(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】複合膜
(51)【国際特許分類】
B01D 63/10 20060101AFI20250415BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20250415BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20250415BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20250415BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20250415BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20250415BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
B01D63/10
B01D69/10
B01D71/26
B01D71/68
B01D63/00 510
B01D69/12
B32B5/18
(21)【出願番号】P 2021543407
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(86)【国際出願番号】 US2020015229
(87)【国際公開番号】W WO2020154734
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-13
(32)【優先日】2019-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519350775
【氏名又は名称】アクア メンブレインズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘリントン,ロドニー イー.
(72)【発明者】
【氏名】ロデリック,ケヴィン
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/195367(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/091027(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/057474(WO,A1)
【文献】米国特許第04476022(US,A)
【文献】特表2006-507117(JP,A)
【文献】特開2014-140837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 63/00-16
B01D 69/00-14
B01D 71/00-82
B32B 5/18-32
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)多孔質のポリスルホン層であって、前記ポリスルホン層の第1の面上に一体化された複数の離間用特徴物を有する多孔質のポリスルホン層と、
(b)前記離間用特徴物および前記ポリスルホン層の両方を覆うように、前記ポリスルホン層の前記第1の面上に配置された多孔質ポリマ濾過層と、
(c)前記ポリスルホン層の第2の面と接触して取り付けられた多孔質の支持層と
を備え、
前記ポリスルホン層の前記第2の面が、前記ポリスルホン層の前記第1の面の反対側にあ
り、
前記支持層が、前記ポリスルホン層から遠位の前記支持層の一部分においてよりも、前記ポリスルホン層に近位の前記支持層の一部分において、より大きい透過性を有する、
膜エレメント。
【請求項2】
前記支持層がポリエチレンを備える、
請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項3】
前記支持層がメッシュ材料を備える、
請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項4】
前記支持層内に配置された1つ又は複数の実質的に不透過性であるバリア特徴物をさらに備え、
前記バリア特徴物が、前記支持層内に流体流路を画定する、
請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項5】
前記支持層内に配置された前記バリア特徴物が、前記ポリスルホン層まで延在せず、
前記支持層が、不織ポリエステルを備える、
請求項
4に記載の膜エレメント。
【請求項6】
透過水キャリア層であって、前記透過水キャリア層内に配置された1つ又は複数の不透過性であるバリア特徴物を有する透過水キャリア層をさらに備え、
前記透過水キャリア層が、前記ポリスルホン層と接触する前記支持層の表面の反対側の、前記支持層の表面上で、前記支持層に結合される、
請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項7】
前記離間用特徴物が前記ポリスルホン層の前記第1の面上の1/2のみに配置される、
請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項8】
前記離間用特徴物の第1のサブセットが、前記ポリスルホン層の入口縁辺の近く、出口縁辺の近く、又はその両方の縁辺の近くに配置され、
前記第1のサブセットの離間用特徴物が、第1の高さを有し、
前記離間用特徴物の第2のサブセットが、前記ポリスルホン層の前記第1の面の1/2を超えない範囲にのみ配置され、
前記第2のサブセットの離間用特徴物が、第2の高さを有し、
前記第2の高さが前記第1の高さの2倍である、
請求項1に記載の膜エレメント。
【請求項9】
前記多孔質ポリマ濾過層が折り畳まれた膜エレメントの内側にあるように前記膜エレメントの長さの中央の近くで折り曲げ線に沿って折り畳まれる、請求項1に記載の膜エレメントを備える、
濾過エレメント。
【請求項10】
収集管をさらに備え、前記折り畳まれた膜エレメントが、前記支持層が前記収集管と接触するように設置され、前記折り畳まれた膜エレメントが、前記収集管の周囲で渦巻状に巻かれる、
請求項
9に記載の濾過エレメント。
【請求項11】
請求項1に記載の1つ又は複数の追加の膜エレメントをさらに備え、前記追加の膜エレメントが、前記支持層が前記収集管と接触するように設置され、前記追加の膜エレメントが、前記収集管の周囲で渦巻状に巻かれる、
請求項
10に記載の濾過エレメント。
【請求項12】
前記折り曲げ線の近くで前記多孔質ポリマ濾過層上に配置される折り目保護エレメントをさらに備える、
請求項
9に記載の濾過エレメント。
【請求項13】
前記折り曲げ線から遠位の端部で前記膜エレメント上に配置されるスペーサの橋梁支持パターンをさらに備える、
請求項
9に記載の濾過エレメント。
【請求項14】
(a)多孔質のポリスルホン層であって、前記ポリスルホン層の第1の面上に一体化された複数の離間用特徴物を有する多孔質のポリスルホン層と、
(b)前記離間用特徴物および前記ポリスルホン層の両方を覆うように、前記ポリスルホン層の前記第1の面上に配置された多孔質ポリマ濾過層と、
(c)前記ポリスルホン層の第2の面と接触して取り付けられた多孔質の支持層と
を備え、
前記ポリスルホン層の前記第2の面が、前記ポリスルホン層の前記第1の面の反対側にあ
り、
前記支持層が、前記ポリスルホン層から近位の前記支持層の一部分においてよりも、前記ポリスルホン層に遠位の前記支持層の一部分において、より大きい透過性を有する、
膜エレメント。
【請求項15】
(a)複数の離間用特徴物をポリスルホン層の第1の面に設置することと、
(b)(a)のステップの後、多孔質ポリマ濾過層を前記ポリスルホン層の前記第1の面に結合し、前記多孔質ポリマ濾過層が前記離間用特徴物および前記ポリスルホン層の両方を覆うようにすることと、
(c)多孔質の支持層を前記ポリスルホン層の第2の面と結合することと
を含み、
前記ポリスルホン層の前記第2の面が、前記ポリスルホン層の前記第1の面の反対側にあ
り、
前記支持層が、前記ポリスルホン層から遠位の前記支持層の一部分においてよりも、前記ポリスルホン層に近位の前記支持層の一部分において、より大きい透過性を有する、
膜エレメントを作る方法。
【請求項16】
前記支持層がポリエチレンを備える、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記支持層がメッシュ材料を備える、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記支持層内に1つ又は複数の実質的に不透過性であるバリア特徴物を形成することをさらに含み、ステップ(c)の前に、前記バリア特徴物が、前記支持層内に流体流路を画定する、
請求項15に記載の方法。
【請求項19】
透過水キャリア内に1つ又は複数の実質的に不透過性であるバリア特徴物を形成することと、
前記ポリスルホン層と接触する前記支持層の表面の反対側の、前記支持層の表面上で、前記透過水キャリアを前記支持層に結合することと
をさらに含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記離間用特徴物が前記ポリスルホン層の前記第1の面上の1/2のみに配置される、
請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記離間用特徴物の第1のサブセットが、前記ポリスルホン層の入口縁辺の近く、出口縁辺の近く、又はその両方の縁辺の近くに配置され、前記第1のサブセットの離間用特徴物が、第1の高さを有し、前記離間用特徴物の第2のサブセットが、前記ポリスルホン層の前記第1の面の1/2を超えない範囲にのみ配置され、前記第2のサブセットの離間用特徴物が、第2の高さを有し、前記第2の高さが前記第1の高さの2倍である、
請求項15に記載の方法。
【請求項22】
(a)請求項15に記載の方法に従って膜エレメントを提供することと、
(b)前記多孔質ポリマ濾過層が折り畳まれた前記膜エレメントの内側にあるように前記膜エレメントの長さの中央の近くで折り曲げ線に沿って前記膜エレメントを折り畳むことと
を含む、
濾過エレメントを作る方法。
【請求項23】
前記支持層が収集管と接触するように折り畳まれた前記膜エレメントを設置することと、
折り畳まれた前記膜エレメントを前記収集管の周囲に渦巻状に巻き付けることと
をさらに含む、
請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
請求項15に記載の方法に従って1つ又は複数の追加の膜エレメントを提供することと、前記多孔質ポリマ濾過層が折り畳まれた前記膜エレメントの内側にあるようにそのような膜エレメントの長さの中央の近くで前記追加の膜エレメントのそれぞれを折り畳むことと、
前記支持層が前記収集管と接触するように前記追加の膜エレメントを設置することと、
前記追加の膜エレメントを前記収集管の周囲に渦巻状に巻き付けることと
をさらに含む、
請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記折り曲げ線の近くで前記多孔質ポリマ濾過層上に折り目保護エレメントを設置することをさらに含む、
請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記折り曲げ線から遠位の端部で前記膜エレメント上にスペーサの橋梁支持パターンを設置することをさらに含む、
請求項
22に記載の方法。
【請求項27】
(a)複数の離間用特徴物をポリスルホン層の第1の面に設置することと、
(b)(a)のステップの後、多孔質ポリマ濾過層を前記ポリスルホン層の前記第1の面に結合し、前記多孔質ポリマ濾過層が前記離間用特徴物および前記ポリスルホン層の両方を覆うようにすることと、
(c)多孔質の支持層を前記ポリスルホン層の第2の面と結合することと
を含み、
前記ポリスルホン層の前記第2の面が、前記ポリスルホン層の前記第1の面の反対側にあ
り、
前記支持層が、前記ポリスルホン層から近位の前記支持層の一部分においてよりも、前記ポリスルホン層に遠位の前記支持層の一部分において、より大きい透過性を有する、
膜エレメントを作る方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、流体成分の分離に利用される透過膜システム、特に、スパイラル型膜エレメントに関する。本発明は、2013年2月28日に出願された米国仮特許出願第61/771,041号及び2019年1月27日に出願された米国仮特許出願第62/797,357号に記載されているものに関し、そのそれぞれが参照によって本願に援用される。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
当該技術分野で知られているスパイラル型膜濾過エレメントは、多孔質の透過水スペーサに、又はその周囲に密着された膜シートを有する積層構造を備え、これは膜を通過した流体を中心管へと移動させるための経路を作り、その一方で、この積層構造は中心管の周囲に渦巻状に巻かれ、それ自体が多孔質の供給水スペーサによって離間され、流体がエレメントを通って軸方向に流れるようになっている。この供給水スペーサは積層構造内の自由で均一な軸方向の流れを維持するために必要であるが、これは軸方向の流路内の流れの制限と圧力低下の原因にもなり、また、流れが制限され、膜と接触する領域を生じさせ、これが生体成長、スケール形成、粒子捕捉を通じた膜ファウリングの大きな一因となる。圧力遅延浸透(PRO、pressure retarded osmosis)、正浸透(FO、forward osmosis)、及び逆浸透(RO、reverse osmosis)の用途においては、供給水空間及び透過水スペーサの流路は、最適なシステム動作に有利であることがある。
【0003】
スパイラル型エレメントの設計に対する改良形態が、Bargerら及びBradfordらにより開示されており、それによれば、供給水スペーサの代わりに、膜の外側、すなわち作用面の上に直接堆積される又はエンボス加工される、アイランド又は突起が使用される。この構成は、エレメントを通る軸方向の流れのための空間を保持しながら、流路内の障害を最小化するという点で有利である可能性がある。また、これによって別の構成部品としての多孔質供給水スペーサが不要になるため、エレメントの製造が単純化される。参照によって本願に援用される「Improved Spiral Wound Element Construction」と題される米国特許出願公開第2016-0008763-A1号は、膜シートの作用面の裏面上への、又は、透過水スペーサの表面上に直接の、印刷パターンの適用を教示している。
【0004】
膜シート自体は通常、3つの層で作られる。第1の多孔質層は、たとえば、ポリエステル、続いて、ポリスルホンの多孔質支持層、最後に、ポリスルホン基材上に堆積された膜ポリマ層から構成することができる。ポリマコーティングは通常、キャスティング法により適用されてきた。三次元(3D)印刷技術は、現在、膜ポリマ材料をポリスルホン基材に直接印刷することができるところまで進歩してきている。ポリスルホン基材上へのポリマコーティングの印刷は、「2-D and 3-D Printing Assisted Fabrication and Modification of UF/NF/RO Membranes for Water Treatment」と題された論文で、Ben Gurion UniversityのZukerberg Institute of Water TechnologyのChris Arnushにより説明されている。エレクトロスプレーによって加えられるポリアミドコーティングも、University of ConnecticutのJeffery McCutcheonより説明されている。参照によってそれぞれが本願に援用される以下の参考文献により、本発明を理解しやすくすることができる。米国特許第3962096号、米国特許第4476022号、米国特許第4756835号、米国特許第4834881号、米国特許第4855058号、米国特許第4902417号、米国特許第4861487号、米国特許第6632357号、及び、米国特許出願公開第2016-0008763-A1号。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の説明
従来のスパイラル型膜エレメントは通常、3つの構成要素である、膜シートと、供給水スペーサと、透過水キャリアとを備える。膜シートは通常、多孔質ポリエチレン層と、たとえば、ポリスルホン層と、たとえば、ポリスルホン層上にキャスティングされたポリマ層とを備える。本発明は、膜エレメント、ポリマ膜、透過水キャリア、及び供給水スペーサの特徴のすべてを1つの複合組立体に一体化することができる3層膜シートを有するシステムを提供する。ポリスルホン層は、供給水スペーサパターンを組み込むことができる。多孔質の、通常は不織のポリエチレン層は、従来のポリエチレン層より厚くなる可能性があり、別々の透過水キャリアシートではなく一体部品として透過水キャリアの特徴を組み込むことができる。透過水キャリアは、例として、圧力遅延浸透及び正浸透の用途において有用である可能性のある特定の流路における透過水キャリアを通して流れを誘導するために、透過水キャリアに印刷又は加工されるチャネルを一体化することもできる。ある例示的な実施形態において、膜層、透過水キャリア、及び供給水スペーサは、1つの複合シート上に一体化される。キャスティングは、過去50年にわたって、ポリマ膜コーティングを適用するための業界標準の方法であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のPROの特許に記載されたものなどの連続的な要素の透過水スペーサ層を通る直列流れを含むいくつかのスパイラル型膜分離の用途において、従来の織透過水スペーサ布によって示されるより小さい流れ抵抗を有することは有利である可能性があり、一方で、高い外圧の下での変形抵抗を含む他の特性を維持する。さらに、透過水スペーサ内の任意の形状の流路に合わせる能力により、透過水スペーサ層を通しての流れの制御可能な分布を可能にすることができる。本発明の実施形態は、透過水スペーサに正供給チャネルを作るために、多孔質透過水スペーサ上に印刷される、堆積される、又は多孔質透過水スペーサに一体化されるチャネルを提供する。他の実施形態において、チャネルを作る材料は、感光性樹脂、ホットメルトポリオレフィン、硬化性ポリマ若しくは接着剤、又はその他の材料とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面の簡単な説明
【
図1】従来の3層膜シート、供給水スペーサシート、及び透過水キャリアシートを備える断面図を示す。
【
図2】多孔質ポリエチレン層と、層に一体化された特徴を有するポリスルホン層と、多孔質ポリアミド濾過層とを備える複合膜シートの断面図である。
【
図3】中間空間における、複合膜シート組立体の透過水スペーサの上に突出する3Dプリント材料の断面図であり、膜シートに必要な一体型の供給水スペーサ特徴物及び厚い透過水キャリアを有し、透過水キャリアにおいて一体化された流路を有する。
【
図4】膜シート組立体の長さの1/2の上に加えられた供給水スペーサ特徴物を有する複合膜シートの断面図である。
【
図5】中央線で折り畳まれ、スパイラル型膜エレメントの中心管に取り付けられた、ポリマ膜層、支持層に一体化された供給水スペーサ特徴物、一体型の透過水キャリアを組み込む複合膜シートの断面図である。
【
図6】中央線で折り畳まれ、スパイラル型膜エレメントの中心管に取り付けられ、折り目保護及び橋梁支持特徴部を含む、ポリマ膜層、支持層に一体化された供給水スペーサ特徴物、一体型の透過水キャリアを組み込む複合膜シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明を実施するための形態と産業上の利用可能性
本発明の実施形態は、(a)ポリスルホン層の第1の面上に一体化された複数の離間用特徴物を有する多孔質ポリスルホン層と、(b)ポリスルホン層の第1の面上に配置された多孔質ポリマ濾過層と、(c)ポリスルホン層の第2の面と接触して取り付けられた多孔質支持層とを備え、ポリスルホン層の第2の面がポリスルホン層の第1の面の反対側にある、膜エレメントを提供する。いくつかの実施形態において、支持層はポリエチレンを備える。いくつかの実施形態において、支持層はメッシュ材料を備える。いくつかの実施形態において、支持層は、ポリスルホン層から遠位の支持層の一部分においてよりも、ポリスルホン層に近位の支持層の一部分において、より大きい透過性を有する。
【0009】
いくつかの実施形態は、支持層内に配置された1つ又は複数の実質的に不透過性であるバリア特徴物をさらに備え、バリア特徴物は、支持層内に流体流路を画定する。いくつかの実施形態において、支持層内に配置されたバリア特徴物は、ポリスルホン層まで延在せず、支持層は、不織ポリエステルを備える。
【0010】
いくつかの実施形態は、透過水キャリア層内に配置された1つ又は複数の実質的に不透過性であるバリア特徴物を有する透過水キャリア層をさらに備え、透過水キャリア層は、ポリスルホン層と接触する多孔質支持層の表面の反対側の、多孔質支持層の表面上で、多孔質支持層に結合される。いくつかの実施形態において、離間用特徴物は、ポリスルホン層の第1の面上の1/2のみに配置される。いくつかの実施形態において、離間用特徴物の第1のサブセットは、ポリスルホン膜の入口縁辺の近く、出口縁辺の近く、又はその両方の縁辺の近くに配置され、第1のサブセットの離間用特徴物は、第1の高さを有し、離間用特徴物の第2のサブセットは、ポリスルホン膜の第1の面の1/2を超えない範囲にのみ配置され、第2のサブセットの離間用特徴物は、第2の高さを有し、第2の高さは第1の高さの2倍である。
【0011】
いくつかの実施形態は、多孔質濾過層が折り畳まれた膜エレメントの内側にあるように膜エレメントの長さの中央の近くで折り畳まれる上記のような膜エレメントを備える濾過エレメントを提供する。いくつかの実施形態は、収集管をさらに備え、折り畳まれた膜エレメントは、その支持層が収集管と接触するように設置され、折り畳まれた膜エレメントは、収集管の周囲で渦巻状に巻かれる。いくつかの実施形態は、請求項1に記載の1つ又は複数の追加の膜エレメントをさらに備え、各追加の膜エレメントは、その支持層が収集管と接触するように設置され、各追加の膜エレメントは、収集管の周囲で渦巻状に巻かれる。いくつかの実施形態は、折り曲げ線の近くで多孔質濾過層上に配置された折り目保護エレメントをさらに備える。いくつかの実施形態は、折り曲げ線から遠位の端部で膜シート上に配置されたスペーサの橋梁支持パターンをさらに備える。
【0012】
本発明の実施形態は、(a)複数の離間用特徴物をポリスルホン層の第1の面に設置することと、(b)多孔質ポリマ濾過層をポリスルホン層の第1の面に結合することと、(c)多孔質支持層をポリスルホン層の第2の面と結合することとを含み、ポリスルホン層の第2の面がポリスルホン層の第1の面の反対側にある、膜エレメントを作る方法を提供する。いくつかの実施形態において、支持層はポリエチレンを備える。いくつかの実施形態において、支持層はメッシュ材料を備える。いくつかの実施形態において、支持層は、ポリスルホン層から遠位の支持層の一部分においてよりも、ポリスルホン層に近位の支持層の一部分において、より大きい透過性を有する。
【0013】
いくつかの実施形態は、支持層内に1つ又は複数の実質的に不透過性であるバリア特徴物を形成することをさらに含み、ステップ(c)の前に、バリア特徴物は、支持層内に流体流路を画定する。いくつかの実施形態は、透過水キャリア内に1つ又は複数の実質的に不透過性であるバリア特徴物を形成することと、ポリスルホン層と接触する多孔質支持層の表面の反対側の、多孔質支持層の表面上で、透過水キャリアを多孔質支持層に結合することとをさらに含む。いくつかの実施形態において、離間用特徴物は、ポリスルホン層の第1の面上の1/2のみに配置される。いくつかの実施形態において、離間用特徴物の第1のサブセットは、ポリスルホン膜の入口縁辺の近く、出口縁辺の近く、又はその両方の縁辺の近くに配置され、第1のサブセットの離間用特徴物は、第1の高さを有し、離間用特徴物の第2のサブセットは、ポリスルホン膜の第1の面の1/2を超えない範囲にのみ配置され、第2のサブセットの離間用特徴物は、第2の高さを有し、第2の高さは第1の高さの2倍である。
【0014】
いくつかの実施形態は、(a)上記の方法に従って膜エレメントを提供することと、(b)多孔質濾過層が折り畳まれた膜エレメントの内側にあるように膜エレメントの長さの中央の近くで膜エレメントを折り畳むこととを含む濾過エレメントを作る方法を提供する。いくつかの実施形態は、その支持層が収集管と接触するように、折り畳まれた膜エレメントを設置することと、折り畳まれた膜エレメントを収集管の周囲に渦巻状に巻き付けることとをさらに含む。いくつかの実施形態は、上記の方法に従って1つ又は複数の追加の膜エレメントを提供することと、その多孔質濾過層が折り畳まれた膜エレメントの内側にあるようにそのような膜エレメントの長さの中央の近くで追加の膜エレメントのそれぞれを折り畳むことと、その支持層が収集管と接触するように各追加の膜エレメントを設置することと、追加の膜エレメントを収集管の周囲に渦巻状に巻き付けることとをさらに含む。いくつかの実施形態は、折り曲げ線の近くで多孔質濾過層上に折り目保護エレメントを設置することをさらに含む。いくつかの実施形態は、折り曲げ線から遠位の端部で膜シート上にスペーサの橋梁支持パターンを設置することをさらに含む。
【0015】
図1に示される既存の逆浸透スパイラル型膜エレメントの代表的な実施形態において、スパイラル型エレメント複合層10は、たとえば、多孔質ポリスルホン層14に結合された多孔質ポリエチレン層16を備え、たとえば、所定の位置にキャスティングされたポリマ膜層12でコーティングされた膜シート組立体18を備える。供給水をポリマ膜層12に均等に分散させるために、供給水スペーサメッシュ22が、たとえば、ポリマ膜層12の表面に接して設置される。供給液流体24はポリマ膜層12を通って移動し、不純物はポリマ膜層12で拒絶されるので、濾過流体26は、別の透過水キャリア20に移動される。実際には、この膜組立体は、清浄な溶液の喪失を避けるために、透過水キャリア20の周囲が接着剤で密閉され、次いで、平坦なエンベロープが、清浄な生産水が入り、膜エレメントハウジングに収集される中心管の周囲に巻かれている。
【0016】
図2に示される本発明の例示的な実施形態において、複合膜シート30は、たとえば、多孔質ポリスルホンから作られた層32に一体化されたスペーサ特徴物38を備える。ポリマ層36は、スプレー、エレクトロスプレー、又は支持層32上への直接印刷などのプロセスによって加えることができる。ポリマ層36は、ポリマ層36に防汚特性を提供する、Arnush他によって教示されるような特徴とともに印刷することができる。ポリマ層36は、Bradford他によって教示される防汚性殺生物剤も備えることもできる。1つの例示的な実施形態において、複合膜シート30は、たとえば、一体型の透過水キャリア層としても働くのに十分なだけ厚く、多孔質である、ポリエチレンから作られる支持層34も備えることもできる。支持層34は、支持層材料がポリマ層34に対して垂直により遠位に配置されるにつれて、より多孔質又はより透過性(より低密度)になる段階的な密度特性を有することもできる。支持層34のより多孔質又はより透過性の部分は、たとえば、エポキシコーティングなどの硬化剤により多孔性又は透過性を失うことなく、より堅固に且つ高圧の支持を可能とするために、処理することができる。別の例示的な実施形態において、複合膜シート30は、製作中、支持層に積層される、たとえば、別の織ポリエステル又は他の材料から作られる、透過水キャリア層を備えることができる。透過水キャリア層が複合膜シートに一体化される又は積層される場合、透過水キャリア層の有効厚さは、同じ流れを提供するために、従来の透過水キャリア層の厚さのわずか1/2でなければならないが、それは、折り畳まれて巻き上げられる複合膜が、透過水流れ空間を作るために、互いに接触するそのような2つの透過水キャリア層を設置するためである。
【0017】
図3に示される本発明の例示的な実施形態において、複合膜シート30は、たとえば、圧力遅延浸透(PRO)用途又は正浸透(FO)用途のために効率の改善を促進するために、流体流れを支持層34内の特定の流れ経路に流す、支持層34内のバリアパターン52を備えることができる。本発明の別の例示的な実施形態において、一体型の流路52を有する支持層34は、別々に加工することができ、次いで、多孔質ポリスルホン層32は、支持層34に後で結合することができる。
【0018】
図4に示される本発明の例示的な実施形態において、膜シート組立体70は、複合膜72の長さの半分のみに加えられた供給水スペーサ特徴物74を有することができる。スパイラル型エレメントの組立てにおいて、各リーフは、半分に折り畳まれる。複合膜72の半分のみに供給水スペーサ特徴物74を加えることによって、折り畳まれたリーフがスパイラル型エレメントの中心管の周囲に巻かれるとき、スペーサ特徴物74の干渉は避けられる。複合膜72の入口及び出口縁辺上に、ライン、ドット、又は他のパターンを含む特別なスペーサ特徴物74を、複合膜72の全長に沿って、半分の高さのみ加工することができ、膜供給水空間の入口区域及び出口区域のパターンは、透過水キャリアエンベロープを密閉する接着剤層に支持を提供するために、適切に干渉するように確立される。膜シートの入口区域と出口区域との間の膜シート70の開放領域において、スペーサ特徴物74は、完全な高さとすることができ、複合膜シート72の半分の長さにのみ印刷することができる。
【0019】
図5に示される本発明の例示的な実施形態において、複合膜シート92は、半分に折り畳まれ、中心管94の周囲に巻かれる。中心管94の透過流体100流路穴96は、スパイラル型エレメント組立体からの透過流体100から出るための、透過流体100の中心管94の中心への通過を容易にする。接着剤98は、透過水エンベロープの縁辺に加えることができ、そのため、接着剤は、透過水キャリアを透過し、密閉された透過水キャリアエンベロープを提供するために、ポリマコーティングに結合し、さらに、中心管94に透過水キャリアエンベロープのシールを提供する。はるかに大きい運転能力のためにはるかに大きい膜シート表面積、たとえば、2-1/2、4、又は8インチの直径の要素又は任意の他の直径を有する膜エレメントを作るために、複数のシートを中心管94から巻くことができることは、膜エレメントを作る当業者に知られている。
【0020】
図6に示される本発明の例示的な実施形態において、折り畳まれた複合膜シート92は、複合膜シート92の中心線に、折り目保護材料120を備えることができる。折り目保護材料120は、折り畳む前に複合膜シート92の中心区域に印刷される又は別の方法で加えられるテープ又は別の材料を備えることができる。或いは、複合膜シートは、たとえば、ポリアミド層が加えられる前に非多孔質層を置くことによって、ポリスルホンから作られる多孔質層に一体化される折り目保護を備えることができる。複合膜シート92は、折り畳まれた複合膜シート92の遠位端に印刷される又は別の方法で加えられる、固体の又はセグメント化された橋梁支持122を備えることもできる。或いは、複合膜シートは、たとえば、ポリスルホンから作られる多孔質層に一体化される橋梁支持端部パターンを備えることができる。
【0021】
さまざまな例示的実施形態に関連して本発明を説明した。当然のことながら、上記の説明は本発明の原理の応用を説明したに過ぎず、本発明の範囲は、明細書に照らして特許請求の範囲を読むことにより判断されるものとする。本発明のその他の変更形態及び改良形態は、当業者にとって明らかであろう。