(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】水分出納管理システム、推論装置、学習済みモデル生成装置、学習済みモデル生成方法、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20250415BHJP
A61G 7/05 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61G7/05
(21)【出願番号】P 2021160976
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2024-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松沢 航
(72)【発明者】
【氏名】佐野 宙人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克佳
(72)【発明者】
【氏名】高柳 良大
【審査官】村田 泰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-080019(JP,A)
【文献】特開2020-154735(JP,A)
【文献】特開2018-019763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0287791(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0136102(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
A61B 5/06-5/22
A61G 7/00-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者が就床するベッドに加わる荷重に対応する検出信号を出力する検出装置と、
前記検出信号に基づいて前記荷重の経時変化を示す荷重変化情報を取得し、当該荷重変化情報から
前記ベッド上における前記被検者の水分出納の原因となる事象を推論する推論装置と、
前記事象の推論結果に対応する推論情報を出力する出力装置と、
を備えている、
水分出納管理システム。
【請求項2】
前記推論装置は、前記被検者が前記ベッドから離床した後の再就床時における前記荷重変化情報に基づき、離床中における前記被検者の水分出納の原因となる事象を推論する、
請求項1に記載の水分出納管理システム。
【請求項3】
前記出力装置は、前記荷重変化情報とともに前記推論結果に対応する指標を表示する画像を出力する、
請求項1
または2に記載の水分出納管理システム。
【請求項4】
前記出力装置は、前記推論情報とともに前記被検者の体重変化量を示す体重変化情報を出力する、
請求項1
から3のいずれか一項に記載の水分出納管理システム。
【請求項5】
前記推論装置は、機械学習による学習済みモデルを用いて前記事象を推論する、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の水分出納管理システム。
【請求項6】
前記学習済みモデルは、前記推論結果に対する修正記録が前記事象の推論に反映される再学習がなされるように構成されている、
請求項
5に記載の水分出納管理システム。
【請求項7】
被検者が就床するベッドに加わる荷重に対応する検出信号に基づいて取得された当該荷重の経時変化を示す荷重変化情報を受け付けるインターフェースと、
前記荷重変化情報から
前記ベッド上における前記被検者の水分出納の原因となる事象を推論し、当該事象の推論結果に対応する情報を出力装置に出力させるプロセッサと、
を備えている、
推論装置。
【請求項8】
推論装置に搭載されたプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記推論装置は、
被検者が就床するベッドに加わる荷重に対応する検出信号に基づいて取得された当該荷重の経時変化を示す荷重変化情報を受け付け、
前記荷重変化情報から
前記ベッド上における前記被検者の水分出納の原因となる事象を推論し、
前記事象の推論結果に対応する情報を出力装置に出力させる、
コンピュータプログラム。
【請求項9】
被検者が就床するベッドに加わる荷重に対応する検出信号に基づいて取得された当該荷重の経時変化を示す荷重変化情報と、当該経時変化に関連付けられた
当該ベッド上における当該被検者の水分出納の原因となる事象を示す事象情報との組合せを学習データとして受け付けるインターフェースと、
前記学習データに基づいて機械学習を実行することにより、前記荷重変化情報から前記事象を推論する学習済みモデルを生成するプロセッサと、
を備えている、
学習済みモデル生成装置。
【請求項10】
前記機械学習は、教師あり学習により行なわれる、
請求項
9に記載の学習済みモデル生成装置。
【請求項11】
学習済みモデル生成装置に搭載されたプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記学習済みモデル生成装置は、
被検者が就床するベッドに加わる荷重に対応する検出信号に基づいて取得された当該荷重の経時変化を示す荷重変化情報と、当該経時変化に関連付けられた
当該ベッド上における当該被検者の水分出納の原因となる事象を示す事象情報との組合せを学習データとして受け付け、
前記学習データに基づいて機械学習を実行することにより、前記荷重変化情報から前記事象を推論する学習済みモデルを生成する、
コンピュータプログラム。
【請求項12】
被検者が就床するベッドに加わる荷重に対応する検出信号に基づいて取得された当該荷重の経時変化を示す荷重変化情報と、当該経時変化に関連付けられた
当該ベッド上における当該被検者の水分出納の原因となる事象を示す事象情報との組合せを学習データとして入力し、
前記学習データに基づいて機械学習を実行することにより、前記荷重変化情報から前記事象を推論する学習済みモデルを生成する、
学習済みモデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の水分の摂取と排泄に基づく水分出納情報を管理するシステムに関連する。本発明は、被検者の水分出納の原因となる事象を推論する推論装置、および当該推論装置に搭載されたプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムにも関連する。本発明は、当該推論装置による推論に用いられる学習済みモデルを生成する生成装置、および当該生成装置に搭載されたプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムにも関連する。本発明は、当該学習済みモデルを生成する方法にも関連する。
【背景技術】
【0002】
医療施設などにおいては、被検者の一例としての患者の体重測定が一日から数日に一度の頻度で行なわれている。前回の体重測定からの期間に当該患者によりなされた水分摂取や尿排出に伴う重量増減と、当該期間における当該患者の体重変化とを照合することにより、水分出納の管理がなされる。特許文献1は、水分出納情報を電子的に管理するシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、被検者の水分出納情報の管理性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための第一態様は、水分出納管理システムであって、
被検者が就床するベッドに加わる荷重に対応する検出信号を出力する検出装置と、
前記検出信号に基づいて前記荷重の経時変化を示す荷重変化情報を取得し、当該荷重変化情報から前記被検者の水分出納の原因となる事象を推論する推論装置と、
前記事象の推論結果に対応する推論情報を出力する出力装置と、
を備えている。
【0006】
上記の目的を達成するための第二態様は、推論装置であって、
被検者が就床するベッドに加わる荷重に対応する検出信号に基づいて取得された当該荷重の経時変化を示す荷重変化情報を受け付けるインターフェースと、
前記荷重変化情報から前記被検者の水分出納の原因となる事象を推論し、当該事象の推論結果に対応する情報を出力装置に出力させるプロセッサと、
を備えている。
【0007】
上記の目的を達成するための第三態様は、推論装置に搭載されたプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記推論装置は、
被検者が就床するベッドに加わる荷重に対応する検出信号に基づいて取得された当該荷重の経時変化を示す荷重変化情報を受け付け、
前記荷重変化情報から前記被検者の水分出納の原因となる事象を推論し、
前記事象の推論結果に対応する情報を出力装置に出力させる。
【0008】
上記の第一態様から第三態様の各々に係る構成によれば、ベッドから離床中の被検者の水分出納に伴う体重変化は、再就床時にベッドに加わる荷重の変化に反映される。その変化に基づいて当該水分出納の原因となる事象が推論されるので、離床中の水分出納の管理を自動化できる。これにより、これまで管理から外れることがあった離床中の水分出納を容易に管理対象に含めることができるので、就床中だけでなく離床中も含めた被検者の水分出納情報の管理性を高めることができる。また、これまで手作業でなされることが一般的であった離床中の水分出納の補完的記録を自動化できるので、ユーザの負担を軽減できる。
【0009】
上記の目的を達成するための第四態様は、学習済みモデル生成装置であって、
被検者が就床するベッドに加わる荷重に対応する検出信号に基づいて取得された当該荷重の経時変化を示す荷重変化情報と、当該経時変化に関連付けられた当該被検者の水分出納の原因となる事象を示す事象情報との組合せを学習データとして受け付けるインターフェースと、
前記学習データに基づいて機械学習を実行することにより、前記荷重変化情報から前記事象を推論する学習済みモデルを生成するプロセッサと、
を備えている。
【0010】
上記の目的を達成するための第五態様は、学習済みモデル生成装置に搭載されたプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記学習済みモデル生成装置は、
被検者が就床するベッドに加わる荷重に対応する検出信号に基づいて取得された当該荷重の経時変化を示す荷重変化情報と、当該経時変化に関連付けられた当該被検者の水分出納の原因となる事象を示す事象情報との組合せを学習データとして受け付け、
前記学習データに基づいて機械学習を実行することにより、前記荷重変化情報から前記事象を推論する学習済みモデルを生成する。
【0011】
上記の目的を達成するための第六態様は、学習済みモデル生成方法であって、
被検者が就床するベッドに加わる荷重に対応する検出信号に基づいて取得された当該荷重の経時変化を示す荷重変化情報と、当該経時変化に関連付けられた当該被検者の水分出納の原因となる事象を示す事象情報との組合せを学習データとして入力し、
前記学習データに基づいて機械学習を実行することにより、前記荷重変化情報から前記事象を推論する学習済みモデルを生成する。
【0012】
上記の第四態様から第六態様の各々に係る構成によれば、第一態様から第三態様の各々に係る推論装置により行なわれる水分出納の原因事象の推論について明示的な規則の事前設計に係る負担を軽減できるだけでなく当該推論装置の汎化性能を高めることが可能な学習済みモデルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る水分出納管理システムの機能構成を例示している。
【
図2】
図1の推論装置により取得された荷重変化情報を例示している。
【
図3】
図1の出力装置により出力された情報の一例を示している。
【
図4】一実施形態に係るモデル生成装置の機能構成を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例を以下詳細に説明する。
【0015】
図1は、一実施形態に係る水分出納管理システム10(以下、管理システム10と略称する)の機能構成を例示している。管理システム10は、被検者の水分の摂取と排泄に基づく水分出納情報を管理するように構成されている。
【0016】
管理システム10は、検出装置11を備えている。検出装置11は、被検者が就床するベッド20に加わる荷重を検出し、当該荷重に対応する検出信号DTを出力するように構成されている。すなわち、検出信号DTは、ベッド20に就床する被検者の体重に対応している。
【0017】
検出信号DTの出力は、時間連続的になされてもよいし、所定時間の経過ごとに断続的になされてもよい。出力される検出信号DTは、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよい。
【0018】
検出装置11は、適宜の態様をとりうる。一例として、検出装置11は、ベッド20の各脚部と床の間に配置された荷重計(いわゆるベッドスケール)を含むように構成されうる。この場合、検出装置11は、各荷重計により検出された荷重に基づいて検出信号DTを生成する。別例として、検出装置は、ベッド20のマットレスや脚部に内蔵された荷重センサでありうる。この場合、検出装置11は、荷重センサにより検出された荷重に基づいて検出信号DTを生成する。
【0019】
管理システム10は、推論装置12を備えている。推論装置12は、検出信号DTに基づいてベッド20にかかる荷重の経時変化を示す荷重変化情報を取得し、当該荷重変化情報から被検者の水分出納の原因となる事象を推論するように構成されている。当該事象の例としては、食事、飲水、排泄(夜尿を含む)、不感蒸泄などが挙げられる。
【0020】
具体的には、推論装置12は、入力インターフェース121を備えている。入力インターフェース121は、検出装置11から出力された検出信号DTを受け付けるように構成されている。検出信号DTがアナログ信号である場合、入力インターフェース121は、A/Dコンバータを含む適宜の変換回路を備える。
【0021】
推論装置12は、プロセッサ122を備えている。プロセッサ122は、入力インターフェース121により受け付けられた検出信号DTに基づいて、
図2に例示される荷重変化情報LVを取得するように構成されている。横軸は時間の経過を表している。縦軸はベッド20に加わる荷重を表している。随所に見られる荷重が消失している期間は、被検者がベッド20を離床している状況を表している。
【0022】
プロセッサ122は、荷重変化情報LVに基づいて被検者の水分出納の原因となる事象を推論するように構成されている。以下に幾つかの推論の例を挙げる。
【0023】
期間Tにおいては、荷重が離床に対応する変化を伴うことなく徐々に減少している。このような変化が確認された場合、プロセッサ122は、水分出納の原因となる事象として、不感蒸泄を推論する。
【0024】
時点t1においては、荷重が離床に対応する変化を示した後に有意な増加を示している。このような変化が確認された場合、プロセッサ122は、水分出納の原因となる事象として、食事を推論する。
【0025】
時点t2においては、荷重が離床に対応する変化を示した後に有意な減少を示している。このような変化が確認された場合、プロセッサ122は、水分出納の原因となる事象として、排泄を推論する。
【0026】
推論装置12は、出力インターフェース123を備えている。プロセッサ122は、推論結果に対応する推論情報PRを、出力インターフェース123から出力するように構成されている。推論情報PRは、推論された事象と、当該事象が生じた時刻を含むように構成される。推論情報PRは、アナログデータの形態で出力されてもよいし、デジタルデータの形態で出力されてもよい。推論情報PRがアナログデータの形態で出力される場合、出力インターフェース123は、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を備える。
【0027】
管理システム10は、出力装置13を含んでいる。出力装置13は、ベッド20に設置される据置型の装置であってもよいし、ユーザによる携帯が可能なモバイル装置であってもよい。出力インターフェース123から出力された推論情報PRは、出力装置13へ送信される。推論情報PRの送信は、有線通信を通じてなされてもよいし、無線通信を通じてなされてもよい。出力装置13は、推論情報PRに基づいて、推論装置12による推論結果を出力するように構成されている。出力装置13による出力は、ユーザへの推論結果の提示と不図示の記憶装置への推論情報PRの記録の少なくとも一方を伴う適宜の態様をとりうる。
【0028】
このような構成によれば、ベッド20から離床中の被検者の水分出納に伴う体重変化は、再就床時にベッド20に加わる荷重の変化に反映される。その変化に基づいて当該水分出納の原因となる事象が推論されるので、離床中の水分出納の管理を自動化できる。これにより、これまで管理から外れることがあった離床中の水分出納を容易に管理対象に含めることができるので、就床中だけでなく離床中も含めた被検者の水分出納情報の管理性を高めることができる。また、これまで手作業でなされることが一般的であった離床中の水分出納の補完的記録を自動化できるので、ユーザの負担を軽減できる。
【0029】
管理された水分出納情報の視認性を高めるために、出力装置13は、
図3に例示される画像IMを出力するように構成されうる。画像IMは、荷重変化情報LVとともに推論装置12による推論結果に対応する指標を表示している。本例においては、指標は、事象が生じたと推論された時点を示すマーカと、推論された事象を示すアイコンを含んでいる。本例においては、当該アイコンは、事象を示す文字を含んでいる。文字に加えてあるいは代えて、色、記号、図形などにより事象が特定されてもよい。
【0030】
出力装置13は、推論情報PRに対応する情報に加えてあるいは代えて、推論に係る事象の発生に伴う被検者の体重変化を示す体重変化情報を出力してもよい。具体的には、推論装置12のプロセッサ122は、推論情報PRに含まれる事象の発生時点の前後でベッド20に加わる荷重に生じた変化量を荷重変化情報LVを特定する。前述の通りベッド20に加わる荷重は、被検者の体重に対応しているので、荷重の変化量は体重変化情報として利用できる。
【0031】
このような構成によれば、被検者の水分出納による体重変化の記録を自動化できるので、水分出納情報管理に係るユーザの負担をさらに軽減できる。
【0032】
図1に例示されるように、推論装置12は、学習済みモデル124を備えうる。プロセッサ122は、荷重変化情報LVを学習済みモデル124に入力することにより、被検者の水分出納の原因となる事象の推論結果を取得する処理を行なうように構成されうる。
【0033】
学習済みモデル124は、後述するニューラルネットワークを用いた機械学習を通じて生成された推論アルゴリズムである。学習済みモデル124は、ベッド20に加わる荷重の経時変化を示す荷重変化情報LVを入力として、被検者の水分出納の原因となる事象を推論結果として出力するように構成されている。
【0034】
学習済みモデル124は、
図4に例示されるモデル生成装置30により生成される。すなわち、モデル生成装置30は、上記の推論装置12に搭載される学習済みモデル124を生成するように構成されている。
【0035】
モデル生成装置30は、入力インターフェース31を備えている。入力インターフェース31は、学習データLGを受け付けるように構成されている。学習データLGは、ある被検者について取得された荷重変化情報LVと、当該被検者の水分出納の原因となる事象を示す事象情報EVとを含んでいる。
【0036】
モデル生成装置30は、プロセッサ32を備えている。プロセッサ32は、学習データLGを用いてニューラルネットワークに学習させることにより、学習済みモデル124を生成するように構成されている。本例においては、ニューラルネットワークに学習させる処理として、教師あり学習に係る手法が使用される。
【0037】
具体的には、学習データLGには、どのような事象に基づいて被検者に水分出納が生じた場合にどのような荷重変化情報LVが取得されるのかを教示する教師データが付与されている。
【0038】
なお、学習データLGは、被検者の体重変化に関連する情報として、温度、湿度、時刻などの情報を含みうる。
【0039】
モデル生成装置30は、出力インターフェース33を備えている。出力インターフェース33は、プロセッサ32により生成された学習済みモデル124を、推論装置12に実装可能な形態で出力するように構成されている。
【0040】
このような構成によれば、推論装置12により行なわれる水分出納の原因事象の推論について明示的な規則の事前設計に係る負担を軽減できるだけでなく、推論装置12の汎化性能を高めることができる。
【0041】
なお、学習済みモデル124は、再学習が可能に構成されうる。例えば、
図2の期間Tに生じた被検者の体重変化が、不感蒸泄ではなく夜尿によってもたらされた場合、
図3に例示された指標に表示された推論結果は誤りである。このような場合においては、必要に応じて推論情報PRの修正がなされうる。
【0042】
図4に例示されるように、当該修正に対応する修正情報CRは、モデル生成装置30の入力インターフェース31に入力されうる。本例の場合、修正情報CRは、誤った推論がなされた荷重変化情報LVと修正された事象である「夜尿」に対応する事象情報の組合せとして提供される。モデル生成装置30のプロセッサ32は、修正情報CRが反映されるように学習済みモデル124の再学習を実行する。再学習のタイミングは適宜に設定されうる。
【0043】
なお、学習済みモデル124の再学習は、推論装置12のプロセッサ122により実行されるように構成されてもよい。この場合、推論装置12の入力インターフェース121が修正情報CRを受け付けるように構成される。
【0044】
このような構成によれば、管理システム10の運用開始後に被検者から取得される情報に基づいて、推論装置12による水分出納の原因事象の推論精度を高めることができる。
【0045】
これまで説明した各種の機能を有する推論装置12のプロセッサ122とモデル生成装置30のプロセッサ32の各々は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。当該コンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされてから汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。
【0046】
これまで説明した各種の機能を有する推論装置12のプロセッサ122とモデル生成装置30のプロセッサ32の各々は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ可読媒体の一例である。これまで説明した各種の機能を有する推論装置12のプロセッサ122とモデル生成装置30のプロセッサ32の各々は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0047】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0048】
上記の実施形態においては、モデル生成装置30は、教師あり学習を通じて学習済みモデル124を生成している。しかしながら、モデル生成装置30は、教師なし学習を通じて学習済みモデル124を生成してもよい。この場合、学習データLGは、被検者が就床中にベッド20に加わる荷重の経時変化を示す荷重変化情報を含む。この学習を通じて生成された学習済みモデル124は、検出装置11から受信した検出信号DTが示す荷重の経時変化が学習済みの荷重の経時変化から逸脱している場合に、水分出納に係る事象が発生したと推論する。
【0049】
上記の実施形態においては、モデル生成装置30は、ニューラルネットワークを用いた機械学習を通じて学習済みモデル124を生成している。しかしながら、他の機械学習アルゴリズムを通じて学習済みモデル124が生成されてもよい。他の機械学習アルゴリズムの例としては、決定木、ランダムフォレスト、サポートベクトルマシンなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0050】
10:水分出納管理システム、11:検出装置、12:推論装置、121:入力インターフェース、122:プロセッサ、124:学習済みモデル、13:出力装置、20:ベッド、30:モデル生成装置、31:入力インターフェース、32:プロセッサ、DT:検出信号、IM:画像、LG:学習データ、LV:荷重変化情報、PR:推論情報