケット34Cがそれぞれ「第2テザーブラケット」又は「第3テザーブラケット」に相当する。
【0102】
さらに、左側テザーブラケット34Bの取付部60Bが「第2取付部」又は「第3取付部」に、基部62Bが「第2基部」又は「第3基部」に、左側アーム部64Bが「第3連結部」又は「第5連結部」に、右側アーム部66Bが「第4連結部」又は「第6連結部」にそれぞれ相当する。
【0103】
一方、右側テザーブラケット34Cの取付部60Cが「第3取付部」又は「第2取付部」に、基部62Cが「第3基部」又は「第2基部」に、左側アーム部64Cが「第5連結部」又は「第3連結部」に、右側アーム部66Cが「第6連結部」又は「第4連結部」にそれぞれ相当する。
【0104】
左側テザーブラケット34Bは、テザーブラケット34Aと略同様の構成だが、右側アーム部66Bの端部がリインフォースメント92に溶接されている点が異なる。
【0105】
右側テザーブラケット34Cは、テザーブラケット34Aと略同様の構成だが、左側アーム部64Cの端部がリインフォースメント92に溶接されている点が異なる。
【0106】
<比較例の説明>
【0107】
次に、本実施形態に係るリヤシート10の作用について説明するための比較例に係るリヤシート110について説明する。なお、リヤシート10と同一の構成要素には、同一の参照符号に100を足した参照符号を付してその詳細な説明を省略する。リヤシート110がリヤシート10と異なるのは、テザーブラケットの構成のみなので、その部分についてのみ説明する。
【0108】
左側リヤシート112の左側シートバック118のテザーブラケット134Aは、図6及び図7に示すように、取付部160Aからシート下方に延在する基部162Aのみを有する。換言すると、テザーブラケット134Aは、基部162Aを介してのみ左側シートバックフレーム130A(ロアフレーム142A)に連結されている。
【0109】
同様に、図6に示すように、右側リヤシート114の右側シートバック122の左側テザーブラケット134B、右側テザーブラケット134Cも、それぞれ取付部160B、160Bが基部162B、162Cを介してのみロアフレーム142Bに連結されている。
【0110】
<車両用シートの作用及び効果>
【0111】
次に、本実施の形態に係る車両用シートが適用されたリヤシート10の作用及び効果について説明する。
【0112】
(前提)
【0113】
リヤシート10の左側リヤシート12にチャイルドシート84が取り付けられた場合について説明する。この場合、チャイルドシート84は、図2に示すように、左側シートバック18に設けられたストライカにロック装置が装着される(図示せず)と共に、トップテザーベルト86を左側シートバック18の後背面側に延ばし、左側シートバックパネル32Aの孔部90A、テザーブラケット34Aの孔部78Aを通して取付部60Aに配設された横バー部82Aにトップテザーベルト86の先端に設けられたトップテザーアンカー88が装着(係止)されている。
【0114】
この状態で車両が急停車した場合や前突した場合には、チャイルドシート84から左側シートバック18に大きな慣性荷重が入力される。この慣性荷重の一部は、トップテザーベルト86を介してテザーブラケット34Aに上向きの荷重として入力される(図5、矢印F参照)
【0115】
(比較例の場合)
【0116】
比較例のリヤシート110では、図8に示すように、チャイルドシート84の慣性荷重の一部がトップテザーベルト86を介して上向きの荷重Fとして左側シートバック118のテザーブラケット134Aに作用する。
【0117】
この荷重Fは、テザーブラケット134Aの取付部160Aから基部162Aを介してロアフレーム142Aに作用する。
【0118】
ここで、左側シートバックフレーム130Aは、略矩形状の枠体(図8、破線部δ1参照)が形成されているだけであり、テザーブラケット134Aに上向きの荷重が入力されるとテザーブラケット134Aと左側シートバックフレーム130A(ロアフレーム142A)との溶接部が破壊されるおそれや、テザーブラケット134Aや左側シートバックフレーム130Aが変形するおそれがあった。
【0119】
同様に、右側シートバックフレーム130Bにおいては、左側テザーブラケット134Bに対してアッパフレーム140B、リインフォースメント192、ロアフレーム142B、車両外側サイドフレーム144Bから略矩形状の枠体(図8、破線部δ2)が形成されると共に、右側テザーブラケット134Cに対してアッパフレーム140B、リインフォースメント192、ロアフレーム142B、車両内側サイドフレーム146Bから略矩形状の枠体(図8、破線部δ3)が形成されている。
【0120】
しかしながら、左側シートバックフレーム130Aと同様に、車両の前突や急停車時にチャイルドシート84から左側テザーブラケット134B又は右側テザーブラケット134Cに上向き荷重が入力されると、左側テザーブラケット134B、右側テザーブラケット134Cや右側シートバックフレーム130B(リインフォースメント192を含む)が変形するおそれがあった。
【0121】
(本実施形態の場合)
【0122】
本実施形態の左側リヤシート12(左側シートバック18)では、テザーブラケット34Aの取付部60Aは、基部62Aを介してロアフレーム42Aと連結(溶接)されていると共に、左側アーム部64Aを介して車両外側サイドフレーム44Aと、右側アーム部66Aを介して車両内側サイドフレーム46Aと、それぞれ連結(溶接)されている。
【0123】
したがって、図5に示すように、左側シートバック18には、略矩形状の枠体である左側シートバックフレーム30A(図5、破線部α1参照)の内側に、テザーブラケット34Aの基部62A、取付部60A、左側アーム部64Aと車両外側サイドフレーム44A、ロアフレーム42Aからなる略矩形状の枠体(図5、一点鎖線部β1参照)と、テザーブラケット34Aの基部62A、取付部60A、右側アーム部66Aと車両内側サイドフレーム46A、ロアフレーム42Aからなる略矩形状の枠体(図5、一点鎖線部γ1参照)と、が形成されている。
【0124】
すなわち、車両の急停車時や前突時にチャイルドシート84からトップテザーベルト86を介してテザーブラケット34Aに上向きの荷重Fが作用しても、取付部60Aに作用した荷重を三つの矩形状の枠体(図5、破線部α1、一点鎖線部β1、γ1参照)で受けるため、左側シートバックフレーム30Aやテザーブラケット34Aの変形等を防止又は抑制することができる。
【0125】
換言すれば、テザーブラケット34Aの取付部60Aに作用する上向きの荷重Fを、テザーブラケット34Aの基部62Aからロアフレーム42Aに、左側アーム部64Aから車両外側サイドフレーム44Aに、右側アーム部66Aから車両内側サイドフレーム46Aに分散して伝達している。すなわち、トップテザーベルト86から取付部60Aに作用した荷重Fは、三つの荷重伝達経路を介して左側シートバックフレーム30Aに伝達されるため、左側シートバックフレーム30A及びテザーブラケット34Aの変形を防止又は抑制することができる。
【0126】
特に、左側シートバックフレーム30Aの強度を向上させるだけならば、チューブ形状である各フレームを太くすることによっても達成されるが、金属プレートから形成されている左側テザーブラケット34Bに左側アーム部64Aと右側アーム部66Aを追加して溶接するだけで良いので、強度向上(変形抑制)を図りつつ質量増加を抑制することができる。
【0127】
また、基部62Aとロアフレーム42Aとが、基部62Aの幅方向の全領域に亘って形成された溶接部(溶接ビード)63Aで溶接されている。左側アーム部64Aと車両外側サイドフレーム44Aとが、左側アーム部64Aの幅方向の全領域に亘って形成された溶接部(溶接ビード)65Aで溶接されている。同様に、右側アーム部66Aと車両内側サイドフレーム46Aとが、右側アーム部66Aの幅方向の全領域に亘って形成された溶接部(溶接ビード)67Aで溶接されている。したがって、基部62Aからロアフレーム42A、左側アーム部64Aから車両外側サイドフレーム44A、右側アーム部66Aから車両内側サイドフレーム46Aの荷重伝達が効率的に行われ、車両の前突時や急停車時にテザーブラケット34Aやシートバックフレーム30Aの変形が一層防止又は抑制される。
【0128】
さらに、シート正面視において、左側アーム部64A(の左端部)は車両外側サイドフレーム44Aの稜線45Aに重複しているため、また、右側アーム部66A(の右端部)は車両内側サイドフレーム46Aの稜線47Aに重複している。したがって、車両の前突時や急停車時に、テザーブラケット34Aの左側アーム部64A、右側アーム部66Aから車両外側サイドフレーム44A、車両内側サイドフレーム46Aに伝達された荷重は、それぞれ稜線45A、47Aを介してアッパフレーム40Aやロアフレーム42Aに効率的に伝達され、テザーブラケット34Aやシートバックフレーム30Aの変形が一層防止又は抑制される。
【0129】
同様に、図1に示すように、右側シートバック22でも、左側テザーブラケット34Bに対して、アッパフレーム40B、車両内側サイドフレーム46B、ロアフレーム42B、リインフォースメント92から構成される矩形状の枠体(図5、破線部α2参照)の内側に、左側テザーブラケット34Bの取付部60B、左側アーム部64B、車両内側サイドフレーム46B、ロアフレーム42B、左側テザーブラケット34Bの基部62Bからなる略矩形状の枠体(図5、一点鎖線部β2参照)と、左側テザーブラケット34Bの取付部60B、右側アーム部66B、リインフォースメント92、ロアフレーム42B、基部62Bからなる略矩形状の枠体(図5、一点鎖線部γ2参照)と、が形成されている。
【0130】
また、図1に示すように、右側テザーブラケット34Cに対して、アッパフレーム40B、車両外側サイドフレーム44B、ロアフレーム42B、リインフォースメント92から構成される略矩形状の枠体(図5、破線部α3参照)の内側に、右側テザーブラケット34Cの取付部60C、左側アーム部64C、リインフォースメント92、ロアフレーム42B、右側テザーブラケット34Cの基部62Cからなる略矩形状の枠体(図5、一点鎖線部β3参照)と、右側テザーブラケット34Cの取付部60C、右側アーム部66C、車両外側サイドフレーム44B、ロアフレーム42B、右側テザーブラケット34Cの基部62Cからなる略矩形状の枠体(図5、一点鎖線部γ3参照)と、が形成されている。
【0131】
したがって、左側テザーブラケット34B又は右側テザーブラケット34Cに上向きの荷重を、それぞれ三個の枠体(図5、破線部α2、一点鎖線部β2、γ2参照)、(図5、破線部α3、一点鎖線部β3、γ3参照)で受けるため、右側シートバックフレーム30B(リインフォースメント92を含む)と左側テザーブラケット34B又は右側テザーブラケット34Cの変形を防止又は抑制することができる。
【0132】
換言すれば、左側テザーブラケット34Bの取付部60Bに作用する上向きの荷重Fを、基部62B、左側アーム部64B、右側アーム部66Bから分散して右側シートバックフレーム30Bとリインフォースメント92からなる枠体(図5、破線部α2参照)に伝達するため、右側シートバックフレーム30B及び左側テザーブラケット34Bの変形を防止又は抑制することができる。
【0133】
同様に、右側テザーブラケット34Cの取付部60Cに作用する上向きの荷重Fを、基部62C、左側アーム部64C、右側アーム部66Cから分散して右側シートバックフレーム30Bとリインフォースメント92からなる枠体(図5、破線部α3参照)に伝達するため、右側シートバックフレーム30B及び右側テザーブラケット34Cの変形を防止又は抑制することができる。
【0134】
また、右側シートバックフレーム30B及びリインフォースメント92の強度を向上させるだけならば、チューブ形状である各フレームを太くすることによっても達成されるが、金属プレートから形成されている左側テザーブラケット34B、右側テザーブラケット34Cに左側アーム部64B、64Cと右側アーム部66B、66Cを追加して溶接するだけで良いので、強度向上(変形抑制)を図りつつ質量増加を抑制することができる。
【0135】
また、左側テザーブラケット34Bの基部62Bとロアフレーム42Bとが、基部62Bの幅方向の全領域亘って形成された溶接部(溶接ビード)63B(図示省略)で溶接されている。左側アーム部64Bと車両内側サイドフレーム46Bとが、左側アーム部64Bの幅方向の全領域亘って形成された溶接部(溶接ビード)65Bで溶接されている。同様に、右側アーム部66Bとリインフォースメント92とが、右側アーム部66Bの幅方向の全領域亘って形成された溶接部(溶接ビード)67Bで溶接されている。したがって、基部62Bからロアフレーム42B、左側アーム部64Bから車両内側サイドフレーム46B、右側アーム部66Bからリインフォースメント92に荷重伝達が効率的に行われ、車両の前突時や急停車時に左側テザーブラケット34Bや右側シートバックフレーム30B(リインフォースメント92を含む)の変形が一層防止又は抑制される。
【0136】
右側テザーブラケット34Cと右側シートバックフレーム30B(リインフォースメント92を含む)との溶接部(溶接ビード)63C(図示省略)、65C、67Cによっても、同様の作用効果を奏する。
【0137】
さらに、シート正面視において、左側アーム部64Bは車両内側サイドフレーム46Bの稜線47Bに重複しているため、また、右側アーム部66Aはリインフォースメント92の稜線93Bに重複している。したがって、車両の前突時や急停車時に左側テザーブラケット34Bの左側アーム部64B、右側アーム部66Bから車両内側サイドフレーム46B、リインフォースメント92に伝達された荷重は、それぞれ稜線47B、93Bを介して、アッパフレーム40Bやロアフレーム42Bに効率的に伝達され、左側テザーブラケット34Bや右側シートバックフレーム30Bの変形が一層防止又は抑制される。
【0138】
右側テザーブラケット34Cとリインフォースメント92の稜線93C、車両外側サイドフレーム44Bの稜線45Bとの関係によっても、同様の作用効果を奏する。
【0139】
(その他)
【0140】
なお、本実施形態では、テザーブラケット34Aの基部62Aの下端がロアフレーム42Aと左側シートバックパネル32Aの間に挿入されてロアフレーム42Aのシート後方側に溶接されていると共に、左側アーム部64A、右側アーム部66Aがそれぞれ車両外側サイドフレーム44A、車両内側サイドフレーム46Aのシート前方側に溶接されていたが、その溶接位置は特に限定するものではない。例えば、テザーブラケット34Aの基部62Aがロアフレーム42Aのシート前方側に溶接されても良い。左側テザーブラケット34B、右側テザーブラケット34Cも同様である。
【0141】
また、本実施形態では、リヤシート10の左側シートバック18にテザーブラケット34A、右側シートバック22に左側テザーブラケット34B、右側テザーブラケット34Cを設けたが、いずれか一つ、又はいずれか二つでも良い。
【0142】
さらに、車両用シートとして三座席分を有するリヤシート10で説明したが、左側リヤシート12のように一座席分の車両用シートに適用することや、右側リヤシート14のように二座席分の車両用シートに適用することも可能である。
【0143】
また、本実施形態では、溶接部(溶接ビード)65A~65C、67A~67Cは、左側アーム部64A~64C、右側アーム部66A~66Cの幅方向の全領域に亘って形成されていたが、これに限定するものではない。
【0144】
さらに、本実施形態では、左側シートバック18及び右側シートバック22の各アッパフレーム40A、40B、ロアフレーム42A、42B、車両外側サイドフレーム44A、44B及び車両内側サイドフレーム46A、46Bと、右側シートバック22のリインフォースメント92は、鉄やアルミニウム等の金属材料で形成され中空構造(断面四角形)とされたパイプとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、シートバックフレームに必要とされる強度や構成を担保できるものであれば良い。例えば、上記各部材は、中空構造(断面円形)や中実構造であっても良い。
【0145】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0146】
10 リヤシート(車両用シート)
18 左側シートバック(シートバック)
22 右側シートバック(シートバック)
30A 左側シートバックフレーム(シートバックフレーム)
30B 右側シートバックフレーム(シートバックフレーム)
40A、40B アッパフレーム
42A、42B ロアフレーム
44A 車両外側サイドフレーム(左側のサイドフレーム)
44B 車両外側サイドフレーム(右側のサイドフレーム)
45A、45B 稜線
46A 車両内側サイドフレーム(左側のサイドフレーム)
46B 車両内側サイドフレーム(右側のサイドフレーム)
47A、47B 稜線
34A テザーブラケット(第1テザーブラケット)
34B 左側テザーブラケット(第2テザーブラケット又は第3テザーブラケット)
34C 右側テザーブラケット(第3テザーブラケット又は第2テザーブラケット)
60A 取付部(第1取付部)
60B 取付部(第2取付部又は第3取付部)
60C 取付部(第3取付部又は第2取付部)
62A 基部(第1基部)
62B 基部(第2基部又は第3基部)
62C 基部(第3基部又は第2基部)
63A 溶接部(溶接ビード)
63B 溶接部(溶接ビード)
63C 溶接部(溶接ビード)
64A 左側アーム部(第1連結部)
64B 左側アーム部(第3連結部又は第5連結部)
64C 左側アーム部(第5連結部又は第3連結部)
65A 溶接部(溶接ビード)
65B 溶接部(溶接ビード)
65C 溶接部(溶接ビード)
66A 右側アーム部(第2連結部)
66B 右側アーム部(第4連結部又は第6連結部)
66C 右側アーム部(第6連結部又は第4連結部)
67A 溶接部(溶接ビード)
67B 溶接部(溶接ビード)
67C 溶接部(溶接ビード)
88 トップテザーアンカー(取付具)
92 リインフォースメント
93B、93C 稜線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8