(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23P 23/04 20060101AFI20250415BHJP
B23B 5/12 20060101ALI20250415BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20250415BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20250415BHJP
C21D 1/10 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
B23P23/04
B23B5/12
B23Q11/08 Z
B23Q7/04 A
C21D1/10 Z
(21)【出願番号】P 2021160623
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2024-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】須永 頼匡
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大樹
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-106130(JP,U)
【文献】特開2008-214750(JP,A)
【文献】特開2002-194426(JP,A)
【文献】特開平07-249485(JP,A)
【文献】特開昭58-082157(JP,A)
【文献】特表2017-530260(JP,A)
【文献】特許第7108148(JP,B1)
【文献】米国特許第04742609(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第04331750(EP,A1)
【文献】特開昭52-043754(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1205271(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 23/00-25/00
B23B 1/00-25/06
B23Q 11/00-13/00
B23Q 7/00-7/18
C21D 1/02-1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内を第1空間と第2空間に区画する区画部材と、
前記第1空間内に設けられ、鋼材を支持する鋼材支持手段と、
前記第1空間内に設けられ、前記鋼材を切削する刃具を保持する刃具保持手段と、
前記第2空間内に設けられ、前記鋼材を加熱する誘導加熱手段と、
前記鋼材を前記第1空間と前記第2空間の間で搬送する搬送手段と、
を備えた加工装置。
【請求項2】
前記ケース内において前記鋼材を冷却する冷却手段をさらに備えた請求項
1に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材を加工して製品を製造する場合に、鋼材に切削加工を施す場合がある。また、鋼材に焼入処理を施して、表層部を硬化させる場合もある。切削加工と焼入処理の双方を行う場合において、生産性の向上が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-238253号公報
【文献】特開2019-030917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の目的は、生産性が高い加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態に係る加工装置は、ケースと、前記ケース内に設けられ、鋼材を支持する鋼材支持手段と、前記ケース内に設けられ、前記鋼材を切削する刃具を保持する刃具保持手段と、前記ケース内に設けられ、前記鋼材を加熱する誘導加熱手段と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、生産性が高い加工装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る加工装置を示す正面図である。
【
図2】実施形態に係る加工装置の加工部を示す正面図である。
【
図3】(a)~(c)は、実施形態に係る加工装置の動作を示す図である。
【
図4】(a)及び(b)は、実施形態に係る加工装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
先ず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る加工装置を示す正面図である。
図2は、本実施形態に係る加工装置の加工部を示す正面図である。
図2においては、加工部のケースの正面部材及びドアの図示を省略し、加工部の内部を示している。
【0009】
本実施形態に係る加工装置1は、鋼材Sに切削加工と焼入処理を施す加工装置である。
図1に示すように、本実施形態に係る加工装置1においては、支持台10が設けられている。支持台10上には、加工部20が設けられている。また、支持台10上であって加工部20の側方には、制御部30が設けられている。
【0010】
図1及び
図2に示すように、加工部20には、ケース21、区画部材22、鋼材支持手段23、刃具保持手段24、搬送手段25、誘導加熱手段26、及び、冷却手段27が設けられている。
【0011】
区画部材22、鋼材支持手段23、刃具保持手段24、搬送手段25、及び、誘導加熱手段26は、ケース21内に配置されている。なお、本明細書において、ある手段が「ケース21内に配置されている」とは、少なくともその手段における鋼材Sに直接作用する部分がケース21内に配置されていることをいい、必ずしもその手段の全体がケース21内に配置されていなくてもよい。例えば、加工部20の各手段に電力を供給する電源ユニット(図示せず)は、支持台10の内部に設けられていてもよい。また、各手段の制御回路は、制御部30に設けられている。
【0012】
ケース21には、壁材21a及びドア21bが設けられており、ドア21bには窓21cが設けられている。壁材21aは、ケース21の正面以外の5面、すなわち、底面、天面、両側面及び背面を構成し、さらに、正面におけるドア21b以外の部分を構成している。ドア21bは壁材21aに開閉可能に取り付けられている。作業者は、ドア21bを開けることにより、ケース21の内部にアクセスできる。また、ドア21bを閉めることにより、ケース21の内部で発生した切削屑が外部に飛散したり、誘導加熱によって生じた熱が外部に伝達したり、冷却手段27から吐出された冷却液が外部に漏洩することを抑制できる。更に、作業者はドア21bを閉めた状態で、窓21cを介してケース21の内部を視認できる。
【0013】
図2に示すように、区画部材22は、ケース21の内部を空間F1及び空間F2に区画する。但し、空間F1の一部と空間F2の一部との間には区画部材22が設けられておらず、鋼材Sが通過可能な通路Cとなっている。通路Cは、例えば、区画部材22の上方である。空間F1内には、鋼材支持手段23及び刃具保持手段24が配置されている。空間F2内には、誘導加熱手段26及び冷却手段27の一部が配置されている。搬送手段25は、空間F1と空間F2との間で鋼材Sを搬送する。
【0014】
鋼材支持手段23には、鋼材Sの一端を保持し、鋼材Sを回転させる主軸台23aと、鋼材Sの他端を回転可能に支持する心押台23bが設けられている。心押台23bは鋼材Sを主軸台23aに向けて付勢する。鋼材支持手段23は、主軸台23aと心押台23bとで鋼材Sを挟むことにより、鋼材Sを回転可能に支持する。
【0015】
刃具保持手段24の先端部には、刃物台24aが設けられている。刃物台24aは、鋼材Sを加工する刃具Bを保持する。刃物台24aは刃具Bを回転可能な構成になっていてもよい。刃具Bは、例えばバイトである。刃具保持手段24は、刃物台24aを三次元的に移動させることにより、鋼材Sの任意の位置に刃具Bを押し当てることができる。刃物台24aは、複数の種類の刃具Bを保持していてもよい。この場合は、刃物台24aを自転させることにより、使用する刃具Bを切り替えることができる。
【0016】
搬送手段25は、例えば、ロボットアーム等のアクチュエータにより構成されている。搬送手段25は、鋼材Sを保持し、通路Cを介して空間F1と空間F2との間で鋼材Sを移動させる。
【0017】
誘導加熱手段26には、例えば、コイル26aが設けられている。コイル26aは、例えば、鋼材Sを囲むことが可能な位置に配置されている。誘導加熱手段26はコイル26aに高周波電流を流すことにより、鋼材Sの表層部分に誘導電流を流し、鋼材Sを加熱することができる。
【0018】
冷却手段27には、ノズル27aと、冷却液供給手段27bが設けられている。ノズル27aは、ケース21の空間F2内に配置されており、空間F2内を移動可能であると共に、鋼材Sに対して冷却液を噴射可能である。冷却液は例えば水である。冷却液供給手段27bには、タンク、配管及びポンプ(図示せず)が設けられている。冷却液供給手段27bは、タンク内に冷却液を保持し、ポンプ及び配管によって冷却液をノズル27aに供給する。また、ケース21の空間F2内に放出された冷却液は、配管を介してタンクに戻される。冷却液供給手段27bは、例えば、支持台10内に配置されていてもよい。冷却手段27は、誘導加熱された鋼材Sを急冷し、焼入処理を効果的に施すことができる。
【0019】
なお、冷却手段27はコイル26aと一体的に構成されていてもよい。例えば、コイル26bにジャケットが取り付けられており、このジャケットにノズル27aの噴射口が設けられていてもよい。
【0020】
制御部30は、加工部20の動作を制御する。制御部30には、演算部31、インターフェース部32及び通信部33が設けられている。演算部31には、例えば、CPU(central processing unit:中央演算処理装置)及びメモリが設けられている。演算部31は、例えば、刃具保持手段24及び搬送手段25を数値制御(NC:Numerical Control)する。
【0021】
インターフェース部32は、作業者との間で情報をやりとりする。インターフェース部32には、例えば、タッチパネル、表示パネル、及び、キーボード等が設けられている。通信部33は、外部との間で電気的な手段で情報をやりとりする。例えば、加工部20を制御するプログラムは、通信部33を介して外部から入力されてもよい。
【0022】
次に、本実施形態に係る加工装置1の動作について説明する。
図3(a)~
図4(b)は、本実施形態に係る加工装置の動作を示す図である。
図3(a)~
図4(b)は、加工部20の内部のみを示している。また、図を見やすくするために、各工程において使用しない構成要素は、適宜図示を省略している。
【0023】
図1に示すように、加工装置1の演算部31には、予め通信部33を介して、制御プログラムがインストールされている。作業者は、インターフェース部32を介して、演算部31に必要な情報を入力する。
【0024】
そして、
図1及び
図3(a)に示すように、作業者はケース21のドア21bを開き、鋼材Sを空間F1内の鋼材支持手段23に装着する。鋼材Sは、例えば、丸棒材である。このとき、主軸台23aが鋼材Sの一端を保持し、心押台23bが鋼材Sの他端を回転可能に支持する。心押台23bは、鋼材Sを主軸台23aに向けて付勢する。その後、作業者はドア21bを閉め、インターフェース部32を操作して、加工装置1に加工を開始させる。以後の動作は、演算部31によって制御される。
【0025】
図3(b)に示すように、刃具保持手段24が刃物台24aに取り付けられた刃具Bを鋼材Sに押し付ける。これにより、鋼材Sが所定の形状に切削加工される。このとき、鋼材支持手段23と刃具保持手段24が協働することにより、鋼材Sを加工する。例えば、鋼材支持手段23が鋼材Sを固定的に保持し、刃具保持手段24が刃具Bを回転させることにより、鋼材Sを加工してもよい。又は、鋼材支持手段23の主軸台23aが鋼材Sを回転させつつ、刃具保持手段24が刃具Bを鋼材Sに押し付けることにより、旋盤のように鋼材Sを加工してもよい。
【0026】
次に、
図3(c)に示すように、搬送手段25が加工後の鋼材Sを把持すると共に、鋼材支持手段23が鋼材Sを解放する。そして、搬送手段25が鋼材Sを、空間F1から通路Cを介して空間F2に搬送する。
【0027】
次に、
図4(a)に示すように、誘導加熱手段26がコイル26aを移動させつつ、コイル26aに高周波電流を流すことにより、鋼材Sを誘導加熱する。このとき、コイル26aが鋼材Sに対して相対的に移動することにより、鋼材Sの全体又は一部が加熱される。
【0028】
次に、
図4(b)に示すように、冷却手段27がノズル27aを移動させつつ、ノズル27aから鋼材Sに向けて冷却液を吐出する。このとき、ノズル27aが鋼材Sに対して相対的に移動することにより、鋼材Sの全体又は一部が冷却される。これにより、鋼材Sが急冷されて、表層部分が焼き入れされる。この結果、鋼材Sの表層部分が硬化する。なお、冷却手段27による冷却は、鋼材Sのうち、誘導加熱手段26によって加熱された部分のみに対して施す。このようにして、鋼材Sが所定の製品に加工される。
【0029】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、加工装置1のケース21内に、鋼材支持手段23、刃具保持手段24及び誘導加熱手段26が設けられている。これにより、加工装置1によって、鋼材Sの刃具Bによる切削加工と誘導加熱による焼入処理を、ケース21内で連続して行うことができる。このため、加工装置1は製品の生産性が高い。
【0030】
また、本実施形態においては、加工装置1が冷却手段27を備えており、冷却手段27のノズル27aがケース21内に配置されている。これにより、誘導加熱手段26によって加熱された鋼材Sをケース21内で急冷することができる。この結果、鋼材Sの焼入処理を精密に制御できる。
【0031】
更に、本実施形態においては、ケース21内に区画部材22が設けられており、ケース21の内部を空間F1と空間F2に区画している。そして、空間F1内に鋼材支持手段23及び刃具保持手段24を配置し、空間F2内に誘導加熱手段26及び冷却手段27を配置している。これにより、空間F1内で鋼材Sを切削したときに、切削屑等が空間F2内を汚染することを抑制できる。また、空間F2内で鋼材Sを誘導加熱したときに、空間F1内の構造物が熱の影響を受けることを抑制できる。更に、空間F2内で鋼材Sを冷却したときに、冷却液が空間F1内に侵入することを抑制できる。
【0032】
なお、
図4(b)に示す加熱工程と、
図4(b)に示す冷却工程は、時間的に重複して行ってもよい。すなわち、コイル26aを鋼材Sに対して相対的に移動させて誘導加熱しつつ、ノズル27aをコイル26aの後を追うように移動させて冷却してもよい。この場合は、鋼材Sの各部が順次加熱され、その直後に冷却される。この結果、加熱工程及び冷却工程に要する時間を短縮し、焼入処理をより精密に制御できると共に、生産性をより向上させることができる。
【0033】
前述の実施形態は、本発明を具現化した例であり、本発明はこの実施形態には限定されない。例えば、前述の実施形態において、いくつかの構成要素又は工程を追加、削除又は変更したものも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1:加工装置
10:支持台
20:加工部
21:ケース
21a:壁材
21b:ドア
21c:窓
22:区画部材
23:鋼材支持手段
23a:主軸台
23b:心押台
24:刃具保持手段
24a:刃物台
25:搬送部材
26:誘導加熱手段
26a:コイル
27:冷却手段
27a:ノズル
27b:冷却液供給手段
30:制御部
31:演算部
32:インターフェース部
33:通信部
B:刃具
C:通路
F1、F2:空間
S:鋼材