(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】成形性及び表面品質に優れた高強度めっき鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20250415BHJP
C22C 38/16 20060101ALI20250415BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
C22C38/00 301T
C22C38/16
C21D9/46 J
(21)【出願番号】P 2023534337
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 KR2021018611
(87)【国際公開番号】W WO2022124811
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0173352
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ハ、 ユ-ミ
(72)【発明者】
【氏名】ヨム、 ジュン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 サン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 ソン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 ヨン-フン
【審査官】鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-036248(JP,A)
【文献】特開2001-335889(JP,A)
【文献】特開2002-003993(JP,A)
【文献】国際公開第2012/070271(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/021382(WO,A1)
【文献】特開2013-076132(JP,A)
【文献】国際公開第2008/078901(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0045859(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 - 38/60
C21D 8/00 - 8/04
C21D 9/46 - 9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鉄;及び前記素地鉄の少なくとも一面に備えられためっき層;を含み、
前記素地鉄は、重量%で、炭素(C):0.002~0.01%、シリコン(Si):0.1%以下、マンガン(Mn):0.4~1.0%、リン(P):0.04~0.1%、硫黄(S):0.01%以下、窒素(N):0.005%以下、アルミニウム(S.Al):0.1%以下、チタン(Ti):0.005~0.03%、ニオブ(Nb):0.01~0.05%、銅(Cu):0.06~0.1%、ボロン(B):0.0015%以下、モリブデン(Mo):下記の関係式1で定義されるYMが0.03以上0.1以下を満たす範囲を含み、残りのFe及びその他の不可避不純物からなり、
前記素地鉄はフェライトを基地組織として含み、
前記素地鉄は、下記の関係式2で定義されるEが0以上60以下の範囲を満たす、めっき鋼板。
[関係式1]
YM=[P]*(1+0.5*[Mo]+0.1*[Mn])
前記関係式1において、[P]、[Mo]及び[Mn]は、それぞれ前記素地鉄に含まれるリン(P)、モリブデン(Mo)及びマンガン(Mn)の含有量(重量%)を意味する。
[関係式2]
E=1250*YM-5*X
前記関係式2において、YMは前記関係式1により算出され、Xは前記フェライトの平均結晶粒径(μm)を意味する。
【請求項2】
前記素地鉄の表面部の3次元結晶方位の密度関数(ODF){Φ1,Φ,Φ2}において、ODF{0°,0°,45°}の強度が2.0以下であり、ODF{30°,55°,45°}の強度が5以上9以下である、請求項1に記載のめっき鋼板。
【請求項3】
前記フェライトの分率は95面積%以上であり、前記フェライトの平均結晶粒径は15μm以下である、請求項1に記載のめっき鋼板。
【請求項4】
前記めっき層は、亜鉛系めっき層、アルミニウム系めっき層、合金化亜鉛系めっき層または合金化アルミニウム系めっき層の中から選択されたいずれか一つである、請求項1に記載のめっき鋼板。
【請求項5】
前記めっき鋼板は、390MPa以上の引張強度、28%以上の伸び率及び1.2以上のr値を有する、請求項1に記載のめっき鋼板。
【請求項6】
重量%で、炭素(C):0.002~0.01%、シリコン(Si):0.1%以下、マンガン(Mn):0.4~1.0%、リン(P):0.04~0.1%、硫黄(S):0.01%以下、窒素(N):0.005%以下、アルミニウム(S.Al):0.1%以下、チタン(Ti):0.005~0.03%、ニオブ(Nb):0.01~0.05%、銅(Cu):0.06~0.1%、ボロン(B):0.0015%以下、モリブデン(Mo):下記の関係式1で定義されるYMが0.03以上0.1以下を満たす範囲を含み、残りのFe及びその他の不可避不純物からなるスラブを1100~1300℃で加熱する段階;
下記の関係式3を満たす仕上げ圧延温度(T
f)で前記加熱されたスラブを熱間圧延して熱延鋼板を得る段階;
前記熱延鋼板を600~650℃の温度範囲で巻取る段階;
前記熱延鋼板を酸洗した後、70~83%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を得る段階;
前記冷延鋼板を750~830℃の温度範囲で焼鈍する段階;
前記焼鈍された冷延鋼板をめっき浴に浸漬してめっき鋼板を得る段階;及び
選択的に前記めっき鋼板を480~610℃の温度範囲で合金化する段階を含む、
請求項1に記載のめっき鋼板の製造方法。
[関係式1]
YM=[P]*(1+0.5*[Mo]+0.1*[Mn])
前記関係式1において、[P]、[Mo]及び[Mn]は、それぞれ前記スラブに含まれるリン(P)、モリブデン(Mo)及びマンガン(Mn)の含有量(重量%)を意味する。
[関係式3]
920-300*[3*[P]-{(31/48)*[Ti]+(31/93)*[Nb]}]<T
f(℃)<920+300*[3*[P]-{(31/48)*[Ti]+(31/93)*[Nb]}]
前記関係式3において、[P]、[Ti]及び[Nb]は、それぞれ前記スラブに含まれるリン(P)、チタン(Ti)及びニオブ(Nb)の含有量(重量%)を意味する。
【請求項7】
前記めっき浴は、亜鉛系めっき浴またはアルミニウム系めっき浴から選択されるいずれか一つである、請求項6に記載のめっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
0.4~1.2%の圧下率で前記めっき鋼板または前記合金化されためっき鋼板を調質圧延する段階をさらに含む、請求項6に記載のめっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき鋼板及びその製造方法に関するものであり、詳しくは、高強度特性を有しながらも成形性及び表面品質に優れ、自動車外板材として好ましく適用できるめっき鋼板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷延めっき鋼板をプレス加工した素材が自動車の外板材として主に利用される。自動車外板材は、様々な形状にプレス加工されるため、プレス加工に提供される冷延めっき鋼板は、優れた成形性を有することが要求される。また、二酸化炭素の排出に対する規制策として新たな自動車燃費改善目標が設定され、低燃費自動車に対する優遇税制が導入されるなど、自動車車体の軽量化による自動車の燃費向上が求められており、自動車車体用鋼板のスリム化が自動車車体の軽量化に最も有力な手段として評価されている。一方、自動車車体の安全性確保の観点から、自動車車体用鋼板のスリム化だけでなく、高強度化が求められている。高強度特性及び成形性は両立が難しい物性であり、業界ではこれらの物性を両立させるための様々な試みが行われている。
【0003】
一例として、極低炭素冷延鋼板にチタン(Ti)やニオブ(Nb)を単独あるいは複合で添加して、固溶炭素(C)、窒素(N)、硫黄(S)などの固溶元素を炭化物及び窒化物の形態で析出させ、伸び率及び塑性変形比を高め、それによって成形性を向上させる、いわゆるIF鋼(Interstitial Free Steel)が開発されたことがある。また、鋼板の強度を向上させるための試みとして、鋼中にシリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)などの固溶強化元素を含有させて鋼の高強度化を図る方法についても活発に研究が進められている。
【0004】
リン(P)は、経済的かつ効果的に鋼の高強度化を達成することができる成分であるが、めっき鋼板の表面品質を劣化させる成分でもある。したがって、リン(P)の添加を介して高強度化を図る方法を自動車外板材用鋼板に適用するには、様々な技術的難点が存在する。リン(P)は、非常に偏析しやすい元素であり、スラブの表面に偏析したリン(P)は、熱間圧延及び冷間圧延によって鋼板の長さ方向に延伸して、コイル表面にリン(P)濃化層を形成し、鋼板表面に残存するリン(P)濃化層によってめっき鋼板の表面に線形欠陥が誘発されることがある。したがって、リン(P)添加は、最も経済的かつ効果的に鋼板の高強度化を図ることができる技術であるにも関わらず、めっき鋼板の表面品質の劣化を引き起こすことから、自動車外板材用めっき鋼板に適用されていないのが実情である。
【0005】
リン(P)含有量が0.03%以上の鋼板を基材とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関する特許文献1は、鋼板表面の不均一性を解消するために、鋼板中のリン(P)含有量に応じて鋼板の表面を研削した後、めっき層を形成する方法を提案している。このように鋼板の表面研削を行う場合、めっき鋼板の表面品質の確保にはある程度役立つが、表面研削作業が必須のため、必然的に生産性が低下し、研削により鋼板の実収率が低下するという不利益を伴う。
【0006】
したがって、高強度特性を有しながらも成形性及び表面品質に優れるだけでなく、実収率及び生産性の低下を効果的に防止可能であるめっき鋼板及びその製造方法に対する研究開発が喫緊に要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様によると、高強度特性を有しながらも成形性に優れ、表面品質に優れためっき鋼板及びその製造方法が提供されることができる。
【0009】
本発明の一態様によると、実収率及び生産性の低下を効果的に防止可能であるめっき鋼板及びその製造方法が提供されることができる。
【0010】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。通常の知識を有する者であれば、本明細書の全体内容から本発明のさらなる課題を理解するのに何ら困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係るめっき鋼板は、素地鉄;及び上記素地鉄の少なくとも一面に備えられためっき層;を含み、上記素地鉄は、重量%で、炭素(C):0.002~0.01%、シリコン(Si):0.1%以下、マンガン(Mn):0.4~1.0%、リン(P):0.04~0.1%、硫黄(S):0.01%以下、窒素(N):0.005%以下、アルミニウム(S.Al):0.1%以下、チタン(Ti):0.005~0.03%、ニオブ(Nb):0.01~0.05%、銅(Cu):0.06~0.1%、ボロン(B):0.0015%以下、モリブデン(Mo):下記の関係式1で定義されるYMが0.03以上0.1以下を満たす範囲、残りのFe及びその他の不可避不純物を含み、上記素地鉄はフェライトを基地組織として含み、上記素地鉄は下記の関係式2で定義されるEが0以上60以下の範囲を満たすことができる。
[関係式1]
YM=[P]*(1+0.5*[Mo]+0.1*[Mn])
上記関係式1において、[P]、[Mo]及び[Mn]は、それぞれ上記素地鉄に含まれるリン(P)、モリブデン(Mo)及びマンガン(Mn)の含有量(重量%)を意味する。
[関係式2]
E=1250*YM-5*X
上記関係式2において、YMは上記関係式1により算出され、Xは上記フェライトの平均結晶粒径(μm)を意味する。
【0012】
上記素地鉄の表面部の3次元結晶方位の密度関数(ODF){Φ1,Φ,Φ2}において、ODF{0°,0°,45°}の強度が2.0以下であり、ODF{30°,55°,45°}の強度が5以上9以下であることができる。
【0013】
上記フェライトの分率は95面積%以上であり、上記フェライトの平均結晶粒径は15μm以下であることができる。
【0014】
上記めっき層は、亜鉛系めっき層、アルミニウム系めっき層、合金化亜鉛系めっき層または合金化アルミニウム系めっき層の中から選択されたいずれか一つであることができる。
【0015】
上記めっき鋼板は、390MPa以上の引張強度、28%以上の伸び率及び1.2以上のr値を有することができる。
【0016】
本発明の一態様によるめっき鋼板の製造方法は、重量%で、炭素(C):0.002~0.01%、シリコン(Si):0.1%以下、マンガン(Mn):0.4~1.0%、リン(P):0.04~0.1%、硫黄(S):0.01%以下、窒素(N):0.005%以下、アルミニウム(S.Al):0.1%以下、チタン(Ti):0.005~0.03%、ニオブ(Nb):0.01~0.05%、銅(Cu):0.06~0.1%、ボロン(B):0.0015%以下、モリブデン(Mo):下記の関係式1で定義されるYMが0.03以上0.1以下を満たす範囲、残りのFe及びその他の不可避不純物を含むスラブを1100~1300℃で加熱する段階;下記の関係式3を満たす仕上げ圧延温度(Tf)で上記加熱されたスラブを熱間圧延して熱延鋼板を得る段階;上記熱延鋼板を600~650℃の温度範囲で巻取る段階;上記熱延鋼板を酸洗した後、70~83%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を得る段階;上記冷延鋼板を750~830℃の温度範囲で焼鈍する段階;上記焼鈍された冷延鋼板をめっき浴に浸漬してめっき鋼板を得る段階;及び選択的に上記めっき鋼板を480~610℃の温度範囲で合金化する段階を含むことができる。
[関係式1]
YM=[P]*(1+0.5*[Mo]+0.1*[Mn])
上記関係式1において、[P]、[Mo]及び[Mn]はそれぞれ上記スラブに含まれるリン(P)、モリブデン(Mo)及びマンガン(Mn)の含有量(重量%)を意味する。
[関係式3]
920-300*[3*[P]-{(31/48)*[Ti]+(31/93)*[Nb]}]<Tf(℃)<920+300*[3*[P]-{(31/48)*[Ti]+(31/93)*[Nb]}]
上記関係式3において、[P]、[Ti]及び[Nb]は、それぞれ上記スラブに含まれるリン(P)、チタン(Ti)及びニオブ(Nb)の含有量(重量%)を意味する。
【0017】
上記めっき浴は、亜鉛系めっき浴またはアルミニウム系めっき浴の中から選択されたいずれか一つであることができる。
【0018】
0.4~1.2%の圧下率で上記めっき鋼板または上記合金化されためっき鋼板を調質圧延する段階をさらに含むことができる。
【0019】
上記課題の解決手段は、本発明の特徴を全て列挙したものではなく、本発明の様々な特徴とそれに伴う利点と効果は、以下の具体的な実施形態及び実施例を参照してより詳細に理解することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によると、高強度特性を有しながらも成形性に優れ、表面品質に優れているため、自動車外板材として好ましい物性を有するだけでなく、高い実収率確保が可能なめっき鋼板及びその製造方法が提供されることができる。
【0021】
本発明の効果は、上述した事項に限定されるものではなく、通常の技術者が本明細書に記載された事項から合理的に類推される事項を含むものと解釈されることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、成形性に優れた高強度めっき鋼板及びその製造方法に関するものであり、以下では、本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明の実施形態は、様々な形態で変更することができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。本実施形態は、当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に本発明をより詳細に説明するために提供されるものである。
【0023】
本発明の発明者らは、上述した従来技術の問題点を解決するために鋭意研究した結果、鋼中に強力な炭窒化物形成元素であるチタン(Ti)及び/又はニオブ(Nb)などを添加して炭素(C)、窒素(N)、硫黄(S)などの固溶元素を最小化して成形性を確保すると同時に、リン(P)を添加して高強度特性を確保し、モリブデン(Mo)の添加量を最適の範囲に制御してめっき鋼板の表面品質を効果的に確保することができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0024】
以下、本発明の一態様に係るめっき鋼板についてより詳細に説明する。
【0025】
本発明の一態様に係るめっき鋼板は、素地鉄;及び上記素地鉄の少なくとも一面に備えられためっき層;を含み、上記素地鉄は、重量%で、炭素(C):0.002~0.01%、シリコン(Si):0.1%以下、マンガン(Mn):0.4~1.0%、リン(P):0.04~0.1%、硫黄(S):0.01%以下、窒素(N):0.005%以下、アルミニウム(S.Al):0.1%以下、チタン(Ti):0.005~0.03%、ニオブ(Nb):0.01~0.05%、銅(Cu):0.06~0.1%、ボロン(B):0.0015%以下、モリブデン(Mo):下記の関係式1で定義されるYMが0.03以上0.1以下を満たす範囲、残りのFe及びその他の不可避不純物を含み、上記素地鉄はフェライトを基地組織として含み、上記素地鉄は下記の関係式2で定義されるEが0以上60以下の範囲を満たすことができる。
[関係式1]
YM=[P]*(1+0.5*[Mo]+0.1*[Mn])
上記関係式1において、[P]、[Mo]及び[Mn]は、それぞれ上記素地鉄に含まれるリン(P)、モリブデン(Mo)及びマンガン(Mn)の含有量(重量%)を意味する。
[関係式2]
E=1250*YM-5*X
上記関係式2において、YMは上記関係式1により算出され、Xは上記フェライトの平均結晶粒径(μm)を意味する。
【0026】
以下、本発明の素地鉄に含まれる鋼組成についてより詳細に説明する。以下、特に異なって表示しない限り、各元素の含有量を示す%は重量を基準とする。
【0027】
炭素(C):0.002~0.01%
炭素(C)は、侵入型固溶元素であり、冷延及び焼鈍過程で鋼板の集合組織の形成に大きな影響を与える元素である。鋼中に固溶炭素量が多くなると、絞り加工に有利な{111}ガンマ(γ)-ファイバー集合組織を有する結晶粒の成長が抑制され、{110}及び{100}集合組織を有する結晶粒の成長が促進され、焼鈍板の絞り性が低下する。さらに、炭素(C)含有量が過度の場合、これを炭化物として析出させるために必要なチタン(Ti)及びニオブ(Nb)の含有量が大きくなるため、経済性の側面で不利であるだけでなく、パーライトなどが生成して成形性を低下させることがある。したがって、本発明は炭素(C)含有量の上限を0.01%に制限することができる。好ましい炭素(C)含有量の上限は0.009%であることができ、より好ましい炭素(C)含有量の上限は0.008%であることができる。但し、炭素(C)含有量が過度に少量である場合、十分な強度確保が不可能であるため、本発明は炭素(C)含有量の下限を0.002%に制限することができる。好ましい炭素(C)含有量の下限は0.003%であることができる。
【0028】
シリコン(Si):0.1%以下
シリコン(Si)は、固溶強化による強度上昇に寄与する元素である。本発明は、このような強度上昇の効果を発揮するためにシリコン(Si)を添加することができる。本発明は、シリコン(Si)含有量の下限を特に規定していないが、その下限から0%は除外されることができる。好ましいシリコン(Si)含有量の下限は0.01%であることができ、より好ましいシリコン(Si)含有量の下限は0.02%であることができる。但し、シリコン(Si)含有量が過度の場合、表面スケールの欠陥を誘発してめっき表面特性を低下させることがあるため、本発明はシリコン(Si)含有量の上限は0.1%に制限することができる。好ましいシリコン(Si)含有量の上限は0.07%であることができ、より好ましいシリコン(Si)含有量の上限は0.05%であることができる。
【0029】
マンガン(Mn):0.4~1.0%
マンガン(Mn)は、固溶強化元素として強度上昇に寄与するだけでなく、鋼中の硫黄(S)をMnSとして析出させる役割を果たす。本発明は、このような効果を得るために0.4%以上のマンガン(Mn)を添加することができる。好ましいマンガン(Mn)含有量の下限は0.45%であることができる。但し、マンガン(Mn)含有量が過度の場合、酸化物による表面品質の低下が発生する可能性があるため、本発明はマンガン(Mn)含有量の上限を1.0%に制限することができる。好ましいマンガン(Mn)含有量の上限は0.9%であることができ、より好ましいマンガン(Mn)含有量の上限は0.8%であることができる。
【0030】
リン(P):0.04~0.1%
リン(P)は、固溶効果が最も優れ、絞り性を大きく損なうことなく、鋼の強度を確保するのに最も効果的な元素である。本発明は、このような効果のために0.04%以上のリン(P)を添加することができる。好ましいリン(P)含有量は0.042%以上であることができ、より好ましくは0.045%以上であることができる。一方、リン(P)が過度に添加される場合、リン(P)の偏析による2次脆性及び表面線形欠陥が懸念されるため、本発明はリン(P)含有量の上限を0.1%に制限することができる。好ましいリン(P)含有量の上限は0.09%であることができ、より好ましいリン(P)含有量の上限は0.08%であることができる。
【0031】
硫黄(S):0.01%以下、窒素(N):0.005%以下
硫黄(S)及び窒素(N)は、鋼中に存在する不純物として不可避に添加される成分であるが、溶接特性を確保するためにはその含有量を可能な限り低く制御することが好ましい。したがって、本発明は、硫黄(S)の含有量を0.01%以下(0%を含む)に制限することができ、窒素(N)の含有量を0.005%以下(0%を含む)に制限することができる。また、不可避に添加される量を考慮して、本発明は硫黄(S)及び窒素(N)含有量の下限から0%を除外することができる。
【0032】
アルミニウム(S.Al):0.1%以下
アルミニウム(Al)は、AlNを析出させて鋼の絞り性及び延性向上に寄与する成分であり、本発明はこのような効果を確保するためにアルミニウム(Al)を添加することができる。好ましいアルミニウム(Al)含有量は0%超過であることができ、より好ましいアルミニウム(Al)含有量は0.01%以上であることができる。一方、アルミニウム(Al)が過度に添加される場合、製鋼操業時にアルミニウム(Al)介在物が過度に形成されて鋼板内部欠陥を誘発する可能性があるため、本発明はアルミニウム(Al)含有量の上限を0.1%に制限することができる。
【0033】
チタン(Ti):0.005~0.03%
チタン(Ti)は、熱間圧延中、固溶炭素及び固溶窒素と反応してチタン(Ti)系炭窒化物を析出させることで、鋼板の絞り性向上に大きく寄与する元素である。本発明は、このような効果を確保するために、0.005%以上のチタン(Ti)を添加することができる。好ましいチタン(Ti)含有量の下限は0.007%であることができる。一方、チタン(Ti)含有量が過度の場合、製鋼操業時に介在物の管理が難しくて介在物性の欠陥が発生する可能性があるため、本発明はチタン(Ti)含有量の上限を0.03%に制限することができる。好ましいチタン(Ti)含有量の上限は0.025%であることができる。
【0034】
ニオブ(Nb):0.01~0.05%
ニオブ(Nb)は、熱間圧延中の溶質牽引(solute drag)及び析出物ピニング(pinning)に寄与し、オーステナイト域の未再結晶領域が高温に広がると、圧延及び冷却する過程により非常に微細な結晶粒(grain)を作ることができる最も効果的な元素である。本発明は、このような結晶粒微細化を図るために0.01%以上のニオブ(Nb)を添加することができる。好ましいニオブ(Nb)含有量の下限は0.02%であることができる。一方、ニオブ(Nb)が過度に添加された場合、高温強度が高くなって熱間圧延の負荷が過重になる可能性があるため、本発明はニオブ(Nb)含有量の上限を0.05%に制限することができる。好ましいニオブ(Nb)含有量の上限は0.045%であることができる。
【0035】
銅(Cu):0.06~0.1%
銅(Cu)は、鋼の強度向上に寄与する成分である。本発明は、このような効果のために0.06%以上の銅(Cu)を添加することができる。好ましい銅(Cu)含有量の下限は0.065%であることができ、より好ましい銅(Cu)含有量の下限は0.07%であることができる。一方、銅(Cu)の添加量が過度の場合、粒界脆化や費用増加につながるため、本発明は銅(Cu)含有量の上限を0.1%に制限することができる。
【0036】
ボロン(B):0.0015%以下
ボロン(B)は、鋼中のリン(P)添加による2次加工脆性を防止する成分であり、本発明は2次加工脆性防止のためにボロン(B)を添加することができる。好ましいボロン(B)含有量の下限は0.0002%であることができ、より好ましいボロン(B)含有量の下限は0.0004%であることができる。但し、ボロン(B)含有量が過度の場合、鋼板の延性低下が伴われるため、本発明はボロン(B)含有量の上限を0.0015%に制限することができる。好ましいボロン(B)含有量の上限は0.001%であることができる。
【0037】
モリブデン(Mo):下記の関係式1で定義されるYMが0.03以上0.1以下を満たす範囲
本発明の発明者は、リン(P)添加を介して高強度化を図りつつ、リン(P)の粒界偏析による表面品質の低下を防止するための方法について鋭意研究を行った結果、鋼中にモリブデン(Mo)を適量添加する場合、リン(P)と親和力の高いモリブデン(Mo)はMoP化合物を形成し、それによってリン(P)の粒界偏析を効果的に防止することができることが分かった。したがって、本発明の発明者は、鋼の高強度特性及び表面品質の両立が可能な最適なモリブデン(Mo)含有量について多方面から検討し、鋼の強度向上に寄与するが、鋼の表面品質を阻害する成分であるリン(P)及びマンガン(Mn)の含有量に対して、鋼中に添加されるモリブデン(Mo)の含有量を最適な範囲に制御する場合、鋼の高強度特性及び優れた表面品質の両立が可能であることを導出することができた。したがって、本発明は、下記の関係式1によって規定されるYM値が特定範囲を満たすようにモリブデン(Mo)の含有量を制限することができる。
[関係式1]
YM=[P]*(1+0.5*[Mo]+0.1*[Mn])
関係式1において、[P]、[Mo]及び[Mn]は、それぞれ素地鉄に含まれるリン(P)、モリブデン(Mo)及びマンガン(Mn)の含有量(重量%)を意味する。
【0038】
本発明は、鋼の強度確保のために、関係式1によって規定されるYM値の下限を0.03に制限することができる。好ましいYM値の下限は0.035であることができ、より好ましいYM値の下限は0.04であることができる。YM値が大きいほど強度確保の側面では有利であるが、表面品質の確保の側面では不利であるため、本発明はYM値の上限を0.1に制限することができる。好ましいYM値の上限は0.095であることができ、より好ましいYM値の上限は0.09であることができる。
【0039】
本発明の素地鉄は、上述した成分以外に残りのFe及びその他の不可避不純物を含むことができる。但し、通常の製造過程では、原料または周囲環境から意図しない不純物が不可避に混入することがあるため、これを全面的に排除することはできない。これらの不純物は、本技術分野で通常の知識を有する者であれば誰でも分かるため、その全ての内容を本明細書で特に言及しない。また、上述の成分以外に有効な成分の追加的な添加が全面的に排除されるものではない。
【0040】
本発明の素地鉄は、フェライトを基地組織として含むことができ、不可避に形成されるパーライトなどのその他の微細組織を残部組織としてさらに含むことができる。本発明の素地鉄は、フェライトを基地組織として含むため、めっき鋼板の成形性を効果的に確保することができる。本発明においてフェライトの分率は95面積%以上であることができ、より好ましいフェライトの分率は99面積%以上であることができる。
【0041】
本発明の素地鉄は、下記の関係式2で定義されるEが0以上60以下の範囲を満たすことができる。
[関係式2]
E=1250*YM-5*X
上記関係式2において、YMは関係式1によって算出され、Xはフェライトの平均結晶粒径(μm)を意味する。
【0042】
本発明の発明者は、高強度特性と優れた表面品質が両立する条件下で成形性を極大化させる条件について鋭意研究を行い、関係式1によって算出されるYM値とフェライト組織の平均結晶粒径の相関関係を制御することで、高強度特性と優れた表面品質を両立させることができることが分かった。
【0043】
本発明は、関係式2によって算出されるE値を0以上に制限するため、めっき鋼板の強度を効果的に確保することができ、より好ましいE値の下限は10であることができる。また、本発明は、関係式2によって算出されるE値を60以下に制限するため、めっき鋼板の成形性を効果的に確保することができる。また、非制限的な例として、本発明のフェライトの平均結晶粒径(X)は5μm以上であることができ、15μm以下であることができる。
【0044】
上記素地鉄の表面部の3次元結晶方位の密度関数(ODF){Φ1,Φ,Φ2}において、ODF{0°,0°,45°}の強度が2.0以下であり、ODF{30°,55°,45°}の強度が5以上9以下であることができる。素地鉄の表面部は、素地鉄の表面から素地鉄の厚さの1/6地点までを意味することができる。ODF{0°,0°,45°}の強度とは、Φが0°であり、Φ1が0°であり、Φ2が45°であるときの表面部の3次元結晶方位の密度関数(ODF)で測定される強度を示し、上記ODF{30°,55°,45°}の強度とは、Φが55°であり、Φ1が30°であり、Φ2が45°であるときの表面部の3次元結晶方位の密度関数(ODF)で測定される強度を示す。結晶方位の密度関数(ODF)の強度値は、EBSD(Electron backscatter diffraction)を介して求めることができ、当該技術分野の通常の技術者は、通常の技術手段を活用して結晶方位の密度関数(ODF)の強度値を容易に測定することができる。
【0045】
本発明の発明者は、加工時に表面部の組織不均一による表面成形性が不良となる問題を解決するために研究を重ねた結果、上述した表面部の3次元結晶方位の密度関数(ODF){Φ1,Φ,Φ2}において、ODF{0°,0°,45°}及びODF{30°,55°,45°}の強度が特定値を満たすことで、ガンマ(γ)-ファイバーの集合組織を発達させることができ、これにより表面成形性に優れるだけでなく、車両外板用鋼材として適合に使用できることを発見した。
【0046】
したがって、本発明は、素地鉄の表面部の3次元結晶方位の密度関数(ODF){Φ1,Φ,Φ2}において、ODF{0°,0°,45°}の強度を2.0以下に制限し、ODF{30°,55°,45°}の強度を5以上9以下に制限するため、表面成形性を効果的に確保することができる。
【0047】
本発明の一態様に係るめっき鋼板は、素地鉄の一面に形成されためっき層を含む。本発明のめっき層は、溶融めっき層または合金化めっき層であることができ、非制限的な例として、本発明のめっき層は、亜鉛系めっき層、アルミニウム系めっき層、合金化亜鉛系めっき層または合金化アルミニウム系めっき層の中から選択されたいずれか一つであることができる。
【0048】
本発明の一態様に係るめっき鋼板は、390MPa以上の引張強度、28%以上の伸び率及び1.2以上のr値を有することができる。また、本発明の一態様に係るめっき鋼板は、表面線形欠陥の発生を効果的に抑制することができる。したがって、本発明は、高強度特性を有しながらも成形性に優れ、表面品質に優れて自動車外板材として好ましい物性を有するめっき鋼板を提供することができる。
【0049】
以下、本発明の一態様によるめっき鋼板の製造方法について、より詳細に説明する。
【0050】
本発明の一態様に係るめっき鋼板の製造方法は、所定の成分を有するスラブを1100~1300℃で加熱する段階;下記の関係式3を満たす仕上げ圧延温度(Tf)で上記加熱されたスラブを熱間圧延して熱延鋼板を得る段階;上記熱延鋼板を酸洗した後、70~83%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を得る段階;上記冷延鋼板を750~830℃の温度範囲で焼鈍する段階;上記焼鈍された冷延鋼板をめっき浴に浸漬してめっき鋼板を得る段階;及び選択的に上記めっき鋼板を480~610℃の温度範囲で合金化する段階を含むことができる。
[関係式3]
920-300*[3*[P]-{(31/48)*[Ti]+(31/93)*[Nb]}]<Tf(℃)<920+300*[3*[P]-{(31/48)*[Ti]+(31/93)*[Nb]}]
上記関係式3において、[P]、[Ti]及び[Nb]はそれぞれ上記スラブに含まれるリン(P)、チタン(Ti)及びニオブ(Nb)の含有量(重量%)を意味する。
【0051】
スラブの準備及び加熱
所定の成分を有する鋼スラブを準備する。本発明の鋼スラブは、上述した素地鉄の合金組成と対応する合金組成を有するため、鋼スラブの合金組成に対する説明は、上述した素地鉄の合金組成に対する説明に代える。
【0052】
準備されたスラブを1100~1300℃で加熱することができる。スラブ加熱温度が過度に低い場合、熱間圧延時に過度の圧延負荷が生じる可能性があるため、スラブ加熱温度の下限を1100℃に制限することができる。スラブ加熱温度が過度に高い場合、表面スケールの欠陥が問題となる可能性があるため、スラブ加熱温度の上限を1300℃に制限することができる。
【0053】
熱間圧延
加熱されたスラブを熱間圧延して熱延鋼板を提供することができる。本発明の発明者は、高強度特性を備えながらも優れた成形性及び表面品質を確保可能な工程条件について鋭意研究した結果、仕上げ圧延温度がAr3以上の範囲で熱間圧延を行うが、鋼スラブに含まれるリン(P)、チタン(Ti)及びニオブ(Nb)の相対的な含有量によって仕上げ圧延温度を厳しく制御する必要があるということを確認し、仕上げ圧延温度(Tf)と関連して下記の関係式3を導出した。
[関係式3]
920-300*[3*[P]-{(31/48)*[Ti]+(31/93)*[Nb]}]<Tf(℃)<920+300*[3*[P]-{(31/48)*[Ti]+(31/93)*[Nb]}]
上記関係式3において、[P]、[Ti]及び[Nb]は、それぞれ上記スラブに含まれるリン(P)、チタン(Ti)及びニオブ(Nb)の含有量(重量%)を意味する。
【0054】
関係式3により規定する仕上げ圧延温度(Tf)に満たない場合、最終鋼板の微細組織が本発明の目的とする範囲から外れ、成形性が劣ることがある。また、関係式3によって規定する仕上げ圧延温度(Tf)を超過する場合、最終鋼板の微細組織が本発明の目的とする範囲から外れ、強度特性または表面品質が劣ることがある。したがって、本発明は、下記の関係式3を満たす仕上げ圧延温度(Tf)で熱間圧延を行い、熱延鋼板を提供することができる。
【0055】
巻取り
熱間圧延によって得られた熱延鋼板を600~650℃の温度範囲で巻取ることができる。巻取り温度が過度に低い場合、Ti(Nb)Cなどの析出物が十分に生成されず、固溶炭素量が多くなり、焼鈍時の再結晶及び粒子成長などの挙動に影響を与えて、所望の強度及び伸び率を確保するのに問題が生じることがある。したがって、本発明は巻取り温度の下限を600℃に制限することができる。一方、巻取り温度が過度に高い場合、2次スケールの生成により表面品質が劣る可能性があるため、本発明は巻取り温度の上限を650℃に制限することができる。
【0056】
酸洗及び冷間圧延
巻き取られた熱延鋼板をアンコイリングした後、表面スケールの除去のための酸洗を実施することができ、酸洗後、70~83%の圧下率で冷間圧延を実施して冷延鋼板を得ることができる。冷間圧延の圧下率が一定レベル未満の場合、{111}集合組織が十分に成長せず、成形性が劣る可能性があるため、本発明は冷間圧延の圧下率の下限を70%に制限することができる。より好ましい圧下率の下限は71%である可能性がある。一方、冷間圧延時に圧下率が過度の場合、過度の圧延ロール負荷によって形状不良が発生する可能性があるため、本発明は冷間圧延の圧下率の上限を83%に制限することができる。より好ましい圧下率の上限は80%であることができる。
【0057】
焼鈍
冷間圧延によって得られた冷延鋼板を再結晶温度以上の温度に加熱して焼鈍(アニーリング)処理することができる。焼鈍温度が認定レベル以下の場合、圧延によって発生した変形が十分に除去されず、フェライト再結晶が完了されないため、伸び率が劣化することがある。したがって、本発明は、焼鈍温度の下限を750℃に制限することができる。一方、焼鈍温度が過度に高い場合、再結晶完了後、結晶粒成長まで進行して強度が劣化するか、表面品質が劣化する可能性があるため、本発明は焼鈍温度の上限を830℃に制限することができる。
【0058】
めっき及び選択的合金化
焼鈍処理された冷延鋼板をめっき浴に浸漬してめっき層を形成することができる。本発明のめっきに用いられるめっき浴は、自動車外板用めっき鋼板の製造に通常的に用いられるめっき浴であることができ、好ましくは亜鉛系めっき浴またはアルミニウム系めっき浴の中から選択されたいずれか一つであることができる。めっき浴浸漬後、選択的に合金化を行うことができ、好ましい合金化温度は480~610℃の温度範囲であることができる。
【0059】
上述した製造方法によって製造されためっき鋼板は、390MPa以上の引張強度、28%以上の伸び率及び1.2以上のr値を有するだけでなく、優れた表面品質を有することができる。
【実施例】
【0060】
以下、具体的な実施例を通じて本発明のめっき鋼板及びその製造方法についてより詳細に説明する。下記実施例は本発明の理解のためのものであって、本発明の権利範囲を限定するためのものではないことに留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項及びこれから合理的に類推される事項によって決定されるためである。
【0061】
(実施例)
下記表1に記載された合金組成を有する厚さ250mmの鋼スラブを1250℃に加熱した後、表2の工程条件を適用して平均厚さが0.85mmのめっき鋼板を製造した。このとき、めっき浴は0.13%のアルミニウム(Al)を含む亜鉛(Zn)めっき浴を利用した。各試験片を厚さ方向に切断した後、光学顕微鏡(Optical Microscope:OM)を用いて微細組織の分率及び平均結晶粒径を測定し、その結果を表3に記載した。また、各試験片について電解研磨を行った後、EBSD(Electron backscatter diffraction)を用いて各試験片の素地鉄の表面部(素地鉄の表面から素地鉄の厚さの1/6地点まで)の3次元結晶方位の密度関数(ODF)を測定し、その結果を表3に合わせて記載した。
【0062】
引張試験機を用いて各試験片に対する引張試験を行い、引張強度(TS)、降伏点(YP)及び破壊伸び率(T-El)を測定して、表4に記載した。具体的には、試験片の幅、長さ及び厚さを測定した後に引張試験機に試験片を装着して試験片が破壊するまで待ってから、その試験片の引張強度、降伏点及び破壊伸び率を測定した。降伏点は弾性変形が起こるときの限界応力で、通常0.2% offsetを介してその値を示し、引張強度は最高荷重を原断面で割った値を意味し、破壊伸び率は引張試験から破断後の試験片の変形量を%で表したものである。
【0063】
一方、深絞り加工の指標であるr値は、各試験片について、圧延方向と平行な方向、45°方向、直角な方向の3方向について、JIS5号引張試験片を採取し、各試験片のr値を測定して評価した。r値は、上述の引張試験で15%程度の引張変形を行った時点での板厚さの変化値と板幅の変化値を測定し、板厚さに対する板幅の変化値の比率を用いて求めることができる。そして、圧延方向と平行なr値をr0、45°方向のr値をr45、直角方向のr値をr90としたとき、各方向のr値を用いた関係式4を用いてr値を算出した。
[関係式4]
r=r0+2*r45+r90/4
【0064】
表面線形欠陥は目視で黒いラインの形態で確認され、これはSDD(Surface defect detector)上でコイル当たりの全体線形欠陥個数を確認することができる。下記の基準によって表面線形欠陥を「良好」及び「不良」と評価した。
良好:SDD上の線形欠陥個数が100個以下
不良:SDD上の線形欠陥個数が100個超過
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
表1~表4によると、本発明の合金組成、微細組織及び工程条件を満たす試験片は、390MPa以上の引張強度、28%以上の伸び率、1.2以上のr値を有するだけでなく、優れた表面特性を有することが分かる。一方、本発明の合金組成、微細組織及び工程条件のいずれか一つ以上を満たない試験片は、390MPa以上の引張強度、28%以上の伸び率、1.2以上のr値及び優れた表面特性を同時に確保することができないことが分かる。
【0070】
したがって、本発明の一態様によると、高強度特性を有しながらも成形性に優れ、表面品質に優れためっき鋼板及びその製造方法を提供することができる。
【0071】
以上、実施例を介して本発明を詳細に説明したが、これとは異なる形態の実施例も可能である。したがって、以下に記載された請求項の技術的思想と範囲は実施例に限定されない。