IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図1
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図2
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図3
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図4
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図5
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図6
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図7
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図8
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図9
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図10
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図11
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図12
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図13
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図14
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図15
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図16
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図17
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図18
  • 特許-表面形状測定方法及び表面形状測定装置 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】表面形状測定方法及び表面形状測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20250416BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021051589
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149430
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】平田 崇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和希
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-205005(JP,A)
【文献】特開平11-211443(JP,A)
【文献】特開平11-083454(JP,A)
【文献】特開2011-112639(JP,A)
【文献】特開2000-018932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ取得工程と、
変更工程と、
測定対象物の表面に対し、輝度が周期的に変化する縞パターンの照明光を照射する照明光照射工程と、
前記照明光の正反射方向に設けられた撮像装置を用い、前記照明光に対し相対的に移動している前記表面で反射した前記照明光を正反射方向から撮像した撮像画像を取得する取得工程と、
時系列に得られた複数の前記撮像画像から、位相シフト法を用いて位相画像を生成する位相画像生成工程と、
前記位相画像に基づいて前記表面の形状を測定する形状算出工程と
備え、
前記データ取得工程は、前記縞パターン内で1周期に相当する縞ピッチをpとし、前記撮像画像内における縞パターン像の輝度の最大値と最小値との差を示す振幅をAとしたとき、
前記振幅A/縞ピッチpの値と縞ピッチpとの関係を示した縞ピッチ解析データを、前記測定対象物毎に取得し、
前記変更工程は、前記測定対象物毎に、前記縞ピッチ解析データに基づいて、前記振幅A/縞ピッチpの値が最大値となる前記縞ピッチに、前記縞ピッチを変更し、
前記照明光照射工程は、前記測定対象物の、鏡面反射光成分及び拡散反射光成分に対応する光学特性である表面反射特性に応じるように、前記変更工程において変更した前記縞ピッチの照明光を照射する
表面形状測定方法。
【請求項2】
前記位相画像生成工程は、
前記表面の同じ表面領域を撮像している、時系列に並ぶ3つ以上の前記撮像画像から、前記同じ表面領域を表面抽出画像としてそれぞれ抽出する抽出工程と、
前記照明光による縞パターン像の写りが異なる複数の前記表面抽出画像から、前記位相シフト法を用いて前記位相画像を生成する位相シフト演算工程と、
前記位相シフト演算工程により生成された前記位相画像内のバイアス成分を除去するバイアス成分除去工程と、を備える、
請求項1に記載の表面形状測定方法。
【請求項3】
前記位相画像生成工程は、
前記撮像画像内の所定位置に3つ以上の注目撮像ラインを設定して、前記注目撮像ライン毎にそれぞれ各前記撮像画像を抽出してライン抽出画像を生成し、各前記注目撮像ライン毎に、前記ライン抽出画像を時系列に並べて位相シフト演算用画像を生成する画像生成工程と、
各前記注目撮像ライン毎に生成した複数の前記位相シフト演算用画像から、前記位相シフト法を用いて前記位相画像を生成する位相シフト演算工程と、を備える、
請求項1に記載の表面形状測定方法。
【請求項4】
測定対象物の表面に対し、輝度が周期的に変化する縞パターンの照明光を照射する照明装置と、
前記照明光の正反射方向に設けられ、前記照明光に対し相対的に移動している前記表面で反射した前記照明光を正反射方向から撮像した撮像画像を取得する撮像装置と、
時系列に得られた複数の前記撮像画像から、位相シフト法を用いて位相画像を生成する位相シフト演算部と、
前記位相画像に基づいて前記表面の形状を測定する形状算出部と
憶部と
備え、
前記記憶部は、前記縞パターン内で1周期に相当する縞ピッチをpとし、前記撮像画像内における縞パターン像の輝度の最大値と最小値との差を示す振幅をAとしたとき、
前記振幅A/縞ピッチpの値と縞ピッチpとの関係を示した縞ピッチ解析データを、前記測定対象物毎に取得しておき、
前記照明装置は、前記測定対象物毎に、前記縞ピッチ解析データに基づいて、前記振幅A/縞ピッチpの値が最大値となる前記縞ピッチに、前記縞ピッチを変更することで、前記測定対象物の、鏡面反射光成分及び拡散反射光成分に対応する光学特性である表面反射特性に応じるように変更した前記縞ピッチの照明光を照射する、
表面形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面形状測定方法及び表面形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状部材の表面の形状を測定する表面形状測定装置として、例えば、特許文献1に示すように、明暗が周期的に変化した縞パターンの照明光を、形状測定の対象となる表面に照射する構成が開示されている。この特許文献1では、このような縞パターンを表面上で動かして位相を変えながら複数の撮像画像を取得し、それら複数の撮像画像に基づいて表面上の欠点を判別している。
【0003】
また、特許文献2には、移動する表面に照射された照明光の縞パターンを1/4位相ずつずらして撮像し、得られた撮像画像を利用して位相シフト法により表面形状を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-18932号公報
【文献】特開平11-211443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鋼板等のように表面が鏡面でない測定対象物の場合、照明光を照射した表面には、正反射光の他に拡散反射光成分が存在する。照明光が表面で反射した際に生じる拡散反射光成分は空間的なローパスフィルタとして作用する。そのため、例えば、縞パターンの照明光を表面に照射した際、縞パターンの明暗の1周期に相当する縞ピッチが短すぎると、撮像画像内に表面における縞状の像が写らなくなるという問題がある。この場合、位相シフト法により得られた画像内のSN比は低下してしまい、ひいては、形状測定結果の精度低下につながる。
【0006】
一方、縞パターンの縞ピッチが長すぎる場合には、表面の傾き変化に対する位相変化量が小さくなる。そのため、この場合でも、位相シフト法により得られた画像内のSN比が低下してしまい、形状測定結果の精度低下につながる。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、測定対象物における表面の形状測定の精度を向上できる、表面形状測定方法及び表面形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表面形状測定方法は、測定対象物の表面に対し、輝度が周期的に変化する縞パターンの照明光を照射する照明光照射工程と、前記照明光に対し相対的に移動している前記表面で反射した前記照明光を撮像した撮像画像を取得する取得工程と、時系列に得られた複数の前記撮像画像から、位相シフト法を用いて位相画像を生成する位相画像生成工程と、前記位相画像に基づいて前記表面の形状を測定する形状算出工程と、を備え、前記照明光照射工程は、前記縞パターン内で1周期に相当する縞ピッチが、前記測定対象物の表面反射特性に応じて可変する、ものである。
【0009】
また、本発明の表面形状測定装置は、測定対象物の表面に対し、輝度が周期的に変化する縞パターンの照明光を照射する照明装置と、前記照明光に対し相対的に移動している前記表面で反射した前記照明光を撮像した撮像画像を取得する撮像装置と、時系列に得られた複数の前記撮像画像から、位相シフト法を用いて位相画像を生成する位相シフト演算部と、前記位相画像に基づいて前記表面の形状を測定する形状算出部と、表面反射特性が異なる前記測定対象物毎に、前記縞パターン内で1周期に相当する縞ピッチに関する情報を記憶した記憶部と、を備え、前記照明装置は、前記記憶部に記憶された前記縞ピッチに関する情報に基づいて前記縞ピッチを可変させる、ものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測定対象物の表面反射特性に応じて、照明装置における縞ピッチを調整することで、表面形状測定時におけるSN比を高くでき、その分、表面の形状測定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】表面形状測定装置の全体構成を示す概略図である。
図2】照明装置及び撮像装置の構成を説明するための概略図である。
図3】照明装置の発光面を説明するための概略図である。
図4】撮像装置で得られる撮像画像を示した写真である。
図5】撮像画像内における縞パターン像の輝度の変化を示したグラフである。
図6】第1実施形態による演算処理装置の回路構成を示すブロック図である。
図7】縞ピッチと、振幅/縞ピッチの値との関係を示したグラフである。
図8図8Aは所定の時刻1のときに得られた撮像画像内の注目表面領域を示す写真であり、図8Bは時刻2のときに得られた撮像画像内の注目表面領域を示す写真であり、図8Cは時刻3のときに得られた撮像画像内の注目表面領域を示す写真であり、図8Dは時刻4のときに得られた撮像画像内の注目表面領域を示す写真である。
図9図9Aは、図8Aに示した撮像画像内から抽出した表面抽出画像を示す写真であり、図9Bは、図8Bに示した撮像画像内から抽出した表面抽出画像を示す写真であり、図9Cは、図8Cに示した撮像画像内から抽出した表面抽出画像を示す写真であり、図9Dは、図8Dに示した撮像画像内から抽出した表面抽出画像を示す写真である。
図10図9に示した4つの表面抽出画像から生成した位相画像を示す写真である。
図11図10に示した位相画像からバイアス成分を除去した位相画像を示す写真である。
図12】表面が水平面から傾き角度θで傾いたときに、発光面での視点が、どのように変化するかについて説明するための概略図である。
図13図11に示した位相画像内における直線部に沿って求めた高さを示したグラフである。
図14】縞ピッチと振幅との関係を示したグラフである。
図15】縞ピッチとSN比との関係を示したグラフである。
図16】第2実施形態による演算処理装置の回路構成を示すブロック図である。
図17図17Aは所定の時刻1のときに得られた撮像画像内の各注目撮像ラインを示す写真であり、図17Bは時刻2のときに得られた撮像画像内の各注目撮像ラインを示す写真であり、図17Cは時刻3のときに得られた撮像画像内の各注目撮像ラインを示す写真であり、図17Dは時刻4のときに得られた撮像画像内の各注目撮像ラインを示す写真である。
図18図18Aは、一の注目撮像ラインを基に時系列に抽出したライン抽出画像から生成した位相シフト演算用画像を示す写真であり、図18Bは、図18Aと異なる注目撮像ラインを基に時系列に抽出したライン抽出画像から生成した位相シフト演算用画像を示す写真であり、図18Cは、図18A及び図18Bと異なる注目撮像ラインを基に時系列に抽出したライン抽出画像から生成した位相シフト演算用画像を示す写真であり、図18Dは、図18A図18B及び図18Cと異なる注目撮像ラインを基に時系列に抽出したライン抽出画像から生成した位相シフト演算用画像を示す写真である。
図19図18に示した4つの位相シフト演算用画像から生成した位相画像を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面について、本発明の一実施形態を詳述する。以下の説明において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
(1)第1実施形態
<表面形状測定装置の概略>
図1は、本発明の表面形状測定装置の全体構成を示す概略図である。図1に示すように、表面形状測定装置1は、照明装置2と撮像装置3と演算処理装置4とを備えており、搬送方向xに沿って移動している測定対象物10の表面10aの形状を測定する。
【0014】
ここで、測定対象物10は、長手方向を有しており、長手方向を搬送方向xとし、搬送路上を一定速度で搬送されている。測定対象物10は、例えば、鋼板やアルミ板等の金属板であり、表面10aに照明光が照射された際、表面10aに鏡面反射光成分及び拡散反射光成分が存在する材質であることが望ましい。
【0015】
照明装置2は、例えばディスプレイからなり、指向性の低い照明光を面発光する発光面2aを有する。この発光面2aは、測定対象物10の表面10aから所定距離離れた位置に配置され、表面10aに対して所定角度に設けられている。この場合、発光面2aには、帯状の明部6aと、明部6aと同一形状でなる帯状の暗部6bとが交互に配置され、かつ、明部6a及び暗部6bの長手方向が測定対象物10の幅方向(搬送方向x及び高さ方向zと直交する方向)yに沿って並行となるように配置されている。
【0016】
これにより、発光面2aは、測定対象物10の表面10aに向けて、輝度が周期的に変化する縞パターンの照明光を照射する。縞パターンの照明光が測定対象物10の表面10aに照射され、表面10aで反射されることで、後述する撮像装置3で縞パターン像を撮像することが可能となる。
【0017】
かかる構成に加えて、本実施形態の場合、照明装置2には演算処理装置4が接続されており、演算処理装置4から受け取った縞ピッチ設定情報に基づいて発光面2aにおける縞パターンを可変とすることができる。
【0018】
具体的には、照明装置2は、明部6a及び暗部6bの長手方向と直交する短手方向における縞ピッチ(後述する)を、縞ピッチ設定情報に基づいて変更する(変更工程)。このようにして、照明装置2は、測定対象物10の表面反射特性に応じて発光面2aの縞ピッチを可変とすることができ、表面反射特性に応じた最適な縞パターンを形成できる。なお、表面反射特性とは、測定対象物10の表面10aに照明光が照射され、表面10aに鏡面反射光成分及び拡散反射光成分が生じる際の光学特性を示し、測定対象物10の材質や表面粗度により異なる。
【0019】
撮像装置3は、測定対象物10の表面10aから所定距離離れた位置に配置されており、縞パターンの照明光が照射されている測定対象物10の表面10aを撮像して撮像画像を生成する。撮像装置3は、表面10aで反射した発光面2aの像(すなわち、縞パターン像)を所定間隔(表面10a上の所定の距離間隔、又は、測定対象物10の搬送速度が一定であれば所定の時間間隔)で撮像してゆき、時系列に沿って撮像画像を順次生成してゆく。
【0020】
測定対象物10が、搬送方向xに沿って一定速度で移動しているとすると、照明装置2は、表面10aに対して照射する照明光の照射角度が固定されているため、測定対象物10の表面10aは、照明装置2から照射される縞パターンの照明光に対して搬送方向xに沿って移動してゆく。
【0021】
これにより、撮像装置3は、縞パターンの照明光に対して搬送方向xに移動してゆく表面10aと、当該表面10aで反射された照明光による縞パターン像(発光面2aの像)とが撮像された撮像画像を時系列に生成してゆき、順次得られた撮像画像を演算処理装置4へ出力する。
【0022】
演算処理装置4は、撮像装置3で時系列に得られた撮像画像を順に取得してゆき、これらの撮像画像を利用して後述する表面形状測定処理を実行する。これにより、演算処理装置4では、表面形状測定処理の処理結果に基づいて、測定対象物10の表面10aの形状測定を行うことができる。
【0023】
ここで、表面形状測定処理については後述し、始めに照明装置2及び撮像装置3について、図2を用いて説明する。図2に示すように、照明装置2及び撮像装置3は、測定対象物10の表面10aの面法線z1を挟んで配置されている。本実施形態では、例えば、搬送方向xの下流側に照明装置2が配置され、搬送方向xの上流側に撮像装置3が配置されている。なお、照明装置2及び撮像装置3の位置としては、これとは逆に、搬送方向xの下流側に撮像装置3を配置し、搬送方向xの上流側に照明装置2を配置してもよい。
【0024】
撮像装置3は、測定対象物10の表面10aの面法線z1に対して光軸a1が所定角度θ1で配置されている。照明装置2は、測定対象物10の表面10aの面法線z1に対して、発光面2aの中心位置における面法線a2が同じ角度θ1で配置されている。
【0025】
撮像装置3が表面10aを撮像する角度θ1は、20~70度であることが望ましい。角度θ1が70度より大きい場合は照明装置2が測定対象物10に接触する可能性があり、角度θ1が20度より小さい場合は照明装置2が光軸a1を遮る可能性があるためである。
【0026】
次に、照明装置2の発光面2aについて説明する。図3は、照明装置2における発光面2aの構成を示す。発光面2aは、輝度が高い明部6aと、明部6aよりも輝度が低い暗部6bとから構成され、明部6a及び暗部6bが一定周期で繰り返し設けられている。
【0027】
本実施形態の場合、明部6a及び暗部6bの縞長手方向y1は測定対象物10の幅方向yに沿って平行に延びるように配置され、発光面2a内で縞長手方向y1と直交する縞短手方向x1に沿って明部6a及び暗部6bが交互に配置されている。
【0028】
発光面2aは、交互に設けられる明部6a及び暗部6bによって縞パターンを形成している。明部6a及び暗部6bが周期的に繰り返し設けられている縞パターンでは、1対の明部6a及び暗部6bによって1周期に相当する縞ピッチpを形成する。
【0029】
本実施形態の場合、発光面2a内の縞短手方向x1での明部6aの明部距離W1と、同じく縞短手方向x1での暗部6bの暗部距離W2とは同一距離に選定されており、これら明部距離W1及び暗部距離W2を合わせた距離が1つの縞ピッチpとなる。照明装置2は、このような縞ピッチpで構成された縞パターンの照明光を、測定対象物10の表面10aに照射する。
【0030】
図4は、縞パターンの照明光が照射された表面10aを撮像装置3によって撮像することで得られた撮像画像11aの一例を示す。図4に示すように、撮像画像11aには、照明光によって縞パターン像が投影されている表面10aが撮像される。なお、図4中には、4つの楕円状の黒いマーキング13aが表面10aに示されており、表面10aのこれら4つのマーキング13aの中心に、凹凸13bが存在している。また、マーキング13aは、広い表面10a上から、小さな凹凸13bを見つけ易くするために便宜的に示されたものである。
【0031】
本実施形態の場合、測定対象物10は、例えば、発光面2aから表面10aに照明光を照射した際、表面10aで照明光のコントラストが低下せずに、縞パターンの照明光が表面10aで反射する鏡面性を有している。そのため、図4に示すように、撮像画像11aには、縞パターンの照明光が測定対象物10の表面10aに照射されていることで、帯状の明部領域12aと、同じく帯状の暗部領域12bとが等間隔で交互に並んだ縞パターン像が撮像される。ここで、表面10aに凹凸13bがある場合、発光面2aからの照明光の光路が凹凸13bにより歪められる。その結果、撮像装置3において、発光面2a上での撮像位置が周囲とずれるため、縞パターン像の明暗変化が周囲と異なったものとなる。
【0032】
本実施形態では、表面10aに凹凸13bがある場合に、撮像装置3での発光面2a上の撮像位置ずれにより縞パターン像の明暗変化が異なることを利用し、時系列に得られた複数の撮像画像11a、…から、位相シフト法に基づいて撮像位置ずれ量を含んだ位相画像(後述する)を生成する。そして、このようにして生成された位相画像を解析することで、測定対象物10の表面10aにおける形状測定を行うことができる。
【0033】
<測定対象物に応じた縞ピッチの選定手法>
本実施形態では、測定対象物10の表面反射特性に応じて、照明装置2における発光面2aの縞パターンが設定される。始めに、測定対象物10に応じた縞ピッチpの選定手法について以下説明する。
【0034】
図5のグラフは、縞パターンの照明光を測定対象物10の表面10aに照射した際に、表面10aで反射され、撮像装置3で撮像される縞パターン像を撮像したときの撮像画像における輝度の変化を示している。
【0035】
撮像される縞パターン像は、搬送方向xに沿って輝度が周期的に変化する。測定対象物10の表面10aに拡散反射光成分が無い場合は、その強度分布は照明装置2の発光面2aのものと相似になるが、拡散反射光成分がある場合は虚像(測定対象物10の表面10aを鏡面と見たときの、撮像装置3から表面10aの反射を通じて見える発光面2aの縞パターン像)の高周波成分が失われるため、正弦波に近いものとなる。なお、以下では、発光面2aでの縞ピッチpは、測定対象物10の表面10aに映った縞パターンの搬送方向xでの縞ピッチq、撮像画像での縞ピッチrに対応するものとして説明する。また、以下では、図5の横軸は、搬送方向xに沿った方向における発光面2a上での位置を示すものとして説明し、縦軸は、横軸の各位置での輝度を示すものとして説明する。
【0036】
ある表面10aの傾き変化に対して、発光面2a上における撮像位置の変化△Lは一定なので、変化△Lだけ変化したときの縞パターン像の輝度変化量を最大化すれば、ある傾き変化に対する輝度変化量を最大化することができ、結果、複数の撮像画像から生成される位相画像のSN比を最大化させることができる。
【0037】
ここで、撮像画像における縞パターン像の輝度変化量は、下記の式(1)に比例する量となる。式(1)中の虚像位置とは、撮像装置3による発光面2a上の撮像位置をいう。
【0038】
虚像位置がΔL変化したときの輝度変化量∝(振幅A×周波数f)=振幅A/波長
… (1)
【0039】
振幅Aは、図5に示すように、撮像装置3で撮像した照明装置2の縞パターン像における輝度の最大値と最小値との差を示す。周波数fは、輝度が一定周期で変化する縞パターン像の周波数を示す。波長は、輝度が一定周期で変化する縞パターン像の波長であり、発光面2a上の縞ピッチpに比例する。よって、上記の式(1)で示した縞パターン像の輝度変化量は、波長に替えて発光面2a上の縞ピッチpを用いると、下記の式(2)で表すことができる。
【0040】
輝度変化量∝(振幅A/縞ピッチp) … (2)
【0041】
表面10aに拡散反射光成分が無い場合、すなわち鏡面反射光成分のみである場合は、縞ピッチpによらず、振幅Aは発光面2aの発光強度で決まる一定の値になるため、縞ピッチpを小さくするほど輝度変化量が大きくなり傾き変化に対する感度が高くなる。しかし、表面10aに拡散反射光成分がある場合には、撮像画像の鮮明性が低下するため、振幅Aは縞ピッチpへの依存性が生じる。具体的には縞ピッチpが小さいほど振幅Aが小さくなり、ある縞ピッチp以下では殆ど振幅Aはゼロになってしまう。このような場合にも輝度変化量を最大化するような縞ピッチpを選べばSN比を最大とすることができる。
【0042】
そこで、本実施形態では、測定対象物10の表面10aの形状測定を行う前に、上記の式(2)より求まる、振幅A/縞ピッチpの値が、最大値となる縞ピッチpを測定対象物10毎(例えば、材質や表面粗度が異なる測定対象物毎)に特定しておく。これにより、実際に測定対象物10の表面10aの形状測定を行う際、照明装置2の発光面2aにおける縞ピッチpを測定対象物10に合わせて、振幅A/縞ピッチpの値が最大値となる縞ピッチpに容易に設定することができる。よって、複数の撮像画像から生成される位相画像のSN比を最大とすることができる。
【0043】
<第1実施形態による表面形状測定処理について>
次に、測定対象物10の表面10aの表面形状測定処理について以下説明する。この場合、搬送方向xに沿って移動している測定対象物10の表面10aに対して、上記の式(2)に基づいて特定した縞ピッチpの照明光を照射する。撮像装置3は、搬送方向xに沿って移動している表面10aで反射した縞パターン像を、撮像装置3によって撮像してゆき、時系列に沿った複数の撮像画像を生成し、これを演算処理装置4に出力する。
【0044】
演算処理装置4は、表面形状測定処理を実行し、複数の撮像画像から位相画像を生成した後、位相画像を解析することで、測定対象物10の表面10aにおける形状測定を行い得る。ここで、図6は、第1実施形態による演算処理装置4の回路構成を示したブロック図である。演算処理装置4は、制御部21、取得部22、画像処理部23、表示部28及び記憶部29を備えている。
【0045】
ここで、記憶部29には、表面反射特性が異なる測定対象物10毎に縞ピッチpの解析結果を示した縞ピッチ解析データが予め記憶されている。この場合、本実施形態では、縞ピッチ解析データとして、例えば、図7に示すように、振幅A/縞ピッチpの値と、縞ピッチpとの関係を示した縞ピッチ解析データを、表面反射特性が異なる測定対象物10毎に予め取得しておき(データ取得工程)、記憶部29に記憶されている。
【0046】
なお、図7において、横軸は、照明装置2の発光面2aにおける縞ピッチpを発光面2aの画素数で示しており、縦軸は、振幅A/縞ピッチpの値を示す。図7に示した縞ピッチ解析データは、後述する検証試験により得られたものであり、その詳細については「<検証試験>」の欄にて説明する。
【0047】
測定対象物10の表面10aの形状を測定する際、演算処理装置4には、測定対象物10の識別情報が設定される。これにより、記憶部29は、設定された識別情報を基に、識別情報に予め対応づけておいた測定対象物10(例えば、鋼板)の縞ピッチ解析データを読み出し、これを制御部21に出力する。
【0048】
制御部21は、撮像制御部21aと縞ピッチ制御部21bとを備えており、記憶部29から出力された縞ピッチ解析データを、縞ピッチ制御部21bが受け取る。縞ピッチ制御部21bは、受け取った縞ピッチ解析データにおいて、例えば、振幅A/縞ピッチpの値が最も高くなる縞ピッチpを決定し、これを縞ピッチ設定情報として照明装置2及び記憶部29に出力する。記憶部29は縞ピッチ制御部21bから受け取った縞ピッチ設定情報を記憶する。
【0049】
照明装置2は、発光面2aの縞ピッチpが、縞ピッチ設定情報に基づいて、振幅A/縞ピッチpの値が最も高くなる縞ピッチpに設定される。これにより、照明装置2は、設定された縞ピッチpでなる縞パターンの照明光を表面10aに照射する。
【0050】
撮像制御部21aは、測定対象物10の搬送を制御している駆動機構等に設けられたPLG(Pulse Logic Generator:パルス型速度検出器)から出力されるPLG信号等に基づいて、測定対象物10が所定距離(例えば、測定対象物10の表面10aに映った縞パターン像の搬送方向xでの縞ピッチqについて、q/N(本実施形態の場合、N=4)移動するごとに、タイミング信号を撮像装置3に出力する。これにより、撮像装置3は、タイミング信号に基づいて、測定対象物10が所定距離(例えば、q/N(N=4))移動するごとに表面10aを撮像し、得られた撮像画像を演算処理装置4に出力する。
【0051】
取得部22は、撮像装置3で時系列に得られた撮像画像を、撮像装置3から順次受け取り、これを記憶部29に出力し、これらの撮像画像を記憶部29に記憶させる。ここで、図8A図8B図8C及び図8Dは、撮像装置3によって時系列に得られた撮像画像11a、11b、11c、11dの一例を示す。
【0052】
図8Aは、ある時刻1のときに得られた撮像画像11aであり、図8Bは、時刻1から所定秒経過した時刻2のときに得られた撮像画像11bである。図8Cは、時刻2から所定秒経過した時刻3のときに得られた撮像画像11cであり、図8Dは、時刻3から所定秒経過した時刻4のときに得られた撮像画像11dである。記憶部29は、時系列に取得された撮像画像11a、11b、11c、11d、…を画像処理部23に出力する。
【0053】
画像処理部23は、注目表面領域抽出部24、位相シフト演算部25、バイアス成分除去部26及び形状算出部27を備えており、記憶部29から出力された撮像画像11a、11b、11c、11d、…を、注目表面領域抽出部24が受け取る。
【0054】
注目表面領域抽出部24は、記憶部29から順次受け取った撮像画像11a、11b、11c、11d、…の中から、例えば、時系列に取得された4つの撮像画像11a、11b、11c、11dを選定する。ここで、時刻1から時刻4までの間に連続的に得られた各撮像画像11a、11b、11c、11dには、時間経過に伴い、測定対象物10の表面10aの位置が搬送方向xに向かって次第にずれてゆくものの、常に撮像され続けている表面領域が存在している。
【0055】
注目表面領域抽出部24は、選定した各撮像画像11a、11b、11c、11d内から、常に撮像されている表面領域を注目表面領域14とし、注目表面領域14内にある画像をそれぞれ抽出して、図9A図9B図9C及び図9Dに示すような表面抽出画像15a、15b、15c、15dを生成する。なお、図8では、測定対象物10の移動に合わせて、撮像画像11a、11b、11c、11d内で注目表面領域14を搬送方向xに「撮像画像での縞ピッチrについて、r/4」ずつずらしてゆき、同じ表面領域を常に注目表面領域14内に収めている。
【0056】
ここで、表面10aに対し照明装置2と撮像装置3との位置関係は固定されている。このため、図8A図8B図8C及び図8Dに示すように、時系列に順に得られた撮像画像11a、11b、11c、11dでは、縞パターン像の明部領域12a及び暗部領域12bの撮像位置は変化せず、常に同じ位置が撮像され続ける。
【0057】
その一方、測定対象物10は搬送方向xに沿って一定速度で移動していることから、時系列に順に得られた撮像画像11a、11b、11c、11dでは、時間経過に伴い、測定対象物10の表面10aの位置が搬送方向xに向かって次第にずれてゆく。
【0058】
そのため、測定対象物10の移動に合わせて、時系列の最初の撮像画像11aから最後の撮像画像11dまで、注目表面領域14を搬送方向xに向けてずらしてゆくことで、常に同じ表面領域が写った表面抽出画像15a、15b、15c、15dを得ることができるが、図9A図9B図9C及び図9Dに示すように、各表面抽出画像15a、15b、15c、15dでは、縞パターン像の明部領域12a及び暗部領域12bの撮像位置が異なるものとなる。
【0059】
なお、図9Aは、図8Aの撮像画像11a内にある注目表面領域14aから画像を抽出した表面抽出画像15aであり、図9Bは、図8Bの撮像画像11b内にある注目表面領域14bから画像を抽出した表面抽出画像15bであり、図9Cは、図8Cの撮像画像11c内にある注目表面領域14cから画像を抽出した表面抽出画像15cであり、図9Dは、図8Dの撮像画像11d内にある注目表面領域14dから画像を抽出した表面抽出画像15dである。
【0060】
注目表面領域抽出部24は、このようにして得られた表面抽出画像15a、15b、15c、15dを位相シフト演算部25に出力する。位相シフト演算部25は、時系列に得られた4つの表面抽出画像15a、15b、15c、15dを用いて、各画素毎に位相シフト演算を行うことで、図10に示すような1つの位相画像16を生成する。
【0061】
具体的には、位相シフト演算部25は、位相シフト演算として、下記の式(3)に基づいて、表面抽出画像15a、15b、15c、15dの各画素の輝度から、各画素毎に位相φを算出する。
【0062】
位相φ=atan{(b-d)/(c-a)} … (3)
【0063】
aは、時刻1での表面抽出画像15aにおいて注目した画素の輝度を示す。bは、時刻2での表面抽出画像15bにおいて、時刻1での表面抽出画像15aで注目した画素と同じ位置にある画素の輝度を示す。cは、時刻3での表面抽出画像15cにおいて、時刻1での表面抽出画像15aで注目した画素と同じ位置にある画素の輝度を示す。dは、時刻4での表面抽出画像15dにおいて、時刻1での表面抽出画像15aで注目した画素と同じ位置にある画素の輝度を示す。
【0064】
このようにして、位相シフト演算部25は、表面抽出画像15a、15b、15c、15dから、上記の式(3)を利用して各画素毎にそれぞれ位相φを算出し、図10に示すように、各画素の輝度を位相φで示した1つの位相画像16を生成する。位相シフト演算部25は、生成した位相画像16をバイアス成分除去部26に出力する。
【0065】
ここで、図10に示すように、位相シフト演算部25により生成された位相画像16には、例えば、搬送方向xに沿って縞1周期分あたり+π~-πまで変化する一定傾き成分(以下、バイアス成分と称する)Sが存在している。
【0066】
そこで、バイアス成分除去部26は、位相画像16内に存在する各バイアス成分Sを差し引き、図11に示すように、バイアス成分Sを除去した位相画像18を生成する。具体的には、バイアス成分Sを搬送方向xの一次式(S=(2π/r)x+b、式中のrは撮像画像内での縞ピッチを示す。式中のxは位相画像16内での搬送方向xの位置を示す。式中のSは位相画像16内の位置xでの輝度を示す。bは変数を示す)で表してそれを差し引く。
【0067】
この際、例えば、平らなサンプルを測定し、最小二乗法等によりS=(2π/r)x+bのbを決めてもよい。具体的には、表面が平らなサンプルを用意し、上述と同様にして、一定速度で移動するサンプルに、縞パターンの照明光を照射し、サンプルの表面で反射した照明光を撮像装置3で撮像し、複数の撮像画像を得る。次いで、時系列に得られた4つの撮像画像からそれぞれ注目表面領域を抽出して位相画像を生成し、最小二乗法等により、式S=(2π/r)x+bのbを決めてもよい。
【0068】
バイアス成分除去部26は、位相画像16内に存在するバイアス成分Sを差し引き、図11に示すように、バイアス成分Sが存在しない位相画像18を生成する。バイアス成分除去部26は、バイアス成分を除去した位相画像18を生成すると、これを形状算出部27に出力する。
【0069】
次に、形状算出部27において、バイアス成分Sを除去した位相画像18を基に、測定対象物10の表面10aの形状を測定する方法について以下説明する。ここで、始めに、図12に示すように、表面10aが水平面から傾き角度θで傾いたときに、撮像装置3に対して正反射方向にある、発光面2a上の視野中心での撮像位置O1が、どのように変化するかについて説明する。
【0070】
図12に示すように、測定対象物10の表面10aが水平面から傾き角度θで傾いたとき、照明装置2の発光面2aでは、撮像装置3に対する正反射方向が角度2θ変化する。この場合、表面10aが水平面にあるとき、撮像装置3に対して正反射方向に延びる正反射軸a3上での、発光面2aから表面10aまでの距離をDとすると、発光面2a上の視野中心での撮像位置O1の移動距離はDtan2θと表すことができる。
【0071】
発光面2aにおける縞パターンの縞ピッチをpとし、表面10aが水平面から傾き角度θで傾いたときの位相画像18における位相変化量を△φとすると、縞ピッチpと、位相変化量△φと、発光面2a上の視野中心での撮像位置O1の移動距離Dtan2θと、の関係は下記の式(4)で表すことができる。
【0072】
△φ=2π・(Dtan2θ)/p … (4)
【0073】
ここで、傾き角度θは微小であるため、tan2θ=2tanθと表すことができ、上記の式(4)から、tanθは下記の式(5)で表すことができる。
【0074】
tanθ=(p/D)・(△φ/4π) … (5)
【0075】
上記の式(5)のうち、縞ピッチpと距離Dとについては予め調べておくことができる。よって、位相画像18から位相変化量△φを求めることで、上記の式(5)から傾き角度θを算出することができる。
【0076】
位相変化量△φは、位相画像18内において凹凸のない平坦面における位相φとの差を示すものである。すなわち、本実施形態では、平坦面における位相φがバイアス成分Sを除去する過程で0となっているので、平坦面における位相0と、位相画像18内で位相が0でない測定対象部位の各画素での位相φとの差を求めることで、位相変化量△φを算出することができる。
【0077】
この場合、形状算出部27は、上述した距離Dが予め記憶されている。また、形状算出部27は、照明装置2に設定されている縞ピッチpを示した縞ピッチ設定情報を、記憶部29から読み出す。これにより、形状算出部27は、上述した距離Dと、縞ピッチpと、位相画像18に基づいて算出した位相変化量△φとを用いて、上記の式(5)から直線部L1の各画素での傾きtanθを求めることができる。
【0078】
形状算出部27は、このようにして各画素毎に求めた傾きtanθを積分することで、当該傾きtanθを求めた部位での高さを求めることができる。例えば、図11に示した位相画像18において、搬送方向xに延びる直線部L1に沿って高さを求める場合、形状算出部27は、直線部L1に沿って傾きtanθを求めて積分することで、表面10aにおける直線部L1に沿った高さを求めることができる。
【0079】
ここで、図13は、図11の位相画像18内における直線部L1に沿って求めた高さを示すグラフの一例である。横軸は、直線部L1に沿った座標(長手座標)を示し、縦軸は、傾きtanθを積分することで求めた高さを示す。本実施形態では、例えば、図13に示すように、測定対象物10の表面10aの高さを求めてゆくことで、表面10aの形状測定を行うことができる。
【0080】
形状算出部27は、測定対象物10の表面10aの高さを、高さ情報として表示部28及び記憶部29に出力する。これにより、高さ情報は、表示部28に表示されるとともに、記憶部29に記憶される。
【0081】
なお、表示部28は、画像処理部23及び記憶部29に接続されており、記憶部29に記憶された、縞ピッチ解析データや縞ピッチ設定情報等の各種情報を表示する。また、表示部28は、注目表面領域抽出部24で生成された表面抽出画像15a、15b、15c、15dや、位相シフト演算部25で生成された位相画像16、バイアス成分除去部26でバイアス成分Sを除去した位相画像18なども受け取り、これらを表示させて作業者に対して認識させることができる。
【0082】
<検証試験>
次に、振幅A/縞ピッチpの値が最大となる縞ピッチpにしたときに、SN比がどのような値を示すかを調べる検証試験を行った。ここでは、図1に示すような構成の表面形状測定装置1を用いた。また、測定対象物10として、照明光が照射された際に鏡面反射光成分及び拡散反射光成分が生じる鋼板を用意した。鋼板表面にはφ4mmで高さ30μmの凸部を設けた。鋼板は、ステージ上に載置し、ステージにより移動させた。
【0083】
この際、鋼板を搬送方向xに沿って0.1[mm]移動させる毎に、撮像装置3により鋼板表面を撮像してゆき、撮像画像を取得していった。撮像装置3は、CMOSカメラ(Basler社製acA1920-155)を用い、鋼板表面の撮像は、撮像分解能0.1[mm/画素]で行った。
【0084】
照明装置2として、画素ピッチが0.25[mm]、縦横1920×1200画素の大きさでなる発光面2aを有した液晶ディスプレイを用いた。照明装置2では、帯状の明部6aと帯状の暗部6bとを発光面2aに表示した。
【0085】
これにより、輝度が正弦波状に一定周期で変化する縞パターンの照明光が、発光面2aから照射されるようにした。この際、明部距離W1と暗部距離W2とを可変させて、所定の縞ピッチpに選定した。なお、明部距離W1と暗部距離W2とは同じ大きさとした。鋼板表面には斜め上方から照明光を照射し、照明光が照射されている鋼板表面を、照明光の正反射方向側から撮像装置3により撮像した。
【0086】
ここで、この検証試験では、照明装置2の発光面2aにおける表示形態を変え、縞パターンの縞ピッチpを、64画素、128画素、256画素、512画素又は1024画素に変えて、縞ピッチpが異なる照明光を鋼板表面に照射した。なお、照明装置2の縞ピッチpの可変は、発光面2aにマトリックス状に配置された画素を、白色に発光させる画素と、発光させない画素とに分けることで行った。
【0087】
発光面2aの縞ピッチpを、64画素、128画素、256画素、512画素又は1024画素に変えた各照明光を鋼板表面に対してそれぞれ照射し、そのときの各鋼板表面を撮像した。そして、照明装置2の縞ピッチpを変えたときにそれぞれ鋼板表面を撮像した各撮像画像内における明暗から、鋼板表面に投影された縞パターン像の輝度の振幅Aをそれぞれ調べた。
【0088】
その結果、図14に示すような結果が得られた。図14では、横軸に縞ピッチpを示し、縦軸に振幅Aを示す。図14に示すように、縞ピッチpを大きくして撮像画像内における明部領域12aと暗部領域12bとの間隔を広くしてゆくほど、輝度の振幅Aが大きくなることが確認できた。
【0089】
次に、各縞ピッチp毎に振幅A/縞ピッチpの値を算出して、振幅A/縞ピッチpの値と、縞ピッチpとの関係を調べたところ、図7に示したような結果が得られた。
【0090】
また、発光面2aの縞ピッチpを、64画素、128画素、256画素、512画素又は1024画素に変え、各縞ピッチpの際に得られた時系列に並ぶ4つの撮像画像から、それぞれ縞ピッチp毎に、バイアス成分Sを除去した位相画像18を生成した。
【0091】
発光面2aの縞ピッチpを64画素、128画素、256画素、512画素又は1024画素に変えたときの位相画像18におけるSN比を、それぞれ求めたところ、図15に示すような結果が得られた。
【0092】
図15では、横軸に縞ピッチpを示し、縦軸にSN比を示している。なお、ここでは、各位相画像18毎に、鋼板表面の凸部のない平坦な箇所での位相変化量△φの標準偏差と、意図的に設けた凸部13での位相変化量△φとの比を求め、これを各位相画像18でのSN比とした。
【0093】
ここで、図7に示した振幅A/縞ピッチpの値と、図15に示したSN比とから、振幅A/縞ピッチpの値が最も高くなる128画素の縞ピッチpで、SN比が最も高くなることが確認できた。よって、照明装置2における縞ピッチpを、振幅A/縞ピッチpの値が最大値となる縞ピッチpに設定することで、表面形状測定時におけるSN比を高くでき、その分、鋼板表面の形状測定の精度を向上できることが確認できた。
【0094】
<作用及び効果>
以上の構成において、表面形状測定装置1は、搬送方向xに移動する測定対象物10の表面10aに対し、輝度が周期的に変化する縞パターンの照明光を照射する(照明光照射工程)。照明装置2では、縞パターン内で1周期に相当する縞ピッチpが、測定対象物10の表面反射特性に応じて可変し得、測定対象物10に応じて最適な縞ピッチpに設定される。
【0095】
撮像装置3は、照明光に対して移動している表面10aで反射された照明光を撮像し、撮像画像11a、11b、11c、11d、…を取得する(取得工程)。これにより、表面形状測定装置1は、時系列に得られた複数の撮像画像11a、11b、11c、11dから、位相シフト法を用いて位相画像16を生成し(位相画像生成工程)、位相画像16に基づいて高さ情報を算出して表面10aの形状を測定することができる(形状算出工程)。
【0096】
以上より、表面形状測定装置1では、測定対象物10の表面反射特性に応じて、照明装置2における縞ピッチpを調整することで、表面形状測定時におけるSN比を高くでき、その分、表面10aの形状測定の精度を向上させることができる。
【0097】
また、第1実施形態では、位相画像生成工程として、同じ表面領域を撮像している、時系列に並ぶ4つの撮像画像11a、11b、11c、11dから、同じ表面領域を表面抽出画像15a、15b、15c、15dとしてそれぞれ抽出する(抽出工程)。
【0098】
さらに、表面形状測定装置1では、縞パターン像の写りが異なる複数の表面抽出画像15a、15b、15c、15dから、位相シフト法を用いて位相画像16を生成する(位相シフト演算工程)。そして、位相シフト演算工程で得られた位相画像16内からバイアス成分Sを除去した位相画像18を生成する(バイアス成分除去工程)。
【0099】
これにより、表面形状測定装置1では、バイアス成分Sによる濃淡が抑制され、測定対象物10の表面10aの形状のみを濃淡で表した位相画像18を得ることができる。よって、位相画像18に基づいて表面10aの形状測定を一段と精度良く行うことができる。
【0100】
(2)第2実施形態
<第2実施形態による表面形状測定処理について>
次に、第2実施形態による表面形状測定処理について説明する。第2実施形態は、上述した第1実施形態とは演算処理装置の構成が異なっており、演算処理装置による位相画像の生成の仕方のみが異なるものである。なお、その他の構成については第1実施形態と同様であり、例えば、第2実施形態でも、図1に示すような照明装置2及び撮像装置3を備え、照明装置2の発光面2aにおける縞ピッチpが、測定対象物10の表面反射特性に応じて可変する。
【0101】
ここでは、上述した第1実施形態とは異なる、位相画像の生成手法に着目して説明し、その他については第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。図16は、第2実施形態による演算処理装置34の回路構成を示したブロック図である。第2実施形態による表面形状測定装置1では、図1に示す第1実施形態の演算処理装置4に変えて、この演算処理装置34が配置された構成となる。
【0102】
演算処理装置34は、制御部21、取得部22、画像処理部35、表示部28及び記憶部29を備えている。記憶部29には、第1実施形態と同様に、表面反射特性が異なる測定対象物10毎に、縞ピッチ解析データが予め記憶されている。照明装置2は、縞ピッチ制御部21bで決定された縞ピッチ設定情報に基づいて、発光面2aの縞ピッチpが、振幅A/縞ピッチpの値が最高値となる縞ピッチpに設定される。これにより、照明装置2は、設定された縞ピッチpの縞パターンの照明光を表面10aに照射する。
【0103】
取得部22は、時系列に得られた撮像画像を撮像装置3から順次受け取り、これを記憶部29に出力し、これらの撮像画像を記憶部29に記憶させる。ここで、図17A図17B図17C及び図17Dは、撮像装置3によって時系列に沿って所定時刻で得られた撮像画像11a、11b、11c、11dの一例を示す。なお、撮像画像11a、11b間と、撮像画像11b、11c間と、撮像画像11c、11d間とには、それぞれ図示しない複数の撮像画像が存在している。
【0104】
図17Aは、ある時刻1のときに得られた撮像画像11aであり、図17Bは、時刻1から所定秒経過した時刻2のときに得られた撮像画像11bである。図17Cは、時刻2から所定秒経過した時刻3のときに得られた撮像画像11cであり、図17Dは、時刻3から所定秒経過した時刻4のときに得られた撮像画像11dである。記憶部29は、時系列に取得された撮像画像11a、…、11b、…、11c、…、11d、…を画像処理部35に出力する。
【0105】
画像処理部35は、画像生成部36、位相シフト演算部25及び形状算出部27を備えており、記憶部29から出力された撮像画像11a、…、11b、…、11c、…、11d、…を、画像生成部36が受け取る。画像生成部36は、例えば、撮像画像11aから所定領域の画像のみを抽出するため、4つの注目撮像ライン30a、30b、30c、30dを、撮像画像11aの決まった位置に設定する。
【0106】
この場合、注目撮像ライン30a、30b、30c、30dは、例えば、撮像画像11a内において測定対象物10の搬送方向xと直交する幅方向yに沿って延びる、幅1画素のラインである。これら注目撮像ライン30a、30b、30c、30dは、撮像画像11a内において、搬送方向xに沿って撮像画像11a中の縞ピッチrに対してr/Nで配置される。Nは、注目撮像ラインの本数を示しており、第2実施形態では4本の注目撮像ライン30a、30b、30c、30dを用いたことからN=4となる。
【0107】
本実施形態の場合、注目撮像ライン30a、30b、30c、30dのうち、末端位置にある注目撮像ライン30a、30dは、撮像画像11aに写る縞パターン像のうち、常に暗部領域12b付近の位置に設定される。また、これら注目撮像ライン30a、30dに挟まれた中間位置にある注目撮像ライン30b、30cは、常に明部領域12a付近の位置に設定される。
【0108】
このように各注目撮像ライン30a、30b、30c、30dは、撮像画像11a内に写る縞パターン像のうち、それぞれ予め決まった明部領域12a又は暗部領域12bに設定される。その一方、測定対象物10は搬送方向xに沿って移動しているため、撮像画像11aに対して常に同じ位置にある注目撮像ライン30aでも、各撮像画像11a、…、11b、…、11c、…、11d、…毎に、注目撮像ライン30a内に撮像されている表面10aは異なってくる。
【0109】
画像生成部36は、撮像画像11a、…、11b、…、11c、…、11d、…内にそれぞれ設定した各注目撮像ライン30a、30b、30c、30d毎に、各注目撮像ライン30a、30b、30c、30d内に撮像される画像を、ライン抽出画像として順次抽出してゆく。
【0110】
画像生成部36は、各注目撮像ライン30a、30b、30c、30d毎に得られたライン抽出画像を、各注目撮像ライン30a、30b、30c、30d毎に時系列に並べて結合する。これにより、画像生成部36は、各注目撮像ライン30a、30b、30c、30d毎に、図18A図18B図18C及び図18Dに示すような位相シフト演算用画像31a、31b、31c、31dを生成する。
【0111】
ここで、図18Aは、時系列に得られる撮像画像11a、…、11b、…、11c、…、11d、…から、注目撮像ライン30a内に順次写る画像をそれぞれライン抽出画像として抽出してゆき、時系列に得られたライン抽出画像を時系列順に連結して、1つの位相シフト演算用画像31aを生成したものである。
【0112】
また、図18Bは、時系列に得られる撮像画像11a、…、11b、…、11c、…、11d、…から、注目撮像ライン30b内に順次写る画像をそれぞれライン抽出画像として抽出してゆき、時系列に得られたライン抽出画像を時系列順に連結して、1つの位相シフト演算用画像31bを生成したものである。
【0113】
図18Cは、時系列に得られる撮像画像11a、…、11b、…、11c、…、11d、…から、注目撮像ライン30c内に順次写る画像をそれぞれライン抽出画像として抽出してゆき、時系列に得られたライン抽出画像を時系列順に連結して、1つの位相シフト演算用画像31cを生成したものである。
【0114】
図18Dは、時系列に得られる撮像画像11a、…、11b、…、11c、…、11d、…から、注目撮像ライン30d内に順次写る画像をそれぞれライン抽出画像として抽出してゆき、時系列に得られたライン抽出画像を時系列順に連結して、1つの位相シフト演算用画像31dを生成したものである。
【0115】
このように、第2実施形態では、各注目撮像ライン30a、30b、30c、30dの位置を撮像画像11aの所定位置に予め固定して設置し、各注目撮像ライン30a、30b、30c、30d毎に、各撮像画像11a、…、11b、…、11c、…、11d、…内の画像を抽出している。これにより、各注目撮像ライン30a、30b、30c、30dから抽出されるライン抽出画像は、それぞれ常に同じ明部領域12a又は暗部領域12bでの画像となる。
【0116】
かくして、第2実施形態では、図18A図18B図18C及び図18Dに示すように、上述した第1実施形態で説明したバイアス成分が存在しない位相シフト演算用画像31a、31b、31c、31dを生成することができる。
【0117】
画像生成部36は、このようにして、注目撮像ライン30a、30b、30c、30d毎に得られた位相シフト演算用画像31a、31b、31c、31dを位相シフト演算部25に出力する。位相シフト演算部25は、これら4つの位相シフト演算用画像31a、31b、31c、31dを用いて、各画素毎に位相シフト演算を行うことで、図19に示すような1つの位相画像33を生成する。
【0118】
なお、位相シフト演算部25により行われる位相シフト演算は、上述した第1実施形態と同様であり、上記の式(3)に基づいて、4つの位相シフト演算用画像31a、31b、31c、31dの各画素の輝度から、各画素毎に位相φを算出する。かくして、位相シフト演算部25は、各画素の輝度を位相φで示した1つの位相画像33を生成することができる。
【0119】
位相シフト演算部25は、位相画像33を生成すると、これを形状算出部27に出力する。これにより、形状算出部27は、上述した第1実施形態と同様に、位相画像18に基づいて位相変化量△φを算出し、位相変化量△φと、距離Dと、縞ピッチpとを用いて、上記の式(5)から各画素での傾きtanθを求めることができる。形状算出部27は、各画素毎に求めた傾きtanθを積分することで、当該傾きtanθ部分での高さを求めることができる。
【0120】
形状算出部27は、測定対象物10の表面10aの高さを高さ情報として表示部28及び記憶部29に出力する。これにより、高さ情報は、表示部28に表示されるとともに、記憶部29に記憶される。
【0121】
本第2実施例においては、N本の注目撮像ラインから得られた画像のみを用いている。そのため、撮像装置3としては通常のエリアカメラであっても良いが、N個のラインセンサカメラ、又は、CMOSエリアセンサの部分読み出し機能を使ってNラインだけ読み出すようにしても良い。
【0122】
<作用及び効果>
以上の構成において、第2実施形態による表面形状測定装置1でも、第1実施形態と同様に、照明装置2では、縞パターン内で1周期に相当する縞ピッチpが、測定対象物10の表面反射特性に応じて可変し得、測定対象物10に応じて最適な縞ピッチpに設定される。
【0123】
また、第2実施形態による表面形状測定装置1でも、撮像装置3で時系列に得られた複数の撮像画像11a、…、11b、…、11c、…、11d、…から、位相シフト法を用いて位相画像33を生成し(位相画像生成工程)、位相画像33に基づいて高さ情報を算出して表面10aの形状を測定することができる(形状算出工程)。
【0124】
以上より、第2実施形態による表面形状測定装置1でも、測定対象物10の表面反射特性に応じて、照明装置2における縞ピッチpを調整することで、表面形状測定時におけるSN比を高くでき、その分、表面10aの形状測定の精度を向上させることができる。
【0125】
また、第2実施形態では、位相画像生成工程として、撮像画像11aで幅方向yに沿って延びる4つの注目撮像ライン30a、30b、30c、30dを、各撮像画像11a、…、11b、…、11c、…、11d、…にそれぞれ設定する。そして、各撮像画像11a、…、11b、…、11c、…、11d、…内の注目撮像ライン30a、30b、30c、30d毎にそれぞれ画像を抽出してライン抽出画像を生成し、各注目撮像ライン30a、30b、30c、30d毎にライン抽出画像を時系列に並べて位相シフト演算用画像31a、31b、31c、31dを生成する(画像生成工程)。
【0126】
さらに、各注目撮像ライン30a、30b、30c、30d毎に生成した位相シフト演算用画像31a、31b、31c、31dから、位相シフト法を用いて位相画像33を生成する(位相シフト演算工程)。これにより、第2実施形態による表面形状測定装置1では、バイアス成分Sが存在しない位相画像33を生成することができるので、第1実施形態におけるバイアス成分除去処理を省くことができる。
【0127】
(3)他の実施形態
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。上述した実施形態においては、照明装置として、ディスプレイを適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、単なる面状光源の発光面に、複数の板状部材が所定間隔で並走したブラインドを設け、ブラインドの開閉調整により発光面における縞ピッチpを可変させる照明装置を適用してもよい。
【0128】
他の照明装置として、プロジェクターを用い、プロジェクターの発光面からの照明光を遮光するスクリーンを設け、スクリーンの幅を調整することで縞ピッチpを可変させる照明装置を適用してもよい。
【0129】
上述した第1実施形態においては、4つの撮像画像11a、11b、11c、11dを用いて位相シフト演算を行い、1つの位相画像16を生成する場合について述べた。また、第2実施形態においても、4つの位相シフト演算用画像31a、31b、31c、31dを用いて位相シフト演算を行い、1つの位相画像33を生成する場合について述べた。
【0130】
しかしながら、本発明はこれに限らず、第1実施形態では、3つ以上の撮像画像を用いて位相シフト演算を行い、1つの位相画像を生成するようにしてもよい。この場合、撮像装置3は、測定対象物10が所定距離(例えば、縞ピッチp/N(N≧3)移動するごとに、1回撮像処理を行い、表面10aを撮像して撮像画像を取得する。
【0131】
また、第2実施形態では、3つの位相シフト演算用画像を用いて位相シフト演算を行い、1つの位相画像を生成するようにしてもよい。
【0132】
第1実施形態で3つの撮像画像を用いて1つの位相画像を生成する場合や、第2実施形態で3つの位相シフト演算用画像を用いて1つの位相画像を生成する場合は、下記の式(6)を利用した位相シフト演算を行うことで1つの位相画像を生成できる。なお、ここでは、上記撮像画像及び位相シフト演算用画像について、まとめて単に画像と称する。
【0133】
位相φ=atan{(-a+2b-c)/(c-a)} … (6)
【0134】
なお、aは、第1の画像において注目した画素の輝度を示す。bは、第2の画像において、第1の画像で注目した画素と同じ位置にある画素の輝度を示す。cは、第3の画像において、第1の画像で注目した画素と同じ位置にある画素の輝度を示す。
【0135】
また、第1実施形態で5つの撮像画像を用いて1つの位相画像を生成する場合や、第2実施形態で5つの位相シフト演算用画像を用いて1つの位相画像を生成する場合は、下記の式(7)を利用した位相シフト演算を行うことで1つの位相画像を生成できる。
【0136】
位相φ=atan{2(b-d)/(-a+2c-e)} … (7)
【0137】
なお、eは、第5の画像において、第1の画像で注目した画素と同じ位置にある画素の輝度を示す。その他複数の画像を用いた位相シフト演算の手法については、公知文献「光干渉法による三次元計測」(計測と制御、第50巻 第2号 2011年2月号、インターネットURL:http://kitagawa.image.coocan.jp/3D-profiler-SICE-2011.pdf)に開示されているため、ここではその説明は省略する。
【0138】
上述した実施形態においては、照明装置2及び撮像装置3を固定し、測定対象物10を搬送方向xに移動させることで、照明光に対し相対的に表面10aを移動させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、測定対象物10を固定し、照明装置2及び撮像装置3を搬送方向xに移動させることで、照明光に対し相対的に表面10aを移動させるようにしてもよい。
【0139】
上述した実施形態においては、照明装置2の縞ピッチpを、振幅A/縞ピッチpの値が最大値となる縞ピッチpに設定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、図7に示す縞ピッチ解析データに基づいて、振幅A/縞ピッチpの値が最大値ではない最大値周辺の縞ピッチpを選択して、照明装置2の縞ピッチpを設定するようにしてもよい。
【0140】
上述した実施形態においては、表面反射特性が異なる測定対象物毎に、縞パターン内で1周期に相当する縞ピッチに関する情報を記憶した記憶部として、図7に示すような縞ピッチ解析データを記憶した記憶部29を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、縞ピッチに関する情報として、表面反射特性が異なる測定対象物毎に、振幅A/縞ピッチpの値が最大値となる縞ピッチpや、当該最大値周辺の縞ピッチp等、縞ピッチpの値のみを記憶した記憶部を適用してもよい。
【0141】
なお、上述した撮像画像や、位相画像等の各種画像には、ディスプレイ等に表示される具体的な画像としての形態だけでなく、画像として生成される前のデータも含まれる。
【符号の説明】
【0142】
1 表面形状測定装置
2 照明装置
3 撮像装置
4 演算処理装置
10 測定対象物
10a 表面
25 位相シフト演算部
27 形状算出部
29 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19