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特許7667438ワイピングノズル目詰防止装置、及び、ワイピングノズルの目詰防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】ワイピングノズル目詰防止装置、及び、ワイピングノズルの目詰防止方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/20 20060101AFI20250416BHJP
   C23C 2/00 20060101ALI20250416BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20250416BHJP
【FI】
C23C2/20
C23C2/00
C23C2/40
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021121345
(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公開番号】P2023017232
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】福井 貴大
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-004115(JP,A)
【文献】特開2007-231350(JP,A)
【文献】特開2019-167553(JP,A)
【文献】特開2022-155961(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0360537(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00-2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行鋼板と後行鋼板とが溶接された複数の鋼板を連続的に溶融金属めっき浴中に通過させ、前記溶融金属めっき浴を通過した前記鋼板に向けて、前記鋼板の一方の面及び他方の面にそれぞれ配置されたワイピングノズルからワイピングガスを噴射して、前記鋼板のめっき付着量を調整する溶融金属めっき設備において、前記ワイピングノズルの目詰まりを防止するワイピングノズル目詰防止装置であって、
前記先行鋼板と前記後行鋼板との溶接部または溶接部近傍にはパンチ穴が形成されており、
前記溶融金属めっき浴から前記ワイピングノズル間を通過するまでの鋼板通過位置に向けて、パンチ穴に付着した溶融亜鉛を除去する除去ガスを噴射する除去ガス噴射手段と、
前記先行鋼板と前記後行鋼板との溶接部または溶接部近傍に形成された前記パンチ穴を利用して得られた前記パンチ穴の位置情報に基づいて、前記除去ガス噴射手段に対して、前記溶融金属めっき浴から前記ワイピングノズル間を通過する前記パンチ穴に向けて除去ガスを噴射するように指令を与える制御部と、
を備えており、
前記除去ガス噴射手段は、少なくとも鋼板の前記パンチ穴のかえり部が形成された面側に配設されていることを特徴とするワイピングノズル目詰防止装置。
【請求項2】
前記除去ガス噴射手段は、前記ワイピングノズルよりも前記溶融金属めっき浴の浴面から離間した位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のワイピングノズル目詰防止装置。
【請求項3】
前記除去ガス噴射手段は、除去ガスの噴射角度を調整可能な構成とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイピングノズル目詰防止装置。
【請求項4】
先行鋼板と後行鋼板とが溶接された複数の鋼板が連続的に溶融金属めっき浴に供給され、前記溶融金属めっき浴を通過した前記鋼板に向けて、前記鋼板の一方の面及び他方の面にそれぞれ配置されたワイピングノズルからワイピングガスを噴射して、前記鋼板のめっき付着量を調整する溶融金属めっき設備において、ワイピングノズルの目詰まりを防止するワイピングノズルの目詰防止方法であって、
前記先行鋼板と前記後行鋼板との溶接部または溶接部近傍にパンチ穴が形成されており、前記パンチ穴が前記溶融金属めっき浴から前記ワイピングノズル間を通過する際に、少なくとも鋼板の前記パンチ穴のかえり部が形成された面側に配設された除去ガス噴射手段により、前記パンチ穴に向けて除去ガスを噴射し、前記パンチ穴に付着した溶融金属を除去することを特徴とするワイピングノズルの目詰防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属めっき設備において鋼板のめっき付着量を調整するワイピングノズルの目詰まりを防止するワイピングノズル目詰防止装置、及び、ワイピングノズルの目詰防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、鋼板の表面に溶融亜鉛めっきを施した溶融亜鉛めっき鋼板、及び、これを合金化処理した合金化亜鉛めっき鋼板は、耐食性に優れていることから、家電用、建材用、土木用、機械用、自動車用、家具用、容器用等の各種用途において広く利用されている。
このような溶融亜鉛めっき鋼板は、例えば、溶融亜鉛めっき浴と、この溶融亜鉛めっき浴を通過した鋼板に対してワイピングガスを噴射してめっき付着量を調整するワイピングノズルと、を備えた溶融亜鉛めっき設備によって製造される。なお、ワイピングノズルは、鋼板の幅全体に対してワイピングガスを噴射する構成とされている。
【0003】
ここで、上述のワイピングノズルにおいて、幅方向の一部に目詰まりが生じた場合には、ワイピングガスが幅方向に均一に噴射されず、鋼板の幅方向の一部において、めっき付着量が異なることになり、溶融亜鉛めっき鋼板において筋状の外観不良が発生することがあった。
ワイピングノズルの目詰まりは、鋼板に付着した亜鉛がワイピングガスによって飛散することで発生するものであり、ワイピングガスの吐出圧力が高いと発生しやすくなる。このため、鋼板のめっき付着量が少ない場合や、鋼板の走行速度が速い場合に多く発生する傾向にある。
【0004】
また、鋼板の幅方向端部においては、対向配置されたワイピングノズルからのワイピングガス同士が衝突し、ガス流れが乱流状態となるため、亜鉛が飛散してワイピングノズルの目詰まりが発生しやすい。
そこで、特許文献1には、パージガスを噴射させることで、走行する鋼板の幅方向端部における亜鉛の飛散を防止する方法が提案されている。
【0005】
さらに、上述の溶融亜鉛めっき設備においては、先行鋼板と後行鋼板とを溶接することで、複数の鋼板が連続して溶融亜鉛めっき浴を通過するように構成されている。ここで、先行鋼板と後行鋼板とで幅が異なる場合には、溶接部において幅方向に段差が生じることになり、この段差に付着した亜鉛が飛散してワイピングノズルの目詰まりが発生することがあった。
そこで、特許文献2には、走行する鋼板の幅方向端部に向けて斜め下向きに高圧ガスを噴射することで、段差に付着した亜鉛を除去し、ワイピングノズルの目詰まりを抑制する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平07-331404号公報
【文献】特開2015-004115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、先行鋼板と後行鋼板とを溶接する際には、この溶接部の走行位置を特定するために、溶接部または溶接部近傍にパンチ穴が形成されることがある。
ここで、最近では、上述の溶融亜鉛めっき鋼板等においては、さらなる表面品質の向上が求められており、ワイピングノズルの目詰まりに起因する外観不良の発生をさらに抑制する必要がある。
そこで、従来よりも厳しい基準で溶融亜鉛めっき鋼板の外観検査を行った結果、溶接部が通過した際に、パンチ穴が形成された幅位置において外観不良が発生していることが分かった。また、この外観不良が鋼板の片側の面で発生しやすいことが分かった。
【0008】
上述のパンチ穴は、鋼板の一方の面から打ち抜くことで成形されており、鋼板の他方の面側には、打ち抜き時に「かえり部」が形成されることがある。そして、このパンチ穴が溶融金属めっき浴を通過した際には、パンチ穴のかえり部に余剰な溶融金属が付着しやすい傾向にあった。このため、かえり部が形成された面側において、ワイピングノズルの目詰まりが発生し、上述の外観不良が発生するおそれがあった。
よって、上述の溶融亜鉛めっき鋼板等において、さらなる表面品質の向上を図るためには、パンチ穴に起因するワイピングノズルの目詰まりを抑制する必要がある。
【0009】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、溶接部または溶接部近傍に形成したパンチ穴がワイピングノズルの間を通過する場合であっても、パンチ穴に付着した余剰な溶融金属を除去することで、前記ワイピングノズルの目詰まりを防止し、前記ワイピングノズルの目詰まりに起因した外観不良の発生を抑制して高品質な溶融金属めっき鋼板を製造することが可能なワイピングノズル目詰防止装置、及び、ワイピングノズルの目詰防止方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のワイピングノズル目詰防止装置は、先行鋼板と後行鋼板とが溶接された複数の鋼板を連続的に溶融金属めっき浴中に通過させ、前記溶融金属めっき浴を通過した前記鋼板に向けて、前記鋼板の一方の面及び他方の面にそれぞれ配置されたワイピングノズルからワイピングガスを噴射して、前記鋼板のめっき付着量を調整する溶融金属めっき設備において、前記ワイピングノズルの目詰まりを防止するワイピングノズル目詰防止装置であって、前記先行鋼板と前記後行鋼板との溶接部または溶接部近傍にはパンチ穴が形成されており、前記溶融金属めっき浴から前記ワイピングノズル間を通過するまでの鋼板通過位置に向けて、パンチ穴に付着した溶融亜鉛を除去する除去ガスを噴射する除去ガス噴射手段と、前記先行鋼板と前記後行鋼板との溶接部または溶接部近傍に形成された前記パンチ穴を利用して得られた前記パンチ穴の位置情報に基づいて、前記除去ガス噴射手段に対して、前記溶融金属めっき浴から前記ワイピングノズル間を通過する前記パンチ穴に向けて除去ガスを噴射するように指令を与える制御部と、を備えており、前記除去ガス噴射手段は、少なくとも鋼板の前記パンチ穴のかえり部が形成された面側に配設されていることを特徴としている。
【0011】
この構成のワイピングノズル目詰防止装置によれば、制御部が、前記先行鋼板と前記後行鋼板との溶接部または溶接部近傍に形成されたパンチ穴を利用して得られた前記パンチ穴の位置情報に基づいて、除去ガス噴射手段に対して、前記溶融金属めっき浴から前記ワイピングノズル間を通過する前記パンチ穴に向けて除去ガスを噴射するように指令を与える構成とされているので、パンチ穴がワイピングノズルの間を通過する際に、パンチ穴に付着した溶融金属を除去ガスによって除去することができ、ワイピングノズルの目詰を防止することが可能となる。これにより、ワイピングノズルの目詰に起因した外観不良の発生を抑制することが可能となる。
【0012】
ここで、本発明のワイピングノズル目詰防止装置においては、前記除去ガス噴射手段は、前記ワイピングノズルよりも前記溶融金属めっき浴の浴面から離間した位置に配設されていることが好ましい。
この場合、ワイピングノズルを溶融金属めっき浴の浴面に近接して配置することが可能となり、溶融金属めっき浴が酸化しやすい元素を含む場合であっても、鋼板に付着した溶融金属が酸化する前にワイピングノズルによって、めっき付着量を精度良く調整することが可能となる。
【0013】
さらに、本発明のワイピングノズル目詰防止装置においては、除去ガスの噴射角度を調整可能な構成とされていてもよい。
この場合、パンチ穴に付着した溶融金属を所望の方向へ向けて吹き飛ばすことができ、ワイピングノズルの目詰を的確に防止することが可能となる。
【0014】
本発明のワイピングノズルの目詰防止方法は、先行鋼板と後行鋼板とが溶接された複数の鋼板が連続的に溶融金属めっき浴に供給され、前記溶融金属めっき浴を通過した前記鋼板に向けて、前記鋼板の一方の面及び他方の面にそれぞれ配置されたワイピングノズルからワイピングガスを噴射して、前記鋼板のめっき付着量を調整する溶融金属めっき設備において、ワイピングノズルの目詰まりを防止するワイピングノズルの目詰防止方法であって、前記先行鋼板と前記後行鋼板との溶接部または溶接部近傍にパンチ穴が形成されており、前記パンチ穴が前記溶融金属めっき浴から前記ワイピングノズル間を通過する際に、少なくとも鋼板の前記パンチ穴のかえり部が形成された面側に配設された除去ガス噴射手段により、前記パンチ穴に向けて除去ガスを噴射し、前記パンチ穴に付着した溶融金属を除去することを特徴としている。
【0015】
この構成のワイピングノズルの目詰防止方法によれば、前記先行鋼板と前記後行鋼板との溶接部または溶接部近傍にパンチ穴が形成されており、前記パンチ穴が前記溶融金属めっき浴から前記ワイピングノズル間を通過する際に、前記パンチ穴に向けて除去ガスを噴射し、前記パンチ穴に付着した溶融金属を除去する構成としているので、ワイピングノズルの目詰を防止することが可能となる。これにより、ワイピングノズルの目詰に起因した外観不良の発生を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
上述のように、本発明によれば、溶接部または溶接部近傍に形成したパンチ穴がワイピングノズルの間を通過する場合であっても、パンチ穴に付着した溶融金属を除去することで、前記ワイピングノズルの目詰まりを防止し、前記ワイピングノズルの目詰まりに起因した外観不良の発生を抑制して高品質な溶融金属めっき鋼板を製造することが可能なワイピングノズル目詰防止装置、及び、ワイピングノズルの目詰防止方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】溶融金属めっき設備を示す概略説明図である。
図2】ワイピングノズル周辺の拡大説明図である。
図3】本発明の一実施形態であるワイピングノズル目詰防止装置の概略説明図である。
図4】本発明の一実施形態であるワイピングノズル目詰防止装置の概略説明図である。
図5】本発明の他の実施形態であるワイピングノズル目詰防止装置の概略説明図である。
図6】実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態であるワイピングノズル目詰防止装置、及び、ワイピングノズルの目詰防止方法について、添付した図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
まず、本実施形態であるワイピングノズル目詰防止装置を備えた溶融金属めっき設備10について説明する。本実施形態における溶融金属めっき設備10は、鋼板Sの表面に、溶融亜鉛めっき層、または、Zn-Al合金めっき層を形成する溶融亜鉛めっき設備とされている。
【0020】
図1に、本実施形態であるワイピングノズル目詰防止装置を備えた溶融金属めっき設備10を示す。
この溶融金属めっき設備10は、めっき浴を構成する溶融亜鉛Mが貯留されるめっき槽11と、このめっき槽11中に浸漬されたシンクロール12と、めっき浴中において走行する鋼板Sを案内する第1サポートロール13及び第2サポートロール14と、めっき浴へ鋼板Sを連続的に侵入させる鋼板供給装置15と、を備えている。なお、鋼板供給装置15は、焼鈍炉(図示なし)を通過してきた鋼帯Sを冷却する冷却部16を備えている。
【0021】
そして、本実施形態である溶融金属めっき設備10においては、めっき浴を通過した鋼板Sに向けてワイピングガスを噴射して、鋼板Sのめっき付着量を調整するワイピングノズル18を備えている。
ワイピングノズル18は、図1に示すように、鋼板Sの一方の面側及び他方の面側にそれぞれ配置され、走行する鋼板Sを厚さ方向に挟むように配置されている。また、このワイピングノズル18は、鋼板Sの全幅にわたってワイピングガスが噴射可能なように構成されている。
【0022】
ここで、本実施形態である溶融金属めっき設備10においては、先行鋼板S1と後行鋼板S2とを溶接することによって、複数の鋼板Sが連続してめっき浴を通過するように構成されている。
図4に示すように、先行鋼板S1と後行鋼板S2との溶接部30または溶接部30近傍に、この溶接部30の走行位置を特定するために、パンチ穴Hが形成される。
ここで、このパンチ穴Hは、溶接部30から鋼板Sの進行方向Fへ距離L(0mm≦L≦500mm)の領域内に形成されていることが好ましい。また、溶接部30にパンチ穴Hを形成した場合には、接合強度が低下するおそれがあることから、溶接部30から鋼板Sの進行方向Fへ10mm以上離間した位置に、パンチ穴Hを形成することが好ましい。
【0023】
このパンチ穴Hは、図2に示すように、鋼板Sの一方の面から打ち抜くことで成形されており、鋼板Sの他方の面側には、かえり部Pが形成されることになる。
ここで、鋼板Sの厚さは、0.2mm以上3.2mm以下の範囲内とされている。また、パンチ穴Hは、直径が5mm以上20mm以下の範囲内とされている。さらに、かえり部Pの突出高さは、1mm以下とされている。
図2に示すように、パンチ穴Hがめっき浴を通過すると、パンチ穴Hに余剰な溶融亜鉛Zが付着することになり、特にかえり部Pには余剰な溶融亜鉛Zが溜まりやすい傾向にある。このように、余剰な溶融亜鉛Zが付着したパンチ穴Hがワイピングノズル18の間を通過すると、ワイピングガスによって溶融亜鉛Zが飛散して、ワイピングノズル18の目詰まりが発生することになる。
【0024】
そこで、本実施形態の溶融金属めっき設備10においては、図3に示すように、本実施形態であるワイピングノズル目詰防止装置20が配設されている。
このワイピングノズル目詰防止装置20は、先行鋼板S1と後行鋼板S2との溶接部30または溶接部30近傍に形成されたパンチ穴Hを用いて溶接部30のトラッキング情報を取得する溶接部トラッキング情報取得部21と、ワイピングノズル18の間の鋼板通過位置に向けて除去ガスを噴射する除去ガス噴射手段22と、溶接部トラッキング情報取得部21によるパンチ穴Hの位置情報により、パンチ穴Hがめっき浴からワイピングノズル18間を通過する際に、パンチ穴Hに向けて除去ガスを噴射するように、除去ガス噴射手段22に指令を与える制御部23と、を備えている。
【0025】
溶接部トラッキング情報取得部21は、例えば、鋼板Sの走行経路において、走行する鋼板Sを挟んで、発光部と受光部とを配置し、パンチ穴Hが通過した際に、受光部が発光部からの光信号を受け取ることで、パンチ穴Hの走行位置を把握するとともに、鋼板Sの走行速度から、その後のパンチ穴Hの走行位置を判断する構成のものを適用することができきる。
【0026】
ここで、除去ガス噴射手段22は、少なくとも、鋼板Sにおいてパンチ穴Hのかえり部Pが形成された面側に配設されていればよいが、鋼板Sの両面側にそれぞれ除去ガス噴射手段22が配設されていてもよい。
また、除去ガス噴射手段22は、ワイピングノズル18よりもめっき浴の浴面から離間した位置に配設されていることが好ましい。本実施形態では、図3に示すように、めっき浴を通過した鋼板Sが鉛直方向上方に向けて引き出されており、除去ガス噴射手段22は、ワイピングノズル18の上方に配設されている。
さらに、除去ガス噴射手段22は、除去ガスの噴射角度θを調整可能な構成とされていることが好ましい。
【0027】
ここで、本実施形態では、図3に示すように、除去ガス噴射手段22は、除去ガスを斜め下方に向けて噴射する構成とされており、除去ガスの噴射角度θ(鉛直方向上方に向けて引き出された鋼板Sとのなす角度θ)は、45°以上80°以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、この噴射角度θは、ワイピングノズル18の間を溶接部30が通過する直前に、パンチ穴Hに向けて除去ガスを噴射できるように適宜設定すればよい。
【0028】
また、除去ガス噴射手段22の先端位置は、鉛直方向上方に向けて引き出された鋼板Sからの水平距離L1は100mm以上であり、ワイピングノズル18の噴射口からの鉛直方向距離L2は120mm以上であることが好ましい。
【0029】
さらに、本実施形態において、パンチ穴Hに付着した溶融亜鉛Zを的確に除去するためには、除去ガス噴射手段22から噴射される除去ガスの吐出圧力を0.1MPa以上、除去ガス噴射手段22から噴射される除去ガスの流量を230Nm/分以上とすることが好ましい。
一方、除去ガスの吐出圧力及び流量の上限に特に制限はないが、ワイピングガスへの干渉を抑制するためには、除去ガスの吐出圧力を0.5MPa以下、除去ガスの流量を700Nm/分以下とすることが好ましい。
なお、除去ガスの吐出圧力の下限は0.18MPa以上とすることがさらに好ましく、除去ガスの吐出圧力の上限は0.30MPa以下とすることがさらに好ましい。また、除去ガスの流量の下限は350Nm/分以上とすることがさらに好ましく、除去ガスの流量の上限は450Nm/分以下とすることがさらに好ましい。
【0030】
また、走行する鋼板Sが幅方向に移動してパンチ穴Hの幅方向位置が変動するおそれがあることから、除去ガス噴射手段22による除去ガスの噴射幅Wは200mm以上とすることが好ましい。
本実施形態では、図4に示すように、ワイピングノズル18が鋼板Sの幅よりも幅広に配置されており、除去ガス噴射手段22のノズルが鋼板Sの幅方向中央部に配置されている。そして、除去ガス噴射手段22のノズルの幅(除去ガスの噴射幅)Wが200mm以上とされている。ここで、除去ガス噴射手段22のノズルの個数に特に制限はなく、噴射幅Wが確保できる構成であればよい。
【0031】
以上のような構成とされた本実施形態であるワイピングノズル目詰防止装置20、及び、ワイピングノズルの目詰防止方法によれば、溶接部トラッキング情報取得部21の情報に基づいて、パンチ穴Hがめっき浴からワイピングノズル18間を通過する際に、パンチ穴Hに向けて除去ガスを噴射し、パンチ穴Hに付着した溶融亜鉛Zを除去する構成とされているので、ワイピングノズル18の目詰を防止することが可能となる。これにより、ワイピングノズル18の目詰に起因した外観不良の発生を抑制することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態において、除去ガス噴射手段22が、ワイピングノズル18よりもめっき浴の浴面から離間した位置に配設されており、本実施形態では、めっき浴を通過した鋼板Sが鉛直方向上方に向けて引き出されており、除去ガス噴射手段22は、ワイピングノズル18の上方に配設されている場合には、ワイピングノズル18をめっき浴の浴面に近接して配置することが可能となり、めっき浴が酸化しやすい元素を含む場合であっても、鋼板Sに付着した溶融金属が酸化する前に、ワイピングノズル18によってめっき付着量を精度良く調整することが可能となる。
【0033】
さらに、本実施形態において、除去ガス噴射手段22は、除去ガスの噴射角度θを変更可能な構成とされている場合には、噴射角度θをワイピングノズル18の間を溶接部30が通過する直前に、パンチ穴Hに向けて除去ガスを噴射できるように設定することができ、パンチ穴Hがワイピングノズル18の間を通過する前に、パンチ穴Hに付着した溶融金属を除去することができ、ワイピングノズル18の目詰を防止することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態において、除去ガスの噴射角度θ(鉛直方向上方に向けて引き出された鋼板Sとのなす角度θ)は、45°以上80°以下の範囲内とすることで、パンチ穴Hに付着した溶融金属を的確に除去することが可能となる。
さらに、本実施形態において、除去ガス噴射手段22の先端位置を、鉛直方向上方に向けて引き出された鋼板Sからの水平距離L1を100mm以上、かつ、ワイピングノズル18の噴射口からの鉛直方向距離L2を120mm以上とすることにより、他の部材との干渉を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態において、除去ガスの吐出圧力を0.1MPa以上0.5MPa以下の範囲内とし、除去ガス噴射手段22から噴射される除去ガスの流量を230Nm/分以上700Nm/分以下の範囲内とした場合には、パンチ穴Hがワイピングノズル18の間を通過する前に、パンチ穴Hに付着した溶融金属を安定して除去することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の実施形態であるワイピングノズル目詰防止装置、及び、ワイピングノズルの目詰防止方法について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、除去ガス噴射手段22が、ワイピングノズル18よりもめっき浴の浴面から離間した位置に配設されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、図5に示すように、ワイピングノズル18とめっき浴の浴面との間に、除去ガス噴射手段22を配設してもよい。
【実施例
【0037】
以下に、本発明の効果を確認すべく実施した実験結果について説明する。
上述したワイピングノズル目詰防止装置を備えた溶融亜鉛めっき設備を用いて鋼板Sの表面に溶融亜鉛めっき層を形成した。
比較例においては、上述のワイピングノズル目詰防止装置を使用しなかった。
本発明例においては、ワイピングノズル目詰防止装置を用いて、パンチ穴がめっき浴からワイピングノズル間を通過する際に、パンチ穴に向けて除去ガスを噴射し、前記パンチ穴に付着した溶融金属を除去した。
【0038】
比較例と本発明例において、それぞれ約10000tonの鋼板にめっき処理を実施し、パンチ穴起因の目詰による外観不良の発生量と発生率を評価した。なお、パンチ穴起因の目詰については、鋼板の溶接部または溶接部近傍において幅方向中央部で発生した外観不良を「パンチ穴起因の目詰による外観不良」として評価した。評価結果を図6に示す。
【0039】
ワイピングノズル目詰防止装置を使用した本発明例においては、ワイピングノズル目詰防止装置を使用しなかった比較例に比べて、パンチ穴起因の目詰による外観不良の発生量及び発生率が大きく低下していることが確認された。
【0040】
以上のことから、本発明によれば、溶接部または溶接部近傍に形成したパンチ穴がワイピングノズルの間を通過する際にも、前記ワイピングノズルの目詰まりを防止し、外観不良の発生を抑制して高品質な溶融金属めっき鋼板を製造することが可能なワイピングノズル目詰防止装置、及び、ワイピングノズルの目詰防止方法を提供可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0041】
10 溶融金属めっき設備
18 ワイピングノズル
20 ワイピングノズル目詰防止装置
22 除去ガス噴射手段
23 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6