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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】バッテリユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20250416BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250416BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20250416BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20250416BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20250416BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250416BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/651
H01M10/643
H01M10/647
H01M10/625
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024573776
(86)(22)【出願日】2024-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2024034402
【審査請求日】2024-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2023170848
(32)【優先日】2023-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三日月 豊
(72)【発明者】
【氏名】三宅 恭平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博司
(72)【発明者】
【氏名】河内 毅
(72)【発明者】
【氏名】上野 晋
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-130416(JP,A)
【文献】特開2021-68522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60-10/667
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリユニットであって、
バッテリセルが収容されるバッテリトレイと、
前記バッテリトレイの外側で前記バッテリトレイの底板に対向するように配置される天板と、前記天板の外周に配置され、前記底板に接合されるフランジと、前記天板を全周にわたって前記フランジに接続し、前記バッテリトレイ及び前記天板とともに冷却液が供給される空間を形成する周壁と、前記冷却液を前記空間に導入するための導入口と、前記冷却液を前記空間から排出するための排出口と、を含み、金属板で形成される冷却部材と、
前記冷却部材の長手方向の両側で前記冷却部材に重ねられて接合され、それぞれ金属板で形成される補強部材と、
を備え、
前記冷却部材は、さらに、
前記天板と前記周壁との間に介在し、前記長手方向に延在する第1稜線部と、
前記天板に対して前記第1稜線部の反対側で前記天板と前記周壁との間に介在し、前記長手方向に延在する第2稜線部と、
前記周壁に対して前記第1稜線部の反対側で前記周壁と前記フランジとの間に介在し、前記長手方向に延在する第3稜線部と、
前記周壁に対して前記第2稜線部の反対側で前記周壁と前記フランジとの間に介在し、前記長手方向に延在する第4稜線部と、
を含み、
前記補強部材の各々は、前記第1稜線部、前記第2稜線部、前記第3稜線部、及び前記第4稜線部のそれぞれに連続するように形成される4つの第5稜線部を含み、
前記第5稜線部の各々は、前記バッテリトレイの外側まで前記長手方向に延在する、バッテリユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリユニットであって、
前記天板は、前記長手方向に延在する第1ビードを含み、
前記補強部材は、さらに、前記第1ビードに連続するように形成され、前記長手方向に延在する第2ビードを含む、バッテリユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のバッテリユニットであって、
前記冷却部材は、アルミニウム系めっき鋼板で形成されている、バッテリユニット。
【請求項4】
請求項1に記載のバッテリユニットであって、
前記冷却部材は、亜鉛系めっき鋼板で形成され、
前記亜鉛系めっき鋼板の表面に化成処理皮膜が形成されている、バッテリユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のバッテリユニットであって、
前記冷却部材は、130HV以上のビッカース硬さを有する、バッテリユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車には、複数のバッテリセルを含むバッテリユニットが搭載されている。電気自動車では、電気のみで走行可能な距離(航続距離)を確保するために大容量のバッテリユニットが用いられる。
【0003】
バッテリユニットには、バッテリセルを適切な温度下で安定して動作させるため、バッテリセルの冷却機能が求められる。例えば、特許文献1には、バッテリパックと、冷却部材とを備えるバッテリユニットが開示されている。バッテリパックは、バッテリセルと、ハウジング部(バッテリトレイ)とを含む。冷却部材は、バッテリトレイの底板の外側に設けられている。冷却部材は、バッテリトレイの底板に対向する冷却液用流路を含む。特許文献1では、冷却液に対する耐食性を確保するため、冷却液用流路がアルミニウム系めっき鋼板で形成されている。
【0004】
特許文献2にも、バッテリトレイの底板の外側に冷却部材を有するバッテリユニットが開示されている。特許文献2において、冷却部材は、特許文献1と同様、バッテリトレイの底板に対向する冷却液用流路を含む。特許文献2では、冷却液に対する耐食性を確保するため、冷却液用流路が亜鉛系めっき鋼板で形成されている。亜鉛系めっき鋼板の表面には、化成処理皮膜として無機皮膜又は樹脂皮膜が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2022/185840号
【文献】国際公開第2022/185849号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば電気自動車等にバッテリユニットが搭載される場合、バッテリユニットには、衝突時にバッテリセルを保護する機能(耐衝突性能)も要求される。ただし、一般的なバッテリユニットにおいて、耐衝突性能を確保するための部材は、冷却部材から分離して設けられる。例えば、バッテリトレイの底板に設けられた冷却部材から離れて、耐衝突性能を確保するための骨格部材がバッテリトレイ内に設けられる。したがって、バッテリユニットにおいて、部品点数の増加や構造の複雑化が生じることがある。
【0007】
本開示は、バッテリトレイの底板に設けられた冷却部材に対し、耐衝突性能を付与することができるバッテリユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るバッテリユニットは、バッテリトレイと、冷却部材と、補強部材とを備える。バッテリトレイには、バッテリセルが収容される。冷却部材は、天板と、フランジと、周壁と、導入口と、排出口とを含む。天板は、バッテリトレイの外側でバッテリトレイの底板に対向するように配置される。フランジは、天板の外周に配置され、底板に接合される。周壁は、天板をその全周にわたってフランジに接続する。周壁は、バッテリトレイ及び天板とともに、冷却液が供給される空間を形成する。導入口は、冷却液を空間に導入するために用いられる。排出口は、冷却液を空間から排出するために用いられる。冷却部材は、金属板で形成される。補強部材は、冷却部材の長手方向の両側で冷却部材に重ねられて接合される。補強部材は、それぞれ金属板で形成される。冷却部材は、さらに、第1稜線部と、第2稜線部と、第3稜線部と、第4稜線部とを含む。第1稜線部は、天板と周壁との間に介在し、冷却部材の長手方向に延在する。第2稜線部は、天板に対して第1稜線部の反対側で天板と周壁との間に介在し、冷却部材の長手方向に延在する。第3稜線部は、周壁に対して第1稜線部の反対側で周壁とフランジとの間に介在し、冷却部材の長手方向に延在する。第4稜線部は、周壁に対して第2稜線部の反対側で周壁とフランジとの間に介在し、冷却部材の長手方向に延在する。補強部材の各々は、4つの第5稜線部を含む。第5稜線部は、第1稜線部、第2稜線部、第3稜線部、及び第4稜線部のそれぞれに連続するように形成される。第5稜線部の各々は、バッテリトレイの外側まで冷却部材の長手方向に延在する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るバッテリユニットによれば、バッテリトレイの底板に設けられた冷却部材に対し、耐衝突性能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係るバッテリユニットの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るバッテリユニットの別の斜視図である。
図3図3は、図1及び図2に示すバッテリユニットに含まれる冷却部材の平面図である。
図4図4は、図1及び図2に示すバッテリユニットの一部を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係るバッテリユニットは、バッテリトレイと、冷却部材と、補強部材とを備える。バッテリトレイには、バッテリセルが収容される。冷却部材は、天板と、フランジと、周壁と、導入口と、排出口とを含む。天板は、バッテリトレイの外側でバッテリトレイの底板に対向するように配置される。フランジは、天板の外周に配置され、底板に接合される。周壁は、天板をその全周にわたってフランジに接続する。周壁は、バッテリトレイ及び天板とともに、冷却液が供給される空間を形成する。導入口は、冷却液を空間に導入するために用いられる。排出口は、冷却液を空間から排出するために用いられる。冷却部材は、金属板で形成される。補強部材は、冷却部材の長手方向の両側で冷却部材に重ねられて接合される。補強部材は、それぞれ金属板で形成される。冷却部材は、さらに、第1稜線部と、第2稜線部と、第3稜線部と、第4稜線部とを含む。第1稜線部は、天板と周壁との間に介在し、冷却部材の長手方向に延在する。第2稜線部は、天板に対して第1稜線部の反対側で天板と周壁との間に介在し、冷却部材の長手方向に延在する。第3稜線部は、周壁に対して第1稜線部の反対側で周壁とフランジとの間に介在し、冷却部材の長手方向に延在する。第4稜線部は、周壁に対して第2稜線部の反対側で周壁とフランジとの間に介在し、冷却部材の長手方向に延在する。補強部材の各々は、4つの第5稜線部を含む。第5稜線部は、第1稜線部、第2稜線部、第3稜線部、及び第4稜線部のそれぞれに連続するように形成される。第5稜線部の各々は、バッテリトレイの外側まで冷却部材の長手方向に延在する(第1の構成)。
【0012】
第1の構成に係るバッテリユニットでは、バッテリトレイの外側から当該バッテリトレイの底板に対して冷却部材が接合され、バッテリトレイと冷却部材とによって空間が形成されている。この空間内に冷却部材の導入口を介して冷却液が供給されることにより、バッテリトレイ内のバッテリセルを冷却することができる。
【0013】
第1の構成に係るバッテリユニットは、バッテリトレイ及び冷却部材に加え、補強部材を備えている。補強部材は、冷却部材の長手方向の両側で冷却部材に重ねられ、且つ冷却部材に接合されている。補強部材の各々には、冷却部材に設けられた第1~第4稜線部のそれぞれに連続するように第5稜線部が形成されている。第5稜線部は、冷却部材の第1~第4稜線部からバッテリトレイの外側まで冷却部材の長手方向に延在する。言い換えると、冷却部材の第1~第4稜線部は、各補強部材の第5稜線部によってバッテリトレイの外側まで延長されている。これにより、冷却部材の長手方向からバッテリユニットに衝突荷重が入力されたとき、冷却部材の第1~第4稜線部及び各補強部材の第5稜線部によって衝突荷重が支持される。したがって、冷却部材の変形が抑制され、バッテリトレイ内のバッテリセルに損傷が生じにくい。このように、第1の構成に係るバッテリユニットによれば、バッテリトレイの底板に設けられた冷却部材に対し、耐衝突性能を付与することができる。
【0014】
第1の構成に係るバッテリユニットにおいて、天板は、第1ビードを含んでいてもよい。第1ビードは、冷却部材の長手方向に延在する。この場合、補強部材は、さらに第2ビードを含むことができる。第2ビードは、第1ビードに連続するように形成され、冷却部材の長手方向に延在する(第2の構成)。
【0015】
第2の構成では、冷却部材の天板に第1ビードが形成され、補強部材に第2ビードが形成されている。補強部材の第2ビードは、冷却部材の第1ビードから冷却部材の長手方向に延在している。この場合、冷却部材の長手方向からバッテリユニットに衝突荷重が入力されたとき、冷却部材及び両補強部材の稜線部に加え、冷却部材及び補強部材のビードによって衝突荷重を支持することができる。したがって、冷却部材の変形がより生じにくくなる。
【0016】
第2の構成において、冷却部材の天板には、第1ビードが形成されている。これにより冷却液用の空間の断面積が小さくなり、空間内における冷却液の流速を高めることができる。したがって、バッテリトレイ内のバッテリセルがより冷却されやすくなる。
【0017】
第1又は第2の構成に係るバッテリユニットにおいて、冷却部材は、アルミニウム系めっき鋼板で形成されていてもよい(第3の構成)。
【0018】
冷却部材によって形成される空間には、冷却液が供給される。そのため、冷却部材は、冷却液に対する耐食性を有することが好ましい。そこで、第3の構成では、冷却部材がアルミニウム系めっき鋼板で形成されている。これにより、冷却部材は、冷却液に対して高い耐食性を有することができる。
【0019】
第1又は第2の構成に係るバッテリユニットにおいて、冷却部材は、亜鉛系めっき鋼板で形成されていてもよい。この場合、亜鉛系めっき鋼板の表面に、化成処理皮膜が形成されていることが好ましい(第4の構成)。
【0020】
第4の構成において、冷却部材は、その表面に化成処理皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板で形成されている。これにより、冷却部材は、冷却液に対して高い耐食性を有することができる。
【0021】
第1から第4のいずれかの構成に係るバッテリユニットにおいて、冷却部材は、130HV以上のビッカース硬さを有することができる(第5の構成)。
【0022】
第5の構成では、冷却部材のビッカース硬さが130HV以上となっている。これにより、冷却部材により高い耐衝突性能を持たせることができる。
【0023】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。これらの図面において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
【0024】
[バッテリユニットの構造]
図1は、本実施形態に係るバッテリユニット100の斜視図である。図2は、図1と異なる方向から見たバッテリユニット100の斜視図である。バッテリユニット100は、例えば電気自動車に搭載される。
【0025】
図1及び図2を参照して、バッテリユニット100は、バッテリトレイ10と、複数の冷却部材20と、複数の補強部材30とを含む。
【0026】
図1を参照して、バッテリトレイ10は、全体として凹の形状を有している。バッテリトレイ10は、底板11と、周壁12とを含む。底板11は、例えば、バッテリトレイ10の平面視で矩形状を有する。周壁12は、底板11の周縁に連続して設けられる。周壁12は、底板11と反対側で開口している。図示を省略するが、周壁12の開口には、蓋体が取り付けられていてもよい。
【0027】
バッテリトレイ10は、複数のバッテリセル40を収容する。本実施形態では、バッテリトレイ10内に複数のバッテリモジュール50が収容されている。バッテリモジュール50の各々は、モジュール化された2以上のバッテリセル40を含む。ただし、バッテリユニット100において、バッテリセル40はモジュール化されていなくてもよい。バッテリセル40の各々は、例えばリチウムイオン電池セルである。バッテリセル40の各々は、角型セル又は円筒型セルであってもよいし、パウチ型セルであってもよい。
【0028】
図1の例において、バッテリモジュール50は、複数の取付部材60を介し、バッテリトレイ10の底板11に取り付けられている。取付部材60は、それぞれ長尺状を有し、バッテリトレイ10内において並列に配置されている。バッテリモジュール50は、取付部材60の長手方向に沿って配列される。バッテリモジュール50は、取付部材60に対して、公知の締結方法によって締結されてもよい。取付部材60は、バッテリトレイ10の底板11に対し、例えばスポット溶接等によって接合されていてもよい。
【0029】
図2を参照して、複数の冷却部材20は、バッテリトレイ10の外に配置されている。冷却部材20は、バッテリモジュール50(図1)の反対側で、バッテリトレイ10の底板11に取り付けられている。冷却部材20は、それぞれ長尺状を有し、並列に配置されている。バッテリユニット100が電気自動車に搭載された状態で、冷却部材20は、それぞれ車体の左右方向に延びていてもよい。冷却部材20は、その長手方向の両端部がバッテリトレイ10の底板11の外側に突出している。冷却部材20は、それぞれ金属板で形成されている。
【0030】
冷却部材20の各々は、天板21と、フランジ22と、周壁23と、稜線部241,242,243,244とを含む。
【0031】
図3は、冷却部材20の平面図である。図2及び図3を参照して、天板21は、冷却部材20の長手方向に延在している。本実施形態において、天板21は、冷却部材20の平面視で略矩形状を有している。ただし、天板21は、冷却部材20の平面視で、例えばオーバルトラック形状等、他の形状を有していてもよい。バッテリユニット100を冷却部材20側から見て、天板21は、バッテリトレイ10の底板11の範囲内に配置されている。
【0032】
本実施形態において、天板21は、少なくとも1つのビード211を含んでいる。ビード211は、冷却部材20の長手方向に延在する。ビード211は、例えば、冷却部材20の内側に凹の形状を有する。ビード211は、冷却部材20の外側に凸の形状を有していてもよい。本実施形態において、天板21には、複数のビード211が設けられている。
【0033】
フランジ22は、天板21の外周に配置される。すなわち、フランジ22は、冷却部材20の平面視で天板21を囲むように配置される。フランジ22は、冷却部材20の外周部を構成する。周壁23は、天板21をその全周にわたってフランジ22に接続している。
【0034】
稜線部241は、天板21と周壁23との間に介在する。稜線部242は、天板21に対して稜線部241の反対側で、天板21と周壁23との間に介在する。稜線部241,242は、それぞれ、天板21に隣接して設けられ、天板21を周壁23に接続している。稜線部241,242は、いずれも天板21と周壁23との間のコーナー部である。稜線部241,242は、それぞれ冷却部材20の長手方向に延在している。
【0035】
稜線部243は、周壁23に対して稜線部241の反対側で、周壁23とフランジ22との間に介在する。稜線部244は、周壁23に対して稜線部242の反対側で、周壁23とフランジ22との間に介在する。稜線部243,244は、それぞれ、周壁23に隣接して設けられ、周壁23をフランジ22に接続している。稜線部243,244は、いずれも周壁23とフランジ22との間のコーナー部である。稜線部243,244は、それぞれ冷却部材20の長手方向に延在している。冷却部材20が電気自動車に組み込まれている状態において、稜線部241,242,243,244は、実質的に車体の左右方向に延在することができる。
【0036】
冷却部材20は、さらに、稜線部245,246,247,248を含む。冷却部材20が電気自動車に組み込まれている状態において、稜線部245,246,247,248は、実質的に車体の前後方向に延在する。稜線部245は、冷却部材20の長手方向の一端側で、稜線部241,242を接続している。稜線部246は、冷却部材20の長手方向の他端側で、稜線部241,242を接続している。稜線部245,246は、それぞれ、天板21と周壁23との間に介在する。稜線部245,246は、稜線部241,242と同様、天板21と周壁23との間のコーナー部である。
【0037】
稜線部247は、冷却部材20の長手方向の一端側で、稜線部243,244を接続している。稜線部248は、冷却部材20の長手方向の他端側で、稜線部243,244を接続している。稜線部247,248は、それぞれ、周壁23とフランジ22との間に介在する。稜線部247,248は、稜線部243,244と同様、周壁23とフランジ22との間のコーナー部である。
【0038】
冷却部材20の各々は、さらに、冷却液用の導入口25及び排出口26を含んでいる。導入口25は、冷却液を冷却部材20内に導入するための孔である。排出口26は、冷却液を冷却部材20から排出するための孔である。冷却液としては、例えば、有機成分を含むロングライフクーラント(LLC)水溶液が使用される。
【0039】
本実施形態において、導入口25及び排出口26は、天板21に形成されている。導入口25及び排出口26は、天板21をその板厚方向に貫通する。導入口25は、冷却部材20の長手方向において、天板21の一端部に形成されている。排出口26は、冷却部材20の長手方向において、天板21の他端部に形成されている。ただし、導入口25及び排出口26の位置は、本実施形態の例に限定されるものではない。
【0040】
図2に示すように、補強部材30は、少なくとも1つの冷却部材20に対し、当該冷却部材20の長手方向の両側で重ねられて接合される。補強部材30は、冷却部材20の長手方向の両側で、フランジ22及び天板21のそれぞれの一部を覆っている。補強部材30の各々は、冷却部材20に対してバッテリトレイ10の反対側から重ねられる。ただし、図2では、説明の便宜上、補強部材30の1つを冷却部材20から離した状態で示している。バッテリユニット100が電気自動車に搭載される場合、補強部材30は、例えばブラケット(図示省略)等を介し、冷却部材20の長手方向の両端部とともに車体に締結される。
【0041】
本実施形態では、補強部材30の各々が、複数の冷却部材20にわたって重ねられている。より具体的には、並列に配置された複数の冷却部材20の長手方向の一端側で、これらの冷却部材20に交差するように1の補強部材30が延びている。また、並列に配置された複数の冷却部材20の長手方向の他端側で、これらの冷却部材20に交差するように他の補強部材30が延びている。バッテリユニット100が電気自動車に搭載された状態で、補強部材30は、例えば車体の前後方向に延びている。ただし、補強部材30は、冷却部材20のそれぞれに対応するように複数に分割されていてもよい。補強部材30は、それぞれ金属板で形成されている。
【0042】
補強部材30の各々は、稜線部31,32,33,34を含んでいる。補強部材30において、稜線部31,32,33,34は、冷却部材20ごとに設けられている。稜線部31,32,33,34は、それぞれ、冷却部材20の稜線部241,242,243,244に連続するように補強部材30に形成される。稜線部31,32,33,34は、それぞれ、補強部材30において平坦部間のコーナー部を形成する部分である。
【0043】
稜線部31,32は、それぞれ、冷却部材20の天板21側の稜線部241,242を延長するように冷却部材20の長手方向に延在する。稜線部33,34は、それぞれ、冷却部材20のフランジ22側の稜線部243,244を延長するように冷却部材20の長手方向に延在する。稜線部31,32,33,34は、冷却部材20の稜線部241,242,243,244から、バッテリトレイ10の外側まで冷却部材20の長手方向に延在する。稜線部31,32,33,34は、冷却部材20の長手方向において補強部材30の端縁まで延びていてもよい。
【0044】
本実施形態において、補強部材30の各々は、さらに、少なくとも1つのビード35を含む。本実施形態では、冷却部材20の複数のビード211に対応して、複数のビード35が補強部材30に設けられている。ビード35の各々は、冷却部材20のビード211に連続するように補強部材30に形成されている。ビード35は、冷却部材20のビード211を延長するように冷却部材20の長手方向に延在する。ビード35は、冷却部材20の長手方向においてバッテリトレイ10の外側まで延在することが好ましい。
【0045】
本実施形態において、一方の補強部材30は、各冷却部材20の導入口25を覆うように設けられる。この場合、この補強部材30には、冷却部材20の導入口25に対応する位置に冷却液用の導入口(図示省略)が設けられる。他方の補強部材30は、各冷却部材20の排出口26(図3)を覆うように設けられている。この場合、この補強部材30には、冷却部材20の排出口26に対応する位置に冷却液用の排出口(図示省略)が設けられる。ただし、各冷却部材20において、補強部材30で覆われない部分に導入口25及び排出口26が形成されているときは、補強部材30に導入口及び排出口を設ける必要はない。
【0046】
図4は、バッテリユニット100を冷却部材20の長手方向に対して垂直な平面で切断した図(横断面図)である。図4では、1の冷却部材20と、この冷却部材20に接合された補強部材30とを示している。
【0047】
図4に示すように、冷却部材20は、概略ハット状の横断面を有している。具体的には、天板21、フランジ22、及び周壁23によって、概略ハット状の横断面が形成されている。天板21は、バッテリトレイ10の底板11に対向するように配置されている。天板21は、底板11に対して隙間を空けて対向する。フランジ22は、液密性を有する態様でバッテリトレイ10の底板11に対して接合される。したがって、バッテリトレイ10と、冷却部材20の天板21及び周壁23とにより、冷却液が供給される空間27が形成される。
【0048】
バッテリトレイ10と冷却部材20との接合には、シーラー70が用いられてもよい。シーラー70は、例えば樹脂を主成分とする塗布剤である。シーラー70としては、液密性を確保するためのシーラーとして公知のものを使用することができる。
【0049】
バッテリトレイ10の底板11及び冷却部材20のフランジ22は、シーラー70と、スポット溶接又は機械接合とを併用して接合されてもよい。機械接合としては、バッテリトレイ10の底板11及び冷却部材20のフランジ22の部分的なかしめ加工による接合や、リベット等を用いた接合等が挙げられる。あるいは、バッテリトレイ10の底板11及び冷却部材20のフランジ22は、レーザ溶接やシーム溶接等の連続溶接、ろう付け、又は摩擦拡散接合によって接合されていてもよい。バッテリトレイ10の底板11及び冷却部材20のフランジ22は、接着剤によって接合されていてもよい。シーラー70が接着剤として機能する場合は、シーラー70のみによってバッテリトレイ10の底板11及び冷却部材20のフランジ22を接合することもできる。
【0050】
図4に示すように、冷却部材20には、補強部材30が接合されている。バッテリユニット100の横断面において、補強部材30は、冷却部材20の天板21、周壁23、及びフランジ22に沿う形状を有している。補強部材30は、例えばスポット溶接によって天板21及びフランジ22に接合される。この場合、天板21は、スポット溶接のための平坦部を含む。
【0051】
冷却部材20の稜線部241,242は、それぞれ、天板21の平坦部と周壁23とを直接的に連結するコーナー部である。バッテリユニット100の横断面視で、稜線部241,242は、それぞれ冷却部材20の外側に凸の曲線状を有する。稜線部241,242は、バッテリユニット100の横断面視で円弧状を有していてもよい。冷却部材20の稜線部241,242の曲率半径(曲げ内側)は、例えば15mm以下である。稜線部241,242の曲率半径(曲げ内側)は、2mm以上であってもよい。
【0052】
バッテリユニット100のうち補強部材30が冷却部材20の天板21及びフランジ22と接合される部分の横断面において、補強部材30の稜線部31,32は、それぞれ、冷却部材20の稜線部241,242に重なっている。バッテリユニット100の横断面視で、稜線部31,32は、それぞれ、冷却部材20の稜線部241,242に沿って凸曲線状を有している。補強部材30は冷却部材20に対して外側から重ねられているため、稜線部31,32の曲げ内側の曲率半径は、冷却部材20の稜線部241,242の曲げ内側の曲率半径よりも若干大きい。稜線部31,32の曲率半径(曲げ内側)は、例えば15mm以下である。稜線部31,32の曲率半径(曲げ内側)は、3mm以上であってもよい。
【0053】
冷却部材20の稜線部243,244は、それぞれ、周壁23とフランジ22とを直接的に連結するコーナー部である。バッテリユニット100の横断面視で、稜線部243,244は、それぞれ冷却部材20の内側に凹の曲線状を有する。稜線部243,244は、バッテリユニット100の横断面視で円弧状を有していてもよい。稜線部243,244の曲率半径(曲げ内側)は、例えば15mm以下である。稜線部243,244の曲率半径(曲げ内側)は、3mm以上であってもよい。
【0054】
バッテリユニット100のうち補強部材30が冷却部材20の天板21及びフランジ22と接合される部分の横断面において、補強部材30の稜線部33,34は、それぞれ、冷却部材20の稜線部243,244に重なっている。バッテリユニット100の横断面視で、稜線部33,34は、それぞれ、冷却部材20の稜線部243,244に沿って凹曲線状を有している。補強部材30は冷却部材20に対して外側から重ねられているため、稜線部33,34の曲げ内側の曲率半径は、冷却部材20の稜線部243,244の曲げ内側の曲率半径よりも若干小さい。稜線部33,34の曲率半径(曲げ内側)は、例えば15mm以下である。稜線部33,34の曲率半径(曲げ内側)は、2mm以上であってもよい。
【0055】
本実施形態の例において、冷却部材20の天板21は、複数のビード211を含んでいる。ビード211の各々は、少なくとも1つの稜線部211aを有することが好ましい。稜線部211aは、他の稜線部241,242,243,244と同様、平坦部同士を連結するコーナー部である。バッテリユニット100の横断面視で、稜線部211aは、冷却部材20の外側に凸、又は冷却部材20の内側に凹の曲線状を有することができる。稜線部211aは、冷却部材20の長手方向に延在する。
【0056】
バッテリユニット100のうち補強部材30が冷却部材20の天板21及びフランジ22と接合される部分の横断面において、冷却部材20のビード211には、それぞれ補強部材30のビード35が重ねられている。バッテリユニット100の横断面視で、補強部材30のビード35は、冷却部材20のビード211に沿う形状を有している。冷却部材20のビード211に稜線部211aが存在する場合、ビード35も稜線部351を有する。稜線部351は、冷却部材20のビード211の稜線部211aに対応して凸曲線状又は凹曲線状を有し、冷却部材20の長手方向に延在する。稜線部351は、バッテリトレイ10の外側まで冷却部材20の長手方向に延在することができる。
【0057】
本実施形態の例では、バッテリトレイ10の底板11に凹凸が設けられている。これにより、バッテリモジュール50(図1)の重量による底板11の撓みが抑制される。しかしながら、底板11は、全体にわたって平板状であってもよい。
【0058】
[バッテリユニットの材質]
冷却部材20及び補強部材30は、その強度を確保するため、典型的には鋼板で形成される。冷却部材20及び補強部材30は、例えば、鋼板のプレス成形によって成形することができる。冷却部材20及び補強部材30の板厚は、例えば0.4mm以上2.0mm以下であり、好ましくは1.0mm以上1.8mm以下である。各補強部材30の板厚は、各冷却部材20の板厚よりも大きいことが好ましい。しかしながら、各補強部材30の板厚は、各冷却部材20の板厚以下であってもよい。
【0059】
冷却部材20の各々は、冷却液に対する耐食性を確保する観点から、アルミニウム系めっき鋼板で形成されていてもよい。アルミニウム系めっき鋼板は、母材鋼板と、母材鋼板上に形成されたアルミニウム(Al)系めっき層とを含む鋼板である。
【0060】
Al系めっき層は、Alを含有するめっき層である。Al系めっき層は、例えば、質量%で70%以上のAlを含有する。Al系めっき層は、好ましくは、質量%でAl:70~98%及びSi:2~15%を含有する、2成分系又は多成分系のめっき層である。アルミニウム系めっき鋼板の加工性及び耐食性をより高める観点から、Al系めっき層のSi含有量は、質量%で3~15%であることがさらに好ましい。Al系めっき層は、冷却部材20において、少なくとも空間27側に位置する面に形成される。Al系めっき層は、冷却部材20の両面に形成されていてもよい。
【0061】
Al系めっき層は、不純物元素として、微量のFe、Ni、Co等を含有することがある。Al系めっき層には、必要に応じて、Mg、Sn、ミッシュメタル、Sb、Zn、Cr、W、V、Mo等が添加されていてもよい。特に限定されるものではないが、Al系めっき層は、例えば、溶融フラックスめっき、ゼンジマー法やオールラジアント法等によって形成される溶融めっき、電気めっき、又は蒸着めっき等であってもよい。
【0062】
アルミニウム系めっき鋼板の耐食性をさらに高めるため、アルミニウム系めっき鋼板の表面に化成処理皮膜が形成されていてもよい。化成処理皮膜は、冷却部材20において、少なくとも空間27側に位置する面に形成される。化成処理皮膜は、冷却部材20の両面に形成されていてもよい。
【0063】
化成処理皮膜は、Zr系成分、Ti系成分、又はSi系成分を主成分として含有する皮膜である。すなわち、化成処理皮膜は、Zr系成分、Ti系成分、又はSi系成分を質量%で50%以上含有する。化成処理皮膜には、有機成分が含まれていてもよい。アルミニウム系めっき鋼板に適用される化成処理皮膜としては、例えば、特許文献1に記載されているものを使用することができる。化成処理皮膜は、例えば、Zr系、Ti系、又はSi系化成処理液(皮膜処理液)を公知の方法でアルミニウム系めっき鋼板に塗布し、焼付け乾燥することで形成することができる。
【0064】
冷却部材20は、アルミニウム系めっき鋼板に代えて、亜鉛系めっき鋼板で形成されていてもよい。亜鉛系めっき鋼板は、母材鋼板と、母材鋼板上に形成された亜鉛(Zn)系めっき層とを含む鋼板である。Zn系めっき層は、Znを含有するめっき層である。Zn系めっき層は、冷却部材20において、少なくとも空間27側に位置する面に形成される。Zn系めっき層は、冷却部材20の両面に形成されていてもよい。
【0065】
亜鉛系めっき鋼板としては、例えば、亜鉛めっき鋼板、亜鉛-ニッケルめっき鋼板、亜鉛-鉄めっき鋼板、亜鉛-クロムめっき鋼板、亜鉛-アルミニウムめっき鋼板、亜鉛-チタンめっき鋼板、亜鉛-マグネシウムめっき鋼板、亜鉛-マンガンめっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウムめっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム-シリコンめっき鋼板等が挙げられる。これらのめっき鋼板において、Zn系めっき層には、少量の異種金属元素又は不純物元素として、Co、Mo、W、Ni、Ti、Cr、Al、Mn、Fe、Mg、Pb、Bi、Sb、Sn、Cu、Cd、As等が含有されていてもよいし、シリカ、アルミナ、チタニア等の無機物が分散されていてもよい。
【0066】
Zn系めっき層は、他のめっき層と組み合わせて使用されてもよい。すなわち、亜鉛系めっき鋼板は、Zn系めっき層と、例えば鉄めっき、鉄-リンめっき、ニッケルめっき、又はコバルトめっき等のめっき層とを組み合わせた複層めっきを有することができる。特に限定されるものではないが、Zn系めっき層及び他のめっき層の形成方法としては、例えば、電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法、分散めっき法、真空めっき法等を挙げることができる。
【0067】
亜鉛系めっき鋼板の表面には、化成処理皮膜が形成されている。化成処理皮膜は、冷却部材20において、少なくとも空間27側に位置する面に形成される。化成処理皮膜は、冷却部材20の両面に形成されていてもよい。
【0068】
化成処理皮膜は、無機皮膜又は樹脂皮膜である。無機皮膜は、Si系成分又はZr系成分を主成分として含有する皮膜である。すなわち、無機皮膜は、Si系成分又はZr系成分を質量%で50%以上含有する。無機皮膜には、有機成分が含まれていてもよい。亜鉛系めっき鋼板には、例えば、特許文献2に記載されている、化成処理皮膜としての無機皮膜又は樹脂皮膜を使用することができる。
【0069】
特に限定されるものではないが、化成処理皮膜は、無機系又は樹脂系化成処理液(皮膜処理液)を公知の方法で亜鉛系めっき鋼板に塗布し、焼付け乾燥することで形成することができる。亜鉛系めっき鋼板と化成処理皮膜との好ましい組み合わせは、例えば、亜鉛-アルミニウム-マグネシウムめっき鋼板と、Si系成分を主成分として含む無機皮膜との組み合わせである。別の好ましい組み合わせの例として、亜鉛-アルミニウムめっき鋼板と樹脂皮膜との組み合わせも挙げられる。
【0070】
アルミニウム系めっき鋼板及び亜鉛系めっき鋼板において、母材鋼板の材質は特に限定されない。母材鋼板の材質は、例えば、Ti、Nb、B等を添加したIF鋼、Al-k鋼、Cr添加鋼、ステンレス鋼、ハイテン鋼、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼、合金鋼等であってもよい。
【0071】
アルミニウム系めっき鋼板及び亜鉛系めっき鋼板において、母材鋼板の材質は特に限定されない。母材鋼板の材質は、例えば、Ti、Nb、B等を添加したIF鋼、Al-k鋼、Cr添加鋼、ステンレス鋼、ハイテン鋼、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼、合金鋼等であってもよい。
【0072】
補強部材30は、冷却部材20と同様に、アルミニウム系めっき鋼板又は亜鉛系めっき鋼板で形成されていてもよい。補強部材30がアルミニウム系めっき鋼板又は亜鉛系めっき鋼板で形成される場合、補強部材30の表面には上述した化成処理皮膜が形成されていてもよい。しかしながら、補強部材30の材質は、冷却部材20の材質と異なっていてもよい。
【0073】
冷却部材20は、130HV以上のビッカース硬さを有することが好ましい。補強部材30も、130HV以上のビッカース硬さを有することができる。冷却部材20及び補強部材30は、それぞれ、より好ましくは170HV以上、さらに好ましくは230HV以上のビッカース硬さを有する。補強部材30のビッカース硬さは、冷却部材20のビッカース硬さよりも大きくてもよい。冷却部材20のビッカース硬さは、例えば500HV以下である。補強部材30のビッカース硬さは、例えば500HV以下である。冷却部材20及び補強部材30のビッカース硬さは、JIS Z 2244-1:2020に規定されるビッカース硬さ試験によって測定することができる。具体的には、まず、レーザ切断等により、冷却部材20及び補強部材30の任意の位置からビッカース硬さ試験に適したサイズの試験片を取得する。次に、冷却部材20及び補強部材30のそれぞれの断面が表面に配置されるように各試験片を樹脂に埋め込み、断面を研磨する。そして、この断面の板厚方向の任意の位置、例えば板厚方向の中心又はその近傍で、JIS Z 2244-1:2020に準拠し、試験力を300gf(2.9N)としてビッカース硬さを測定する。
【0074】
バッテリトレイ10の材質は、冷却部材20及び/又は補強部材30と同一であってもよいし、異なっていてもよい。バッテリトレイ10は、例えば軟鋼で形成されていてもよい。バッテリトレイ10の板厚は、通常、冷却部材20及び補強部材30の各板厚よりも小さい。バッテリトレイ10の底板11の板厚は、例えば0.4mm以上1.2mm以下であり、好ましくは0.5mm以上1.0mm以下である。
【0075】
[効果]
本実施形態に係るバッテリユニット100では、バッテリトレイ10の底板11と、各冷却部材20の天板21及び周壁23とによって、冷却液が供給される空間27が形成されている。この空間27内に導入口25から冷却液が導入され、排出口26から冷却液が排出されることにより、バッテリトレイ10内のバッテリセル40を冷却することができる。
【0076】
本実施形態に係るバッテリユニット100において、冷却部材20の各々は補強部材30によって補強されている。より具体的には、各冷却部材20の長手方向の両側で当該冷却部材20に対して補強部材30が重ねられ、接合されている。補強部材30の各々には、冷却部材20の稜線部241,242,243,244にそれぞれ連続するように、稜線部31,32,33,34が設けられている。すなわち、冷却部材20の稜線部241,242,243,244が補強部材30の稜線部31,32,33,34によってバッテリトレイ10の外側まで延長されている。これにより、冷却部材20の長手方向からバッテリユニット100に衝突荷重が入力されたとき、冷却部材20の稜線部241,242,243,244及び補強部材30の稜線部31,32,33,34によって衝突荷重が支持される。そのため、冷却部材20の変形が抑制され、バッテリトレイ10内のバッテリセル40が損傷しにくくなる。このように、本実施形態に係るバッテリユニット100によれば、バッテリトレイ10の底板11に設けられた冷却部材20に対し、耐衝突性能を付与することができる。
【0077】
冷却部材20の長手方向の両端部、すなわち、バッテリトレイ10の底板11と冷却部材20のフランジ22とが重なり合う部分は、平板状で比較的低剛性であるため、衝突荷重を受けたときに変形しやすい。しかしながら、本実施形態では、冷却部材20の長手方向の両端部が補強部材30によって被覆され、補強部材30の稜線部31,32,33,34が冷却部材20の稜線部241,242,243,244に連なるように配置されている。そのため、冷却部材20の長手方向から入力された衝突荷重は、補強部材30の稜線部31,32,33,34から冷却部材20の稜線部241,242,243,244に伝達され、これらの稜線部によって支持される。その結果、冷却部材20の長手方向の両端部での変形を抑制することができる。
【0078】
本実施形態において、各冷却部材20の天板21には、少なくとも1つのビード211が形成されている。また、各補強部材30には、冷却部材20のビード211に対応して、ビード35が形成されている。冷却部材20のビード211は、補強部材30のビード35により、例えばバッテリトレイ10の外側まで延長されている。これにより、バッテリユニット100に衝突荷重が入力されたとき、冷却部材20のビード211及び補強部材30のビード35でも衝突荷重が支持される。本実施形態のように、冷却部材20のビード211及び補強部材30のビード35が稜線部211a,351を有する場合は、衝突荷重がより支持されやすい。したがって、冷却部材20に対し、より優れた耐衝突性能を付与することができる。
【0079】
冷却部材20のビード211を設けることにより、冷却液用の空間27の断面積が小さくなり、空間27内における冷却液の流速を高めることができる。そのため、バッテリトレイ10内のバッテリセル40がより冷却されやすくなる。
【0080】
本実施形態に係るバッテリユニット100において、冷却部材20の各々は、アルミニウム系めっき鋼板で形成されていることが好ましい。少なくとも、冷却部材20の空間27側の表面には、全体にわたってAl系めっき層が設けられていることが好ましい。同様に、バッテリトレイ10も、アルミニウム系めっき鋼板で形成されていることが好ましい。少なくとも、バッテリトレイ10の空間27側の表面には、全体にわたってAl系めっき層が設けられていることが好ましい。これにより、冷却部材20及びバッテリトレイ10の冷却液による腐食が抑制されやすくなる。冷却部材20及びバッテリトレイ10の腐食が抑制されることにより、冷却部材20及びバッテリトレイ10の熱伝導率の低下や、冷却液内への冷却部材20及びバッテリトレイ10の成分の溶出が生じにくくなる。
【0081】
バッテリユニット100が電気自動車に搭載される場合、バッテリユニット100は、例えば車体の床下部分に配置され、冷却部材20が外部環境に晒される。そのため、冷却部材20がアルミニウム系めっき鋼板で形成される場合、Al系めっき層は、冷却部材20の両面に設けられることがより好ましい。これにより、冷却部材20について、外部環境に対する耐食性を向上させることができる。同様に、バッテリトレイ10についても、Al系めっき層が両面に設けられることがより好ましい。
【0082】
本実施形態に係るバッテリユニット100において、冷却部材20の各々は、亜鉛系めっき鋼板で形成されていてもよい。バッテリトレイ10も、亜鉛系めっき鋼板で形成されていてもよい。この場合、亜鉛系めっき鋼板の表面には化成処理皮膜が形成されていることが好ましい。少なくとも冷却部材20の空間27側の表面には、全体にわたってZn系めっき層が設けられ、このZn系めっき層を化成処理皮膜が被覆していることが好ましい。また、少なくとも、バッテリトレイ10の空間27側の表面には、全体にわたってZn系めっき層が設けられ、このZn系めっき層を化成処理皮膜が被覆していることが好ましい。これにより、冷却部材20及びバッテリトレイ10の冷却液による腐食が抑制されやすくなる。したがって、冷却部材20及びバッテリトレイ10の熱伝導率の低下や、冷却液内への冷却部材20及びバッテリトレイ10の成分の溶出が生じにくくなる。
【0083】
冷却部材20が亜鉛系めっき鋼板で形成される場合、外部環境に対する耐食性の向上の観点から、Zn系めっき層及び化成処理皮膜は、冷却部材20の両面に設けられることがより好ましい。バッテリトレイ10についても、Zn系めっき層及び化成処理皮膜が両面に設けられることがより好ましい。
【0084】
本実施形態に係るバッテリユニット100において、冷却部材20は、130HV以上のビッカース硬さを有することが好ましい。これにより、冷却部材20の耐衝突性能がより向上する。さらに、補強部材30も130HV以上のビッカース硬さを有する場合、冷却部材20に対してさらに良好な耐衝突性能を付与することができる。
【0085】
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
100:バッテリユニット
10:バッテリトレイ
11:底板
20:冷却部材
21:天板
211:ビード
22:フランジ
23:周壁
241:(第1)稜線部
242:(第2)稜線部
243:(第3)稜線部
244:(第4)稜線部
25:導入口
26:排出口
27:空間
30:補強部材
31,32,33,34:(第5)稜線部
35:ビード
40:バッテリセル
【要約】
バッテリユニット(100)は、バッテリトレイ(10)、冷却部材(20)、及び補強部材(30)を備える。冷却部材(20)は、バッテリトレイ(10)の外側で底板(11)に対向する天板(21)と、底板(11)に接合されるフランジ(22)とを含む。補強部材(30)は、冷却部材(20)の長手方向の両側で冷却部材(20)に重ねられて接合される。冷却部材(20)は、稜線部(241,242,243,244)を含む。補強部材(30)の各々は、稜線部(241,242,243,244)のそれぞれに連続するように形成された稜線部(31,32,33,34)を含む。稜線部(31,32,33,34)の各々は、バッテリトレイ(10)の外側まで冷却部材(20)の長手方向に延在する。
図1
図2
図3
図4