(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20250415BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20250415BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20250415BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20250415BHJP
A61K 8/40 20060101ALI20250415BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20250415BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/06
A61K8/35
A61K8/37
A61K8/40
A61K8/73
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2021565614
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2020046912
(87)【国際公開番号】W WO2021125211
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2019226164
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】岩見 志保
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 百合香
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 つかさ
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-019688(JP,A)
【文献】特開2013-136493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C):
(A)紫外線
吸収剤、
(B)粒子径が0.3~1μmのシリカ、及び
(C)粒子径が1~30μmの粉体、
を含み、
前記(C)粉体がシリカ
及びオクテニルコハク酸デンプンアルミニウム
からなる群から選択される1種以上である、
日焼け止め化粧料。
【請求項2】
(B)シリカの配合量が0.2~2質量%である、請求項1に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項3】
(C)粉体の配合量が0.5~20質量%である、請求項1又は2に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項4】
(C)粉体の配合量が(B)シリカの配合量よりも多い、請求項1~3のいずれか一項に記載の日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止め化粧料に関する。より詳しくは、所定の粒子径を有するシリカと、所定の粒子径を有しかつ所定の材質からなる粉体とを配合することにより、紫外線防御剤を高配合しなくても高い紫外線防御力を達成でき、なおかつ、使用性に優れ、肌への負担も少ない日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線の害から皮膚を守ることはスキンケア、ボディケアにおける重要な課題の一つであり、紫外線が皮膚に与える悪影響を最小限に抑えるために種々のUVケア化粧料が開発されている。UVケア化粧料の1種である日焼け止め化粧料(サンスクリーン化粧料)は、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を配合した塗膜で皮膚を覆うことによりUVA及びUVBを吸収又は散乱させて皮膚に到達する紫外線量を抑制し、紫外線の害から皮膚を守ることを意図した化粧料である(非特許文献1)。
【0003】
紫外線吸収剤は、高い紫外線防御効果が得られ、肌との馴染みが良く、汗や水に強いことから、多くの日焼け止め化粧料に配合されている。しかし、紫外線吸収剤の中には、紫外線を吸収した際に発熱や化学変化を生じて、肌に赤味や痒み、さらにはアレルギーなどを生じるものがある。例えば、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(オクチルメトキシシンナメート)はUVBを吸収する代表的な紫外線吸収剤として従来より日焼け止め化粧料に汎用されているが、敏感肌の使用者にとって負担となる場合がある。特許文献1には、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルの刺激を緩和するために、皮膚外用剤にポリプロピレングリコールジメチルエーテルを配合することが提案されている。
【0004】
また、紫外線吸収剤には常温で固形のものも多く、これらを析出させることなく化粧料に安定に溶解するためには相応量の油分が必要となる。このため、紫外線吸収剤を高配合するには油分量も増やさざるを得ず、油分によるべたつきが生じ、使用感を損なうことがある。そこで、油溶性紫外線吸収剤を高配合する代わりに、水溶性紫外線吸収剤を配合することもあるが、一般に、水溶性紫外線吸収剤は油溶性のものに比べて紫外線防御力に劣る傾向があり、水溶性紫外線吸収剤を高配合しても十分な紫外線防御力を達成することは難しい。また、水溶性紫外線吸収剤を配合する場合、それと共に配合される塩(中和塩)の影響により化粧料の安定性が低下してしまう場合がある。
【0005】
これらの事情に鑑みて、紫外線吸収剤を使用せずに、皮膚に対して比較的刺激が少ない紫外線散乱剤を使用することが提案されており、いわゆる「紫外線吸収剤不使用」、「ノンケミカル」を謳った化粧料が上市されている。例えば、特許文献2には、紫外線散乱剤として疎水化処理酸化亜鉛及び/又は疎水化処理酸化チタンを含有し、有機紫外線吸収剤を含有しない、紫外線防御効果、乳化安定性、使用感に優れる日焼け止め化粧料が開示されている。また、特許文献3には、目に入ると刺激を生じるメトキシケイヒ酸エチルヘキシル等の紫外線吸収剤を含まずに、紫外線散乱作用のある複数の粉体成分を配合することが提案されている。
【0006】
しかしながら、紫外線散乱剤のみで高い紫外線防御効果を得るためには紫外線散乱剤を大量に配合する必要があり、皮膚に塗布した際に不自然な白さ(白浮き)を生じたり、伸びや肌馴染みなどの使用性に劣る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3683533号公報
【文献】特許第5554308号公報
【文献】特許第5813745号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】「新化粧品学」第2版、光井武夫編、2001年、南山堂発行、第497~504頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、紫外線防御剤が有する紫外線防御力を向上させることにより、少量の紫外線防御剤の使用でも高い紫外線防御力を達成できると同時に、使用性に優れ、肌への負担も少ない日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、紫外線防御剤を含む日焼け止め化粧料に、所定の粒子径を有するシリカと、所定の粒子径を有しかつ所定の材質からなる粉体とを配合することで、肌上に均一な塗膜が形成され、それによって紫外線防御力を向上させることができ、その上さらに、優れた使用性をも実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、次の成分(A)~(C):
(A)紫外線防御剤、
(B)粒子径が0.3~1μmのシリカ、及び
(C)粒子径が1~30μmの粉体、
を含み、
前記(C)粉体がシリカ、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム、セルロースまたはその誘導体、ワックス、マイカ、セリサイト、生分解性樹脂からなる群から選択される1種以上である、日焼け止め化粧料を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記構成とすることにより、紫外線防御剤の持つ紫外線防御力を向上させることができ、しかも、使用性にも優れた日焼け止め化粧料を実現することができる。
また、皮膚に負担を与えることがある紫外線吸収剤を少量に抑えられるため、安全性の高い日焼け止め化粧料を提供することができる。さらに、紫外線散乱剤を高配合しなくても高い紫外線防御効果が達成されるため、紫外線散乱剤に特有の白浮きや肌馴染みの悪さを生じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の日焼け止め化粧料は、(A)紫外線防御剤と、所定の粒子径を有する(B)シリカと、所定の粒子径を有しかつ所定の材質からなる(C)粉体を含むことを特徴とする。以下、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0014】
<(A)紫外線防御剤(紫外線吸収剤および/又は紫外線散乱剤)>
本発明の日焼け止め化粧料に配合される(A)紫外線防御剤は、紫外線吸収剤および/又は紫外線散乱剤を意味し、化粧料に通常配合されるものを使用することができる。
【0015】
紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイヒ酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリレート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体等が例示される。以下に具体例および商品名などを列挙するが、これらに限定されるものではない。
【0016】
安息香酸誘導体としては、パラ-アミノ安息香酸(PABA)エチル、エチル-ジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシル-ジメチルPABA(例えば「エスカロール507」;ISP社)、グリセリルPABA、PEG-25-PABA(例えば「ユビナールP25」;BASF社)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(例えば「ユビナールAプラス」)などが例示される。
【0017】
サリチル酸誘導体としては、ホモサレート(「ユーソレックス(Eusolex)HMS」;ロナ/EMインダストリーズ社)、エチルヘキシルサリチレート又はサリチル酸オクチル(例えば「ネオ・ヘリオパン(NeoHeliopan)OS」;ハーマン・アンド・レイマー社)、ジプロピレングリコールサリチレート(例えば「ディピサル(Dipsal)」;スケル社)、TEAサリチラート(例えば「ネオ・ヘリオパンTS」;ハーマン・アンド・レイマー社)などが例示される。
【0018】
ケイヒ酸誘導体としては、オクチルメトキシシンナメート又はメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(例えば「パルソールMCX」;ホフマン-ラ・ロシュ社)、メトキシケイヒ酸イソプロピル、メトキシケイヒ酸イソアミル(例えば「ネオ・ヘリオパンE1000」;ハーマン・アンド・レイマー社)、シンノキセート、DEAメトキシシンナメート、メチルケイヒ酸ジイソプロピル、グリセリル-エチルヘキサノエート-ジメトキシシンナメート、ジ-(2-エチルヘキシル)-4’-メトキシベンザルマロネートなどが例示される。
【0019】
ジベンゾイルメタン誘導体としては、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン(例えば「パルソール1789」)などが例示される。
【0020】
β,β-ジフェニルアクリレート誘導体としては、オクトクリレン(例えば「ユビナールN539T」;BASF社)などが例示される。
【0021】
ベンゾフェノン誘導体としては、ベンゾフェノン-1(例えば「ユビナール400」;BASF社)、ベンゾフェノン-2(例えば「ユビナールD50」;BASF社)、ベンゾフェノン-3又はオキシベンゾン(例えば「ユビナールM40」;BASF社)、ベンゾフェノン-4(例えば「ユビナールMS40」;BASF社)、ベンゾフェノン-5、ベンゾフェノン-6(例えば「ヘリソーブ(Helisorb)11」;ノルクアイ社)、ベンゾフェノン-8(例えば「スペクトラ-ソーブ(Spectra-Sorb)UV-24」;アメリカン・シアナミド社)、ベンゾフェノン-9(例えば「ユビナールDS-49」;BASF社)、ベンゾフェノン-12などが例示される。
【0022】
ベンジリデンショウノウ誘導体としては、3-ベンジリデンショウノウ(例えば「メギゾリル(Mexoryl)SD」;シメックス社)、4-メチルベンジリデンショウノウ、ベンジリデンショウノウスルホン酸(例えば「メギゾリルSL」;シメックス社)、メト硫酸ショウノウベンザルコニウム(例えば「メギゾリルSO」;シメックス社)、テレフタリリデンジショウノウスルホン酸(例えば「メギゾリルSX」;シメックス社)、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンショウノウ(例えば「メギゾリルSW」;シメックス社)などが例示される。
【0023】
フェニルベンゾイミダゾール誘導体としては、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸(例えば「ユーソレックス232」;メルク社)、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム(例えば「ネオ・ヘリオパンAP」;ハーマン・アンド・レイマー社)などが例示される。
【0024】
トリアジン誘導体としては、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(例えば「チノソーブ(Tinosorb)S」;チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社)、エチルヘキシルトリアゾン(例えば「ユビナールT150」;BASF社)、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(例えば「ユバソーブ(Uvasorb)HEB」;シグマ3 V社)、2,4,6-トリス(ジイソブチル-4’-アミノベンザルマロナート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンなどが例示される。
【0025】
フェニルベンゾトリアゾール誘導体としては、ドロメトリゾールトリシロキサン(例えば「シラトリゾール(Silatrizole)」;ローディア・シミー社)、メチレンビス(ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)(例えば「チノソーブM」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社))などが例示される。
【0026】
アントラニル誘導体としては、アントラニル酸メンチル(例えば「ネオ・ヘリオパンMA」;ハーマン・アンド・レイマー社)などが例示される。
【0027】
イミダゾリン誘導体としては、エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオナートなどが例示される。
【0028】
ベンザルマロナート誘導体としては、ベンザルマロナート官能基を有するポリオルガノシロキサン(例えば、ポリシリコーン-15;「パルソールSLX」;DSMニュートリション ジャパン社)などが例示される。
【0029】
4,4-ジアリールブタジエン誘導体としては、1,1-ジカルボキシ(2,2’-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエンなどが例示される。
【0030】
特に好ましい紫外線吸収剤の例としては、オクトクリレン、サリチル酸オクチル、ホモサレートを挙げることができ、これらのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0031】
紫外線散乱剤は、特に限定されるものではないが、例えば、微粒子状の金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0032】
紫外線散乱剤は、表面処理していないものでも各種疎水化表面処理したものでもよいが、疎水化表面処理をしたものが好ましく用いられる。表面処理剤としては、化粧料分野で汎用されているもの、例えば、ジメチコン、アルキル変性シリコーン等のシリコーン、オクチルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン、パルミチン酸デキストリンなどのデキストリン脂肪酸エステル、ステアリン酸などの脂肪酸を用いることができる。
【0033】
本発明における(A)紫外線防御剤は、紫外線吸収剤のみからなる態様、紫外線散乱剤のみからなる態様、および紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の両方を含む態様を包含する。
【0034】
(A)紫外線防御剤の配合量は、日焼け止め化粧料全量に対して、5~40質量%が好ましく、より好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは10~20質量%である。(A)紫外線防御剤の配合量が5質量%未満では十分な紫外線防御効果が得られにくく、40質量%を超えて配合しても配合量に見合った紫外線防御効果の増加を期待できず、却って安定性や使用性が悪くなるなどの点から好ましくない。
【0035】
<(B)シリカ>
本発明の日焼け止め化粧料に配合される(B)シリカは、粒子径が0.3~1μm、好ましくは0.4~1μm、より好ましくは0.5~1μmのシリカである。粒子径がこの範囲内であれば、通常の化粧料に用いられるものを特に制限なく使用することができる。
なお、本明細書において「粒子径」とは、レーザー回折/散乱法による粒度分布測定機によって測定した値である。
【0036】
(B)シリカの形状は、さらさらして好ましい感触が得られるという点から球状であることが好ましく、真球状であることがより好ましい。本発明において真球状とは、いずれの方向から投影して見た場合にも概略真円状を示すものであって、粒子径の最小値が最大値の80%以上、より好ましくは90%以上であることを意味する。
【0037】
また、(B)シリカとして、疎水化処理が施されているものを用いることもできる。疎水化処理剤としては、特に限定されるものではないが、例えばオルガノシラン系化合物、シリコーン化合物、フッ素化合物等で覆うことにより調製することができる。より具体的には、ジメチルシリル化シリカ、トリメチルシリル化シリカ、オクチルシリル化シリカ、シリコーンオイル処理シリカ、メチルポリシロキサン処理シリカ、金属石鹸処理シリカ、アミノ酸処理シリカ、高級アルコール処理シリカ、鉱物系ワックス処理シリカ等が例示される。
【0038】
(B)シリカは、市販品を用いることができ、例えば「COSMO 55」(日揮触媒化成株式会社)等を好適に用いることができる。
【0039】
(B)シリカの配合量は、日焼け止め化粧料全量に対して、0.2~2質量%が好ましく、より好ましくは0.2~1.5質量%、さらに好ましくは0.2~1質量%である。(B)シリカの配合量が0.2質量%未満では主に十分な紫外線防御力向上効果が得られにくくなり、2質量%を超えて配合すると使用性が悪くなる傾向がある。
【0040】
<(C)粉体>
本発明の日焼け止め化粧料に配合される(C)粉体は、使用性改善のために化粧料に通常配合されるものであって、シリカ、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム、セルロースまたはその誘導体、ワックス、マイカ、セリサイト、生分解性樹脂からなる群から選択される1種以上である。また、これらの表面に疎水化処理が施されたものも使用することができる。
【0041】
(C)粉体は、粒子径が1~30μm、好ましくは4~20μm、より好ましくは4~10μmである。粒子径が当該範囲外になると十分な使用性改善効果が得られない場合がある。(C)粉体の形状は、(B)シリカと同様に、さらさらして好ましい感触が得られるという点から球状であることが好ましく、真球状であることがより好ましい。
【0042】
(C)粉体として使用できるシリカは、粒子径が大きい点で(B)シリカと異なる。市販品としては、例えば「サンスフェア L-51」(AGCエスアイテック株式会社)等が挙げられる。
オクテニルコハク酸デンプンアルミニウムは、無水オクテニルコハク酸とデンプンの反応物のアルミニウム塩である。吸油性を有することから、べたつき等の改善のために化粧料に用いられることがある。市販品としては、例えば「TAPIOCA SDS」(Bo-kwang社)等を好適に用いることができる。
【0043】
セルロースまたはその誘導体は、セルロースのほか、セルロース分子中の水酸基が置換されたものを含み、例えば、球状セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等を挙げることができる。
【0044】
ワックスは、融点が80℃以上のワックスを粉砕等により粉末化したものであり、化粧料に配合され得るものであれば特に限定されない。このようなワックスとしては、カルナウバワックス、合成炭化水素ワックス、ポリエチレンワックス、エチレンプロピレンコポリマーワックス、フィッシャートロプシュワックス等のワックスをジェットマイザー等の機械的に粉砕する方法、ワックスを揮発性溶媒に溶解し噴霧乾燥する方法等により粉末化して得られる。市販品としては、PRESS-AID-SP、PRESS-AID-XP(いずれも、Presperse社)等を用いることができる。
【0045】
マイカ、セリサイトはいずれも層状ケイ酸塩であり、体質顔料等として化粧料に広く用いられている。
生分解性樹脂としては、ポリ乳酸のようなポリエステル系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、多糖類(ポリサッカリド)、ポリペプチド、リグニン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0046】
(C)粉体の配合量は、日焼け止め化粧料全量に対して、0.5~20質量%が好ましく、より好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。(C)粉体の配合量が上記範囲外になると主に使用性が悪くなる傾向がある。
【0047】
<(B)シリカと(C)粉体の配合質量比>
(B)シリカと(C)粉体の配合質量比は特に限定されるものではないが、(B)<(C)を満たすこと、すなわち、(C)粉体の配合量が(B)シリカの配合量よりも多いことが好ましい。(B)シリカよりも(C)粉体の配合量を多くすることにより、紫外線防御力向上効果及び使用性の双方において特に優れた効果が得られる傾向がある。
【0048】
なお、本発明の日焼け止め化粧料は、本発明の効果を妨げない範囲であれば、(B)シリカや(C)粉体とは異なる粒子径のシリカやオクテニルコハク酸デンプンアルミニウム等の粉末をさらに含有してもよい。
【0049】
<任意配合成分>
本発明の日焼け止め化粧料には、上記(A)~(C)成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、化粧料に通常用いられる成分を配合することができる。
例えば、油性成分、水性成分、アルコール類、保湿剤、増粘剤、界面活性剤、皮膜剤、粉体成分、紫外線散乱剤、安定化剤、キレート剤、防腐剤、香料等を必要に応じて適宜配合してよい。
【0050】
本発明の日焼け止め化粧料は、水性化粧料、油性化粧料、水中油型乳化化粧料、油中水型乳化化粧料といったあらゆる形態で提供することが可能である。具体的な剤型としては、化粧水、乳液、クリーム、ローション、噴霧剤等であり、各剤型に適した常法を用いて製造することができる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、日焼け止め化粧料全量に対する質量%で示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した評価方法について説明する。
【0052】
<紫外線防御力の向上率>
測定プレート(Sプレート)(5×5cmのV溝PMMA(ポリメチルメタクリレート)板、SPFMASTER-PA01)に各例の化粧料(サンプル)を2mg/cm2の量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥した後に、形成された塗膜の吸光度を株式会社日立製作所製U-3500型自記録分光光度計にて測定した。無塗布のプレートをコントロールとし、吸光度(Abs)を以下の式で算出し、280nm~400nmにおける測定値を積算し、吸光度積算値を求めた。
Abs=-log(T/To)
T:サンプルの透過率、To:無塗布の透過率
【0053】
求めたサンプルの吸光度積算値から、(B)シリカ及び(C)粉体を配合しない対照サンプル(比較例1)を基準とする紫外線防御力の向上率を以下の式により算出した。
[紫外線防御力の向上率(%)]=[サンプルの吸光度積算値]/[比較例1の吸光度積算値]×100
算出した紫外線防御力の向上率を、以下の評価点基準に当てはめて判定した。
「評価基準」
A:紫外線防御力の向上率が110%以上
B:紫外線防御力の向上率が105%以上110%未満
C:紫外線防御力の向上率が105%未満
【0054】
<使用性>
実施例及び比較例の各サンプルを、10名の専門パネルに実際に使用してもらい、使用性(べたつきのなさ、みずみずしさ)について評価した。下記評価点基準に従って各パネルに5段階官能評価してもらい、その合計点により下記評価基準に基づいて判定した。
「評価点基準」
5:非常に優れている
4:優れている
3:普通
2:劣る
1:非常に劣る
「評価基準」
A:合計点が40点以上
B:合計点が30~39点
C:合計点が29点以下
【0055】
<実施例1~2及び比較例1~9>
以下の表1に記載の組成を有する油中水型日焼け止め化粧料を調製した。上記評価方法に従って、紫外線防御力の向上率及び使用性を評価した。
【0056】
【0057】
上記の表1に示されるように、(B)成分に該当するシリカと(C)成分に該当するシリカの両方を配合した場合には、これらを配合しなかった場合(比較例1)と比べて、紫外線防御力に明らかな向上効果が確認されたほか、使用性においても優れた結果が得られた(実施例1~2)。
一方、(B)成分に該当するシリカのみを配合した場合には、紫外線防御力の向上は認められたものの、使用性が著しく劣っていた(比較例2)。また、(C)成分に該当するシリカのみを配合した場合には、使用性には優れていたものの、紫外線防御力の向上は認められなかった(比較例3)。
【0058】
さらに、比較例2よりはるかに粒子径の小さいシリカを配合した場合でも紫外線防御力の向上は認められたが(比較例4)、(C)成分に該当するシリカを併せて配合しても、紫外線防御力の向上効果と優れた使用性とを同時に実現することはできなかった(比較例5)。
【0059】
また、通常の化粧料において使用性を改善するための粉体として汎用されている球状PMMA粉体や(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー粉体を配合すると確かに使用性については優れた結果を示したが(比較例6及び8)、これらを(B)成分に該当するシリカと組み合わせても、紫外線防御力を十分に向上させることはできなかった(比較例7及び9)。
【0060】
<実施例3~6及び比較例10~11>
以下の表2に記載の組成を有する油中水型日焼け止め化粧料を調製し、上記評価方法に従って、紫外線防御力の向上率及び使用性を評価した。ただし、紫外線防御力の向上率の評価においては、比較例1に代えて、比較例10を対照サンプルとして用いた。
【0061】
【0062】
上記の表2に示されるように、(B)成分に該当するシリカと(C)成分に該当するシリカ又はオクテニルコハク酸デンプンアルミニウムを配合した場合には、これらを配合しなかった場合(比較例10)と比べて、紫外線防御力に明らかな向上効果が確認されたほか、使用性においても優れた結果が得られた(実施例3~6)。
一方、(C)成分に該当するオクテニルコハク酸デンプンアルミニウムのみを配合した場合には、使用性には優れていたものの、紫外線防御力を十分に向上させることはできなかった(比較例11)。
【0063】
以下に、本発明の化粧料の処方を例示する。本発明はこれらの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。なお、配合量は全て化粧料全量に対する質量%で表す。
【0064】
処方例1:水中油型日焼け止め化粧料
(成分名) 配合量(質量%)
精製水 残余
エタノール 8
EDTA-3Na・H2O 0.1
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.01
トコフェロール 0.01
トラネキサム酸 1
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
イザヨイバラエキス 0.1
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
0.1
カルボマー 0.05
寒天 0.1
キサンタンガム 0.1
(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 1
グリセリン 3
ブチレングリコール 3
水酸化カリウム 0.06
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
オクトクリレン 5
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
2
サリチル酸エチルヘキシル 3
セバシン酸ジイソプロピル 3
ポリプロピレングリコール(17) 1
カプリリルメチコン 5
ベヘニルアルコール 0.2
バチルアルコール 0.2
香料 適量
シリカ(粒子径0.5~1μm) 0.3
シリカ(粒子径1~10μm) 1.7
【0065】
処方例2:油性日焼け止め化粧料
(成分名) 配合量(質量%)
セバシン酸ジイソプロピル 残余
ミネラルオイル 10
水添ポリデセン 12
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 30
PBG/PPG-9/1コポリマー 1
12-ヒドロキシステアリン酸 6
ポリアミド-8(「OleoCraft LP-20」Croda社)
3
N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド(「GP1」味の素株式会社) 3
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2.5
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン 2.5
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
2
サリチル酸エチルヘキシル 5
オクトクリレン 5
ホモサレート 5
レシチン 0.1
微粒子ジメチルシリル化シリカ(「Aerosil R972」Evonik社) 1
トコフェロール 0.06
イソステアリン酸 0.3
セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.3
香料 適量
シリカ(粒子径0.5~1μm) 0.8
シリカ(粒子径1~10μm) 4.2
【0066】
処方例3:水中油型日焼け止め化粧料
(成分名) 配合量(質量%)
精製水 残余
エタノール 5
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.01
EDTA-2Na・2H2O 0.05
4-メトキシサリチル酸カリウム 1
アスコルビン酸グルコシド 1
タウリン 0.1
グリシルグリシン 0.1
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー水溶液 0.5
キサンタンガム 0.1
グリセリン 2
ジプロピレングリコール 2
ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル
1
トレハロース 1
PEG-30フィトステリル 0.3
トリエタノールアミン 1
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7
エチルヘキシルトリアジン 1
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
1
メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール50%の水分散体 1
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 1.5
セバシン酸ジイソプロピル 3
マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 1
ポリプロピレングリコール(17) 1
ジメチコン1.5cs 3
ジメチコン6cs 3
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1
(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 1
ステアリン酸 1
イソステアリン酸 1.5
ステアリン酸グリセリル 0.5
PEG-30フィトステリル 0.3
ベヘニルアルコール 0.5
バチルアルコール 0.3
フェノキシエタノール 0.5
香料 適量
シリカ(粒子径0.5~1μm) 0.2
シリカ(粒子径1~10μm) 1.8
【0067】
処方例4:水中油型日焼け止め化粧料
(成分名) 配合量(質量%)
精製水 残余
エタノール 5
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.01
EDTA-2Na・2H2O 0.05
微粒子シリカ 0.2
ニコチン酸アミド 5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
カルボマー 0.1
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
0.1
キサンタンガム 0.1
グリセリン 5
ジプロピレングリコール 5
ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル
1
トレハロース 1
ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(20モル) 1
トリエタノールアミン 1.5
サリチル酸エチルヘキシル 5
ポリシリコーン-15 5
エチルヘキシルトリアジン 1
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
2
メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール50%の水分散体 1
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 2
セバシン酸ジイソプロピル 8
マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 1
ポリプロピレングリコール(17) 1
ジメチコン1.5cs 3
ジメチコン6cs 3
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1
(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 1
ステアリルアルコール 1
ベヘニルアルコール 2
バチルアルコール 0.3
フェノキシエタノール 0.5
香料 適量
シリカ(粒子径0.5~1μm) 0.2
シリカ(粒子径1~10μm) 1.8
【0068】
処方例5:油中水型日焼け止め化粧料
(成分名) 配合量(質量%)
水 残余
アルコール 8
グリセリン 2
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
パルミチン酸デキストリン 2
トリ酢酸テトラステアリン酸スクロース 2
ラウリルPEG-9ポリジメチルポリシロキシエチルジメチコン
3
イソドデカン 2
ジメチコン(1.5cst) 12
イソステアリン酸 1
セバシン酸ジイソプロピル 10
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 5
トリメチルシロキケイ酸 3
オクトクリレン 5
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン 2.5
サリチル酸エチルヘキシル 5
シリカ(粒子径0.5~1μm) 2
マイカ(粒子径1~20μm) 6
メチルパラベン 0.15
【0069】
処方例6:油中水型日焼け止め化粧料
(成分名) 配合量(質量%)
水 残余
アルコール 8
グリセリン 2
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
パルミチン酸デキストリン 2
トリ酢酸テトラステアリン酸スクロース 2
ラウリルPEG-9ポリジメチルポリシロキシエチルジメチコン
3
イソドデカン 2
ジメチコン(1.5cst) 12
イソステアリン酸 1
セバシン酸ジイソプロピル 10
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 5
トリメチルシロキケイ酸 3
オクトクリレン 5
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン 2.5
サリチル酸エチルヘキシル 5
シリカ(粒子径0.5~1μm) 2
セリサイト(粒子径1~30μm) 6
メチルパラベン 0.15