(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】RNA干渉送達製剤及び悪性腫瘍のための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/713 20060101AFI20250415BHJP
A61K 9/127 20250101ALI20250415BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20250415BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20250415BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20250415BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20250415BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20250415BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20250415BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20250415BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20250415BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20250415BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250415BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250415BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
A61K31/713
A61K9/127
A61K9/19
A61K9/51
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/34
A61K47/40
A61K48/00
A61P11/00
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021526778
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 US2019061702
(87)【国際公開番号】W WO2020102668
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-07-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-08
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マジェッティ,バラット
(72)【発明者】
【氏名】クラム,ジャンピエール
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リー
(72)【発明者】
【氏名】アダミ,ロジャー,シー.
(72)【発明者】
【氏名】イン,ウェンビン
【合議体】
【審判長】磯貝 香苗
【審判官】前田 佳与子
【審判官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-512373号公報(JP,A)
【文献】特表2018-524330号公報(JP,A)
【文献】特表2018-512373号公報(JP,A)
【文献】特表2018-524330号公報(JP,A)
【文献】小比賀 聡 外1名, アンチセンス核酸医薬のデザイン戦略, 日薬理誌(Folia Pharmacol.Jpn.), 日本, 2016年, 発行日, Vol.148, p.100-104
【文献】井上 貴雄, 核酸医薬-レギュラトリーサイエンス, MEDCHEM NEWS, 日本, 2016年, 発行日, Vol.26 No.1, p.43-48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/713
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)核酸活性医薬成分(原薬);
(b)以下の式IIを有する化合物: ;
(c)ポリエチレングリコール(PEG)領域、多分岐PEG領域、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)領域、カルボニル-メトキシポリエチレングリコール領域、又はポリグリセリン領域を含むDSPE脂質;
(d)ステロール脂質、及び
(e)1つ以上の中性脂質
を含み、前記DSPE脂質が組成物の全脂質の4モル%~6モル%であ
り、前記核酸活性医薬成分がGST-πを標的とするsiRNAである、前記核酸活性医薬成分の肺への送達又は蓄積のための医薬組成物。
【請求項2】
前記式IIの化合物が、組成物の全脂質の15モル%~35モル%である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記式IIの化合物が、組成物の全脂質の20モル%~30モル%である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ステロール脂質が、組成物の全脂質の25モル%~40モル%である、請求項1~3のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ステロール脂質が、組成物の全脂質の30モル%~40モル%である、請求項1~3のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ステロール脂質がコレステロールである
、請求項1~5のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記DSPE脂質がPEG領域を含む、請求項1~6のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記DSPE脂質が、200Da~5000Daの分子量を有するPEG領域を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記DSPE脂質がDSPE-mPEG-2000である、請求項1~8のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記1つ以上の中性脂質の合計が前記組成物の総脂質の25モル%~45モル%であり、前記中性脂質のそれぞれが、個々に5モル%~40モル%である、請求項1~9のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記1つ以上の中性脂質の合計が前記組成物の総脂質の30モル%~40モル%であり、前記中性脂質のそれぞれが、個々に10モル%~30モル%である、請求項1~9のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記1つ以上の中性脂質が、ホスファチジルエタノールアミン化合物及びホスファチジルコリン化合物から選択される、請求項1~11のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記1つ以上の中性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)及び1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)である、請求項1~12のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項14】
コレステロール、DOPC、及びDOPEが組み合わされて、組成物の全脂質の50モル%~85モル%を構成する、請求項1~13のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記式IIの化合物が前記組成物の総脂質の15モル%~35モル%を構成し;
コレステロール、DOPC、及びDOPEの組合せが前記組成物の総脂質の50モル%~85モル%を構成し;及び
前記式IIの化合物、コレステロール、DOPC、DOPE及びDSPE-mPEG-2000の組合せが前記組成物の総脂質の少なくとも97モル%を構成する、請求項1~14のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記式IIの化合物、コレステロール、DOPC、DOPE及びDSPE-mPEG-2000の組合せが前記組成物の総脂質の100モル%を構成する、請求項15記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記式IIの化合物が前記組成物の総脂質の20モル%~30モル%を構成し;
コレステロールが前記組成物の総脂質の25モル%~35モル%を構成し;
DOPC及びDOPEの組合せが前記組成物の総脂質の30モル%~50モル%を構成し;及び
前記式IIの化合物、コレステロール、DOPC、DOPE及びDSPE-mPEG-2000の組合せが前記組成物の総脂質の少なくとも97モル%を構成する、請求項1~14のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記式IIの化合物、コレステロール、DOPC、DOPE及びDSPE-mPEG-2000の組合せが前記組成物の総脂質の100モル%を構成する、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記核酸活性医薬成分がAPI(26/52)であって、API(26/52)は以下の配列を有するGST-πを標的とするsiRNAである、請求項1~18のいずれか一項記載の医薬組成物:
センス鎖である配列番号26(5'→3'):
GAAGCCU
UU
UGAGACCC
UAUU;
アンチセンス鎖である配列番号52(5'→3'): fUAGgGuCu
CA
AAAGGC
UUC
UU;
ここで、A、G、C及びUはそれぞれリボ-A、リボ-G、リボ-C及びリボ-Uを表し、小文字a、u、g、c、tはそれぞれ2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C及びデオキシチミジンを表し(dT=T=t)、下線は2'-OMe-置換を表し、小文字fは2'-デオキシ-2'-フルオロ置換を表す。
【請求項20】
前記式IIを有する化合物が下記式を有する化合物Aである、請求項1~19のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記核酸活性医薬成分は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む、GST-πを標的とするsiRNAであり、センス鎖が配列番号1であり、アンチセンス鎖が配列番号27であり、ここで、NはA、C、G、U、2'-OMe-U、A、c、g、u、t、逆位ヌクレオチド、及び化学修飾ヌクレオチドの群から選択される、請求項1~18のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記核酸活性医薬成分の二重鎖領域中の1つ以上のヌクレオチドが化学修飾されている、請求項21記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記1つ以上の化学修飾ヌクレオチドが、2'-デオキシヌクレオチド、2'-O-アルキル置換ヌクレオチド、2'-デオキシ-2'-フルオロ置換ヌクレオチド、ホスホロチオエートヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、及びそれらの任意の組合せから選択される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
センス鎖及びアンチセンス鎖が、表1に列挙される組合せのいずれか1つである、請求項22又は23記載の医薬組成物。
【表1】
【請求項25】
前記核酸活性医薬成分がAPI(26/52)であって、API(26/52)は以下の配列を有するGST-πを標的とするsiRNAであり:
センス鎖である配列番号26(5'→3'):
GAAGCCU
UU
UGAGACCC
UAUU;
アンチセンス鎖である配列番号52(5'→3'): fUAGgGuCu
CA
AAAGGC
UUC
UU;
ここで、A、G、C及びUはそれぞれリボ-A、リボ-G、リボ-C及びリボ-Uを表し、小文字a、u、g、c、tはそれぞれ2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C及びデオキシチミジンを表し(dT=T=t)、下線は2'-OMe-置換を表し、小文字fは2'-デオキシ-2'-フルオロ置換を表しており、
前記ステロール脂質が半合成コレステロールであり、
前記1つ以上の中性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)及び1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)であり、
前記DSPE脂質がDSPE-mPEG-2000であり、
10mgのAPI(26/52)、49.1mgの化合物A(総脂質の24.985モル%)、29.5mgの半合成コレステロール(総脂質の30.015モル%)、37.8mgのDOPE(総脂質の19.989モル%)、40.0mgのDOPC(総脂質の20.019モル%)、及び35.6mgのDSPE-mPEG-2000(総脂質の4.992モル%)を含む、請求項20記載の医薬組成物。
【請求項26】
30nm~100nmのZ平均サイズを有するナノ粒子を含む、請求項1~25のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記ナノ粒子が46nmのZ平均サイズ及び0.097の多分散指数(PDI)を有する、請求項26記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記ナノ粒子が核酸活性医薬成分をカプセル化している、請求項26又は27記載の医薬組成物。
【請求項29】
注射用の溶媒エタノール及び水を含み、スクロース、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、緩衝液、及び請求項1~28のいずれか一項記載の医薬組成物の懸濁液を含む医薬溶液。
【請求項30】
前記緩衝液が、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液及びリン酸緩衝液から選択される、請求項29記載の医薬溶液。
【請求項31】
前記緩衝液が、酢酸及び酢酸ナトリウム、クエン酸及びクエン酸ナトリウム、並びにリン酸二水素カリウム及びリン酸水素二ナトリウム二水和物から選択される、請求項30に記載の医薬溶液。
【請求項32】
請求項29記載の医薬溶液の固体凍結乾燥物を含む医薬組成物。
【請求項33】
必要とする対象者における
肺癌の1つ以上の症状を治療又は改善するための、請求項1~28又は32のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記核酸活性医薬成分がAPI(26/52)であって、API(26/52)は以下の配列を有するGST-πを標的とするsiRNAであり:
センス鎖である配列番号26(5'→3'):
GAAGCCU
UU
UGAGACCC
UAUU;
アンチセンス鎖である配列番号52(5'→3'): fUAGgGuCu
CA
AAAGGC
UUC
UU;
ここで、A、G、C及びUはそれぞれリボ-A、リボ-G、リボ-C及びリボ-Uを表し、小文字a、u、g、c、tはそれぞれ2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C及びデオキシチミジンを表し(dT=T=t)、下線は2'-OMe-置換を表し、小文字fは2'-デオキシ-2'-フルオロ置換を表しており、且つ、式IIを有する化合物が下記式を有する化合物Aである、請求項33記載の医薬組成物。
【請求項35】
請求項30記載の医薬溶液の凍結乾燥ケーキを含有するバイアルを含み、前記バイアルのヘッドスペースが窒素ガスで満たされている、医薬製品。
【請求項36】
前記凍結乾燥ケーキは、スクロース、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、酢酸ナトリウム、及び前記医薬組成物の凍結乾燥残渣を含む、請求項
35記載の医薬製品。
【請求項37】
前記凍結乾燥ケーキが、700mgのスクロース、467mgの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2.7mgの酢酸ナトリウム、及び前記医薬組成物の凍結乾燥残渣を含む、請求項
35記載の医薬製品。
【請求項38】
前記バイアルが、バリアフィルムストッパー及びフリップオフアルミニウムシールで密封された、透明な20mL USP Type Iガラスバイアルである、請求項
35~
37のいずれか一項記載の医薬製品。
【請求項39】
前記核酸活性医薬成分がAPI(26/52)であって、API(26/52)は以下の配列を有するGST-πを標的とするsiRNAであり:
センス鎖である配列番号26(5'→3'):
GAAGCCU
UU
UGAGACCC
UAUU;
アンチセンス鎖である配列番号52(5'→3'): fUAGgGuCu
CA
AAAGGC
UUC
UU;
ここで、A、G、C及びUはそれぞれリボ-A、リボ-G、リボ-C及びリボ-Uを表し、小文字a、u、g、c、tはそれぞれ2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C及びデオキシチミジンを表し(dT=T=t)、下線は2'-OMe-置換を表し、小文字fは2'-デオキシ-2'-フルオロ置換を表しており、且つ、式IIを有する化合物が下記式を有する化合物Aである、請求項
35~
38のいずれか一項記載の医薬製品。
【請求項40】
請求項
35~
39のいずれか一項記載の医薬製品と、凍結乾燥ケーキを再構成し、再構成された製剤を対象者に投与するための説明書とを含むキット。
【請求項41】
前記キットが、凍結乾燥ケーキを再構成するための無菌希釈剤を含む、請求項
40記載のキット。
【請求項42】
前記キットがIV注入バッグを含む、請求項
40記載のキット。
【請求項43】
無菌希釈剤中の、請求項
35~
39のいずれか一項記載の医薬製品の凍結乾燥ケーキの再構成溶液を含む、注入による投与のための薬物。
【請求項44】
前記希釈剤が酢酸ナトリウム溶液である、請求項
43記載の薬物。
【請求項45】
前記希釈剤が酢酸ナトリウム注射液、USPである、請求項
43記載の薬物。
【請求項46】
前記核酸活性医薬成分の濃度が1.5mg/mL以下である、請求項
43記載の薬物。
【請求項47】
前記核酸活性医薬成分がAPI(26/52)であって、API(26/52)は以下の配列を有するGST-πを標的とするsiRNAであり:
センス鎖である配列番号26(5'→3'):
GAAGCCU
UU
UGAGACCC
UAUU;
アンチセンス鎖である配列番号52(5'→3'): fUAGgGuCu
CA
AAAGGC
UUC
UU;
ここで、A、G、C及びUはそれぞれリボ-A、リボ-G、リボ-C及びリボ-Uを表し、小文字a、u、g、c、tはそれぞれ2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C及びデオキシチミジンを表し(dT=T=t)、下線は2'-OMe-置換を表し、小文字fは2'-デオキシ-2'-フルオロ置換を表しており、且つ、式IIを有する化合物が下記式を有する化合物Aである、請求項
43記載の薬物。
【請求項48】
前記薬物が、API(26/52)をカプセル化するリポソームナノ粒子を含む、請求項
47記載の薬物。
【請求項49】
前記ナノ粒子が30nm~100nmのサイズである、請求項
48記載の薬物。
【請求項50】
前記ナノ粒子が45nm~65nmのサイズである、請求項
48記載の薬物。
【請求項51】
前記ナノ粒子のPDIが0.30未満である、請求項
48記載の薬物。
【請求項52】
前記ナノ粒子の平均電荷が-10~+10mVである、請求項
48記載の薬物。
【請求項53】
1つ以上の薬学的に許可される賦形剤をさらに含む、請求項
43~
52のいずれか一項記載の薬物。
【請求項54】
薬学的に許容される張性賦形剤をさらに含む、請求項
43~
52のいずれか一項記載の薬物。
【請求項55】
前記張性賦形剤がスクロース又は2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである、請求項
54記載の薬物。
【請求項56】
薬学的に許容されるpH調整賦形剤をさらに含む、請求項
43~
55のいずれか一項記載の薬物。
【請求項57】
前記pH調整賦形剤が水酸化ナトリウムであり、薬物のpHが5~6である、請求項
56記載の薬物。
【請求項58】
必要とする対象者における
肺癌の1つ以上の症状を治療又は改善するための、請求項
43~
57のいずれか一項記載の薬物。
【請求項59】
前記薬物が、30~120分間の非経口注入によって投与される、請求項
58記載の薬物。
【請求項60】
前記投与が、少なくとも5日間、前記対象者におけるGST-πの発現を少なくとも5%減少させる、請求項
58又は59に記載の薬物。
【請求項61】
前記投与が、静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注入、又は腹腔内注入によるものである、請求項
58~
60のいずれか一項記載の薬物。
【請求項62】
肺癌の1以上の症状を治療又は改善するための、請求項
35~
39のいずれか一項記載の医薬製品。
【請求項63】
肺癌の1つ以上の症状を治療又は改善するための薬剤の製造における、請求項
35~
39のいずれか一項記載の医薬製品の使用。
【請求項64】
必要とする対象者における
肺癌の1つ以上の症状を治療又は改善するための、請求項29~31のいずれか一項記載の医薬溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸に基づく分子から構成されるバイオ医薬及び治療の分野に関する。より詳細には、本発明は、悪性腫瘍に関連する状態及び疾患の影響を予防、治療又は改善するためのRNA干渉剤を送達するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願へのリファレンス]
本出願は2018年11月16日に出願された米国特許出願第62/768,826号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
[配列表]
本出願は、約26KBのサイズのHRAK001.014 txtという名称のファイルとして電子的に提出される配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
KRAS遺伝子の突然変異は、肺腺がん、粘液性腺腫及び結腸直腸がんなどの悪性腫瘍に関係しうる。最近、グルタチオンS-トランスフェラーゼ-π(GST-π)タンパク質のレベル上昇がこのようなKRAS突然変異に関連することが観察されている。
【0005】
GST-πは、疎水性及び求電子性化合物の還元型グルタチオンとの結合を触媒することによって解毒に役割を果たす6つのイソ酵素のグルタチオンS-トランスフェラーゼ(IUBMB EC 2.5.1.18)ファミリーの一員である。GST-π遺伝子(GSTP1)は、多型遺伝子であり、生体異物代謝において機能すると考えられる、活性で機能的に異なるGSTP1変異体蛋白質をコードする。GSTP1は癌に対する感受性に役割を果たしている可能性があり、腫瘍細胞に豊富に発現している。例えば、Aliya S.ら、Mol Cell Biochem、2003 Nov; 253(1-2):319-327を参照のこと。グルタチオンS-トランスフェラーゼ-πは、ヒトにおいてGSTP1遺伝子によってコードされる酵素である。例えば、Bora PSら、1991年10月、J. Biol. Chem., 266 (25): 16774-16777.を参照のこと。GST-πイソ酵素はいくつかのアルキル化抗癌剤とGSHの結合を触媒することが示されており、GST-πの過剰発現が腫瘍細胞耐性をもたらすことを示唆している。
【0006】
胃癌、食道癌、結腸癌、肝細胞癌及び胆道癌を含む様々な消化器悪性腫瘍患者において、血清GST-π値の上昇が認められた。ステージIII又はIVの胃癌患者の80%以上、ステージI及びIIの胃癌患者の約50%でも血清GST-π値が上昇していた。例えば、Niitsu Yら. Cancer, 1989 Jan 15; 63(2):317-23を参照のこと。GST-πは、化学療法後の口腔癌患者における腫瘍の再発を予測する有用なマーカーであることが分かっている。例えば、Hirata S.らCancer, 1992 Nov 15:70(10):2381-7を参照のこと。
【0007】
GST-πの発現は種々の癌細胞において増加し、これは、いくつかの抗癌剤に対する耐性に関連していると考えられる。例えば、Banら、Cancer Res.,1996,56(15):3577-82; Nakajimaら、J Pharmacol Exp Ther.,2003,306(3):861-9を参照のこと。
【0008】
GST-πを抑制する薬剤は、細胞においてアポトーシスを誘導することが開示されている。しかし、このような組成物及び技術は、オートファジーを引き起こし、そして種々の薬剤の組み合わせ作用を必要とている。例えば、US 2014/0315975 A1を参照されたい。さらに、GST-πを抑制しても、腫瘍を縮小又は減少させることは見出されていない。例えば、GST-πを過剰発現していた癌では、他の効果が観察されたが、GST-πを抑制するとしても腫瘍重量に対する影響はなかった。例えば、Hokaiwadoら、Carcinogenesis, 2008, 29(6):1134-1138を参照のこと。
【0009】
GST-πの発現を阻害するためのsiRNA剤、化合物及び構造など、悪性腫瘍を有する患者のための治療を開発する方法及び組成物が緊急に必要とされている。
【0010】
悪性腫瘍を予防又は治療する方法及び組成物が必要とされている。悪性腫瘍を予防、治療又は軽減するためのRNAi分子、並びに他の構造及び組成物が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、ヒトGST-πを標的とするRNAi分子の治療的使用のための組成物及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
種々の実施形態は、悪性腫瘍に対するバイオ医薬及び治療における使用のための分子及びその組成物に関する。より詳細には、種々の実施形態は、悪性腫瘍を有する細胞、組織、器官及び対象者に活性薬剤又は薬物化合物を送達及び分配するナノ粒子を提供するための化合物、組成物及び方法に関する。
【0013】
必要とする対象者における悪性腫瘍の1つ以上の症状を予防、治療又は改善するための方法が含まれる。この方法は、GST-πを標的とするRNAi分子を含む組成物を対象者に有効量投与することを含むことができる。
【0014】
本発明の実施形態は以下を含む:
医薬組成物は、
(a)核酸活性医薬成分(API);例えば、API(26/52)、以下の配列を有するGST-πを標的とするsiRNAを含有し
センス鎖配列番号26(5'-3'):
GAAGCCU
UU
UGAGACCC
UAUU
アンチセンス鎖配列番号52(5'-3'): fUAGgGuCu
CA
AAAGGC
UUC
UU;
ここで、A、G、C及びUはそれぞれリボ-A、リボ-G、リボ-C及びリボ-Uを表し、小文字a、u、g、c、tはそれぞれ2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C及びデオキシチミジンを表し(dT=T=t)、下線は2'-OMe置換、例えば
Uを表し、小文字fは2'-デオキシ-2'-フルオロ置換、例えばfUは2'-デオキシ-2'-フルオロ-Uを表し、以下、API(26/52)と称する;
並びに、更に以下を含有する、
(b)以下の式IIを有する化合物;
【化1】
例えば、本明細書の他の箇所に記載される構造を有する化合物A
(c)DSPE脂質、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)領域、多分岐PEG領域、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)領域、カルボニル-メトキシポリエチレングリコール領域又はポリグリセリン領域を含むDSPE脂質;
(d)ステロール脂質、及び
(e)1種以上の中性脂質。
【0015】
式IIの化合物(例えば、化合物A)は、当該組成物の全脂質の15モル%~35モル%、又は当該組成物の全脂質の20モル%~30モル%とすることができる。
【0016】
ステロールは、当該組成物の全脂質の25モル%~40モル%、又は当該組成物の全脂質の30モル%~40モル%とすることができる。ステロールはコレステロールとすることができる。
【0017】
DSPE脂質は、当該組成物の全脂質の1モル%~10モル%、又は1モル%~8モル%、又は4モル%~6モル%とすることができる。DSPE脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)領域、多分岐PEG領域、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)領域、カルボニル-メトキシポリエチレングリコール領域又はポリグリセリン領域を有するものであってもよい。特定の実施形態では、DSPE脂質はDSPE-mPEG-2000である。
【0018】
1つ以上の中性脂質の合計は、当該組成物の総脂質の25モル%~45モル%とすることができ、ここで中性脂質の各々は個々に5モル%~40%モル%である。特定の実施形態では、1つ以上の中性脂質の合計が組成物の総脂質の30モル%~40モル%とすることができ、ここで中性脂質の各々は個々に10モル%~30モル%である。1つ以上の中性脂質は、ホスファチジルエタノールアミン化合物及びホスファチジルコリン化合物から選択することができる。1つ以上の中性脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)及び1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含むか、又はそれらからなってもよい。コレステロール、DOPC及びDOPEの組合せは、当該組成物の全脂質の50モル%~85モル%とすることができる。
【0019】
様々な実施形態は、医薬組成物に関している。
ここで、式IIの化合物(例えば、化合物A)は、当該組成物の全脂質の15モル%~35モル%を構成する;
コレステロール、DOPC及びDOPEの組み合わせは、当該組成物の全脂質の50モル%~85モル%を構成する;
DSPE-mPEG-2000は、当該組成物の全脂質の1モル%~10モル%、又は1モル%~8モル%、又は4モル%~6モル%を構成する;
ここで、式IIの化合物(例えば、化合物A)、コレステロール、DOPC、DOPE及びDSPE-mPEG-2000の組合せは、当該組成物の全脂質の少なくとも97モル%(例えば、100モル%)を構成する。
【0020】
本発明の実施形態は、医薬組成物を含む。
ここで、式IIの化合物(例えば、化合物A)は、当該組成物の全脂質の20モル%~30モル%を構成する;
コレステロールは、当該組成物の全脂質の25モル%~35モル%を構成し、DOPC及びDOPEの組合せは、当該組成物の全脂質の30モル%~50モル%を構成する;
DSPE-mPEG-2000は、当該組成物の全脂質の1モル%~10モル%、又は1モル%~8モル%、又は4モル%~6モル%を構成する;
ここで、式IIの化合物(例えば、化合物A)、コレステロール、DOPC、DOPE及びDSPE-mPEG-2000の組合せは、当該組成物の全脂質の少なくとも97%(例えば、100モル%)を構成する。
【0021】
一実施形態において、本発明は、
10mgのAPI(26/52)、化合物A(全脂質の24~26モル%)、コレステロール(全脂質の29~31モル%)、DOPE(全脂質の19~21モル%)、DOPC(全脂質の19~21モル%)及びDSPE-mPEG-2000(全脂質の4~6モル%)を有する医薬組成物を含んでいる。
【0022】
一実施形態において、本発明は、
10mgのAPI(26/52)、49.1mgの化合物A(全脂質の約25.0モル%)、29.5mgの半合成コレステロール(全脂質の約30.0モル%)、37.8mgのDOPE(全脂質の約20.0モル%)、40.0mgのDOPC(全脂質の約20.0モル%)及び35.6mgのDSPE-mPEG-2000(全脂質の約4.99モル%)を有する医薬組成物を含んでいる。
【0023】
一実施形態において、本発明は
10mgのAPI(26/52)、49.1mgの化合物A(全脂質の約24.98モル%)、29.5mgの半合成コレステロール(全脂質の約30.01モル%)、37.8mgのDOPE(全脂質の約19.99モル%)、40.0mgのDOPC(全脂質の約20.02モル%)、及び35.6mgのDSPE-mPEG-2000(全脂質の約4.992モル%)を有する医薬組成物を含んでいる。
【0024】
一実施形態において、本発明は
10mgのAPI(26/52)、49.1mgの化合物A(全脂質の24.985モル%)、29.5mgの半合成コレステロール(全脂質の30.015モル%)、37.8mgのDOPE(全脂質の19.989モル%)、40.0mgのDOPC(全脂質の20.019モル%)、及び35.6mgのDSPE-mPEG-2000(全脂質の4.992モル%)を有する医薬組成物を含んでいる。
【0025】
医薬組成物はAPI(例えば、API(26/52))をカプセル化するナノ粒子を含むことができ、ナノ粒子は30~100nmのZ平均サイズを有する。
【0026】
医薬組成物はAPI(例えば、API(26/52))をカプセル化するナノ粒子を含むことができ、ナノ粒子は46nmのZ平均サイズ及び0.097のPDIを有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、医薬組成物が0.30未満のPDIを有するナノ粒子を含むことができる。
【0028】
ある実施形態において、薬学的溶液は、注射用の溶媒エタノール及び水、並びにスクロース、2-ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン、緩衝液及び上記医薬組成物の懸濁液を含むことができる。バッファーは、酢酸バッファー、クエン酸バッファー及びリン酸バッファーから選ぶことができる。特定の実施形態において、バッファーが酢酸及び酢酸ナトリウム、クエン酸及びクエン酸ナトリウム、並びにリン酸二水素カリウム及び無水リン酸水素二ナトリウムから選ぶことができ、更に塩化ナトリウムを含んでいてもよい。
【0029】
本発明の実施形態は、更に、医薬組成物が上記薬学的溶液の固体凍結乾燥物であることも企図している。製剤は、上記の薬学的溶液の凍結乾燥ケーキを含有するバイアルを含むことができ、バイアルのヘッドスペースは窒素ガスで満たされる。凍結乾燥ケーキは、スクロース、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、酢酸ナトリウム、及び医薬組成物の凍結乾燥残渣を含むのもであってもよい。
【0030】
凍結乾燥ケーキは、700mgのスクロース、467mgの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2.7mgの酢酸ナトリウム及び医薬組成物の凍結乾燥残渣を含むことができる。製剤バイアルは、透明な20mLのUSP Type Iガラスバイアルであってもよく、バリアフィルムストッパー及びフリップオフアルミニウムシールで密封されていてもよい。
【0031】
本発明の他の実施形態は、製剤と、凍結乾燥ケーキを再構成し、再構成された製剤を被験体に投与するための説明書とを有するキットを含むことができる。このキットは、凍結乾燥ケーキを再構成するための滅菌希釈剤及びIV注入バッグを含むことができる。
【0032】
種々の実施形態において、注入による投与のための薬物は、滅菌希釈剤中の製剤の凍結乾燥ケーキの再構成溶液を含むことができる。本明細書中で使用される場合、用語「希釈剤」は、薬理学的活性を欠くが、薬学的に必要又は所望され得る、医薬組成物中の成分を意味する。例えば、希釈剤は、注射、摂取又は吸入による投与のため、液体中に薬物を分散又は溶解させることなどによって、効能のある薬物の有効体積を増加させて投与を容易にするために使用することができる。希釈剤は、酢酸ナトリウム注射液、USPなどの酢酸ナトリウム溶液であってもよい。薬物溶液はAPI(26/52)などのAPIの濃度、例えば1.5mg/mLを含むことができ、APIをカプセル化するリポソームナノ粒子(例えばAPI(26/52))を含むことができる。
【0033】
薬物溶液の実施形態において、ナノ粒子は、10~150nmのサイズ、又は45~65nmのサイズであってもよい。ナノ粒子のPDIは、0.30未満であってもよい。ナノ粒子の平均電荷は、-10mV~+10mVであってもよい。
【0034】
薬物は1つ以上の製薬上許容される賦形剤(例えば、製薬上許容される張性賦形剤)をさらに含むことができる。本明細書で使用される「賦形剤」は、体積、濃度、安定性、結合活性、潤滑、崩壊能力などの望ましい物理的特性を組成物に与えるために医薬組成物に含まれる不活性物質である。特定の実施形態において、張性賦形剤は、スクロース又は2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンとすることができる。
【0035】
薬物は薬学的に許容されるpH調節賦形剤、例えば、水酸化ナトリウムをさらに含むことができ、ここで、薬物のpHは5~6とすることができる。
【0036】
本発明の実施形態は、更に、それを必要とする対象者における癌の1つ以上の症状を処置又は改善するための方法を企図し、この方法は、上記の薬物の治療有効量を対象者に投与することを包含する。薬物は、30~120分間の非経口注入によって投与することができる。がんは、肺がんの場合であってもよい。投与は、対象者におけるGST-πの発現を、少なくとも5日間で少なくとも5%減少させることができる。投与は、静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注入又は腹腔内注入によることができる。
【0037】
様々な実施形態は、医学療法における、及び、肺癌を含む癌の1つ以上の症状を治療又は改善するための薬物製品の使用に関する。薬物製品は、癌の1つ以上の症状を治療又は改善するための薬剤の製造において使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、GST-πを標的とするsiRNA、イオン化可能な脂質化合物A及びDSPE脂質化合物を含有する本発明の医薬製剤を用いた、in vivoのマウス肺への増強された分布を示す。
図1は、DMPE-mPEG-2000脂質化合物を用いた同様の製剤と比較して、製剤(siRNA GST-π、化合物A 25モル%、コレステロール30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%)の肺への蓄積が著しく高いことを示している。ナノ粒子リポソーム製剤において化合物AとDSPE脂質化合物との組合せは、肺におけるGST-π siRNAの蓄積を驚くほど増強した。
【
図2】
図2は、無胸腺ヌード(nu/nu)雌マウスへのA549細胞肺癌sub-Q異種移植モデルにおける、本発明のGST-πsiRNAのリポソーム製剤の腫瘍増殖阻害効力を示している。医薬製剤API(26/52)siRNA GST-π、化合物A 25mol%、コレステロール30mol%、DOPE 20mol%、DOPC 20mol%、DSPE-mPEG-2000 5mol%は、投与後数日以内に有意な腫瘍増殖阻害効果を示した。49日後、GST-π siRNAを含む医薬製剤は顕著に有利な腫瘍増殖阻害効力を示し、腫瘍体積は、ビヒクル対照と比較して、4mg/kg用量について3.4倍を超えて減少した。
【
図3】
図3は、無胸腺Balb/cヌード(nu/nu)雌マウスへのヒトH2009細胞肺癌サブQ異種移植モデルにおける、本発明のGST-πsiRNAのリポソーム製剤の腫瘍増殖阻害効力を示している。H2009はリンパ節転移肺腺癌細胞である。投与した薬物溶液を、10mg/バイアルのAPI(26/52)GST-π siRNAを含有する凍結乾燥医薬溶液から再構成した。医薬溶液は、医薬製剤(siRNA GST-π、化合物A 25モル%、コレステロール30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%)に基づく医薬製剤の懸濁液、並びに凍結乾燥保護用スクロース及び2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、並びにバッファーとしてアスコルビン酸27mg及び酢酸ナトリウム27mgを含有した。製剤を5.6mLの無菌WFIを含む薬物溶液に再構成して、1.5mg/mLのAPI(26/52)GST-π siRNAで再構成懸濁液を得た。その結果、KRAS変異皮下(sub-Q)異種移植H2009 NSCLC腫瘍モデルにおいて、当該薬物溶液の用量依存的な腫瘍増殖抑制作用が認められた。
【
図4】
図4は、無胸腺Balb/cヌード(nu/nu)雌マウスへのヒトH23細胞肺癌サブQ異種移植モデルにおける、本発明のGST-πsiRNAのリポソーム製剤の腫瘍増殖阻害効力を示している。H23は腺癌;非小細胞肺癌である。投与された組成物は、API(26/52)siRNA GST-π、化合物A 25モル%、コレステロール30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%、及び27mgのアスコルビン酸並びに27mgの酢酸ナトリウムを緩衝剤として含む医薬製剤に基づく医薬製剤の懸濁液を含有した。その結果、KRAS変異皮下(sub-Q)異種移植H23 NSCLC腫瘍モデルにおいて、当該医薬溶液の用量依存的な腫瘍増殖抑制作用が認められた。
【
図5】
図5は、無胸腺Balb/cヌード(nu/nu)雌マウスへのヒトH23細胞肺癌サブQ異種移植モデルにおける、本発明のGST-πsiRNAのリポソーム製剤の腫瘍増殖阻害効力を示している。投与された組成物は、API(26/52)siRNA GST-π、化合物A 25モル%、コレステロール30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%、及び27mgのアスコルビン酸並びに27mgの酢酸ナトリウムを緩衝剤として含む医薬製剤に基づく医薬製剤の懸濁液を含有した。56日目の結果は、KRAS変異皮下(sub-Q)異種移植片H23 NSCLC腫瘍モデルにおいて、当該医薬溶液の用量依存的な腫瘍増殖抑制作用を示した。
【
図6】
図6は、本発明の製剤についてのin vivoマウス肺の分布の肝臓に対する比を示している。投与された組成物は、2つの医薬製剤、すなわち「DMPE(左):」(API siRNA、化合物A 25モル%、コレステロール30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DMPE-mPEG-2000 5モル%)及び「DSPE(右):」(API siRNA、化合物A 25モル%、コレステロール30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%)に基づいた。結果は、in vivoマウスにおける肝臓に対する活性成分の肺に対する分布の比がDMPE-mPEG-2000と比較して、DSPE-mPEG-2000に基づく製剤について30倍高いことを示した。
【
図7】
図7は、リポソームカプセル化API siRNAを含有する本発明の製剤の実施形態についての、インビボマウス肺の分布の肝臓に対する比を示す。
【
図8】
図8は、リポソームカプセル化API siRNAを含有する本発明の製剤の実施形態についての、インビボマウス肺の分布の肝臓に対する比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の種々の実施形態は、悪性腫瘍への送達のための治療製剤において使用するための化合物及び組成物を提供する。いくつかの観点において、本発明は、活性物質を悪性腫瘍細胞、並びに悪性腫瘍を有する組織、器官及び対象者に送達及び分配するためのナノ粒子を提供するための化合物、組成物及び方法に関する。
【0040】
本発明の種々の実施形態は、GST-π核酸分子の発現を減少できる活性核酸API(活性siRNAなど)剤を含有する、臨床使用のために設計された製剤を提供する。
【0041】
本発明の医薬組成物の実施形態は、活性核酸API(例えば、siRNA)を悪性腫瘍の細胞に送達するための式I又はIIのイオン化可能な脂質(例えば、化合物A)を含むことができる。式I又はIIのイオン化可能な脂質(例えば、化合物A)は本発明の製剤中の追加の脂質成分と共に、悪性腫瘍を治療又は改善するための活性核酸API(例えば、siRNA)を送達及び分配するためのナノ粒子を形成するために使用することができる。
【0042】
本発明の医薬組成物の実施形態は、悪性腫瘍の細胞に活性核酸API(例えば、siRNA)を送達するための1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)脂質化合物を含むことができる。DSPE-mPEG-2000といったDSPE脂質化合物は、本発明の製剤中の更に異なる脂質成分と共に、悪性腫瘍を処置又は改善するための活性核酸API(例えば、siRNA)を送達及び分配するためのナノ粒子を形成するために使用してもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、式I又はIIのイオン化可能な脂質(例えば、化合物A)及びDSPE-mPEG-2000脂質成分と共に、GST-πを標的とするsiRNAである活性物質を含有する本発明の医薬組成物は、非経口投与によって肺への活性物質の分布を増強することができる。
【0044】
本発明の実施形態は、凍結乾燥に適した医薬組成物の医薬溶液を含む。医薬組成物の医薬溶液は、溶媒、例えば、注射用エタノール及び水、並びに凍結乾燥中に活性物質を保護する保護剤、例えば、スクロース及び2-ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリンを含むことができる。薬学的溶液は、また、緩衝液を含むことができる。薬学的溶液は、凍結乾燥中に維持され得る、医薬組成物の懸濁液を作製することを可能にする。
【0045】
さらなる実施形態において、本発明は、薬学的溶液から作製された固体凍結乾燥物組成物を含む。医薬溶液は固体ケーキ又は粉末に凍結乾燥することができ、これは医薬溶液の活性物質の活性を維持する。
【0046】
本発明の固体凍結乾燥物組成物の種々の実施形態は、製剤として使用するためのバイアル又は他の容器中で調製することができる。固体凍結乾燥組成物のバイアルを利用するキットは、製剤を使用するための、及び固体凍結乾燥組成物から再構成された薬物を調製するための説明書を含むことができる。
【0047】
さらなる実施形態において、本発明の活性物質は、固体凍結乾燥組成物の再構成形態を使用して送達され得る。無菌希釈剤で調製することができる固体凍結乾燥組成物の再構成溶液形態は、非経口送達のための薬物として使用することができる。
【0048】
別の観点において、本発明の実施形態は、対象者における新生物の処置のために、GST-π核酸分子又はポリペプチドの発現を減少させる治療組成物を利用するための方法を提供し、ここで、新生物は、KRAS突然変異を含むか、又は異常なKRAS発現レベルを示す細胞に関連する。
【0049】
本発明の実施形態の治療組成物は、siRNA又はshRNAなどの阻害核酸分子を含むことができる。
【0050】
KRAS関連悪性腫瘍又はKRAS関連癌は本明細書において、(a)体細胞性KRAS突然変異を含む癌細胞又は腫瘍細胞、又は(b)KRASの異常な発現レベルを有する癌細胞又は腫瘍細胞(限定するわけではないが、KRASをコードするDNAの増幅、又は正常な非癌細胞で見出されるレベルと比較した場合のKRAS遺伝子の過剰発現若しくはKRAS遺伝子の過少発現を含む)と定義される。
【0051】
GST-πは、GSTP1遺伝子によってコードされ、グルタチオン抱合を触媒する酵素を示す。GST-πはヒトを含む様々な動物に存在し、その配列情報は既知であり、NCBIデータベース受託番号(例えば、ヒト: NP_000843(NM_000852)、ラット: NP_036709(NM_012577)、マウス: NP_038569(NM_013541)などで与えられる。
【0052】
一実施形態において、本発明は、GST-πをコードするDNAを抑制するためのRNAi分子、及びGST-πのドミナントネガティブ変異体を包含する。
【0053】
一般に、対象者がKRAS変異又はKRAS増幅に関連する新生物(例えば、肺癌)を有すると診断された後、GST-πの抑制を含む処置の方法が選択される。
【0054】
GST-πを抑制する薬剤又は薬物の例には、RNAi分子が含まれる。
【0055】
凍結乾燥ナノ粒子製剤
いくつかの観点において、インビボでの活性物質の送達は、驚くべきことに、凍結乾燥され、再構成され、静脈内注射され得る本発明のナノ粒子製剤を用いて達成することができる。
【0056】
本発明の実施形態はさらに、トランスフェクションのための治療用核酸剤を送達するために使用することができる、有効な治療用組成物に再構成することができるナノ粒子の凍結乾燥形態を提供する。
【0057】
いくつかの局面において、本発明は、凍結乾燥プロセスにおいて安定である治療用脂質ナノ粒子の溶液又は懸濁液を形成するための組成物及び化合物を提供する。治療用脂質ナノ粒子は核酸剤をカプセル化することができ、固体凍結乾燥形態で転換及び保存することができる。凍結乾燥形態を再構成して、カプセル化された核酸剤を有する治療用脂質ナノ粒子を提供することができる。再構成された脂質ナノ粒子は、驚くほど有利なトランスフェクション特性(粒径及び分布を含む)を有することができる。
【0058】
本発明の実施形態は、核酸治療薬の長期保存のための安定な固体凍結乾燥形態を提供するために凍結乾燥プロセスを受けることができる治療用脂質ナノ粒子の溶液又は懸濁液を形成するための、ある範囲の組成物及び化合物を含む。
【0059】
さらなる観点において、本発明は、凍結乾燥プロセスにおいて安定である治療用脂質ナノ粒子の溶液又は懸濁液を形成するための化合物及び方法を提供する。本発明の凍結乾燥プロセスは、ナノ粒子が核酸剤をカプセル化することができる治療用脂質ナノ粒子の安定な凍結乾燥形態を提供することができる。凍結乾燥形態は一定期間貯蔵することができ、再構成して、カプセル化核酸剤を有する治療用脂質ナノ粒子を提供することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明は、凍結乾燥プロセスを経ることができ、核酸治療薬の長期貯蔵のための安定な固体凍結乾燥形態を供することができる脂質ナノ粒子の溶液又は懸濁液のための、ある範囲の組成物及び化合物を含む。本発明の組成物及び方法は、再構成することができ、有利な活性、粒径、貯蔵時間、及び血清安定性を供する凍結乾燥形態を提供することができる。
【0061】
さらなる観点において、本発明は、対象者、組織、及び器官に活性剤又は薬物化合物を送達及び分配するためのナノ粒子を提供するための化合物、組成物、及び方法に関する。
【0062】
一実施形態において、本発明は、細胞に活性剤を送達するための一連の脂質化合物及びイオン化可能な化合物を提供する。本開示の脂質化合物及びイオン化可能な化合物は、活性剤を送達及び分配するためのナノ粒子を形成するために使用することができる。
【0063】
一実施形態において、本発明は、例えば、ナノ粒子の懸濁液の凍結乾燥、及び懸濁液へのナノ粒子の再構成によって調製することができる、siRNA剤を含有する脂質ナノ粒子薬物製剤を企図する。
【0064】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、siRNA緩衝溶液中への脂質/エタノール溶液の高速注入によって合成することができる。第2のバッファーを透析ろ過し、TFFカートリッジを通して外部バッファーとして使用して、最終生成物の水性懸濁液を作製することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子が45nm~110nmの平均直径を有することができる。核酸活性剤の濃度は、1mg/mL~10mg/mLとすることができる。
【0066】
懸濁液が保護された組成物にされるとき、脂質ナノ粒子は懸濁液の凍結乾燥に耐えることができることが見出された。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の保護された組成物は、薬学的に許容される溶液中の脂質ナノ粒子の水性懸濁液、デキストリン化合物、及び糖質-糖化合物から構成することができる。脂質ナノ粒子は、1つ以上の核酸活性剤などの活性剤をカプセル化することができる。
【0068】
保護された懸濁液の凍結乾燥は、脂質ナノ粒子の懸濁液に再構成することができる固体凍結乾燥産物を提供できる。
【0069】
再構成懸濁液は、活性剤をカプセル化し封入し、凍結乾燥前の脂質ナノ粒子に匹敵する脂質ナノ粒子を含有することができる。
【0070】
特定の実施形態において、再構成された懸濁液は、凍結乾燥前の懸濁液の活性に匹敵する、封入された薬剤の活性を提供することができる。
【0071】
さらなる観点において、再構成された懸濁液は、凍結乾燥前の懸濁液のものに匹敵する安定なナノ粒子を提供することができる。特定の態様では、ナノ粒子の平均粒子サイズが凍結乾燥前の懸濁液中のナノ粒子のサイズにほぼ等しくすることができる。
【0072】
一実施形態において、本発明の組成物及び方法は、カプセル化された剤を有するナノ粒子から構成される、再構成された懸濁液の驚くべき活性及び安定性を提供することができる。
【0073】
さらなる観点において、凍結乾燥及び再構成することができる保護された懸濁液は、凍結乾燥に対する保護剤組成物を含有することができる。本発明の保護剤組成物は、デキストリン化合物及び糖質-糖化合物から構成することができる。デキストリン及び糖化合物の総量は、保護された懸濁液の2%~20%(w/v)とすることができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、デキストリン化合物は、保護剤組成物中のデキストリン及び糖化合物の総量の40%~70%(w/v)とすることができる。特定の実施形態において、デキストリン化合物は、保護剤組成物中のデキストリン及び糖化合物の総量の40%~55%(w/v)とすることができる。さらなる実施形態において、デキストリン化合物は、保護剤組成物中のデキストリン及び糖化合物の総量の40%~45%(w/v)とすることができる。これらの組成物は、再構成されたナノ粒子懸濁液の予想外に有利な特性、例えば、ナノ粒子サイズ又は活性がわずかにしか変化しないといった特性を供することができる。
【0075】
いくつかの観点において、ナノ粒子の保護された懸濁液の凍結乾燥及び再構成の際に、ナノ粒子の平均サイズは、凍結乾燥の前の元々の組成物におけるサイズの10%以内とすることができる。特定の態様では、ナノ粒子の保護された懸濁液の凍結乾燥及び再構成時に、ナノ粒子の平均サイズは凍結乾燥前の元々の組成物中におけるサイズの5%以内とすることができる。
【0076】
本発明は、ナノ粒子の懸濁液の凍結乾燥及び保存期間後の懸濁液へのナノ粒子の再構成によって調製することができる、例えばsiRNA剤を含有する脂質ナノ粒子薬物製剤を企図する。再構成された懸濁液は、凍結乾燥前の懸濁液の活性に匹敵する、カプセル化された剤の活性を供することができる。
【0077】
保存期間の後に調製された再構成懸濁液は、活性剤をカプセル化した、凍結乾燥前の脂質ナノ粒子に匹敵する脂質ナノ粒子を含有することができる。
【0078】
特定の実施形態では、保存期間の後に調製された再構成懸濁液は、凍結乾燥前の懸濁液の活性に匹敵する、カプセル化した剤の活性を供することができる。
【0079】
さらなる局面において、保存期間の後に調製された再構成懸濁液は、凍結乾燥前の懸濁液に匹敵する安定なナノ粒子を提供することができる。特定の態様では、ナノ粒子の平均粒子サイズが凍結乾燥前の懸濁液中のナノ粒子のサイズにほぼ等しくすることができる。
【0080】
凍結乾燥前の脂質ナノ粒子製剤
本発明の実施形態は、凍結乾燥プロセスに対する保護化合物を含有する、脂質ナノ粒子の組成物を提供することができる。
【0081】
脂質ナノ粒子は、当技術分野で公知の任意の組成を有することができる。脂質ナノ粒子は、当技術分野で公知のプロセスを含む任意のプロセスによって、合成され、封入されたカーゴ(cargo)を装填されてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子が浸漬注入プロセスによって調製することができる。脂質ナノ粒子のためのプロセスのいくつかの例は、米国特許出願公開第2013/0115274号に記載されている。
【0083】
リポソームを調製するためのいくつかの例は、Szoka、Ann、Rev. Biophys. Bioeng. 9:467(1980); Liposomes、Marc J. Ostro、ed、Marcel Dekker、Inc、New York、1983、Chapter 1に記載されている。
【0084】
一般に、脂質ナノ粒子は、有機溶媒中の脂質成分を、活性核酸剤を含有する緩衝水溶液と混合することによって合成することができる。リポソームは、濾過又は押出によってサイズ分けすることができる。リポソーム懸濁液又は溶液は、透析ろ過によってさらに転換することができる。
【0085】
凍結乾燥プロセスのために安定化される、本発明の脂質ナノ粒子組成物の実施形態は、懸濁液中において核酸剤などの1つ以上の活性剤をカプセル化した脂質ナノ粒子を含有してもよい。懸濁液は水性であってもよく、エタノールなどの水混和性溶媒を含有してもよい。凍結乾燥プロセスに対して安定化される組成物は、凍結乾燥プロセスにおいてリポソームを安定化するために保護化合物をさらに含有してもよい。
【0086】
合成される脂質ナノ粒子の平均サイズは、40nm~120nm、45nm~110nm、45nm~80nm、又は45nm~65nmであってもよい。
【0087】
本発明の脂質ナノ粒子組成物中の活性剤の濃度は、約0.1mg/mL~約10mg/mLの範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、本発明の脂質ナノ粒子組成物中の活性剤の濃度は、0.5mg/mL~8mg/mL、又は1mg/mL~6mg/mL、又は2mg/mL~5mg/mL、又は3mg/mL~4mg/mLであってもよい。
【0088】
保護化合物の例には、デキストリン化合物が含まれる。
【0089】
デキストリン化合物の例には、マルトデキストリン並びにβ-及びγ-シクロデキストリンが含まれる。
【0090】
デキストリン化合物としては、メチル化β-及びγ-シクロデキストリン化合物、並びにスルホアルキルエーテルβ-及びγ-シクロデキストリン化合物を例示することができる。
【0091】
デキストリン化合物としては、2、3及び6のヒドロキシル位置のうち1つ以上を、スルホアルキル、ベンゼンスルホアルキル、アセトアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルスクシネート、ヒドロキシアルキルマロネート、ヒドロキシアルキルグルタレート、ヒドロキシアルキルアジペート、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルマレイン酸、ヒドロキシアルキルシュウ酸、ヒドロキシアルキルフマレート、クエン酸ヒドロキシアルキル、酒石酸ヒドロキシアルキル、リンゴ酸ヒドロキシアルキル、又はクエン酸ヒドロキシアルキル基で置換されたシクロデキストリン化合物を例示することができる。
【0092】
デキストリン化合物としては、(2-ヒドロキシプロピル)-βシクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリンコハク酸塩、(2-ヒドロキシプロピル)-γシクロデキストリン、及び2-ヒドロキシプロピル-γシクロデキストリンコハク酸塩を例示することができる。
【0093】
デキストリン化合物としては、ヒドロキシエチルβ-シクロデキストリンを例示することができる。
【0094】
デキストリン化合物としては、ジメチルβ-シクロデキストリン及びトリメチルβ-シクロデキストリンを例示することができる。
【0095】
デキストリン化合物としては、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン及びスルホブチルエーテルγ-シクロデキストリンを例示することができる。
【0096】
デキストリン化合物としては、メチル-β-シクロデキストリン及びメチル-γ-シクロデキストリンを例示することができる。
【0097】
デキストリン化合物としては、ヒドロキシプロピル-スルホブチル-β-シクロデキストリンを例示することができる。
【0098】
デキストリン化合物としては、H107 SIGMAシクロデキストリン(Sigma-Aldrich Corp.) を例示することができる。
【0099】
デキストリン化合物としては、CAVAMAX、CAVASOL、及びCAVATRONシクロデキストリン(Ashland Inc.)を例示することができる。
【0100】
デキストリン化合物としては、KLEPTOSE及びCRYSMEBシクロデキストリン(Roquette America Inc.)を例示することができる。
【0101】
デキストリン化合物としては、CAPTISOLシクロデキストリン(Ligand Pharmaceuticals、Inc.)を例示することができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、デキストリン化合物としては、ポリマー鎖又はネットワークに結合したデキストリン化合物を例示することができる。例えば、シクロデキストリン分子をポリアクリル酸のポリマーに結合させることができる。さらなる実施形態において、シクロデキストリン分子は、アクリロイル基などの架橋化合物ととともに連結されたものでも良い。特定の実施形態では、結合したシクロデキストリン化合物を有するビニルアクリレートヒドロゲル形態を使用することができる。
【0103】
いくつかの観点において、本発明の脂質ナノ粒子組成物において使用されるデキストリン化合物は、脂質ナノ粒子組成物に導入される前に吸着質化合物と組み合わせることができる。いずれか1つの特定の理論に拘束されることを望まないが、デキストリン化合物によるステロール化合物の予備吸着することで、再構成された製剤における活性剤の失活を防止できる包接錯体を形成できる。
【0104】
吸着化合物としては、コレステロール、ラノステロール、ザイモステロール、ザイモステノール、デスモステロール、スチグマスタノール、ジヒドロラノステロール、7-デヒドロコレステロールを例示することができる。
【0105】
吸着化合物としては、ペグ化コレステロール、及びコレスタン3-オキソ-(C1-22)アシル化合物、例えば、酢酸コレステリル、アラキドン酸コレステリル、酪酸コレステリル、ヘキサノ酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、パルミチン酸コレステリル、ベフェネートコレステリル、ステアリン酸コレステリル、カプリル酸コレステリル、n-デカノ酸コレステリル、ドデカノ酸コレステリル、ネルボン酸コレステリル、ペラルギン酸コレステリル、n-吉草酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、エライジン酸コレステリル、エルカ酸コレステリル、ヘプタン酸コレステリル、リノーレライジ酸コレステリル及びリノール酸コレステリルを例示することができる。
【0106】
吸着化合物としては、フィトステロール、β-シトステロール、カンペステロール、エルゴステロール、ブラシカステロール、デルタ-7-スチグマステロール、及びデルタ-7-アベナステロールを例示することができる。
【0107】
保護化合物としては、更に糖質化合物(saccharide compound)を例示することができる。糖質化合物としては、糖化合物(sugar compound)を例示することができる。
【0108】
保護糖化合物の例には、単糖類、例えばC(5~6)アルドース及びケトース、ならびに二糖類、例えばスクロース、ラクトース、ラクツロース、マルトース、トレハロース、セロビオース、コジビオース、サケビオース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオース、ツラノース、マルトロース、イソマルトロース、ゲンチオビウロース、マンノビオース、メリビオース、メリビウロース、及びキシロビオースを例示することができる。
【0109】
保護糖質化合物の例には、フィコールのような多糖類が含まれる。
【0110】
凍結乾燥前製剤中の保護化合物の濃度は、約1%(w/v)~約25%(w/v)とすることができる。
【0111】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥前製剤中の保護化合物の濃度は、2%(w/v)~20%(w/v)、又は4%(w/v)~16%(w/v)、又は5%(w/v)~15%(w/v)、又は6%(w/v)~14%(w/v)、又は8%(w/v)~12%(w/v)とすることができる。
【0112】
特定の実施形態においては、凍結乾燥前製剤中の保護化合物の濃度は、6%(w/v)、又は8%(w/v)、又は10%(w/v)、又は12%(w/v)、又は14%(w/v)、又は16%(w/v)、又は18%(w/v)、又は20%(w/v)、又は22%(w/v)、又は24%(w/v)とすることができる。
【0113】
凍結乾燥プロセス
凍結乾燥プロセスは、医薬技術分野で知られているように、ガラス容器、又は、例えば、ガラスバイアル、又はデュアルチャンバー容器などの任意の適切な容器中で実施することができる。
【0114】
保護化合物を含有する本発明の安定化脂質ナノ粒子組成物は、ガラス容器に導入することができる。容器に添加される組成物の体積は、0.1~20mL、又は1~10mLとすることができる。
【0115】
医薬技術分野で知られているものを含む、任意の凍結乾燥プロセスを使用することができる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、18th Ed、Mack Publishing Co、Easton、Penn(1990)を参照されたい。
【0116】
凍結乾燥プロセスは、保護剤安定化脂質ナノ粒子組成物を約-40℃~約-30℃の温度で凍結する工程を含むことができる。凍結組成物は、凍結乾燥組成物から乾燥することができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、凍結工程は、温度を周囲温度から最終温度に数分間かけて温度勾配させることができる。温度勾配は、約1℃/分とすることができる。
【0118】
いくつかの実施形態において、乾燥工程は、約0~250mTorr、又は50~150mTorrの範囲の圧力で、約-15℃~約-38℃の温度で行うことができる。乾燥工程は、より高い温度で、周囲温度まで、数日までの期間にわたって継続することができる。固体凍結乾燥物質中の残留水のレベルは、約5%未満、又は4%未満、又は3%未満、又は2%未満、又は1%(w/v)未満とすることができる。
【0119】
本発明の実施形態の保護剤安定化脂質ナノ粒子組成物は、凍結乾燥後、医薬分野で公知の方法によって再構成することができる。
【0120】
いくつかの観点において、本発明は、凍結乾燥後の本発明の保護剤安定化脂質ナノ粒子組成物から作製される、再構成された製剤における凝集粒子のレベルを阻害する方法を提供する。
【0121】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥後の本発明の保護剤安定化脂質ナノ粒子組成物から作製される再構成された製剤は、凝集体粒子のレベルを低下させることができる。
【0122】
特定の実施形態においては、凍結乾燥後の本発明の保護剤安定化脂質ナノ粒子組成物から作製された再構成薬物製品は、約0.2μmを超える、又は約0.5μmを超える、又は約1μmを超えるサイズを有する凝集粒子のレベルを低下させることができる。
【0123】
再構成された製剤
凍結乾燥物は、薬学的に受容可能な担体中で再構成することができる。
【0124】
薬学的に許容される担体としては、滅菌水、注射用水、滅菌生理食塩水、注射用静菌水、及びネブライザー溶液を例示することができる。
【0125】
薬学的に許容される担体としては、薬学的に許容される溶液を例示することができる。
【0126】
薬学的に許容される溶液としては、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含有する緩衝液を例示することができる。
【0127】
薬学的に許容される溶液としては、薬学的に許容される緩衝溶液を例示することができる。
【0128】
薬学的に許容される溶液としては、マレイン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、重炭酸ナトリウム、及びグリシンの緩衝溶液を例示することができる。
【0129】
再構成された凍結乾燥物は、製剤として使用することができる。
【0130】
再構成された凍結乾燥物は、等張食塩水又は他の賦形剤でさらに希釈して、投与のための所定の濃度を提供することができる。
【0131】
賦形剤としては、緊張剤を例示することができる。
【0132】
賦形剤としては、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、a-カゼイン、グロブリン、a-ラクトアルブミン、LDH、リゾチーム、ミオグロビン、オボアルブミン、及びRNase Aなどの安定剤を例示することができる。
【0133】
賦形剤としては、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、及び重炭酸ナトリウムなどの緩衝剤を例示することができる。
【0134】
賦形剤としては、グリシン、アラニン、アルギニン、ベタイン、ロイシン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、プロリン、4-ヒドロキシプロリン、サルコシン、γ-アミノ酪酸、アラノピン、オクトピン、ストロンビン、及びトリメチルアミンN-オキシド等のアミノ酸を例示することができる。
【0135】
賦形剤としては、ポリソルベート20、ポリソルベート80、及びポロキサマー407等の非イオン性界面活性剤を例示することができる。
【0136】
賦形剤としては、ホスホチジルコリン、エタノールアミン、アセチルトリプトファネート、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、デキストラン、及びゼラチン等の分散剤を例示することができる。
【0137】
賦形剤として、アスコルビン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、及びグルタチオン等の抗酸化剤を例示することができる。
【0138】
賦形剤としては、ジチオトレイトール、チオール、及びチオフェン等の還元剤を例示することができる。
【0139】
賦形剤としては、EDTA、EGTA、グルタミン酸、及びアスパラギン酸等のキレート剤を例示することができる。
【0140】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥物は、注射針を用いて、栓をしたバイアルを通して再構成することができる。凍結乾燥物はバイアルを振盪しながら、又は振盪せずに再構成することができる。
【0141】
再構成のための時間は、3~30秒又はそれ以上であってもよい。
【0142】
いくつかの実施形態において、再構成された核酸薬物生成物が0.2μmを超えるサイズを有する凝集粒子を0.001%(w/v)未満で有することができる。
【0143】
特定の観点において、再構成された核酸薬物産物は、サイトカイン活性化を減少することができる。
【0144】
さらなる観点において、核酸薬物産物は、6ヶ月の貯蔵時間後に再構成することができ、核酸剤の80%の活性を保持することができる。
【0145】
いくつかの実施形態において、核酸薬物生成物は、6ヶ月の貯蔵期間後に再構成することができ、脂質ナノ粒子の平均粒径が凍結乾燥前よりも大きくなったとしても25%未満とすることができる。
【0146】
特定の実施形態において、核酸薬物産物は、24ヶ月の保存期間後に再構成することができ、核酸剤の90%の活性を保持することができる。
【0147】
さらなる実施形態において、核酸薬物産物は、24ヶ月の貯蔵期間後に再構成することができ、脂質ナノ粒子の平均粒径は凍結乾燥前よりも大きくなったとしても25%未満とすることができる。
【0148】
RNAi分子
当業者は、報告された配列が経時的に変化すること、そして本明細書中の核酸分子において必要とされる任意の変化を適宜組み込み得ることを理解する。
【0149】
本発明の実施形態は、核酸分子を用いたGST-π発現の遺伝子サイレンシングのための組成物及び方法を提供することができる。
【0150】
本発明の実施形態は、核酸分子を用いたGST-π発現の組合せの遺伝子サイレンシングのための組成物及び方法を提供することができる。
【0151】
RNA干渉を媒介することができる核酸分子としては、siRNA(低分子干渉RNA)、miRNA(マイクロRNA)、shRNA(ショートヘアピンRNA)、ddRNA(DNA指向RNA)、piRNA(Piwi相互作用RNA)、saRNA(低分子活性化RNA)、又はrasiRNA(反復関連siRNA)などの二重鎖RNA、及びそれらの修飾形態を含む、RNA干渉(RNAi分子)における活性分子を例示することができる。
【0152】
本明細書中に開示される組成物及び方法はまた、対象者における種々の種類の悪性腫瘍を処置する際に使用され得る。
【0153】
本発明の実施形態の核酸分子及び方法は、GST-πをコードする遺伝子の発現をダウンレギュレートする組合わせでプールされるか、又は使用することができる。
【0154】
本発明の実施形態の組成物及び方法は、疾患の維持及び/又は発生、並びに悪性腫瘍などのGST-πに関連する状態又は障害に関連するGST-πタンパク質及び/又は当該タンパク質をコードする遺伝子の発現を調節又は制御することができる1つ以上の核酸分子を含むことができる。
【0155】
本発明の実施形態の組成物及び方法は、GST-πの例示的配列を参照して記載される。当業者は、本発明の種々の観点及び実施形態が任意の関連するGST-π遺伝子、配列、又はバリアント(例えば、ホモログ遺伝子及び転写バリアント)、ならびに任意のGST-π遺伝子に関連する一塩基多型(SNP)を含む多型に向けられることを理解する。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物及び方法は、GST-π遺伝子、例えばヒトGST-πの発現をダウンレギュレートする二本鎖短鎖干渉核酸(siRNA)分子を提供することができる。
【0157】
本発明のRNAi分子は、GST-π、及び例えば、相補的配列を使用することによって、または非標準的な塩基対(例えば、ミスマッチ及び/又はウォブル塩基対)を組み込むことによって、任意の相同配列を標的とすることができる。これにより追加の標的配列を提供できる。
【0158】
ミスマッチが同定された場合、非標準的な塩基対(例えば、ミスマッチ及び/又はウォブル塩基)を使用して、2つ以上の遺伝子配列を標的とする核酸分子を生成することができる。
【0159】
例えば、UU及びCC塩基対などの非標準的な塩基対を使用して、配列相同性を共有する異なる標的に対して標的化配列とすることができる核酸分子を生成できる。したがって、RNAi分子は相同遺伝子間で保存されているヌクレオチド配列を標的とすることができ、単一のRNAi分子を用いて複数の遺伝子の発現を阻害することができる。
【0160】
いくつかの観点において、本発明の実施形態の組成物及び方法は、GST-πmRNAの任意の部分に対して活性であるRNAi分子を含む。RNAi分子は、GST-π配列をコードする任意のmRNAに相補的な配列を含むことができる。
【0161】
いくつかの実施形態において、本開示のRNAi分子は、GST-πRNAに対して活性を有することができ、ここで、RNAi分子は変異体GST-πコード配列、例えば、悪性腫瘍に関連することが当技術分野で知られている変異体GST-π遺伝子を有するRNAに相補的な配列を含むことができる。
【0162】
さらなる実施形態において、本発明のRNAi分子がGST-π遺伝子発現のサイレンシングを媒介することができるヌクレオチド配列を含むことができる。
【0163】
GST-πmRNAを標的とする本発明の実施形態のRNAi分子の例を表1に示す。
【0164】
【0165】
表1のキー:大文字A、G、C及びUは、それぞれリボ-A、リボ-G、リボ-C及びリボ-Uを指す。小文字a、u、g、c、tはそれぞれ、2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C、デオキシチミジン(dT=T=t)を意味する。下線は2'-OMe置換、例えばUを意味する。小文字fは2'-デオキシ-2'-フルオロ置換を意味し、例えばfUは2'-デオキシ-2'-フルオロ-Uである。小文字sは、ホスホロチオエート結合を指す。Nは、A、C、G、U、U、A、c、g、u、t、又は修飾された、反転された、もしくは化学的に修飾されたヌクレオチドである。
【0166】
さらなる観点において、本発明の実施形態の核酸分子は、18~22ヌクレオチド長である分子の各鎖を有することができる。核酸分子は、19ヌクレオチド長の二重鎖領域を有することができる。
【0167】
特定の実施形態において、核酸分子が一本鎖として連結され、ループによって一端で連結された二重鎖領域を形成するポリヌクレオチドセンス鎖及びポリヌクレオチドアンチセンス鎖を有することができる。
【0168】
本発明の実施形態の核酸分子は、平滑末端を有することができ、1つ以上の3'オーバーハングを有することができる。
【0169】
本発明の実施形態の核酸分子は、遺伝子サイレンシングに活性なRNAi分子、例えば、遺伝子サイレンシングに活性なdsRNA、siRNA、マイクロRNA、又は遺伝子サイレンシングに活性なshRNA、並びにDNA指向性RNA(ddRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)、及び反復関連siRNA(rasiRNA)とすることができる。
【0170】
本発明はさらに、1つ以上の本発明の核酸分子及び薬学的に許容される担体を含む組成物を企図する。担体としては、脂質分子又はリポソームを挙げることができる。
【0171】
いくつかの実施形態において、本発明はある範囲の核酸分子を提供し、ここで、a)分子はポリヌクレオチドセンス鎖及びポリヌクレオチドアンチセンス鎖を有し; b)分子の各鎖の長さが15~30ヌクレオチドであり; c)アンチセンス鎖における15~30ヌクレオチドの連続領域がGST-πをコードするmRNAの配列に相補的であり; d)センス鎖の少なくとも一部がアンチセンス鎖の少なくとも一部に相補的であり、そして分子は、長さが15~30ヌクレオチドの二重鎖領域を有する。
【0172】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、GST-πをコードするmRNAの配列に相補的なアンチセンス鎖における15~30ヌクレオチドの連続領域を有することができ、当該領域は分子の二重鎖領域に位置する。
【0173】
さらなる実施形態では、核酸分子は、GST-πをコードするmRNAの配列に相補的であるアンチセンス鎖の15~30ヌクレオチドの連続領域を有することができる。
【0174】
特定の実施形態において、核酸分子の各鎖は、18~22ヌクレオチド長とすることができる。核酸分子の二重鎖領域は、19ヌクレオチド長とすることができる。
【0175】
代替形態においては、核酸分子は、一本鎖として連結され、ループによって一端で連結された二重鎖領域を形成するポリヌクレオチドセンス鎖及びポリヌクレオチドアンチセンス鎖を有することができる。
【0176】
本開示の核酸分子のいくつかの実施形態は、平滑末端を有するものであってもよい。特定の実施形態において、核酸分子は、1つ以上の3'オーバーハングを有するものであってもよい。
【0177】
本発明の実施形態は、遺伝子サイレンシングに活性なRNAi分子である、ある範囲の核酸分子を提供する。本発明の核酸分子は、遺伝子サイレンシングに活性なdsRNA、siRNA、マイクロRNA、又はshRNA、並びにDNA指向性RNA(ddRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)、又は反復関連siRNA(rasiRNA)とすることができる。核酸分子は、GST-πの発現阻害に対して活性を有することができる。
【0178】
本発明の実施形態はさらに、GST-πのノックダウンについてIC50が100pM未満である核酸分子を提供する。
【0179】
本発明のさらなる実施形態は、GST-πのノックダウンについてIC50が50pM未満である核酸分子を提供する。
【0180】
本発明はさらに、1つ以上の本発明の核酸分子を、薬学的に許容される担体とともに含む組成物を企図している。特定の実施形態において、担体は、脂質分子又はリポソームとすることができる。
【0181】
本発明の実施形態の化合物及び組成物は、必要とする対象者に化合物又は組成物を投与することによって、GST-π関連疾患を予防又は治療する方法において有用である。
【0182】
本明細書で使用される場合、RNAi分子は、siRNA(低分子干渉RNA)、miRNA(マイクロRNA)、shRNA(短鎖ヘアピンRNA)、ddRNA(DNA指向性RNA)、piRNA(Piwi相互作用RNA)、又はrasiRNA(反復関連siRNA)及びそれらの修飾形態などの二重鎖RNAを含むRNA干渉を引き起こす任意の分子を意味する。これらのRNAi分子は、商業的に入手可能であるか、又は公知の配列情報などに基づいて設計及び調製することができる。アンチセンス核酸には、RNA、DNA、PNA、又はそれらの複合体が含まれる。本明細書中で使用される場合、DNA/RNAキメラポリヌクレオチドは、標的遺伝子の発現を阻害するDNA及びRNAから構成される二本鎖ポリヌクレオチドを含む。
【0183】
1つの実施形態において、本発明の実施形態の薬剤は、治療剤としてsiRNAを含有する。siRNA分子は、約10~50又はそれ以上のヌクレオチドの長さを有することができる。siRNA分子は、約15~45ヌクレオチドの長さを有することができる。siRNA分子は、約19~40ヌクレオチドの長さを有することができる。siRNA分子は、19~23ヌクレオチドの長さを有することができる。本発明のsiRNA分子は、標的mRNAに対するRNAiを媒介することができる。Ambion、Inc(Austin、TX)及びWhitehead Institute of Biomedical Research at MIT(Cambridge、MA)から入手可能なものなどの市販の設計ツール及びキットにより、siRNAの設計及び産生が可能となる。
【0184】
悪性腫瘍を治療するための方法
本発明の実施形態は、GST-π及び/又はGST-πタンパク質の発現をダウンレギュレート又は阻害するために使用できるRNAi分子を提供することができる。
【0185】
いくつかの実施形態において、本発明のRNAi分子は、悪性腫瘍のような疾患又は状態に関連しているGST-πハプロタイプ多型から生じるGST-π及び/又はGST-πタンパク質の発現をダウンレギュレート又は阻害するために使用できる。
【0186】
GST-πタンパク質又はmRNAレベルをモニタリングすることで、遺伝子サイレンシングの特徴、そして本発明の化合物及び組成物の効力を決定することができる。
【0187】
本開示の実施形態のRNAi分子は、1つ以上の遺伝子の発現を調節するために、個別に、又は他のsiRNAと組み合わせて使用することができる。
【0188】
本開示の実施形態のRNAi分子を個別に、又は組み合わせて、又は他の公知の薬物と組み合わせて使用することで、疾患を予防若しくは治療することができ、又は悪性腫瘍を含むGST-πに関連する状態もしくは障害の症状を改善することができる。
【0189】
本発明の実施形態のRNAi分子を使用することで、配列特異的な様式でGST-πの発現を調節又は阻害することができる。
【0190】
本開示の実施形態のRNAi分子は、一連の連続するヌクレオチドがGST-πmRNAに少なくとも部分的に相補的であるガイド鎖を含むことができる。
【0191】
特定の観点において、悪性腫瘍は、本発明のRNAi分子を使用するRNA干渉によって処置することができる。
【0192】
悪性腫瘍の処置は、適切な細胞ベースのモデル、並びにex vivo又はin vivo動物モデルにおいて特徴付けられる。
【0193】
悪性腫瘍の治療は、冒された組織の細胞におけるGST-πmRNAのレベル又はGST-πタンパク質のレベルを決定することによって特徴付けられる。
【0194】
悪性腫瘍の治療は、罹患した臓器又は組織の非侵襲的医学的スキャンによって特徴付けられる。
【0195】
本発明の実施形態は、それを必要とする対象者におけるGST-πに関連する疾患又は状態の症状を予防、治療、又は改善するための方法を含むことができる。
【0196】
いくつかの実施形態において、対象者における悪性腫瘍の症状を予防、治療、又は改善するための方法は、対象者又は生物におけるGST-π遺伝子の発現を調節するために本発明のRNAi分子を対象者に投与することを含むことができる。
【0197】
いくつかの実施形態において、本発明は、細胞又は生物を本発明のRNAi分子と接触させることによって、細胞又は生物におけるGST-π遺伝子の発現をダウンレギュレートするための方法を企図している。
【0198】
GST-π阻害核酸分子は、遺伝子発現を減少させることができる一本鎖又は二本鎖核酸分子として使用できるヌクレオチドオリゴマーとすることができる。1つのアプローチでは、阻害核酸分子は、RNA干渉(RNAi)を介した遺伝子発現のノックダウンに用いられる2本鎖RNAである。一実施形態においては、本発明のヌクレオチドオリゴマーの8~25個(例えば、8、10、12、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個)の連続したヌクレオチドを含む、RNA干渉において活性である二本鎖RNA(dsRNA)分子が作製される。dsRNAは二重結合されたRNAの二つの相補的な鎖、又は自己結合(小さなヘアピン(sh)RNA)を有する単一のRNA鎖とすることができる。
【0199】
いくつかの実施形態において、RNA干渉において活性であるdsRNAは約21又は22塩基対であるが、より短くても長くてもよく、約29ヌクレオチドまでであってもよい。二本鎖RNAは標準的な技術(例えば、化学合成又はインビトロ転写)を使用して作製することができる。キットは、例えば、Ambion(Austin, TX)及びEpicentre(Madison,WI)から入手可能である。
【0200】
哺乳動物細胞においてdsRNAを発現させるための方法は、Brummelkampら、Science 296:550-553,2002; Paddisonら、Genes & Devel. 16:948-958, 2002; Paulら、Nature Biotechnol. 20:505-508, 2002; Suiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:5515-5520,2002; Yuら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:6047-6052,2002; Miyagishiら、Nature Biotechnol. 20:497-500, 2002;及びLeeら、Nature Biotechnol. 20:500-505 2002, 2002に記載されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0201】
GST-π遺伝子に「対応する」阻害核酸分子は、二本鎖遺伝子の少なくとも1つの断片を含み、二本鎖阻害核酸分子の各鎖が標的GST-π遺伝子の相補鎖に結合することができる。阻害核酸分子は、参照GST-π配列に完全に対応する必要はない。
【0202】
一実施形態においては、siRNAが標的核酸と少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、又はさらに99%の配列同一性を有する。例えば、1~2塩基対のミスマッチを有する19塩基対の二重鎖は、本発明の方法において有用であると考えられる。他の実施形態において、阻害核酸分子のヌクレオチド配列は、1個、2個、3個、4個、5個又はそれ以上のミスマッチを示す。
【0203】
本発明の実施形態によって提供される阻害核酸分子は、siRNAに限定されないが、GST-π核酸分子又はポリペプチドの発現を減少させるのに十分な任意の核酸分子を含む。本明細書中に提供されるDNA配列は、例えば、コードされるタンパク質の発現を減少させるための治療的アンチセンス核酸分子の発見及び開発において使用することができる。本発明の実施形態はさらに、触媒RNA分子又はリボザイムを提供する。このような触媒RNA分子は、インビボで標的核酸分子の発現を阻害するために使用できる。アンチセンスRNA内にリボザイム配列を含めることで、分子にRNA切断活性を与えることができ、それによって構築物の活性を増加させる。標的RNA特異的リボザイムの設計及び使用はHaseloffら、Nature 334:585-591、1988及びUS 2003/0003469 A1に記載され、その各々は参考として援用される。
【0204】
本発明の種々の実施形態において、触媒核酸分子は、ハンマーヘッドモチーフ又はヘアピンモチーフにおいて形成される。このようなハンマーヘッドモチーフの例はRossiら、Aids Research and Human Retroviruses,8:183,1992に記載されている。ヘアピンモチーフの例はHampelら、Biochemistry,28:4929,1989、及びHampelら、Nucleic Acids Research,18: 299,1990に記載されている。当業者は、酵素的核酸分子においては1つ以上の標的遺伝子RNA領域に相補的である特異的基質結合部位が必要であること、それは分子にRNA切断活性を付与する基質結合部位内又はその周囲にヌクレオチド配列があることを認識している。
【0205】
標的の抑制は、抑制剤が使用されていない細胞と比較して、抑制されている細胞における対応タンパク質の発現又は活性によって決定することができる。タンパク質の発現は任意の公知の技術によって評価でき、その例としては抗体、EIA、ELISA、IRA、IRMAを利用する免疫沈降法、ウェスタンブロット法、免疫組織化学的方法、免疫細胞化学的方法、フローサイトメトリー法、タンパク質又はその特異的フラグメントをコードする核酸、又は前記核酸の転写産物(例えば、mRNA)若しくはスプライシング産物と特異的にハイブリダイズする核酸を利用する種々のハイブリダイゼーション法、ノーザンブロット法、サザンブロット法及び種々のPCR法を含む。
【0206】
タンパク質の活性は、例えば、Raf-1(特にリン酸化Raf-1)又はEGFR(特にリン酸化EGFR)などのタンパク質への結合を含むタンパク質の既知の活性を、例えば、免疫沈降法、ウェスタンブロット法、アマス解析法、プルダウン法、又は表面プラズモン共鳴(SPR)法などの任意の既知の方法の手段によって分析することによって評価することができる。
【0207】
変異KRASの例としては、特に限定されないが、内因性GTPaseを阻害する突然変異又はグアニンヌクレオチド交換速度を増加させる突然変異など、KRASの恒常的活性化を引き起こす突然変異を有するものが挙げられる。このような突然変異の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ヒトKRASにおけるアミノ酸12、13及び/又は61における突然変異(内因性GTPaseの阻害)、並びにヒトKRASにおけるアミノ酸116及び/又は119における突然変異(グアニンヌクレオチド交換速度の増加)(Bos、Cancer Res. 1989; 49(17): 4682-9、Levi et al、Cancer Res.1991; 51(13): 3497-502)が挙げられる。
【0208】
本発明のいくつかの実施形態において、変異KRASは、ヒトKRASのアミノ酸12、13、61、116、及び119のうちの少なくとも1つに変異を有するKRASとすることができる。本発明の一実施形態では、変異KRASはヒトKRASのアミノ酸12に変異を有する。いくつかの実施形態では、変異KRASはGST-πの過剰発現を誘導するものであってもよい。変異KRASを有する細胞は、GST-πの過剰発現を示すものであってもよい。
【0209】
変異KRASの検出は、任意の公知の技術(例えば、公知の変異配列に特異的な核酸プローブの手段による選択的ハイブリダイゼーション、酵素ミスマッチ切断方法、配列決定(Bos、Cancer Res.1989; 49(17):4682-9)、及びPCR-RFLP方法(Miyanishiら、Gastroenterology.2001; 121(4):865-74))を使用して実施できる。
【0210】
標的発現の検出は、任意の公知の技術を使用して実施できる。標的が過剰発現されているか否かは、例えば、変異KRASを有する細胞における標的の発現の程度を、正常KRASを有する同じ型の細胞における標的の発現の程度と比較することによって評価することができる。この状況において、変異したKRASを有する細胞における標的の発現の程度が、正常なKRASを有する同じタイプの細胞における標的の発現の程度を超える場合、標的は過剰発現されている。
【0211】
1つの観点において、本発明の実施形態は、上記の観点のいずれかの阻害性核酸分子をコードするベクターを特徴とする。特定の実施形態では、ベクターがレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、又はレンチウイルスベクターである。別の実施形態において、ベクターは、哺乳動物細胞における発現に適切なプロモーターを含む。
【0212】
本発明の実施形態の組成物中に処方される活性RNA干渉誘導成分の量は、投与の利益を超える有害作用を引き起こさない量とすることができる。このような量は培養細胞を使用するインビトロ試験、又はマウス、ラット、イヌ、もしくはブタなどのモデル動物もしくは哺乳動物における試験によって決定することができ、そしてこのような試験方法は当業者に公知である。本発明の実施形態の方法は、ヒトを含む任意の動物に適用可能である。
【0213】
製剤化される活性成分の量は、薬剤又は組成物が投与される方法に応じて変化し得る。例えば、組成物の複数の単位が1回の投与に使用される場合、組成物の1単位に製剤化される活性成分の量は、1回の投与に必要な活性成分の量を前記複数の単位で割ることによって決定されてもよい。
【0214】
RNA干渉
RNA干渉(RNAi)は、短鎖干渉RNA(siRNA)によって媒介される動物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシングを意味する。例えば、Zamore et al、Cell、2000、Vol. 101, pp.25-33; Fire et al、Nature、1998、Vol. 391, 806811頁; Sharp、Genes & Development、1999、Vol.13、pp.139-141を参照されたい。
【0215】
細胞内でのRNAi応答は二本鎖RNA(dsRNA)によって引き起こされるが、その機構はまだ完全には解明されていない。細胞内の特定のdsRNAは、リボヌクレアーゼIII酵素であるダイサー酵素の作用を受けることができる。例えば、Zamore et al、Cell、2000、Vol. 101, pp.25-33; Hammond et al、Nature、2000、Vol. 404, pp. 293-296を参照されたい。ダイサーは、dsRNAをsiRNAであるdsRNAのより短い断片とすることができる。
【0216】
一般に、siRNAは、約21~約23ヌクレオチド長とすることができ、そして約19ヌクレオチド長の塩基対二重鎖領域を含む。
【0217】
RNAiには、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られるエンドヌクレアーゼ複合体が関与する。siRNAは、RISC複合体に入り込むアンチセンス鎖又はガイド鎖を有する、siRNA二本鎖のアンチセンス鎖と相補的な配列を有する一本鎖RNA標的の切断を媒介する。siRNAのもう一方の鎖はパッセンジャー鎖である。標的RNAの切断はsiRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中央で起こる(例えば、Elbashirら、Genes & Development、2001、Vol.15、pp. 188-200を参照のこと)。
【0218】
本明細書中で使用される場合、用語「センス鎖」は、siRNA分子の対応するアンチセンス鎖の少なくとも一部に部分的に又は完全に相補的であるsiRNA分子のヌクレオチド配列をいう。siRNA分子のセンス鎖は、標的核酸配列と相同性を有する核酸配列を含むことができる。
【0219】
本明細書中で使用される場合、用語「アンチセンス鎖」は、標的核酸配列の少なくとも一部に部分的に又は完全に相補的であるsiRNA分子のヌクレオチド配列をいう。siRNA分子のアンチセンス鎖は、siRNA分子の対応するセンス鎖の少なくとも一部に相補的な核酸配列を含むことができる。
【0220】
RNAi分子は、配列特異的にRNA干渉を媒介することにより、遺伝子発現をダウンレギュレート又はノックダウンすることができる。例えば、Zamore et al、Cell、2000、Vol. 101, pp.25-33; Elbashir et al、Nature、2001、Vol. 411, pp.494-498; Kreutzer et al、WO2000/044895; Zernicka-Goetz et al、WO2001/36646; Fire et al、WO1999/032619; Plaetinck et al、WO2000/01846; Mello et al、WO2001/029058を参照されたい。
【0221】
本明細書中で使用される場合、遺伝子発現手段に関して用語「阻害する」、「ダウンレギュレートする」又は「減少させる」は、遺伝子の発現又は1つ以上のタンパク質をコードするmRNA分子のレベル、又はコードされるタンパク質の1つ以上の活性が本発明のRNAi分子又はsiRNAの非存在下で観察されるものよりも低下することを意味する。例えば、発現のレベル、mRNAのレベル、又はコードされるタンパク質活性のレベルを、本発明のRNAi分子又はsiRNAの非存在下で観察されるものから、少なくとも1%、又は少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも50%、又は少なくとも90%、又はそれ以上減少させることができる。
【0222】
RNAi分子は、ウイルスの遺伝子発現をノックダウンするのにも使えるので、ウイルスの複製に影響を及ぼす。
【0223】
RNAi分子は、別個のポリヌクレオチド鎖:センス鎖又はパッセンジャー鎖、及びアンチセンス鎖又はガイド鎖から作製することができる。ガイド鎖とパッセンジャー鎖は、少なくとも部分的に相補的である。ガイド鎖及びパッセンジャー鎖は、約15~約49塩基対を有する二重鎖領域を形成することができる。
【0224】
いくつかの実施形態において、siRNAの二重鎖領域は、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、又は49塩基対とすることができる。
【0225】
特定の実施形態において、RNAi分子は、RISC複合体において活性を示すことができ、RISCに対して活性な二重鎖領域の長さを有する。
【0226】
さらなる実施形態において、RNAi分子は、RISC複合体において活性を示すことができるRNAi分子へと変換されるために、ダイサー基質として活性を示すことができる。
【0227】
いくつかの観点において、RNAi分子は、長い分子における反対側の末端側にある相補的なガイド及びパッセンジャー配列部分を有し、これにより分子は相補的な配列部分で二重鎖領域を形成することができ、これら鎖はヌクレオチド又は非ヌクレオチドリンカーのいずれかによって二重鎖領域の一方の端にて連結することができる。例えば、ヘアピン配置、又はステム及びループ配置である。これら鎖に対するリンカー相互作用は、共有結合又は非共有結合相互作用とすることができる。
【0228】
本開示のRNAi分子は、核酸のセンス領域を核酸のアンチセンス領域に連結するヌクレオチド、非ヌクレオチド、又は混合ヌクレオチド/非ヌクレオチドリンカーを含むことができる。ヌクレオチドリンカーは長さが≧2ヌクレオチド、例えば、長さが約3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチドのリンカーとすることができる。核酸アプタマーを核酸リンカーとすることができる。「アプタマー」又は「核酸アプタマー」とは本明細書中で使用される場合、標的分子に特異的に結合する核酸分子をいい、ここで、核酸分子はその自然な環境において標的分子によって認識される配列を含む配列を有する。あるいはアプタマーは標的分子に結合する核酸分子とすることができ、ここで、標的分子は核酸に対して自然には結合しない。例えば、アプタマーは、タンパク質のリガンド結合ドメインに結合し、それによって、天然に存在するリガンドとタンパク質との相互作用を防止するために使用することができる。例えば、Goldら、Annu Rev Biochem,1995、Vol.64, pp. 763-797; Brody et al、JBiotechnol、2000、Vol. 74, pp. 5-13; Hermann et al、Science、2000、Vol. 287, pp. 820-825を参照のこと。
【0229】
非ヌクレオチドリンカーとしては、無塩基性ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、脂質、ポリ炭化水素、又は他のポリマー化合物(例えば、2~100個のエチレングリコール単位を有するものなどのポリエチレングリコール)を例示することができる。いくつかの例は、Seela et al、Nucleic Acids Research、1987、Vol. 15、pp. 3113-3129; Cloadら、JAm. ChemSoc、1991、Vol. 113, pp. 6324~6326; Jaeschke et al、Tetrahedron Lett、1993、Vol. 34, pp. 301; Arnold et al、WO1989/002439; Usman et al、WO1995/006731; Dudycz et al、WO1995/011910、及びFerentz et al、JAm. ChemSoc、1991、Vol. 113, pp. 4000-4002に記載されている。
【0230】
RNAi分子は、二重鎖領域から1つ以上の突出部を有することができる。非塩基対の一本鎖領域であるオーバーハングは、長さが1~8ヌクレオチド、又はそれより長くてもよい。オーバーハングは3'末端オーバーハングとすることができる。ここで、鎖の3'末端は1~8ヌクレオチドの一本鎖領域を有する。オーバーハングは5'末端オーバーハングとすることができる。ここで、鎖の5'末端は1~8ヌクレオチドの一本鎖領域を有する。
【0231】
RNAi分子のオーバーハングは、同じ長さを有することもできるし、又は異なる長さとすることもできる。
【0232】
RNAi分子は、1つ以上の平滑末端をもつことができ、二本鎖領域はオーバーハングせずに終わり、鎖は二本鎖領域の末端まで塩基対を形成する。
【0233】
本開示のRNAi分子は、1つ以上の平滑末端を有することができる、又は1つ以上のオーバーハングを有することができる、又は平滑末端及びオーバーハング末端の組み合わせを有することができる。
【0234】
RNAi分子の鎖の5'末端は、平滑末端にあってもよく、又はオーバーハングにあってもよい。RNAi分子の鎖の3'末端は、平滑末端にあってもよく、又はオーバーハングにあってもよい。
【0235】
RNAi分子の鎖の5'末端は平滑末端にあってもよく、一方、3'末端はオーバーハングにあってもよい。RNAi分子の鎖の3'末端は平滑末端にあってもよく、一方、5'末端はオーバーハングにあってもよい。
【0236】
いくつかの実施形態では、RNAi分子の両端は平滑末端である。
【0237】
さらなる実施形態において、RNAi分子の両端はオーバーハングを有する。
【0238】
5'末端及び3'末端でのオーバーハングは、異なる長さとすることができる。
【0239】
特定の実施形態では、RNAi分子がアンチセンス鎖の5'末端及びセンス鎖の3'末端が如何なるオーバーハングヌクレオチドを有しない、平滑末端であってもよい。
【0240】
さらなる実施形態では、RNAi分子がアンチセンス鎖の3'末端及びセンス鎖の5'末端が如何なるオーバーハングヌクレオチドを有しない、平滑末端であってもよい。
【0241】
RNAi分子は、二重鎖領域における塩基対合においてミスマッチを有していてもよい。
【0242】
RNAi分子のオーバーハング中の任意のヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドであってもよい。
【0243】
1つ以上のデオキシリボヌクレオチドは、5'末端にあってもよく、ここで、RNAi分子の他の鎖の3'末端はオーバーハングを有しなくてもよいし、又はデオキシリボヌクレオチドオーバーハングを有しなくてもよい。
【0244】
1つ以上のデオキシリボヌクレオチドは、3'末端にあってもよく、ここで、RNAi分子の他の鎖の5'末端はオーバーハングを有しなくてもよいし、又はデオキシリボヌクレオチドオーバーハングを有しなくてもよい。
【0245】
いくつかの実施形態において、RNAi分子のオーバーハングヌクレオチドの1つ以上、又は全てを、2'-デオキシリボヌクレオチドとすることができる。
【0246】
ダイサー基質RNAi分子
いくつかの観点において、RNAi分子は、RISC活性RNAi分子を産生するようにプロセシングされるよう、ダイサー基質として適切な長さとすることができる。例えば、Rossiら、US2005/0244858を参照のこと。
【0247】
Dicer基質である二本鎖RNA(dsRNA)は、Dicerによってプロセシングされて活性RNAi分子を産生するのに十分な長さとすることができ、以下の特性の1つ以上をさらに含むことができる:(i)Dicer基質dsRNAは非対称とすることができ、例えば、アンチセンス鎖上に3'オーバーハングを有することができ、そして(ii)Dicer基質dsRNAはDicer結合の配向及び活性RNAi分子へのdsRNAのプロセシングを指向するために、センス鎖上に改変された3'末端を有することができる。
【0248】
RNAi分子の使用方法
本発明の実施形態の核酸分子及びRNAi分子を、分子の直接的な適用によって、又は担体若しくは釈剤と組み合わされた分子を用いて、細胞又は組織に送達することができる。
【0249】
本発明の実施形態の核酸分子及びRNAi分子を、細胞、組織、器官又は対象者に対して、担体若しくは希釈剤、又は細胞への侵入を補助、促進又は促進するように作用する任意の他の送達ビヒクル(例えば、ウイルス配列、ウイルス材料、又は脂質若しくはリポソーム処方物)を用いた分子の直接的な適用によって送達又は投与することができる。
【0250】
本発明の実施形態の核酸分子及びRNAi分子を、リポソーム内にパッケージングすることができ、又はそうでなければ標的細胞又は組織に送達することができる。核酸又は核酸複合体は、直接皮膚適用、経皮適用、又は注射によって、ex vivo又はin vivoで関連組織に局所的に投与することができる。
【0251】
送達系は、例えば、水性及び非水性ゲル、クリーム、エマルジョン、マイクロエマルジョン、リポソーム、軟膏、水性及び非水性溶液、ローション、エアロゾル、炭化水素基剤及び粉末を含むことができ、可溶化剤及び浸透増強剤などの賦形剤を含有してもよい。
【0252】
本発明の実施形態の阻害核酸分子又は組成物は、薬学的に許容される希釈剤、担体、又は賦形剤内で、単位投薬形態で投与することができる。過剰な細胞増殖によって引き起こされる疾患に罹患している患者に化合物を投与するための適切な製剤又は組成物を提供するために、特定の医薬実務を採用することができる。患者に症状が現れる前に投与を開始してもよい。任意の適切な投与経路を使用してよく、例えば、非経口、静脈内、動脈内、皮下、腫瘍内、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼球内、脳室内、肝臓内、嚢内、髄腔内、大槽内、又は腹腔内投与でよい。例えば、治療用製剤は、液体溶液又は懸濁液の形態であってもよい。
【0253】
本開示の実施形態の組成物及び方法は、核酸分子の発現を可能にする様式で、本発明の少なくとも1つのRNAi分子をコードする核酸配列を含む発現ベクターを含むことができる。
【0254】
本発明の実施形態の核酸分子及びRNAi分子は、DNA又はRNAベクターに挿入された転写単位から発現することができる。組換えベクターは、DNAプラスミド又はウイルスベクターとすることができる。核酸分子の一過性発現を提供するウイルスベクターを使用することができる。
【0255】
例えば、ベクターは、二重鎖のRNAi分子の両方の鎖、又は自己内で相補的であるためにRNAi分子を形成する単一の核酸分子をコードする配列を含むことができる。発現ベクターは、2つ以上の核酸分子をコードする核酸配列を含むことができる。
【0256】
核酸分子は、真核生物プロモーターから細胞内で発現することができる。当業者は、任意の核酸が適切なDNA/RNAベクターから真核細胞において発現されることを認識している。
【0257】
いくつかの観点において、発現構築物にコードされるdsRNA構築物の転写のため、ウイルス構築物を用いて発現構築物を細胞に導入することができる。ここでdsRNAがRNA干渉において活性である。
【0258】
脂質製剤は例えば、静脈内、筋肉内、又は腹腔内注射によって投与することができる。
【0259】
オリゴヌクレオチドを投与するための製薬上許容製剤は公知であり、使用することができる。
【0260】
上記方法の一実施形態としては、阻害核酸分子が約5mg/m2/日~約500mg/m2/日、例えば、5、25、50、100、125、150、175、200、225、250、275、又は300mg/m2/日の用量で投与される。
【0261】
いくつかの実施形態において、本発明の阻害性核酸分子は約1mg/kg~約100mg/kg、例えば、1、5、10、20、25、50、75、又は100mg/kgの用量で全身投与される。
【0262】
さらなる実施形態において、投与量は、約25mg/m2/日~約500mg/m2/日とすることができる。
【0263】
製剤を作製するための当技術分野で公知の方法は、例えば、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」EdARGennaro、Lippincourt Williams & Wilkins、Philadelphia、Pa、2000に見出される。Remingtons Pharmaceutical Sciences、18th Ed、Gennaro編、Mack Publishing Co、Easton、Pa、1990; Goodman & Gilman、The Pharmacological Basis of Therapeutics、9th Ed、Hardmanら編、McGraw-Hill、New York、N.Y、1996も参照されたい。
【0264】
非経口投与のための剤形は、例えば、賦形剤、滅菌水若しくは生理食塩液、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、植物油、又は水素添加ナフタレンを含んでもよい。生体適合性、生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを使用して、化合物の放出を制御することができる。阻害核酸分子のための他の潜在的に有用な非経口送達システムには、エチレン-酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入システム、及びリポソームが含まれる。吸入用の製剤は、賦形剤、例えば、ラクトースを含有してもよく、又は例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリコール酸塩及びデオキシコール酸塩を含有する水溶液であってもよく、又は点鼻剤の形態で若しくはゲルとして投与するための油性溶液であってもよい。
【0265】
製剤は、腫瘍性疾患又は状態の治療を提供するために、治療有効量(例えば、病的状態を予防、排除又は減少させる量)でヒト患者に投与することができる。本発明のヌクレオチドオリゴマーの好ましい投薬量は、障害の型及び程度、特定の患者の全体的な健康状態、化合物賦形剤の処方、及びその投与経路のような変数に依存することができる。
【0266】
悪性腫瘍を減少させるための上記の方法の全ては、インビトロ方法又はインビボ方法のいずれであってもよい。用量は、当技術分野で知られているように、培養細胞などを使用するin vitro試験によって決定することができる。有効量は、KRAS関連腫瘍における腫瘍サイズを、腫瘍サイズの少なくとも10%、少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、最大100%減少させる量とすることができる。
【0267】
本発明の実施形態の医薬組成物は、KRAS関連疾患の治療に有効とすることができる。疾患の例としては、異常な細胞増殖による疾患、KRAS突然変異による疾患、及びGST-π過剰発現による疾患が挙げられる。
【0268】
異常な細胞増殖による疾患としては、悪性腫瘍、過形成、ケロイド、クッシング症候群、原発性アルドステロン症、紅板症、真性赤血球増加症、白板症、過形成性瘢痕、扁平苔癬、及び黒子症を例示することができる。
【0269】
KRAS変異による疾患としては、悪性腫瘍(癌又は悪性新生物とも呼ばれる)を例示することができる。
【0270】
GST-π過剰発現による疾患としては、悪性腫瘍を例示することができる。
【0271】
癌としては、肉腫を例示することができる。
【0272】
本発明の1つの実施形態において、癌は、上記で定義された変異KRASを有する癌細胞を含む。別の実施形態において、癌はホルモン又は成長因子非依存性増殖を示す癌細胞を含む。さらなる実施形態において、癌は、GST-π過剰発現を示す癌細胞を含む。
【0273】
GST-πを抑制するための追加の活性剤又は薬物
GST-piの活性を阻害するための追加の活性剤としては、特に限定されないが、GST-piに結合する物質、例えば、グルタチオン、グルタチオン類似体(例えば、WO95/08563、WO96/40205、WO99/54346に記載されるもの)、ケトプロフェン、インドメタシン(例えば、Hallら、Cancer Res.1989; 49(22):6265-8を参照のこと)、エタクリン酸、ピリプロスト(例えば、Tewら、Cancer Res.1988; 48(13):3622-5を参照のこと)、抗GST-pi抗体、及びGST-πのドミナントネガティブ突然変異体を例示することができる。これらの薬剤は、市販されているか、又は公知の技術に基づいて適切に製造することができる。
【0274】
悪性腫瘍における薬剤の送達のための3つ以上の成分を有する製剤
本明細書中で使用される場合、「脂質」などの製剤の成分は単一の化合物であっても良いし又は1つ以上の適切な脂質化合物の組み合わせであってもよい。例えば、「安定化脂質」は、単一の安定化脂質、又は1つ以上の適切な安定化脂質の組み合わせを指すことができる。当業者は、本明細書中に記載される化合物の特定の組み合わせが過度の実験なしに使用できること、及び化合物の様々な組み合わせが製剤の成分の記載によって包含されることを容易に理解することができる。
【0275】
本発明は細胞、組織又は器官、生物、及び被験体中に活性物質を分配する際に使用するための組成物を提供することができ、ここで、組成物は、本発明の1つ以上のイオン化可能な脂質分子を含む。
【0276】
本発明の組成物は、構造脂質及びナノ粒子の免疫原性を低下させるための1つ以上の脂質と共に、1つ以上のイオン化可能な脂質分子を含むことができる。
【0277】
本発明の実施形態のイオン化可能な脂質分子は、本発明の組成物の任意のモル%とすることができる。
【0278】
本発明の実施形態の組成物のイオン化可能な脂質分子は、組成物の脂質成分の15モル%~35モル%とすることができる。特定の実施形態では、組成物のイオン化可能な脂質分子が組成物の脂質成分の20モル%~30モル%とすることができる。
【0279】
本発明の実施形態の組成物の構造脂質は、組成物の脂質成分の20モル%~50モル%とすることができる。特定の実施形態では、組成物の構造脂質が組成物の脂質成分の35モル%~45モル%とすることができる。
【0280】
ナノ粒子の免疫原性を減少させるための1つ以上の脂質は、合計で、組成物の脂質成分の1モル%~10モル%、又は1モル%~8モル%とすることができる。特定の実施形態では、ナノ粒子の免疫原性を低減するための1つ以上の脂質が合計で組成物の脂質成分の1モル%~5モル%とすることができる。
【0281】
本発明の実施形態の組成物において、脂質成分の全体は、1つ以上のイオン化可能な脂質分子成分、1つ以上の構造脂質、及びナノ粒子の免疫原性を低下させるための1つ以上の脂質を含むことができる。
【0282】
悪性腫瘍における薬剤の送達のための4つ以上の脂質成分を有する製剤
本発明は細胞、組織又は器官、生物、及び被験体中に活性物質を分配する際に使用するための組成物を提供することができ、ここで、組成物は、本発明の1つ以上のイオン化可能な脂質分子を含む。
【0283】
本発明の実施形態の組成物は、構造脂質、1つ以上の安定化脂質、及びナノ粒子の免疫原性を低下させるための1つ以上の脂質と共に、1つ以上のイオン化可能脂質分子を含むことができる。
【0284】
本発明の実施形態のイオン化可能な脂質分子は、本発明の組成物において任意のモル%とすることができる。
【0285】
本発明の実施形態の組成物のイオン化可能な脂質分子は、組成物の脂質成分の15モル%~35モル%とすることができる。特定の実施形態では、組成物のイオン化可能な脂質分子は、組成物の脂質成分の15モル%~25モル%、又は20モル%~30モル%とすることができる。
【0286】
本発明の実施形態の組成物の構造脂質は、組成物の脂質成分の25モル%~40モル%とすることができる。特定の実施形態では、組成物の構造脂質が組成物の脂質成分の25モル%~35モル%、又は30モル%~40モル%とすることができる。
【0287】
本発明の実施形態の組成物の安定化脂質の合計は、組成物の脂質成分の25モル%~45モル%とすることができる。特定の実施形態では、組成物の安定化脂質の合計が組成物の脂質成分の30モル%~40モル%とすることができる。
【0288】
特定の実施形態において、1つ以上の安定化脂質の合計は、組成物の脂質の25モル%~45モル%とすることができる、ここで、安定化脂質の各々は個々に5モル%~40%モル%とすることができる。
【0289】
特定の実施形態において、1つ以上の安定化脂質の合計は、組成物の脂質の30モル%~40モル%とすることができる、ここで、安定化脂質の各々は個々に、10モル%~30モル%とすることができる。種々の実施形態において、組み合わされた構造脂質(例えば、コレステロール)及び安定化脂質(例えば、DOPC及びDOPE)は、組成物の全脂質の50モル%~85モル%を構成する。
【0290】
ナノ粒子の免疫原性を減少させるための1つ以上の脂質は、合計で、組成物の脂質成分の1モル%~10モル%、又は1モル%~8モル%とすることができる。特定の実施形態では、ナノ粒子の免疫原性を低減するための1つ以上の脂質は合計で組成物の脂質成分の1モル%~5モル%とすることができる。
【0291】
本発明の組成物において、脂質成分の全体は、1つ以上のイオン化可能な脂質分子成分、1つ以上の構造脂質、1つ以上の安定化脂質、及びナノ粒子の免疫原性を低下させるための1つ以上の脂質を含むことができる。
【0292】
脂質組成物の例
いくつかの実施形態において、3つの脂質様成分、すなわち、1つ以上のイオン化可能な分子、構造脂質、及び1つ以上のナノ粒子の免疫原性を低下させるための脂質は、組成物の脂質成分の100%とすることができる。
【0293】
本発明の実施形態の製剤の例を表2に示す。
【0294】
【0295】
イオン化可能な脂質様分子
イオン化可能な脂質としては、式Iに示す構造を有する化合物を例示することができる。
【0296】
【化2】
ここで、R1とR2は
【化3】
式中、n及びmは1~2であり、R
4及びR
5は、出現ごとに独立して、C(12~20)アルキル基、又は0~2個の二重結合を有するC(12~20)アルケニル基である;
ここで、R
3は以下から選択され
【化4】
ここでR
6は、H、アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アミノアルキルから選択され;
R
7は、H、アルキル、ヒドロキシアルキルから選択され;
QはO又はNR
7であり;
pは1~4である。
【0297】
イオン化可能な脂質としては、以下の式IIの化合物を例示することができる。
【0298】
【0299】
以下の化合物Aは((2-((3S,4R)-3,4-ジヒドロキシピロリジン-1-イル)アセチル)アザンジイル)ビス(エタン-2,1-ジイル)(9Z,9'Z,12Z,12'Z)-ビス(オクタデカ-9,12-ジエノエート)であり、式IIのイオン化可能な脂質の例である:
【0300】
構造脂質
構造脂質としては、コレステロール、ステロール、及びステロイドを例示することができる。
【0301】
構造脂質としては、コラン、コレスタン、エルゴスタン、カンペスタン、ポリフェラスタン、スチグマスタン、ゴルゴスタン、ラノスタン、ゴナン、エストラン、アンドロスタン、プレグナン、及びシクロアルタンを例示することができる。
【0302】
構造脂質としては、ステロール、及びコレステロール、ラノステロール、ザイモステロール、ザイモステノール、デスモステロール、スチグマスタノール、ジヒドロラノステロール、及び7-デヒドロコレステロールなどのゾステロールを例示することができる。
【0303】
構造脂質としては、ペグ化コレステロール、及び、コレスタン3-オキソ-(C1-22)アシル化合物、例えば、酢酸コレステリル、アラキドン酸コレステリル、酪酸コレステリル、ヘキサノ酸コレステリル、ミリスチル酸コレステリル、パルミチン酸コレステリル、ベフェネートコレステリル、ステアリン酸コレステリル、カプリル酸コレステリル、n-デカノ酸コレステリル、ドデカノ酸コレステリル、神経コレステリル、ペラルギン酸コレステリル、n-バレレートコレステリル酸コレステリル、オレイデ酸コレステリル、エルカ酸コレステリル、ヘプタノ酸コレステリル、及びリノール酸コレステリルを例示することができる。
【0304】
構造脂質としては、フィトステロール、β-シトステロール、カンペステロール、エルゴステロール、ブラシカステロール、デルタ-7-スチグマステロール、及びデルタ-7-アベナステロールなどのステロールを例示することができる。
【0305】
安定化脂質
安定化脂質としては、両性イオン性脂質を例示することができる。
【0306】
安定化脂質としては、リン脂質などの化合物を例示することができる。
【0307】
リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルロイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン及びオルジリノレオイルホスファチジルコリンを例示することができる。
【0308】
安定化脂質としては、ホスファチジルエタノールアミン化合物及びホスファチジルコリン化合物を例示することができる。
【0309】
安定化脂質としては、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を例示することができる。
【0310】
安定化脂質としては、ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン(DPhPE)及び1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPhPC)を例示することができる。
【0311】
安定化脂質としては、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、及び1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を例示することができる。
【0312】
安定化脂質としては、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロール(DLG);1,2-ジミリストリル-sn-グリセロール(DMG);1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール(DPG); 1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール(DSG);1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DAPC);1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC);1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC);1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-O-エチル-3-ホスホコリン(DPePC);1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLPE);1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE);1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE);1-パルミトイル-2-リノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC); 1-パルミトイル-2-リソ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(P-Lyso-PC);及び1-ステアロイル-2-リゾ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(S-Lyso-PC)を例示することができる。
【0313】
本明細書中で使用される場合、用語DMPE-mPEG-2000は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]をいう。
【0314】
免疫原性を低下させるための脂質
免疫原性を低下させるための脂質としては、ポリマー化合物及びポリマー-脂質結合体を例示することができる。
【0315】
免疫原性を低下させるための脂質としては、ポリエチレングリコール(PEG)領域を有するペグ化脂質を例示することができる。PEG領域は、任意の分子量とすることができる。いくつかの実施形態では、PEG領域を200、300、350、400、500、550、750、1000、1500、2000、3000、3500、4000又は5000Daの平均分子量とすることができる。
【0316】
免疫原性を低下させるための脂質としては、メトキシポリエチレングリコール領域を有する化合物を例示することができる。
【0317】
免疫原性を低下させるための脂質としては、カルボニル-メトキシポリエチレングリコール領域を有する化合物を例示することができる。
【0318】
免疫原性を低下させるための脂質としては、多分岐PEG領域を有する化合物を例示することができる。
【0319】
免疫原性を低下させるための脂質としては、ポリグリセリン領域を有する化合物を例示することができる。
【0320】
免疫原性を低下させるための脂質としては、DSPE-mPEG、DMPE-mPEG、DPPE-mPEG、及びDOPE-mPEGなどのポリマー脂質を例示することができる。
【0321】
免疫原性を低下させるための脂質としては、PEG-リン脂質及びPEG-セラミドを例示することができる。
【0322】
脂質組成物
いくつかの実施形態では、組成物は、式IIのイオン化可能な脂質(例えば、化合物A)、構造脂質コレステロール、安定化脂質DOPC及びDOPE、免疫原性を低下させるための脂質DSPE-mPEGを含有することができる。特定の実施形態では、式II(例えば、化合物A)のイオン化可能な脂質を組成物の15モル%~35モル%、又は15モル%~25モル%、又は20モル%~30モル%とすることができ;コレステロールを組成物における総脂質の25モル%~35モル%とすることができ;DOPC及びDOPEの組み合わせを組成物における総脂質の30モル%~50モル%とすることができ;コレステロール、DOPC及びDOPEの組合せを組成物の50モル%~85モル%、又は60モル%~80モル%、又は75モル%~85モル%とすることができ;DSPE-mPEGを組成物における総脂質の1モル%~8モル%、又は4モル%~6モル%、又は5モル%とすることができる。種々の実施形態において、式IIの化合物、コレステロール、DOPC、DOPE及びDSPE-mPEG-2000の組合せを、組成物における全脂質の少なくとも97モル%とすることができる。例えば、一実施形態では、式IIの化合物、コレステロール、DOPC、DOPE及びDSPE-mPEG-2000の組合せを、組成物における全脂質の約100モル%とすることができる。
【0323】
一実施形態において、式II(例えば、化合物A)のイオン化可能な脂質を組成物における総脂質の25モル%とすることができ;コレステロールを組成物における総脂質の30モル%とすることができ、DOPCを組成物における総脂質の20モル%とすることができ;DOPEを組成物における総脂質の20モル%とすることができ;DSPE-mPEG(2000)を組成物における総脂質の5モル%とすることができる。
【0324】
ナノ粒子
本発明の実施形態は、リポソームナノ粒子組成物を提供することができる。本発明の実施形態のイオン化可能分子を使用して、脂質様分子の二重層を有することができるリポソーム組成物を形成することができる。
【0325】
ナノ粒子組成物は、リポソーム構造、二重層構造、ミセル、ラメラ構造又はそれらの混合物において、本発明のイオン化可能な分子の1つ以上を有することができる。
【0326】
いくつかの実施形態において、組成物は、1つ以上の液体ビヒクル成分を含むことができる。本発明の活性剤の送達に適した液体ビヒクルは、薬学的に許容される液体ビヒクルとすることができる。液体ビヒクルは、有機溶媒又は水と有機溶媒との組合せを含むことができる。
【0327】
本発明の実施形態は、10nm~1000nmのサイズを有する脂質ナノ粒子を提供することができる。いくつかの実施形態では、リポソームナノ粒子が10nm~150nmのサイズを有することができる。
【0328】
特定の実施形態において、本発明のリポソームナノ粒子がRNAi分子をカプセル化することができ、ヒト血清への1時間の暴露後、カプセル化RNAi分子の少なくとも80%を保持することができる。
【0329】
本明細書中で使用される場合、用語「カプセル化する」は、活性剤が粒子の外部の溶媒又は移動相によって除去されないように、ナノ粒子がその構造内又はその表面上に活性剤を運ぶ能力をいう。
【0330】
医薬組成物
本発明は、さらに、本発明の組成物を対象者に投与することによって、悪性腫瘍を治療するために、対象者の器官に活性剤を分配する方法を企図する。治療することができる器官には、肺が含まれる。
【0331】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の組成物を対象者に投与することによって肺悪性腫瘍疾患の治療法を提供する。
【0332】
さらなる態様において、本発明は、ある範囲の医薬製剤を提供する。
【0333】
本明細書中の医薬製剤は、薬学的に許容される担体又は希釈剤と共に、活性剤並びに薬物担体、又は本発明の脂質を含むことができる。一般に、本明細書の活性剤には、任意の阻害核酸分子及び任意の小分子薬物を含む、悪性腫瘍のための任意の活性剤を含む。阻害性核酸分子としては、リボザイム、アンチセンス核酸、及びRNA干渉分子(RNAi分子)を例示することができる。
【0334】
抗悪性腫瘍及び抗癌剤としては、癌遺伝子関連因子、腫瘍血管新生因子、転移関連因子、TGF-βなどのサイトカイン、成長因子、MMPなどのプロテイナーゼ、カスパーゼ及び免疫抑制因子を例示することができる。
【0335】
本発明の医薬製剤は、界面活性剤、希釈剤、賦形剤、防腐剤、安定剤、染料、及び懸濁剤の各々の1つ以上を含有していてもよい。
【0336】
薬学的製剤のためのいくつかの薬学的担体、希釈剤及び成分、ならびに本発明の化合物及び組成物を製剤化及び投与するための方法は、Remington's Pharmaceutical Sciences、18th Ed、Mack Publishing Co、Easton、Penn、1990に記載されている。
【0337】
防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルを例示することができる。
【0338】
界面活性剤としては、アルコール、エステル、硫酸化脂肪族アルコールを例示することができる。
【0339】
賦形剤としては、スクロース、グルコース、ラクトース、デンプン、結晶化セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸塩、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸性炭酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、及びカルシウムカルボキシメチルセルロースを例示することができる。
【0340】
遺伝子サイレンシングに活性な1つ以上の分子の送達のための本発明の治療製剤は、それを必要とする哺乳動物に投与することができる。リポソーム中にカプセル化できる製剤及び活性剤の治療有効量を、悪性腫瘍を予防又は治療するために哺乳動物に投与することができる。
【0341】
投与経路は、局所的であっても全身的であってもよい。
【0342】
本発明の治療的に有効な製剤は、静脈内、腹腔内、筋肉内及び皮下を含む様々な非経口経路によって投与することができる。
【0343】
投与経路は、例えば、筋肉内、皮下、静脈内、髄内注射を含む非経口送達、ならびに髄腔内、直接脳室内、腹腔内、又は眼内注射を含むことができる。
【0344】
製剤は、また、デポー注射、浸透圧ポンプなどを含む持続又は制御放出投薬形態で、所定の速度での長期及び/又は時限パルス投与のために投与することができる。
【0345】
本発明の組成物の実施形態は、非経口経路を含む様々な経路を介して投与することができ、そのような経路として、特に限定されないが、静脈内、筋肉内、皮下、局所、肺内、動脈内、門脈内、脳室内、髄内、リンパ節内、リンパ節内、脳内、髄腔内、脳室内、脳室内、経皮、及び腹腔内経路を例示することができる。そして組成物は、各投与経路に適した剤形に製剤化することができる。このような投薬形態及び処方方法は、任意の公知の投薬形態及び方法から適切に選択され得る。例えば、Hyojun Yakuzaigaku、Standard Pharmaceutics、Edby Yoshiteru Watanabe et al、Nankodo、2003を参照されたい。
【0346】
非経口投与に適した剤形としては、注射溶液、注射可能な懸濁液、注射可能なエマルジョン、及びすぐに使用できる注射などの注射が含まれる。非経口投与のための製剤は、水性又は非水性等張性滅菌溶液又は懸濁液のような形態とすることができる。
【0347】
例えば、ボーラス注射又は連続注入による非経口投与のための医薬製剤は、水溶性形態の活性製剤の水溶液を含む。活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。水性注射懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールやデキストランのような懸濁液の粘度を増加する物質を含んでよい。任意であるが、懸濁液は、また、化合物の溶解度を増加させる適切な安定剤又は薬剤を含有することができ、これにより高度に濃縮された溶液の調製が可能となる。
【0348】
注射用製剤は、防腐剤を添加した単位剤形、例えばアンプル又は複数回投与容器で提供できる。製剤は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンなどの形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤用の剤を含有することができる。あるいは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば、無菌パイロジェンフリー水)で構成するための粉末形態とすることができる。
【0349】
先に記載された調製物に加えて、製剤はまた、デポー調製物として製剤化することもできる。このような長時間作用性の製剤は、筋肉内注射によって投与することができる。従って、例えば、製剤は、適切なポリマー又は疎水性材料、例えば、許容される油中のエマルジョン、又はイオン交換樹脂として、又は難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として製剤化することができる。
【0350】
本発明の組成物及び製剤の実施形態は、また、局所送達のために製剤化してもよく、局所送達ビヒクルの適用のための任意の適切なプロセスを使用して、対象の皮膚に適用することができる。例えば、製剤は、アプリケーターを使用して、又は両方を含むプロセスによって、手動で適用してもい。適用後、製剤は、例えば、すり込むことによって対象者の皮膚に作用することができる。適用は、毎日複数回、又は毎日1回行うことができる。例えば、製剤は、1日1回、1日2回、又は1日に複数回、又は2日に1回、3日に1回、又は週に1回、2週に1回、又は数週に1回、対象者の皮膚に適用することができる。
【0351】
本明細書中に記載される製剤又は医薬組成物は例えば、非経口経路によって対象者に投与することができる。投与方法としては、とりわけ、注入ポンプ送達を含む、注射、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮内、眼窩内、嚢内、脊髄内、胸骨内、又はそのようなものを投与する方法を例示することができる;局所的には注射によるような投与である。
【0352】
医薬組成物についての正確な製剤化、投与経路及び投薬量は、患者の状態を考慮して、個々の医師によって選択されればよい。例えば、Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics、12th Ed、Sec.1、2011を参照されたい。典型的には、患者に投与される組成物の用量範囲は、患者の体重の約0.5mg/kg~約1000mg/kgとすることができる。投薬量は、患者に必要とされるように、1日以上の間で与えられる単一の1つ又は一連の2つ以上とすることができる。少なくともいくつかの状態について化合物のヒト用量が確立されている場合、用量は、確立されたヒト用量の約0.1%~約500%、より好ましくは約25%~約250%である。新しく発見された医薬組成物の場合のように、ヒト用量が確立されていない場合、適切なヒト用量は動物における毒性試験及び有効性試験によって認定されるように、ED50又はID50値若しくはインビトロ又はインビボ試験から得られる他の適切な値から推測することができる。
【0353】
いくつかの実施形態において、活性剤、例えばAPI(26/52)は、対象の体重1kg当たり0.05mg~50mg、又は0.01mg/kg~5mg、又は1mg/kg~2.5mg、又は対象の体重1kg当たり1mg、2.5mg、又は5mg/kgの用量で投与されてもよい。
【0354】
いくつかの実施形態において、活性剤、例えばAPI(26/52)は毎週、隔週、又は毎月投与されてもよい。
【0355】
悪性腫瘍を予防又は治療するための方法
本発明の実施形態はさらに、悪性腫瘍の活性又は増殖を制御する方法に関し、該方法は、有効量の組成物を、それを必要とする対象者に投与することを含む。ここで言及される有効量は、悪性腫瘍を治療する方法において、その症状を軽減するか、又はその進行を遅らせるか又は止める量であり、好ましくは、悪性腫瘍の発症もしくは再発を予防するか、又はそれを治癒させる量である。それはまた、好ましくは、投与から得られる利益を超える有害作用を引き起こさない量である。このような量は、培養細胞を用いたin vitro試験、又はマウス、ラット、イヌ、ブタなどのモデル動物又は哺乳動物における試験によって適宜決定することができる。このような試験方法は当業者に周知である。さらに、担体中の活性剤の用量及び本発明の方法に使用される活性剤の用量は、当業者に公知であるか、又は上記の試験によって適宜決定することができる。
【0356】
投与の頻度は、使用される組成物の特性及び対象者の上記状態に依存し、1日あたり複数回(すなわち、1日あたり2、3、4、5、又はそれ以上の回数)、1日1回、数日毎(すなわち、2、3、4、5、6、又は7日毎など)、1週間あたり数回(例えば、1週あたり2、3、4回など)、1週間毎又は数週間毎(すなわち、2、3、4週間毎など)とすることができる。
【0357】
いくつかの実施形態において、本発明は、また、本明細書中に記載されるリポソームナノ粒子担体を利用して、薬物を悪性腫瘍細胞に送達する方法に関する。この方法は、送達される核酸APIを内部に有する及び/又は内部にカプセル化された担体を、肺の細胞外マトリックス産生細胞を含む、生物又は培地(例えば、培養培地)に投与又は添加する工程を包含する。これらのステップは、任意の既知の方法又は本発明に記載される方法に従って、適切に達成することができる。また、上記方法は、in vitroで行う態様と、体内の肺の悪性腫瘍細胞を標的とする態様とを含む。
【0358】
本発明の実施形態における治療的に有効な製剤は、活性剤の広い生体内分布を可能とする全身送達によって投与することができる。
【0359】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」は、意図された目的を達成するのに有効な薬物製剤の量を指す。
【0360】
本発明の実施形態は、本発明の治療分子及びリポソームナノ粒子などの製薬上許容される担体を含む、治療製剤を提供することができる。
【0361】
本発明の製剤の有効用量は、1日に1~12回、又は週に1回投与することができる。投与期間は、1、2、3、4、5、6又は7日であってもよく、又は1、2、3、4、5、6、8、10又は12週であってもよい。
【0362】
追加の実施形態
対象者における悪性腫瘍を治療するための活性剤(例えば、核酸API)を分配する際に使用するための組成物であって、当該組成物は、イオン化可能な脂質、構造脂質、及びナノ粒子の免疫原性を低下させるための脂質を含む。悪性腫瘍は肺に発生することがある。
【0363】
イオン化可能な脂質は、組成物の脂質の15モル%~35モル%、又は組成物の脂質の20モル%~30モル%とすることができる。構造脂質は、組成物の脂質の25モル%~40モル%、又は組成物の脂質の30モル%~40モル%とすることができる。構造脂質は、コレステロール、ステロール、又はステロイドとすることができる。ナノ粒子の免疫原性を低下させるための脂質は、組成物の脂質の1モル%~10モル%、又は1モル%~8モル%とすることができる。ナノ粒子の免疫原性を低下させるための脂質は、200~5000Daの分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)領域を有することができる。ナノ粒子の免疫原性を低下させるための脂質は、DPPE-mPEG、DSPE-mPEG、DMPE-mPEG、又はDOPE-mPEGとすることができる。
【0364】
本発明はさらに、対象者における悪性腫瘍を治療するための活性剤(例えば、核酸API)を分配する際に使用するための組成物であって、イオン化可能な脂質、構造脂質、1つ以上の安定化脂質、及びナノ粒子の免疫原性を低下させるための脂質を含む組成物を企図している。イオン化可能な脂質は、組成物の脂質の15モル%~40モル%、又は組成物の脂質の20モル%~35モル%とすることができる。構造脂質は、組成物の脂質の25モル%~40モル%、又は組成物の脂質の30モル%~35モル%とすることができる。
【0365】
1つ以上の安定化脂質の合計は、組成物の脂質の25モル%~40モル%とすることができ、ここで、安定化脂質の各々は個々に5モル%~35モル%である。1つ又は複数の安定化脂質は、リン酸エタニルエタノールアミン化合物又はホスファチジルコリン化合物とすることができる。
【0366】
種々の実施形態において、組成物は以下の組み合わせのうちの1つとすることができる(化合物A/コレステロール/DOPC/DOPE/DSPE-mPEG-2000):(25/30/30/10/5)、(25/30/25/15/5)、(25/30/20/20/5)、(25/30/15/25/5)、(25/30/10/30/5)、(25/35/15/20/5)、(25/35/20/15/5)(30/30/15/20/5)、(30/30/20/15/5)又は(35/30/15/15/5)、ここで数字は成分のモル%濃度を指している。
【0367】
いくつかの実施形態において、イオン化可能な脂質を式II(例えば、化合物A)とすることができ、構造脂質をコレステロールとすることができ、安定化脂質をDOPC及びDOPEとすることができ、ナノ粒子の免疫原性を低減するための脂質をDSPE-mPEG-2000とすることができる。ここで、式II(例えば、化合物A)の脂質は組成物の15~35モル%を含み、コレステロール、DOPC、及びDOPEの組合せは組成物の50~85モル%を含み、DSPE-mPEG-2000は組成物の1~8モル%を含み、式II(例えば、化合物A)、コレステロール、DOPC、DOPE及びDSPE-mPEG-2000を組み合わせた脂質は組成物の脂質の実質的に100モル%を含む。
【0368】
活性物質(例えば、核酸API)は、GST-πを標的とするRNAi分子とすることができる。いくつかの実施形態では、組成物はRNAi分子をカプセル化したリポソームナノ粒子を含む。
【0369】
本発明はまた、脂質組成物及び活性剤(例えば、核酸API)を含む医薬組成物を企図している。活性剤は、1つ以上のRNAi分子とすることができる。悪性腫瘍を治療するためのRNAi分子は、GST-πを標的とするRNAi分子を含むことができる。悪性腫瘍を治療するためのRNAi分子は、例えば、siRNA、shRNA、又はマイクロRNA、ならびにDNA指向性RNA(ddRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)、及び反復関連siRNA(rasiRNA)とすることができる。
【0370】
特定の実施形態において、本発明は、GST-πのみを標的とするRNAi分子で悪性腫瘍を治療するためのRNAi分子を含有する医薬組成物を提供する。
【0371】
投与は、12週間までの期間、1日に少なくとも1回、0.01mg/kg~2mg/kgのRNAi分子の用量とすることができる。投与は、GST-πRNAi分子について、1 ug*min/mL~1000ug*min/mLの平均AUC(0-last)及び0.1 ug/mL~50ug/mLの平均Cmaxを供することができる。
【0372】
本発明は、それを必要とする哺乳動物又は任意の動物における悪性腫瘍の1つ以上の症状を予防、処置又は改善する方法を提供し、この方法はRNAi分子を含む組成物の治療有効量を哺乳動物に投与する工程を包含する。ここで、RNAi分子の少なくとも一部は、GST-πの発現の減少について活性である。いくつかの実施形態において、悪性腫瘍は、哺乳動物におけるKRAS突然変異に関連し、この方法は、更に哺乳動物における腫瘍細胞を同定することをさらに含み、この腫瘍細胞は、(i)KRAS遺伝子の突然変異、及び(ii)KRASタンパク質の異常発現レベルのうちの少なくとも1つを含む。
【0373】
本発明の方法は、ヒトを含む任意の動物に適用可能である。
【0374】
哺乳動物は、ヒトであってもよく、GST-πはヒトGST-πとすることができる。RNAi分子は、哺乳動物におけるGST-πの発現を減少させることができる。投与は、哺乳動物におけるGST-πの発現を少なくとも5日間少なくとも5%減少させることができる。この方法は、悪性腫瘍の1以上の症状を減少させることができ、又は悪性腫瘍の進行を遅延又は終了させることができ、又は対象者における悪性腫瘍細胞の増殖を減少させることができる。腫瘍細胞は、正常細胞におけるものと比較して、野生型KRASタンパク質の発現レベルが増加していても良い。腫瘍細胞は、野生型GST-π RNA又はタンパク質を過剰発現していても良い。
【0375】
いくつかの実施形態において、腫瘍細胞は、残基12、13、及び61のうちの1つ以上でKRASタンパク質に突然変異を含むことができる。特定の実施形態では、腫瘍細胞がKRASタンパク質中に突然変異を含むことができ、腫瘍は肺癌である。この腫瘍は、肉腫、肺腺癌であってもよい。悪性腫瘍は、肺腺癌といった肉腫であってもよい。
【0376】
別の観点において、本発明の実施形態は、悪性腫瘍サイズがGST-πのsiRNA阻害剤での処置によってインビボで減少され得るという驚くべき発見に関する。さらに、本発明の実施形態は、悪性腫瘍を予防又は治療するための方法及び組成物を提供するために、腫瘍細胞アポトーシスを合成致死性のレベルまで増加させることができるという予想外に有利な結果を提供する。
【0377】
本発明の実施形態は、悪性腫瘍の状態及び疾患を予防、治療、又は改善するための様々な器官への送達において使用するための、核酸ベースの治療化合物を組み込む方法及び組成物に関する。いくつかの実施形態において、本発明は、悪性腫瘍に関連する種々の標的の遺伝子サイレンシングのためのRNA干渉分子(RNAi分子)の組成物を提供する。
【0378】
本発明の実施形態は、治療分子の送達のための組成物、ならびにその使用方法を提供することができる。本発明の種々のRNAベース及び薬物組成物は、悪性腫瘍を予防又は処置するための方法において使用することができる。
【0379】
いくつかの実施形態において、腫瘍細胞に対して合成致死性を生じるレベルに調節するsiRNA剤での処理によって、KRAS突然変異を含むか又は異常なKRAS発現レベルを示す悪性腫瘍においてGST-πの発現を減少させることができる。
【0380】
本発明の実施形態は、悪性腫瘍に対する核酸ベースの治療化合物のための方法及び組成物に関する。いくつかの実施形態において、本発明は、GST-πの発現をサイレンスすることができるRNAi分子、構造及び組成物を提供する。本開示の実施形態の構造及び組成物は、悪性腫瘍の予防、治療、又はサイズの縮小に使用することができる。
【0381】
本発明の実施形態は、対象者における新生物を処置するために使用できる組成物及び方法を提供する。特に、本発明の実施形態は、KRAS関連新生物を治療するための、GST-π核酸分子又はポリペプチドの発現を減少させることができる治療組成物を提供する。
【0382】
いくつかの観点において、本発明は、GST-π核酸分子の少なくとも断片に対応するか、又はそれに相補的であり、そして細胞におけるGST-π発現を減少させる阻害核酸分子を含む。
【0383】
特定の実施形態において、本発明は、GST-πを抑制するための、siRNA又はshRNAのようなRNAi分子、並びにDNA指向RNA(ddRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)及び反復関連siRNA(rasiRNA)である二本鎖核酸分子を提供する。
【0384】
本発明の方法の実施形態は、ヒトを含む任意の動物に適用可能である。
【0385】
いくつかの観点において、本発明は、上記の阻害核酸分子をコードする1つ以上のベクターを含む。ベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、又はレンチウイルスベクターとすることができる。さらなる実施形態において、ベクターは、哺乳動物細胞における発現に適切なプロモーターを含むことができる。さらなる実施形態は、KRAS変異を含むか又は異常なKRAS発現レベルを示す癌細胞を含み、これはまた、ベクター、又は上記観点のいずれか1つの阻害核酸分子を含むことができる。さらなる実施形態において、細胞は、インビボにおける新生物細胞とすることができる。
【0386】
いくつかの実施形態において、本発明は、KRAS突然変異を含むか又は異常なKRAS発現を示す悪性腫瘍細胞におけるGST-π発現を減少させるための方法を含む。方法は細胞を有効量の阻害核酸分子と接触させることを含むことができ、ここで、阻害核酸分子はGST-πポリペプチドの発現を阻害し、それによって、細胞におけるGST-π発現を減少させる。
【0387】
さらなる実施形態において、本発明の方法は、悪性腫瘍におけるGST-π転写又は翻訳を減少させることができる。
【0388】
特定の実施形態において、本発明は、悪性腫瘍細胞におけるGST-π発現を減少させるための方法を含み、ここで細胞は、ヒト細胞、新生物細胞、インビボの細胞又はインビトロの細胞とすることができる。
【0389】
本発明の実施形態はまた、新生物を有する対象者を処置するための方法を提供することができる。ここで、新生物癌細胞は、KRAS変異を含むか又は異常なKRAS発現レベルを示す。方法は、有効量の2つ以上の阻害核酸分子を対象者に投与することを含むことができる。ここで、阻害核酸分子がGST-π発現を減少させることによって、新生物を処置する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、治療前又は治療なしの新生物のサイズと比較して、新生物のサイズを減少させることができる。
【0390】
種々の実施形態において、リポソーム、ポリマー、ミクロスフェア、ナノ粒子、遺伝子治療ベクター又は裸のDNAベクター中で阻害核酸分子を送達することができる。
【0391】
さらなる観点において、本発明は新生物癌細胞がKRAS突然変異を含むか又は異常なKRAS発現レベルを示す新生物を有する対象者(例えば、ヒト患者)を処置するための方法を特徴とする。特定の実施形態において、この方法は、GST-πポリペプチドの発現を阻害する、有効量の阻害核酸分子を対象者に投与することを包含することができる。ここで、阻害核酸分子は、アンチセンス核酸分子、siRNA、RNA干渉に対して活性であるdsRNA、又はそれらの組み合わせである。
【0392】
特定の実施形態において、新生物は、悪性腫瘍又は肺癌とすることができる。
【0393】
脂質尾部の構造
本発明の脂質様化合物の実施形態は、1つ以上のアルキル基又はアルケニル基を含有する1つ以上の親油性尾部を有していてもよい。親油性尾部としては、C(14:1(5))アルケニル、C(14:1(9))アルケニル、C(16:1(7))アルケニル、C(16:1(9))アルケニル、C(18:1(3))アルケニル、C(18:1(5))アルケニル、C(18:1(7))アルケニル、C(18:1(9))アルケニル、C(18:1(11))アルケニル、C(18:1(12))アルケニル、C(18:2(9,12))アルケニル、C(18:2(9,11))アルケニル、C(18:3(9,12,15))アルケニル、C(18:3(6,9,12))アルケニル、C(18:3(9,11,13))アルケニル、C(18:4(6,9,12,15))アルケニル、C(18:4(9,11,13,15))アルケニル、C(20:1(9))アルケニル、C(20:1(11))アルケニル、C(20:2(8,11))アルケニル、C(20:2(5,8))アルケニル、C(20:2(11,14))アルケニル、C(20:3(5,8,11))アルケニル、C(20:4(5,8,11,14))アルケニル、C(20:4 (7,10,13,16))アルケニル、C(20:5(5,8,11,14,17))アルケニル、C(20:6(4,7,10,13,16,19))アルケニル、C(22:1(9))アルケニル、C(22:1(13))アルケニル、及びC(24:1(9))アルケニルを例示することができる。
【0394】
化学的定義
本明細書で使用される用語「アルキル」は、任意の長さでよい、飽和脂肪族基のヒドロカルビル基を指す。アルキル基は、1~22個の炭素原子を含有する分岐又は非分岐、置換又は非置換脂肪族基とすることができる。この定義は、例えば、シクロアルキル、アルコキシ、アルカノイル及びアラルキルなどの他の官能基におけるアルキル部分にも適用される。
【0395】
本明細書で使用される場合、「C(1-5)アルキル」といった用語は、C(1)アルキル、C(2)アルキル、C(3)アルキル、C(4)アルキル及びC(5)アルキルを包含する。同様に、例えば、「C(3-22)アルキル」などの用語は、C(1)アルキル、C(2)アルキル、C(3)アルキル、C(4)アルキル、C(5)アルキル、C(6)アルキル、C(7)アルキル、C(8)アルキル、C(9)アルキル、C(10)アルキル、C(11)アルキル、C(12)アルキル、C(13)アルキル、C(14)アルキル、C(15)アルキル、C(16)アルキル、C(17)アルキル、C(18)アルキル、C(19)アルキル、C(20)アルキル、C(21)アルキル及びC(22)アルキルを含む。
【0396】
本明細書中で使用される場合、アルキル基は、Me(メチル)、Et(エチル)、Pr(任意のプロピル基)、nPr(n-Pr、n-プロピル)、iPr(i-Pr、イソプロピル)、Bu(任意のブチル基)、nBu(n-Bu、n-ブチル)、iBu(i-Bu、イソブチル)、sBu(s-Bu、sec-ブチル)及びtBu(t-Bu、tert-ブチル)などの用語によって指定することができる。
【0397】
用語「アルケニル」は、本明細書中で使用される場合、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有するヒドロカルビルラジカルを指す。アルケニル基は、2~22個の炭素原子及び少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する分岐又は非分岐、置換又は非置換ヒドロカルビル基とすることができる。
【0398】
本明細書で使用される「置換された」という用語は、同じであっても異なっていてもよく、水素置換基を含んでいてもよい、1つ以上の置換又は置換基を有する原子を指す。したがって、用語「アルキル」、「シクロアルキル」、「アルケニル」、「アルコキシ」、「アルカノイル」、及び「アリール」は、例えば、置換されたバリエーションを含むことができる基を指す。置換されたバリエーションには、直鎖、分岐鎖、及び環状のバリエーション及び官能基の任意の炭素原子に結合した1つ以上の水素を置換する1つ又は複数の置換基を有する官能基が含まれる。
【0399】
一般に、化合物は、1つ以上のキラル中心を含むことがある。1つ以上のキラル中心を含む化合物は、「異性体」、「立体異性体」、「ジアステレオマー」、「鏡像異性体」、「光学異性体」又は「ラセミ混合物」として記載されるものを含むことができる。立体化学命名のための慣習、例えば、Cahn、Ingold及びPrelogの立体異性体命名規則、ならびに立体化学の決定及び立体異性体の分離のための方法は、当該分野で公知である。例えば、Michael BSmith and Jerry March、March's Advanced Organic Chemistry、5th edition、2001を参照されたい。本開示の化合物及び構造は、任意の混合物、ラセミ体又は他のものを含む、特定の化合物又は構造について存在すると理解されるすべての可能な異性体、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体及び/又は光学異性体を包含することを意味する。
【0400】
本発明は、本明細書に開示される化合物及び組成物の任意の及びすべての互変異性体、溶媒和又は非溶媒和、水和又は非水和形態、ならびに任意の原子同位体形態を包含する。
【0401】
本発明は、本明細書に開示される化合物及び組成物の任意の及びすべての結晶多形又は異なる結晶形を包含する。
【実施例】
【0402】
実施例1:GST-πを標的とするsiRNAを有する本発明の医薬製剤の実施形態は、in vivoで肺への増強された分布を示した。
【0403】
図1は、GST-πを標的とするsiRNA、イオン化可能な脂質化合物A、及びDSPE-mPEG-2000脂質化合物を含有する本発明の医薬製剤を用いた、肺in vivoマウス(非腫瘍担持動物)への増強された分布を示す。ナイーブ動物に4mg/kgの用量の注射した4時間後に、1群あたり5匹の動物で器官を採取した。器官におけるsiRNAの蓄積を蛍光によって測定した。
【0404】
図1は、DMPE-mPEG-2000脂質化合物を使用する同様の製剤と比較して、製剤(siRNA GST-π、化合物A 25モル%、コレステロール30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%)については、肺において著しく高い蓄積を示している。ナノ粒子リポソーム製剤中の化合物AとDSPE-mPEG-2000脂質化合物との組み合わせは、肺におけるGST-π siRNAの蓄積を驚くほど増強した。
【0405】
実施例2:GST-πを標的とするsiRNAを有する本発明の医薬製剤の実施形態は、インビボで腫瘍体積の著しい減少を示した。GST-π siRNAは、癌異種移植片腫瘍にリポソーム製剤で投与した場合、インビボで遺伝子ノックダウン効力を供した。
【0406】
図2は、無胸腺ヌード(nu/nu)雌マウスにおけるA549細胞肺癌sub-Q異種移植モデルにおける、本発明のGST-πsiRNAのリポソーム製剤についての腫瘍増殖阻害効力を示す。医薬製剤(siRNA GST-π、化合物A 25モル%、コレステロール 30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%)は、投与後数日以内に有意な腫瘍増殖阻害効果を示した。49日後、GST-π siRNAを含む医薬製剤は顕著に有利な腫瘍増殖阻害効力を示し、腫瘍体積は、ビヒクル対照と比較して、4mg/kg用量について3.4倍を超えて減少した。
【0407】
治療による腫瘍増殖抑制効果を評価した結果、用量依存的な腫瘍増殖抑制が認められた。4mg/kgでは、49日目のT/C比は30%(腫瘍増殖阻害比、ビヒクル対照について100%とした)であり、腫瘍増殖阻害の割合は70%(TGI%、ビヒクル対照について0%)であり、腫瘍倍加期間は47日(tD、ビヒクル対照について16日)であった。有意な体重減少は認められなかった。
【0408】
各製剤の0.75及び4mg/kgの用量レベルを、週1回(QWx8)投与法に従って8週間連続して動物に投与した。有効性(腫瘍容積減少曲線、T/C比率、%TGI及びtD)及び安全性(体重及び明白な徴候)の両方を本研究でモニターした。最終投与から24時間後に組織検体(腫瘍、肺、肝臓)を採取した。1群7匹(145±5mm)で、投与容量は10mL/kgであった。評価項目は、(1)BW:最初の週は毎日、続く3週間は初回投与後2回/週、追加投与した場合は残りの週は1回/週とし、(2)腫瘍計測:最初の4週間は2回/回、追加投与した場合は残りの週は1回/回とした。投与日に、凍結製剤バイアルを、それぞれ-80℃及び-20℃のフリーザーから取り出した。
【0409】
医薬製剤を凍結製剤ストックから使用し、バイアルを室温で約30分間放置した。バイアルを穏やかに反転させて内容物を十分に混合した。ストック溶液を適切な容量の生理食塩水で希釈して、IV投与の前に対応する標的濃度を達成した。
【0410】
癌異種移植モデルのプロトコル例。A549細胞株をATCCから得る。細胞を、10%ウシ胎仔血清及び100 U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを補充した培養培地中で維持する。細胞を、播種の48時間前に個別化することで、細胞は、収集された段階で対数増殖期にある。細胞をトリプシン-EDTAで軽くトリプシン処理し、組織培養物から回収する。生存細胞の数を計数し、トリパンブルーの存在下で血球計算器にて測定する(生存細胞のみを計数する)。細胞を、血清を含まない培地中に5×107/mlに再懸濁する。次いで、細胞懸濁液を、注射のために、氷解凍したBDマトリゲルと1:1の比で十分に混合する。
【0411】
マウスはCharles River Laboratory Athymic Nude(nu/nu)雌マウス、免疫不全、6~8週齢、各群7~8匹である。
【0412】
腫瘍モデル調製のために、それぞれのマウスを、25 Gニードル及び注射器を使用して、0.1mLのA549細胞の2.5×106の接種物(マウスあたり1つの接種物)で右側腹部に皮下接種する。マウスには接種の麻酔を施さない。
【0413】
腫瘍体積測定及び無作為化のために、腫瘍サイズを0.1mm単位まで測定する。腫瘍体積は、式:腫瘍体積=長さ×幅2/2を用いて計算される。確立された腫瘍が約120~175mm3に達すると、平均腫瘍体積は約150 mm3であり、マウスは種々のビヒクル対照群及び処置群に割り当てられるが、処置群における平均腫瘍体積がビヒクル対照群における平均腫瘍体積の10%以内、理想的には腫瘍体積のCV%が25%未満とする。同日、投与法に従って被験物質及び対照ビヒクルを投与する。腫瘍体積を1週目は3回、試験終了日を含む残りの週は2回モニタリングする。
【0414】
投与量・投与について、投与日に-80℃の冷凍庫から被験物質を取り出し、氷上で解凍する。注射器に注入する前に、製剤を含むボトルを手で数回反転させる。全ての被験物質は、10ml/kgでIVにより投与される。
【0415】
体重については、マウスを0.1g単位まで秤量する。体重をモニターし、最初の投与のための投薬後7日以内は毎日記録する。体重をモニターし、週2回、試験終了日を含む残りの週について記録する。
【0416】
腫瘍採取については、初回投与後49日目に腫瘍体積を測定し、腫瘍を切開して重量測定を行い、PDバイオマーカー試験用に保存する。腫瘍重量を記録する。
【0417】
実施例3:GST-πを標的とするsiRNAを有する本発明の実施形態の薬物生成物は、インビボで腫瘍体積の顕著な減少を示した。GST-π siRNAは、癌異種移植片腫瘍にリポソーム製剤で投与した場合、インビボで遺伝子ノックダウン効力を供した。
【0418】
図3は、無胸腺Balb/cヌード(nu/nu)雌マウスにおけるヒトH2009細胞肺癌サブQ異種移植片モデルにおける、本発明の実施形態のGST-πsiRNAのリポソーム製剤に対する腫瘍増殖阻害効力を示す。H2009はリンパ節転移肺腺癌細胞である。投与された薬物溶液は、10mg/バイアルのGST-π siRNAを含有する凍結乾燥医薬溶液から再構成された。医薬溶液は、医薬製剤(siRNA GST-π、化合物A 25モル%、コレステロール30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%)に基づく医薬製剤の懸濁液、並びに凍結乾燥保護用スクロース及び2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、並びにバッファーとしてアスコルビン酸27mg及び酢酸ナトリウム27mgを含有した。製剤は、5.6 mLの滅菌WFIを含む薬液に再構成され、1.5 mg/mLのAPI(26/52)GST-πsiRNAで再構成された懸濁液が得らた。その結果、KRAS変異皮下(sub-Q)異種移植H2009 NSCLC腫瘍モデルにおいて、本薬溶液の用量依存的な腫瘍増殖抑制作用が認められた。
【0419】
薬物溶液のZ平均(Z-ave)粒径は54nm(陰性対照では44nm)であり、粒径分布PDIは0.15(陰性対照では0.09)であった。
【0420】
投与日に、凍結乾燥製剤バイアルを20℃フリーザーから取り出した。濃度2mg/mLの作業溶液を調製するために、注射用水(WFI)1.2mLを加えて、凍結乾燥ケーキを再構成した。バイアルを室温で5分間放置し、2分間穏やかに旋回させ、次いで室温でさらに20分間放置した。最終希釈ラウンドを行い、5.4mLの生理食塩水を0.6mLの2mg/mL溶液に添加して、0.2mg/mL投薬溶液を得た。
【0421】
マウスに陰性対照を4 mpk、被験薬を1及び4 mpkの用量で投与し、投与容量は10mL/kgとした。用法は週1回(QW)を4週間連続投与とした。
【0422】
凍結乾燥医薬製剤(siRNA GST-π、化合物A 25モル%、コレステロール30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%)から再構成された薬物溶液は、投与後数日以内に有意な腫瘍増殖阻害効果を示した。29日後、GST-πsiRNAを含む医薬製剤は顕著に有利な腫瘍増殖阻害効力を示し、腫瘍体積は、陰性対照と比較して、4mg/kg用量で1.5倍を超えて減少した。
【0423】
結論として、薬物溶液は、ヒトKRAS変異体H2009 sub‐Q異種移植腫瘍に対して腫瘍増殖阻害効果を示した。抗腫瘍活性は用量依存性であることが示された。
【0424】
【0425】
治療による腫瘍増殖抑制効果を評価した結果、用量依存的な腫瘍増殖抑制が認められた。4mg/kgでは、29日目のT/C比は51%(腫瘍増殖阻害比、ネガティブコントロールについて78%)であり、腫瘍増殖阻害の割合は49%(TGI%、ネガティブコントロールについて22%)であり、腫瘍倍加期間は27日(tD、ネガティブコントロールについて16日)であった。試験動物では、投与後最初の1週間にわずかな体重減少(10%未満)がみられたが、その後、基準レベルに戻り、その後、体重増加がみられた。残りの動物については、研究全体を通して明白な臨床徴候は観察されなかった。
【0426】
プロトコル:ヒトH2009セルラインは、ATCC(ATCC CCL-5911(商標)、Manassas、VA)から入手した。細胞を、5%ウシ胎仔血清(HyClone/VWRからのロット# AAM211829)、100U/mlペニシリン(Gibcoからのロット#1780186)及び100μg/mlストレプトマイシン(Gibcoからのロット#1780186)を補充したDMEM/F12(カタログ#30-2006)培養培地中で維持した;追加の成分を、最終処方物と共に、以下のように添加した:0.005mg/mlインスリン、0.01mg/mlトランスフェリン、30 nMセレン酸ナトリウム、10 nMヒドロコルチゾン、4.5mM L-グルタミン、そして、5% CO2を含む加湿大気中で48時間維持した。細胞を接種の48時間前に剥離し、細胞を収集した段階で対数増殖期にあるようにした。細胞をトリプシン-EDTAで軽くトリプシン処理し、組織培養物から回収した。生存細胞の数を計数し、トリパンブルーの存在下で血球計算器にて測定した(生存細胞のみを計数する)。次いで、細胞を、血清を含まない培地中で3×107/mlに再懸濁した。細胞懸濁液を注射のために氷解凍したBDマトリゲル(VWRからのロット番号7058007)と1:1の比で十分に混合して、マウスに異種移植片腫瘍を確立した。
【0427】
6~8週目の無胸腺Balb/cヌード(nu/nu)雌マウスをCharles River Laboratoriesから購入し、動物施設で飼育した。それぞれのマウスに、25G1/2ニードル及び1ml注射器(マウスあたり1つの接種材料)を用いて、1.5×106のNCI H2009細胞の0.1mL接種材料を右側腹部に皮下接種した。腫瘍サイズを0.1mm単位で測定した。腫瘍体積は、次式を用いて計算した:腫瘍体積=(長さ×幅2)/2。確立された腫瘍が約120~170mm3(145 mm3での平均腫瘍体積)に達したら、マウスをビヒクル対照群及び3つの処置群に無作為化した。無作為化は主に2つの基準に基づいて行われた:1)各治療群の平均腫瘍体積がビヒクル対照群の対応する値の10%以内であり、2)各群内の腫瘍体積のCV%が15%未満でである。同日、投与法に従って被験物質及び対照ビヒクルを投与した。腫瘍体積は、1週目は3回モニターし、試験終了日を含む残りの週は2回モニターした。また、いずれの試験群にも極端なものが含まれていないことを確認するため、全試験群にわたって体重をチェックした。この研究では、1群あたり7匹のマウスを使用した。
【0428】
体重は最初の1週間は毎日、残りの試験期間は週2回測定した。試験期間中、腫瘍サイズを週2回測定した。試験中の動物は、明白な臨床徴候がないか毎日観察した。
【0429】
実施例4:GST-πを標的とするsiRNAを有する本発明の実施形態の医薬製剤は、in vivoで癌異種移植腫瘍の顕著な減少を示した。GST-π siRNAは、癌異種移植片腫瘍にリポソーム製剤で投与した場合、インビボで遺伝子ノックダウン効力を供した。
【0430】
図4は、無胸腺Balb/cヌード(nu/nu)雌マウスにおけるヒトH23細胞肺癌サブQ異種移植モデルにおける、本発明の実施形態のGST-πsiRNAのリポソーム製剤に対する腫瘍増殖阻害効力を示す。H23は腺癌;非小細胞肺癌である。投与された組成物は、医薬製剤(siRNA GST-π、化合物A 25モル%、コレステロール30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%)に基づく医薬製剤の懸濁液、並びに緩衝液としてアスコルビン酸27mg及び酢酸ナトリウム27mgを含有した。その結果、KRAS変異皮下(sub-Q)異種移植H23 NSCLC腫瘍モデルにおいて、本薬溶液の用量依存的な腫瘍増殖抑制作用が認められた。
【0431】
医薬組成物のZ-平均粒子サイズは47nm(ネガティブコントロールについては44nm)であり、粒子サイズ分布PDIは0.07(ネガティブコントロールについては0.09)であった。
【0432】
投与日に、凍結製剤バイアルを-80℃冷凍庫から取り出し、室温で約30分間解凍した。バイアルを穏やかに反転させて内容物を混合した。ストック溶液を、適切な容量の生理食塩水で希釈して、IV投与の前に標的濃度を達成した。
【0433】
マウスに陰性対照を4 mpkの用量で、被験薬を4 mpkの用量で投与し、投与容量を10mL/kgとした。用法は週1回(QW)を4週間連続投与とされた。
【0434】
医薬組成物(siRNA GST-π、化合物A 25モル%、コレステロール 30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%)は、投与後数日以内に有意な腫瘍増殖阻害効果を示した。28日後、GST-π siRNAを含む医薬製剤は、顕著に有利な腫瘍増殖阻害効力を示し、腫瘍体積は、陰性対照と比較して、4mg/kg用量について1.3倍を超えて減少した。
【0435】
結論として、薬物溶液は、ヒトKRAS変異体H23 sub-Q異種移植腫瘍に対して腫瘍増殖阻害効果を示した。抗腫瘍活性は用量依存性であることが示された。
【0436】
【0437】
治療による腫瘍増殖抑制効果を評価した結果、用量依存的な腫瘍増殖抑制が認められた。4mg/kgでは、28日目のT/C比は52%(腫瘍増殖阻害比、陰性対照について69%)であり、腫瘍増殖阻害のパーセンテージは48%(TGI%、陰性対照について31%)であった。
【0438】
図5は、無胸腺Balb/cヌード(nu/nu)雌マウスにおけるヒトH23細胞肺癌サブQ異種移植モデルにおける、本発明のGST-πsiRNAのリポソーム製剤についての腫瘍増殖阻害効力を示す。投与された組成物は、医薬製剤(siRNA GST-π、化合物A 25モル%、コレステロール30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%)に基づく医薬製剤の懸濁液、並びに緩衝液としてアスコルビン酸27mg及び酢酸ナトリウム27mgを含有している。その結果、KRAS変異皮下(sub-Q)異種移植H23 NSCLC腫瘍モデルにおいて、本薬溶液の用量依存的な腫瘍増殖抑制作用が認められた。
【0439】
医薬組成物(siRNA GST-π、化合物A 25モル%、コレステロール 30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%)は、投与後数日以内に有意な腫瘍増殖阻害効果を示した。56日後、GST-πsiRNAを含む医薬製剤は顕著に有利な腫瘍増殖阻害効力を示し、腫瘍体積は、陰性対照と比較して、4mg/kg用量について2倍を超えて減少した。
【0440】
【0441】
プロトコル:ヒトNCI-H23細胞系をATCC(C/N: CRL-5800、L/N: 63990092、Manassas、VA)から入手した。細胞を、10%ウシ胎仔血清(HyClone/VWRからのロット# AAM211829)、100 U/mLペニシリン(Gibco社製、ロット#1780186)及び100μg/mLストレプトマイシン(Gibco社製、ロット#1780186)を含むRPMI-1640培地(HyClone/VWR社製、ロット# AAF202601)中で、5% CO2を含む加湿大気中で48時間維持した。培養細胞を3回継代し、次いで動物接種の前に回収した。次いで、回収した細胞を、無血清RPMI培地中で3×107細胞/mLに再懸濁した。細胞懸濁液を、注射のために氷解凍したBD Matrigel(Lot# 7058007、VWR製)と1:1の比で十分に混合し、マウスに異種移植片腫瘍を確立した。
【0442】
6~8週目の無胸腺Balb/cヌード(nu/nu)雌マウスをCharles River Laboratoriesから購入し、動物施設で飼育した。1.5×106細胞0.1mlを右側腹部に皮下接種した。腫瘍サイズを0.1mm単位で測定した。腫瘍体積は、次式を用いて計算した:腫瘍体積=(長さ×幅2)/2。確立された腫瘍が約120~170mm3(145 mm3での平均腫瘍体積)に達したら、マウスをビヒクル対照群及び2つの処置群に無作為化した。無作為化は主に2つの基準に基づいて行われた:1)各治療群の平均腫瘍体積はビヒクル対照群の対応する値の10%以内とし、2)各群内の腫瘍体積のCV%は15%未満とした。また、いずれの試験群にも極端なものが含まれていないことを確認するため、全試験群にわたって体重をチェックした。この研究では、1群あたり7匹のマウスを使用した。
【0443】
実施例5:脂質ナノ粒子製剤は、驚くほど高く肺へ送達される。
【0444】
図6は、本発明の製剤の実施形態についての、in vivoマウスにおける肺と肝臓の分布の比を示す。投与された組成物は、2つの医薬製剤、「DMPE(左):」(API siRNA、化合物A 25モル%、コレステロール30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DMPE-mPEG-2000 5モル%)、及び「DSPE(右):」(API siRNA、化合物A 25モル%、コレステロール30モル%、DOPE 20モル%、DOPC 20モル%、DSPE-mPEG-2000 5モル%)に基づいた。結果は、インビボマウスにおける肝臓に対する活性剤の肺に対する分布の比は、驚くべきことに、DMPE-mPEG-2000と比較して、DSPE-mPEG-2000に基づく製剤について約30倍高いことを示した。
【0445】
実施例6:化合物A及びDSPE-PEG2kを含む脂質ナノ粒子製剤は、驚くほど高く肺へ送達される。
【0446】
図7は、脂質カプセル化API siRNAを含有する本発明の製剤の実施形態についての、インビボマウスに対する肺と肝臓の分布の比を示す。投与された組成物は、以下の表に記載されるような3つの医薬製剤に基づいた。結果は、in vivoマウスにおいて、肝臓に対する肺へのsiRNA活性剤分布の比は、DSPE-mPEG-2000に基づく製剤について、他の点では同一のDMPE-mPEG-2000又はDPPE-mPEG-2000に基づく製剤と比較して、驚くべきことに25倍~30倍高いことを示した。
【0447】
【0448】
実施例7:脂質(化合物A、化合物B又は化合物C)及びDSPE-PEG2kを含む脂質ナノ粒子製剤は、驚くほど高く肺へ送達された。
【0449】
図8は、脂質カプセル化API siRNAを含有する本発明の製剤の実施形態についての、インビボマウスにおける肺と肝臓の分布の比を示す。投与された組成物は、以下の表に詳述されるように、異なる脂質(化合物A、化合物B及び化合物C)を利用する3つの医薬製剤に基づいた。
【0450】
【0451】
結果は、in vivoマウスにおける肝臓に対する肺へのsiRNA活性剤の分布の比率が3つの脂質全てについて1.0よりも大きいことが示され、そして驚くべきことに、
図8に例示される化学構造を有する脂質化合物B及び化合物Cに基づく製剤(他の点では同一)と比較して、化合物Aに基づく製剤についてはかなり高かったことを示した。
【0452】
本明細書中に記載される実施形態は限定的ではなく、当業者は本明細書中に記載される修飾の特定の組み合わせが、改善されたRNAi活性を有する核酸分子を同定するための過度の実験なしに試験され得ることを容易に理解できる。
【0453】
本明細書で特に言及される全ての刊行物、特許及び文献は、全ての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【0454】
本発明は、記載される特定の方法、プロトコル、材料、及び試薬に限定されず、これらは変更可能であることが理解される。また、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。説明の範囲及び思想から逸脱することなく、本明細書に開示された説明に対して様々な置換及び修正を行うことができ、これらの実施形態が本明細書及び特許請求の範囲内にあることは、当業者には容易に明らかであろう。
【0455】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は文脈がそわないことを明確に指示しない限り、複数の参照を含むことに留意されたい。同様に、用語「a」(又は「an」)、「1つ又は複数」及び「少なくとも1つ」は、本明細書で互換的に使用することができる。また、用語「comprises」、「comprising」、「containing」、「including」も互換的に使用することができ、広範かつ制限なく読むものとすることに留意されたい。
【0456】
本明細書中の数値範囲の言及は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は本明細書中で個々に列挙されるかのように、明細書に組み込まれる。マーカッシュグループについて、当業者は、この説明が個々のメンバー、ならびにマーカッシュグループのメンバーのサブグループを含むことを認識する。
【0457】
さらに詳述することなく、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は単に例示的なものとして解釈されるべきであり、いかなる形でも本開示の残りの部分を限定するものではない。
【0458】
本明細書に開示された特徴の全ては、任意の組合せで組み合わせることができる。本明細書に開示された各特徴は、同じ、同等の、又は同様の目的を果たす代替的特徴によって置き換えることができる。
【配列表】